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特表2022-5436641つ以上の溝を有する、電気機械で使用するための永久磁石
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】1つ以上の溝を有する、電気機械で使用するための永久磁石
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20221005BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02K1/278
H02K15/03 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507655
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2019071595
(87)【国際公開番号】W WO2021028017
(87)【国際公開日】2021-02-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522048834
【氏名又は名称】ボマテック マネジメント アーゲー
【氏名又は名称原語表記】BOMATEC MANAGEMENT AG
【住所又は居所原語表記】Hofstrasse 1, 8181 Hoeri Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー, クルト
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA12
5H622CB04
5H622DD02
5H622PP07
(57)【要約】
電気機械で使用するための永久磁石(1)は、1ピースの中空筒、特に中空円筒として形成されている。それは、相互接続された少なくとも2つのセクションに前記永久磁石を分割する1つ以上の溝(2,3)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械で使用するための永久磁石(1)であって、1ピースの中空筒、特に中空円筒であり、前記永久磁石(1)は、相互接続された少なくとも2つのセクション(4a~4f)に前記永久磁石を分割する1つ以上の溝(2,3)を有することを特徴とする永久磁石(1)。
【請求項2】
前記1つ以上の溝(2,3)は螺旋である、請求項1に記載の永久磁石(1)。
【請求項3】
2つの溝(2,3)を有する、請求項1又は2に記載の永久磁石(1)。
【請求項4】
2つ以上の溝(2,3)を有し、前記溝(2,3)は互いに接触も交差もしない、請求項1~3のいずれか1項に記載の永久磁石(1)。
【請求項5】
前記1つ以上の溝(2,3)は0以上の勾配(α)で、特に一定の勾配で又は変化する勾配で、前記筒の外殻に巻き付いている、請求項1~4のいずれか1項に記載の永久磁石(1)。
【請求項6】
前記中空筒の形状は下底面(1b)及び上底面(1a)を有し、
前記1つ以上の溝(2,3)は前記下底面(1b)に90°の角度で隣接する、及び/又は
前記1つ以上の溝(2,3)は前記上底面(1a)には隣接しない、請求項1~5のいずれか1項に記載の永久磁石(1)。
【請求項7】
前記1つ以上の溝(2,3)は、筒軸(5)を対称軸として軸対称に配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の永久磁石(1)。
【請求項8】
前記1つ以上の溝(2,3)のそれぞれは、少なくとも2つの方向反転部(2c,3c)を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の永久磁石(1)。
【請求項9】
前記1つ以上の溝(2,3)は、絶縁材料、特にポリマープラスチック、特にアクリルプラスチックで充填されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の永久磁石(1)。
【請求項10】
前記永久磁石(1)は、ネオジム、鉄及びホウ素の合金若しくはサマリウム及びコバルトの合金から成るか又はそれを含む材料、特に焼結された材料から成るか又はそれを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の永久磁石(1)。
【請求項11】
前記1つ以上の溝(2,3)は、前記中空筒の壁の奥行と同じ深さdを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の永久磁石(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の永久磁石(1)を製造するための方法であって、前記永久磁石(1)は2つの溝(2,3)を有し、前記2つの溝(2,3)は、特にワイヤ切断によって、同時に切られる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械で使用するための、1ピースの中空筒、特に中空円筒の形状を有する永久磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石機、特に単一歯巻線(single-tooth windings)を有する永久磁石機は、しばしば、永久磁石の内部に誘導された渦電流によって生じる渦電流損失に悩まされる。渦電流は熱の発生を引き起こし、その結果、熱的過負荷及び電気機械の故障が生じる可能性がある。一方において、渦電流は、電気機械の空隙中の変化する/脈動する磁界によって引き起こされ、空隙場の脈動は、溝切り及び電気機械のステータへの電流供給に依存する。他方において、渦電流は、電気機械の単一歯巻線に電流を供給することによって生じる、変化する磁流(magnetic flow)によって引き起こされる。
【0003】
渦電流損失を低減するために、一方では、永久磁石を、互いに分離された複数の永久磁石セグメントに分割すること(例えば、特許文献1参照)が知られており、複数の永久磁石セグメントは、互いに絶縁され接合されている。分離された永久磁石セグメントの数は、電気機械の特定の幾何学的形状に依存する。
【0004】
溝は、好ましくは、ワイヤエロージョン切断によって形成される。永久磁石に溝が形成された後、それは、絶縁材料、例えばポリマープラスチック、特にアクリルプラスチックで充填され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1976096号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、製造が容易であり、電気機械で使用するための優れた渦電流損失特性及び機械的安定性を有する、永久磁石を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項によって解決される。これによれば、電気機械で使用するための永久磁石は、1ピースの中空筒、特に中空円筒である。永久磁石は、相互接続された少なくとも2つのセクションに永久磁石を分割する1つ以上の溝を有する。
【0008】
中空筒は、任意の底面と中空の内部を有する筒である。中空円筒は、筒の軸に対して垂直な環状の底面を有する筒である。
【0009】
「1ピース」は、磁性材料から成る1つの部品を意味する。絶縁材料、特に接着剤を介して相互接続された2つのピースは、磁性材料を介して相互接続されていないため、2ピースであって1ピースではない。
【0010】
溝は、円筒永久磁石の渦電流損失を低減する。溝を有する1ピースの永久磁石は、接着剤によって接合された複数の永久磁石セグメントを有する永久磁石と比較して、はるかに安価で製造が容易である。更に、磁界は、分離されたセグメントを有する永久磁石と比較して、より均質である。
【0011】
有利には、1つ以上の溝は螺旋であり、すなわち、1つ以上の溝は、一定の勾配で円筒の外殻に巻き付いている。1つ以上の溝は、ヘリコイドの形状を有する。
【0012】
螺旋は、溝の一般的な形状である。例えば、溝の端部が異なる形状とされることを排除するものではない。
【0013】
螺旋溝は、特にワイヤ切断によって、製造するのが非常に容易でコスト効率が高い。第1のステップにおいて、ワイヤが中空筒に対して所定の角度で配置され、第2のステップにおいて、溝を切るために中空筒が回転される。
【0014】
好ましくは、永久磁石は2つの溝を有する。これは、2つの溝を同時に切ることができるという利点を有し、これにより、製造が更に一層効率的になる。
【0015】
更に、永久磁石は、互いに接触も交差もしない2つ以上の溝を有することができる。
【0016】
好ましい実施形態において、1つ以上の溝は、0以上の勾配で、特に変化する勾配で、筒の外殻に巻き付いている。
【0017】
有利には、中空円筒の形状は下底面及び上底面を有し、1つ以上の溝は下底面に90°の角度で隣接する、及び/又は、1つ以上の溝は上底面に隣接しない。
【0018】
90°の角度は、溝の一端における永久磁石の安定性を向上させる。
【0019】
特に、1つ以上の溝は、筒軸を対称軸として軸対称に配置されている。溝の対称性は、同時に切ることを可能とし、これにより、永久磁石がより安価になる。
溝を空いたままにすることにより、経年劣化又は温度に関連する問題が回避される。しかしながら、1つ以上の溝が、絶縁材料、特にポリマープラスチック、特にアクリルプラスチックで充填されることが好ましい場合がある。
【0020】
好ましくは、永久磁石は、ネオジム、鉄及びホウ素の合金若しくはサマリウム及びコバルトの合金から成るか又はそれを含む材料、特に焼結された材料から成るか又はそれを含む。
【0021】
特に、1つ以上の溝は、中空筒の壁の奥行に等しい深さを有する。
【0022】
更に、2つの溝を有する永久磁石は、当該2つの溝を同時に切ることができるため、有利である。
【0023】
以下の詳細な説明を考慮すると、本発明はより良く理解され、上記以外の目的が明らかになるであろう。そのような説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1a】2つの溝を有する永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す。
図1b】2つの溝を有する永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す。
図1c】2つの溝を有する永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す。
図1d】2つの溝を有する永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す。
図1e】2つの溝を有する永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す。
図2a】2つの溝を有する永久磁石の第2の例示的な実施形態を示す。
図2b】2つの溝を有する永久磁石の第2の例示的な実施形態を示す。
図2c】2つの溝を有する永久磁石の第2の例示的な実施形態を示す。
図2d】2つの溝を有する永久磁石の第2の例示的な実施形態を示す。
図2e】2つの溝を有する永久磁石の第2の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1a~1eは、永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す。図1aは、上底面1a及び座標系x、z、φを含む斜視図を示す。図1bは下底面1bを含む斜視図を示し、図1cは側面図を示し、図1dは下面図を示し、図1eは上面図を示す。図2a~2eは、第2の実施形態についての同じ図を示す。
【0026】
いずれの実施形態も、中空円筒の形状を有する永久磁石1を示す。中空円筒は、厚さd及び高さhを有する合同な円として形成された下底面及び上底面を有する。
【0027】
永久磁石1は、2つの溝2及び3を有する。溝2及び3が、x方向において永久磁石1を貫通していることが分かる。換言すれば、溝は永久磁石1の壁厚dを完全に通り抜けて延びている。
【0028】
溝2及び3は、下底面1bにおいて、垂直なz方向に、すなわち下底面1bに対して90°の角度で、始まる。短い垂直セクション2a及び3aの後、溝2及び3は螺旋形の経路を有する。すなわち、溝2及び3は、角度αの一定の勾配で、中空円筒の外殻に巻き付いている。両溝2及び3の勾配は、溝2及び3の端部2b及び3bまで、同一かつ一定である。溝2及び3は、上底面1aには隣接していない。2つの溝2及び3は、筒軸5に対して対称に配置されている。
【0029】
溝2及び3は互いの間を延び、相互接続されたいくつかのセクション4a~4eを取り囲んでいる。永久磁石は、1ピースである。
【0030】
溝2及び3の幅は、好ましくは0.05ミリメートル~0.数ミリメートルの範囲にある。幅は、好ましい例として、特に0.14ミリメートル又は0.25ミリメートルであることができる。好ましくは、溝2及び3の幅は可能な限り小さい。
【0031】
永久磁石1の奥行dは、例えば、1.5~3ミリメートルの範囲にあるが、より大きくても小さくてもよい。円筒の全直径は、例えば5~50mmの範囲にあり、高さhは、例えば、150mmまでの範囲にある。
【0032】
永久磁石の材料は、ネオジム、鉄及びホウ素の合金を含むか又はそれから成ることができ、したがって、いわゆるNdFeB永久磁石であることができる。あるいは、永久磁石の材料は、サマリウム及びコバルトの合金を含むか又はそれから成ることができ、したがって、いわゆるSmCo永久磁石であることができる。もちろん、他の材料を採用することもできる。そのような磁石の使用は当業者に知られており、そのような磁石は、特に、例えば永久磁石機又は同期機であり得る電気機械用に使用することができる。永久磁石は、電気機械のロータ上又はステータ上に配置することができる。電気機械は、モータとして、例えばサーボモータとして、及び/又は、発電機として、使用することができる。電気機械は、特に、ハイブリッドモータとして、例えば車両のスタータ-ジェネレータとして使用することができる。
【0033】
図示の実施形態では、溝2及び3は、絶縁材料、例えば接着剤又はポリマープラスチック、特にアクリルプラスチックで充填されている。特に、いわゆる含浸又はトリクル樹脂を使用することができる。
【0034】
角度αの勾配は一定であるか又は変化することができ、角度αは、特に誘導される渦電流に応じて、任意に選択することができる。
【0035】
本発明による永久磁石の好ましい製造方法を以下で説明する。
【0036】
ブランクが、磁界中で、それから永久磁石1が作られるべき粉末材料、例えば上述した材料から、プレスされる。磁界は、既知の態様で、ブランクに好ましい磁気配向を提供する機能を果たす。ブランクは、当業者に知られているように、プレスされ、次いで焼結される。
【0037】
更なるステップで、ブランクは切断され、所望の筒形状に達するまで研磨される。中空筒が生成されるように、ドリルビットが筒軸に沿って孔を生成する。
【0038】
例えばエロージョンワイヤ切断機のような既知の機械により行われる切断工程によって、中空円筒に上述したような2つの溝2及び3が設けられる。溝2及び3は中心筒軸に対して軸対称に配置されているので、溝2及び3を単一のエロージョンワイヤで同時に切ることができる。
【0039】
溝2及び3の端部に到達した後、エロージョンワイヤは切除される。溝は絶縁材料で充填することができ、表面処理が可能である。
【0040】
図2a~2eは、第2の例示的な実施形態を示す。参照番号は、図1a~1eで使用されたものと同じである。第1の例示的な実施形態と第2の例示的な実施形態との差異は、溝2及び3の経路にある。第2の例示的な実施形態において、溝は、概して水平方向に延び、方向が数回、180°変化する。方向反転部は、参照番号2c及び3cによって示されている。溝2及び3は、筒軸5に対して対称に配置されている。
【0041】
ここでは本発明の好ましい実施形態が示され記載されているが、本発明はそれに限定されず、他の方法で、以下の請求項の範囲内で、様々に具現化され実施され得ることが、明確に理解されるべきである。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
【国際調査報告】