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特表2022-543657オステオポンチンに対する治療用抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】オステオポンチンに対する治療用抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221005BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20221005BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221005BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221005BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221005BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221005BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221005BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/127
A61K9/51
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P9/00
A61P29/00
A61K47/68
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507624
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 US2020045466
(87)【国際公開番号】W WO2021030209
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/884,818
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】513171172
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ ガバメント アズ レプリゼンテッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】レオン, ローレンス エル. ケー.
(72)【発明者】
【氏名】モーサー, マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ, ティモシー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
オステオポンチンに特異的な治療用抗体、およびオステオポンチン関連障害を治療するためのそれらの使用方法が提供される。特に、オステオポンチンのトロンビン切断を阻害するか、またはオステオポンチンのトロンビン切断断片の活性をブロックする抗体、またはその抗原結合断片が提供される。加えて、抗体コンジュゲート、および抗体または抗体コンジュゲートを含む医薬組成物または製剤、ならびに抗体、コンジュゲート、または製剤を含むキットも提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、オステオポンチンのトロンビン切断または前記オステオポンチンのトロンビン切断断片へのインテグリン結合を阻害する、単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号33のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
a)配列番号14もしくは配列番号18のアミノ酸配列、または前記配列番号14もしくは配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む重鎖と、
b)配列番号16もしくは配列番号20のアミノ酸配列、または前記配列番号16もしくは配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖と、を含む、請求項2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
a)配列番号22のアミノ酸配列、または前記配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む重鎖と、
b)配列番号24のアミノ酸配列、または前記配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖と、を含む、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号45のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
a)配列番号26のアミノ酸配列、または前記配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む重鎖と、
b)配列番号28のアミノ酸配列、または前記配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖と、を含む、請求項6に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記オステオポンチンのトロンビン切断断片が、OPN-R断片またはOPN-CTF断片である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体が、前記OPN-R断片へのインテグリン結合を阻害する、請求項8に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体が、配列番号8の参照配列に対して付番されたオステオポンチンのArg168を含むエピトープに特異的に結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体が、配列番号1~7、配列番号9~12、および配列番号47からなる群から選択される配列を含むか、またはそれからなるオステオポンチンペプチドに特異的に結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ナノボディ、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、F断片、およびscFv断片からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、オステオポンチン関連障害を治療するための組成物。
【請求項14】
薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記薬学的に許容される担体が、クリーム、エマルジョン、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、および軟膏からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
抗がん療法剤をさらに含む、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記抗がん療法剤が、化学療法剤、免疫療法剤、生物療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感剤、および放射性同位体からなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記オステオポンチン関連障害が、炎症、心臓肥大、心筋線維症、黒色腫、膠芽腫、卵巣がん、乳がん、または肺がんである、請求項13~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
B-Raf阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
オステオポンチン関連障害を治療するための方法であって、治療有効量の請求項13~19のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの追加の抗がん療法剤を投与することをさらに含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗がん療法剤が、化学療法剤、免疫療法剤、生物療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感剤、および放射性同位体からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記オステオポンチン関連障害が、オステオポンチンの過剰発現に関連する炎症またはがんである、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記オステオポンチン関連障害が、心臓肥大、心筋線維症、黒色腫、膠芽腫、卵巣がん、乳がん、または肺がんである、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
B-Raf阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤、またはそれらの組み合わせを投与することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記B-Raf阻害剤が、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、およびPLX-4720からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記MEK阻害剤が、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、およびPD-325901からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体が、毎日の投与計画に従って、または間欠的に投与される、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも部分的な腫瘍反応をもたらすのに十分な期間、複数サイクルの治療が前記対象に施される、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記期間が、少なくとも6ヶ月である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記期間が、少なくとも12ヶ月である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
完全な腫瘍反応がもたらされる、請求項20~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体が、前記対象におけるトロンビンの凝固促進活性を妨げない、請求項20~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
対象における腫瘍細胞の成長および/または増殖を阻害するための方法であって、有効量の請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項36】
請求項13~19のいずれか一項に記載の組成物と、がんまたは炎症を治療するためにキットを使用するための指示書と、を含む、キット。
【請求項37】
前記組成物を対象に投与するための手段をさらに含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
請求項1に記載の抗体を産生する方法であって、配列番号5~7、配列番号9~12、および配列番号47からなる群から選択される配列を含む免疫原性ペプチドに対する対象の免疫応答を誘発することを含む、方法。
【請求項39】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片と、抗がん療法剤、検出可能な標識、およびイメージング剤からなる群から選択される薬剤と、を含む、コンジュゲート。
【請求項40】
前記抗がん療法剤が、細胞傷害性剤、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、アポトーシス促進剤、抗血管新生剤、ホウ素化合物、光活性剤、および放射性同位体からなる群から選択される、請求項39に記載のコンジュゲート。
【請求項41】
単離された核酸であって、
a)配列番号13、配列番号17、配列番号21、および配列番号25からなる群から選択されるヌクレオチド配列、
b)配列番号14、配列番号18、配列番号22、および配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖をコードするヌクレオチド配列、
c)配列番号15、配列番号19、配列番号23、および配列番号27からなる群から選択されるヌクレオチド配列、
d)配列番号16、配列番号20、配列番号24、および配列番号28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖をコードするヌクレオチド配列、
e)a)~d)のヌクレオチド配列と90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、ならびに
f)a)~e)の相補体、を含む、単離された核酸。
【請求項42】
請求項41に記載の核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む、組換え核酸。
【請求項43】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする1つ以上のベクターを含むベクター系であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号33のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、ベクター系。
【請求項44】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号14もしくは配列番号18のアミノ酸配列、または前記配列番号14もしくは配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号16もしくは配列番号20のアミノ酸配列、または前記配列番号16もしくは配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖と、を含む、請求項43に記載のベクター系。
【請求項45】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする1つ以上のベクターを含むベクター系であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、ベクター系。
【請求項46】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号22のアミノ酸配列、または前記配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号24のアミノ酸配列、または前記配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖と、を含む、請求項45に記載のベクター系。
【請求項47】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする1つ以上のベクターを含むベクター系であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号45のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、ベクター系。
【請求項48】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号26のアミノ酸配列、または前記配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号28のアミノ酸配列、または前記配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖と、を含む、請求項47に記載のベクター系。
【請求項49】
前記抗体またはその抗原結合断片が、キメラ化またはヒト化される、請求項43~48のいずれか一項に記載のベクター系。
【請求項50】
請求項43~49のいずれか一項に記載のベクター系を含む、宿主細胞。
【請求項51】
抗体またはその抗原結合断片を産生する方法であって、
a)前記抗体またはその抗原結合断片の産生に好適な条件下で、請求項50に記載の宿主細胞を培養することと、
b)前記抗体またはその抗原結合断片を前記宿主細胞から単離することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
オステオポンチン(OPN)は、幅広いインテグリンに結合する高度に保存されたRGDドメインを有する、マトリックス細胞の多機能タンパク質である。マウスのArg153(ヒトのArg168)におけるトロンビン切断は、OPN-Arg(OPN-R)およびOPN-C末端断片(OPN-CTF)を生成する。C末端にSVVYGLR(配列番号3)を有するOPN-Rは、全長OPNが結合しないインテグリンのサブセット(α4β1およびα9β1)に結合する。OPN-R断片の生理学的役割は、細胞接着、遊走および生存を促進する免疫調節物質としての役割を含むと考えられる(Kahles F.et al.(2014)Mol.Metab.3:384)。OPN-CTF断片の役割は十分に研究されていないが、ケモカインに応答して樹状細胞と相互作用し、それらの走化性を促進することが示されている(Shao Z.et al.(2014)J.Biol.Chem.289:27146)。OPN-Rは、関節リウマチ等の炎症性障害に関与してきたが(Song JJ.et al.(2011)J.Clin.Invest.121:3517)、がんにおけるその役割は依然として不明である(Castello LM.et al.(2017)Mediators Inflamm.2017:4049098)。カルボキシペプチダーゼB2(CPB2)またはカボキシペプチダーゼN(CPN)は、OPN-RからC末端アルギニンを除去してそれをOPN-Leu(OPN-L)に変換し、SVVYGLR(配列番号3)結合モチーフへのインテグリン結合を抑止する(Myles T.et al.(2003)J Biol Chem.278(51):51059-51067,Shao Z.et al.(2014)J.Biol.Chem.289:27146)。OPN-RおよびOPN-Lのレベルの上昇は、関節リウマチ患者からの滑液試料において見られたが、変形性関節症または乾癬性関節炎患者ではそれほど上昇しなかった(Sharif S.et al.(2009)Arthritis Rheum 60:2902)。OPN-CTFの役割は、OPN-CTFに対する抗体が保護効果を有することを示唆するマウス実験的自己免疫性脳炎(EAE)モデルにおいても実証されている(Clemente N.et al.(2017)Front.Immunol.8:321)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】Kahles F.et al.(2014)Mol.Metab.3:384
【非特許文献2】Shao Z.et al.(2014)J.Biol.Chem.289:27146
【非特許文献3】Song JJ.et al.(2011)J.Clin.Invest.121:3517
【非特許文献4】Castello LM.et al.(2017)Mediators Inflamm.2017:4049098
【非特許文献5】Myles T.et al.(2003)J Biol Chem.278(51):51059-51067
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
オステオポンチンに特異的な治療用抗体、およびオステオポンチン関連障害を治療するためのそれらの使用方法が提供される。特に、オステオポンチンのトロンビン切断、またはオステオポンチンのトロンビン切断断片とインテグリンおよび/もしくは他の細胞受容体との相互作用を阻害する抗体は、炎症、心臓肥大、心筋線維症、ならびに黒色腫、膠芽腫、卵巣がん、乳がん、および肺がん等のオステオポンチンを過剰発現するがん等のオステオポンチン関連障害の治療に有用である。
一態様において、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片が提供され、抗体は、オステオポンチンのトロンビン切断またはオステオポンチンのトロンビン切断断片へのインテグリン結合を阻害する。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、OPN-R断片またはOPN-CTF断片に特異的に結合する。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、オステオポンチンのArg168を含むエピトープに特異的に結合する。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1~7、配列番号9~12、および配列番号47からなる群から選択される配列を含むか、またはそれからなるオステオポンチンペプチドに特異的に結合する。
【0004】
ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号33のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14もしくは配列番号18のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16もしくは配列番号20のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む軽鎖を含む。
【0005】
ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号24のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む軽鎖を含む。
【0006】
ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号45のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む軽鎖を含む。
【0007】
ある特定の実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ナノボディ、二重特異性抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー抗体、三重特異性抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、F断片、またはscFv断片である。
【0008】
別の態様において、オステオポンチン関連障害を治療するための組成物が提供され、組成物は、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的に結合する本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を含み、抗体またはその抗原結合断片は、オステオポンチンのトロンビン切断またはオステオポンチンのトロンビン切断断片へのインテグリン結合を阻害する。いくつかの実施形態において、オステオポンチン関連障害は、黒色腫、膠芽腫、卵巣がん、心臓肥大、心筋線維症、または炎症である。
【0009】
ある特定の実施形態において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、クリーム、エマルジョン、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、および軟膏からなる群から選択される。
【0010】
ある特定の実施形態において、組成物は、限定されないが、化学療法剤、免疫療法剤、生物療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感剤、および放射性同位体、またはそれらの組み合わせを含む抗がん療法剤をさらに含む。
【0011】
ある特定の実施形態において、組成物は、B-Raf阻害剤、MEK阻害剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む。例示的なB-Raf阻害剤としては、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、およびPLX-4720が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なMEK阻害剤としては、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、およびPD-325901が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
別の態様において、オステオポンチン関連障害を治療する方法が提供され、方法は、トロンビン切断部位でオステオポンチンに、またはオステオポンチンのトロンビン切断断片に特異的に結合する、治療有効量の本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、抗体は、OPN-R断片またはOPN-CTF断片に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗体は、OPN-R断片へのインテグリン結合を阻害する。好ましくは、抗体は、対象におけるトロンビンの凝固促進活性を妨げない。
【0013】
ある特定の実施形態において、オステオポンチン関連障害は、オステオポンチンを過剰発現するがんである。例えば、オステオポンチンを過剰発現するがんとしては、黒色腫、膠芽腫、卵巣がん、乳がん、および肺がんが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、方法は、化学療法剤、免疫療法剤、生物療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感剤、および放射性同位体、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、少なくとも1つの追加の抗がん療法剤を投与することをさらに含む。
【0014】
ある特定の実施形態において、方法は、B-Raf阻害剤を投与することをさらに含む。例示的なB-Raf阻害剤としては、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、およびPLX-4720が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
ある特定の実施形態において、方法は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤を投与することをさらに含む。例示的なMEK阻害剤としては、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、およびPD-325901が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、毎日の投与計画に従って、または間欠的に投与される。少なくとも部分的な腫瘍反応、またはより好ましくは完全な腫瘍反応をもたらすのに十分な期間、複数サイクルの治療が対象に施され得る。いくつかの実施形態において、期間は、少なくとも6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1.5年、2年またはそれ以上である。
【0017】
別の態様において、対象における腫瘍細胞の成長および/または増殖を阻害するための方法が提供され、方法は、有効量の、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的に結合する本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含み、抗体またはその抗原結合断片は、オステオポンチンのトロンビン切断またはオステオポンチンのトロンビン切断断片へのインテグリン結合を阻害する。
【0018】
別の態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片と、抗がん療法剤、検出可能な標識、およびイメージング剤からなる群から選択される薬剤とを含むコンジュゲートが提供される。例示的な抗がん療法剤としては、細胞傷害性剤、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、アポトーシス促進剤、抗血管新生剤、ホウ素化合物、光活性剤、および放射性同位体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
別の態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む組成物と、オステオポンチン関連障害を治療するためにキットを使用するための指示書と、を含むキットが提供される。キットは、組成物を対象に投与するための手段をさらに含み得る。
【0020】
別の態様において、抗体を産生する方法が提供され、方法は、配列番号5~7、配列番号9~12、および配列番号47からなる群から選択される配列を含む免疫原性ペプチドに対する対象の免疫応答を誘発することを含む。
【0021】
別の態様において、a)配列番号13、配列番号17、配列番号21、および配列番号25からなる群から選択されるヌクレオチド配列、b)配列番号14、配列番号18、配列番号22、および配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖をコードするヌクレオチド配列、c)配列番号15、配列番号19、配列番号23、および配列番号27からなる群から選択されるヌクレオチド配列、d)配列番号16、配列番号20、配列番号24、および配列番号28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖をコードするヌクレオチド配列、e)a)~d)のヌクレオチド配列と80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を有するヌクレオチド配列、ならびにf)a)~e)の相補体、を含む、単離された核酸が提供される。
【0022】
別の態様において、本明細書に記載の核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む組換え核酸が提供される。
【0023】
別の態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする1つ以上のベクターを含むベクター系が提供される。
【0024】
ある特定の実施形態において、ベクター系は、抗体またはその抗原結合断片をコードする1つ以上のベクターを含み、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号33のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14もしくは配列番号18のアミノ酸配列、または配列番号14もしくは配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号16もしくは配列番号20のアミノ酸配列、または配列番号16もしくは配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖とを含む。
【0025】
ある特定の実施形態において、ベクター系は、抗体またはその抗原結合断片をコードする1つ以上のベクターを含み、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列、または配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号24のアミノ酸配列、または配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖とを含む。
【0026】
ある特定の実施形態において、ベクター系は、抗体またはその抗原結合断片をコードする1つ以上のベクターを含み、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号45のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列、または配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号28のアミノ酸配列、または配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖とを含む。
【0027】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載のベクター系は、キメラ化またはヒト化される抗体またはその抗原結合断片をコードする。
【0028】
別の態様において、本明細書に記載のベクター系を含む宿主細胞が提供される。
【0029】
別の態様において、抗体またはその抗原結合断片を産生する方法が提供され、方法は、a)抗体またはその抗原結合断片の産生に好適な条件下で、本明細書に記載のベクター系を含む宿主細胞を培養することと、b)抗体またはその抗原結合断片を宿主細胞から単離することと、を含む。
【0030】
別の態様において、本明細書に記載の抗体を産生するハイブリドーマが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むと最もよく理解される。慣例に従って、図面の様々な特徴が縮尺通りでないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大または縮小されている。図面には、以下の図が含まれる。
【0032】
図1】トロンビンおよびCPB2媒介性OPN切断の概略図を示す。
図2A】WTマウスと比較して、OPN KOおよびOPNR153A KIマウスにおけるB16腫瘍成長の低下を示す。
図2B】WTマウスと比較して、OPN KOおよびOPNR153A KIマウスにおけるB16腫瘍成長の低下を示す。
図3A】OPN KOおよびOPN KIマウスの転移モデルにおいて、B16腫瘍の成長が同様に抑制されたことを示す。
図3B】OPN KOおよびOPN KIマウスの転移モデルにおいて、B16腫瘍の成長が同様に抑制されたことを示す。
図4A】脇腹にB16黒色腫を有するマウスのダビガトランエテキシレート処理により、WTにおいて腫瘍成長が抑制されたが、OPN-KIマウスでは抑制されなかったことを示す。
図4B】脇腹にB16黒色腫を有するマウスのダビガトランエテキシレート処理により、WTにおいて腫瘍成長が抑制されたが、OPN-KIマウスでは抑制されなかったことを示す。
図5A】肺にB16黒色腫転移を有するマウスのダビガトランエテキシレート処理により、WTにおいて腫瘍成長が抑制されたが、OPN-KOまたはOPN-KIマウスでは抑制されなかったことを示す。
図5B】肺にB16黒色腫転移を有するマウスのダビガトランエテキシレート処理により、WTにおいて腫瘍成長が抑制されたが、OPN-KOまたはOPN-KIマウスでは抑制されなかったことを示す。
図6】WTマウスと比較して、OPN-KIマウスにおけるId8卵巣がん成長の低下を示す。
図7】全長オステオポンチン(OPN-FL)に結合して、トロンビンによるその切断をブロックするモノクローナル抗体(Mab)を同定するためのスクリーニング戦略を示す。以下の種に由来する、トロンビン切断部位の周囲からのOPNタンパク質配列(一文字アミノ酸コード)が示される:ウサギ、ラット、マウス、ヒト、アカゲザル、カニクイザル、およびブタが示される。アミノ酸の色は、それらの化学的特性を表す。黒い四角は、トロンビン切断部位を囲んでいる。アスタリスクは、保存されたアミノ酸を示している。ウサギモノクローナル抗体を開発するために、キーホールリンペットヘモシアニンに共有結合したペプチド抗原
【数1】

(配列番号11、太字のアミノ酸はトロンビンにより切断される)を使用してウサギにおいて抗体を産生させた。トロンビン切断部位の周囲のOPN配列がマウスおよびヒト配列とは異なるため、ウサギを選択した。
【数2】

(配列番号47、太字のアミノ酸はトロンビンにより切断される)。ペプチド抗原に結合した抗体を産生する細胞は、それらの重鎖および軽鎖cDNAをクローニングし、ウサギIgGを発現する発現ベクターに挿入した。次いで、これらの発現ベクターをHEK293F細胞にトランスフェクトし、培地をアッセイした。次いで、抗体スクリーニングを用いて、マウス、ラット、およびヒトのオステオポンチンと反応する抗体を産生するクローンを同定した。次いで、いくつかの選択されたクローン(以下の図9を参照)をより大きな規模で成長させ、培地を回収し、IgGを精製した。
図8】OPN抗原ペプチドに対する直接ELISAにおけるウサギモノクローナルクローンのスクリーニングの結果を示す。35個の陽性(図示)が同定された。抗OPN IgGを産生するクローンを同定するアッセイのために、96ウェルプレートを2ug/mLのアビジンで一晩コーティングした後、ビオチンで標識したOPN抗原ペプチドを30分間添加した。次いで、クローンからの上清を1:50に希釈した後、10倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG Fcで検出した。HRPの基質を添加し、色を測定した。クローン上清中のIgGの濃度を決定するために、96ウェルプレートを、2ug/mLの抗ウサギIgGで一晩コーティングした。次いで、クローンからの上清を1:50に希釈した後、10倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG Fcで検出した。HRPの基質を添加し、色を測定した。クローン上清中のIgGの濃度は、ウサギIgGの標準希釈曲線から計算した。
図9】抗原ペプチド(中灰色、図8のデータ)、マウスOPN-FL(薄灰色)およびヒトOPN-FL(暗灰色)に対する直接ELISAにおけるウサギモノクローナル抗体のスクリーニング結果を示す。ヒトOPN-FLまたはマウスOPN-FLに結合したクローンを同定した。マウスまたはヒトOPN-FL(矢印)への結合に基づいて、4つのクローンがさらなる調査のために選択された。
図10】ペプチド抗原結合アッセイにおける4つのクローンのEC50の決定を示す。精製した抗OPN IgGのEC50を決定するために、96ウェルプレートを2ug/mLのアビジンで一晩コーティングした後、ビオチンで標識したOPN抗原ペプチドを30分間添加した。次いで、選択されたクローンからの上清中のIgGを、プロテインA/Gセファロースビーズに結合させて溶出することによって精製した。次いで、精製したIgGを段階希釈した後、10倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG Fcで検出した。HRPの基質を添加し、色を測定した。
図11】OPN抗原ペプチドに結合させるための4つのクローンのEC50値を示す。図4のデータに基づいて、図10のデータを用いたPrism Graphpadを使用して、4パラメータフィット方程式からEC50値を計算した。A2=2.6ng/mL、A6=3.2ng/mL、E5=4.0ng/mL、およびG7=93.2ng/mL。
図12】マウスOPN-FLに対する直接結合ELISAにおける4つのクローンのEC50値の決定を示す。クローンA2、A6およびE5は、マウスOPN-FLに結合する。PBS緩衝液中のヤギポリクローナル抗マウスオステオポンチンIgG(2μg/ml)(R&D Systems,Minneapolis,MN)を96ウェルELISAプレートにコーティングし、非特異的結合部位をPBS中1%のBSAで1時間ブロックした。組換えマウスオステオポンチンタンパク質(R&D Systems,Minneapolis,MN)をPBS中1%のBSAで希釈し(200ng/mlから開始して希釈)、2時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中の精製抗体A2、A6、E5、G7またはIgG対照(500ng/ml)とともに1時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中のペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗ウサギIgG抗体(100ng/ml)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、テトラメチルベンジジン基質を10分間インキュベートし、続いてストップ溶液を添加し、450nmで吸光度の測定を行った。
図13】ヒトOPN-FLに対する直接結合ELISAにおける、選択された4つのクローンのEC50値の決定を示す。4つのクローンはすべて、ヒトOPN-FLに結合する。PBS緩衝液中のマウスモノクローナル抗ヒトオステオポンチン抗体(4μg/ml)(R&D Systems,Minneapolis,MN)を96ウェルELISAプレートにコーティングし、非特異的結合部位をPBS中1%のBSAで1時間ブロックした。組換えヒトオステオポンチンタンパク質(GST-OPN-his、社内で精製)をPBS中1%のBSAで希釈し(200ng/mlから開始して希釈)、2時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中の精製抗体A2、A6、E5、G7またはIgG対照(500ng/ml)とともに1時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中のペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗ウサギIgG抗体(100ng/ml)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、テトラメチルベンジジン基質を10分間インキュベートし、続いてストップ溶液を添加し、450nmで吸光度の測定を行った。
図14】OPN-Rの特異的ELISAにおいて、切断生成物のうちの1つであるOPN-Rの生成を決定することによって、4つのクローンについてヒトOPN-FLのトロンビン切断の阻害の決定を示す。4つのクローンすべてが、ヒトOPN-FLのトロンビン切断を阻害する。3.2μMの組換えヒトオステオポンチンタンパク質(Myles T.et al.(2003)J Biol Chem.278(51):51059-51067(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように精製)を、精製抗体A2、A6、E5、G7またはIgG対照(濃度はデータに示される通り)とともに、またはそれらなしで、室温で20分間インキュベートした。ヒトトロンビン(32nM)(R&D Systems)を試料に添加し、37℃で10分間インキュベートし、続いてPPACKを4.8μMまで添加した。試料をPBS中1%のBSAで1/300に希釈し、生成されたOPN-RをOPN-R特異的ELISAによって測定した。ヒトOPN-R ELISA:PBS緩衝液中のマウスモノクローナル抗ヒトオステオポンチン抗体(4μg/ml)(R&D Systems,Minneapolis,MN)を96ウェルELISAプレートにコーティングし、非特異的結合部位をPBS中1%のBSAで1時間ブロックした。グルタチオンS-トランスフェラーゼタグを有する組換えヒトOPN-Rタンパク質(GST-OPN-R,Mylesetal.(2003),上記)を、較正標準としてPBSの1%のBSAで希釈した(200ng/mlから開始して希釈)。トロンビン切断生成物の標準および試料(1/300希釈から開始してさらに希釈)を2時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中のビオチン化ウサギポリクローナル抗OPN-R抗体(500ng/ml)(Sharif et al,2009A+R)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、試料を、1%BSAを含むPBS中のペルオキシダーゼ抱合ストレプトアビジン(100ng/ml)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、テトラメチルベンジジン基質を10分間インキュベートし、続いてストップ溶液を添加し、450nmで吸光度の測定を行った。各試料において生成されたOPN-Rの量を、OPN-R ELISAにおけるOPN-R標準から計算し、次いで、抗体を含まない対照と比較して、異なる濃度での各抗体クローンのトロンビン切断の阻害を計算し、グラフ化した。
図15図14のデータに基づいて、ヒトOPN-FLの切断の阻害における4つのクローンの阻害%を示す。A2=82%、A6=95.4%、E5=77.2%、およびG7=60.1%。
図16】OPN-Rの特異的ELISAにおいて、切断生成物のうちの1つであるOPN-Rの生成を決定することによって、4つのクローンについてマウスOPN-FLのトロンビン切断の阻害の決定を示す。4つのクローンすべてが、マウスOPN-FLのトロンビン切断を阻害する。組換えマウスオステオポンチンタンパク質(R&D systems)(2μM)を、精製抗体A2、A6、E5、G7またはIgG対照(2μM)とともに、またはそれらなしで、室温で20分間インキュベートした。ヒトトロンビン(20nM)(R&D Systems)を試料に添加し、37℃で10分間インキュベートし、続いてPPACKを4.7μMまで添加した。試料をPBS中1%のBSAで1/100または1/30に希釈し、生成されたOPN-RをマウスOPN-R特異的ELISAによって測定した。各試料において生成されたOPN-Rの量を、OPN-R ELISAにおけるOPN-R標準から計算し、次いで、異なる濃度での各抗体クローンのトロンビン切断の阻害を計算し、グラフ化した。
【発明を実施するための形態】
【0033】
オステオポンチンに特異的な治療用抗体、およびオステオポンチン関連障害を治療するためのそれらの使用方法が提供される。特に、オステオポンチンのトロンビン切断を阻害するか、またはオステオポンチンのトロンビン切断断片の活性をブロックする抗体、またはその抗原結合断片が提供される。加えて、抗体コンジュゲート、および抗体または抗体コンジュゲートを含む医薬組成物または製剤、ならびに抗体、コンジュゲート、または製剤を含むキットも提供される。
【0034】
治療用抗体、およびオステオポンチン関連障害の治療におけるそれらの使用方法を説明する前に、本発明は記載される特定の方法または組成物に限定されるものではなく、それ自体が当然変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであることも理解されたい。
【0035】
値の範囲が提供される場合、文脈上別段の指示のない限り、その範囲の上限と下限との間の各介在値も、下限の単位の10分の1まで具体的に開示されていることを理解されたい。規定範囲における任意の規定値または介在値と、その規定範囲における任意の他の規定値または介在値との間のより小さい各範囲が、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してその範囲に含まれても、または除外されてもよく、より小さい範囲に限度のいずれかが含まれる範囲、どちらも含まれない範囲、または両方の限度が含まれる範囲の各々も、規定範囲内の任意の具体的に除外されている限度に従って本発明に包含される。規定範囲が限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0036】
別段の定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、いくつかの潜在的および好ましい方法および材料を次に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、その刊行物が引用されることに関連して方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本開示が、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先することを理解されたい。
【0037】
本開示を読めば当業者に明らかになるように、本明細書に記載および例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または主旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、またはそれと組み合わされ得る別個の構成要素および特徴を有する。記載される任意の方法は、記載される事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で行うことができる。
【0038】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に別段の指示のない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの抗体(an antibody)」への言及は、複数のそのような抗体を含み、「がん細胞(the cancerous cell)」への言及は、当業者に既知のがん細胞、腫瘍細胞、新生細胞、および悪性細胞等の1つ以上のがん細胞およびその均等物への言及を含む等である。
【0039】
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ならびにハイブリッド抗体、改変抗体、キメラ抗体、およびヒト化抗体を包含する。抗体という用語は、ハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winter et al.(1991)Nature 349:293-299;および米国特許第4,816,567号を参照);二重特異性抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー抗体(BiTE)、三重特異性抗体、および他の多重特異性抗体(例えば、Fan et al.(2015)J.Hematol.Oncol.8:130、Krishnamurthy et al.(2018)Pharmacol Ther.185:122-134を参照)、F(ab’)およびF(ab)断片;F分子(非共有結合ヘテロ二量体、例えば、Inbar et al.(1972)Proc Natl Acad Sci USA 69:2659-2662;およびEhrlich et al.(1980)Biochem 19:4091-4096を参照);一本鎖Fv分子(scFv)(例えば、Huston et al.(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85:5879-5883を参照);ナノボディまたは単一ドメイン抗体(sdAb)(例えば、Wang et al.(2016)Int Nanomedicine 11:3287-3303、Vincke et al.(2012)Methods Mol Biol 911:15-26を参照;二量体および三量体抗体断片構築物;ミニボディ(例えば、Pack et al.(1992)Biochem 31:1579-1584;Cumber(1992)J Immunology 149:1209-126を参照);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534-1536;and U.K.Patent Publication No.GB 2,276,169,published 21 Sep.1994を参照);ならびにそのような分子から得られる任意の機能的断片を含み、そのような断片は、親抗体分子の特異的抗原結合特性を保持する。
【0040】
抗原(例えば、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片)への抗体の結合に関して「特異的に(または選択的に)結合する」という語句は、タンパク質および他の生物学的物質の不均一な集団における抗原の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定されたイムノアッセイ条件下では、特定の抗体は、バックグラウンド上で少なくとも2回特定の抗原に結合し、試料中に存在する他の抗原には有意な量で実質的に結合しない。そのような条件下での抗原への特異的結合は、特定の抗原に対するその特異性について選択される抗体を必要とし得る。例えば、ラット、マウス、またはヒト等の特定の種由来の抗原に対して産生された抗体は、多型変異体および対立遺伝子を除いて、抗原と特異的に免疫反応し、他のタンパク質とは反応しない抗体のみを得るように選択することができる。この選択は、他の種由来の分子と交差反応する抗体を取り去ることによって達成され得る。様々なイムノアッセイフォーマットを使用して、特定の抗原と特異的に免疫反応する抗体を選択することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために日常的に使用される(例えば、特定の免疫反応性を決定するために使用することができるイムノアッセイフォーマットおよび条件の説明については、Harlow&Lane Antibodies,A Laboratory Manual(1988)を参照されたい)。典型的には、特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的にはバックグラウンドの10~100倍超である。
【0041】
本明細書で使用される「抗体断片」、およびそのすべての文法的変異形は、インタクトな抗体の抗原結合部位または可変領域を含むインタクトな抗体の一部として定義され、その部分は、インタクトな抗体のFc領域の定常重鎖ドメイン(すなわち、抗体アイソタイプに応じて、CH2、CH3、およびCH4)を含まない。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、およびFv断片;ダイアボディ;連続したアミノ酸残基の1つの中断されない配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体断片(本明細書では「一本鎖抗体断片」または「一本鎖ポリペプチド」称される)、例えば、(1)一本鎖Fv(scFv)分子、(2)関連する重鎖部分を有しない、1つの軽鎖可変ドメインのみを含有する一本鎖ポリペプチド、または軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有するその断片、(3)関連する重鎖部分を有しない、1つの重鎖可変領域のみを含有する一本鎖ポリペプチド、または重鎖可変領域の3つのCDRを含有するその断片、および(4)非ヒト種からの単一Igドメイン、または他の特定の単一ドメイン結合モジュールを含むナノボディ;ならびに抗体断片から形成される多重特異性または多価構造が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の重鎖を含む抗体断片において、重鎖(複数可)は、インタクトな抗体の非Fc領域に見出される任意の定常ドメイン配列(例えば、IgGアイソタイプ中のCH1)を含有することができ、かつ/またはインタクトな抗体に見出される任意のヒンジ領域配列を含有することができ、かつ/または、ヒンジ領域配列もしくは重鎖(複数可)の定常ドメイン配列に融合されるかまたは位置するロイシンジッパー配列を含有することができる。
【0042】
「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、またはウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの領域に対応し、フレームワーク(FR)領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分も含む。
【0043】
本開示で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上の任意の抗原決定基を意味する。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。
【0044】
「単離された」とは、ポリペプチドに言及する場合、指示された分子が、その分子が天然に見出される生物全体から分離して、別個であること、または同じ種類の他の生物学的巨大分子の実質的な非存在下に存在することを意味する。ポリヌクレオチドに関して「単離された」という用語は、天然において通常それに付随する配列の全体もしくは一部を欠く核酸分子、または天然に存在するが、それに付随する異種配列を有する配列、または染色体から解離した分子である。
【0045】
「コンジュゲートされた」という用語は、2つの化合物または薬剤の共有結合または非共有結合手段による結合を指す。
【0046】
「治療」、「治療すること」、「治療する」等の用語は、一般に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指すために本明細書で使用される。効果は、疾患もしくはその症状(複数可)を完全にもしくは部分的に予防するという点では予防的であり得、かつ/または疾患および/もしくは疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な安定化もしくは治癒という点では治療的であり得る。「治療」という用語は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患または症状の素因を有し得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において、疾患および/または症状(複数可)の発生を防止すること、(b)疾患および/または症状(複数可)を阻害すること、すなわち、それらの発症を阻止すること、または(c)疾患症状(複数可)を緩和すること、すなわち、疾患および/または症状(複数可)の抗体を引き起こすことを含む。治療を必要とするものには、既に生じているもの(例えば、がんを有するもの)、ならびに予防が所望されるもの(例えば、がんに対する感受性の増加を有するもの、がんを有すると疑われるもの、再発のリスクを有するもの等)が含まれる。
【0047】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒトおよび動物のための単位投与量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位が、薬学的に許容される希釈剤、担体またはビヒクルと関連して所望の治療効果をもたらすのに十分な量で計算された所定の量の本開示の化合物を含有する。新規の単位剤形の仕様は、使用される特定の化合物および達成される効果、ならびに宿主内の各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0048】
「オステオポンチン関連障害」には、炎症、心臓肥大、心筋線維症、ならびに黒色腫、膠芽腫、卵巣がん、乳がん、および肺がん等のオステオポンチンを過剰発現するがんを含むが、これらに限定されないオステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片のレベルの上昇に関連する任意の疾患または障害が含まれる。
【0049】
「腫瘍」、「がん」および「新生物」という用語は、互換的に使用され、その成長、増殖、または生存が、正常なカウンターパート細胞の成長、増殖、または生存を超えている哺乳動物の細胞または細胞の集団、例えば、細胞増殖性、過剰増殖性、または分化性障害を指す。典型的には、成長は制御されていない。「悪性腫瘍」という用語は、近傍組織への侵入を指す。「転移」または二次、再発または再発腫瘍、がんまたは新生物という用語は、腫瘍、がんまたは新生物の、対象内の他の部位、位置、または領域への拡散または散在を指し、その部位、位置、または領域は、原発腫瘍またはがんとは異なる。新生物、腫瘍、およびがんは、良性、悪性、転移性、および非転移性種を含み、新生物、腫瘍、もしくはがん、または進行中、悪化中、安定した、もしくは寛解中の新生物、腫瘍、がん、もしくは転移の任意の病期(I、II、III、IV、もしくはV)またはグレード(G1、G2、G3等)を含む。特に、「腫瘍」、「がん」、および「新生物」という用語には、扁平上皮がん、腺がん、腺扁平上皮がん、未分化がん、大細胞がん、および小細胞がん等のがんが含まれ、限定されないが、頭頸部がん、皮膚がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、膵臓がん、末梢神経腫、膠芽腫、副腎皮質がん、エイズ関連リンパ腫、肛門がん、膀胱がん、髄膜腫、神経膠腫、星状細胞腫、子宮頸がん、慢性骨髄増殖性疾患、結腸がん、子宮内膜がん、上皮がん、食道がん、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、胆嚢がん、胃がん、胃腸カルチノイド腫瘍、妊娠性栄養腫瘍、有毛細胞白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、咽頭下部がん、島細胞がん、カポジ肉腫、喉頭がん、白血病、口唇がん、口腔がん、肝臓がん、男性乳がん、悪性中皮腫、髄芽腫、メルケル細胞がん、転移性子宮頸扁平上皮細胞がん、多発性骨髄腫および他の形質細胞腫瘍、真菌症ファンゴイドおよびセザリー症候群、骨髄異形成症候群、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、中咽頭がん、骨肉腫および骨の線維性組織球腫を含む骨がん、副鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、小腸がん、軟組織肉腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、松果体芽腫、精巣がん、胸腺腫、胸腺がん、甲状腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、尿道がん、子宮肉腫、膣がん、外陰部がん、ならびにウィルムス腫瘍および他の小児腎臓腫瘍が含まれる。
【0050】
特に、「黒色腫」という用語は、転移性黒色腫を含む任意の病期の任意の種類の黒色腫を含む。例えば、「黒色腫」という用語には、悪性黒子、悪性黒子由来黒色腫、表在拡大型黒色腫、末端黒子型黒色腫、粘膜黒色腫、結節性黒色腫、ポリポイド黒色腫、および線維形成性黒色腫が含まれるが、これらに限定されない。黒色腫は、黒色腫細胞によってコードされるタンパク質が、患者の体内の他の場所のタンパク質と異なることを意味する、ゲノムDNA配列の変化(変異)を含有し得る。一例として、細胞への成長シグナル伝達に関与するタンパク質であるB-Rafは、変異を有し得る。したがって、この用語はまた、V600E変異またはV600K変異を含む黒色腫を含むが、これらに限定されないB-RAF変異黒色腫も含む。
【0051】
「抗腫瘍活性」とは、細胞増殖率の低下、したがって、既存の腫瘍または治療中に生じる腫瘍の成長率の低下、および/または既存の新生(腫瘍)細胞または新たに形成された新生細胞の破壊、したがって、治療中の腫瘍の全体的なサイズの減少を意図する。そのような活性は、動物モデルを使用して評価することができる。
【0052】
オステオポンチンまたはそのトロンピン切断断片に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の「治療有効用量または治療有効量」とは、本明細書に記載されるように投与された場合に、抗腫瘍活性または抗炎症活性等の有益な治療反応をもたらす量を意図する。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、治療される状態の重症度、使用される特定の1つまたは複数の薬物、投与様式等に応じて、対象ごとに異なる。任意の個々の症例における適切な「有効」量は、本明細書に提供される情報に基づいて、日常的な実験を用いて当業者によって決定され得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「腫瘍反応」という用語は、すべての測定可能な病変の減少または消失を意味する。腫瘍反応の基準は、WHO報告基準[WHO Offset Publication,48-World Health Organization,Geneva,Switzerland,(1979)]に基づいている。理想的には、すべての一次元的または二次元的に測定可能な病変は、各評価で測定されるべきである。任意の臓器に複数の病変が存在する場合、そのような測定は不可能である可能性があり、そのような状況下では、可能な場合、最大6つの代表的な病変が選択されるべきである。
【0054】
本明細書で使用される「完全奏効」(CR)という用語は、少なくとも4週間間隔で2つの評価によって決定される、すべての臨床的に検出可能な悪性疾患の完全消失を意味する。
【0055】
本明細書で使用される「部分奏効」(PR)という用語は、評価可能な疾患の進行なしに、かつ少なくとも4週間間隔での少なくとも2つの連続した評価によって決定される任意の新しい病変の証拠なしに、すべての測定可能な疾患の最長垂直径の積の和におけるベースラインからの50%以上の減少を意味する。評価は、溶解性病変のサイズの部分的な減少、溶解性病変の再石灰化、または芽球性病変の密度の低下を示すべきである。
【0056】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用される。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然アミノ酸の化学類似体または修飾誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0057】
「実質的に精製された」とは、一般に、物質(例えば、抗体、コンジュゲート、化合物、薬物、核酸、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド)の単離を指し、そのため物質は、該物質が存在する試料の大部分を構成し、全試料の割合として定義される。典型的には、試料中、実質的に精製された成分は、試料の50%、好ましくは80%~85%、より好ましくは90%~95%を占める。目的の物質を精製するための技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、および密度に応じた沈降が含まれる。
【0058】
「レシピエント」、「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、診断、治療、または療法が所望される任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。治療の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家畜および農場動物、ならびにイヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の動物園、競技、または愛玩用の動物を含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0059】
「薬学的に許容される賦形剤または担体」は、任意選択的に本発明の組成物に含まれてもよく、患者に有意な有害な毒性効果を引き起こさない賦形剤を指す。
【0060】
「薬学的に許容される塩」としては、限定されないが、アミノ酸塩、無機酸で調製される塩、例えば、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物、および硝酸塩、または前述のいずれかの対応する無機酸形態から調製される塩、例えば、塩酸塩等、または有機酸で調製される塩、例えば、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩、サリチル酸塩およびステアリン酸塩、ならびにエストレート、グルセプテートおよびラクトビオン酸塩が挙げられる。同様に、薬学的に許容されるカチオンを含有する塩としては、限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウム(置換アンモニウムを含む)が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」、「検出剤」、「イメージング剤」、「診断剤」、および「検出可能な部分」という用語は、互換的に使用され、限定されないが、蛍光剤、化学発光体、発色団、生物発光タンパク質、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、同位体標識、半導体ナノ粒子、染料、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン、ストレプトアビジンまたはハプテン)等を含む、検出可能な分子または物質を指す。「蛍光剤」という用語は、検出可能な範囲内で蛍光を示すことができる物質またはその一部を指す。本発明の実施において使用され得る検出可能な標識の特定の例としては、H、H,120I、123I、124I、125I、131I、35S、11C、13C、14C、32P、15N、13N、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、15O、186Re、188Re、51M、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、および83Sr等の放射性および非放射性の同位体を含む同位体標識が挙げられる。特に、検出可能な標識は、限定されないが、64Cu、89Zr、68Ga、177Lu、82Rb、11C、13N、15O、および18F等のPETイメージングに好適な陽電子放射性核種、または限定されないが、67Ga、99mTc、123I、および131I等の単光子放射線コンピュータ断層撮影(SPECT)イメージングに好適なγ放射性核種を含み得る。検出可能な標識はまた、限定されないが、Mn2+、Fe3+、Fe2+、Gd3+、Ti2+、Cr3+、Co2+、Ni2+、およびCu2+等のMRIイメージングに好適な非放射性の常磁性金属イオンを含んでもよい。検出可能な標識はまた、SYBR緑色、SYBR金、CAL Fluor Gold 540、CAL Fluor Oreng 560、CAL Fluor Red 590、CAL Fluor Red 610、およびCAL Fluor Red 635等のCAL Fluor色素、Quasar 570、Quasar 670、およびQuasar 705等のQuasar色素、Alexa Fluor 350,Alexa Fluor 488,Alexa Fluor 546,Alexa Fluor 555,Alexa Fluor 594,Alexa Fluor 647、および Alexa Fluor 784等のAlexa Fluor、Cy 3,Cy3.5,Cy5,Cy5.5、およびCy7等のシアン色素、フルオレセイン、2’,4’,5’,7’-テトラクロロ-4-7-ジクロロフルオレセイン(TET)、カルボキシフルオレセイン(FAM)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、ローダミン、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、FITC、ダンシル、ウンベリフェロン、ジメチルアクリジニウムエステル(DMAE)、テキサスレッド、ルミノール、および量子ドットを含むが、これらに限定されないフルオロフォア、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neo、G418)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ハイグロマイシンBリン酸転移酵素(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、β-ガラクトシダーゼ(lacZ)、およびキサンチングアニンホスホリボシル基転移酵素(XGPRT)等の酵素、β-グルクロニダーゼ(gus)、胎盤性アルカリホスファターゼ(PLAP)、および分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)を含む。酵素タグは、それらの同族基質とともに使用される。これらの用語には、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、およびペルオキシオキサレート等の化学発光標識、ならびにホタルルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、レニラルシフェラーゼ、およびアエコリン等の生物発光タンパク質も含まれる。これらの用語はまた、既知の蛍光強度の色分けされたミクロスフェア(例えば、Luminex(Austin,TX)によってもたらされるxMAP技術を用いたミクロスフェアを参照)、量子ドットナノ結晶を含有するミクロスフェア、例えば、異なる比率および組み合わせの量子ドット色を含有するミクロスフェア(例えば、Life Technologies(Carlsbad,CA)製のQdotナノ結晶)、ガラス被覆金属ナノ粒子(例えば、Nanoplex Technologies,Inc.(Mountain View,CA)製のSERSナノタグを参照)、バーコード材料(例えば、サブミクロンサイズの縞模様の金属ロッド、例えば、Nanoplex Technologies,Inc.製のナノバーコードを参照)、着色バーコードでコードされた微粒子(例えば、Vitra Bioscience(vitrabio.com)製のCellCardを参照)、デジタルホログラフィックコード画像を有するガラス微粒子(例えば、Illumina(San Diego,CA)製のCyVeraマイクロビーズを参照)、近赤外(NIR)プローブ、およびナノシェルも含む。これらの用語はまた、超音波造影剤(例えば、六フッ化硫黄を含むSonoVueマイクロバブル、アルブミンシェルおよびオクタフルオロプロパンガスコアを含むOptisonマイクロバブル、脂質/ガラクトースシェルおよび空気コアを含むLevovistマイクロバブル、パーフルオロカーボンマイクロバブルを含むPerflexane脂質ミクロスフェア、ならびに外側脂質シェルに封入されたオクタフルオロプロパンを含むPerflutren脂質ミクロスフェア)、磁気共鳴画像法(MRI)造影剤(例えば、ガドジアミド、ガドベン酸、ガドペンテト酸、ガドテリドール、ガドフォスベセット、ガドベルセタミド、ガドキセト酸)、ならびに、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)、X線撮影、または蛍光透視法のための放射線造影剤(例えば、ジアトリゾ酸、メトリゾ酸、ヨーダミド、イオタラム酸、イオキシタラム酸、イオグリシン酸、アセトリゾ酸、イオカルミン酸、メチオダール、ジオドン、メトリザミド、イオへキソール、イオキサグル酸、イオパミドール、イオプロミド、イオトロラン、イオベルソール、イオペントール、イオジキサノール、イオメプロール、イオビトリドール、イオキシラン、ヨードキサム酸、イオトロクス酸、イオグリカム酸、アジピオドン、イオベンザミン酸、イオパノ酸、イオセタム酸、イポダートナトリウム、チロパノ酸、およびイポダートカルシウム)等の造影剤も含む。検出可能な標識またはイメージング剤は、抗体に間接的にまたは直接的に結合されてもよく、標識または造影剤は、イメージングにおける抗体の使用を促進する。
【0062】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド分子間のパーセント同一性を指す。2つの核酸または2つのポリペプチド配列は、配列が、分子の規定の長さにわたって少なくとも約50%の配列同一性、好ましくは少なくとも約75%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約80% 85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、および最も好ましくは少なくとも約95% 98%の配列同一性を示す場合、互いに「実質的に相同」である。本明細書で使用される場合、実質的に相同とは、指定された配列に対する完全な同一性を示す配列も指す。一般に、「同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、それぞれ、正確なヌクレオチド対ヌクレオチド対応またはアミノ酸対アミノ酸対応を指す。パーセント同一性は、配列を整列させ、整列させた2つの配列間の正確な一致数をカウントし、より短い配列の長さで除し、その結果に100を乗じることにより2つの分子間の配列情報を直接比較することによって決定することができる。ペプチド解析のために、Smith and Waterman Advances in Appl.Math.2:482 489,1981の局所相同性アルゴリズムを採用したALIGN,Dayhoff,M.O.Atlas of Protein Sequence and Structure M.O.Dayhoff ed.,5 Suppl.3:353-358,National Biomedical Research Foundation,Washington,DC等の、容易に利用可能なコンピュータプログラムを知油して解析を補助することができる。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラム、例えば、同様にSmith and Watermanアルゴリズムに依存するBESTFIT、FASTAおよびGAPプログラムが、Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8(Genetics Computer Group,Madison,WIから入手可能)において利用可能である。これらのプログラムは、製造業者によって推奨され、上記に言及されるWisconsin Sequence Analysis Packageに記載されているデフォルトパラメータを用いて容易に利用される。例えば、参照配列に対する特定のヌクレオチド配列のパーセント同一性は、デフォルトのスコアリング表および6つのヌクレオチド位置のギャップペナルティを有するスミスおよびウォーターマンの相同性アルゴリズムを使用して決定することができる。
【0063】
本発明との関連においてパーセント同一性を確立する別の方法は、University of Edinburghに著作権があり、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokによって開発され、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,CA)によって配布しているプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。この一連のパッケージから、デフォルトパラメータ(例えば、ギャップ開始ペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ1、およびギャップ6)がスコアリング表に用いられるSmith-Watermanアルゴリズムが使用され得る。生成されたデータから、「マッチ」値が「配列同一性」を反映する。配列間のパーセント同一性または類似性を計算するのに適した他のプログラムは、一般に当該技術分野において既知であり、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータとともに使用されるBLASTである。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメータを用いて使用することができる:遺伝暗号=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予測=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;ソート=ハイスコア;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swiss Protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、容易に入手可能である。
【0064】
代替として、相同性は、相同領域間で安定な二本鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、続いて一本鎖特異的ヌクレアーゼ(複数可)による消化、および消化された断片のサイズ決定によって決定することができる。実質的に相同であるDNA配列は、例えば、その特定のシステムについて定義されるストリンジェントな条件下で、サザンハイブリダイゼーション実験において同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を定義することは、当該技術分野の範囲内である。例えば、Sambrook et al.(上記);DNAクローニング(上記);Nucleic Acid Hybridision(上記)を参照されたい。
【0065】
核酸分子を説明するために本明細書で使用される「組換え」とは、ゲノム起源、cDNA起源、ウイルス起源、半合成起源、または合成起源のポリヌクレオチドであって、その起源または操作によって、それが天然で会合しているポリヌクレオチドの全部または一部と会合しないポリヌクレオチドを意味する。タンパク質またはポリペプチドに関して使用される「組換え」という用語は、組換えポリヌクレオチドの発現によって産生されるポリペプチドを意味する。一般に、目的の遺伝子は、後にさらに記載するように、クローニングされ、次いで形質転換された生物において発現される。宿主生物は、発現条件下でタンパク質を産生するために外来遺伝子を発現する。
【0066】
「形質転換」という用語は、挿入に使用される方法に関わらず、宿主細胞への外因性ポリヌクレオチドの挿入を指す。例えば、直接取り込み、形質導入、またはf交配が含まれる。外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクターとして、例えば、プラスミドとして維持され得るか、または代替的に、宿主ゲノムに組み込むことができる。
【0067】
「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「細胞培養物」、および単細胞実体として培養される微生物または高等真核細胞株を示す他のこのような用語は、組換えベクターまたは他の転移DNAのレシピエントとして使用され得る、または使用されてきた細胞を指し、トランスフェクトされた元の細胞の元の子孫を含む。
【0068】
「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列(または「制御エレメント」)の制御下に置かれたときに、インビボで転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定することができる。コード配列は、限定されないが、ウイルス、原核生物または真核生物のmRNA由来のcDNA、ウイルスまたは原核生物のDNA由来のゲノムDNA配列、さらには合成DNA配列を含み得る。転写終結配列は、コード配列に対して3’側に位置し得る。
【0069】
典型的な「制御エレメント」としては、限定されないが、転写促進因子、転写エンハンサーエレメント、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳停止コドンに対して3’側に位置する)、翻訳開始の最適化配列(コード配列に対して5’側に位置する)、および翻訳終結配列が挙げられる。
【0070】
「作動可能に連結された」とは、そのように記載された構成要素が、それらの通常の機能を実行するように構成されるエレメントの配置を指す。したがって、コード配列に作動可能に連結された所与のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合、コード配列の発現に影響を及ぼし得る。プロモーターは、コード配列の発現を誘導するように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、プロモーター配列とコード配列との間に、未翻訳であるが転写された介在する配列が存在してもよく、それでもなおプロモーター配列は、コード配列に「作動可能に連結されている」と見なすことができる。
【0071】
「発現カセット」または「発現構築物」は、目的の配列(複数可)または遺伝子(複数可)の発現を誘導することができるアセンブリを指す。発現カセットは、概して、上記のように、目的の配列(複数可)または遺伝子(複数可)と(転写を誘導するために)作動可能に連結されたプロモーター等の制御エレメントを含み、多くの場合、ポリアデニル化配列も含む。本発明のある特定の実施形態において、本明細書に記載の発現カセットは、ドナーポリヌクレオチド、プラスミド、またはウイルスベクター構築物内に含まれ得る。発現カセットの構成要素に加えて、構築物は、1つ以上の選択マーカー、構築物が一本鎖DNAとして存在することを可能にするシグナル(例えば、M13複製起点)、少なくとも1つの複数のクローニング部位、および「哺乳動物」複製起点(例えば、SV40またはアデノウイルス複製起点)も含み得る。
【0072】
「精製されたポリヌクレオチド」は、そのポリペプチドが天然で会合しているタンパク質を実質的に含まない、例えば、該タンパク質を約50%未満、好ましくは約70%未満、より好ましくは少なくとも約90%未満を含有する、目的のポリヌクレオチドまたはその断片を指す。目的のポリヌクレオチドを精製するための技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、カオトロピック剤によるポリヌクレオチドを含有する細胞の破壊、ならびにイオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、および密度に応じた沈降によるポリヌクレオチド(複数可)およびタンパク質の分離を含む。
【0073】
「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAの取り込みを指すために使用される。細胞膜内に外因DNAが導入された場合、細胞は「トランスフェクション」されている。いくつかのトランスフェクション技術が、一般に、当該技術分野において既知である。例えば、Graham et al.(1973)Virology,52:456、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning,a laboratory manual,3rd edition,Cold Spring Harbor Laboratories,New York、Davis et al.(1995)Basic Methods in Molecular Biology,2nd edition,McGraw-Hill、およびChu et al.(1981)Gene 13:197を参照されたい。そのような技術は、1つ以上の外因DNA部分を好適な宿主細胞に導入するために使用され得る。この用語は、遺伝物質の安定した取り込みおよび一過性の取り込みの両方を指し、ペプチドまたは抗体結合DNAの取り込みを含む。
【0074】
「ベクター」は、核酸配列を標的細胞(例えば、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、粒子状担体、およびリポソーム)に移入することができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、および「遺伝子導入ベクター」は、目的の核酸の発現を誘導することができ、核酸配列を標的細胞に導入することができる任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにプラスミドおよびウイルスベクターを含む。
【0075】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供されている。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のために、そのような刊行物に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、独立して確認する必要があり得る。
【0076】
本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正が行われ得ることは、当業者には明白であろう。
【0077】
抗オステオポンチン抗体
オステオポンチンの1つ以上のエピトープに特異的に結合する抗オステオポンチン抗体が提供される。いくつかの実施形態において、抗オステオポンチン抗体は、トロンビン切断部位に特異的に結合し、オステオポンチンのトロンビン切断を阻害し、かつ/またはオステオポンチンのトロンビン切断断片(例えば、OPN-R断片またはOPN-CTF断片)に特異的に結合し、トロンビン切断断片の生物学的活性を低下させる。ある特定の実施形態において、抗オステオポンチン抗体は、オステオポンチンのArg168を含むエピトープに特異的に結合する。前述の番号付けは、ヒトオステオポンチンの参照アミノ酸配列(配列番号8)に対するものであり、他の種から得られたオステオポンチンタンパク質における対応する位置もまた、本開示によって包含されることが意図されることを理解されたい。
【0078】
本明細書で使用される「抗オステオポンチン抗体」という用語は、全長抗体、および抗体の抗原結合領域を含むその抗原結合断片、例えば、Fab、F(ab’)、もしくはF断片等の抗オステオポンチン抗体のCDRを含む分子、一本鎖可変断片(scFv)、または任意の他の種類の目的断片の抗体断片(上記の用語「抗体」の定義を参照)を包含する。主題の方法の実施において使用され得る抗オステオポンチン抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ハイブリッド抗体、改変抗体、キメラ抗体、およびヒト化抗体、ならびに:ハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winter et al.(1991)Nature 349:293-299および米国特許第4,816,567号を参照);F(ab’)およびF(ab)断片;F分子(非共有結合ヘテロ二量体、例えば、Inbar et al.(1972)Proc Natl Acad Sci USA 69:2659-2662、およびEhrlich et al.(1980)Biochem 19:4091-4096を参照);一本鎖Fv分子(sFv)(例えば、Huston et al.(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85:5879-5883を参照);ナノボディまたは単一ドメイン抗体(sdAb)(例えば、Wang et al.(2016)Int J Nanomedicine 11:3287-3303,Vincke et al.(2012)Methods Mol Biol 911:15-26を参照);二量体および三量体抗体断片構築物;ミニボディ(例えば、Pack et al.(1992)Biochem 31:1579-1584;Cumber et al.(1992)J Immunology 149B:120-126を参照);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534-1536;および英国特許公開台GB2,276,169号(1994年9月21日公開)を参照);ならびにそのような分子から得られる任意の機能性断片(そのような断片は親抗体分子の特異的結合特性を保持する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
ある特定の実施形態において、抗オステオポンチン抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1~7、配列番号9~12、および配列番号47からなる群から選択される配列を含むかまたはそれからなるオステオポンチンペプチドに特異的に結合する。
【0080】
ある特定の実施形態において、抗オステオポンチン抗体またはその抗原結合断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号33のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14もしくは配列番号18のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16もしくは配列番号20のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む軽鎖を含む。
【0081】
ある特定の実施形態において、抗オステオポンチン抗体またはその抗原結合断片は、配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号24のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む軽鎖を含む。
【0082】
ある特定の実施形態において、抗オステオポンチン抗体またはその抗原結合断片は、配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号45のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む重鎖を含む。
【0083】
トロンビン切断部位でオステオポンチンに、またはオステオポンチンのトロンビン切断断片(例えば、OPN-R断片またはOPN-CTF断片)に特異的に結合する抗体は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を用いて調製することができる。例えば、Coligan,Current Protocols in Immunology(1991);Harlow&Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(1988);Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2d ed.1986);およびKohler Milstein,Nature 256:495-497(1975)を参照されたい。例えば、オステオポンチンのトロンビン切断部位またはオステオポンチンのトロンビン切断断片(例えば、OPN-R断片またはOPN-CTF断片)を含むオステオポンチンのペプチド断片を含む抗原を使用して、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、またはヒト等の哺乳動物において免疫応答を誘発して、ポリクローナル抗体を産生することができる。免疫応答を誘発して抗オステオポンチン抗体を産生するために使用することができる例示的なペプチドとしては、配列番号1~7、配列番号9~12、および配列番号47からなる群から選択される配列を含むかまたはそれからなるオステオポンチンペプチドが挙げられるが、これらに限定されない(実施例も参照されたい)。必要であれば、抗原を、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン、およびキーホールリンペットヘモシアニン等の担体タンパク質にコンジュゲートすることができる。宿主種に応じて、様々なアジュバントを使用して免疫応答を増加させることができる。そのようなアジュバントとしては、限定されないが、フロイントアジュバント、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、および表面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロン酸ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノール)が挙げられる。ヒトに使用されるアジュバントの中では、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびCorynebacterium parvumが特に有用である。
【0084】
オステオポンチン抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体は、培養物中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いて調製することができる。これらの技術としては、限定されないが、ハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法、およびEBVハイブリドーマ法が挙げられる(Kohler et al.,Nature 256,495-97,1985;Kozbor et al.,J.Immunol.Methods 81,31 42,1985;Cote et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.80,2026-30,1983;Cole et al.,Mol.Cell Biol.62,109-20,1984)。
【0085】
加えて、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術である、適切な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るためのヒト抗体遺伝子に対するマウス抗体遺伝子のスプライシングも用いることができる(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.81,6851-55,1984;Neuberger et al.,Nature 312,604-08,1984;Takeda et al.,Nature 314,452-54,1985)。モノクローナル抗体および他の抗体は、抗体が治療的に使用される場合に、患者が抗体に対する免疫応答を開始することを防止するために「ヒト化」することもできる。そのような抗体は、治療に直接使用されるヒト抗体と配列が十分に類似し得るか、またはいくつかの重要な残基の改変を必要とし得る。げっ歯類抗体とヒト配列との間の配列差は、個々の残基の部位特異的突然変異誘発によって、または相補性決定領域全体のグラフティングによって、ヒト配列内の残基とは異なる残基を置き換えることにより最小限に抑えることができる。
【0086】
代替として、ヒト化抗体は、後述するように、組換え法を用いて作製することができる。特定の抗原に特異的に結合する抗体は、米国特許第5,565,332号に開示されているように、部分的または完全にヒト化された抗原結合部位を含有することができる。ヒトモノクローナル抗体は、Simmons et al.,PLoS Medicine 4(5),928-36,2007に記載されるようにインビトロで調製することができる。
【0087】
代替として、当該技術分野で既知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のために記載された技術を、特定の抗原に特異的に結合する一本鎖抗体を産生するように適合させることができる。関連する特異性を有するが、明確なイディオタイプ組成の抗体は、ランダムコンビナトリアル免疫グロビンライブラリからの鎖シャッフリングによって生成することができる(Burton,Proc.Natl.Acad.Sci.88,11120-23,1991)。一本鎖抗体はまた、ハイブリドーマcDNAを鋳型として使用して、PCR等のDNA増幅法を用いて構築することもできる(Thirion et al.,Eur.J.Cancer Prev.5,507-11,1996)。一本鎖抗体は、単一特異性または二重特異性であり得、二価または四価であり得る。四価の二重特異性一本鎖抗体の構築は、例えば、Coloma&Morrison,Nat.Biotechnol.15,159-63,1997に教示されている。二価の二重特異性一本鎖抗体の構築は、Mallender&Voss,J.Biol.Chem.269,199-206,1994に教示されている。
【0088】
一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列は、後述するように、手動または自動ヌクレオチド合成を用いて構築し、標準的な組換えDNA法を用いて発現構築物にクローニングし、細胞に導入してコード配列を発現させることができる。代替として、一本鎖抗体は、例えば、繊維状ファージ技術を用いて直接産生することができる(Verhaar et al.,Int.J Cancer 61,497-501,1995;Nicholls et al.,J.Immunol.Meth.165,81-91,1993)。
【0089】
オステオポンチン抗原に特異的に結合する抗体は、リンパ球集団におけるインビボ産生を誘導することによって、または文献に開示されるように、免疫グロブリンライブラリーもしくは高度に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることによっても産生され得る(Orlandi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.86,3833 3837,1989;Winter et al.,Nature 349,293 299,1991)。
【0090】
キメラ抗体は、WO93/03151に開示されているように構築することができる。免疫グロブリンに由来し、WO94/13804に記載されている「ダイアボディ」等の多価かつ多特異性である結合タンパク質も調製することができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、Bリンパ球からの抗オステオポンチン抗体は、血液ドナーから得られ、クローニングされる。可変ドメイン相補性決定領域(例えば、Fab)を含有する抗体の軽鎖および重鎖またはその断片をコードする核酸を、PCRによって増幅し、ベクターにクローニングすることができる。ScFv抗体は、1つのオープンリーディングフレーム内のリンカーを介して軽鎖および重鎖を接続する構築物をベクター内にクローニングすることによって生成することができる。血液ドナーは、任意の種のドナーであり得る。いくつかの実施形態において、ヒト血液ドナーは、ヒト抗体の生成に使用される。他の実施形態において、ラクダ科の血液ドナーは、ラクダ科動物の抗体の生成に使用される。ラクダ科動物の抗体は、例えば、ドロメダルラクダ、バクトリアンラクダ、ラマ、およびアルパカに由来し得る。そのようなラクダ科動物は、軽鎖を欠く独自の種類の抗体を産生する。重鎖抗体(HCAb)またはその可変ドメイン断片(例えば、単一ドメイン抗体またはナノボディ)も、主題の方法に使用することができる(例えば、Vincke et al.(2012)Methods Mol.Biol.911:15-26,Krah et al.(2016)Immunopharmacol.Immunotoxicol.38(1):21-8(参照により本明細書に組み込まれる)を参照)。
【0092】
抗体は、当該技術分野で周知の方法によって精製することができる。例えば、抗体は、関連する抗原が結合するカラムを通過させることによって親和性を精製することができる。次いで、結合した抗体を、高い塩濃度の緩衝液を使用してカラムから溶出することができる。
【0093】
キメラおよびヒト化抗体
好適な抗オステオポンチン抗体としては、そのような抗体の完全ヒト化抗体、ヒト化、またはキメラバージョンが挙げられる。例えば、ヒト化抗体は、抗原性が低いため、ヒトにおけるインビボ用途に有用である。同様に、イヌ化、ネコ化等を行った抗体は、それぞれ、イヌ、ネコ、および他の種における用途に有用である。目的の抗体としては、ヒト化抗体、またはイヌ化、ネコ化、ウマ化、ウシ化、ブタ化等を行った抗体、およびそれらの変異体が挙げられる。
【0094】
非ヒト(例えば、マウス)モノクローナル抗体の可変Igドメインがヒト定常Igドメインに融合されたキメラモノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の標準的な手順を使用して生成することができる(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6841-6855(1984)、およびBoulianne et al,Nature 312,643-646,(1984)を参照)。
【0095】
ヒト化抗体は、例えば、以下を含む様々な方法によって達成され得る:(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークおよび定常領域上にグラフトすること(当該技術分野において「CDRグラフティング」によるヒト化と称されるプロセス)、(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによりそれらをヒト様表面で「覆う」すること(当該技術分野において「ベニヤ化」と称されるプロセス)、または(3)抗原結合またはタンパク質折り畳みのいずれかに有害作用を及ぼす可能性は低いが、ヒト環境における免疫原性を低下させる可能性が高いと判定された位置でヒトアミノ酸を置換すること(例えば、HUMAN ENGINEERING)。本開示において、ヒト化抗体は、「ヒト化」、「ベニヤ化」、および/または「HUMAN ENGINEERED」抗体を含み得る。これらの方法は、例えば、Jones et al.,Nature 321:522 525(1986);Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,81:6851-6855(1984);Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65-92(1988);Verhoeyer et al.,Science 239:1534-1536(1988);Padlan,Molec.Immun.28:489-498(1991);Padlan,Molec.Immunol.31:169-217(1994);Studnicka et al.米国特許第5,766,886号;Studnicka et al.,(Protein Engineering 7:05-814,1994;Co et al.,J.Immunol.152,2968-2976(1994);Riechmann,et al.,Nature 332:323-27(1988);およびKettleborough et al.,Protein Eng.4:773-783(1991)に開示されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
CDRグラフティングは、マウス重鎖および軽鎖可変Igドメインの6つのCDRのうちの1つ以上を、ヒト可変Igドメインの適切な4つのフレームワーク領域に導入することを伴う。この技法(Riechmann,et al.,Nature 332:323-27(1988)を参照)は、保存されたフレームワーク領域(FR1-FR4)を足場として利用して、抗原との主要な接触点であるCDRループを支持する。しかしながら、CDRグラフティングの欠点は、フレームワーク領域のアミノ酸が抗原結合に寄与し得るため、およびCDRループのアミノ酸が2つの可変Igドメインの会合に影響を及ぼし得るために、元のマウス抗体よりもかなり低い結合親和性を有するヒト化抗体をもたらし得ることである。ヒト化モノクローナル抗体の親和性を維持するために、元のマウス抗体のフレームワーク領域に最もよく似たヒトフレームワーク領域を選択することによって、および抗原結合部位のコンピュータモデリングを利用したフレームワークまたはCDR内の単一アミノ酸の部位特異的突然変異誘発によって、CDR移植技術を改善することができる(例えば、Co et al.,J.Immunol.152,2968-2976(1994))。
【0097】
抗体断片
抗オステオポンチン抗体は、抗体断片の形態であり得る。抗体断片は、インタクトな全長抗体の一部を含み、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含み得る。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、二重特異性抗体、三重特異性抗体等の多重特異性抗体断片(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、および抗体断片から形成される他のポリペプチドが挙げられる。例えば、Holliger&Hudson(Nat.Biotech.23:1126-36(2005))を参照されたい。
【0098】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有するVL、VH、CL、およびCHドメインからなる一価断片である、「Fab」断片と称される2つの同一の抗原結合断片と、その名前が容易に結晶化する能力を反映する残りの「Fc」断片とを産生する。ペプシン処理によって、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合された2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片がもたらされ、これらは抗体のVHおよびVLドメインを含む2つの「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片を有し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。Fvポリペプチドは、VHとVLドメインとの間に、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含むことができ、その結果として一本鎖抗体(scFv)がもたらされ、VLおよびVH領域が合成リンカーを介して一価分子を形成するように対合し、それらが単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする(Bird et al.,Science 242:423-426,1988,and Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883,1988)。ScFvの概説については、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.1 13,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。Fd断片は、VHおよびCH1ドメインからなる。
【0099】
さらなる抗体断片は、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,Nature 341:544-546,1989)を含む。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作製する二価抗体である(例えば、EP 404,097;WO 93/11161;Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448,1993、およびPoljak et al.,Structure 2:1121-1123,1994を参照)。ダイアボディは、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0100】
抗オステオポンチン抗体の産生方法
上記で考察したように、本開示は、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的に結合する抗体を提供し、抗体は、オステオポンチンのトロンビン切断、またはオステオポンチンのトロンビン切断断片とインテグリンおよび/もしくは他の細胞受容体との相互作用を阻害する。抗オステオポンチン抗体の例示的な作製方法を以下に示す。
【0101】
抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組み合わせの使用を含む、当該技術分野で既知の多種多様な技術を用いて調製することができる。例えば、抗体は、ファージディスプレイの方法を用いて作製および単離され得る。抗体はまた、全タンパク質およびその断片を包含するオステオポンチンを含む免疫原性組成物で免疫された動物宿主の血清から単離されてもよい。例示的な抗体としては、オステオポンチンに特異的に結合することができる単離された抗体(例えば、オステオポンチンのトロンビン切断部位)またはオステオポンチンのトロンビン切断断片が挙げられる。
【0102】
ファージディスプレイパニングのためにウェルをコーティングする抗原、または本開示の抗体を誘発するために使用される免疫原性組成物は、1つ以上の抗原の凝集体を含み得る。この方法は、凝集体を形成するために抗原を凝集条件に曝露することを含み得る。したがって、上述の産生方法は、単離された抗原の凝集体を形成するステップをさらに含み得る。凝集条件の例としては、加熱、凝集を促進する賦形剤の添加等が挙げられる。
【0103】
ファージパニングのためにウェルをコーティングするために、または本開示の抗体を誘発するために使用される抗原は、別の分子にコンジュゲートされ得る。例えば、抗原は、特定の細胞(例えば、がん細胞、心筋細胞等)または細胞位置(例えば、形質膜、リソソーム、エンドソーム、ミトコンドリア等)、組織、または他の身体位置(例えば、血液、特定の器官、腫瘍等)を標的とすること等によって、溶解性、貯蔵または他の取り扱い特性、細胞透過性、半減期、放出および/または分布を助けるペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物等の第2の分子にコンジュゲートされ得る。
【0104】
第2の分子にコンジュゲートされた抗原の特定の実施形態は、第2の分子が免疫調節剤である場合である。「免疫調節剤」は、免疫応答を直接的または間接的に変化させる分子である。特定のクラスの免疫調節剤は、免疫応答を刺激するか、または刺激を補助するものを含む。例としては、抗原、および破傷風トキソイドを含む毒素またはその誘導体等の抗原担体が挙げられる。
【0105】
ファージディスプレイ
ファージディスプレイは、タンパク質相互作用のハイスループットスクリーニングに使用される。ファージは、レパートリーまたは組み合わせ抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示するために利用され得る。オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、例えば、標識されたオステオポンチン、または固体表面もしくはビーズに結合したもしくは捕捉されたオステオポンチンを用いて、選択または同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、典型的には、Fab、Fv(軽鎖または重鎖からの個々のFv領域)、またはファージ遺伝子IIIもしくは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えによって融合されたジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現されたfdおよびM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。例示的な方法は、例えば、EP 368 684 B1;米国特許第5,969,108号、Hoogenboom,H.R.and Chames,Immunol.Today 2000,21:371;Nagy et al.Nat.Med.2002,8:801;Huie et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2001,98:2682;Lui et al.,J.Mol.Biol.2002,315:1063に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの刊行物(例えば、Marks et al.,Bio/Technology 1992,10:779-783)は、鎖シャッフリングによる高親和性ヒト抗体の産生、ならびに大きなファージライブラリーを構築するための戦略として、コンビナトリアル感染およびインビボ組換えについて記載している。別の実施形態において、リボソームディスプレイを使用して、ディスプレイプラットフォームとしてのバクテリオファージを置き換えることができる(例えば、Hanes et al.,Nat.Biotechnol.2000,18:1287;Wilson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2001,98:3750;またはIrving et al.,J.Immunol.Methods 2001,248:31を参照)。細胞表面ライブラリーを抗体についてスクリーニングしてもよい(Boder et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2000,97:10701;Daugherty et al.,J.Immunol.Methods 2000,243:211)。そのような手順は、モノクローナル抗体の単離およびその後のクローニングのための従来のハイブリドーマ技術に対する代替手段を提供する。
【0106】
ファージディスプレイ方法では、機能的抗体ドメインが、それらをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面上に提示される。例えば、重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)領域をコードするDNA配列は、動物cDNAライブラリー(例えば、リンパ組織のヒトまたはマウスcDNAライブラリー)または合成cDNAライブラリーから増幅されるか、またはそうでなければ単離される。VHおよびVL領域をコードするDNAは、PCRによりscFvリンカーによって一緒に結合され、ファージミドベクター(例えば、p CANTAB 6またはpComb 3 HSS)にクローニングされ得る。ベクターはE.coliにエレクトロポレーションされ、E.coliにヘルパーファージを感染させる。VHまたはVL領域は、通常、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかに組換えによって融合される。目的の抗原(例えば、オステオポンチンのセリンプロテアーゼドメイン)に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、例えば、標識された抗原、または固体表面もしくはビーズに結合したもしくは捕捉された抗原を用いて、抗原で選択または同定することができる。
【0107】
抗体を作製するために使用され得るファージディスプレイ法のさらなる例としては、PCT出願第PCT/GB91/01134号、PCT公報第WO90/02809号、第WO91/10737号、第WO92/01047号、第WO92/18619号、第WO93/11236号、第WO95/15982号、第WO95/20401号、および米国特許第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,427,908号、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号、および第5,969,108号に開示されているものが挙げられ、これらのそれぞれが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
上記の参考文献に記載されるように、ファージ選択後、ファージからの抗体コード領域を単離し、ヒト抗体を含む全抗体、または任意の他の所望の抗原結合断片を生成するために使用し、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含む任意の所望の宿主において発現させることができる。例えば、PCT公開WO92/22324;Mullinax et al.,BioTechniques 1992,12:864-869;およびSawai et al.,AJRI 1995,34:26-34;およびBetter et al.,Science 1988,240:1041-1043(上記参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる)に開示されるもの等の当該技術分野で既知の方法を用いて、Fab、Fab’、およびF(ab’)断片を組換えによって産生する技術を利用することもできる。
【0109】
免疫および抗体産生
宿主動物において抗体を誘発する方法は、有効量のオステオポンチンまたはその断片を抗原として宿主動物(すなわち、マウス、ウサギもしくはモルモット等の好適な哺乳動物、ニワトリ等の好適な鳥類、またはラクダ科動物)に投与して、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的に結合する抗体の産生を誘発することを含む。宿主動物において免疫応答を誘発して抗オステオポンチン抗体を産生するために使用され得る例示的な免疫原性ペプチドとしては、配列番号5~7、配列番号9~12、および配列番号47からなる群から選択される配列を含むかまたはそれからなる免疫原性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない(実施例も参照されたい)。使用されるアジュバント、ブースタースケジュール、注射部位、好適な動物等を含む動物の免疫方法は、当該技術分野で十分に理解されており(例えば、Harlow et al.(Antibodies:Laboratory Manual,First Edition(1988)Cold spring Harbor,N.Y.)、動物への生細胞の投与は、いくつかの哺乳動物および鳥類について記載されている(例えば、McKenzie et al(Oncogene 4:543-8,1989)、Scuderi et al(Med.Oncol.Tumor Pharmacother 2:233-42,1985)、Roth et al(Surgery 96:264-72,1984)およびDrebin et al(Nature 312:545-8,1984)。次に、抗体産生細胞の集団を生成する。一実施形態において、細胞集団は、当業者に周知のハイブリドーマ法を用いて産生される(例えば、Harlow Antibodies:A Laboratory Manual,First Edition(1988)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照)。細胞を、細胞培養において無制限に複製することが可能な骨髄腫細胞または形質転換細胞等の不死化細胞に融合させ、それによって不死の免疫グロブリン分泌細胞株を産生する。用いられる不死の細胞株は、ある特定の栄養素の利用に必要な酵素が欠損しているように選択することができる。多くのそのような細胞株(骨髄腫等)は、当業者に既知であり、例えば、チミジンキナーゼ(TK)またはヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)を含む。これらの欠損は、例えば、ヒポキサンチンアミノプテリンチミジン培地(HAT)上で成長する能力に応じて、融合細胞の選択を可能にする。代替の実施形態において、モノクローナル抗体を発現する細胞集団は、ファージディスプレイ法を用いて作製され得る。
【0110】
抗オステオポンチン抗体の抗原結合断片を含む抗オステオポンチン抗体も、遺伝子工学によって産生され得る。この技術では、標準的なハイブリドーマ手順と同様に、抗体産生細胞を所望の抗原または免疫原に感作させる。免疫脾細胞またはハイブリドーマから単離されたメッセンジャーRNAが、PCR増幅を用いてcDNAを作製するための鋳型として使用される。増幅された免疫グロブリンcDNAの適切な切片を発現ベクターに挿入することによって、初期抗原特異性を保持する1つの重鎖遺伝子および1つの軽鎖遺伝子をそれぞれ含有するベクターのライブラリーが産生される。コンビナトリアルライブラリーは、重鎖遺伝子ライブラリーと軽鎖遺伝子ライブラリーとを組み合わせることによって構築することができる。これにより、(抗体分子のFab断片または抗原結合断片に類似する)重鎖および軽鎖を共発現するクローンのライブラリーが得られる。これらの遺伝子を担持するベクターが、宿主(例えば、細菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞、または他の好適なタンパク質産生宿主細胞)にコトランスフェクトされる。トランスフェクトされた宿主において抗体遺伝子合成を誘導さすると、重鎖および軽鎖タンパク質が自己組織化して、抗原または免疫原でスクリーニングすることによって検出することができる活性抗体を生成する。
【0111】
ファージパニングおよびスクリーニング
抗体産生細胞またはファージの集団が産生されると、抗体は、様々なアッセイの1つまたは組み合わせを用いてスクリーニングされる。概して、これらのアッセイは機能アッセイであり、抗体の結合親和性または特異性を検出するアッセイ、およびプロセスを初期化または阻害する抗体の能力を検出するアッセイにグループ分けされ得る。
【0112】
例えば、抗原は、ビーズまたはウェルまたは他の固体支持体に結合され、目的の抗体を提示するファージとともにインキュベートされる。洗浄後、結合したファージを、次いで対数期E.coli細胞の接種によって回収する。細胞をヘルパーファージで成長および拡張させる。緊密に結合したファージの増幅のためにステップを繰り返す。数ラウンドの濃縮後、ファージ感染E.coliコロニーを採取し、Fab抗体をペリプラズム画分から精製する。次いで、精製された抗体を、当該技術分野で既知の方法に従って分析する。ある特定の例示的な例を以下に詳述する。
【0113】
ファージ感染細胞またはハイブリドーマから単離された抗体の集団を、インビトロまたはインサイツ(例えば、細胞上)で、複数の抗原のうちの単一の抗原(すなわち、複数の抗原の他の抗原と混合されていない抗原)への結合についてさらに分析および/またはスクリーニングする。免疫特異的結合は、当該技術分野において日常的かつ既知の方法に従って行われ得る。使用することができるイムノアッセイとしては、ほんの数例を挙げると、限定されないが、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射線測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ、およびプロテインAイムノアッセイ等の技術を用いた競合および非競合のアッセイシステムが挙げられる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ausubel et al,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkを参照されたい。
【0114】
本開示の抗体は、インビボでスクリーニングすることもできる。この方法は、疾患または状態(すなわち、オステオポンチン関連障害)のために抗オステオポンチン抗体を動物モデルに投与することと、モデル動物の疾患または状態に対する抗体の効果を決定することとを含む。本発明のインビボアッセイは対照を含み、好適な対照は、抗体の非存在下で試料を含む。一般に、複数のアッセイ混合物を並行して異なる抗体濃度で実施して、様々な濃度に対する差次的反応を得る。典型的には、これらの濃度のうちの1つは、陰性対照として、すなわち、ゼロ濃度または検出レベル未満で機能する。
【0115】
目的のモノクローナル抗体は、抗体の非存在下で対照と比較した場合、動物モデルの疾患または状態の症状を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上調節する、すなわち低減するまたは増加する抗体である。一般に、目的のモノクローナル抗体は、対象動物を、疾患または状態に罹患していない同等の動物により類似させる。本発明の方法および組成物を使用して同定された治療的価値を有する抗体は、「治療用」抗体と称される。
【0116】
目的の選択されたモノクローナル抗体は、日常的な組織培養方法を用いてインビトロで、または哺乳動物対象を用いてインビボで増殖させることができる。例えば、プリスタンでプライミングされたマウスは、腹水産生のために、PBS中の対数期ハイブリドーマ細胞を接種することができる。腹水は、さらなる精製の前に-70℃で保存することができる。
【0117】
スクリーニングの方法
本開示によって提供されるスクリーニング方法は、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的に結合する抗体をスクリーニングするためのファージライブラリーの使用を含み得、任意選択的に、本明細書に記載される追加の特徴のいずれかを有する(例えば、オステオポンチンのトロンビン切断またはオステオポンチンのトロンビン切断断片へのインテグリン結合を阻害する)。結合剤は、オステオポンチンの強力な阻害および/またはその特異的結合親和性のために選択され得る。方法は、上記のファージ提示方法に従って実行され得る。
【0118】
簡単に述べると、オステオポンチンまたはその断片は、疎水性吸着、ビオチン-アビジン相互作用、およびNi2+-6×His相互作用等の共有結合または非共有相互作用によって、ELISAプレート上またはビーズ上に固定化することができる。次いで、ファージライブラリーを固定化した抗原/プロテアーゼとともにインキュベートし、洗浄し、回収する。パニングおよび選択の間、結合したファージがE.coliにおいて回収され、増幅される。複数の連続した選択ラウンドにより、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的な抗体として作用するポリペプチドを提示するファージの選択を確実にする。洗浄のストリンジェンシーは、数回のラウンド(例えば、3回)にわたって増加する。回収されたファージの特異性を増加させるために、当該技術分野で周知の多くの技術が用いられ得る。例としては、洗浄時間の増加、洗剤剤濃度の増加、塩濃度の増加、および既知の巨大分子阻害剤(例えば、小ペプチド基質、BPTI、エコチン、および/または以前に同定された抗体阻害剤)の包含が挙げられる。阻害抗体の同定には、ELISAおよび阻害アッセイが含まれ得る。抗オステオポンチン抗体を選択および単離する方法で実行されるアッセイの詳細については上述している。
【0119】
また、本明細書に記載される候補抗オステオポンチン抗体をコードする核酸構築物のライブラリーも本開示によって企図される。ライブラリーは、共通の1つ以上のポリペプチド領域(例えば、少なくとも1つの重鎖または軽鎖CDR)と、集団間で変化する少なくとも1つの他のポリペプチド領域とを有し得る複数の候補抗オステオポンチン抗体をコードする。
【0120】
抗オステオポンチン抗体をコードする核酸、ベクター、およびベクター系
ある特定の実施形態において、抗オステオポンチン抗体重鎖および軽鎖、またはその抗体断片(例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、F断片、またはscFv断片)は、ベクターから産生される。「ベクター」は、目的の核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる組成物である。抗体軽鎖および/または重鎖、またはそれらの断片をコードするポリヌクレオチドは、単一のベクターを用いて、または別個のベクター(すなわち、ベクター系)で細胞内に導入することができる。抗オステオポンチン抗体を産生する構築物の能力は、経験的に決定することができる。
【0121】
限定されないが、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含む多数のベクターが、当該技術分野で既知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを含む。ウイルスベクターの例としては、限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられる。発現構築物は、生細胞で複製され得るか、または合成的に作製され得る。本出願の目的のために、「発現構築物」、「発現ベクター」、および「ベクター」という用語は、一般的で例示的な意味において本発明の適用を示すために互換的に使用され、本発明を限定することを意図するものではない。
【0122】
一実施形態において、抗オステオポンチン抗体を発現するための発現ベクターは、抗オステオポンチン重鎖および/または軽鎖、またはその断片(例えば、それらの可変ドメインCDRを含む)をコードするポリヌクレオチドに「作動可能に連結された」プロモーターを含む。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」または「転写制御下で」という語句は、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するために、ポリヌクレオチドに関して正しい位置および配向にあることを意味する。
【0123】
ある特定の実施形態において、目的のポリヌクレオチドをコードする核酸は、プロモーターの転写制御下にある。「プロモーター」は、遺伝子の特異的な転写を開始するために必要な、細胞の合成機構によって認識されるか、または合成機構に導入されるDNA配列を指す。プロモーターという用語は、RNAポリメラーゼI、II、またはIIIの開始部位の周囲にクラスター化された転写制御モジュール群を指すために本明細書において使用される。哺乳動物細胞発現のための典型的なプロモーターとしては、とりわけ、SV40初期プロモーター、CMV即時初期プロモーター等のCMVプロモーター(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,168,062号および第5,385,839号を参照)、マウス乳房腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、および単純ヘルペスウイルスプロモーター等が挙げられる。マウスメタロチオネイン遺伝子に由来するプロモーター等の他の非ウイルスプロモーターもまた、哺乳動物の発現に使用される。これらおよび他のプロモーターは、当該技術分野で周知の技術を用いて、市販されているプラスミドから得ることができる。例えば、Sambrook et al.(上記)を参照されたい。エンハンサーエレメントは、構築物の発現レベルを増加させるために、プロモーターと関連して使用され得る。例としては、Dijkema et al.,EMBO J.(1985)4:761に記載されているようなSV40初期遺伝子エンハンサー、Gorman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1982b)79:6777に記載されているようなラウス肉腫ウイルスの末端反復配列(LTR)に由来するエンハンサー/プロモーター、、およびBoshart et al.,Cell(1985)41:521に記載されているようなヒトCMVに由来するエレメント、例えば、CMVイントロンA配列に含まれるエレメントが挙げられる。
【0124】
典型的には、転写ターミネーター/ポリアデニル化シグナルも発現構築物中に存在する。そのような配列の例としては、限定されないが、Sambrook et al.(上記)に記載されているようなSV40に由来するもの、およびウシ成長ホルモン末端配列が挙げられる(例えば、米国特許第5,122,458号を参照)。さらに、5’-UTR配列は、それらの発現を増強するために、コード配列に隣接して配置することができる。そのような配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)を含むUTRを含み得る。
【0125】
IRESの包含は、ベクターからの1つ以上のオープンリーディングフレームの翻訳を可能にする。IRESエレメントは、真核生物のリボソーム翻訳開始複合体を誘引し、翻訳開始を促進する。例えば、Kaufman et al.,Nuc.Acids Res.(1991)19:4485-4490;Gurtu et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.(1996)229:295-298;Rees et al.,BioTechniques(1996)20:102-110;Kobayashi et al.,BioTechniques(1996)21:399-402;およびMosser et al.,BioTechniques(1997 22 150-161を参照されたい。多数のIRES配列が既知であり、多種多様なウイルスに由来する配列、例えば、脳心筋炎ウイルス(EMCV)UTR等のピコルナウイルスのリーダー配列(Jang et al.J.Virol.(1989)63:1651-1660)、ポリオリーダー配列、A型肝炎ウイルスリーダー、C型肝炎ウイルスIRES、ヒトライノウイルス2型IRES(Dobrikova et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(2003)100(25):15125-15130)、を参照されたい)、口蹄疫ウイルス由来のIRESエレメント(Ramesh et al.,Nucl.Acid Res.(1996)24:2697-2700)、ジアルジアウイルスIRES(Garlapati et al.,J.Biol.Chem.(2004)279(5):3389-3397)等が挙げられる。限定されないが、酵母由来のIRES配列、ならびにヒトアンジオテンシンIIの1受容体IRES(Martin et al.,Mol.Cell Endocrinol.(2003)212:51-61)、線維芽細胞成長因子IRES(FGF-1 IRESおよびFGF-2 IRES、Martineau et al.(2004)Mol.Cell.Biol.24(17):7622-7635)、血管内皮成長因子IRES(Baranick et al.(2008)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.105(12):4733-4738、Stein et al.(1998)Mol.Cell.Biol.18(6):3112-3119、Bert et al.(2006)RNA 12(6):1074-1083)、およびインスリン様成長因子2 IRES(Pedersen et al.(2002)Biochem.J.363(Pt 1):37-44)を含む様々な非ウイルスIRES配列も本明細書で使用される。これらのエレメントは、例えば、Clontech(Mountain View,CA)、Invivogen(San Diego,CA)、Addgene(Cambridge,MA)およびGeneCopoeia(Rockville,MD)によって市販されているプラスミドで容易に市販される。また、実験的に検証されたIRES構造のデータベースであるIRESite(iresite.org)も参照されたい。IRES配列は、例えば、抗オステオポンチン抗体重鎖またはその断片を、発現カセットからの抗オステオポンチン抗体軽鎖またはその断片と組み合わせて発現するために、ベクターに含まれ得る。
【0126】
代替として、ウイルスT2Aペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用して、単一のベクターから複数のタンパク質産物(例えば、抗オステオポンチン抗体軽鎖またはその断片と組み合わせた抗オステオポンチン抗体重鎖またはその断片)の産生を可能にすることができる。2Aリンカーペプチドは、マルチシストロン性構築物のコード配列間に挿入される。自己切断性である2Aペプチドは、マルチシストロン性構築物からの共発現タンパク質が等モルレベルで産生されることを可能にする。限定されないが、口蹄疫ウイルス、ウマ鼻炎Aウイルス、Thosea asignaウイルス、およびブタテッショウウイルス-1に由来する2Aペプチドを含む、様々なウイルス由来の2Aペプチドが用いられ得る。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Kim et al.(2011)PLoS One 6(4):e18556、Trichas et al.(2008)BMC Biol.6:40、Provost et al.(2007)Genesis 45(10):625-629、Furler et al.(2001)Gene Ther.8(11):864-873を参照されたい。
【0127】
1つ以上のベクターを含む発現ベクターまたはベクター系を使用して、単離された細胞、細胞株、または細胞集団を形質転換することができ、目的の遺伝子産物(例えば、抗体軽鎖および重鎖、またはそれらの断片)は、単数または複数の細胞によって選択的に発現される。いくつかの実施形態において、抗オステオポンチン抗体が産生され、分泌される。形質転換された細胞は抗体を周囲の媒体に分泌する。ある特定の調節配列は、例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)リーダー配列、インターフェロン(γまたはα)シグナル配列、または既知の分泌タンパク質由来の他のシグナルペプチド配列を使用して、分泌を増強するためにベクターに含まれ得る。次いで、分泌された抗体は、例えば、限定されないが、ヒドロキシアパタイト樹脂、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、HPLC、免疫吸着技術、親和性クロマトグラフィー、免疫沈降等の標準的な精製技術を用いて、本明細書に記載される様々な技術によって単離され得る。
【0128】
代替として、タンパク質は分泌されず、形質転換された細胞は、細胞を溶解するが、組換えタンパク質を実質的にインタクトな状態に保つ、化学的、物理的または機械的手段を使用して破壊される。細胞内タンパク質はまた、ポリペプチドの漏出が生じるように、例えば、洗浄剤または有機溶媒の使用によって、細胞膜から成分を除去することによっても得ることができる。そのような方法は、当業者に既知であり、例えば、Protein Purification Applications:A Practical Approach,(Simon Roe,Ed.,2001)に記載されている。
【0129】
例えば、細胞を破壊する方法としては、限定されないが、超音波処理(sonicationまたはultrasonication);撹拌;液体または固体押出;熱処理;凍結融解;乾燥;爆発的減圧;浸透圧衝撃;トリプシン、ノイラミニダーゼおよびリゾチーム等のプロテアーゼを含む溶解酵素による処理;アルカリ処理;ならびに胆汁酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、トリトン、NP40およびCHAPS等の洗浄剤および溶媒の使用が挙げられる。細胞を破壊するために用いられる特定の技術は、主に選択の問題であり、ポリペプチドが発現される細胞型、培養条件、および用いられる任意の前処理に依存するであろう。
【0130】
細胞の破壊に続いて、一般に遠心分離によって細胞残屑が除去され、限定されないが、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、HPLC、免疫吸着技術、親和性クロマトグラフィー、免疫沈降等の標準的な精製技術を用いて、細胞内で産生されたポリペプチドがさらに精製される。
【0131】
重鎖および軽鎖、またはその断片を含む抗体は、例えば、プロテインA親和性クロマトグラフィー、抗オステオポンチン重鎖または軽鎖エピトープ)に結合する抗体を使用する免疫親和性クロマトグラフィー、または固定化されたオステオポンチン抗原を用いた抗原特異的親和性クロマトグラフィーによって、親和性精製を用いて精製することができる。好適な親和性樹脂の選択は、当該技術分野の範囲内である。親和性精製後、発現抗体は、当該技術分野で周知の従来技術を用いて、例えば、上述の技術のいずれかによってさらに精製され得る。
【0132】
抗体コンジュゲート
抗オステオポンチン抗体はまた、治療および診断(例えば、インビボイメージング等)用途でも使用される。例えば、そのような抗体は、治療剤(例えば、細胞傷害性ペイロード)または標識剤(例えば、インビボイメージング剤)等のペイロードにコンジュゲートされ得、抗体がオステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に結合すると、治療剤または標識剤は、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片のレベルが上昇した標的細胞(例えば、オステオポンチンを過剰発現するがん細胞)に選択的に送達される。オステオポンチンを過剰発現する細胞に対する治療剤またはイメージング剤の選択的標的化は、非標的細胞の治療剤への望ましくない曝露を低減し、投与時の毒性を低減することができる。さらに、イメージング用途(例えば、診断、予後、および/または任意の他の目的のためのインビボイメージング)では、オステオポンチンを過剰発現する細胞への抗体の選択的結合は、そのような細胞内でイメージング剤を濃縮し、それによって、得られる画像のシグナル対ノイズ比および診断/予後値を増加させる。
【0133】
したがって、本明細書に記載の任意の抗オステオポンチン抗体は、非コンジュゲート形態であってもよいか、または治療剤および/もしくはイメージング化(例えば、診断)剤等の薬剤に直接コンジュゲートされてもよいか、またはそのような他の治療剤もしくはイメージング剤を含む担体ポリマーに間接的にコンジュゲートされてもよい。
【0134】
いくつかの実施形態において、抗体は、細胞傷害性薬剤、例えば、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)にコンジュゲートされる。好適な化学療法剤としては、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、およびビンデシンが挙げられる(Rowland et al.,(1986)上記)。好適な毒素としては、ジフテリア毒素等の細菌毒素;リシン等の植物毒素;ゲルダナマイシン等の小分子毒素(Mandler et al J.Natl.Cancer Inst.92(19):1573-81(2000);Mandler et al.,Bioorg.Med.Chem.Letters 10:1025-1028(2000);Mandler et al.,Bioconjugate Chem.13.786-91(2002))、マイタンシノイド(EP 1391213;Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618-23(1996))、アウリスタチン(Doronina et al.,Nat.Biotech.21:778-84(2003)およびカリケアマイシンLode et al.,Cancer Res.58:2928(1998);Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993))が挙げられる。
【0135】
抗体は、放射性同位体、親和性標識(ビオチン、アビジン等)、酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、蛍光標識または発光標識または生物発光標識(FITCまたはローダミン等)、常磁性原子等の使用を通して検出可能に標識され得る。そのような標識を達成するための手順は既知である。例えば、(Sternberger,L.A.et al.,J.Histochem.Cytochem.18:315(1970);Bayer,E.A.et al.,Meth.Enzym.62:308(1979);Engval,E.et al.,Immunol.109:129(1972);Goding,J.W.J.Immunol.Meth.13:215(1976))を参照されたい。
【0136】
ある特定の態様において、本開示の抗オステオポンチン抗体コンジュゲートのイメージング剤は、近赤外線(NIR)光学イメージング、単光子放射線コンピュータ断層撮影(SPECT)/CTイメージング等のインビボイメージングに使用されるイメージング剤である。そのような用途に使用される標識剤としては、限定されないが、蛍光標識および放射性同位体等が挙げられる。ある特定の態様において、標識剤は、2つ以上のイメージング手法を用いてインビボイメージングを可能にするマルチモーダルインビボイメージング剤である(例えば、Thorp-Greenwood and Coogan(2011)Dalton Trans.40:6129-6143を参照)。
【0137】
抗体部分のコンジュゲーションは、米国特許第6,306,393号に記載されている。一般的な技術はまた、Shih et al.,Int.J.Cancer 41:832-839(1988);Shih et al.,Int.J.Cancer 46:1101-1106(1990);およびd Shih et al.,米国特許第5,057,313号にも記載されている。この一般的な方法は、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分を、少なくとも1つの遊離アミン機能を有し、複数の薬物、毒素、キレート剤、ホウ素付加物、または他の治療剤が添加された担体ポリマーと反応させることを含む。この反応により、初期のシッフ塩基(イミン)結合がもたらされ、これを二級アミンへの還元によって安定化して最終的なコンジュゲートを形成することができる。
【0138】
担体ポリマーは、例えば、少なくとも50個のアミノ酸残基のアミノデキストランまたはポリペプチドであってもよい。薬物または他の薬剤を担体ポリマーにコンジュゲートするための様々な技術が、当該技術分野において既知である。ポリペプチド担体は、アミノデキストランの代わりに使用され得るが、ポリペプチド担体は、鎖内に少なくとも50個のアミノ酸残基を有するべきであり、約100~5000個のアミノ酸残基であり得る。アミノ酸の少なくともいくつかは、リジン残基、またはグルタミン酸残基もしくはアスパラギン酸残基であるべきである。リジン残基のペンダントアミンならびにグルタミンおよびアスパラギン酸のペンダントカルボキシレートは、薬物、毒素、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素付加物、または他の治療剤を付着させるのに便利である。好適なポリペプチド担体の例としては、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、それらのコポリマー、およびこれらのアミノ酸と他のもの、例えば、セリンとの混合ポリマーが挙げられ、得られた負荷担体およびコンジュゲートに望ましい溶解性特性を付与する。抗体がコンジュゲートされ得る薬剤の例は、本明細書に記載される細胞傷害性化学療法剤のいずれかを含む。
【0139】
コンジュゲートされた抗体は、抗体成分を治療剤または標識剤と直接コンジュゲートすることによって調製することができる。一般的な手順は、治療剤または標識剤が酸化された抗体成分に直接結合していることを除いて、間接的なコンジュゲーションの方法に類似している。例えば、抗体の炭水化物部分は、半減期を延長するためにポリエチレングリコールと結合させることができる。
【0140】
治療剤または標識剤は、ジスルフィド結合形成を介して、またはN-スクシニル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)等のヘテロ二官能性架橋剤を使用して、還元された抗体成分のヒンジ領域に結合することができる。Yu et al.,Int.J.Cancer 56:244(1994)。そのようなコンジュゲーションのための一般的な技術は、当該技術分野において周知である。例えば、Wong,Chemistry Of Protein Conjugation and Cross-Linking(CRC Press 1991);Upeslacis et al.,”Modification of Antibodies by Chemical Methods”、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications,Birch et al.(eds.),pages187~230(Wiley-Liss,Inc.1995);Price,”Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies,”、Monoclonal Antibodies:Production,Engineering and Clinical Application,Ritter et al.(eds.),pages60~84(Cambridge University Press 1995)を参照されたい。N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)等の様々な二官能性タンパク質カップリング剤が当該技術分野で既知である。
【0141】
医薬組成物
抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそれを含むコンジュゲート)は、任意選択的に1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に製剤化することができる。例示的な賦形剤としては、炭水化物、無機塩、抗菌剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、酸、塩基、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。注射用組成物に好適な賦形剤としては、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油、リン脂質、および界面活性剤が挙げられる。糖、誘導体化された糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化された糖、および/または糖ポリマー等の炭水化物が賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤としては、例えば、単糖類、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース等;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等;多糖類、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン等;およびアルジトール、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトール等が挙げられる。賦形剤はまた、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせ等の無機塩または緩衝剤も含むことができる。
【0142】
組成物はまた、微生物成長を防止または抑止するための抗菌剤も含むことができる。本発明に好適な抗菌剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルソール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0143】
抗酸化剤も同様に、組成物中に存在することができる。抗酸化剤を使用して酸化を防止し、それによって抗体または調製物の他の構成要素の劣化を防止する。本発明で使用するのに好適な抗酸化剤としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0144】
界面活性剤は、賦形剤として存在することができる。例示的な界面活性剤としては、「Tween(登録商標) 20」および「Tween(登録商標) 80」等のポリソルベート、ならびにF68およびF88(BASF、Mat Olive,New Jersey))等のプルロニック(登録商標);ソルビタンエステル;レシチンおよび他のホスファチジルコリン等のリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン(但し、好ましくはリポソーム形態ではない)、脂肪酸、ならびに脂肪エステル等の脂質;コレステロール等のステロイド;EDTA等のキレート剤;ならびに亜鉛、および他のそのような好適なカチオンが挙げられる。
【0145】
酸または塩基は、組成物中に賦形剤として存在することができる。使用することができる酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸が挙げられる。好適な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の性質および機能、ならびに組成物の特定の必要性に応じて異なる。典型的には、任意の個々の賦形剤の最適量は、日常的な実験を通じて、すなわち、様々な量(低量~高量に及ぶ)の賦形剤を含有する組成物を調製すること、安定性および他のパラメータを調べること、次いで、有意な副作用なしに最適な性能が達成される範囲を決定することによって決定される。しかしながら、一般的に、賦形剤(複数可)は、組成物中に、賦形剤の約1重量%~約99重量%、好ましくは約5重量%~約98重量%、より好ましくは約15重量%~約95重量%の量で存在し、最も好ましくは、濃度が30重量%未満である。これらの前述の医薬賦形剤は、他の賦形剤とともに、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams&Williams,(1995),the”Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0147】
組成物は、すべての種類の製剤、特に、注射に適した製剤、例えば、使用前に溶媒で再構成することができる粉末または凍結乾燥物、ならびに即注射可能な溶液または懸濁液、使用前にビヒクルと組み合わせるための乾燥不溶性組成物、ならびにエマルジョンおよび投与前に希釈するための液体濃縮物を包含する。注射前に固体組成物を再構成するのに適した希釈剤の例としては、注射用静菌水、5%ブドウ糖水溶液、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。液体医薬組成物に関して、溶液および懸濁液が想定される。追加の好ましい組成物は、経口または局所送達用の組成物を含む。
【0148】
本明細書における医薬製剤は、意図される送達および使用の様式に応じて、シリンジ、移植デバイス等に収容することもできる。好ましくは、本明細書に記載の抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそれを含むコンジュゲート)を含む組成物は単位剤形であり、すなわち、計量済みまたは包装済み形態の、単回投与に適した抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそれを含むコンジュゲート)の量である。
【0149】
本明細書における組成物は、任意選択的に、1つ以上の追加の薬剤、例えば、オステオポンチン関連障害を治療するための薬物、または対象の状態もしくは疾患を治療するために使用される他の医薬品を含み得る。例えば、配合調製物は、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそれを含むコンジュゲート)、ならびに限定されないが、化学療法剤、免疫療法剤、生物療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感薬、および放射性同位体等のがんを治療するための1つ以上の薬物を含み得る。黒色腫を治療するために、化合物調製物は、B-Raf阻害剤、MEK阻害剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。例示的なB-Raf阻害剤としては、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、およびPLX-4720が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なMEK阻害剤としては、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、およびPD-325901が挙げられるが、これらに限定されない。代替として、そのような薬剤は、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそれを含むコンジュゲート)を含む組成物とは別個の組成物中に含有され得、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそれを含むコンジュゲート)を含む組成物と同時に、その前に、またはその後、併用投与され得る。
【0150】
オステオポンチン関連障害の治療方法
本開示は、オステオポンチンの活性に関連するオステオポンチン関連障害を治療する方法を提供する。例示的なオステオポンチン関連疾患としては、炎症、心臓肥大、心筋線維症、ならびに黒色腫、膠芽腫、卵巣がん、乳がん、および肺がん等のオステオポンチンを過剰発現するがんを含むが、これらに限定されないオステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片のレベルの上昇に関連する任意の疾患または障害が挙げられる。
【0151】
この方法は、概して、治療有効量の本明細書に記載の任意の抗オステオポンチン抗体、抗原結合断片、またはコンジュゲートを、単独で(例えば、単剤療法)、または1つ以上の追加の治療剤(例えば、抗がん療法剤、B-Raf阻害剤、および/もしくはMEK阻害剤)と組み合わせて(例えば、併用療法)、それを必要とする対象に投与することを含む。ある特定の態様において、この方法は、治療有効量の抗オステオポンチン抗体(例えば、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的に結合する本開示の抗体であって、オステオポンチンのトロンビン切断またはオステオポンチンのトロンビン切断断片へのインテグリンの結合を阻害する抗体)を、それを必要とする患者に投与することによって、オステオポンチン関連障害を治療することを含む。
【0152】
様々な宿主がこの方法に従って治療可能である。一般に、そのような宿主は「哺乳類」または「哺乳動物」であり、これらの用語は、肉食目(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む、哺乳類綱に属する生物を説明するために広く使用される。多くの実施形態において、宿主はヒトである。
【0153】
本開示の抗体組成物のプロドラッグもまた、本明細書に記載の方法において企図される。そのようなプロドラッグは、一般に、必要な化合物にインビボで容易に変換可能な化合物の機能的誘導体である。したがって、本開示の方法において、「投与すること」という用語は、具体的に開示されている化合物を投与すること、または具体的に開示されていないかもしれないが、それを必要とする対象に投与した後にインビボで特定の化合物に変換する化合物とともに投与することを包含する。好適なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、例えば、Wermuth,”Designing Prodrugs and Bioprecursors”in Wermuth,ed.The Practice of Medicinal Chemistry,2d Ed.,pp.561-586(Academic Press 2003)に記載されている。プロドラッグは、インビボ(例えば、ヒト体内)で加水分解して、本明細書に記載の化合物を生成するエステルを含む。好適なエステル基としては、各アルキルまたはアルケニル部分が6個以下の炭素原子を有する、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケノ酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なエステルとしては、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、アクリル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、およびエチルコハク酸塩が挙げられる。
【0154】
投与量
本開示の方法において、有効量の抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそれを含むコンジュゲート)が、それを必要とする対象に投与される。投与される量は、投与の目標、治療される特定のオステオポンチン関連障害、治療される個体の健康および身体状態、年齢、治療される個体の分類群(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、霊長類等)、所望の分解能の程度、抗オステオポンチン抗体またはコンジュゲートの製剤、治療を行う臨床医による医療状況の評価、および他の関連因子に応じて異なる。量は、日常的な臨床試験を通して決定することができる比較的広い範囲に収まることが予想される。例えば、炎症、心臓肥大、心筋線維症、またはがん細胞の成長、転移および/または侵襲性を阻害するために使用される抗オステオポンチン抗体またはコンジュゲートの量は、さもなければ対象にとって不可逆的に毒性となり得る量(すなわち、最大耐用量)以下である。他の場合には、量は、毒性閾値の周辺であるまたはそれよりもはるかに低いが、依然として有効濃度範囲内であるか、または閾値用量と同じくらい低い。
【0155】
個々の用量は、典型的には、対象に測定可能な効果をもたらすのに必要な量以上であり、抗体またはコンジュゲートの吸収、分布、代謝、および排泄(「ADME」)のための薬物動態および薬理学に基づいて、したがって対象内の組成物の体内動態に基づいて決定され得る。これには、例えば、非経口(全身または局所効果のために消化管以外の経路によって適用される)適用のために調整することができる投与経路および投与量の考慮が含まれる。例えば、抗オステオポンチン抗体またはコンジュゲートの投与は、典型的には、局部的であるか、または注射(例えば、静脈内、筋肉内、もしくは腫瘍内)を介してであるか、またはそれらの組み合わせである。
【0156】
抗体またはコンジュゲートの体内動態および対象内での対応する生物学的活性は、典型的には、目的の標的に存在する抗体の画分に対して測定される。例えば、抗体は、一旦投与されると、そのオステオポンチンまたはトロンビン切断断片のレベルが上昇した疾患細胞中の物質を濃縮する生物学的標的(例えば、オステオポンチン)に蓄積することができる。したがって、抗体が経時的に目的の標的に蓄積するように投与される投与計画は、より低い個々の用量を可能にする戦略の一部であり得る。これはまた、例えば、インビボでより緩徐に除去される抗体の用量を、インビトロアッセイから計算される有効濃度と比較して低減することができる(例えば、インビトロでの有効量はmM濃度に近いのに対し、インビボではmM濃度未満である)ことも意味し得る。
【0157】
一例として、オステオポンチンのトロンビン切断またはオステオポンチンのトロンビン切断断片へのインテグリン結合を阻害するための所与の抗体のIC50から、用法または投与計画の有効量を測定することができる。「IC50」とは、インビトロでの50%の阻害に必要な濃度を意図する。代替として、有効量は、所与の抗体濃度のEC50から測定することができる。「EC50」とは、インビボでの最大効果の50%を得るために必要な血漿濃度を意図する。
【0158】
一般に、本開示の抗オステオポンチン抗体またはコンジュゲートに関して、有効量は、通常、計算されたIC50の200倍以下である。典型的には、投与される抗体またはコンジュゲートの量は、計算されたIC50の約200倍未満、約150倍未満、約100倍未満であり、多くの実施形態では、約75倍未満、約60倍未満、50倍未満、45倍未満、40倍未満、35倍未満、30倍未満、25倍未満、20倍未満、15倍未満、10倍未満、およびさらには、約8倍未満または2倍未満である。一実施形態において、有効量は、計算されたIC50の約1倍~50倍、および時には、計算されたIC50の約2倍~40倍、約3倍~30倍、または約4倍~20倍である。他の実施形態において、有効量は、計算されたIC50と同じであり、ある特定の実施形態において、有効量は、計算されたIC50よりも多い量である。
【0159】
有効量は、計算されたEC50の100倍以下であり得る。例えば、投与される抗体またはコンジュゲートの量は、計算されたEC50の約100倍未満、約50倍未満、約40倍未満、35倍未満、30倍未満、または25倍未満であり、多くの実施形態では、約20倍未満、約15倍未満、およびさらには、約10倍未満、9倍未満、9倍未満、7倍未満、6倍未満、5倍未満、4倍未満、3倍未満、2倍未満、または1倍未満である。一実施形態において、有効量は、計算されたEC50の約1倍~30倍、および時には、計算されたEC50の約1倍~20倍、または約1倍~10倍である。他の実施形態において、有効量は、計算されたEC50と同じであり、ある特定の実施形態において、有効量は、計算されたEC50よりも多い量である。
【0160】
有効量は、アッセイから、安全性および漸増および用量範囲の試験、個々の臨床医と患者の関係、ならびにインビトロおよびインビボアッセイから、経容易に験的に決定することができる。
【0161】
投与
オステオポンチンのトロンビン切断またはオステオポンチンのトロンビン切断断片へのインテグリン結合を阻害する抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)の少なくとも1つの治療有効用量が投与される。抗オステオポンチン抗体またはその抗原結合断片の「治療有効用量または量」とは、投与されたときに、オステオポンチン関連障害のための個体の治療に関して陽性の治療反応をもたらす量が意図される。特に興味深いのは、抗腫瘍作用もしくは抗炎症作用を提供するか、または心臓肥大もしくは心筋線維症を低減する、抗オステオポンチン抗体、またはその抗原結合断片の量である。「陽性治療応答」とは、本発明による治療を受けている個体が、その個体が治療を受けているオステオポンチン関連障害の1つ以上の症状の改善を示すことを意図する。
【0162】
したがって、例えば、「陽性治療反応」は、療法に関連する疾患の改善、および/または療法に関連する疾患の1つ以上の症状の改善である。例えば、がんの治療に関する陽性治療反応は、疾患における以下の改善のうちの1つ以上を指す:(1)腫瘍サイズの減少、(2)がん細胞数の減少、(3)腫瘍成長の阻害(すなわち、ある程度遅延させること、好ましくは停止)、(4)末梢臓器へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度遅延させること、好ましくは停止)、(5)腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度遅延させること、好ましくは停止)、および(6)がんに関連する1つ以上の症状のある程度の緩和。そのような治療反応は、改善の程度としてさらに特徴付けることができる。したがって、例えば、改善は、完全奏効として特徴付けられ得る。「完全奏効」とは、身体検査、臨床検査、核および放射線による検査(すなわち、CT(コンピュータ断層撮影)ならびに/またはMRI(磁気共鳴画像法))、ならびに試験に参加した時点で陽性であったすべての初期異常もしくは部位について繰り返された他の非侵襲的手技によって確認されたすべての測定可能または評価可能な疾患のすべての症状および兆候の消失の証拠である。代替として、疾患の改善は、部分的な反応であると分類され得る。「部分奏効」とは、治療前の測定値と比較した場合に、測定可能なすべての病変の垂直径の積の和における50%を超える減少を意図する(評価可能な反応のみを有する患者の場合、部分奏効は適用されない)。
【0163】
ある特定の実施形態において、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)を含む組成物、および/あるいは1つ以上の他の治療剤、例えば、がん、炎症、心臓肥大、心筋線維症を治療するための他の薬物、または他の医薬品の複数の治療有効用量が、毎日の投与計画に従って、または間欠的に投与される。例えば、治療有効用量は、週に1日、週に2日、週に3日、週に4日、または週に5日等投与することができる。「間欠的」投与とは、治療有効用量が、例えば、隔日、2日毎、3日毎等に投与され得ることが意図される。例えば、いくつかの実施形態において、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)は、1、2、3、4、5、6、7、8...10...15...24週間等の長期間にわたって、週2回または週3回投与される。「週2回」または「1週間当たり2回」とは、当該薬剤の2回分の治療有効用量が、7日間の期間内に、投与の最初の週の1日目から開始して、最短の投与間隔は72時間、最長の投与間隔は96時間で対象に投与されることを意図する。「週3回」または「1週間当たり3回」とは、3回分の治療有効用量が7日間の期間内に対象に投与され、最短の投与間隔48時間、最長の投与間隔72時間を可能にすることを意図する。本発明の目的のために、この種類の投与は、「間欠的」な療法と称される。本発明の方法によれば、対象は、所望の治療反応が達成されるまで、1回以上の週サイクルの間、間欠的な療法(すなわち、治療有効量の週2回または週3回の投与)を受けることができる。薬剤は、本明細書で後述する任意の許容される投与経路によって投与することができる。
【0164】
抗オステオポンチン抗体、もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)を含む組成物は、必ずしもそうではないが、典型的には、経口的に、注射(皮下、静脈内、または筋肉内)により、注入によって、局部的にまたは局所的に投与される。動脈内、腹腔内、肺、鼻、経皮、病変内、胸骨内、実質内、直腸、経皮、経粘膜、くも膜下腔内、心膜、動脈内、眼内等の追加の投与様式も企図される。抗オステオポンチン抗体、もしくはその抗原結合断片(そのコンジュゲートの)を注射によって投与する場合、投与は、連続注入、または単回もしくは多回ボーラスによるものであってもよい。
【0165】
例えば、抗オステオポンチン抗体またはコンジュゲートは、注入によってまたは局所注射によって、例えば、約50mg/時間~約400mg/時間、約75mg/時間~約375mg/時間、約100mg/時間~約350mg/時間、約150mg/時間~約350mg/時間、約200mg/時間~約300mg/時間、約225mg/時間~約275mg/時間の速度で注入によって投与され得る。例示的な注入速度は、例えば、約1mg/m/日~約9mg/m/日、約2mg/m/日~約8mg/m/日、約3mg/m/日~約7mg/m/日、約4mg/m/日~約6mg/m/日、約4.5mg/m/日~約5.5mg/m/日を含む、約0.5mg/m/日~約10mg/m/日の所望の治療用量を達成することができる。投与(例えば、注入による)は、所望の期間にわたって、例えば、約1日~約5日の期間にわたって、または数日に1回、例えば、約5日間、約1ヶ月、約2ヶ月等にわたって繰り返すことができる。
【0166】
本発明による調製物はまた、局所治療に好適である。特定の実施形態において、組成物は、がんの治療のための抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)の局所送達のために使用される。例えば、組成物は、腫瘍またはがん性細胞に直接投与され得る。投与は、局所カテーテルを介した灌流、または病変内直接注射によって行われ得る。黒色腫の治療のために、組成物は、例えば、病変部位で皮膚に適用される抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)を含有するクリームまたはゲル中で局部的に投与され得る。
【0167】
医薬製剤は、投与直前には液体溶液または懸濁液の形態であってもよいが、シロップ、クリーム、軟膏、錠剤、カプセル、粉末、ゲル、マトリックス、座剤等の別の形態をとってもよい。抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)および他の薬剤を含む医薬組成物は、当該技術分野で既知の任意の医学的に許容される方法に従って、同じまたは異なる投与経路を用いて投与され得る。
【0168】
別の実施形態において、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)および/または他の薬剤を含む医薬組成物は、例えば、オステオポンチン関連障害の発生または進行を防止するために、予防的に投与される。そのような予防的使用は、がん進行または心臓肥大または心筋線維症のリスクが高い対象にとって特に価値がある。
【0169】
本発明の別の実施形態において、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)および/または他の薬剤を含む医薬組成物は、徐放性製剤、または徐放デバイスを使用して投与される製剤中にある。そのようなデバイスは、当該技術分野において周知であり、例えば、経皮パッチ、および非徐放性医薬組成物で徐放効果を達成するために、様々な用量で連続した定常状態で経時的に薬物送達を提供することができる小型の埋込型ポンプを含む。
【0170】
本発明はまた、本明細書で提供される抗オステオポンチン抗体またはその抗原結合断片(例えば、治療剤、検出可能な標識、またはイメージング剤にコンジュゲートされる)を含むコンジュゲートを、オステオポンチン関連障害を有する患者に投与するための方法も提供する。この方法は、好ましくは医薬組成物の一部として提供される、治療有効量のコンジュゲートまたは薬物送達系を、本明細書に記載の様式のいずれかによって投与することを含む。投与方法は、抗オステオポンチン抗体による治療に反応を示す任意のオステオポンチン関連障害を治療するために用いることができる。より具体的には、本明細書の組成物は、炎症、心臓肥大/心筋線維症、およびオステオポンチンの発現の上昇に関連するがんの治療に有効である。
【0171】
当業者は、抗オステオポンチン抗体が効果的に治療することができる状態を理解するであろう。投与される実際の用量は、対象の年齢、体重、および全身状態、ならびに治療される状態の重症度、医療従事者の判断、および投与されるコンジュゲートに応じて異なる。治療有効量は、当業者によって決定することができ、各特定の症例の特定の要件に応じて調整される。
【0172】
一般に、治療有効量は、1日約0.50mg~5gの抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)、より好ましくは1日約5mg~2g、さらにより好ましくは1日約7mg~1.5gの範囲である。好ましくは、そのような用量は、10~600mgを1日4回(QID)、200~500mgQID、25~600mgを1日3回(TID)、25~50mgTID、50~100mgTID、50~200mgTID、300~600mgTID、200~400mgTID、200~600mgTID、100~700mgを1日2回(BID)、100~600mgBID、200~500mgBID、または200~300mgBIDの範囲である。投与される化合物の量は、特定の抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)の効力、ならびに所望の大きさまたは効果、および投与経路に依存する。
【0173】
精製された抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲート(この場合も同様に、好ましくは、医薬製剤の一部として提供される)は、臨床医の判断、患者のニーズ等に応じて様々な投与スケジュールに従って、単独で、あるいはオステオポンチン関連障害を治療するための1つ以上の他の治療剤、例えば、抗がん療法剤、例えば、化学療法剤、免疫療法剤、生物療法剤もしくは標的療法剤と、または特定の状態もしくは疾患を治療するために使用される他の医薬品と組み合わせて投与することができる。特定の投与スケジュールは、当業者によって既知であるか、または日常的な方法を用いて実験的に決定することができる。例示的な投与スケジュールとしては、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、毎月1回、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい組成物は、1日に1回以下の投与を必要とするものである。
【0174】
抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートは、他の薬剤の前、それと同時、またはその後に投与することができる。他の薬剤と同時に提供される場合、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートは、同じ組成物中または異なる組成物中で提供され得る。したがって、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲート、および他の薬剤は、併用療法によって個体に提示することができる。「併用療法」とは、療法を受けている対象に物質の組み合わせの治療効果がもたらされるような対象への投与を意図する。例えば、併用療法は、特定の投与計画に従って、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートを含むある用量の医薬組成物と、がんを治療するための別の薬物等の少なくとも1つの他の薬剤を含むある用量の医薬組成物とを投与することによって達成され得るが、これらは併せて治療有効用量を構成する。同様に、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲート、および1つ以上の他の治療剤は、少なくとも1つの治療用量で投与することができる。療法を受けている対象にこれらの物質の組み合わせの治療効果がもたらされる限り、別個の医薬組成物の投与は、同時にまたは異なる時間に(すなわち、同じ日または異なる日に、いずれかの順序で順次)行うことができる。
【0175】
前述の投与計画に従って療法を受けている対象が、長期間の寛解後に部分奏効または再発を示す場合、疾患の完全な寛解を達成するために、その後の一連の併用療法が必要であり得る。したがって、第1の治療期間からの一定期間の休止期間の後、対象は、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートを用いた1つ以上の追加の治療期間を有し得る。治療期間の間のそのような期間は、本明細書では中止期間と称される。中止期間の長さは、これらの治療剤との任意の以前の治療期間の併用療法により達成された腫瘍反応の程度(すなわち、完全対部分的)に依存することを認識されたい。
【0176】
がん患者において、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートによる治療は、限定されないが、手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、または分子標的療法もしくは生物療法等の任意の他のがんの医学的処置と組み合わせてもよい。これらの他の医学的処置法と、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートとの任意の組み合わせを使用して、対象のがんを効果的に処置することができる。
【0177】
例えば、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートによる治療は、限定されないが、アビトレキセート、アドリアマイシン、アドルシル、アムサクリン、アスパラギナーゼ、アントラサイクリン、アザシチジン、アザチオプリン、BiCNU、ブレノキサン、ブスルファン、ブレオマイシン、カンプトサール、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン、セルビジン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コスメゲン、シタラビン、サイトサール、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エレンス、エルスパー、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、フルダラ、ゲムシタビン、ジェムザール、ハイカムチン、ヒドロキシウレア、ハイドレア、イダマイシン、イダルビシン、イホスファミド、IFEX、イリノテカン、ランビス、ロイケラン、ロイスタチン、マツラン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、ムタマイシン、ミレラン、ミロサール、ナベルビン、ニペント、ノバントロン、オンコビン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラプラチン、ペントスタチン、プラチノール、プリカマイシン、プロカルバジン、プリントール、ラルチトレキセド、タキソテール、タキソール、テニポシド、チオグアニン、トムデックス、トポテカン、バルルビシン、ベルバン、ベプシド、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP-16およびブモン等の1つ以上の化学療法剤を用いた化学療法と組み合わせてもよい。
【0178】
別の例では、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートによる治療は、限定されないが、メシル酸イマチニブ(Gleevec、STI-571としても知られている)、ゲフィチニブ(Ilesa、ZD1839としても知られている)、エルロチニブ(Tarcevaとして市販されている)、ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、ダサチニブ(Sprycel)、ラパチニブ(Tykerb)、ニロチニブ(Tasigina)、およびボルテゾミブ(Velcade)等のチロシンキナーゼ阻害剤;トファシチニブ等のヤヌスキナーゼ阻害剤;クリゾチニブ等のALK阻害剤;オブクラックスおよびゴシポール等のBcl-2阻害剤;イニパリブおよびオラパリブ等のPARP阻害剤;ペリホシン等のPI3K阻害剤;アパチニブ等のVEGF受容体2阻害剤;[D-Lys(6)]-LHRHと連結されたAN-152(AEZS-108)ドキソルビシン;ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、およびLGX818等のBraf阻害剤;トラメチニブ等のMEK阻害剤;PD-033291およびLEE011等のCDK阻害剤;サリノマイシン等のHsp90阻害剤;ビンタフォリド等の小分子薬物コンジュゲート;テムシロリムス(Torisel)、エベロリムス(Afinitor)、ベムラフェニブ(Zelboraf)、トラメチニブ(Mekinist)、およびダブラフェニブ(Tafinlar)等のセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤;ならびにリツキシマブ(MabTheraまたはRituxanとして市販されている)、トラスツズマブ(Herceptin)、アレムツズマブ、セツキシマブ(Erbituxとして市販されている)、パニツムマブ、ベバシズマブ(Avastinとして市販されている)、およびイピリムマブ(Yervoy)等の1つ以上の小分子阻害剤またはモノクローナル抗体を用いた標的療法と組み合わせてもよい。
【0179】
さらなる例では、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートによる治療は、限定されないが、以下のいずれかを使用する免疫療法と組み合わせてもよい:がんワクチン(例えば、E75HER2由来ペプチドワクチン、Nelipepimut-S(NeuVax)、Sipuleucel-T)、抗体療法(例えば、トラスツズマブ、Ado-トラスツズマブエムタンシン、アレムツズマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、ニボルマブ、ペムロリズマブ、またはリツキシマブ)、サイトカイン療法(例えば、I型(IFNαおよびIFNβ)、II型(IFNγ)およびIII型(IFNλ)を含むインターフェロン、ならびにインターロイキン(IL-2)を含むインターロイキン)、アジュバント免疫療法(例えば、ポリサッカライド-K)、養子T細胞療法、および免疫チェックポイント遮断療法。
【0180】
さらなる例では、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートによる治療は、限定されないが、ヨウ-131、ストロンチウム-89、サマリウム-153、およびラジウム-223を含む、放射性同位体を用いる放射線療法と組み合わせてもよい。さらに、放射線療法は、限定されないが、シスプラチン、ニモラゾール、およびセツキシマブ等の放射線増感薬の投与と組み合わせてもよい。
【0181】
黒色腫を有する患者の場合、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片またはそのコンジュゲートによる治療は、B-Raf阻害剤、MEK阻害剤、またはそれらの組み合わせの投与と組み合わせてもよい。例示的なB-Raf阻害剤としては、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、およびPLX-4720が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なMEK阻害剤としては、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、およびPD-325901が挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
キット
本明細書に記載の組成物のいずれも、キットに含まれ得る。例えば、キットは、抗オステオポンチン抗体、その抗原結合断片、抗オステオポンチン抗体のコンジュゲート、抗オステオポンチン抗体および/もしくはそのコンジュゲートを含む医薬製剤、抗オステオポンチン抗体をコードする組換え核酸もしくはベクター系、ならびに/または宿主細胞(抗オステオポンチン抗体をコードする組換え核酸またはベクター系でトランスフェクトされたか、または別個のもの)を含む組成物を含み得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、キットは、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片に特異的に結合する抗オステオポンチン抗体またはその抗原結合断片、を含み、抗体は、オステオポンチンのトロンビン切断またはオステオポンチンのトロンビン切断断片へのインテグリン結合を阻害する。ある特定の実施形態において、キットは、抗オステオポンチン抗体コンジュゲートまたは抗体および/もしくはコンジュゲートを含む製剤を含む。
【0184】
ある特定の実施形態において、キットに含まれる抗体またはその抗原結合断片は、OPN-R断片またはOPN-CTF断片に特異的に結合する。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、オステオポンチンのArg168を含むエピトープに特異的に結合する。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1~7、配列番号9~12、および配列番号47からなる群から選択される配列を含むオステオポンチンペプチドに特異的に結合する。
【0185】
ある特定の実施形態において、キットに含まれる抗体またはその抗原結合断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号33のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号14もしくは配列番号18のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16もしくは配列番号20のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む軽鎖を含む。
【0186】
ある特定の実施形態において、キットに含まれる抗体またはその抗原結合断片は、配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号24のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む軽鎖を含む。
【0187】
ある特定の実施形態において、キットに含まれる抗体またはその抗原結合断片は、配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号45のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(この範囲内の任意のパーセント同一性、例えば、それに対する81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を含む)を示す配列を含む軽鎖を含む。
【0188】
ある特定の実施形態において、キットに含まれる抗オステオポンチン抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ナノボディ、二重特異性抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー抗体、三重特異性抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、F断片、またはscFv断片である。
【0189】
キットは、本明細書に記載の抗体組成物を含む1つ以上の医薬製剤を含み得る。したがって、キットは、1つ以上の単位剤形として存在する単一の医薬組成物を含み得る。さらに他の実施形態において、キットは、2つ以上の別個の医薬組成物を含み得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、局部送達(例えば、黒色腫の治療のための抗体またはコンジュゲートを含むゲルまたはクリーム)に好適である。
【0190】
いくつかの実施形態において、キットは、B-Raf阻害剤、MEK阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む組成物をさらに含み得る。
【0191】
いくつかの実施形態において、キットは、限定されないが、化学療法剤、免疫療法剤、生物療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感剤、および放射性同位体、またはそれらの組み合わせを含む、1つ以上の抗がん療法剤を含む組成物をさらに含み得る。
【0192】
組成物は、液体形態であり得るか、または凍結乾燥させることができる。組成物に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックを含む様々な材料から形成することができる。容器は、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。キットは、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、またはデキストロース溶液等の、薬学的に許容される緩衝液を含む容器をさらに含むことができる。キットはまた、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジ、または他の送達デバイス等の、他の薬学的に許容される製剤化溶液を含む、エンドユーザに有用な他の材料を含むこともできる。キットはまた、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)で予め充填された送達デバイスも提供し得る。
【0193】
上記の構成要素に加えて、主題のキットは、(ある特定の実施形態では)主題の方法を実施するための指示書(すなわち、本明細書に記載のオステオポンチン関連障害を治療するための指示書)をさらに含み得る。これらの指示書は、様々な形態で主題のキット内に存在し得、そのうちの1つ以上が、キット内に存在し得る。これらの指示書が存在し得る1つの形態は、キットのパッケージ中、添付文書中等の、好適な媒体または基板上の印刷情報としてであり、例えば、情報が印刷されている1枚または複数枚の紙等である。これらの指示書のさらに別の形態は、情報が記録されたコンピュータ可読媒体、例えば、ディスケット、コンパクトディスク(CD)、DVD、ブルーレイ、フラッシュドライブ等である。存在し得る、これらの指示書のさらに別の形態は、離れた場所で情報にアクセスするために、インターネットを介して使用され得るウェブサイトアドレスである。
【0194】
有用性
本明細書に記載の抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)は、炎症、心臓肥大、心筋線維症、ならびに黒色腫、膠芽腫、卵巣がん、乳がん、および肺がん等の、オステオポンチンまたはそのトロンビン切断断片のレベルの上昇に関連する任意の疾患または障害を含む、オステオポンチン関連障害の治療に有用である。
【0195】
特に、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)は、悪性黒子、悪性黒子由来黒色腫、表在拡大型黒色腫、末端黒子型黒色腫、粘膜黒色腫、結節性黒色腫、ポリポイド黒色腫、および線維形成性黒色腫を含むが、これらに限定されない黒色腫の治療に有用である。黒色腫細胞は、黒色腫細胞によってコードされるタンパク質が、患者の体内の他の場所のタンパク質と異なることを意味する、ゲノムDNA配列の変化(変異)を含有し得る。一例として、細胞への成長シグナル伝達に関与するタンパク質であるB-Rafは、変異を有し得る。特に、抗オステオポンチン抗体もしくはその抗原結合断片(またはそのコンジュゲート)は、V600E変異またはV600K変異を含む黒色腫を含むが、これらに限定されないB-RAF変異黒色腫を治療するために使用され得る。抗オステオポンチン抗体(またはその抗原結合断片)は、転移性黒色腫を含む任意の病期の黒色腫を治療するために使用され得る。
【0196】
実験
以下の実施例は、本発明の作製および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されるものであり、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図するものでもなく、また、以下の実験が行われたすべてのまたは唯一の実験であることを示すことを意図するものでもない。使用される数字(例えば、量、温度等)に関して正確さを確保する努力がなされてはいるが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。別段の指示のない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0197】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0198】
本発明は、本発明の実施のための好ましい様式を含むように、本発明者によって見出されたまたは提唱された特定の実施形態に関して記載されてきた。当業者は、本開示に照らして、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態において多数の修正および変更を行うことができることを認識するであろう。例えば、コドン冗長性のために、タンパク質配列に影響を与えることなく、基礎を成すDNA配列に変更を行うことができる。生物学的機能等価性の考慮によって、種類または量で生物学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造に変更を行うことができる。そのような修正はすべて、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0199】
実施例1
オステオポンチンのトロンビン切断は、黒色腫の成長および進行を促進する
オステオポンチン(OPN)は、幅広いインテグリンに結合する高度に保存されたRGDドメインを有する、マトリックス細胞の多機能タンパク質である。トロンビンは、OPNを、新たなインテグリン結合部位を有するOPN-Rと、走化性を促進するC末端断片(CTF)の2つの断片に切断する(図1)。C末端にSVVYGLR(配列番号3)を有するOPN-Rは、インテグリンα4β1およびα9β1に結合する。トロンビン切断部位におけるアルギニンのアラニン(R153A)への変異は、OPNをトロンビン切断に耐性にする。Nemotoら(J.Bone Mineral Res.2001)により、OPNを欠くマウス(OPNノックアウト[KO]マウス)では、B16黒色腫の成長が抑制されることが報告されている。しかしながら、がん進行におけるOPNの重要性に関する広範な研究にもかかわらず、OPNのトロンビン切断の役割は不明である。
【0200】
OPNのトロンビン切断が炎症性障害およびがんの病理において果たす役割をさらに理解するために、実験マウスモデルにおいて、OPN遺伝子にArg153Ala変異を導入することによりOPNのトロンビン切断部位を無効にした。トロンビン切断に耐性のあるOPNを有するマウスは、Arg153をAlaに置き換えることによって作製した(OPNR153A;OPNノックイン[KI])。マウスの脇腹にB16黒色腫細胞を皮下接種し、腫瘍成長を監視し、屠殺後に腫瘍重量を測定した。転移のモデルにおいて、マウスの尾静脈を通してB16黒色腫細胞を静脈内に注入し、屠殺後、結節の数を視覚的にカウントし、メラニン含量を決定することによって肺内の黒色腫を定量した(メラニンは、肺内の黒色腫細胞の量の認められている尺度である)。何匹かのマウスに、トロンビン阻害剤であるダビガトランエテキシレートを含有する固形飼料を与えた。
【0201】
経時的な体積または屠殺時の体重として監視した場合、野生型(WT)マウスにおいて強固な腫瘍成長が観察されたが、OPNノックアウト(KO)マウスおよびOPNR153A-KIマウスの両方で腫瘍成長がほぼ同じ程度に抑制された(図2A図2B)。転移モデルにおいて、WTマウスは、OPN KIマウスよりも肺に多くの腫瘍結節を有し、肺に多くのメラニンが存在した(図3A図3B)。
【0202】
OPNのトロンビン切断の役割は、特定の経口トロンビン阻害剤であるダビガトランエテキシレート(DE)でマウスを処理することによって確認した。DEで処理した野生型マウス(WT)では、脇腹の腫瘍成長(図4A図4B)が、OPN-KIマウスに見られるのと同じレベルまで減少した。同様に、転移モデルにおいて、WTマウスの転移が、OPN-KIおよびOPN-KOマウスに見られるのと同じレベルまで減少した(図5A図5B)。
【0203】
OPNのトロンビン切断が他のがんにおいて重要であることを実証するために、Id8細胞(卵巣がん)を腹腔内に注入した卵巣がんモデルを使用した。体重の増加は腫瘍の成長を表すため、マウスの体重を測定した。OPN-KIマウスにおけるId8卵巣がん腫瘍の成長は、WTマウスのものと比較して有意に低下した。
【0204】
我々のデータは、がん生物学におけるOPNのトロンビン切断の重要性の最初の証拠を提供する。OPN KIマウスは、OPNの不在に等しいB16腫瘍成長の減少を示し、宿主OPNのトロンビン切断がインビボでの黒色腫成長において重要な役割を果たすことが示唆された。加えて、OPN KIマウスにおいて、WTマウスと比べてId8卵巣がんの成長が抑制された。トロンビン阻害剤ダビガトランエテキシレートによる処理は、皮下移植モデルおよび転移モデルの両方におけるB16黒色腫の成長を、OPNを欠くマウス、またはトロンビンによって切断され得なかったOPNを有するマウスにおいて観察されたものと同様のレベルまで低下させた。
【0205】
実施例2
治療用モノクローナル抗体
OPN-KIマウスを用いた黒色腫および卵巣がん試験(実施例1)の結果は、OPN切断の遮断および/またはOPN断片のブロックが、黒色腫および他のがんにおける治療的介入の可能性を有することを示している。異なる形式(mAB、二重特異性、三重特異性、ナノボディ等)のモノクローナル抗体を、以下の標的に対して作製する。
OPN-FL:OPNの切断をブロックする抗体:
トロンビンのアニオン結合エキソサイト1および2に結合するヒトOPNまたはOPN配列のSVVGLR(配列番号1)またはSKSKKF(配列番号2)に対する抗体。
OPN-R:ヒトOPNの露出SVVYGLR(配列番号3)に対する抗体を使用して、OPN-Rへのインテグリン結合をブロックする抗体
OPN-CTF:CTF多量体形成をブロックするヒトOPNのSKSKKFRR(配列番号4)配列をブロックする抗体
【0206】
用途:
黒色腫および他のがんは、単剤療法として、または標準療法と組み合わせて、抗体を用いて治療することができる。治療効果は、OPNトロンビン切断部位(SVVYGLRSKSKKF、配列番号9)、OPN-R SVVYGLR(配列番号3)インテグリン結合モチーフ、およびがんにおけるCTF多量体形成に関与するOPN-CTF領域SKSKKFRRPD(配列番号10)の機能ブロックのためのモノクローナル抗体の生成によって得られる。トロンビン上のOPNの結合部位、エキソサイト1および2を標的とする抗体は、トロンビンによるOPN切断を低減するのにも有用であり得る。トロンビン結合エキソサイト1および2に特異的に結合するが、トロンビンの凝固促進活性を妨げないペプチドも有用であり得る。
【0207】
この抗体は、トロンビン阻害剤または他の抗凝固剤が使用される場合、出血リスクの副作用なしにOPN切断防止の有益な効果を達成するのに有用である。
【0208】
実施例3
オステオポンチンのトロンビン切断を阻害するモノクローナル抗体の産生
我々の目標は、全長オステオポンチン(OPN-FL)に結合して、トロンビンによるその切断をブロックするモノクローナル抗体(Mab)を同定することであった。図7は、ウサギ、ラット、マウス、ヒト、アカゲザル、カニクイザル、およびブタのトロンビン切断部位の周囲のOPNタンパク質配列のアラインメントを示す。ウサギモノクローナル抗体を開発するために、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に共有結合したペプチド抗原
【数3】

(配列番号11、太字のアミノ酸はトロンビンにより切断される)を使用してウサギにおいて抗体を産生させた。ペプチド抗原をポリエチレングリコールで修飾して溶解度を増加させ、6-アミノヘキサン酸(Ahx)リンカーを、Ahx(PEG)-YGLRSKS-Ahx-C)によって連結されたC末端Cysで修飾した。トロンビン切断部位の周囲のOPN配列がマウスおよびヒト配列とは異なるため、ウサギを選択した。
【数4】

(配列番号47、太字のアミノ酸はトロンビンにより切断される)。ペプチド抗原に結合した抗体を産生する細胞は、それらの重鎖および軽鎖cDNAをクローニングし、ウサギIgGを発現する発現ベクターに挿入した。次いで、これらの発現ベクターをHEK293F細胞にトランスフェクトし、培地をアッセイした。次いで、抗体スクリーニングを用いて、マウス、ラット、およびヒトのオステオポンチンと反応する抗体を産生するクローンを同定した。
【0209】
OPN抗原ペプチドに対する直接ELISAを用いて、ウサギモノクローナルクローンをスクリーニングした(図8)。35個の陽性(図示)が同定された。抗OPN IgGを産生するクローンを同定するアッセイのために、96ウェルプレートを2μg/mLのアビジンで一晩コーティングした後、ビオチンで標識したOPN抗原ペプチドを30分間添加した。次いで、クローンからの上清を1:50に希釈した後、10倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG Fcで検出した。HRPの基質を添加し、色を測定した。
【0210】
クローン上清中のIgGの濃度を決定するために、96ウェルプレートを、2μg/mLの抗ウサギIgGで一晩コーティングした。次いで、クローンからの上清を1:50に希釈した後、10倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG Fcで検出した。HRPの基質を添加し、色を測定した。クローン上清中のIgGの濃度は、ウサギIgGの標準希釈曲線から計算した。
【0211】
図9は、抗原ペプチド、マウスOPN-FLおよびヒトOPN-FLに対する直接ELISAにおけるウサギモノクローナル抗体のスクリーニング結果を示す。ヒトまたはマウス由来のOPN-FLに結合したクローンを同定した。4つのクローン(A2、A6、E5、およびG7)が、さらなる調査のために選択された。ペプチド抗原結合アッセイにおいて、これらの4つのクローンのEC50を決定した(図10)。精製した抗OPN IgGのEC50を決定するために、96ウェルプレートを2μg/mLのアビジンで一晩コーティングした後、ビオチンで標識したOPN抗原ペプチドを30分間添加した。次いで、選択されたクローンからの上清中のIgGを、プロテインA/Gセファロースビーズに結合させて溶出することによって精製した。精製したIgGを段階希釈した後、10倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG Fcで検出した。HRPの基質を添加し、色を測定した。
【0212】
図11は、OPN抗原ペプチドに結合させるための4つのクローンのEC50値を示す。図10のデータに基づいて、Prism Graphpadを使用して4パラメータフィット方程式からEC50値を計算した。EC50値は、A2クローンでは2.6ng/mL、A6クローンでは3.2ng/mL、E5クローンでは4.0ng/mL、G7クローンでは93.2ng/mLであった。
【0213】
マウスOPN-FLに対する直接結合ELISAにおいて4つのクローンのEC50値を決定し(図12)、A2、A6、およびE5を含むすべてのクローンが、マウスOPN-FLに結合することが見出された。PBS緩衝液中のヤギポリクローナル抗マウスオステオポンチンIgG(2μg/ml)(R&D Systems,Minneapolis,MN)を96ウェルELISAプレートにコーティングし、非特異的結合部位をPBS中1%のBSAで1時間ブロックした。組換えマウスオステオポンチンタンパク質(R&D Systems,Minneapolis,MN)をPBS中1%のBSAで希釈し(200ng/mlから開始して希釈)、2時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中の精製抗体A2、A6、E5、G7またはIgG対照(500ng/ml)とともに1時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中のペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗ウサギIgG抗体(100ng/ml)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、テトラメチルベンジジン基質を10分間インキュベートし、続いてストップ溶液を添加し、450nmで吸光度の測定を行った。
【0214】
加えて、ヒトOPN-FLに対する直接結合ELISAにおいて4つのクローンのEC50値を決定し、4つのクローンはすべて、ヒトOPN-FLに結合することが見出された(図13)。PBS緩衝液中のマウスモノクローナル抗ヒトオステオポンチン抗体(4μg/ml)(R&D Systems,Minneapolis,MN)を96ウェルELISAプレートにコーティングし、非特異的結合部位をPBS中1%のBSAで1時間ブロックした。組換えヒトオステオポンチンタンパク質(GST-OPN-his、社内で精製)をPBS中1%のBSAで希釈し(200ng/mlから開始して希釈)、2時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中の精製抗体A2、A6、E5、G7またはIgG対照(500ng/ml)とともに1時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中のペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗ウサギIgG抗体(100ng/ml)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、テトラメチルベンジジン基質を10分間インキュベートし、続いてストップ溶液を添加し、450nmで吸光度の測定を行った。
【0215】
次に、4つのクローンからのモノクローナル抗体がヒトOPN-FLのトロンビン切断を阻害する能力を、OPN-Rの特異的ELISAにおいて、切断生成物のうちの1つであるOPN-Rの生成の阻害を検出することによって決定した。4つのクローンすべてが、ヒトOPN-FLのトロンビン切断を阻害することが見出された(図14)。組換えヒトオステオポンチンタンパク質(3.2μM、社内で精製)を、精製抗体A2、A6、E5、G7またはIgG対照とともに、またはそれらなしで、室温で20分間インキュベートした。ヒトトトロンビン(32nM)(R&D Systems)を試料に添加し、37℃で10分間インキュベートし、続いてPPACKを4.8μMまで添加した。試料をPBS中1%のBSAで1/300に希釈し、生成されたOPN-RをOPN-R特異的ELISAによって測定した。
【0216】
ヒトOPN-R ELISA:
PBS緩衝液中のマウスモノクローナル抗ヒトオステオポンチン抗体(4μg/ml)(R&D Systems,Minneapolis,MN)を96ウェルELISAプレートにコーティングし、非特異的結合部位をPBS中1%のBSAで1時間ブロックした。組換えヒトOPN-Rタンパク質(GST-OPN-R、Myles et al,2003 JBC))を、PBS中の1%BSAで希釈した(200ng/mlから開始し、希釈した)。トロンビン切断生成物の標準および試料(1/300希釈から開始してさらに希釈)を2時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中のビオチン化ウサギポリクローナル抗OPN-R抗体(500ng/ml)(Sharifetal,2009A+R)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、試料を、1%BSAを含むPBS中のペルオキシダーゼ抱合ストレプトアビジン(100ng/ml)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、テトラメチルベンジジン基質を10分間インキュベートし、続いてストップ溶液を添加し、450nmで吸光度の測定を行った。各試料において生成されたOPN-Rの量を、OPN-R ELISAにおけるOPN-R標準から計算し、次いで、異なる濃度での各抗体クローンのトロンビン切断の阻害を計算し、グラフ化した。[図15]ヒトOPN-FLの切断の阻害における4つのクローンの阻害%を示す。A2は82%、A6は95.4%、E5は77.2%、G7は60.1%。
【0217】
また、OPN-Rの特異的ELISAにおいて、切断生成物のうちの1つであるOPN-Rの生成を決定することによって、4つのクローンについてマウスOPN-FLのトロンビン切断の阻害を評価した。4つのクローンはすべて、マウスOPN-FLのトロンビン切断を阻害することが見出された(図16)。組換えマウスオステオポンチンタンパク質(R&D systems)(2μM)を、精製抗体A2、A6、E5、G7またはIgG対照(2μM)とともに、またはそれらなしで、室温で20分間インキュベートした。ヒトトロンビン(20nM)(R&D Systems)を試料に添加し、37℃で10分間インキュベートし、続いてPPACKを4.7μMまで添加した。試料をPBS中1%のBSAで1/100または1/30に希釈し、生成されたOPN-RをOPN-R特異的ELISAによって測定した。
【0218】
マウスOPN-R ELISA:
PBS緩衝液中のヤギポリクローナル抗マウスオステオポンチンIgG(4μg/ml)(R&D Systems,Minneapolis,MN)を96ウェルELISAプレートにコーティングし、非特異的結合部位をPBS中1%のBSAで1時間ブロックした。トロンビン切断生成物の試料(1/30または1/100希釈から開始し、さらに希釈)を2時間インキュベートした。PBS中0.05%のTween(登録商標) 20で洗浄した後、試料を、1%BSAを含むPBS中のビオチン化ウサギポリクローナル抗OPN-R抗体(2μg/ml)(Sharif et al,2009A+R)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、試料を、1%BSAを含むPBS中のペルオキシダーゼ抱合ストレプトアビジン(100ng/ml)とともに1時間インキュベートした。洗浄後、テトラメチルベンジジン基質を10分間インキュベートし、続いてストップ溶液を添加し、450nmで吸光度の測定を行った。各試料において生成されたOPN-Rの量を、OPN-R ELISAにおけるOPN-R標準から計算し、次いで、異なる濃度での各抗体クローンのトロンビン切断の阻害を計算し、グラフ化した。
【0219】
クローンを配列決定した。A2、A6、E5、およびG7モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列、ならびにそれらをコードする核酸配列、ならびにそれらのCDRの配列を決定し、配列表の配列番号13~46に示される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2022543657000001.app
【国際調査報告】