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特表2022-543756マグネシア-カーボン製品の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】マグネシア-カーボン製品の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/80 20060101AFI20221006BHJP
   C01F 11/02 20060101ALI20221006BHJP
   C04B 35/043 20060101ALI20221006BHJP
   C21C 5/44 20060101ALI20221006BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C04B41/80 A
C01F11/02 B
C04B35/043
C21C5/44 Z
F27D1/00 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505483
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2020067309
(87)【国際公開番号】W WO2021023424
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】19190128.9
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503069193
【氏名又は名称】リフラクトリー・インテレクチュアル・プロパティー・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ・ケーニヒスホーファー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ピリバウアー
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・ニリカ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ランメル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ハイト
【テーマコード(参考)】
4G076
4K051
4K070
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA15
4G076AA30
4G076AB01
4G076BC10
4G076BF10
4G076CA01
4G076DA30
4K051AA02
4K051AA05
4K051BE01
4K070CC03
(57)【要約】
本発明は、マグネシア-カーボン製品の処理方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシア-カーボン製品を処理する方法であって、次の各工程:
A. マグネシア-カーボン製品を使用に供する工程であって、
前記マグネシア-カーボン製品が、次の各特徴:
A.1 マグネシアと炭素を主成分とすること
A.2 Alの割合を含むこと
を有する工程、
B. 水を使用に供する工程、
C. ガスを使用に供する工程であって、
前記ガスが、次の各特徴:
C.1 二酸化炭素を含むこと
C.2 二酸化炭素が前記ガス中に占める割合は、二酸化炭素が空気中に占める割合を上回ること
を有する工程、
D. 一つのチャンバを取り囲んでいる容器を使用に供する工程、
E. 前記チャンバ内に前記マグネシア-カーボン製品を用意する工程、
F. 前記チャンバに
F.1 温度、及び
F.2 圧力
を、前記チャンバ内に前記水及び前記ガスを同時に用意しながら、加える工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記マグネシア-カーボン製品が、使用済みマグネシア-カーボン製品である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マグネシア-カーボン製品及び前記水が、前記チャンバ内において水のAlに対するモル比が最低でも8対1となるような割合で、前記チャンバ内に用意される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス及び前記水が、前記チャンバ内において二酸化炭素の水に対するモル比が少なくとも1対1となるような割合で、前記チャンバ内に用意される、請求項1から3の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記チャンバに、100℃から320℃までの範囲内の温度が加えられる、請求項1から4の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記チャンバに、0.1MPaから6MPaまでの範囲内の圧力が加えられる、請求項1から5の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガスが二酸化炭素ガスである、請求項1から6の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記容器により取り囲まれた前記チャンバが、前記マグネシア-カーボン製品を前記チャンバ内に用意した後に気密式に封止される、請求項1から7の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記容器がオートクレーブである、請求項1から8の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記マグネシア-カーボン製品が、前記マグネシア-カーボン製品の総質量に対して最低でも0.1質量%の割合でAlを含む、請求項1から9の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マグネシア-カーボン製品が、前記マグネシア-カーボン製品の総質量に対して最低でも69質量%の割合でMgOを含む、請求項1から10の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マグネシア-カーボン製品が、前記マグネシア-カーボン製品の総質量に対して最低でも1質量%の割合で炭素を含む、請求項1から11の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記加温加圧工程の間にAlの少なくとも一部が分解するように、前記チャンバが加温加圧される、請求項1から12の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
分解されたAlが少なくとも部分的に反応して水酸化アルミニウムに変化する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
更に次の各工程:
G. 前記マグネシア-カーボン製品を前記チャンバから搬出する工程、
H. 前記マグネシア-カーボン製品に一つ又は更に別の複数の材料を混合して、混合物を得る工程、
I. 前記混合物から耐火製品を製造する工程
を含む、請求項1から14の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシア-カーボン製品の処理方法に関する。
【0002】
本発明に言うマグネシア-カーボン製品とは、マグネシア(化学的には:MgO、鉱物学的には:ペリクレース)と炭素(遊離炭素の形態:化学的には:C)を主成分とする製品である。
【背景技術】
【0003】
そのようなマグネシア-カーボン製品の主な応用分野は、マグネシア-カーボン耐火製品としての用途である、即ちそのようなマグネシア-カーボン製品は高温で使用されるようになっている。
【0004】
マグネシア-カーボン製品のそのような耐火適用のための使用例は特に、鉄鋼業におけるマグネシア-カーボン製品の使用に見出されるが、そこではマグネシア-カーボン耐火製品が、特に酸素吹込転炉の耐摩耗ライニングとして、電気アーク炉及び鋼製取鍋の耐火ライニングとして、更には連続鋳造における機能性製品として、使用されるようになっている。
【0005】
マグネシア-カーボン製品の諸特性に影響を与えると共に、特にマグネシア-カーボン製品中の炭素の酸化を抑止するために、マグネシア-カーボン製品に所謂酸化防止剤を添加することが知られている。特にアルミニウム粉末も、そのような酸化防止剤として知られている。マグネシア-カーボン製品の導入運用中にアルミニウム金属粉末はマグネシア-カーボン製品の炭素と反応して、アルミニウムカーバイド(Al)が生成される。
【0006】
マグネシア-カーボン製品は導入運用することにより摩耗を受けるために、導入運用の間に所定の時間が経過すると、その指定の場所から取り外して新しいマグネシア-カーボン製品と交換してやらなければならない。
【0007】
使用済みの取り外したマグネシア-カーボン製品は、その摩耗後にもマグネシアと炭素を尚も主成分としている。このため基本的にはそのような使用済みマグネシア-カーボン製品を、新しい製品、特に新しいマグネシア-カーボン製品を製造するために使用に供することができるようにすることが生態学的経済的理由からも望まれる。しかし、使用済みマグネシア-カーボン製品を、新しいマグネシア-カーボン製品を製造するための原料として使用するに当たっては、導入運用の間にマグネシア-カーボン製品中に生成されたアルミニウムカーバイド(Al)がマグネシア-カーボン製品中に占める割合が問題となっている。と言うのもAlは、水の存在下で、次の化学反応式(I):
Al+12HO→4Al(OH)+3CH↑ (化学反応式I)
に従って反応して、三水酸化アルミニウムとメタンに変化するか、又は次の化学反応式(II):
Al+8HO→4AlO(OH)+3CH↑ (化学反応式II)
に従って反応して、水酸化酸化アルミニウムとメタンに変化するからである。
【0008】
それに加えて化学反応式Iに従って生成された酸化アルミニウム(Al(OH))も、又化学反応式IIに従って生成された水酸化酸化アルミニウム(AlO(OH))も、製品の加温下で酸化アルミニウム(Al)と水(HO)に分解するが、その際にこの水は水蒸気として漏れ出るようになっている。
【0009】
以下では、三水酸化アルミニウム及び水酸化酸化アルミニウムの両水酸化物の内一方又は両方をひっくるめて「水酸化アルミニウム」と呼ぶ。
【0010】
このため使用済みマグネシア-カーボン製品を使用して製造された耐火製品中には、特に製品の焼戻し時に化学反応式I及びIIに従って水酸化アルミニウム及びメタンの生成をきたすことがある。その反応のために必要となる水は、特に使用される結合剤の成分として存在し得るが、しかし湿気がそれに利用されることもある。メタン(CH)は、メタンガスとして漏れ出し、その点では実質的に何の問題もない一方で、水酸化アルミニウムの生成は問題である、何故なら水酸化アルミニウムはAlよりも高体積であり、このため水酸化アルミニウムの生成は製品の内部における体積増加と抱き合わせになっているからである。しかしながらこの体積増加により製品には内部応力が発生することがあり、それが耐火製品の損傷につながることがある。そのような損傷は、特に亀裂若しくはスポーリングの形で顕在化することがあるが、そうなると耐火製品の完全破壊にもつながりかねないことになる。このためAlの割合を含む未処理の使用済みマグネシア-カーボン製品を、新しい耐火製品を製造するための原料として使用することは不可能であるか、又は使用するとしても極々微量に限られている。
【0011】
このため、Alの割合を含有している使用済みマグネシア-カーボン製品を、新しい耐火製品を製造するための原料として投入できるようにするための前処理法について、試行錯誤が行われたことは過去一度もなかったのである。
【0012】
特にそのような使用済みマグネシア-カーボン製品は、耐火製品の製造用原料として使用する前には、Alを水酸化アルミニウムとメタンに分解するために、流水を振り掛けたり、水浴に浸漬させたりすることが行われていた。もっともその際のAlの水酸化アルミニウム生成反応は、量的に限りがあったり、遅々として進まなかったりするために、Alのかなりの部分が使用済みマグネシア-カーボン製品中に残留したり、反応に最大で数週間も要したりすることもあり、経済的観点から問題となっている。それに加えて、マグネシア-カーボン製品をこのように処理する場合、使用済みマグネシア-カーボン製品中にブルーサイト(Mg(OH):水酸化マグネシウム)の生成をきたすことがある。しかしながらブルーサイトは、そのような使用済みマグネシア-カーボン製品を使用して製造される製品の諸特性を悪化させることがある、何故なら特にその強度が低下することがあるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、マグネシア-カーボン製品中にAlが占める割合を、従来技術から知られる様々な技術を利用した場合に可能となる以上に顕著且つ急速に低減できるようにする、Alを含むマグネシア-カーボン製品の処理方法を提供することを課題として成されたものである。
【0014】
本発明の更にもう一つの課題は、ブルーサイトの生成を同時に抑止可能である、そのような方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題を解決するために、本発明によれば、次の各工程
マグネシア-カーボン製品を使用に供する工程であって、
前記マグネシア-カーボン製品が、次の各特徴:
マグネシアと炭素を主成分とすること
Alの割合を含むこと
を有する工程、
水を使用に供する工程、
ガスを使用に供する工程であって、
前記ガスが、次の各特徴:
二酸化炭素を含むこと
二酸化炭素が前記ガス中に占める割合は、二酸化炭素が空気中に占める割合を上回ること
を有する工程、
一つのチャンバを取り囲んでいる容器を使用に供する工程、
前記チャンバ内に前記マグネシア-カーボン製品を用意し、
前記チャンバに、
温度、及び
圧力
を、前記チャンバ内に前記水及び前記ガスを同時に用意しながら、加える工程
を含む、マグネシア-カーボン製品を処理する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例によるマグネシアカーボン煉瓦の形態を取る耐火製品を示す。
図2】本発明の比較例によるマグネシアカーボン煉瓦の形態を取る耐火製品を示す。
図3】本発明に従った方法の更にもう一つの実施例の著しく簡略化したフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の根底にあるのは、本発明に従った方法により、マグネシア-カーボン製品中に占めるAlの割合を実効的に低減可能である、詳しく言うと特に従来技術から知られる技術を利用した場合と比べより実効的且つ急速にも低減可能であるという意外な知見である。特に意外なことにも本発明に従った方法を利用することにより、本方法の実行中にはマグネシア-カーボン製品中に占めるAlの全量をマグネシア-カーボン製品から完全に除去可能であるか、若しくは別の物質に、特に水酸化アルミニウムとメタンに転換可能であることが判明している。特に意外なことにも本発明に従った方法を利用することにより、マグネシア-カーボン製品中に占めるAlの割合を実効的に低減可能であるだけではなく、同時にブルーサイトの生成も抑止可能であることが判明している。特に本発明の根底にあるのは他にも、特にマグネシア-カーボン製品を加温加圧する場合は、この加温加圧が同時に水を用意しながら、二酸化炭素(CO)がガス中に占める割合が、二酸化炭素が空気中に占める割合を上回っているガス雰囲気中で実行される限り、マグネシア-カーボン製品に占めるALの割合を低減可能であると同時にブルーサイトの生成を抑止可能であるという意外な知見である。
【0018】
本発明に従った方法の非常に好ましい実施形態の一例においては、容器がオートクレーブとなっている。その限りにおいて、マグネシア-カーボン製品は、オートクレーブにより取り囲まれたチャンバ内に用意されて、そこで水とガスを同時に用意した上で加温加圧されることになる。
【0019】
本発明に従った方法のために使用に供されるオートクレーブの形態を取る容器は、基本的には従来技術から知られている、内部に入れた製品を加温加圧することができる任意のオートクレーブであると良い。非常に好ましいのは、内部で水蒸気を超過圧力下で使用に供することができるようなオートクレーブである。
【0020】
別の非常に好ましい実施形態においては、チャンバ内で高温水蒸気を超過圧力下で使用に供することによって、チャンバが加温加圧されるようになっている。この高温水蒸気により、水がチャンバ内で使用に供されることを実現すると同時にチャンバを加温加圧できるようにしている。この点で本発明に従った方法を実行するために使用に供されるオートクレーブの形態を取る容器は、例えば内部で水を超過圧力下で使用に供することができるようなオートクレーブであると良い。
【0021】
その場合は、例えば高温水蒸気を超過圧力下でオートクレーブのチャンバ内に導入したり、チャンバ内で高温水蒸気を発生させたりすることによって、チャンバ内で水が使用に供されることを実現すると共にチャンバの加温加圧を行うことができる。
【0022】
チャンバ内には、次の化学反応式I:
Al+12HO→4Al(OH)+3CH↑ (化学反応式I)
及び化学反応式II:
Al+8HO→4AlO(OH)+3CH↑ (化学反応式II)
で表される式の内最低でも一方に従って、チャンバ内に用意されたマグネシア-カーボン製品中のAlの割合が、水と完全若しくは少なくとも実質的に反応して、三水酸化アルミニウムとメタン、又は水酸化酸化アルミニウムとメタンに変化することができるような量の水が用意されることが好ましい。
【0023】
更にAlが水と完全に反応するために必要とされる水のAlに対するモル比は、化学反応式Iによれば12:1となり、化学反応式IIによれば8:1となる。
【0024】
同様にチャンバ内には、マグネシア-カーボン製品と水が、チャンバ内の水のAlに対するモル比が最低でも8:1となるような割合で用意されるようにすることが好ましい。しかしながらAlが水と完全に反応するために必要な水の量が確実に使用に供されるようにするためには、特に本発明に従って、水のAlに対するモル比が最低でも12:1となるようにすると、特に12:1よりも僅かだけ大きくなるようにすると良い。しかしながら本発明によれば、水が過剰である場合、即ち水のAlに対するモル比が12:1を大幅に上回る場合は、ブルーサイトの生成をきたし得ることが判明している。しかしながらこのブルーサイトの生成は、少なくとも水のAlに対するモル比が15:1を大幅に上回ることがない限り、本発明に従って、二酸化炭素がガス中に占める割合が、二酸化炭素が空気中に占める割合を上回っているガスを用意することにより、抑止することができる。このため本発明に従った方法を実行する際には、チャンバ内の水のAlに対するモル比を最大でも15:1とすることが好ましい。
【0025】
したがって、本発明に従った方法を実行する際のチャンバ内の水のAlに対するモル比は8:1から15:1までの範囲内であると好ましく、12:1から15:1までの範囲内であると尚も好ましい。
【0026】
上記で詳述したように、本発明に従った方法の実行中には、チャンバ内のマグネシア-カーボン製品を加温加圧する間に、同時に水を用意した上で、更にそれに追加して、二酸化炭素がガスに占める割合が、二酸化炭素が空気中に占める割合を上回っている、二酸化炭素含有ガスも同時に用意することによって、ブルーサイトの生成抑止をもたらすことができる。そのためには例えばそのような二酸化炭素含有ガスをチャンバ内に導入してやると良い。二酸化炭素が空気中に占める割合は約0.04体積%であるために、本発明に従った方法のために使用に供されるガスには、ガスの全体積に対して0.04体積%を上回る割合で二酸化炭素が含まれることになる。実施形態の一例においては、二酸化炭素が占める割合がガス体積に対して1体積%から100体積%までの範囲内にある、特に50体積%から100体積%までの範囲内にある二酸化炭素含有ガスが使用に供されるようになっている。別の実施形態においては、二酸化炭素含有ガスとして、二酸化炭素ガス(即ち二酸化炭素が占める割合が100体積%であるガス)を使用に供することが企図されている。容器としてオートクレーブが使用に供される限り、そのような二酸化炭素含有ガスをオートクレーブにより取り囲まれたチャンバ内に導入してやると良い。本発明によれば、本発明に従った方法の実行中に、チャンバ内の二酸化炭素の水に対するモル比が1:1になるような割合で二酸化炭素を含むガスを用意すると、本発明に従った方法の実行中のブルーサイトの生成を実効的に抑止可能であることが判明している。したがってチャンバ内の二酸化炭素の水に対するモル比は1:1であると非常に好ましい。このモル比が厳密に守られないようであれば、その限りにおいて、チャンバ内の二酸化炭素の水に対するモル比を、好ましくは最低でも1:2、尚も好ましくは最低でも2:3、それよりも尚も好ましくは最低でも1:1とすると良い。それに加えてチャンバ内の二酸化炭素の水に対するモル比を、好ましくは最大でも4:1、尚も好ましくは最大でも3:1、それよりも尚も好ましくは最大でも2:1とすると良い。好ましい実施形態の一例においては、チャンバ内の二酸化炭素の水に対するモル比が、2:3から3:1までの範囲内、尚も好ましくは1:1から2:1までの範囲内となっている。
【0027】
本発明に従った方法の実行中には、本発明に従ってチャンバに100℃から320℃までの範囲内の温度が加えられるようにすると好ましいが、これは、この温度範囲内で、同時に本発明に従ってチャンバを加圧し、更に水と二酸化炭素含有ガスを用意してやると、Alからの水酸化アルミニウムの生成を達成可能である上に、ブルーサイトの生成を抑止できるからである。それに加えて本発明によれば、温度が最低でも150℃である時にはAlからの水酸化アルミニウムの生成が加速度的に進行することが判明している。更に250℃を上回る温度では、Alからの水酸化アルミニウムの生成が実質的にもはや加速されなくなるために、本発明に従った方法を実行する際の温度を最高でも250℃とすると経済的な理由から好適であることも判明している。その意味で、非常に好ましい実施形態の一例においては、チャンバに150℃から250℃までの範囲内の温度が加えられるようになっている。
【0028】
本発明に従った方法を実行する際には、チャンバに0.1MPaから10MPaまでの範囲内の、尚も好ましくは0.1MPaから6MPaまでの範囲内の、非常に好ましくは0.5MPaから6MPaまでの範囲内の圧力が加えられることが好ましい。本発明によれば、マグネシア-カーボン製品を本発明に従って加温し、それと同時に水とガスを用意してやる場合には、この範囲内の圧力によりAlを水酸化アルミニウムに転換可能であると同時にブルーサイトの生成を防止可能であることが判明している。本発明に言う圧力は、超過圧力、即ちその海抜高度における大気の平均気圧を上回る圧力である。したがって本発明の趣意においては、例えば0.1MPaの圧力(即ち約1barに相当する圧力)とは、0.1MPaの超過圧力、即ち、その海抜高度における大気の平均気圧を0.1MPa超過する圧力のことである。
【0029】
本発明に従った方法の実行に当たってチャンバを加圧するためには、特に加圧水蒸気、即ち超過圧力下の水蒸気がチャンバ内に導入されるようにすると良い。或いはその代わりに、例えばチャンバ又はチャンバ内の水を例えば電熱器により加温することにより、チャンバ内自体に超過圧力の水蒸気を発生させることによって、チャンバを加圧してもかまわない。或いはその代わりにチャンバの加圧を、例えば複数のコンプレッサを利用して行ってもかまわない。チャンバを加圧するために、一般には従来技術から知られているオートクレーブの様々な加圧技術を起用することができる。
【0030】
本発明に従った方法を実行するために、チャンバ内には、液状状態又はガス状状態(即ち水蒸気の形態)の内最低でもいずれかの状態にある水が使用に供されるとよい。先にも詳述したように、チャンバ内に当初液状状態で用意した水を、チャンバ内で加温して、それにより蒸気相に移行させると良い。チャンバ内に水蒸気の形態で用意される水は、例えば既に水蒸気としてチャンバ内に導入されてもかまわない。基本的には先にも詳述したように、チャンバ内に超過圧力下の水蒸気が用意されると良いが、その結果、チャンバをそれによって同時に加圧できることになる。
【0031】
本発明に従った方法を実行するために使用に供されるマグネシア-カーボン製品は、マグネシア(化学的には:MgO、鉱物学的には:ペリクレース)と炭素(遊離炭素の形態、化学的には:C)を主成分としている。マグネシア-カーボン製品は、最低でも69質量%以上の範囲内の、更に好ましくは69質量%から97質量%までの範囲内の、非常に好ましくは83質量%から93質量%までの範囲内の割合でMgOを含むことが好ましい。
【0032】
好ましい実施形態の一例においては、本発明に従った方法を実行するために使用に供されるマグネシア-カーボン製品が、最低でも1質量%の割合で炭素を含むことが企図されている。マグネシア-カーボン製品が、1質量%から30質量%までの範囲内の、尚も好ましくは5質量%から15質量%までの範囲内の割合で炭素を有していると更に好ましい。
【0033】
本発明に従った方法を実行するために使用に供されるマグネシア-カーボン製品は、最低でも0.1質量%の割合でAlを有することが好ましい。マグネシア-カーボン製品は、0.1質量%から5質量%までの範囲内の、尚も好ましくは0.5質量%から5質量%までの範囲内の、それよりも尚も好ましくは1質量%から3質量%までの範囲内の割合でAlを有していると、更に好ましい。
【0034】
非常に好ましい実施形態の一例において、本発明に従った方法を実行するために使用に供されるマグネシア-カーボン製品は、MgO、C及びAlを合計して最低でも93質量%、尚も好ましくは最低でも95質量%の割合で有している。
【0035】
上述のMgO、炭素及びAlの割合はいずれも、チャンバ内に用意されたマグネシウム-カーボン製品の総質量を基準とした割合である。
【0036】
上述のマグネシア-カーボン製品中にMgOが占める割合は、DIN EN ISO 12677:2013-02に規定される蛍光X線分析法(XFA)を利用して決定される。
【0037】
上述のマグネシア-カーボン製品中に炭素が占める割合は、DIN EN ISO 15350:2010-08規格の規定に従って決定される。
【0038】
他にも更に上述のマグネシア-カーボン製品中にAlが占める割合は、DIN EN ISO 13925-2:2003-07に規定されるX線回折法を利用して定性的に決定される。マグネシア-カーボン製品中にAlが占める割合は、定量的には補完規格であるISO 16700:2016(E)及びISO22309:2011(E)に規定されるエネルギー分散型X線分析法(EDX)を利用して決定することができる。
【0039】
非常に好ましい実施形態の一例においては、本発明に従った方法を実行するために使用に供されるマグネシア-カーボン製品は、使用済みマグネシア-カーボン製品として使用に供されるようになっている。本発明に言う使用済みマグネシア-カーボン製品とは、その本来の用途に応じて、即ちそれが製作されたそもそもの使用目的に応じて、既に利用されていた、使用済みのマグネシア-カーボン製品である。
【0040】
特にこの本来の用途とは、鉄鋼業における各種設備ユニット(特に転炉、電気アーク炉又は取鍋)のライニング、即ち耐火内張用としてのマグネシア-カーボン製品の用途、又は、鉄鋼業向けの、特に連続鋳造向けの、特にセラミックス製の羽口や出鋼口の形態を取る機能性製品としてのマグネシア-カーボン製品の用途であるとよい。その限りで、マグネシア-カーボン製品は、その本来の用途に応じた使用場所に一定時間にわたり配備された後には、取り外されて新しいマグネシア-カーボン製品と交換されるようになっている。この取外しは、特にマグネシア-カーボン製品の摩耗を理由として行われるものである。この取り外されたマグネシア-カーボン製品が、本発明に従った方法を実行するために使用に供される使用済みマグネシア-カーボン製品であると良い。その限りにおいて、本発明に従った方法には、マグネシア-カーボン製品が本発明に従った方法のために使用に供される工程の前工程として、次の更なる工程を含ませることができる。
【0041】
使用済みのマグネシア-カーボン製品を、その本来の用途に応じた使用場所から取り外す工程。
【0042】
この使用済みの取り外したマグネシア-カーボン製品を、引き続いて本発明に従った方法のために使用に供することができるようになっている。
【0043】
本発明に従った方法を実行するために使用に供されるマグネシア-カーボン製品は、本発明によれば、容器により取り囲まれたチャンバ内に用意若しくは配置されるようになっている。マグネシア-カーボン製品がチャンバ内に用意された後に、本発明によればチャンバは加圧加温されることになる。容器により取り囲まれたチャンバ内にマグネシア-カーボン製品が用意された後には、好ましくはチャンバが気密式に封止されて、引き続いて加温加圧されるようにすると良い。上記で詳述したように、チャンバの加温加圧に先立ち、チャンバ内には水が特に流水形態で用意されると良い。しかしながら水は、上記で詳述したように、好ましくは特に水蒸気の形態で、同時にチャンバを加温加圧しながら、チャンバ内に用意される、若しくはチャンバ内に導入されるようにすると良い。それに加えて上記で詳述したように、特にチャンバの加温加圧中には二酸化炭素含有ガスがチャンバ内に用意される、若しくはチャンバ内に導入されると良い。
【0044】
上記で詳述したように、チャンバは、加温加圧の間にマグネシア-カーボン製品中のAlの少なくとも一部が分解されるようになっている。チャンバが加温加圧の間に、マグネシア-カーボン製品中のAlの大半が分解されると非常に好ましい。
【0045】
その際にAlは、チャンバの加温加圧の間に特に水酸化アルミニウムとCHに分解される。
【0046】
本発明に従った方法により処理されたマグネシア-カーボン製品中にAlが占める割合は、その処理後には大幅に低下するか、略測定不能なレベルとなることすらもある。それと同時に本発明に従った方法の実行中にはブルーサイトの生成を抑止可能であるために、本発明に従った方法により処理されたマグネシア-カーボン製品中にブルーサイトが占める割合はゼロとなるか、極々僅かだけとなる。それにより本発明に従った方法により処理されたマグネシア-カーボン製品は、耐火製品を製造するための原料として傑出した適性が備わっていることになる。
【0047】
この限りにおいて、本発明に従った方法は、チャンバの加温加圧工程の後工程として、更に次の各工程:
マグネシア-カーボン製品をチャンバから搬出する工程
マグネシア-カーボン製品を一つ又は更に別の複数の材料と混合して混合物(Versatz)を得る工程
混合物から耐火製品を製造する工程
を有していると良い。
【0048】
製造される耐火製品は、特に新しいマグネシア-カーボン製品であるとよい。
【0049】
本発明のそれ以外の特徴は、特許請求の範囲並びに下記の発明を実施するための形態から明らかにされる。
【0050】
本発明の特徴は全て、その一つ一つ又は幾つかの特徴を組み合わせたものが、互いに任意に組み合わされたものであってもかまわない。
【実施例
【0051】
マグネシア-カーボン耐火煉瓦の形態を取るマグネシア-カーボン製品を用意した。このマグネシア-カーボン煉瓦の鉄鋼業の設備ユニットにおける使用をシミュレートするために、マグネシア-カーボン煉瓦に(マグネシア-カーボン煉瓦に含まれるマグネシアと炭素を100質量%として)3質量%のアルミニウムグリットを酸化防止剤として添加して、1000℃で6時間にわたり還元雰囲気下でカーボン化した。
【0052】
その後に得られたマグネシア-カーボン製品を、本発明に従った方法を実行するために使用に供した。DIN EN ISO 12677:2013-02に規定される蛍光X線分析法(XFA)を利用して決定されたこのマグネシア-カーボン製品の化学組成は、次の通りであった:
【0053】
MgO: 92.6質量%
Al: 5.0質量%
SiO: 0.8質量%
CaO: 1.0質量%
Fe: 0.6質量%
【0054】
これらの化合物については、それに更に追加して、焼成損失(Gluhverlust)がない化合物の質量に対して、焼成損失は8.8質量%であると決定された。
【0055】
上述の質量値はいずれも、マグネシア-カーボン製品の総質量を基準とした数値である。
【0056】
炭素が占める割合を、炭素分析装置LECO CS-200/230型(商標権者・製造業者:LECOインストルメンツ有限会社、メンヒェングラートバッハ、ドイツ)を利用して、DIN EN ISO 15350:2010-08規格の規定に従って決定し、その結果はマグネシア-カーボン製品の総質量に対して8.2質量%であった。
【0057】
最後にマグネシア-カーボン製品中にAlが占める割合を、先ずはDIN EN ISO 13925-2:2003-07に規定されるX線回折法を利用して定性的に決定して、続いて補完規格であるISO 16700:2016(E)及びISO22309:2011(E)に規定されるエネルギー分散型X線分析法(EDX)を利用して決定し、その結果は同じくマグネシア-カーボン製品の総質量に対して1.9質量%であった。
【0058】
このマグネシア-カーボン製品を、流水と一緒に市販の工業用オートクレーブのチャンバに投入し、引き続いてチャンバを気密式に封止した。
【0059】
引き続いてチャンバに3MPaの超過圧力と200℃の温度を加えた。この温度により、チャンバ内に投入された水によって、チャンバ内には水蒸気雰囲気が形成された。
【0060】
それと同時にチャンバ内に、二酸化炭素含有ガスを純二酸化炭素ガスの形態で導入した。
【0061】
チャンバ内には、チャンバ内に用意されたマグネシア-カーボン製品の質量の3%に相当する量の水が投入された(水は引き続いてそのような質量の水蒸気としてチャンバ内に存在した)。それによりチャンバ内の水のAlに対するモル比は、12:1を僅かだけ上回っていた。
【0062】
他にもチャンバ内には、チャンバ内の二酸化炭素の水に対するモル比が1:1となるような量の二酸化炭素ガスが導入された。
【0063】
チャンバのこの加温加圧工程を、二酸化炭素ガスと水蒸気が同時に用意された状態で12時間にわたり維持した。
【0064】
マグネシア-カーボン製品のこの処理の間に、その内部に存在していたAlは水酸化アルミニウムとCHに分解した。それと同時にMgOのブルーサイトへの転換を抑止することができた。
【0065】
チャンバ内での処理後にマグネシア-カーボン製品をチャンバから搬出して、マグネシア-カーボン製品中にAlが占める割合を、X線回折法を利用して改めて決定した。それによると、マグネシア-カーボン製品中にAlを検出することはもはや不可能であった。
【0066】
他にも更にマグネシア-カーボン製品中にブルーサイトが占める割合を、DIN EN 13925-2:2003-07規格に規定されるX線回折法を利用して決定した。それによると、ブルーサイトの存在を確認することはできなかった。
【0067】
チャンバから搬出されたマグネシア-カーボン製品に、マグネシアと黒鉛の形態を取る更に別の材料を混合して混合物を得た。本発明に従った方法により処理されたマグネシア-カーボン製品がこの混合物中に占める割合は、混合物の総質量に対して30質量%であった。引き続いてこの混合物から、耐火製品を新しいマグネシア-カーボン製品の形態で製造した。そのために混合物をプレスしてマグネシア-カーボン煉瓦を得て、引き続いて200℃の温度で6時間にわたりこれを焼戻しした。その後に得られたマグネシアカーボン煉瓦の形態を取る耐火製品を図1に示す。図1に示されるマグネシア-カーボン煉瓦は亀裂やスポーリングを一切呈していないことをはっきりと確認することができる。
【0068】
比較目的で更にもう一つのマグネシア-カーボン煉瓦を製造した。これは、上述のマグネシア-カーボン煉瓦(MgO-C煉瓦)に準じて製造されたが、唯一の相違点として、上述の実施例に従って処理が施されたマグネシア-カーボン製品の代わりに、この実施例のために使用に供された未処理のマグネシア-カーボン製品を使用した。それにより得られたマグネシア-カーボン煉瓦を図2に示す。この煉瓦にはかなりの亀裂が入っていることをはっきりと確認することができるが、それによりこの煉瓦の諸特性にはかなりの支障を生じている。
【0069】
図3には、本発明に従った方法の更にもう一つの実施例が著しく簡略化したフローチャートで示されている。
【0070】
そこに示されるように、最初に符号1において使用済みのマグネシアカーボン製品を鋼製取鍋から取り外して、符号2において本発明に従った方法を実行するために使用に供した。符号2において使用に供されたマグネシアカーボン製品を、引き続いて水4と一緒にオートクレーブ3により取り囲まれたチャンバ内に用意して、チャンバを気密式に封止した。
【0071】
更に、二酸化炭素の割合が、二酸化炭素が空気中に占める割合を上回っている
二酸化炭素含有ガス5を用意した。
【0072】
引き続いてチャンバに温度6と圧力7を加えた。それと同時に更に二酸化炭素含有ガス5もチャンバ内に導入した。
【0073】
オートクレーブ3のチャンバ内でマグネシアカーボン製品2に相応の処理を施した後、符号8に示されるように、これをオートクレーブ3のチャンバから搬出して、更に別の材料10と混合して混合物9を得た。混合物9から最終的に新しい耐火製品11を製造した。
【符号の説明】
【0074】
1 マグネシアカーボン製品の取鍋からの取外し
2 使用済みマグネシアカーボン製品
3 オートクレーブ
4 水
5 二酸化炭素含有ガス
6 温度
7 圧力
8 搬出
9 混合物
10 材料
11 新しい耐火製品
図1
図2
図3
【国際調査報告】