(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】オーバーモールド成形手法および当該手法によって形成された関連製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20221005BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20221005BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20221005BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q11/00
A61K8/22
A61K8/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507849
(86)(22)【出願日】2020-08-08
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2020045541
(87)【国際公開番号】W WO2021030231
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399128493
【氏名又は名称】ウルトラデント プロダクツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ソルバーグ、クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、リュジウン
(72)【発明者】
【氏名】ホブソン、バリー
(72)【発明者】
【氏名】パーク、カイル
(72)【発明者】
【氏名】マーゲッツ、デイビッド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ピースリー、リン ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB411
4C083AD091
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE31
(57)【要約】
組成物を基体上にオーバーモールド成形するための手法が開示される。詳細には、組成物を歯および/または口腔組織に送達するように構成された基体上に治療用組成物をオーバーモールド成形するための手法に関するが、これに限定されない。オーバーモールド成形手法は、治療用組成物を基体上に射出成形することを含み、治療用組成物は、1つまたは複数の口腔状態の治療に有効な1つまたは複数の治療薬を含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
基体に対して型を配置することと、
前記型と前記基体との間に親水性ポリマーを含む組成物を注入し、前記基体の表面上に、前記組成物を、前記型によって画定されている形態に対応するオーバーモールド形態にオーバーモールド成形することと、
前記組成物の前記オーバーモールド形態を実質的に保ちながら、前記型を前記基体から離すことと、からなる方法。
【請求項2】
前記基体が、内側側壁および外側側壁によって画定されている谷部を有する略弓状の歯用トレイを含み、前記組成物が、前記内側側壁および外側側壁の一方または両方の少なくとも一部分にオーバーモールド成形される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記歯用トレイを少なくとも1つの熱可塑性ポリマーで成形することをさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含んでいる、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの治療薬が過酸化水素である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、変形可能なゲルの状態であり、前記歯用トレイを口腔治療に使用するまでは、前記組成物の前記オーバーモールド形態を選択的に維持するために有効な特性を示す、
請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が過酸化水素を含み、組成物の前記注入が約25℃未満の温度で行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬および少なくとも1つの疎水性物質をさらに含んでいる、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
方法であって、
内側側壁および外側側壁によって画定されている谷部を有する歯用トレイに対してオーバーモールド成形の型を配置することと、
前記歯用トレイの内側側壁および外側側壁の一方または両方の少なくとも一部分に口腔治療用組成物をオーバーモールド成形することと、からなり、
前記口腔治療用組成物が、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含んでいる、方法。
【請求項10】
前記口腔治療用組成物がゲルの状態であり、少なくとも1つの親水性ポリマーをさらに含んでいる、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記歯用トレイが略弓状である、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
第2の型に対して第1の型を配置することであって、前記第1および第2の型によって前記歯用トレイに対応する形態を有するキャビティが画定されることと、
前記歯用トレイを形成するために、前記第1の型と第2の型との間に熱可塑性ポリマーを注入することと、
前記第1の型を第2の型から離し、前記歯用トレイを第1の型と接触した状態に保つことと、をさらに含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記オーバーモールド成形の型が、前記歯用トレイおよび第1の型に対して配置される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの治療薬が、歯用漂白剤、歯用ホワイトニング剤、脱感作剤、再石灰化剤、麻酔剤、抗歯垢形成剤、抗歯石形成剤、抗菌剤、抗生物質、消毒剤、防腐剤、抗酸化剤、治癒剤、光沢剤およびこれらの組み合わせから選択される、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記オーバーモールド成形が、約25℃未満の温度で行われる、
請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記オーバーモールド成形することが、前記オーバーモールド成形の型と歯用トレイとの間に前記口腔治療用組成物を注入することを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項17】
口腔治療システムであって、
内側側壁および外側側壁によって画定されている谷部を有する歯用トレイと、
前記歯用トレイの内側側壁および外側側壁の一方または両方の少なくとも一部分にオーバーモールド成形された口腔治療用組成物と、を備え、
前記口腔治療用組成物が、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含んでいる、口腔治療システム。
【請求項18】
前記治療薬が過酸化水素である、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記口腔治療用組成物が、ゲル、液体、懸濁液、ペースト、パテまたは泡を含んでいる、
請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記口腔治療用組成物が、少なくとも1つの親水性ポリマーをさらに含んでいる、
請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーモールド成形手法および当該手法によって形成された関連製品に関する。
【背景技術】
【0002】
オーバーモールド成形は、2つ以上の異なる材料を組み合わせて単一の部品を作成するプロセスである。一般的に、第1の材料(基体とも称される)は、製造プロセス中に後続の材料によって部分的または完全に覆われる。
【0003】
オーバーモールド成形において発生する一般的な問題としては、基体と後続材料(オーバーモールドとも称される)の不十分な接着、基体またはオーバーモールドの不完全な成形、表面凹凸、不均質および材料の劣化が挙げられる。また、温度差や、不適当な冷却時間、基体の厚さが十分でないこと等によって、オーバーモールド成形において部品に反りが生じる問題もある。オーバーモールド成形中に発生する他の問題としては、基体またはオーバーモールドの空隙または穴、層間剥離および製造プロセス中の不適切な通気も挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、上記の課題および問題の1つまたは複数を回避しながら基体上に材料をオーバーモールド成形することが必要とされている。また、他の課題または問題にも対応しており、様々な例示的な実施形態は、特定の課題または問題を対象とするものではない。
【0005】
本開示は、組成物を基体上にオーバーモールド成形するための手法に関し、より詳細には、組成物を歯および/または口腔組織に送達するように構成された基体上に治療用組成物をオーバーモールド成形するための手法に関するが、これに限定されない。オーバーモールド手法は、治療用組成物を基体上に射出成形することを含み、治療用組成物は、1つまたは複数の口腔状態の治療に有効な1つまたは複数の治療薬を含んでいる。例えば、1つの例示的な形態では、治療用組成物は、歯用ホワイトニングゲルおよび/または脱感作ゲルである。
【0006】
組成物を適用または放出するために所望の位置に送達させるためには、様々な基体材料を用いることができる。非限定な例においては、治療トレイおよびストリップ等の歯および口腔の治療器具を使用して、歯のホワイトニング組成物、脱感作組成物および歯周薬等の歯および口腔の治療用組成物が使用者の歯および/または歯茎に送達される。歯用トレイは、一般に、使用者の歯の一部または全体に嵌め合わせるように設計されており、口腔治療用組成物が充填される。歯または口腔用治療ストリップは、片面に配置されるか、バリア層内に配置された治療用組成物を概して有している。口腔治療用組成物は、使用者による配置または製造時の配置を容易にするために、口腔治療用組成物が流動できる低粘度を有するように調製されている。さらに、口腔治療用組成物は、歯の治療器具および/または使用者の歯に対して接着させる増粘剤および/または粘着剤を配合することによって、配置を容易にするとともに器具の滑りを抑制できる。さらに、品質保持期間を長くするために、長期にわたって安定した粘性、粘着性および/または流動性を維持するように口腔治療用組成物が調製される。
【0007】
粘度および接着性等の口腔治療用組成物の特性によって、組成物を含む送達トレイおよびストリップの製造に使用できるプロセスの種類が限定される場合がある。さらに、既存のプロセスでは、組成物の沈殿を制御することが困難である場合があり、このため、製造効率および均一性が制限される。加えて、歯に使用される組成物は、時間の経過によって、変形したり、歯用トレイまたは治療ストリップから流出する場合があり、その結果、製品の品質保持期間が短くなる可能性がある。同様に、使用者が歯用トレイまたは治療ストリップを取り扱っている際に、効果的な口腔治療を行えるように適切に歯用トレイまたは治療ストリップが配置される前に、組成物が誤って放出される場合がある。
【0008】
このように、当該技術分野においてさらなる改良が必要とされている。請求の範囲に記載される主題は、課題に対応する実施形態や、上記のような環境でのみで機能する実施形態に限定されない。本情報は、本開示の適用の例示のみを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的実施形態においては、方法は、基体に対して型を配置することと、型と基体との間に親水性ポリマーを含む組成物を注入し、基体の表面上に、組成物を、型によって画定されている形態に対応するオーバーモールド形態にオーバーモールド成形することと、からなる。この方法は、組成物のオーバーモールド形態を実質的に保ちながら、型を基体から離すことをさらに含んでいる。
【0010】
別の例示的実施形態では、方法は、内側側壁および外側側壁によって画定されている谷部を有する歯用トレイに対してオーバーモールド成形の型を配置することと、歯用トレイの内側側壁および外側側壁の一方または両方の少なくとも一部分に口腔治療用組成物をオーバーモールド成形することと、からなる。口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含んでいる。
【0011】
さらに別の例示的な実施形態では、口腔治療システムは、内側側壁および外側側壁によって画定されている谷部を有する歯用トレイと、歯用トレイの内側側壁および外側側壁の一方または両方の少なくとも一部分にオーバーモールド成形された口腔治療用組成物と、を備えている。口腔治療用組成物は、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含んでいる。
【0012】
一態様では、方法は、型と基体との間に親水性ポリマーを含む組成物を注入し、基体の表面上に、組成物を、型によって画定されている形態に対応するオーバーモールド形態にオーバーモールド成形することと、組成物のオーバーモールド形態を実質的に保ちながら、型を基体から離すことと、からなる。基体は、内側側壁および外側側壁によって画定されている谷部を有する略弓状の歯用トレイを含み、組成物は、内側側壁および外側側壁の一方または両方の少なくとも一部分にオーバーモールド成形されてもよい。この方法は、歯用トレイを少なくとも1つの熱可塑性ポリマーで成形することをさらに含んでいてもよい。口腔治療用組成物は、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含んでいてもよい。少なくとも1つの治療薬は過酸化水素であってもよい。組成物は、変形可能なゲルの状態であり、歯用トレイを口腔治療に使用するまでは、組成物のオーバーモールド形態を選択的に維持するために有効な特性を示してもよい。組成物は過酸化水素を含んでもよく、組成物の注入が約25℃未満の温度で行われてもよい。組成物は、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬および少なくとも1つの疎水性物質を含んでいてもよい。
【0013】
他の態様において、方法は、内側側壁および外側側壁によって画定されている谷部を有する歯用トレイに対してオーバーモールド成形の型を配置することと、歯用トレイの内側側壁および外側側壁の一方または両方の少なくとも一部分に口腔治療用組成物をオーバーモールド成形することと、からなる。口腔治療用組成物は、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含んでいてもよい。口腔治療用組成物はゲルの状態であり、少なくとも1つの親水性ポリマーを含んでいてもよい。歯用トレイは、略弓状であってもよい。この方法は、第2の型に対して第1の型を配置することであって、第1および第2の型によって歯用トレイに対応する形態を有するキャビティが画定されることと、歯用トレイを形成するために、第1の型と第2の型との間に熱可塑性ポリマーを注入することと、第1の型を第2の型から離し、歯用トレイを第1の型と接触した状態に保つことと、をさらに含んでいてもよい。オーバーモールド成形の型は、歯用トレイおよび第1の型に対して配置されてもよい。少なくとも1つの治療薬は、歯用漂白剤、歯用ホワイトニング剤、脱感作剤、再石灰化剤、麻酔剤、抗歯垢形成剤、抗歯石形成剤、抗菌剤、抗生物質、消毒剤、防腐剤、抗酸化剤、治癒剤、光沢剤およびこれらの組み合わせから選択してもよい。オーバーモールド成形は、約25℃未満の温度で行われてもよい。オーバーモールド成形することが、オーバーモールド型と歯用トレイとの間に口腔治療用組成物を注入することを含んでもよい。
【0014】
さらに別の態様では、口腔治療システムは、内側側壁および外側側壁によって画定されている谷部を有する歯用トレイと、歯用トレイの内側側壁および外側側壁の一方または両方の少なくとも一部分にオーバーモールド成形された口腔治療用組成物と、を備えている。口腔治療用組成物は、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含んでいる。治療薬は過酸化水素であってもよい。口腔治療用組成物は、ゲル、液体、懸濁液、ペースト、パテまたは泡を含んでいてもよい。口腔治療用組成物は、少なくとも1つの親水性ポリマーを有していてもよい。口腔治療用組成物は、歯用トレイを口腔に使用するまで変形の抑制に有効な特性を有するゲルを含んでいてもよい。
【0015】
さらに別の態様は、使用者の歯および/または口腔の治療に使用される口腔治療システムに関する。口腔治療システムは、使用者の口の中に少なくとも部分的に配置できるようにサイズ設定および構成された基体と、基体の表面上にオーバーモールド成形された治療用組成物とを有している。治療用組成物は、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を有していてもよい。例示的な一実施形態では、基体は口腔治療ストリップであり、治療用組成物は、口腔治療ストリップの内面の少なくとも一部分にオーバーモールド成形される。別の例示的な実施形態では、基体は、略弓状の歯用トレイであり、治療用組成物は、略弓状の歯用トレイの内面の少なくとも一部分にオーバーモールド成形される。
【0016】
さらに別の態様は、凹部を有する型を提供することと、使用者の口の中に少なくとも部分的に配置できるようにサイズ設定および構成された基体を型に配置することと、型と基体との間に治療用組成物を注入することと、口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含む治療用組成物を基体の表面にオーバーモールド成形することと、基体上に実質的に治療用組成物を保持させた状態で型から基体を外すことと、からなる方法に関する。基体は口腔治療ストリップであってもよく、治療用組成物は、口腔治療ストリップの内面の少なくとも一部分にオーバーモールド成形されてもよい。基体は、略弓状の歯用トレイであってもよく、治療用組成物は、略弓状の歯用トレイの内面の少なくとも一部分にオーバーモールド成形されてもよい。
【0017】
本発明の上記および他の態様、特徴ならびに効果は、以下の図面の簡単な説明、図面、好ましい実施形態の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】オーバーモールド成形された治療用組成物を有する例示的な口腔治療ストリップの斜視図。
【
図3】
図1に示す口腔治療ストリップの
図2Aの3-3線に沿った断面図。
【
図4】口腔治療ストリップの別の例示的な実施形態を示す斜視図。
【
図5】オーバーモールド成形された治療用組成物を有する例示的な口腔治療トレイの斜視図。
【
図6】
図5に示す口腔治療トレイ等の上に治療用組成物をオーバーモールド成形するために使用される例示的な型を示す斜視図。
【
図7】
図5に示す口腔治療トレイと位置合わせされた状態の、
図6の型の一部を示す斜視図。
【
図8】
図6に示す型の一部の別の斜視図であって、型によってオーバーモールド成形された治療用組成物の形態を示すために口腔治療トレイが取り除かれた状態の型を示す図。
【
図9】
図5に示す口腔治療トレイ等の口腔治療トレイの形成に使用される例示的な型の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面には、本発明の上記および他の態様、効果ならびに特徴をさらに例示および明確化するための例示的実施形態の図が含まれる。これらの図面は、本発明の例示的な実施形態を示すものであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。さらに、図面には、本発明の好適な寸法、縮尺、関係および構成を示すが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲は、図面によって限定されない。本発明について、以下の添付の図面を参照して、詳細を具体的に記載する。
【0020】
本開示の理解を助けるために、以下の例示的な実施形態を参照し、特定の文言を用いてこれらの実施形態について説明する。しかしながら、以下の実施形態は本開示の範囲を限定するものでははく、記載される主題についての変更および修正、ならびに、本明細書に開示される主題の適用は、当業者であれば容易に想到できる。
【0021】
以下の説明および特許請求の範囲で使用される用語および単語は、書誌的意味に限定されず、本開示の明確かつ均一な理解を可能にするために用いられる。単数形の「1つの」および「その」は、内容が明らかに異なることを示していない限り、複数の対象物を含む。したがって、例えば「部品表面」という記載は、当該表面が1つである場合と、複数である場合の両方を含む。
【0022】
「実質的に」という用語は、言及された特性、パラメータまたは値が正確に達成される必要はなく、その特性によって達成するよう意図された効果を阻害しない限り、公差、測定誤差、測定精度の限界および当業者に周知の他の要因を含む逸脱または変動が可能であることを意味している。
【0023】
本明細書における「治療薬」という用語は、歯または口腔組織への直接的な適用、または、口腔組織を介した吸収による他の部位への送達によって、口腔内で何らかの美容的、治療的、予防的または衛生的な効果をもたらす任意の薬剤、化合物、物質組成またはこれらの混合物を意味し、かつ包含する。
【0024】
本明細書における「治療」という用語は、美容的、治療的、予防的または衛生的な効果をもたらすため、かつ/または、歯のホワイトニング、脱感作および/または再石灰化等の1つまたは複数の口腔状態の治療または改善を行うために、治療薬または治療薬を含む物質を歯または口腔組織に施す工程を意味し、かつ包含する。
【0025】
本開示は、組成物を基体上にオーバーモールド成形する手法に関し、より詳細には、組成物を人または動物の歯および/または口腔組織に送達するように構成された基体上に治療用組成物をオーバーモールド成形する手法に関するが、これに限定されない。例示的な一実施例において、治療用組成物は、1つまたは複数の口腔状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を含むポリマー組成物であり、射出成形によって基体上にオーバーモールド成形される口腔治療用組成物である。しかしながら、本明細書に開示される主題は、口腔および/またはデンタルケアの用途に限定されない。本明細書に開示されるオーバーモールド手法は、他の用途にも好適に適用可能である。
【0026】
図1~3に示すように、口腔治療ストリップ10は、治療用組成物14がオーバーモールド成形された基体12を有している。基体12は可撓性を有し、支持部として機能する。治療用組成物14は、例えば、ゲル、懸濁液、液体、ペースト、パテ、泡等の状態である。図示された口腔治療ストリップ10の基体12は概して長方形状であるが、他の形状およびその変形であってもよい。さらに、図示の形態では、治療用組成物14は、基体12に実質的に対応する形状にオーバーモールドされている。しかしながら、他の形態においては、治療用組成物14は下にある基体12とは概して異なる形状にオーバーモールド成形される。詳細は後述する。また、基体12および治療用組成物14の材料に関する詳細も後述する。
【0027】
一般的に、治療用組成物14は、基体12に対して第1の型を配置することによって基体12上にオーバーモールド成形される。型と基体12との間の位置決めは、任意の適切な手段によって維持することができ、例えば、基体12の形成に使用された第2の型(別の第3の型と組み合わせて使用される)を用いることができる。第1の型は、基体12上にオーバーモールド成形される治療用組成物14の所望の最終形状および形態に対応する輪郭を有している。このように、第1の型が適切に配置されると、第1の型の輪郭によってキャビティが画定され、治療用組成物14が第1の型と基体12との間に注入されてキャビティを満たす。キャビティが充填された後に、第1の型が基体12から分離され、治療用組成物14はキャビティに対応する形態で基体12上に残る。
【0028】
基体12上にオーバーモールド成形された治療用組成物14の形状および形態は、第1の型によって少なくとも部分的に画定された輪郭に対応している。このため、基体12上にオーバーモールド成形された治療用組成物14の構造的特徴は、あらかじめ定められており、かつ/または、第1の型によって少なくとも部分的に画定される輪郭を変更して治療用組成物14が注入されるキャビティを改変することによって変更してもよい。例えば、
図2Bおよび3に示すように、基体12上にオーバーモールド成形された治療用組成物14は、幅W、長さLおよび厚みTを有し、基体12の全体または一部においてこれらのいずれか1つまたは複数を変更することによって、治療用組成物14の形態を変更できる。非限定的な例においては、幅Wおよび厚みTの一方または両方は、長さLに沿って変化しており、かつ/または、厚みTが、幅Wの方向および長さLの方向において変化している。厚みTは、長さLの方向に互いに離れた位置において変化していてもよい。図示する例では、治療用組成物14は、基体12上に連続的な形態を形成している。しかしながら、第1の型の輪郭を変更して、所望の数の個別の部分として治療用組成物14を基体12上に形成してもよく、個別の各部分の幅、長さおよび/または厚みは、他の部分と同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、治療用組成物14が基体12上に配置された2つ以上の個別の部分からなる形態では、治療用組成物14は、すべての個別の部分において同じであってもよいし、各部分またはいくつかの部分において異なっていてもよい。例えば、治療用組成物14に含まれる治療薬は、すべての個別の部分において同じであってもよいし、各部分またはいくつかの部分において異なっていてもよい。
【0029】
治療用組成物14は、歯に対する治療用組成物14の位置合わせを容易にするために、1つまたは複数の指標を有するようにオーバーモールド成形してもよい。非限定的な例においては、このような位置合わせ用の指標は、三次元の線、マーク、文字または他の記号であってもよく、治療用組成物14を配置する1つまたは複数の歯の形状に対応または類似する1つまたは複数の形状であってもよい。
【0030】
口腔治療ストリップ10の場合、基体12上にオーバーモールド成形される治療用組成物14は、特定部位の治療を促進させるために変更可能であり、かつ/または、1つまたは複数の特定部位の治療の種類に合わせて変更可能である。例えば、治療用組成物14を2つ以上の個別の部分として形成し、これらの部分を適宜離して配置することによって、互いに隣接していない歯および/または口腔組織の治療に利用できる。追加的または代替的に、治療用組成物14が基体12上に配置された2つ以上の個別の部分からなる場合、1つまたは複数の個別の部分の治療薬は異なっていてもよいし、類似していてもよい。これによって、隣接または離間している歯および/または口腔組織の異なる症状に対して治療を行うことができる。
【0031】
図4に、口腔治療ストリップ20の別の例示的実施形態を示す。口腔治療ストリップ20は、基体22およびキャビティ24を有し、キャビティ24は、表面26に対して窪んでおり、側壁28によって包囲されている。基体22は、口腔治療ストリップ20を支持し、可撓性を有している。一般的に、キャビティ24は、治療用組成物(図示せず)がオーバーモールド成形される凹部を形成している。治療用組成物は、例えば、ゲル、懸濁液、液体、ペースト、パテ、泡等の状態であり、治療用組成物は、本明細書に記載の治療用組成物14,114と同じまたは同様である。口腔治療ストリップ20の基体22は、概して長方形であり、図示の形態は1つまたは複数の切り欠き部30,32を有しているが、他の形状およびその変形であってもよい。
【0032】
治療用組成物は、基体22上にオーバーモールド成形された治療用組成物が、キャビティ24の形状および形態に少なくとも部分的に、実質的に、または少なくとも実質的に対応する形状および形態を有するように、キャビティ24内にオーバーモールド成形される。本開示の記載から、別の変形例も想到可能である。例えば、治療用組成物は、キャビティ24の外に延在していてもよく、キャビティ24の全体または一部の周囲の表面26を部分的または完全に覆っていてもよい。治療用組成物は、基体22に対して第1の型を配置することによって、基体22上にオーバーモールドできる。型と基体22との間の位置決めは、任意の適切な手段によって維持される。基体22上にオーバーモールド成形された治療用組成物の所望の最終形状および形態がキャビティ24に対応し、治療用組成物が表面26と同一平面をなす形態では、第1の型は概して平坦な形態を有し、治療用組成物の最終的な形状および形態は、キャビティ24によって画定される。なお、他の形態、例えば治療用組成物が表面26の上方に位置し、かつ/または、表面26を部分的に覆っている形態においては、基体22上にオーバーモールド成形された治療用組成物の最終形状および形態に対応する輪郭を、第1の型が有している。第1の型を適切に配置してから、治療用組成物が第1の型と基体22との間に注入されることによって、キャビティ24が満たされ、または、キャビティ24と、第1の型によって画定される別のキャビティとが満たされる。充填後には、第1の型が基体22から分離されて、基体22上に治療用組成物が残る。
【0033】
基体22上にオーバーモールド成形された治療用組成物の構造的特徴は、あらかじめ定められていてもよく、キャビティ24および/または第1の型が画定する他のキャビティによって画定される輪郭を改変することによって変更してもよい。同様に、治療用組成物は、基体22上に形成された2つ以上の個別の部分から構成してもよい。このような形態では、治療用組成物は、すべての個別の部分において同じであってもよいし、各部分またはいくつかの部分において異なっていてもよい。例えば、治療用組成物に含まれる治療薬は、すべての個別の部分において同じであってもよいし、各部分またはいくつかの部分において異なっていてもよい。
【0034】
口腔治療ストリップ20の場合、基体22上にオーバーモールド成形される治療用組成物は、特定部位の治療を促進させるために変更可能であり、かつ/または、1つの部位の治療の種類に合わせて変更可能である。例えば、治療用組成物を2つ以上の個別の部分として形成し、これらの部分を適宜離して配置することによって、互いに隣接していない歯および/または口腔組織の治療に利用できる。追加的または代替的に、治療用組成物が基体22上に配置された2つ以上の個別の部分からなる場合、1つまたは複数の個別の部分の治療薬は異なっていてもよいし、類似していてもよい。これによって、隣接または離間している歯および/または口腔組織の異なる症状に対して治療を行うことができる。上記では、口腔治療ストリップ20に関連してキャビティ24を図示および説明したが、上記口腔治療ストリップ10および以下に記載する口腔治療トレイ110を含む他の実施形態でも、治療用組成物が配置または充填される1つまたは複数のキャビティを設けることができる。
【0035】
次に、
図5を参照して、口腔治療トレイ110と、トレイ110の基体112上にオーバーモールド成形された治療用組成物114と備えた例示的な口腔治療システム100について説明する。基体112は可撓性を有し、支持部として機能する。治療用組成物114は、例えば、ゲル、懸濁液、液体、ペースト、パテ、泡等の状態である。トレイ110は、例えば、意図された用途に応じて、所望のサイズ、形状、形態、パターンおよび/または配置を有することができる。いくつかの実施形態では、トレイ110は、上側または下側の歯列弓の少なくとも一部と実質的に類似または同様の長尺状の湾曲した形状を有している。例えば、トレイ110は、正方形、楕円形、弓状または先細りした弓状であってもよい。図示の形態では、トレイ110は、概して弓状であり、外壁116、内壁118および面120を有している。面120は、外壁116の少なくとも一部と内壁118との間に少なくとも部分的に挟まれている。谷部122は、外壁116、内壁118および面120の間に少なくとも部分的に画定されている。この配置において、トレイ110は、外壁116が歯の唇側/頬側の面の上に配置され、内壁118が歯の舌側の面の上に配置され、面120が歯の上面または下面の上に配置される状態で、歯列弓の上に配置されるように構成されている。トレイ110は、外壁116、内壁118および面120を有すると説明されているが、トレイ110は、単一の一体構造であり、外壁116、内壁118および/または面120は、単一の一体構造の歯用トレイ等である一体型歯用トレイの1つまたは複数の部分である。
【0036】
いくつかの形態では、トレイ110の前端124、ならびにトレイ110の前端124と後端126a,126bとの間の移行部における面120の幅は、後端126a,126bに近い領域における面120の幅よりも小さい。幅の変化は、徐々に減少していてもよいし、
図5に示すように急激な減少であってもよい。いくつかの実施形態では、内壁118は、前端124と後端126a,126bとの間の移行部またはその前において、幅が小さくなっていてもよいし、終端していてもよい。前述していないが、トレイ110の外壁116、内壁118および/または面120は、個人に特有の歯列の大きさおよび形状に対応した構造を実質的に有していなくてもよく、人の歯列の大きさおよび形状に似せて形成してもよく、かつ/または、特定の個人に特有の歯列に合わせて成形してもよい。
【0037】
図示の形態では、治療用組成物114は、基体112に実質的に対応する形状にオーバーモールドされている。他の形態においては、治療用組成物114は、下にある基体112とは異なる形状にオーバーモールド成形される。詳細は後述する。例えば、いくつかの実施形態では、治療用組成物114は、トレイ110の内面全体にわたって(すなわち、外壁116、内壁118および面120の表面全体にわたって)成形されている。他の実施形態では、治療用組成物114は、
図5に示されるように、トレイ110の内面の一部のみに成形される。基体112および治療用組成物114の材料に関しては詳細を後述する。
【0038】
一般的に、治療用組成物114は、トレイ110の基体112に対して第1の型を配置することによって、基体112上にオーバーモールド成形される。型とトレイ110の基体112との間の位置決めは、任意の適切な手段によって維持することができ、例えば、基体112をトレイ110の形状に成形するために使用された第2の型(必要に応じて別の第3の型と組み合わせて使用される)を用いることがきる。第1の型は、基体112上にオーバーモールド成形された治療用組成物114の所望の最終形状および形態に対応する輪郭を有している。このように、第1の型が適切に配置されると、第1の型の輪郭によって第1の型と基体112との間にキャビティが画定され、治療用組成物114が第1の型と基体112との間に注入されてキャビティを満たす。第1の型へのトレイ110の配置を容易にするために、第1の型のキャビティに、トレイ110の形状および形態に対応する空間をさらに設けてもよい。キャビティが充填された後に、第1の型が基体112から分離され、治療用組成物114はキャビティの形態に応じた形態で基体112上に残る。
【0039】
基体112上にオーバーモールド成形された治療用組成物114の形状および形態は、第1の型によって画定された輪郭に対応している。このため、基体112上にオーバーモールド成形された治療用組成物114の構造的特徴は、あらかじめ定められた形状であり、かつ/または、第1の型によって画定される輪郭を変更して治療用組成物114が注入されるキャビティを改変することによって変更してもよい。例えば、治療用組成物14に関連して前述したように、基体112上にオーバーモールド成形された治療用組成物114の厚み、高さ、幅、長さ等のうちの1つまたは複数を基体112の全体または一部に沿って変化させることによって、治療用組成物114の形態を変更してもよい。さらに、治療用組成物114は、図示するように基体112上に連続的に構成されていてもよいが、第1の型の輪郭を変更して、治療用組成物114を基体112上の個別の部分として構成してもよく、各個別部分の厚み、高さ、幅、長さ等は他の部分と同じであっても異なっていてもよい。さらに、治療用組成物114が基体112上に配置された2つ以上の個別の部分からなる形態では、治療用組成物114は、すべての個別の部分において同じであってもよいし、各部分またはいくつかの部分において異なっていてもよい。例えば、治療用組成物に含まれる治療薬は、各部分またはいくつかの部分において異なっていてもよい。
【0040】
トレイ110の場合、基体112上にオーバーモールド成形される治療用組成物114は、特定部位の治療を促進させるために変更可能であり、かつ/または、1つまたは複数の特定部位の治療の種類に合わせて変更可能である。例えば、治療用組成物114を2つ以上の個別の部分として形成し、これらの部分を適宜離して配置することによって、互いに隣接していない歯および/または口腔組織の治療に利用できる。追加的または代替的に、治療用組成物114が基体112上に配置された2つ以上の個別の部分からなる場合、1つまたは複数の個別の部分の治療薬は異なっていてもよいし、類似していてもよい。これによって、隣接または離間している歯および/または口腔組織の異なる症状に対して治療を行うことができる。
【0041】
非限定的な例においては、ストリップ10およびトレイ110がそれぞれ少なくとも部分的に形成される基体12,112は、水および唾液等の液体に対して少なくとも実質的に不透過性または半透過性を有している。このため、ストリップ10およびトレイ110は、歯、歯茎および/または他の口腔組織の周りで耐湿性バリアを形成できる。基体12,112は、可撓性および/または追随性を有しており、塑性変形および/または弾性変形できるため、ストリップ10および/またはトレイ110を少なくとも実質的に歯列弓に沿って配置できる。1つの例示的な形態では、ストリップ10およびトレイ110は、例えば、射出成形プロセス、圧縮成形プロセス、ブロー成形プロセスまたは熱成形プロセス等の成形プロセスによって形成できる。さらに、ストリップ10および/またはトレイ110の基体12,112は、1つまたは複数のポリマー(熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマーポリマー等)、シリコーン、ワックス、樹脂またはこれらの組み合わせから形成される。詳細を以下に記載する。
【0042】
基体12,112に使用できるポリマーの例としては合成および天然ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、このようなポリマーは、弾性変形可能な架橋ポリマーである。非限定的な例においては、基体12,112に使用される1つまたは複数のポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、コポリマー、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、天然ポリマーおよびこれらの混合物から選択される。ポリオレフィンの例としては、ポリエチレン(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)または超低密度ポリエチレン(ULDPE)を含む)、ポリプロピレン(PP)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(テフロン(登録商標))、熱可塑性ポリエチレン(熱可塑性ポリエチレン、熱可塑性ポリプロピレン、熱可塑性オレフィン等)およびプロピレン系のエラストマーが挙げられる。他の合成ポリマーには、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル(例えば、エチルビニルアセテート(EVA)およびポリビニルアセテート(PVA))、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートまたはPETE等)、ポリカーボネート、メタクリレート、アクリレート、ポリアミド(ナイロン等)、ポリウレタン、ポリビニルクロリド(PVC)、合成ゴム、フェノールホルムアルデヒド樹脂(ベークライト(登録商標))、ネオプレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーンエラストマー、熱可塑性エラストマーおよび天然高分子がある。
【0043】
本明細書において、「熱可塑性エラストマー」または「TPE」は、熱可塑性およびエラストマーの両方の特性を有するポリマーまたはポリマーの組み合わせを意味し、かつ包含する。このような熱可塑性エラストマーは、加熱すると軟化して流動性を持ち、冷却すると硬化して弾性変形が可能となる。基体12,112の形成に使用可能な熱可塑性エラストマー(TPE)の例としては、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリイソプレン系、ポリブタジエン系、ポリブテン系、シロキサン系、ポリカーボネート系、エチレン酢酸ビニル系、エチレンメタクリレート系、ポリアクリリアニトリル系、ポリアクリルエステル系および/またはアクリル系のコポリマーまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
基体12,112の形成に使用可能な天然ポリマーの例としては、シェラック、天然ゴム、多糖類、セルロースエーテル、酢酸セルロースおよびタンパク質等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
いくつかの実施形態では、ストリップ10および/またはトレイ110の形成に使用できる基体12,112は、柔軟性を有し、少なくとも1つのワックスと、熱可塑性エラストマー等の少なくとも1つのポリマーとを有している。ワックスと熱可塑性エラストマーとを組み合わせて成形することによって、ストリップ10および/またはトレイ110の柔軟な基体を形成できる。いくつかの実施形態では、柔軟な基体は、射出成形プロセスによって、1つまたは複数のワックスおよび1つまたは複数の熱可塑性エラストマーの混合物を、ストリップ10またはトレイ110に対応した形態の型のキャビティに注入して形成される。他の実施形態では、ストリップ10および/またはトレイ110は、圧縮成形、回転成形、ブロー成形、熱成形、押出成形等の様々な適切な材料およびプロセスから形成される。
【0046】
柔軟な基体が使用されるいくつかの実施形態では、柔軟な基体は熱的に安定しており、弾性変形および/または塑性変形が可能である。例えば、柔軟な基体は、柔軟な基体に加えられる変形量および変形時の温度に応じて、塑性変形および弾性変形の両方を行うことができる。例えば、柔軟な基体は、応力が所定程度に達するまでは塑性変形し、それ以降は弾性変形する。少なくとも1つのワックスおよび熱可塑性エラストマー等の少なくとも1つのポリマーを含む形態では、室温(すなわち、約20~約25℃)で塑性変形可能であり、温度が40℃に達するまでは熱的に安定している。この実施形態および他の実施形態では、ストリップ10および/またはトレイ110が人の歯の上に配置されると、柔軟な基体が歯上で変形する。
【0047】
柔軟な基体が少なくとも1つのワックスおよび熱可塑性エラストマー等の少なくとも1つのポリマーを含む形態の場合、柔軟な基体の1つまたは複数のワックスの重量は、基体を形成する組成物の総重量に対して、約40%から約95%の範囲、約50%から約93%の範囲、約60%から約90%の範囲または約70%から約85%の範囲等である。使用できるワックスの例としては、石油ワックス、蒸留ワックス、合成ワックス、鉱物ワックス、植物ワックスおよび動物ワックスが挙げられるが、これらに限定されない。石油ワックスの例としては、パラフィンワックス、中間ワックス、微結晶ワックス、蒸留ワックスおよびワセリンが挙げられる。非限定的な例においては、パラフィンワックス、中間ワックスおよび/または微結晶ワックスを混合することによって、室温では所望の程度の塑性変形を可能とし、高温では寸法安定性を有するように構成される。少なくとも1つのワックスを含み、柔軟な基体の形成に使用可能な組成物に関する詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第15/027636号明細書に記載されている。
【0048】
本明細書に記載の柔軟な基体の1つまたは複数のポリマーの重量は、基体を形成する組成物の総重量に対して、約5%から約60%の範囲、約7%から約50%の範囲、約10%から約40%の範囲または約15%から約30%の範囲である。柔軟な基体は、可塑剤、流動調整剤および/または充填剤等の1つまたは複数の補助成分をさらに含んでいてもよい。例えば、これらの成分の重量は、基体を形成する組成物の総重量に対して、約0.01%から約5%の範囲、約0.1%から約4%の範囲または約1%から約3%の範囲である。
【0049】
治療用組成物14,114は、口腔状態等の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を有していてもよい。治療用組成物14,114は、少なくとも1つのポリマー材料および/または少なくとも1つの溶媒または担体も有していてもよい。さらに、治療用組成物14,114は、少なくとも1つの疎水性物質および/または少なくとも1つのレオロジー調整剤を有していてもよい。ポリマー、治療薬、疎水性物質および/またはレオロジー調整剤は、例えば、溶媒または担体に混合、分散、分散または溶解することができる。
【0050】
1つの例示的な形態において、治療用組成物14,114は、極性を有し、かつ/または、水やアルコール等の極性溶媒に対して溶解性を有するポリマー材料を有している(すなわち、ポリマー材料は、1つまたは複数の親水性ポリマーを含んでいる)。このような親水性ポリマーは、任意の非架橋または架橋モノマー、オリゴマーまたはポリマー等であり、いくつかの実施形態では、治療用組成物14,114において組織癒着剤、粘着剤および/または増粘剤として機能する。非限定的な例において、治療用組成物14,114は、ピロリドン系ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP))、PVPコポリマー(例えば、PVP/酢酸ビニル共重合体)、アクリル酸系ポリマー(例えば、カルボキシポリメチレンまたはルーブリゾール・アドバンストマテリアルズ社(Lubrizol Advanced Materials,Inc.)から市販されているCarbopol(登録商標)およびPemulen(登録商標)等のカルボマー)、オキサゾリン系ポリマー(例えば、ポリエチルオキサゾリンおよび他のポリ(2-オキサゾリン))、ポリエチレングリコールとしても知られているポリエチレンオキシド(例えば、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)から市販されているPolyox(登録商法)、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸とポリアクリルアミドとのコポリマー、セルロース系ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、セルロース系エチル)、多糖類ガム、タンパク質およびこれらの誘導体等のうちの1つまたは複数を含んでいる。使用可能なピロリドン系ポリマーの別の非限定的な例としては、重量平均分子量(Mw)が約44,000~約54,000であるKollidon(登録商標)30、Mwが約45,000~70,000であるKollidonVA64およびMwが約100万~約150万であるKollidon90F等の1つまたは複数等級のKollidonPVPポリマー(BASF社から市販されている)である。
【0051】
治療用組成物14,114に含まれるポリマー材料の重量は、組成物の総重量に対して、例えば約1%から約50%の範囲、約3%から約30%の範囲または約5%から約20%の範囲であるが、これらに限定されない。
【0052】
前述したように、治療用組成物14,114は、ポリマー材料および組成物中の他の任意の成分が組み合わされ、混合され、溶解され、分配されまたは分散される1つまたは複数の溶媒または担体を有している。いくつかの実施形態では、ポリマー材料および組成物中の他の任意の成分は、溶媒および/または担体材料に略均一に分散される。1つの例示的な形態では、上記の溶媒および担体は、液体またはゲルの状態である。非限定的な例においては、極性化合物および極性溶媒が、治療用組成物14,114における溶媒または担体として使用される。適切な極性化合物および極性溶媒の例としては、水、メチル、エチルおよびイソプロピルアルコール等のアルコール、エチレンおよびプロピレングリコール化合物(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、エトキシジグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、マルチトールおよびその他の糖アルコール)およびジオール(1,3-プロパンジオール)等が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒および/または担体が治療用組成物14,114に含まれる場合、溶媒および/または担体の重量は、組成物の総重量に対して、約0.5%から約50%の範囲、約10%から約40%の範囲または約20%から約30%の範囲であるが、これらに限定されない。組成物に含まれる溶媒および/または担体の正確な量を決定する際には、治療用組成物の粘度が、成形プロセスでの治療用組成物の使用を容易にする粘度となるように考慮される。例えば、治療薬の粘度を適宜設定することによって、関連する成形器具を治療薬が容易に通過できるようになる。
【0053】
前述したように、治療用組成物14,114は、特定の状態の治療に有効な少なくとも1つの治療薬を有している。非限定的な例においては、治療用組成物14,114に含まれる治療薬は、美容効果、パーソナルケア効果、診断的または治療的効果をもたらすものであり、薬理学的効果をもたらす場合もあれば、もたらさない場合もある。1つの例示的な形態において、治療薬は、口腔状態の治療に有効であり、例えば、歯の漂白および/またはホワイトニング剤、脱感作剤および/または再石灰化剤、麻酔剤、抗歯垢形成剤、抗歯石形成剤、抗菌剤、抗生物質、消毒剤および/または防腐剤、抗酸化剤、歯肉無痛化剤等の軟らかい口腔組織の治癒剤および光沢剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
歯の漂白および/またはホワイトニング剤の非限定的な例としては、1つまたは複数の過酸化物および/または活性酸素、ペルオキソ硫酸等の、酸素または過酸化水素の放出化合物または発生剤(例えば、過酸化水素等の無機または金属過酸化物)、過酸化グリセロール、過酸化水素尿素付加物(例えば、過酸化カルバミド)、過酸化水素複合体および/または付加物(例えば、アシュランド社(Ashland)から入手可能なPeroxydone(登録商標)複合体等の過酸化水素-PVP複合体)、過炭酸塩(例えば、過炭酸ナトリウムおよび過炭酸カリウム)、過ホウ酸塩(例えば、過ホウ酸ナトリウム)、過硫酸塩(例えば、過硫酸ナトリウム)、ペルオキシ水和物(例えば、ペルオキシ水和物ナトリウム)、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸ナトリウム)、二酸化塩素およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
脱感作剤および/または再石灰化剤の非限定的な例としては、カリウム塩(例えば、硝酸カリウム、塩素酸カリウムおよびシュウ酸カリウム)、フッ化物塩(例えば、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸ナトリウムおよびフッ化カルシウム)、カルシウム塩(例えば、水酸化カルシウムおよびリン酸カルシウム)、マグネシウム塩(例えば、硫酸マグネシウム)、ヒドロキシアパタイト、アモルファスリン酸カルシウム(ACP)、カゼインホスホペプチド(CPP)、ACP-CPPおよびストロンチウム塩(例えば、塩化ストロンチウムおよび酢酸ストロンチウム)が挙げられる。このような脱感作剤および/または再石灰化剤の量は、歯の脱感作および/または再石灰化が達成できる量に設定される。例えば、脱感作剤および/または再石灰化剤の重量は、組成物の総重量に対して、約0.1%から約10%の範囲である。1つの例示的な形態では、再石灰化剤は、エナメル質の光沢を戻すことによって光沢剤としても機能し得る。
【0056】
麻酔剤の非限定的な例としては、ベンゾカインやリドカイン等の局所麻酔剤が挙げられる。抗菌剤の非限定的な例としては、クロルヘキシジン、トリクロサン、安息香酸ナトリウム、パラベン、テトラサイクリン、フェノール、塩化セチルピリジニウム、安息香酸および第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム)が挙げられる。抗歯垢形成剤または抗歯石形成剤の非限定的な例としては、ピロリン酸塩が挙げられる。歯肉無痛化剤の非限定的な例としては、アロエベラ、軽度の硝酸カリウムおよび等張液形成塩が挙げられる。抗酸化剤の非限定的な例としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、他のビタミンおよびカロチンが挙げられる。前述したように、再石灰化剤は光沢剤としても機能する。
【0057】
治療用組成物14,114に含まれる治療薬が歯の漂白および/またはホワイトニング剤である場合、その重量は、例えば、組成物の総重量に対して、約1%から約90%の範囲、約1%から約60%の範囲、約3%から約40%の範囲または約5%から約30%の範囲等であり、所望の濃度に配合できる。歯の漂白および/またはホワイトニング剤の量は、例えば、各漂白セッションで意図された治療時間に応じて調整できる。
【0058】
治療用組成物14,114が過酸化水素または過酸化カルバミド等の過酸化物ホワイトニングまたは漂白剤を含む実施形態では、治療用組成物14,114は、1つまたは複数の過酸化物安定剤またはpH緩衝剤、例えばリン酸塩、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホン酸ナトリウム、リン酸カリウムアミノポリカルボン酸(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩)、トリエタノールアミン、TRIS、尿素、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩(例えば、ピロリン酸ナトリウム)、ヒドロキシピリドンまたはその塩、スタン酸塩(例えば、スタン酸ナトリウム)、クエン酸、リン酸、硝酸塩(例えば、硝酸ナトリウム)、ホスホン酸塩、アミノカルボン酸塩およびこれらの組み合わせ等を含んでいる。明確にするために、本明細書における「塩」という用語は、アルカリ金属塩(すなわち、リチウム、ナトリウムまたはカリウム)、アルカリ土類金属塩(カルシウムまたはマグネシウム)またはアンモニウム塩との化合物の塩基付加塩を意味し、かつ包含する。このような安定剤の量は、過酸化水素の安定化を達成できる量に設定される。非限定的な例においては、安定剤の重量は、組成物の総重量に対して約0.1%から約10%の範囲である。非限定的な例においては、pH緩衝液の重量は、組成物の総重量に対して、約0.1%から約30%の範囲である。
【0059】
治療用組成物14,114には、1つまたは複数の疎水性物質を任意で添加できる。疎水性物質は、治療用組成物14,114の離型を促進するよう機能する。例えば、疎水性物質が存在することによって、治療用組成物14,114が、オーバーモールド成形で使用される型の表面ではなく、基体12,112に対して優先的に付着する。治療用組成物14,114に添加される疎水性物質の量は、オーバーモールド成形で使用される型の表面からの治療用組成物14,114の離型を補助できる量に設定される。特定の理論に限定されることは意図していないが、疎水性物質(油および/またはヒュームド・シリカ等)は、特定範囲の温度において、治療用組成物14,114の粘度および接着性に関係なく、治療用組成物14,114の離型を補助すると考えられている。したがって、治療用組成物14,114は、オーバーモールド成形で使用される型からの離型が容易であると同時に高い粘度および接着性を備えるように配合可能であり、いくつかの実施形態では、オーバーモールド成形で使用される型と比較して、基体12,112の方に選択的に付着する。
【0060】
治療用組成物14,114に使用可能な疎水性物質の非限定的な例としては、油、ワックス、疎水性充填剤、シリコーン系化合物、セルロース系疎水性ポリマー、メントールおよび疎水性界面活性剤が挙げられる。疎水性物質のより具体的な例としては、ミント油(例えば、ペパーミント油、スペアミント油およびウィンターグリーン油)、柑橘油(例えば、オレンジ油)、シナモン油、樟脳油、バジル油、アマランス油、ラベンダー油、リモネン、シロキサン(例えば、ジメチコン)、シラン、シリコーン、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリグリセロールアルキルエーテル、グルコシルジアルキルエーテル、クラウンエーテル、エステル結合界面活性剤およびポリオキシエチレンアルキルエーテル)、アニオン性界面活性剤(例えば、ラウレル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸塩、アシルグリシネートおよびステアレート塩)、ヒュームド・シリカおよびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
疎水性物質が治療用組成物14,114に含まれる場合、疎水性物質の重量は、組成物の総重量に対して、約0.5%から約25%の範囲、約1%から約15%の範囲または約2%から約12%の範囲である。特定の非限定的な形態では、治療用組成物14,114は、1つまたは複数の油および疎水性シリカを有している。この例示的な形態では、1つまたは複数の油の重量は、組成物の総重量に対して、約0.01%から約5%の範囲、約0.05%から約2%の範囲または約0.3%から約0.8%の範囲であり、疎水性シリカの重量は、組成物の総重量に対して、0%から約20%の範囲、約1%から約15%の範囲または約2%から約11%の範囲である。
【0062】
また、治療用組成物14,114は、1つまたは複数のレオロジー調整剤、充填剤、着色剤、香味料、甘味料等を任意で有していてもよい。非限定的な例においては、治療用組成物14,114に含まれるスクラロースまたは別の適切な甘味料の重量は、組成物の総重量に対して、約5%以下である。1つの例示的な形態では、治療用組成物14,114は、少なくとも1つのポリマー材料、少なくとも1つの溶媒および少なくとも1つの治療薬を含み、さらに任意で疎水性物質を含む歯のホワイトニング組成物である。特定の非限定的な形態では、治療用組成物14,114は、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリエチルオキサゾリン、水および/またはエタノールおよび過酸化物を有している。別の非限定的な形態では、治療用組成物14,114は、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリエチルオキサゾリン、水および/またはエタノール、治療薬、ペパーミント油および/または疎水性ヒュームド・シリカを有している。さらに別の非限定的な形態では、治療用組成物14,114は、過酸化水素、他の漂白剤、他の薬剤および/または1つまたは複数のレオロジー調整剤を有している。この形態および他の形態では、治療用組成物14,114は、室温および成形温度では粘着性を有する粘性ゲルである。いくつかの実施形態では、治療用組成物14,114の1つまたは複数の成分は温度感受性を有し、治療用組成物14,114は、室温(約25℃)またはより低い温度でオーバーモールド成形される。
【0063】
いくつかの実施形態では、治療用組成物14,114は、粘着性および/または接着性のゲルまたはペーストとして構成され、治療用組成物14,114が製造、流通、保管、販売促進および使用中に実質的に所定位置に留まることを可能とする粘度を有する。例えば、粘性を有していることによって、治療用組成物がトレイまたはストリップから流出することを抑制できる。キャビティ24と同様のキャビティを有するいくつかの形態では、治療用組成物の粘度がより低く、成形プロセス後に治療用組成物の上に配置されるプラスチックフィルム等のカバーおよび/またはキャビティによって所定の位置に保持される。他の実施形態では、治療用組成物14,114は、実質的に乾いた感触を有しているが、水または唾液等の特定の液体と接触すると、粘着性および/または粘性が高くなるように構成されている。さらに、ゲルまたはペーストの状態は、液体やゴム状の組成物、さらには、硬質で乾いた触感を有する組成物に類似した特性を有していてもよい。
【0064】
図6~9を概して参照して、トレイ110の基体112上の治療用組成物114のオーバーモールド成形に関してさらに詳述する。以下の説明は、ストリップ10の基体12上に治療用組成物14をオーバーモールド成形する工程にも適用可能である。
図6に示される例示的な型200は、治療用組成物114をトレイ110の基体112上にオーバーモールド成形するために使用される。型200は、突起206a~206c等の1つまたは複数の突起および突出部202を有している。突出部202は、少なくとも1つまたは複数の表面204によって部分的に画定される凹部203を有していることを除いては、トレイ110の形態に概して対応している。トレイ110が型200に対して配置されると、凹部203によって、治療用組成物114が注入されるキャビティの少なくとも一部が画定される。つまり、凹部203によって、基体112上にオーバーモールド成形される治療用組成物114の形態が画定される。例えば、
図7では、トレイ110が型200に配置されており、凹部203は、仮想線すなわち破線で示されている。治療用組成物114がトレイ110と型200との間に注入されると、トレイ110および凹部203によって画定されているキャビティに治療用組成物114が充填され、凹部203に対応した所望の形態のオーバーモールド形態で治療用組成物114が形成される。凹部203によって形成される例示的形態は
図8等に示されており、この図では、トレイ110と型200との間への注入後の治療用組成物114の形態を示すためにトレイ110が取り除かれている。
図8は例示を目的としており、実際には、治療用組成物114はトレイ110の基体112に付着しているため、トレイ110が型200から外されたときにトレイ110と共に移動する。
【0065】
トレイ110の基体112上への治療用組成物114のオーバーモールド成形時には、型200に対するトレイ110の位置決めは、任意の適切な方法によって維持される。例えば、1つまたは複数の締め付け具、追加の1つまたは複数の型および/または真空源を使用できる。追加の型が使用される1つの例示的な形態では、追加の型は、例えば
図9に示す型300のような構成を有している。型300は、凹部306a~306c等の1つまたは複数の凹部と、型300と組み合わされてトレイ110を構成するトレイ型(図示しない)に対応しているがその逆である形態を有するキャビティ304とを有している。トレイ型は、型200に類似しているが、凹部203が形成されていない点において異なっている。このため、トレイ型と型300とが互いに対して配置されると、治療用組成物114がオーバーモールドされていないトレイ110の形態に対応するキャビティが、トレイ型と型300との間に画定される。型300は上記のようにトレイ110の形成中に使用可能である。同様に、例示的な一形態では、型300は、まず射出成形プロセス中にトレイ型(図示せず)と共に使用されて、トレイ110を形成する。トレイ型と型300との間に基体110を形成する材料が注入された後に、トレイ型と型300とは互いから移動または分離され、形成されたトレイ110は型300内に保持される。例えば、型300に真空力を加えることによって、2つの型を離すときにトレイ110を型300内に保持できる。トレイ型が外された後に、型200が型300に対して配置され、トレイ110は、突起206a~206cが各凹部306a~306cに受容された状態で型300によって保持される。次に、治療用組成物114を型200とトレイ110との間に注入することによって、トレイ110の基体112上に治療用組成物114がオーバーモールド成形される。治療用組成物114の注入に続いて、型200および300が互いから移動または分離され、治療用組成物114は、トレイ110の基体112に付着した状態でトレイ110上に保持される。トレイ110を対応する型から外すために追加の力が加えられるが、この追加の力は、型200および型300の分離前または分離後に、これらの型の一方または両方にトレイ110が接触した状態を維持する程度の力とする。例えば、機械的な力をトレイ110に加えてもよいし、空気を対応する型に注入してもよい。追加的または代替的に、トレイ110の分離を容易にするために、型またはトレイ110を冷却してもよい。
【0066】
治療用組成物14,114が過酸化物を含む実施形態では、オーバーモールド成形中に過酸化物が酸素および水に分解することを低減または防止するために、治療用組成物14,114が低温でストリップ10またはトレイ110上にオーバーモールド成形される。例えば、いくつかの実施形態では、治療用組成物14,114は、25℃以下、20℃以下または15℃以下の温度で、ストリップ10またはトレイ110上にオーバーモールド成形される。
【0067】
前述していないが、本明細書に記載の1つまたは複数の型は、ポリテトラフルオロエチレンコーティング等のフッ化炭素コーティング、シリコーンエラストマーコーティング、ポリプロピレンコーティング、クロロトリフルオロエチレンコーティングまたは別の低粘着性もしくは非粘着性コーティングで被覆されて、トレイ110および/または治療用組成物114から型を外しやすくなるように構成してもよい。例示的な一形態では、型200は、ポリテトラフルオロエチレンコーティングまたは別の低粘着性もしくは非粘着性コーティングで被覆されている。この場合、射出成形プロセスで必要な加締め力を低減でき、追加的または代替的に、治療用組成物114の粘着性を抑制できる。その結果、型200からの治療用組成物114の離型が容易になる。また、型200の温度を、注入される治療用組成物114の温度よりも低く維持してもよく、これによって、治療用組成物114の固化が促進され、型200とトレイ110との間に少なくとも部分的に画定または配置されたキャビティ形状に形成される。
【0068】
本開示の主題は、口腔治療用器具および関連する組成物に関して説明されているが、他の用途にも適用可能である。さらに、本明細書に記載のオーバーモールド手法の適用は、少なくとも1つの治療薬を含む治療用組成物のみに限定されない。本明細書に開示されるオーバーモールド手法は、1つまたは複数の親水性ポリマーを含む組成物のオーバーモールド成形にも適用可能である。
【0069】
当業者であれば、本明細書に開示されるプロセス、操作および方法について、実行される機能および/または操作が異なる順序で実施可能であることが理解できる。さらに、上記機能および操作は単なる例示であり、いくつかの機能および操作は任意であり、より少ない機能および操作に組み合わされてもよく、開示された実施形態の本質を損なうことなく追加の機能および操作に拡張してもよい。
【0070】
上記の発明の説明は、本発明を開示された実施形態に限定するものとして解釈されるべきではない。本発明に関連する技術分野の当業者であれば、本発明の範囲内で他の同等の形態を考案することが可能である。当業者には明らかである変形および変更は、本発明の範囲および性質の範囲内にあることが意図されている。
【0071】
本発明は、特定の例示的な実施形態に関して説明してきたが、当業者に明らかな他の実施形態も本発明の範囲内に含まれる。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ定義されることが意図されている。
【国際調査報告】