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▶ ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティの特許一覧

<図1>
  • 特表-植込み型構造体及びその使用 図1
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  • 特表-植込み型構造体及びその使用 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】植込み型構造体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20221006BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20221006BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20221006BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20221006BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 9/64 20060101ALI20221006BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221006BHJP
   C07K 14/77 20060101ALI20221006BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20221006BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/21
A61K47/42
A61K47/36
A61K35/12
A61K35/30
A61K48/00
A61P35/00
A61K45/00 101
A61P35/04
A61K9/64
C07K2/00 ZNA
C12N15/11 Z
C07K14/77
C07K14/52
C12N5/10
C12N5/071
C12N1/00 L
C12N1/00 N
C12N15/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507583
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 US2020045471
(87)【国際公開番号】W WO2021026484
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/884,397
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/012,693
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイセ オミッド
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】ジャービス-ルオッコ マリア イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ムカルジー スディプ
(72)【発明者】
【氏名】ドエルフェルト マイケル デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】アグララ-フォトバット サミラ
(72)【発明者】
【氏名】チャン デイビッド ユー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA05
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA53
4C076AA94
4C076EE30
4C076EE30H
4C076EE31
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE41
4C076EE41H
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA13
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084BA44
4C084DA01
4C084DA12
4C084DA13
4C084DA14
4C084DA16
4C084DA17
4C084DA18
4C084DA22
4C084DA23
4C084DA24
4C084DA25
4C084MA67
4C084NA10
4C084NA12
4C084ZB072
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC022
4C084ZC751
4C087AA02
4C087BB65
4C087MA02
4C087MA05
4C087MA67
4C087NA10
4C087NA12
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA02
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗原性治療試薬を、宿主免疫応答から保護しながら対象に送達するように設計された、植込み型構造体に関する。ある特定の態様において、構造体は、経時的にまたは特定のシグナルで分解するように設計されており、それにより、治療剤が対象に送達される時間の長さを制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込み型構造体であって、
ゾーン(例えば、抗原性物質を含む内側ゾーン(IZ))と、
任意選択で、外側ゾーン(例えば、外側侵食性/分解性ゾーン(OZ))と
を含み、
前記OZが、存在する場合、植込みの初期段階または遮蔽段階の間は宿主免疫エフェクター分子または細胞と前記抗原性物質との接触を妨げるが植込みの後続段階または非遮蔽段階では宿主免疫エフェクター分子または細胞と前記抗原性物質との接触を可能にするように構成されている、
前記植込み型構造体。
【請求項2】
OZ(例えば、侵食性/分解性OZ)及びIZを共に含む、請求項1に記載の植込み型構造体。
【請求項3】
前記植込み型構造体がOZも侵食性-分解性OZも含まない、請求項1に記載の植込み型構造体。
【請求項4】
前記抗原性物質が、前記OZが分解するに伴って経時的に前記OZに進入する、請求項1~3のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項5】
前記OZ中の抗原性物質の濃度が前記IZ中の抗原性物質の濃度よりも低く、例えば、前記OZが前記抗原性物質を実質的に含まない、請求項1~4のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項6】
前記OZが分解性の実体を含む、請求項1~5のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項7】
前記遮蔽段階が、1時間、12時間、1日、2日、3日、6日、12日、0.5日~30日、1日~14日、または1日~7日以下にわたり持続する、請求項1~6のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項8】
前記OZの厚さが前記遮蔽段階の長さ/持続時間に相関する、請求項1~7のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項9】
前記OZの厚さが前記遮蔽段階の過程で減少する、請求項1~8のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項10】
前記OZの厚さが、前記OZの成分の架橋度に相関する、請求項1~9のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項11】
前記OZの侵食により、宿主免疫エフェクター細胞または分子と前記抗原性物質との接触が可能になる、請求項1~10のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項12】
前記OZが、酵素切断部位(例えば、タンパク質分解部位)を含む分解性の実体を含む、請求項5~11のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項13】
前記分解性の実体がポリマー(例えば、合成ポリマーまたは天然ポリマー、例えば、ペプチドまたは多糖類)である、請求項12のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項14】
前記分解性の実体が、内在性の宿主成分の基質、例えば分解酵素、例えばリモデリング酵素、例えばコラゲナーゼである、請求項5~13のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項15】
前記分解性の実体が、ポリマーに埋め込まれた切断性リンカーまたは切断性セグメントを含む、請求項5~14のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項16】
前記分解性の実体がポリマーの成分を含む、請求項5~15のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項17】
前記分解性の実体がペプチド結合を含み、例えば、前記分解性の実体がペプチド鎖、例えばポリペプチドを含む、請求項5~16のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項18】
前記分解性の実体が、プロテアーゼの切断部位を含む、請求項5~17のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項19】
前記分解性の実体が核酸を含む、例えば、前記分解性の実体が、DNA、RNA、またはオリゴヌクレオチドを含む、請求項5~18のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項20】
前記分解性の実体がヌクレアーゼの切断部位を含む、請求項5~18のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項21】
前記分解性の実体が糖類を含む、例えば、前記分解性の実体がオリゴ糖を含む、請求項5~20のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項22】
前記分解性の実体がグリコシダーゼの切断部位を含む、請求項5~21のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項23】
前記分解性の実体がコラゲナーゼまたはメタロプロテアーゼの切断部位を含む、請求項5~22のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項24】
前記分解性の実体が内在性の宿主成分によって切断される、請求項5~23に記載の植込み型構造体。
【請求項25】
前記分解性の実体がマトリックス成分、例えばポリマーと会合している、請求項5~24のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項26】
前記分解性の実体がマトリックス成分(例えば、ポリマー)に結合(例えば、共有結合)している、請求項5~25のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項27】
前記分解性の実体が切断されると前記OZの完全性が損なわれる、請求項5~26のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項28】
前記OZの厚さの減少が、分解性の実体の修飾(例えば、切断)によって媒介される、請求項5~27のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項29】
前記OZの成分の架橋度の減少が、分解性の実体の修飾(例えば、切断)によって媒介される、請求項5~28のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項30】
前記分解性の実体が、外因的に適用される治療、例えば、外因性物質の投与、エネルギー(例えば、熱または光)の適用による治療によって調節され、例えば、維持化合物の調節が温度または光によって媒介される、請求項5~29のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項31】
前記抗原性物質が、前記IZ内に配置された細胞の成分(例えば、前記細胞の内在性成分、前記細胞の外因性成分)である、請求項1~30のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項32】
前記抗原性物質が、前記IZに配置された細胞の内在性成分である、請求項1~31のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項33】
前記抗原性物質が、前記IZに配置された細胞の外因性成分であり、例えば、前記細胞が、前記抗原性物質を発現するように遺伝子操作されている、請求項1~32のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項34】
前記外因性成分がオボアルブミンを含む、請求項32~33のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項35】
送達可能な物質(例えば、治療剤)の供給源を含む、請求項1~34のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項36】
前記治療剤が宿主免疫系のモジュレーターである、請求項35に記載の植込み型構造体。
【請求項37】
前記治療剤が前記宿主免疫系を活性化する、請求項35~36のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項38】
前記治療剤がサイトカインを含む、請求項35~37のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項39】
前記治療剤が、IL-1、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-12a、IL-12b、IL-13、IL-14、IL-16、IL-17、G-CSF、GM-CSF、IL-20、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、CD154、LT-β、CD70、CD153、CD178、TRAIL、TNF-α、TNF-β、SCF、M-CSF、MSP、4-1BBL、LIF、及びOSMから選択されるサイトカインを含む、請求項38に記載の植込み型構造体。
【請求項40】
前記サイトカインが、IL-2、IL-4、IL-7、IL-10、IL-12a、IL-12b、及びIL-17から選択される、請求項39に記載の植込み型構造体。
【請求項41】
前記サイトカインがIL-2を含む、請求項39~40のいずれか1項に記載の植込み型構造体。
【請求項42】
前記サイトカインの配列が表1に記載されている、請求項38のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項43】
前記治療剤が修飾物、例えばオリゴ糖を含む、請求項35~40のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項44】
細胞、例えば、前記IZ内に配置された細胞を含む、請求項1~43のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項45】
前記治療剤、例えばサイトカインを放出する前記IZ内に配置された細胞を含む、請求項2に記載の植込み型構造体。
【請求項46】
前記植込み型構造体が、前記治療剤、例えばサイトカインを放出する細胞を含む、請求項1~45のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項47】
前記細胞が前記治療剤、例えばサイトカインを放出するように遺伝子操作されている、請求項44~46のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項48】
前記細胞が、その免疫原性を高めるように遺伝子操作されている、請求項44~47のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項49】
前記細胞が、前記治療剤、例えばサイトカインをコードする配列を含む、請求項44~48のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項50】
前記植込み型構造体が前記治療剤を持続的に放出する、請求項35~49のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項51】
前記植込み型構造体が、前記治療剤を実質的に非パルス状に放出する、請求項35~49のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項52】
前記植込み型構造体が、少なくとも1日間(例えば、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、12日、14日、16日、18日、または20日よりも長く)前記治療剤を放出する、請求項35~51のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項53】
前記植込み型構造体が、少なくとも5日間(例えば、6日、7日、8日、9日、10日、12日、14日、16日、18日、または20日よりも長く)前記治療剤を放出する、請求項35~51のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項54】
対象に導入されると、前記植込み型構造体が、有効濃度の前記治療剤(例えば、治療有効濃度の前記治療剤)を放出する、請求項35~53のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項55】
対象に導入されると、前記植込み型構造体の導入部位から少なくとも約1cm、5cm、10cm、50cm、100cm、または200cmにある場所が有効濃度の前記治療剤(例えば、治療有効濃度の前記治療剤)を受け取る、請求項35~54のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項56】
対象に導入されると、導入部位から約1cm、5cm、10cm、50cm、100cm、または200cm以内の場所で前記植込み型構造体によって提供される前記治療剤の濃度が、約250cm、300cm、500cm、750cmを上回るまたはそれよりも離れた場所にある前記治療剤の濃度の約2倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、50倍、75倍、100倍、またはそれ以上である、請求項35~55のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項57】
対象の腹腔内(IP)空間に導入されると、前記IP空間で前記植込み型構造体によって提供される前記治療剤の濃度が、血液(例えば、血漿)中の前記治療剤の濃度の約2倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、50倍、75倍、100倍、またはそれ以上である、請求項35~56のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項58】
前記IP空間での前記治療剤の濃度が、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、12日、15日、またはそれ以上の間、血液(例えば、血漿)中の前記治療剤の濃度よりも少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、50倍、75倍、または100倍高いままである、請求項57に記載の植込み型構造体。
【請求項59】
前記植込み型構造体が、前記治療剤の放出速度が実質的に一定である第1の放出段階を提供する、請求項35~58のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項60】
前記植込み型構造体が、前記治療剤の放出レベルが実質的に低下している第2の放出段階を提供する、請求項59に記載の植込み型構造体。
【請求項61】
前記第1の放出段階が初期段階内にある、請求項59に記載の植込み型構造体。
【請求項62】
前記第2の放出段階が前記遮蔽段階内にある、請求項60に記載の植込み型構造体。
【請求項63】
前記第1の放出段階の持続時間が少なくとも1時間~30日である、請求項59~62のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項64】
前記第2の放出段階の持続時間が少なくとも1時間~30日である、請求項59~63のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項65】
前記植込み型構造体が、送達可能な物質、例えばサイトカイン、例えばIL-2を、がんに対する免疫エフェクター細胞媒介攻撃を促進するのに十分であるが(例えば、がんの)Tregレベルを促進するには十分でないレベルで放出するように構成されている、請求項1~64のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項66】
前記がんが、腹膜近位組織のがん(例えば、卵巣癌、膵臓癌、または結腸直腸癌)を含む、請求項65に記載の植込み型構造体。
【請求項67】
ポリマーヒドロゲルをさらに含む、請求項1~66のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項68】
前記OZがポリマーヒドロゲルを含む、請求項1~67のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項69】
前記IZゾーンがポリマーヒドロゲルを含む、請求項1~68のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項70】
前記IZ及び前記OZが同じポリマーヒドロゲルを含む、請求項69に記載の植込み型構造体。
【請求項71】
前記IZが第1のポリマーヒドロゲルを含み、前記OZが第2のポリマーヒドロゲルを含む、請求項69~70のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項72】
前記OZがポリマーヒドロゲル及び分解性の実体を含む、請求項1~71のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項73】
前記ポリマーヒドロゲルが、キトサン、セルロース、ヒアルロン酸、またはアルギン酸塩を含む、請求項67~72のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項74】
植込み型デバイスが、ポリマーヒドロゲルの少なくとも2つの層、例えば外側層、例えば宿主に接触する層を含む、請求項67~73のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項75】
前記植込み型デバイスが、(i)抗原性物質が中に配置されているマトリックスを含む内側層(例えば、内側ポリマーヒドロゲル層)と、(ii)前記IZの周囲の層として構成された前記OZとを含む、請求項74に記載の植込み型構造体。
【請求項76】
前記OZが、前記内側層と外因性ポリペプチドベース免疫エフェクターとの間の接触を妨げる、請求項1~75のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項77】
前記対象に前記植込み型構造体を植込んだ後に、前記OZが分解されて、前記IZ内の細胞が不活性化される(例えば、送達可能な物質の送達が減少する)ようにポリペプチドベース免疫エフェクターと前記IZゾーンとの十分な接触を可能にする、請求項1~76のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項78】
前記対象での植込み後、前記植込み型構造体が、
(i)シェル層がポリペプチドベース免疫エフェクターのコア層への侵入を妨害する、第1の(免疫保護)モードと、
(ii)シェル層がポリペプチドベース免疫エフェクターのコア層への侵入を可能にする、第2の(非免疫保護)モードと
を示し、
遮蔽段階と非遮蔽段階との間の切替えが
a)前記対象の内在性環境に所定の持続時間曝露された後に生じるように、または
b)トリガーとなる実体もしくは刺激(活性化可能な分解)に曝露されることによって開始されるように、
前記デバイスが構成されている、
請求項1~77のいずれかに記載の植込み型構造体。
【請求項79】
前記植込み型構造体が、1つのタイプの送達可能な物質(例えば、IL-2)を産生する細胞を含む、請求項1~78のいずれか1項に記載の植込み型構造体。
【請求項80】
前記植込み型構造体が、複数の送達可能な物質(例えば、複数のサイトカイン、例えば、IL-2及びIL-7)を産生する細胞を含む、請求項1~79のいずれか1項に記載の植込み型構造体。
【請求項81】
前記植込み型構造体が、異なるタイプの送達可能な物質(例えば、2つの異なるサイトカイン、例えば、IL-2及びIL-7)を各々独立的に産生する第1の細胞及び第2の細胞を含む、請求項1~80のいずれか1項に記載の植込み型構造体。
【請求項82】
前記第1の細胞がIL-2を産生し、前記第2の細胞がIL-7を産生する、請求項81に記載の植込み型構造体。
【請求項83】
前記植込み型構造体が、追加の治療剤(例えば、抗がん剤または免疫調節剤)をさらに含む、請求項35~44及び46~82のいずれか1項に記載の植込み型構造体。
【請求項84】
前記追加の治療剤が化学療法剤(例えば、ゲムシタビン)である、請求項83に記載の植込み型構造体。
【請求項85】
前記追加の治療剤が免疫調節剤である、請求項83に記載の植込み型構造体。
【請求項86】
植込み型構造体であって、
アルギン酸塩を含む外側侵食性/分解性ゾーン(OZ)と、
IL-2を発現する細胞を含む内側ゾーン(IZ)と
を含み、
前記OZが、植込みの初期段階または遮蔽段階の間は細胞の接触を妨げるが植込みの後続段階または非遮蔽段階では細胞の接触を可能にするように構成されている、
前記植込み型構造体。
【請求項87】
植込み型構造体であって、
アルギン酸塩を含む外側侵食性/分解性ゾーン(OZ)と、
IL-7を発現する細胞を含む内側ゾーン(IZ)と
を含み、
前記OZが、植込みの初期段階または遮蔽段階の間は細胞の接触を妨げるが植込みの後続段階または非遮蔽段階では細胞の接触を可能にするように構成されている、
前記植込み型構造体。
【請求項88】
前記アルギン酸塩が修飾されている(例えば、化学的に修飾されている)、請求項86~87のいずれか1項に記載の植込み型構造体。
【請求項89】
前記アルギン酸塩が修飾されていない、請求項86~88のいずれか1項に記載の植込み型構造体。
【請求項90】
植込み型構造体の調製物であって、前記植込み型構造体が各々、
外側侵食性/分解性ゾーン(OZ)と、
抗原性物質を含む内側ゾーン(IZ)と
を含み、
前記EZが、植込みの初期段階または遮蔽段階の間は宿主免疫エフェクター分子または細胞と前記抗原性物質との接触を妨げるが植込みの後続段階または非遮蔽段階では宿主免疫エフェクター分子または細胞と前記抗原性物質との接触を可能にするように構成されている、
前記植込み型構造体の調製物。
【請求項91】
前記植込み型構造体が、請求項1~89のいずれかに記載の植込み型構造体を含む、請求項81に記載の植込み型構造体の調製物。
【請求項92】
前記調製物が医薬的に許容される調製物である、請求項81に記載の植込み型構造体の調製物。
【請求項93】
対象に植込み型構造体を提供する方法であって、
前記対象に、
外側侵食性/分解性ゾーン(OZ)と、
抗原性物質を含む内側ゾーン(IZ)と
を含む植込み型構造体を植込むことまたは提供すること
を含み、
前記EZが、植込みの初期段階または遮蔽段階の間は宿主免疫エフェクター分子または細胞と前記抗原性物質との接触を妨げるが植込みの後続段階または非遮蔽段階では宿主免疫エフェクター分子または細胞と前記抗原性物質との接触を可能にするように構成されている、
前記方法。
【請求項94】
前記植込み型構造体が、請求項1~89のいずれかに記載の植込み型構造体を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記対象に前記植込み型構造体の調製物を植込むことまたは提供することを含む、請求項93~94のいずれかに記載の方法。
【請求項96】
前記対象が、望ましくない細胞増殖を含む障害(例えば、がん)の治療を受けている、請求項93~95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
がん組織が腹膜に位置する、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記がん組織が腹膜の外側に位置する、請求項96~97のいずれかに記載の方法。
【請求項99】
前記がん組織が転移性である、請求項96~98のいずれかに記載の方法。
【請求項100】
選択された持続時間の遮蔽段階を付与する外側ゾーンを有する植込み型構造体を選択することを含む、請求項93~99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
対象の腹腔近位組織のがんを治療する方法であって、
前記対象の腹腔内空間に、サイトカインを放出する請求項1~80のいずれかに記載の植込み型構造体を導入すること
を含み、
前記サイトカインを放出する植込み型デバイスが、がんに対する免疫エフェクター細胞媒介攻撃を促進するのに十分であるががんのTregレベルを促進するには十分でないレベルで、前記サイトカインを放出するように構成されており、
それにより、腹膜近位組織のがんを治療する、
前記方法。
【請求項102】
前記植込み型構造体が、請求項1~89のいずれかに記載の植込み型構造体を含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記対象に、前記植込み型構造体の調製物を植込むことまたは提供することを含む、請求項101~102のいずれかに記載の方法。
【請求項104】
対象の免疫系を、前記対象のがんを治療または予防するようにプログラミングする方法であって、前記対象の腹腔内空間に、サイトカインを放出する請求項1~89のいずれかに記載の植込み型構造体を導入することを含む、前記方法。
【請求項105】
請求項1~89のいずれかに記載の植込み型構造体を作製または製造する方法であって、
外側ゾーンの成分を内側ゾーンの成分に接触させること
を含み、
それにより、前記植込み型構造体を作製または製造する、
前記方法。
【請求項106】
請求項1~89のいずれかに記載の植込み型構造体を作製または製造する方法であって、
植込み型構造体候補を準備することと、
植込み型構造体のパラメーター(例えば、直径、細胞生存率、送達可能な物質の放出、侵食に対する耐性、遮蔽段階の選択された特性(例えば、持続時間)の所持)の値を、例えば試験により、決定することと
を含み、
それにより、植込み型構造体を作製または製造する、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2019年8月8日及び2020年4月20日にそれぞれ出願された米国仮出願第62/884,397号及び第63/012,693号の利益または優先権を主張し、各出願の全内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府の資金提供による研究に関する記載
本発明は、国立衛生研究所の認可を受けた助成金番号R01DK120459の下、政府支援によって行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
I.分野
本開示は、生物学、医学、生物工学、及び医療デバイスの分野に関する。より詳細には、本開示は、抗原性治療試薬を対象に投与するようにおよび宿主により生じる免疫応答からそれらを保護するように設計された、植込み型構造体の開発及び使用に関する。詳細には、当該構造体は、経時的にまたは特定のシグナルに応じて分解するように設計されており、それによって、治療剤が対象に送達される時間の長さが制御される。
【背景技術】
【0004】
II.関連技術
生物医学研究の進歩により、がんなどの疾患を治療するための局在化及び標的化された治療法がもたらされた。しかし、多くの場合、これらのアプローチに応答性の患者のパーセンテージはわずかにとどまる(Park et al,Sci.Transl.Med.10(433)2018(非特許文献1))。
【0005】
1つのアプローチは、治療剤を送達するための植込み型デバイスの使用を伴う。デバイスベースの治療法を成功させる上での根本的な障壁は、生体適合性の移植デバイスが欠如していることである。移植された生体材料により、炎症事象及び創傷治癒プロセスのカスケードである異物応答(FBR)がもたらされ、これが線維化(壁の形成)と、続いて移植不全につながる。この応答は、天然ポリマーから合成材料に至るまで、多くの材料において説明されている。したがって、生体材料グラフトに伴うFBRを解消するというこの重要な課題を克服する生体材料を開発することが医学的に極めて必要とされている。加えて、一定期間後に治療法を制御(すなわち、下方調節または停止)することも必要とされている。現時点では、FBR及び治療剤の送達制御という2つの目標を達成するための技法が欠如している。
【0006】
したがって、治療剤の送達、分配、及び/または有効性を強化するための新たな組成物及び方法の同定が必要とされている。
【0007】
本発明の開発に当たり、助成金番号RR160047の下、Cancer Prevention and Research Institute of Texasにより資金の一部が提供された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Park et al,Sci.Transl.Med.10(433)2018
【発明の概要】
【0009】
本開示は少なくとも部分的には、対象の疾患を治療するのに有用な抗原性物質及び/または治療剤を含む植込み型構造体を、例えば、抗原性物質または治療剤の送達及び/または効力を強化することにより、提供するものである。植込み型構造体は、抗原性物質及び/または治療剤が宿主エフェクター分子に接触するのを防いでそれにより一方または両方を宿主の免疫応答から遮蔽するための、ゾーン(例えば、層)を含む。
【0010】
理論に束縛されるものではないが、本明細書に開示する植込み型構造体は、対象における治療剤の有効性を改善することができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は、(i)植込み型構造体からの治療剤の制御された持続放出を提供すること、(ii)治療剤の局所的送達を可能にして全身的結果をもたらすこと、ならびに(iii)第1の宿主細胞(例えば、宿主エフェクターT細胞または宿主NK細胞)の活性化及び/またはプログラミングを、第2の宿主細胞(例えば、宿主のT調節細胞)の活性化またはその拡張の誘導を伴わずに調節すること、のうちの1つ以上をもたらす。
【0011】
本明細書に記載のある特定の実施形態は、障害の治療または予防のための方法を提供する。1つの実施形態において、障害は、がんなどの増殖性障害である。これらの実施形態は、対象に、本明細書に記載の植込み型構造体(例えば、抗原及び/または治療剤を含む構造体)を疾患の治療のために投与することを含む。本明細書に開示する方法は、治療剤を標的部位(例えば、腹腔内空間)に持続的に放出する一方で、他の非標的部位では効果が最小限であるかまたは全くないため、全身送達の必要性を回避することができる。
【0012】
「a」または「an」という語の使用は、請求項及び/または明細書で「含む(comprising)」という用語と共に使用される際には「1つ(one)」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つまたは2つ以上」という意味とも一致する。「約(about)」は、示された数字のプラスマイナス5%を意味する。
【0013】
本明細書に記載の任意の方法または組成物は、本明細書に記載の任意の他の方法または組成物に対し実施され得るように企図されている。本開示の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。ただし、本開示の趣旨及び範囲内の様々な変更及び改変は、当業者にとってはこの発明を実施するための形態から明らかとなるため、詳細な説明及び特定の例は、本開示の特定の実施形態を示しながら例示として与えられるものに過ぎないということが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の図面は、本明細書の一部を形成するものであり、本開示のある特定の態様をさらに示すために含まれている。本開示は、これらの図面のうちの1つ以上を、本明細書で提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、より十分に理解することができる。
【0015】
図1】A~Cは、緑色蛍光タンパク質(GFP)を単独でまたはサイトカインIL-2と組み合わせて発現するように形質移入した網膜色素上皮(RPE)細胞を含む、例示的な植込まれたカプセルを示す画像である。A及びBは、マウスモデルに植込む直前の埋込みカプセルを示しており、GFPのみを発現するRPE細胞(A)またはGFP及びIL-2を発現するRPE細胞(B)を含む。Cは、植込みから24日後にマウスモデルから取り出した際のGFP及びIL-2の両方を発現する植込まれたカプセルを示している。細胞は死細胞(死)と比較して生細胞(生)を示す画像であり、2つの画像はマージされている(マージ)。
図2】in vitroでカプセル封入(encapsulated)RPE細胞から分泌されたIL-2が、T細胞の増殖及びCD25活性化の両方をもたらすことを示すグラフである。
図3】A~Bは、健康なマウスモデルに植込まれてから24日後に、植込まれたカプセルから分泌される腹腔内(IP)液中または血液中のIL-2濃度(pg/mL)をマウスモデルで測定したものを示している。
図4】IL-2を発現するRPE細胞を含む例示的なカプセルをマウス黒色腫腫瘍モデルに移植したときの腫瘍サイズ縮小を示すグラフである。
図5】対照(橙色のバー)またはIL-2発現(青色のバー)カプセル封入細胞を植込んだマウス腫瘍モデルのIP液または腫瘍組織のいずれかにおいて、フローサイトメトリーにより測定した活性化T細胞(CD45+、CD3+、NK1.1、及びCD25+)の増加パーセントを示すグラフである。
図6】健康なマウスにおける時間経過試験である。このグラフは、IP液中のIL-2濃度の変化を経時的に示している。グラフに示されるように、2週間の間はIL-2の濃度が上昇し、続く2週間~4週間の時点ではIL-2の濃度が急速に低下している。
図7A】A~Bは、腫瘍マウスのコホートにIL-2を発現するカプセル封入RPE細胞、カプセル封入RPE細胞のみ(IL-2発現なし)のいずれかを注入した場合、及び未処置マウスの場合の実験の結果を示している(A)。ホタルルシフェラーゼを発現するように腫瘍細胞を操作し、マウスにルシフェリン基質を注入しているため、発光画像は腫瘍の大きさを反映している。注入直後から少なくとも65日間、毎日画像を取り込んだ。図8Dは、98日まで及んだ試験からの移植マウスの全体的腫瘍成長を示しており、IL-2を発現するカプセル封入RPE細胞(「eRPE」と表示)を植込んだマウスは、試験の過程で腫瘍の成長及び消失を示した。
図7B図7Aの説明を参照されたい。
図8図7A~7Bに示された実験及びデータを集約した生存曲線である。これらのグラフは、マウスの腫瘍サイズが、IL-2を発現するカプセル封入細胞を注入したコホートでのみ減少し、いずれの対照コホートでも変化しなかったことを示している。
図9】A~Dは、例示的な植込み型構造体及びその特性を示している。Aは、厚さが可変の外側層及び内側層を共に含む植込み型構造体の画像を示しており、外側層はFITC-デキストランで修飾されている。各層の平均厚さは、例えば、カプセル封入プロセス中の材料の流量によって制御される。Bは、Aに示した各流量試料群の平均外層厚を示すチャートであり、0.02:0.2、0.05:0.15、0.1:0.1、0.15:0.05、0.2:0.02(p、0.0001)となっている。Cは、コラゲナーゼ(10mg/mL、上段)及び1×PBS(下段)の溶液中での1時間にわたる修飾ヒアルロン酸(NorHA)ゲルブロック(4重量% NorHA、10mMペプチド架橋剤、0.05重量% Irgacure 2959)の分解性を示している。Dは、Cからのデータをプロットしたグラフであり、ペプチド結合したNorHAの分解挙動を示している。アッセイの前にゲルブロックをPBSで一晩膨らませ、重量測定の前に余剰な液体を除去した。
図10】マウスMC38結腸直腸癌モデルにおける例示的な植込み型構造体のサイトカイン分泌及び再発保護を示している。Aは、MC38結腸直腸癌モデルのin vivoワークフローを示す一般的な模式図である。Bは、安楽死させたマウスの腹腔空間から採取した腫瘍の比較である(各群n=4、C57ALB)。Cは、分析用天秤を用いて採取腫瘍の重量を比較し、群ごとに平均値±SEMとしてプロットしたグラフである。Dは、安楽死時の動物の体重を基準に正規化した腫瘍重量を示すグラフである。Eは、皮下再チャレンジ試験の模式図であり、初回注入後35日目に行った再チャレンジを示している。Fは、最初の(n=3、C57ALB)シャム生存コホートが人道的エンドポイントに達してから7日目に行った再チャレンジの結果を示すグラフである。Gは、腹腔生存試験(F)で概説した試験におけるシャムコホート及び対照コホートの腫瘍負荷の視覚的な違いを比較する写真である。Hは、再チャレンジ試験の結果を示すグラフであり、この試験では、腹腔生存試験(F)のC57ALBマウス(n=5)にMC38を皮下投与して再チャレンジした。ナイーブ対照(n=5)にも注入し、両群とも経時的に追跡し、ノギス測定によって腫瘍体積を測定した。
図11】A~Bは、マウスの膵臓癌モデルにおける例示的な植込み型構造体のサイトカインの分泌及び腫瘍サイズの縮小を示している。Aは、マウスモデルの検証結果である。Bは、がんに感染したアルビノマウスの6日後の、植込み型構造体の存在下または非存在下での時間経過画像である。レインボースケールバー:最小1.55e6、最大5e8p/秒/cm
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本開示は、抗原標的(例えば、細胞及び/または治療剤)を制御された放出方法で対象に送達するための植込み型構造体と、関連するその使用方法とを特徴とする。本明細書に記載の植込み型構造体は、抗原標的をカプセル封入するゾーン(例えば、内側ゾーンまたは内側層)を含み、宿主免疫エフェクター細胞が抗原標的に接触するのを防いで、免疫応答を減少させる。1つの実施形態において、ゾーンは分解性であり、カプセル封入された治療産生細胞の場合には免疫系に対する保護を徐々に除去することを可能にし、抗原標的自体が送達を意図されている場合には抗原標的を周囲の組織または細胞に徐々に放出することを可能にする。本明細書に開示する植込み型構造体は、1つのゾーンまたは複数のゾーンを含むことができ、異なる形態(例えば、球体、桿体、管)に製剤化することができ、様々な材料を用いて調製することができる。これらの実施形態の各々について、以下でより詳細に説明する。
【0017】
I.定義
本明細書で使用する場合、「抗原性物質」とは、(例えば、対象の)免疫応答を誘導、活性化、または誘発する物質である。
【0018】
本明細書で使用する場合、「細胞」とは個々の細胞を指す。1つの実施形態において、細胞は一次細胞であるか、または細胞培養物に由来する。1つの実施形態において、細胞は幹細胞であるか、または幹細胞に由来する。細胞は、異種細胞、自己由来細胞、または同種異系細胞であり得る。1つの実施形態において、細胞は、操作されている(例えば、遺伝子操作されている)か、または操作されていない(例えば、遺伝子操作されていない)。
【0019】
本明細書で使用する場合、「分解性」とは、調節(例えば、切断)された際に、植込み型構造体のゾーン(例えば、内側ゾーン及び/または外側ゾーン)が、宿主免疫エフェクターがゾーン(例えば、内側ゾーン及び/または外側ゾーン)あるいはゾーン内に配置された成分に接触するのを妨害する能力を低下させる構造を指す。例えば、分解性の実体は、酵素(例えば、内在性の宿主酵素、または投与される酵素)によって切断可能な部位を含むことができる。典型的には、分解性の実体は、宿主作用物質(例えば、宿主免疫成分(例えば、宿主免疫細胞))の通過を妨げるゾーン(例えば、内側ゾーンまたは外側ゾーン)の物理的特性(例えば、厚さ、架橋度、または透過性)を媒介する。
【0020】
本明細書で使用する場合、「予防」、「予防する」、及び「予防すること」とは、当該疾患または状態の物理的発現を妨げるために、疾患または状態が発症する前に治療剤(例えば、本明細書に記載の治療剤)を含む治療薬(例えば、植込み型構造体(例えば、本明細書に記載のもの))を投与または適用することを含む治療を指す。いくつかの実施形態において、「予防」、「予防する」、及び「予防すること」は、疾患もしくは状態の徴候もしくは症状がまだ発症していないこと、またはまだ観察されていないことを要件とする。いくつかの実施形態では治療は予防を含み、他の実施形態では治療は予防を含まない。
【0021】
本明細書で使用する場合、「対象」とは、本明細書に記載の植込み型構造体のレシピエントを指す。対象には、ヒト及び/または他の非ヒト動物、例えば、哺乳類(例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、商業的に重要な哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、及び/またはイヌ))、ならびに鳥類(例えば、商業的に重要な鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/またはシチメンチョウ))が含まれ得る。ある特定の実施形態において、動物は哺乳類である。動物は、任意の発達段階にある雄または雌(例えば、任意の年齢層の雄または雌、例えば、小児対象(例えば、乳児、子ども、青年)または成体対象(例えば、若年成体、中年成体、または高齢成体))とすることができる。非ヒト動物はトランスジェニック動物であってもよい。
【0022】
本明細書で使用する場合、「治療する」及び「治療すること」とは、例えば、治療薬を投与または適用する(例えば、治療剤(例えば、本明細書に記載の治療剤)を含む植込み型構造体を投与する)ことにより、(例えば、本明細書に記載のように)疾患または状態の症状、発現、または根底にある原因のうちの1つ以上を反転、緩和、発症遅延、または進行抑制することを指す。1つの実施形態において、治療することは、疾患、障害、または状態の症状を低減、反転、緩和、発症遅延、または進行抑制することを含む。1つの実施形態において、治療することは、疾患または状態の発現を低減、反転、緩和、発症遅延、または進行抑制することを含む。1つの実施形態において、治療することは、疾患または状態の根底にある原因を低減、反転、緩和、低減、または発症遅延することを含む。いくつかの実施形態において、「治療」、「治療する」、及び「治療すること」は、疾患または状態の徴候または症状が発生したか、または観察されたことを要件とする。他の実施形態において、治療は、疾患または状態の徴候または症状がない場合に(例えば、予防的治療で)投与することができる。例えば、治療は、症状の発症前に(例えば、症状歴を踏まえて、及び/または遺伝的因子もしくは他の感受性因子を踏まえて)、感受性を有する対象に投与することができる。治療は、症状が解消した後にも、例えば、症状の再発を遅延または予防するために、継続する場合がある。治療は、症状が解消した後にも、例えば、症状の再発を遅延または予防するために、継続する場合がある。いくつかの実施形態では治療は予防を含み、他の実施形態では治療は予防を含まない。
【0023】
A.植込み型構造体
本明細書に記載の植込み型構造体は、内部に配置された抗原性物質または治療剤とのまたはそれに対する反応(例えば、免疫調節反応など)を低減または抑制する材料を含む。例えば、植込み型構造体は、抗原性物質を周囲環境(例えば、宿主組織、宿主細胞、または宿主細胞産物)への曝露から遮蔽するゾーンまたは層を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、例えば、植込み型構造体内に配置されていない類似の抗原性物質と比較して、構造体内に配置された抗原性物質または治療剤に対する宿主応答(例えば、免疫応答)の影響を最小化する。
【0024】
植込み型構造体は、植込み型構造体に出入りする溶液の流れを制御するための透過性、半透過性、または不透過性の材料を含むことができる。例えば、材料は、小分子(例えば、栄養素及び老廃物)の自由な通過を可能にするために透過性または半透過性であり得る。加えて、材料は、植込み型構造体の外への抗原性物質または治療剤の輸送を可能にするために透過性または半透過性であり得る。例示的な材料としては、ポリマー、金属、セラミック、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0025】
1つの実施形態において、植込み型構造体はポリマー(例えば、天然ポリマーまたは合成ポリマー)を含む。例えば、ポリマーは、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロカーボン、ナイロン、ポリアセチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリヒドロキシアルカノエート、PEEK(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、コラーゲン、セルロース、セルロース系ポリマー、多糖類、ポリグリコール酸、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(乳酸グリコール酸)(PLGA)、ポリジオキサノン(PDA)、ポリ(乳酸)、ヒアルロン酸、アガロース、アルギン酸塩、キトサン、またはこれらのブレンドもしくはコポリマーを含むことができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は多糖類(例えば、アルギン酸塩、セルロース、ヒアルロン酸、またはキトサン)を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体はヒアルロン酸を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体はアルギン酸塩を含む。いくつかの実施形態において、ポリマーの平均分子量は、約2kDa~約500kDa(例えば、約2.5kDa~約175kDa、約5kDa~約150kDa、約10kDa~約125kDa、約12.5kDa~約100kDa、約15kDa~約90kDa、約17.5kDa~約80kDa、約20kDa~約70kDa、約22.5kDa~約60kDa、または約25kDa~約50kDa)である。植込み型構造体は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上のポリマー(例えば、本明細書に記載のポリマー)を含むことができる。
【0026】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、多糖類(例えば、ヒアルロン酸またはアルギン酸塩)を含む。アルギン酸は、β-(1-4)-結合したマンヌロン酸及びグルロン酸残基を含む天然ポリマーであり、負に帯電したカルボキシレートが高密度に存在する結果、ある特定のカチオンと架橋して大きな構造体(例えば、ヒドロゲル)を形成することができる。本明細書に記載のアルギン酸塩ポリマーの平均分子量は、約2kDa~約500kDaの平均分子量(例えば、約2.5kDa~約175kDa、約5kDa~約150kDa、約10kDa~約125kDa、約12.5kDa~約100kDa、約15kDa~約90kDa、約17.5kDa~約80kDa、約20kDa~約70kDa、約22.5kDa~約60kDa、または約25kDa~約50kDa)とすることができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上のアルギン酸塩ポリマーを含む。1つの実施形態において、アルギン酸塩は超高純度アルギン酸塩(例えば、SLG20アルギン酸塩)である。
【0027】
1つの実施形態において、植込み型構造体は金属または金属合金を含む。例示的な金属または金属合金としては、チタン(例えば、ニチノール、ニッケルチタン合金、熱記憶合金材料)、白金、白金族合金、ステンレス鋼、タンタル、パラジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ニッケルクロム、コバルト、タンタル、クロムモリブデン合金、ニッケルチタン合金、及びコバルトクロム合金が挙げられる。1つの実施形態において、植込み型構造体はステンレス鋼グレードを含む。植込み型構造体は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上の金属または金属合金(例えば、本明細書に記載の金属または金属合金)を含むことができる。
【0028】
1つの実施形態において、植込み型構造体はセラミックを含む。例示的なセラミックとしては、炭化物、窒化物、シリカ、または酸化物材料(例えば、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イリジウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、及び酸化ジルコニウム)が挙げられる。植込み型構造体は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上のセラミック(例えば、本明細書に記載のセラミック)を含むことができる。
【0029】
1つの実施形態において、植込み型構造体はガラスを含むことができる。植込み型構造体は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上のガラスを含むことができる。
【0030】
植込み型構造体内の材料は、(例えば、化学的修飾物で)さらに修飾することができる。例えば、材料は、特定の機能(例えば、免疫調節機能または抗線維化機能)を提供する化学修飾物でコーティングまたは誘導体化することができる。例示的な化学修飾物としては、小分子、ペプチド、タンパク質、核酸、脂質、またはオリゴ糖が挙げられる。植込み型構造体は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上の(例えば、本明細書に記載の化学修飾物で)化学的に修飾された材料を含むことができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、材料は、ある比密度の修飾物で化学的に修飾されている。化学修飾物の比密度は、所与面積当たりの付着した化学修飾物の平均数として説明することができる。例えば、本明細書に記載の植込み型構造体の中、上、または内部にある材料における化学修飾物の密度は、平方μmまたは平方mm当たり0.01、0.1、0.5、1、5、10、15、20、50、75、100、200、400、500、750、1,000、2,500、または5,000の化学修飾物であり得る。
【0032】
1つの実施形態において、材料の化学修飾物は、リンカーまたは他の付着部分を含むことができる。このようなリンカーとしては、架橋剤、アミン含有リンカー、エステル含有リンカー、感光性リンカー、ペプチド含有リンカー、ジスルフィド含有リンカー、アミド含有リンカー、ホスホリル含有リンカー、またはこれらの組合せを挙げることができる。リンカーは不安定(例えば、加水分解性)であってもよい。例示的なリンカーまたは他の付着部分については、Bioconjugate Techniques(3rd ed,Greg T.Hermanson,Waltham,MA:Elsevier,Inc,2013)(その全体が参照により本明細書に援用される)に概要が示されている。
【0033】
B.細胞
本明細書に記載の植込み型構造体は、細胞(例えば、操作された細胞)を含むことができる。細胞は、哺乳類の任意の器官または組織(脳、神経、神経節、脊椎、眼、心臓、肝臓、腎臓、肺、脾臓、骨、胸腺、リンパ系、皮膚、筋肉、膵臓、胃、腸、血液、卵巣、子宮、または精巣を含む)に由来する。
【0034】
細胞は、ドナーに由来する場合(例えば、同種異系細胞)も、対象に由来する場合(例えば、自己由来細胞)も、別の種に由来する場合(例えば、異種細胞)もある。1つの実施形態において、細胞は、細胞培養で成長させる場合も、確立された細胞培養株から調製する場合も、ドナー(例えば、生体ドナーまたは死体)に由来する場合もある。1つの実施形態において、細胞は遺伝子操作されている。別の実施形態において、細胞は遺伝子操作されていない。細胞は、幹細胞(例えば、再プログラムされた幹細胞)または誘導多能性細胞を含むことができる。例示的な細胞としては、間葉系幹細胞(MSC)、線維芽細胞(例えば、初代線維芽細胞)、HEK細胞(例えば、HEK293T)、Jurkat細胞、HeLa細胞、網膜色素上皮(RPE)細胞、HUVEC細胞、NIH3T3細胞、CHO-K1細胞、COS-1細胞、COS-7細胞、PC-3細胞、HCT116細胞、A549MCF-7細胞、HuH-7細胞、U-2 OS細胞、HepG2細胞、Neuro-2a細胞、及びSF9細胞が挙げられる。1つの実施形態において、植込み型構造体に使用する細胞はRPE細胞である。
【0035】
植込み型構造体に含まれる細胞は、治療剤を産生または分泌することができる。1つの実施形態において、植込み型構造体に含まれる細胞は、1つのタイプの治療剤または複数の治療剤を産生または分泌することができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は、治療剤の発現配列を含む核酸(例えば、ベクター)を形質導入または形質移入した細胞を含むことができる。例えば、細胞にレンチウイルスを形質導入または形質移入することができる。(例えば、形質導入または形質移入によって)細胞に導入された核酸は、プラスミドなどの核酸送達系に組み込む場合もあれば、直接送達する場合もある。1つの実施形態において、(例えば、プラスミドの一部として)細胞に導入された核酸は、治療剤の発現を強化する及び/または標的化もしくは分泌を指示するための領域(例えば、プロモーター配列、アクチベーター配列、または、細胞シグナルペプチド、または、細胞輸送ペプチド)を含むことができる。例示的なプロモーターとしては、EF-1a、CMV、Ubc、hPGK、VMD2、及びCAGが挙げられる。例示的なアクチベーターとしては、TET1触媒ドメイン、P300コア、VPR、rTETR、Cas9(例えば、S.ピオゲネス(pyogenes)または黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来)、及びCpf1(例えば、L.バクテリウム(bacterium)由来)が挙げられる。
【0036】
本明細書に記載の植込み型構造体は、1つの細胞または複数の細胞を含むことができる。複数の細胞の場合、濃度及び総細胞数は、細胞タイプ、植込まれる場所、植込み型構造体の予想寿命などの複数の因子に応じて変化させることができる。1つの実施形態において、植込み型構造体に含まれる細胞の総数は、約2、4、6、8、10、20、30、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、2000、5000、10000、またはそれ以上を上回る。1つの実施形態において、植込み型構造体に含まれる細胞の総数は、約1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×1010、またはそれ以上を上回る。1つの実施形態において、植込み型構造体に含まれる細胞の総数は、約10000、5000、2500、2000、1500、1000、750、500、250、200、100、75、50、40、30、20、10、8、6、4、2、またはそれ以下を下回る。1つの実施形態において、植込み型構造体に含まれる細胞の総数は、約1.0×1010、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、1.0×10、またはそれ以下を下回る。1つの実施形態において、複数の細胞が凝集体として存在する。1つの実施形態において、複数の細胞が細胞分散液として存在する。
【0037】
植込み型構造体内に含まれる細胞の特定の特徴は、例えば、植込み型構造体に組み込む前及び/または後に決定することができる。例えば、細胞生存率、細胞密度、または細胞発現レベルを評価することができる。1つの実施形態において、細胞生存率、細胞密度、及び細胞発現レベルは、標準的技法(例えば、細胞顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、組織学、または生化学的アッセイ)を用いて決定することができる。
【0038】
C.治療剤
本明細書に記載の植込み型構造体は、治療剤(例えば、細胞によって産生または分泌される治療剤)を含むことができる。治療剤は、核酸(例えば、RNA、DNA、またはオリゴヌクレオチド)、タンパク質(例えば、抗体、酵素、サイトカイン、ホルモン、受容体)、脂質、小分子、代謝剤、オリゴ糖、ペプチド、アミノ酸、抗原を含むことができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は、治療剤を産生または分泌するように遺伝子操作された1つの細胞または複数の細胞を含む。
【0039】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、タンパク質を産生または分泌する細胞を含む。タンパク質は、任意のサイズとすることができ、例えば、約100Da、200Da、250Da、500Da、750Da、1KDa、1.5kDa、2kDa、2.5kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、55kDa、60kDa、65kDa、70kDa,75kDa、80kDa、85kDa、90kDa、95kDa、100kDa、125kDa、150kDa、200kDa、200kDa、250kDa、300kDa、400kDa、500kDa、600kDa、700kDa、800 Da、900kDa、またはそれ以上を上回るサイズとすることができる。1つの実施形態において、タンパク質は、1つのサブユニットまたは複数のサブユニット(例えば、二量体、三量体、四量体など)から構成される。細胞によって産生または分泌されるタンパク質は、例えば、グリコシル化、メチル化、またはその他の既知の天然または合成のタンパク質修飾によって修飾されてもよい。タンパク質は、プレタンパク質として、または不活性形態で産生または分泌される場合があり、活性形態に変換するためにさらなる修飾を必要とする場合がある。
【0040】
細胞によって産生または分泌されるタンパク質は、抗体または抗体フラグメント、例えば、抗体のFc領域または可変領域を含むことができる。例示的な抗体としては、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4、抗TNFα、及び抗VEGF抗体が挙げられる。抗体はモノクローナルであってもポリクローナルであってもよい。他の例示的なタンパク質としては、リポタンパク質、接着タンパク質、血液凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、GCG、もしくはVWF)、ヘモグロビン、酵素、プロエンケファリン、成長因子(例えば、EGF、IGF-1、VEGFアルファ、HGF、TGFベータ、bFGF)、またはサイトカインが挙げられる。
【0041】
細胞によって産生または分泌されるタンパク質は、ホルモンを含むことができる。例示的なホルモンとしては、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、プロラクチン、黄体形成ホルモン(LH)、抗利尿ホルモン(ADH)、オキシトシン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、チロキシン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、アルドステロン、コルチゾール、エピネフリン、グルカゴン、インスリン、エストロゲン、プロゲステロン、及びテストステロンが挙げられる。
【0042】
細胞によって産生または分泌されるタンパク質は、サイトカインを含むことができる。サイトカインは、炎症促進性サイトカインであっても抗炎症性サイトカインであってもよい。サイトカインの例としては、IL-1、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-12a、IL-12b、IL-13,IL-14、IL-16、IL-17、G-CSF、GM-CSF、IL-20、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、CD154、LT-β、CD70、CD153、CD178、TRAIL、TNF-α、TNF-β、SCF、M-CSF、MSP、4-1BBL、LIF、OSMなどが挙げられる。例えば、サイトカインには、M.J.Cameron and D.J.Kelvin,Cytokines,Chemokines,and Their Receptors(2013),Landes Biosciences(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載の任意のサイトカインが含まれ得る。
【0043】
植込み型構造体は、1つのタイプの治療剤(例えば、1つのタンパク質または核酸)を発現する細胞を含む場合もあれば、2つ以上のタイプの治療剤(例えば複数のタンパク質や核酸)を発現する場合もある。1つの実施形態において、植込み型構造体は、2つのタイプの治療剤(例えば、2つのタイプのタンパク質または核酸)を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、3つのタイプの治療剤(例えば、3つのタイプのタンパク質または核酸)を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、4つのタイプの治療剤(例えば、4つのタイプのタンパク質または核酸)を発現する細胞を含む。
【0044】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、1つのタイプの核酸(例えば、DNAもしくはRNA)を発現する細胞を含み、または複数のタイプの核酸(例えば、複数の核酸(例えば、DNAもしくはRNA))を発現する場合がある。1つの実施形態において、植込み型構造体は、2つのタイプの核酸(例えば、DNAまたはRNA)を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、3つのタイプの核酸(例えば、DNAまたはRNA)を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、4つのタイプの核酸(例えば、DNAまたはRNA)を発現する細胞を含む。
【0045】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、1つのタイプのタンパク質を発現する細胞を含み、または2つ以上のタイプのタンパク質(例えば、複数のタンパク質)を発現する場合もある。1つの実施形態において、植込み型構造体は、2つのタイプのタンパク質を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、3つのタイプのタンパク質を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、4つのタイプのタンパク質を発現する細胞を含む。
【0046】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、1つのタイプの酵素を発現する細胞を含み、または2つ以上のタイプの酵素(例えば、複数の酵素)を発現する場合もある。1つの実施形態において、植込み型構造体は、2つのタイプの酵素を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、3つのタイプの酵素を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、4つのタイプの酵素を発現する細胞を含む。
【0047】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、1つのタイプの抗体もしくは抗体フラグメントを発現する細胞を含み、または2つ以上のタイプの抗体もしくは抗体フラグメント(例えば、複数の抗体もしくは抗体フラグメント)を発現する場合もある。1つの実施形態において、植込み型構造体は、2つのタイプの抗体または抗体フラグメントを発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、3つのタイプの抗体または抗体フラグメントを発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、4つのタイプの抗体または抗体フラグメントを発現する細胞を含む。
【0048】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、1つのタイプのホルモンを発現する細胞を含み、または2つ以上のタイプのホルモン(例えば、複数のホルモン)を発現する場合もある。1つの実施形態において、植込み型構造体は、2つのタイプのホルモンを発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、3つのタイプのホルモンを発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、4つのタイプのホルモンを発現する細胞を含む。
【0049】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、1つのタイプの酵素を発現する細胞を含み、または2つ以上のタイプの酵素(例えば、複数の酵素)を発現する場合もある。1つの実施形態において、植込み型構造体は、2つのタイプの酵素を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、3つのタイプの酵素を発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、4つのタイプの酵素を発現する細胞を含む。
【0050】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、1つのタイプのサイトカインを発現する細胞を含み、または2つ以上のタイプのサイトカイン(例えば、複数のサイトカイン)を発現する場合もある。1つの実施形態において、植込み型構造体は、2つのタイプのサイトカインを発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、3つのタイプのサイトカインを発現する細胞を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、4つのタイプのサイトカインを発現する細胞を含む。
【0051】
D.植込み型構造体の特徴
本明細書に記載の植込み型構造体は、任意の好適な形状または形態をとることができる。例えば、植込み型構造体は、球体、スフェロイド、管、コード、ストリング、楕円体、ディスク、シリンダー、シート、円環体、立方体、スタジウモイド(stadiumoid)、円錐体、錐体、三角形、長方形、正方形、または桿体であり得る。植込み型構造体は、湾曲したまたは平坦なセクションを含むことができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は、鋳型を使用して調製してカスタム形状を得ることができる。
【0052】
植込み型構造体は、例えば植込みの用途または部位に応じて、サイズが変動し得る。例えば、植込み型構造体の平均直径またはサイズは0.1mmを上回ることができ、例えば、0.25mm、0.5mm、0.75、1mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、またはそれ以上を上回ることができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は、平均直径またはサイズが0.1mmを上回る、例えば、0.25mm、0.5mm、0.75mm、1mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、またはそれ以上を上回るセクションまたは領域を有することができる。1つの実施形態において、植込み型構造体の平均直径またはサイズは、1cmを下回ることができ、例えば、50mm、40mm、30mm、20mm、10mm、7.5mm、5mm、2.5mm、1mm、0.5mm、またはそれ以下を下回ることができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は、平均直径またはサイズが1cmを下回る、例えば、50mm、40mm、30mm、20mm、10mm、7.5mm、5mm、2.5mm、1mm、0.5mm、またはそれ以下を下回るセクションまたは領域を有することができる。
【0053】
植込み型構造体は、封入された抗原性物質または治療剤が外部環境(例えば、宿主のエフェクター細胞または組織)から曝露されるのを予防可能な、少なくとも1つのゾーンを含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は内側ゾーン(IZ)を含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は外側ゾーン(OZ)を含む。1つの実施形態において、内側ゾーン(IZ)または外側ゾーン(OZ)のいずれかが侵食性または分解性であり得る。1つの実施形態において、内側ゾーン(IZ)が侵食性または分解性である。1つの実施形態において、外側ゾーン(OZ)が侵食性または分解性である。1つの実施形態において、植込み型構造体は、内側ゾーン(IZ)及び外側ゾーン(OZ)の両方を含み、そのいずれかが侵食性または分解性であり得る。1つの実施形態において、植込み型構造体は、内側ゾーン(IZ)及び外側ゾーン(OZ)の両方を含み、外側ゾーンが侵食性または分解性である。1つの実施形態において、植込み型構造体は、内側ゾーン(IZ)及び外側ゾーン(OZ)の両方を含み、内側ゾーンが侵食性または分解性である。いずれのゾーン(例えば、内側ゾーンまたは外側ゾーンいずれか)の厚さも、カプセル封入された抗原性物質または治療剤が外部環境(例えば、宿主エフェクター細胞または組織)から保護される「遮蔽」段階の長さまたは持続時間に相関し得る。
【0054】
植込み型構造体のゾーン(例えば、内側ゾーンまたは外側ゾーン)は、分解性の実体(例えば、分解が可能な実体)を含むことができる。分解性の実体は、酵素切断部位、感光性部位、pH感受性部位、または経時的に侵食もしくは構成され得る他の不安定な領域を含むことができる。1つの実施形態において、分解性の実体は、第1の条件への曝露(例えば、第1の環境(例えば、第1のpHまたは第1の酵素)への曝露)の際に、第2の条件(例えば、第2の環境(例えば、第2のpHまたは第2の酵素)への曝露)と比較して、優先的に分解される。1つの実施形態において、分解性の実体は、第1の条件への曝露の際に、第2の条件よりも少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、または100倍速く分解される。1つの実施形態において、分解性の実体は酵素切断部位(例えば、タンパク質分解部位)である。1つの実施形態において、分解性の実体は、ポリマー(例えば、合成ポリマーまたは天然ポリマー(例えば、ペプチドもしくは多糖類))である。1つの実施形態において、分解性の実体は、内在性の宿主成分(例えば分解酵素、例えばリモデリング酵素、例えばコラゲナーゼまたはメタロプロテアーゼ)の基質である。1つの実施形態において、分解性の実体は、ポリマーに埋め込まれた切断性リンカーまたは切断性セグメントを含む。
【0055】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、物体(例えば、小分子(例えば、栄養素もしくは廃棄物)、タンパク質、または核酸)の通過を可能にする孔または開口部を含む。例えば、植込み型構造体の中または上にある孔は、0.1nm超10μm未満とすることができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は、0.1μm~10μm、0.1μm~9μm、0.1μm~8μm、0.1μm~7μm、0.1μm~6μm、0.1μm~5μm、0.1μm~4μm、0.1μm~3μm、0.1μm~2μmのサイズ範囲の孔または開口部を含む。
【0056】
本明細書に記載の植込み型構造体は、任意の封入材料の中または上に化学修飾物を含むことができる。例示的な化学修飾物としては、小分子、ペプチド、タンパク質、核酸、脂質、またはオリゴ糖が挙げられる。植込み型構造体は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上の(例えば、本明細書に記載の化学修飾物で)化学的に修飾された材料を含むことができる。植込み型構造体は、化学修飾物で部分的にコーティングすることができ、例えば、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または99.9%を化学修飾物でコーティングすることができる。
【0057】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、抗原及び/または治療剤の放出持続時間が調節可能であるように製剤化される。例えば、植込み型構造体は、ある特定の量の抗原または治療剤を、持続的または制御的な方法で経時的に放出するように構成することができる。1つの実施形態において、植込み型構造体は、分解性のゾーン(例えば、内側ゾーンまたは外側ゾーン)を含み、これは、カプセル封入された細胞の免疫保護を徐々に停止することにより、または抗原性物質を段階的に放出させることにより、構造体からの治療的放出の持続時間を制御する。1つの実施形態において、植込み型構造体は、抗原性物質または治療剤の放出レベルが宿主エフェクター細胞(例えば、宿主T細胞)の比率を調節するのに十分であるように構成される。1つの実施形態において、植込み型構造体は、抗原性物質または治療剤の放出レベルが、宿主細胞(例えば、宿主Tエフェクター細胞もしくは宿主NK細胞)を活性化するのに十分であるように、またはある特定の宿主細胞(例えば、宿主Tエフェクター細胞もしくは宿主NK細胞)のレベルを高めるように、構成される。1つの実施形態において、植込み型構造体は、抗原性物質または治療剤の放出レベルが、宿主調節細胞(例えば、宿主T調節細胞)を活性化するのに十分ではないように、または宿主調節細胞(例えば、宿主T調節細胞)のレベルを高めるのに十分ではないように、構成される。
【0058】
いくつかの実施形態において、植込み型構造体は、例えばある期間にわたり、宿主または対象の自然の異物応答(FBR)が標的とするゾーンを含む。1つの実施形態において、植込み型構造体は、対象に投与すると、例えばある期間にわたり、線維性過成長で被覆される。植込み型構造体の表面上の線維性過成長は、植込み型構造体の機能を低下させ得る。例えば、機能の低下は、抗原性物質または治療剤の放出の経時的な減少、孔サイズの減少、またはカプセル封入細胞に対する酸素及び他の重要な栄養素の拡散速度の低下を含み得、これは細胞死につながるものである。1つの実施形態において、線維性過成長の速度を調節して投与レジメンを設計することができる。例えば、植込み型構造体の表面上の線維性過成長は、対象に投与(例えば、注入または移植)してから約6時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、2週間、2.5週間、3週間、4週間、または6週間後に、植込み型構造体の機能を低下させ得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、植込み型構造体は、ある比密度の修飾物で化学的に修飾されている。化学修飾物の比密度は、所与面積当たりの付着した化学修飾物の平均数として説明することができる。例えば、植込み型構造体の上または中にある化学修飾物の密度は、平方μmまたは平方mm当たり0.01、0.1、0.5、1、5、10、15、20、50、75、100、200、400、500、750、1,000、2,500、または5,000の化学修飾物であり得る。
【0060】
植込み型構造体は、対象の任意の器官、組織、細胞、または部分に埋込むために製剤化または構成される。例えば、植込み型構造体は、対象の腹腔内空間に植込むまたは配置することができる。植込み型構造体は、対象の腫瘍または他の成長部に移植または配置しても、対象の腫瘍またはその他の成長部から約0.1mm、0.5mm、1mm、0.25mm、0.5mm、0.75mm、1mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、1cm、5cm、10cm、またはさらに離れた場所に植込むまたは配置してもよい。植込み型構造体は、皮膚、粘膜表面、体腔、中枢神経系(例えば、脳もしくは脊髄)、器官(例えば、心臓、眼、肝臓、腎臓、脾臓、肺、卵巣、乳房、子宮)、リンパ系、脈管構造、口腔、鼻腔、胃腸管、骨、筋肉、脂肪組織、皮膚、または他の領域の上または中の植込み用に構成するか、植込むか、または配置することができる。
【0061】
植込み型構造体は、任意の期間使用するために製剤化することができる。例えば、植込み型構造体は、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、1日、36時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、1年、またはそれ以上の期間使用することができる。植込み型構造体は、限定的な曝露(例えば、2日未満、例えば、2日未満、1日、24時間、20時間、16時間、12時間、10時間、8時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、またはそれ以下)のために構成することができる。植込み型構造体は、長期的な曝露(例えば、少なくとも2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、24か月、1年、1.5年、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、またはそれ以上)のために構成することができる。植込み型構造体は、恒久的な曝露(例えば、少なくとも6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、24か月、1年、1.5年、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、またはそれ以上)のために構成することができる。
【0062】
E.治療方法
本明細書では、抗原性物質または治療剤をカプセル封入するゾーン(例えば、層)を含む植込み型構造体と、関連するその使用方法とについて説明する。1つの実施形態において、植込み型構造体は、(例えば、本明細書に記載のように)疾患を治療するために使用される。
【0063】
いくつかの実施形態において、疾患は増殖性疾患である。1つの実施形態において、増殖性疾患はがんである。がんは、上皮性、間葉性、または血液性の悪性腫瘍であり得る。がんには、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、細胞が元の悪性腫瘍または腫瘍の部位以外で対象の身体の部位に移動していないもの)と、続発性悪性細胞または腫瘍(例えば、転移、すなわち悪性細胞または腫瘍細胞が元の腫瘍の部位とは異なる続発的部位に移動することから生じるもの)とが含まれる。1つの実施形態において、がんは、固形腫瘍(例えば、カルチノイド、癌腫、もしくは肉腫)、軟部組織腫瘍(例えば、ヘム悪性腫瘍)、または転移性病変(例えば、本明細書に開示する任意のがんの転移性病変)である。1つの実施形態において、がんは線維性または線維形成性固形腫瘍である。
【0064】
例示的ながんとしては、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、またはリンパ系悪性腫瘍が挙げられる。1つの実施形態において、がんは、身体の系、例えば、神経系(例えば、末梢神経系(PNS)もしくは中枢神経系(CNS))、血管系、骨格系、呼吸器系、内分泌系、リンパ系、生殖器系、または胃腸管に影響を及ぼす。いくつかの実施形態において、がんは、身体の一部、例えば、血液、眼、脳、皮膚、肺、胃、口、耳、足、手、肝臓、心臓、腎臓、骨、膵臓、脾臓、大腸、小腸、脊髄、筋肉、卵巣、子宮、膣、または陰茎に影響を及ぼす。このようながんのより詳細な例としては、扁平上皮癌(例えば、上皮性扁平上皮癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸管癌を含めた胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)または腎臓癌(renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、ならびに頭頸部癌が挙げられる。
【0065】
がんの他の例としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:急性小児リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキン病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓癌、成人軟部組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂尿管癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫、子宮頸癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝臓癌、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部・視覚路神経膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児視床下部・視覚路神経膠腫、小児松果体・テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児原発性肝臓癌、小児横紋筋肉腫、小児軟部肉腫、小児視路・視床下部神経膠腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌性膵島細胞癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮性癌、食道癌、ユーイング肉腫及び関連腫瘍、膵外分泌癌、頭蓋外胚細胞腫、性腺外生殖細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、女性乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、胃腸管カルチノイド腫瘍、胃腸管腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、有毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内黒色腫、島細胞癌、膵島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇・口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖性障害、マクログロブリン血症、男性乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、転移性潜在原発性扁平上皮頚部癌、転移性原発性扁平上皮頚部癌、転移性扁平上皮頚部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性障害、鼻腔・副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、潜在原発転移性扁平上皮頚部癌、中咽頭癌、骨肉腫/悪性線維性肉腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、パラプロテイン血症、紫斑病、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、直腸癌、腎盂尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮頚部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍及び松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂尿管の移行細胞癌、移行性腎盂尿管癌、絨毛性腫瘍、尿管・腎盂細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚路・視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、ならびに上記の器官系に存在する新生物以外のその他の増殖性疾患。
【0066】
1つの実施形態において、植込み型構造体は、対象の神経変性疾患、自己免疫疾患(例えば、糖尿病、多発性硬化症、ループス、閉塞、カプセル拘縮)、または肝臓疾患(例えば、B型肝炎感染、C型肝炎感染、肝硬変、もしくは肝臓癌)を治療するために使用される。いくつかの実施形態において、疾患は糖尿病(例えば、1型糖尿病または2型糖尿病)である。いくつかの実施形態において、状態は線維症である。いくつかの実施形態において、状態は炎症である。
【0067】
本明細書に記載の植込み型構造体は、対象の免疫応答を調節する(例えば、上方調節する)方法に使用することができる。例えば、植込み型構造体(あるいはその中に配置された抗原性物質及び/または治療剤)は、対象に投与すると、対象の免疫系成分のレベルを調節(例えば、上方調節)することができる(例えば、免疫系成分のレベルが上昇または低下する)。本明細書に記載の植込み型構造体または関連する方法によって調節され得る例示的な免疫系成分としては、幹細胞(造血幹細胞)、NK細胞、T細胞(例えば、適応T細胞(例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、もしくは調節性T細胞)、または生得様T細胞(例えば、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞、もしくはガンマデルタT細胞)、B細胞、抗体もしくはそのフラグメント、または他の別の成分が挙げられる。1つの実施形態において、調節は、T細胞または他の免疫系成分の活性化を(例えば、対照と比較して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%。70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ以上)増加または減少させることを含む。
【0068】
本明細書に記載の植込み型構造体は、特定の期間、対象の免疫応答を調節するために使用することができる。例えば、植込み型構造体(またはその中に配置された抗原性物質及び/または治療剤)の投与は、(例えば、免疫系成分のレベルを高めることにより、)対象の免疫応答を少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、20時間、1日、1.5日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、1.5週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、2か月、2.5か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはそれ以上の間、活性化することができる。1つの実施形態において、植込み型構造体の投与は、(例えば、免疫系成分のレベルを高めることにより、)対象の免疫応答を1時間~1か月、1時間~3週間、1時間~2週間、1時間~1週間、6時間~1週間、または6時間~3日の間、活性化する。1つの実施形態において、植込み型構造体(例えば、本明細書に記載の植込み型構造体)の移植により、少なくとも1日の間、(例えば、血液検査による測定において)対象のT細胞が上方調節される。
【0069】
本明細書に記載の植込み型構造体はさらに、例えば併用療法で使用するために、追加の医薬剤(例えば、抗増殖剤、抗がん剤、抗炎症剤、免疫調節剤、または鎮痛剤)を含むことができる。追加の医薬剤は、植込み型構造体の中または上に配置されても、植込み型構造体の中または上に配置された細胞によって産生されてもよい。1つの実施形態において、追加の医薬剤は、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴ糖、または他の薬剤である。
【0070】
1つの実施形態において、追加の医薬剤は抗がん剤である。いくつかの実施形態において、抗がん剤は、小分子、キナーゼ阻害剤、アルキル化剤、血管破壊剤、微小管標的化剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗血管形成剤、または抗代謝剤である。1つの実施形態において、抗がん剤はタキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、またはカバジタキセル)である。1つの実施形態において、抗がん剤はアントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)である。いくつかの実施形態において、抗がん剤は白金系薬剤(例えば、シスプラチンまたはオキサリプラチン)である。いくつかの実施形態において、抗がん剤はピリミジンアナログ(例えば、ゲムシタビン)である。いくつかの実施形態において、抗がん剤は、カンプトテシン、イリノテカン、ラパマイシン、FK506、5-FU、ロイコボリン、またはこれらの組合せから選択される。他の実施形態において、抗がん剤は、タンパク質生物製剤(例えば、抗体分子)、または核酸治療薬(例えば、アンチセンスもしくは阻害性二本鎖RNA分子)である。
【0071】
1つの実施形態において、追加の医薬剤は、免疫調節剤、例えば、共刺激性分子の活性化剤、免疫チェックポイント分子の阻害剤、または抗炎症剤のうちの1つ以上である。1つの実施形態において、免疫調節剤は、免疫チェックポイント分子の阻害剤(例えば、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3、もしくはCTLA4、またはこれらの任意の組合せの阻害剤)である。いくつかの実施形態において、免疫調節剤はがんワクチンである。
【0072】
いくつかの実施形態において、免疫調節剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD73、CD160、2B4、及び/またはTGFRベータの阻害剤である。1つの実施形態において、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3、もしくはCTLA4、またはこれらの任意の組合せを阻害する。阻害分子の阻害は、DNA、RNA、またはタンパク質レベルで実施することができる。いくつかの実施形態において、阻害核酸(例えば、dsRNA、siRNA、またはshRNA)を使用して、阻害分子の発現を阻害することができる。他の実施形態において、阻害シグナルの阻害剤は、ポリペプチド(例えば、可溶性リガンド(例えば、PD-1-IgもしくはCTLA-4 Ig))、または阻害分子に結合する抗体もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD73、CD160、2B4、及び/またはTGFRベータ、あるいはこれらの組合せに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント)である。いくつかの実施形態において、免疫調節剤は抗炎症剤(例えば、本明細書に記載の抗炎症剤)である。1つの実施形態において、抗炎症剤は、炎症または炎症シグナル伝達経路からのシグナル伝達を遮断、阻害、または低減する薬剤である。1つの実施形態において、抗炎症剤は、以下の対象の免疫成分のいずれかの1つ以上の活性を阻害または低減する。1つの実施形態において、抗炎症剤は、IL-1またはIL-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ、リロナセプト、またはカナキヌマブ)である。1つの実施形態において、抗炎症剤は、IL-6またはIL-6受容体アンタゴニスト(例えば、抗IL-6抗体または抗IL-6受容体抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)、オロキズマブ、クラザキズマブ、サリルマブ、シルクマブ、シルツキシマブ、またはALX-0061)である。1つの実施形態において、抗炎症剤は、TNF-αアンタゴニスト(例えば、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、セルトリズマブペゴル(CIMZIA(登録商標))、またはエタネルセプトなどの抗TNF-α抗体)である。1つの実施形態において、抗炎症剤はコルチコステロイド(例えば、本明細書に記載のもの)である。
【0073】
F.植込み型構造体の組成物及び投与
本開示は、ゾーン(例えば、内側ゾーン及び任意選択で外側ゾーン、いずれも分解性であり得る)を含む植込み型構造体と、抗原性物質及び/または治療剤と、任意選択で医薬的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物を特徴とする。いくつかの実施形態において、植込み型構造体は、医薬組成物中に有効量で提供される。いくつかの実施形態において、有効量は治療有効量である。いくつかの実施形態において、有効量は予防有効量である。
【0074】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬理学の分野で知られている任意の方法によって調製することができる。概して、このような調製方法は、植込み型構造体を、担体及び/または1つ以上の補助的成分と会合させるステップと、次に必要及び/または所望に応じて、生成物を所望の単回または多回用量単位に成形及び/またはパッケージングするステップとを含む。
【0075】
医薬組成物は、単回単位用量として、及び/または複数の単回単位用量として、大量に調製し、パッケージングし、及び/または販売することができる。本明細書で使用する場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別的な量である。植込み型構造体の量は、対象に投与されると考えられる抗原性物質及び/または治療剤の投薬量及び/またはこのような投薬量の好都合な部分(例えば、このような投薬量の半分または1/3)に概ね等しいものであり得る。
【0076】
本発明の医薬組成物中の植込み型構造体、医薬的に許容される賦形剤、及び/または任意の追加の成分の相対量は、治療を行う対象が何であるのか、そのサイズ、及び/または状態に応じて、また組成物の投与に用いる経路に応じて変動する。例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の任意の成分を含むことができる。
【0077】
本発明の植込み型構造体及びその医薬組成物は、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内を含む)、吸入スプレー、局所、直腸、鼻腔、頬、膣、または移植されたリザーバーを介し投与または埋込むことができる。いくつかの実施形態において、提供される化合物または組成物は、静脈内及び/または経口的に投与可能である。1つの実施形態において、植込み型構造体は皮下注入される。1つの実施形態において、植込み型構造体は腹腔内空間に注入される。1つの実施形態において、植込み型構造体は腹腔内空間に注入される。1つの実施形態において、植込み型構造体は、デバイス(例えば、カニューレまたはカテーテル)を用いて対象に送達される。
【0078】
本明細書で使用する場合、「非経口的」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、眼球内、硝子体内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、腹腔内、病巣内、及び頭蓋内の注入または点滴技法を含む。好ましくは、組成物は、経口、皮下、腹腔内、または静脈内に投与される。本発明の組成物の無菌注入用形態は、水性または油性の懸濁液であり得る。このような懸濁液は、当技術分野で知られている技法に従って、好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を用いて製剤化することができる。また、無菌注入用調製物は、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の(例えば、1,3-ブタンジオール中溶液としての)無菌注入用の溶液または懸濁液であってもよい。用いられ得る許容されるビヒクル及び溶媒に含まれるものとして、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の固定油は、従来から溶媒または懸濁媒体として用いられている。
【0079】
眼科用としては、提供される化合物、組成物、及びデバイスは、微粉末化された懸濁液として、またはペトロラタムなどの軟膏状態に製剤化することができる。
【0080】
1つの実施形態において、抗原性物質、治療剤、または追加の薬剤の放出が持続的に行われる。特定の薬剤の効果を持続させるためには、注入からの薬剤の吸収を遅らせることがしばしば望ましい。これは、水溶性が低い結晶またはアモルファス材料の液体懸濁液を使用することによって達成することができる。すると、薬剤の吸収速度はその溶解速度に左右され、溶解速度が今度は結晶サイズ及び結晶形態に左右され得る。代替的に、非経口投与された薬物の吸収遅延は、薬物を油性ビヒクル中に溶解または懸濁させることによって遂行される。
【0081】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は、主として、ヒトに対する投与に好適な医薬組成物を対象としているが、当業者であれば、このような組成物があらゆる種類の動物への投与にも広く適していることが理解されよう。ヒトへの投与に好適な医薬組成物を、様々な動物への投与に適したものにするために変更を行うことは十分理解されており、通常の技量を有する獣医薬理学者は、このような変更を、通常の実験を用いて、設計及び/または実施することができる。
【0082】
本明細書で提供する植込み型構造体は、投与を容易にし、投薬量を均一にするために、典型的には、投薬単位形態(例えば、単一の単位剤形)で製剤化される。ただし、本発明の組成物の1日合計使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されよう。任意の特定の対象または生物に対する具体的な治療有効用量レベルは、治療対象となる疾患、障害の重症度、用いられる具体的な活性成分の活性、用いられる具体的な組成物、対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別、及び食事、投与時間、投与経路、用いられる具体的な活性成分の排泄率、治療の持続期間、用いられる具体的な治療剤との併用でまたは同時期に使用する薬物、ならびに医学分野で周知されている類似因子を含めた、様々な因子に依存する。
【0083】
有効量を達成するために必要な化合物の正確な量は、例えば、対象の種、年齢、及び全体の状態、副作用または障害の重症度、特定の化合物(複数可)の識別内容、投与様式などに応じて、対象により変動する。所望の投薬量は、1日3回、1日2回、1日1回、2日毎、3日毎、1週毎、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に送達することができる。ある特定の実施形態において、所望の投薬量は、複数の投与回数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回、またはそれ以上の投与回数)を用いて送達することができる。
【0084】
植込み型構造体から放出される治療剤の有効量は、単位剤形当たり(例えば、植込み型構造体当たり)約0.0001mg~約3000mg、約0.0001mg~約2000mg、約0.0001mg~約1000mg、約0.001mg~約1000mg、約0.01mg~約1000mg、約0.1mg~約1000mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mg、または約100mg~約1000mgの治療剤を含むことができる。
【0085】
投与する治療剤は、所望の治療効果を得るために、1日1回以上、1日当たり対象の体重の約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg~約40mg/kg、好ましくは約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、より好ましくは約1mg/kg~約25mg/kgとすることができる。
【0086】
本明細書に記載の投薬量範囲により、提供する医薬組成物を成人に投与するための指針がもたらされることが理解されよう。例えば、小児または青年に投与する量は、医療実施者または当業者が決定することができ、この量は成人に投与する量より少ない場合も同じ場合もある。
【実施例
【0087】
G.実施例
以下の実施例は、好ましい実施形態を示すために含まれるものである。次の実施例に開示する技法が、実施形態を実施する上で十分に機能することが発明者によって発見された技法を代表しており、したがってこの技法が本発明を実施する上で好ましい様式を構成するようにみなされ得ることは、当業者は理解するはずである。ただし、当業者は、本開示に照らし、開示される特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでもなお、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、類似のまたは同様の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0088】
実施例1:細胞操作及び細胞培養
試薬。細胞培養基及び関連する試薬(例えば、形質移入培地)をFisher Scientificから購入した。リポフェクション試薬(Lipofectamine 3000(登録商標))及び選択培地(ピューロマイシン)をInvitrogenから購入した。発現ベクター及びヘルパープラスミドをVectorBuilderから購入した。CellTiter-Glo(登録商標)をPromegaから購入した。TrypanBlue(登録商標)及びLive Dead(登録商標)の染色液をFisher Scientificから購入した。アルギン酸塩化合物をPRONOVAから購入した。使用したカプセル封入装置には、Harvard Apparatus製のシリンジポンプ及びRame-Hart製の同軸ノズルが収容されている。全ての動物をJackson Labsから購入した。アルギン酸塩化合物をPRONOVAから購入した。
【0089】
細胞培養。ID8/MOSEC細胞をEMD Millipore(Sigma)から商業的に入手した。PAN02またはPANC02マウス細胞をNational Cancer InstituteのThe Division of Cancer Treatment and Diagnosis (DCTD)から入手した。ヒトARPE-19細胞をATCCから入手した。ARPE-19細胞を、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM/F-12)に10%非加熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)及び1%抗生物質-抗真菌剤(AA)を加えたものを用いて培養した。細胞が70~90%コンフルエントになったら培養基を廃棄し、5mLのDPBSで細胞を短時間洗浄した。洗浄液を吸引し、続いて5mlのTrypLEで細胞層を分散させた。細胞を3分間インキュベートした後、顕微鏡で観察して剥離を確認した。7mlの完全成長培地をフラスコに加えて、TrypLE反応を停止させた。この細胞懸濁液を15mlの共焦点チューブに移し、250×gで5分間遠心分離した。上清を吸引し、ペレットを1mlの完全培地に再懸濁し、滅菌T-75フラスコに所望の濃度で再分配した。13mlの完全培地をフラスコに加え、細胞を5% CO加湿雰囲気下、37℃で培養した。B16-F10に使用した培地は、DME/F-12、10% FBS、1%抗生物質-抗真菌剤(AA)であった。ID8に使用した培地は、DMEM高グルコース、4% FBS、1% AA、及び1% ITSであった。培地を週に3回交換した。細胞は、形質移入に使用する前に4回継代した。Pan02及びID8細胞も同じ方法を用いて培養した。
【0090】
使用した全ての細胞のレンチウイルス形質導入及びリポフェクタミン形質移入用のプラスミドを、DNA MaxiPrep形態でVectorBuilderから設計及び購入した。ARPE-19細胞を、マウスIL2及びホタルルシフェラーゼを発現するように操作した。ID8/MOSEC細胞を、ホタルルシフェラーゼを発現するように操作した。操作細胞を、IVISイメージングを用いて、ルシフェラーゼ発現と細胞数との間の線形性についてアッセイした。ARPEサイトカイン発現細胞株を、従来の細胞継代培養法及びトリパンブルーベース計数法を用いて、細胞生存率及び形質移入/形質導入後の倍加時間の変化についてアッセイした。
【0091】
細胞形質移入/リポフェクション。天然マウスIL-2の形質移入においては、4回継代した細胞を6ウェルプレートに1ウェルあたり細胞400,000個の濃度で播種し、3mLの完全培地を用いた。プレートを5% CO加湿雰囲気下、37℃で一晩培養した。播種から24時間後に培養基を吸引し、各ウェルを2mLのOpti-MEM無血清培地でプライミングした。エッペンドルフチューブ中で、2:1の比率の発現ベクター及びヘルパープラスミドを125μlのOpti-MEM及び6μlのP3000に加えた。この溶液を室温で5分間インキュベートした。新たなエッペンドルフチューブに125μlのOpti-MEMを入れ、3.75μlのlipofectamine3000と混合した。値はウェルの数に基づいて調整した。lipofectamine3000が入ったエッペンドルフチューブをDNA複合体と合わせ、室温で15分間インキュベートした。ウェルのプライミングに使用したOpti-MEMを廃棄し、各ウェルに2.5mLの新鮮なOpti-MEMを加えた。次いで、6つのウェルのうち5つのウェルにDNA-脂質複合体を加え(1ウェルあたり250μl)、最後のウェルを対照とした。37℃で4時間インキュベートした後、形質移入培地を、10% FBS及び1%ストレプトマイシン抗生物質を含む新鮮な培養液で置き換えた。形質移入から4日後、培養液を吸引し、細胞をT-75フラスコに移し、10% FBS、1% SP、及び50μl/500mlのピューロマイシンを含む15mLのDMEMを加えた。4日目に、1週間のピューロマイシンを用いた発現用に細胞を選択した後、通常の細胞培養技法で維持した。この手順を、以下のサイトカイン、すなわちIL2、IL7、IL10、IL12、及びIL15の各々の形質移入に使用した。
【0092】
細胞生存率/倍加時間解析。ARPE-19細胞を操作して、様々なタンパク質(例えば、マウスIL2、マウスIL7、マウスIL12、マウスIL15、ホタルルシフェラーゼ、metridiaルシフェラーゼ)を発現させた。PAN02及びID8/MOSEC細胞を、ホタルルシフェラーゼを発現するように設計した。これらのタンパク質の各配列を表1に示す。PAN02、ID8/MOSEC、ARPE-19 f-Luc & met-Luc細胞を、IVISイメージングを用いて、ルシフェラーゼ発現と細胞数との間の線形性についてアッセイした(方法は後述の小動物イメージングに従った)。従来の細胞継代法及びトリパンブルーベース計数法を用いて、操作したARPE細胞を形質移入/形質導入後の細胞生存率及び倍加時間の変化についてアッセイした。
【0093】
細胞形質導入。標準的な第3世代のレンチウイルスプロトコルを用いて細胞に形質導入した。3種のパッケージングプラスミド(pMLg/PRRE、pRSV-Rev、及びpMD2.g)を発現ベクターと共にHEK293T細胞に形質移入することにより、レンチウイルスを産生した。形質移入から6~8時間後に細胞培地を新たな培地で置き換え、細胞を36~48時間培養した。レンチウイルスを濃縮し、ポリブレンと共に使用して、前日に平板培養し70~80%コンフルエントにしたPan02細胞またはID8/MOSEC細胞に形質導入した。ウイルスと共に24時間インキュベートした後、培地を交換し、細胞を3日間培養した。4日目に、1週間のピューロマイシンを用いた発現用に細胞を選択した後、通常の細胞培養技法で維持した。
【0094】
実施例2:ELISAによる産生の定量化
各群の細胞を、10% FBS、1% Penstrep、及び0.5μl/500mlピューロマイシンを加えたDMEM培地が入ったT-150フラスコ内で成長させた。コンフルエントになったら培養液を吸引し、10mlのTrypLEを加えた。細胞を5% CO加湿雰囲気下、37℃で3分間インキュベートした。細胞層が分散したら、10mlの完全培地を加えて反応を停止した。細胞懸濁液を50mlコニカルチューブに移し、250Gで5分間遠心分離した。上清を吸引し、細胞を1mlの完全培地に再懸濁した。細胞濃度を、Countess(商標)血球計を用いて計数した。200μl中細胞10,000個の濃度を達成するのに必要な体積を、試料中の生細胞の濃度に基づき計算した。残りの細胞懸濁液体積のうち、100万個の細胞を1mlのアルギン酸塩に再懸濁し、コアシェルカプセルを合成した。全ての群を5% CO加湿雰囲気下、37℃で24時間培養した。24時間時に各ウェルから細胞上清を採取し、2mlのマイクロチューブに移した。全ての試料を1000Gで20分間遠心分離した。試料を遠心分離した後、培地を再び各2mlチューブから96ウェルプレートに移した。試料を完全培地で1:2に希釈し、総量を400μlとした。マウスIL7 Quantikine ELISAキット(CAT M7000)、ヒトIL7 ELISAキット(CAT AB185984)、M IL15 ELISAキット(CAT RAB0206-1KT)、ヒトIL15 ELISAキット(CAT AB218266)、LEGEND MAXヒトIL10 ELISAキット、ELISA MAX DeluxeセットマウスIL10(CAT 431414)、(CAT 430608)、LEGEND MAXマウスIL2 ELISAキット(CAT 431007)、LEGEND MAXヒトIL2 ELISAキット(CAT 431808)。企業が提供するプロトコルに従ってアッセイを実施した。全ての試料を3連で行った。
【0095】
実施例3:T細胞増殖アッセイ
EasySep T細胞単離キット(StemCell Technologies)ならびに関連試薬及びデバイスを使用して、C57BL6マウス脾臓(Jackson Labs)からT細胞を単離した。細胞を100μl RPMI 1640中細胞10,000個/ウェルの96ウェルプレートで平板培養した。細胞に0.1、1、5、もしくは10ng/mLの細胞産生天然IL2、または1もしくは10ng/mLの組換えIL-2(Miltenyi)を補充した。37℃でインキュベートしてから24または72時間後に、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて、細胞増殖(及び生存率)を測定した。
【0096】
実施例4:細胞のカプセル封入
特注の2流体同軸静電噴霧デバイスを用いてアルギン酸塩ヒドロゲル球体を合成した。このデバイスは、同軸針の先端に取り付けられ、1:4の塩化バリウム:マンニトールの架橋浴に接地した電圧発生器からなるものであった。同軸針には、0.9%食塩水で希釈した1.4%アルギン酸塩溶液が入った2つの別々のシリンジが供給された。アルギン酸塩に細胞を懸濁させるため、上清から70~90%コンフルエントに達した細胞を取り出し、5mlのDPBSで洗浄した。洗浄液を吸引し、続いて5mlのTrypLEで細胞層を分散させた。細胞を3分間インキュベートし、次いで顕微鏡で観察して剥離を確認した。7mLの完全成長培地をフラスコに加えてTrypLE反応を停止した。細胞懸濁液を50mlコニカルチューブに移し、250Gで5分間遠心分離した。上清を吸引し、パレットを崩した。所望体積のSLG20アルギン酸塩を細胞に加え、5mlのルアーロックシリンジで引き上げた。2つの異なるアルギン酸塩(SLG20とRZA15修飾アルギン酸塩)を入れたシリンジを2つの別々のシリンジポンプに入れ、同軸ノズルに供給し、次いで150mlの架橋浴に懸濁した。RZA15アルギン酸塩は、シェルを作製するノズルの水平軸に供給し、SLG20は、コアを作製するノズルの垂直軸に供給した。各シリンジの流量は、5ml/時間の比率に調整した。カプセルのサイズは、発電機の電圧を調整することによって維持し、約5.30の電圧にすると、最も一貫して直径1.5mmのカプセルが生産された。架橋浴からカプセルを分離するため、カプセルをデカントした。続いて、HEPES緩衝液で3回、完全細胞培地で3回洗浄した。最後に、カプセル封入細胞を6mlの完全培地を入れたT-25フラスコに移し、2~3日ごとに培地を交換し、平板培養細胞と同じように維持した。カプセル封入後、細胞を5mlのDPBSで洗浄し、DPBS中の1.25μlの約2μMカルセインAM及び20μlの4μM EthD-1のストックを用いて染色した。試料を20分間インキュベートし、蛍光顕微鏡を用いてイメージングした。カプセル封入細胞の各試料群から20個のカプセルをイメージングし、生細胞及び死細胞を調べた。GFPフィルターを使用して生細胞を取り込み、Texas Redフィルターを使用して死細胞を取り込んだ。
【0097】
実施例5:腫瘍植込みプロトコル
以下に記載するプロトコルに従って、植込み型構造体のin vivoでの効果を調べた。
【0098】
腫瘍植込み。以下のマウス腫瘍モデル:(黒色腫、Pan02、及びID8)を植込み用に準備し、in vivoで腫瘍サイズのトラッキングを行った。全てのin vivo腫瘍退縮試験にC57BL6/J黒マウスを使用した。これらの試験を実施するため、Jackson LaboratoriesからC57BL6/J黒の雄及び雌のマウス(6~8週齢、各体重は約18~25gm)を入手した。全ての動物実験はIACUCによる承認に基づいて実施した。
【0099】
腫瘍注入。黒色腫及びPan02の皮下モデルについては、C57BL6/Jマウスに100万個の細胞(B16F10またはPan02)を皮下注入した。細胞を食塩水に懸濁し、インスリンシリンジを用いて注入した。ID8及びPan02のIP腫瘍モデルについては、細胞5個(食塩水に懸濁)をC57BL6/Jマウスの右下腹部に腹腔内注入した。
【0100】
皮下腫瘍。皮下黒色腫及び膵臓腫瘍モデル黒色腫については、式(0.5×ab)を使用することによって腫瘍体積を測定した(式中、「a」は腫瘍の最長寸法、「b」は最短寸法を表す)。また、屠殺後の体重及び腫瘍の写真も撮影した。
【0101】
腹腔内腫瘍。PAN02またはID8のがん細胞株を注入した動物を、植込み手術、シャム手術、または未処置対照群に選択する前に7~10日間、1日おきに追跡した。手術後、小動物IVISイメージング(方法は後述)を用いて、腫瘍の成長または縮小を追跡した。
【0102】
動物手術。麻酔・鎮痛剤:全ての手順を麻酔下で行い、その後鎮痛処置を行った。試験に使用したマウスに、タンク誘導によりげっ歯類用麻酔器を用いてイソフルラン(1~4%)及び酸素(1~2L)で麻酔をかけ、次にノーズコーン維持を行った。いかなる侵襲的手順を開始する前にも、足引っ込め反射を使用してガス麻酔の麻酔深度を評価し、呼吸を継続的にモニタリングして十分な麻酔を確実にした。麻酔中及び回復中は、水循環ヒーティングパッドを使用することによって体温を調節した。重要なことには、手術全体において麻酔の深度を継続的にモニタリングした。
【0103】
外科医:外科医はサージカルマスク及び清潔な実験用白衣を着用することを要件とした。滅菌外科医用手袋を使用した。滅菌手袋を着用する際には、手袋の外側の滅菌表面が汚染されないように注意した。手袋着用後は、無菌状態の術野及び機器にのみ触れるように注意した。臨床感染のリスクが高い手術症例の場合には、外科医の準備にさらなる予防手段(例えば、キャップ及び滅菌ガウン)を用いた。
【0104】
腹腔内(IP)手術によるカプセルの移植:全ての動物の体重を測定し、耳パンチで識別し、術前ケアの一環として手術前に腹部を剃毛した。この後にイソプロピルアルコールを1回擦り付け、2回目はBetadine Surgical Scrub(7.5%ポビドンヨード、Patterson Vet)で擦り付けた。この消毒剤擦り付けステップを3回繰り返した。次いで、鋭利な外科用ブレード(15T、Sklar)を使用して、皮膚と白線を通って腹部に0.5~0.75cmの正中切開を行った。外科医は切開を可能な限り小さく保ち、0.75cmを最大の可能な切開サイズとした。カプセル移植物を腹腔内に導入した。5-0 Ethicon黒色PDS吸収性縫合糸または他の5.0-6.0モノフィラメント吸収性縫合糸で縫合することにより、腹筋を閉じた。外側の皮膚層は、先述のようにPDS縫合糸で閉じた。手術器具に付いた血液及び組織細片は、手順の合間に滅菌水や生理食塩水で除去し、器具は、動物間(最大5回の手順)でホットビーズ滅菌器を用いて再滅菌した。手術後、動物をケージに戻し、ヒーティングパッド上で回復させ、歩行するまでモニタリングした。
【0105】
術後ケア:術後48時間はケージの底部に餌を置き、回復中の動物の立ち上がり、及び筋肉の縫合糸の断裂またはヘルニアの可能性を制限した。動物は術後4日間、体重、全身グルーミング、社会性、披裂の徴候、脱水、感染、または縫合部もしくは便からの出血を毎日モニタリングした。縫合部位が開放され、臓器の逸脱も著しい出血もないことが認められた場合、動物に誘導タンクで麻酔(1~4%イソフルラン、1~2L/分O2)をかけ、ノーズコーンに移して創傷接着剤(VetBond 3M、Patterson Vet)を用いて創傷を閉じた。
【0106】
人道的エンドポイント及び安楽死。手術中に有害事象が発生した場合、呼吸の徴候が見られなくなるまで1~4%イソフルラン及び1~2L/分O、続いて2L/分COの麻酔を用いて動物を安楽死させた。この時点で、動物が確実に死ぬように頸椎脱臼させた。術後期間に、人道的エンドポイント(毛づくろいの欠如、つま先歩き、猫背姿勢、社会的孤立、毛皮の起毛、重度の披裂、著しい出血)が同定された場合、動物を安楽死させた。全ての安楽死は、Rice Universityで承認されたIACUCプロトコル、及び動物の安楽死に関するAVMAガイドラインに従う。
【0107】
実施例6:腫瘍退縮試験の定量化
FACS。抗体カクテル:抗マウスCD19、CD25、CD44、CD161、CD62L、CD4、FoxP3、CD3e、CD8、PD-1、Ly6G、F4/80、CD11b、CD11c、およびCD45の市販品を入手し、それぞれの抗体ごとに業者推奨の希釈率(1:50、1:100、1:200、1:400)でPerm/Wash緩衝液に再懸濁した。全ての抗体カクテルを染色当日に調製し、4℃の暗所の氷中で維持した。
【0108】
試料採取及び動物の取扱い。誘導チャンバーで動物にイソフルラン(1~4%、1.5 OL/分)で麻酔をかけ、ノーズコーンに移した。足の反射を確認した後、心臓穿刺を実施して採血し、4℃で保存した0.5M EDTAコーティングチューブ内で維持して下流の処理に備えた。次いで、動物を確実に死なせるための二次的な方法として頸椎脱臼させた。次いで、動物を正中線に沿って皮膚と筋肉の両方を通って切断し、次いで10mLの0.2ミクロンろ過滅菌食塩水を腹腔内にフラッシュしてIP液及び細胞を採取した。この後、IP液を4℃または氷中で維持した。次いで、脾臓及び肝臓を直ちに回収した。脾臓は下流の処理に備えて氷上で保存し、肝臓は組織学カセット(ThermoFisher)に入れ、ホルマリンで直ちに固定し、室温で維持した(10% v/v、Thermo Scientific、Richard-Allen Scientific)。全ての動物取扱い手順は、Rice Universityで承認されたIACUCプロトコルに従ってRice Universityで実施する。
【0109】
試料の処理。全ての試料を、以下の処理及び染色手順全体を通じて、氷上で維持するか、または4℃に保つ。
【0110】
脾臓:脾臓を、ストレーナーに対し乳棒で潰した。次いで、脾臓組織試料を、RPMI培地(Gibco)を用いて3回洗浄し、遠心沈殿させ(2000rpm、3分、室温)、次いで3mLのRBC溶解緩衝液(Sigma)に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。インキュベート後、脾臓の溶液に10mLのRPMI培地を加え、試料を混合し、次いで遠心沈殿させ(2000rpm、3分、室温)、FACS緩衝液(PBS、2%仔ウシ血清、1mM EDTA、0.1%アジ化ナトリウム)に再懸濁し、トリパンブルー(ThermoFisher)を用いて細胞濃度を計数した。
【0111】
IP液:採取したIP液(10ml)を70ミクロンストレーナーでろ過し、遠心沈殿させ(2000rpm、3分、室温)、次いで3mlのRBC溶解緩衝液に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。
【0112】
血液試料:RBC溶解緩衝液(2部)を血液試料(1部)に加え、次いでボルテックスした。試料を室温で3分間インキュベートした。次いで試料を遠心沈殿させ(15,000rpm、5分、室温)、300uLのFACS緩衝液に再懸濁し、この洗浄ステップをもう1回繰り返し、続いて70ミクロンストレーナーで最終的ろ過ステップを行った。
【0113】
試料染色。試料を96ウェルの深型プレートに細胞およそ250万個/ウェルの密度で平板培養した。プレートを遠心沈殿させ(500g、5分、室温)、FACS緩衝液に再懸濁する。
【0114】
細胞外染色:プレートを遠心沈殿させ(500g、5分、室温)、50μlのFcブロック緩衝液に再懸濁した(細胞100万個当たり0.25μgのCD16/CD32を50μlのFACS緩衝液に加えた)。次いで、プレートを暗所の氷上で10分間インキュベートした。150μlの低温FACS緩衝液を加え、Fcブロック溶液の懸濁液と混合した。次いで、試料を半分に分割し、2枚目の96ウェル深型プレートに分取した。両方の96ウェルプレートの各ウェルに100μlの低温FACS緩衝液を加え、続いて遠心分離ステップを行った(400g、5分、4℃)。両方のプレートから上清を除去し、ペレットを50μlの抗体カクテルに再懸濁した。次いで、試料を30分間、4℃の暗所で染色した。次いで、プレートを遠心沈殿させ(500g、5分、4℃)、100μlの低温FACS緩衝液に再懸濁し、この洗浄ステップをもう1回繰り返した。
【0115】
細胞内染色:細胞外染色の直後に細胞内染色を行った。両方のプレートの細胞ペレットを200μlの固定/透過処理溶液(BD Biosciences)に再懸濁し、次いで4℃で30分間インキュベートした。試料を遠心沈殿させ(500g、5分、4℃)、200μlのPerm/Wash緩衝液(BD Biosciences)に再懸濁し、これをもう1回繰り返した。次いで、試料を遠心沈殿させ(500g、5分、4℃)、Perm/Wash緩衝液に入れた50μlの抗体カクテルに再懸濁し、室温の暗所で30分間インキュベートした。次いで、200μlのPerm/Wash緩衝液を加え、両方のプレートを遠心沈殿させ(500g、5分、4℃)、200μlのPerm/Wash緩衝液に再懸濁した。この後に最後の遠心分離ステップ(500g、5分、4℃)を行い、試料を200μlのFACS緩衝液に再懸濁した。
【0116】
IVIS撮像。イソフルラン(O、1.5L/分)を用いて誘導チャンバーで動物に麻酔をかけ、D-ルシフェリン(300μg/mL、200μL、PerkinElmer)を腹腔内に注入した。次いで、動物をIVISマニホールド(IVIS Lumina K Series III,PerkinElmer)に移し、イソフルラン麻酔(0.25L/分)をかけ、加熱ステージ上で保温した。動物をXFOV-24レンズ(FOV-E、12.5mm)で撮像した。写真(入力設定)及び発光画像(設定)は、Live Imagingソフトウェア(PerkinElmer)のImaging Wizard機能を用いて取得した。露光時間は1秒、5秒、及び15秒に設定し、ビニングはmedium、励起はblock、EMゲインはoff、高さはマウスに合わせた高さに設定し、取得間の遅延は0秒とした。動物にD-ルシフェリンを注入してから5分後及び10分後にイメージングした。
【0117】
カプセル外植試験。96ウェルプレートの個々のウェルに、各群から5個の外植カプセル(n=5)を加えた。各ウェルに200μlのそれぞれの細胞培地を加え、24時間培養した後、ウェルから採取した上清で各発現サイトカインごとにELISAを行った。全ての試料を3連で行った。
【0118】
統計。統計解析は、Prism7の二元配置ANOVA、多重比較法を用いてIVISイメージングデータ解析を行った。ELISAの反復データを、対応のあるスチューデントt検定法を用いて解析した。Grubbの検定を用いて反復の外れ値を同定し、外れ値が含まれる場合は標準誤差平均または標準偏差を考慮した。
【0119】
実施例7:結腸直腸癌モデルマウスにおけるin vivo有効性
結腸直腸癌モデルマウスを用いて例示の植込み型構造体の有効性を検証するために、雌雄混合したB6マウスに、MC38細胞(図10A)を1×10/マウスの細胞密度でIP空間に注入した。IP注入から6日後、動物をランダムに群に分け、RPE-IL2カプセルを外科的に植込むか、または組換えIL-2を250,000IU/日の用量で3日間IP注入し、次いで7日間モニタリングした。処置から1週間後にマウスを屠殺し、腫瘍を撮像し(図10B)、分析用天秤を用いて重量測定した。3群各々のマウスの平均体重はほぼ同じであったが、マウスから摘出した腫瘍の重量には顕著な差が認められた。示されているように(図10C)、未処置群及びシャム手術群の腫瘍の重さは、それぞれ平均3.1g及び2.9gであった。これに対し、RPE-IL2カプセル群から摘出した組織は、他の群と色も血管も類似していないように思われ、重さも他の腫瘍の1/10未満になっている(図10B、10D)。また、RPE-IL2カプセルがもたらす抗腫瘍効果の持続時間を調べるため、生存試験も行った。雌雄混合したB6マウスのIP空間に、MC38細胞を1×10/マウスの細胞密度で注入した。上述のように、IP注入の6日後、動物をランダムに2つの群に分け、コアシェルカプセルを外科的に植込むか、またはシャム手術に供した。生存試験は、最後のシャムマウスが人道的エンドポイント35に達してから8日後に終了し(図10C)、RPE-IL2カプセル群及びシャム群ではそれぞれ注入から27日後に終了した(図10F)。35日目には、RPE-IL2 MC38注入マウスは全て腫瘍がなくなっていた。
【0120】
これらのマウスに再チャレンジするため、8頭のナイーブマウス及び5頭全てのMC38腫瘍のないRPE-IL2マウスに5×10のMC38細胞を皮下注入し、ナイーブマウスが臨界腫瘍体積(直径15mm)に達し安楽死させなければならなくなるまでモニタリングした。ほぼ2週間後、5頭のRPE-IL2マウスのうち皮下腫瘍を生じたマウスがゼロだったのに対し、8頭のナイーブマウスのうち5頭が腫瘍注入からわずか4日で可視的な腫瘍を生じた(図10H)。これらの結果からは、RPE-IL2処置が、CD8+T細胞の活性化及び増殖に加えて、二次的な腫瘍の発生を防ぐメモリーT細胞の発達も助けることが示唆される。
【0121】
実施例8:膵臓癌モデルマウスにおけるin vivo有効性
膵臓癌における例示的な植込み型構造体の有効性を試験するため、アルビノB6マウス(Jackson Labs)にPan02-F Luc細胞を注入した。5e6のPan02-F Luc細胞(食塩水に懸濁)を、マウスの右下腹部に腹腔内注入した。天然IL-2を発現する植込み型構造体を注入する前に、動物は全て体重を測定し、耳パンチで識別し、腹部を剃毛した。腹部は70%イソプロピルアルコールを用いて3回洗浄し、続いてBetadine Surgical Scrub(7.5%ポビドンヨード、Patterson Vet)で洗浄した。外科用ブレード(15T、Sklar)を使用して、皮膚及び白線を通って腹部に0.5~0.75cmの正中切開を行った。1.5mmの植込み型構造体を腹膜腔内に導入した。腹筋を5-0 Ethicon黒色PDS吸収性縫合糸で縫合することによって閉じた。外側の皮膚層は、先述のようにPDS縫合糸で閉じた。手術後、動物をケージに戻し、ヒーティングパッド上で回復させ、歩行するまでモニタリングした。週に1回、小動物用IVISイメージングを用いて動物の腫瘍の成長または縮小を追跡した。結果からは、本明細書に記載の植込み型構造体によって天然IL-12を局所投与することで、膵臓癌の腫瘍負荷をわずか6日間で低減することができることが示されている(図11A~B)。
【表1】
【0122】
本明細書で開示及び請求されている全ての組成物及び方法は、本開示を踏まえて過度の実験なしで作成及び実行することができる。本開示の組成物及び方法は、好ましい実施形態の観点から記載されているが、本開示の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく、この組成物及び方法、ならびに本明細書に記載の方法のステップまたはステップの順序における変形が適用され得ることは、当業者にとって明らかであろう。より具体的には、化学的かつ生理学的に関連するある特定の薬剤は、同じまたは同様の結果が達成されると考えられる限りにおいて、本明細書に記載の薬剤に置き換えられ得ることが明白となろう。当業者に対して明白な、このような同様の代用及び変更は全て、添付の請求項によって定義される本開示の趣旨、範囲及び概念内にあるものとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2022543842000001.app
【国際調査報告】