(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ルテニウム錯体の調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/22 20060101AFI20221006BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20221006BHJP
C07D 241/12 20060101ALI20221006BHJP
C07D 239/26 20060101ALI20221006BHJP
C07F 15/00 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C07D213/22
C07D471/04 112T
C07D241/12
C07D239/26
C07F15/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569029
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 GB2020051935
(87)【国際公開番号】W WO2021032952
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド、ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コラコット、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー、ベン
(72)【発明者】
【氏名】シーチャーン、カリン
(72)【発明者】
【氏名】タンチーニ、ピーター ディー.
【テーマコード(参考)】
4C055
4C065
4H050
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA25
4C055CA01
4C055CA02
4C055CA13
4C055DA01
4C055DA06
4C055DA13
4C055EA01
4C055GA02
4C065AA04
4C065AA19
4C065BB09
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ03
4C065KK01
4C065LL03
4C065PP01
4H050AA02
(57)【要約】
【解決手段】 式(I)の錯体を調製するためのプロセスであって、
プロセスは、式(II)の錯体又は式RuX
3H
2O(IV)の錯体を式(III)の二座配位子と反応させるステップを含み、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、A、B及びXは明細書に記載されており、
式(II)の錯体:式(III)の二座配位子のモル比は約1:6~約1:8であり、又は式(IV)の錯体:式(III)の二座配位子のモル比は約1:3~約1:4であり、このプロセスは、水又は水性溶媒中で行われ、水性溶媒は、約80℃~110℃の範囲の1つ以上の温度で、少なくとも60%の水(体積基準)及び有機溶媒を含む。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、非置換C
3~20-シクロアルキル、置換C
3~20-シクロアルキル、非置換C
6~20-アリール、置換C
6~20-アリール、非置換C
1~20-アルコキシ、置換C
1~20-アルコキシ、非置換C
1~20-ジアルキルアミノ、置換C
1~20-ジアルキルアミノ、非置換C
1~20-ヘテロアルキル、置換C
1~20-ヘテロアルキル、非置換C
2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C
2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C
4~20-ヘテロアリール及び置換C
4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、
Aは、-CR
aR
b-、-NR
a-、O、S、-CR
a=CR
b-、-CR
a=N-からなる群から選択され、
Bは、-CR
cR
d-、-NR
c-、O、S、-CR
c=CR
d-、-CR
c=N-からなる群から選択され、
R
a、R
b、R
c及びR
dは、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、非置換C
3~20-シクロアルキル、置換C
3~20-シクロアルキル、非置換C
6~20-アリール、置換C
6~20-アリール、非置換C
1~20-アルコキシ、置換C
1~20-アルコキシ、非置換C
1~20-ジアルキルアミノ、置換C
1~20-ジアルキルアミノ、非置換C
1~20-ヘテロアルキル、置換C
1~20-ヘテロアルキル、非置換C
2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C
2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C
4~20-ヘテロアリール及び置換C
4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、
又は、R
a及びR
cとR
dの1つ、又はR
b及びR
cとR
dの1つは、それらが結合している原子と共に環を形成し、
Xはハライドである]の錯体を調製するためのプロセスであって、
前記プロセスは、式(II):
【化2】
[式中、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、非置換C
3~20-シクロアルキル、置換C
3~20-シクロアルキル、非置換C
6~20-アリール、置換C
6~20-アリールからなる群から独立して選択され、Xは前述のように定義される]の錯体又は式RuX
3.H
2O(IV)の錯体を、
式(III):
【化3】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4、A及びBは前述のように定義される]の二座配位子と反応させるステップを含み、
前記式(II)の錯体:前記式(III)の二座配位子のモル比は約1:6~約1:8であり、又は前記式(IV)の錯体:前記式(III)の二座配位子のモル比は約1:3~約1:4であり、
前記プロセスは、水又は水性溶媒中で行われることを特徴とし、前記水性溶媒は、約80℃~110℃の範囲の1つ以上の温度で、少なくとも60%の水(体積基準)及び有機溶媒を含む、プロセス。
【請求項2】
R
1、R
2、R
3及びR
4は、H、非置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、非置換C
6~20-アリール又は置換C
6~20-アリールからなる群から独立して選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
R
1、R
2、R
3及びR
4は同じである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれHである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
Aは、-CR
a=CR
b-又は-CR
a=N-である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
Bは、-CR
c=CR
d-又は-CR
c=N-である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
Aは-CR
a=CR
b-であり、Bは-CR
c=CR
d-である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記式(III)の配位子は、
2,2’-ビピリジン、
4,4’-ビス(メチル)-2,2’-ビピリジン、
4,4’-ビス(tert-ブチル)-2,2’-ビピリジン、
4,4’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2’-ビピリジン、及び
5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2’-ビピリジンからなる群から選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
R
a及びR
cとR
dの1つ、又はR
b及びR
cとR
dの1つは、前記それらが結合している原子と共に環を形成する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記環は6員環である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記式(III)の配位子は、
1,10-フェナントロリン、
4,7-ジメトキシ-1,10-フェナントロリンである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
Aは-CR
a=N-であり、Bは-CR
c=N-である、請求項1~6のいずれかの一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記式(III)の配位子は、
2,2’-ビピラジンである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記式(III)の配位子は、
2,2’-ビピリミジンである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
Xはクロライドである、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記プロセスは、式(II)の錯体を式(III)の二座配位子と反応させるステップを含み、前記式(II)の錯体:前記式(III)の二座配位子のモル比は約1:6~約1:8である、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
式(V):
【化4】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、A及びBは、前述のように定義され、:
Yは、前記式(I)の錯体に関して定義されたXとは異なる非配位性アニオン又はハライドである]の化合物を調製するためのプロセスであって、
前記プロセスは、前述のように定義された式(I)の錯体を式RY[式中、Rは、アルカリ金属カチオン、Ag
+及び第4級アンモニウムカチオンからなる群から選択され、Yは前述のように定義される]の化合物と反応させるステップを含み、式(I)の錯体:RYのモル比は少なくとも1:2及び最大で1:3であり、前記プロセスは、水又は水性溶媒中で行われることを特徴とし、前記水性溶媒は、約10℃~50℃の範囲の1つ以上の温度で、少なくとも60%の水(体積)及び有機溶媒を含む、プロセス。
【請求項18】
RはK
+、Na
+、Ag
+又は[R’
4N]
+であり、R’はH又はアルキルである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
YはPF
6
-、BF
4
-、BPh
4
-、SbF
6
-、[{3,5-(CF
3)
2C
6H
3}
4B]
-、CF
3SO
3
-、ArFSO
3
-、[(CF
3SO
2)
2N]
-、F、Cl、Br又はIである、請求項17又は18に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素含有ヘテロ環二座配位子を含むホモレプティックルテニウム錯体の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
ホモレプティックRu(bipy)3I2(bipy=2,2’-ビピリジン)は、RuCl3.3H2O及び25%過剰の2,2-ビピリジン(即ち、Ru:NN=1:3.75の比率)を95%EtOH中で72時間加熱還流した後、濾過、蒸発、ベンゼンでの抽出、及びKI水溶液からの沈殿によって得られた(Palmer et al.,Inorg.Chem.,1966,5(5),864)。
【0003】
Gossらは、LiClの存在下でRuCl3.3H2Oをphen-dioneとRu:NN=1:2の比率で、還流条件のDMF中で反応させ、Ru(phen-dione)2Cl2を最初に生成させ、続いて1.2当量のphen-dioneを還流条件の50/50混合EtOH/H2O中で添加することによる、ステップワイズ手順でのホモレプティック[Ru(phen-dione)3](PF6)2.2H2O(phen-dione=1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン)の合成を報告している。PF6錯体は、NH4PF6の飽和水溶液で沈殿させた(Inorg.Chem.,1985,24(25),4263)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Palmerら及びGossらに記載されるプロセスを使用し、ホモレプティックRu(bipy)3I2及び[Ru(phen-dione)3](PF6)2.2H2Oのグラムスケール量を調製することはできるが、このプロセスは、大規模な製造には適していない。これらのプロセスでは、出発物質としてRuCl3.3H2Oを使用しており、その入手可能性は地理的な位置によって異なる。更に、これらのプロセスでは、還流条件で有機可燃性溶媒、並びにベンゼン及びDMFなどの有毒溶媒を使用しており、これらは全て工業規模では不安全である。また、これらのプロセスは、ルテニウムへの3つの窒素含有ヘテロ環二座配位子の付加の容易性に違いがあるため、複数ステップの合成手順が必要であるという事実を示唆する。ルテニウム錯体を単離するためには、様々な処理ステップ(例えば、溶媒の蒸発、再結晶、精製)も必要である。工業規模に適した3つの窒素含有ヘテロ環二座配位子を有するホモレプティックルテニウム錯体の合成を達成できる、ワンステッププロセスを見出す必要がある。
【0005】
本発明は、窒素含有ヘテロ環二座配位子を有するホモレプティックルテニウム錯体を調製するための改善されたプロセスを提供する。このプロセスは、大規模な製造に適する。いくつかの実施形態では、プロセスは高収率をもたらす。いくつかの実施形態では、プロセスは、不純物を少ししか含まない[Ru(bpy)3]Cl26H2O又は[Ru(bpy)3][PF6]2などの生成物をもたらす。いくつかの実施形態では、生成物は、NMR及び/又は元素分析によって分析したとき、純粋に得られる。
【0006】
一態様では、本発明は、式(I):
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、非置換C
3~20-シクロアルキル、置換C
3~20-シクロアルキル、非置換C
6~20-アリール、置換C
6~20-アリール、非置換C
1~20-アルコキシ、置換C
1~20-アルコキシ、非置換C
1~20-ジアルキルアミノ、置換C
1~20-ジアルキルアミノ、非置換C
1~20-ヘテロアルキル、置換C
1~20-ヘテロアルキル、非置換C
2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C
2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C
4~20-ヘテロアリール及び置換C
4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、
Aは、-CR
aR
b-、-NR
a-、O、S、-CR
a=CR
b-、-CR
a=N-からなる群から選択され、
Bは、-CR
cR
d-、-NR
c-、O、S、-CR
c=CR
d-、-CR
c=N-からなる群から選択され、
R
a、R
b、R
c及びR
dは、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、非置換C
3~20-シクロアルキル、置換C
3~20-シクロアルキル、非置換C
6~20-アリール、置換C
6~20-アリール、非置換C
1~20-アルコキシ、置換C
1~20-アルコキシ、非置換C
1~20-ジアルキルアミノ、置換C
1~20-ジアルキルアミノ、非置換C
1~20-ヘテロアルキル、置換C
1~20-ヘテロアルキル、非置換C
2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C
2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C
4~20-ヘテロアリール及び置換C
4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、
又は、R
a及びR
cとR
dの1つ、又はR
b及びR
cとR
dの1つは、それらが結合している原子と共に環を形成し、
Xはハライドである]の錯体を調製するためのプロセスであって、
プロセスは、式(II):
【化2】
[式中、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C
1~20-アルキル、非置換C
3~20-シクロアルキル、置換C
3~20-シクロアルキル、非置換C
6~20-アリール、置換C
6~20-アリールからなる群から独立して選択され、Xは前述のように定義される]の錯体を、
式(III):
【化3】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4、A及びBは前述のように定義される]の二座配位子と反応させるステップを含み、
式(II)の錯体:式(III)の二座配位子のモル比は、約1:6~約1:8であり、
プロセスは、水又は水性溶媒中で行われることを特徴とし、水性溶媒は、約80℃~110℃の範囲の1つ以上温度で、少なくとも60%の水(体積基準)及び有機溶媒を含む、プロセスを提供する。
【0007】
本発明の更なる態様は、前述のように式(I)の化合物を調製するためのプロセスであって、このプロセスは、式(IV)RuX3.H2O[式中、Xは、前述のように定義される]の化合物を、前述のように定義される式(III)の二座配位子と反応させるステップを含み、式IVの錯体:式(III)の二座配位子のモル比は約1:3~約1:4であり、プロセスは、水又は水性溶媒中で行われることを特徴とし、水性溶媒は、約80℃~110℃の範囲の1つ以上の温度で、少なくとも60%の水(体積基準)及び有機溶媒を含む、プロセスを提供する。
【0008】
定義
部分又は置換基の結合点は、「-」によって表される。例えば、-OHは、酸素原子を介して結合される。
【0009】
本明細書で使用される場合、Aが「-CRa=N-」である場合、この部分は、式(I)の錯体又は式(III)の配位子に、いずれの順序でも、即ち、「-CRa=N-」としても「-N=CRa-」としても挿入され得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、Bが「-CRc=N-」である場合、この部分は、式(I)又は式(III)の配位子に、いずれの順序でも、即ち、「-CRc=N-」としても「-N=CRc-」としても挿入され得る。
【0011】
「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基を指す。特定の実施形態では、アルキル基は、1~20個の炭素原子、特定の実施形態では1~15個の炭素原子、特定の実施形態では1~8個の炭素原子を有してもよい。アルキル基は非置換であってもよい。あるいは、アルキル基は置換されてもよい。特に断らない限り、アルキル基は、任意の好適な炭素原子において結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
用語「シクロアルキル」は、飽和炭素環式炭化水素基を表すために使用される。シクロアルキル基は、単一の環又は複数の縮合環を有してもよい。特定の実施形態では、シクロアルキル基は、3~20個の炭素原子、特定の実施形態では、3~10個の炭素原子、特定の実施形態では、3~8個の炭素原子を有し得る。シクロアルキル基は、非置換であってもよい。あるいは、シクロアルキル基は置換されてもよい。特に断らない限り、シクロアルキル基は、任意の好適な炭素原子において結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。典型的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
「アルコキシ」は、式アルキル-O-又はシクロアルキル-O-[式中、アルキル及びシクロアルキルは、上記で定義されたとおりである]の任意選択で置換された基を指す。
【0014】
「アリール」は、芳香族炭素環式基を指す。アリール基は、単一の環又は複数の縮合環を有してもよい。特定の実施形態では、アリール基は、6~20個の炭素原子、特定の実施形態では6~15個の炭素原子、特定の実施形態では6~12個の炭素原子を有してもよい。アリール基は非置換であってもよい。あるいは、アリール基は置換されてもよい。特に断らない限り、アリール基は、任意の好適な炭素原子において結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
「アリールアルキル」は、式アリール-アルキル-[式中、アリール及びアルキルは、上に定義したとおりである]の任意選択で置換された基を指す。
【0016】
「ハライド」は、-F、-Cl、-Br、及び-Iを指す。
【0017】
「ヘテロアルキル」は、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子)で独立して置き換えられた直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基を指す。ヘテロアルキル基は非置換であってもよい。あるいは、ヘテロアルキル基は置換されてもよい。特に断らない限り、ヘテロアルキル基は、任意の好適な原子においてて結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。ヘテロアルキル基の例としては、エーテル、チオエーテル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「ヘテロシクロアルキル」は、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子)で独立して置き換えられた飽和環式炭化水素基を指す。ヘテロシクロアルキル基は非置換であってもよい。あるいは、ヘテロシクロアルキル基は置換されてもよい。特に断らない限り、ヘテロシクロアルキル基は、任意の好適な原子において結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。ヘテロシクロアルキル基の例としては、エポキシド、モルホリニル、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)、チラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、チオモルホリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「ヘテロアリール」は、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子)で独立して置き換えられた芳香族炭素環式基を指す。ヘテロアリール基は非置換であってもよい。あるいは、ヘテロアリール基は置換されてもよい。特に断らない限り、ヘテロアリール基は、任意の好適な原子において結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、キノリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
「置換」は、1つ以上の水素原子がそれぞれ、同じであっても異なっていてもよい置換基(例えば、1、2、3、4、5つ又はそれら以上)で独立して置き換えられた基を指す。置換基の例としては、-ハロ、-C(ハロ)3、-Rm、=O、=S、-O-Rm、-S-Rm、-NRmRn、-CN、-NO2、-C(O)-Rm、-COORm、-C(S)-Rm、-C(S)ORm、-S(O)2OH、-S(O)2-Rm、-S(O)2NRmRn、-O-S(O)-Rm及び-CONRmRn、例えば、-ハロ、-C(ハロ)3(例えば、-CF3)、-Rm、-O-Rm、-NRmRn、-CN、又は-NO2が挙げられるが、これらに限定されない。Rm及びRnは、H、C1~20-アルキル、C6~20-アリール、C7~20-アリールアルキル、C1~20-ヘテロアルキル、C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、又は、Rm及びRnはそれらが結合している原子と共に、ヘテロシクロアルキル基を形成する。Rm及びRnは、本明細書で定義されるように、非置換であってもよく、又は更に置換されてもよい。
【0021】
「二座配位子」は、2対の電子を金属原子に供与する配位子である。
【0022】
水性溶媒は、水及び有機溶媒を含む溶媒であり、水の体積百分率は少なくとも60%である。
【0023】
非配位性アニオンは、カチオンと弱く相互作用するアニオンである。
【0024】
本明細書で使用される場合、略語「bipy」及び「bpy」は、2,2’-ビピリジンを指すために交換可能に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一態様では、本発明は、式(I):
【化4】
の錯体を調製するためのプロセスであって、プロセスは、式(II)の錯体を、
【化5】
式(III)の二座配位子と反応させるステップを含み、
【化6】
式(II)の錯体:式(III)の二座配位子のモル比は、約1:6~約1:8であり、
プロセスは、水又は水性溶媒中で行われることを特徴とし、水性溶媒は、約80℃~110℃の範囲の1つ以上温度で、少なくとも60%の水(体積基準)及び有機溶媒を含む、プロセスを提供する。
【0026】
本発明の更なる態様は、前述のように式(I)の化合物を調製するためのプロセスであって、このプロセスは、式RuX3.H2O(IV)[式中、Xは、前述のように定義される]の化合物を、前述のように定義される式(III)の二座配位子と反応させるステップを含み、式IVの錯体:式(III)の二座配位子のモル比は約1:3~約1:4であり、プロセスは、水又は水性溶媒中で行われることを特徴とし、水性溶媒は、約80℃~110℃の範囲の1つ以上の温度で、少なくとも60%の水(体積基準)及び有機溶媒を含む、プロセスを提供する。
【0027】
置換基R1、R2、R3及びR4は、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C1~20-ジアルキルアミノ、置換C1~20-ジアルキルアミノ、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択される。
【0028】
一実施形態では、R1、R2、R3及びR4は、H、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C6~20-アリール又は置換C6~20-アリールからなる群から独立して選択される。
【0029】
例えば、R1、R2、R3及びR4は、H、分岐鎖又は直鎖アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ステアリルなど)、アリール基(フェニル、ナフチル、アントラシルなど)から独立して選択される。
【0030】
一実施形態では、アルキル基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)又はアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ又はプロポキシ)などのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)の置換基で、任意選択で置換されてもよい。アリール基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)、直鎖又は分岐鎖アルキル(例えば、C1~C10)、アルコキシ(例えば、C1~C10アルコキシ)、直鎖又は分岐鎖(ジアルキル)アミノ(例えば、C1~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニル及びピペラジニルなどのC3~10ヘテロシクロアルキル基)又はトリ(ハロ)メチル(例えば、F3C-)などのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)の置換基で、任意選択で置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、4-ジメチルアミノフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
一実施形態では、R1及びR3は同じである。
【0032】
別の実施形態では、R2及びR4は同じである。
【0033】
更に別の実施形態では、R1及びR3は同じであり、R2及びR4は同じである。
【0034】
一実施形態では、R1、R2、R3及びR4は同じである。
【0035】
一実施形態では、R1、R2、R3及びR4のそれぞれはHである。
【0036】
Aは、-CRaRb-、-NRa-、O、S、-CRa=CRb-及び-CRa=N-、好ましくは-CRa=CRb-又は-CRa=N-からなる群から独立して選択される。
【0037】
Bは、-CRcRd-、-NRc-、O、S、-CRc=CRd-及び-CRc=N-、好ましくは-CRc=CRd-又は-CRc=N-からなる群から独立して選択される。
【0038】
一実施形態では、A及びBは同じである。
【0039】
一実施形態では、A及びBは、それぞれ、-CRa=CRb-及び-CRc=CRd-である。
【0040】
一実施形態では、A及びBはそれぞれ-CH=CH-である。
【0041】
Ra、Rb、Rc及びRdは、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C1~20-ジアルキルアミノ、置換C1~20-ジアルキルアミノ、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、
又は、Ra及びRcとRdの1つ又はRb及びRcとRdの1つは、それらが結合している原子と共に、環、好適には6員環を形成する。
【0042】
Ra、Rb、Rc及びRdは独立して、H、非置換分岐鎖又は直鎖アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ステアリルなど)、アリール基(フェニル、ナフチル、アントラシルなど)であってもよい。別の実施形態では、アルキル基は、ハライド(-F、-Cl、-Br又は-I)又はアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ又はプロポキシ)などの1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)の置換基で、任意選択で置換されてもよい。アリール基は、ハライド(-F、-Cl、-Br又は-I)、直鎖又は分岐鎖C1~C10-アルキル、C1~C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C1~C10-(ジアルキル)アミノ、C3~10ヘテロシクロアルキル基(モルホリニル及びピペラジニルなど)又はトリ(ハロ)メチル(例えば、F3C-)などの1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)置換基で、任意選択で置換されてもよい。
【0043】
一実施形態では、RaはHであり、Rbは、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C1~20-ジアルキルアミノ、置換C1~20-ジアルキルアミノ、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0044】
一実施形態では、Raはメトキシであり、Rbは、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C1~20-ジアルキルアミノ、置換C1~20-ジアルキルアミノ、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0045】
別の実施形態では、RcはHであり、Rdは、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C1~20-ジアルキルアミノ、置換C1~20-ジアルキルアミノ、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0046】
別の実施形態では、Rcはメトキシであり、Rdは、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C1~20-ジアルキルアミノ、置換C1~20-ジアルキルアミノ、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0047】
一実施形態では、Ra及びRcはそれぞれHであり、Rb及びRdは同じであり、非置換分岐鎖又は直鎖アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ステアリルなど)、アリール基(フェニル、ナフタ、アントラシルなど)から選択される。
【0048】
一実施形態では、Ra及びRcはそれぞれメトキシであり、Rb及びRdは同じであり、非置換分岐鎖又は直鎖アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ステアリルなど)、アリール基(フェニル、ナフチル、アントラシルなど)から選択される。
【0049】
代替の実施形態では、Ra及びRcはそれぞれHであり、Rb及びRdは同じであり、置換分岐鎖又は直鎖アルキル基又は置換アリール基から選択される。アルキル基は、ハライド(-F、-Cl、-Br又は-I)又はアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ又はプロポキシ)などの1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)の置換基で、任意選択で置換されてもよい。アリール基は、ハライド(-F、-Cl、-Br又は-I)、直鎖又は分岐鎖C1~C10-アルキル、C1~C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C1~C10-(ジアルキル)アミノ、C3~10ヘテロシクロアルキル基(モルホリニルやピペラジニルなど)又はトリ(ハロ)メチル(例えば、F3C-)などの1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)置換基で、任意選択で置換されてもよい。
【0050】
代替の実施形態では、Ra及びRcはそれぞれメトキシであり、Rb及びRdは同じであり、置換分岐鎖又は直鎖アルキル基又は置換アリール基から選択される。アルキル基は、ハライド(-F、-Cl、-Br又は-I)又はアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ又はプロポキシ)などの1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)の置換基で、任意選択で置換されてもよい。アリール基は、ハライド(-F、-Cl、-Br又は-I)、直鎖又は分岐鎖C1~C10-アルキル、C1~C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C1~C10-(ジアルキル)アミノ、C3~10ヘテロシクロアルキル基(モルホリニルやピペラジニルなど)又はトリ(ハロ)メチル(例えば、F3C-)などの1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)置換基で、任意選択で置換されてもよい。
【0051】
一実施形態では、R1、R2、R3及びR4のそれぞれはHであり、A及びBは、それぞれ-CRa=CRb-及び-CRc=CRdであり、Ra及びRcはHであり、Rb及びRdは同じであり、H、CH3、t-Bu、又はCF3である。好ましい実施形態では、Rb及びRdは水素である。
【0052】
好ましくは、式(I)の錯体中の配位子及び式(III)の配位子は、
bipy=2,2’-ビピリジン、
【化7】
dmbpy=4,4’-ビス(メチル)-2,2’-ビピリジン(2,2’-ビ-4-ピコリンとしても知られる)、
【化8】
dtbbpy=4,4’-ビス(tert-ブチル)-2,2’-ビピリジン、
【化9】
4,4’-btfmb=4,4’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2’-ビピリジン、
【化10】
5,5’-btfmb=5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2’-ビピリジンである。
【化11】
【0053】
代替の実施形態では、A及びBはそれぞれ-CRa=CRb-及び-CRc=CRdであり、Ra及びRcとRdの1つ、又はRb及びRcとRdの1つは、それらが結合している原子と共に、環、好適には6員環を形成し、任意選択では、環は芳香族である。例えば、Ra及びRc又はRdは、それらが結合している原子と共に、環、好適には6員環を形成する。あるいは、Rb及びRc又はRdは、それらが結合している原子と共に、環、好適には6員環を形成する。
【0054】
好適には、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれはHであり、Aは-CH=CRb-であり、Bは-CH=CRd-であり、Rb及びRdは、それらが結合している炭素原子と共に環、好適には、6員環を形成する。
【0055】
好ましくは、式(I)の錯体中の配位子及び式(III)の配位子は、
phen=1,10-フェナントロリンである。
【化12】
【0056】
好適には、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれはHであり、Aは-CRa=CRb-であり、Bは-CRc=CRd-であり、Rb及びRdは、それらが結合している炭素原子と共に、環、好適には6員環を形成する。
【0057】
好適には、Ra及びRcはメトキシ基であり、Rb及びRcは、それらが結合している炭素原子と共に、環、好適には6員環を形成する。
【0058】
好ましくは、式(I)の錯体中の配位子及び式(III)の配位子は、
OMe-phen=4,7-ジメトキシ-1,10-フェナントロリンである。
【化13】
【0059】
代替の実施形態では、A及びBは同じであり、それぞれ-CRa=N-及び-CRc=N-である。好ましい実施形態では、Ra及びRcはHである。最も好ましい実施形態では、R1、R2、R3及びR4のそれぞれはHであり、Ra及びRcはHである。
【0060】
好ましくは、式(I)の錯体中の配位子及び式(III)の配位子は、
bpz=2,2’-ビピラジンである。
【化14】
【0061】
好ましくは、式(I)の錯体中の配位子及び式(III)の配位子は、
bpm=2,2’-ビピリミジンである。
【化15】
【0062】
ハライドXは、フルオライド、クロライド、ブロマイド又はヨウダイドであってもよい。好ましくは、ハライドはクロライドである。
【0063】
式(I)の錯体は、
(i) Ru(bipy)3Cl2、
(ii) Ru(dmbpy)3Cl2、
(iii) Ru(dtbbpy)3Cl2、
(iv) Ru(4,4’-btfmb)3Cl2、
(v) Ru(5,5’-btfmb)3Cl2、
(vi) Ru(bpz)3Cl2、
(vii) Ru(1,10-phen)3Cl2、
(viii)Ru(OMe-phen)3Cl2、
(ix) Ru(bpm)3Cl2であってもよい。
【0064】
最も好ましい実施形態では、式(I)の錯体はRu(bipy)3Cl2である。
【0065】
式(II)の錯体中のR5、R6、R7、R8、R9及びR10は、H、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリールからなる群から独立して選択され得る。
【0066】
R5、R6、R7、R8、R9、及びR10は独立して、H、分岐鎖又は直鎖アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル(例えば、n-ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリルなど)、シクロプロピル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)、アリール基(フェニル、ナフタレン、アントラシルなど)であってもよい。
【0067】
一実施形態では、アルキル基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)又はアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ又はプロポキシなどのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)の置換基で、任意選択で置換されてもよい。アリール基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)、直鎖又は分岐鎖アルキル(例えば、C1~C10)、アルコキシ(例えば、C1~C10アルコキシ)、直鎖又は分岐鎖(ジアルキル)アミノ(例えば、C1~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニル及びピペラジニルなどのC3~10ヘテロシクロアルキル基)又はトリ(ハロ)メチル(例えば、F3C-)などのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ、置換基の数は置換可能なH原子の数に依存する)の置換基で、任意選択で置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、4-ジメチルアミノフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
一実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は同じである。好ましくは、R5、R6、R7、R8、R9及びR10のそれぞれはHである。
【0069】
別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の少なくとも1つは、-Hではない群から選択される。例えば、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の1つ、例えば、R5、R6、R7、R8、R9、R10の2つ、R5、R6、R7、R8、R9、R10の3つ、R5、R6、R7、R8、R9、R10の4つ、R5、R6、R7、R8、R9、R10の5つ、又はR5、R6、R7、R8、R9、R10の全ては、-Hではない群から選択されてもよい。
【0070】
別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10の5つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の1つは、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール及び置換C6~20-アリールからなる群から選択される。好ましい実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の5つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の1つは分岐鎖又は直鎖アルキルである。別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の5つは、-H(例えば、R6、R7、R8、R9及びR10)であり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の1つ(例えば、R5)は、-Me、-Et、-Pr(n-又はi-)、-Bu(n-、i-又はt-)、例えば、-Me、-iPrなどのC1~5-アルキルからなる群から選択される。
【0071】
別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10の4つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の2つは、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール及び置換C6~20-アリールからなる群から独立して選択される。好ましい実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の4つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の2つは、分岐鎖又は直鎖アルキルからなる群から選択される。別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の4つは、-H(例えば、R6、R7、R8、R9及びR10)であり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の2つ(例えば、R5及びR8)は、-Me、-Et、-Pr(n-又はi-)、-Bu(n-、i-又はt-)、例えば、-Me、-iPrなどのC1~5-アルキルからなる群から独立して選択される。
【0072】
別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10の3つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の3つは、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール及び置換C6~20-アリールからなる群から独立して選択される。好ましい実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の3つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の3つは、分岐鎖又は直鎖アルキルからなる群から選択される。別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の3つは、-H(例えば、R6、R8及びR10)であり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の3つ(例えば、R5、R7及びR9)は、-Me、-Et、-Pr(n-又はi-)、-Bu(n-、i-又はt-)、例えば、-Me、-iPrなどのC1~5-アルキルからなる群から独立して選択される。
【0073】
別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10の2つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の4つは、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール及び置換C6~20-アリールからなる群から独立して選択される。好ましい実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の2つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の4つは、分岐鎖又は直鎖アルキルからなる群から選択される。別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の2つは、-H(例えば、R5及びR8)であり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の4つ(例えば、R6、R7、R9及びR10)は、-Me、-Et、-Pr(n-又はi-)、-Bu(n-、i-又はt-)、例えば、-Me、-iPrなどのC1~5-アルキルからなる群から独立して選択される。
【0074】
別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10の1つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の5つは、ハライド、非置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、置換分岐鎖又は直鎖C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C6~20-アリール及び置換C6~20-アリールからなる群から独立して選択される。好ましい実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の1つは-Hであり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の5つは、分岐鎖又は直鎖アルキルからなる群から選択される。別の実施形態では、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の1つは、-H(例えば、R5)であり、R5、R6、R7、R8、R9及びR10の他の5つ(例えば、R6、R7、R8、R9及びR10)は、-Me、-Et、-Pr(n-又はi-)、-Bu(n-、i-又はt-)、例えば、-Me、-iPrなどのC1~5-アルキルからなる群から選択される。
【0075】
Xは、式(I)の錯体について前述のように定義される。
【0076】
一実施形態では、式(II)の錯体は[{RuCl2(ベンゼン)}2である。
【0077】
別の実施形態では、式(II)の錯体は[{RuCl2(p-シメン)}2である。
【0078】
別の実施形態では、式(II)の錯体は[{RuCl2(メシチレン)}2である。
【0079】
このプロセスは、式(II)及び(IV)の市販の出発物質錯体、並びに式(III)の二座配位子を使用し、これらは文献の方法に従って容易に作製され得る。
【0080】
式(II)又は式(IV)の錯体及び式(III)の二座配位子は、水又は水性溶媒中で共に混合される。
【0081】
一実施形態では、式(II)又は式(IV)の錯体及び式(III)の二座配位子は、水中で共に混合される。
【0082】
代替の実施形態では、式(II)又は式(IV)の錯体及び式(III)の二座配位子は、水性溶媒中で共に混合され、水性溶媒は、水及び有機溶媒の混合物であり、含水量は少なくとも60%(体積)である。好ましくは、有機溶媒はアルコール又はエーテルである。好適なアルコールは、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、n-プロパノール(nPrOH)、イソプロパノール(iPrOH)、t-アミルアルコール(t-amylOH)、好ましくは、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、n-プロパノール(nPrOH)及びイソプロパノール(iPrOH)である。好適なエーテルは、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me-THF)、3-メチルテトラヒドロフラン(3-Me-THF)及びジオキサン、特にTHFである。特に好ましい有機溶媒はエタノールである。
【0083】
一実施形態では、水性溶媒の含水量は、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。好ましくは、水性溶媒の含水量は、少なくとも90%又は少なくとも95%である。
【0084】
水性溶媒中の式(II)又は式(IV)の錯体の濃度は、約0.005mmol/mL~約5mmol/mL、好ましくは約0.01mmol/mL~約2.5mmol/mL、更により好ましくは0.1mmol/mL~1mmol/mLである。
【0085】
本発明では、式(II)の錯体:式(III)の二座配位子のモル比は約1:6~約1:8であり、又は式(IV)の錯体:式(III)の二座配位子のモル比は約1:3~約1:4である。式(II)の錯体:式(III)の二座配位子のモル比は、1:6.0、1:6.1、1:6.2、1:6.3、1:6.4、1:6.5、1:6.6、1:6.7、1:6.8、1:6.9、1:7.0、1:7.1、1:7.2、1:7.3、1:7.4、1:7.5、1:7.6、1:7.7、1:7.8、1:7.9、1:8.0、好ましくは、1:6.0、1:6.1、1:6.2、1:6.3、1:6.4、1:6.5、より好ましくは1:6.0又は1:6.1であってもよい。式(IV)の錯体:式(III)の二座配位子のモル比は、1:3.0、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、1:4.0、好ましくは1:3.0、1:3.1、1:3.2、より好ましくは1:3.0であってもよい。
【0086】
式(II)又は式(IV)の錯体及び式(III)の二座配位子を水又は水性溶媒中で反応させる際、成分は任意の好適な順序で混合し得るが、好ましくは最初に式(II)又は式(IV)の錯体を水又は水性溶媒に加え、次に式(III)の二座配位子を加える。
【0087】
式(II)又は式(IV)の錯体及び式(III)の二座配位子を水又は水性溶媒中で共に混合した後、好ましくは、反応混合物は、約80℃~約110℃、好適には約85℃~約110℃、好適には約90℃~約110℃、好ましくは約95℃~約105℃、更により好ましくは100℃の範囲の温度で撹拌される。
【0088】
混合物は、例えば、好ましくは約30分間~約72時間、より好ましくは約5時間~約24時間、より好ましくは10時間~20時間、最も好ましくは約16時間撹拌され得る。
【0089】
反応が完了すると、式(I)の錯体は、生成物の物理的形態に依存する任意の適切な方法によって、任意選択でアセトン、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)などの貧溶媒の助けを借りて、反応混合物から分離することができる。例えば、式(I)の錯体を固体として回収することが望まれる場合、錯体は、蒸留、濾過、デカンテーション又は遠心分離によって反応混合物から単離され得る。分離された錯体は、好ましくは、更なる溶媒で洗浄され、次いで乾燥される。乾燥は、既知の方法により、例えば、約10~60℃、好ましくは約20~40℃の範囲の温度で、約1~30ミリバールの真空下で約1時間~約5日間実施され得る。
【0090】
更なる実施形態では、本発明は、式(V):
【化16】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、A及びBは、前述のように定義され、
Yは、式(I)の錯体に関して定義されたXとは異なる非配位性アニオン又はハライドである]の化合物を調製するためのプロセスであって、
当該プロセスは、前述のように定義された式(I)の錯体を、式RY[式中、Rは、アルカリ金属カチオン、Ag
+及び第4級アンモニウムカチオンからなる群から選択され、Yは前述のように定義される]の化合物と反応させるステップを含み、式(I)の錯体:RYのモル比は少なくとも1:2及び最大で1:3であり、プロセスは、水又は水性溶媒中で行われることを特徴とし、水性溶媒は、約10℃~50℃の範囲の1つ以上の温度で、少なくとも60%の水(体積)及び有機溶媒を含む、プロセスを提供する。
【0091】
Rは、好適にはK+、Na+、Ag+又は[R’4N]+[式中、R’はH又はアルキルである]である。
【0092】
Yは、好適にはPF6
-、BF4
-、BPh4
-、SbF6
-、[{3,5-(CF3)2C6H3}4B]-([BArF
4]-)、CF3SO3
-(OTf)、ArFSO3
-、[(CF3SO2)2N]-(TFSI)、F、Cl、Br又はIである。
【0093】
式RYの好適な化合物の例としては、NaI、ヨウ化テトラ-n-ブチルアンモニウム、NaPF6、KPF6、AgPF6、NaBF4、KBF4、NaBArF
4が挙げられる。好ましくは、式RYの化合物は、KPF6又はAgPF6である。最も好ましくは、式RYの化合物はKPF6である。
【0094】
好ましくは、式(V)の化合物は、
[Ru(bipy)3]Y2、
[Ru(dmbpy)3]Y2、
[Ru(dtbbpy)3]Y2、
[Ru(4,4’-btfmb)3]Y2、
[Ru(5,5’-btfmb)3]Y2、
[Ru(bpz)3]Y2、
[Ru(phen)3]Y2、
[Ru(OMe-phen)3]Y2、
[Ru(bpm)3]Y2である。
【0095】
最も好ましい実施形態では、式(V)の錯体はRu(bipy)3(PF6)2である。
【0096】
別の最も好ましい実施形態では、式(V)の錯体は、Ru(1,10-フェナントロリン)3(PF6)2である。
【0097】
別の最も好ましい実施形態では、式(V)の錯体はRu(dmbpy)3(PF6)2である。
【0098】
別の最も好ましい実施形態では、式(V)の錯体はRu(bpm)3(PF6)2である。
【0099】
式(I)の錯体:RYのモル比は、1:2.0、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9又は1:3.0であってもよい。好ましくは、式(I)の錯体:RYのモル比は、1:2.0又は1:2.1である。
【0100】
成分は、任意の好適な順序で組み合わせることができるが、水又は水性溶媒中の式(I)の錯体を、水又は水性溶媒中の式RYの化合物と組み合わせることが好ましい。
【0101】
水性溶媒は、概ね上記のとおりである。
【0102】
本発明のプロセスは、約10℃~約50℃、好ましくは約15℃~約30℃、例えば、約20℃~約25℃の範囲の1つ以上の温度で実施され得る。
【0103】
一実施形態では、式(V)の錯体は、式(I)の錯体を事前に単離することなく調製される。
【0104】
次に、式(V)の錯体は、式(I)の錯体に関して上記で全般的に記載されるように単離され得る。
【0105】
式(I)又は(V)の化合物は、医薬及び農薬化合物の合成における炭素-炭素又は炭素-ヘテロ原子結合形成のためのフォトレドックス触媒としての特定の有用性を示し、例えば、Org.Process.Res.Dev.2016,20,1134-1147で説明されている。
【0106】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによって更に説明される。
【実施例】
【0107】
一般情報
全ての反応は、購入して受け取ったままの状態で使用した市販の試薬を使用し、溶媒中の窒素雰囲気下で実施した。溶剤の乾燥には注意が払われなかった。1,10-フェナントロリンはSigmaAldrichから購入し、受け取ったままの状態で使用した。2,2’-ビ-4-ピコリン(dmbpy)及び2,2’-ビピリミジンはOakwood Chemicalsから購入し、受け取ったままの状態で使用した。キログラムスケールの反応では、2,2’-ビプリジン(bipridine)及びKPF6をRennoTechから購入し、受け取ったままの状態で使用した。[Ru(Cl)2(p-シメン)]2はJohnsonMattheyから提供された。キログラムスケールの実験は、加熱及び冷却に(Huber Unistat 510)を使用してChemglass30Lジャケット付反応器で実施された。全ての1HNMR、13C NMR、31P NMR、及び19F NMRスペクトルは、Bruker Avance DRX-400スペクトル計で、周囲温度で記録され、化学シフト(δ)はppmで表された。1H及び13C NMRスペクトルは、NMR溶媒ピーク又は内部TMSを基準にした。31P NMRスペクトルは、外部リン酸標準(Sigma Aldrichから提供されたままの状態のD2O中85%)に対してキャリブレーションされた。カップリング定数(J)はHzで報告され、見かけのスプリットパターンは次の略語を使用して指定される:s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、sept(セプテット)、m(マルチプレット)、br(ブロード)、app.(見かけ)及び適切な組み合わせ。全ての反応は窒素雰囲気下で実施される。既知の単離された生成物の同一性は、文献のスペクトルデータとの比較によって確認された。1H NMR又は元素分析によって決定されたとき、単離された生成物の純度は95%超であった。
【0108】
実施例1:EtOH:H
2O溶媒組成の変化に伴う[Ru(bpy)
3][Cl]
2への変換
唯一の溶媒としてのEtOH中では、反応が進行して、約5%の所望の生成物[Ru(bpy)
3][Cl]
2しか得られなかった(実施例1A)。10:1のEtOH:H
2O比は、11%の変換で[Ru(bpy)
3][Cl]
2を提供する(実施例1B)。最初に含水量を2:1に増やし、次に1:2のEtOH:H
2O比に増やすと、[Ru(bpy)
3][Cl]
2への変換が改善された(それぞれ47%及び97%、実施例1Cと1D)。更にEtOH:H
2Oを1:2.5及び1:3に段階的に変更すると、所望の生成物[Ru(bpy)
3][Cl]
2が、それぞれ定量的変換に近く、78%及び80%の単離収率で生成した(実施例1E及び1F)。エタノール含有量を更に1:10のEtOH:H
2O比に減らすと、単離収率が92%に改善された(実施例1G)。反応混合物からエタノールを完全に除去すると、[Ru(bpy)
3][Cl]
2が100%変換され、94%の単離収率が得られた(実施例1H)。結果を表1に示す。
【化17】
【0109】
【表1】
[a]混合物の還流が記載された温度で観察された;[b]括弧内は単離収率;[c]5回の反応の平均;[d]本発明によらない
【0110】
[Ru(bpy)3][Cl]2xH2Oの調製のための溶媒スクリーニング(実施例2~7)
コンデンサー、窒素インレットアダプター、テフロンコーティングされた撹拌棒が装備された100mLの二ツ口丸底フラスコに、Ru前駆体及び2,2’-ビピリジンを入れる。フラスコを密封し、次に排気し、窒素を3回戻し充填する。溶媒を、シリンジを介して加え、反応物を指示された温度で16時間撹拌する。反応混合物を周囲温度に冷却し、貧溶媒を加える(該当する場合)。得られた混合物を30分間撹拌し、固体を濾過によって単離する。固体を特定の溶媒で洗浄し、真空で乾燥させる。得られた固体は、特定の場合にNMRスペクトル法及び元素分析によって特定される。結果を表2に示す。
【0111】
実施例2:[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(0.61g、1mmol)、2,2’-ビピリジン(0.94g、6.02mmol)、H2O(4.5mL)及びTHF(0.45mL)100℃、16時間、貧溶媒としてのアセトン(15mL)、最終生成物を洗浄するためのアセトン(2x10mL)。表題化合物が、明るい橙色の固体として得られた(1.27g、85%)。
【0112】
実施例3:[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(0.61g、1.00mmol)、2,2’-ビピリジン(0.94g、6.02mmol)、H2O(4.5mL)及びiPrOH(0.45mL)、100℃、16時間、貧溶媒としてのアセトン(15mL)、最終生成物を洗浄するためのアセトン(2x10mL)。表題化合物が、明るい橙色の固体として得られた(1.36g、91%)。
【0113】
実施例4:[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(1.00g、1.63mmol)、2,2’-ビピリジン(1.53g、9.77mmol)、MeOH(2.7mL)及びH2O(27mL)、100℃、16時間、貧溶媒として加えられたアセトン(120mL)、最終生成物を洗浄するためのアセトン(3x10mL)。表題化合物が、明るい橙色の固体として得られた(1.51g、72%)。
【0114】
実施例5:[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(1.00g、1.63mmol)、2,2’-ビピリジン(1.53g、9.77mmol)、EtOH(2.7mL)及びH2O(27mL);100℃、16時間、表題化合物が、明るい橙色の固体として得られた(2.25g、92%)。
【0115】
実施例6:[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(1.00g、1.63mmol)、2,2’-ビピリジン(1.53g、9.77mmol)、H2O(30mL)、100℃、16時間、貧溶媒として加えられたTHF(150mL)、最終生成物を洗浄するためのTHF(20mL)。表題化合物が、明るい橙色の固体として得られた(1.82g、87%)。
【0116】
実施例7:[Ru(bpy)3][Cl]2の合成の中間スケールアップの代表的な手順(表2、エントリー6):
コンデンサー、窒素インレットアダプター、テフロンコーティングされた撹拌棒が装備された1Lの多頚丸底フラスコに、[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(125.00g、203.46mmol)及び2,2’-ビピリジン(190.66g、1.22mol)を入れた。フラスコを密封し、次に排気し、窒素を3回戻し充填した。水(320mL)を加え、反応混合物を油浴中で100℃に加熱した。混合物をこの温度で16時間撹拌した。反応混合物を周囲温度に冷却し、5L金魚鉢状器に移した。アセトン(2L)を加え、得られた赤色のスラリーを30分間撹拌した。固体を濾過によって単離し、アセトン(3×300mL)で洗浄した。生成物を真空中で乾燥させ、明るい橙色の固体として得られた表題化合物(300g、99%)を得た。特性データは、以前に文献で報告されたものと一致(例えば、Inorg.Chem.2008,47,14,6427-6434を参照)。1H NMR(DMSO-d6、400 MHz):δ8.91(d、J 8.4、6H)、8.18(t、J 6.4、6H)、7.74(d、J 5.2、6H)、7.57-7.53(m、6H)、Anal.Calcd for C30H36Cl2N6O6Ru:C、48.13、H、4.85、N、11.23、Ru、13.50。Found:C、47.58、H、4.49、N、10.98、Ru、13.25。
【0117】
【表2】
[a]括弧内は単離収率;[b]THFを貧溶媒として加えた
【0118】
[Ru(bpy)
3][PF
6]
2の調製手順
【化18】
【0119】
実施例8:中間体[Ru(bpy)3][Cl]2.6H2Oの単離なしでの[Ru(bpy)3][PF6]2の調製:250mLの二ツ口丸底フラスコに[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(5.00g、8.14mmol)及び2,2-ビピリジン(7.63g、48.83mmol)を入れた。フラスコには、窒素インレットに取り付けられ、N2でパージされたコンデンサーが装備された。フラスコの第2の口からH2O(100mL)を加えた。次に、これをガラス栓で密封し、反応物を還流温度で撹拌した。16時間後、反応混合物を、周囲温度に放冷した。次に、H2O(50mL)中のNH4PF6(2.79g、17.1mmol)の溶液を加え、フラスコを更に30mLのH2Oですすぎ、次に橙色のスラリーを30分間撹拌した。次に、固体を濾過によって単離し、H2O(2×25mL)及びEt2O(2×25mL)で洗浄した。明るい橙色の生成物を真空中で乾燥させ、秤量した(7.29g)。追加のNH4PF6が必要であったので、生成物を母液と再び合わせ、H2O(50mL)中のNH4PF6(2.79g、17.1mmol)の溶液をN2雰囲気下で加え、フラスコを更に30mLのH2Oですすぎ、次に橙色のスラリーを30分間撹拌した。次に、固体を濾過によって単離し、H2O(3×50mL)及びEt2O(2×50mL)で洗浄した。明るい橙色の生成物を真空で乾燥させ、秤量した(13.60g、97%)。
【0120】
実施例9:中間体[Ru(bpy)3][Cl]2.6H2Oの単離を伴う[Ru(bpy)3][PF6]2の調製:250mLの二ツ口丸底フラスコに[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(10.0g、16.33mmol)及び2,2-ビピリジン(15.30g、97.98mmol)を入れた。フラスコには、N2インレットに取り付けられ、N2でパージされたコンデンサーが装備された。フラスコの第2の口からH2O(50mL)を加えた。次に、これをガラス栓で密封し、反応物を還流温度で撹拌した。16時間後、反応混合物を、周囲温度に放冷した。次に、反応混合物を500mLの丸底フラスコにデカントし、アセトン(300mL)を加えた。それを20分間撹拌し、次に橙色の固体を濾過によって単離し、アセトン(2×50mL)で洗浄した。得られた固体を10分間乾燥させ、次にマグネチックスターラーを入れた500mLの丸底フラスコに入れ、H2O(200mL)を加えて赤色の懸濁液を形成した。次に、H2O(50mL)中のNH4PF6(11.71g、71.85mml)の溶液を加え、フラスコを更に50mLのH2Oですすぎ、橙色のスラリーを1時間25分間撹拌した。次に、固体を濾過によって単離し、H2O(3×100mL)及びEt2O(2×50mL)で洗浄した。明るい橙色の生成物を真空中で乾燥させ、秤量した(25.67g、2回の反応からの平均収率:85%)。
【0121】
実施例10:中間体[Ru(bpy)3][Cl]2.6H2Oの単離なしでの[Ru(bpy)3][PF6]2の調製:250mLの二ツ口丸底フラスコに[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(5.00g、8.14mmol)及び2,2-ビピリジン(7.63g、48.83mmol)を入れた。フラスコには、窒素インレットに取り付けられ、N2でパージされたコンデンサーが装備された。H2O(100mL)を加え、フラスコをガラス栓で密封し、反応混合物を100℃で撹拌した。16時間後、反応混合物は周囲温度に冷却された。H2O(60mL)中のKPF6(6.59g、35.81mmol)の溶液を加え、橙色のスラリーを1時間撹拌した。固体を濾過によって単離し、H2O(3×150mL)で洗浄した。生成物を真空中で乾燥させ、表題化合物を明るい橙色の固体(13.78g、98%)として得た。
【0122】
実施例11:中間体[Ru(bpy)3][Cl]2.6H2Oの単離を伴う[Ru(bpy)3][PF6]2の調製:1000mLの二ツ口丸底フラスコに[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(125g、203.46mmol)及び2,2-ビピリジン(190.66g、1.221mol)を入れた。フラスコには、窒素インレットに取り付けられ、窒素でパージされたコンデンサーが装備された。フラスコの第2の口からH2O(320mL)を加えた。次に、これをガラス栓で密封し、反応物を還流温度(100℃)で撹拌した。16時間後、反応混合物は周囲温度に冷却された。次に、反応混合物を5Lの金魚鉢状器にデカントし、アセトン(1950mL)を加えた。それを20分間撹拌し、次に橙色の固体を濾過によって単離し、アセトン(3×300mL)で洗浄した。得られた固体を5Lの金魚鉢に入れ、H2O(2.5L)を加えた。オーバーヘッドスターラーを挿入し、次にH2O(650mL)中のKPF6(164.76g、895.15mmol)の溶液を加え、橙色のスラリーを1時間撹拌した。次に、固体を濾過によって単離し、H2O(2×750mL)で洗浄した。明るい橙色の生成物を真空中で乾燥させ、秤量した(328.89g、94%)。
【0123】
1H NMR(dmso-d6、298K):δ7.54(t、6H)、7.73(d、6H)、8.18(t、6H)、8.84(d、6H)ppm。31P{1H}NMR(dmso-d6、298K):δ-144.21(sept、1JPF=710Hz)ppm。19F{1H}NMR(dmso-d6、298K):δ72.51(d、1JFP=710Hz)ppm。Anal.calc’d for C30H24F12N6P2Ru:C 41.92%、H 2.81%、N 9.78%、P 7.21%、found:C 41.94%、H 2.75%、N 9.71%、P 7.29%
【0124】
実施例12:[Ru(bpy)3][PF6]2の合成の中間スケールアップの代表的な手順:
オーバーヘッドアジテーター、熱電対、コンデンサー、及び窒素インレットアダプターが装備された30Lジャケット付反応器に、[Ru(Cl)2(p-シメン)]2(1155g、1.88mol)、2,2’-ビピリジン(1760g、11.25mol)及び水(7L)を入れた。容器を撹拌しながら2分間排気し、次に窒素を戻し充填した。このプロセスを3回繰り返した。反応器ジャケットは115℃に設定され、コンデンサージャケットは20℃に設定された。反応混合物を101℃の内部温度に加熱し、この温度で5時間撹拌し、暗赤色の均一な溶液を得た。反応器ジャケットを25℃に設定し、混合物を30℃未満に冷却し、鮮やかな赤色の不均一なスラリーを得た。オーバーヘッドアジテーターが装備された22Lの複数口丸底フラスコにKPF6(1553g、8.44mol)及び水(15L)を入れた。フラスコを撹拌しながら2分間排気し、次に窒素を戻し充填した。このプロセスを3回繰り返した。KPF6が溶解するまで(約15分)、混合物を周囲温度で撹拌した。KPF6溶液を、蠕動ポンプを介して30分間かけて反応混合物に加え、得られた明るい橙色のスラリーを周囲温度で18時間撹拌した。スラリーを15Lのフィルターボックスで濾過し、得られた橙色の固体を水(2×4L)及びMTBE(7L)で順次洗浄した。固体をフィルターボックス上、周囲温度で16時間、窒素掃引下で乾燥させ、次に45℃の真空オーブンに48時間かけて移し、表題化合物を明るい橙色の固体(3.25kg、99%の収率)として得た。特性データは、文献で報告されたものと一致する。1H NMR(アセトンd-6、400MHz):δppm8.81(d、6H)、8.20(t、6H)、8.04(d、6H)、7.57(m、6H)、31P NMR(アセトンd-6、160MHz):δppm-142.01(sept、J 700Hz)、Anal.Calcd for C30H24F12N6P2Ru:C、41.92、H、2.81、N、9.78、。Found:C、41.76、H、2.94、N、9.96。
【0125】
【表3】
[a][Ru(bpy)
3][Cl]
2.6H
2Oの単離なし
【0126】
実施例13:中間体[Ru(phen)3][Cl]2.6H2Oの単離なしでの[Ru(phen)3][PF6]2の調製
テフロンコーティングされた撹拌が装備された20mLのシンチレーションバイアルに、[Ru(p-シメン)Cl2]2(612mg、1.0mmol)、1,10-フェナントロリン(1.08g、6.0mmol)、水(5.5mL)、及びiPrOH(0.5mL)を入れた。バイアルをスクリューキャップセプタムで密封し、穏やかな沸騰が達成されるまで撹拌しながら排気し、N2を戻し充填した。このプロセスを3回繰り返した。バイアルを100℃に予熱したアルミニウムバイアルブロックに入れ、この温度で16時間撹拌した。反応混合物を周囲温度に冷却し、空気中、100mLの丸底フラスコに移し、水(25mL)で希釈した。テフロンコーティングされた撹拌棒が装備された別個の20mLシンチレーションバイアルに、KPF6(370mg、4.0mmol)及び水(5mL)を入れた。全てのKPF6が溶解するまで混合物を撹拌した(約5分間)。KPF6溶液を、シリンジを介して10分間かけて反応混合物に滴下し移した。得られたスラリーを周囲温度で30分間撹拌した。固体を焼結ガラス漏斗で濾過し、水(3×10mL)で洗浄し、真空中、40℃で16時間乾燥させ、生成物を橙色の固体(1.60g、86%)として得た。
【0127】
1H NMR(DMSO-d6)400MHz:δppm8.78(d、6H、J=8.2Hz)、δ8.39(s、6H)、δ8.09(d、6H J=5.2Hz)、δ7.76(dd、6H、J=5.2Hz、8.2Hz)。31P NMR(DMSO-d6)160MHz:δppm-143.3(sept、JP-F=711Hz)。19F NMR(DMSO-d6)375MHz:δppm-70.13(d、JP-F=711Hz)。
【0128】
実施例14:中間体[Ru(dmbpy)3][Cl]2.6H2Oの単離なしでの[Ru(dmbpy)3][PF6]2の調製
テフロンコーティングされた撹拌が装備された20mLのシンチレーションバイアルに、[Ru(p-シメン)Cl2]2(612mg、1.0mmol)、4,4’-ジメチル-2,2’-ジピリジル(1.11g 6.0mmol)、水(5.5mL)及びiPrOH(0.5mL)を入れた。バイアルをスクリューキャップセプタムで密封し、穏やかな沸騰が達成されるまで撹拌しながら排気し、N2を戻し充填した。このプロセスを3回繰り返した。バイアルを100℃に予熱したアルミニウムバイアルブロックに入れ、この温度で16時間撹拌した。反応混合物を周囲温度に冷却し、空気中、100mLの丸底フラスコに移し、水(25mL)で希釈した。テフロンコーティングされた撹拌棒が装備された別個の20mLシンチレーションバイアルに、KPF6(370mg、4.0mmol)及び水(5mL)を入れた。全てのKPF6が溶解するまで混合物を撹拌した(約5分間)。KPF6溶液を、シリンジを介して10分間かけて反応混合物に滴下し移した。得られたスラリーを周囲温度で30分間撹拌した。固体を焼結ガラス漏斗で濾過し、水(3×10mL)で洗浄し、真空中、40℃で16時間乾燥させ、生成物を橙赤色の固体(1.71g、90%)として得た。
【0129】
1H NMR(DMSO-d6):δppm8.68(s、6H)、δ7.54(d、6H、J=5.8Hz)、δ7.33(d、6H、J=5.7Hz)、δ2.51(s、18H)。31P NMR(DMSO-d6)160MHz:δppm-143.3(m、JP-F=711Hz)。19F NMR(DMSO-d6)375MHz:δppm-70.10(d、JP-F=711Hz)。
【0130】
実施例15:中間体[Ru(bpm)3][Cl]2.6H2Oの単離なしでの[Ru(bpm)3][PF6]2の調製
テフロンコーティングされた撹拌が装備された8mLのシンチレーションバイアルに、[Ru(p-シメン)Cl2]2(150mg、0.25mmol)、2,2’-ビピリミジン(240mg、1.5mmol)、及び水(2.5mL)を入れた。バイアルをスクリューキャップセプタムで密封し、穏やかな沸騰が達成されるまで撹拌しながら排気し、N2を戻し充填した。このプロセスを3回繰り返した。バイアルを100℃に予熱したアルミニウムバイアルブロックに入れ、この温度で16時間撹拌した。反応混合物を周囲温度に冷却した。テフロンコーティングされた撹拌棒が装備された別個の8mLシンチレーションバイアルに、KPF6(185mg、1.0mmol)及び水(2.5mL)を入れた。全てのKPF6が溶解するまで混合物を撹拌した(約5分間)。KPF6溶液を、シリンジを介して5分間かけて反応混合物に滴下し移した。得られたスラリーを周囲温度で30分間撹拌した。固体をガラス焼結フリットで濾過し、水(10mL)及びメタノール(2×10mL)で順次洗浄した。得られた固体を真空中、40℃で16時間乾燥させ、生成物を淡い橙色の固体(320mg、74%)として得た。
【0131】
1H NMR(DMSO-d6):δppm9.20(d、6H、J=3.1Hz)、δ8.34(d、6H、J=4.9Hz)、δ7.71(t、6H、J=5.2Hz)。31P NMR(DMSO-d6)160MHz:δppm-143.3(m、JP-F=711Hz)。19F NMR(DMSO-d6)375MHz:δppm-70.12(d、JP-F=711Hz)。
【国際調査報告】