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特表2022-543829貯蔵安定性のあるエポキシ樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】貯蔵安定性のあるエポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20221006BHJP
   C08K 5/55 20060101ALI20221006BHJP
   C08G 59/44 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K5/55
C08G59/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507509
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020071371
(87)【国際公開番号】W WO2021023593
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】102019121195.6
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512117801
【氏名又は名称】アルツヒエム トローストベアク ゲー・エム・べー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Alzchem Trostberg GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Str. 32, D-83308 Trostberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ズゲラ、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ディジキンク、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】リッツィンガー、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ハートル、マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】サックス、モニカ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD051
4J002EY016
4J002FD206
4J002GC00
4J002GK00
4J002GN00
4J036AD08
4J036DA10
4J036DC31
4J036FA14
4J036JA11
(57)【要約】
本発明は、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるためのボロン酸の使用並びにエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤およびボロン酸を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤および該エポキシ樹脂の硬化を促進するための硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるための一般式(I)のボロン酸の使用であって、式(I)は、
【化1】

(式中、ラジカルRは、
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【化2】

(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤として式(IV)による硬化促進剤を含み、ここで、式(IV)は、
【化3】

(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して水素またはCからCアルキル、
=水素、CからC15アルキル、CからC15シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)
である、使用。
【請求項2】
式(I)におけるラジカルR
=メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチルまたは5-ヒドロキシペンチル
を意味することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(I)におけるラジカルRが式(II)のラジカルであり、ここで、ラジカルR、R、R
=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
、R=水素
を意味することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
式(I)におけるラジカルRが式(II)のラジカルであり、ここで、ラジカルR、R、Rが互いに独立して
、R=互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
=水素
を意味することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
式(I)におけるラジカルRが式(II)のラジカルであり、ここで、ラジカルR、R、Rが互いに独立して
、R、R=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
エポキシ樹脂組成物が、硬化剤としてシアナミドまたは一般式(III)による硬化剤を含むことを特徴とし、ここで、式(III)は、
【化4】

(式中、ラジカルR40、R41、R42は互いに独立して、
40=シアノ、ニトロ、アシルまたは式-(C=X)-R43(式中、X=イミノまたは酸素、R43=アミノ、アルキルアミノまたはアルコキシ)のラジカル、
41=水素、CからCアルキル、アリールまたはアシル、
42=水素またはCからCアルキル
を意味する)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1つのエポキシ樹脂および該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤および該エポキシ樹脂の硬化を促進するための硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、該組成物が少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸を含むことを特徴とし、ここで、式(I)は、
【化5】

(式中、ラジカルRは、
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【化6】

(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤として式(IV)による硬化促進剤を含み、ここで、式(IV)は、
【化7】

(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して水素またはCからCアルキル、
=水素、CからC15アルキル、CからC15シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)
である、エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
エポキシ樹脂組成物が、硬化剤としてシアナミドまたは一般式(III)による硬化剤を含むことを特徴とし、ここで、式(III)は、
【化8】

(式中、ラジカルR40、R41、R42は互いに独立して、
40=シアノ、ニトロ、アシルまたは式-(C=X)-R43(式中、X=イミノまたは酸素、R43=アミノ、アルキルアミノまたはアルコキシ)のラジカル、
41=水素、CからCアルキル、アリールまたはアシル、
42=水素またはCからCアルキル
を意味する)である、請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
100重量部のエポキシ樹脂に基づくエポキシ樹脂組成物が
a)1から15重量部の硬化剤、
b)0.1から9重量部の硬化促進剤、および
c)0.05から3.0重量部の式(I)によるボロン酸
を含むことを特徴とする、請求項7または8のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
ボロン酸に対する硬化剤の重量比が1:1から240:1の範囲中の比に対応し、および/またはボロン酸に対する硬化促進剤の重量比が0.05:1から160:1の範囲中の比に対応することを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるためのボロン酸の使用並びにエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤およびボロン酸を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂の使用は、その優れた耐薬品性、その非常に優れた熱的および動的機械的特性並びにその高い電気絶縁容量のために広く普及している。これらのエポキシ樹脂は、液体または固体の形態で入手可能であり、熱の適用の下、硬化剤の添加ありまたはなしで硬化させることができる。
【0003】
エポキシ樹脂の硬化は、さまざまなメカニズムに従って進行する。フェノールまたは無水物での硬化に加えて、アミンでの硬化がしばしば行われる。これらの物質は、通常液体であり、エポキシ樹脂と非常によく混合することができる。高い反応性のため、そのようなエポキシ樹脂組成物は、2つの成分を使用して実施される。これは、樹脂(A成分)および硬化剤(B成分)が、別々に貯蔵され、使用直前に正しい比率で混合されることを意味する。これらの二成分樹脂配合物はまた、いわゆる低温硬化性樹脂配合物とも呼ばれ、これにより、これに使用される硬化剤は、通常、アミンまたはアミドアミンの群から選択される。
【0004】
一方、単一成分の熱硬化性エポキシ樹脂配合物は、すぐに使用でき、事前に組み立てられている、すなわちエポキシ樹脂および硬化剤は、工場で混合されている。従って、ローカル使用中の個々の成分の混合エラーは、除外される。このための前提条件は、室温ではエポキシ樹脂と反応しないが、エネルギーの適用に依存して、加熱するとき容易に反応する固有の(inherent)硬化システムである。この文脈において、「固有の」は、個々の成分の混合物が定義された貯蔵条件下で安定であることを意味する。
【0005】
そのような単一成分エポキシ樹脂配合物については、例えば、ジシアンジアミドは、特に適切であり、また費用効果の高い硬化剤でもある。周囲条件下で、対応するエポキシ樹脂-ジシアンジアミドの混合物は、最長12か月間すぐに使用できる状態で貯蔵することができる。
【0006】
エポキシ樹脂-ジシアンジアミド混合物などの単一成分エポキシ樹脂配合物を硬化させるための反応温度を下げるために、より低い温度での硬化が可能であるように硬化のための活性化エネルギーを下げる硬化促進剤が、一般にこれらの配合物に加えられる。しかしながら、これらの硬化促進剤は、多くの場合において、エポキシ樹脂、硬化剤、および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を低下させるため、室温での長期間の貯蔵は不可能である。それにもかかわらず、これらの単一成分エポキシ樹脂配合物の適切な貯蔵安定性を確保するために、それらは、制御された低温で、しばしば-18℃で貯蔵しなければならない。これは、この配合物の貯蔵、輸送および処理のための、特にプリプレグ、トウプレグまたは接着剤の製造のための、かなりの追加の費用および労力をもたらす。
【0007】
そのような障壁を知って、これらを克服するための提案が、すでに公開されてきた。例えば、欧州特許明細書EP 659793 B1は、エポキシ樹脂用の硬化剤として、ホウ酸またはホウ酸エステル(borates)(ホウ酸エステル(boric aci esters))およびイミダゾール-エポキシ樹脂付加物の混合物を記載する。このようにして得られた組成物は、貯蔵において安定であり、加熱による迅速な硬化を可能にする。
【0008】
さらに、欧州特許明細書EP 2678369 B1は、シアナミド、少なくとも1つの尿素誘導体(ウロン)および安定剤として少なくとも1つの有機または無機酸を含有する液体硬化剤を記載する。これらの硬化剤は、エポキシ樹脂中で素晴らしく溶解し、エポキシ樹脂において高い潜伏時間を示し、長期貯蔵安定性を可能にする。
【0009】
さらに、欧州特許出願EP 3257884 A1は、エポキシ樹脂、ジシアンジアミド、芳香族ウロンおよびホウ酸エステルのエポキシ樹脂混合物を記載する。実施例においてリストされているホウ酸エステルの効果、特に60℃での熱流曲線におけるピークまでの時間の延長は非常に低く、そのため、これらのエステルの添加が凍結貯蔵および凍結輸送の必要性を排除することができるかどうかは、疑わしい。
【発明の概要】
【0010】
従って、本発明は、数日間の実質的な期間硬化が観察されることなく貯蔵することができる、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物を提供することに向けられる。このエポキシ樹脂組成物は、硬化温度未満での高い潜伏時間、すなわち高い貯蔵安定性、並びに硬化温度での高い反応性を有するはずである。
【0011】
これらの課題は、請求項1に記載の使用並びに請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物によって解決することができるであろう。本発明の好ましい実施態様は、任意に互いに組み合わせ得るサブ請求項中に与えられている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
すなわち、第1の実施態様によれば、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤を含む、エポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるための一般式(I)のボロン酸の使用は、本発明の主題であり、ここで、式(I)は、
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、ラジカルRは、
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤として式(IV)による硬化促進剤を含み、ここで、式(IV)は、
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、
=水素、CからC15アルキル、CからC15シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)
である。
【0019】
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物は、そのエポキシ樹脂が熱硬化性である、すなわちそれらの官能基、すなわちエポキシ基のために熱によって重合可能、連結可能および/または架橋可能である、組成物を意味する。ここで、重合、連結および/または架橋は、硬化剤および硬化促進剤によって誘導される重付加の結果として起こる。
【0020】
本発明の文脈において、アルキルは、飽和の、直鎖または分枝脂肪族ラジカル、特に一般式C2n+1(式中、nは、ラジカルの炭素原子の数を表す)を有するアルキルラジカルとして理解されるべきである。
【0021】
アルキルは、より多くの数の炭素原子を有するラジカルを意味し得る。好ましくは、アルキルは、一般式C2n+1(式中、nは、ラジカルの炭素原子の数を表し、nは、1から15の数を表す)を有する飽和の、直鎖または分枝脂肪族ラジカルを意味する。すなわち、アルキルは、好ましくはCからC15アルキル、より好ましくはCからC10アルキルを意味する。それにより、CからC15アルキルが、特にメチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシルまたはn-ドデシルであることが、さらに好ましい。
【0022】
さらに、CからCアルキルは、最大5個の炭素原子を有する飽和の、直鎖または分岐アルキルラジカルを意味する。好ましくは、CからCアルキルは、特にメチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピルまたは1-エチルプロピルを意味する。
【0023】
本発明によれば、ヒドロキシアルキルは、1つ、2つまたは3つのヒドロキシ基で置換された上記で定義されたアルキルラジカルを意味する。特に、本発明によれば、ヒドロキシアルキルは、最大15個の炭素原子を有し、ヒドロキシ基で置換されているアルキルラジカルを意味する。すなわち、ヒドロキシアルキルは好ましくは、CからC15ヒドロキシアルキルを意味する。さらに好ましくは、ヒドロキシアルキルは、CからCヒドロキシアルキルを意味する。最も好ましくは、ヒドロキシアルキルは、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチルまたは5-ヒドロキシペンチルを意味する。
【0024】
本発明の文脈において、CからC15シクロアルキルは、3から15個の炭素原子を有する飽和の、単環式または二環式脂肪族ラジカル、特に一般式C2n-1(式中、n=3から15の整数)を有するシクロアルキルラジカルを意味することが、さらに意図される。この文脈において、CからC15シクロアルキルは、特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを意味することが好ましく意図され、ここで、これらのシクロアルキルラジカルは次いで、好ましくは上記の意味のアルキルによってさらに一または多置換され得る。
【0025】
本発明によれば、CからC15シクロアルキルは特に好ましくは、次いでアルキルで一または多置換され得る、シクロペンチル、シクロヘキシルを、特に3,3,5,5-テトラメチル-1-シクロヘキシルを意味する。
【0026】
シアンは、一般式CNのニトリル基を示す。
【0027】
ニトロは、一般式NOの官能基を示す。
【0028】
アミノは、一般式NHの官能基を示す。
【0029】
イミノは、一般式NHの官能基を示す。
【0030】
本発明によれば、アルキルアミノは、式NH(アルキル)2-n(n=0または1)のラジカルを意味し、ここで、アルキルは、上記の意味のアルキルラジカルであり、結合部位は窒素上に位置する。
【0031】
カルボキシルは、一般式COOHの官能基を示す。
【0032】
本発明によれば、アルコキシは、式O-アルキルのラジカルを意味し、ここで、アルキルは、上記の意味のアルキルラジカルであり、結合部位は、酸素上に位置する。本発明によれば、アルコキシは、特に、そのアルキルラジカルが最大15個の炭素原子、特に最大5個の炭素原子を有する、アルコキシラジカルを意味する。すなわち、アルコキシは、好ましくはCからC15アルコキシを、より好ましくはCからCアルコキシを意味する。特に好ましくは、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシまたはn-ペントキシを意味する。
【0033】
本発明によれば、アシルは、式C(O)-Rのラジカルを意味し、ここで、Rは、炭素および水素に結合し、アルキルまたはアルコキシは、上記の意味のものであり得、アシルラジカルの結合部位は、炭素上に位置する。特に好ましくは、アシルは、ホルミルまたはアセチルを意味する。
【0034】
さらに、アルキルスルホニルは、式SO-アルキルのラジカルを意味し、ここで、アルキルスルホニルラジカルの結合部位およびアルキルラジカルの両方が硫黄上に位置し、アルキルは、上記の意味のアルキルラジカルである。本発明によれば、アルキルスルホニルは特に、そのアルキルラジカルが最大15個の炭素原子を有するアルキルスルホニルラジカルを意味する。すなわち、アルキルスルホニルは、好ましくはCからC15アルキルスルホニルを、より好ましくはCからCアルキルスルホニルを意味する。特に好ましくは、アルキルスルホニルは、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、n-ブチルスルホニルまたはn-ペンチルスルホニルを意味する。
【0035】
本発明によれば、アリールは、芳香族ラジカル、特に、単環式、二環式または多環式であり得る6から15個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを意味する。すなわち、アリールは好ましくは、CからC15アリールを意味する。特に好ましくは、アリールは、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニルまたはペリレニルを、最も好ましくはフェニルを意味する。
【0036】
さらに、本発明によれば、アルキルアリールは、次いで上記のタイプのアルキルで一または多置換されている、上記のタイプの芳香族ラジカルを意味する。特に、アルキルアリールは、6~15個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを意味する。すなわち、アルキルアリールは好ましくは、CからC15アルキルアリールを意味する。さらに好ましくは、アルキルアリールは、メチルフェニル、ジメチルフェニルまたはトリメチルフェニルを意味する。
【0037】
驚くべきことに、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物への本発明の式(I)によるボロン酸の添加は、対応するエポキシ樹脂組成物を最高40℃までの室温で少なくとも1週間および最長4週間超の間貯蔵することができるように、硬化用にすでに調製されたエポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を有意に改善することが、示された。非常に驚くべきことに、所望の貯蔵安定性が、組成物の反応性を有意に変化させることなく達成されることが、示された。ボロン酸の添加は、達成されるガラス転移温度に影響を与えない。すなわち、ボロン酸の添加なしに達成される、全体としての硬化剤および硬化促進剤の硬化特性は、変化せず、実質的に維持される。これらの事実は、全体として驚くべきものである。従って、全体として、室温での高い貯蔵安定性および硬化温度での高い反応性を示し、プリプレグ、トウプレグおよび一成分接着剤における使用に完全に適したエポキシ樹脂組成物を、提供することができる。
【0038】
本発明によれば、式(I)のボロン酸を使用することができ、ここで、式(I)中のRは、アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカルを意味し得る。好ましくは、式(I)中のRは、アルキルまたはヒドロキシアルキルであり、ここで、さらに好ましくは、Rが以下の意味を有することが提供され得る。
=メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチルまたは5-ヒドロキシペンチル
【0039】
本発明によれば、Rはまた、式(II)のラジカルであり得、ここで、少なくとも1つの置換基R、R、Rは、水素ではない。すなわち、あるいは、式(I)中のRは、好ましくは式(II)のラジカルを意味し得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは、
=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
、R=水素
を意味する。
【0040】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは、
=フッ素、シアノ、アシル、アルキルスルホニルまたはB(OH)
、R=水素
を意味する。
【0041】
さらにもっと好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは、
=フッ素、シアノ、ホルミル、アセチル、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、n-ブチルスルホニル、n-ペンチルスルホニルまたはB(OH)
、R=水素
を意味する。
【0042】
さらなる代替法によれば、式(I)中のRは、好ましくはまた式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは、
、R=互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
=水素
を意味する。
【0043】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは、
、R=互いに独立して、フッ素またはアルコキシ、
=水素
を意味する。
【0044】
さらにもっと好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは、
、R=互いに独立して、フッ素、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシまたはn-ペントキシ、
=水素
を意味する。
【0045】
さらなる代替法によれば、式(I)中のRは、好ましくはまた式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは互いに独立して、
、R、R=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味する。
【0046】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは互いに独立して、
、R、R=フッ素またはCからCアルキル
を意味する。
【0047】
さらにもっと好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは互いに独立して、
、R、R=フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル
を意味する。
【0048】
非常に好ましくは、式(I)は、4-ホルミルフェニルボロン酸、1,4-ベンゼンジボロン酸、3-フルオロフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸、2,5-ジメトキシフェニルボロン酸、メチルボロン酸、4-エチルフェニルボロン酸、1-オクチルボロン酸、2-カルボキシフェニルボロン酸、3-カルボキシフェニルボロン酸、4-カルボキシフェニルボロン酸、(2-ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸、4-シアノフェニルボロン酸、4-(メタンスルホニル)フェニルボロン酸、3,4,5-トリフルオロフェニルボロン酸またはそれらの混合物からなる群から選択される物質を表す。
【0049】
すなわち、さらなるアイデアによれば、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂、並びに該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤および該エポキシ樹脂の硬化を促進させるための硬化促進剤、並びに少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸を含むエポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物を提供することも本発明の主題であり、ここで、式(I)は、
【0050】
【化4】
【0051】
(式中、ラジカルRは、
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0052】
【化5】
【0053】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤として式(IV)によって表される硬化促進剤を含み、ここで、式(IV)は、
【0054】
【化6】
【0055】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、
=水素、CからC15アルキル、CからC15シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)
である。
【0056】
驚くべきことに、そのようなエポキシ樹脂組成物は、貯蔵において特に安定であることが示された。すなわち、本発明によるエポキシ樹脂組成物は、既知のエポキシ樹脂組成物と比較して、最大4週間の有意に高い貯蔵安定性を有することが示された。本発明によるエポキシ樹脂組成物は、同じ条件下でボロン酸なしの同等のエポキシ樹脂組成物よりも少なくとも3倍長く(at least three times longer)、すなわち少なくとも3倍長く(by at least a factor of 3)貯蔵することができるか、またはより長い貯蔵安定性を有する。
【0057】
非常に驚くべきことに、組成物の反応性などの他の硬化特性は、既知の組成物の硬化特性に匹敵し、有意に変化しないことが示された。すなわち、これらの組成物は、プリプレグ、トウプレグおよび一成分接着剤の製造用に優れて使用することができる。
【0058】
上記の使用、特に本発明によるボロン酸の使用の好ましい実施態様はまた、エポキシ樹脂組成物の好ましい実施態様でもある。
【0059】
すなわち、エポキシ樹脂組成物は好ましくは、式(I)によるボロン酸を含み、ここで、式(I)中のRは好ましくは、アルキルまたはヒドロキシアルキルを意味し、ここで、Rが以下の意味を有することが、さらに好ましい。
=メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチルまたは5-ヒドロキシペンチル
【0060】
すなわち、あるいは、エポキシ樹脂組成物は好ましくは、式(I)によるボロン酸を含み、ここで、式(I)中のRは好ましくは、式(II)のラジカルを意味し、ここで、式(II)中のR、R、Rは、
=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
、R=水素
を意味する。
【0061】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のR、R、Rは、
=フッ素、シアノ、アシル、アルキルスルホニルまたはB(OH)
、R=水素
を意味する。
【0062】
さらにもっと好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のR、R、Rは、
=フッ素、シアノ、ホルミル、アセチル、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、n-ブチルスルホニル、n-ペンチルスルホニルまたはB(OH)
、R=水素
を意味する。
【0063】
さらなる代替法によれば、エポキシ樹脂組成物は好ましくはまた、式(I)によるボロン酸を含み得、ここで、式(I)中のRは好ましくは、式(II)のラジカルを表し、ここで、式(II)中のR、R、Rは、
、R=互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
=水素
を意味する。
【0064】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のR、R、Rは、
、R=互いに独立して、フッ素またはアルコキシ、
=水素
を意味する。
【0065】
さらにもっと好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のR、R、Rは、
、R=互いに独立して、フッ素、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシまたはn-ペントキシ、
=水素
を意味する。
【0066】
さらなる代替法によれば、エポキシ樹脂組成物は好ましくはまた、式(I)によるボロン酸を含み得、ここで、式(I)中のRは、式(II)のラジカルを表し、式(II)中のラジカルR、R、Rは互いに独立して、
、R、R=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味する。
【0067】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは互いに独立して、
、R、R=フッ素またはCからCアルキル
を意味する。
【0068】
さらにもっと好ましくは、式(I)中のRは、式(II)のラジカルであり得、ここで、式(II)中のラジカルR、R、Rは互いに独立して、
、R、R=フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル
を意味する。
【0069】
すなわち、本発明によるエポキシ樹脂組成物は最も好ましくは、4-ホルミルフェニルボロン酸、1,4-ベンゼンジボロン酸、3-フルオロフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸、2,5-ジメトキシフェニルボロン酸、メチルボロン酸、4-エチルフェニルボロン酸、1-オクチルボロン酸、2-カルボキシフェニルボロン酸、3-カルボキシフェニルボロン酸、4-カルボキシフェニルボロン酸、(2-ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸、4-シアノフェニルボロン酸、4-(メタンスルホニル)フェニルボロン酸、3,4,5-トリフルオロフェニルボロン酸またはそれらの混合物からなる群から選択されるボロン酸を含む。
【0070】
本発明によれば、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤として、特に、シアナミドまたはグアニジン、特にシアノグアニジン、ニトログアニジン、アシルグアニジン若しくはビグアニジンからなる群から選択される硬化剤を使用しまたは使い得る。好ましくは、シアナミドまたは一般式(III)による硬化剤を、硬化剤として使用し得、ここで、式(III)は、
【0071】
【化7】
【0072】
(式中、ラジカルR40、R41、R42は互いに独立して、
40=シアノ、ニトロ、アシル、または式-(C=X)-R43(式中、X=イミノまたは酸素、R43=アミノ、アルキルアミノまたはアルコキシ)のラジカル、
41=水素、CからCアルキル、アリール、ベンジル、またはアシル、
42=水素またはCからCアルキル
を意味する)である。
【0073】
すなわち、本発明によるエポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、特にシアナミドまたは一般式(III)による硬化剤を含む。
【0074】
その中で、R41=水素若しくはCからCアルキルおよび/またはR42=水素若しくはCからCアルキルであり、CからCアルキルが同時にまたは互いに独立して、ラジカル メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルまたはn-ブチルを表す、式(III)による硬化剤が、さらに好ましい。
【0075】
非常に好ましくは、以下が適用される式(III)の硬化剤を、使用することができる。
40=シアノまたはニトロ、特にシアノ、
41=水素、メチルまたはエチル、特に水素、
42=水素、メチルまたはエチル、特に水素
【0076】
一般式(III)のエポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤として、好ましくはシアノグアニジン、1,1-ジメチル-3-シアングアニジン、1-アセチル-3-シアングアニジン、1-(p-クロロフェニル)-3-シアングアニジン、ニトログアニジン、1-メチル-3-ニトログアニジン、1-エチル-3-ニトログアニジン、1-ブチル-3-ニトログアニジン、1-ベンジル-3-ニトログアニジン、ホルミルグアニジン、アセチルグアニジン、カルバモイルグアニジンまたはメトキシカルボニルグアニジンを、特に好ましくはシアノグアニジンを、使用し得る。
【0077】
これらのシアノグアニジン誘導体またはニトログアニジン誘導体は、特に高い潜伏時間を特徴とする。
【0078】
あるいは、特に好ましくは、シアナミドを、本発明によるエポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤として使用し得る。
【0079】
本発明によれば、式(IV)による尿素誘導体が、硬化剤による硬化を促進するための硬化促進剤として使用されまたは使われ、ここで、式(IV)は、
【0080】
【化8】
【0081】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、
=水素、CからC15アルキル、CからC15シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)である。
【0082】
すなわち、本発明によるエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤として、一般式(IV)による硬化促進剤を含む。
【0083】
式(IV)によって記載される尿素誘導体のうち、好ましくは芳香族尿素誘導体を、本発明に従って使用することができる。さらに好ましくは、式(IV)の芳香族尿素誘導体が、ここで使用され、ここで、ラジカルR、R、Rは独立して、
、R=互いに独立して、CからCアルキル、特にメチルまたはエチル、
=アリール、アリールアルキル、または-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)である。
【0084】
さらに好ましくは、ラジカルR、R、Rは、互いに独立して
、R=互いに独立して、CからCアルキル、特にメチルまたはエチル、
=-NHC(O)NRRで置換されたアルキルアリール
であり得る。
【0085】
すなわち、本発明によれば、式(V)による尿素誘導体が特に好ましく、ここで、式(V)は、
【0086】
【化9】
【0087】
であり、ラジカルR、R、R、R10は互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル、
、R10=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル
を意味する。
【0088】
好ましくは、式(V)に関連するラジカルR、R、Rはそれぞれ、メチルラジカルを示し、R10は、水素を示す。特に好ましいのは、1,1’-(4-メチル-m-フェニレン)ビス(3,3-ジメチル尿素)および1,1’-(2-メチル-m-フェニレン)ビス(3,3-ジメチル尿素)である。
【0089】
式(IV)によって記載される尿素誘導体のうち、脂肪族尿素誘導体を、さらに好ましくは使用することができる。式(IV)の脂肪族尿素誘導体が、ここでさらに好ましく、ここで、ラジカルR、R、Rは独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル、
=水素またはCからC15アルキル、CからC15シクロアルキル、-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル
を意味する。
【0090】
さらに好ましいのは、RおよびRが上記で定義された意味、特に水素、メチルまたはエチルを有し、Rが水素またはCからC15アルキル、特にメチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルまたはn-デカニルである、式(IV)による脂肪族尿素誘導体である。特に好ましくは、式(III)中のラジカルR、Rはそれぞれ、メチルを示し、Rは、n-ブチルを示す。特に好ましいのは、N-(n-ブチル-)-N’,N’-ジメチル尿素である。
【0091】
さらに好ましいのは、RおよびRが上記で定義された意味、特に水素、メチルまたはエチルを有し、Rが-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキルである、式(IV)による脂肪族尿素誘導体である。
【0092】
すなわち、本発明によれば、式(VI)による尿素誘導体が、特に好ましく、ここで、式(VI)は、
【0093】
【化10】
【0094】
であり、ここで、ラジカルは同時にまたは互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル;
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20=互いに独立して、水素、CからCアルキル、または-NHC(O)NRで置換されたCからCアルキル
を意味する。
【0095】
さらに好ましいのは、RおよびRが同時にまたは互いに独立して水素、メチルまたはエチルであり、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20が互いに独立して水素、メチル、エチル、-NHC(O)NRまたは-NHC(O)NRで置換されたメチル若しくはエチルである、式(VI)の脂肪族尿素誘導体を含む硬化促進剤である。特に好ましいのは、以下N’-[3-[[[(ジメチルアミノ)カルボニル]-アミノ]メチル]-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]-N,N-ジメチル尿素でもある1-(N,N-ジメチルウレア)-3-(N,N-ジメチルウレア-メチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(すなわちR=R=R12=R13=R16=メチルおよびR17=-CH-NHC(O)N(CHおよびR11=R14=R15=R18=R19=R20=水素)である。
【0096】
すなわち、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂、並びに該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤および式(V)または式(VI)による硬化促進剤の群から選択される該エポキシ樹脂の硬化を促進するための硬化促進剤、並びに少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸を含む、エポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物も、また好ましく、ここで、式(I)は、
【0097】
【化11】
【0098】
(式中、ラジカルRは、
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
であり、ここで、式(II)は、
【0099】
【化12】
【0100】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
であり、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではないを意味する)である)であり、
式(V)は、
【0101】
【化13】
【0102】
であり、ここで、ラジカルR、R、R、R10は互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル、
、R10=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル
を意味し、
式(VI)は、
【0103】
【化14】
【0104】
(式中、ラジカルは同時にまたは互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル;
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20=互いに独立して、水素、CからCアルキルまたは-NHC(O)NRで置換されたCからCアルキル
を意味する)である。
【0105】
すなわち、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂、並びに式(III)による硬化剤の群から選択される該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤およびび式(V)または式(VI)による硬化促進剤の群から選択される該エポキシ樹脂の加速硬化のための硬化促進剤、並びに少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸を含む、エポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物も、また好ましく、ここで、式(I)は、
【0106】
【化15】
【0107】
(式中、ラジカルRは、
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0108】
【化16】
【0109】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)であり、
式(III)は、
【0110】
【化17】
【0111】
(式中、ラジカルR40、R41、R42は互いに独立して、
40=シアノ、ニトロ、アシル、または式-(C=X)-R43(式中、X=イミノまたは酸素、R43=アミノ、アルキルアミノまたはアルコキシ)のラジカル、
41=水素、CからCアルキル、アリール、ベンジル、またはアシル、
42=水素またはCからCアルキル
を意味する)であり、
式(V)は、
【0112】
【化18】
【0113】
であり、ここで、ラジカルR、R、R、R10は互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル、
、R10=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル
を意味し、
式(VI)は、
【0114】
【化19】
【0115】
(式中、ラジカルは同時にまたは互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル;
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20=互いに独立して、水素、CからCアルキルまたは-NHC(O)NRで置換されたCからCアルキル
を意味する)である。
【0116】
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1つのエポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂を含む。好ましくは、エポキシ樹脂または液体エポキシ樹脂は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのエポキシ基、さらにより好ましくは少なくとも3つのエポキシ樹脂基を有するポリエーテルである。これらのエポキシ樹脂または液体エポキシ樹脂は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのエポキシ基を有し得、飽和または不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であり得る。さらに、これらのエポキシ樹脂または液体エポキシ樹脂は、ハロゲン、リンおよびヒドロキシル基などの置換基を有し得る。ビスフェノールベースのエポキシ樹脂、特にビスフェノールAジグリシジルエーテル並びに臭素置換誘導体(テトラブロモビスフェノールA)またはビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックエポキシ樹脂、特にエポキシフェノールノボラックまたは脂肪族エポキシ樹脂が、この文脈において好ましく使用される。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)および臭素置換誘導体(テトラブロモビスフェノールA)のグリシジルポリエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)のグリシジルポリエーテル並びにノボラックのグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂並びにアニリンまたはp-アミノフェノール若しくは4,4’ジアミノジフェニルメタンなどの置換アニリンに基づくものが、特に好ましい。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂および2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂が、特に好ましい。
【0117】
さらに好ましくは、本発明によれば、EEW=100から1500g/eqの範囲中の、特にEEW=100から1000g/eqの範囲中の、特にEEW=100から600g/eqの範囲中の、さらに好ましくはEEW=100から400g/eqの範囲中の、非常に特に好ましくはEEW=100から300g/eqの範囲中のEEW(エポキシド当量)値を有するようなエポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂を、使用することができる。
【0118】
本発明の配合物の硬化プロファイルは、エポキシ樹脂を硬化させるために当業者に知られているもののような、さらなる市販の添加剤を加えることによって、変化させることができる。
【0119】
反応性希釈剤および熱可塑性添加剤は、プリプレグ、トウプレグおよび接着剤の配合物において、一般的に使用される。
【0120】
すなわち、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤に加えて、本発明によるエポキシ樹脂マトリックスはまた、反応性希釈剤および/または熱可塑性添加剤を含み得る。
【0121】
特に、グリシジルエーテルは、本発明による方法においてまたはエポキシ樹脂マトリックスにおいて、反応性希釈剤として使用することができる。この文脈において、単官能性、二および多官能性グリシジルエーテルを、好ましく使用することができる。特に、グリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、ポリグリシジルエーテルおよびマルチグリシジルエーテル並びにそれらの組合せが、言及されるべきである。特に好ましくは、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、C-C10アルコールグリシジルエーテル、C12-C14アルコールグリシジルエーテル、クレゾールグリシジルエーテル、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールトリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェノールグリシジルエーテル、ポリグリセロールマルチグリシジルエーテル、およびそれらの組合せを含む群から選択されるグリシジルエーテルを、使用し得る。
【0122】
非常に特に好ましいグリシジルエーテルは、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、およびそれらの組合せである。
【0123】
典型的には、フェノキシ樹脂、アクリレート、アクリル、アクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリアリールケトンまたはポリスルホンポリマーの群からの熱可塑性添加剤が、選択される。処理中の流動挙動および硬化成分の機械的特性へのそれらのプラスの影響のため、フェノキシ樹脂、ポリアクリレートまたはポリスルホンが、好ましく使用される。
【0124】
未硬化エポキシ樹脂組成物の加工性を改善するためのまたは熱硬化性製品の熱機械的特性を要件プロファイルに適合させるための添加剤は、例えば、充填剤、チキソトロピー剤若しくは分散添加剤などのレオロジー添加剤、消泡剤、染料、顔料、靭性修飾剤、衝撃修飾剤、ナノフィラー、ナノファイバー、または防火添加剤を含む。
【0125】
本発明に従って使用されるボロン酸、並びにエポキシ樹脂組成物中の硬化剤および硬化促進剤の量は、使用されるエポキシ樹脂の量に関して本発明に従って調整することができる。好ましくは、100重量部のエポキシ樹脂に基づいて、特に0.05から3.0重量部の式(I)によるボロン酸、さらに好ましくは0.1から2.0重量部の式(I)によるボロン酸、特に好ましくは0.1から1.0重量部の式(I)によるボロン酸を、使用することができる。
【0126】
さらに、100重量部のエポキシ樹脂に基づいて、特に、特にシアナミドの群または式(III)による硬化剤の群からの、1.0から15重量部の硬化剤、さらに好ましくは、特にシアナミドの群または式(III)による硬化剤の群からの、3.0から12.0重量部の硬化剤、特に好ましくは、特にシアナミドの群または式(III)による硬化剤の群からの、4.0から10.0重量部を、使用することができる。
【0127】
さらに、100重量部のエポキシ樹脂に基づいて、特に、特に式(IV)または式(V)または式(VI)による硬化促進剤の群からの、0.1から9重量部の硬化促進剤、さらに好ましくは、特に式(IV)または式(V)または式(VI)による硬化促進剤の群からの、0.5から5.0重量部の硬化促進剤、特に好ましくは、特に式(IV)または式(V)または式(VI)による硬化促進剤の群からの、0.5から3.0重量部の硬化促進剤を、使用することができる。
【0128】
この点について、エポキシ樹脂組成物は好ましくは、1:1から240:1、より好ましくは3:1から100:1、特に好ましくは6:1~40:1の範囲中の比に対応する、ボロン酸に対する硬化剤の重量比で、硬化剤およびボロン酸を含み得る。
【0129】
さらに好ましくは、エポキシ樹脂組成物は、0.05:1から160:1、より好ましくは0.5:1から50:1、最も好ましくは0.7:1から15:1の範囲中の比に対応するボロン酸に対する硬化促進剤の重量比で、硬化促進剤およびボロン酸を含み得る。
【0130】
スポーツおよび自由時間用の、自動車および航空宇宙市場において使用される繊維複合部品の製造のための、および風力タービン用のローターブレードの製造のための繊維複合材料、特にプリプレグおよびトウプレグ。当業者に知られている全てのタイプの繊維を、これらの繊維複合材料について使用することができる。これらの例は、それらに限定することなく、ガラス、炭素、アラミド、プラスチック、玄武岩および天然繊維、またはロックウールである。
【0131】
これらの繊維複合材料は、オートクレーブ、脱オートクレーブ、真空バッグおよびプレス法などの製造方法において処理することができる。
【0132】
本発明によるエポキシ樹脂混合物はまた、1成分接着剤の製造に適している。これらの接着剤は、例えば、自動車および航空機の構築においてそれらの適用を見出す。
【0133】
本明細書において記載される使用に加えて、本発明は同様に、一般式(I)のボロン酸の添加によって、エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤、および該エポキシ樹脂の硬化を促進するための硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高める方法に関し、ここで、式(I)は、
【0134】
【化20】
【0135】
(式中、ラジカルRは、
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0136】
【化21】
【0137】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)であり、
エポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤として式(IV)による硬化促進剤を含み、ここで、式(IV)は、
【0138】
【化22】
【0139】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して水素またはCからCアルキル、
=水素、CからC15アルキル、CからC15シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)
である。
【0140】
本発明の方法の好ましい実施態様は、本発明による使用および本発明によるエポキシ樹脂組成物について本明細書において記載したとおりである。
【実施例
【0141】
使用した材料
製品名:EPIKOTE(商標) Resin 828(Hexion Inc.)
未修飾ビスフェノールAエポキシ樹脂(EEW=184~190g/eq)
(25℃での粘度=12~14Pas)
【0142】
製品名:Araldite(登録商標) MY 721(Huntsman Corp.)
四官能性エポキシ樹脂;N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンビスベンゾールアミン
透明な褐色の液体、(EEW=109~116g/eq)
(50℃での粘度=3000~6000mPas)
【0143】
製品名:Epilox(登録商標) F17-00(LEUNA-Harze GmbH)
未修飾ビスフェノールFエポキシ樹脂(EEW=165~173g/eq)
(25℃での粘度=2500~4500mPas)
【0144】
製品名:DYHARD(登録商標) 100S(AlzChem Trostberg GmbH)
潜伏性硬化剤、ジシアンジアミド、固体物質(粒子サイズ98%≦10μm)
【0145】
尿素1:1,1’-(4-メチル-m-フェニレン)-ビス-(3,3-ジメチル尿素)(AlzChem Trostberg GmbH)
式Vによる潜伏性二官能性促進剤
固体物質(粒子サイズ98%≦10μm)
【0146】
尿素2:フェヌロン(AlzChem Trostberg GmbH)
式IVによる潜伏性単官能性促進剤
固体物質(粒子サイズ98%≦10μm)
【0147】
尿素3:N’-[3-[[[(ジメチルアミノ)カルボニル]アミノ]メチル]-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]-N,N-ジメチル尿素(AlzChem Torstberg GmbH)
式VIによる潜伏性二官能性促進剤、固体物質
【0148】
尿素4:1-ブチル-3,3-ジメチル尿素(abcr GmbH)
式IVによる潜伏性単官能性促進剤、(沸点:100~110℃)
【0149】
製品名:4-カルボキシフェニルボロン酸;(abcr GmbH)
固体物質(純度=97%;融点=238℃)
【0150】
製品名:3-カルボキシフェニルボロン酸;(abcr GmbH)
固体物質
【0151】
製品名:2-カルボキシフェニルボロン酸;(abcr GmbH)
固体物質
【0152】
製品名:4-シアノフェニルボロン酸;(abcr GmbH)
固体物質(純度=97%;融点>300℃)
【0153】
製品名:4-(メタンスルホニル)フェニルボロン酸;(abcr GmbH)
固体物質(融点=275℃)
【0154】
製品名:4-ホルミルフェニルボロン酸;(Alfa Aesar)
固体物質(純度=97%;融点=260~266℃)
【0155】
製品名:3-フルオロフェニルボロン酸;(abcr GmbH)
固体物質、(融点=220℃)
【0156】
製品名:2,5-ジメトキシフェニルボロン酸;(Alfa Aesar)
固体物質(純度=98%;融点=92~94℃)
【0157】
製品名:メチルボロン酸;(Alfa Aesar)
固体物質(純度=97%;融点=89~94℃)
【0158】
製品名:4-エチルフェニルボロン酸;(Alfa Aesar)
固体物質(純度=97%)
(融点=150~154℃)
【0159】
製品名:1-オクチルボロン酸;(Alfa Aesar)
固体物質(純度=97%;融点=81~85℃)
【0160】
製品名:(2-ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸(abcr GmbH)
固体物質
【0161】
製品名:2,4-ジフルオロフェニルボロン酸(Alfa Aesar)
固体物質(純度=97%;融点=247~250℃)
【0162】
製品名:3,4,5-トリフルオロフェニルボロン酸(Sigma-Aldrich)
固体物質(純度≧95%;融点=290~295℃)
【0163】
製品名:1,4-ベンゼンジボロン酸(Alfa Aesar)
固体物質(純度=96%;融点>300℃)
【0164】
製品名:VESTAMIN(登録商標) IPD;(Evonik)
イソホロンジアミン、アミン硬化剤、液体
【0165】
製品名:Aradur(登録商標) 917(Huntsman Cooperation)
テトラヒドロ-4-メチルフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロ-3-メチルフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物およびヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物からなる無水物液体硬化剤
(25℃での粘度=50~100mPa.s)
【0166】
製品名:Araldite(登録商標) LY 1556 SP(Huntsman Cooperation)
配合ビスフェノールAベースのエポキシ樹脂
(エポキシ含有量=5.30~5.45eq/kg)(25℃での粘度=10~12Pa.s)
【0167】
製品名:1-メチルミダゾール(Carl Roth GmbH & Co KG)
促進剤、液体(沸点195~197℃)
【0168】
製品名:2-エチル-4-メチルイミダゾール(Alfa Aesar)
促進剤、固体物質(融点45℃)
【0169】
混合物の調製
実施例において記載される配合物の調査のために、それぞれの配合物の個々の成分を、均質が達成されるまで乳鉢中で数分間混合する。表1から7中にリストされている配合物を、この目的のために10gのエポキシ樹脂に変換した。
【0170】
組成を特徴付けるために使用する方法
DSC調査
DSC測定は、動的熱流示差熱量計DSC1またはDSC3(Mettler Toledo)上で実施する。
【0171】
a)Tgの決定:
最大ガラス転移温度(最終Tg)の決定のために、硬化した配合物のサンプルを、以下のDSC温度プログラムに供する:20K/分で30~200℃に加熱、200℃で10分間保持、20K/分で200~50℃に冷却、50℃で5分間保持、20K/分で50~200℃に加熱、200℃で10分間保持、20K/分で200~50℃に冷却、50℃で5分間保持、20K/分で50~220℃に加熱。ガラス転移温度は、それぞれの場合において最後の2回の加熱サイクルから、熱容量における最大変化(ΔCp)の変曲点に接線を適用することによって決定し、平均値を、最終TGとして示す。
【0172】
b)等温DSC:
配合物のサンプルを、指定された時間、指定された温度で常に保持する(配合物の等温硬化)。評価は、発熱反応ピークの90%変換(硬化プロセスの終了の尺度としての)の時間を決定することによって実施する。
【0173】
c)潜伏時間
潜伏時間(貯蔵安定性)を決定するために、約10gのそれぞれの配合物を、新たに調製し、次いで40℃または60℃の温度で加熱キャビネット中で貯蔵する。動的粘度を定期的に測定することによって、これらの貯蔵条件下での配合物の漸進的な架橋(硬化)を記録する。動的粘度は、Haake粘度計[コーン(1°)プレート法、25℃での測定、せん断速度5.0s-1]を使用して決定する。配合物は、粘度が2倍になるまで貯蔵安定性がある(まだ処理に適している)として分類される。
【0174】
結果のリスト
【0175】
【表1】
【0176】
表1からの結果の説明および評価
本発明による実施例AからGの、市販のエポキシ樹脂中に技術的に一般的な硬化剤および硬化促進剤を含む参考例1との比較は、本発明によるボロン酸を使用するときに、硬化プロセスについての同等の特性値を決定することができることを示す。これは、最終Tgの決定および硬化の90%変換を決定するための140℃での等温DSCの記録を含む、DSC分析から得られた値から決定することができる。さらに、潜伏時間測定を介して、本発明のボロン酸を添加することによって(実施例AからG)、40℃での潜伏時間を参考例1と比較して3から10倍延長することができることを示すことができる。
【0177】
すなわち、配合物参考例1および配合物AからGの比較は、本発明によるボロン酸によって、エポキシ樹脂ベースのプリプレグ、トウプレグおよび接着剤が、変わらない硬化特性を有し、40℃で最大4週間超の延長された潜伏時間を有し得ることを示す。プリプレグ、トウプレグおよび接着剤の当業者、製造会社およびユーザーにとって、これは、これらの製品のより容易な取り扱い、およびそれらを冷却することなしに貯蔵し、輸送しおよび処理することができることを意味する。同様に、プリプレグ、トウプレグおよび接着剤の貯蔵安定性が増加するので、本発明のボロン酸による、上記の配合物AからHを有する製品は、最大10倍長い安定性を有する。すなわち、より容易でかつより安全な適用に加えて、コストも低下させることができる。より長い安定性はまた、より少ない不合格品を、すなわちより少ない無駄を意味する。これは、炭素繊維などの高価な原材料の消費を低下させ、それによってまた環境を保護するはずである。
【0178】
【表2】
【0179】
表2aからの結果の説明および評価
表2a中の本発明による配合物H、I、およびJに基づいて、本発明によるボロン酸の量を変化させることにより、1成分エポキシ樹脂配合物の貯蔵安定性を調整することができることが、参考例2と比較して示される。すなわち、DSC分析からの値は、硬化時間(140℃での90%変換)および硬化した配合物の最終特性(最終Tg)が有意な干渉を何ら示さないことを示す。潜伏時間は、配合物H、I、およびJについては、参考例2と比較して少なくとも3倍さらに高い。すなわち、所望の特性プロファイル、まず第一に潜伏時間すなわち貯蔵安定性に依存して、正確にエポキシ樹脂配合物を製造することができる。貯蔵安定性、過剰在庫による不合格品の減少、環境に優しい作用およびより安全でかつより容易な適用などの利点は、依然として保持される。
【0180】
【表3】
【0181】
表2bからの結果の説明および評価
表2bは、ウロン促進剤の増加した量でさえ、配合物KからRの本発明のボロン酸がまた、参考例2と比較してそれらの利点を示すことを示す。より速い硬化システムについて、140℃での90%での変換を決定する等温DSC分析からわかるように、より速い硬化時間を実現することができる。この場合においては、硬化時間は、ほぼ同じ範囲中にとどまるが、一方で、潜伏時間は、再び少なくとも3倍から10倍超増加する。最終的な特性は、配合物に適応し、参考例2と比較して常に同じ望ましい範囲中にとどまる。
【0182】
すなわち、潜伏時間における増加は、促進剤の量が変化したときでさえその効果を維持し、貯蔵安定性、過剰在庫による不合格品の減少、環境に優しい作用およびより安全でかつより容易な適用などの利点を支持し続けることが示される。
【0183】
【表4】
【0184】
表3からの結果の説明および評価
さらに、本発明のボロン酸の効果は、使用されるウロン促進剤とは独立していることを、表3において示す。参考例1の配合物Aとの、および参考例3の配合物Sとの、参考例4の配合物Tとのおよび参考例5の配合物Uとの直接比較において、40℃および60℃での貯蔵安定性が、再びそれぞれのボロン酸で3倍超、有意に延長されることが示される。反応性(140℃での90%変換までの時間)および最終Tgは、わずかに影響を受けるだけである。すなわち、異なる促進剤タイプ、ウロンに基づく単並びに多官能性の、脂肪族、脂環式並びに芳香族促進剤タイプを有する配合物を、本発明によるボロン酸と組み合わせて使用することができる。ユーザーはまた、貯蔵安定性、過剰在庫による不合格品の減少、環境に優しい作用および安全でかつ容易な適用などの、すでに記載した利点の恩恵を受ける。
【0185】
【表5】
【0186】
表4からの結果の説明および評価
さらに、本発明によるボロン酸の効果は、使用される樹脂とは独立していることを、表4において示す。参考例6の配合物Vとの、並びに参考例7の配合物Wとの直接比較において、40℃での貯蔵安定性が、再びそれぞれのボロン酸で3倍超、有意に延長されることが示される。反応性(140℃での90%変換までの時間)および最終Tgは、わずかに影響を受けるだけである。すなわち、異なる樹脂タイプ、二並びに多官能性のエポキシベースの樹脂を有する配合物を、本発明によるボロン酸と組み合わせて使用することができる。さらに、ユーザーはまた、貯蔵安定性、過剰在庫による不合格品の減少、環境に優しい作用および安全でかつ容易な適用などの、すでに記載した利点の恩恵を受ける。
【0187】
【表6】
【0188】
表5からの結果の説明および評価
表5は、アミンベースの硬化剤を有する配合物を本発明による配合物KおよびIと比較する。該表は、VESTAMIN(登録商標) IPD、化学物質イソホロンジアミンなどのアミンベースの硬化剤が、ボロン酸と組み合わせて潜伏時間の増加を何ら達成しないことを示す。対応する配合物X、YおよびZはそれぞれ、23℃で潜伏時間における増加を何ら示さない。比較のために取られた配合物参考例2、KおよびIのみが、尿素とともにボロン酸を使用することによる潜伏時間の増加のすでに論じた効果を示す。すなわち、本発明のボロン酸は、アミン機能に何ら固有の効果を有しないと結論付けられる。潜伏時間の増加は何ら検出されず、配合物の潜伏時間は、同一のままである。
【0189】
【表7】
【0190】
表6からの結果の説明および評価
表6は、尿素促進配合物のイミダゾール促進配合物との比較、特に各配合物へのボロン酸の効果を示す。その中で、促進剤である1-メチルイミダゾール、配合物AD~AF、および2-エチル-4-メチルイミダゾール、配合物AG~AIを、尿素ベースのものと比較している。全てのイミダゾールベースの配合物について、本発明のボロン酸の添加による潜伏時間の増加は何ら検出されない。配合物AD~AFおよびAG~AIの潜伏時間は、同一の時間範囲中にあるため、配合物KおよびIにおけるのと同じ潜伏時間効果は起こらない。
【0191】
比較のために取られた配合物参考例2、KおよびIのみが、尿素とともにボロン酸を使用することによる潜伏時間の増加のすでに論じた効果を示す。すなわち、本発明によるボロン酸は、イミダゾールに何ら効果を有しないと結論付けられる。潜伏時間の増加は何ら検出されず、配合物の潜伏時間は、同一のままである。
【0192】
【表8】
【0193】
表7からの結果の説明および評価
表7は、無水物硬化剤ベースの配合物の潜伏時間を増加させる試みを示す。その中で、1-メチルイミダゾールが、促進剤として選択される。表7からわかるように、ボロン酸が加えられた配合物AFは、AEに対して潜伏時間における増加を何ら示さない。ボロン酸は、無水物ベースの配合物においては何らの効果も達成しない。本発明によるボロン酸は、尿素促進配合物Iにおいてのみ潜伏時間を増加させ、潜伏時間は、5倍増加する。
すなわち、本発明のボロン酸は、尿素ベースの配合物における潜伏時間の増加を提供し、それにより、対応する配合物の増加した貯蔵安定性などの重要な利点を提供する。
【国際調査報告】