(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】繊維材料ウェブを製造または加工する機械用のファブリックの基本構造およびこの基本構造を製造する方法
(51)【国際特許分類】
D21F 1/10 20060101AFI20221005BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20221005BHJP
D03D 3/04 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
D21F1/10
D03D1/00 Z
D03D3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507880
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020068860
(87)【国際公開番号】W WO2021028116
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】102019121485.8
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト エーバーハート
(72)【発明者】
【氏名】スザンヌ クラシュカ
【テーマコード(参考)】
4L048
4L055
【Fターム(参考)】
4L048BA01
4L048CA00
4L048CA12
4L048DA39
4L048EB00
4L055CE25
4L055CE36
4L055CF26
4L055FA22
4L055FA23
(57)【要約】
本発明は、繊維材料ウェブ、特にペーパウェブ、厚紙ウェブまたはティッシュウェブを製造または加工する機械用のファブリックの基本構造であって、少なくとも織布タイプAの第1の平織物と、織布タイプBの第2の平織物とを含んでおり、基本構造は、さらに2つのループエレメントを含んでおり、該ループエレメントは、それぞれ1つの平織物部分から形成されており、該平織物部分は、織布タイプAの第1の区分と、織布タイプBの第2の区分とを有しており、第1の区分は、折り位置が織布タイプAと織布タイプBとの間の切替わり位置から5cm未満、特に1cm未満の間隔で形成されているように、第2の区分上に置かれており、第1の平織物と、第2の平織物とは、互いに上下に重なって配置されており、かつ両方のループエレメントは、それぞれ正面端部に配置されている、基本構造に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料ウェブ、特にペーパウェブ、厚紙ウェブまたはティッシュウェブを製造または加工する機械用のファブリックの基本構造であって、少なくとも織布タイプAの第1の平織物と、織布タイプBの第2の平織物とを含んでいる、基本構造において、
前記基本構造は、2つのループエレメントをさらに含んでおり、該ループエレメントは、それぞれ1つの平織物部分から形成されており、該平織物部分は、前記織布タイプAの第1の区分と、前記織布タイプBの第2の区分とを有しており、
前記第1の区分は、折り位置が織布タイプAと織布タイプBとの間の切替わり位置から5cm未満、特に1cm未満の間隔で形成されているように、前記第2の区分上に置かれており、前記第1の平織物と、前記第2の平織物とは、互いに上下に重なって配置されており、かつ前記両方のループエレメントは、それぞれ正面端部に配置されていることを特徴とする、基本構造。
【請求項2】
前記第1のループエレメントおよび/または前記第2のループエレメントにおいて、前記織布タイプAの正面縁部が前記第1の平織物に、かつ前記織布タイプBの正面縁部が、前記第2の平織物に結合されており、特に溶着されている、請求項1記載の基本構造。
【請求項3】
前記ループエレメントの前記折り位置の領域において、シームループの形成時にCD糸が取り除かれており、この場合、特に前記折り位置毎に3~8本のCD糸が取り除かれている、請求項1または2記載の基本構造。
【請求項4】
前記シームループのすぐ近傍に、織布タイプAにおいても織布タイプBにおいても存在していないCD糸(特殊糸)が設けられている、請求項3記載の基本構造。
【請求項5】
前記織布タイプAは、前記織布タイプBと同一である、請求項1から4までのいずれか1項記載の基本構造。
【請求項6】
前記織布タイプAと前記織布タイプBとは、少なくとも1つのパラメータにおいて互いに異なっており、特に互いに異なる織りパターンまたは互いに異なるCD糸密度を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の基本構造。
【請求項7】
前記基本構造は、前記織布タイプAの複数の平織物および/または前記織布タイプBの複数の平織物を含んでいる、請求項1から6までのいずれか1項記載の基本構造。
【請求項8】
前記織布タイプAおよび/または前記織布タイプBは、30%~45%、特に34%~42%のMD糸密度を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の基本構造。
【請求項9】
繊維材料ウェブ、特にペーパウェブ、厚紙ウェブまたはティッシュウェブを製造または加工する機械用のファブリック、特にシームフェルトであって、
前記ファブリックは、少なくとも請求項1から8までのいずれか1項記載の基本構造を含んでいることを特徴とする、ファブリック。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項記載の基本構造を製造する方法であって、該方法は、
a)織布タイプAの第1の平織物と、織布タイプBの第2の平織物とを準備するステップと、
b)前記織布タイプAの第1の区分と、前記織布タイプBの第2の区分とを有する2つの平織物部分を準備し、折り位置が織布タイプAと織布タイプBとの間の切替わり位置から5cm未満、特に1cm未満の間隔で形成されるように、前記第2の区分上に前記第1の区分を重ね合わせることによってループエレメントを形成するステップと、
c)前記第1の平織物と前記第2の平織物とを互いに上下に重なるように配置し、かつ前記両方のループエレメントを正面端部にそれぞれ配置するステップと
を含んでいる、方法。
【請求項11】
前記方法がさらに、
d)前記第1のループエレメントと前記第2のループエレメントにおいて、それぞれ前記織布タイプAの正面縁部を前記第1の平織物に、かつ前記織布タイプBの正面縁部を前記第2の平織物に結合、特に溶着するように、前記ループエレメントを前記第1の平織物および前記第2の平織物に結合するステップ
を含んでいる、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の繊維材料ウェブを製造または加工する機械用のファブリックの基本構造と、請求項9の前提部に記載のファブリックと、請求項10の前提部に記載の基本構造を製造する方法に関する。
【0002】
多くの場合、抄紙機または類似の機器のためのファブリックは、ファブリックに安定性を与え、機器の運転中にファブリックに作用する力、特に引張力を受け止める基本構造を有している。今日使用されている基本構造の大部分は、全体的に、または部分的に織布から成っている。
【0003】
必要とされる無端の織布ループを製造するための従来の方法の1つは円織り(Rundweben)である。この場合、無端の構造は、織機自体で直接製造され、継ぎ目を有していない。しかし、円織りは製造法としては極めて緩慢であり、手間がかかる。さらに、既に織り時に、所望のファブリックがどの長さであるべきかが正確に認識されている必要がある。抄紙機における各使用位置は、ファブリックループの極めて個別の長さを必要とするので、このような基本構造の製造はそれぞれ、特定のオーダのためにのみ可能である。
【0004】
これら両方の問題を克服する代替手段として、既に少し前に、平織物をベースとしたシームファブリックを製造することが提案された。これらは、たとえば、欧州特許第0425523号明細書または欧州特許第2788546号明細書に記載されている。この場合、平織物では、両端部がそれ自体の上に置かれるので、2層の構造物が生じる。折り位置は、織機における緯糸に対応するCD糸を除去することにより、シームループに形成することができる。シームループを互いに係合させ、差込みワイヤ(Steckdraht)によって結合することによって、2層の構造物の2つの正面端部を結合することができる。
【0005】
このコンセプトは、平織物を迅速に製造し、ロール上に保管することを可能にするので、近年では極めて成功していることが判った。オーダが入った場合に、これらのロールから所望の長さを取り出し、さらに必要な幅に短縮することができる。
【0006】
しかし、いくつかの用途にとって、この概念が比較的柔軟性を有しないことが不都合であることが判った。2層の構造物の両方の層はそれぞれ同一の織布から成っている。このことは、一方では重畳によるいわゆるモアレ効果につながる。他方では、走行側と紙側とにおける互いに異なる要求を考慮することができない。
【0007】
これらの問題を回避するために、独国特許出願公開第102016111769号明細書は、2層の構造物の両方の層がそれぞれ1つの異なる織りパターンを有しているように、平織物の織りパターンを織りプロセス中に変更することを提案している。これにより、たしかにモアレ効果を低減することができるが、織りパターンの切替えは、それぞれ折り位置で行われなければならず、これにより、この場合も、既に基本構造の製造時にファブリックの長さが既知でなければならない。
【0008】
したがって、本発明の課題は、先行技術の問題を克服することである。
【0009】
特に、本発明の課題は、ファブリックの設計時に大きな柔軟性を可能にし、それにもかかわらず基本構造の構成部分をファブリックの寸法から十分に独立して製造することができる、基本構造およびその製造方法を提供することである。
【0010】
これらの課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有する基本構造と、請求項10の特徴部に記載の特徴を有する基本構造を製造する方法とによって完全に解決される。
【0011】
有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0012】
基本構造に関して、課題は、繊維材料ウェブ、特にペーパウェブ、厚紙ウェブまたはティッシュウェブを製造または加工する機械用のファブリックの基本構造により解決される。基本構造は、少なくとも織布タイプAの第1の平織物と、織布タイプBの第2の平織物とを含んでいる。基本構造は、この基本構造がさらに2つのループエレメントを有しており、これらのループエレメントが、それぞれ1つの平織物部分から形成されており、平織物部分が、織布タイプAの第1の区分と、織布タイプBの第2の区分とを有しており、第1の区分は、折り位置が織布タイプAと織布タイプBとの間の切替わり位置から5cm未満、特に1cm未満の間隔で形成されているように、第2の区分上に配置されており、両方の平織物が、互いに上下に重なって配置されており、かつ両方のループエレメントがそれぞれ1つの正面端部に配置されていることを特徴とする。
【0013】
したがって、基本構造は、少なくとも4つのエレメントを含んでいる。第1の平織物および第2の平織物は、通常、基本構造の最大の部分を成す。第1の平織物および第2の平織物は実質的に均質な織布として構成されており、有利には後に生じるファブリックの寸法に依存せずにロール製品として製造することができ、ファブリックの製造時に対応してロールから切断することができる。
【0014】
基本構造における織布タイプAと織布タイプBとの間の切替えは、独国特許出願公開第102016111769号明細書のように、折り位置において行われる。この先行技術とは異なり、本発明の基本構造は、折畳みが行われる固有のループエレメントをそれぞれ含んでいる。これらのループエレメントは、後に生じるファブリックの長さに実質的に依存せず、標準化されたフォーマットで製造および保管することができる。
【0015】
したがって、基本構造は、ロール製品として、または標準化されたループエレメントとして予め製造することができるエレメントから製造することができる。それにもかかわらず、本発明は、互いに異なる織布タイプを有する2層の構造物の両方の層を実現する柔軟性を可能にする。したがって、モアレ効果を回避するか、または少なくとも低減することができ、紙側および走行側における種々異なる要求を考慮することができる。
【0016】
上述のように、ループエレメントを形成するために、平織物部分が折り畳まれる。したがって、ループエレメントの一方の端部に、折り位置が形成される。ループエレメントの他方の端部には、元の平織物部分の両方の正面縁部が位置するようになる。この場合、一方の正面縁部は織布タイプAのものであり、他方の正面縁部は、織布タイプBのものである。
【0017】
第1の区分および第2の区分は、同一の長さを有してもよい。しかし、これらの両方の区分が互いに異なる長さを有することが有利であることが頻繁にある。好適には長さ比は40%/60%~30%/70%である。たとえば2mの長さを有する平織物部分の場合、第1の区分は1.20m、第2の区分は0.80mの長さであってもよい。
【0018】
互いに異なる長さは、後に行われる折畳み時に、正面縁部が互いに直接に上下に重なって位置せず、ずらされているという利点を有している。
【0019】
使用される平織物および平織物部分は、通常、完全にまたは部分的にポリマ材料から成る糸から織られる。この場合、ポリアミド、ポリエステルまたはポリエチレンが一般的である。
【0020】
第1のループエレメントおよび/または第2のループエレメントにおいて、織布タイプAの正面縁部が第1の平織物に、かつ織布タイプBの正面縁部が第2の平織物に結合、特に溶着されていると特に有利である。
【0021】
ループエレメントと、第1の平織物および第2の平織物との結合により、連結された基本構造が生じる。この基本構造は、一方では、容易に加工してファブリックを形成することができる。他方では、このような基本構造は、横方向安定性を提供するだけではなく、引張力も受け止めることができる。
【0022】
このような種類の結合において極めて有利であるのは、基本構造の一方の側に、専ら織布タイプAが存在し、他方の側に専ら織布タイプBが存在することである。
【0023】
このような結合は、「接合(Join)」とも呼ばれる。できるだけ均質な特性を有する基本構造ならびにファブリックを得るために、通常は、接合領域における透過性または厚さのような特性を、この結合ゾーン外の特性に十分に適合させ、これにより、接合の特性が、特に結合ゾーン外の対応する値の80%~120%の範囲にあると有益である。このような接合を実現する可能性は、たとえば、国際公開第2019/063518号に記載されている。
【0024】
さらに好適には、ループエレメントの折り位置の領域において、シームループの形成時にCD糸が取り除かれており、特に折り位置毎に3~8本のCD糸が取り除かれていることが規定されている。
【0025】
2層の構造物の両側にこのようなシームループが形成されている場合、これらのシームループを、互いに係合させ、差込みワイヤによって結合することができ、これにより基本構造もしくはファブリック全体を無端にすることができる。
【0026】
差込みワイヤを簡単に通すことを可能にするために、できるだけ大きなシームループの内径が望ましい。
【0027】
シームループの内径を決定するために、シームループに完全に挿入される最大の円が求められる。したがってこの円の直径が、このシームループの内径と見なされる。
【0028】
しかし、過度に大きな直径は、極めて厚いシームループをもたらし、このようなシームループは、場合によっては繊維材料ウェブにマーキングを形成してしまう。シームループの内径が、0.8mm~2.2mm、好適には1mm~1.6mmであると有利であることが判った。
【0029】
シームループの内径の大きさは、シームループを形成するために除去されるCD糸の本数に強く影響される。記載された有利な内径は、3~8本のCD糸を取り除くことによって通常は極めて簡単に実現される。1本または2本のCD糸のみを取り除いた場合、シームループは、多くの用途においてどちらかというと小さな直径を有する。8本以上の糸を取り除いた場合、シームループの直径が過度に大きくなる恐れが生じる。
【0030】
ループの内径は、MD糸の糸径にも依存する。[0.8~2.2mm]という範囲は、特に0.3mm~0.6mmの直径を有するMD糸にとって適用可能である。このようなMD糸は、抄紙機用のファブリックの基布にとって典型的である。異なる糸径の場合、記載された範囲外のループ内径も可能である。
【0031】
さらに、シームループのすぐ近傍に、織布タイプAにおいても織布タイプBにおいても存在していないCD糸(「特殊糸」)が設けられていると有利であり得る。これらの特殊糸は、既に平織物部分に織り込まれていてもよいし、またはシームループの形成時に後から加えられていてもよい。ループエレメントのための平織物部分の作製時に既に、後に生じるループエレメントにおいてシームループが、織布タイプAと織布タイプBとの間の移行部において、どこに位置決めされているかが決定されているので、平織物部分の作製時に既に特殊糸を織り込むことは問題なく可能である。可能な特殊糸の例は、撚り糸、マルチフィラメント、または非円形の横断面を有する糸、たとえば扁平糸である。さらに、特殊糸は、吸収性の糸の形態で設けられていてもよい。特に、特殊糸は、織布タイプの残りCD糸の材料および形状に対応してもよいが、対応する手段により、たとえば、特定の波長範囲、特に780nm~1200nmのNIR範囲の区分の光に対する吸収添加剤の添加が行われる。このような吸収性のCD糸は、レーザ透過溶着によりMD糸に溶着することができる。このことは、シームループに一定の安定性を与える。MD糸、特にMD糸がポリアミドから成る場合、レーザ光を吸収しないので、MD糸は溶着時に単にCD糸との接触により加熱される。これにより、MD糸の強度が著しく損なわれることはない。
【0032】
代替的または付加的には、このような特殊糸は、平織物部分もしくはループエレメントの別の位置にも設けられていてもよい。特に正面縁部またはそのすぐ近傍において、吸収性の糸の形態のこのような特殊糸は極めて有利であり得る。これにより、溶着によるループエレメントと平織物との結合を簡略化することができる。ここでも、シームループのための平織物部分の織製時に、接合結合部がどの位置に製造されるかが既に既知であることが有利であると判った。したがって、通常は比較的高価である特殊糸は、これらの特殊糸が実際に必要とされる位置においてのみ織り込まれればよい。
【0033】
特に10本未満の個別のマーキング糸または別の特殊糸を織布タイプA(または織布タイプB)の織布に織り込むか、または別の形式で設けることにより形成された織布は、引き続き織布タイプA(または織布タイプB)の織布と見なすべきである。
【0034】
有利には、織布タイプAおよび織布タイプBは、少なくとも1つのパラメータにおいて互いに異なっており、特に互いに異なる織りパターンまたは互いに異なるCD糸密度を有していることが規定されてもよい。このことは、ファブリックの設計時に特に高い柔軟性を可能にする。しかし、このことは必ずしも必要ではない。代替的な構成では、織布タイプAが、織布タイプBと同一であることも規定されている。このような基本構造も、本発明の1つの態様により可能である。
【0035】
幾つかの構成では、基本構造が、織布タイプAの複数の平織物および/または織布タイプBの複数の平織物を含んでいると有利であり得る。したがって特に、基本構造は、6つのエレメント、すなわち織布タイプAおよび織布タイプBのそれぞれ2つの平織物と、2つのループエレメントとから構成することができる。
【0036】
好適には、織布タイプAおよび/または織布タイプBが、30%~45%、特に34%~42%、特別には36%~40%のMD糸密度を有していることが規定されていてもよい。
【0037】
特に好適には、両織布タイプは、完全にまたは実質的に同一のMD糸密度を有している。後者は、一方では製造技術的な観点から有利である。したがって、ループエレメント用の平織物は、1つの織機で製造されてもよく、両織布タイプは、同一の経糸を使用してもよく、この場合にこの経糸は、基本構造においてMD糸を提供する。両織布タイプの切替わり位置において、織りパターンまたは緯糸材料を比較的簡単に変更することができる。しかし、経糸の変更は、極めて困難を伴う。他方では、これにより、MD糸によって折り位置において形成されるシームループも、互いに容易に接合され、これにより、基本構造を、より容易に無端にすることができる。
【0038】
(MD)糸密度により、(MD)糸により占められる織布の幅の割合が規定される。
【0039】
たとえば、1cmあたり8本の糸が設けられており、糸が0.4mmの直径を有している場合、糸密度は(8*0.4)/10=32%である。
【0040】
MD糸密度の記載された範囲は、一方では、シームループを幾らか簡単に互いに係合させることを可能にする。このシームの領域では、両シームループのMD糸により、2倍のMD糸密度に相当するループ密度が生じると考えられる。これにより、45%のMD糸密度では、90%のループ密度が生じる。これは既に100%の理論的な最大密度に近い。90%よりも大きなループ密度は、加工が極めて困難であり、したがって有利ではない。他方では、30%未満のMD糸密度は、ループ密度の観点において重要ではない。しかし、通常は、たとえば引張強さのような織布の特性は、これにより極めて損なわれるので、値は、他の欠点が生じないように、通常は下回られないことが望ましい。
【0041】
製紙・パルプ機械用のファブリックならびにその基本構造は、いわゆるヒートセッティングプロセスにおいて熱処理を受けることが頻繁にある。通常、完成したファブリックまたは基本構造の経糸密度は、その結果生じる収縮プロセスにより、ヒートセッティング前よりも高くなる。MD糸密度のために記載された範囲は、ヒートセッティング前後のファブリックにとって有利である。
【0042】
ファブリックに関して、課題は、繊維材料ウェブ、特にペーパウェブ、厚紙ウェブまたはティッシュウェブを製造または加工する機械用のファブリック、特にシームフェルトにより解決される。ファブリックは、本発明の1つの態様による少なくとも1つの基本構造を含んでいる。
【0043】
ファブリックはさらに、別の構成部分を含んでいてもよい。
【0044】
ファブリックはしばしば、別のエレメント、たとえば、不織布支持部、付加的な織布エレメント、フィルムまたは発泡材エレメントを備えている。これは、このようにして形成されたファブリックの後の使用に依存する。特に、ファブリックの、繊維材料ウェブに接触する側に、不織布繊維から成る1つまたは複数の層が設けられていてもよい。さらに、走行側にも不織布繊維が設けられていてもよい。
【0045】
不織布繊維は、通常、針打ち加工により基本構造に結合される。このことは、特に、これによって基本構造の個別の構成部材も互いに結合されて、これによりファブリックの強度がさらに高められるので有利である。
【0046】
方法に関して、課題は、本発明の1つの態様による基本構造を製造する方法によって解決される。方法は、以下のステップ、すなわち、
a)織布タイプAの第1の平織物と、織布タイプBの第2の平織物とを準備するステップと、
b)織布タイプAの第1の区分と、織布タイプBの第2の区分とを有する2つの平織物部分を準備し、折り位置が織布タイプAと織布タイプBとの間の切替わり位置から5cm未満、特に1cm未満の間隔で形成されるように、第1の区分を第2の区分上に重ね合わせることによってループエレメントを形成するステップと、
c)第1の平織物と第2の平織物とを、互いの上下に重なるように配置し、かつ両方のループエレメントを正面端部にそれぞれ配置するステップと
を含む。
【0047】
有利な構成では、本方法は、さらに以下のステップを含んでいてもよい。
d)第1のループエレメントおよび第2のループエレメントにおいて、織布タイプAの正面縁部を第1の平織物に、かつ織布タイプBの正面縁部を第2の平織物に結合し、特に溶着するように、ループエレメントを第1の平織物および第2の平織物に結合するステップ。
【0048】
方法の実施時に、方法ステップの順序は場合によっては入れ替えることもできることに留意されたい。したがって、たとえばループエレメントもしくは平織物部分と第1/第2の平織物との結合は、ループエレメントの折畳みおよび形成の前でも後でも可能である。
【0049】
さらに、この方法の有利な構成では、1つ以上のヒートセッティングステップが設けられていてもよい。この場合、多様なバリエーションが想定可能である。
【0050】
したがって、第1の平織物は、ステップa)において準備の前および/または後にヒートセッティングを受けることができる。
【0051】
代替的または付加的には、第2の平織物は、ステップa)における準備の前および/または後にヒートセッティングを受けることができる。
【0052】
代替的または付加的には、ループエレメントが形成される平織物部分も、ステップb)における準備の前および/または後にヒートセッティングを受けることができる。したがってたとえば、平織物部分の織布をロール製品の形態で予め製造し、これらのロール製品を既に、すなわち個別の平織物部分の分離前に、ヒートセッティングを受けさせることが、有利であり得る。
【0053】
本発明の有利な別の特徴を、複数の実施例につき概略図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1a】本発明の1つの態様による、平織物部分もしくはループエレメントを示す図である。
【
図1b】本発明の1つの態様による、平織物部分もしくはループエレメントを示す図である。
【
図2】本発明の1つの態様による基本構造を示す図である。
【
図2a】本発明の別の1つの態様による基本構造を示す図である。
【
図3】本発明の別の1つの態様による方法において使用するための織布を示す図である。
【0055】
図1aは、ループエレメント2を製造するためのベースとして使用することができる平織物部分6を示している。平織物部分6は、織布タイプAから成る第1の区分6aと、織布タイプBから成る第2の区分6bとを有している。有利には、織布タイプAと織布タイプBとが、少なくとも1つのパラメータにおいて互いに異なっていて、特に異なる織りパターンまたは異なるCD糸密度を有していることが規定されていてもよい。製造技術的には、両織布タイプが同一のMD糸密度を有していると極めて有利である。時として、織布タイプAが、織布タイプBと同一であることが規定されていてもよい。
【0056】
基本構造1もしくはファブリックの製造時に高い柔軟性を有するために、平織物部分は、基本構造と比較して、MD方向で短い長さを有していることが望ましい。特に、平織物部分6は、5m未満、好適には2m以下で形成されていてもよい。
【0057】
この場合に第1の区分6aと第2の区分6bとは、同一の長さを有してもよい。しかし、これらの両方の区分6a,6bが、互いに異なる長さを有していると多くの場合に有利である。好適には、長さ比は、40%/60%~30%/70%である。たとえば2mの長さを有する平織物部分6の場合、第1の区分6aが、1.20mの長さ、第2の区分6bが、0.80mの長さであってもよい。
【0058】
互いに異なる長さは、後に行われる折り畳み時に、正面縁部3a,3bが、互いに直接に上下に重なって位置することはなく、ずらされているという利点を有している。
【0059】
1つの平織物部分6からループエレメント2を形成するために、平織物部分を、折り畳み、それ自体の上に置くことができる。このことは、
図1bに示されている。この場合、折り位置4は、切替わり位置60の領域、特に切替わり位置60に配置されている。基本構造1もしくはファブリックを後に無端にするために役立つシームループ5を形成するために、折り位置においてCD糸を取り除くことができる。多くの場合、3~8本のCD糸を取り除くだけで十分である。この場合、CD糸は、織布タイプAおよび織布タイプBから取り除くことができる。しかし、たとえば、一方の織布タイプからの取り除きが他方の織布タイプからの取り除きよりも複雑である場合、単に一方の織布タイプからCD糸を取り除くこともできる。
図1bに図示したように、両方の区分6a,6bが互いに異なる長さを有している場合、正面縁部3a,3bは互いに上下に重ならず、このことは後続の加工にとって有利であり得る。
【0060】
ループエレメント2の両方の層は、有利には、互いに結合されていてもよい。このような結合は、たとえば、1つ以上の縫合結合部7により行うことができる。このような結合または縫合は、ループエレメント2の両方の層が引き続きの加工時に互いに対してずらされ得ないので、とりわけ有利である。
【0061】
たとえば、シームループ5から2cm未満の間隔における、シームループ5の領域における結合部も、シームループ5を位置固定し、後に生じる基本構造1を無端にするために2つのシームループ5を互いに容易に係合させることを可能にするために、有利であり得る。
【0062】
図2は、本発明の1つの態様による基本構造1を示している。この基本構造は、織布タイプAの第1の平織物10と、織布タイプBの第2の平織物20と、2つのループエレメント2a,2bとから形成される。ループエレメント2a,2bは、特に、
図1aもしくは
図1bに記載されているように構成されていてもよい。
【0063】
第1の平織物10と第2の平織物20とは、この場合、互いに上下に重なって配置されている。ループエレメント2,2a,2bの場合と同様に、これら両方の層10,20は互いに結合、特に縫合されていてもよい。縫合結合部7は、
図2には明示されていないが、存在していてもよい。
【0064】
連結された1つの基本構造1を形成するために、4つの構成部材が図面において互いに結合されている。
【0065】
この場合、ループエレメント2a,2bでは、織布タイプAの正面縁部3aが第1平織物10に、織布タイプBの正面縁部3bが第2の平織物20にそれぞれ結合されている。この結合部8は、特に、溶着シーム8の形式で行うことができる。この溶着は、たとえばレーザ溶着により、特にレーザ透過溶着により、または超音波溶着によって行うことができる。代替的または付加的には、結合部8は、接着剤結合部または縫合結合部の形態で実現されていてもよい。
【0066】
このように形成された基本構造1は、2つのシームループ5a,5bを有している。これらのシームループ5a,5bを互いに接合し、次いで差込みワイヤを挿入することにより、基本構造1を無端にすることができる。多くの場合、基本構造1には、無端にする前に(または無端にした後に)、別のエレメント、たとえば不織布支持部、付加的な織布エレメント、フィルムまたは発泡材エレメントが備えられる。このことは、このように形成されるファブリックの後の使用に依存している。
【0067】
図2に図示したように、4つの織られたエレメントから成る基本構造1が通常は有利である一方で、基本構造がより多くのエレメントから構成されることも可能であり、規定されている。その一例が、
図2aに示されている。
図2aに示した基本構造1は、この基本構造1が、第1の平織物10および第2の平織物20の他に、別の第1の平織物11および別の第2の平織物21を有していることにより、
図2に示した基本構造1とは異なっている。また、それぞれ同一の織布タイプの2つの平織物も、適切な方法で、たとえば溶接シーム8aによって互いに結合されていてもよい。このことは、たとえば、平織物が、いわば無端のロール製品として存在しているのではなく、固定的な長さの既製の織物部分として存在している場合に有利であり得る。このような場合、第1(第2)の平織物10(20)および別の第1(第2)の平織物11(21)の他に、基本構造を構成するために、同一の形式でさらに別の平織物が必要とされ得る。
【0068】
図3の例を参照して、本発明の1つの態様によるファブリックが有する複数の利点のうちの1つの利点をもう一度説明する。平織物10,20からのループエレメント2,2a,2bの分離により、基本構造1のこれらの織られた部分を、後に生じるファブリックの寸法に関する知識を必要することなしに、製造することが可能である。これに関して、
図3は、1つの織布を示しており、織機の緯糸方向は、後に生じるファブリックのCD方向に一致し、経糸方向は、MD方向に一致する。CD方向では、織布を、利用可能な織機の最大幅で製造することができ、これにより将来のファブリックにおいてできるだけ全ての幅要件を満たすことができる。より狭いファブリックが望まれる場合、これは対応する切断によって達成することができる。これにより生じる裁ち屑は、今日の製造方法でも生じ、本構想の特定の欠点を成さない。
【0069】
MD方向において、織布タイプAと織布タイプBとは規則的なパターンで交替する。これは、後に生じるループエレメントのために必要とされる平織物部分6の長さと、織布タイプAと織布タイプBとの所望の長さ比とに基づいている。したがってたとえば、平織物部分6が2mの長さを有しており、第1の区分6aが1.2mの長さを有しており、第2の区分6bが80cmの長さを有していることが規定されていてもよい。平織物部分6ならびに区分6a,6bは、より長く、またはより短く規定されていてもよい。いずれの場合も、
図3の織布を、織布タイプAおよび織布タイプBの規則的な切替を伴うロール製品として予め製造することができる。基本構造1を製造するために、このロールから、2つの平織物部分6を取り出し、これらの平織物部分からループエレメント2,2a,2bを成形することができる。次いで、特定のオーダもしくは基本構造1のために必要とされる長さを、ループエレメントから独立して、第1の平織物10および第2の平織物20の適切な長さにより形成することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 基本構造
2,2a,2b ループエレメント
3a,3b 正面縁部
4 折り位置
5 シームループ
6 平織物部分
6a 第1の区分
6b 第2の区分
7 縫合結合部
8 溶着シーム
10,11 第1の平織物
20、21 第2の平織物
60 切替わり位置
【国際調査報告】