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特表2022-543717レーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】レーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 28/02 20060101AFI20221006BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20221006BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20221006BHJP
【FI】
B21B28/02 Z
B23K26/00 J
B23K26/352
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539050
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 CN2020111698
(87)【国際公開番号】W WO2022041035
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010855511.7
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010855188.3
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517405840
【氏名又は名称】江▲蘇▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】符 永宏
(72)【発明者】
【氏名】何 玉洋
(72)【発明者】
【氏名】紀 敬虎
(72)【発明者】
【氏名】符 昊
(72)【発明者】
【氏名】湯 発全
(72)【発明者】
【氏名】張 航成
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168DA43
(57)【要約】
本発明は、粗面化点パラメーターと圧延ロールパラメーターにより、粗面化点分布座標セットを決定するステップと、粗面化点パラメーターによりレーザー出力Pとレーザーパルス幅λを決定するステップと、圧延ロール回転角度RAとレーザビームの圧延ロール端面までの距離Dxにより、レーザー粗面化加工領域を決定するステップと、レーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点により、レーザートリガタイミングtとレーザビーム偏向角度ηを決定するステップと、圧延ロール表面に対して粗面化点加工を施すステップと、を含むレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法を提供する。本発明は、圧延ロール展開表面の二次元無秩序均一粗面化点分布座標セットをレーザー粗面化装置加工入力パラメーターとすることによって、制御システムのハードウェア装置を簡素化すると共に、入力した座標ドットマトリクス座標パラメーターを制御システムで処理して装置の各運動部材と実行部材の制御信号に変換し、圧延ロール表面にレーザー粗面化処理を施し、無秩序均一分布の技術要求を達成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面化点パラメーターと圧延ロールパラメーターにより、粗面化点分布座標セット(x,y)を決定するステップと、
粗面化点パラメーターによりレーザー出力Pとレーザーパルス幅λを決定するステップと、
圧延ロール回転角度RAとレーザビームの圧延ロール端面までの距離Dxにより、レーザー粗面化加工領域を決定するステップと、
レーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点により、レーザートリガタイミングtとレーザビーム偏向角度ηを決定するステップと、
圧延ロール表面に対して粗面化点加工を施すステップと、を含むことを特徴とするレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法。
【請求項2】
前記の粗面化点分布座標セット(x,y)を決定するするステップは、具体的には、
正NUM角形格子をランダムに決定するステップと、
粗面化点面積占有率βと粗面化点の外円直径Dにより、格子ユニット寸法を決定するステップと、
正NUM角形格子と格子ユニット寸法で圧延ロール展開平面に対して格子区画を行って、格子中心点座標を取得して、規則均一分布座標値(Xi0,i0)とするステップと、
真性乱数生成装置によって乱数列対を生成し、乱数列対をスケーリング処理した後ランダム偏移座標値(Δxi,Δyi)を生成するステップと、
ランダム偏移座標値と規則均一分布座標値を重畳して、粗面化点分布座標セット(x,y)を取得するステップと、
取得した粗面化点分布座標セット(x,y)に対して評価指標を計算し、設定値を満たすかを判断し、設定値を満たさない場合に、格子形状を正NUM+1角形に変更し、粗面化点分布座標セット(x,y)を再度決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法。
【請求項3】
前記の粗面化点面積占有率βと粗面化点の外円直径Dにより、格子ユニット寸法を決定するステップは、具体的には、
粗面化点外円直径Dにより、粗面化点に外接する格子ユニットの面積Aを決定し、
実際面積占有率βを計算し、
【数23】
ただし、αは設定面積に対して増幅係数となり、
粗面化点面積占有率βと実際面積占有率βを比較し、実際面積占有率β<βの場合に、β≧βになるまで、面積増幅係数を再度調整し、
β≧βの場合に、格子ユニットの面積Aによって格子ユニット寸法を取得することを特徴とする請求項2に記載のレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法。
【請求項4】
乱数列対をスケーリング処理した後ランダム偏移座標値を生成するステップは、具体的には、
乱数列対から1対の乱数を抽出し、スケーリング演算方式で処理して格子ユニット内に収まるランダム偏移座標(Δxi,Δy)を取得することを特徴とする請求項2に記載のレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法。
【請求項5】
取得した粗面化点分布座標セット(x,y)に対して評価指標を計算するステップは、具体的には、
前記評価指標がドットマトリクス無秩序度の評価指標とドットマトリクス均一度の評価指標を含み、
取得した粗面化点分布座標セット(x,y)の面領域内にランダムに若干の矩形サンプリング領域を設置し、矩形中心を原点として回転して矩形サンプリング領域内に収まる点の数量を統計して一つの群の点数量データ[n、n、n、...n]を取得し、
【数24】
と統計量平均値分散D(n)を計算し、統計量の分散をドットマトリクス無秩序度の評価指標とし、
取得した粗面化点分布座標セット(x,y)の面領域でランダムにサンプリングし、サンプリング領域形状が円形又は多角形であり、サンプリング領域内に収まる点の数量を統計して一つの群の点数量データ[m、m、m、...m]を取得し、
【数25】
と統計量平均値分散D(m)を計算し、統計量の分散をドットマトリクス均一度の評価指標とし、
標準サンプルデータを採取し、統計学で取得した設定値が
【数26】
ドットマトリクス無秩序度の評価指標
【数27】
且つドットマトリクス均一度の評価指標
【数28】
の場合に、取得した粗面化点分布座標セット(x,y)が要求を満たすことを特徴とする請求項2に記載のレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法。
【請求項6】
圧延ロール回転角度RAとレーザビームの圧延ロール端面までの距離Dxにより、レーザー粗面化加工領域を決定するステップは、具体的には、
レーザビームの運動軌跡を区画するために、圧延ロール長さLをM等分し、圧延ロールの一つの回転周期内で、展開した圧延ロールをN等分し、
等分点を中心とし、L/2Mをピッチとして、圧延ロールの径方向に対して平行な上境界線Yupと下境界線Ydownを作成し、即ち、
【数29】
圧延ロール軸方向でのF-1、F+1等分線で右境界線Xrightと左境界線Xliftを作成し、即ち、
【数30】
ただし、Rは圧延ロール半径であり、Lは圧延ロール長さであり、圧延ロール回転角度RAは1等分当たりの圧延ロール回転角度であり、Dxはレーザビームの圧延ロール端面までの距離であり、
前記境界線がレーザー粗面化加工領域を形成することを特徴とする請求項1に記載のレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法。
【請求項7】
レーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点を決定するステップは、具体的には、
粗面化点分布座標セット(x,y)のうち、
【数31】
の条件を満たす粗面化点をレーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点とすることを特徴とする請求項6に記載のレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法。
【請求項8】
レーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点により、レーザートリガタイミングtとレーザビーム偏向角度ηを決定するステップは、具体的には、
レーザーが圧延ロール表面で集光する時のレーザビームの射出口から圧延ロール表面までの最短距離D_laser_rollを測定し、
レーザー粗面化加工領域内の粗面化点加工のトリガタイミングtとレーザビーム偏向角度ηを決定し、
【数32】
ただし、Rotは圧延ロールの回転速度であり、Vはレーザビームの圧延ロール軸線に沿った平行移動速度であり、V=Rot*L/Mであることを特徴とする請求項6に記載のレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延ロール表面加工の分野に関し、特に、レーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷間圧延鋼帯は、寸法が精確で、平らで直線な形状となり、表面品質に優れ、生産効率が高い等のメリットで、多くの分野に広く用いられている。冷間圧延ロール表面粗面化は高品質の薄板を生産する表面前処理技術であり、圧延工程で粗面化パターンを板材表面に転写し、冷間圧延薄板の圧伸成形性や写像鮮明性、耐食性、耐摩耗性等の向上にとって非常に重要なものとなる。
【0003】
従来から、圧延ロール表面の粗面化技術としては、レーザー粗面化、電気火花粗面化、ショットブラスト粗面化、電子ビーム粗面化等がある。ショットブラスト粗面化は、パターン品質が劣り、再現性が低く、更に塵汚染がひどく、基本的に使用されないものになった。電子ビーム粗面化の場合には、圧延ロールを高真空で回転させなければならなく、技術難度が大きく且つプロセスコストが高く、産業化大規模生産に適合するものではない。電気火花粗面化は、パターン保持性が劣り、圧延工程での鋼板可圧延量の変動を引き起こしやすく、そして、製造装置が主に輸入に依存し、ランニングコストが高い。また、重要なコア技術は装置サプライヤに独占されており、中国の冷間圧延技術とプロセス応用水準の発展進歩をひどく制限している。レーザー粗面化は、パターン品質が高く、環境に優しく、ランニングコストが適度である等のメリットによって業界に好まれている。
【0004】
レーザー粗面化は規則性と一致性の特徴を有する点で電気火花粗面化のランダム性と混乱性と異なっている。粗面化点の規則的分布によって、板材に「干渉模様」、不均一な塗油、局所的な引き裂き及び、びびり模様等の欠陥が発生する。圧延ロールで鋼帯を圧延する時に、転写することによって、板面においては長手方向に均一に分布する直線がある。従って、板は光の照射でいくつかの角度での反射が強く、その結果として、異なる角度で板面を観察すると、異なる反射効果が生じて、鋼板表面の外観に影響を及ぼしてしまって、多年来レーザーによる圧延ロール粗面化技術の大規模産業化普及応用を妨げる顕著な問題となっている。
【0005】
産業化応用における粗面化板微細穴無規則分布についての技術要求に対して、多くの専門家や学者はレーザー粗面化処理後の圧延ロール表面のパターン品質の向上をめぐって大量の仕事を行って、レーザー粗面化装置に着眼して、ランダム信号発生源によってランダム因子を加えて、パルスレーザーと圧延ロールの作用方式を制御することで、無規則分布の技術要求を実現した。
【0006】
一例としては、ランダム信号発生装置によってパルスレーザーのデューティ比と周波数を制御することで加工レーザーの射出したスポット形状を変えると共に、粗面化点の圧延ロール周方向でのピッチのランダム性を実現したレーザーによる圧延ロール表面の無秩序粗面化加工方法及び加工装置を開示する特許がある。そのメリットは粗面化点の圧延ロール円周方向でのランダム性制御可能性を実現したことであるが、そのデメリットは表面粗面化パターンに方向性があることである。
【0007】
別の例としては、無規則画像スイッチ装置によって無規則白黒画像の1、0情報スイッチを受信し、レーザー加工装置を駆動して圧延ロール表面を処理させ、無規則分布粗面化微細穴を実現する、無規則画像粗面化によって微細穴を形成するレーザーによるロール類表面の粗面化加工システム及び方法を開示する特許がある。そのメリットは圧延ロール表面の無規則粗面化微細穴が画像によって可視化されたことであるが、そのデメリットは粗面化点の密集度が低く、軸方向の粗面化分布に依然として強い規則性があり、板材塗装後に表面に縞状の色むら欠陥が発生しやすいことである。
【0008】
更に別の例としては、ランダム信号発生装置によって偽ランダム信号を生成し、レーザーパルスのランダム遅延とランダム偏向を制御し、均一且つランダムに分布する粗面化点を生成する、粗面化点の均一且つランダムな分布を実現するレーザーによる粗面化方法を開示する特許がある。そのメリットは円周方向と軸方向の二次元無秩序分布を実現し、表面粗面化パターンに方向性がある問題を解決したことであるが、そのデメリットはレーザーによる粗面化処理効果の予測と調整が不可能であることである。
【0009】
要するに、多くの専門家や学者はレーザー粗面化点のランダム分布について大量の仕事を行ったが、設計から加工処理まで、レーザー粗面化点無秩序分布を解決する完全な技術体系を形成することをまだ遂げていない。従来技術は直接レーザー粗面化装置に着眼し、ランダム信号発生装置によって偽ランダム信号を加えてレーザー発生器のレーザー照射を制御するようになっており、生成する粗面化点の制御調整が困難であると共に、粗面化点加工効率がガルバノミラーのジャイロ周波数によって制限されている。また、先に生成した白黒画像情報スイッチを無規則画像スイッチ装置によって受信する場合は、粗面化点密集度が画像画素と緊密に関係し、粗面化点密集度が低くなる傾向がある。上記の2種の技術的解決手段は産業化応用において共に問題があり、圧延ロール表面の粗面化パターンの無秩序均一分布を完全に実現することができない。
【発明の概要】
【0010】
従来技術に存在する欠点に対して、本発明はレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法を提供し、圧延ロール展開表面の二次元無秩序均一粗面化点分布座標セットをレーザー粗面化装置加工入力パラメーターとすることによって、制御システムのハードウェア装置を簡素化すると共に、入力した座標ドットマトリクス座標パラメーターを制御システムで処理して装置の各運動部材と実行部材の制御信号に変換し、圧延ロール表面にレーザー粗面化処理を施し、無秩序均一分布の技術要求を達成する。
【0011】
本発明は下記の技術的手段によって上記技術目的を実現する。
【0012】
粗面化点パラメーターと圧延ロールパラメーターにより、粗面化点分布座標セット(x,y)を決定するステップと、
粗面化点パラメーターによりレーザー出力Pとレーザーパルス幅λを決定するステップと、
圧延ロール回転角度RAとレーザビームの圧延ロール端面までの距離Dxにより、レーザー粗面化加工領域を決定するステップと、
レーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点により、レーザートリガタイミングtとレーザビーム偏向角度ηを決定するステップと、
圧延ロール表面に対して粗面化点加工を施すステップと、を含むレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法である。
【0013】
更に、前記の粗面化点分布座標セット(x,y)を決定するステップは、具体的には、
正NUM角形格子をランダムに決定するステップと、
粗面化点面積占有率βと粗面化点の外円直径Dにより、格子ユニット寸法を決定するステップと、
正NUM角形格子と格子ユニット寸法で圧延ロール展開平面に対して格子区画を行って、格子中心点座標を取得して、規則均一分布座標値(Xi0,i0)とするステップと、
真性乱数生成装置によって乱数列対を生成し、乱数列対をスケーリング処理した後ランダム偏移座標値(ΔxiΔyi)を生成するステップと、
ランダム偏移座標値と規則均一分布座標値を重畳して、粗面化点分布座標セット(x,y)を取得するステップと、を含む。
【0014】
更に、前記の粗面化点面積占有率βと粗面化点の外円直径Dにより、格子ユニット寸法を決定するステップは、具体的には、
粗面化点外円直径Dにより、粗面化点に外接する格子ユニットの面積Aを決定し、
実際面積占有率βを計算し、
【数1】
ただし、αは設定面積に対して増幅係数となり、
粗面化点面積占有率βと実際面積占有率βを比較し、実際面積占有率β<βの場合に、β≧βになるまで、面積増幅係数を再度調整し、
β≧βの場合に、格子ユニットの面積Aによって格子ユニット寸法を取得する。
【0015】
更に、乱数列対をスケーリング処理した後ランダム偏移座標値を生成するステップは、具体的には、
乱数列対から1対の乱数を抽出し、スケーリング演算方式で処理して格子ユニット内に収まるランダム偏移座標(ΔxiΔyi)を取得する。
【0016】
更に、取得した粗面化点分布座標セット(x,y)に対して評価指標を計算するステップは、具体的には、
前記評価指標がドットマトリクス無秩序度の評価指標とドットマトリクス均一度の評価指標を含み、
取得した粗面化点分布座標セット(x,y)の面領域内にランダムに若干の矩形サンプリング領域を設置し、矩形中心を原点として回転して矩形サンプリング領域内に収まる点の数量を統計して一つの群の点数量データ[n、n、n、...n]を取得し、
【数2】
と統計量平均値分散D(n)を計算し、統計量の分散をドットマトリクス無秩序度の評価指標とし、
取得した粗面化点分布座標セット(x,y)の面領域でランダムにサンプリングし、サンプリング領域形状が円形又は多角形であり、サンプリング領域内に収まる点の数量を統計して一つの群の点数量データ[m、m、m、...m]を取得し、
【数3】
と統計量平均値分散D(m)を計算し、統計量の分散をドットマトリクス均一度の評価指標とし、
標準サンプルデータを採取し、統計学で取得した設定値が
【数4】
ドットマトリクス無秩序度の評価指標
【数5】
且つドットマトリクス均一度の評価指標
【数6】
の場合に、取得した粗面化点分布座標セット(x,y)が要求を満たす。
【0017】
更に、圧延ロール回転角度RAとレーザビームの圧延ロール端面までの距離Dxにより、レーザー粗面化加工領域を決定するステップは、具体的には、
レーザビームの運動軌跡を区画するために、圧延ロール長さLをM等分し、圧延ロールの一つの回転周期内で、展開した圧延ロールをN等分し、
等分点を中心とし、L/2Mをピッチとして、圧延ロールの径方向に対して平行な上境界線Yupと下境界線Ydownを作成し、即ち、
【数7】
圧延ロール軸方向でのF-1、F+1等分線で右境界線Xrightと左境界線Xliftを作成し、即ち、
【数8】
ただし、Rは圧延ロール半径であり、Lは圧延ロール長さであり、圧延ロール回転角度RAは1等分当たりの圧延ロール回転角度であり、Dxはレーザビームの圧延ロール端面までの距離であり、
前記境界線がレーザー粗面化加工領域を形成する。
【0018】
更に、レーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点を決定するステップは、具体的には、
粗面化点分布座標セット(x,y)のうち、
【数9】
の条件を満たす粗面化点をレーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点とする。
【0019】
更に、レーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点により、レーザートリガタイミングtとレーザビーム偏向角度ηを決定するステップは、具体的には、
レーザーが圧延ロール表面で集光する時のレーザビームの射出口から圧延ロール表面までの最短距離D_laser_rollを測定し、
レーザー粗面化加工領域内の粗面化点加工のトリガタイミングtとレーザビーム偏向角度ηを決定し、
【数10】
ただし、Rotは圧延ロールの回転速度であり、Vはレーザビームの圧延ロール軸線に沿った平行移動速度であり、V=Rot*L/Mである。
【0020】
本発明の有用な効果は以下のとおりである。
1.本発明に係るレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法は、設計した粗面化点分布座標セットを直接レーザー粗面化装置の加工パラメーターに変換し、ランダム信号発生装置を増設する必要がなく、圧延ロール表面粗面化パターンの無秩序均一分布クローズドループ加工を実現し、可視化処理の効果を達成した。
2.本発明に係るレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法は、レーザー粗面化点の加工効率が100K/sに達することが可能で、従来の発明のレーザー粗面化点の加工効率を大幅に上回っている。
3.本発明に係るレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法は、レーザーパラメーターを変更することで粗面化点幾何パラメーターを精確に調整制御可能で、プロセスパラメーターデータを基に、レーザー粗面化点幾何パラメーターとレーザーパラメーターとのマッピング関係を構築し、異なる冷間圧延鋼板の生産プロセスに求められる粗面化点についての技術要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法のフローチャートである。
図2】本発明に係る粗面化点分布座標セットの設計方法のフローチャートである。
図3】本発明に係る圧延ロール充填格子の模式図である。
図4】本発明に係る格子寸法を決定するフローチャートである。
図5】本発明の規則座標と偏移座標を重畳した模式図である。
図6】本発明に係るレーザーによる圧延ロール粗面化装置の構造模式図である。
図7】本発明に係る圧延ロールが等分展開平面を一周回転した模式図である。
図8】本発明に係るtタイミングのレーザビーム点加工領域の模式図である。
図9】本発明に係るレーザビーム偏向角度を求める模式図である。
図10】本発明のレーザー粗面化加工装置の制御模式図である。
図11】無秩序度評価方法の原理である。
図12】均一度指標評価方法の原理である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明を更に説明するが、本発明の保護範囲はそれに限定されるものではない。
【0023】
高さ方向Z、圧延ロール径方向Y及び圧延ロール軸線X方向の平行移動、並びに圧延ロール中心軸Ψに沿った回転、レーザビームのη角度による偏向を実現できるといった5軸運動機能を有する図6に示すレーザー粗面化加工装置を用いた。本発明で提案された加工方法によれば、大量のドットマトリクス座標データを速やかに処理してレーザー粗面化装置の加工パラメーターを形成するという技術要求を満たし、圧延ロール表面に加工する無秩序均一粗面化点と設計したドットマトリクス座標が確実に一致することを保証でき、また、運動制御によって工作機械の主軸の回転、レーザー発生装置の平行移動を駆動し、圧延ロール表面への粗面化加工を完成する。
【0024】
図1に示すように、本発明に係るレーザーによる圧延ロール表面の無秩序均一粗面化加工方法は、下記のステップを含む。
【0025】
S01:運動パラメーター、粗面化点パラメーター及び圧延ロールパラメーターを決定する。
ここで、運動パラメーターとはレーザビームの圧延ロール軸線X方向に沿った平行移動速度Vと圧延ロールの圧延ロール中心軸Ψに沿った回転速度Rotを指し、圧延ロールの長さLをM等分し、等分された圧延ロールはいずれも一周回転する必要がある。
圧延ロール軸線X方向の平行移動速度VとΨ軸回転速度Rotの関係を構築する。
Rot=MV/L
粗面化点パラメーター:粗面化点形状、粗面化点外円直径D、粗面化点突起高さH及び粗面化点面積占有率β
圧延ロールパラメーター:圧延ロール半径Rと圧延ロール長さL。
【0026】
S02:図2に示すように、粗面化点パラメーターと圧延ロールパラメーターにより、粗面化点分布座標セット(x,y)を決定する。
S02.1:正NUM角形格子をランダムに決定する。図3に示すように、正NUM角形格子は正三角形であってもよいし、正四角形であってもよいし、正六角形であってもよい。
S02.2:図4に示すように、粗面化点面積占有率βと粗面化点の外円直径Dにより、格子ユニット寸法を決定する。具体的には、
粗面化点外円直径については、特定のレーザーパラメーターで加工する単一の粗面化点のパターンとして主に球冠粗面化点と火山噴火口粗面化点の2種があり、同一のパラメーターで加工する複数の粗面化点外円直径を測定し、平均値をとって粗面化点外円直径Dを決定する。粗面化点外円直径Dにより、粗面化点に外接する格子ユニットの面積Aを決定する。
実際面積占有率βを計算する。
【数11】
ただし、αは設定面積に対して増幅係数となり、
粗面化点面積占有率βと実際面積占有率βを比較し、実際面積占有率β<βの場合に、β≧βになるまで、面積増幅係数を再度調整する。ここで、粗面化点面積占有率βは達成しようとする技術要求に規定される粗面化点面積占有率である。
β≧βの場合に、格子ユニットの面積Aによって格子ユニット寸法を取得する。
S02.3:正NUM角形格子と格子ユニット寸法で圧延ロール展開平面に対して格子区画を行って、格子中心点座標を取得して、規則均一分布座標値(Xi0,i0)とする。
圧延ロール展開表面については、粗面化領域の長辺は圧延ロール周長Lであり、粗面化領域の幅辺は圧延ロール直径φである。正方形格子充填方式で粗面化領域に対して格子区画を行う。
S02.4:真性乱数生成装置によって乱数列対を生成し、乱数列対をスケーリング処理した後ランダム偏移座標値(Δxi,Δyi)を生成する。
発振器サンプリング原理で真性乱数生成装置を設計して真性乱数を生成すると共に、回路熱雑音の存在によって、発振器が動作する時に影響されて小さい範囲の変動が発生する。サンプリング信号がちょうどジッタ区間に至ってサンプリングする時に、サンプリングによって生成するデータが完全なランダム性を有することを保証する。
ここで、真性乱数生成装置は高周波数発振器、低周波数発振器及びDトリガーで構成され、高周波数発振器の出力をトリガーの入力とし、低周波数発振器の出力をトリガーのクロック信号入力とする。低周波数発振器出力信号の立ち上がりが来るたびに、Dトリガーは高周波発振器に対してサンプリングして1ビットのデータを生成する。
乱数列対から1対の乱数を抽出し、スケーリング演算方式で処理して格子ユニットに収まるランダム偏移座標(Δxi,Δy)を取得する。
S02.5:図5に示すように、ランダム偏移座標値と規則均一分布座標値を重畳して、二次元ドットマトリクス座標分布データセット(Xi,)を取得する。
=Xi0+Δx
=Yi0+Δy
ここの二次元ドットマトリクス座標分布データセット(Xi,)は粗面化点分布座標セット(x,y)となる。
S02.6:取得した粗面化点分布座標セット(x,y)に対して評価指標を計算し、設定値を満たすかを判断し、設定値を満たさない場合に、格子形状を正NUM+1角形に変更し、二次元ドットマトリクス座標分布データセットを再度決定する。具体的には、
前記評価指標がドットマトリクス無秩序度の評価指標とドットマトリクス均一度の評価指標を含む。
図11に示すように、取得した二次元ドットマトリクス座標分布データセットの面領域内に若干のS_L*S_B長尺状矩形サンプリング領域をランダムに設置し、矩形中心を原点として回転し、角度分解能θをサンプリング精度により調整し、矩形サンプリング領域内に収まる点の数量N矩形を統計し、一つの群の点数量データ[n、n、n、...n]を取得し、
【数12】
と統計量平均値分散D(n)
【数13】
であり、統計量の分散をドットマトリクス無秩序度の評価指標とする。
図12に示すように、取得した二次元ドットマトリクス座標分布データセットの面領域でランダムにサンプリングし、サンプリング領域形状が円形又は多角形であり、サンプリング領域内に収まる点の数量N円形を統計し、一つの群の点数量データ[m、m、m、...m]を取得し、
【数14】
と統計量平均値分散D(m)
【数15】
である
統計量の分散をドットマトリクス均一度の評価指標とする。
標準サンプルデータを採取し、統計学で取得した設定値が
【数16】
ドットマトリクス無秩序度の評価指標
【数17】
且つドットマトリクス均一度の評価指標
【数18】
の場合に、取得した二次元ドットマトリクス座標分布データセットが要求を満たす。
設定値を満たさない場合に、格子形状を正NUM+1角形に変更し、二次元ドットマトリクス座標分布データセットを再度決定する。
【0027】
S03:粗面化点パラメーターにより、レーザー加工パラメーター即ちレーザー出力Pとレーザーパルス幅λを決定する。
ここで、粗面化パラメーターは粗面化点種類、粗面化点直径D及び粗面化点高さhを含み、レーザー粗面化パラメーターとレーザーパラメーターのマッピング関係によって、レーザー出力Pとパルス幅λを直接選択し出力する。レーザー粗面化点幾何パラメーターとレーザーパラメーターのマッピングデータベースの構築はプロセスパラメーターデータに基づくものであり、大量のレーザー粗面化点加工プロセス実験を行う必要がある。
【0028】
S04:tタイミングでフィードバックされた圧延ロール回転角度RAとレーザビームの圧延ロール固定端面までの距離Dxにより、tタイミングのレーザー粗面化加工領域を決定する。
図7に示すように、圧延ロール軸線X方向での各回転周期内でX方向位置センサーとΨ軸のインクリメンタルエンコーダがいずれも信号をN回フィードバックする。
1周期内で加工する圧延ロールを展開し、N等分するようにレーザビームの運動軌跡を区画する。
図8に示すように、等分点を中心とし、L/2Mをピッチとして、圧延ロールの径方向に対して平行な上境界線Yupと下境界線Ydownを作成し、即ち、
【数19】
圧延ロール軸方向でのF-1、F+1等分線で右境界線Xrightと左境界線Xliftを作成し、即ち、
【数20】
ただし、Rは圧延ロール半径であり、Lは圧延ロール長さであり、圧延ロール回転角度RAは1等分当たりの圧延ロール回転角度であり、Dxはレーザビームの圧延ロール端面までの距離である。
【0029】
S05:tタイミングの加工領域内に加工しようとする粗面化点を計算決定し、具体的な計算方法は以下のとおりである。
粗面化点分布座標セット(x,y)とtタイミングのレーザビームの圧延ロール展開平面での位置を判断し、tタイミングの加工領域内に加工しようとする粗面化点を決定する。
【数21】
の要求を満たす粗面化点をレーザー粗面化加工領域内に加工しようとする粗面化点とする。
【0030】
S06:加工領域内の粗面化点座標をレーザー加工パラメーター、即ちレーザートリガタイミングtとレーザビーム偏向角度ηに変換する。
図9に示すように、トリガタイミングtがtタイミングとtf+1タイミングとの間にあり、レーザーが圧延ロール表面で集光した後のレーザー発生装置端面から圧延ロール表面までの最短距離がD_laser_rollであり、加工領域での粗面化点加工のトリガタイミングt、レーザビーム偏向角度ηを計算し出力する。
【数22】
ただし、Rotは圧延ロールの回転速度であり、Vはレーザビームの圧延ロール軸線に沿った平行移動速度であり、V=Rot*L/Mである。
【0031】
S07:レーザー粗面化加工装置を制御して圧延ロール表面に対して粗面化点加工を施す。
図10に示すように、レーザー粗面化加工装置の高さ方向Z、圧延ロール直径方向Yにおいてはサーボ駆動モータは設定された平行移動速度Vで復帰と集光調整を行い、圧延ロール軸線方向Xに沿った平行移動、圧延ロール中心軸Ψに沿った回転についてはサーボ駆動モータは設定されたX方向平行移動速度Vと圧延ロールの圧延ロール中心軸Ψに沿った回転速度Rotで動作する。
レーザー加工パラメーターのトリガタイミングtは音響光学変調Qドライバを制御してタイミングでレーザー発生装置にパルス励起信号を開閉させ、レーザー加工パラメーターの偏向角度ηはレーザー発生装置の微細偏向を制御し、レーザー加工パラメーターの出力P及びパルス幅λはレーザー発生装置のレーザビームのエネルギーを制御する。
レーザー発生装置はレーザー加工パラメーター要求によって高エネルギーのレーザビームを出力すると同時に平行移動し、圧延ロールは回転し、それによって圧延ロール表面に対してレーザー粗面化加工を施す。
【0032】
本発明は、圧延ロール展開表面で粗面化パターンの無秩序均一分布ドットマトリクス座標を生成することを基に、無秩序均一分布ドットマトリクス座標のレーザー加工パラメーターへの変換を実現し、制御システムにランダム信号発生装置を増設する必要がなく、圧延ロール表面レーザー粗面化点のクローズドループ加工を実現するものであり、この制御方法は例えばYAGレーザー、ファイバーレーザー及び二酸化炭素レーザー等の様々なレーザー粗面化のためのレーザー発生装置に利用可能である。
【0033】
前記実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の実質的内容を逸脱しない限り、いかなる明らかな改良、取り替え又は変形も当業者に実施可能であり、それらは全て本発明の保護範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】