(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】昆虫飼育箱
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507330
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2020069657
(87)【国際公開番号】W WO2021023475
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518085933
【氏名又は名称】オルタナティブ ジーン エクスプレッション, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルチネス エスクリバノ ホセ アンヘル
(72)【発明者】
【氏名】シッド フェルナンデス ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】レイトル サアベドラ イーデル
(72)【発明者】
【氏名】アルヴァラド フラドゥア カルメン
(72)【発明者】
【氏名】モレノ ダルトン ロミー
(57)【要約】
本発明は、卵から蛹段階まで昆虫を育成するための飼育箱に関する。昆虫飼育箱(1)は、側壁(2a、2b、3a、3b)と、側壁に着脱可能に結合され昆虫飼育室(6)を構成する上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)とを備える。箱(1)は、飼育室(6)の内側に配置され、上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)に対して横断する方向に配置された複数のバー(5)をさらに備え、バー(5)は、上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)にそれぞれ隣接する上端部および下端部(5’、5’’)を有し、バー(5)の下端部(5’)は自由端である。飼育箱(1)は、昆虫の蛹の工業生産、好ましくは自動化された生産工程に適しており、蛹の生産速度や品質および均一性を高める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁(2a、2b、3a、3b)と、前記側壁に着脱可能に結合され飼育室(6)を構成する上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)とを備える昆虫飼育箱(1)であって、
前記箱(1)は、前記飼育室(6)の内部に配置され、前記上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)に対して横断する方向に配置された複数のバー(5)をさらに備え、
前記バー(5)は、前記上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)にそれぞれ隣接する上端部および下端部(5’、5’’)を有し、
前記バー(5)の前記上端部(5’)または前記下端部(5’’)は自由端である、昆虫飼育箱。
【請求項2】
前記バー(5)は直線状かつ互いに平行であり、前記バー(5)は前記上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)に対して垂直に配置される、請求項1に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項3】
前記飼育室(6)の内部に配置される2つ以上のパネル(10)をさらに備え、前記パネル(10)は、前記バー(5)を有しており、かつ互いに平行である、請求項1または2に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項4】
各パネルは略面状でありかつステム(11)を有し、前記バー(5)は前記ステム(11)から垂直に延び、前記ステム(11)は前記バー(5)を横断する方向に延び、前記パネル(5)の中央部で前記バーを接続して前記バーの上端部および下端部(5’、5’’)を自由端とし、もしくは前記パネル(10)の上側でバーを接続し前記バーの前記下端部(5’、5’’)を自由端とする、請求項3に記載の昆虫飼育箱。
【請求項5】
前記箱は、2対の対向する側壁(2a、2b、3a、3b)を有する直角柱であり、前記上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)は略平坦でありかつ互いに平行である、請求項1~4のいずれか1項に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項6】
上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)は前記側壁(2a、2b、3a、3b)に圧入されるように構成されており、例えば、前記側壁から離れる方向に引っ張ることによって前記側壁から取り外し可能である、請求項1~5のいずれか1項に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項7】
前記側壁(2a、2b、3a、3b)は矩形状であり、プラスチック材料を射出成形することによって略平坦かつ折り曲げ可能なユニット式本体部(14)として一体成形され、前記壁(2a、2b、3a、3b)は前記ユニット式本体部(14)において直線状に配置され、隣接する壁の各対は例えば折り線(15)で繋がっており、前記直線配置における前記両端の壁の2本の自由辺(16、16’)には、前記折り線(15)で前記壁を90°に折りまげることで協働する固定手段(17、17’)が設けられ、前記固定手段(17、17’)は係合可能である、請求項1~6のいずれか1項に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項8】
2つの対向する壁はメッシュ(8a、8b)によって覆われた換気窓(7a、7b)を有し、前記壁は前記パネル(10)と平行である、請求項1~7のいずれか1項に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項9】
前記メッシュ(8a、8b)は、さらに、同じの射出成形プロセスによって前記ユニット式本体部(14)内に一体的に、成形される、請求項7および8に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項10】
前記ステム(11)は前記パネル(10)上部に配置され、ステム(11)は鋭い縁部(20)を有する、請求項4に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項11】
2つの対向する壁は、垂直に配置されたガイド(12)を有し、各パネル(10)にはガイド上をスライド可能に構成された舌部(13)をその端部に有し、各パネルは2つの向かい合うガイド(13)に挿入可能である、請求項3~10のいずれか1項に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項12】
前記バー(5)は平坦であり、前記バー(5)の厚さは前記船尾(11)から前記自由端(5’、5’’)に向かって徐々に薄くなっている、請求項1~11のいずれか1項に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項13】
前記バー(5)が粗い表面を有している、請求項1~12のいずれか1項に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項14】
前記パネル(10)ならびに上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)は、プラスチック材料からなる、請求項1~13のいずれか1項に記載の昆虫飼育箱(1)。
【請求項15】
前記バー(5)は、前記飼育室(6)の平面視においてマトリックス状に配置される、請求項1~14のいずれか1項に記載の昆虫飼育箱(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、昆虫の幼虫を卵から蛹の段階(チョウ類の蛹)まで育てるための飼育箱に関する。
【0002】
本発明の目的は、この箱の中で飼育される昆虫群を同調させることによって蛹の生産速度や品質ならびに均一性を高め、好ましくは昆虫の蛹を工業生産するための、自動化された生産工程用の飼育箱を提供することである。
【0003】
本発明のさらなる目的は、低コストで大量生産が可能でありかつ保管および輸送が便利な使い捨ての昆虫飼育箱を提供することである。
【背景技術】
【0004】
幼虫飼育モジュールには多くの種類があり、その構成は飼育する幼虫の種類と幼虫の用途による。
【0005】
従来の幼虫飼育技術は、卵を含んだパラフィンでコーティングされた紙袋と、この卵から生まれた幼虫に与えるための餌とから構成されるが、このような袋は、その厚さにより正しく運用できるかどうかが決定的に影響されるという不都合を有していた。したがって、袋が厚過ぎると餌が過度に滲出してしまう一方で、厚さが不十分であると餌が乾燥し劣化してしまう。
【0006】
その結果、餌と幼虫を含むパラフィンでコーティングされたカップも長い間使われてきた。その後、プラスチック製カップも同一の使用目的に利用されてきた。使用される容器の種類を問わず、このような幼虫飼育システムには、容器の内部から幼虫を取り出す際は1匹ずつ手作業で行わなければならないという欠点があり、これは膨大な労力と長時間を要することを意味する。
【0007】
したがって、そのような幼虫飼育用システムは、商用上実用的でなく、経済的競争力が欠如していた。さらに、育成容器内において、育成システムが正しく機能する妨げとなる菌類やバクテリアの繁殖に繋がる湿度のコントロールは極めて困難であった。
【0008】
スペイン特許ES-2.107.176 T3(欧州特許EP-0.676.918の検証)には、主に高密集プロセスをベースとした幼虫飼育システムと、卵から蛹までの昆虫用飼育ユニットに関する記載がある。具体的には、昆虫用育成ユニットは、餌用の空間の下側、かつ排泄物用の空間の上部に配置された、幼虫用空間を備える。幼虫用空間は、前記餌用の空間と、排泄物用空間に対し垂直に配置された複数の面を含む。この垂直面は昆虫の接着面を成している。しかしながら、この飼育システムには餌用の空間が長期間高湿度にさらされるという欠点があり、このように高湿度に晒されると、餌用の空間が菌類と栄養素の増殖に非常に適した環境となり、結果、それが昆虫に感染し、昆虫の汚染や劣化を引き起こす。
【0009】
スペイン特許公開公報ES-2.232.308 A1には、幼虫を育成するための飼育箱であって、幼虫用の複数の垂直な育成壁を有する飼育ユニットと、育成ユニットの上部を閉じるよう水平に配置された餌トレイと、育成ユニットの下部を閉じるよう水平に配置された排泄物トレイとを備える飼育箱が記載されている。育成壁は幼虫が餌を見つけるために移動するネットを保持する長方形のフレームから構成されており、幼虫が互いに干渉してしまうため、同サイズの生育場所を有しておらず、したがって幼虫が均等に成長しない可能性がある。幼虫は別々の領域でグループ化されているため、育成過程が終わった後の収集が困難である。
【0010】
したがって、従来の昆虫飼育モジュールは複雑な飼育ケースを有しており、幼虫は餌または食物を保持する支持体上に不均一に分布し、幼虫が給餌面の一方側から他方側へ絶えず移動するため、飼育ケースの容積はケース内の幼虫密度が最大化されるよう最適化されておらず、したがって、飼育ケース内の幼虫の分布がコントロールされていない。全ての幼虫が食物に等しくアクセスできるわけではないため、これはつまり、すべての幼虫が適切に給餌されるわけではないことを意味している。したがって、望むような均一性や品質で生産が行われず、最終品質管理工程で多くの蛹を廃棄しなければならなくなる。
【0011】
一方、組換えタンパク質の発現のための生きたバイオファクトリとしての幼虫の使用についても知られている。例えば、国際公開第2017/046415号には、昆虫の蛹における組換えタンパク質の工業生産を最適化する手段および方法が記載されている。
【0012】
いずれにせよ、工業目的のために、高品質かつ均一な昆虫の蛹を大量生産する需要が高まっている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、添付の独立請求項に定義されるものであり、自動化された蛹生産プロセスの一部として使用するために特別に構成された、高品質で均一な蛹の大量生産を可能にする昆虫飼育箱を提供することにより、先行技術の欠点を十分に解決する。
【0014】
箱は、蛹が成長するための飼育室を一体として構成する、側壁と、側壁に取り付け可能な上面カバーおよび底面カバーとを備える。上面カバーおよび底面カバーは、側壁と取り外し可能に結合されている。例えば、上面カバーおよび底面カバーは、側壁に圧入されるように構成されており、その結果、例えば検査目的のために、手でまたはロボットアームで側壁から離れる方向に引っ張るだけで取り外し可能である。
【0015】
好ましくは、箱は、側壁ならびに上面カバーおよび底面カバーが略平坦な長方形となるよう、矩形の角柱状である。2つの平行な大側壁と、2つの平行な小壁がある。上面カバーおよび底面カバーは、それぞれ内側に、平坦な主面を有する。
【0016】
本発明によれば、箱には、飼育室の内側に配置され、上面カバーおよび底面カバーを横切る方向に配置され、複数のバーを有するパネルが組み込まれている。好ましくは、バーは直線状であり、上面カバーおよび底面カバーに対して垂直に配置される。
【0017】
各バーは、少なくともバーの上端部側またはバーの下端部側、もしくはバーの両端に自由端を有する。
【0018】
バーは、その上端部および下端部がそれぞれ上面カバーおよび底面カバーの内側の平坦な主面に隣接または近接するよう、その寸法が設定されている。バーは、幼虫の小グループを個別化するために、各バーが周囲のバーと適切な距離を保つよう配置される。例えば、マトリックスまたはそれに類似した分布でバーを配置することによりこれは達成可能である。
【0019】
飼育箱の使用にあたっては、底面カバーの内面全体に昆虫の卵を配置し、上面カバーの内面に幼虫用の餌または食物を充填する。卵が孵化すると、幼虫は、バーを上昇経路として使用して底面カバーから上面カバーの餌に向かって移動する。幼虫は、餌が置かれているバーの上端部に到達するとそこに留まって、蛹になるまで餌を食べ続ける。このようにして、生育過程が終了すると、全ての蛹が同一平面上に配置されているため、蚕からの繊維の採取や収集等といった後工程が容易になる。
【0020】
本発明の飼育箱では、従来技術の飼育モジュール(多くの幼虫が特定の領域に集まり、そこですべての食物を食べるが、他の領域にはあまり集まらない)とは異なり、上面カバーの別々の領域に少数の幼虫がグルーピングされるため、育成過程全体にわたって全ての幼虫に十分な食物が確保される。これにより、高品質で同時かつ均一な蛹の生産を行うことができ、サイズ、重量および一般的特性が均一な蛹の生産を行うことができる。
【0021】
飼育室の容積全体にバーが均一に分布しているため、幼虫が均一に分布し、その結果飼育室の収容量が最適化される。飼育箱を使用することで、最大200匹の幼虫を最適な条件で育成することができると予想されている。
【0022】
したがって、バーは、他の隣接する幼虫と干渉しないよう、幼虫を小グループに分ける。
【0023】
飼育室全体にわたって適切に空気が循環するよう、少なくとも2つの大側壁にはメッシュで覆われた通気窓が設けられている。したがって飼育室内の幼虫は、湿度および温度がコントロールされた環境に等しく晒され、菌類の増殖を回避する。
【0024】
箱内のバーを支持するための形態としていくつかの選択肢が可能である。好ましい実施形態では、バーはパネルとして具現化され、箱において、このようなパネルを一式、飼育室の内側に配置して組み込むようにしている。パネルは互いに平行であり、例えば、使用前に箱を組み立てる際や、箱を分解して廃棄する際、または育成中の蛹をチェックする際に、箱に対して容易に取り付けたり、箱から取り出したりできるように構成されている。
【0025】
各パネルは横断方向、好ましくはバーに対して垂直方向に延在するステムを有し、ステムはパネルの中央またはパネルの上部で複数のバーを接続する。
【0026】
昆虫飼育箱は、一回きりの使い捨ての製品として考えられるため、全ての箱の構成要素、すなわち、側壁、上面カバーおよび底面カバー、パネルおよびバーは、適切なプラスチック材料で製作される。
【0027】
好ましい実施形態では、側壁は、プラスチック材料を射出成形することで、ユニット式本体部として一体的に形成される。このユニット式本体部は、略平面状を成し、4つの側壁は矩形状であり、互いに並んだ状態で直線状に配置され、隣接する壁の各対の間には折り曲げ線または変形線が形成される。これにより、壁を折り線で90°に折り曲げ、自由辺を係合させることによって箱が組み立てられる。
【0028】
本発明の利点を以下に要約する。
【0029】
・飼育室内で幼虫の分布をコントロールし、飼育室における昆虫の数を最適化して生産速度を高め、成長が均一かつ最適となるよう食物への継続的アクセスを可能とする。
・飼育室内の幼虫は、コントロールされた湿度および温度環境に等しくさらされ、それにより菌類の増殖を回避し、ひいては蛹の品質を高める。
・飼育箱は、自動化された製造工程によるロボットを使った扱いが可能である。
・飼育箱は、低コストの大量製造が可能で、保管や輸送にも便利である。
・箱のすべての部分は、取り付ける前まで積み重ねておくことが可能であり、飼育箱も積み重ね可能なので、より良好に保管することができる。
【0030】
飼育箱は一回きりの使い捨て装置であるため、清掃および消毒作業が回避され、人件費の大幅削減が可能となる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態について、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による好ましい実施形態の斜視図である。
【
図4】
図3の平面A-Aに沿った立面断面図である。
【
図5】
図3の平面B-Bに沿った側面立面断面図である。
【
図6】上面カバーを取り外した状態の平面図である。図中の矢印は、飼育室内の空気の循環を示している。
【
図7】2つの側壁、および上部カバーが取り外された状態の、
図1の実施形態の別の斜視図である。
【
図8】組み立て前の、展開した状態の側壁を構成するユニット式部品の平面図である。
【
図9】パネルの代替構成を示す図であり、
図Aは正面図、
図Bは平面図、
図Cは
図Aの平面C-Cに沿った断面図である。
【本発明の好ましい実施形態】
【0033】
図1は、2つの平行な大側壁(2a、2b)と、2つの平行な小側壁(3a、3b)と、これら4つの側壁(2a、2b、3a、3b)に取り外し可能に結合される上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)とを備える、本発明による飼育箱(1)の好ましい実施形態を示す。上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)、ならびに側壁(2a、2b、3a、3b)は略平坦であり、かつ一体となって矩形の角柱を成し、昆虫用の飼育室(6)をその内部に画定する。
【0034】
2つの大側壁(2a、2b)はそれぞれ、適切な孔径のメッシュ(8a、8b)で覆われた通気窓(7a、7b)を有している。孔径は、蛹が適切に成長するよう正しい強度の光と換気流の循環を飼育室(6)内部に確保すると同時に、孵化したばかりの小さな幼虫が出てしまうことを防ぐ孔径となっている。あるいは、小側壁(3a、3b)にも、同様のメッシュで覆われた通気窓(図示せず)が設けられている。
【0035】
図2によりよく示されるように、上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)はトレイ状で、これらのカバー(4a、4b)には、その四辺に沿って延在し横方向に突き出したスカート(9a、9b)がそれぞれ設けられている。上面カバー(4a)および底面カバー(4b)は、それぞれ内側に平坦な主面(18a、18b)を有する。箱(1)の使用中、上面カバー(4a)の表面には幼虫用の餌または食物(19)が充填されている。餌または食物は通常、ゲルとして表面(18a)に接着されている。
【0036】
さらに、
図4および
図5に示すように、上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)は、単純に側壁(2a、2b、3a、3b)から離れる方向に引っ張ることで取り外しできるよう、カバー(4a、4b)が箱(1)の側壁に圧入されるよう構成されており、すなわち、圧入されるよう形状および寸法が決められている。この特徴は、(
図2に示すように)カバーのない箱にする等の目的、すなわち、蛹から絹を取り出すために開口した状態で浴に浸す等の目的で、ロボットを用いてカバーを取り外す際に便利である。
【0037】
この圧入可能という特徴は、
図4および
図5においてより良く観察することが可能であるが、4つの側壁(2a、2b、3a、3b)の外周の形状および寸法と一致するように、スカート(9a、9b)の四辺の内側を成形し寸法決めすることによって得られる。カバー(4a、4b)は、省スペースで保管できるよう、積み重ね可能に構成されている。したがってスカート(9a、9b)があるため、カバーを部分的に別のカバーの内側に配置することも可能である。
【0038】
上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)を側壁(2a、2b、3a、3b)に結合すると、スカート(9a、9b)の一部が側壁に接触して重なり合い、カバー(4a、4b)が箱(1)に剛性を与え、連続した各組の側壁が互いに対して相対的に90°に位置決めされる。その結果、使用中の箱の変形を回避することができる。
【0039】
箱(1)には、飼育室(6)内に配置される複数のバー(5)が設けられる。これらのバー(5)は、上側自由端および下側自由端(5’、5’’)を有し、上側自由端および下側自由端は、それぞれ上面カバー(4a)および底面カバー(4b)の主面(18a、18b)に隣接している、すなわち近傍にあるため、幼虫が底面カバー(4b)からバー(5)を登って、上端部(5’’)から上面カバー内側にある食物に到達することができる。
【0040】
バー(5)は、直線状かつ互いに平行であり、上面カバーおよび底面カバー(4a、4b)に対して垂直に配置される。好ましくは、バー(5)は平坦であり、幼虫がバー(5)を登りやすくする取っ掛かりとして粗い表面をしている。
【0041】
本発明のこの好ましい実施態様では、バー(5)は、箱から取り出すことができるパネル(10)にグループとして設けられている。したがって、箱(1)には、飼育室(6)の内部に配置されるパネル(10)が複数組み込まれており、例えば
図4に示すように、各パネル(10)は平面を成し、かつ互いに平行であり、ステム(11)から垂直に延びる複数のバー(5)を構成する。ステム(11)は、バー(5)を横断する方向に延び、パネル(5)の中央でバー(5)を繋いでいる。
【0042】
好ましくは、バー(5)の厚さは、船尾(11)から自由端(5’、5’’)に向けて徐々に薄くなっている。
【0043】
例えば
図4に示すように、各パネルは2つの櫛状の構成を有する。また、
図4では、バーの長さがすべて同じであり、すべての上端部(5’)および下端部が同一平面上にあり、下端部も同一平面上にあることに留意されたい。箱およびバーの寸法は、バーの上端部(5’’)と上面カバー(4a)の主面(18a)との間の距離が、幼虫が上端部(5’’)から食物に到達するのに適したものになるよう設定される。同様に、箱およびバーの寸法は、バーの下端部(5’)と底面カバー(4b)の主面(18b)との間の距離が、幼虫がバーに到達するのに適したものになるよう設定される。
【0044】
パネル(10)は、箱(1)内で長手方向に延在し、すなわち、パネルは、大側壁(2a、2b)に平行であり、窓(7a、7b)に平行である。さらに、
図6に示すように、バーは、平面図においてマトリックス状に配置される。この構成により、
図4により明確に示されるように、また
図6の矢印によって示されるように、窓(7a、7b)と直接繋がる複数のチャネルがパネル(10)を横断するように画定され、それにより飼育室(6)の換気が向上する。
【0045】
図7に示すように、2つの短側壁(3a、3b)には、縦向きに配置されたガイド(12)が向かい合うように一体化されている。各パネル(10)は端部に舌部(13)を有し、各パネルの舌部(13)がそれぞれのガイド(12)に挿入され、上下にスライドすることができるようになっている。これにより、パネル(10)を、箱(1)の所定の位置に容易に組付けることができ、または例えば蛹検査のために取り出すことができる。
【0046】
箱製造工程に関しては、箱(1)は適切なプラスチック材料で作られる。すなわち、側壁、上面カバーおよび底面カバーならびにパネルは、プラスチック材料、例えばポリプロピレンで製造される。特に、側壁(2a、2b、3a、3b)は長方形であり、プラスチック材料の射出成形により
図8に示すような、折り曲げ可能な略平面状のユニット式本体部(14)として一体成形される。ユニット式本体部(14)において壁は直線状に配置され、隣接する壁の各対は、例えば、溝からなる折り線(15)でつながっており、溝部分ではユニット式本体部の厚さが薄くなっている。メッシュ(8a、8b)についても同様に、射出成形プロセスでユニット式本体部に一体成形されることが好ましい。
【0047】
上述したようなユニット式本体部(14)として側壁を構成することにより、製造コストを削減し、本体を複数積み重ねることで保管スペースを削減し、輸送を容易にすることができる。
【0048】
さらに、直線配置における両端の壁(2a、3b)の2つの自由辺(16)には、箱(1)を組み立てるための連携する固定手段(17、17’)が設けられており、壁(2a、2b、3a、3b)を折り線(15)で90°に折り曲げて、連携する固定手段(17、17’)を、例えば
図2に示すように係合する。固定手段は、例えば、弾性変形によって開口部と係合するフックとして構成することができる。
【0049】
あるいは、
図9および
図10の実施形態では、バーに対して横方向に延びるステム(11)をパネル上部に配置し、バーの上端部を繋ぐことで、下端部(5’’)のみを自由端としている。この実施形態においても、パネルは平面状であり、互いに平行な複数のバー(5)を備え、バー(5)は厚さがステム(11)から下側の自由端(5’)に向かって徐々に薄くなっており、またその表面は粗くなっている。
【0050】
図10に示すようにパネル(10)の下部に自由端(5’’)を備えた場合、幼虫がより容易にパネルに到達して登り始めることができるという利点がある。また、箱の中央部に隙間がより多く存在するため飼育室(6)の換気がさらに向上する。さらに、幼虫が落とした屑がパネルの中央部ではなく、昆虫から遠く離れた底面カバーに蓄積される。これにより、菌類で幼虫が汚染されてしまう可能性を抑制することができる。屑の大部分が底面カバー内にあるため、飼育箱を清掃する際にも役立つ。
【0051】
さらに、
図9および
図10のパネル(10)では、ステム(11)の縁部(20)は鋭くなっている。
【国際調査報告】