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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】火力発電プラント
(51)【国際特許分類】
   F22B 3/00 20060101AFI20221005BHJP
   F22B 1/02 20060101ALI20221005BHJP
   F24V 99/00 20180101ALI20221005BHJP
【FI】
F22B3/00
F22B1/02 Z
F24V99/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507813
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 IB2020057524
(87)【国際公開番号】W WO2021028823
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/884,960
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522050376
【氏名又は名称】オカブ ディートリヒ インダクション インク.
【氏名又は名称原語表記】OQAB DIETRICH INDUCTION INC.
【住所又は居所原語表記】141 Duke St. E., Kitchener, Ontario N2H 1A6 (CA).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】オカブ, ハルーン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ディートリヒ, ジョージ ビー.
(57)【要約】
本開示は、火力発電プラントによって電力を生成するシステム及び方法を教示する。本システム及び方法は、ナノテルミット燃料を受け取るように構成された燃料加熱チャンバと、燃料加熱チャンバ内の燃料を誘導加熱するように構成された誘導アセンブリと、加熱されたナノテルミット燃料からの熱を電力に変換するように構成された電力生成サブシステムと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を生成する火力発電プラントであって、
ナノテルミット燃料を受け取るように構成された燃料加熱チャンバと、
前記燃料加熱チャンバ内の前記ナノテルミット燃料を誘導加熱によって加熱するように構成された誘導加熱アセンブリと、
加熱された前記ナノテルミット燃料からの熱を電力に変換するように構成された電力生成サブシステムと、
を備える、火力発電プラント。
【請求項2】
前記電力生成サブシステムは、
加熱された前記ナノテルミット燃料からの熱を作動流体に伝達する熱交換器と、
前記熱交換器に結合された流路であって、加熱された前記作動流体を前記流体加熱チャンバから受け取り、加熱された前記作動流体を循環させてタービンを推進し、発電機を介して電力を生成するように構成された、流路と、
を含む、請求項1に記載の火力発電プラント。
【請求項3】
前記熱交換は、
不透過性の壁の位置で/によって前記燃料加熱チャンバに結合された流体加熱チャンバを含み、前記流体加熱チャンバは、加熱された前記作動流体を受け取るように構成されており、前記作動流体は、加熱された前記ナノテルミット燃料による前記不透過性の壁を介した伝導加熱によって加熱され、
加熱された前記作動流体を前記流路に供給する、
請求項2に記載の火力発電プラント。
【請求項4】
前記誘導加熱アセンブリは、電磁石と、前記電磁石に交流電流を通す電子発振器とを含む、請求項3に記載の火力発電プラント。
【請求項5】
前記ナノテルミット燃料と前記作動流体とを混合してスラリーを形成するように構成された混合チャンバを更に備え、前記混合チャンバは前記熱交換器に結合され、前記熱交換器は、前記スラリーを加熱するように構成された、一体化された加熱チャンバを含む、請求項3に記載の火力発電プラント。
【請求項6】
前記誘導加熱アセンブリは、前記燃料加熱チャンバ内の前記ナノテルミット燃料を焼結するように構成されている、請求項3に記載の火力発電プラント。
【請求項7】
前記誘導加熱アセンブリは、前記ナノテルミット燃料を加熱して燃焼させるように構成されており、前記火力発電プラントは、前記ナノテルミット燃料の前記燃焼からの燃焼副産物を回収するために前記燃料加熱チャンバに接続された回収路を更に備える、請求項3に記載の火力発電プラント。
【請求項8】
前記回収路から少なくとも1つの燃焼副産物を受け取り、前記燃焼副産物の化学組成を再生生成物へと改質するように構成された再生器を更に備える、請求項7に記載の火力発電プラント。
【請求項9】
火力発電プラントを使用して電力を生成する方法であって、
燃料加熱チャンバによってナノテルミット燃料を受け取ることと、
前記燃料加熱チャンバ内の前記ナノテルミット燃料を、誘導加熱を使用して加熱することと、
加熱された前記ナノテルミット燃料からの熱を、電力生成サブシステムを介して電力に変換することであって、前記電力生成サブシステムは、
加熱された前記ナノテルミット燃料からの熱を作動流体に伝達する熱変換器と、
前記熱変換器に結合された流路であって、加熱された前記作動流体を前記流体加熱チャンバから受け取り、加熱された前記作動流体を循環させてタービンを推進し、発電機を介して電力を生成するように構成された、流路と、
を含む、ことと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記ナノテルミット燃料を加熱することは、電子発振器を介して電磁石に交流電流を通すこと及び、前記ナノテルミット燃料を周囲の電磁石内に配置することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
混合チャンバ内で前記ナノテルミット燃料を前記作動流体と混合してスラリーを形成することと、前記スラリーを加熱のために熱交換器に送達することであって、前記熱交換器は、前記スラリーを加熱するための一体化された加熱チャンバを含む、ことと、を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
加熱された前記作動流体と加熱された前記ナノテルミット燃料とを分離させることと、加熱された前記ナノテルミット燃料を回収路内に回収することと、加熱された前記作動流体を、前記流路を通って循環させることと、を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノテルミット燃料を凝縮させることと、凝縮された前記ナノテルミット燃料を前記混合チャンバに戻して前記作動流体と混合することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記作動流体を循環後に凝縮させることと、凝縮された前記作動流体を前記混合チャンバに戻して前記ナノテルミット燃料と混合することと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記燃料を加熱することは、前記ナノテルミット燃料を燃焼させて少なくとも1つの燃焼副産物を生成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記燃料加熱チャンバから、回収路を使用して少なくとも1つの燃焼副産物を回収することと、前記燃焼副産物を、前記回収路を介して再生器へと給送することと、を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記燃焼副産物の化学組成を前記再生器内で再生生成物へと改質することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記燃料を加熱することは、前記燃料加熱チャンバ内の前記ナノテルミット燃料を焼結することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
冷却、加熱、発電、推進及び工業製品のコジェネレーション、トリジェネレーション及びマルチジェネレーションの手段を更に備える、請求項1に記載の火力発電プラント。
【請求項20】
前記電力生成サブシステムに結合されたエネルギー貯蔵システムを更に備え、前記エネルギー貯蔵システムは、前記火力発電プラントによって生成されたエネルギーを貯蔵するように構成されており、前記エネルギー貯蔵システムは、前記誘導加熱アセンブリにエネルギーを供給するように更に構成されている、請求項1に記載の火力発電プラント。
【請求項21】
前記電力生成サブシステムに結合された分配ネットワークを更に備え、前記分配ネットワークは、前記電力生成サブシステムから電力を受け取るように構成されており、かつ、電力、有用な熱及び冷却を送達するように更に構成されている、請求項1に記載の火力発電プラント。
【請求項22】
宇宙空間内及び他の極限環境での長期運用のために、前記ナノテルミット燃料を宇宙空間内の場所における資源と混合することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
前記熱交換器は、前記燃料加熱チャンバに結合された排気加熱アセンブリを含み、前記排気加熱アセンブリは、前記作動流体を受け取るように構成されており、前記作動流体は、前記燃料加熱チャンバからの排気によって不透過性の壁を介して加熱され、前記作動流体は、前記不透過性の壁によって前記排気から隔離されている、請求項2に記載の火力発電プラント。
【請求項25】
前記熱交換器は、前記燃料加熱チャンバに結合された排気加熱アセンブリを含み、前記排気加熱アセンブリは、前記作動流体を受け取るように構成されており、前記作動流体は、前記燃料加熱チャンバからの排気によって不透過性の壁を介して加熱され、前記作動流体は、前記不透過性の壁によって前記排気から隔離されている、請求項9に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノテルミット燃料は、前記燃料加熱チャンバ内に制御された方法で分散される、請求項1に記載の火力発電プラント。
【請求項27】
燃料加熱チャンバ内に前記ナノテルミット燃料を受け取ることは、前記ナノテルミット燃料を燃料加熱チャンバ内に分散させることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には発電プラントに関する。より詳細には、本発明は、火力発電プラントを使用して電力を生成するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球規模のエネルギー需要の増加に応えるためには、持続可能で安価なエネルギーを利用できることが必須である。世界の化石燃料への過度な依存は、大気中の地球温暖化ガス濃度を増加させ、地球の平均気温を上昇させ、破壊的な気候変動を加速させることによって、環境の危機をもたらしている。更に、生活水準は一人当たりのエネルギー消費と直接に相関しており、人類の生活水準の向上への希求が、一人当たりのエネルギー消費をより一層増大させている。これらの社会的要求が、急激な人口増加と相まって、環境面で持続可能であると共に経済面で実行可能な新規な電力生成システム及び方法の研究へとつながってきた。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、火力発電プラントを使用して電力を生成するためのシステム及び方法を教示する。本システム及び方法は、ナノテルミット燃料を受け取るように構成された燃料加熱チャンバと、燃料加熱チャンバ内の燃料を誘導加熱するように構成された誘導アセンブリと、加熱されたナノテルミット燃料からの熱を電力に変換するように構成された電力生成サブシステムと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】例示的な火力発電プラントの図である。
図2】例示的な誘導加熱アセンブリの図である。
図3図1の火力発電プラントによって電力を生成する方法のフロー図である。
図4】再生器を含む別の例示的な火力発電プラントの図である。
図5図4の火力発電プラントによって電力を生成する方法のフロー図である。
図6】火力発電プラントに戻される更なる燃料を生成する能力を有する再生器を含む別の例示的な火力発電プラントの図である。
図7図6の火力発電プラントによって電力を生成する方法のフロー図である。
図8】混合チャンバを含む別の例示的な火力発電プラントの図である。
図9図8の火力発電プラントによって電力を生成する方法のフロー図である。
図10】宇宙空間で使用される別の例示的な火力発電プラントの図である。
図11】排気加熱アセンブリを含む別の例示的な火力発電プラントの図である。
図12】排気加熱アセンブリ及び2つの別個の作動流体の使用を含む別の例示的な火力発電プラントの図である。
図13】熱電発電機を含む別の例示的な火力発電プラントの図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
今日の火力発電プラントは、石炭などの化石燃料を燃焼させて電力を生成する。そのような電力生成は、以前には化石燃料が豊富であり、化石燃料が比較的入手しやすかったことから、容易に行われてきたが、化石燃料が枯渇し始めて入手しにくくなるのに伴い、より困難となりつつある。更に、化石燃料の使用は、大気中のCO2レベルを上昇させ、地球温暖化の一因となっている。
【0006】
核燃料などの別の形でのエネルギー生成は、CO2を排出せずにエネルギーを生成できる一方で、核物質中の放射能による危険性や、長期間にわたる使用済み核燃料の保管及び廃棄などのデメリットを伴う。
【0007】
加えて、化石燃料を燃焼させる火力発電プラントの使用が実用的ではない環境も存在する。そのような環境の例として、宇宙空間又はその他の極限環境がある。
【0008】
本開示は、ナノテルミットを含有する燃料を選択された濃度に分散させ、誘導によって加熱して噴射する、火力発電プラントを使用した電力生成のためのシステム及び方法を提供する。燃料は更に作動流体を加熱し、作動流体は次に循環されてタービンを推進し、発電機によって電力が生成される。本開示は、ナノテルミットがより高温で燃焼し、かつより清浄に燃焼可能であるため、汚染が少ないという利点を有する。加えて、ナノテルミットの燃焼又は焼結の副産物を回収し、更なるエネルギー生成を含む最終生成物として再生及び/又は再利用することができる。ナノテルミット燃料はまた、含有されている場合の取り扱いが一般的には安全であり、長期間にわたって保管する場合にも、分子構造の変化がわずかであるため安全である。更に、誘導による加熱とナノテルミットを含有する燃料の使用とを組み合わせることで、狭い空間内でも温度を均一に制御することが可能となり、火力発電プラントにおける複雑な作業を効率よく行うことができ、ナノテルミット燃料を加熱する際の熱及び電力の利用を最適化することができる。加えて、誘導による加熱とナノテルミットを含有する燃料の使用とを組み合わせることで、火力発電プラントを極限環境で実用的に運用することも可能となる。
【0009】
図1は、本開示による例示的な火力発電プラント100を図示している。火力発電プラント100は、燃料104を受け取るように構成された燃料加熱チャンバ108と、燃料加熱チャンバ108内の燃料を誘導加熱によって加熱するように構成された誘導加熱アセンブリ110と、電力生成サブシステム194と、を含む。この例では、電力生成サブシステム194は、燃料加熱チャンバ108に結合された熱交換器198であって、加熱された燃料104によって加熱されるように構成された作動流体124を受け取るように構成された熱交換器198と、流体加熱チャンバ120に結合された流路128であって、加熱された作動流体124を受け取り、少なくとも1つのタービン132を推進し、少なくとも1つの発電機136を介して電力を生成するように構成された流路128と、を含む。図1に示す実施形態などのいくつかの実施形態では、熱交換器198は流体加熱チャンバ120を含むことができる。他の実施形態では、熱交換器198は、以下に更に説明し、他の図に更に示す排気加熱アセンブリ176を含むことができる。更なる他の例では、電力生成サブシステム194は、以下に更に説明するように、加熱された燃料104からの熱を電力に変換するための他の構成要素を含んでもよく、かつ/又は他の方法を使用してもよい。
【0010】
燃料加熱チャンバ108は、燃料104を受け取るように構成されている。この例では、燃料加熱チャンバ108は、誘導加熱アセンブリ110のコイル116を燃料加熱チャンバ108に巻き付けることができるように、略円筒形状となっていてもよい。燃料加熱チャンバ108の他の容器形状も企図され得る。加えて、他の実施形態では、2本のコイルが互いに巻き付いていることにより、大きさの異なる一連の複数の磁界を生成することが可能であってもよい。更に、他の実施形態では、1つ以上のコイルを燃料加熱チャンバ108に隣接して設けてもよい。磁界を生成する他の構成も企図され得る。動作において、誘導加熱アセンブリ110が燃料104を加熱すると同時に、燃料104が燃料加熱チャンバ108内に受け取られて収容される。
【0011】
いくつかの例では、燃料104が供給アセンブリ106を介して燃料加熱チャンバ108に供給されてもよい。例えば、供給アセンブリ106は、燃料ポンプと、燃料加熱チャンバ108への供給開口部と、燃料源から燃料加熱チャンバ108に燃料104を供給するように構成されたコンベヤベルト等と、を含んでもよい。燃料源は、燃料104が燃料加熱チャンバ108によって受け取られるまで燃料104を収容する別のチャンバ、貯蔵領域又は保持領域であってもよい。いくつかの例では、供給アセンブリ106は、燃料加熱チャンバ108に供給される燃料104を準備するように構成された中間マニピュレータを更に含むことができる。他の例では、供給アセンブリ106は更に、燃料104を燃料加熱チャンバ108内へと分散させるか、又はより具体的には、燃料104がエアロゾル化されている場合には、供給アセンブリ106は、エアロゾル化された燃料104を燃料加熱チャンバ108内に噴霧してもよい。中間マニピュレータの一例は、複数の異なる種類の燃料104を受け取って混ぜ合わせるための混合チャンバである。
【0012】
図2を参照すると、誘導加熱アセンブリ110は、電磁石及び電子発振器を含む。誘導加熱アセンブリ110は、例えば燃料104中のテルミット内に渦電流及びヒステリシスを発生させ、燃料104に点火して加熱することによって、誘導加熱を使用して燃料104を加熱する。この例では、コイル116と燃料104とが電磁石を形成する。電源112は電子発振器である。コイル116が燃料加熱チャンバ108に巻き付けられていることにより、コイル116は、中央に燃料加熱チャンバ108を有するソレノイド形状を形成する。コイル116は、磁界を発生させるためにコイル116に電流を通すように構成された電源112に結合されている。磁界の振動のタイミングを調整して、交番磁界ハルバッハ配列磁石を形成してもよい。
【0013】
動作において、燃料加熱チャンバ108が燃料104を受け取る。電源112が、図1に矢印で示すようにコイル116に電流を通す。コイル116に流れる電流は、アンペールの法則に従って、コイル116の周囲に磁界を発生させる。更に、コイル116が燃料加熱チャンバ108に巻き付けられたソレノイド形状であるために、コイル116の各ターンの磁界がコイルの中心を通過することにより、(例えば燃料加熱チャンバ108内などの)コイル116の中心で強い交番磁界が生じる。
【0014】
いくつかの例では、電源112は、コイル116を通る電流を変化させることによって磁界を変化させるように構成されている。他の例では、コイル116は、燃料加熱チャンバ108に対して移動して、磁界の周波数及び強度を変化させるように構成されてもよい。変化する磁界は、ファラデーの誘導法則に従って、近傍の導体内及び、この例では燃料104内に渦電流及びヒステリシスを発生させ、その結果、燃料104内のナノテルミットを加熱する。
【0015】
いくつかの例では、燃料104が粒子の磁気ヒステリシスによって加熱されてもよい。特に、燃料104の着磁及び脱磁によってヒステリシス損が生じて熱を発生させる。磁力が印加されると、燃料104の分子が第1の方向に整列する。磁力が反転すると、燃料104が磁気の反転に逆らうことによってヒステリシス損が生じ、その結果、燃料104が発熱して着火点に至る。
【0016】
いくつかの例では、誘導加熱アセンブリ110は、磁気ヒステリシスと渦電流による誘導加熱との組み合わせを使用して燃料104を加熱してもよい。
【0017】
この例では、燃料104は、ナノテルミットなどの反応性金属化合物である。具体的には、ナノテルミット燃料は、酸化剤及び還元剤(例えば、金属及び金属酸化物)を含む。ナノテルミット燃料は更に、ナノテルミット燃料をエアロゾル化させることの可能な不活性ガスを含むことができる。エアロゾル化したナノテルミット燃料は、均一な温度制御のために燃料加熱チャンバ108内でより高度に分散することが可能である。コイル116及び電源112によってナノテルミット燃料内に渦電流が発生し、ナノテルミット内を通って流れる渦電流の抵抗が、ジュール加熱によってナノテルミットを加熱する。
【0018】
ナノテルミット燃料は、粒子の質量当たりのエネルギー放出が、例えば炭化水素、ガス、石油、石炭、及びエタノールなどの他の燃料の点火と比較して大きいために、誘導によってナノテルミット燃料を加熱して点火する火力発電プラント100での使用において有益であり得る。ナノテルミット燃料が、100ナノメートル以下の大きさのナノテルミットを含有してもよい。ナノテルミット燃料が、酸化剤を更に含有してもよい。エアロゾル化形態のナノテルミット燃料は、ナノテルミット燃料の燃料加熱チャンバ108内への分散を可能にする。燃料加熱チャンバ108内へのナノテルミット燃料の分散は、燃料加熱チャンバ108に巻き付けられたコイル116と共に、燃料加熱チャンバ108の全容積にわたる実質的に均一な温度制御を可能にする。この結果、ナノテルミット燃料の燃焼又は焼結、あるいは他の形の加熱のための最適な温度を制御することが可能となる。燃料104の燃焼、焼結又は他の形の加熱については、以下に更に説明する。
【0019】
他の例では、燃料104が2つ以上の材料を含んでもよい。例えば、燃料104が、磁性材料、導電性材料、ナノエネルギー複合材料、(例えば、ニッケル、金、及び/又は銀を含む)ナノワイヤ又はナノロッド、固体、液体、気体、グラフェン、反応性金属化合物、合成の及び非合成のポリマー、ヒドロゲル、熱可塑性プラスチック、メタマテリアル及びその他のナノテルミット、並びに天体、月、火星、その他の惑星、小惑星、惑星状天体、及びその他の天体上に存在する複数の燃料源を含む、宇宙空間内の場所における資源(in situ space resources)を非限定的に含んでもよい。宇宙空間内の場所における資源が使用される例では、火力発電プラント100を宇宙空間内で長期運用することが可能である。他の例は、利用可能な材料を極限環境で長期運用するために使用することを含む。極限環境は、生物形態の生息が困難な環境である。極限環境の例には、例えば高地又は深海などの、高温又は低温の環境、高圧環境、あるいは低酸素環境が含まれる。より一般的には、燃料104は、粒径、充填構造(例えば単純立方充填、面心立方充填、六角充填など)、異なる反応温度、又は異なる加熱プロファイルを非限定的に含む、異なる構成の複数の材料を含むことができる。例えば、これら複数の材料を、シェルを形成する複数の異なる層、異種混合物又は均質混合物などとして組み合わせて、燃料104を構成してもよい。複数の異なる層を有する燃料104を加熱することで、複数の異なる加熱プロファイルが生じてもよい。
【0020】
この例では、燃料104が誘導加熱されて燃焼する。燃料104が加熱されて燃焼する場合、火力発電プラント100は、燃料加熱チャンバ108内に点火システムを含んでもよい。点火システムを使用して燃料104に点火し、燃焼させてもよい。更に、この例では、燃料104は、燃焼時の汚染が他の化石燃料の燃焼と比較して少ないナノテルミット燃料であってもよい。
【0021】
他の例では、燃料104は、焼結(例えば、溶解を伴わない加熱)される。燃料104が複数の材料から構成される別の例では、燃焼と焼結とを組み合わせて実施してもよい。加えて、他の例では、加熱された燃料から電力を生成する所望の方法に基づいて、燃料104を他の反応点まで加熱してもよい。例えば、燃料104を溶融させるか、又は状態を変化させることなく所定の温度まで加熱すること等も可能である。
【0022】
燃料104を、所望の加熱プロファイルに基づいて、制御された方法で加熱してもよい。例えば、燃料104を最初にある時間にわたって焼結させ、次いで燃焼させてもよい。別の例では、燃料104を最初に燃焼させ、次いで、燃焼後の燃料生成物と残りの燃料104とを焼結させてもよい。焼結、燃焼及び他の加熱方法の他の組み合わせに加えて、焼結サイクルと燃焼サイクルとのいかなる組み合わせで燃料104を処理してもよい。
【0023】
焼結の利点は、燃料104の加熱のピーク効率を集中させると共に、燃料104を計測可能な速度で減少させながら制御された熱を出力することである。燃料104の燃焼の利点は、燃料104の加熱に使用するエネルギーが少なく、また以下に更に説明するように、燃焼副産物を再生できることである。
【0024】
図1に戻ると、流体加熱チャンバ120が燃料加熱チャンバ108に結合され、作動流体124を受け取るように構成されている。流体加熱チャンバ120は、不透過性の壁を間に隔てて燃料加熱チャンバ108に結合されている。不透過性の壁は、燃料チャンバ108と流体加熱チャンバ120との双方を互いに伝導接触させながら、それぞれのチャンバの内容物を互いから物理的に隔離することを可能にする。この結果、これら2つのチャンバ間の不透過性の壁を介した熱交換が可能となり、また燃料104と作動流体124とが混ざり合ってしまうことが防止される。流体加熱チャンバ120、燃料加熱チャンバ108及び不透過性の壁は、熱交換システムを形成する。例えば、流体加熱チャンバ120と燃料加熱チャンバ108とは、それぞれが伝導性材料から形成され、互いに物理的に接触するように配置されて、熱が燃料加熱チャンバから流体加熱チャンバへと伝達されることを可能にしてもよい。そのような例では、燃料加熱チャンバ108及び流体加熱チャンバ120の壁又は壁の一部分が不透過性の壁を形成する。流体加熱チャンバ120は、作動流体124を受け取るため、及び作動流体124を流体加熱チャンバ120から排出するために、流路128に接続されている。例えば、流体加熱チャンバ120が流路128と一体に形成されてもよく、また、流路128の一部分として燃料加熱チャンバ108と伝導接触するように画定されて、作動流体124が流路128の上述の位置で加熱されることを可能にしてもよい。他の例では、流体加熱チャンバ120は、流路128と並設された、(例えば、1つ以上の弁、入口/出口を有するなど、定義された空間を有する)別個のチャンバであってもよい。作動流体124の例は、水、二酸化炭素、水素、メタン、バイオ燃料などを非限定的に含む。
【0025】
他の例では、熱交換器198は、加熱された燃料104と作動流体124とが物理的に混ざり合うことを可能にする。例えば、熱交換器198は、加熱された燃料104を取り込み、これを作動流体124と混合して作動流体124を加熱することを可能にするチャンバと、加熱された作動流体124を流路124へと放出する分離手段とを含んでもよい。例えば、加熱された燃料104がエアロゾル化され、チャンバ内に噴霧されて、作動流体124を加熱してもよい。他の例では、加熱された燃料104を混合して作動流体124を加熱するための、回転パドル、ファン又は他の手段などのミキサをチャンバが含んでもよい。
【0026】
作動流体124は、加熱された燃料104からの熱交換によって加熱される。熱は、燃料104から作動流体124を収容している流体加熱チャンバ120への伝導によって伝達される。この例では、燃料104の連続的な供給を燃焼させることにより、作動流体124が流体加熱チャンバ120を通って流れるのに伴って、作動流体124が加熱される。燃料104が焼結される他の例では、焼結から生じる熱が、作動流体124が流体加熱チャンバ120を通って流れるのに伴って、作動流体124を加熱することを可能にする。作動流体124は、加熱に伴って相変化してもよく、次いで流体加熱チャンバ120から流路128へと排出される。この例では、作動流体124は水であり、流体加熱チャンバ120を通って流れるのに伴って蒸発して蒸気となる。蒸気は次いで、流体加熱チャンバ120から流路128へと流入する。
【0027】
流路128は、作動流体124を受け取り、作動流体124の流れをタービン132へと向ける。この例では、作動流体124は、図1の流路128内に示す矢印の方向に流れる。流路128は更に、作動流体124をタービン132から復水器138へと給送し、作動流体124を流体加熱チャンバ120に戻して、作動流体124を循環させる。
【0028】
タービン132は、加熱された作動流体124を受け取るために、加熱された作動流体124を収容している流路128に接続されている。タービン132はまた、シャフトを介して発電機136に接続されている。加熱された作動流体124がタービン132を推進し、タービン132は次いで、発電機136を駆動する。加熱された作動流体124が蒸気であるこの例では、蒸気は流路128からタービン132へと流入して、タービン132を推進する。発電機136が電流を生成し、電流は次いで、火力発電プラント100から送出されて電力として使用される。
【0029】
別の実施形態では、蒸気としての作動流体124が、スターリング機関などの蒸気機関を駆動して、電力を発生させ、かつ/又は運動力を供給してもよい。これとは異なる機械的機関に動力を供給して電力を生成する、蒸気のその他の用途も企図される。
【0030】
復水器138は、作動流体124がタービン132を通って循環した後に作動流体124を受け取り、作動流体124を凝縮させ、次いで、凝縮された作動流体124を流体加熱チャンバ120に戻すように構成されている。復水器138は、能動的復水器であってもよいが、受動的復水器であってもよい。能動的復水器は、ジェット復水器又は表面復水器のいずれかを含む。復水器138はまた、能動的復水器と受動的復水器との組み合わせ、又は2つの種類の能動的復水器の組み合わせであってもよい。例えば、復水器138は、ジェット復水器と、これに続く表面復水器との組み合わせであってもよい。水以外の作動流体が使用される場合などの他の例では、復水器138は、加熱作動流体を、より一般的には冷却するか、又は元の状態へと戻して再循環させてもよい。
【0031】
図13に示す別の一例では、火力発電プラント100Gが、熱電発電機190を含む。上述の実施形態では、電力生成サブシステム194は、熱交換器198、復水器138、流路128、タービン132及び発電機136を含むことができる。この例の火力発電プラント100Gでは、電力生成サブシステム194は、熱電発電機190からなる。熱電発電機190は、流体加熱チャンバ120、作動流体124、流路128、タービン132及び復水器138を必要とすることなく、発電機136の代わりに使用されてもよい。熱電発電機は、ゼーベック効果、ペルティエ効果及びトムソン効果をなどの熱電効果を使用して、熱を電力に変換する。ゼーベック効果は、異なる金属に温度差を設けた時に、電流を発生させ、熱電発電機が熱をエネルギーに変換することを可能にし、生成される電圧は、2つの異なる金属間の温度差に比例する。熱電発電機は、燃料加熱チャンバ108内の燃料104の燃焼及び/又は焼結から生じる熱から電力を生成する。ペルティエ効果は、2つの異なる導体間の接合点を電荷が流れる時のこの接合点における熱の生成又は吸収である。トムソン効果は、温度勾配を有する導体を電荷が流れる時のこの導体に沿った熱の生成又は吸収である。
【0032】
ここで図3を参照すると、電力を生成する方法200が図示されている。方法200を、火力発電プラント100におけるその実施と関連させて説明する。他の例では、方法200を他の好適なシステムで実施してもよい。ブロック205で、燃料104が、例えば供給アセンブリ106を介して燃料加熱チャンバ108内に供給及び配置される。ブロック210で、燃料104は、燃料加熱チャンバ108内で、誘導加熱アセンブリ110を使用して誘導により加熱される。詳細には、電源112を使用して、交番磁界が周囲のコイル116内を通過し、燃料104に印加されて、渦電流及び/又はヒステリシスを発生させ、燃焼及び/又は焼結によって燃料104を加熱する。
【0033】
ブロック215で、作動流体124が、流体加熱チャンバ120内で、燃料104からの熱交換によって加熱される。例えば、燃料104を誘導加熱することにより、燃料104が燃焼する。この例では、燃料104の燃焼が作動流体124を加熱する。
【0034】
ブロック220及びブロック225では、加熱された作動流体124が流路128を介してタービン132へと循環され、作動流体124がタービン132を推進する。タービン132を推進することで、発電機136に接続されたシャフトが回転し、電力を発生させることができる。
【0035】
ブロック230で、作動流体124が復水器138内に回収され、ここで作動流体124が凝縮され、次いで流路128を介して流体加熱チャンバ120に戻され、ここで作動流体124が再加熱され、ループ状に再循環されてもよい。
【0036】
図4は、別の例示的な火力発電プラント100Aの図である。この例では、燃焼副産物144のうちの1つ以上を回収及び給送するための回収路140が燃料加熱チャンバ108に接続されている。再生器148が、燃焼副産物144のうちの1つ以上を受け取るように構成されている。燃料104の燃焼の結果、化学組成を改質することによって新たな生成物へと化学的に再生可能な1つ以上の燃焼副産物144が生じてもよい。再生器148は、燃焼副産物144を、他の手段のために使用される新たな最終生成物へと処理及び化学的に改質するように構成されている。再生器148は、化学改質のために燃焼副産物144と混合可能な更なる原材料を受け取ってもよい。例えば、燃料104としてのナノテルミットを使用した燃焼によって、熱と燃焼副産物144とが生じる。熱は作動流体の加熱に用いられるが、燃焼副産物144は回収路140によって回収され、再生器148へと給送される。燃焼副産物144に対して電気分解などの還元処理を実施し、再生及び/又は再利用される最終生成物を生成してもよい。
【0037】
火力発電プラント100Aが、燃焼副産物を分離させる分離手段を更に含んでもよい。分離手段は、燃料加熱チャンバ108、再生器148と一体化されていても、又は別個の構成要素であってもよい。分離手段は、燃焼副産物144を燃料104から分離させるか、又は燃料加熱チャンバ108内の他の余剰産物から分離させるための、篩、(例えば、産物を密度ごとに自然に分離させる)分離チャンバなどの物理的手段、あるいは燃焼副産物144を(例えば、磁気によって、イオン結合によって、又は燃焼副産物144の他の特性によって)分離させる他の手段を含んでもよい。
【0038】
ナノテルミット燃料である燃料104の一例は、アルミニウム-酸化鉄(II)であり得る。アルミニウム-酸化鉄(II)は、燃焼すると、酸化アルミニウム、元素鉄及び大量の熱となる。熱は、作動流体124を加熱するために使用される。燃焼副産物144は、酸化アルミニウム及び鉄である。酸化アルミニウムは、それ自体が他の生成物に使用されてもよく、又は他の生成物に使用される他の材料へと化学的に変換されてもよい。
【0039】
図5は、例示的な火力発電プラント100Aを使用して電力を生成する方法200Aを示す。ブロック205A、210A、215A、220A、225A及び230Aはそれぞれ、方法200のブロック205、210、215、220、225及び230と同様である。ブロック235Aで、燃焼副産物144が回収路140によって回収され、再生器148に給送される。再生器148は、燃焼副産物144を取り込み、これを別の場所(例えば、他の産業又は他の物品)で使用可能な再生生成物へと化学的に改質する。
【0040】
図6は、火力発電プラント100Aを拡張した別の例示的な火力発電プラント100Bを示す。この例では、再生器148は、燃焼副産物144を、燃料104として使用される別の化合物へと化学的に改質することができる。あるいは、再生器148は、燃焼副産物144を、燃料104として使用される代替的なナノテルミットへと化学的に改質してもよい。再生器148が燃焼副産物144を化学的に改質し、燃焼副産物144の化合物を燃料104へと戻してもよいことも企図され得る。火力発電プラント100Bは更に、化学的に改質された燃焼副産物144を、燃料加熱チャンバ108内に再導入される燃料104として供給アセンブリ106に戻すように構成された戻り路152を有する。
【0041】
図7は、例示的な火力発電プラント100Bを用いて電力を生成する方法200Bを示す。ブロック205B、210B、215B、220B、225B、230B及び235Bはそれぞれ、方法200のブロック205A、210A、215A、220A、225A、230A及び235Aと同様である。ブロック240Bで、再生器148は燃料加熱チャンバ108からの燃焼副産物144を変換する。具体的には、再生器148は燃焼副産物144を取り込み、燃焼副産物144を燃料104へと化学的に改質し、燃料104は次いで、燃料加熱チャンバ108内へと再導入されてもよい。この具体的な例では、燃料加熱チャンバ108に最初に導入される燃料104は、再導入される再生生成物燃料104と化学的に同一であってもよいが、異なっていてもよい。これら2つの化合物が異なる場合には、混合燃料104が生成されてもよい。
【0042】
例えば、燃焼副産物144が酸化アルミニウム及び鉄である上述の例に戻ると、酸化アルミニウム及び鉄をアルミニウム-酸化鉄(II)へと戻すための化学反応が行われてもよい。アルミニウム-酸化鉄(II)は次いで、燃料104として使用するために戻されてもよい。
【0043】
図8は、別の構成を含む別の例示的な火力発電プラント100Cを示す。火力発電プラント100Cは、一体化された加熱チャンバ160を含む。この例では、熱交換器198が一体化された加熱チャンバ160を含む。一体化された加熱チャンバ160は、作動流体124と燃料104との混合物を誘導加熱することを可能にする、燃料加熱チャンバ108と流体加熱チャンバ120とを一体化したものであってもよい。この例では、混合チャンバ156が燃料104と作動流体124とを混合してスラリーを生成する。一体化された加熱チャンバ160内でスラリーが誘導加熱され、次いで燃料104と作動流体124とが分離される。分離が、一体化された加熱チャンバ160内の温度変化に伴う状態変化によって起こってもよい。あるいは、篩などの機械的装置を使用して、燃料104から作動流体124を分離させてもよい。加えて、圧力を変更する分離チャンバを使用して分離が行われてもよい。他の形の分離も企図される。燃料104は混合チャンバ156に戻されて再度混合され、一方、作動流体124は、電力を生成するためにタービン132を通って給送される。
【0044】
図9は、この例示的な火力発電プラント100Cのための電力生成方法200Cを示す。ブロック205Cで、燃料104が混合チャンバ156に供給される。ブロック245Cで、燃料104は作動流体124と混合されてスラリーを生成する。
【0045】
スラリーの一例が、作動流体124としての水と、ナノテルミット燃料104としてのアルミニウム-酸化鉄(II)との混合物であってもよい。作動流体124と燃料104とが混合されたスラリーの他の形態も企図される。
【0046】
スラリーは次いで、一体化された加熱チャンバ160内へと注入される。ブロック250Cでスラリーが誘導によって加熱され、次いでブロック255Cで、スラリーは作動流体124と燃料104とに分離されて戻される。流路164が燃料104を回収し、燃料104を凝縮のために復水器168へと給送する。このことはブロック265Cに図示されている。凝縮後に、凝縮された燃料は混合チャンバ156に戻されて、作動流体124と再度混合され、一体化された加熱チャンバ160内にスラリーとして再導入される。
【0047】
引き続きこの例では、ブロック225Cで、作動流体124が流路128によって回収され、給送されてタービン132を推進する。ブロック260Cで、作動流体124が復水器138内で冷却及び凝縮される。作動流体124は、タービン132及び復水器138を通って循環した後に、混合チャンバ156に戻されて、燃料104と再度混合され、一体化された加熱チャンバ160内にスラリーとして再導入される。
【0048】
別の一例において、図10は、宇宙空間で使用可能な例示的な火力発電プラント100Dを図示している。火力発電プラント100Dでは、ヒートシンク172が復水器138と熱接触している。ヒートシンク172はまた、宇宙空間の真空にも曝露されている。これにより、復水器138内で凝縮される作動流体124がヒートシンク172と熱を交換することが可能である。
【0049】
別の一例において、図11は、流体加熱チャンバ120の代わりに排気加熱アセンブリ176を使用可能な例示的な火力発電プラント100Eを図示している。前述の実施形態では、熱交換器198は流体加熱チャンバ120から構成されている。この例示的な火力発電プラント100Eでは、熱交換器198は排気加熱アセンブリ176から構成されている。排気加熱アセンブリ176は、排気ノズルと、作動流体124を収容しているチャンバとを含む。この実施形態では、燃料104が燃料加熱チャンバ108内で加熱される際に、排気が加熱の副産物であり得る。排気(排煙としても知られている)は、燃料104が加熱されて燃焼する場合、焼結によって加熱される場合、又はこれら2つの組み合わせのいずれの場合にも発生し得る。生成された排気は熱く、排気熱を使用して、熱交換によって作動流体124を加熱することができる。この実施形態では、排気加熱アセンブリ176内の作動流体124を収容しているチャンバは、燃料104からの残留物が作動流体124に混入しないように、排気から隔離されていてもよい。熱交換は、作動流体124を収容しているチャンバの伝導性要素を介して行うことができる。
【0050】
排気加熱アセンブリ176を使用可能な別の一実施形態(図示せず)では、熱交換器198は、流路128から受け取った作動流体の排気加熱アセンブリ176への2つの曝露ステージを更に含み、2つのステージは蒸発器及び過熱器である。排気加熱アセンブリ176と同様に、作動流体124は不透過性の壁によって排気から隔離されており、また、排気と接する不透過性の管壁の表面積を増加させるために、排気加熱アセンブリ176内の様々な別個の管内に作動流体124が入っていてもよい。作動流体124を収容している管の排気への2つの曝露ステージは、排気加熱アセンブリ176の様々な領域内に配置することができ、過熱器は燃料加熱チャンバ108からの排気の受取点のより近くに配置してもよく、蒸発器は燃料加熱チャンバ108からの排気の受取点からより遠くに配置してもよく、燃料加熱チャンバ108からの排気の受取点はより熱く、温度は排気の受取点から遠ざかるにつれてより低くなる。蒸発器と過熱器とを有することで、作動流体124を2つのステージで加熱することが可能であり、その結果、作動流体124の温度を、ステージを1つしか有さない排気加熱アセンブリ176よりも迅速に上昇させることができる。
【0051】
別の一例において、図12は、2つの熱交換器198、すなわち熱交換器198-1及び熱交換器198-2を使用してもよい例示的な火力発電プラント100Fを図示している。熱交換器198-1では、排気加熱アセンブリ176は、二次流路186を通って循環される二次作動流体184の加熱に使用される。流路128と二次流路186とは互いから隔離されており、従って、作動流体124と二次作動流体184とで異なる流体を給送することができる。この例では、作動流体124が水である一方で、二次作動流体184はナトリウムであってもよい。他の作動流体124及び二次作動流体184も企図され得る。
【0052】
二次作動流体184は、燃料加熱チャンバ108からの排気が二次作動流体184を加熱する排気加熱アセンブリ176を通過することによって、加熱された状態を維持することができる。二次作動流体184は、排気加熱アセンブリ176から二次流路186を通って熱交換器198-2へと流れる。熱交換器198-2は、ボイラ180を含む。加熱された二次作動流体184は、ボイラ180を通って流れるのに伴い、作動流体124を加熱する。上述のように、作動流体124は二次作動流体184から隔離されている。ボイラ180内の不透過性の壁が、作動流体124と二次作動流体184とを隔離する。これは、作動流体124がタービン132に動力を供給するために循環するのに伴って混入してしまうことを防止するためである。この例では、作動流体124は、ボイラ180を通って流れる際に、流路128内の不透過性の壁を介して伝導加熱される。図12では直線状に図示されているが、他の実施形態では、二次流路186からの熱を伝導によって交換することのできる表面積を増加させるために、コイル形状の流路128が含まれてもよい。
【0053】
別の一例(図示せず)では、火力発電プラントは、電力と熱との同時的なコジェネレーションのための手段を有する。タービン132から排出された熱を、熱回収ユニットで回収してもよい。熱は次いで、多様な目的に利用されてもよい。回収された熱の用途の一例は、家屋への給湯である。コジェネレーションにより、廃熱エネルギーが何らかの生産的な用途に供される。同様に、電力と熱とのトリジェネレーション及びマルチジェネレーションも企図される。
【0054】
別の一例(図示せず)では、火力発電プラントは、電力、有用な熱、冷却、推進、エネルギー貯蔵体及び工業製品を同時に生成するマルチジェネレーションのために使用される。
【0055】
別の一例(図示せず)では、火力発電プラントは、固体媒体中に分散され、ロッド形状に形成されたナノテルミット燃料から構成されている。ナノテルミット燃料ロッドは、複数のコイルで囲まれている。コイルは、電源によって通電されると、ロッド形状のナノテルミット燃料の周囲に磁界を形成して、これらを加熱する。磁界を制御することで、ロッド形状のナノテルミット燃料を相変化させることなく高温に維持することができる。これにより、ロッドを囲む作動流体を加熱し、タービン及び発電機に動力を供給することができる。
【0056】
別の一例(図示せず)では、火力発電プラントは、交換可能なナノテルミット燃料ロッドから構成されている。上述の例と同様に、ナノテルミット燃料ロッドは複数のコイルで囲まれており、コイルは、電源によって通電されると、ロッド形状のナノテルミット燃料の周囲に磁界を形成して、これらを加熱する。この例では、ロッド形状のナノテルミット燃料は燃焼される。これらは、燃焼後に新たなナノテルミット燃料ロッドと交換可能である。ナノテルミット燃料ロッドの燃焼は、ロッドを囲む作動流体を加熱し、これが次いでタービン及び発電機に動力を供給することができる。
【0057】
別の一例(図示せず)では、火力発電プラントは、ナノテルミット燃料ロッドで被覆されたロッドから構成されている。ナノテルミット燃料ロッドで被覆されたロッドは、上述の例と同様の複数のコイルで囲まれている。上述の例と同様に、コイルは、電源によって通電されると、ナノテルミット燃料で被覆されたロッドの周囲に磁界を形成して、これらを加熱する。磁界を制御することで、ロッドを高温に維持することができ、またロッドを被覆しているナノテルミット燃料の燃焼が時間制御される。これにより、ロッドを囲む作動流体を加熱し、タービン及び発電機に動力を供給することができる。
【0058】
例示的な火力プラント100A及び100Bにおける再生器148を、火力発電プラント100C、100D、100E及び100Fの異なる実施形態で使用可能であることが企図され得る。上述のように、再生器148は、燃焼副産物144を有用な最終生成物に変換するために使用されてもよい。最終生成物の例は、工業製品及び消費財を含む。再生器148を使用する利点のうちの一つに、廃棄物が少なく、環境に害を及ぼすおそれのある燃焼副産物144をより清浄な代替物へと変換できることが挙げられる。再生器148が燃料加熱チャンバ108への供給燃料104に接続されている火力発電プラント100Cの更なる利点として、最終生成物が再利用されることから、廃棄物が著しく少ないことが挙げられる。
【0059】
他の実施形態では、火力発電プラントを、発電電力、有用な熱、冷却、推進、エネルギー貯蔵体及び工業製品の生成並びに/あるいはマルチジェネレーションのために、再生可能な発電システム又は再生不可能な発電システムと組み合わせてもよい。再生不可能な発電システムには、石油、ガス、石炭、天然ガス及び原子力などが非限定的に含まれる。再生可能な発電システムには、太陽熱、バイオマス、圧縮機、燃料電池、地熱などが非限定的に含まれる。
【0060】
他の実施形態では、マルチジェネレーションは、異なる物理的実体間のスピンを媒介した相互変換現象によって達成され、地球ベースのシステム及び宇宙空間ベースのシステムで電力、光、音、振動及び熱を生成する。これらの現象は、ゼーベック効果、ペルティエ効果、スピンゼーベック効果、スピンペルティエ効果、スピンホール効果及び逆スピンホール効果を非限定的に含む。スピン変換は、物理的実体間の界面近くの領域内で、角運動量を伝達するスピンを媒介として起こり、電力、光、音、振動及び熱の相互変換を可能にする。
【0061】
余剰エネルギーが、オンデマンドの付与及び分配のためにエネルギー貯蔵システムに貯蔵される。これらのシステムは、電気化学システム、電磁システム、熱力学システム及び機械システムを非限定的に含む。貯蔵されたエネルギーは、エネルギー需給のバランスを取るために、必要に応じて直接又は間接にエネルギー変換プロセスを介して利用される。分配ネットワークが、複数の伝送方法を組み合わせて複数のノードを接続し、持続可能な送達及び利用のための最適化を行ってもよい。
【0062】
ナノテルミット燃料を誘導によって加熱する火力発電プラントは、汚染が少ない。これに加えて、本発明で企図されるように、再生器148を使用して、全ての燃焼副産物144を、消費財から建築で使用される原材料までに至る様々な用途に使用可能な有用な最終生成物へと更に変換することで、汚染を更に抑えることができる。再生器148に燃焼副産物144を火力発電プラントに戻すことの可能な燃料へと変換させることで、汚染及び廃棄物を更に削減することができる。再生器148を、誘導によって加熱されるナノテルミット燃料を備える火力発電プラントの他の実施形態と組み合わせてもよい。火力発電プラントにおけるナノテルミット燃料の誘導による加熱の更なる利点には、火力発電プラントの宇宙空間及び極限環境での運用が含まれる。
【0063】
特許請求の範囲は、上述の例に記載の実施形態に限定されるものではなく、全体として明細書と合致する最も広い解釈がなされるべきである。
【0064】
上述の様々な例の特徴及び態様を組み合わせて、本開示の範囲に含まれる更なる例としてもよいことを理解されたい。また、図面は必ずしも実寸通りではなく、説明の目的のために大きさ及び形状が強調されている場合がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】