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▶ ライカ バイオシステムズ イメージング インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】オートローダ軸のストール検出
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20221006BHJP
   G02B 21/36 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
G02B21/34
G02B21/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538319
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 US2020045258
(87)【国際公開番号】W WO2021026383
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/883,581
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503293765
【氏名又は名称】ライカ バイオシステムズ イメージング インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Leica Biosystems Imaging, Inc.
【住所又は居所原語表記】1360 Park Center Dr., Vista, CA 92081, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ニューバーグ
(72)【発明者】
【氏名】プレンタッシュ ジェロセヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】アーロン スティアレット
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AA07
2H052AA09
2H052AC04
2H052AC15
2H052AD05
2H052AD09
2H052AD18
2H052AD20
2H052AE10
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】
自動化されたプロセス中に移動するガラススライドが損傷するリスクがあるかどうかを決定し、許容できない損傷のリスクが発生した場合に移動を停止させるストール検出システムが提供される。このシステムは、ガラススライドを(直接的または間接的に)移動させるように構成された1つ以上のモーターを含む。これらのモーターは、負荷抵抗値を生成するように構成されている。このシステムは、移動中のモーターの負荷抵抗値を監視し、ガラススライドが損傷するリスクを決定するために、この負荷抵抗値を予め定められた閾値抵抗値と比較する1つ以上のプロセッサを含む。予め定められた閾値抵抗値は、スライドの任意の面に加えられた力に応じたスライド破損のリスク、またはスライドラック上の制御グリップを失うリスク、またはモーターがモーターステップをスキップするリスクに対応することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルスライド走査装置であって、
前記デジタルスライド走査装置は、
モーターを含み、前記モーターは、
自動化されたプロセス中にガラススライドを移動させ、
記ガラススライドを移動させるときに負荷抵抗値を生成するように構成されており、
前記デジタルスライド走査装置は、
1つ以上のプロセッサを含み、前記1つ以上のプロセッサは、
予め定められた閾値抵抗値を設定し、
前記自動化されたプロセス中に前記ガラススライドを移動させるように前記モーターを制御し、
前記自動化されたプロセスの開始後、前記負荷抵抗値を監視し、
前記負荷抵抗値を、前記予め定められた閾値抵抗値と比較し、
前記負荷抵抗値が前記予め定められた閾値抵抗値を超えたことの決定に応じて、前記ガラススライドの移動を停止するように前記モーターを制御する、
ように構成されている、
デジタルスライド走査装置。
【請求項2】
前記自動化されたプロセスは、
前記ガラススライドをスライドラックから走査ステージ上に移動させるステップと、
前記ガラススライドを前記走査ステージから前記スライドラックに移動させるステップと、
1つ以上のガラススライドを格納する1つ以上のスライドラックを含むカルーセルを回転させるステップと、
のうちの1つである、
請求項1記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項3】
前記予め定められた閾値抵抗値は、ガラススライドを破損させる圧力よりも低い圧力に対応する、
請求項2記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項4】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、上面または下面に加えられる圧力に対応する、
請求項3記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項5】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、縁部面に加えられる圧力に対応する、
請求項3記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項6】
前記縁部面は、端面である、
請求項5記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項7】
前記縁部面は、側面である、
請求項5記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項8】
前記自動化されたプロセスは、
スライドラックをカルーセルから抜き取るステップと、
スライドラックを前記カルーセルに挿入するステップと、
のうちの1つである、
請求項1記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項9】
前記予め定められた閾値抵抗値は、一対のグリッパーフィンガーの把持部から前記スライドラックを引き抜くのに要する力よりも小さい力に対応する、
請求項8記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項10】
前記自動化されたプロセスは、スライドラックを把持するステップである、
請求項1記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項11】
前記モーターは、ステップモーターであり、前記予め定められた閾値抵抗値は、前記モーターにステップをスキップさせるのに要する力よりも小さい力に対応する、
請求項8記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項12】
自動化されたプロセス中にガラススライドを移動させるようにモーターを制御するために1つ以上のプロセッサを使用するステップと、
前記ガラススライドの移動中に、前記モーターの負荷抵抗値を決定するために前記1つ以上のプロセッサを使用するステップと、
前記負荷抵抗値を、予め定められた閾値抵抗値と比較するために前記1つ以上のプロセッサを使用するステップと、
前記負荷抵抗値が前記予め定められた閾値抵抗値を超えたことの決定に応じて、前記ガラススライドの移動を停止するように前記モーターを制御するために前記1つ以上のプロセッサを使用するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記自動化されたプロセスは、
前記ガラススライドをスライドラックから走査ステージ上に移動させるステップと、
前記ガラススライドを前記走査ステージから前記スライドラックに移動させるステップと、
1つ以上のガラススライドを格納する1つ以上のスライドラックを含むカルーセルを回転させるステップと、
のうちの1つである、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記予め定められた閾値抵抗値は、ガラススライドを破損させる圧力よりも低い圧力に対応する、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、上面または下面に加えられる圧力に対応する、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、縁部面に加えられる圧力に対応する、
請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記縁部面は、端面である、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記縁部面は、側面である、
請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記自動化されたプロセスは、
スライドラックをカルーセルから抜き取るステップと、
スライドラックを前記カルーセルに挿入するステップと、
のうちの1つである、
請求項12記載の方法。
【請求項20】
前記予め定められた閾値は、一対のグリッパーフィンガーの把持部からスライドラックを引き抜くのに要する力よりも小さい力に対応する、
請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記自動化されたプロセスは、スライドラックを把持するステップである、
請求項12記載の方法。
【請求項22】
前記モーターは、ステップモーターであり、前記予め定められた閾値抵抗値は、前記モーターにステップをスキップさせるのに要する力よりも小さい力に対応する、
請求項20記載の方法。
【請求項23】
デジタルスライド走査装置であって、前記デジタルスライド走査装置は、
複数のモーターを含み、前記各モーターは、
自動化されたプロセス中に1つ以上の部品の移動を駆動し、
移動を駆動するときに負荷抵抗値を生成するように構成され、
前記デジタルスライド走査装置は、1つ以上のプロセッサを含み、
前記1つ以上のプロセッサは、
前記複数のモーターの各々毎に予め定められた閾値抵抗値を設定し、ここで、少なくとも2つの予め定められた抵抗値は等しくなく、
第1の自動化されたプロセス中に移動を駆動するように前記複数のモーターのうちの第1のモーターを制御し、
第1の自動化されたプロセスの開始後、前記第1のモーターによって生成された第1の負荷抵抗値を監視し、
前記第1の負荷抵抗値を、前記第1のモーターに対応する第1の予め定められた閾値抵抗値と比較し、
前記第1の負荷抵抗値が前記第1の予め定められた閾値抵抗値を超えたことの決定に応じて、移動の駆動を停止するように前記第1のモーターを制御し、
第2の自動化されたプロセス中に移動を駆動するように前記複数のモーターのうちの第2のモーターを制御し、
第2の自動化されたプロセスの開始後、前記第2のモーターによって生成された第2の負荷抵抗値を監視し、
前記第2の負荷抵抗値を、前記第2のモーターに対応する第2の予め定められた閾値抵抗値と比較し、
前記第2の負荷抵抗値が前記第2の予め定められた閾値抵抗値を超えたことの決定に応じて、移動の駆動を停止するように前記第2のモーターを制御する、
ように構成されている、
デジタルスライド走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月6日に出願された米国仮特許出願第62/883,581号の優先権を主張し、その全開示は参照により、全体が説明されているように本明細書に組み込まれる。付加的に、本出願は、以下の出願にも関連しており、それぞれの全開示は参照により、全体が説明されているように本明細書に組み込まれる。
2016年9月23日に出願された国際出願PCT/US2016/053581
2017年4月20日に出願された国際出願PCT/US2017/028532
2018年11月30日に出願された国際出願PCT/US2018/063456
2018年11月30日に出願された国際出願PCT/US2018/063460
2018年11月30日に出願された国際出願PCT/US2018/063450
2018年11月30日に出願された国際出願PCT/US2018/063461
2018年11月27日に出願された国際出願PCT/US2018/062659
2018年11月30日に出願された国際出願PCT/US2018/063464
2018年10月4日に出願された国際出願PCT/US2018/054460
2018年11月30日に出願された国際出願PCT/US2018/063465
2018年10月4日に出願された国際出願PCT/US2018/054462
2018年11月30日に出願された国際出願PCT/US2018/063469
2018年10月4日に出願された国際出願PCT/US2018/054464
2018年8月17日に出願された国際出願PCT/US2018/046944
2018年10月4日に出願された国際出願PCT/US2018/054470
2018年9月28日に出願された国際出願PCT/US2018/053632
2018年9月28日に出願された国際出願PCT/US2018/053629
2018年9月28日に出願された国際出願PCT/US2018/053637
2018年11月28日に出願された国際出願PCT/US2018/062905
2018年11月29日に出願された国際出願PCT/US2018/063163
2017年12月29日に出願された国際出願PCT/US2017/068963
2019年3月1日に出願された国際出願PCT/US2019/020411
2017年12月29日に出願された米国特許出願第29/631,492号
2017年12月29日に出願された米国特許出願第29/631,495号
2017年12月29日に出願された米国特許出願第29/631,499号
2017年12月29日に出願された米国特許出願第29/631,501号。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的にはデジタル病理学装置に関し、より詳細には、デジタル病理学装置内の個々のガラススライドの自動化された処理に関する。
【背景技術】
【0003】
デジタル病理学は、物理的なガラススライドから生成される情報の管理を可能にするコンピュータ技術によって可能になる画像ベースの情報環境である。デジタル病理学の一部は、標本を準備し、物理的なガラススライド上に標本を配置し、次いで、物理的なガラススライド上の標本を走査し、コンピュータモニタ上で保存し、表示し、管理し、分析することが可能なデジタルスライド画像を作成する仮想顕微鏡検査によって可能となる。ガラススライド全体を画像化する機能により、デジタル病理学の分野は爆発的に拡大し、現在は、ガンやその他の重要な疾患のより良く、より早く、より安価な診断、予後予測を達成するための、診断医学の最も有望な手段の1つと見なされている。
【0004】
デジタル病理学装置により処理されるガラススライドは非常に壊れやすく、高価である。これらのガラススライドは、自動化されたデジタル病理学装置においては保護する必要がある。場合によってはデジタル病理学装置内の第1の処理ステーションと第2の処理ステーションとの間を移動中のガラススライドが不適切に配置され、動かなくなったり、詰まったり、何らかの構造物と衝突したり、さもなければ動作中に抵抗に遭遇したりして、ガラススライドが損傷したり、破損しかねない場合がある。したがって、ここで必要とされていることは、上記のような従来のシステムに見られるこれらの重要な課題を克服するシステムおよび方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本明細書に記載されているのは、ガラススライドが損傷するリスクがあるかどうかを決定し、次いで、ガラススライドの損傷を防ぐためにデジタル病理学装置内の移動を無効にするように構成された、デジタル病理学装置と共に使用するためのストール検出システムである。
【0006】
1つの態様では、デジタルスライド走査装置は、モーターを含み、該モーターは、自動化されたプロセス中にガラススライドを移動させ、ガラススライドを移動させるときに負荷抵抗値を生成するように構成されている。デジタルスライド走査装置は、1つ以上のプロセッサも含み、該1つ以上のプロセッサは、予め定められた閾値抵抗値を設定し、自動化されたプロセス中にガラススライドを移動させるようにモーターを制御し、自動化されたプロセス中に負荷抵抗値を監視するように構成されている。該1つ以上のプロセッサは、負荷抵抗値を予め定められた閾値抵抗値と比較し、負荷抵抗値が、予め定められた閾値抵抗値を超えた場合に、ガラススライドの移動を停止するようにモーターを制御するようにも構成されている。
【0007】
1つの態様では、デジタルスライド走査装置によって実行される方法は、自動化されたプロセス中にガラススライドを移動させるようにモーターを制御するステップと、自動化されたプロセス中にガラススライドが移動している間のモーターの負荷抵抗値を決定するステップとを含む。本方法はまた、負荷抵抗値を、予め定められた閾値抵抗値と比較するステップと、負荷抵抗値が予め定められた閾値抵抗値を超えた場合に、ガラススライドの移動を停止するステップとを含む。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を再考した後、当業者にとってさらにより容易に明らかになるであろう。
【0008】
本発明の構造および動作は、以下の詳細な説明および添付の図面の再考から理解され、図面中、同一の参照符号は同一の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による例示的なガラススライドを示す斜視図である。
図2A】本発明の一実施形態による例示的なストール検出閾値を示すグラフ図である。
図2B】本発明の一実施形態による、デジタル病理学装置における潜在的な障害物を検出するための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図3A】本発明の一実施形態によるガラススライドを搬送するカルーセル装置を駆動する例示的なモーターを示す斜視図である。
図3B】本発明の一実施形態によるガラススライドを搬送するカルーセル装置を駆動する例示的なモーターを示す斜視図である。
図3C】本発明の一実施形態によるガラススライドを搬送するカルーセル装置を駆動する例示的なモーターを示す斜視図である。
図4A】本発明の一実施形態によるガラススライドを搬送するグリッパー装置を駆動する例示的なモーターを示した斜視図である。
図4B】本発明の一実施形態によるガラススライドを搬送するグリッパー装置を駆動する例示的なモーターを示した斜視図である。
図4C】本発明の一実施形態によるガラススライドを搬送するグリッパー装置を駆動する例示的なモーターを示した斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による、ガラススライドを搬送するリフト装置を駆動する例示的なモーターを示す斜視図である。
図6A】本発明の一実施形態による、ガラススライドを搬送するプッシュプル装置を駆動する例示的なモーターを示す斜視図である。
図6B】本発明の一実施形態による、ガラススライドを搬送するプッシュプル装置を駆動する例示的なモーターを示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態による、ガラススライドを搬送するステージ装置を駆動する例示的なX-Yモーターを示す上面図である。
図8】本発明の一実施形態による、対物レンズ装置を駆動する例示的なZモーターを示す斜視背面図である。
図9】本発明の一実施形態による、Zモーターによって駆動される例示的な対物レンズ装置を示す斜視正面図である。
図10A】本明細書に記載の様々な実施形態と関連して使用されてよい例示的なプロセッサ使用可能デバイス550を示すブロック図である。
図10B】単一の線形アレイを有する例示的なライン走査カメラを示すブロック図である。
図10C】3つの線形アレイを有する例示的なライン走査カメラを示すブロック図である。
図10D】複数の線形アレイを有する例示的なライン走査カメラを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に開示される実施形態は、モーターの動力下でガラススライドを第1のポイントから第2のポイントに搬送するように構成され、ガラススライドが潜在的に損傷する可能性がある時期を識別するためのストール検出監視機能を備えたデジタル病理学装置を提供する。この説明を読んだ後は、当業者にとって、様々な代替的な実施形態および代替的用途において本発明をどのように実装することができるかが明らかになるであろう。しかしながら、本発明の様々な実施形態が本明細書で説明されるが、これらの実施形態は、例示としてのみ提示され、限定ではないことが理解されるであろう。そのように、様々な代替的な実施形態のこの詳細な説明は、添付の特許請求の範囲に記載されているように、本発明の範囲または広さを限定するものとして解釈されるべきではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による例示的なガラススライド10を示す斜視図である。図示の実施形態において、スライド10は、2つの端面20、2つの側面25および上面および下面35からなる4つの縁部を含む。スライド10などのガラススライドは、非常に壊れやすく、高価である。1つ以上の標本が配置されたガラススライドは非常に高価である高価である。
【0012】
ガラススライド10の性質は、それが容易に損傷または破損するなどで表される。特に、端面20の方向からスライド10に第1の力を加えると、スライド10が損傷または破損する場合がある。同様に、側面25の方向からスライド10に第2の力を加えると、スライド10が損傷または破損する場合があり、さらに、上面30または下面35の方向からスライド10に第3の力を加えると、スライド10が損傷または破損する場合がある。重要なのは、スライド10が損傷または破損するのに要する第1、第2、および第3の力の量が等しくないことである。
【0013】
図2Aは、本発明の一実施形態による、例示的なストール検出閾値50を示すグラフ図である。図示の実施形態において、デジタル病理学装置内のプロセッサは、ガラススライドを移動させるように動作しているデジタル病理学装置内のモーターからの信号を監視する。モーターからの信号は、ストール状況の発生を識別し、ストール状況においてモーターによって加えられている力の量を付加的に決定するために分析される。モーターによって加えられた力の量が閾値50に達するかまたはそれを超えると、プロセッサは、力の印加を停止するようにモーターを制御し、それによってガラススライドの移動の試みを停止するように構成されている。有利には、閾値は、力が加えられるスライドの表面に依存して設定される。したがって、スライドの上面または下面に加えられる力の閾値は、スライドの側面に加えられる力の閾値よりも小さくてよく、次いでこの閾値は、スライドの端面に加えられる力の閾値よりも小さくすることができる。
【0014】
プロセッサが力の印加を停止するようにモーターを制御する場合の状況では、回復ルーチンが、既知の状態へのリセットおよび移動の再開の試みのために採用されてよく、あるいは操作者に介入のために通知されてもよい。このようにして、ガラススライドが損傷や破損から保護され、付加的に、操作者、スライドラック、ならびにデジタル病理学装置内のモーターやその他の可動部品もストール状況において保護される。
【0015】
有利には、上記および本明細書に記載の特徴は、操作者、ガラススライド、標本、ならびにモーターの動力下でガラススライドを第1のポイントから第2のポイントに搬送するように構成された任意のデジタル病理学装置の機械的コンポーネントに対する信頼性、回復性、および安全性を高める。重大なエラーの発生前にストール状況を識別し、次いで、危機的状況を未然に防ぐデジタル病理学装置の能力は非常に高価である。さらに、機械的デバイスを、ストール状況を検出し、そのようなストール状況から安全で既知の状態/位置に回復することによって、高価なガラススライドの損傷または破損を回避するように構成することは、デジタル病理学装置のワークフローを能率化させ、信頼性、および機械軸や他のコンポーネントの寿命を高める。
【0016】
図示の実施形態では、閾値は、重大なエラーが発生する前にストール状況を識別するために適切なマージンで設定される。ストール状況イベントには、スライドが装填中にステージと衝突する、スライドラックが搬送中にグリッパーフィンガーから外れる、ユーザが回転の際にカルーセルに介入する、または潜在的にガラススライドに損傷を与える他の多くの状況が含まれ得る。潜在的なストール状況毎の閾値は、通常動作中のモーターから力を加えている間に望ましくない障害(例えばスライドの破損など)を結果としてもたらす実験的な力の測定によって計算される。デジタル病理学装置内の様々な動きに適切な閾値を設定することで、重大なエラーの発生前にストール状況の検出が可能になる。
【0017】
1つの実施形態では、閾値は、かなりの数のデジタル病理装置およびかなりの数のモーターにわたって実行されたかなりの数の試験および評価に基づいて計算された平均閾値であってよい。代替的な実施形態では、閾値は、各機械および各モーター固有のものである場合もある。例えば、個々のモーターは、同じタイプのモーター(例えば、同じ部品番号)である場合でも、それらにおける摩擦やモーターの動作に対する他の障害が異なり、重大なエラー発生前のストール状況の閾値を異ならせる場合がある。したがって、1つの実施形態では、デジタル病理学装置は、ガラススライドを損傷させる可能性のある移動を駆動する装置内の複数のモーターの各々毎にストール状況閾値を決定するように構成されている。
【0018】
図示の実施形態では、特定の軸に沿ったモーターによる対象移動の運動プロファイルは、ストール状況の検出にとって重要である。例えば、低速および高速では、モーターからの負荷抵抗フィードバック値を測定することは困難である。加速および/または減速中も、モーターからの負荷抵抗フィードバック値は、定速時ほどの信頼性はない。したがって、様々な軸運動のための閾値は、十分なマージンでストール状況を首尾よく検出し、処理を遅くする誤った停止や、ガラススライドを損傷または破損させる誤った継続がないことを保証するために最適化される。
【0019】
付加的に、ストール検出は、軸の機械的設計のために、かつ/または衝突の潜在的相互作用のために、デジタル病理学装置内で可能性のあるすべての動きに対して必ずしも適切でないまたは望ましくない場合がある。例えば、誤ったストール状況を特定する確率が、重大なエラーが発生する確率よりも高い場合や、真のストール状況を特定する確率よりも高い場合がある。そのような例の1つは、デジタル病理学装置のリフト軸であり、これは、機械的負荷が高く、ラック内のスライドが水平である間にスライドを上下に搬送する。ラックに水平に載置されているスライドを破損させるのに要する力は、リフト軸の機械的負荷や変動に比べてわずかである。したがって、1つの実施形態では、ストール状況の検出は、リフトシステムでは有効にされない場合がある。
【0020】
さらに、ストール状況がひとたび識別されると、デジタル病理学装置によって実行される次のステップは、デジタル病理学装置の安全で信頼性の高い動作にとっても重要であり得る。例えば、デジタル病理学装置は、ストール状況を検出し、回復のために操作者の介入を必要とする重大なエラーを通知する場合がある。代替的な例では、デジタル病理学装置は、ストール状況を検出し、動きの再試行と要素位置をリセットし、あるいは動きの様々な組み合わせを行うか、これらの任意の組み合わせを行うようにプログラミングされたルーチンを実行することによって、ならびにデジタル病理学装置を検出されたストール状況から安全に回復させ、操作者の介入なしで次の動作につなぐことを可能にする他の可能な修復アクションを行うことによって自動的に回復させることができる。
【0021】
図2Bは、本発明の一実施形態による、デジタル病理学装置における潜在的な障害物を検出するための例示的なプロセスを示すフローチャートである。一実施形態では、プロセスは、デジタル病理学装置プロセッサもしくは他のコントローラの制御下でモーターを駆動するモーターおよびマイクロプロセッサをそれぞれが含んでいる個々のモーターアセンブリを含む、図10A図10Dに関連して後で説明する装置などのデジタル病理学装置に実装することができる。最初に、ステップ95では、閾値が設定される。上記のように、閾値は、複数のモーターおよび複数の装置にわたる総平均に従って設定されてよい。代替的に、閾値は、各装置のモーター毎に設定されてもよい。
【0022】
次に、ステップ100では、デジタル病理学装置のプロセッサは、スライドを直接的(例えば要素がステージである場合)または間接的(例えば要素がスライドラックカルーセルである場合)に搬送するように構成されたデジタル病理学装置内の要素の移動を開始するようにモーターを制御する。1つの実施形態では、デジタル病理学装置のプロセッサは、二次プロセッサ(例えばモーターアセンブリ内のマイクロプロセッサ)に、移動の駆動を開始するようにモーターを制御させる指示が可能である。スライドを搬送するように構成された例示的な要素には、ほんの数例を挙げると、スライドラックカルーセル装置、スライドラックグリッパー装置、スライドラックリフト装置、スライドプッシュプル装置、およびスライドステージ装置が含まれるが、これらに限定されるわけではない。ガラススライドの存在のもとで移動するように構成され、したがってガラススライドを損傷する可能性がある例示的な要素は、対物レンズである。様々な実施形態では、デジタル病理学装置は、組織プロセッサ、組織埋め込み器、マイクロトマー、スライド染色器、カバースリッパ、およびデジタルスライドスキャナのいずれかを含むことができる。
【0023】
次に、ステップ105では、プロセッサによって、制御されているモーターからのフィードバックが受信され、分析される。一実施形態において、分析されるフィードバックは、モーターからの負荷抵抗フィードバック値(本明細書では負荷抵抗値とも称される)である。例えば、ステップモーターの実際の位置と、プロセッサによって計算されたステップモーターの位置との間に差がある場合、一実施形態では、いくらかの負荷抵抗が存在する。一実施形態では、モーターアセンブリは、負荷抵抗を監視し、存在する負荷抵抗の量を決定するマイクロコントローラを含む。例えば、一実施形態では、ボックス150内に示されるステップは、このマイクロコントローラによって実行される。したがって、このマイクロコントローラまたは別のプロセッサは、ステップ105において、存在する負荷抵抗の量を分析して負荷抵抗の量を閾値と比較し、ステップ110において、負荷抵抗値が予め定められた閾値を超えたかどうかを決定する。有利には、予め定められた閾値は、ガラススライドを損傷または破損させるのに要する負荷抵抗値に対応する力の量よりわずかに低く設定される。一実施形態では、ガラススライドを損傷または破損させるのに要する力の量は、力が加えられているガラススライドの面、例えば、上面、下面、端面、または側面に関連して決定される。負荷抵抗値が予め定められた閾値を超えない場合、プロセッサは、モーターフィードバックを分析し、負荷抵抗値を所定の閾値と比較することを継続する。
【0024】
次に、ステップ115では、負荷抵抗値が予め定められた閾値を超えた場合に、マイクロコントローラまたは別のプロセッサは、ストール状況を識別し、次いで、ステップ120において、マイクロコントローラまたは別のプロセッサは、モーターを停止させるように制御する。これは、有利には、ガラススライドに加えられる過度の力による損傷または破損からガラススライドを保護する。次に、ステップ125では、マイクロコントローラまたは別のプロセッサは、ストール状況の緩和を試みるために、回復ルーチンを任意選択的に実行することができる。回復ルーチンには、機械的要素の移動を反転させること、既知の位置からやり直しを試みることが含まれる場合がある。付加的および代替的な回復ルーチンが採用されてもよい。付加的に、任意選択的なステップ125の前、後、または並行して、プロセッサは、ステップ130において、任意選択的にストール状況を操作者に通知することができ、それによって、操作者はストール状況を緩和させることができる。
【0025】
図3A図3Cは、本発明の一実施形態による、ガラススライド220を搬送するカルーセル210装置を駆動する例示的なモーター200を示す斜視図である。図示の実施形態では、カルーセル210は環状に回転し、モーターからの負荷抵抗フィードバック値は、カルーセル210の環状の回転に対する負荷抵抗によって決定される。閾値は、ガラススライドの側面に加えられる場合のガラススライドの損傷または破損に要する力よりもわずかに低く設定される。回復ルーチンには、カルーセル210の円運動を反転させ、次いで、カルーセル210を元の方向に回転させようとする再度の試みが採用されてもよい。一実施形態では、増加し、変化し得る逆距離が、回復ルーチンの複数の試みにおいて採用されてもよい。代替的な回復ルーチンでは、単に停止してから元の方向への移動を再試行することが採用されてもよい。
【0026】
図4A図4Cは、本発明の一実施形態による、スライドラック280内のガラススライド220を搬送するグリッパー270装置を駆動する例示的なモーター250,260を示す斜視図である。図示の実施形態では、グリッパー270は、外側に伸びてガラススライド220を含むスライドラック280の側面を把持する。スライドラック280を把持するとき、モーター250によって加えられる力の方向は、スライドラック280内でガラススライドの側面に向かう方向である。スライドラック280がグリッパー270の把持部に固定されると、グリッパー270は、スライドラックをカルーセルから抜き取るか、またはスライドラックをカルーセルに挿入する。スライドラック280を取り外すまたは取り替えるとき、モーター260によって加えられる力の方向は、スライドラック280内のガラススライド220の端面に向かう方向である。
【0027】
したがって、スライドラック280を把持する場合、モーター250の負荷抵抗フィードバック値は、スライドラック280に向かう方向および相互に向かい合う方向のグリッパーフィンガーの線形移動の負荷抵抗によって決定される。閾値は、ガラススライドの側面に加えたときにガラススライドを損傷または破損させるのに要する力よりもわずかに低く設定されている。回復ルーチンでは、グリッパーフィンガーの線形運動を反転させ、次いで、サイドラック280の把持を再試行することが採用されてもよい。代替的に、回復ルーチンが採用されなくてもよい。
【0028】
同様に、スライドラック280を取り外すまたは取り替える場合、モーター260からの負荷抵抗フィードバック値は、カルーセルに向かう方向またはカルーセルから離れる方向のグリッパー270装置の線形移動の負荷抵抗によって決定される。閾値は、グリッパーがスライドラックを保持しているときに、スライドラックをグリッパーフィンガーから引き抜くのに要する力よりもわずかに低く設定されている。任意選択的な回復ルーチンでは、グリッパー270をカルーセルに向かう方向またはカルーセルから離れる方向に移動させること、カルーセルを左右に移動させること、グリッパーフィンガーを相互に向かう方向または相互に離れる方向に移動させること、リフトを上下に移動させることのうちの任意の組み合わせが採用されてもよい。
【0029】
図5は、本発明の一実施形態による、ガラススライド220を搬送するリフト310装置を駆動する例示的なモーター300を示す斜視図である。図示の実施形態において、スライドラック280は、ガラススライド220を搬送し、リフト310は、スライドラック280内のスライド220を走査ステージのレベルまで搬送する。モーター300の負荷抵抗フィードバック値は、リフト310の線形移動の負荷抵抗によって決定される。閾値は、ガラススライド220の上面または下面に加えられたときにガラススライドを損傷または破損させるのに要する力よりもわずかに低く設定される。回復ルーチンでは、リフト310の線形移動を反転させ、次いで、スライドラック280の元の方向への搬送を再試行することが採用されてもよい。代替的に、回復ルーチンでは、スライドラックをカルーセルに向かう方向に移動させることが採用されてもよい。
【0030】
図6A図6Bは、本発明の一実施形態による、スライドラック280と走査ステージ370との間でガラススライド220を取り外して取り替えるプッシュプル360装置を駆動する例示的なモーター350を示す斜視図である。一実施形態では、ガラススライド220を走査ステージ370に配置し、ガラススライド220をスライドラック280に戻すことは、デジタルスライドスキャナタイプのデジタル病理学装置におけるガラススライドにとって最も危険な環境である。図示の実施形態では、スライドラック280は、走査ステージ370に隣接して位置決めされ、プッシュプル360は、第1のスライドを走査ステージ370に押し込む。その後、プッシュプル360は、第1のスライドを走査ステージ370からスライドラック280に引き戻す。モーター350の負荷抵抗フィードバック値は、プッシュプル360の線形移動に対する負荷抵抗によって決定される。閾値は、ガラススライド220の端面に加えたときにガラススライドを損傷または破損させるのに要する力よりもわずかに低く設定される。一実施形態では、モーター350の負荷抵抗フィードバック値は、注意深く監視され、移動の開始から所定の距離内で閾値と比較される(例えば、モーターステップカウントまたは時間によって決定される)。なぜなら、ストール状況の可能性がこの所定の距離内で増加するからである。回復ルーチンでは、ガラススライド220をスライドラックに引き戻すこと、ガラススライド220をステージ370に押し戻すこと、ステージ370を前後もしくは左右に移動させること、またはスライドラック280を上下に移動させることのうちの任意の組み合わせが採用されてもよい。
【0031】
図7は、本発明の一実施形態による、ガラススライド220を運ぶステージ370装置を駆動する例示的なX-Yモーター400を示す上面図である。図示の実施形態では、ガラススライド220は、ステージ370上で位置決めされ、ステージは、スライド220を受け取り、走査し、スライドラックに取り替えるときにX-Y方向に移動する。モーター400の負荷抵抗フィードバック値は、ステージ370のXまたはY方向の線形運動に対する負荷抵抗によって決定される。第1の閾値は、XまたはY方向に移動する際にガラススライド220の側面に加えられたときにガラススライドを損傷または破損させるのに要する力よりもわずかに低く設定され、第2の閾値は、他方のXまたはY方向に移動する際にガラススライド220の端面に加えられたときにガラススライドを損傷または破損させるのに要する力よりもわずかに低く設定される。回復ルーチンでは、ガラススライド220をスライドラックに引き戻すこと、ガラススライド220をステージ370に押し戻すこと、ステージ370を前後もしくは左右に移動させること、またはスライドラック280を上下に移動させることのうちの任意の組み合わせが採用されてもよい。
【0032】
図8は、本発明の一実施形態による対物レンズ装置を駆動する例示的なZモーター450を示す斜視背面図である。動作中に、ガラススライドは、ガラススライド上の標本の走査において、拡大に使用される対物レンズの下方のステージ上で位置決めされる。図示の実施形態では、Zモーター450は、マウント455の背面に位置決めされ、対物レンズをZ方向で上下に移動させ、ステージ上のガラススライドに向かう方向およびガラススライドから離れる方向に移動させるように構成されている。モーター450の負荷抵抗フィードバック値は、対物レンズ470の線形運動に対する負荷抵抗によって決定される。閾値は、ガラススライドの上面に加えられたときにガラススライドを損傷または破損させるのに要する力よりもわずかに低く設定される。回復ルーチンでは、対物レンズをZ軸で上下に移動させること、またはステージを前後もしくは左右に移動させることのうちの任意の組み合わせが採用されてもよい。
【0033】
図9は、本発明の一実施形態による、Zモーターによって駆動される例示的な対物レンズ装置460を示す斜視正面図である。動作中に、ガラススライドは、ガラススライド上の標本の走査において、拡大に使用される対物レンズ470の下方のステージ上で位置決めされる。図示の実施形態では、対物レンズ装置460は、Zモーター450の反対側のマウントの側方に固定される。対物レンズ装置460は、対物レンズ470、ブラケット480、およびエンコーダ490を含む。ブラケット480は、対物レンズ470を固定位置に固定し、Zモーター450によってZ方向に移動されるように構成されている。位置エンコーダ490は、対物レンズの位置を決定するように構成されている。上記のように、Zモーター450は、対物レンズをステージ上のガラススライドに向かう方向またはガラススライドから離れる方向に移動させるように構成されている。モーター450の負荷抵抗フィードバック値は、対物レンズ470の線形運動に対する負荷抵抗によって決定される。閾値は、ガラススライドの上面に加えられたときにガラススライドを損傷または破損させるのに要する力よりもわずかに低く設定される。回復ルーチンでは、対物レンズをZ軸で上下に移動させること、またはステージを前後もしくは左右に移動させることのうちの任意の組み合わせが採用されてもよい。
【0034】
例示的な実施形態
一実施形態では、デジタル病理学装置は、モーターを含み、該モーターは、自動化されたプロセス中にガラススライドを移動させ、ガラススライドを移動させるときに負荷抵抗フィードバック値を生成するように構成されている。この装置は、1つ以上のプロセッサも含み、該1つ以上のプロセッサは、自動化プロセス中にガラススライドを移動させるようにモーターを制御し、自動化されたプロセスの開始後、負荷抵抗フィードバック値を受信し、この負荷抵抗フィードバック値を予め定められた閾値と比較し、負荷抵抗フィードバック値が予め定められた閾値を超えたことの決定に応じて、ガラススライドの移動を停止するようにモーターを制御するように構成されている。
【0035】
この実施形態では、自動化されたプロセスは、ガラススライドをスライドラックから走査ステージ上に移動させるステップ、ガラススライドを走査ステージからスライドラックに移動させるステップ、1つ以上のガラススライドを格納する1つ以上のスライドラックを含むカルーセルを回転させるステップ、スライドラックをスライドラックカルーセルから抜き取るステップ、スライドラックをスライドラックカルーセルに挿入するステップ、スライドラックを走査ステージレベルまで持ち上げるステップ、スライドラックを把持するステップ、およびガラススライドを走査するステップのうちの1つであってよい。
【0036】
この実施形態では、予め定められた閾値は、ガラススライドを破損させる圧力よりも低い圧力に対応し得る。ガラススライドを破損させる圧力は、上面または下面に加えられる圧力や縁部面に加えられる圧力に対応し得る。ここで、縁部面は、短い縁部面(端面)、あるいは縁部面は、長い縁部面(側面)である。
【0037】
この実施形態では、予め定められた閾値は、一対のグリッパーフィンガーの把持部からスライドラックを引き抜くのに要する力よりも小さい力に対応し得る。
【0038】
この実施形態では、モーターは、ステップモーターであってよく、予め定められた閾値は、モーターにステップをスキップさせるのに要する力よりも小さい力に対応し得る。
【0039】
一実施形態では、方法は、自動化されたプロセス中にガラススライドを移動させるようにモーターを制御するために1つ以上のプロセッサを使用するステップと、ガラススライドの移動中に、モーターからの負荷抵抗値を決定するために1つ以上のプロセッサを使用するステップと、負荷抵抗値を、予め定められた閾値と比較するために1つ以上のプロセッサを使用するステップと、負荷抵抗値が予め定められた閾値を超えたことの決定に応じて、ガラススライドの移動を停止するようにモーターを制御するために1つ以上のプロセッサを使用するステップと、を含む。
【0040】
この方法では、自動化されたプロセスは、ガラススライドをスライドラックから走査ステージ上に移動させるステップ、ガラススライドを走査ステージからスライドラックに移動させるステップ、1つ以上のガラススライドを格納する1つ以上のスライドラックを含むカルーセルを回転させるステップ、スライドラックをスライドラックカルーセルから取り外すステップ、スライドラックをスライドラックカルーセルにおいて取り替えるステップ、スライドラックを走査ステージレベルまで持ち上げるステップ、スライドラックを把持するステップ、およびガラススライドを走査するステップのうちの1つであってよい。
【0041】
この方法では、予め定められた閾値は、ガラススライドを破損させる圧力よりも低い圧力に対応し得る。ガラススライドを破損させる圧力は、上面または下面に加えられる圧力や縁部面に加えられる圧力に対応し得る。ここで、縁部面は、短い縁部面(端面)、あるいは縁部面は、長い縁部面(側面)である。
【0042】
この方法では、予め定められた閾値は、一対のグリッパーフィンガーの把持部からスライドラックを引き抜くのに要する力よりも小さい力に対応し得る。
【0043】
この方法では、モーターは、ステップモーターであってよく、予め定められた閾値は、モーターにステップをスキップさせるのに要する力よりも小さい力に対応し得る。
【0044】
一実施形態では、デジタルスライド走査装置は、複数のモーターを含み、各モーターは、自動化されたプロセス中に1つ以上の部品の移動を駆動し、移動を駆動するときに負荷抵抗値を生成するように構成されている。この装置は、1つ以上のプロセッサも含み、該1つ以上のプロセッサは、複数のモーターの各々毎に予め定められた閾値抵抗値を設定するように構成されており、ここで、少なくとも2つの予め定められた抵抗値は等しくない。1つ以上のプロセッサは、第1の自動化されたプロセス中に移動を駆動するように複数のモーターのうちの第1のモーターを制御し、第1の自動化されたプロセスの開始後、第1のモーターによって生成された第1の負荷抵抗値を監視し、第1の負荷抵抗値を、第1のモーターに対応する第1の予め定められた閾値抵抗値と比較し、第1の負荷抵抗値が第1の予め定められた閾値抵抗値を超えたことの決定に応じて、移動の駆動を停止するように第1のモーターを制御するようにも構成されている。1つ以上のプロセッサは、さらに、第2の自動化されたプロセス中に移動を駆動するように複数のモーターのうちの第2のモーターを制御し、第2の自動化されたプロセスの開始後、第2のモーターによって生成された第2の負荷抵抗値を監視し、第2の負荷抵抗値を、第2のモーターに対応する第2の予め定められた閾値抵抗値と比較し、第2の負荷抵抗値が第2の予め定められた閾値抵抗値を超えたことの決定に応じて、移動の駆動を停止するように第2のモーターを制御するように構成されている。
【0045】
図10Aは、本明細書に記載の様々な実施形態と関連して使用されてよい例示的なプロセッサ使用可能デバイス550を示すブロック図である。このデバイス550の代替的な形態が当業者によって理解されるように使用されてもよい。図示の実施形態では、デバイス550は、1つ以上のプロセッサ555、1つ以上のメモリ565、1つ以上のモーションコントローラ570、1つ以上のインタフェースシステム575、1つ以上の試料590を有する1つ以上のガラススライド585をそれぞれが支持する1つ以上の可動ステージ580、試料を照明する1つ以上の照明システム595、光軸に沿って進む光路605をそれぞれ定める1つ以上の対物レンズ600、1つ以上の対物レンズポジショナ630、1つ以上の任意選択の落射照明システム635(例えば、蛍光スキャナシステムに含まれる)、1つ以上の集束光学系610、1つ以上のライン走査カメラ615、および/または1つ以上の領域走査カメラ620を含み、それぞれは、試料590および/またはガラススライド585上で別個の視野625を画定するデジタル撮像デバイス(本明細書では、スキャナシステムまたは走査システムとも称される)として提示される。スキャナシステム550の様々な要素は、1つ以上の通信バス560を介して通信可能に連結される。スキャナシステム550の様々な要素のそれぞれが1つ以上であってもよいが、以下の説明では簡単化のために、これらの要素は、複数形での説明が適切な情報伝達のために必要である場合を除いて、単数形で説明する。
【0046】
1つ以上のプロセッサ555は、例えば、命令を並列処理可能な中央処理ユニット(「CPU」)および別個のグラフィック処理ユニット(「GPU」)を含むことができ、あるいは1つ以上のプロセッサ555は、命令を並列処理可能なマルチコアプロセッサを含むことができる。付加的に、別個のプロセッサが、特定のコンポーネントを制御するために、または画像処理などの特定の機能を実行するために提供されてもよい。例えば、付加的なプロセッサは、データ入力を管理する補助プロセッサ、数学的浮動小数点演算を実行する補助プロセッサ、信号処理アルゴリズムの高速実行に適切なアーキテクチャを有する専用プロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ)、メインプロセッサに従属するスレーブプロセッサ(例えば、バックエンドプロセッサ)、ライン走査カメラ615、ステージ580、対物レンズ600、および/またはディスプレイ(図示せず)を制御する追加のプロセッサを含むことができる。そのような付加的なプロセッサは、別個の離散的なプロセッサであってもよく、あるいはプロセッサ555と統合されてもよい。1つの実施形態では、プロセッサは、走査ステージの移動を制御し、センサ対の起動を制御するように構成されている。プロセッサは、状況に応じて適宜、センサ対からの信号を受信および分析してガラススライドもしくはステージの有無を決定するようにも構成されている。1つの実施形態では、プロセッサは、ステージを制御し、ガラススライドの不適切な位置が決定された場合には移動を停止するように構成されている。
【0047】
メモリ565は、プロセッサ555によって実行可能なプログラムのためのデータおよび命令の記憶装置を提供する。メモリ565は、データおよび命令を記憶する1つ以上の揮発性で永続的なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、ハードディスクドライブ、および着脱可能記憶ドライブ等を含むことができる。プロセッサ555は、メモリ565に記憶された命令を実行し、スキャナシステム550の全体的な機能を実行するために、通信バス560を介してスキャナシステム550の様々な要素と通信するように構成されている。
【0048】
1つ以上の通信バス560は、アナログ電気信号を伝達するように構成された通信バス560、ならびにデジタルデータを伝達するように構成された通信バス560を含むことができる。したがって、1つ以上の通信バス560を介するプロセッサ555、モーションコントローラ570、および/またはインタフェースシステム575からの通信は、電気信号とデジタルデータの両方を含むことができる。プロセッサ555、モーションコントローラ570、および/またはインタフェースシステム575はさらに、無線通信リンクを介して、走査システム550の様々な要素のうちの1つ以上と通信するように構成されてもよい。
【0049】
モーション制御システム0は、ステージ580および対物レンズ600のXYZ方向の移動を(例えば対物レンズポジショナ630を介して)正確に制御および調整するように構成されている。モーション制御システム570は、スキャナシステム550におけるいずれか他の移動部分の移動を制御するようにも構成されている。例えば、蛍光スキャナの実施形態では、モーション制御システム570は、落射照明システム635における光学フィルタなどの移動を調整するように構成されている。
【0050】
インタフェースシステム575は、スキャナシステム550を他のシステムや操作者と結び付けることを可能にする。例えば、インタフェースシステム575は、操作者に情報を直接提供し、かつ/または操作者からの直接入力を可能にするユーザインタフェースを含むことができる。インタフェースシステム575は、走査システム550と、直接接続された1つ以上の外部デバイス(例えば、プリンタ、着脱可能記憶媒体)またはネットワーク(図示せず)を介してスキャナシステム550に接続された画像サーバシステム、操作者ステーション、ユーザステーション、および管理サーバシステムなどの外部デバイスとの間の通信およびデータ転送を促進するようにも構成されている。
【0051】
照明システム595は、試料590の一部を照明するように構成されている。照明システムは、例えば、光源および照明光学系を含むことができる。光源は、光出力を最大化する凹型反射ミラーと熱を抑制するKG-1フィルタとを有する可変強度のハロゲン光源であってもよい。光源は、いずれかのタイプのアークランプ、レーザ、または他の光源であってもよい。1つの実施形態では、照明システム595は、透過モードにおいて試料590を照明し、それによって、ライン走査カメラ615および/または領域走査カメラ620は、試料590を通じて伝送された光エネルギを感知する。代替的に、または組み合わせで、照明システム595は、反射モードにおいて試料590を照明するように構成されてもよく、それによって、ライン走査カメラ615および/または領域走査カメラ620は、試料590から反射した光エネルギを感知する。照明システム595は、光学顕微鏡検査のいずれかの既知のモードにおいて顕微鏡試料590を調べるのに適切となるように構成される。
【0052】
1つの実施形態では、スキャナシステム550は、任意選択的に、蛍光走査のためにスキャナシステム550を最適化する落射照明システム635を含む。蛍光走査とは、蛍光分子を含む試料590の走査であり、蛍光分子とは、特定の波長(励起)において光を吸収することができる光子感応性分子である。これらの光子感応性分子は、より高い波長で光を放出する(放射)。このフォトルミネセンス現象の効率は非常に低いため、放出光の量も非常に少なくなることが多い。この少量の放出光は、典型的には、試料590を走査およびデジタル化するための従来の技術(例えば、透過モード顕微鏡検査)をはばむ。有利には、スキャナシステム550の任意選択的な蛍光スキャナシステムの実施形態では、複数の線形センサアレイを含むライン走査カメラ615(例えば、時間遅延積分(「TDI」)ライン走査カメラ)の使用は、ライン走査カメラ615の複数の線形センサアレイのそれぞれに試料590の同一の領域を暴露することによって、ライン走査カメラの光への感度を増大させる。これは、特に、少量の放出光によってわずかな蛍光試料を走査するときに有用である。
【0053】
したがって、蛍光スキャナシステムの実施形態では、ライン走査カメラ615は、好適には、モノクロTDIライン走査カメラである。有利には、モノクロ画像は、それらが、試料上に存在する様々なチャネルからの実信号のより正確な表現を提供するため、蛍光顕微鏡検査においては理想的である。当業者には理解されるように、蛍光試料590は、「チャネル」とも称される、異なる波長で光を放出する複数の蛍光染料によりラベリングすることができる。
【0054】
さらに、様々な蛍光試料のローエンドおよびハイエンドの信号レベルは、ライン走査カメラ615が感知するための広い波長スペクトルを提示するため、ライン走査カメラ615が感知できるローエンドおよびハイエンドの信号レベルも同様に広いことが望ましい。したがって、蛍光スキャナの実施形態では、蛍光走査システム550に使用されるライン走査カメラ615は、モノクロの10ビット64個の線形アレイTDIライン走査カメラである。ライン走査カメラ615についての様々なビット深度が走査システム550の蛍光スキャナの実施形態に使用するために採用することができることに留意されるべきである。
【0055】
可動ステージ580は、プロセッサ555またはモーションコントローラ570の制御下で正確なXY方向の移動のために構成されている。可動ステージは、プロセッサ555またはモーションコントローラ570の制御下でZ方向の移動のために構成されてもよい。可動ステージは、ライン走査カメラ615および/または領域走査カメラによる画像データの捕捉中に、所期の位置に試料を位置決めするように構成されている。可動ステージは、走査方向において実質的に一定の速度に試料590を加速し、次いで、ライン走査カメラ615による画像データの捕捉中に、実質的に一定の速度を維持するようにも構成されている。1つの実施形態では、スキャナシステム550は、可動ステージ580上での試料590の配置を支援する高精度かつ密に調整されたX-Y格子を採用することができる。1つの実施形態では、可動ステージ580は、X軸とY軸の両方に採用される高精度エンコーダを有する線形モーターに基づくXYステージである。例えば、非常に正確なナノメートルエンコーダは、走査方向における軸上で、および走査方向と同一平面上で走査方向に垂直な方向における軸上で、かつ使用することができる。ステージは、試料590がその上に配置されるガラススライド585を支持するようにも構成されている。
【0056】
試料590は、光学顕微鏡検査によって調べられてよい任意のものとすることができる。例えば、ガラス顕微鏡スライド585は、組織および細胞、染色体、DNA、タンパク質、血液、骨髄、尿、バクテリア、気泡、生検材料を含むか、あるいは死んでいるもしくは生きている、着色されたもしくは着色されていない、ラベリングされたもしくはラベリングされていない任意の他のタイプの生物材料を含む標本用の観察基板として頻繁に使用される。試料590は、マイクロアレイとして一般的に公知の任意の試料ならびにすべての試料を含む、任意のタイプのスライドまたは他の基板上に配置されるcDNAもしくはRNAもしくはプロテインなどの任意のタイプのDNAもしくはDNA関連材料のアレイであってもよい。試料590は、マイクロタイタープレート、(例えば、96ウェルプレート)であってもよい。試料590の他の例は、集積回路基板、電気泳動レコード、ペトリ皿、フィルム、半導体材料、法医学材料、または機械加工部品を含む。
【0057】
対物レンズ600は、対物レンズポジショナ630上に取り付けられ、この対物レンズポジショナ630は、1つの実施形態では、対物レンズ600によって画定される光軸に沿って対物レンズ600を移動させる非常に正確な線形モーターを採用してもよい。例えば、対物レンズポジショナ630の線形モーターは、50ナノメートルのエンコーダを含むことができる。X,Y,Z軸におけるステージ580および対物レンズ600の相対的な位置は、走査システム550の全体的な操作のためのコンピュータ実行可能にプログラミングされたステップを含む情報および命令を記憶するためのメモリ565を採用するプロセッサ555の制御下で、モーションコントローラ570を使用して閉ループ方式で調整および制御される。
【0058】
1つの実施形態では、対物レンズ600は、望ましい最高空間分解能に対応する開口数を有する平面アポクロマート(「APO」)無限補正対物レンズであり、ここで、対物レンズ600は、透過モード照明顕微鏡検査、反射モード照明顕微鏡検査、および/または落射照明モード蛍光顕微鏡検査(例えば、Olympus 40X、0.75NAもしくは20X、0.75NA)に適切である。有利には、対物レンズ600は、色収差および球面収差に対する補正が可能である。対物レンズ600は無限補正のために、集束光学系610は、対物レンズ600上方の光路605内に配置することができ、ここで、対物レンズを透過する光ビームは平行光ビームとなる。集束光学系610は、対物レンズ600によって捕捉された光信号を、ライン走査カメラ615および/または領域走査カメラ620の光応答要素に集束させ、フィルタ、変倍レンズなどの光学コンポーネントを含むことができる。集束光学系610と組み合わされた対物レンズ600は、走査システム550のための全倍率を提供する。1つの実施形態では、集束光学系610は、チューブレンズおよび任意選択的な2Xの倍率変換器を含むことができる。有利には、この2Xの倍率変換器は、本来20Xの対物レンズ600が40Xの倍率で試料590を走査することを可能にする。
【0059】
ライン走査カメラ615は、画像素子(「画素」)の少なくとも1つの線形アレイを含む。ライン走査カメラは、モノクロまたはカラーであってよい。カラーライン走査カメラは、典型的には、少なくとも3つの線形アレイを有し、一方、モノクロライン走査カメラは、単一の線形アレイまたは複数の線形アレイを有することができる。カメラの一部としてパッケージ化されているか、または撮像電子モジュールにカスタム統合されているかに関わらず、任意のタイプの単一もしくは複数の線形アレイを使用することもできる。例えば、3つの線形アレイ(「赤-緑-青」すなわち「RGB」)カラーライン走査カメラまたは96個の線形アレイモノクロTDIが使用されてもよい。TDIライン走査カメラは、典型的には、先に撮像された標本領域からの強度データを加算することによって、出力信号における実質的により良好な信号対雑音比(「SNR」)を提供し、積分ステージの数の平方根に比例したSNRの増加をもたらす。TDIライン走査カメラは、複数の線形アレイを含み、例えば、24個、32個、48個、64個、96個、またはそれよりも多い線形アレイを有するTDIライン走査カメラが入手可能である。スキャナシステム550も、512個の画素を有するもの、1024個の画素を有するもの、および4096個もの画素を有するその他のものを含めて様々なフォーマットで製造された線形アレイをサポートしている。同様に、様々な画素サイズを有する線形アレイも、スキャナシステム550において使用することができる。任意のタイプのライン走査カメラ615を選択するための主な要件は、ステージ580の移動が、ライン走査カメラ615のライン速度と同期できることであり、それによって、ステージ580は、試料590のデジタル画像の捕捉中に、ライン走査カメラ615に対して移動させることができる。
【0060】
ライン走査カメラ615によって生成された画像データは、メモリ565の一部に記憶され、試料590の少なくとも一部の連続するデジタル画像を生成するためにプロセッサ555によって処理される。この連続するデジタル画像は、プロセッサ555によってさらに処理することができ、改正された連続するデジタル画像もメモリ565に記憶することができる。
【0061】
2つ以上のライン走査カメラ615を有する実施形態では、ライン走査カメラ615のうちの少なくとも1つは、撮像センサとして機能するように構成されたライン走査カメラ615のうちの少なくとも1つとの組み合わせで動作する集束センサとして機能するように構成することができる。集束センサは、撮像センサと同一の光軸上に論理的に位置決めすることができ、または集束センサは、スキャナシステム550の走査方向に関して撮像センサの上流側もしくは下流側に論理的に位置決めしてもよい。集束センサとして機能する少なくとも1つのライン走査カメラ615を有するそのような実施形態では、集束センサによって生成された画像データは、メモリ565の一部に記憶され、スキャナシステム550が試料590と対物レンズ600との間の相対的な距離を調節して、走査中に試料上の焦点を維持することを可能にする集束情報を生成するように1つ以上のプロセッサ555によって処理される。付加的に、1つの実施形態では、集束センサとして機能する少なくとも1つのライン走査カメラ615は、集束センサの複数の個々の画素のそれぞれが光路605に沿って異なる論理高さで位置決めされるように配向されてよい。
【0062】
動作中、スキャナシステム550の様々なコンポーネントおよびメモリ565に記憶されたプログラミングされたモジュールは、ガラススライド585上に配置された試料590の自動走査およびデジタル化を可能にする。ガラススライド585は、試料590を走査するためのスキャナシステム550の可動ステージ580上に固定して配置される。プロセッサ555の制御下で、可動ステージ580は、ライン走査カメラ615による感知のために実質的に一定の速度まで試料590を加速させ、ここで、ステージの速度は、ライン走査カメラ615のライン速度と同期される。画像データのストライプを走査した後、可動ステージ580は、試料を減速させ、実質的に完全に停止させる。次いで、可動ステージ580は、走査方向に直交して移動し、画像データの後続のストライプ、例えば、隣接するストライプの走査のために試料590を位置決めする。付加的なストライプは、その後、試料590の一部分の全体または試料590全体が走査されるまで走査される。
【0063】
例えば、試料590のデジタル走査中、試料590の連続するデジタル画像は、画像ストライプを形成するように共に組み合わされた複数の連続する視野として取得される。複数の隣接する画像ストライプも同様に、試料590の一部または全体の連続するデジタル画像を形成するように一緒に組み合わされる。試料590の走査は、垂直画像ストライプまたは水平画像ストライプを取得することを含むことができる。試料590の走査は、上方から下方、下方から上方、またはその両方(双方向)のいずれかであってよく、さらに試料上の任意のポイントから開始することができる。代替的に、試料590の走査は、左方から右方、右方から左方、またはその両方(双方向)のいずれかであってよく、さらに試料上の任意のポイントから開始することができる。付加的に、画像ストライプは、隣接方式または連続方式で取得される必要はない。さらに、結果としての試料590の画像は、試料590の全体の画像もしくは試料590の一部のみの画像であってもよい。
【0064】
1つの実施形態では、コンピュータ実行可能命令(例えば、プログラミングされたモジュールおよびソフトウェア)がメモリ565に記憶され、実行されるときに、走査システム550が本明細書に記載の様々な機能を実行することを可能にする。本明細書では、用語「コンピュータ可読記憶媒体」は、プロセッサ555による実行のためのコンピュータ実行可能命令を記憶して走査システム550に提供するために使用される任意の媒体を指すものとして使用される。これらの媒体の例は、メモリ565や、例えばネットワーク(図示せず)を介して直接的または間接的のいずれかで走査システム550と通信可能に連結される任意の着脱可能媒体または外部記憶媒体(図示せず)を含む。
【0065】
図10Bは、電荷結合素子(「CCD」)アレイとして実装されてよい、単一の線形アレイ640を有するライン走査カメラを示す。単一の線形アレイ640は、複数の個々の画素645を含む。図示の実施形態では、単一の線形アレイ640は、4096個の画素を有する。代替的な実施形態では、線形アレイ640は、さらに多くの画素またはさらに少ない画素を有することができる。例えば、一般のフォーマットの線形アレイは、512個、1024個、および4096個の画素を含む。画素645は、線形アレイ640についての視野625を画定するために直線状に配置される。視野のサイズは、スキャナシステム550の倍率に従って変化する。
【0066】
図10Cは、それぞれがCCDアレイとして実装されてよい、3つの線形アレイを有するライン走査カメラを示す。3つの線形アレイは、カラーアレイ650を形成するように組み合わされる。1つの実施形態では、カラーアレイ650内のそれぞれ個々の線形アレイは、異なる色強度、例えば、赤色、緑色、または青色を検出する。カラーアレイ650内のそれぞれ個々の線形アレイからのカラー画像データは、カラー画像データの単一の視野625を形成するように組み合わされる。
【0067】
図10Dは、それぞれがCCDアレイとして実装されてよい、複数の線形アレイを有するライン走査カメラを示す。複数の線形アレイは、TDIアレイ655を形成するように組み合わされる。有利には、TDIライン走査カメラは、先に撮像された標本領域からの強度データを加算することによって、その出力信号における実質的により良好なSNRを提供することができ、線形アレイ(積分ステージとも称される)の数の平方根に比例したSNRの増加をもたらす。TDIライン走査カメラは、より多くの様々な数の線形アレイを含むことができ、例えば、一般的なフォーマットのTDIライン走査カメラは、24個、32個、48個、64個、96個、120個、およびそれよりも多い線形アレイを含む。
【0068】
開示された実施形態の上記説明は、いずれかの当業者が発明を作成または使用することを可能にするために提供される。これらの実施形態に対する様々な補正は、当業者にとって容易に明らかとなり、本明細書で説明した一般的な原理は、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用することができる。したがって、本明細書で提示される説明および図面は、本発明の現時点で好適な実施形態を表し、ひいては本発明によって広く解釈される発明特定事項を表していることを理解されたい。さらに、本発明の範囲には、当業者にとってはわかりきった、したがって本発明の範囲を限定するものではない他の実施形態も完全に含まれることが理解されよう。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
【手続補正書】
【提出日】2022-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルスライド走査装置であって、前記デジタルスライド走査装置は、
プロセス中にガラススライドを移動させるときに負荷抵抗値を生成するように構成されているモーターと、
つ以上のハードウェアプロセッサと、
を含み、前記1つ以上のハードウェアプロセッサは
前記プロセス中に前記負荷抵抗値を監視し、
前記負荷抵抗値を、ガラススライドを破損させる圧力よりも低い圧力に対応する予め定められた閾値抵抗値と比較し、
前記負荷抵抗値が前記予め定められた閾値抵抗値を超えたことの決定に応じて、前記ガラススライドの移動を停止するように前記モーターを制御する、
ように構成されている、
デジタルスライド走査装置。
【請求項2】
記プロセスは、
前記ガラススライドをスライドラックから走査ステージ上に移動させるステップと、
前記ガラススライドを前記走査ステージから前記スライドラックに移動させるステップと、
1つ以上のガラススライドを格納する1つ以上のスライドラックを含むカルーセルを回転させるステップと、
のうちの1つである、
請求項1記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項3】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、スライドの上面または下面に加えられる圧力に対応する、
請求項1記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項4】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、スライドの縁部面に加えられる圧力に対応する、
請求項1記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項5】
前記縁部面は、端面である、
請求項4記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項6】
前記縁部面は、側面である、
請求項4記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項7】
記プロセスは、
スライドラックをカルーセルから抜き取るステップと、
スライドラックを前記カルーセルに挿入するステップと、
のうちの1つである、
請求項1記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項8】
前記予め定められた閾値抵抗値は、一対のグリッパーフィンガーの把持部から前記スライドラックを引き抜くのに要する力よりも小さい力に対応する、
請求項1記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項9】
記プロセスは、スライドラックを把持するステップである、
請求項1記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項10】
前記モーターは、ステップモーターであり、前記予め定められた閾値抵抗値は、前記モーターにステップをスキップさせるのに要する力よりも小さい力に対応する、
請求項8記載のデジタルスライド走査装置。
【請求項11】
スライド上の細胞および組織サンプルを染色するためのスライド染色装置を制御するための非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記非一時的なコンピュータ可読媒体は、ハードウェアプロセッサに、以下のステップ、すなわち、
プロセス中にモーターの負荷抵抗値を監視するステップと、
前記負荷抵抗値を、予め定められた閾値抵抗値と比較するステップであって、前記予め定められた閾値抵抗値は、ガラススライドを破損させる圧力よりも低い圧力に対応するステップと、
前記負荷抵抗値が前記予め定められた閾値抵抗値を超えたことの決定に応じて、前記ガラススライドの移動を停止するように前記モーターを制御するステップと、
を含む方法を実行させるためのプログラム命令を有する、
非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
記プロセスは、
前記ガラススライドをスライドラックから走査ステージ上に移動させるステップと、
前記ガラススライドを前記走査ステージから前記スライドラックに移動させるステップと、
1つ以上のガラススライドを格納する1つ以上のスライドラックを含むカルーセルを回転させるステップと、
のうちの1つである、
請求項11記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、スライドの上面または下面に加えられる圧力に対応する、
請求項11記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、スライドの縁部面に加えられる圧力に対応する、
請求項11記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
記プロセスは、
スライドラックをカルーセルから抜き取るステップと、
スライドラックを前記カルーセルに挿入するステップと、
のうちの1つである、
請求項11記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記モーターは、ステップモーターであり、前記予め定められた閾値抵抗値は、前記モーターにステップをスキップさせるのに要する力よりも小さい力に対応する、
請求項11記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
スライド上の細胞および組織サンプルを染色するためのスライド染色装置を制御する方法であって、
前記方法は、以下のステップ、すなわち、
プロセス中にモーターの負荷抵抗値を監視するステップと、
前記負荷抵抗値を、予め定められた閾値抵抗値と比較するステップであって、前記予め定められた閾値抵抗値は、ガラススライドを破損させる圧力よりも低い圧力に対応するステップと、
前記負荷抵抗値が前記予め定められた閾値抵抗値を超えたことの決定に応じて、前記ガラススライドの移動を停止するように前記モーターを制御するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記プロセスは、
前記ガラススライドをスライドラックから走査ステージ上に移動させるステップと、
前記ガラススライドを前記走査ステージから前記スライドラックに移動させるステップと、
1つ以上のガラススライドを格納する1つ以上のスライドラックを含むカルーセルを回転させるステップと、
のうちの1つである、
請求項17記載の方法。
【請求項19】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、スライドの上面または下面に加えられる圧力に対応する、
請求項17記載の方法。
【請求項20】
ガラススライドを破損させる前記圧力は、スライドの縁部面に加えられる圧力に対応する、
請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記モーターは、ステップモーターであり、前記予め定められた閾値抵抗値は、前記モーターにステップをスキップさせるのに要する力よりも小さい力に対応する、
請求項17記載の方法。
【国際調査報告】