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特表2022-543824植物におけるCAST媒介DNA標的化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】植物におけるCAST媒介DNA標的化
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20221006BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20221006BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20221006BHJP
   C12N 15/84 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 15/82 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 15/90 20060101ALN20221006BHJP
   C12N 15/89 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C12N15/09 100
A01H1/00 A ZNA
A01H5/00 A
C12N15/84 Z
C12N1/21
C12N15/82 Z
C12N15/90 100Z
C12N15/89 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507485
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 US2020045012
(87)【国際公開番号】W WO2021026239
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/883,933
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラリー・ギルバートソン
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィン・ナギー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・リーム
(72)【発明者】
【氏名】リンダ・リマーキス
(72)【発明者】
【氏名】シュドン・イェ
【テーマコード(参考)】
2B030
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD20
2B030CA14
2B030CA17
2B030CB02
4B065AA11X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA23
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、CASTシステムを使用して植物ゲノム中への所望の配列の標的化転位をもたらすことに関する組成物及び方法に関する。いくつかの実施形態は、植物染色体においてメガ遺伝子座を生成するための方法であって、(a)第1の遺伝子座を含む植物を得る工程であって、第1の遺伝子座が、内因性形質遺伝子座又は導入遺伝子を含む、工程;(b)植物に、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12k、ガイド核酸及びドナーカセットを提供する工程;並びに(c)工程(b)から生成した子孫植物を選択する工程を含み、ドナーカセットの標的化転位が、ガイド核酸によって標的化される第2の遺伝子座で起こり、第1及び第2の遺伝子座が、遺伝的に連鎖しているが、物理的に離れている、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物染色体においてメガ遺伝子座を生成するための方法であって、(a)第1の遺伝子座を含む植物を得る工程であって、第1の遺伝子座が、内因性形質遺伝子座を含むか、又はトランスジェニックである、工程;(b)植物に、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12k、ガイド核酸及びドナーカセットを提供する工程;並びに(c)工程(b)から生成した子孫植物を選択する工程を含み、ドナーカセットの標的化転位が、ガイド核酸によって標的化される第2の遺伝子座で起こり、第1及び第2の遺伝子座が、遺伝的に連鎖しているが、物理的に離れている、方法。
【請求項2】
第1及び第2の遺伝子座が、互いに約0.1cM~約20cM離れて位置している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1及び第2の遺伝子座が、互いに約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5. 4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9. 9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5又は20cM離れて位置している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
植物が、tnsB、tnsC、tniQ及びCas12kからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質をコードする1つ又は複数の発現カセットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
植物が、1つ又は複数のガイド核酸をコードする1つ又は複数の発現カセットを含む、請求項1又は4に記載の方法。
【請求項6】
1つ又は複数のガイド核酸が、植物中の標的部位と相補的ではない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
tnsB、tnsC、tniQ、Cas12k、ガイド核酸及びドナーカセットのうちの1つ又は複数が、微粒子銃によって植物に提供される、請求項1~6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7に記載の方法によって生成される、メガ遺伝子座を含むトランスジェニック植物、種子又は植物の部分。
【請求項9】
a.配列番号1、2、13~15のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsBタンパク質をコードする第1の発現カセット;
b.配列番号3、4、16~18のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsCタンパク質をコードする第2の発現カセット;及び
c.配列番号5、6、19~21のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsQタンパク質をコードする第3の発現カセット
を含むT-DNA。
【請求項10】
配列番号7、8、22~24のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShCas12kタンパク質をコードする第4の発現カセットを更に含む、請求項9に記載のT-DNA。
【請求項11】
ガイド核酸をコードする第5の発現カセットを更に含む、請求項9又は10に記載のT-DNA。
【請求項12】
発現カセットが、配列番号54と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む、請求項11に記載のT-DNA。
【請求項13】
請求項9又は10に記載のT-DNAを含む植物。
【請求項14】
ドナーカセットを更に含む、請求項13に記載の植物。
【請求項15】
ドナーカセットが、配列番号45と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列、及び配列番号46と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む、請求項14に記載の植物。
【請求項16】
CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含む、請求項9~12に記載のT-DNA。
【請求項17】
リコンビナーゼ認識配列が、LoxP、Lox.TATA-R9、FRT、RS及びGIXからなる群から選択される、請求項16に記載のT-DNA。
【請求項18】
部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを更に含む、請求項16又は17に記載のT-DNA。
【請求項19】
部位特異的リコンビナーゼが、Cre-リコンビナーゼ、Flp-リコンビナーゼ及びR-リコンビナーゼからなる群から選択される、請求項18に記載のT-DNA。
【請求項20】
ドナーカセットを更に含み、ドナーカセットが、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを破壊する、請求項18又は19に記載のT-DNA。
【請求項21】
請求項9~12及び16~20に記載のT-DNAを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)菌。
【請求項22】
a.配列番号9、25~27のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsBタンパク質をコードする第1の発現カセット;
b.配列番号10、28~30のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsCタンパク質をコードする第2の発現カセット;及び
c.配列番号11、31~33のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsQタンパク質をコードする第3の発現カセット
を含むT-DNA。
【請求項23】
配列番号12、34~36のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcCas12kタンパク質をコードする第4の発現カセットを更に含む、請求項22に記載のT-DNA。
【請求項24】
ガイド核酸をコードする第5の発現カセットを更に含む、請求項22又は23に記載のT-DNA。
【請求項25】
発現カセットが、配列番号55と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む、請求項24に記載のT-DNA。
【請求項26】
請求項22~25に記載のT-DNAを含む植物。
【請求項27】
ドナーカセットを更に含む、請求項26に記載の植物。
【請求項28】
ドナーカセットが、配列番号47と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列、及び配列番号48と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む、請求項27に記載の植物。
【請求項29】
CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含む、請求項22~25に記載のT-DNA。
【請求項30】
リコンビナーゼ認識配列が、LoxP、Lox.TATA-R9、FRT、RS及びGIXからなる群から選択される、請求項29に記載のT-DNA。
【請求項31】
部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを更に含む、請求項29又は30に記載のT-DNA。
【請求項32】
部位特異的リコンビナーゼが、Cre-リコンビナーゼ、Flp-リコンビナーゼ及びR-リコンビナーゼからなる群から選択される、請求項31に記載のT-DNA。
【請求項33】
ドナーカセットを更に含み、ドナーカセットが、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを破壊する、請求項31又は32に記載のT-DNA。
【請求項34】
請求項22~25及び29~33に記載のT-DNAを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス菌。
【請求項35】
植物細胞のゲノム中に目的の配列の標的化転位を発生させる方法であって、植物細胞にCASTシステムを提供する工程を含み、CASTシステムが、
(a)tnsB;
(b)tnsC;
(c)tniQ;
(d)Cas12k;
(e)ガイド核酸;及び
(f)ドナーカセット
を含み、
CASTシステムが、目的の配列を、植物ゲノム中のガイド核酸によって認識される標的部位に転位させる、
方法。
【請求項36】
植物細胞が、半数体誘導植物を、ガイド核酸によって認識される標的部位を含む植物と交配することによって生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
植物細胞が、(a)~(d)を含む第1の植物を(e)及び(f)を含む第2の植物と交配することによって生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
植物細胞が、(f)を含む植物に(a)~(e)を含む粒子を照射することによって生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
植物細胞が、(a)~(d)を含む植物に(e)及び(f)を含む粒子を照射することによって生成される、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
植物が、植物で発現可能なプロモーターに作動可能に連結された(a)~(e)のうちのいずれか1つをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
プロモーターが、誘導可能であるか、又は発生的に制御されている、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2019年8月7日に出願された米国仮特許出願第62/883,933号の利益を主張し、これは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
99,319バイトのサイズ(MS-Windows(登録商標)によって測定)であり、2020年8月5日に作成されたファイル名「P34780WO00_SL.TXT」に含まれる配列表は、本明細書とともに電子的に出願され、その全体が参照によって組み込まれる。
【0003】
分野
本開示は、CASTシステムを使用して植物ゲノム中への所望の配列の標的化転位をもたらすことに関する組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
Cas9及びCas12a等のCRISPR関連タンパク質及びそれらのガイドRNAを含むシステムは、植物のDNA修復機構によって、又はCRISPR関連タンパク質であるシチジン及びアデニンデアミナーゼの繋留による標的化によって、不正確に修復される、標的化二本鎖切断を引き起こすことによって植物ゲノムにおいて遺伝子の多様性を引き起こすために利用されている。これらのシステムは、相同組換え又は非相同末端結合のいずれかによるCRISPRが発生させる二本鎖切断の部位でドナーDNAの標的化挿入を促進するためにも利用されているが、しかしながら、CRISPR媒介標的化DNA組み込みは、植物において非効率的である。CRISPR関連トランスポザーゼ(CAST)は、Tn7様トランスポザーゼサブユニットのtnsB、tnsC及びtniQ、並びにV-K型CRISPRエフェクターのCas12kで構成され、部位特異的DNA転位を触媒する。Cas12kは、部分的に相補的な非コードRNA種のcrRNA及びtracrRNAと複合体を形成し、三者リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の存在、並びにcrRNAの可変部分及び標的DNAの間の相補性に基づいて、転位のための染色体の部位を認識する。関連するトランスポザーゼのtnsB、tnsC及びtniQは、保存された「左端」(LE)及び「右端」(RE)の境界によってトランスポゾンを認識し、それらは、Cas12kによって認識される標的配列の近くの染色体の部位に、優先的には、TAジヌクレオチドの間に、それを挿入する。シアノバクテリア種のスキトネマ・ホフマンニ(Scytonema hofmanni)(UTEX B 2349)及びアナベナ・シリンドリカ(Anabaena cylindrica)(PCC 7122)においてネイティブの2つの相同CASTシステムは、大腸菌(E. coli)において、転位のために機能することが実証されている(Streckerら、Science10.1126/science.aax9181、2019年を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第20170166912A1号
【特許文献2】米国特許第3,861,709号
【特許文献3】米国特許第3,710,511号
【特許文献4】米国特許第4,654,465号
【特許文献5】米国特許第5,625,132号
【特許文献6】米国特許第4,727,219号
【特許文献7】米国特許第6,762,344号
【特許文献8】米国特許第4,940,835号
【特許文献9】米国特許第6,040,497号
【特許文献10】国際公開第2009/152359号
【特許文献11】国際公開第2007/024782号
【特許文献12】米国特許第6,855,533号
【特許文献13】国際公開第2001/47952号
【特許文献14】国際公開第98/50427号
【特許文献15】国際公開第98/08932号
【特許文献16】米国特許第6,538,181号
【特許文献17】米国特許第6,538,179号
【特許文献18】米国特許第6,538,178号
【特許文献19】米国特許第5,750,876号
【特許文献20】米国特許第6,476,295号
【特許文献21】米国特許第6,444,876号
【特許文献22】米国特許第6,426,447号
【特許文献23】米国特許第6,380,462号
【特許文献24】米国特許第6,495,739号
【特許文献25】米国特許第5,608,149号
【特許文献26】米国特許第6,483,008号
【特許文献27】米国特許第6,828,475号
【特許文献28】米国特許第6,822,141号
【特許文献29】米国特許第6,770,465号
【特許文献30】米国特許第6,706,950号
【特許文献31】米国特許第6,660,849号
【特許文献32】米国特許第6,596,538号
【特許文献33】米国特許第6,589,767号
【特許文献34】米国特許第6,537,750号
【特許文献35】米国特許第6,489,461号
【特許文献36】米国特許第6,459,018号
【特許文献37】米国特許第6,380,466号
【特許文献38】米国特許第5,512,466号
【特許文献39】米国特許第6,723,837号
【特許文献40】米国特許第6,653,530号
【特許文献41】米国特許第6,541,259号
【特許文献42】米国特許第5,985,605号
【特許文献43】米国特許第6,171,640号
【特許文献44】米国特許第RE37,543号
【特許文献45】米国特許第6,228,623号
【特許文献46】米国特許第5,958,745号
【特許文献47】米国特許出願公開第20030028917号
【特許文献48】米国特許第6,072,103号
【特許文献49】米国特許第6,812,379号
【特許文献50】米国特許第6,774,283号
【特許文献51】米国特許第6,140,075号
【特許文献52】米国特許第6,080,560号
【特許文献53】米国特許第6,531,648号
【特許文献54】米国特許第6,166,292号
【特許文献55】米国特許第5,543,576号
【特許文献56】米国特許第6,011,199号
【特許文献57】米国特許第5,229,114号
【特許文献58】米国特許第5,689,041号
【特許文献59】米国特許第6,576,818号
【特許文献60】米国特許第6,271,443号
【特許文献61】米国特許第5,981,834号
【特許文献62】米国特許第5,869,720号
【特許文献63】米国特許第5,998,700号
【特許文献64】米国特許第5,107,065号
【特許文献65】米国特許出願公開第2006/0200878号
【特許文献66】米国特許出願公開第2008/0066206号
【特許文献67】米国特許出願第11/974,469号
【特許文献68】PCT/US2019/033976号
【特許文献69】PCT/US2019/033984号
【特許文献70】米国特許第6,603,061号
【特許文献71】米国特許出願公開第2006/0282911号
【特許文献72】国際公開第2002/040677号
【特許文献73】国際公開第2006/128569号
【特許文献74】国際公開第2006/128570号
【特許文献75】米国特許出願公開第2002-120964号
【特許文献76】国際公開第2002/034946号
【特許文献77】国際公開第2010/117737号
【特許文献78】国際公開第2010/117735号
【特許文献79】国際公開第2005/103266号
【特許文献80】米国特許出願公開第2005-216969号
【特許文献81】米国特許出願公開第2007-143876号
【特許文献82】国際公開第2006/098952号
【特許文献83】米国特許出願公開第2006-230473号
【特許文献84】国際公開第2002/027004号
【特許文献85】国際公開第11/075593号
【特許文献86】国際公開第2011/075595号
【特許文献87】国際公開第2010/077816号
【特許文献88】米国特許出願公開第2006-162007号
【特許文献89】国際公開第2004/053062号
【特許文献90】米国特許出願公開第2003-126634号
【特許文献91】国際公開第2010/080829号
【特許文献92】国際公開第2005/074671号
【特許文献93】米国特許出願公開第2009-217423号
【特許文献94】国際公開第2006/128573号
【特許文献95】米国特許出願公開第2010-0024077号
【特許文献96】国際公開第2006/128571号
【特許文献97】国際公開第2006/128572号
【特許文献98】米国特許出願公開第2006-130175号
【特許文献99】国際公開第2004/039986号
【特許文献100】米国特許出願公開第2007-067868号
【特許文献101】国際公開第2005/054479号
【特許文献102】国際公開第2005/054480号
【特許文献103】国際公開第2012/033794号
【特許文献104】国際公開第2011/022469号
【特許文献105】国際公開第2012/075426号
【特許文献106】国際公開第2012/075429号
【特許文献107】米国特許出願公開第2006-070139号
【特許文献108】国際公開第2009/100188号
【特許文献109】国際公開第2011/066384号
【特許文献110】国際公開第2011/066360号
【特許文献111】米国特許出願公開第2009-137395号
【特許文献112】国際公開第08/112019号
【特許文献113】米国特許出願公開第2008-312082号
【特許文献114】国際公開第2008/054747号
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【特許文献177】米国特許出願公開第2003-188347号
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【特許文献182】国際公開第2012/082548号
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【特許文献184】米国特許出願公開第2009-265817号
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【特許文献202】米国特許出願公開第20180230478号
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【非特許文献】
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【非特許文献32】Thompsonら;Nucleic Acids Res. 1994年;22(22):4673~4680頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
植物細胞において機能的なCASTシステムが、植物ゲノム中の所望の場所でドナーDNAの効率的な標的化挿入を促進するために必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
植物における標的化ゲノム改変のためにCASTシステムを利用する方法及び組成物を本明細書において記載する。いくつかの実施形態は、植物染色体においてメガ遺伝子座を生成するための方法であって、(a)第1の遺伝子座を含む植物を得る工程であって、第1の遺伝子座が、内因性形質遺伝子座又は導入遺伝子を含む、工程;(b)植物に、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12k、ガイド核酸及びドナーカセットを提供する工程;並びに(c)工程(b)から生成した子孫植物を選択する工程を含み、ドナーカセットの標的化転位が、ガイド核酸によって標的化される第2の遺伝子座で起こり、第1及び第2の遺伝子座が、遺伝的に連鎖しているが、物理的に離れている、方法に関する。一部の実施形態において、第1及び第2の遺伝子座は、互いに約0.1cM~約20cM離れて位置している。一部の実施形態において、第1及び第2の遺伝子座は、互いに約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5. 4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9. 9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5又は20cM離れて位置している。一部の実施形態において、植物は、tnsB、tnsC、tniQ及びCas12kからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質をコードする1つ又は複数の発現カセットを含む。一部の実施形態において、植物は、1つ又は複数のガイド核酸をコードする1つ又は複数の発現カセットを含む。一部の実施形態において、1つ又は複数のガイド核酸は、植物中の標的部位と相補的ではない。一部の実施形態において、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12k、ガイド核酸及びドナーカセットのうちの1つ又は複数は、微粒子銃によって植物に提供される。
【0009】
いくつかの実施形態は、(a)第1の遺伝子座を含む植物を得る工程であって、第1の遺伝子座が、内因性形質遺伝子座又は導入遺伝子を含む、工程;(b)植物に、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12k、ガイド核酸及びドナーカセットを提供する工程;並びに(c)工程(b)から生成した子孫植物、種子又は植物の部分を選択する工程によって生成される、メガ遺伝子座を含む植物、種子又は植物の部分であって、ドナーカセットの標的化転位が、ガイド核酸によって標的化される第2の遺伝子座で起こり、第1及び第2の遺伝子座が、遺伝的に連鎖しているが、物理的に離れている、植物、種子又は植物の部分に関する。一部の実施形態において、第1及び第2の遺伝子座は、互いに約0.1cM~約20cM離れて位置している。一部の実施形態において、第1及び第2の遺伝子座は、互いに約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5. 4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9. 9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5又は20cM離れて位置している。一部の実施形態において、子孫植物、種子又は植物の部分は、tnsB、tnsC、tniQ及びCas12kからなる群から選択される1つ又は複数のタンパク質をコードする1つ又は複数の発現カセットを含む。一部の実施形態において、子孫植物、種子又は植物の部分は、1つ又は複数のガイド核酸をコードする1つ又は複数の発現カセットを含む。一部の実施形態において、1つ又は複数のガイド核酸は、子孫植物、種子又は植物の部分中の標的部位と相補的ではない。一部の実施形態において、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12k、ガイド核酸及びドナーカセットのうちの1つ又は複数は、微粒子銃によって植物に提供される。
【0010】
いくつかの実施形態は、a.)配列番号1、2、13~15のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsBタンパク質をコードする第1の発現カセット;b.)配列番号3、4、16~18のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsCタンパク質をコードする第2の発現カセット;及びc.)配列番号5、6、19~21のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsQタンパク質をコードする第3の発現カセットを含むT-DNAに関する。一部の実施形態において、T-DNAは、配列番号7、8、22~24のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShCas12kタンパク質をコードする第4の発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、ガイド核酸をコードする第5の発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、発現カセットは、配列番号54と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含み、リコンビナーゼ認識配列は、LoxP、Lox.TATA-R9、FRT、RS及びGIXからなる群から選択される。一部の実施形態において、T-DNAは、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、Cre-リコンビナーゼ、Flp-リコンビナーゼ及びR-リコンビナーゼからなる群から選択される部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、ドナーカセットを更に含み、ドナーカセットは、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを破壊する。
【0011】
いくつかの実施形態は、a.)配列番号1、2、13~15のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsBタンパク質をコードする第1の発現カセット;b.)配列番号3、4、16~18のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsCタンパク質をコードする第2の発現カセット;及びc.)配列番号5、6、19~21のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsQタンパク質をコードする第3の発現カセットを含むT-DNAを含む植物に関する。一部の実施形態において、T-DNAは、配列番号7、8、22~24のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShCas12kタンパク質をコードする第4の発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、ガイド核酸をコードする第5の発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、発現カセットは、配列番号54と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む。一部の実施形態において、植物は、ドナーカセットを更に含む。一部の実施形態において、植物は、配列番号45と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列、及び配列番号46と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むドナーカセットを含む。
【0012】
いくつかの実施形態は、a.)配列番号1、2、13~15のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsBタンパク質をコードする第1の発現カセット;b.)配列番号3、4、16~18のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsCタンパク質をコードする第2の発現カセット;及びc.)配列番号5、6、19~21のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShTnsQタンパク質をコードする第3の発現カセットを含むT-DNAを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)菌に関する。一部の実施形態において、T-DNAは、配列番号7、8、22~24のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むShCas12kタンパク質をコードする第4の発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、ガイド核酸をコードする第5の発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、発現カセットは、配列番号54と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含み、リコンビナーゼ認識配列は、LoxP、Lox.TATA-R9、FRT、RS及びGIXからなる群から選択される。一部の実施形態において、T-DNAは、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、Cre-リコンビナーゼ、Flp-リコンビナーゼ及びR-リコンビナーゼからなる群から選択される部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、ドナーカセットを更に含み、ドナーカセットは、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを破壊する。
【0013】
いくつかの実施形態は、a.)配列番号9、25~27のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsBタンパク質をコードする第1の発現カセット;b.)配列番号10、28~30のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsCタンパク質をコードする第2の発現カセット;及びc.)配列番号11、31~33のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsQタンパク質をコードする第3の発現カセットを含むT-DNAに関する。一部の実施形態において、T-DNAは、配列番号12、34~36のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcCas12kタンパク質をコードする第4の発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、ガイド核酸をコードする発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、発現カセットは、配列番号55と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む。29。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含み、リコンビナーゼ認識配列は、LoxP、Lox.TATA-R9、FRT、RS及びGIXからなる群から選択される。一部の実施形態において、T-DNAは、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含み、部位特異的リコンビナーゼは、Cre-リコンビナーゼ、Flp-リコンビナーゼ及びR-リコンビナーゼからなる群から選択される。一部の実施形態において、T-DNAは、ドナーカセットを更に含み、ドナーカセットは、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを破壊する。
【0014】
いくつかの実施形態は、a.)配列番号9、25~27のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsBタンパク質をコードする第1の発現カセット;b.)配列番号10、28~30のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsCタンパク質をコードする第2の発現カセット;及びc.)配列番号11、31~33のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsQタンパク質をコードする第3の発現カセットを含むT-DNAを含む植物に関する。一部の実施形態において、T-DNAは、配列番号12、34~36のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcCas12kタンパク質をコードする第4の発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、ガイド核酸をコードする発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、発現カセットは、配列番号55と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む。一部の実施形態において、植物は、ドナーカセットを更に含む。一部の実施形態において、植物は、配列番号47と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列、及び配列番号48と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むドナーカセットを更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態は、a.)配列番号9、25~27のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsBタンパク質をコードする第1の発現カセット;b.)配列番号10、28~30のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsCタンパク質をコードする第2の発現カセット;及びc.)配列番号11、31~33のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcTnsQタンパク質をコードする第3の発現カセットを含むT-DNAを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス菌に関する。一部の実施形態において、T-DNAは、配列番号12、34~36のうちのいずれかと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含むAcCas12kタンパク質をコードする第4の発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、ガイド核酸をコードする発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、発現カセットは、配列番号55と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するDNA配列を含む。29。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含み、リコンビナーゼ認識配列は、LoxP、Lox.TATA-R9、FRT、RS及びGIXからなる群から選択される。一部の実施形態において、T-DNAは、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを更に含む。一部の実施形態において、T-DNAは、CASTシステムの成分をコードする発現カセットに隣接しているリコンビナーゼ認識配列の対を更に含み、部位特異的リコンビナーゼは、Cre-リコンビナーゼ、Flp-リコンビナーゼ及びR-リコンビナーゼからなる群から選択される。一部の実施形態において、T-DNAは、ドナーカセットを更に含み、ドナーカセットは、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを破壊する。
【0016】
いくつかの実施形態は、植物細胞のゲノム中に目的の配列の標的化転位を発生させる方法であって、植物細胞にCASTシステムを提供する工程を含み、CASTシステムが、tnsB;tnsC;tniQ;Cas12k;ガイド核酸;及びドナーカセットを含み、CASTシステムが、目的の配列を、植物ゲノム中のガイド核酸によって認識される標的部位に転位させる、方法に関する。一部の実施形態において、tnsB;tnsC;tniQ;Cas12k;ガイド核酸;及びドナーカセットを含むCASTシステムを含む植物は、ガイド核酸によって認識される標的部位を含む植物に、半数体誘導植物と交配する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ダイズプロトプラストにおいてShCAST及びAcCASTシステムを試験するために設計された発現カセットの概略図。(A)ShCAST又はAcCASTタンパク質をコードする発現カセットの設計。pCO=コドン最適化された植物。NLS=核局在化シグナル。(B)ShCAST又はAcCASTシステムのためのシングルピースガイドRNAをコードする発現カセットの設計。(C)Sh又はAcの左端(LE)若しくは右端(RE)配列と隣接している目的の配列(例えば:選択マーカー)を運ぶトランスポゾンを含むドナーカセットの概略図。(D)植物細胞へのCASTシステムの送達に基づくリボヌクレオタンパク質(RNP)のための細菌からのShCAST又はAcCASTタンパク質の発現及び精製のためのカセットの概略図。bCO=細菌における発現のためにコドン最適化。
図2】「隣接PCR」による標的化転位の検出のための標的領域(P1)及びトランスポゾン(P2)に特異的なプライマーを図示する概略図。
図3】ドナーカセットのゲノムへの部位特異的組み込みのための、CASTタンパク質、CAST sgRNA及びドナーカセットの植物への送達のための植物最適化されたAc又はShのCAST発現カセットを含むアグロバクテリウムT-DNAベクターの配置を図示する概略図。TnsB、TnsC、TniQ及びCas12Kは、いずれかの末端又は両方の末端に核局在化シグナルペプチド配列を含む。ドナーカセットは、保存されたSh又はAcのLE及びRE配列と隣接しているSOI(目的の配列)を含む。LB及びRBは、T-DNAの左境界及び右境界の配列を示す。Pはプロモーターを示す。IRESは、内部リボソームエントリー部位を示す。
図4】ShCas12aのための融合sgRNAを図示する概略図。
図5】トランスポザーゼ活性を不活性化するように設計されたアグロバクテリウムT-DNAベクターの配置を図示する概略図。ドナーカセットの切除は、lox部位と隣接している配列(Pro-tnsB;Pro-tns-C;Pro-tni-Q;Pro-Cre)を切除するCreの発現をもたらす。LB及びRBは、T-DNAの左境界及び右境界の配列を示す。Pro=プロモーター;GOI=目的の遺伝子;LE=左端;RE=右端。
図6】トランスポザーゼ活性を不活性化するように設計されたアグロバクテリウムT-DNAベクターの配置を図示する概略図。ドナーカセットの切除は、CASTシステムのtniQ成分を発現抑制するためのRNAiコンストラクトの作出をもたらす。LB及びRBは、T-DNAの左境界及び右境界の配列を示す。Pro=プロモーター;GOI=目的の遺伝子;LE=左端;RE=右端。
図7】トランスポザーゼ活性を不活性化するように設計された発現カセットの概略図。ShCAST又はAcCASTタンパク質をコードする発現カセットの設計。LTR=長い末端反復配列;SINE=短分散型核内反復配列;HelEnds=ヘリトロンの保存された末端反復配列;ITR=逆位末端反復配列。
【発明を実施するための形態】
【0018】
他に定義されない限り、使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される同じ意味を有する。用語が単数形で提供される場合、本発明者らは、その用語の複数形によって記載された本発明の態様も企図する。参照によって組み込まれる参考文献中で使用される用語及び定義に不一致がある場合、本出願において使用される用語は、本明細書において与えられた定義を有するものとする。使用される他の技術用語は、それらが様々な技術分野に特有の辞書、例えば、「The American Heritage(登録商標) Science Dictionary」(the American Heritage Dictionaries編、2011年、Houghton Mifflin Harcourt、ボストン及びニューヨーク)、「McGraw-Hill Dictionary of Scientific and Technical Terms」(第6版、2002年、McGraw-Hill、ニューヨーク)又は「Oxford Dictionary of Biology」(第6版、2008年、Oxford University Press、オックスフォード及びニューヨーク)によって例示される通りに使用されている技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本発明者らは、機構又は作用機序を限定することを意図するものではない。それらへの言及は、説明の目的のためにのみ提供される。
【0019】
本開示の実施は、他に指示されない限り、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、植物生物学、ゲノミクス、生命工学及び遺伝学の従来の技法を含み、これらは、当技術分野における技能の範囲内である。例えば、Green及びSambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第4版(2012年);Current Protocols In Molecular Biology(F. M. Ausubelら編、(1987年));Plant Breeding Methodology(N.F. Jensen、Wiley-Interscience(1988年));the series Methods In Enzymology(Academic Press, Inc.):PCR 2:A Practical Approach(M. J. MacPherson、B. D. Hames及びG. R. Taylor編(1995年));Harlow及びLane編(1988年) Antibodies, A Laboratory Manual;Animal Cell Culture(R. I. Freshney編(1987年));Recombinant Protein Purification: Principles And Methods、18-1142-75、GE Healthcare Life Sciences;C. N. Stewart、A. Touraev、V. Citovsky、T. Tzfira編(2011年) Plant Transformation Technologies(Wiley-Blackwell);並びにR. H. Smith(2013年) Plant Tissue Culture: Techniques and Experiments(Academic Press, Inc.)を参照されたい。
【0020】
例えば、全ての特許、公開特許出願及び非特許刊行物を含む本明細書において引用される任意の参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0021】
本明細書において提供される任意の組成物、核酸分子、ポリペプチド、細胞、植物等は、本明細書において提供される任意の方法による使用のために特に想定される。
【0022】
本明細書において記載されるいくつかの実施形態は、植物細胞において、スキトネマ・ホフマンニ(ShCAST)及びアナベナ・シリンドリカ(AcCAST)に由来するCRISPR関連トランスポザーゼ(CAST)システムを利用するための方法及び組成物に関する。提供される方法は、様々な細胞、組織、及び植物の配偶子を含む発生型において実行されてもよい。本明細書において記載される1つ又は複数の要素を、特定の植物細胞、組織、部分及び/又は発生段階に特異的なプロモーター、例えば減数分裂特異的プロモーターの使用と組み合わせてもよいことが更に予測される。
【0023】
いくつかの実施形態は、植物細胞において目的の配列の標的化挿入を行うために、Tn7様トランスポザーゼサブユニットのtnsB、tnsC及びtniQ、並びにV-K型CRISPRエフェクターのCas12kを含むShCASTシステムを使用することに関する。一部の実施形態において、ShCASTシステムは、crRNA及びtracrRNAを更に含む。一部の実施形態において、ShCASTシステムは、配列番号54に記述されるヌクレオチド配列を含むガイド核酸を更に含む。一部の実施形態において、ShCASTシステムは、左端境界配列(LE)及び右端境界配列(RE)と隣接している目的の配列を含むドナーカセットを更に含む。一部の実施形態において、ShCASTシステムは、配列番号45に記述されるヌクレオチド配列及び配列番号46に記述されるヌクレオチド配列と隣接している1つ又は複数の発現カセットを含むドナーカセットを更に含む。
【0024】
いくつかの実施形態は、植物細胞において目的の配列の標的化挿入を行うために、Tn7様トランスポザーゼサブユニットのtnsB、tnsC及びtniQ、並びにV-K型CRISPRエフェクターのCas12kを含むAcCASTシステムを使用することに関する。一部の実施形態において、AcCASTシステムは、crRNA及びtracrRNAを更に含む。一部の実施形態において、AcCASTシステムは、配列番号55に記述されるヌクレオチド配列を含むガイド核酸を更に含む。一部の実施形態において、AcCASTシステムは、左端境界配列(LE)及び右端境界配列(RE)と隣接している目的の配列を含むドナーカセットを更に含む。一部の実施形態において、AcCASTシステムは、配列番号47に記述されるヌクレオチド配列及び配列番号48に記述されるヌクレオチド配列と隣接している1つ又は複数の発現カセットを含むドナーカセットを更に含む。
【0025】
転写可能なDNA分子をタンパク質として翻訳及び発現する機能的mRNA分子に転写するような方法で、細胞にコンストラクトをアセンブル及び導入するための方法は、当技術分野において公知である。本発明の実施のために、コンストラクト及び宿主細胞を調製及び使用するための従来の組成物並びに方法は、当業者に周知である。高等植物において核酸の発現に有用な典型的なベクターは、当技術分野において周知であり、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのTiプラスミドに由来するベクター及びpCaMVCN輸送制御ベクターが挙げられる。
【0026】
いくつかの実施形態は、植物細胞における発現のために最適化されたAcCASTシステムに関する。本明細書で使用される場合、「コドン最適化」は、配列の少なくとも1つのコドン(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、50以上のコドン)を、元のアミノ酸配列を維持しながら宿主細胞の遺伝子中でより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンと置き換えることによって、目的の宿主細胞中での増強された発現のために核酸配列を改変するプロセスを指す。様々な種が、特定のアミノ酸のある特定のコドンについてバイアスを示す。コドンバイアス(生物間のコドン使用頻度の相違)は、多くの場合、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関し、これは次に、とりわけ、翻訳されるコドンの特性及び特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の利用可能性に依存すると考えられる。細胞中の選択されたtRNAの優性は、一般に、ペプチド合成において最も高い頻度で使用されるコドンの反映である。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために合わせることができる。コドン使用頻度表は、例えば、www(dot)kazusa(dot)or(dot)jp/codonで利用可能な「コドン使用頻度データベース」で容易に利用可能であり、これらの表は、多くの方法において適合し得る。Nakamuraら、2000年、Nucl. Acids Res. 28:292頁を参照されたい。特定の宿主細胞における発現のために特定の配列をコドン最適化するためのコンピューターアルゴリズムも利用可能であり、例えば、Gene Forge(Aptagen; Jacobus、PA)も利用可能である。藻類を含む植物におけるコドン使用頻度に関して、Campbell及びGowri、1990年、Plant Physiol.、92:1~11頁;及びMurrayら、1989年、Nucleic Acids Res.、17:477~98頁に言及されている。一部の実施形態において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、トウモロコシ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、コメ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、コムギ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、ダイズ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、ワタ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、アルファルファ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、オオムギ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、ソルガム細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、サトウキビ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、カノーラ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、トマト細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、キュウリ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、ジャガイモ細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、単子葉植物細胞のためにコドン最適化される。別の態様において、CASTシステムの成分をコードする核酸は、双子葉植物細胞のためにコドン最適化される。
【0027】
いくつかの実施形態は、植物細胞における発現のために最適化されたShCASTシステムに関する。ShCASTシステムのCas12k、tnsB、tnsC及びtniQタンパク質をコードする遺伝子配列は、植物細胞における発現のために最適化される。一部の実施形態において、tnsBをコードするコドン最適化された配列は、配列番号1、2、13、14及び15から選択される。一部の実施形態において、tnsCをコードするコドン最適化された配列は、配列番号3、4、16、17及び18から選択される。一部の実施形態において、tniQをコードするコドン最適化された配列は、配列番号5、6、19、20及び21から選択される。一部の実施形態において、Cas12kをコードするコドン最適化された配列は、配列番号7、8、22、23及び24から選択される。
【0028】
一部の実施形態において、AcCASTシステムのCas12k、tnsB、tnsC及びtniQタンパク質をコードする遺伝子配列は、植物細胞における発現のために最適化される。一部の実施形態において、tnsBをコードするコドン最適化された配列は、配列番号9、25、26及び27から選択される。一部の実施形態において、tnsCをコードするコドン最適化された配列は、配列番号10、28、29及び30から選択される。一部の実施形態において、tniQをコードするコドン最適化された配列は、配列番号11、31、32及び33から選択される。一部の実施形態において、Cas12kをコードするコドン最適化された配列は、配列番号12、34、35及び36から選択される。
【0029】
一部の実施形態において、AcCAST及びShCASTシステムのCas12k、tnsB、tnsC及びtniQタンパク質をコードする配列は、植物特異的調節エレメントに作動可能に連結されている。例えば、ダイズにおける発現のために、タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)(MtUbq)由来のユビキチンプロモーター又はダリアモザイクウイルス由来の35Sプロモーター(DaMV 35S)を、CASTタンパク質の発現を駆動するために使用することができる。
【0030】
一部の実施形態において、機能的イントロン配列を含有するCASTエフェクター遺伝子カセットのタンパク質コード領域は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスにおけるエフェクターカセットのリーキー発現の影響を低下させるように設計した。植物において、遺伝子コンストラクト中の一部のイントロンの包含は、イントロンを欠くコンストラクトと比べて、増加したmRNA及びタンパク質の蓄積をもたらす。この効果は、遺伝子発現の「イントロン媒介増強」(IME)と称されている。植物における発現を刺激することが公知のイントロンは、トウモロコシ遺伝子(例えば、tubA1、Adh1、Sh1及びUbi1)、コメ遺伝子(例えば、tpi)、並びにペチュニア(例えば、rbcS)、ジャガイモ(例えば、st-ls1)及びシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(例えば、ubq3及びpat1)由来のもののような双子葉植物遺伝子において同定されている。イントロンのスプライス部位内の欠失又は突然変異が、遺伝子発現を低下させることが示されており、スプライシングがIMEのために必要である可能性を示す。しかしながら、双子葉植物におけるIMEは、シロイヌナズナ由来のpat1遺伝子のスプライス部位内の点突然変異によって示されている。ある植物中での同じイントロンの複数の使用は、不利益を示すことが示されている。これらの場合において、適切な組換えDNAエレメントの構築のための基本制御エレメントのコレクションを持つことが必要である。
【0031】
CASTシステムの成分を植物細胞の核に向かわせることが望ましくあり得る。そのような例において、1つ又は複数の核局在化シグナルを使用して、CASTシステムの成分の局在化に向かわせることができる。本明細書で使用される場合、「核局在化シグナル」は、細胞の核への移入のためのタンパク質(例えば、tnsB、tnsC、tniQ又はCas12k)を「タグ化する」アミノ酸配列を指す。ある態様において、本明細書において提供される核酸分子は、核局在化シグナルをコードする。別の態様において、本明細書において提供される核酸分子は、2つ以上の核局在化シグナルをコードする。ある態様において、本明細書において提供されるCASTタンパク質は、核局在化シグナルを含む。ある態様において、核局在化シグナルは、CASTタンパク質のN末端に位置する。更なる態様において、核局在化シグナルは、CASTタンパク質のC末端に位置する。更に別の態様において、核局在化シグナルは、CASTタンパク質のN末端及びC末端の両方に位置する。一部の実施形態において、植物細胞において機能性である核局在化シグナルペプチドをコードする配列は、タンパク質のオープンリーディングフレームの5'及び/又は3'末端に融合されて、植物細胞の核にCASTタンパク質を局在化させる。
【0032】
一部の実施形態において、CASTシステムの成分をコードする配列は、別々の発現ベクターに配置することができる。他の実施形態において、CASTシステムの2つ以上の成分をコードする配列は、同じ発現ベクターに配置することができる。一部の実施形態において、CASTシステムの4つのタンパク質全てをコードする配列は、同じ発現ベクターに配置することができる。2つ以上のCASTタンパク質をコードする配列が同じ発現ベクター中にある実施形態において、CASTシステムのタンパク質成分をコードする遺伝子は、多様な又は類似の調節エレメントによって駆動され得る。一部の実施形態において、融合コンストラクトは、2、3又は4つ全てのCASTタンパク質コード遺伝子の中で作り出され、これは、フレキシブルなオリゴペプチドリンカーによって分離された同じオープンリーディングフレーム内に配置される。特定の理論によって拘束されることを望まないが、融合された配置は、CASTシステムのタンパク質成分の発現を協調させ、これは、導入遺伝子の機能も協調されることを意味する場合に重要である。一部の実施形態において、2、3又は4つ全てのCASTタンパク質コード遺伝子は、単一のプロモーターに作動可能に連結され、タンパク質コード配列は、ウイルス由来2A配列等の自己切断ペプチドをコードする配列によって分離され、タンパク質を分離する正確な切断をもたらす(Leeら、J Exp Bot. 2012年8月;63(13):4797~810頁;Liuら、Plant Biotechnol J. 2018年6月;16(6):1107~1109頁を参照されたい)。一部の実施形態において、配列内リボソーム進入部位(IRES)配列は、複数のポリペプチドの産生をもたらす転写を生じる転写カセットに含まれ得る(Gouiaa及びKhoudi、Phytochemistry. 2015年9月;117:537~546頁を参照されたい)。一部の実施形態において、プロテアーゼ認識配列、例えば、タバコエッチウイルス(TEV)NIaプロテアーゼ認識配列(ヘプタペプチドの切断認識配列ENLYFQS)は、単一の転写単位から2つ以上のポリペプチドを生じさせるために、NIaプロテイナーゼと一緒に使用される。
【0033】
任意の特定の科学理論によって限定されないが、CASTシステムのCas12kタンパク質は、ガイド核酸と複合体を形成し、これが、標的核酸分子中の相補的配列とハイブリダイズし、それによって、Cas12kタンパク質を、標的核酸分子、及び標的部位におけるドナーカセットの挿入にガイドする。一部の実施形態において、ガイド核酸は、標的核酸中の配列と相補的であるヌクレオチド配列を含む第1のセグメント、及びCas12kタンパク質と相互作用する第2のセグメントを含む。一部の実施形態において、標的核酸中の配列と相補的であるヌクレオチド配列を含むガイドの第1のセグメントは、CRISPR RNA(crRNA又はcrRNA反復配列)に相当する。一部の実施形態において、Cas12kタンパク質と相互作用する核酸配列を含むガイドの第2のセグメントは、トランス作用性CRISPR RNA(tracrRNA)に相当する。一部の実施形態において、ガイド核酸は、互いとハイブリダイズする2つの別々の核酸分子(標的核酸中の配列と相補的であるポリヌクレオチド、及び触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質と相互作用するポリヌクレオチド)を含み、本明細書において「ダブルガイド」又は「2分子ガイド」と称される。一部の実施形態において、ダブルガイドは、DNA、RNA、又はDNA及びRNAの組み合わせを含み得る。他の実施形態において、ガイド核酸は、単一のポリヌクレオチドであり、本明細書において「単分子ガイド」又は「シングルガイド」と称される。一部の実施形態において、シングルガイドは、DNA、RNA、又はDNA及びRNAの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態は、2つの間の短い合成オリゴヌクレオチド(「ループ」)を使用することによって作出されるcrRNA及びtracrRNAを含むシングルガイドRNA(sgRNA)に関する。「ガイド核酸」という用語は、包括的であり、二分子ガイド及び単分子ガイドの両方を指す。ガイド核酸の発現は、標準的なsnRNAプロモーター、例えば、小型RNAのU6、7SL、U2、U5及びU3クラス由来のプロモーターによって駆動され得る(参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20170166912A1号を参照されたい)。一部の実施形態において、ガイド核酸の発現は、U6iプロモーターによって駆動される。一部の実施形態において、ガイド核酸の発現は、U3プロモーターによって駆動される。
【0034】
ドナーカセット
任意の特定の科学理論によって限定されないが、CASTシステムは、転位の成功のために、認識可能な「トランスポゾン」を運ぶドナーカセットを利用する(Streckerら、Science10.1126/science.aax9181(2019年)を参照されたい)。保存された左端境界配列(LE)及び右端境界配列(RE)エレメントは、この認識を提供する。ドナーカセットにおいて、目的の核酸配列(SOI)は、LE及びREエレメントと隣接している。一部の実施形態において、ドナーカセットは、レポーター遺伝子のコード領域を含むことができ、これは、ネイティブプロモーターの下流に組み込まれた場合、更なるDNA配列に基づく確認の前に、標的化転位の迅速な読み取りを提供する。ダイズにおいて、スペクチノマイシンアデニリルトランスフェラーゼ(aadA)又は緑色蛍光タンパク質は、それぞれ、選択マーカー遺伝子及びレポーター遺伝子の例である。一部の実施形態において、目的の配列は、農学目的の1つ又は複数の遺伝子を含む。
【0035】
一部の実施形態において、目的の配列は、雄性不稔性を付与する1つ又は複数の遺伝子を含む。雄性不稔性を付与する遺伝子の例としては、米国特許第3,861,709号;米国特許第3,710,511号;米国特許第4,654,465号;米国特許第5,625,132号;及び米国特許第4,727,219号に開示されているものが挙げられる。除草剤誘導性雄性不稔性遺伝子の使用は、米国特許第6,762,344号に記載されている。トランスジェニック植物における誘導された雄性不稔性は、所与の交配において雌性として使用される物理的に雄しべを取り去られた植物に対する必要性を排除することによって、ハイブリッド種子の生産の効率を増加させることができる。
【0036】
一部の実施形態において、目的の配列は、除草剤耐性を付与する1つ又は複数の遺伝子を含む。多数の除草剤抵抗性遺伝子が公知であり、本発明で用いられ得る。例は、イミダゾリノン若しくはスルホニルウレア等の成長点又は分裂組織を阻害する除草剤に対する抵抗性を付与する遺伝子である。突然変異体のALS及びAHAS酵素に対するこのカテゴリーコード中の遺伝子の例は、例えば、Leeら、EMBO J.、7:1241頁、1988年;Gleenら、Plant Molec. Biology、18:1185~1187頁、1992年;及びMikiら、Theor. Appl. Genet.、80:449頁、1990年に記載されている。グリホサートに対する抵抗性遺伝子(それぞれ、突然変異体5-エノールピルブル-3ホスフィキメートシンターゼ(EPSPS)及びaroA遺伝子によって付与される抵抗性)、及び他のホスホノ化合物、例えば、グルホシネート(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)及びストレプトマイセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子)も使用され得る。例えば、グリホサート抵抗性を付与することができるEPSPSの形態のヌクレオチド配列を開示するShahらに対する米国特許第4,940,835号を参照されたい。グリホサート抵抗性を付与する特異的EPSPS発現カセットの例は、米国特許第6,040,497号に提供されている。中でも、ある特定の除草剤に対する耐性の特性を付与するタンパク質をコードするDNA配列としては、bar若しくはPAT遺伝子、又はグルホシネート除草剤に対する耐性を付与する国際公開第2009/152359号に記載のストレプトマイセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)遺伝子、グリホサート-n-アセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子、或いはグリホサートオキシドレダクターゼをコードする遺伝子も挙げられる。更に好適な除草剤耐性形質としては、少なくとも1種のALS(アセト乳酸シンターゼ)阻害剤(例えば、国際公開第2007/024782号)、突然変異シロイヌナズナ属ALS/AHAS遺伝子(例えば、米国特許第6,855,533号)、2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)に対する耐性を付与する2,4-D-モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子、及びジカンバ(3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸)に対する耐性を付与するジカンバモノオキシゲナーゼをコードする遺伝子が挙げられる。
【0037】
一部の実施形態において、目的の配列は、病害抵抗性を付与する1つ又は複数の遺伝子を含む。植物防御は、多くの場合、植物における病害抵抗性遺伝子(R)の産物及び病原体における対応する非病原性(Avr)遺伝子の産物の間の特異的相互作用によって活性化される。抵抗性遺伝子は、特異的な病原体株に対して抵抗性の植物を生じさせるためにドナーカセット中に提供され得る。例えば、Jonesら、Science、266:7891頁、1994年(cloning of the tomato Cf-9 gene for resistance to Cladosporium fulvum);Martinら、Science、262:1432頁、1993年(tomato Pto gene for resistance to Pseudomonas syringae pv.);及びMindrinosら、Cell、78(6):1089~1099頁、1994年(Arabidopsis RPS2 gene for resistance to Pseudomonas syringae)を参照されたい。ウイルス侵襲性タンパク質又はそれらに由来する複合毒素も、ウイルス病抵抗性のために使用され得る。例えば、植物細胞中で発現するウイルスコートタンパク質の蓄積は、ウイルス感染及び/又はコートタンパク質遺伝子が由来するウイルスによってだけでなく関連ウイルスによってもたらされる病害の発症に対する抵抗性を与える(Beachyら、Ann. Rev. Phytopathol.、28:451頁、1990年を参照されたい)。コートタンパク質媒介抵抗性は、アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコ条斑ウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、タバコエッチウイルス、タバコ茎えそウイルス及びタバコモザイクウイルスに対して、植物において付与され得る。
【0038】
一部の実施形態において、目的の配列は、昆虫抵抗性を付与する1つ又は複数の遺伝子を含む。昆虫抵抗性遺伝子の一例としては、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質、その誘導体、又はそれらをモデルにした合成ポリペプチドをコードする遺伝子が挙げられる。昆虫抵抗性遺伝子の例としては、CrylA、CryIAb、CryIAc、CryIIA、CryIIIA、CryIIIB2、Cry9c Cry2Ab、Cry3Bb及びCryIFタンパク質若しくはその毒素断片、並びにそれらのハイブリッド若しくは組み合わせも含むBt Cry又はVIPタンパク質、特に、CrylFタンパク質又はCrylFタンパク質に由来するハイブリッド(例えば、ハイブリッドCrylA-CrylFタンパク質又はその毒素断片)、CrylA型タンパク質又はその毒素断片、CrylAcタンパク質又はCrylAcタンパク質に由来するハイブリッド(例えば、ハイブリッドCrylAb-CrylAcタンパク質)、或いはCrylAb若しくはBt2タンパク質又はそれらの毒素断片、Cry2Ae、Cry2Af若しくはCry2Agタンパク質又はそれらの毒素断片、CrylA.105タンパク質又はその毒素断片、VIP3Aa19タンパク質、VIP3Aa20タンパク質、COT202又はCOT203ワタ種目において産生されるVIP3Aタンパク質、Estruchら(1996年)、Proc Natl Acad Sci US A. 28;93(11):5389~94頁に記載のVIP3Aaタンパク質又はその毒素断片、国際公開第2001/47952号に記載のCryタンパク質、ゼノラブダス属(Xenorhabdus)由来の殺虫性タンパク質(国際公開第98/50427号に記載)、セラシア属(Serratia)(特に、S.エントモフィラ(S.entomophila)由来)又はフォトラブダス属(Photorhabdus)種株、例えば、国際公開第98/08932号に記載のフォトラブダス属由来のTcタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。上記で指名された配列、特に、それらの毒素断片の配列、又はプラスチドトランジットペプチド等のトランジットペプチド又は別のタンパク質若しくはペプチドに融合されたもののいずれかから一部のアミノ酸(1~10個、好ましくは、1~5個)が異なる、これらのタンパク質のいずれか1つの任意のバリアント又は突然変異体も本明細書に含まれる。
【0039】
一部の実施形態において、目的の配列は、デンプン産生(米国特許第6,538,181号;同第6,538,179号;同第6,538,178号;同第5,750,876号;同第6,476,295号)、変性油産生(米国特許第6,444,876号;同第6,426,447号;同第6,380,462号)、高い油産生(米国特許第6,495,739号;同第5,608,149号;同第6,483,008号;同第6,476,295号)、変性脂肪酸含有量(米国特許第6,828,475号;同第6,822,141号;同第6,770,465号;同第6,706,950号;同第6,660,849号;同第6,596,538号;同第6,589,767号;同第6,537,750号;同第6,489,461号;同第6,459,018号)、高いタンパク質産生(米国特許第6,380,466号)、果実熟成(米国特許第5,512,466号)、増強された動物及びヒトの栄養素(米国特許第6,723,837号;同第6,653,530号;同第6,541,259号;同第5,985,605号;同第6,171,640号)、バイオポリマー(米国特許第RE37,543号;同第6,228,623号;同第5,958,745号及び米国特許出願公開第20030028917号)を含む、収量、栄養強化、環境若しくはストレス耐性、又は植物の生理学、成長、発生、形態若しくは植物産物における任意の所望の変化等の質の改善を付与する1つ又は複数の遺伝子を含む。加えて、本開示によって想定される農学目的の遺伝子としては、限定されるものではないが、環境ストレス抵抗性(米国特許第6,072,103号)、医薬用ペプチド及び分泌可能ペプチド(米国特許第6,812,379号;同第6,774,283号;同第6,140,075号;同第6,080,560号)、改善された処理形質(米国特許第6,476,295号)、改善された消化性(米国特許第6,531,648号)、低ラフィノース(米国特許第6,166,292号)、工業用酵素産生(米国特許第5,543,576号)、改善されたフレーバー(米国特許第6,011,199号)、窒素固定(米国特許第5,229,114号)、ハイブリッド種子生産(米国特許第5,689,041号)、繊維生産(米国特許第6,576,818号;同第6,271,443号;同第5,981,834号;同第5,869,720号)及びバイオ燃料生産(米国特許第5,998,700号)を付与する遺伝子が挙げられるだろう。これらの又は他の遺伝エレメント、方法及び導入遺伝子のいずれかを、本開示を考慮して、当業者によって理解される通り、本開示とともに使用することができる。
【0040】
一部の実施形態において、目的の配列は、例えば、アンチセンス(例えば、米国特許第5,107,065号を参照されたい);阻害性RNA(「RNAi」、miRNA-、siRNA-、トランス作用性siRNA-及び段階的sRNA-媒介機構による遺伝子発現のモジュレーションを含む、例えば、米国特許出願公開第2006/0200878号及び同第2008/0066206号並びに米国特許出願第11/974,469号に記載の通り)又は共抑制媒介機構によって、内因性遺伝子の遺伝子発現の標的化モジュレーションを引き起こすRNA分子をコードすることによる植物の特徴又は表現型に影響を与え得る農学目的の遺伝子を含む。RNAはまた、所望の内因性mRNA産物を切断するように操作された触媒RNA分子(例えば、リボザイム又はリボスイッチ;例えば、米国特許出願公開第2006/0200878号を参照されたい)であり得る。転写可能なDNA分子を遺伝子抑制を引き起こすことができる分子に転写するような方法で、細胞にコンストラクトを構築及び導入するための方法は、当技術分野において公知である。
【0041】
一部の実施形態において、目的の配列は、選択マーカーを含む。本明細書において使用される場合、「選択マーカー導入遺伝子」という用語は、トランスジェニック植物、組織若しくは細胞における発現又はその欠如が、一部の方法でスクリーニング又はスコア付けされ得る任意の転写可能なDNA分子を指す。本発明の実施において使用するための選択マーカー遺伝子並びにそれらの関連選択及びスクリーニング技法は、当技術分野において公知であり、限定されるものではないが、β-グルクロニダーゼ(GUS)をコードする転写可能なDNA分子、緑色蛍光タンパク質(GFP)、抗生物質抵抗性を付与するタンパク質及び除草剤耐性を付与するタンパク質が挙げられる。
【0042】
ex plantaアッセイのためのCAST試薬の送達
ex planta実験のために設計されたCASTコンストラクトは、当技術分野において公知のこれらの標準的な方法のいずれかを使用して、植物プロトプラストに送達することができる。マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、減圧浸潤、圧力、超音波処理、炭化ケイ素繊維撹拌、PEG媒介形質転換等は、当技術分野において公知の方法の一部である。
【0043】
一実施形態において、ダイズプロトプラストにおけるex planta実験のために設計されたCASTコンストラクトは、ポリエチレングリコール(PEG)媒介形質転換を介して送達されてもよい。ダイズプロトプラストを、当技術分野において公知のプロトコールを使用して、子葉から発生させ、ポリエチレングリコール(PEG)媒介形質転換を、設定されたモル比で、CASTシステムの成分をコードする発現コンストラクトの共送達のために使用する。2日のインキュベーション後、総ゲノムDNAを単離し、トランスポゾンカセットに特異的なプライマー及び染色体標的部位の近位に位置する別のプライマーの間の「隣接PCR」等の分子アッセイを使用して、標的化転位を検出及び定量化する。得られたアンプリコンの配列決定は、標的化転位についての証拠を提供する(図2を参照されたい)。
【0044】
CASTシステムの成分の植物への送達
いくつかの実施形態は、mRNA又はタンパク質としての4つのCASTシステムのタンパク質、及びガイド核酸の直接の植物細胞への送達に関する。任意の特定の理論によって拘束されることを望まないが、RNA又はタンパク質の植物細胞への直接送達は、送達後直ぐに、迅速で協調したCASTシステムの活性を提供し、それにより、in vivoでの同期した遺伝子発現への依存を回避する。一部の実施形態において、CASTシステムの成分は、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体として送達され得る。これは、有効性を改善するために、形質転換の前に成分のモル比の調節も可能にする。CRISPR RNP複合体を送達する方法は、PCT/US2019/033976号に記載されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。RNPに基づく送達のために、CASTのタンパク質をコードするエレメントは、細菌、例えば、大腸菌(Escherichia coli)における最適な発現のために、コドン最適化される。一実施形態において、配列は、原核生物TACプロモーター、続いて、Niカラム精製のための5' 7×Hisタグに作動可能に連結され、好適な細菌発現ベクターに導入される(図1Dを参照されたい)。一部の実施形態において、CASTシステムのタンパク質成分は、システインを除去するために、操作される。タンパク質中のシステイン残基は、システイン間の強い可逆的な結合を提供するジスルフィド架橋を形成することができる。標的化の方法においてCASTシステムのタンパク質成分の結合を制御及び指示するために、ネイティブシステインは、これらの架橋の形成を制御するために除去される。特定の理論によって拘束されることを望まないが、タンパク質主鎖からのシステインの除去は、ジスルフィド連結によるこれらの可逆的な接続の配置を制御するための新たなシステイン残基の標的化挿入を可能にするだろう。これは、CASTシステムのタンパク質成分間、又は遺伝子銃送達のための金粒子等の粒子に対してであり得る。システインのいくつかの残基を含むタグを、CASTシステムのタンパク質成分に付加することができ、これは、均一な方法で金属ビーズ(特に、金)にそれが特異的に結合するのを可能にする。
【0045】
植物細胞において染色体又はプラスチドを組換えDNA分子で形質転換するための多数の方法が当技術分野において公知であり、これを本出願の方法に従って使用して、CASTシステムの成分を含む植物細胞及び植物を生成することができる。
【0046】
in plantaの微粒子銃又は遺伝子銃送達を、CAST等の複数の成分のシステムを送達するために使用することができる。微粒子銃は、植物をDNA、RNA、タンパク質又はそれらの任意の組み合わせで形質転換するのに好適である。RNP複合体の遺伝子銃送達を介して植物を形質転換する方法は、PCT/US2019/033976号に記載されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。DNAの遺伝子銃送達を使用して植物を形質転換する方法は、PCT/US2019/033984号に記載されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0047】
in plantaのアグロバクテリウム媒介形質転換は、1つ又は複数のT-DNAに提供される1つ又は複数の発現カセットにおいて、CAST等の複数の成分のシステムを送達するための選択の好適な方法である。アグロバクテリウム媒介形質転換は、単子葉植物及び双子葉植物種に幅広く適用される。CASTシステムの1つ又は複数の成分を含む発現カセットは、一実施形態において、A.ツメファシエンス細胞によって提供される導入分子と一緒に、植物細胞のゲノムへのT-DNAの組み込みを可能にする、T-DNAを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスから単離された二重腫瘍誘導性(Ti)プラスミドの右境界領域(RB又はAGRtu.RB)及び左境界領域(LB又はAGRtu.LB)を有するTiプラスミド境界コンストラクトとして提供され得る(例えば、米国特許第6,603,061号を参照されたい)。コンストラクトはまた、細菌細胞における複製機能及び抗生物質選択を提供するプラスミド骨格DNAセグメント、例えば、大腸菌のori322等の複製開始点、oriV又はoriRi等の広範な宿主範囲の複製開始点、及びスペクチノマイシン若しくはストレプトマイシン又はゲンタマイシン(Gm、Gent)選択マーカー遺伝子に対する抵抗性を付与するTn7アミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼ(aadA)についてコードするSpec/Strp等の選択マーカーについてのコード領域を含有し得る。一部の実施形態において、1つ又は複数のCASTシステムの成分をコードする1つ又は複数の発現カセットは、OriRiベクター骨格等の低コピーの複製開始点を有するT-DNAバイナリーベクター中に提供される。植物の形質転換について、宿主細菌株は、多くの場合、A.ツメファシエンスABI、C58又はLBA4404であるが、しかしながら、植物の形質転換の当業者に公知の他の株は、本発明において機能することができる。一部の実施形態において、RecA等のある特定のDNA組換え機能を欠くアグロバクテリウム・ツメファシエンス株を利用して、CASTシステムの成分をコードする発現ベクターが植物細胞に送達される。
【0048】
一部の実施形態において、本明細書において記載されるCASTシステムの成分をコードする発現カセットは、単一のT-DNAに提供される。一部の実施形態において、本明細書において記載されるCASTシステムの成分をコードする発現カセットは、複数の別々のT-DNAに提供され、単一の形質転換プロセス又は別々の逐次的な形質転換プロセスで、植物細胞に送達される。一部の実施形態において、CASTシステムのタンパク質成分をコードする配列は、CASTシステムのガイド核酸成分をコードする配列よりも、別々のT-DNAベクターで植物細胞に提供される。一部の実施形態において、CASTシステムのタンパク質成分をコードする配列は、CASTシステムのガイド核酸成分をコードする配列及びドナーカセットよりも、別々のT-DNAベクターで植物細胞に提供される。一部の実施形態において、CASTシステムのタンパク質成分をコードする配列及びCASTシステムのガイド核酸成分をコードする配列は、ドナーカセットよりも、別々のT-DNAベクターで植物細胞に提供される。一部の実施形態において、CASTシステムのタンパク質成分をコードする配列及びCASTシステムのガイド核酸成分をコードする配列は、ドナーカセットよりも、別々のT-DNAベクターで植物細胞に提供される。一部の実施形態において、CASTシステムのタンパク質成分をコードする配列及びドナーカセットは、アグロバクテリウムに基づく形質転換によって植物細胞に提供され、CASTシステムのガイド核酸成分をコードする配列は、微粒子銃によって提供される。一部の実施形態において、ドナーカセットは、アグロバクテリウムに基づく形質転換によって植物細胞に提供され、CASTシステムのタンパク質成分及びCASTシステムのガイド核酸成分をコードする配列は、微粒子銃によって提供される。
【0049】
一部の実施形態において、CASTシステムの遺伝エレメントは、単一の始原植物が転位を活性化するために必要なエレメントを全て含有しないように、別々の植物に送達される。転位は、エレメントの一部を含有する植物を交配することによって作出された子孫植物に、必要なエレメントの全てを組み合わせることによって活性化される。一部の実施形態において、エフェクタータンパク質(TnsB、TnsC、TniQ及びCas12k)の全てについての機能遺伝子を含有する植物は、認識可能な「トランスポゾン」を運ぶ「ドナー」カセット及びガイド核酸発現カセットを含有する植物と交配させ、それによって、ドナーカセットの特異的部位への標的化転位は、そのような交配からの子孫において起こる。一部の実施形態において、エフェクタータンパク質(TnsB、TnsC、TniQ及びCas12k)の全てについての機能遺伝子及び認識可能な「トランスポゾン」を運ぶ「ドナー」カセットを含有する植物は、ガイド核酸発現カセットを含有する植物と交配させ、それによって、ドナーカセットの特異的部位への標的化転位は、そのような交配からの子孫において起こる。一部の実施形態において、エフェクタータンパク質(TnsB、TnsC、TniQ及びCas12k)の全てについての機能遺伝子及びガイド核酸発現カセットを含有する植物は、認識可能な「トランスポゾン」を運ぶ「ドナー」カセットを含有する植物と交配させ、それによって、ドナーカセットの特異的部位への標的化転位は、そのような交配からの子孫において起こる。植物の交配によりエレメントを組み合わせるこの戦略は、微粒子銃法を利用する方法だけでなく、アグロバクテリウム・ツメファシエンスを利用してトランスジェニック植物を作出する方法にも適用される。例えば、エフェクタータンパク質(TnsB、TnsC、TniQ及びCas12k)の全て及びガイド核酸を含む粒子を、認識可能な「トランスポゾン」を運ぶ「ドナー」カセットを含有する植物に衝突させることができる。
【0050】
一部の実施形態において、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12k及び/又はガイド核酸の発現のタイトな発生制御又は誘導制御を利用して、早すぎる転位を防止する。一部の実施形態において、エタノール誘導性プロモーターを使用して、CASTシステムの成分の発現を駆動する。早すぎる転位を防止する別の選択肢は、タンパク質(tnsB、tnsC、tniQ及びCas12k)及びガイド核酸成分を異なるベクターに分けること、並びにそれらを異なる植物に形質転換することであり、次いで、これらは、子孫において標的化転位を活性化するために交配される。ドナーカセットは、トランスポザーゼ及び/若しくはキメラ標的化gRNAとして同じT-DNA上、又は別のT-DNA上のいずれかで、いずれかの親植物に形質転換されてもよい。
【0051】
一部の実施形態において、早すぎる転位は、形質転換の生殖質中で標的部位を認識しないガイド核酸を提供することによって防止される。CASTの成分を含有する植物が次に標的部位を含む植物と交配される場合、標的化転位が起こる。
【0052】
標的化転位は、プロトプラスト及び植物の両方において、「隣接PCR」によって検出することができる。しかしながら、数百を生じる大規模の安定したin planta形質転換の場合において、数千の形質転換体ではなければ、より高いスループット検出方法が望ましい。染色体フェージングは、デジタルPCRを使用してマーカーの物理的連鎖を検出するために設計されたハイスループットのTaqManに基づく方法である(Regan, J.及びG. Karlin-Neumann、2018年、Methods Mol Biol 1768:489~512頁を参照されたい)。標的領域及び目的のトランスポゾン上の別のものに対して設計されたアッセイにより、染色体フェージングは、ハイスループットな方法で、標的化転位事象を容易に同定することができる。これは、追加の実験について必要なく、オンターゲットの転位と並べてオフターゲットの転位を検出することもできる。
【0053】
分子育種及び形質統合におけるゲノム編集の使用
一部の実施形態において、ゲノムの知識が、標的化転位のために利用される。一実施形態において、ガイド核酸を使用して、Cas12kをゲノムの少なくとも1つの領域に標的化して、植物細胞中のゲノムのその領域を破壊することができる。次いで、ドナーDNA鋳型に基づく改変を、ゲノム領域内に導入することができる。改変植物細胞から再生された植物は、改変されたゲノムを含み、変更された遺伝領域に応じて、改変された表現型又は他の特性を示し得る。以前に特徴付けられた突然変異体対立遺伝子又は導入遺伝子は、CASTシステムを使用する改変のために標的化され得、改善された突然変異体又はトランスジェニック系統の作出を可能にする。
【0054】
一部の実施形態において、標的化転位による欠失又は破壊のために標的化される遺伝子は、標的植物又は細胞に以前に導入された導入遺伝子であってもよい。これは、異なる導入遺伝子を導入することを可能にするか、又は選択マーカーをコードする配列の破壊及び/若しくは除去を可能にするという利点を有する。更に別の実施形態において、ゲノム編集を介する改変のために標的化された遺伝子は、1つ又は複数の他の目的の導入遺伝子と同じベクター又は発現カセットに導入された少なくとも1つの導入遺伝子であり、別の導入遺伝子として同じ遺伝子座に存在する。この種類のゲノム改変が、標的化遺伝子座における追加配列の欠失又は挿入をもたらし得ることが当業者に理解される。一部の実施形態において、特異的導入遺伝子は、導入遺伝子をインタクトのまま残しながら、破壊され得る。これは、望ましくない導入遺伝子なしで、所望の導入遺伝子を含有する新しいトランスジェニック系統を作出する必要を回避する。
【0055】
別の態様において、本開示は、目的のドナーDNA配列を植物ゲノムの特異的部位に挿入するための方法であって、目的のDNA配列が、植物のゲノム由来であるか、又は植物に関して異種である、方法を含む。この開示は、ゲノムの特定の領域が、標的化転位によって1つ又は複数の発現カセットの挿入のために改変された細胞について選択することを可能にする。そのため、ゲノムの標的化領域は、少なくとも1つの表現型形質に関連する目的のハプロタイプへの少なくとも1つの導入遺伝子の連鎖を示してもよく、導入遺伝子のスタッキング及びトランスジェニック形質統合を促進するための連鎖ブロックの開発、並びに/又は従来の形質統合についても可能にする連鎖ブロックの開発ももたらし得る。
【0056】
定方向染色体再配列は、目的の複数の核酸(例えば、形質スタック又は多重化)を、同じ部位又は異なる部位のいずれかにおいて、植物のゲノムに付加することを可能にする。標的化転位のための部位は、基本的な育種価、その場所における導入遺伝子の性能、その場所における基本的な組換え率、標的化転位のための部位に連鎖している既存の導入遺伝子、又は他の因子の知識に基づいて選択することができる。スタック化された植物がアセンブルされると、それは、育種プログラムにおいて進行しているか、又は育種プログラムにおいて直接進行した、生殖質への交配のための形質ドナーとして使用することができる。
【0057】
本開示は、少なくとも1つの目的の核酸を植物ゲノム中の少なくとも1つの部位に挿入するための方法であって、目的の核酸が、QTL若しくは対立遺伝子等の植物のゲノムに由来するか、又は起源がトランスジェニックである、方法を含む。そのため、ゲノムの標的化領域は、導入遺伝子のスタッキング、トランスジェニック形質統合、QTL又はハプロタイプのスタッキング及び従来の形質統合を促進するために、少なくとも1つの導入遺伝子と、少なくとも1つの表現型形質に関連する目的のハプロタイプとの連鎖を示してもよい(米国特許出願公開第2006/0282911号に記載される通り)。
【0058】
一部の実施形態において、複数の固有のガイド分子を使用して、ゲノム配列情報の知識及びカスタムガイド分子を設計する能力を使用することによって、1つの染色体に含有される1つの連鎖ブロック内の特異的な遺伝子座で複数の対立遺伝子を改変することができる。非標的対立遺伝子を含有する遺伝子座の上流にあるゲノム標的部位に特異的であるか、又はそれを対象とし得るガイド分子が、必要により、設計又は操作される。非標的対立遺伝子を含有する標的遺伝子座の下流にあるゲノム標的部位に特異的であるか、又はそれを対象とし得る第2のガイド分子も、設計又は操作される。ガイド分子は、それらが、標的対立遺伝子を含有する非標的遺伝子座と相同性がない遺伝子領域を補完するように、設計されてもよい。両方のガイド分子は、本明細書において記載される方法の1つを使用して、細胞に導入されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態は、形質移入プロセスによって他の植物、品種又は種に単一の遺伝単位として伝達され得る、遺伝的に連鎖した遺伝子座(メガ遺伝子座)のブロックを作出するための、CASTシステムを利用する標的化転位に関する。一部の実施形態において、ドナーカセットは、既存の導入遺伝子挿入部位又は導入遺伝子挿入部位/事象のセットと遺伝的に連鎖しているが、物理的に離れている遺伝子座への標的化転位によって挿入される。一部の実施形態において、メガ遺伝子座は、異なるCASTシステムからドナーカセットを、遺伝的に連鎖しているが、物理的に離れている遺伝子座に挿入することによって形成される。一部の実施形態において、ShLE及びShREを含むドナーカセットは、標的化転位によって、AcLE及びAcREを含む既存のドナーカセットと遺伝的に連鎖しているが、物理的に離れている遺伝子座に挿入される。一部の実施形態において、AcLE及びAcREを含むドナーカセットは、標的化転位によって、ShLE及びShREを含む既存のドナーカセットと遺伝的に連鎖しているが、物理的に離れている遺伝子座に挿入される。一実施形態において、植物において所望の形質を生じる少なくとも1つの導入遺伝子の標的化転位に続いて、第2の導入遺伝子を連鎖させる組換えによりメガ遺伝子座を形成する。標的化形質転換に続いて、所望の導入遺伝子を連鎖させる組換えを行うそのようなアプローチは、多くの制限なしにベクタースタック及び育種スタックの両方の利点がある。例えば、一実施形態において、個々の導入遺伝子は、1つずつの標的化転位によって導入され、後日組み合わされてもよい。一部の実施形態において、少なくとも1つの導入遺伝子の標的化転位は、メガ遺伝子座を形成するために第2の導入遺伝子と遺伝的に連鎖している標的部位において生じる。一部の実施形態において、転位部位は、目的の遺伝子座から、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20cMを含む、約0.1cM~約20cMの距離で、物理的に離れていてもよい。更なる実施形態において、個々のドナーカセットの転位部位は、遺伝的に連鎖していなくてもよく、又は例えば、少なくとも約10、20、30、40cM以上離れて、密接に連鎖していなくてもよい。ドナーカセットが同じ染色体上でシスで組み合わされると、それらは、介在配列の染色体再配列によって遺伝的に連鎖しているように誘導され、そのようにして、多数の独立した導入遺伝子が異なる生殖質に容易に移入されるのを可能にする。更なる実施形態において、トランスで連鎖部位にメガ遺伝子座を形成するように組み合わされた異なる導入遺伝子をそれぞれ含有する2つの植物系統を一緒に交配して、全ての導入遺伝子を含有する、シスの1つの大きなメガ遺伝子座を作出することができる。
【0060】
トランスジェニック形質を遺伝的連鎖ブロックとして互いに連鎖させることは、形質統合プロセスにおいてランダムに分離しているトランスジェニック遺伝子座の数を減少させることができるため、望ましい場合がある。遺伝的に連鎖している導入遺伝子のスタッキングはまた、形質統合プロセスの間に、スタックされた導入遺伝子を見出すようにスクリーニングされる子孫の数を減少させ得る。更に、標的化転位を組み合わせること、及び導入遺伝子を連鎖させる内因性減数分裂組換え機構を利用することは、製品の納入スケジュールを加速させる製品コンセプトにおける追加の柔軟性を提供する。
【0061】
本発明の更なる実施形態は、標的化転位と、減数分裂組換え機構を改変する技術との組み合わせであり、そのような技術は、遺伝子発現のトランスジェニック改変又は組換えをモジュレートするための化学的処理を含む。一部の実施形態において、ドナーカセットの標的化転位は、組換え率を改変するために、部位特異的ゲノム改変酵素、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、操作されたメガヌクレアーゼ若しくはネイティブメガヌクレアーゼ、TALEエンドヌクレアーゼ、又はRNAガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/Cas9システム、CRISPR/Cpf1システム、CRISPR/CasXシステム、CRISPR/CasYシステム、CRISPR/Cascadeシステム)による切断と組み合わされる。組換えによって形質を遺伝的に連鎖させることは、形質移入のための形質遺伝子座を効率的に減少させながら、更には柔軟性を提供する。例えば、本発明の方法を用いることによって、同じ又は異なる形質を付与するいくつかの導入遺伝子を、同じ遺伝子座で試験することができ、形質をスタッキングするベクターよりもむしろ、市販製品を決定する前に、形質のいくつかの組み合わせ及び形質のバージョンを同時に試験することを可能にする。ベクターのスタッキングにより、市販製品のコンセプトに関して、数年前に決定する必要があり、これは柔軟性を低下させる。本発明の一部の実施形態に従って、次世代の形質を、以前の形質として同じ遺伝子座又は近い遺伝子座で試験してもよく、これは、次に、以前の形質を組換えから外し、次世代の形質において組換えることによって、以前の形質を置き換え得る。本発明はまた、少なくとも1つのドナーカセット内の導入遺伝子及びトランスジェニックエレメントの挿入並びに欠失を可能にする、ドナーカセット内の標的認識部位の包含も見込む。
【0062】
いくつかの実施形態は、同定された性質の形質遺伝子座(QTL)から、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、5、10、15及び20cMを含む、約0.1cM~約20cMである標的部位へのドナーカセットの標的化転位に関する。一部の実施形態において、ドナーカセットは、同定されたQTLから、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48又は49cMである標的部位に転位する。
【0063】
いくつかの実施形態は、トランスジェニック事象から、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5. 4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9. 9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5及び20cMを含む、約0.1cM~約20cMである標的部位へのドナーカセットの標的化転位に関する。いくつかの実施形態において、CASTシステムは、事象531/PV-GHBK04(ワタ、昆虫防除、国際公開第2002/040677号に記載)、事象1143-14A(ワタ、昆虫防除、寄託なし、国際公開第2006/128569号に記載);事象1143-51B(ワタ、昆虫防除、寄託なし、国際公開第2006/128570号に記載);事象1445(ワタ、除草剤耐性、寄託なし、米国特許出願公開第2002-120964号又は国際公開第2002/034946号に記載);事象17053(コメ、除草剤耐性、PTA-9843として寄託、国際公開第2010/117737号に記載);事象17314(コメ、除草剤耐性、PTA-9844として寄託、国際公開第2010/117735号に記載);事象281-24-236(ワタ、昆虫防除-除草剤耐性、PTA-6233として寄託、国際公開第2005/103266号又は米国特許出願公開第2005-216969号に記載);事象3006-210-23(ワタ、昆虫防除-除草剤耐性、PTA-6233として寄託、米国特許出願公開第2007-143876号又は国際公開第2005/103266号に記載);事象3272(トウモロコシ、品質形質、PTA-9972として寄託、国際公開第2006/098952号又は米国特許出願公開第2006-230473号に記載);事象33391(コムギ、除草剤耐性、PTA-2347として寄託、国際公開第2002/027004号に記載)、事象40416(トウモロコシ、昆虫防除-除草剤耐性、ATCC PTA-11508として寄託、国際公開第11/075593号に記載);事象43A47(トウモロコシ、昆虫防除-除草剤耐性、ATCC PTA-11509として寄託、国際公開第2011/075595号に記載);事象5307(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC PTA-9561として寄託、国際公開第2010/077816号に記載);事象ASR-368(ベントグラス、除草剤耐性、ATCC PTA-4816として寄託、米国特許出願公開第2006-162007号又は国際公開第2004/053062号に記載);事象B16(トウモロコシ、除草剤耐性、寄託なし、米国特許出願公開第2003-126634号に記載);事象BPS-CV127-9(ダイズ、除草剤耐性、NCIMB No. 41603として寄託、国際公開第2010/080829号に記載);事象BLRl(ナタネ、雄性不稔性の修復、NCIMB 41193として寄託、国際公開第2005/074671号に記載)、事象CE43-67B(ワタ、昆虫防除、DSM ACC2724として寄託、米国特許出願公開第2009-217423号又は国際公開第2006/128573号に記載);事象CE44-69D(ワタ、昆虫防除、寄託なし、米国特許出願公開第2010-0024077号に記載);事象CE44-69D(ワタ、昆虫防除、寄託なし、国際公開第2006/128571号に記載);事象CE46-02A(ワタ、昆虫防除、寄託なし、国際公開第2006/128572号に記載);事象COT102(ワタ、昆虫防除、寄託なし、米国特許出願公開第2006-130175号又は国際公開第2004/039986号に記載);事象COT202(ワタ、昆虫防除、寄託なし、米国特許出願公開第2007-067868号又は国際公開第2005/054479号に記載);事象COT203(ワタ、昆虫防除、寄託なし、国際公開第2005/054480号に記載);事象DAS21606-3/1606(ダイズ、除草剤耐性、PTA-11028として寄託、国際公開第2012/033794号に記載)、事象DAS40278(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC PTA-10244として寄託、国際公開第2011/022469号に記載);事象DAS-44406-6/pDAB8264.44.06.l(ダイズ、除草剤耐性、PTA-11336として寄託、国際公開第2012/075426号に記載)、事象DAS-14536-7 /pDAB8291.45.36.2(ダイズ、除草剤耐性、PTA-11335として寄託、国際公開第2012/075429号に記載)、事象DAS-59122-7(トウモロコシ、昆虫防除-除草剤耐性、ATCC PTA 11384として寄託、米国特許出願公開第2006-070139号に記載);事象DAS-59132(トウモロコシ、昆虫防除-除草剤耐性、寄託なし、国際公開第2009/100188号に記載);事象DAS68416(ダイズ、除草剤耐性、ATCC PTA-10442として寄託、国際公開第2011/066384号又は国際公開第2011/066360号に記載);事象DP-098140-6(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC PTA-8296として寄託、米国特許出願公開第2009-137395号又は国際公開第08/112019号に記載);事象DP-305423-1(ダイズ、品質形質、寄託なし、米国特許出願公開第2008-312082号又は国際公開第2008/054747号に記載);事象DP-32138-1(トウモロコシ、ハイブリダイゼーション系、ATCC PTA-9158として寄託、米国特許出願公開第2009-0210970号又は国際公開第2009/103049号に記載);事象DP-356043-5(ダイズ、除草剤耐性、ATCC PTA-8287として寄託、米国特許出願公開第2010-0184079号又は国際公開第2008/002872号に記載);事象EE-I(ナス、昆虫防除、寄託なし、国際公開第07/091277号に記載);事象Fil 17(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC 209031として寄託、米国特許出願公開第2006-059581号又は国際公開第98/044140号に記載);事象FG72(ダイズ、除草剤耐性、PTA-11041として寄託、国際公開第2011/063413号に記載)、事象GA21(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC 209033として寄託、米国特許出願公開第2005-086719号又は国際公開第98/044140号に記載);事象GG25(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC 209032として寄託、米国特許出願公開第2005-188434号又は国際公開第98/044140号に記載);事象GHB119(ワタ、昆虫防除-除草剤耐性、ATCC PTA-8398として寄託、国際公開第2008/151780号に記載);事象GHB614(ワタ、除草剤耐性、ATCC PTA-6878として寄託、米国特許出願公開第2010-050282号又は国際公開第2007/017186号に記載);事象GJ11(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC 209030として寄託、米国特許出願公開第2005-188434号又は国際公開第98/044140号に記載);事象GM RZ13(テンサイ、ウイルス抵抗性、NCIMB-41601として寄託、国際公開第2010/076212号に記載);事象H7-l(テンサイ、除草剤耐性、NCIMB 41158又はNCIMB 41159として寄託、米国特許出願公開第2004-172669号又は国際公開第2004/074492号に記載);事象JOPLINl(コムギ、病害耐性、寄託なし、米国特許出願公開第2008-064032号に記載);事象LL27(ダイズ、除草剤耐性、NCIMB41658として寄託、国際公開第2006/108674号又は米国特許出願公開第2008-320616号に記載);事象LL55(ダイズ、除草剤耐性、NCIMB 41660として寄託、国際公開第2006/108675号又は米国特許出願公開第2008-196127号に記載);事象LLcotton25(ワタ、除草剤耐性、ATCC PTA-3343として寄託、国際公開第2003/013224号又は米国特許出願公開第2003-097687号に記載);事象LLRICE06(コメ、除草剤耐性、ATCC 203353として寄託、米国特許第6,468,747号又は国際公開第2000/026345号に記載);事象LLRice62(コメ、除草剤耐性、ATCC 203352として寄託、国際公開第2000/026345号に記載)、事象LLRICE601(コメ、除草剤耐性、ATCC PTA-2600として寄託、米国特許出願公開第2008-2289060号又は国際公開第2000/026356号に記載);事象LY038(トウモロコシ、品質形質、ATCC PTA-5623として寄託、米国特許出願公開第2007-028322号又は国際公開第2005/061720号に記載);事象MIR162(トウモロコシ、昆虫防除、PTA-8166として寄託、米国特許出願公開第2009-300784号又は国際公開第2007/142840号に記載);事象MIR604(トウモロコシ、昆虫防除、寄託なし、米国特許出願公開第2008-167456号又は国際公開第2005/103301号に記載);事象MON15985(ワタ、昆虫防除、ATCC PTA-2516として寄託、米国特許出願公開第2004-250317号又は国際公開第2002/100163号に記載);事象MON810(トウモロコシ、昆虫防除、寄託なし、米国特許出願公開第2002-102582号に記載);事象MON863(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC PTA-2605として寄託、国際公開第2004/011601号又は米国特許出願公開第2006-095986号に記載);事象MON87427(トウモロコシ、受粉制御、ATCC PTA-7899として寄託、国際公開第2011/062904号に記載);事象MON87460(トウモロコシ、ストレス耐性、ATCC PTA-8910として寄託、国際公開第2009/111263号又は米国特許出願公開第2011-0138504号に記載);事象MON87701(ダイズ、昆虫防除、ATCC PTA-8194として寄託、米国特許出願公開第2009-130071号又は国際公開第2009/064652号に記載);事象MON87705(ダイズ、品質形質-除草剤耐性、ATCC PTA-9241として寄託、米国特許出願公開第2010-0080887号又は国際公開第2010/037016号に記載);事象MON87708(ダイズ、除草剤耐性、ATCC PTA-9670として寄託、国際公開第2011/034704号に記載);事象MON87712(ダイズ、収量、PTA-10296として寄託、国際公開第2012/051199号に記載)、事象MON87754(ダイズ、品質形質、ATCC PTA-9385として寄託、国際公開第2010/024976号に記載);事象MON87769(ダイズ、品質形質、ATCC PTA-8911として寄託、米国特許出願公開第2011-0067141号又は国際公開第2009/102873号に記載);事象MON88017(トウモロコシ、昆虫防除-除草剤耐性、ATCC PTA-5582として寄託、米国特許出願公開第2008-028482号又は国際公開第2005/059103号に記載);事象MON88913(ワタ、除草剤耐性、ATCC PTA-4854として寄託、国際公開第2004/072235号又は米国特許出願公開第2006-059590号に記載);事象MON88302(ナタネ、除草剤耐性、PTA-10955として寄託、国際公開第2011/153186号に記載)、事象MON88701(ワタ、除草剤耐性、PTA-11754として寄託、国際公開第2012/134808号に記載)、事象MON89034(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC PTA-7455として寄託、国際公開第07/140256号又は米国特許出願公開第2008-260932号に記載);事象MON89788(ダイズ、除草剤耐性、ATCC PTA-6708として寄託、米国特許出願公開第2006-282915号又は国際公開第2006/130436号に記載);事象MSl 1(ナタネ、受粉制御-除草剤耐性、ATCC PTA-850又はPTA-2485として寄託、国際公開第2001/031042号に記載);事象MS8(ナタネ、受粉制御-除草剤耐性、ATCC PTA-730として寄託、国際公開第2001/041558号又は米国特許出願公開第2003-188347号に記載);事象NK603(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC PTA-2478として寄託、米国特許出願公開第2007-292854号に記載);事象PE-7(コメ、昆虫防除、寄託なし、国際公開第2008/114282号に記載);事象RF3(ナタネ、受粉制御-除草剤耐性、ATCC PTA-730として寄託、国際公開第2001/041558号又は米国特許出願公開第2003-188347号に記載);事象RT73(ナタネ、除草剤耐性、寄託なし、国際公開第2002/036831号又は米国特許出願公開第2008-070260号に記載);事象SYHT0H2/SYN-000H2-5(ダイズ、除草剤耐性、PTA-11226として寄託、国際公開第2012/082548号に記載)、事象T227-1(テンサイ、除草剤耐性、寄託なし、国際公開第2002/44407号又は米国特許出願公開第2009-265817号に記載);事象T25(トウモロコシ、除草剤耐性、寄託なし、米国特許出願公開第2001-029014号又は国際公開第2001/051654号に記載);事象T304-40(ワタ、昆虫防除-除草剤耐性、ATCC PTA-8171として寄託、米国特許出願公開第2010-077501号又は国際公開第2008/122406号に記載);事象T342-142(ワタ、昆虫防除、寄託なし、国際公開第2006/128568号に記載);事象TC1507(トウモロコシ、昆虫防除-除草剤耐性、寄託なし、米国特許出願公開第2005-039226号又は国際公開第2004/099447号に記載);事象VIP1034(トウモロコシ、昆虫防除-除草剤耐性、ATCC PTA-3925として寄託、国際公開第2003/052073号に記載)、事象32316(トウモロコシ、昆虫防除-除草剤耐性、PTA-11507として寄託、国際公開第2011/084632号に記載)、事象4114(トウモロコシ、昆虫防除-除草剤耐性、PTA-11506として寄託、国際公開第2011/084621号に記載)、事象EE-GM1/LL27又は事象EE-GM2/LL55(国際公開第2011/063413A2号)でスタックされていてもよい事象EE-GM3/FG72(ダイズ、除草剤耐性、ATCC受託番号PTA-11041)、事象DAS-68416-4(ダイズ、除草剤耐性、ATCC受託番号PTA-10442、国際公開第2011/066360Al号)、事象DAS-68416-4(ダイズ、除草剤耐性、ATCC受託番号PTA-10442、国際公開第2011/066384Al号)、事象DP-040416-8(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC受託番号PTA-11508、国際公開第2011/075593Al号)、事象DP-043A47-3(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC受託番号PTA-11509、国際公開第2011/075595Al号)、事象DP-004114-3(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC受託番号PTA-11506、国際公開第2011/084621Al号)、事象DP-032316-8(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC受託番号PTA-11507、国際公開第2011/084632Al号)、事象MON-88302-9(ナタネ、除草剤耐性、ATCC受託番号PTA-10955、国際公
開第2011/153186Al号)、事象DAS-21606-3(ダイズ、除草剤耐性、ATCC受託番号PTA-11028、国際公開第2012/033794A2号)、事象MON-87712-4(ダイズ、品質形質、ATCC受託番号PTA-10296、国際公開第2012/051199A2号)、事象DAS-44406-6(ダイズ、スタックされた除草剤耐性、ATCC受託番号PTA-11336、国際公開第2012/075426Al号)、事象DAS-14536-7(ダイズ、スタックされた除草剤耐性、ATCC受託番号PTA-11335、国際公開第2012/075429Al号)、事象SYN-000H2-5(ダイズ、除草剤耐性、ATCC受託番号PTA-11226、国際公開第2012/082548A2号)、事象DP-061061-7(ナタネ、除草剤耐性、利用可能な寄託番号なし、国際公開第2012071039Al号)、事象DP-073496-4(ナタネ、除草剤耐性、利用可能な寄託番号なし、米国特許出願公開第2012131692号)、事象8264.44.06.1(ダイズ、スタックされた除草剤耐性、受託番号PTA-11336、国際公開第2012075426A2号)、事象8291.45.36.2(ダイズ、スタックされた除草剤耐性、受託番号PTA-11335、国際公開第2012075429A2号)、事象SYHT0H2(ダイズ、ATCC受託番号PTA-11226、国際公開第2012/082548A2号)、事象MON88701(ワタ、ATCC受託番号PTA-11754、国際公開第2012/134808Al号)、事象KK179-2(アルファルファ、ATCC受託番号PTA-11833、国際公開第2013/003558Al号)、事象pDAB8264.42.32.1(ダイズ、スタックされた除草剤耐性、ATCC受託番号PTA-11993、国際公開第2013/010094Al号)、事象MZDT09Y(トウモロコシ、ATCC受託番号PTA-13025、国際公開第2013/012775Al号)から選択されるトランスジェニック事象から、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5. 4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9. 9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5及び20cMを含む、0.1cM~約20cMである遺伝子座への1つ又は複数の導入遺伝子を含有するドナーカセットの標的化転位を提供するために利用される。
【0064】
半数体誘導交配
形質統合は、エリート育種プログラムにおけるボトルネックである。所望の形質を有する導入遺伝子は、マーカーに基づく選択を使用して、ドナー系統からエリート又は反復親に何度も戻し交配される。連鎖ひきずりなしで、単交配においてドナーからレシピエントの生殖質への導入遺伝子を選択的に移動させるための迅速かつ効率的な方法は、そのような育種パイプラインにとって莫大な価値を有するだろう。下記に記載される通り、半数体誘導植物におけるCASTシステムの成分の発現とそれに続く交配及び選択は、迅速な形質統合及び単交配における反復親の回復を達成する1つの方法である。
【0065】
いくつかの実施形態は、1つ又は複数のCASTシステムの成分の転写を選択的に活性化することによって、CASTシステムを選択的に活性化して、非誘導ゲノムへの標的化転位が促進する方法に関する。一部の実施形態において、INA133又はINA133/ELMYS5の形質転換可能な誘導体等の半数体誘導系統は、そのゲノム中に、1つ又は複数のCASTシステムの成分をコードする導入遺伝子を含む。一部の実施形態において、半数体誘導系統は、CASTシステムのタンパク質成分をコードする配列を含む。一部の実施形態において、半数体誘導系統は、CASTシステムのタンパク質成分をコードする配列、及び半数体誘導系統中の標的部位を認識しないガイド核酸を含む。一部の実施形態において、半数体誘導系統は、半数体誘導系統ではないがエリート系統中の標的部位と相補的であるガイド核酸を含む。一部の実施形態において、半数体誘導系統は、エタノール誘導性プロモーター等の誘導性プロモーターに作動可能に連結されたCASTシステムをコードする配列を含む発現カセットを含む。一部の実施形態において、半数体誘導系統は、ガイド核酸をコードする核酸配列に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む発現カセットを含む。一部の実施形態において、半数体誘導系統は、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12kのうちの1つ又は複数をコードする核酸配列に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む発現カセットを含む。一部の実施形態において、半数体誘導系統は、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12kのうちの1つ又は複数をコードする核酸配列に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む発現カセットを含み、タンパク質コード配列は、2A自己切断ペプチド又は配列内リボソーム進入部位によって分離されて、タンパク質の協調的な切断又はそれぞれの遺伝子の協調的な発現を促進する。一部の実施形態において、半数体誘導系統は、CASTシステムの1つの成分をコードする核酸配列に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む発現カセット、及び他のCASTシステムの成分をコードする1つ又は複数の配列に作動可能に連結された構成的プロモーターを含む1つ又は複数の発現カセットを含む。一部の実施形態において、誘導性プロモーターの発現は、半数体誘導交配を行う際に、植物を誘導剤に曝露することに
よって誘導される。一部の実施形態において、誘導性プロモーターの発現は、交配する前に、半数体誘導植物を誘導剤に曝露することによって誘導される。一部の実施形態において、誘導性プロモーターの発現は、半数体誘導植物及びレシピエントの親の間の交配の子孫を誘導剤に曝露することによって誘導される。
【0066】
いくつかの実施形態において、BABYBOOM遺伝子プロモーター等の発生特異的プロモーターを使用して、ガイド核酸の1つ若しくは複数の雄親、又はCASTシステムのtnsB、tnsC、tniQ、Cas12k成分からの接合体遺伝子発現が駆動される。一部の実施形態において、発生特異的プロモーターは、CASTシステムのtnsB、tnsC、tniQ、Cas12k成分をコードする核酸配列に作動可能に連結され、タンパク質コード配列は、2A自己切断ペプチド又はIRES部位によって分離されて、タンパク質の協調的な切断又はそれぞれの遺伝子の協調的な発現を促進する(Khandayら、2019年、Nature, Jan 565(7737):91~95頁)。一部の実施形態において、発生特異的プロモーターは、少なくとも1つのCASTシステムの成分をコードする配列に作動可能に連結され、構成的プロモーターは、1つ又は複数の他のCASTシステムの成分をコードする配列に作動可能に連結されている。一部の実施形態において、トランスジェニック植物は、CASTシステムの早発性発現、及び目的のゲノムへの曝露前の転位を回避するために、雌性として維持される(例えば、半数体誘導交配後に遭遇するゲノム)。半数体誘導交配を行う際に、CASTトランスジェニック植物は、雄性として使用され、接合体形成の際に、BABYBOOMプロモーターは活性化され、したがって、CASTシステム全体が、その時に活性化され、非誘導ゲノムへのRNAガイドDNA転位を促進することができる。
【0067】
一部の実施形態において、本明細書において記載されるCASTシステムの成分をコードする1つ又は複数の発現ベクターは、半数体誘導植物に形質転換される。一部の実施形態において、ガイド核酸は、半数体誘導ゲノム中での任意の一致を回避するが、任意の非誘導ゲノムとの一致を維持するように設計され、その結果、標的化転位は、半数体誘導植物において起こらないが、半数体誘導系統をレシピエント生殖質と交配させると活性化される。
【0068】
一部の実施形態において、本明細書において記載されるCASTシステムの成分をコードする1つ又は複数の発現ベクターは、B染色体等の過剰染色体を含有する誘導植物に形質転換される。過剰染色体に挿入される事象が選択される。半数体誘導交配は、過剰染色体におけるこの事象を用いて行われ、半数体の子は、それらが過剰染色体を維持するが、誘導親由来の他の染色体を維持しないように、選択される。次いで、半数体の子は、ドナー導入遺伝子を含有する標的部位に転位を有するものについて選択される。一実施形態において、エタノール誘導性プロモーターを使用して、ドナー及びCAST導入遺伝子を運ぶB染色体を含有する半数体植物の回復後に、転位を引き起こす。
【0069】
一部の実施形態において、本明細書において記載されるCASTシステムの成分をコードする1つ又は複数の発現ベクターは、トウモロコシ植物に形質転換される。事象が選択され、次いで、コムギ植物と交配して、半数体が生成する。次いで、半数体は、ドナー導入遺伝子転位についてスクリーニングされる。一部の実施形態において、キメラgRNAの早発性発現は、コムギ誘導性プロモーター(トウモロコシ中に存在するが、コムギ細胞への曝露の際にのみ活性化されるプロモーター)、又はBABYBOOMプロモーター、又は親ゲノム特異的であり、受粉すると活性化される一部の他の早期接合プロモーターを利用することによって、防止される(Khandayら、2019年、Nature, Jan 565(7737):91~95頁;Andersonら、Developmental Cell、43、349~358頁 e344)。
【0070】
別の実施形態において、ウイルス又はウイルスレプリコンは、CASTシステムの全て若しくは一部を発現するように、及び/又はドナー導入遺伝子を保有するように、操作される。CASTシステム及びドナー導入遺伝子を含む1つ若しくは複数のウイルス又はレプリコンの感染の際に、転位が起こる。これは、半数体誘導と組み合わせて行われる可能性があり、ここで、ウイルス又はレプリコンは、半数体誘導体との受粉の前、その間又はその後に、局所的に適用される。
【0071】
上記の実施形態のいずれかにおいて、染色体倍加方法を適用して、転位を含有する倍加半数体を生成することができる。
【0072】
上記の実施形態のいずれかにおいて、半数体誘導の任意の交配に基づく方法を適用することができる(CENH3、ig1、母系、DMP、広範な交配、追加の放射線、リン脂質又は派生適用)。
【0073】
標的化転位は、プロトプラスト及び植物の両方において、上記で述べた「隣接PCR」アッセイによって適切に検出することができる。しかしながら、数百を生じる大規模の安定したin planta形質転換の場合において、数千の形質転換体ではなければ、より高いスループット検出方法がより望ましい。染色体フェージングは、デジタルPCR(dPCR)を使用してマーカーの物理的連鎖を検出するために設計されたハイスループットのTaqManに基づく方法である。標的領域及び目的のトランスポゾン上の別のものの次に設計されたアッセイにより、染色体フェージングは、HTP方法で、標的化転位事象を容易に同定することができる。
【0074】
標的化転位後のCASTシステムの不活性化
一部の実施形態において、ドナーカセットの標的化転位後のCASTシステムを不活性化することが望ましくあり得る。一部の実施形態において、ドナーカセットは、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを破壊し、その結果、ドナーカセットの切除は、CASTシステムの1つ又は複数の成分を切除するリコンビナーゼの発現をもたらす。一部の実施形態において、ドナーカセットは、植物の発現可能なプロモーター及び部位特異的リコンビナーゼをコードする配列の間に提供され、その結果、ドナーカセットの切除は、部位特異的リコンビナーゼをコードする配列にプロモーターを作動可能に連結させる。一部の実施形態において、部位特異的リコンビナーゼの発現は、部位特異的リコンビナーゼをコードする発現カセットを切除する。一部の実施形態において、リコンビナーゼ認識配列は、対応する部位特異的リコンビナーゼの発現が、tnsB、tnsC、tniQ、Cas12k及びガイド核酸のうちの1つ又は複数をコードする1つ又は複数の発現カセットを切除するように、位置する。例えば、図5を参照されたい。
【0075】
一部の実施形態において、RNA干渉(RNAi)は、ドナーカセットの標的化転位後のCASTシステムの活性を抑制するために利用される。一部の実施形態において、ドナーカセットは、dsRNAヘアピンをコードする発現カセットを破壊し、その結果、ドナーカセットの切除は、tnsB、tnsC、tniQ又はCas12kと相補的であるアンチセンスRNAの発現をもたらす。一部の実施形態において、ドナーカセットは、植物の発現可能なプロモーター及びtnsB、tnsC、tniQ又はCas12kをコードする配列の少なくとも21の連続したヌクレオチドと相補的であるアンチセンス配列の間に提供され、その結果、ドナーカセットの切除は、アンチセンス配列にプロモーターを作動可能に連結させる。例えば、図6を参照されたい。
【0076】
遺伝子間転位は、RNA依存性DNAメチル化(RdDM)による遺伝子発現抑制を引き起こすことができる。多くの場合、発現抑制は遅くなり、したがって、初期遺伝子発現が可能である。一部の実施形態において、CASTシステムの活性は、トランスポゾンの短い保存モチーフ若しくは非自律因子全体をイントロンに組み込むことによって抑制され得るか、又はCAST遺伝子のUTRは、SDIを可能にする初期活性に従って、それらを発現抑制することができる。これらのエレメントは、制限されないが、レトロトランスポゾンの長い末端反復配列(LTR)又はそれらの保存モチーフの一部、例えば、プライマー結合部位(PBS)、短分散型核内反復配列(SINE)、ヘリトロンの保存された末端反復配列(HelEnds)及びDNAトランスポゾンの逆位末端反復配列(ITR)を含む。例えば、図7を参照されたい。
【0077】
定義
本明細書で使用される場合、単数及び単数形の「a」、「an」及び「the」の用語は、例えば、文脈が明確に他を示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0078】
「センチモルガン」又は「cM」は、単一世代において介在する染色体交差の予想平均数が0.01である、染色体位置の間の距離を指す。
【0079】
「コンストラクト」又は「DNAコンストラクト」は、本明細書で使用される場合、第2のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された少なくとも1つの第1のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチオド配列を指す。
【0080】
「ドナーカセット」又は「トランスポゾンカセット」は、本明細書で使用される場合、左端境界配列(LE)及び右端境界配列(RE)と隣接している目的の配列を含むポリヌクレオチドを指す。一部の実施形態において、目的の配列は、1つ又は複数の発現カセットを含む。
【0081】
「発現カセット」は、本明細書で使用される場合、作動可能に連結された第2のポリヌクレオチド配列の転写を開始することができる少なくとも1つの第1のポリヌクレオチド配列、及び任意選択で、第2のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された転写終結配列を含む、ポリヌクレオチド配列を指す。
【0082】
「ゲノム標的部位」又は「標的部位」は、本明細書で使用される場合、ドナーカセットの標的化統合のために選択された宿主ゲノム中に位置する領域を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「イントロン」という用語は、遺伝子から単離又は同定され得、翻訳の前のメッセンジャーRNA(mRNA)のプロセシングの間に切り出された領域として一般に定義され得る、DNA分子を指す。或いは、イントロンは、合成的に生成されてもよく、又は操作されたDNAエレメントであってもよい。イントロンは、tnsB、tnsC、tniQ及びCas12kをコードする遺伝子等の作動可能に連結された遺伝子の転写をもたらすエンハンサーエレメントを含有していてもよい。イントロンは、tnsB、tnsC、tniQ又はCas12kをコードする遺伝子に作動可能に連結された発現をモジュレートするための調節エレメントとして使用されてもよい。コンストラクトは、イントロンを含んでいてもよく、イントロンは、tnsB、tnsC、tniQ又はCas12k分子をコードする遺伝子に関して、異種であってもよく、又は異種でなくてもよい。当技術分野におけるイントロンの例としては、コメアクチンイントロン及びトウモロコシHSP70イントロンが挙げられる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「メガ遺伝子座」という用語は、単一の単位として通常は遺伝する、少なくとも2つの遺伝的に連鎖している遺伝子座のブロックを指す。一部の実施形態において、少なくとも1つの遺伝子座は、導入遺伝子である。メガ遺伝子座は、植物に1つ又は複数の所望の形質を提供し得、これは、限定されるものではないが、増強された成長、乾燥耐性、塩耐性、除草剤耐性、昆虫抵抗性、害虫抵抗性、病害抵抗性等が挙げられ得る。具体的な実施形態において、メガ遺伝子座は、それらが単一の単位として遺伝し得るように物理的に離れているが、遺伝的に連鎖している、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13又は15のトランスジェニック遺伝子座を含む。具体的な実施形態において、メガ遺伝子座は、それらが単一の単位として遺伝し得るように物理的に離れているが、遺伝的に連鎖している、少なくとも1つのネイティブ形質遺伝子座及び少なくとも1つのトランスジェニック遺伝子座を含む。メガ遺伝子座中のそれぞれの遺伝子座は、互いからから、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48又は49cM、離れることができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、第1のDNA分子が第2のDNA分子に接続されており、ここで、第1及び第2のDNA分子が、第1のDNA分子が第2のDNA分子の機能に影響を及ぼすように配置されていることを指す。2つのDNA分子は、単一の連続したDNA分子の一部であってもよく、又はそうでなくてもよく、隣接していてもよく、又は隣接していなくてもよい。例えば、プロモーターは、プロモーターが細胞中で目的の転写可能なDNA分子の転写をモジュレートする場合、転写可能なDNA分子に作動可能に連結されている。リーダーは、例えば、それがDNA配列の転写又は翻訳に影響を及ぼすことができる場合、DNA配列に作動可能に連結されている。
【0086】
「PAM部位」又は「PAM配列」は、本明細書で使用される場合、プロトスペーサー隣接モチーフ(又は、PAM)を指し、これは、CRISPR-Cas9又はCRISPR-Cpf1等のCRISPR関連タンパク質/ガイド核酸システムによる切断について標的化されたDNA領域に隣接する短いDNA配列(通常は、2~6塩基対の長さ)である。一部のCRISPR関連タンパク質(例えば、I型及びII型)は、標的核酸に結合するために、PAM部位を必要とする。
【0087】
「同一性パーセント」又は「同一性%」は、2つの任意選択で整列されたDNA又はタンパク質セグメントが、構成要素、例えば、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の整列のウィンドウ全体にわたって不変である程度を意味する。試験配列及び参照配列の整列されたセグメントについての「同一性の割合」は、2つの整列されたセグメントの配列によって共有される同一の構成要素の数を、全試験配列又は全参照配列のより小さい方である整列のウィンドウにわたる参照セグメント中の配列の構成要素の総数で割ったものである。
【0088】
「植物」は、植物全体、植物の構成要素若しくは器官(例えば、葉、茎、根等)、植物組織、種子、植物細胞及び/又はそれらの子孫のうちのいずれかを含む、植物全体、任意のその部分、又は植物に由来する細胞若しくは組織培養物を指す。植物細胞は、植物の生物細胞であるか、植物から採取されるか、又は植物から採取された細胞からの培養により誘導される。
【0089】
「プロモーター」は、本明細書で使用される場合、遺伝子のオープンリーディングフレーム(又はタンパク質コード領域)の翻訳可能な開始コドンの上流又は5'に位置し、RNAポリメラーゼI、II又はIII及び転写を開始する他のタンパク質(トランス作用性転写因子)の認識及び結合に関与する、核酸配列を指す。「植物プロモーター」は、植物細胞中で機能する、ネイティブ又は非ネイティブプロモーターである。構成的プロモーターは、植物の発生全体にわたって、植物のほとんど又は全ての組織中で機能する。組織、器官又は細胞特異的プロモーターは、それぞれ、特定の組織、器官若しくは細胞型においてのみ又は支配的に、発現される。所与の組織、植物の部分又は細胞型において「特異的に」発現されるよりもむしろ、プロモーターは、植物の他の部分と比較して、植物の1つの細胞型、組織又は植物の部分において「増強された」発現、より高いレベルの発現を示し得る。時間的に調節されたプロモーターは、例えば、概日リズムに関連する遺伝子の場合におけるように、植物の発生のある特定の期間の間若しくはある特定の時刻においてのみ又は支配的に、機能する。誘導性プロモーターは、例えば、化合物(化学誘導物質)による内因性又は外因性刺激の存在に応答して、又は環境、ホルモン、化学物質及び/若しくは発生シグナルに応答して、作動可能に連結されたDNA配列を選択的に発現する。
【0090】
核酸又はポリペプチドへの言及における「組換え」は、物質(例えば、組換え核酸、遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド等)が人間の介入によって変更されたことを示す。組換えという用語は、組換え材料を保有する生物を指すこともでき、例えば、組換え核酸を含む植物は、組換え植物と考えられる。
【0091】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、2つの最適に配列されたポリヌクレオチド配列又は2つの最適に配列されたポリペプチド配列が同一である程度を指す。最適な配列の整列は、2つの配列、例えば、参照配列及び別の配列を手作業で整列させて、適切な内部ヌクレオチドの挿入、欠失又はギャップを伴って、配列の整列中のヌクレオチドの一致の数を最大化することによって作出される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「配列同一性パーセント」又は「同一性パーセント」又は「同一性%」という用語は、同一性の割合に100を掛けたものである。参照配列と最適に整列させた配列についての「同一性の割合」は、最適な整列において一致するヌクレオチドの数を参照配列におけるヌクレオチドの総数、例えば、参照配列全体の全長のヌクレオチドの総数で割ったものである。したがって、本発明の一実施形態は、参照配列と最適に整列させた場合に、配列番号4~13、16~19及び24として本明細書に提供されるものが、参照配列と、少なくとも約85パーセントの同一性、少なくとも約86パーセントの同一性、少なくとも約87パーセントの同一性、少なくとも約88パーセントの同一性、少なくとも約89パーセントの同一性、少なくとも約90パーセントの同一性、少なくとも約91パーセントの同一性、少なくとも約92パーセントの同一性、少なくとも約93パーセントの同一性、少なくとも約94パーセントの同一性、少なくとも約95パーセントの同一性、少なくとも約96パーセントの同一性、少なくとも約97パーセントの同一性、少なくとも約98パーセントの同一性、少なくとも約99パーセントの同一性又は少なくとも約100パーセントの同一性を有する配列を含むDNA分子を提供する。
【0093】
本明細書で使用される場合、「T-DNA」分子又はトランスファーDNAは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス等の細菌の一部の種の腫瘍誘導性(Ti)プラスミドの導入されたDNAである。T-DNAは、細菌から、宿主植物の核DNAゲノムに導入される。T-DNAは、右及び左境界DNA配列によって境される。導入は、右境界で開始され、左境界で終結する。植物生命工学において、腫瘍促進遺伝子及びオパイン合成遺伝子は、T-DNAから除去され、目的の遺伝子及び/又は植物が成功裏に形質転換されたかを確立するために必要な選択マーカーを含む発現カセットで置き換えられる。植物生命工学において使用されるアグロバクテリウムの株は、抗生物質選択により宿主のAgro細胞中で維持されている武装解除されたTiプラスミド上に、Tiプラスミドの病原性領域に一度コードされていたvir遺伝子を含む。vir遺伝子は、植物細胞の染色体へのT-DNAの導入及び挿入において必須である。典型的には、生命工学において植物を形質転換するために使用される植物のバイナリーベクタープラスミドコンストラクトは、左及び右境界の間に導入遺伝子の発現カセットを有する左及び右境界配列を含むT-DNAを含む。プラスミド骨格は、複製起点、並びに大腸菌及びアグロバクテリウム・ツメファシエンスの両方においてプラスミドを維持するために必要な抗生物質選択遺伝子を含む。
【0094】
「導入遺伝子」は、宿主細胞のゲノム及び/又は細胞の現在若しくは任意の以前の世代において宿主細胞のゲノムに人工的に組み込まれる転写可能なDNA分子中のその場所に関して、少なくとも、宿主細胞に対して異種の転写可能なDNA分子を指す。
【0095】
「トランスジェニック植物」は、その細胞内に、異種ポリヌクレオチドを含む植物を指す。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが後に続く世代に伝えられるように、ゲノム内に安定に組み込まれる。異種ポリヌクレオチドは、ゲノムに、単独で、又は組換え発現カセットの一部として、組み込まれ得る。「トランスジェニック」は、本明細書において、任意の細胞、細胞系、カルス、組織、植物の部分又は植物を指すために使用され、その遺伝子型は、異種の核酸の存在によって変更され、トランスジェニック生物又は細胞が最初にそのように変更されたものだけでなく、最初のトランスジェニック生物若しくは細胞からの交配又は無性繁殖によって作出されたものを含む。「トランスジェニック」という用語は、本明細書で使用される場合、従来の植物育種法(例えば、交配)によるか、又はランダムな異花受粉、非組換えウイルス感染、非組換え細菌形質転換、非組換え転位若しくは自然突然変異等の天然で起こる事象による、ゲノム(染色体又は染色体外)の変更を包含しない。
【0096】
「ベクター」は、細胞間で核酸を導入するポリヌクレオチド又は他の分子を指す。ベクターは、多くの場合、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルスに由来し、任意選択で、ベクターの維持を媒介し、その意図される使用を可能にする部分を含む。「クローニングベクター」又は「シャトルベクター」又は「サブクローニングベクター」は、サブクローニング工程を促進する作動可能に連結された部分(例えば、複数の制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する複数のクローニング部位)を含有する。「発現ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の宿主生物においてコード配列の発現を促進する作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、細菌発現ベクター又は植物発現ベクター)を指す。
【0097】
一部の実施形態において、本開示のある特定の実施形態を記載及び主張するために使用される、成分の量、分子量等の特性、反応条件等を表す数字は、一部の場合において、「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。一部の実施形態において、「約」という用語は、値が、その値を決定するために用いられるデバイス又は方法についての平均の標準偏差を含むことを示すために使用される。一部の実施形態において、明細書及び添付の特許請求の範囲に記述されている数値パラメーターは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて、変動し得る近似値である。一部の実施形態において、数値パラメーターは、報告された有効数字の桁数を考慮し、かつ通常の丸め技法を適用することによって、解釈されるものとする。本開示の一部の実施形態の広範な範囲を記述する数値範囲及びパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体的な例において記述される数値は、実行できる限り正確に報告される。本開示の一部の実施形態において提示される数値は、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を含む場合がある。本明細書における値の範囲の列挙は、範囲内にあるそれぞれ別々の値を個々に参照する簡便な方法として機能することを単に意図する。本明細書において他に指示されない限り、それぞれの個々の値は、それが本明細書において個々に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0098】
「含む(comprise)」、「有する(have)」及び「含む(include)」という用語は、オープンエンドの連結動詞である。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(includes)」及び「含む(including)」等のこれらの動詞の1つ若しくは複数の任意の形態又は時制もオープンエンドである。例えば、1つ若しくは複数の工程を「含む(comprises)」、「有する(has)」又は「含む(includes)」任意の方法は、これらの1つ又は複数の工程のみを有するものに限定されず、他のリストされていない工程も包含し得る。同様に、1つ若しくは複数の特徴を「含む(comprises)」、「有する(has)」又は「含む(includes)」任意の組成物或いはデバイスは、これらの1つ又は複数の特徴のみを有するものに限定されず、他のリストされていない特徴も包含し得る。
【0099】
本明細書において記載される組成物及び方法は、植物全体、植物の部分及び植物細胞における使用に好適である。植物の部分としては、限定されるものではないが、葉、茎、根、塊茎、種子、胚乳、胚珠及び花粉が挙げられる。植物の部分は、生存能力があってもよく、生存能力がなくてもよく、再生可能であってもよく、及び/又は非再生可能であってもよい。言及され得る植物の例は、穀類(コムギ、コメ、ライコムギ、オオムギ、ライ、カラスムギ)、トウモロコシ、ダイズ、ジャガイモ、テンサイ、サトウキビ、トマト、エンドウ、及び他の種類の野菜、ワタ、タバコ、ナタネ並びに果実植物(果実のリンゴ、セイヨウナシ、かんきつ類及びブドウを含む)等の重要な作物であり、特に、トウモロコシ、ダイズ、コムギ、コメ、ジャガイモ、ワタ、サトウキビ、タバコ及びナタネが重要視される。
【0100】
ドナーカセットの目的の配列を含む標的化転位又はその部分から生成する商品産物も本明細書において提供される。本発明の商品産物は、配列番号45~48からなる群から選択されるDNA配列を含む検出可能な量のDNAを含有する。本明細書で使用される場合、「商品産物」は、本発明の組換えDNA分子を含有する、トランスジェニック植物、種子、植物細胞若しくは植物の部分に由来する材料で構成される任意の組成物又は産物を指す。商品産物としては、限定されるものではないが、処理された種子、穀物、植物の部分及びミールが挙げられる。本発明の商品産物は、トランスポゾンカセットに対応する検出可能な量のDNAを含有する。試料中の1つ又は複数のこのDNAの検出は、商品産物の含有量又は起源を決定するために使用され得る。本明細書において開示される検出の方法を含む、DNA分子のための検出の任意の標準的な方法を使用し得る。
【0101】
本明細書において記載される全ての方法は、本明細書において他に指示されない限り、又はそうでなければ文脈によって明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で行うことができる。本明細書におけるある特定の実施形態に関して提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「等(such as)」の使用は、本開示をより良好に明らかにすることを単に意図しており、他に主張される本開示の範囲において限定をもたらさない。本明細書中の言語は、本開示の実施に必須の任意の特許請求の範囲に係らない要素を示すとして解釈されるべきではない。
【0102】
本明細書において開示される本開示の代替の要素又は実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。それぞれのグループのメンバーは、個々に、又はグループの他のメンバー若しくは本明細書において見出される他の要素との任意の組み合わせで、言及及び請求され得る。グループの1つ又は複数のメンバーは、利便性又は特許性の理由のために、グループに含めることができ、又はグループから削除することができる。例えば、項目が、A、B、C及びDからなる群から選択される場合、本発明者らは、具体的に、それぞれ、代替的に、個々に(例えば、A単独、B単独等)、並びにA、B及びD、A及びC、B及びC等のような組み合わせを想定する。
【0103】
本開示を詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲において定義される本開示の範囲から逸脱することなく、改変、変形及び同等の実施形態が可能であることは明らかである。更にまた、本開示における全ての例が、非限定的な例として提供されることが認識されるべきである。
【実施例
【0104】
(実施例1)
アナベナ・シリンドリカのgRNA、LE及びRE配列
ほとんどのCASTエレメントのネイティブ配列は、Streckerら(2019年)によって報告されている。しかしながら、AcCASTシステムのcrRNA、tracrRNA、LE及びREは、その研究において報告されておらず、したがって、バイオインフォマティクス法を使用して、それらを同定した。ClustalW(Thompsonら;Nucleic Acids Res. 1994年;22(22):4673~4680頁)を使用するスキトネマ・ホフマンニ(Sh)の非コードRNA及びアナベナ・シリンドリカ(Ac)の対応するゲノム領域の間のペアワイズ整列を使用して、アナベナ・シリンドリカの推定のcrRNA及びtracrRNA種を同定した。アナベナ・シリンドリカのActnsB及びCas12kの直ぐ上流及び下流の500bp領域を使用して、推定のAcLE及びAcREの配列を同定した。AcsgRNAの配列を、配列番号55として開示する。AcLEの配列を、配列番号47として開示する。AcREの配列を、配列番号48として開示する。
【0105】
(実施例2)
アグロバクテリウム・ツメファシエンスを使用するCASTの成分による植物の形質転換
アグロバクテリウムT-DNAベクターを、CASTシステムの成分の植物細胞への送達のために設計する。図3Aに示されるように、エフェクタータンパク質のTnsB、TnsC、TniQ及びCas12Kは、個々の遺伝子発現カセットによってコードされ、これは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス株による使用に好適なバイナリーベクター中の単一のT-DNA分子に一緒にアセンブルされる。図3Bに示されるように、CASTシステムのエフェクタータンパク質をコードする配列は、TnsB、TnsC、TniQ及びCas12Kをコードする配列が、自己切断ペプチドの2Aをコードする配列によって分離された単一の転写ユニットとしてT-DNA分子にクローニングされ、機能性TnsB、TnsC、TniQ及びCas12Kタンパク質に対応する個々のポリペプチドの産生をもたらす。図3Cに示されるように、CASTシステムのエフェクタータンパク質のTnsB、TnsC、TniQ及びCas12Kをコードする配列は、配列内リボソーム進入部位(IRES)配列がTnsB、TnsC、TniQ及びCas12Kをコードする配列の間に位置する単一の転写ユニットとしてT-DNA分子にクローニングされて、複数のポリペプチドの産生をもたらす転写物を産生する。植物選択マーカー遺伝子、例えば、抗生物質耐性又は除草剤耐性についての発現カセットは、T-DNAベクターに更に提供されて、形質転換された植物細胞の選択を助ける。T-DNAベクターは、Cas12kと複合体を形成する少なくとも1つの好適なgRNAの産生のための発現カセットを含有するように更に設計され、それを、植物ゲノム中の標的部位にハイブリダイズするようにガイドする。T-DNAベクターはまた、目的の核酸配列と隣接している保存されたLE及びREエレメントを含むドナーカセットを含有するように設計される。
【0106】
限定されるものではないが、プロモーター、イントロン、ポリアデニル化配列及び転写終結配列を含む遺伝子発現調節エレメントを選択して、T-DNAにおけるそれぞれの発現エレメントの好適な発現レベルを提供する。同時かつ同じ組織中で標的化転位活性をもたらすのに十分なレベルで全ての必要な成分を提供するために、十分なレベル及びタイミングで遺伝子カセットを発現する遺伝子発現エレメントが利用される。プロモーター及び他の調節エレメントを選択して、システムの全ての成分の構成的遺伝子発現を提供してもよい。協調した方法で発現する場合の転写後遺伝子発現抑制の危険性を低下させるために、配列レベルで互いに異なる遺伝子発現エレメントを利用してもよい。T-DNAに含まれる遺伝エレメントは、T-DNA内で、任意の順序及び方向で配置することができるが、遺伝子発現における意図しない影響の可能性を低下させるために、遺伝子カセットを配置及び方向づけることが好ましい。遺伝子カセットの一部の間にインスレーター又は他の介在配列を含めることが好ましい場合がある。
【0107】
上記に記載されるT-DNAを含有するトランスジェニック植物は、選択マーカーカセットの存在及び発現に基づいて選択される。T-DNAのゲノムへの挿入の前、その間又はその後、LE及びREエレメントと隣接している目的の配列は、Cas12k及びgRNA配列によって決定された標的部位に挿入される。このプロセスは、ゲノム中の1つ又は複数のランダムな場所にT-DNAの全て若しくは部分の1つ又は複数の挿入、及び所望の標的部位に挿入されるドナーカセットの「トランスポゾン」のトランスジェニックDNAの少なくとも2つの挿入を有する最初のトランスジェニック植物を作り出す。大部分の例において、T-DNA及びドナーカセットの「トランスポゾン」は、遺伝的に連鎖し、その結果、その後の植物の世代において、T-DNA及びドナーカセットは、互いに独立して分離することができ、CASTエフェクタータンパク質のための発現カセットを含有する元のT-DNAを欠く植物がもたらされる。
【0108】
(実施例3)
Cas12kのためのgRNA機能の最適化
gRNA構造及びgRNAプロモーターを最適化して、植物におけるCAST活性を改善する。gRNA発現レベル又は構造の相違がCas12k結合にどのような影響を与えるかを決定するために、トウモロコシの葉のプロトプラストにトランスフェクトされたレポーターコンストラクト中の遺伝子GUSの上流のミニマルプロモーターからの転写の活性化に依拠するアッセイを利用する。Cas12kはDNAを切断しないので、それは、N又はC末端に付加されたTALEタンパク質(配列番号67)からの1つのNLSドメイン及び転写因子ドメインをコードするように直接改変することができる。3つの隣接gRNA結合部位を有するミニマルCaMVプロモーターによって駆動されるuidA(GUS)レポーター遺伝子からなるレポーターコンストラクトは、Cas12k-TALE-TFの結合を、この結合を示すGUSタンパク質の発現とともにモニターする。gRNAを有するCas12k-TALE-TFは、CASTシステムの成分のtnsB、tnsC及びtniQあり又はなしで発現されて、CASTシステムの他のエフェクタータンパク質の存在下及び非存在下、Cas12k結合の効率をモニターすることができる。Cas12k-TALE-TFが、tnsB、tnsC、tniQの非存在下で結合し、転写を活性化することができる場合、それは、Cas12kのより小さなサイズに起因して、転写活性化因子が結合する主鎖として、Cas9又はCpf1 CRISPRよりも優れている場合がある。
【0109】
gRNAのためのプロモーターの最適化を、snRNA遺伝子のそれぞれのクラスから選択されるプロモーター、即ち、U6、7SL、U2、U5及びU3を含む、gRNA(Streckerら、2019年のsgRNAに基づく)発現コンストラクトのセットを設計することによって、始める(米国特許出願公開第20170166912A1号を参照されたい)。Cas12k-TALE-TF及びgRNAの複合体がGUSレポーターコンストラクトと結合する場合、TALE転写因子ドメインは、ミニマルCaMVプロモーターを活性化し、GUS転写物のより高い発現、最終的には、GUSタンパク質発現のより高いレベルをもたらす。GUSタンパク質発現によって決定される最適なgRNA発現を提供するプロモーターが選択される。CASTシステムの一部の適用のために、最も高いレベルのGUS発現を提供するgRNAプロモーターが選択される。CASTシステムの他の適用において、低い又は中程度のレベルのGUS発現を提供するgRNAプロモーターが選択される。
【0110】
Cas12k-TALE-TF/GUSレポーターシステムも、最適なsgRNA配列及び/又は構造を決定するために使用される。Cas12k gRNAの構造は、ステム1~5のステムのサイズ、ループのサイズ、バルジのサイズ又はヌクレオチド組成を変える一連のコンストラクトを使用して最適化される(図4を参照されたい)。Cas12k sgRNAの配列もまた、構造を維持しながら、配列を変更することによって4つ又は5つのモノヌクレオチドストレッチを除去することによって、最適化され得る。ヌクレオチド43~46の4つのTは、polIIIプロモーター下で発現される場合に、sgRNAを時期を早めて終結させることができ、ステム4の5つのC及びGはまた、効率的な転写に影響を与えることができる。ヌクレオチド組成を変えながら構造を維持することにより、全体の活性が増加すると予測される。Cas12k-TALE-TF、及びGUSレポーターコンストラクトを有する変更されたsgRNAの複合体の発現は、TALEドメインによるミニマルCaMVプロモーターの活性化のレベルによってCas12k-TALE-TF/変更されたsgRNAの複合体の効率をモニターし、最終的にGUSタンパク質発現に影響を与える。GUSタンパク質発現によって決定される最適なCas12k結合を提供するsgRNA構造が選択される。CASTシステムの一部の適用のために、最も高いレベルのGUS発現を提供するsgRNA配列及び/又は構造が選択される。CASTシステムの他の適用において、低い又は中程度のレベルのGUS発現を提供するsgRNA配列及び/又は構造が選択される。
【0111】
(実施例4)
植物及び大腸菌における最適な発現のための合成のコドン最適化されたCAST配列
ShCAST及びAcCASTシステムからのTnsB、TnsC、TniQ及びCas12k遺伝子のヌクレオチド配列を分析し、オープンリーディングフレームを、植物及び細菌における最適な発現のためにコドン最適化した。コドン最適化された(CO)バリアントをTable 1(表1)に記載する。
【0112】
【表1A】
【0113】
【表1B】
【0114】
【表1C】
【0115】
(実施例5)
ダイズプロトプラストにおけるCAST活性のアッセイ
CASTタンパク質のための植物最適化発現カセット:ダイズにおけるCASTタンパク質の核局在化を促進するために、ジャガイモ核局在化シグナル(NLS)(国際公開第2019084148号-81)及びトマトNLS(国際公開第2019084148号-82)をコードする配列を、Table 1(表1)に記載される植物のコドン最適化されたSh/Ac TnsB、TnsC、TniQ及びCas12k遺伝子(配列番号1~36、終結コドンについてコードする最後の3つのヌクレオチドを欠く)のオープンリーディングフレームの5'及び3'末端に組み込む。NLSをコードするオープンリーディングフレームを、タルウマゴヤシプロモーターカセット(米国特許出願公開第20180230479号-0031)及びタルウマゴヤシ転写終結配列(米国特許出願公開第20180230478号-0001)に作動可能に連結させる(図1Aを参照されたい)。その後、発現カセットを、好適な植物発現ベクターに導入する。
【0116】
ドナー/トランスポゾンカセット:トランスポゾンカセットを含むShDonor及びAcDonorカセットをこのアッセイのために作出する(図1C)。両方のカセットは、葉緑体を標的にするペプチドをコードするヌクレオチド配列に融合され、かつシロイヌナズナアクチンプロモーター及びアグロバクテリウム・ツメファシエンスNOS遺伝子終結配列に作動可能に連結された、大腸菌アデニリルトランスフェラーゼ遺伝子(aadA)を含む。aadA遺伝子は、スペクチノマイシンに対する耐性を提供し、選択マーカーとしての機能を果たす。aadAカセットは、Sh又はAcCASTシステムからの保存されたLE及びREエレメントと隣接している。ShLEは、配列番号45として開示される。ShREは、配列番号46として開示される。AcDonorカセットは、AcCASTシステムからの保存されたLE及びREエレメントと隣接している。AcLEは、配列番号47として開示される。AcREは、配列番号48として開示される。その後、発現カセットを、好適な植物発現ベクターに導入する。
【0117】
ダイズゲノム中の標的部位の選択:18番染色体におけるフィトエンデサチュラーゼ(GmPDS)遺伝子(GENBANK受託 CM000851)を、ShCASTシステムによるドナーカセットの部位選択的組み込みのための標的領域として選択する。5つのGmPDS1標的部位を、適切なBGTT PAM部位の5'末端の存在に基づいて選択する(Table 2(表2)を参照されたい)。
【0118】
【表2】
【0119】
ダイズのためのシングルガイドRNA発現カセット:そのネイティブ配置のCas12kは、CRISPR RNA(crRNA)及び分離トランス作用性CRISPR RNA(tracrRNA)の両方を利用する。シングルガイドRNA(sgRNA)を作出するために、tracrRNAを、ペンタループ(GAAAA)を使用して、crRNAと融合する。固有のShsgRNAコンストラクトを、ShCas12kタンパク質をGmPDS1内の選択された標的部位にガイドするように設計する。それぞれのsgRNAコンストラクトは、tracrRNA配列、ペンタループ配列及びcrRNA配列をコードするDNA配列を含む。crRNA配列は、リピート配列、及びダイズ染色体において標的部位と相補的である可変配列(配列番号49~53)を更に含む。ShsgRNAのためのトレーサーRNA-ペンタループ-リピート配列の配列を、配列番号54として設定する。AcsgRNAのためのトレーサーRNA-ペンタループ-リピート配列の配列を、配列番号55として設定する。「G」ヌクレオチドを、全てのsgRNAの5'末端に付加し、配列を、ダイズU6プロモーターカセット(国際公開第2019084148号-17)及びpolyT8終結配列に作動可能に連結させる。その後、sgRNA発現カセットを、好適な植物発現ベクターに導入する。
【0120】
ドナーの部位特異的組み込みについてのプロトプラスト形質転換及びアッセイ:設定したモル比の上記に記載されるコドン最適化されたShTnsB、ShTnsC、ShTniQ及びShCas12kカセット並びに少なくとも1つのShsgRNAを含む植物発現ベクターを、標準的なポリエチレングリコール(PEG)媒介形質転換プロトコールを使用して、ShDonorベクターと一緒に、ダイズプロトプラストに共送達する。形質転換後、プロトプラストを、暗所でインキュベートし、48時間後に回収する。ゲノムDNAを、単離し、事前選択されたGmPDS1標的部位へのドナー発現カセットの組み込みについてアッセイする。国際公開第2019084148号に記載されるものと類似する隣接PCRアッセイを使用して、推定の標的化挿入を同定する。得られたアンプリコンも配列決定して、標的化挿入を確認する。
【0121】
(実施例6)
ダイズ植物におけるShCAST活性のアッセイ
左境界(LB)及び右境界(RB)配列の間に7つの発現カセットを含むアグロバクテリウムT-DNAベクターを生成する。カセット1は、選択マーカー遺伝子aadAのための発現カセットである。カセット2は、ダリアモザイクウイルスプロモーターカセット(国際公開第2019084148号、配列番号6~8)及びタルウマゴヤシ由来の転写終結配列に作動可能に連結された、トマトHSFA遺伝子(熱ショック転写因子)のNLS(国際公開第2019084148号-0010)の5'末端及び3'末端に融合された、ShTnsB-CO2配列(配列番号2)を含む発現カセットである。カセット3は、キューカミス・メロ(Cucumis melo)プロモーターカセット及びワタ由来の転写終結配列(米国特許出願公開第20180216129号-0036)に作動可能に連結された、トマトHSFA遺伝子(熱ショック転写因子)のNLS(国際公開第2019084148号-0010)の5'末端及び3'末端に融合された、ShTnsC-CO2配列(配列番号4)を含む発現カセットである。カセット4は、シロイヌナズナ属ユビキチン10プロモーターカセット及びワタ由来の転写終結配列(米国特許出願公開第20180216129号-0036)に作動可能に連結された、トマトHSFAのNLS(国際公開第2019084148号-0010)の5'末端及び3'末端に融合された、ShTniQ-CO2配列(配列番号6)を含む発現カセットである。カセット5は、タルウマゴヤシユビキチン2プロモーターカセット及びタルウマゴヤシ由来の転写終結配列(米国特許出願公開第20180230478号-0001)に作動可能に連結された、トマトHSFAのNLSの5'末端及び3'末端に融合された、ShCas12k-CO2配列(配列番号8)を含む発現カセットである。カセット6は、Table 2(表2)に記載される少なくとも1つのGm.PDS Chr18標的部位を標的化するShsgRNAを含み、かつダイズU6プロモーター(国際公開第2019084148号-017)に作動可能に連結された、発現カセットである。或いは、sgRNAカセットは、GmU3プロモーター(配列番号56)に作動可能に連結されている。カセット7は、CaMV 35Sプロモーター及びアグロバクテリウムNOS終結配列に作動可能に連結されたGUSレポーター遺伝子を含む。GUSカセットは、保存されたShLE(配列番号45)及びShRE(配列番号46)のトランスポゾン配列と隣接している。
【0122】
A3555ダイズ植物由来の切除された胚を、上記に記載されるT-DNAベクターを含有するアグロバクテリウムとともに培養する。形質転換された植物を選択培地において選択し、再生された小植物から葉の試料を4週間後に回収し、ゲノムDNAを抽出する。ゲノムDNAを、事前選択されたGmPDS1標的部位へのドナー発現カセットの組み込みについてアッセイする。隣接PCRアッセイを使用して、推定の標的化挿入を同定する。得られたアンプリコンも配列決定して、標的化挿入を確認する。
【0123】
(実施例7)
トウモロコシ植物におけるCAST活性のアッセイ
トウモロコシゲノム中の標的部位の選択:Zm7遺伝子座(配列番号57)を、CASTシステムを使用して、目的の配列の部位特異的組み込みのための標的領域として選択する。適切なPAM部位の5'末端の存在に基づいて、3つのZm7標的部位を選択して、AcCASTシステムを試験し、6つの標的部位をShCASTシステムのために選択する(Table 3(表3)を参照されたい)。
【0124】
【表3】
【0125】
7つの発現カセットを含むアグロバクテリウムT-DNAベクターを生成する。ベクターの設計及び組成は、sgRNAカセットが、ShCas12k又はAcCas12kタンパク質をTable 3(表3)に記載されるZm7遺伝子座内の選択された標的部位にガイドするように設計されることを除いて、実施例6に記載されるベクターと類似する。それぞれのsgRNAコンストラクトは、tracrRNA配列、ペンタループ配列及びcrRNA配列をコードするDNA配列を含む。crRNA配列は、リピート配列、及び染色体において標的部位と相補的である可変スペーサー配列を含む。ShsgRNAカセットのためのトレーサーRNA-ペンタループ-リピート配列の配列を、配列番号30として設定する。AcsgRNAカセットのためのトレーサーRNA-ペンタループ-リピート配列の配列を、配列番号31として設定する。「G」ヌクレオチドを、全てのsgRNAの5'末端に付加し、配列を、トウモロコシU6プロモーターカセット及びpolyT8終結配列に作動可能に連結させる。
【0126】
トウモロコシの胚を、上記に記載される発現カセットを含むT-DNAベクターを含有するアグロバクテリウムで形質転換する。形質転換された植物を選択培地において選択し、再生された小植物から葉の試料を4週間後に回収し、ゲノムDNAを抽出する。ゲノムDNAを、単離し、事前選択されたZm7標的部位へのドナー発現カセットの組み込みについてアッセイする。隣接PCRアッセイを使用して、推定の標的化挿入を同定する。得られたアンプリコンも配列決定して、標的化挿入を確認する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】