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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】挟まれたポリマー構造を有する眼鏡
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20221006BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02C7/06
G02B3/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022501184
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020072130
(87)【国際公開番号】W WO2021023815
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】19190462.2
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511009547
【氏名又は名称】ポライト アーエスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】カルタショフ,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクセン、ラース
(72)【発明者】
【氏名】クレイン、ピエール
(72)【発明者】
【氏名】キルピネン、ジャン タパニ
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BD00
(57)【要約】
本発明は、第1の透明カバー部材と、第2の透明カバー部材であって、第1のカバー部材は使用時に眼に面するように設けられた近位面を有し第2のカバー部材は使用時に周囲に面するように設けられた遠位面を有する第2の透明カバー部材と、1つ又は複数のアクチュエータであって第1又は第2のカバー部材の曲率の制御可能な変化を生成するように、第1は第2のカバー部材の外周に沿って第1又は第2のカバー部材に力又はトルクを生成するように設けられた1つ又は複数のアクチュエータと、第1の透明カバー部材と第2の透明カバー部材との間に挟まれた透明な変形可能な非流体本体とを備える眼鏡レンズに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-第1の透明カバー部材(211)及び第2の透明カバー部材(212)であって、前記第1のカバー部材は使用時に眼に面するように配置される近位面(213)を有し、前記第2のカバー部材は使用時に周囲に面するように配置される遠位面(214)を有する、第1の透明カバー部材(211)及び第2の透明カバー部材(212)と、
-前記第1又は前記第2のカバー部材の制御可能な曲率の変化を発生させるよう、前記第1のカバー部材又は前記第2のカバー部材(211、212)に力又はトルクを発生させるように設けられた1つ又は複数のアクチュエータ(160)と、
-前記第1の透明カバー部材と前記第2の透明カバー部材との間に挟まれた透明で変形可能な非流体本体(205)と、を備え、
-1つ又は複数の前記アクチュエータが作用する前記第1及び第2の透明カバー部材の一方は、それぞれ、1つ以上の前記アクチュエータ(160)に対する前記遠位面又は前記近位面の変位を可能にする摺動接点(304)によって、前記遠位面又は前記近位面に支持されている、
眼鏡レンズ(100)。
【請求項2】
前記近位面(213)及び/又は前記遠位面(212)は、眼から見て内側に湾曲している、
請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
1つ又は複数の前記アクチュエータが作用する前記第1及び第2の透明カバー部材の一方は、1つ又は複数の前記アクチュエータの発生力によって屈曲可能であり、
前記第1及び第2の透明カバー部材の他方は、静的な光学矯正を提供するように成形されている、
請求項1又は2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
前記眼鏡レンズは、前記非流体本体が、前記第1の透明カバー部材と前記第2の透明カバー部材との間に位置し非流体本体を取り囲む環状容積(301)内で拘束されずに拡張できるように設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記眼鏡レンズは、前記眼鏡レンズを通って眼に向かって進行する外部からの光が、前記第1及び前記第2の透明カバー部材と、前記非流体本体と、任意選択で、前記第1及び前記第2の透明カバー部材の遠位面の光学コーティングと、からなるサンドイッチ構造を通って屈折されるように設けられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記第1の透明カバー部材及び前記第2の透明カバー部材の少なくとも1つが、1つ又は複数の前記アクチュエータが前記第1又は前記第2のカバー部材にゼロ又は最小の力を与えるときに前記眼鏡レンズが非ゼロの屈折力を有するようにする初期の湾曲形状を有している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項7】
前記第1及び第2の透明カバー部材の少なくとも一方は、前記非流体本体に当接する凹状又は凸状の部分を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項8】
1つ又は複数の前記アクチュエータは、前記眼鏡レンズの少なくとも2つの所定の屈折力(413、414)を生成するように制御可能である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項9】
眼鏡レンズは、前記少なくとも2つの所定の屈折力で最小の光学誤差(406)を生じるように最適化されている、
請求項8に記載の眼鏡レンズ。
【請求項10】
1つ又は複数の前記アクチュエータは、制御信号又は電力信号を介して制御され、前記制御信号又は電力信号は、測定されたデータの関数として決定される、
請求項1から9のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項11】
1つ又は複数の前記アクチュエータは、制御信号を介して制御され、前記制御信号は、前記眼鏡レンズの所望の屈折力と、実際の屈折力に関する測定データとの間の誤差の関数として決定される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項12】
前記アクチュエータは、非給電状態で、前記第1又は前記第2の透明カバー部材の達成された曲率を維持できるリニア変位モータである
請求項1から11のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項13】
前記眼鏡レンズの一方のエッジから反対側のエッジまで延在し、かつ、前記眼鏡レンズの中心点を横切る線の最小直径が15mmである、
請求項1から12のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項14】
前記摺動接点(304)は、
1つ又は複数の前記アクチュエータ(160)を前記遠位面及び/又は前記近位面(213、214)に接続する、1つ又は複数の弾性要素(601)を有する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項15】
-少なくとも1つの請求項1に記載の眼鏡レンズと、
-1つ又は複数の前記アクチュエータに電力を供給し制御する電力兼制御回路と、
を備える、眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡に関し、特に、屈折力が調整可能なレンズを備えた眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる距離にある物体に焦点を合わせる眼の能力は、種々の理由により制限され得る。典型的には、この能力は年齢の関数として低下する。その場合、種々の屈折力を有する様々な眼鏡、又は、バイフォーカル若しくはプログレッシブ眼鏡のような異なる屈折力若しくは可変の屈折力を有する眼鏡を使用する必要がある場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの解決策は非常に有益であるが、別の眼鏡に切り替える必要性、又は、異なる内蔵屈折力を有する眼鏡を使用する必要性は、劣化しない集束能力を有する人の視力と比較すると最適ではない。
【0004】
したがって、現在利用可能な眼鏡における上述の問題及び他の制限に対して眼鏡を改善することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、眼鏡を改善すること、特には、従来の眼鏡よりもユーザフレンドリーな方法で異なる屈折力を提供する眼鏡を提供することにある。本発明の目的は、また、焦点を合わせる能力が低下した人、又は、その他の視界の制限に苦しむ人の視界を現在入手可能な眼鏡と比較してさらに改善することにある。
【0006】
本発明の第1の態様では眼鏡レンズが提供され、この眼鏡レンズは、
-第1の透明カバー部材及び第2の透明カバー部材であって、前記第1のカバー部材は使用時に眼に面するように配置される近位面を有し、前記第2のカバー部材は使用時に周囲に面するように配置される遠位面を有する、第1の透明カバー部材及び第2の透明カバー部材と、
-前記第1又は前記第2のカバー部材の制御可能な曲率の変化を発生させるよう、前記第1又は前記第2のカバー部材に力又はトルクを発生させるように設けられた1つ又は複数のアクチュエータと、
-前記第1の透明カバー部材と前記第2の透明カバー部材との間に挟まれた透明で変形可能な非流体本体と、を備え、
-1つ又は複数の前記アクチュエータが作用する前記第1及び第2の透明カバー部材の一方は、それぞれ、1つ以上の前記アクチュエータ(160)に対する前記遠位面又は前記近位面の変位を可能にする摺動接点(304)によって、前記遠位面又は前記近位面に支持されている。
【0007】
有利には、制御可能なアクチュエータは、一対の眼鏡におけるレンズの屈折力の制御を可能にし、これは、従来の多焦点又は累進レンズにおけるもののように異なる屈折力にアクセスするためにユーザがレンズの異なる部分を見る必要なしに、レンズの屈折力を変更できることを意味する。
【0008】
有利には、透明で変形可能な非流体本体は、第1又は第2のカバー部材の屈曲を支持し、それにより、屈曲の結果として生じる屈曲は球形に近づく。すなわち、非流体本体に使用されるポリマーは、アクチュエータが作動されているときに、カバー部材に加えられる力の不均一な分布を作り出す。比較として、液体中の静水圧は液体中のどこでも同じである。不均一な力分布は、いくつかの状況において、球面変形プロファイルを生成するのに有利であり得る。
【0009】
さらに非流体本体は、液体と比較して重力に対してそれほど敏感ではない。したがって、非流体本体の使用により重力効果による光学誤差が抑えられる。
【0010】
第1又は第2のカバー部材の曲率の制御可能な変化を生成するように、第1又は第2のカバー部材の円周に沿ったものなどの非流体本体の少なくとも一部を取り囲む経路に沿って、1つ又は複数のアクチュエータが第1又は第2のカバー部材に力又はトルクを生成するように配置されてもよい。
【0011】
遠位面又は近位面の1つ又は複数のアクチュエータに対する変位を可能にするように設けられた摺動接点は任意であり、他の構成では省略されてもよい。
【0012】
一実施形態によれば、近位面及び/又は遠位面は眼から見て内向きに湾曲している。
【0013】
一実施形態によれば、1つ又は複数のアクチュエータが作用する第1及び第2の透明カバー部材の一方は、1つ又は複数のアクチュエータの発生力又はトルクによって屈曲可能であり、第1及び第2の透明カバー部材の他方は静的な光学補正を提供するように成形される。
【0014】
一実施形態によれば、1つ又は複数のアクチュエータが作用する第1及び第2の透明カバー部材のうち一方は、アクチュエータに対し遠位面又は近位面の表面に沿った変位を可能にする摺動接触によって、遠位面又は近位面上でそれぞれ支持される。
【0015】
一実施形態によれば、眼鏡レンズは、非流体本体が、第1の透明カバー部材と第2の透明カバー部材との間に位置し非流体本体を取り囲む環状の容積内で拘束されずに拡張できるように設けられる。
【0016】
一実施形態によれば、眼鏡レンズは、眼鏡レンズを通って眼に向かって進行する外部からの光が、第1及び第2の透明カバー部材と、非流体本体(任意選択で、第1及び第2の透明カバー部材の遠位面上に光学コーティングを含む)とからなるサンドイッチ構造を通って屈折されるように設けられる。有利には本眼鏡レンズの単純な設計は少ない構成要素の解決策を提供する。
【0017】
一実施形態によれば、第1の及び第2の透明カバー部材のうちの少なくとも一方は、初期の湾曲形状を有し、それにより、1つ又は複数のアクチュエータが第1のカバー部材又は第2のカバー部材にゼロ又は最小の力を与えるとき、眼鏡レンズは非ゼロの屈折力を有する。
【0018】
一実施形態によれば、第1及び第2の透明カバー部材の少なくとも一方は、非流体本体に当接する凹形状又は凸形状部分を有する。
【0019】
一実施形態によれば、1つ又は複数のアクチュエータは、眼鏡レンズの少なくとも2つの所定の屈折力を生成するように制御可能である。
【0020】
一実施形態によれば、眼鏡レンズは、少なくとも2つの所定の屈折力で最小の光学誤差を生じる最適化されている。
【0021】
一実施形態によれば、1つ又は複数のアクチュエータは、制御信号又は電力信号を介して制御され、制御信号又は電力信号は測定されたデータの関数として決定される。
【0022】
一実施形態によれば、1つ又は複数のアクチュエータは、制御信号を介して制御され、制御信号は、眼鏡レンズの所望の屈折力と実際の屈折力に関する測定データとの間の誤差の関数として決定される。
【0023】
一実施形態によれば、アクチュエータは、第1又は第2の透明カバー部材の達成された曲率を非給電状態で維持できるリニア変位モータである。
【0024】
一実施形態によれば、眼鏡レンズの一方のエッジから反対側のエッジまで延在し、眼鏡レンズの中心点を横切る線の最小直径は15mmである。
【0025】
一実施形態によれば、摺動接点は、1つ又は複数のアクチュエータを遠位面及び/又は近位面に接続する1つ又は複数の弾性要素を備える。
【0026】
本発明の第2の態様は、
-第1の態様による眼鏡レンズ
-1つ又は複数のアクチュエータに電力を供給し制御する電力兼制御回路と
を備える眼鏡に関する。
【0027】
概して、本発明の様々な態様及び実施形態は、本発明の範囲内で可能な任意の方法で組み合わせ、結合することができる。本発明のこれら及び他の態様、特徴及び/又は利点は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して解明されるであろう。
【0028】
本発明の実施形態は、単に例として、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一対の眼鏡を示す図である。
図2A】眼鏡レンズの1つの正面図及びレンズの側面図を示す図である。
図2B】眼鏡レンズの1つの正面図及びレンズの側面図を示す図である。
図3A】第1のカバー部材又は第2のカバー部材のうちの1つの曲率を制御する原理を示す図である。
図3B】第1のカバー部材又は第2のカバー部材のうちの1つの曲率を制御する原理を示す図である
図3C】摺動接点を示す図である。
図4A】アクチュエータに印加される電力の関数としての屈折力及び光学誤差を示す図である。
図4B】アクチュエータに印加される電力の関数としての屈折力及び光学誤差を示す図である。
図5A】アクチュエータの代替構成を示す図である。
図5B】アクチュエータの代替構成を示す図である。
図6A】摺動接点の別の構成を主に示す図である。
図6B】摺動接点の弾性要素を主に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、眼鏡フレーム102に取り付けられた2つの眼鏡レンズ101を含む一対の眼鏡100を示す。眼鏡100は、フレーム102に組み込まれていてもよい電力兼制御回路150をさらに有しており、電力兼制御回路150は、レンズ101の屈折力の制御可能な変化を生成するために1つ又は複数のレンズ101に作用する力を発生させるように設けられた1つ又は複数のアクチュエータ160に電力を供給して制御する。主に、電力兼制御回路150及びアクチュエータ160が示されている。
【0031】
図2Aは眼鏡レンズ101の1つの正面図を示し、図2Bはレンズ101の側面図又は断面図を示す。
【0032】
レンズは、第1の透明カバー部材211と、第2の透明カバー部材212とを有する。第1の透明カバー部材211は、使用時に眼290の隣に位置するカバー部材と定義される。したがって、第2のカバー部材212は、使用時に周囲すなわち対象空間に最も近く位置するカバー部材と定義される。
【0033】
第1の透明カバー部材211の外側に面する表面は、使用時に眼290に面する近位面213と定義される。第2の透明カバー部材211の外側に面する表面は、使用時に周囲に面する遠位面214と定義される。
【0034】
レンズ101は、第1の透明カバー部材211と第2の透明カバー部材212との間に挟まれた透明で変形可能な非流体本体205を備える。非流体本体205は、第1及び第2のカバー部材211、212の内側に面する表面に当接している。
【0035】
1つ又は複数のアクチュエータ160が、第1又は第2のカバー部材211、212に力又はトルクを発生させるように第1又は第2のカバー部材の円周261に沿って設けられている。
【0036】
アクチュエータ160は、例えば、円周261に沿う幾つか点、ここでは4つの点が描かれている、に変位を加えるように設けられたリニア圧電モータなどのリニア変位アクチュエータであってもよい。
【0037】
円周261は、図示のとおり、非流体本体205が円周によって囲まれるように、透明で変形可能な非流体本体205の外側に位置してもよい。しかし、円周261は、非流体本体205の延長部内に配置されていてもよい。アクチュエータ160は、第1又は第2のカバー部材211、212のエッジ219に作用するように設けられていてもよい。
【0038】
円周261は、したがって、光軸291を含む部分又は非流体本体の中心部分などの非流体本体の少なくとも一部を取り囲む経路として理解される。
【0039】
アクチュエータがフレーム又はマウントに作用する他の構成であって、フレーム又はマウントがレンズ101に力を伝達する他の構成も可能である。この場合、単一のアクチュエータからの力又はトルクが、カバー部材211、212に分配されてもよい。フレーム又はマウントは、回転アクチュエータの回転を直線の変位に変換してもよい。
【0040】
アクチュエータ160は、表面のうちの1つ、例えば近位又は遠位面213、214、に垂直又は実質的に垂直な方向に、円周261に沿って、変位を生成するように配置されている。実質的に垂直とは、この文脈において、垂直に対して例えば10度から15度までの偏差を意味するものであってもよい。
【0041】
アクチュエータがエッジ219に作用する他の構成、例えば、エッジ219を少なくとも部分的に囲む締め付けベルトを備えるアクチュエータであってもよい。したがって、そのような他の構成では、カバー部材211、212の面に作用する力を生成するようにアクチュエータが配置されてもよい。
【0042】
以下においてより詳細に説明されるように、アクチュエータの作用は、アクチュエータによって提供される力、トルク又は変位に応じて、第1又は第2のカバー部材の曲率を変化させる。したがって、アクチュエータを制御することによって、レンズ101の屈曲及びそれによる屈折力を制御できる。
【0043】
第1の膜211又は第2の膜212の屈曲を可能にするために、アクチュエータ160と接触していない第1の膜及び第2の膜の一方が、眼鏡フレーム202の一部分によって、すなわちこの第1の膜又は第2の膜がフレーム102に固定されるように、支持されてもよい。
【0044】
図2Bの例は、第2の膜212がフレーム102、202に固定され、第1の膜211は1つ又は複数のアクチュエータ160に接続されることを示している。別の実施例では、第1の膜211がフレーム102、202に固定され、第2の膜212が1つ又は複数のアクチュエータ160に接続される。
【0045】
両方の膜がアクチュエータ160の作用によって曲げられるように、場合によっては両側のアクチュエータが独立して制御可能であるように、すなわちカバー部材の一方に加えられる変位/力が他方に加えられる変位/力から独立するように、アクチュエータは、第1及び第2の膜211、212の両方に作用するように設けられていてもよい。そのような解決策の一例が図5Aに示されており、ここでは、アクチュエータは眼鏡のフレーム120、202に固定され、カバー部材211、212はアクチュエータに固定されている。
【0046】
図5Bは、円周261に沿って配置された1つ又は複数の要素501によって構成された別のアクチュエータ160を示す。アクチュエータ160は、例えばリング形状のアクチュエータ素子501によって構成されてもよく、リング状のアクチュエータ素子501は第1及び/又は第2のカバー部材211、212の近位及び/又は遠位面213、214に取り付けられたリング状ピエゾ素子などである。
【0047】
リング状ピエゾ素子501などのリング状のアクチュエータの形態のアクチュエータ160、又は、表面実装要素501の個々の分配は、リング要素501の内部又は円周261に沿った要素501の分布が光の透過を可能にするように、光軸291の中心に配置されている。要素501に電力信号を供給することによって、要素は、半径方向(例えば光軸291に垂直な平面内において)に収縮又は拡張し、光軸291に対して基本的に回転対称である。発生した伸縮力Tはカバー部材211、212に伝達され、力Tによって発生したトルクによって屈曲が引き起こされる。図5Bにおけるレンズ101は、例えばカバー部材の両方が要素501を備える場合には図5Aのような要素501を介して、又は、カバー部材が要素501を有さない場合には図3Bのようなカバー部材を介して、フレームに接続されていてもよい。
【0048】
図5A及び5Bの構成要素は、図3Dから図3Eにおいてより詳細に説明される。
【0049】
レンズ101は光軸291を画定している。光(軸少なくともいくつかのパラアキシャルな光線について)は、光が物体空間から眼290に向かって伝搬する軸として見ることができる。第1及び第2の透明膜211、212の平面又は湾曲面、例えば平面又は湾曲した近位/遠位面213、214は、少なくとも1つの表面の点において、光軸291に垂直な平面又は接平面を画定していてもよいし、又は光軸291に垂直な平面と鋭角をなす平面又は接平面を少なくとも画定していてもよい。
したがって、第1及び第2の透明膜211、212の平面は、概して、光軸291に垂直な方向に沿って延在する。
【0050】
透明で変形可能な非流体レンズ本体205は、好ましくは弾性材料から作られる。レンズ本体は非流体であるため、レンズ本体を保持する流体密封エンクロージャは不要であり、漏れのリスクがない。好ましい実施形態では、レンズ本体は軟質ポリマーから作られ、軟質ポリマーは、シリコーン、ポリマーゲル、架橋された又は部分的に架橋されたポリマーのポリマーネットワーク、及び混和性油又は油の化合物等のいくつかの異なる材料を含んでいてもよい。非流体レンズ体の弾性率は300Paより大きくてもよく、これにより、通常動作時の重力による変形を回避することができる。
非流体レンズ体の屈折率は1.3より大きくてもよい。非流体本体205は、非流体本体205の境界における反射を低減するために、透明カバー部材211、212の屈折率と等しいか、実質的に等しいか、又はそれに近い屈折率を有してもよい。
【0051】
透明カバー部材211、212は、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、ガラス及びその他などの多数の異なる材料から作られてもよい。アクチュエータによって変形させられるように設けられた第1のカバー部材211及び第2のカバー部材212の少なくとも一方は、アクチュエータ160の作動による屈曲が可能なように適した剛性及び厚みを有している。一般に、第1及び/又は第2のカバー部材211、212の材料は、必要な剛性を提供するように5MPa~100GPaの範囲のヤング率を有する材料で形成されてよい。
例えば、ホウケイ酸ガラスのヤング率は63GPaであり、溶融石英ガラスのヤング率は72GPaである。
【0052】
第1及び/又は第2のカバー部材211、212の屈曲は、少なくとも部分的である、半径方向に変化する非流体レンズ本体105からの反力のために、これは、カバー部材111、112のSagに影響を及ぼし、したがって、Sagの変化を伴うことなく、レンズ本体を単に垂直に圧縮する代わりに、屈折力に影響を及ぼす。カバー部材の曲率に対するレンズ本体105の効果の全体の説明は、参照により本明細書に組み込まれるWO2019002524A1に記載されている。非流体レンズ本体105の材料は、実質的に非圧縮性である。この非圧縮性は、光学レンズ効果を提供する形状の第1及び/又は第2のカバー部材211、212が屈曲可能となっていることの少なくとも部分的な要因である。
【0053】
従来の眼鏡レンズと同様、レンズ101は、近位面213及び/又は遠位面214に適用された反射防止コーティング等のコーティングを備えてもよい。
【0054】
透明カバー部材211、212は、概ね厚板形状であり、湾曲、平面又はそれらの組合せを有していてもよい。厚板形状のカバー部材は、第1及び第2の表面、例えば遠位面214及び内側面216と、エッジとを備えており、湾曲は、表面のうちの少なくとも一方において少なくとも1つの方向に沿って延在している。したがって、透明カバー部材211、212は、一方向のみに沿って湾曲していてもよいし、二方向に沿って湾曲していてもよい。代替で、第1及び第2の表面の一方又は両方は平面であってもよい。例えば、カバー部材211、212の一方又は両方が平凸レンズ又は平凹レンズを構成していてもよい。
【0055】
他の厚みであってもよいが、アクチュエータによって曲げられるように設けられたカバー部材の厚みは、0.1mmから2mm、又は、0.1mmから最大10mmの範囲であってもよい。
【0056】
眼鏡レンズ101は、一方のエッジから反対側のエッジまで延び、眼鏡レンズの中心点を横切る線で定義される15mmの最小直径を有していてもよく、すなわち、レンズ101の最小直径は概して15mmより大きい。レンズ101の典型的な直径は、20mmから50mmの範囲である。
【0057】
図3A及び図3Bは、第1又は第2のカバー部材211、212の1つの曲率を制御する原理を示す。図3Aでは、第1のカバー部材211が曲面を有しており、これは、レンズが非ゼロの屈折力を生成できることを意味している。
【0058】
図3Aから図3Cに示す変形及び拡張は大きく誇張されている。また、第1のカバー部材211は、外向きに湾曲した屈曲(目の側から見て)で示されているが、内向きに湾曲した形状がより典型的であろう。しかしながら、外向き及び内向きに湾曲した屈曲形状の両方が、異なる視力矯正のために実行可能である。
【0059】
図3Aにおける第1のカバー部材211の湾曲は、アクチュエータ160によって与えられる力に起因するものであってもよい。代替で、第1のカバー部材211の湾曲は、予め形成された湾曲であってもよい。したがって、第1のカバー部材211は初期の湾曲、すなわちアクチュエータの力がない場合に存在する湾曲を有していてもよい、これは、1つ又は複数のアクチュエータが例えばアクチュエータの非給電状態において第1のカバー部材211又は第2のカバー部材212にゼロ又は最小の力を与える場合に、眼鏡レンズ101が非ゼロの屈折力を有していることを意味する。
【0060】
図3Bは、アクチュエータ160の例えば光軸の方向の変位による第1のカバー部材211の更なる屈曲を示す。更なる屈曲により、レンズ101の屈折力が変化する。
【0061】
第1のカバー部材211のさらなる屈曲により第1の膜211と第2の膜212との間の容積が減少し、これは、図3Bに示されるように非圧縮性の非流体本体205が光軸から離れ半径方向に拡張することを意味し、非流体本体205の境界は、点線で示された境界から実線で示された境界303まで拡張している。
【0062】
非流体本体205は、所望の屈曲形状からの屈曲形状の逸脱を生じさせないために、非拘束で、実質的に非拘束で、又は少なくとも低抵抗で、拡張可能でなければならない。そのような逸脱は、波面収差等の光学誤差をもたらし得る。よって、眼鏡レンズ101は、第1の透明カバー部材211と第2の透明カバー部材212との間に位置する環状の容積301であって、非流体本体205が拘束されずに拡張できる、非流体本体を囲む環状の容積301を有していてもよい。環状の容積301は、環状の容積301と周囲との間で空気が自由に又は実質的に自由に流れることができるように周囲と直接につながっていてもよい、空気で満たされた容量であり得る。
【0063】
図3Aは、第1のカバー部材211上の点Aを示している。図3Bは、第1のカバー部材211の屈曲の増加に伴って、点Aが、左側のアクチュエータ160に対して右に移動したことを示している。よって、第1又は第2のカバー部材211、212の屈曲が変化するにつれて、近位面213又は遠位面214上の位置Aは、光軸291に対して半径方向に、例えば図示の断面図では、光軸291に垂直な方向302に移動する。
【0064】
第1又は第2のカバー部材における応力を回避するために、主に図3Cに示すように、眼鏡レンズ101は摺動接点304を有している。1つ又は複数のアクチュエータによって曲げられるように設けられた第1及び第2の透明カバー部材のうちの一方が、アクチュエータ160によって又は摺動接点304を介してカバー部材に係合するアクチュエータ160の部分によって、遠位面/近位面213、214に支持されるか又は機械的に係合している。
【0065】
摺動接点304は、アクチュエータ160と遠位面/近位面213、214との間の低摩擦接触によって構成されてもよい。低摩擦収縮は、低摩擦材料のペアによって実現されていてもよく、すなわち、アクチュエータ160の接触部分の材料は、カバー部材211、212の透明材料に対して低摩擦又は充分に低い摩擦を提供すべきである。例は、ポリエチレン及び他のプラスチック材料を含む。
【0066】
摺動接点304は、近位/遠位面213、214上の所与の点がアクチュエータ160の接触部分に対してその表面に沿って変位され得ることを確実にする。
【0067】
摺動接点304は、表面と係合しているアクチュエータ160の部分に対して遠位面214又は近位面213が上記表面に沿って変位できるように構成されている。さらに、摺動接点は、アクチュエータの変位がカバー部材211、212に直接伝達されるように、支持された位置において表面に対して垂直な方向、又は、アクチュエータ160の変位の方向に剛性の(すなわち堅い)接続を提供するべきである。
【0068】
図6Aは、摺動接点304の別の構成を示しており、摺動接点は、アクチュエータ160と遠位面/近位面213、214との間に配置された弾性要素601によって構成されており、この弾性要素601はアクチュエータ160を遠位面/近位面213、214に接続している。
【0069】
弾性要素601は、アクチュエータ160と遠位面/近位面213、214との間の相対的な変位に応じて、例えばそれらの間の半径方向の変位(一例で光軸291に垂直な方向302の半径方向の移動)に応答して、弾性変形するように設けられている。
【0070】
静止xyz座標系は、例えば弾性要素601が非変形状態にあるときの弾性要素601の初期位置に対して定義されている。この例では、z軸は光軸291と平行である。
【0071】
左の図では、第1の透明カバー部材211(第2の透明カバー部材212でもある)は、初期の曲率(屈曲)を有しており、これは、事前に形成されたもの又は初期の変位によるものであってもよい。弾性要素601と第1の透明カバー部材211との界面における第1の透明カバー部材211の接触点681は、xz座標におけるx0,z0を有している。
【0072】
右の図では、アクチュエータ160は、そのピストン又は他の変位要素をz軸に沿って距離ΔL1だけ移動又は伸長させるように制御されている。この変位により、第1の透明カバー部材211に屈曲又は追加の屈曲が生じ、その結果、接触点681は、光軸に向かう接触点681の半径方向の変位及びz軸に沿った変位によって、x0、z0からx1、z1に移動する。
【0073】
第1の透明部材211の屈曲により、弾性要素601と第1の透明カバー部材211との間の界面の表面はy軸周りに、すなわち、概ね光軸291を取り囲む経路261に接する軸を中心として回転する。
【0074】
第1の透明カバー部材211とアクチュエータ160との間の相対的な半径方向の変位に応じて、図示するように、弾性要素601は、半径方向(ここではx軸に沿って示される)に弾性変形するように構成されている。
【0075】
さらに、弾性要素130は、y軸又は接線軸周りに作用するトルクTyに応じて弾性変形するように構成されている。トルクTyは、y軸周りの回転を含む第1の透明カバー部材211の屈曲によって、又は、概して第1の透明カバー部材とアクチュエータ変位要素との間の相対変位によって発生する。
【0076】
好ましくは、弾性要素130は、半径方向の変形に応じ、かつ、経路261に接する接線軸(この図ではy軸)周りの回転等の回転に応じて、低い剛性を有する。第1の透明カバー部材211の曲率に不適切に影響を与える可能性のある表面応力にさらされることなく、第1の透明カバー部材211が屈曲できるように、低い剛性が好ましく、上記第1の透明カバー部材211の曲率への不適切な影響は、変えられた曲率によって波面誤差、又は、他の屈曲偏差の増加につながる。望ましくない応力は、例えば、半径方向及び接線軸周りに作用する弾性要素601からの力及びトルクによるものである。
【0077】
他方では、弾性要素は、アクチュエータの変位をカバー部材211、212に伝達するために、アクチュエータ150の変位方向において、すなわちz軸に沿って又は光軸291に沿って、高剛性を有していることが好ましい。
【0078】
弾性要素601は、第1又は第2の透明カバー部材211、212に固定された第1の部分611(例えば、カバー部材211、212に接触する弾性要素の表面)と、アクチュエータ160又はその変位要素に固定された第2の部分612(例えば、アクチュエータ160に接触する表面)とを有する構造として定義できる。第1及び第2の部分611、612は、互いに対して、例えば光軸291に向かう半径方向に弾性的に変位することができるように弾性的に接続されている。弾性要素601は、シリコーン、ポリマー、金属、プラスチック、及び他の材料などの弾性材料で単一部材として製造されていてもよい。一例では、弾性要素601は、アクチュエータ160を透明カバー部材に接続するために塗布された接着剤から形成される。
【0079】
よって、摺動接点304を構成している弾性要素601により、カバー部材の屈曲に応じて、アクチュエータ160のカバー部材に係合する部分(接点681など)に対する、第1又は第2の透明カバー部材211、212の変位が可能となる。
【0080】
別の例によると、弾性要素601は、アクチュエータ160と遠位面/近位面213、214との間に配置されたばね要素として構成される。例えば、ばね要素は、半径方向に比較的低い剛性を有し、接線軸周りには比較的低い回転剛性を有し、一方、光軸に沿って比較的高い剛性を有する屈曲要素として構成されてもよい。
【0081】
図6Bは、ばね要素651を含む弾性要素601を主に示している。左の図は、アクチュエータ160が力を生成していない、すなわちF=0の状態における、ばね要素651を含む弾性要素601(弾性要素の一部)を示している。したがって、第1の透明カバー部材211は、アクチュエータによって曲率が変化していない状態である。
【0082】
右側の図では、アクチュエータの変位要素が、ΔL1のz軸の変位を引き起こすように作動されている。z軸の変位は、第1の透明カバー部材211の屈曲によって少なくとも部分的に引き起こされる反力に起因してz方向に非ゼロの釣り合い力F1(すなわち、カバー部材の静止屈曲状態にある)を生成する。アクチュエータ160によって生成されるz軸の変位が、誇張して示されているように第1の透明カバー部材211を屈曲させる。屈曲は、z軸のΔL1の変位に加えて、x軸に沿う第1の部分611の半径方向変位(ここでは右への変位)と、y軸周りの第1の部分611の回転とを引き起こす。
【0083】
摺動要素接点304は、ばね要素651及び弾性材料の両方を備えてもよいことが理解され、このような両方のものとしては、例えば、第1及び/又は第2の部分611、612と第1又は第2の透明カバー部材211、212の表面との間に配置された弾性接着剤である。
【0084】
したがって、概して、弾性要素601及び/又は低摩擦接触によって構成される摺動要素接点304の例は、アクチュエータ160によって生成される変位(特に接触点681の半径方向の変位A(それぞれ図6A図3C))に同じ摺動応答を提供し、また、第1又は第2のカバー部材211、212の屈曲を指示する回転、及び、第1又は第2のカバー部材へのアクチュエータ変位の伝達に同じ摺動応答を提供する。
【0085】
第1又は第2のカバー部材211、212の取り得る構成では、第1又は第2のカバー部材は、補強リング(図示せず)などの補強要素を有する。補強要素は、円周261に沿うように環状に成形されてもよく、例えば、カバー部材211、212の遠位/近位面213、214に接着されてもよい。補強材要素は、金属又は他の剛性材料から作製されてもよい。この構成では、アクチュエータ160の接触部分、すなわちカバー部材211、212と接触するように配置された部分は、例えば摺動接点304を介して補強リングに接触する。明らかに、補強要素の半径方向の延在は、屈曲によるカバー部材211、212の表面の半径方向の変位に適応するように十分大きくなければならない。
【0086】
図3Dは、第1の透明カバー部材211の近位面213及び第2の透明カバー部材212の遠位面214の両方が、眼から見て、内向きに湾曲している(内向きに膨らんでいる、又は凹状である)例を示している。内向きに湾曲した形状は、検眼の理由から、又は眼鏡の魅力的な設計を提供するために好ましいことがある。また、第1の透明カバー部材211の近位面213及び第2の透明カバー部材212の遠位面214の一方のみが、眼290から見て凹状であってもよい。アクチュエータ160によって曲げられるように構成されたカバー部材211、212のうちの1つの内向きに湾曲した形状は、カバー部材の事前の成形によるものであってもよい。よって、内向きに湾曲した形状の曲率は、可変の屈折力を提供するようにアクチュエータ160によって変更されてもよい。
【0087】
図3Dはまた、第1のカバー部材211の近位面213及び内側表面315の曲率が異なり、同様に、第2のカバー部材211の遠位面214及び内側表面316が異なることを示している。所与のカバー部材211、212の異なる曲率は、従来の眼鏡レンズで使用されるような屈折力又は光学補正を提供する。また、第1のカバー部材と第2のカバー部材のいずれか一方のみが異なる曲率を有するようにしてもよい。例えば、第1及び第2の透明カバー部材211、212のうちアクチュエータによって曲げられるように設けられていないものが、静的な光学矯正を提供するように成形されてもよい。静的光学矯正は、近視、遠視、乱視等の矯正を含んでもよい。
【0088】
図3Eは、アクチュエータによって曲げられるように設けられていない第1及び第2の透明カバー部材211、212の一方が、例えば光軸を中心とする凸状部分330を有する例を示しており、この凸状部分330は内面316の一部を形成している。凸部は、非流体本体205に当接する。
【0089】
概して、第1及び第2の透明カバー部材211、212のいずれか又は両方は、内面316の一部を形成し非流体本体205に当接する凹状又は凸状の形状部分330を有するように構成されていてもよい。例えば、凹形状部分330は、有利には反対側のカバー部材に機械的な支持を提供し、したがって屈曲の制御をアシストするドーム形状の特徴部を提供する。ドームの形状は、対向部材のカバー部材の形状のための型として少なくとも部分的に作用するように設計されていてもよい。さらに、ドーム状又は凸状の突起は、対向するカバー部材のより大きな変形を可能にしてもよい。
【0090】
図4Aは、主に、曲線405によって表される、アクチュエータ160に印加される制御又は電力信号401と、結果として生じる光電力402との間の関係を示している。曲線405は、屈折力が最小値から最大値まで連続的に変化し得ることを示している。レンズ101は、最小屈折力から最大屈折力まで最大3、最大5、又は場合によっては最大7のジオプタの変化を提供するように構成されてもよい。したがって、屈折力は、ユーザの眼の必要性に応じて連続的に調整され得る。
【0091】
他の状況では、例えば、従来の眼鏡に似た眼鏡100を提供するために、屈折力の連続的な変化が好ましくない場合がある。よって、制御システム150は、眼鏡レンズ101の所定の屈折力の間でシフトするように構成されていてもよい。図4Aは、制御信号又は電力信号の2つの値403、404でアクチュエータを制御することによって、2つの所定の屈折力413、414を提供するようにレンズ101を制御できることを示している。値403、404は、予め決定されてもよく、他のデータの関数として決定されてもよく、又はフィードバック関数を介して決定されてもよい。したがって、1つ又は複数のアクチュエータは、レンズ101の少なくとも2つの所定の屈折力を生成するように制御可能であってもよい。
【0092】
図4Bは、曲線407によって表される波面歪み誤差又は収差誤差などの光学誤差406を、制御又は電力信号401の関数として示している。図示のように、光学誤差406は、屈折力402の2つの値に対応する制御又は電力信号401の2つの値に対して最小化される。光学誤差406は、所望の所定の屈折力413、414で最小の光学誤差を提供するように第1及び第2のカバー部材211、212の事前に成形された曲率を最適化することによって、2つ以上の屈折力について最小化されてもよい。
【0093】
制御又は電力信号、すなわちアクチュエータを制御するために間接的に使用される制御信号、又は、アクチュエータに電力を供給するために直接使用される電力信号は、予め決められていてもよく、すなわち、制御又は電力信号の1つ又は複数の値と対応する屈折力402との間の予め決められた関係が使用されてもよい。この関係は、制御回路150に含まれるメモリに記憶されてもよい。
【0094】
結果として生じる屈折力は、温度、アクチュエータの使用履歴、寿命、及び他のパラメータ等の種々の要因に依存し得るため、代替として、制御又は電力信号は、測定された温度、圧電素子に基づくアクチュエータ160の場合の測定された容量、経時的な変位幅の測定された変化等の測定データの関数として決定されてもよい。
【0095】
眼鏡100は、眼鏡100の使用者が注視している物体とレンズ101との距離を測定可能な距離センサを備える構成であってもよい。そのようなセンサは、飛行時間(time-of-flight)センサ又は他のものであってもよい。この場合、制御信号又は電力信号は、眼鏡レンズの所望の屈折力と、測定距離などの所望の実際の屈折力に関する測定データとの間の誤差の関数として決定できる。アイトラッキングは、視線方向を追跡するために眼鏡において実施することができる。そのようなアイトラッキングは、距離センサと組み合わせて使用されてもよく、どの距離が測定されるべきかを判定し、したがって、距離及び関連する屈折力を正確に判定してもよい。
【0096】
アクチュエータ160は、リニア圧電モータ又は電磁リニアモータなどのリニア変位モータであってもよい。圧電モータは、電力がモータに供給されないときにリニア出力部材の達成された変位を維持することができるので有利であり得る。したがって、第1又は第2の透明カバー部材211、212の曲率が、非電力供給状態すなわち電力がモータに供給されていないときに維持され得る。これは、屈折力が変更されるときに電力が主に必要とされるので、電力消費を低減するという利点がある。
【0097】
制御回路150は、制御又は電力信号を生成する電子回路及び/又はデジタルプロセッサを備えていてもよく、電子回路及び/又はデジタルプロセッサは、任意選択で、制御又は電力信号を決定するための測定データを取得してもよく、及び、フィードフォワード又はフィードバック制御アルゴリズムを使用してアクチュエータを制御してもよい。

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
【手続補正書】
【提出日】2022-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-第1の透明カバー部材(211)及び第2の透明カバー部材(212)であって、前記第1の透明カバー部材は使用時に眼に面するように配置される近位面(213)を有し、前記第2の透明カバー部材は使用時に周囲に面するように配置される遠位面(214)を有する、第1の透明カバー部材(211)及び第2の透明カバー部材(212)と、
-前記第1又は前記第2の透明カバー部材の制御可能な曲率の変化を発生させるよう、前記第1の透明カバー部材又は前記第2の透明カバー部材(211、212)に力又はトルクを発生させるように設けられた1つ又は複数のアクチュエータ(160)であって、前記近位面又は前記遠位面に垂直又は実質的に垂直な方向に変位を生成するように設けられている1つ又は複数のアクチュエータ(160)と、
-前記第1の透明カバー部材と前記第2の透明カバー部材との間に挟まれた透明で変形可能な非流体本体(205)と
-摺動接点(304)であって、前記1つ又は複数のアクチュエータ(160)が前記摺動接点(304)を介して前記近位面又は遠位面に機械的に係合し、前記摺動接点は、前記遠位面又は近位面に沿った前記アクチュエータに対する前記遠位面又は近位面の変位を可能にするように構成され、かつ、前記摺動接点は、係合位置における前記近位面又は遠位面に垂直な方向若しくは前記前記アクチュエータの変位の方向に堅い接続を提供するように設けられ、これにより、前記アクチュエータの変位が前記第1又は第2の透明カバー部材(211、212)に直接伝達可能に構成されている摺動接点(304)と、
を備える、眼鏡レンズ(100)。
【請求項2】
前記近位面(213)及び/又は前記遠位面(212)は、眼から見て内側に湾曲している、
請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
1つ又は複数の前記アクチュエータが作用する前記第1及び第2の透明カバー部材の一方は、1つ又は複数の前記アクチュエータの発生力によって屈曲可能であり、
前記第1及び第2の透明カバー部材の他方は、静的な光学矯正を提供するように成形されている、
請求項1又は2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
前記眼鏡レンズは、前記非流体本体が、前記第1の透明カバー部材と前記第2の透明カバー部材との間に位置し非流体本体を取り囲む環状容積(301)内で拘束されずに拡張できるように設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記眼鏡レンズは、前記眼鏡レンズを通って眼に向かって進行する外部からの光が、前記第1及び前記第2の透明カバー部材と、前記非流体本体とを有するサンドイッチ構造を通って屈折されるように設けられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記第1の透明カバー部材及び前記第2の透明カバー部材の少なくとも1つが、1つ又は複数の前記アクチュエータが前記第1又は前記第2の透明カバー部材にゼロ又は最小の力を与えるときに前記眼鏡レンズが非ゼロの屈折力を有するようにする初期の湾曲形状を有している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項7】
前記第1及び第2の透明カバー部材の少なくとも一方は、前記非流体本体に当接する凹状又は凸状の部分を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項8】
1つ又は複数の前記アクチュエータは、前記眼鏡レンズの少なくとも2つの所定の屈折力(413、414)を生成するように制御可能である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項9】
眼鏡レンズは、前記少なくとも2つの所定の屈折力で最小の光学誤差(406)を生じるように最適化されている、
請求項8に記載の眼鏡レンズ。
【請求項10】
1つ又は複数の前記アクチュエータは、制御信号又は電力信号を介して制御され、前記制御信号又は電力信号は、測定されたデータの関数として決定される、
請求項1から9のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項11】
1つ又は複数の前記アクチュエータは、制御信号を介して制御され、前記制御信号は、前記眼鏡レンズの所望の屈折力と、実際の屈折力に関する測定データとの間の誤差の関数として決定される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項12】
前記アクチュエータは、非給電状態で、前記第1又は前記第2の透明カバー部材の達成された曲率を維持できるリニア変位モータである
請求項1から11のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項13】
前記眼鏡レンズの一方のエッジから反対側のエッジまで延在し、かつ、前記眼鏡レンズの中心点を横切る線の最小直径が15mmである、
請求項1から12のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項14】
前記摺動接点(304)は、
1つ又は複数の前記アクチュエータ(160)を前記遠位面及び/又は前記近位面(213、214)に接続する、1つ又は複数の弾性要素(601)を有する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項15】
-少なくとも1つの請求項1に記載の眼鏡レンズと、
-1つ又は複数の前記アクチュエータに電力を供給し制御する電力兼制御回路と、
を備える、眼鏡。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
図1】一対の眼鏡を示す図である。
図2A】眼鏡レンズの1つの正面図及びレンズの側面図を示す図である。
図2B】眼鏡レンズの1つの正面図及びレンズの側面図を示す図である。
図3A】第1のカバー部材又は第2のカバー部材のうちの1つの曲率を制御する原理を示す図である。
図3B】第1のカバー部材又は第2のカバー部材のうちの1つの曲率を制御する原理を示す図である
図3C】摺動接点を示す図である。
図3D第1の透明カバー部材の近位面及び第2の透明カバー部材の遠位面の両方が、眼から見て、内向きに湾曲している(内向きに膨らんでいる、又は凹状である)例を示す図である。
図3Eアクチュエータによって曲げられるように設けられていない第1及び第2の透明カバー部材の一方が例えば光軸を中心とする凸状部分を有する例を示す図である。
図4A】アクチュエータに印加される電力の関数としての屈折力及び光学誤差を示す図である。
図4B】アクチュエータに印加される電力の関数としての屈折力及び光学誤差を示す図である。
図5A】アクチュエータの代替構成を示す図である。
図5B】アクチュエータの代替構成を示す図である。
図6A】摺動接点の別の構成を主に示す図である。
図6B】摺動接点の弾性要素を主に示す図である。
【国際調査報告】