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特表2022-543678変異型PGLBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】変異型PGLBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20221005BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20221005BHJP
   C12P 19/00 20060101ALI20221005BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20221005BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/10
C12P19/00
C12P21/02 B
C12N15/10 200Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022507790
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2020072102
(87)【国際公開番号】W WO2021028303
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/884,791
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/931,265
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イーンケン,レイ アン
(72)【発明者】
【氏名】カーピアク,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ケムラー,シュテファン ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】コヴァリク,ミカエル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】メルビー,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】オーリス,アン
(72)【発明者】
【氏名】ケバット,ジュリアン ローラン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD02
4B050FF14E
4B064AF22
4B064AG01
4B064CA21
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA19
(57)【要約】
本開示は、脂質キャリアからタンパク質上のグリコシル化モチーフにおけるアスパラギン再供給への糖の転移を効率的に触媒する能力を有する変異型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素を提供する。また、変異型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド、改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素を発現し得る宿主細胞、および改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素をN-グリコシル化タンパク質を作製するために使用する方法も提供される。また、改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素を使用して作製されるN-グリコシル化タンパク質も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)ポリペプチドまたはその機能的断片であって、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドアミノ酸配列が、アミノ酸X57、X63、X94、X101、X172、X176、X191、X193、X233、X234、X255、X286、X295、X301、X319、X397、X402、X425、X435、X446、X462、X479、X523、X532、X601、X605、X606、X610、X645、X676およびX695からなる群から選択される少なくとも1つの残基が配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸に置換されているという特徴を含む、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項2】
配列番号1の57番目のアミノ酸に相当する残基がRまたはKまたはT、好ましくはRまたはT、より好ましくはRに変異している、請求項1に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項3】
PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドアミノ酸配列が、アミノ酸X78、X84、A155、X293、X300、X301、X306、X308、X462、X464、X479、X523およびX570からなる群から選択される少なくとも1つの残基が配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸に置換されているという特徴を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項4】
アミノ酸配列が、X78がTに変異している;X84がWに変異している;X155がQに変異している;X293がCに変異している;X300がLに変異している;X301がPまたはGに変異している;X306がHに変異している;X308がWに変異している;X462がW、NまたはTに変異している;X464がLに変異している;X479がMに変異している;X523がRに変異している;X570がRまたはVに変異している;ことからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、請求項3に記載のPglB OSTポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項5】
アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸X301に相当する残基がPに変異している;配列番号1のアミノ酸X462に相当する残基がNまたはWに変異している;および配列番号1のアミノ酸X479に相当する残基がMに変異していることからなるリストから選択される少なくとも1つの特徴を含む、請求項3~4のいずれか一項に記載のPglB OST。
【請求項6】
配列番号1のX300に相当するアミノ酸がLに変異している;配列番号1のX301に相当するアミノ酸がPに変異している、配列番号1のX308に相当するアミノ酸がWに変異している、配列番号1のX462に相当するアミノ酸がWに変異している、配列番号1のX479に相当するアミノ酸がMに変異している、および配列番号1のX570に相当するアミノ酸がRに変異している、という特徴のうち少なくとも2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを含む、請求項3~5のいずれか一項に記載のPglB OST。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸X77に相当する残基がRであり、配列番号1のアミノ酸X311に相当する残基がVである、請求項1~6のいずれか一項に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項8】
配列番号1のアミノ酸X57、X462およびX479に相当する残基が、配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換され、場合によりA57R、Y462WおよびH479Mとなっている、請求項1~7のいずれか一項に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項9】
全長であって、場合により、712、713または714アミノ酸の長さである、請求項1~8のいずれか一項に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチド。
【請求項10】
配列番号12のアミノ酸X57に相当する残基が、配列番号12のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換され、場合によりA57Rとなっている、カンピロバクター・コリ由来のPglB(PglBC.coli)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の変異型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたは請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む、組成物または宿主細胞(例えば、原核生物宿主細胞または大腸菌宿主細胞)。
【請求項13】
グリコシル化タンパク質を作製するためのプロセスであって、
(a)請求項12に記載の宿主細胞をタンパク質の生産に好適な条件下で培養する工程;および
(b)前記宿主細胞からグリコシル化タンパク質を単離する工程;
を含む、プロセス。
【請求項14】
タンパク質の、アミノ酸配列Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)を含むグリコシル化コンセンサス配列のN残基に糖が結合しているグリコシル化タンパク質の生産における、請求項1~57のいずれか一項に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片の使用。
【請求項15】
前記PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片が、配列番号1の配列を有する、相当するPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼの少なくとも1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、700倍、1000倍のグリコシル化タンパク質を生産するように糖によるタンパク質のグリコシル化の収量を高めることができる、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼならびにタンパク質のグリコシル化および/または糖鎖に結合したキャリアタンパク質の生産におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、改良されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドおよび前記ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。
【背景技術】
【0002】
グリココンジュゲートワクチンは、多くの命を脅かす細菌感染を予防するそれらの能力に関して広く認知されている。グリココンジュゲートワクチンは一般に有効で安全と考えられ、30年超にわたってヒトにおいて使用されてきた。従来のグリコワクチン生産は、多くの場合、病原性細菌の多糖抗原での免疫原性キャリアタンパク質の化学修飾を含んでいる。しかしながら、最近になって、生産コストを削減し、グリココンジュゲートワクチン製剤の均一性ならびにおそらくは効力および安全性をさらに高めると思われるグリココンジュゲートワクチンを作製するための生物学的プロセスが浮上した。
【0003】
真核細胞では、N結合型グリコシル化は、いくつかの酵素を含む重要な翻訳後タンパク質修飾機構である。原核細胞では、N結合型グリコシル化は、ある特定の細菌N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(N-OSTs)によって触媒される。カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)(C. jejuni)のタンパク質グリコシル化遺伝子群には、膜結合型N-OST(PglBCj)をコードするpglB遺伝子が含まれる。PglBは大腸菌(Escherichia coli)(E. coli)などの標準的な細菌宿主で発現させることができ、少なくとも1つの表面露出D/E-Z-N-Z-S/T(ZおよびZ≠P)グリコシル化モチーフを有する共発現ペリプラズムタンパク質をグリコシル化することができる。PglBは、特定のC.ジェジュニタンパク質に、また、改変されたグリコシル化部位を含む他生物の免疫原性キャリアタンパク質に細菌多糖抗原を転移することができる。PglBは、オリゴ糖、ならびにある程度まで、グラム陰性菌のO-抗原リポ多糖構造およびグラム陽性細菌の莢膜抗原多糖を転移することができる。しかしながら、PglBのオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性の効率は、必要とされるコンセンサス配列を含むタンパク質に共有結合される糖の性質によって異なることがある。従って、必要とされるグリコシル化モチーフを含むタンパク質に、C.ジェジュニで転移されるものとは異なる構造を有する糖の効率的転移を触媒し得る改良されたPglBタンパク質の必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、C.ジェジュニ細胞においてタンパクに転移されないある範囲の糖を転移する場合にPglBの効率を向上させるように修飾された、改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼを提供する。
【0005】
よって、配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)ポリペプチド、またはその機能的断片が提供され、前記PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸57、63、94、101、176、191、193、233、234、286、301、319、397、402、435、446、462、479、523、532、605、610、645、676および695からなる群から選択される少なくとも1つの残基が、配列番号1または2のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸に置換されているという特徴を含む。好ましい実施形態では、このアミノ酸配列は、配列番号2と少なくとも90%同一である。
【0006】
第2の実施形態では、本発明の変異型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0007】
第3の実施形態では、本発明の少なくとも1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたは本発明の少なくとも1つのPglB OSTをコードするポリヌクレオチドを含む組成物または宿主細胞(例えば、原核生物宿主細胞または大腸菌宿主細胞)が提供される。
【0008】
第4の実施形態では、グリコシル化タンパク質を作製するプロセスであって、
(a)本発明のPglBおよび/または本発明のPglBをコードするポリヌクレオチドを含む本発明の宿主細胞を、タンパク質の生産に好適な条件下で培養する工程;ならびに
(b)前記宿主細胞からグリコシル化タンパク質を単離する工程
を含むプロセスが提供される。
【0009】
第5の実施形態では、グリコシル化タンパク質を作製するためのin vitroプロセスであって、
i)以下:
a)本発明のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ;
b)アミノ酸配列Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)を含む少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含むタンパク質;ならびに
c)PglBによって認識される脂質キャリア上の糖鎖
を一緒に混合する工程;
ii)タンパク質の少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列に糖鎖を転移してグリコシル化タンパク質を得るためにPglBの酵素活性に好適な条件下でインキュベートする工程;ならびに
iii)前記グリコシル化タンパク質を単離する工程;
を含むプロセスが提供される。
【0010】
第6の実施形態では、本発明のプロセスによって作製されるグリコシル化タンパク質が提供される。
【0011】
第7の実施形態では、グリコシル化タンパク質を形成するために、タンパク質のアミノ酸配列Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)を含むグリコシル化コンセンサス配列のN残基に糖が結合しているグリコシル化タンパク質の生産における本発明のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1-1】図1-PglBにおける突然変異は、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)血清型8の莢膜糖をタンパク質に転移する際により高いオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をもたらす。パネルAは、肺炎連鎖球菌の莢膜糖をEPAキャリアタンパク質に転移するために、ラウンド1、2、3、4、5、6および7からのPglBを用いた場合の生産の併合増加倍率を示したものである。パネルBは、種々のラウンドの突然変異の後に肺炎連鎖球菌血清型8糖でグリコシル化されたEPAの増加を示すウエスタンブロットおよびクーマシー染色ゲルを示す。パネルCは、点突然変異PglBCjを用いたバイオコンジュゲーション後の肺炎連鎖球菌血清型8糖を含むコンジュゲートの生産増加を示すクーマシー染色ゲルおよび抗肺炎連鎖球菌血清型8抗体をプローブとしたウエスタンブロットを示す。
図1-2】図1-1の続きである。
図1-3】図1-2の続きである。
図1-4】図1-3の続きである。
図1-5】図1-4の続きである。
図2図2-変異型PglBはまた、肺炎連鎖球菌血清型22Fのタンパク質への転移の活性を増大させた。パネルAは、肺炎連鎖球菌血清型22Fの莢膜糖のタンパク質への転移における、ラウンド3、4および5のPglBの活性の増大を示すELISA結果を示す。パネルBは、第3、4および5ラウンドのPglBからの、血清型22F莢膜糖でグリコシル化されたEPAの生産の増大のウエスタンブロット結果を示す。
図3図3-変異型PglBは、肺炎連鎖球菌血清型23Aおよび35Bのタンパク質への転移の活性を増大させた。パネルAは、転移を触媒するためにラウンド4、5および7のPglBを用いた場合の、肺炎連鎖球菌血清型23A多糖によるEPAのグリコシル化の増大を示すクーマシーゲルおよびウエスタンブロットの結果を示す。パネルBは、野生型PglBを用いた場合と比較した、肺炎連鎖球菌血清型35Bの莢膜糖を転移するためにラウンド3 PglBを用いた場合のEPAのグリコシル化の増大を示す。
図4図4-変異型PglBは、肺炎連鎖球菌血清型19Aのタンパク質への転移活性を増大させた。次のPglB:レーン1-不活性PglB、レーン2-Y77R、N311VおよびH479M突然変異を含むPglB、レーン3-ラウンド6 PglB、レーン4~10-種々のラウンド7 PglB突然変異、を用いた場合に肺炎連鎖球菌血清型19Aでグリコシル化されたEPAの量に関するクーマシー染色およびウエスタンブロット結果。
図5-1】図5-肺炎連鎖球菌莢膜多糖反復単位の構造。暗い丸はグルコース残基を示し、明るい丸はガラクトース残基を示し、「f」が付いた明るい丸はガラクトフラノースを示し、暗い四角はN-アセチルグルコサミンを示し、明るい四角はN-アセチルガラクトサミンを示し、三角はラムノースを示し、上部が暗い水平に分割された菱形はグルクロン酸を示し、楕円はグリセロールを示し、星形はリビトールを示し、暗い四角はN-アセチルフコサミンを示し、中間の四角はN-アセチルマンノサミンを示し、対角線で分割された四角は4-アミノ-N-アセチルフコサミンを示し、水平に分割された菱形はガラクツロン酸を示す。
図5-2】図5-1の続きである。
図5-3】図5-2の続きである。
図5-4】図5-3の続きである。
図5-5】図5-4の続きである。
図5-6】図5-5の続きである。
図6-1】図6-群B連鎖球菌属莢膜糖反復単位の構造。
図6-2】図6-1の続きである。
図6-3】図6-2の続きである。
図6-4】図6-3の続きである。
図6-5】図6-4の続きである。
図7-1】図7-カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)株(EFM37568はやや相違があるが、EIA90085およびCDG57218はより類似している)由来のPglB OST配列のアミノ酸配列のアラインメント。
図7-2】図7-1の続きである。
図7-3】図7-2の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、D/E-Z-N-Z-S/T(ZおよびZ≠P)の少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含むタンパク質への糖の付加を触媒し得る高効率のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼを提供する。このような高効率のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、PglBを改変することによって達成される。例えば、単独または組合せにおいて有利な点突然変異を選択することで、N-グリコシル化タンパク質の生産の増大がもたらされる。
【0014】
本明細書に記載のPglB OSTの活性を確認するためのアッセイは当業者に周知であり(例えば、ELISA、ウエスタンブロット)、実施例2および3に記載されるアッセイを含む。いくつかの実施形態では、PglB OSTは、場合により宿主細胞、場合により異種宿主細胞(すなわち、カンピロバクター細胞ではない宿主細胞)で発現される改変されたPglBである。
【0015】
オリゴ糖および多糖は、本明細書に記載のいずれのオリゴ糖または多糖を含んでもよい。
【0016】
キャリアタンパク質は、本明細書に記載のいずれのキャリアタンパク質を含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、PglB OSTは、例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上のアミノ酸における修飾(例えば、PglBをコードするポリヌクレオチドにおけるアミノ酸置換またはヌクレオチド置換)、例えば、2~30、3~25、4~20、5~20、6~20、7~20または10~20のアミノ酸置換を含む。一実施形態において、置換は、配列番号1の以下の残基:57;77;57および77;311および77;462および479(これらの両方の位置の突然変異は相乗作用してPglBの活性を増加させる);57、77および311;57および462;57、462および479;57、462、479、77および311;57、462、479、300、301、308および570;57、462、479、300、301、308、570および77;57、462、479、300、301、308、570、77および311に相当する位置における置換である。
【0018】
一実施形態において、以下の置換は、配列番号1の以下の残基に相当する位置に存在する(ここで、「/」は「または」を表す):
A57R/T;Y77R;A57R/TおよびY77R;A57RおよびY77R;N311VおよびY77R;Y462WおよびH479M(相乗突然変異);A57R/T、Y77RおよびN311V;A57R、Y77RおよびN311V;A57R/TおよびY462P/C/W/T/N;A57R/TおよびY462W/T/N;A57RおよびY462W;Y462P/C/W/T/NおよびH479M(相乗突然変異);A57R/T、Y462P/C/W/T/NおよびH479M;A57R/T、Y462W/T/NおよびH479M;A57R、Y462WおよびH479M;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、Y77RおよびN311V;A57R/T、Y462W/T/N、H479M、Y77RおよびN311V;A57R、Y462W、H479M、Y77RおよびN311V;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、L301P/G/FおよびL570R/V;A57R、Y462W、H479M、L301PおよびL570R;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、N300L、L301P/G/F、F308W/FおよびL570R/V;A57R、Y462W、H479M、N300L、L301P、F308WおよびL570R;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、L301P/G/F、L570R/VおよびY77R;A57R、Y462W、H479M、L301P、L570RおよびY77R;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、N300L、L301P/G/F、F308W/F、L570R/VおよびY77R;A57R、Y462W、H479M、N300L、L301P、F308W、L570RおよびY77R;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、L301P/G/F、L570R/V、Y77RおよびN311V;A57R、Y462W、H479M、L301P、L570R、Y77RおよびN311V;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、N300L、L301P/G/F、F308W/F、L570R/V、Y77RおよびN311V;A57R、Y462W、H479M、N300L、L301P、F308W、L570R、Y77RおよびN311V;A57R、Y462W、H479M、N300L、L301P、F308W、L570R、Y77R、S80DおよびN311V。
【0019】
いくつかの実施形態において、改変されたPglBの単一の点突然変異が、多糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化の効率を高めて、グリコシル化タンパク質の相対的収量の増大をもたらし得る。相対的収量の増大は、特定のアミノ酸置換を含む改変されたPglB OSTにより生産されたグリコシル化タンパク質の収量を、そのアミノ酸置換を含まない、相当するPglB OSTにより生産されるグリコシル化タンパク質の収量で割ることによって求めることができる。一実施形態において、改変されたPglBにおける単一の点突然変異の導入は、相対的収量を、その特定の点突然変異がない相当するPglBの割合の約1.1倍~約10倍、約1.2倍~約7倍、約1.3倍~約5倍、約1.5倍~約2.5倍または約1.5倍~約6倍増大させることができる。この単一の点突然変異のプラスの効果は、PglBにおける複数の点突然変異と組み合わせた場合に掛け合わせが可能である。いくつかの実施形態では、改変されたPglBは、その点突然変異の組合せが導入されていない相当するPglB(元のPglB)を用いた場合に得られる収量の2倍を超えて、5倍を超えて、10倍を超えて、50倍を超えて、100倍を超えて、200倍を超えて、500倍を超えて、700倍を超えて、1,000倍を超えて、2,000倍を超えて、3,000倍を超えて、4,000倍を超えて、5,000倍を超えて、6,000倍を超えて、7,000倍を超えて、8,000倍を超えて、10,000倍を超えてグリコシル化タンパク質の相対的収量を増大させる、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のアミノ酸置換を含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、改変されたPglBおよび改変されたPglBの非変異形態のタンパク質グリコシル化の収量は、改変されたPglBと元のPglBの、還元末端にN-アセチル糖がない多糖またはオリゴ糖を有するタンパク質のグリコシル化収量を比較することによって比較することができる。例えば、還元末端にグルコースを有する糖、例えば、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖またはB群連鎖球菌莢膜糖、例えば、図5および6に示されるもの。一実施形態において、還元末端にN-アセチル糖がない多糖またはオリゴ糖は、肺炎連鎖球菌血清型8の莢膜糖である。
【0021】
いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖がない多糖またはオリゴ糖を有するタンパク質の改変されたPglBのグリコシル化収量は、非変異型PglBの、還元末端にN-アセチル糖がある多糖またはオリゴ糖を有するグリコシル化タンパク質の収量と比較される。例えば、還元末端にグルコースを有する糖、例えば、肺炎連鎖球菌莢膜多糖またはB群連鎖球菌莢膜糖、例えば、図5および6に示されるもの。一実施形態において、還元末端にN-アセチル糖がない多糖またはオリゴ糖は、肺炎連鎖球菌血清型8の莢膜糖である。
【0022】
いくつかの実施形態では、改変されたPglBの、肺炎連鎖球菌血清型8莢膜糖でグリコシル化されたタンパク質のグリコシル化収量は、非変異型PglBの少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.5倍、1.7倍、2倍、2.5倍、3倍、5倍、10倍、100倍、500倍または1,000倍増大する。
【0023】
いくつかの実施形態において、改変されたPglBは、肺炎連鎖球菌血清型8莢膜糖によるタンパク質のグリコシル化のin vivoまたはin vitro収量を、改変されたPglBの非変異形態で達成される収量の約1.2倍~約5,000倍、約1.5倍~約2,000倍、約2倍~約1,000倍、約2倍~約20倍または約20倍~約2,000倍増大させ得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、改変されたPglBは、約1%~約70%、約3%~約65%、約5%~約60%、約5%~約55%、約10%~約50%、約15%~約45%、約20%~約40%、または約25%~約35%のタンパク質のin vivoグリコシル化レベルまたはin vitroグリコシル化レベルをもたらし得る。いくつかの実施形態では、改変されたPglBは、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%の、キャリアタンパク質のin vivoグリコシル化レベルまたはin vitroグリコシル化レベルをもたらし得る。
【0025】
改変されたPglBは、PglBを有するいずれの生物に由来するものであってもよい。いくつかの実施形態では、改変されたPglBは、原核生物に由来する。いくつかの実施形態では、改変されたPglBは、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)(C.ジェジュニ)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)(C.コリ)、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)(C.ラリ)、カンピロバクター・ウプサリエンシス(Campylobacter upsaliensis)(C.ウプサリエンシス)、カンピロバクター・カーバス(Campylobacter curvus)(C.カーバス)、カンピロバクター・コンシスス(Campylobacter concisus)(C.コンシスス)、カンピロバクター・ホミニス(Campylobacter hominis)(C.ホミニス)、カンピロバクター・グラシリス(Campylobacter gracilis)(C.グラシリス)、カンピロバクター・ショワエ(Campylobacter showae)(C.ショワエ)、スルフリモナス・オートトロフィカ(Sulfurimonas autotrophica)(S.オートトロフィカ)、スルフリモナス・デニトリフィカンス(Sulfurimonas denitrificans)(S.デニトリフィカンス)、スルフリモナス・デレイアヌム(Sulfurimonas deleyianum)(S.デレイアヌム)、スルフリクルブム・クジエンス(Sulfuricurvum kujiense)(S.クジエンス)、ナウチリア・プロフンディコラ(Nautilia profundicola)(N.プロフンディコラ)、スルフボラム属(Sulfuvorum sp.)NBC37-1、ウォリネラ・サクシノゲネス(Wolinella succinogenes)(W.サクシノゲネス)、カミニバクター・メディアトランティカス(Caminibacter mediatlanticus)(C.メディアトランティカス)、ニトラチルプトル属(Nitratiruptor sp.)SB155-2、ヘリコバクター・プロラム(Helicobacter pullorum)(H.プロラム)、ヘリコバクター・カナデンシス(Helicobacter Canadensis)(H.カナデンシス)、ヘリコバクター・ウィンガメンシス(Helicobacter winghamensis)(H.ウィンガメンシス)、デスルフロバクテリウム・サーモリトル(Desulfurobacterium thermolithotr)(D.サーモリトル)、デスルホミクロビウム・バキュラツム(Desulfomicrobium baculatum)(D.バキュラツム)、デスルホビブリオ・ブルガリス(Desulfovibrio vulgaris)(D.ブルガリス)、デスルホビブリオ・アルカリフィルス(Desulfovibrio alkaliphilus)(D.アルカリフィルス)、デスルホハロビウム・レトバエンス(Desulfohalobium retbaense)(D.レトバエンス)、デフェリバクター・デスルフリカンス(Deferribacter desulfuricans)(D.デスルフリカンス)、デスルホビブリオ・サレキシゲネス(Desulfovibrio salexigenes)(D.サレキシゲネス)、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)(D.サレキシゲネス)、デスルホビブリオ・エスペエンシス(Desulfovibrio aespoeensis)(D.エスペエンシス)、カンド・プニセイスピリラム・マリナム(Cand. Puniceispirillum marinum)、カルディテリビブリオビブリオ・ニトロレデュセンス(Calditerrivibrio nitroreducens)(C.ニトロレデュセンス)またはメタノテルムス・フェルビデュス(Methanothermus fervidus)(M.フェルビデュス)に由来する。
【0026】
本明細書で特定される点突然変異は一般に、C.ジェジュニのPglBの配列(例えば、配列番号1のC.ジェジュニのPglB)に見出されるものである。本発明のさらなる態様は、配列番号1のC.ジェジュニPglBについて開示されているものに相当する突然変異を含む、上記に確認される種のいずれかのPglBである。
【0027】
いくつかの実施形態では、PglB OSTポリペプチドは、改変されたPglB改変されたPglBホモログまたは改変された形態の天然PglB変異体である。PglBCjホモログは天然PglBCjホモログおよび非天然PglBCjホモログを含み得る。PglBCjホモログは、配列番号1のPglBCjと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。配列同一性の程度は、NeedlemanおよびWunschのホモロジーアラインメントアルゴリズム、ClustalW プログラムまたはBLASTPアルゴリズムを使用することによって決定され得る。グローバルアラインメントを用いるアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch)が好ましい。
【0028】
いくつかの実施形態では、改変されたPglBは、改変されたPglBCl、改変されたPglBClホモログまたは改変された形態の天然PglBCl変異体である。PglBClホモログは、天然PglBClホモログおよび非天然PglBClホモログを含み得る。PglBClホモログは、配列番号2のPglBClと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。配列同一性の程度は、NeedlemanおよびWunschのホモロジーアラインメントアルゴリズム、ClustalW プログラムまたはBLASTPアルゴリズムを使用することによって決定され得る。グローバルアラインメントを用いるアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch)が好ましい。
【0029】
いくつかの実施形態では、改変されたPglBは、PglB断片、例えば、PglBCj断片を含む。いくつかの実施形態では、PglB断片は、例えば配列番号1の全長PglBの少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも550、少なくとも600、または少なくとも650の連続するアミノ酸を含む。
【0030】
PglBCjの修飾
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変されたPglB OSTは、修飾された野生型N-OST、例えば、野生型PglBCjである。いくつかの実施形態では、野生型PglBCjは、配列番号9、またはその天然変異体の野生型PglBCjである。
【0031】
【0032】
いくつかの実施形態では、配列番号1のX57、X63、X94、X101、X172、X176、X191、X193、X233、X234、X255、X286、X295、X301、X319、X397、X402、X425、X435、X446、X462、X479、X523、X532、X601、X605、X606、X610、X645、X676およびX695のアミノ酸の1以上、またはそれらの任意の組合せが修飾される。一実施形態において、X57、X301、X319、X462、X479およびX523の1以上、またはそれらの任意の組合せが例えば置換によって修飾される。一実施形態では、X57、X462およびX479の1以上が修飾される。一実施形態では、X57が修飾される。一実施形態では、X462およびX479が修飾される。一実施形態では、X57、X462およびX479が置換される。一実施形態では、A57R置換がなされる。一実施形態では、A57R、Y462WおよびH479M置換がなされる。
【0033】
(a)PglBClの修飾
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾されたPglB OSTは、修飾された野生型PglB OST、例えば、野生型PglBCl(カンピロバクター・ラリのPglB)である。いくつかの実施形態では、野生型PglBCjは、配列番号10の、またはその天然変異体の野生型PglBClである。
【0034】
【0035】
別の実施形態では、本明細書では、N314V置換およびY79R置換を含む改変されたPglBClが提供される。さらなる実施形態では、A59R突然変異を含む改変されたPglBClが提供される。さらなる実施形態では、Y468WおよびH485M突然変異を含む改変されたPglBClが提供される。さらなる実施形態では、A59R、Y468WおよびH485M置換を含む改変されたPglBClが提供される。さらなる実施形態では、N314V、Y79R、A59R、Y468WおよびH485M置換を含む改変されたPglBClが提供される。
【0036】
カンピロバクター・コリPglB
本発明のさらなる態様は、特に、Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)グリコシル化コンセンサス配列を含むキャリアタンパク質へのある種の糖の転位に関してより高い活性を有することが判明したカンピロバクター・コリに由来する天然PglBである。C.コリ株EFM37568(配列番号12)の場合、少なくともフレクスナー赤痢菌(S. flexneri)2a、3aおよび6、ならびに大腸菌O18の転移に関して、OST活性が天然C.ジェジュニPglB(配列番号1)よりも高いことが判明している。
【0037】
C.コリ株CDG57218(配列番号13)由来のPglBを、グリコシル化コンセンサス配列を含むタンパク質への大腸菌O18糖の転移におけるその活性に関して試験した。このOST活性は、C.ジェジュニのPglBと配列番号13のPglBの間で同等であった。
【0038】
C.コリ株EIA90085(配列番号14)由来のPglBを、グリコシル化コンセンサス配列を含むタンパク質への大腸菌O18糖の転移におけるその活性に関して試験した。このOST活性は、C.ジェジュニのPglBのOST活性よりもやや大きかった。本発明者らは、PglBについての、グリコシル化コンセンサス配列を含むタンパク質への糖の転移を触媒することに関して、C.コリのいくつかの株由来の野生型PglBは、C.ジェジュニ由来のPglBと同等であるかより優れていると結論付ける。C.コリ PglBの3つの株の配列を図7に示すが、株EFM37568のPglB配列は、調べたさらに2つのPglBのアミノ酸配列からわずかに異なる。C.コリEFM37568 PglBは特に良好な結果をもたらした。
【0039】
本発明のさらなる実施形態は、アミノ酸配列Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)を含むグリコシル化コンセンサス配列のN残基に糖が結合しているグリコシル化タンパク質の生産における、カンピロバクター・コリ由来のPglB(PglBC.coli)オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)またはその機能的断片の使用を提供する。一実施形態において、この使用は、配列番号12、13または14と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有するC.コリ PglBの使用である。場合により、C.コリ PglBは、配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0040】
本発明のさらなる実施形態は、C.coli PglBへの本明細書に記載のアミノ酸置換の導入を開示する。一実施形態において、C.コリPglBは、X57、X63、X94、X101、X172、X176、X191、X193、X233、X234、X255、X286、X295、X301、X319、X397、X402、X426、X436、X447、X463、X480、X524、X533、X602、X606、X607、X611、X646、X677およびX696からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基が配列番号12のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸に置換されているという特徴を含む。一実施形態において、配列番号12のアミノ酸X57、X463およびX480に相当する残基のいずれか1つに置換を含むPglBC.coliオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたは機能的断片が提供され;場合により、前記置換は、A57R、Y463WおよびH480Mのうち少なくとも1つである。一実施形態において、PglBC.coliは、X57、X77、X311、X462および/またはX480の残基に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。一実施形態において、アミノ酸置換は、これらの位置の1、2、3、4または5箇所におけるものである。一実施形態において、これらの置換は、A57R、Y77R、N311V、Y463Wおよび/またはH480Mの残基の少なくとも1つのアミノ酸置換である。一実施形態において、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのこれらの突然変異が、場合により配列番号12の配列を有するC.コリPglBのアミノ酸配列に導入される。
【0041】
オリゴ糖および多糖
本明細書に提供される改変されたPglB OSTによってタンパク質に連結することができるオリゴ糖は、約2~約100の単糖単位、例えば、2、4、6、8、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90もしくは100、または4~90、6~80、8~70、10~60、15~50、20~40または25~40の単糖単位を有し得る。本明細書に提供される改変されたPglB OSTによってタンパク質に連結することができる多糖は、100を超える単糖単位、例えば、少なくとも101、110、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000単糖単位以上を有し得る。例えば、100~500、100~300または100~200の単糖単位。
【0042】
これらのタンパク質またはPglB OSTは、本明細書に開示されるいずれのPglB OSTまたはいずれのタンパク質も含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、ペントース、ヘキソース、またはヘプトースである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、アルドペントースまたはケトペントースである。いくつかの実施形態では、ペントースは、D-アラビノース、D-リキソース、D-リボース、D-キシロース、D-リブロース、またはD-キシルロースである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、アルドヘキソースまたはケトヘキソースである。いくつかの実施形態では、ヘキソースは、例えば、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、D-プシコース、D-フルクトース、D-ソルボースまたはD-タガトースである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、デオキシまたはジ-デオキシ糖、例えば、例えば、ラムノース、フコース、またはアベクオースである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、アルドヘプトースまたはケトヘプトースである。いくつかの実施形態では、ヘプトースは、マンノヘプトースである。好ましい実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、グルコースである。
【0044】
本明細書に提供される改変されたPglB OSTによってタンパク質のN残基に連結することができるオリゴ糖および多糖は、いずれの生物、例えば、原核生物または真核生物に通常見られるものであってもよい。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、病原生物、例えば、ヒト病原体または動物病原体(例えば、農用動物またはペット)由来のものである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、細菌生物由来のものである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、大腸菌、赤痢菌(Shigella sonnei)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、サルモネラ菌属(Salmonella sp)(例えば、S.エンテリカ亜種エンテリカ(S. enterica subsp. Enterica)、S.エンテリカ亜種サラマエ(S. enterica subsp. Salamae)、S.エンテリカ亜種アリゾナエ(S. enterica subsp. arizonae)、S.エンテリカ亜種ジアリゾナエ(S. enterica subsp. Diarizonae)、S.エンテリカ亜種ホウテナエ (S. enterica subsp. Houtenae)、S.ボンゴリ(S. bongori)、およびS.エンテリカ亜種インディカ(S. enterica subsp. Indica))、シュードモナス属(Pseudomonas sp)(緑膿菌(P. aeruginosa))、クレブシエラ属(Klebsiella sp.)(例えば、K.ニューモニエ(K. pneumonia))、アシネトバクター(Acinetobacter)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、コレラ菌(Vibrio cholera)、リステリア属(Listeria sp.)、例えば、L.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)および類鼻疽菌(pseudomallei)、野兎病菌(Francisella tularensis)、カンピロバクター属(Campylobacter sp.)(C.ジェジュニ(C. jejuni));クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、大腸菌(E. coli)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalacticae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、腸球菌(Enterococcus faecalis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、淋菌(Neisseria gonorrhoea)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)由来のものであり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、抗原、例えばヒトまたは動物(例えば、農用動物またはペット)において免疫原性があるエピトープを含む。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、大腸菌のO抗原(例えば、O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O20、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O97、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144,O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、O187)、フレクスナー赤痢菌O1A、O1B、O2A、O3A、O6、赤痢菌O抗原、志賀赤痢菌O1、サルモネラ菌属(S.エンテリカ亜種エンテリカ、S.エンテリカ亜種サラマエ、S.エンテリカ亜種アリゾナエ、S.エンテリカ亜種ジアリゾナエ、S.エンテリカ亜種ホウテナエ、S.ボンゴリ、またはS.エンテリカ亜種インディカ抗原、および[44]に詳細に示されるようなO1~67型、シュードモナス属(緑膿菌O血清型1~20[45])、クレブシエラ属(例えば、K.ニューモニエ血清型O1、O2(および亜血清型)、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12[46])、アシネトバクターO抗原(例えば、[47]に示されるA.バウマニ(A. baumannii)O抗原)、クラミジア・トラコマチスO抗原(血清型A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L1、L2、L3)、コレラ菌O抗原O1~155、リステリア属、特に、L.モノサイトゲネス1、2、3、4型およびその亜血清型、レジオネラ・ニューモフィラ血清型1~15 O抗原、パラ百日咳菌O抗原、鼻疽菌および類鼻疽菌O抗原、野兎病菌、カンピロバクター属(C.ジェジュニ);クロストリジウム・ディフィシル(莢膜多糖血清型A、G、H、K、S1、S4、D、Cd-5、K Toma et al. 1988、およびウェルシュ菌(C. perfringens)血清型A、B、C、DまたはE)、黄色ブドウ球菌血清型5または血清型8由来の莢膜糖、肺炎連鎖球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、7F、8、9A、9L、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、16F、18C、19A、19F、22F、23F、33F、35B由来の莢膜糖、化膿連鎖球菌(B群連鎖球菌属血清型Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、またはVIII)由来の莢膜血清型多糖、ストレプトコッカス・アガラクティエ(A群連鎖球菌属莢膜多糖)、髄膜炎菌(血清群A、B、C、W、Y、X)、カンジダ・アルビカンス、ヘモフィルス・インフルエンザ、腸球菌莢膜多糖I~V型;およびその他の表面多糖構造、例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ糖脂質、髄膜炎菌ピリンOグリカンおよびリポオリゴ糖(LOS)、ヘモフィルス・インフルエンザLOS、森林型熱帯リーシュマニア・リポホスホグリカン、腫瘍関糖鎖抗原(マラリアグリコシルホスファチジルイノシトール、結核菌アラビノマンナンのものを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、黄色ブドウ球菌またはチフス菌sv.多糖である。いくつかの実施形態では、多糖は、黄色ブドウ球菌CP5もしくはCP8またはネズミチフス菌(S. enterica sv. Typhimurium)LT2多糖である。
【0047】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、還元末端にN-アセチル糖を含む。いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を含むオリゴ糖または多糖は、例えば、大腸菌のO抗原(例えば、O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144,O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、O187)、黄色ブドウ球菌(S. Aureus)の莢膜多糖(例えば、CP5またはCP8)、野兎病菌Schu4莢膜多糖、肺炎連鎖球菌莢膜の莢膜多糖(例えば、CP1、4、5、12、25、38、44、45または46)、髄膜炎菌ピリンOグリカン、鼻疽菌および類鼻疽菌O抗原、パラ百日咳菌O抗原、レジオネラ・ニューモフィラ血清型1~15O抗原、リステリア属O抗原、特に、リステリア・モノサイトゲネスのO抗原1、2、3、4型、シュードモナス属のO抗原(緑膿菌O血清型1~20)、クレブシエラ属のO抗原(例えば、K.ニューモニエ血清型O1、O2(および亜血清型)、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12)、赤痢菌属(例えば、志賀赤痢菌、赤痢菌、フレクスナー赤痢菌、ボイド赤痢菌(S. boydii))のO抗原、アシネトバクターO抗原(例えば、A.バウマニO抗原、またはリステリア属のO抗原)を含み得る。
【0048】
N-アセチル糖は、糖の1以上の炭素原子にアミノ-アセチル(N-アセチル)置換基を含み得る。例えば、N-アセチル糖は、グルコース単位などの単糖単位のC2原子にN-アセチル置換基を含み得る(N-アセチルグルコサミン)。
【0049】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、還元末端にN-アセチル化されていない糖を含む。いくつかの実施形態では、還元末端に非N-アセチル化糖を含むオリゴ糖または多糖としては、例えば、大腸菌O20、サルモネラ属(例えば、S.エンテリカ亜種エンテリカ、S.エンテリカ亜種サラマエ、S.エンテリカ亜種アリゾナエ、S.エンテリカ亜種ジアリゾナエ、S.エンテリカ亜種ホウテナエ、S.ボンゴリ、またはS.エンテリカ亜種インディカまたはチフス菌)の抗原、1~67型のO抗原、A群連鎖球菌(化膿連鎖球菌)、B群連鎖球菌、および肺炎連鎖球菌CPS血清型の莢膜多糖(それらの莢膜遺伝子群にwchA、wcjG、またはwcjHをコードするすなわち、CP1、4、5、12、25、38、44、45、46を除く全ての血清型)、またはサルモネラ菌sv.(S.エンテリカsv.)O抗原を含み得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、黄色ブドウ球菌CP5またはCP8またはネズミチフス菌(S. enterica sv. Typhimurium)LT2多糖、コレラ菌O抗原(例えば、O1~155)、またはリステリア属O抗原(例えば、L.モノサイトゲネス1、2、3、4型)を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、例えば、黄色ブドウ球菌血清型5、8または緑膿菌O抗原血清型O2、O5、O11、O16の莢膜多糖など、その還元末端にD-N-アセチルフコサミン(D-FucNAc)残基を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、その還元末端に4-アミノ-d-N-アセチルフコサミン(D-FucNAc4N)残基を含み、例えば、血清型1のような肺炎連鎖球菌、赤痢菌O抗原、またはプレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)O17由来のオリゴ糖または多糖が含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、例えば、緑膿菌O抗原血清型O6、O1、または野兎病菌血清型Schu4などのオリゴ糖または多糖は、その還元末端にD-N-アセチルキノサミン(D-QuiNAc)残基を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、例えば、S.エンテリカLT2などのオリゴ糖または多糖は、その還元末端にガラクトース残基を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、肺炎連鎖球菌莢膜多糖血清型5、大腸菌O1、O2、サカザキ菌(Cronobacter sakazakii)O5、すなわち、β型でL-ラムノースに1-4結合した還元末端D-GlcNAcを有する多糖およびオリゴ糖を含む。
【0056】
タンパク質
本発明の改変されたPglB OSTによってグリコシル化されるタンパク質は、グリコシル化コンセンサス配列D/E-Z-N-Z-S/T(ZおよびZ≠P)に位置する少なくとも1つのN残基を含むタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、キャリアタンパク質である。改変されたPglB OSTの活性は、キャリアタンパク質に糖免疫原を共有結合することができる。キャリアタンパク質は、結合した糖免疫原にT依存性免疫応答を生じさせるT細胞エピトープを提供する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、バイオ医薬タンパク質であり、本発明の改変されたPglB OSTはそれに少なくとも1つの糖を付加して、そのバイオ医薬タンパク質の適正なグリコシル化または適正な折り畳みまたは安定性の向上を達成する。一実施形態において、バイオ医薬タンパク質は、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体の抗原に結合し得る断片である。一実施形態において、バイオ医薬タンパク質は、エリスロポエチン、成長ホルモン、ヒトインスリン、因子VIII、因子IX、組織プラスミノーゲン活性化因子、グルカゴン、ゴナドトロピン、コロニー刺激因子、インターフェロンα、βまたはγ、インターロイキン、例えば、インターロイキン2、または腫瘍壊死因子である。
【0057】
キャリアタンパク質は、本明細書に提供される改変されたPglB OSTによってオリゴ糖または多糖に連結することができる。
【0058】
キャリアタンパク質は、いずれの天然キャリアタンパク質(PglB OSTと同じ生物に由来する)であってもまたはいずれの異種キャリアタンパク質(PglB OSTとは異なる生物に由来する)であってもよい。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、免疫原である。キャリアタンパク質は、全長タンパク質またはその断片であり得る。例示的キャリアタンパク質としては、限定されるものではないが、緑膿菌の外毒素A(EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定生腸毒素、大腸菌熱不安定生腸毒素の無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニAcrA、およびC.ジェジュニ天然糖タンパク質が挙げられる。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、緑膿菌の外毒素A(EPA)である。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変されたPglB OSTによってN-グリコシル化されたキャリアタンパク質は修飾され、例えば、そのタンパク質がグリコシル化などに対して毒性が低く、かつ/または感受性が高い方法で修飾される。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、投与するタンパク質、例えば、そのバイオコンジュゲート形態中の免疫原性組成物の低濃度化を可能とする様式でキャリアタンパク質中のグリコシル化部位の数を最大化するように修飾される。よって、特定の実施形態では、本明細書に記載のキャリアタンパク質は、そのキャリアタンパク質に通常伴うものよりも(例えば、その天然(native/natural)、例えば、「野生型」状態のキャリアタンパク質に伴うグリコシル化部位の数に比べて)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超えるグリコシル化部位を含むように修飾される。いくつかの実施形態では、グリコシル化部位の導入は、タンパク質の一次構造中のどこかにグリコシル化コンセンサス配列(例えば、(i)コンセンサス配列Asn-Z-Ser(Thr)(ここで、ZはPro以外の任意のアミノ酸から独立に選択される);または(ii)コンセンサス配列D/E-Z-N-Z-S/T(ここで、ZおよびZは独立にPro以外の任意のアミノ酸から選択される)を挿入することによって達成される。このようなグリコシル化部位の導入は、例えば、タンパク質の一次構造に新たなアミノ酸を付加すること(グリコシル化部位が完全にまたは部分的に付加される)、またはグリコシル化部位を形成するためにタンパク質中の既存のアミノ酸を修飾すること(タンパク質にアミノ酸は付加されないが、タンパク質の選択されたアミノ酸がグリコシル化部位を形成するように変異される)によって達成することができる。当業者は、タンパク質のアミノ酸配列が、当技術分野で公知のアプローチ、例えば、タンパク質をコードする核酸配列の修飾を含む人工的改変アプローチを用いて容易に修飾され得ることを認識するであろう。特定の実施形態において、グリコシル化コンセンサス配列は、キャリアタンパク質の特定の領域に、例えば、タンパク質の表面構造、タンパク質のN末端もしくはC末端、および/またはタンパク質の塩基にジスルフィド架橋によって安定化されたループが導入される。特定の実施形態では、古典的な5アミノ酸のグリコシル化コンセンサス配列は、より効率的なグリコシル化のためにリシン残基によって延長してもよく、このように、挿入されたコンセンサス配列は、挿入されるべき、またはアクセプタータンパク質アミノ酸に取って代わる5、6、または7個のアミノ酸をコードし得る。
【0060】
PglB OSTは、本明細書に開示されるいずれのN-OSTも含み得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、キャリアタンパク質の単離および/または同定を可能とするアミノ酸配列である「タグ」を含む。例えば、本明細書に記載のキャリアタンパク質にタグを付加することは、そのタンパク質の精製、従って、タグ付けされたキャリアタンパク質を含むコンジュゲートワクチンの精製に有用であり得る。本明細書において使用可能な例示的タグとしては、限定されるものではないが、ヒスチジン(HIS)タグ(例えば、ヘキサヒスチジンタグ、または6XHis-Tag)、FLAG-TAG、およびHAタグが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書で使用されるタグは、必要がなくなれば、例えば、タンパク質が精製された後に、例えば化学薬剤または酵素手段によって除去可能である。
【0062】
核酸
別の態様において、本明細書では、本明細書に提供されるように、C.ジェジュニ、C.ラリおよびC.コリを含む任意のカンピロバクター種に由来する変異型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0063】
いくつかの実施形態では、核酸は、アミノ酸57、63、94、101、176、191、193、233、234、286、301、319、397、402、435、446、462、479、523、532、605、610、645、676、または695のうち1以上が修飾された改変されたPglBCjをコードする。
【0064】
一実施形態において、配列番号1の311に相当するアミノ酸が例えばバリン残基によって置換されている(N311V)PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが提供される。一実施形態において、この311の置換に配列番号1の77に相当するアミノ酸が例えばアルギニン残基による置換(Y77R)が追加される。一実施形態において、PglB OSTをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1の57に相当するアミノ酸の例えばアルギニン残基による置換(A57R)を有する。この57の置換は、311および77の置換のいずれかと組み合わせられるか、または独立に置換される。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、N311V、Y77RおよびA57R置換を有するPglB OSTをコードする。
【0065】
一実施形態において、配列番号1の残基462または479または462および479における置換、例えば、Y462WまたはH479MまたはY462WおよびH479Mを含むPglB OSTをコードするポリヌクレオチドが提供される。これらの突然変異は、場合により配列番号1の残基311、77および/または57に相当する突然変異、例えば、N311V、Y77RおよびA57Rと組み合わせられる。一実施形態において、57、462および479における突然変異、例えば、A57R、Y462WおよびH479Mを有するPglB OSTをコードする核酸が提供される。一実施形態において、配列番号1の77、57、462および479に相当する残基における置換、例えば、Y77R、A57R、Y462WおよびH479Mを有するPglB OSTをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、または10以上のアミノ酸の修飾(例えば、PglBをコードするポリヌクレオチドにおけるアミノ酸置換、またはヌクレオチド置換)、例えば、2~30、3~25、4~20、5~20、6~20、7~20または10~20のアミノ酸置換を含むPglB OSTをコードする。一実施形態において、置換は、配列番号1の以下の残基:57;77;57および77;311および77;57、77および311;57および462;57、462および479;57、462、479、77および311;57、462、479、300、301、308および570;57、462、479、300、301、308、570および77;57、462、479、300、301、308、570、77および311をコードする位置におけるものである。
【0067】
一実施形態において、以下の置換は、配列番号1の以下の残基をコードする位置に存在する(ここで、「/」は、「または」を表す):
A57R/T;Y77R;A57R/TおよびY77R;A57RおよびY77R;N311VおよびY77R;A57R/T、Y77RおよびN311V;A57R、Y77RおよびN311V;A57R/TおよびY462P/C/W/T/N;A57R/TおよびY462W/T/N;A57RおよびY462W;A57R/T、Y462P/C/W/T/NおよびH479M;A57R/T、Y462W/T/NおよびH479M;A57R、Y462WおよびH479M;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、Y77RおよびN311V;A57R/T、Y462W/T/N、H479M、Y77RおよびN311V;A57R、Y462W、H479M、Y77RおよびN311V;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、L301P/G/FおよびL570R/V;A57R、Y462W、H479M、L301PおよびL570R;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、N300L、L301P/G/F、F308W/FおよびL570R/V;A57R、Y462W、H479M、N300L、L301P、F308WおよびL570R;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、L301P/G/F、L570R/VおよびY77R;A57R、Y462W、H479M、L301P、L570RおよびY77R;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、N300L、L301P/G/F、F308W/F、L570R/VおよびY77R;A57R、Y462W、H479M、N300L、L301P、F308W、L570RおよびY77R;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、L301P/G/F、L570R/V、Y77RおよびN311V;A57R、Y462W、H479M、L301P、L570R、Y77RおよびN311V;A57R/T、Y462P/C/W/T/N、H479M、N300L、L301P/G/F、F308W/F、L570R/V、Y77RおよびN311V;A57R、Y462W、H479M、N300L、L301P、F308W、L570R、Y77RおよびN311V。
【0068】
宿主細胞
別の態様において、本明細書では、本明細書に提供される変異型PglB OSTまたは野生型または変異型C.コリPglB OSTを含む宿主細胞が提供される。一実施形態において、宿主細胞は異種宿主細胞(例えば、カンピロバクターではない)である。一実施形態において、宿主細胞は大腸菌である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に提供される2つ以上の改変されたPglB OST(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の改変されたPglB OST)を含む。
【0069】
別の態様において、本明細書では、本明細書に提供される核酸(例えば、本明細書に提供される改変されたPglB OSTをコードする)を含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に提供される2つ以上の核酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の核酸)を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、バイオコンジュゲート生産またはタンパク質N-グリコシル化(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ)に有用な1以上のさらなる酵素を含む。いくつかの実施形態では、バイオコンジュゲート生産に有用なさらなる酵素のうち少なくとも1つは、組換え酵素である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、バイオコンジュゲート生産に有用な2以上のさらなる酵素(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のさらなる酵素)を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は原核細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、大腸菌細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に提供される改変されたPglB OSTを含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列および本明細書に提供される改変されたN-OSTを含むタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列、本明細書に提供される改変されたPglB OST、および組換えグリコシルトランスフェラーゼを含むタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、改変されたPglB OSTは、改変されたC.ジェジュニPglBである。
【0072】
特定の実施形態では、本明細書に記載のバイオコンジュゲートを生産するために使用される宿主細胞は、異種核酸、例えば、少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含む1以上のタンパク質をコードする異種核酸および/または1以上のタンパク質をコードする異種核酸、例えば、1以上の酵素をコードする遺伝子を含むように改変されている。いくつかの実施形態では、グリコシル化経路(例えば、原核生物および/または真核生物のグリコシル化経路)に関与するタンパク質をコードする異種核酸が本明細書に記載の宿主細胞に導入される。このような核酸は、限定されるものではないが、オリゴサッカリルトランスフェラーゼおよび/またはグリコシルトランスフェラーゼを含むタンパク質をコードし得る。異種核酸(例えば、少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含むタンパク質をコードする核酸および/またはその他のタンパク質、例えば、グリコシル化に関与するタンパク質をコードする核酸)は、当業者に公知のいずれかの方法、例えば、エレクトロポレーション、熱ショックによる化学的形質転換、自然の形質転換、ファージ形質導入、およびコンジュゲーションを用いて本明細書に記載の宿主細胞に導入することができる。いくつかの実施形態では、異種核酸は、プラスミドを用いて本明細書に記載の宿主細胞に導入され、例えば、異種核酸は、プラスミド(例えば、発現ベクター)によって宿主細胞内で発現される。いくつかの実施形態では、異種核酸は、国際特許出願公開第WO2014/057109号に記載されている挿入の方法を用いて本明細書に記載の宿主細胞に導入される。
【0073】
特定の実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞にさらなる修飾を導入することができる(例えば、組換え技術を使用)。例えば、グリコシル化経路の潜在的競合または干渉の一部を形成する(例えば、宿主細胞に組換え導入されるグリコシル化に関与する1以上の異種遺伝子と競合または干渉する)タンパク質をコードする宿主細胞核酸(例えば、遺伝子)を、宿主細胞バックグラウンド(ゲノム)において、それらを不活性/非機能的とする(すなわち、欠失/修飾される宿主細胞核酸が機能的タンパク質をコードしない、または何であれタンパク質をコードしない)ように欠失させるまたは修飾することができる。特定の実施形態では、本明細書に提供される宿主細胞のゲノムから核酸が欠失される場合、それらは望ましい配列、例えば、糖タンパク質生産に有用な配列によって置換される。
【0074】
宿主細胞において欠失され得る(および、いくつかの場合では、他の所望の核酸配列で置換され得る)例示的遺伝子としては、waaL(例えば、Feldman et al., 2005, PNAS USA 102:3016-3021参照)、脂質Aコア生合成クラスター(waa)、ガラクトースクラスター(gal)、アラビノースクラスター(ara)、コラン酸クラスター(wca)、莢膜多糖クラスター、ヌクレオチドにより活性化される糖生合成に関与する代謝酵素、エンテロバクター共通抗原クラスター(wec)、およびgtrABSクラスターのようなプロファージO抗原修飾クラスターなどの、糖脂質生合成に関与する宿主細胞の遺伝子が挙げられる。
【0075】
本明細書に記載の宿主細胞は、本明細書に記載のN-グリコシル化されたキャリアタンパク質を生産することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞によって生産されるN-グリコシル化されたキャリアタンパク質は、ワクチンに使用され得る抗原、例えば、ウイルスまたは細菌抗原である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞により生産されるN-グリコシル化されたキャリアタンパク質は、本明細書に記載のグリコシル化コンセンサス配列を含むいずれのタンパク質であってもよく、前記タンパク質は、本明細書に記載の宿主細胞によって1以上の有益な特徴を有するように修飾され、例えば、タンパク質はN-グリコシル化される。
【0076】
以下の実施例のあるものは、グラム陰性大腸菌宿主細胞において本明細書に記載の方法の適用を記載するが、当業者に公知のいずれの宿主細胞も、古細菌、大腸菌以外の原核生物宿主細胞、および真核生物宿主細胞を含むN-グリコシル化キャリアタンパク質を生産するために使用することができる。
【0077】
本明細書に記載の方法に従って使用可能な例示的原核生物宿主細胞としては、限定されるものではないが、エシェリキア属、赤痢菌属、クレブシエラ属、キサントモナス属、サルモネラ属、エルシニア属、ラクトコッカス属、ラクトバチルス属、シュードモナス属、コリネバクテリウム属、放線菌属、連鎖球菌属、ブドウ球菌属、バチルス属、およびクロストリジウム属が挙げられる。
【0078】
特定の実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞は、1以上のDNA配列が導入されたゲノムを含み、このDNA配列は、タンパク質をコードするか、またはタンパク質のN-グリコシル化に関与するオペロン/遺伝子群を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞は、以下の1以上が挿入されたゲノムを含む:改変されたPglB OSTをコードするDNA、グリコシルトランスフェラーゼをコードするDNA、少なくとも1つのグリコシル化配列を含むタンパク質をコードするDNA、rfb遺伝子群を含むDNA、莢膜多糖遺伝子群を含むDNA、および/またはエピメラーゼをコードするDNA。
【0079】
宿主細胞は本明細書に提供される改変されたPglB OSTもしくはC.コリPglB OST、または本明細書に提供される改変されたPglB OSTもしくはC.コリPglB OSTをコードする核酸を含むことができ、それにより、改変されたPglB OSTは、原核生物を含むN-OSTを有するいずれの生物に由来するものでもよい。いくつかの実施形態では、PglB OSTタンパク質またはPglB OSTコード核酸はカンピロバクター属に由来する(例えば、C.ジェジュニ由来のpglB遺伝子)。
【0080】
本明細書に記載の宿主細胞は、当技術分野で公知のグリコシルトランスフェラーゼまたは当技術分野で公知のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは、国際特許出願公開第WO2011/138361号に記載のグリコシルトランスフェラーゼであり、その開示はその全内容が本明細書の一部として援用される。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは、グラム陽性細菌由来のものであり、例えば、グリコシルトランスフェラーゼは、肺炎連鎖球菌由来、例えば、肺炎連鎖球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、6C、7F、8、9A、9L、9N、9V、10A、11A、12F、14、15A、15B、16F、18C、19A、19F、22F、23F、33F、35B由来(好ましくは血清型8由来)、または化膿連鎖球菌(血清型Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、またはVIII由来B群連鎖球菌属莢膜血清型多糖)由来のものである。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは、黄色ブドウ球菌由来の莢膜多糖5である。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは、黄色ブドウ球菌由来莢膜多糖8である。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは、グラム陰性細菌、例えば、大腸菌またはフレクスナー赤痢菌または赤痢菌由来のものである。
【0081】
本明細書に記載の宿主細胞は、少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス部位を含むタンパク質を含み得るもしくは生産し得るか、または当技術分野で公知の少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含むタンパク質をコードする核酸配列を含み得る。本明細書に記載の宿主細胞により生産されるタンパク質は、少なくとも1つのN-グリコシル化コンセンサス配列、例えば、コンセンサス配列(i)Asn-Z-Ser(Thr)(ここで、ZはPro以外の任意のアミノ酸から独立に選択される);または(ii)D/E-Z-N-Z-S/T(ここで、ZおよびZはPro以外の任意のアミノ酸から独立に選択される)のいずれかを含む。よって、宿主細胞は、N-グリコシル化コンセンサス配列をコードするDNA配列を含み得る。宿主細胞は、本明細書に記載のこれらを含む当技術分野で公知のいずれのタンパク質も含み得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、緑膿菌の外毒素A(EPA)、例えば、少なくとも1つのN-グリコシル化コンセンサス配列を含むように修飾されているEPAなどのキャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、コレラ毒素Bであるキャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はAcrAである。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はHlAである。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はClfAである。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はCRM197である。
【0082】
バイオコンジュゲート
本明細書に記載のバイオコンジュゲートは、宿主細胞内で生じるタンパク質(例えば、本明細書に記載のいずれかのキャリアタンパク質)とオリゴ糖または多糖(例えば、本明細書に記載のいずれかのオリゴ糖または多糖)の間の結合であり、宿主細胞はそのオリゴ糖または多糖をそのタンパク質に機械的に連結する(例えば、N-結合)。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、抗原(例えば、本明細書に記載のいずれかの抗原)である。グリココンジュゲートとしては、他の手段によって、例えば、タンパク質と糖抗原の化合的連結によって、生成されるバイオコンジュゲート、ならびに糖抗原(例えば、オリゴ糖および多糖)-タンパク質結合を含み得る。
【0083】
本明細書に記載の改変されたPglB OSTまたはC.コリPglB OSTは、N-グリコシル化されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを生産する宿主細胞を生産するために細胞(例えば、グラム陰性菌細胞)に導入することができる。いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の抗原(例えば、オリゴ糖または多糖)でN-グリコシル化されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートが提供される。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はEPAである。本明細書に記載のバイオコンジュゲートは、例えば、限定されるものではないが、本明細書に記載のいずれのキャリアタンパク質も含み得る。本明細書に記載のバイオコンジュゲートは、例えば、限定されるものではないが、本明細書に記載のいずれのオリゴ糖または多糖も含み得る。
【0084】
一実施形態において、異種によりグリコシル化されたキャリアタンパク質は、肺炎連鎖球菌血清型12F-EPA、肺炎連鎖球菌血清型8-EPA、肺炎連鎖球菌血清型19A-EPA、肺炎連鎖球菌血清型22F-EPA、肺炎連鎖球菌血清型23A-EPA、または肺炎連鎖球菌血清型35B-EPAである。一実施形態において、異種によりグリコシル化されたキャリアタンパク質は、キャリアタンパク質、例えば、EPA、CRM197、DTまたはTTに結合された肺炎連鎖球菌莢膜糖またはB群連鎖球菌莢膜糖である。
【0085】
一実施形態において、異種によりグリコシル化されたキャリアタンパク質は、EPA、CRM197、DT、TTに結合した黄色ブドウ球菌莢膜多糖5型、またはClfAもしくはHlaなどのブドウ球菌タンパク質、またはEPA、CRM197、DT、TTに結合した黄色ブドウ球菌莢膜多糖8型、またはClfAもしくはHlaなどのブドウ球菌タンパク質、または赤痢菌-EPAである。
【0086】
いくつかの実施形態において、本明細書では、EPAおよび本明細書に記載の1以上の異なるオリゴ糖または多糖を含むバイオコンジュゲートが提供される。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書では、大腸菌O1、O2、O4、O6、O7、O8、O11、O15、O16、O17、O18、O20、O22、O25、O73、O75、および/またはO83のうち1以上に結合したキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートが提供される。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はEPAである。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書では、1以上の異なる緑膿菌多糖に結合したキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートが提供される。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はEPAである。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書では、1以上の異なるK.ニューモニエ多糖に結合したキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートが提供される。特定の実施形態において、キャリアタンパク質はEPAである。
【0090】
バイオコンジュゲートを生産するための方法
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される改変されたPglB OSTおよびC.コリPglBは、グリココンジュゲートなどの本明細書に提供されるバイオコンジュゲートを生産するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される改変されたPglB OSTおよびC.コリPglBは、コンジュゲートワクチン、すなわち、オリゴ糖または多糖およびそれに対してワクチンが設計される病原体のタンパク質抗原を含むワクチンを生産するために使用され得る。
【0091】
別の態様において、本明細書では、バイオコンジュゲートを生産する方法であって、本明細書に提供される宿主細胞を細胞培養培地で培養することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に提供される改変されたPglB OSTまたはC.コリPglBをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載のキャリアタンパク質をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、1以上のN-グリコシル化コンセンサス配列を有する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、バイオコンジュゲートは、N-グリコシル化キャリアタンパク質である。N-グリコシル化キャリアタンパク質は、本明細書に記載の任意のオリゴ糖または多糖を含むオリゴ糖または多糖成分を含み得る。N-グリコシル化キャリアタンパク質は、本明細書に記載のいずれのキャリアタンパク質も含み得る。いくつかの実施形態では、バイオコンジュゲートは、天然C.ジェジュニN-グリコシル化ポリペプチド(C.ジェジュニオリゴ糖または多糖成分およびC.ジェジュニキャリアタンパク質を含む)である。いくつかの実施形態では、バイオコンジュゲートは、異種C.ジェジュニグリコシル化ポリペプチド(C.ジェジュニではない多糖成分および/またはキャリアタンパク質を含む)である。いくつかの実施形態では、グリコシル化ポリペプチドは、その還元末端にN-アセチル糖を有さない。いくつかの実施形態では、グリコシル化ポリペプチドは、その還元末端にグルコースまたはガラクトースを有する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本方法は、バイオコンジュゲートを宿主細胞培養物から精製することをさらに含む。N-グリコシル化キャリアタンパク質などのバイオコンジュゲートを宿主細胞培養物から精製するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、Jan-Christer Janson, Protein Purification: Principles, High Resolution Methods, and Applications. Wiley; 3 edition (March 22, 2011)を参照のこと。
【0094】
分析法
種々の方法が、本明細書に記載のバイオコンジュゲートまたはN-グリコシル化キャリアタンパク質の構造組成物および糖鎖長を分析するために使用可能である。
【0095】
一実施形態では、グリカンを分析するためにヒドラジノリシスが使用できる。まず、製造者の説明書に従って(Ludger Liberate Hydranolysis Glycan Release Kit、オックスフォードシャー、UK)、ヒドラジンとのインキュベーションによりそれらのタンパク質キャリアから多糖を遊離させる。求核試薬ヒドラジンは、多糖とキャリアタンパク質の間のグリコシド結合に作用し、結合しているグリカンを遊離させる。この処理中にN-アセチル基は失われ、再N-アセチル化により再構成されなければならない。遊離グリカンは炭素カラムで精製され、次に、還元末端において蛍光団2-アミノベンズアミドで標識される(Bigge JC, Patel TP, Bruce JA, Goulding PN, Charles SM, Parekh RB. Nonselective and efficient fluorescent labeling of glycans using 2-amino benzamide and anthranilic acid. Anal Biochem. 1995 Sep 20;230(2):229-38)。標識された多糖は、Royle et al. (Royle L, Mattu TS, Hart E, Langridge JI, Merry AH, Murphy N, Harvey DJ, Dwek RA, Rudd PM. An analytical and structural database provides a strategy for sequencing O-glycans from microgram quantities of glycoproteins. Anal Biochem. 2002 May 1;304(1):70-90) のHPLCプロトコールに従ってGlycoSep-Nカラム(GL Sciences)にて分離される。得られる蛍光クロマトグラムは、多糖長および反復単位の数を示す。構造情報は、個々のピークを収集した後にMS/MS分析を実施することによって集めることができる。これにより、単糖組成および反復単位の配列を確認することができ、さらに多糖組成の不均質性を確認することができる。低分子量の特定のピークはMALDI-MS/MSにより分析することができ、その結果はグリカン配列を確認するために使用される。各ピークは、一定数の反復単位からなるポリマーおよびその断片に対応する。従って、クロマトグラムから、ポリマー長分布を測定することが可能である。溶出時間はポリマー長の指標であり、蛍光強度は各ポリマーのモル量と相関する。
【0096】
別の実施形態では、SDS-PAGEまたはキャピラリーゲル電気泳動を用いてグリカンおよびグリココンジュゲートを評価することができる。ここで合成されるO抗原グリカンのポリマー長は、直鎖状に組み立てられた反復単位の数によって定義される。これは、典型的なラダー様パターンが、グリカンを構成する反復単位数の違いの結果であることを意味する。従って、SDS PAGEまたはサイズ別に分離する他の技術では、隣り合う2つのバンドは、反復単位1つ分だけ異なる。こうした離散型差異は、糖タンパク質をグリカンサイズについて分析する場合に利用される。非グリコシル化キャリアタンパク質および異なるポリマー鎖長を有するグリココンジュゲートは、それらの電気泳動移動度に従って分離する。グリココンジュゲート上に存在する第1の検出可能な反復単位数(n)および平均反復単位数(naverage)を測定する。これらのパラメーターを用いて、バッチ間の一貫性または多糖安定性を実証することができる。
【0097】
別の実施形態では、完全なグリココンジュゲートのサイズを測定するために、高質量MS(high mass MS)およびサイズ排除HPLCを適用することができる。
【0098】
別の実施形態では、多糖の収量を測定するために、アントロン-硫酸アッセイを使用することができる(Leyva A, Quintana A, Sanchez M, Rodriguez EN, Cremata J, Sanchez JC. Rapid and sensitive anthrone-sulfuric acid assay in microplate format to quantify carbohydrate in biopharmaceutical products: method development and validation. Biologicals. 2008 Mar;36(2):134-41. Epub 2007 Nov 26)。
【0099】
グリコシル化部位利用の変化
特定のタンパク質におけるこの部位の利用が変化することを示すために、グリコシル化部位利用を定量化することができる。そのための方法を以下に示す。
【0100】
グリコペプチドLC-MS/MS:グリココンジュゲートをプロテアーゼで消化し、適切なクロマトグラフィー法(C18、親水性相互作用HPLC HILIC、GlycoSepNカラム、SE HPLC、AE HPLC)によりペプチドを分離し、MS/MSを用いて異なるペプチドを同定する。この方法は、化学法(スミス分解)または酵素法による事前の糖鎖短縮化を伴ってまたは伴わずに用いることができる。215~280nmでのUV検出を用いたグリコペプチドピークの定量は、グリコシル化部位利用の相対的測定を可能にする。
【0101】
サイズ排除HPLC:より高いグリコシル化部位の利用は、SE HPLCカラムからのより早い溶出時間に反映される。(a)も参照のこと。
【0102】
均質性
グリココンジュゲートの均質性(結合した糖残基の均質性)は、グリカン長および流体力学的半径を測定する方法を用いて評価することができる。
【0103】
利点
本明細書に提供される改変されたPglB OSTおよびC.コリPglBならびに本明細書に提供される改変されたPglB OSTまたはC.コリPglBを使用する本明細書に提供される方法は、グリコシル化タンパク質(例えば、グリココンジュゲート製剤またはコンジュゲートワクチン製剤)の高度に均質な調製物の迅速、高収量、大規模かつ低コストの発酵を可能にするため、特に商業上重要かつ適切である。本明細書に提供される改変されたPglB OSTおよびC.コリPglBは、コンジュゲートワクチンのような商業上および治療上価値のあるグリコシル化タンパク質の経済的に実施可能な生産を可能にする。加えて、本発明の改変されたPglB OSTおよびC.コリPglBは、特にグリカンが野生型PglBによって自然に転移されない場合に、タンパク質のより効率的なN-グリコシル化を提供する。例えば、タンパク質のN残基に転移させるオリゴ糖が還元末端にGlcNAc残基を持たない場合、例えば、オリゴ糖の還元末端がグルコース残基である場合である。本明細書に提供される改変されたPglB OSTを用いる生物工学的バイオコンジュゲート生産方法の再現性およびロバスト性は、生産コストの削減に寄与すると期待される。特に生物学的薬剤としてのコンジュゲートワクチンの均一性は、医薬品の臨床的安全性に影響を及ぼすと一般に考えられている。
【0104】
略語および定義
本明細書の目的で、遺伝的にコードされるアミノ酸に使用される略語は慣例のものであり、表1に示す通りである。
【0105】
【表1】
【0106】
3文字略語が使用される場合、特に「L」もしくは「D」が前に付いていなければ、またはその略号が使用されている内容から省かれている場合には、アミノ酸はα-炭素(Cα)についてL型またはD型のいずれであってもよい。例えば、「Ala」は、α炭素に関する配置を特定せずにアラニンを表し、「D-Ala」および「L-Ala」はそれぞれD-アラニンおよびL-アラニンを表す。1文字略語が使用される場合、大文字は、α-炭素についてL型のアミノ酸を表し、小文字は、α-炭素についてD型のアミノ酸を表す。例えば、「A」はL-アラニンを表し、「a」はD-アラニンを表す。ペプチド配列が一連の1文字または3文字略語(またはそれらの混合)として表される場合、配列は慣例に従ってN→C方向に示される。
【0107】
本明細書に使用される技術用語および科学用語は、特段の断りがない限り、当業者に共通に理解されている意味を有する。よって、以下の用語は、以下の意味を有することが意図される。全ての米国特許および公開米国特許出願は、本明細書に参照されるこのような特許および特許出願内に開示されている全ての配列を含め、明示的に本明細書の一部として援用される。
【0108】
「酸性アミノ酸または残基」とは、アミノ酸がペプチドまたはポリペプチドに含まれる場合に、約6未満のpK値を示す側鎖を有する親水性アミノ酸または残基を指す。酸性アミノ酸は、通常、水素イオンの喪失のために、生理学的pHで負電荷を有する側鎖を持つ。遺伝的にコードされる酸性アミノ酸としては、L-Glu(E)およびL-Asp (D)が挙げられる。
【0109】
「アミノ酸」または「残基」とは、本明細書に開示されるポリペプチドに関して使用される場合、ある配列の位置の特定の単量体を指す(例えば、P5は、配列番号2の5番目の位置の「アミノ酸」または「残基」がプロリンであることを示す)。
【0110】
「アミノ酸の違い」または「残基の違い」とは、参照配列と比較した場合の、ポリペプチド配列の特定の位置における残基の変化を指す。特定のアミノ酸またはアミノ酸変化(「残基の違い」)が存在するポリペプチド配列上の位置は、本明細書では「Xn」、または「nの位置」と記載される場合があり、ここで、nは、参照配列についての残基の位置を指す。
【0111】
例えば、X8の位置の残基の違いは、参照配列がセリンを有する場合、X8の位置における残基のセリン以外の任意の残基への変化を指す。本明細書に開示されるように、酵素は参照配列に対して1以上の残基の違いを含むことができ、ここで、複数の残基の違いは、通常、参照配列に対して変化があった特定の位置のリストによって示される(例えば、「配列番号1と以下の残基の位置で比較した場合の1以上の残基の違い:X27、X30、X35、X37、X57、X75、X103、X185、X207、X208、X271、X286、またはX296」)。
【0112】
特定の置換突然変異は、参照配列の特定の残基の、異なる特定の残基での置換であり、慣例の表記法「X(数字)X’」で表すことができ、ここで、Xは、参照配列の残基の1文字識別子であり、「数字は」、参照配列の残基の位置であり、X’は、改変された配列における残基置換の1文字識別子である。
【0113】
「脂肪族アミノ酸または残基」とは、脂肪族炭化水素側鎖を有する疎水性アミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる脂肪族アミノ酸としては、L-Ala(A)、L-Val(V)、L-Leu(L)およびL-Ile(I)が挙げられる。
【0114】
「芳香族アミノ酸または残基」とは、少なくとも1つの芳香族または複素芳香環を含む側鎖を有する親水性または疎水性アミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる芳香族アミノ酸としては、L-Phe(F)、L-Tyr(Y)およびL-Trp(W)が挙げられる。その複素芳香族窒素原子L-His(H)のpKaのためにそれは塩基性残基として分類されたり、またはその側鎖が複素芳香環を含むことから芳香族残基として分類されたりすることがあるが、本明細書では、ヒスチジンは親水性残基または「拘束された残基」(下記を参照のこと)として分類される。
【0115】
「塩基性アミノ酸または残基」とは、アミノ酸がペプチドまたはポリペプチドに含まれる場合に、約6を超えるpKa値を示す側鎖を有する親水性アミノ酸または残基を指す。塩基性アミノ酸は、通常、ヒドロニウムイオンとの会合のために生理学的pHで正電荷を有する側鎖を持つ。遺伝的にコードされる塩基性アミノ酸としては、L-Arg(R)およびL-Lys(K)が挙げられる。
【0116】
「コドンが最適化される」とは、タンパク質をコードするポリヌクレオチドのコドンを、コードされているタンパク質が対象とする生物内で効率的に発現されるように特定の生物に優先的に使用されているものへ変化させることを指す。遺伝暗号は、ほとんどのアミノ酸が「同義コドン(“synonyms” or “synonymous” codons)」と呼ばれる複数のコドンによって表されているという意味で縮重しているが、特定の生物によるコドン使用頻度は無作為ではなく、特定のコドントリプレットに偏っていることは周知である。このコドン使用の偏りは、所与の遺伝子、共通の機能または先祖起源の遺伝子、高発現タンパク質と低コピー数タンパク質、および生物のゲノムの集合したタンパク質コード領域に関してより高い場合がある。いくつかの実施形態では、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドは、発現のために選択された宿主生物からの最適な生産のためにコドンを最適化することができる。
【0117】
「比較ウインドウ」とは、少なくとも約20の連続するヌクレオチド位置またはアミノ酸残基の概念的セグメントを指し、少なくとも20の連続するヌクレオチドまたはアミノ酸の参照配列と配列を比較することができ、比較ウインドウ内の配列の位置は、2配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較した場合に20パーセント以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。比較ウインドウは、20の連続する残基より長くてもよく、場合により30、40、50、100、またはそれより長いウインドウを含む。
【0118】
「保存的」アミノ酸置換または突然変異とは、類似の側鎖を有する残基の互換性を指し、よって、通常、ポリペプチド内のアミノ酸の、同じまたは類似のアミノ酸の定義クラス内のアミノ酸での置換を含む。しかしながら、本明細書において使用される場合、いくつかの実施形態では、保存的突然変異が脂肪族残基から脂肪族残基へ、非極性残基から非極性残基へ、極性残基から極性残基へ、酸性残基から酸性残基へ、塩基性残基から塩基性残基へ、芳香族残基から芳香族残基、または拘束残基から拘束残基へ置換可能であれば、保存的突然変異は親水性残基から親水性残基への、疎水性残基から疎水性残基への、ヒドロキシルを含む残基からヒドロキシルを含む残基への、または小型残基から小型残基への置換を含まない。さらに、本明細書において使用される場合、A、V、L、またはIは、別の脂肪族残基または別の非極性残基いずれかに保存的に変位させることができる。以下の表2は、例示的な保存的置換を示す。
【0119】
【表2】
【0120】
「拘束されたアミノ酸または残基」とは、拘束幾何学を有するアミノ酸または残基を指す。ゆえに、拘束された残基としては、L-Pro(P)およびL-His(H)が挙げられる。ヒスチジンは、比較的小さなイミダゾール環を有するので拘束幾何学を有する。プロリンも5員環を有するので拘束幾何学を有する。
【0121】
「制御配列」は、本明細書では、本開示のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの発現に必要または有利な全ての成分を含むように定義される。各制御配列は、対象とするポリヌクレオチドに対して天然であっても外来であってもよい。このような制御配列としては、限定されるものではないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、および転写ターミネーターが挙げられる。
【0122】
「に相当する」、「を参照する」または「に対する」とは、所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列のナンバリングに関して使用される場合、その所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列を参照配列と比較する場合に、特定の参照配列の残基のナンバリングを指す。言い換えれば、所与のポリマーの残基の数字または残基の位置は、非参照配列の所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列内の残基の実際の数字的な位置ではなく、参照配列に関して示される。例えば、所与のアミノ酸配列、例えば、改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、2配列間の残基のマッチを最適化するためにギャップを導入することによって参照配列に対してアラインすることができる。これらの場合、ギャップは存在するが、所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列内の残基のナンバリングは、それがアラインされた参照配列に関して付けられたものである。
【0123】
「システイン」またはL-Cys(C)は、他のL-Cys(C)アミノ酸または他のスルファニル含有もしくはスルフヒドリル含有アミノ酸とジスルフィド架橋を形成することができるという点で特異なものである。「システイン様残基」としては、システインおよびジスルフィド架橋の形成に利用可能なスルフヒドリル部分を含む他のアミノ酸が挙げられる。L-Cys(C)(および-SH含有側鎖を有する他のアミノ酸)がペプチド内に還元遊離型-SHまたは酸化ジスルフィド架橋型のいずれで存在することができるかは、L-Cys(C)がペプチドに正味として疎水性を与えるか親水性を与えるかに影響を及ぼす。L-Cys(C)は、Eisenbergの標準化コンセンサス尺度(normalized consensus scale)(Eisenberg et al., 1984, 前掲)によれば0.29の疎水性を示すが、本開示の目的では、L-Cys(C)はその固有の独自のグループに分類されることが理解されるべきである。
【0124】
「欠失」とは、参照ポリペプチドから1以上のアミノ酸を除去することによるポリペプチドの修飾を指す。欠失は、改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素の酵素活性を保持しつつ、かつ/または改良された特性を保持しつつ、ポリペプチド構成する1以上アミノ酸、2以上のアミノ酸、5以上のアミノ酸、10以上のアミノ酸、15以上のアミノ酸、または20以上のアミノ酸、アミノ酸総数の10%まで、アミノ酸総数の20%まで、もしくはアミノ酸総数の30%までの除去を含み得る。欠失は、ポリペプチドの内部部分および/または末端部分を対象とし得る。様々な実施形態において、欠失は連続するセグメントを含んでもよいし、または不連続であってもよい。
【0125】
「に由来する」とは、本明細書において改変された酵素に関して使用される場合、その改変が基にした元の酵素、および/またはそのような酵素をコードする遺伝子を特定する。例えば、配列番号4の改変されたオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素は、配列番号2のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼを変異させることによって得られた。よって、配列番号4の改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素は、配列番号2のポリペプチドに由来する。
【0126】
「改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ」とは、本明細書において使用される場合、その参照配列への新たなアミノ酸の挿入、その参照配列に存在するアミノ酸の欠失、またはランダム突然変異誘発のプロセスとその後の特定の特性を有する突然変異体の選択もしくはタンパク質配列への特定のアミノ酸変化の意図した導入のいずれかによるその参照配列のアミノ酸の、別のアミノ酸への突然変異によって、体系的に修飾されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ型タンパク質を指す。
【0127】
「断片」とは、本明細書において使用される場合、アミノ末端欠失および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残りのアミノ酸配列はその配列の相当する位置と同じであるポリペプチドを指す。断片は、少なくとも14アミノ酸長、少なくとも20アミノ酸長、少なくとも50アミノ酸長またはそれより長い、また、全長PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドの70%、80%、90%、95%、98%、および99%まで、またはそれを超えるものであり得、例えば、配列番号4のポリペプチドである。
【0128】
「機能的断片」または「生物学的に活性な断片」は、本明細書においては互換的に使用され、アミノ末端欠失および/またはカルボキシ末端欠失および/または内部欠失を有するが、残りのアミノ酸配列はそれが比較される配列における相当する位置と同じであり、全長ポリペプチドの活性の実質的に全てを保持するポリペプチドを指す。機能的断片は、少なくとも100、200、300、400または500の連続するアミノ酸を含む。
【0129】
「異種」ポリヌクレオチドは、実験技術によって宿主細胞に導入されるいずれのポリヌクレオチドも指し、宿主細胞から取り出され、実験改変を受けた後に宿主細胞に再導入されるポリヌクレオチドを含む。
【0130】
「ハイブリダイゼーションストリンジェンシー」は、核酸のハイブリダイゼーションにおける洗浄条件などのハイブリダイゼーション条件に関する。一般に、ハイブリダイゼーション反応は、より低いストリンジェンシーの条件下で行い、その後、多様な、しかし、より高いストリンジェンシーの洗浄を行う。「中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション」とは、標的DNAと、標的DNAと約60%の同一性、好ましくは約75%の同一性、約85%の同一性を有する、または標的ポリヌクレオチドと約90%を超える同一性を有する相補的核酸との結合を可能とする条件を指す。例示的な中等度にストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、5×デンハート溶液、5×生理食塩水-リン酸ナトリウム-EDTA(SSPE)、0.2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中、42℃でのハイブリダイゼーションの後、0.2×SSPE、0.2%SDS中、42℃での洗浄に相当する条件である。「高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション」とは、一般に、定義されたポリヌクレオチド配列のための溶液条件下で決定した場合の融点Tから約10℃低い条件を指す。いくつかの実施形態では、高ストリンジェンシー条件は、0.018M NaCl中、65℃で安定なハイブリッドを形成する核酸配列にのみハイブリダイゼーションを可能とする条件を指す。(すなわち、0.018M NaCl中、65℃でハイブリッドが安定でなければ、それは、本明細書で企図されるような高ストリンジェンシー下で安定であるとは言えない)。高ストリンジェンシー条件は、例えば、50%ホルムアミド、5×デンハート溶液、5×SSPE、0.2%SDS中、42℃に相当する条件でのハイブリダイゼーションとその後の0.1×SSPE、および0.1%SDS中、65℃での洗浄によって提供され得る。別の高ストリンジェンシー条件は、0.1%(w:v)SDSを含む5×SSC中、65℃でのハイブリダイズに相当するハイブリダイズと0.1%SDSを含む0.1×SSC中、65℃での洗浄である。他の高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件、ならびに中等度にストリンジェントな条件は、上記に引用した参照文献に記載されている。
【0131】
「親水性アミノ酸または残基」とは、Eisenberg et al., 1984, J. Mol. Biol. 179:125-142の標準化コンセンサス疎水性尺度(normalized consensus hydrophobicity scale)に従って0より小さい疎水性を示す側鎖を有するアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる親水性アミノ酸としては、L-Thr(T)、L-Ser(S)、L-His(H)、L-Glu(E)、L-Asn(N)、L-Gln(Q)、L-Asp(D)、L-Lys(K)およびL-Arg(R)が挙げられる。「疎水性アミノ酸または残基」とは、Eisenberg et al., 1984, J. Mol. Biol. 179:125-142に従って0より大きい疎水性を示す側鎖を有するアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる疎水性アミノ酸としては、L-Pro(P)、L-Ile(I)、L-Phe(F)、L-Val(V)、L-Leu(L)、L-Trp(W)、L-Met(M)、L-Ala(A)およびL-Tyr(Y)が挙げられる。
【0132】
「ヒドロキシル含有アミノ酸または残基」とは、ヒドロキシル(-OH)部分を含むアミノ酸を指す。遺伝的にコードされるヒドロキシル含有アミノ酸としては、L-Ser(S)、L-Thr(T)およびL-Tyr(Y)が挙げられる。
【0133】
「改良された酵素特性」とは、参照酵素に見られる特性に比べて、特定の目的に関して良好またはより望ましいものとするいずれの酵素特性も指す。本明細書に記載の改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドについて、一般に、酵素効率を向上させる特定の突然変異を含まない参照PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素と比較されるが、いくつかの実施形態では、参照PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼは、別の改良、改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼであり得る。改良がなされ得る酵素特性としては、限定されるものではないが、酵素活性(N-グリコシル化タンパク質の収量に関して表すことができる)、熱安定性、溶媒安定性、pH活性特性、補酵素要求、阻害剤(例えば、生成物阻害)に対する不応性、立体特異性、および酸副生成物の生産の抑制が挙げられる。
【0134】
「挿入」とは、参照ポリペプチドへの1以上のアミノ酸の付加によるポリペプチドの修飾を指す。いくつかの実施形態では、改良、改変されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素は、天然PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドへの1以上のアミノ酸の挿入ならびに他の改良されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドへの1以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入は、ポリペプチドの内部部分への、またはカルボキシまたはアミノ末端へのものであり得る。挿入は、本明細書において使用される場合、当技術分野で公知のような融合タンパク質を含む。挿入はアミノ酸の連続するセグメントであっても、または天然ポリペプチドの1以上のアミノ酸によって分離されていてもよい。
【0135】
「単離されたポリペプチド」とは、自然状態で付随する他の夾雑物、例えば、タンパク質、脂質、およびポリヌクレオチドから実質的に分離されたポリペプチドを指す。この用語には、それらの天然環境または発現系(例えば、宿主細胞またはin vitro合成)から取り出されたまたは精製されたポリペプチドを包含する。改良されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素は、細胞内に存在していてもよいし、細胞培地に存在していてもよいし、または溶解液もしくは単離された調製物などの様々な形態で調製されてもよい。従って、いくつかの実施形態では、改良されたPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ酵素は、単離されたポリペプチドであり得る。
【0136】
「非保存的置換」とは、ポリペプチド中のアミノ酸の、有意に異なる側鎖特性を有するアミノ酸での置換または突然変異を指す。非保存的置換は、上記に列挙した定義群内ではなく定義群間のアミノ酸を使用し得る。一実施形態では、非保存的突然変異は、(a)置換領域におけるペプチド骨格の構造(例えば、グリシンの代わりにプロリン);(b)電荷もしくは疎水性;または(c)側鎖の嵩に影響を及ぼす。
【0137】
「非極性アミノ酸」または「非極性残基」とは、生理学的pHでは電荷を有さず、2つの原子によって共有されている電子対が一般にそれら2つの原子のそれぞれによって等しく保有されている(すなわち、その側鎖は非極性である)側鎖を有する疎水性アミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる非極性アミノ酸としては、L-Gly(G)、L-Leu(L)、L-Val(V)、L-Ile(I)、L-Met(M)およびL-Ala(A)が挙げられる。
【0138】
「配列同一性のパーセンテージ」、「同一性パーセント」、および「同一パーセント」とは、本明細書において、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列間の比較を指して使用され、比較ウインドウで最適にアラインされた2つの配列を比較することにより決定され、比較ウインドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、参照配列と比較して、2配列の最適なアラインメントのために付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両配列で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在している位置の数を決定するか、または核酸塩基もしくはアミノ酸残基は、マッチした位置の数を得るためにギャップを用いてアラインされる、マッチした位置の数を比較ウインドウの総数で割り、その商に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。最適アラインメントおよび配列同一性パーセントの決定は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムを用いて行われる(例えば、ltschul, et al., 1990, J. Mol. Biol. 215: 403-410 and Altschul, et al., 1977, Nucleic Acids Res. 3389-3402参照)。BLAST解析を行うためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information のウェブサイトに公開されている。
【0139】
概説すると、BLAST解析は、まず、データベース配列において同じ長さのワードとアラインした際にいくつかの正の値をとる閾値スコアTとマッチするまたはそれを満たす長さWの短いワードをクエリー配列において測定することによってハイスコアリング配列対(high scoring sequence pairs)(HSP)を特定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul, et al, 前掲)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして働く。次に、これらのワードヒットを、累積アラインメントスコアが増え得る限り各配列の両方向に拡張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメーターM(マッチ残基対についてはリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ塩基についてはペナルティスコア;常に<0)を用いて計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向のワードヒットの拡張は、累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ離れた場合;1以上の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積のために累積スコアが0以下となる場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合に停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列向け)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff and Henikoff, 1989, Proc Natl Acad Sci USA 89:10915参照)。
【0140】
2配列の同一性パーセントを提供する際に、BLASTと同様に機能する多くの他のアルゴリズムが利用可能である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith and Waterman, 1981, Adv. Appl. Math. 2:482の局所的アラインメントアルゴリズムによるか、Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443のホモロジーアラインメントアルゴリズムによるか、Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索法によるか、これらのアルゴリズムのコンピューター実装形態(GCGウィスコンシンソフトウエアパッケージのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によるか、または目視検査(一般に、Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel, et al.編,, Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1995 Supplement) (Ausubel)を参照のこと)によって実施することができる。さらに、配列アラインメントおよび配列同一性パーセントの決定は、GCGウィスコンシンソフトウエアパッケージ(Accelrys、マディソン WI)のBESTFITまたはGAPプログラムを使用することができ、提供されているデフォルトパラメーターを使用する。また、ClustalWプログラムも同一性の決定に適している。
【0141】
「極性アミノ酸または残基」とは、生理学的pHでは電荷を持たないが、2つの原子によって共有されている電子対がそれらの原子の一方によってより緊密に保持されている側鎖を有する親水性アミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる極性アミノ酸としては、L-Asn(N)、L-Gln(Q)、L-Ser(S)およびL-Thr(T)が挙げられる。
【0142】
「好ましい、最適な、高いコドン使用バイアスコドン」とは、タンパク質コード領域において、同じアミノ酸をコードする他のコドンよりも高い頻度で使用されているコドンを互換的に指す。好ましいコドンは、単一の遺伝子、共通の機能または起源の遺伝子セット、高発現遺伝子のコドン使用頻度、生物全体の集合したタンパク質コード領域におけるコドン頻度、関連生物の集合したタンパク質コード領域におけるコドン頻度、またはそれらの組合せに関して決定することができる。頻度が遺伝子発現のレベルで増大しているコドンが、通常、発現に最適なコドンである。コドン頻度(例えば、コドン使用頻度、相対的同義コドン使用頻度)および特定の生物のコドン選好性を決定するためには、多変量解析、例えば、クラスター解析またはコレスポンデンス分析の使用、および遺伝子に使用されているコドンの有効数(GCG CodonPreference, Genetics Computer Group Wisconsin Package; CodonW, John Peden, University of Nottingham; McInerney, J. O, 1998, Bioinformatics 14:372-73; Stenico, et al., 1994, Nucleic Acids Res. 222437-46; Wright, F., 1990, Gene 87:23-29を参照のこと)を含む様々な方法が知られている。増えつつある生物のリストに関してコドン使用表が利用可能である(例えば、Wada, et al., 1992, Nucleic Acids Res. 20:2111-2118; Nakamura, et al., 2000, Nucl. Acids Res. 28:292; Duret, et al., 前掲; Henaut and Danchin, “Escherichia coli and Salmonella,” 1996, Neidhardt, et al.編, ASM Press, Washington D.C., p. 2047-2066を参照のこと)。コドン使用を得るためのデータ源は、タンパク質をコードし得る利用可能ないずれかのヌクレオチド配列に頼るものであり得る。これらのデータセットとしては、発現タンパク質をコードすることが実際に知られる核酸配列が含まれる(例えば、完全タンパク質コード配列-CDS)、発現配列タグ(EST)、またはゲノム配列の推定コード領域(例えば、Mount, D., Bioinformatics: Sequence and Genome Analysis, Chapter 8, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2001; Uberbacher, E. C., 1996, Methods Enzymol. 266:259-281; Tiwari, et al.., 1997, Comput. Appl. Biosci. 13:263-270を参照のこと)。
【0143】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」とは、本明細書では、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、脂質化、ミリストイル化、ユビキチン化など)にかかわらずアミド結合によって共有結合的に連結されている少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを表して互換的に使用される。この定義には、D-アミノ酸およびL-アミノ酸、ならびにD-アミノ酸とL-アミノ酸の混合物が含まれる。
【0144】
「参照配列」とは、別の(例えば、変更された)配列が比較される定義された配列を指す。参照配列は、より長い配列のサブセット、例えば、全長遺伝子またはポリペプチド配列のセグメントであってもよい。一般に、参照配列は、少なくとも20ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の長さ、少なくとも25残基の長さ、少なくとも50残基の長さ、またはその核酸もしくはポリペプチドの全長である。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、それぞれ(1)2配列間で類似している配列(すなわち、完全配列の一部)を含み、かつ(2)2配列間で発散している配列をさらに含み得るので、2つ(またはそれを超える)ポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列比較は、通常、配列類似性の局部的領域を特定および比較するために比較ウインドウで2つのポリヌクレオチドの配列を比較することによって行われる。
【0145】
用語「参照配列」は、野生型配列に限定することを意図するものではなく、改変または変更された配列を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、「参照配列」は、従前に改変または変更されたアミノ酸配列であり得る。例えば、「X12の位置にグリシン残基を有する配列番号2に基づく参照配列」とは、X12にグリシン残基を有する配列番号2に相当する参照配列を指す(配列番号2の変更されていない形態はX12にアスパラギン酸を有する)。
【0146】
「小型アミノ酸」または「小型基」とは、合計3以下の炭素および/またはヘテロ原子(α-炭素および水素は除く)から構成される側鎖を有するミノ酸または残基を指す。小型アミノ酸または残基は、上記の定義に従って、脂肪族、非極性、極性または酸性小型アミノ酸または残基としてさらに分類できる。遺伝的にコードされる小型アミノ酸としては、L-Ala(A)、L-Val(V)、L-Cys(C)、L-Asn(N)、L-Ser(S)、L-Thr(T)およびL-Asp(D)が挙げられる。
【0147】
「実質的に同一」とは、少なくとも20残基の位置の比較ウインドウ、多くの場合は少なくとも30~50残基のウインドウで参照配列と比較した場合に、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99またはそれを超える配列同一性パーセントを有するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を指し、配列同一性のパーセンテージは、参照配列を、比較ウインドウにおいて参照配列の合計20%未満の欠失または付加を含む配列と比較することによって計算される。ポリペプチドに適用される特定の実施形態において、用語「実質的に同一」とは、2つのポリペプチド配列が、デフォルトギャップウエイトを用いるプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインした際に、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも89パーセントの配列同一性、少なくとも95パーセントの配列同一性またはそれを超えるもの(例えば、99パーセントの配列同一性)を有することを意味する。好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。
【0148】
「実質的に純粋なポリペプチド」とは、そのポリペプチド種が存在する主要な種である(すなわち、その組成物中の他のいずれの個々の高分子種よりもモルまたは重量に基づいて豊富である)組成物を指し、一般に、対象種がモルまたは重量%として少なくとも約50パーセントの高分子種の存在を含む場合に、実質的に精製された組成物である。一般に、実質的に純粋なPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ組成物は、その組成物中に存在するモルまたは重量%として全高分子種の約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上を占める。いくつかの実施形態では、対象種は、実質的に均一(すなわち、慣例の検出方法によって組成物中に夾雑種が検出できない)となるまで精製され、この場合、組成物は実質的に単一の高分子種からなる。溶媒種および元素イオン種は高分子種であるとは見なされない。いくつかの実施形態では、単離された改良型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチド組成物である。
【0149】
本発明を以下の段落でさらに開示する。
1.PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)ポリペプチドまたはその機能的断片であって、配列番号1または2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、前記PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドアミノ酸配列は、アミノ酸X57、X63、X94、X101、X172、X176、X191、X193、X233、X234、X255、X286、X295、X301、X319、X397、X402、X425、X435、X446、X462、X479、X523、X532、X601、X605、X606、X610、X645、X676およびX695からなる群から選択される少なくとも1つの残基が配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸に置換されているという特徴を含む、PglB OSTポリペプチドまたはその機能的断片。
【0150】
2.アミノ酸配列が、
X57に相当する残基が親水性残基である;
X63に相当する残基が極性残基および疎水性残基から選択される;
X94に相当する残基が極性残基である;
X101に相当する残基が酸性残基、非極性残基、親水性残基、拘束残基、および芳香族残基から選択される;
X172に相当する残基が酸性残基である;
X176に相当する残基が非極性残基および酸性残基から選択される;
X191に相当する残基が親水性残基および芳香族残基から選択される;
X193に相当する残基が非極性残基、親水性残基、および芳香族残基から選択される;
X233に相当する残基が脂肪族残基である:
X234に相当する残基が小型残基、親水性残基、および芳香族残基から選択される;
X255に相当する残基が親水性残基である;
X286に相当する残基が疎水性残基および極性残基から選択される;
X295に相当する残基が酸性または脂肪族である;
X301に相当する残基が拘束残基、非極性残基および芳香族残基から選択される;
X319に相当する残基が親水性残基および脂肪族残基から選択される;
X397に相当する残基が親水性残基および疎水性残基から選択される;
X402に相当する残基が親水性残基である;
X425に相当する残基が極性残基である;
X435に相当する残基が親水性残基および疎水性残基から選択される;
X446に相当する残基が非極性残基である;
X462に相当する残基が芳香族残基、拘束残基および小型残基から選択される;
X479に相当する残基が疎水性残基である;
X523に相当する残基が塩基性残基である;
X532に相当する残基が親水性残基である;
X601に相当する残基が疎水性残基である;
X605に相当する残基が酸性残基である;
X606に相当する残基が拘束残基である;
X610に相当する残基が親水性残基および疎水性残基から選択される;
X645に相当する残基が脂肪族残基および親水性残基から選択される;
X676に相当する残基が芳香族残基、親水性残基、および非極性残基から選択される;
X695に相当する残基が極性残基および脂肪族残基から選択される、
からなるリストから選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落1のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0151】
3.アミノ酸配列が、残基X57がTおよびRから選択される;残基X63がLおよびQから選択される;残基X94がNであり;残基X101がW、E、H、P、R、M、およびGから選択される;残基X172がEである;残基X176がEおよびGから選択される;残基X191がH、D、R、およびYから選択される;残基X193がT、H、G、およびFから選択される;X233がVである;残基X234がH、C、およびWから選択される;残基X255がHである;残基X286がA、Q、およびLから選択される;残基X295がEまたはLである;残基X301がP、G、およびFから選択される;残基X319がA、Q、L、およびTから選択される;残基X397がN、L、およびQから選択される;残基X402がRおよびHから選択される;残基X425がSである;残基X435がA、L、F、H、およびRから選択される;残基X446がGである;残基X462がP、C、W、T、およびNから選択される;残基X479がMである;残基X523がRである;残基X532がHである;残基X601がGである;残基X605がDである;残基X606がPである;残基X610がP、L、R、D、およびAから選択される;残基X645がL、S、およびHから選択される;残基X676がQ、W、およびGから選択される;ならびに残基X695がIおよびQから選択される、からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落1または2のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0152】
4.アミノ酸配列が、配列番号1の57番目のアミノ酸に相当する残基がRに変異している;配列番号1の101番目のアミノ酸に相当する残基がMに変異している;配列番号1の191番目のアミノ酸に相当する残基がH、D、RまたはYに(好ましくは、Yに)変異している;配列番号1の462番目のアミノ酸に相当する残基がPまたはWに変異している;配列番号1の479番目のアミノ酸に相当する残基がMに変異している、および配列番号1の676番目のアミノ酸に相当する残基がWに変異している、からなるリストから選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落1~3のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0153】
5.配列番号1の57番目のアミノ酸に相当する残基がRまたはKまたはTに、好ましくはRまたはTに、より好ましくはRに変異している、段落1~4のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0154】
6.配列番号1の57番目のアミノ酸に相当する残基がRに変異している、段落5のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0155】
7.PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドアミノ酸配列が、アミノ酸X78、X84、A155、X293、X300、X301、X306、X308、X462、X464、X479、X523およびX570からなる群から選択される少なくとも1つの残基が配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸に置換されているという特徴を含む、段落1~6のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0156】
8.アミノ酸配列が、
X78に相当する残基がヒドロキシル含有残基である;
X84に相当する残基が芳香族残基である;
X155に相当する残基が極性残基である;
X293に相当する残基が小型残基である;
X300に相当する残基が脂肪族残基である;
X301に相当する残基が拘束残基および非極性残基から選択される;
X306に相当する残基が親水性残基である;
X308に相当する残基が芳香族残基である;
X462に相当する残基が芳香族残基および極性残基から選択される;
X464に相当する残基が脂肪族残基である;
X479に相当する残基が疎水性残基である;
X523に相当する残基が塩基性残基である;ならびに
X570に相当する残基が塩基性残基および脂肪族残基から選択される、
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落7のPglB OSTポリペプチドまたはその機能的断片。
【0157】
9.アミノ酸配列が、X78がTに変異している;X84がWに変異している;X155がQに変異している;X293がCに変異している;X300がLに変異している;X301がPまたはGに変異している;X306がHに変異している;X308がWに変異している;X462がW、NまたはTに変異している;X464がLに変異している;X479がMに変異している;X523がRに変異している;X570がRまたはVに変異している、からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落7~8のいずれか1つのPglB OSTポリペプチドまたはその機能的断片。
【0158】
10.アミノ酸配列が、アミノ酸X300がLに変異している;アミノ酸X301がPに変異している、アミノ酸X308がWに変異している、アミノ酸X462がWに変異している、アミノ酸X479がMに変異している、およびアミノ酸X570がRに変異している、からなるリストから選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落7~9のいずれか1つのPglB OST。
【0159】
11.アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸X301に相当する残基Pに変異している;配列番号1のアミノ酸X462に相当する残基がNまたはWに変異している、および配列番号1のアミノ酸X479に相当する残基がMに変異している、からなるリストから選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落7~10のいずれか1つのPglB OST。
【0160】
12.アミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸X479に相当する残基におけるMへの突然変異を含む、段落7~11のいずれか1つのPglB OST。
【0161】
13.アミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸X462に相当する残基における突然変異を含む、段落7~12のいずれか1つのPglB。
【0162】
14.アミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸X462に相当する残基のWへの突然変異および配列番号1のアミノ酸X479に相当する残基のMへの突然変異を含む、段落7~13のいずれか1つのPglB。
【0163】
15.配列番号1のX300に相当するアミノ酸がLに変異している;配列番号1のX301に相当するアミノ酸がPに変異している、配列番号1のX308に相当するアミノ酸がWに変異している、配列番号1のX462に相当するアミノ酸がWに変異している、配列番号1のX479に相当するアミノ酸がMに変異している、および配列番号1のX570に相当するアミノ酸がRに変異している、という特徴のうち少なくとも2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを含む、段落7~14のいずれか1つのPglB OST。
【0164】
16.アミノ酸X300がLに変異している;アミノ酸X301がPに変異している、アミノ酸X308がWに変異している、アミノ酸X462がWに変異している、アミノ酸X479がMに変異している、およびアミノ酸X570がRに変異している、段落15のPglB OST。
【0165】
17.アミノ酸配列が、アミノ酸X12、X51、X104、X130、X176、X177、X186、X191、X218、X234、X286、X295、X306、X308、X319、X382、X482、およびX523からなる群から選択される少なくとも1つの残基位置において、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較して少なくとも1つの残基の違いを含む、段落1~16のいずれか1つのPglB OST。
【0166】
18.アミノ酸配列が、
アミノ酸X12に相当する残基がヒドロキシル含有残基である;
アミノ酸X51に相当する残基が脂肪族残基である;
アミノ酸X104に相当する残基が脂肪族残基である;
アミノ酸X130に相当する残基が脂肪族残基である;
アミノ酸X176に相当する残基が酸性残基である;
アミノ酸X177に相当する残基が脂肪族残基である;
アミノ酸X186に相当する残基が脂肪族残基である;
アミノ酸X191に相当する残基が芳香族残基である;
アミノ酸X218に相当する残基が小型残基である;
アミノ酸X234に相当する残基が芳香族残基および小型残基から選択される;
アミノ酸X286に相当する残基が極性残基および脂肪族残基から選択される;
アミノ酸X295に相当する残基が脂肪族残基である;
アミノ酸X306に相当する残基が親水性残基である;
アミノ酸X308に相当する残基が芳香族残基である;
アミノ酸X319に相当する残基が脂肪族残基および極性残基から選択される;
アミノ酸X382に相当する残基が小型残基である;
アミノ酸X482に相当する残基が塩基性残基である;
アミノ酸X523に相当する残基が塩基性残基である、
から選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落17のPglB OST。
【0167】
19.アミノ酸配列が、残基X12がSである;残基X51がLである;残基X104がLである;残基X130がLである;残基X176がEである;残基X177がVである;残基X186がLである;残基X191がYである;残基X218がAである;残基X234がCおよびWから選択される;残基X286がQおよびLから選択される;残基X295がLまたはEである;残基X306がHである;残基X308がFである;残基X319がLおよびQから選択される;残基X382がSである;残基X482がRである;ならびに残基X523がRである、からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落17または18のPglB OSTまたはその機能的断片。
【0168】
20.アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸X218に相当する残基がAである、および配列番号1のアミノ酸X382に相当する残基がSである、からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落17~19のいずれか1つのPglB OSTまたはその機能的断片。
【0169】
21.アミノ酸配列が以下の特徴:アミノ酸X191がYである;アミノ酸X286がQである;アミノ酸X295がLまたはEである;アミノ酸X382がSである;アミノ酸X482がRである;アミノ酸X523がRである、を含む、段落17~20のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0170】
22.アミノ酸配列が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と比較した場合に、アミノ酸X21、アミノ酸X27、アミノ酸X42、アミノ酸X44、アミノ酸X53、アミノ酸X80、アミノ酸X97、アミノ酸X297、アミノ酸X317、アミノ酸X341、アミノ酸X383、アミノ酸X388、アミノ酸X410、アミノ酸X421、アミノ酸X480、およびアミノ酸X486から選択される少なくとも1つの残基位置から選択される位置に残基の違いを含む、段落1~21のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0171】
23.アミノ酸配列が、
アミノ酸X21に相当する残基がヒドロキシル含有残基および脂肪族残基から選択される;
アミノ酸X27に相当する残基がヒドロキシル含有残基および疎水性残基から選択される;
アミノ酸X42に相当する残基が芳香族残基および小型残基から選択される;
アミノ酸X44に相当する残基が疎水性残基および親水性残基から選択される;
アミノ酸X52に相当する残基が親水性残基および脂肪族残基から選択される;
アミノ酸X80に相当する残基が小型残基である;
アミノ酸X97相当する残基が脂肪族残基である;
アミノ酸X297に相当する残基が塩基性残基およびヒドロキシル含有残基から選択される;
アミノ酸X317に相当する残基が小型残基である;
アミノ酸X341に相当する残基が脂肪族残基である;
アミノ酸X421に相当する残基が非極性残基である;
アミノ酸X480に相当する残基が親水性残基および疎水性残基から選択される;ならびに
アミノ酸X486に相当する残基が小型残基、親水性残基、および脂肪族残基である、
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落22のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0172】
24.アミノ酸配列が、アミノ酸X21がSおよびLから選択される;アミノ酸X27がM、S、AおよびWから選択される;アミノ酸X42がWおよびCから選択される;アミノ酸X44がMおよびHから選択される;アミノ酸X53がS、IおよびHから選択される;アミノ酸X80がAおよびDから選択される;アミノ酸X97がIである;アミノ酸X297がK、R、SおよびYから選択される;アミノ酸X317がSおよびAから選択される;アミノ酸X341がLである;アミノ酸X383がMである;アミノ酸X388がMおよびIから選択される;アミノ酸X410がIである;アミノ酸X421がGである;アミノ酸X480がW、N、Q、I、T、およびMから選択される;ならびにアミノ酸X486がC、N、L、H、およびVから選択される、からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、段落22または23のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0173】
25.アミノ酸配列が以下の特徴:X297がRであることを含む、段落22~24のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0174】
26.アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸X300、X301、X308、X462、X479またはX570に相当する残基に少なくとも1つのさらなる点突然変異を含む、段落1~25のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0175】
27.配列番号1のアミノ酸X462に相当する残基がYからWに変異している、段落26のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0176】
28.配列番号1のアミノ酸X479に相当する残基がHからMに変異している、段落26~27のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0177】
29.配列番号1のアミノ酸X300に相当する残基がNからLに変異している、段落26~28のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0178】
30.配列番号1のアミノ酸X301に相当する残基がLからPに変異している、段落26~29のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0179】
31.配列番号1のアミノ酸X308に相当する残基がFからWに変異している、段落26~30のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0180】
32.配列番号1のアミノ酸X570に相当する残基がLからRに変異している、段落26~31のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0181】
33.配列番号1のアミノ酸X191に相当する残基がLからYに変異している、段落26~32のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0182】
34.配列番号1のアミノ酸X286に相当する残基がYからQに変異している、段落26~33のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0183】
35.配列番号1のアミノ酸X295に相当する残基がSからLまたはEに変異している、段落26~34のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0184】
36.配列番号1のアミノ酸X382に相当する残基がAからSに変異している、段落26~35のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0185】
37.配列番号1のアミノ酸X482に相当する残基がKからRに変異している、段落26~36のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0186】
38.配列番号1のアミノ酸X523に相当する残基がTからRに変異している、段落26~37のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0187】
39.配列番号1のアミノ酸X297に相当する残基がEからRに変異している、段落26~38のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片。
【0188】
40.配列番号1のアミノ酸X80に相当する残基がSからDに変異している、段落26~39のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片。
【0189】
41.配列番号1のアミノ酸X187に相当する残基がIからVに変異している、段落26~40のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0190】
42.配列番号1のアミノ酸X359に相当する残基がIからQに変異している、段落26~41のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0191】
43.配列番号1のアミノ酸X406に相当する残基がNからIに変異している、段落26~42のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0192】
44.配列番号1のアミノ酸X77に相当する残基がRであり、かつ、配列番号1のアミノ酸X311に相当する残基がVである、段落1~43のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0193】
45.配列番号2、3、4、5、6、7または8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、段落1のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0194】
46.配列番号1のアミノ酸X57、X462およびX479に相当する残基が、配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換されている、場合により、A57R、Y462WおよびH479Mの置換である、段落1~44のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0195】
47.配列番号1のアミノ酸X57、X300、X301、X308、X462、X479およびX570に相当する残基が、配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換されている、場合により、A57R、N300L、L301P、F308W、Y462W、H479M、およびL570Rの置換である、段落1~46のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【0196】
48.PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドが全長であり、場合により、712、713または714アミノ酸の長さを有する、段落1~47のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチド。
【0197】
49.PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼがC.ジェジュニ由来である、段落1~48のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチド。
【0198】
50.PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼがC.ラリ由来である、段落1~48のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチド。
【0199】
51.PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼがC.コリ由来である、段落1~48のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチド。
【0200】
52.PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼが改変されている、段落1~49のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドの組成物。
【0201】
53.配列番号12のアミノ酸X57に相当する残基が、配列番号12のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換されている、場合により、A57Rの置換である、カンピロバクター・コリ由来PglB(PglBC.coli)。
【0202】
54.配列番号12のX463に相当する残基アミノ酸が、配列番号12のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換されている、場合により、Y463Wの置換である、段落53のカンピロバクター・コリ由来PglB(PglBC.coli)。
【0203】
55.配列番号12のアミノ酸X480に相当する残基が、配列番号12のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換されている、場合により、H480Mの置換である、段落53または54のカンピロバクター・コリ由来PglB(PglBC.coli)。
【0204】
56.配列番号12のアミノ酸X311に相当する残基が、配列番号12のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換されている、場合により、N311Vの置換である、段落53~55のいずれか1つのカンピロバクター・コリ由来PglB(PglBC.coli)。
【0205】
57.配列番号12のアミノ酸X77に相当する残基が、配列番号12のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換されている、場合により、Y77Rの置換である、段落53~56のいずれか1つのカンピロバクター・コリ由来PglB(PglBC.coli)。
【0206】
58.段落1~57のいずれか1つに見られるような、変異型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0207】
59.段落1~57のいずれか1つの少なくとも1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたは段落58のポリヌクレオチドを含む、組成物または宿主細胞(例えば、原核生物宿主細胞または大腸菌宿主細胞)。
【0208】
60.少なくとも1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼが改変されている、段落59の組成物または宿主細胞。
【0209】
61.段落58の変異型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたは配列番号12、13または14と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有するC.コリ由来PglBをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【0210】
62.原核生物宿主細胞、場合により、大腸菌宿主細胞である、段落61の宿主細胞。
【0211】
63.PglBをコードするポリヌクレオチドが宿主細胞ゲノムに組み込まれるか、またはプラスミドから発現される、段落61または62に記載の宿主細胞。
【0212】
64.アミノ酸配列Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)を含む少なくとも1つのグリコシル化部位を含むタンパク質をコードするさらなるポリヌクレオチドを含む、段落61、62または63の宿主細胞。
【0213】
65.少なくとも1つのグリコシル化部位を含むタンパク質が、緑膿菌外毒素A(EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定生腸毒素、大腸菌熱不安定生腸毒素の無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニAcrA、およびC.ジェジュニ天然糖タンパク質からなる群から選択される、段落61~64のいずれか1つの宿主細胞。
【0214】
66.少なくとも1つのグリコシル化部位を含むタンパク質が緑膿菌のエキソプロテインA(EPA)である、段落65の宿主細胞。
【0215】
67.少なくとも1つのグリコシル化部位を含むタンパク質が、2つ、3つまたは4つのグリコシル化部位を含む、段落61~66のいずれか1つの宿主細胞。
【0216】
68.ウンデカプレニル脂質キャリア上での特定のオリゴ糖のアセンブリに必要なグリコシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、段落61~67のいずれか1つの宿主細胞。
【0217】
69.特定のオリゴ糖が抗原、例えば、細菌O抗原または細菌莢膜糖抗原である、段落61~68のいずれか1つの宿主細胞。
【0218】
70.特定のオリゴ糖が、大腸菌O-抗原、サルモネラ属O-抗原、シュードモナス種O-抗原、クレブシエラ属O-抗原、アシネトバクターO抗原、クラミジア・トラコマチス抗原、コレラ菌抗原、リステリア属抗原、レジオネラ・ニューモフィラ血清型1~15抗原、パラ百日咳菌抗原、鼻疽菌または類鼻疽菌抗原、野兎病菌抗原、カンピロバクター種抗原;クロストリジウム・ディフィシル抗原、ストレプトコッカス・アガラクティエ抗原、髄膜炎菌抗原、カンジダ・アルビカンス抗原、ヘモフィルス・インフルエンザ抗原、腸球菌抗原、ボレリア・ブルグドルフェリ抗原、黄色ブドウ球菌莢膜糖抗原、ヘモフィルス・インフルエンザ抗原、森林型熱帯リーシュマニア抗原、赤痢菌属、または肺炎連鎖球菌莢膜糖抗原(例えば、血清型CP1、CP2、CP3、CP4、CP5、CP6(AおよびB)、CP7(A、B、C)、CP8、CP9(A、L、N、V)、CP10(A、B、C、F)、CP11(A、B、C、D、F)、CP12(A、B、F)、CP13、CP14、CP15(A、B、C、F)、CP16(A、F)、CP17(A、F)、CP18(A、B、C、F)、CP19(A、B、C、F)、CP20、CP21、CP22(A、F)、CP23(A、B、F)、CP24(A、B、F)、CP25(A、F)、CP26、CP27,CP28(A、F)、CP29、CP31、CP32(A、F)、CP33(A、B、C、D、F)、CPS34、CP35(A、B、C、D、F)、CP36、CP37、CP38、CP39、CP40、CP41(A、F)、CP42、CP43、CP44、CP45、CP46、CP47(A、F)、CPS48)を含む、段落69の宿主細胞。
【0219】
71.特定のオリゴ糖が、オリゴ糖の還元末端がGlcNAcでない残基を含む、段落61~70のいずれか1つの宿主細胞。
【0220】
72.特定のオリゴ糖が、還元末端にグルコース残基を含む、段落61~71のいずれか1つの宿主細胞。
【0221】
73.グリコシル化タンパク質を作製するためのプロセスであって、
(a)段落61~72のいずれか1つの宿主細胞をタンパク質の生産に好適な条件下で培養する工程;および
(b)グリコシル化タンパク質を宿主細胞から単離する工程
を含む、プロセス。
【0222】
74.グリコシル化タンパク質を作製するためのin vitroプロセスであって、
i)以下:
a)段落1~57のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ;
b)アミノ酸配列Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)を含む少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含むタンパク質;ならびに
c)PglBによって認識される脂質キャリア上の糖鎖
を一緒に混合する工程;
ii)タンパク質の少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列に糖鎖を転移してグリコシル化タンパク質を得るためにPglBの酵素活性に好適な条件下でインキュベートする工程;ならびに
iii)前記グリコシル化タンパク質を単離する工程
を含む、プロセス。
【0223】
75.段落73または74のプロセスによって作製される、グリコシル化タンパク質。
【0224】
76.タンパク質の、アミノ酸配列Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)を含むグリコシル化コンセンサス配列のN残基に糖が結合しているグリコシル化タンパク質の生産における、段落1~57のいずれか1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片の使用。
【0225】
77.グリコシル化配列のN残基に共有結合されている糖の糖残基がN-アセチル糖、例えば、N-アセチルグルコサミンではない、段落76の使用。
【0226】
78.糖のグルコース残基がグリコシル化配列のN残基に共有結合されている、段落76または77のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼの使用。
【0227】
79.糖が細菌抗原、場合により、細菌莢膜多糖抗原または細菌O-抗原である、段落76~78のいずれか1つの使用。
【0228】
80.糖がグラム陽性菌莢膜多糖抗原である、段落76~79のいずれか1つの使用。
【0229】
81.糖が大腸菌O抗原、サルモネラ属抗原、シュードモナス属抗原、クレブシエラ属抗原、アシネトバクターO抗原、クラミジア・トラコマチス抗原、コレラ菌抗原、リステリア属抗原、レジオネラ・ニューモフィラ血清型1~15抗原、百日咳菌抗原、パラ百日咳菌抗原、鼻疽菌または類鼻疽菌抗原、野兎病菌抗原、カンピロバクター属抗原、クロストリジウム・ディフィシル抗原、化膿連鎖球菌抗原、ストレプトコッカス・アガラクティエ抗原、腸球菌抗原、ボレリア・ブルグドルフェリ抗原、髄膜炎菌抗原、ヘモフィルス・インフルエンザ抗原、森林型熱帯リーシュマニア抗原、赤痢菌属抗原、黄色ブドウ球菌抗原、サルモネラ・エンテリカ抗原または肺炎連鎖球菌抗原である、段落76~80のいずれか1つの使用。
【0230】
82.糖が肺炎連鎖球菌莢膜糖抗原である、段落81の使用。
【0231】
83.肺炎連鎖球菌莢膜糖抗原が血清型1、4、19A、22F、23A、35Bまたは8、好ましくは、血清型8由来である、段落82の使用。
【0232】
84.タンパク質が、少なくとも1つ、2つまたは3つのグリコシル化コンセンサス配列を含むキャリアタンパク質である、段落76~83のいずれか1つの使用。
【0233】
85.キャリアタンパク質が緑膿菌エキソプロテインA(EPA)、ジフテリアトキソイド、CRM197、破傷風トキソイド、ニューモリシンである、段落84の使用。
【0234】
86.PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片が、配列番号1の配列を有する、相当するPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼの少なくとも1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、700倍、1000倍のグリコシル化タンパク質を生産するように糖によるタンパク質のグリコシル化の収量を高めることができる、段落76~85のいずれか1つの使用。
【0235】
87.PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片が、タンパク質の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%を糖でグリコシル化することができ、この糖のグルコース残基はグリコシル化コンセンサス配列のN残基に共有結合される、段落76~86のいずれか1つの使用。
【0236】
88.タンパク質の、アミノ酸配列Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)を含むグリコシル化コンセンサス配列のN残基に糖が結合しているグリコシル化タンパク質の生産における、カンピロバクター・コリ由来のPglB(PglBC.coli)オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)またはその機能的断片の使用。
【0237】
89.PglBC.coliが、配列番号12、13または14、場合により、配列番号12と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、段落88の使用。
【0238】
90.糖がフレクスナー赤痢菌2a、3aおよび6、ならびに大腸菌O18からなる群から選択される、段落88または89の使用。
【実施例
【0239】
以下、本開示の種々の特徴および実施形態を代表例で説明するが、これらは例示を意図するものであって、限定するものではない。
【0240】
実施例1
PglB変異体の活性を評価するために使用されるプラスミドおよび系統
PglB変異体の活性を、WO14/057109A1に記載されるように遺伝子の欠失がある大腸菌W3110の誘導体で試験した。WO2014057109A1に詳説される方法に基づいて、莢膜多糖をコードする遺伝子座を大腸菌染色体に安定に組み込んだ。PglB、キャリアタンパク質、補助的生合成酵素および調節タンパク質を含むその他の必要な要素は、プラスミドpEXT21(Spec耐性、IPTG誘導性)、pEXT22(Kan耐性、IPTG誘導性)、pEC415(Kan耐性、アラビノース誘導性)またはpLAFR(tet耐性、構成的)またはそれらの誘導体から個々に発現させた。
【0241】
【0242】
実施例2
小規模培養からのELISAによるグリコシル化の検出
PglBの変異体を、D/E-Z-N-Z-S/Tグリコシル化部位(ここで、ZおよびZはPではない)を含む緑膿菌由来オキソプロテインA(EPA)のグリコシル化を触媒するそれらの能力に関して、肺炎連鎖球菌血清型8のそれに相当する多糖を用いて試験した。よって、大腸菌宿主細胞を、肺炎連鎖球菌血清型8莢膜多糖の構築に必要なグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子、変異体PglB遺伝子およびグリコシル化部位を含むEPAをコードするプラスミドで形質転換させた。遺伝子の発現をIPTGおよびアラビノースを用いて誘導し、大腸菌宿主細胞を一晩増殖させて、以下のようにグリコシルトランスフェラーゼ、PglBおよびEPAの発現ならびにEPAのグリコシル化を可能とした。
【0243】
96ディープウェルプレートのウェルを1mlのTB培地で満たし、各ウェルに宿主細胞大腸菌の単一のコロニーを植え込み、37℃で一晩インキュベートした。各ウェルのサンプルを用いて、10mM MgClおよび適当な抗生物質を添加した1mlのTBを含む96ディープウェルプレートの主培養に植え込み、OD600が1.3~1.5に達するまで増殖させた。細胞を1mM IPTGおよび0.1%アラビノースとともに一晩37℃でインキュベートした。
【0244】
ペリプラズム抽出液は、プレートを遠心分離し、上清を除去し、0.2mlの50mM Tris-HCl pH7.5、175mM NaCl、5mM EDTAを加えた後、4℃で振盪して細胞を懸濁させることによって作製した。10μlの10mg/mlポリミキシンBを各ウェルに加え、細胞を1時間4℃でインキュベートした。プレートを遠心分離し、上清を除去した。
【0245】
ペリプラズム抽出液からグリコシル化タンパク質を単離するために、IMAC樹脂の25%スラリー(30mM Tris pH8.0中)120μl、10mMイミダゾール、500mM NaClを96ウェルフィルタープレート(Acroprep Advance)の各ウェルに加え、Nunc ELISAプレートの上部に置いた。プレートを遠心分離し、フロースルーを廃棄した。150μlのペリプラズム抽出液および37.5mlの5×結合バッファー(150mM Tris pH8.0、50mMイミダゾール、2.5M NaCl)を各ウェルに加えた。これらのサンプルを30分間室温でインキュベートした。プレートを遠心分離し、フロースルーを廃棄し、さらに3回の洗浄工程を行った。最後に、グリコシル化タンパク質を30mM Tris pH8.0、500mMイミダゾール、200mM NaClで溶出させ、ELISAアッセイでの使用準備をした。
【0246】
サンドイッチELISAは、グリコシル化タンパク質の糖部分を認識する抗体(例えば、肺炎連鎖球菌血清型8に対するモノクローナル抗体)をPBSで希釈したもので96ウェルプレートのウェルをコーティングすることによって行った。プレートを一晩4℃でインキュベートしてコーティングを可能とした。次に、プレートを、0.1%Tweenを含むPBSで洗浄した。その後、5%ウシ血清アルブミン(PBST中)を用いて室温で2時間プレートをブロッキングした。このプレートをPBSTで洗浄した。このサンプルを、1%BSAを含むPBSTで希釈し、コーティングしたウェル中で、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、1%BSAを含むPBSTで希釈した検出抗体、例えば、抗Hisタグ-セイヨウワサビペルオキシダーゼを各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。次に、プレートを洗浄した後、ELISA用、超高感度3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン液体基質(Sigma-Aldrich)を加えた。数分後、2M硫酸を加えて反応を停止させた。450nmのODを読み取ることによって結果を得た。
【0247】
結果
出発点として、すでにN311Vの突然変異を含むPglBに突然変異を生じさせた。第1ラウンドの変異体世代では、PglBのOST活性をさらに増加させた突然変異としてY77Rを同定した(図1参照)。N311VおよびY77Rに突然変異を含むPglBを突然変異させ、有望な変異体を選択し、配列決定し、上記のようにOST活性を分析した。各変異体のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性の増加倍率を計算し、結果を表3に示す。
【0248】
【表3】
【0249】
突然変異57T、57R、63L、63Q、94N、101W、101E、101H、101P、101R、101M、101G、172E、176E、176G、191H、191D、101R、101Y、193T、193H、193G、193F、233V、234H、234C、234W、255H、286A、286Q、286L、301P、301G、301F、319A、319Q、319L、319T、397N、397L、397Q、402R、402H、425S、435A、435L、435F、435H、435R、446G、462P、462C、462W、462T、462N、479M、523R、532H、601G、605D、606P、610P、610L、610R、610D、610A、645L、645S、645H、676Q、676W、676G、695Iおよび695Qは、キャリアタンパク質への肺炎連鎖球菌血清型8糖の付加の触媒作用を増加させることができたいくつかのPglB変異体に見られる突然変異として示されたものである。これらのうち、A57R突然変異を、OST活性のその高い増加、有望な変異体のその出現頻度およびPglB構造におけるその位置のために、さらなるラウンドへ進める有望な突然変異として選択した。
【0250】
残基462および479が相乗作用して両残基が変位している場合にOST活性により高倍率の増加をもたらす能力を、個々の結果を示す下表に示す。
【0251】
【0252】
さらなるラウンドの実験において、有利なA57R突然変異をY77RおよびN311V突然変異に追加した。さらなる突然変異としてA57R、Y77RおよびN311V突然変異をPglBに追加した。これらの新たな突然変異を、EPAに付加する糖として肺炎連鎖球菌PS8を用いたELISAにより、PglB活性が増加するかどうかについて試験した。結果を以下の表4に示す。
【0253】
【表4】
【0254】
このラウンドから、52の別個のPglB変異体において、OST活性の増加倍率が最大15倍、または8~12倍となる462Wと479Mの組合せが見出され、これらの突然変異は、存在する唯一の新しい突然変異であった。これらの突然変異は、糖の還元末端にグルコース残基を含む糖でタンパク質をグリコシル化するためのPglBの効率を向上させるために重要であると考えられる。
【0255】
また、突然変異N300L、L301P、F308WおよびL570Rも、キャリアタンパク質への肺炎連鎖球菌血清型8糖の付加の触媒を増加させることができた、いくつかのPglB変異体に出現した突然変異として示された。
【0256】
N300L、L301P、F308W、Y462W、H479MおよびL570Rを、OST活性を増加するそれらの能力、効率的なPglB変異体におけるそれらの出現頻度およびPglBの分子構造におけるそれらの位置について、突然変異/選択のさらなるラウンドに進む有望な突然変異として選択した。これらの残基をY77R、N311VおよびA57R突然変異に追加し、さらなる点突然変異を、タンパク質に肺炎連鎖球菌血清型8糖を付加するためのPglBの活性を向上させるそれらの能力に関して試験した。結果を下表5に示す。
【0257】
【表5】
【0258】
このラウンドから、以下の突然変異:Y77R、N311V、A57R、N300L、L301P、F308W、Y462W、H479M、L570R、L191Y、Y286Q、S295L、A382S、K482RおよびT523Rを含む参照PglBをもたらした、従前に試験した突然変異に、L191Y、Y286Q、S295L、A382S、K482RおよびT523R突然変異を追加した。次のラウンドで、Y77R、N311V、A57R、N300L、L301P、F308W、Y462W、H479M、L570R、L191Y、Y286Q、S295L、A382S、K482RおよびT523Rを含むPglBの効率をさらに増加させるそれらの能力に関してさらなる突然変異を試験し、結果を下表6に示す。
【0259】
【表6】
【0260】
このラウンドから、E297Rを、この突然変異が存在した場合に生じた活性の増大およびこの突然変異の出現頻度のために選択した。また、S80D突然変異も、より高レベルのOST活性を伴う変異体のその出現頻度により、有望な残基として選択した。
【0261】
進化の概要
この試験の経過中、グリコシル化コンセンサス配列を含むタンパク質に肺炎連鎖球菌血清型8糖を付加することに関するPglBの活性は3桁を超えるまでに増強した(図1)。Y77RおよびN311V突然変異をすでに含むPglB酵素のPglBへのA57Rの導入は、PglB活性に24倍の増加をもたらした。N300L、L301P、F308W、Y462W、H479MおよびL750Rのさらなる付加は、活性に360倍の累積増加をもたらした。L191Y、Y286Q、S295L、A382S、K482RおよびT523Rのさらなる組み込みは、2520倍の活性の累積増加をもたらし、E297R突然変異のさらなる包含は、活性に累積5040倍の増加をもたらした。さらなるラウンドの進化ではPglB活性の増加は小さかったが、ラウンド1~3で最大の活性増加が達成された(図1参照)。
【0262】
実施例3
振盪フラスコ容量でのPglB活性の測定
いくつかの変異型PglB酵素を、3つのグリコシル化コンセンサス配列を含むEPAタンパク質を肺炎連鎖球菌血清型8糖でグリコシル化する際の活性の増加を確認するために、大規模アッセイに使用した。
【0263】
エレクトロコンピテント大腸菌株を、エレクトロポレーションによって、必要なプラスミド形質転換させた。これらの細胞を1時間回復させ、適当な抗生物質および2mM MgClを含む寒天プレートに播種した。これらのプレートを一晩インキュベートした。プレートから得られた細胞を、適当な抗生物質および10mM MgClを含むTB培地に植え込み、一晩インキュベートすることによって前培養物を作製した。
【0264】
適当な抗生物質および10mM MgClを含むTB培地に、OD600nmが0.1となるように前培養物を希釈することによって主培養を開始した。この培養物をOD600nmが0.8~1.0となるまで増殖させた後、適当な誘導剤(例えば、IPTGのアラビノース)を用いて細胞を誘導した。その後、細胞を一晩インキュベートした。
【0265】
ペリプラズム抽出液を以下のプロセスによって作製した。この培養物を遠心分離して大腸菌をペレットとした。上清を廃棄し、ペレットを30mM Tris-HCl pH8.5、1mM EDTA、20%スクロースに再懸濁させた。リゾチームを終濃度1mg/mlとなるように加え、細胞をリゾチームとともに25分間4℃で振盪しながらインキュベートした。遠心分離の後に、ペリプラズム抽出液を保持した。
【0266】
1mlのペリプラズム抽出液を、0.25mlの150mM Tris pH8.0、50mMイミダゾール、2.5M NaClおよび20mM MgClと混合した。0.2mlの50%スラリーまたは予め平衡化したNiNTAアガロース(Qiagen)を加え、サンプルを20分間室温で振盪しながらインキュベートした。IMAC樹脂を遠心分離し、上清を廃棄した。0.5mlの30mM Tris pH8.0、10mMイミダゾール、500mM NaClを0.1%n-ドデシル-B-マルトースとともに加え、この樹脂を遠心分離し、上清を廃棄した。この樹脂をさらに3回、30mM Tris pH8.0、10mMイミダゾール、500mM NaClで洗浄した。0.2mlの溶出バッファー(30mM Tris pH8.0、10mMイミダゾール、50mM NaCl)をこの樹脂に加え、5分間室温でインキュベートした。溶出液を回収し、さらなる分析のために使用した。
【0267】
グリコシル化の量をSDS-PAGEおよびウエスタンブロット法によって評価した。SDS-PAGEにサンプルを流した後、これらのタンパク質をニトロセルロース膜に転写した。この膜を10%ミルクで少なくとも10分間ブロッキングした。ブロッキングの後、膜を第1の抗体(例えば、肺炎連鎖球菌血清型8に対するマウスMab)とともに、1%ミルクを含むPBS-T中で1時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄した後、膜を、1%ミルクを含むPBS-T中で、第2の抗体-HRPコンジュゲート(抗マウスIgG Fc HRP)とともに1時間インキュベートした。この膜をPBS-Tで洗浄し、BioFX TMB One Component HRPメンブランサブストレートを用いて現像した。
【0268】
結果
図1は、肺炎連鎖球菌血清型8莢膜糖でグリコシル化されたEPAのレベルの上昇が見られたゲルを示す。OST活性の最も重要な増加はラウンド1~3で達成され、その後のラウンドで達成された活性の増加倍率は小さかった。振盪フラスコ規模で、1,000倍を優に超える収量の増大を達成した。
【0269】
実施例4
変異型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼはさらなる糖によるグリコシル化の触媒において高い効率を示す
各ラウンドから得られた修飾されたPglB OSTがさらなるバイオコンジュゲートのより高い収量をもたらし得るかどうか検討するために、種々の糖をEPAタンパク質に結合させるさらなる実験を行った。
【0270】
実施例2および3のプロトコールを使用して、修飾されたEPAに共有結合された肺炎連鎖球菌血清型22Fのバイオコンジュゲートを作製した。ELISAおよびウエスタンブロット法の結果は、実施例2のラウンド3、4および5から生成された修飾されたPglBを用いて、肺炎連鎖球菌血清型22F-EPAコンジュゲートの良好な収量が達成できたことを示す。A57R、Y77RおよびN311Vに突然変異を有するラウンド3のPglBを用いた場合の収量は、ラウンド4から得られた、N300L、L301P、F308W、Y462W、H479MおよびL570Rにさらなる点突然変異を含むPglBを用いることによってさらに向上する。収量は、L191Y、Y286Q、S295LおよびA382Sにさらなる突然変異を含むラウンド5のPglBを用いることによってさらに向上する。
【0271】
これらの変異型PglB OSTはまた、図3Aに示されるように、タンパク質への肺炎連鎖球菌血清型23A糖の付加の触媒においても効率的であった。これらの変異型PglB OSTはまた、図3Bに示されるように、タンパク質への肺炎連鎖球菌血清型35Bの付加の触媒においても効率的であった。A57R、Y77RおよびN311Vの置換の包含は、図3Bに示される活性の向上をもたらした。
【0272】
これらの変異型PglB OSTはまた、図4に示されるように、タンパク質への肺炎連鎖球菌血清型19Aの付加の触媒においても効率的であった。
【0273】
配列表
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
【配列表】
2022543678000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1もしくは2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片であって、PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドアミノ酸配列が、アミノ酸X57、X63、X94、X101、X172、X176、X191、X193、X233、X234、X255、X286、X295、X301、X319、X397、X402、X425、X435、X446、X462、X479、X523、X532、X601、X605、X606、X610、X645、X676およびX695からなる群から選択される少なくとも1つの残基が配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸に置換されているという特徴を含み、配列番号1の57番目のアミノ酸に相当する残基がRまたはKまたはT、好ましくはRまたはT、より好ましくはRに変異しており、かつ、前記PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドが、配列番号1の配列を有する、相当するPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼの少なくとも1.5倍のグリコシル化タンパク質を生産するように糖によるタンパク質のグリコシル化の収量を高めることができる、
PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項2】
PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドアミノ酸配列が、アミノ酸X78、X84、A155、X293、X300、X301、X306、X308、X462、X464、X479、X523およびX570からなる群から選択される少なくとも1つの残基が配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸に置換されているという特徴を含む、請求項1に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項3】
アミノ酸配列が、X78がTに変異している;X84がWに変異している;X155がQに変異している;X293がCに変異している;X300がLに変異している;X301がPまたはGに変異している;X306がHに変異している;X308がWに変異している;X462がW、NまたはTに変異している;X464がLに変異している;X479がMに変異している;X523がRに変異している;X570がRまたはVに変異している;ことからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、請求項に記載のPglB OSTポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項4】
アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸X301に相当する残基がPに変異している;配列番号1のアミノ酸X462に相当する残基がNまたはWに変異している;および配列番号1のアミノ酸X479に相当する残基がMに変異していることからなるリストから選択される少なくとも1つの特徴を含む、請求項2~3のいずれか一項に記載のPglB OST。
【請求項5】
配列番号1のX300に相当するアミノ酸がLに変異している;配列番号1のX301に相当するアミノ酸がPに変異している、配列番号1のX308に相当するアミノ酸がWに変異している、配列番号1のX462に相当するアミノ酸がWに変異している、配列番号1のX479に相当するアミノ酸がMに変異している、および配列番号1のX570に相当するアミノ酸がRに変異している、という特徴のうち少なくとも2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のPglB OST。
【請求項6】
配列番号1のアミノ酸X77に相当する残基がRであり、配列番号1のアミノ酸X311に相当する残基がVである、請求項1~のいずれか一項に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸X57、X462およびX479に相当する残基が、配列番号1のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換され、場合によりA57R、Y462WおよびH479Mとなっている、請求項1~のいずれか一項に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその機能的断片。
【請求項8】
全長であって、場合により、712、713または714アミノ酸の長さである、請求項1~のいずれか一項に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチド。
【請求項9】
配列番号12、13または14と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有するカンピロバクター・コリ由来のPglB(PglB C.coli )であって、配列番号12のアミノ酸X57に相当する残基が、配列番号12のその位置に見られるものとは異なるアミノ酸で置換され、場合によりA57Rとなっており、かつ、前記PglBが、配列番号1の配列を有する、相当するPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼの少なくとも1.5倍のグリコシル化タンパク質を生産するように糖によるタンパク質のグリコシル化の収量を高めることができる、カンピロバクター・コリ由来のPglB(PglBC.coli)。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の変異型PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の少なくとも1つのPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたは請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む、組成物または宿主細胞(例えば、原核生物宿主細胞または大腸菌宿主細胞)。
【請求項12】
グリコシル化タンパク質を作製するためのプロセスであって、
(a)請求項11に記載の宿主細胞をタンパク質の生産に好適な条件下で培養する工程;および
(b)前記宿主細胞からグリコシル化タンパク質を単離する工程;
を含む、プロセス。
【請求項13】
タンパク質の、アミノ酸配列Asp/Glu-Z-Asn-Z-Ser/Thr(ここで、ZおよびZはPro以外のいずれの天然アミノ酸であってもよい)を含むグリコシル化コンセンサス配列のN残基に糖が結合しているグリコシル化タンパク質の生産における、請求項1~のいずれか一項に記載のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片の使用。
【請求項14】
前記PglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはその機能的断片が、配列番号1の配列を有する、相当するPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼの少なくとも1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、700倍、1000倍のグリコシル化タンパク質を生産するように糖によるタンパク質のグリコシル化の収量を高めることができる、請求項13に記載の使用。
【国際調査報告】