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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】新規の核酸精製の化学
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20221006BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20221006BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12N15/10 110Z
B01D15/00 M
B01J20/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507660
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2020072225
(87)【国際公開番号】W WO2021023854
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】19190647.8
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518024622
【氏名又は名称】バイオカルティス エン フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】ハーセンドンクス,マックス
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
【Fターム(参考)】
4D017AA11
4D017BA07
4D017CA05
4D017DA01
4D017EA05
4G066AA22B
4G066AA32D
4G066AB09D
4G066AB21D
4G066CA56
4G066DA11
4G066DA12
4G066DA13
(57)【要約】
本発明は概して、シリカ固体担体上での核酸単離の分野に関する。特に、小さな第四級有機化合物、例えばテトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)を酸性条件で使用することに基づく、新規のシリカ固体担体の核酸結合バッファーの化学が本明細書に開示されている。この新規の核酸精製の化学は、RNAだけでなくDNAも精製し、スピンカラムから固相抽出技術を使用する使い捨てカートリッジ等の集積型ラボオンチップ(LOC)デバイスに至るまで、多岐にわたる市販キットに実装可能であるという可能性を秘めている。さらに、本発明の方法は、比較的少ない容量の結合バッファーを使用して実施することができるため、そのような集積型又は密閉された分子診断デバイスにおいて試料投入の容量を増やすことを可能にし、血漿又は尿等の液体生検試料の場合に微量の核酸標的を検出する機会を増やすことができるという可能性を秘めている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体生検試料とシリカ固体担体とを、3から6の間のpH値で、かつ、
4個の有機置換基R1~R4(それぞれの有機置換基R1~R4における炭素原子の数は2を超えない)を有する中央の正に荷電した原子からなる第四級化合物として定義される小さな第四級有機化合物と、
臭化物アニオン又は塩化物アニオンと、
からなる塩の存在下で接触させることを含む、核酸抽出方法。
【請求項2】
小さな第四級有機化合物の正に荷電した原子は、窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アニオンは、塩化物イオンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
小さな第四級有機化合物は、更にTMACと呼称されるテトラメチルアンモニウムクロリドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
小さな第四級有機化合物の濃度は、0.1 Mから2 Mの間、好ましくは0.5Mから1.8 Mの間、より好ましくは0.8 Mから1.6 Mの間、更により好ましくは1 Mから1.4 Mの間に含まれ、最も好ましくは約1.2 Mである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
pH値は、4から5.8の間、4.2から5.6の間、4.4から5.4の間、4.6から5.2の間に含まれ、最も好ましくは約5である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法に先行して、プロテアーゼ処置が行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
液体生検試料は、血漿、血清、全血、又は尿から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
核酸は、DNAである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
DNAは、無細胞DNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
DNAは、循環腫瘍DNAである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
接触は、デタージェントの存在下で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
デタージェントは、第四級アンモニウム化合物デタージェントである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第四級アンモニウム化合物デタージェントは、更にCTABと呼称されるセチルトリメチルアンモニウムブロミドである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、好ましくは流体カートリッジであるカートリッジの内部で行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
結合バッファー溶液を含むカートリッジであって、前記結合バッファー溶液が、3から6の間の値のpHを保つように適合された緩衝剤と、更にTMACとを含む、カートリッジ。
【請求項17】
結合バッファー溶液は、CTABを更に含む、請求項16に記載のカートリッジ。
【請求項18】
シリカ固体担体を更に含む、請求項16又は17に記載のカートリッジ。
【請求項19】
更に流体カートリッジである、請求項16~18のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項20】
液体生検試料から無細胞DNAを抽出するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法又は請求項16~19のいずれか一項に記載のカートリッジの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、シリカ固体担体上での核酸単離の分野に関する。特に、小さな第四級有機化合物、例えばテトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)を酸性条件で使用することに基づく、新規のシリカ固体担体の核酸結合バッファーの化学が本明細書に開示されている。この新規の核酸精製の化学は、RNAだけでなくDNAも精製し、スピンカラムから固相抽出技術を使用する使い捨てカートリッジ等の集積型ラボオンチップ(Lab-On-A-Chip)(LOC)デバイスに至るまで、多岐にわたる市販キットに実装可能であるという可能性を秘めている。さらに、本発明の方法は、比較的少ない容量の結合バッファーを使用して実施することができるため、そのような集積型又は密閉された分子診断デバイスにおいて試料投入の容量を増やすことを可能にし、血漿又は尿等の液体生検試料の場合に微量の核酸標的を検出する機会を増やすことができるという可能性を秘めている。
【背景技術】
【0002】
1990年に出願された特許である特許文献1において、Boomらにより、汎用的な固体担体の吸着に基づく核酸精製技術が記載された。Boomの抽出は、アルコールの存在下又は不存在下で多量のカオトロピック塩を使用して核酸のシリカへの結合を媒介している。生体試料からの50%を超える核酸抽出収率を可能にするその高い性能により、これはたちまち核酸単離におけるゴールドスタンダード(golden standard:最も基準となる手法)となり、多くの市販の抽出キット及び集積型分子診断デバイスにおいて今日まで広く使用され続けている。例えば、Boomのプロトコル又はその若干の変形形態が、QIAGENのQIAamp Circulating Nucleic Acidキット又はIdyllactRAS等のBiocartis NVの集積型カートリッジにおいて使用されるDNA抽出原理の基礎をなしている。
【0003】
多量のカオトロピック塩を使用した後に、追加のアルコールを使用する必要もあるため、Boomのプロトコルは生体試料の量に対して多量の結合バッファーを必要とする。したがって、しばしば試料容量を最大化することを目指すためバッファーの容量に十分な貯蔵所がない、これまで以上に小型化された手持ち式の完全集積型のラボオンチップ(LOC)分子試験デバイスが台頭し続けていることを考慮して、Boomのプロトコルに対する効率的な代替案を見出す必要がある。もう1つの理由は、カオトロピック塩は高価であり、強力なPCR阻害特性を有し、最終生成物の製造ラインに多くの課題をもたらす場合があることである。上記全てのため、現在、特に、例えば血漿無細胞(cf)DNA標的1ミリリットル当たりの僅少物の検出に試料サイズが益々重要となっている液体生検の分野で利用される集積型システムにおいて、試料投入量を増やすことを可能にする効率的なカオトロピック薬剤不含の核酸精製の化学が必要とされている。
【0004】
今日まで、新規のカオトロピック薬剤不含のシリカベースの核酸精製の化学を開発するために幾つかの試みがなされてきた。それらの注目すべき例としては、以下のものが挙げられる:
【0005】
酸性条件及びコスモトロピック塩の使用に基づくウイルスRNAの精製を記載する方法が2005年にHourfarらによって発表された。この出版物の表題は「核酸単離のための新規の水性化学に基づくウイルスRNAのハイスループット精製(High-Throughput Purificationof Viral RNA Based on Novel Aqueous Chemistry for Nucleic Acid Isolation)」である。この方法はRNAに特化しており、血漿からのDNA精製には適していない。
【0006】
コスモトロピック性のホフマイスター塩を使用することによりE.コリ(E. coli)からトータルRNAを単離することを含む同様の方法が2008年にLeeらによって発表された。さらに、Leeらは、「コスモトロピック塩を使用してRNAを精製する方法(Method of purifying RNA using kosmotropic salt)」という表題の特許である特許文献2を保有している。これらの出版物及び特許の両者とも、酸性条件及びコスモトロピック塩の使用に基づくRNA選択的な精製の化学を記載し、それに焦点を当てているが、この化学をどのようにDNAに適用するかについての教示は一切なされていない。
【0007】
ジョンズホプキンス大学は、「血漿から核酸を精製するカオトロピック薬剤及び揮発物不含の方法(Chaotrope- and volatile-free method for purifying nucleic acids fromplasma)」という表題の特許出願である特許文献3を有している。そこに記載される方法はLeeらの方法と非常に類似しており、酸性条件及びコスモトロピック塩を使用してRNAのシリカへの結合を媒介することが含まれている。
【0008】
MiDiagnosticsは、「核酸を精製及び増幅するシステム及び方法(System and method for purifying and amplifying nucleic acids)」という表題の非常に類似した特許出願である特許文献4を保有している。この特許出願は、酸性条件及びコスモトロピック塩を使用してウイルス核酸のシリカへの結合を媒介する核酸精製の化学を記載している。しかしながら、この方法は、これが少なくともBoomのプロトコルと同程度の効率であるという証拠も、血漿中に存在するcfDNAの精製に適用可能であるということも全く示していない。
【0009】
分子診断において広く使用されているにもかかわらず、核酸とシリカとの相互作用はまだよく理解されていない。実際、Boomらが1990年に最初のシリカベースの核酸精製技術を発表して以来、あまり変わっていない。今日まで、シリカへのDNA/RNAの吸着の基本的なメカニクス(mechanics)を解明することを試みる研究は極めて限定されている。
【0010】
非特許文献1は、Boomの抽出技術の基本的なメカニクスの謎を解くことを試みた数少ないものの1つである。彼らは、シリカへの核酸吸着の主な誘因であると考えられている3つの効果について説明しており、その効果としては、
分子間静電力の遮蔽、
DNA及びシリカ表面の脱水、
核酸-シリカ接触層における分子間水素結合の形成(最も優位性が低い誘因と記載されている)、
が挙げられる。
【0011】
上記の3つの要因は、シリカ固体担体の存在下で核酸溶液に種々の塩を添加することによって調節することができる。塩は、Hofmeisterによって、これらの水溶液中の高分子、主にタンパク質の構造に影響を与える能力に基づいて分類されている。この分類によれば、カオトロピック塩は、タンパク質の溶解性を高めるため(いわゆる「塩溶」)、当初は構造破壊剤として説明されていた。上記とは反対に、コスモトロピック塩は、タンパク質の溶解性を低下させるため(「塩析」と呼ばれる)、構造形成剤として説明されていた。シリカベースの核酸単離の文脈において、カオトロピック塩は、これらが水の構造に影響を与え、脱水効果を引き起こす能力があるため、自然な選択である。その観点から、カオトロピックイオンは、Hofmeisterによって、電荷密度が低く、水との相互作用が水同士よりも低い大きな一価のイオンとして説明されている。カオトロピックイオンは、周囲の水の水素結合に殆ど干渉しないと考えられている。例えば、1990年にBoomらによって記載された当初の核酸精製の化学においては、その強力なカオトロピック性、その細胞溶解特質、及びリボヌクレアーゼを不活性化するその潜在性を理由に、高濃度のグアニジニウムチオシアン酸塩が使用された。反対に、コスモトロピックイオンは、電荷密度が高いため水-水の水素結合を切断し得る小さな又は多価のイオンとして説明されている。
【0012】
グアニジニウムカチオン及びチオシアン酸アニオンは大きな水和殻を有するとは予想されていないが、Boomのプロトコルにおいて使用されるそれらの過剰な濃度(3 M~5 M)がこれを補償すると考えられている。この高濃度の塩のおかげで、遊離水の濃度を十分に下げることができることから、核酸及びシリカメンブレンの脱水が引き起こされると仮定されている。さらに、豊富なグアニジニウムカチオンは、核酸中の負に荷電したリン酸骨格とシリカ表面上の負に荷電したシラノール基との間の静電力を遮蔽すると考えられている。これらの効果は両方とも、塩基とシロキサンブリッジとの間の疎水性相互作用を促進するため、シリカメンブレンへの核酸の吸着が可能となると仮定され得る。当初のBoomのプロトコルのその後の脚色として、結合バッファーにアルコールを追加して、遊離水の濃度を更に下げ、この脱水効果を高めることが挙げられる。
【0013】
この変更に従って、シリカに結合した核酸はその後、濃いアルコール(しばしば70%~90%のエタノール)で洗浄される。この洗浄措置により、生体試料又は結合バッファーに由来する残留する非核酸化合物の除去が確実となる。最後に、中性又は弱塩基性のpHの低イオン強度の溶液を用いて核酸を溶出させる。この溶出メカニズムにより、PCR及びNGS等の下流用途との直接的な適合性が可能となる。
【0014】
上記説明のように、Hourfarらは、生体試料からのRNA精製用の代替的なシリカベースのアプローチを初めて発表した。Samsungelectronics、ジョンズホプキンス大学、及びMiDiagnosticsからのその後の出版物及び/又は特許は、酸性条件及びコスモトロピック塩を使用してRNA(及びはるかに少ない程度でDNA)のシリカへの結合を媒介する同じ化学に基づいている。この化学がRNAで機能する理由の考えられる説明は、以下のことに基づき得る。シリカ表面のシラノール基は4~8の範囲のpKa値を有する。結合バッファーと試料との混合物のpHをこれらの値より低くすると、弱酸性のシラノール基のプロトン化が促進されるため、その強い負電荷が排除される。その結果、核酸の負に荷電したリン酸骨格による静電荷反発が大幅に減少するどころか、完全に排除されることもある。
【0015】
さらに、最少量のコスモトロピック塩(すなわち(NH42SO4)を使用して、遊離水の量を大幅に減らすことで、核酸及びシリカメンブレンを脱水することができる。先の説明のように、強いコスモトロピックイオンは大きな水和殻を有することから、かなりの量の遊離水を捕捉することができる。その点において、例えば5 Mのグアニジンチオシアン酸塩と同様の効果をもたらすのに、限られた量のコスモトロピック塩(特定の塩に応じて400 mM~1000 mM)しか必要とされないと仮定することができる。これらの効果を使用して、柔軟性のRNAのシリカへの結合と、はるかに少ない程度で、二本鎖であるためより硬直性のDNAのシリカへの結合とを説明することができる。
【0016】
次に、結合した核酸は、Boomのプロトコルにおいて実施されるように高いパーセンテージのアルコールで洗浄されるが、洗浄が完全にアルコール不含である変形形態が記載された。上記変形形態においては、洗浄は、結合バッファーと同様のバッファー又はその簡易化版、すなわち、コスモトロピック塩を含まない又は限られた量のコスモトロピック塩を含む酸性溶液(pH 4~7)を用いて行われた。これらの洗浄措置は、主として、シラノール基のプロトン化により静電荷反発を除去することで核酸の溶出を妨げるという試みを基礎とすると仮定することができる。その際、溶出メカニズムはBoomのプロトコルのメカニズムと同様である。
【0017】
このアプローチは、RNAの精製においては非常に上手くいくことが証明されているが(しばしば、RNA選択的と記載されることさえある)、二本鎖DNA(dsDNA)の精製は依然としてはるかに困難であることに留意する必要がある。これらの化学によるdsDNAの抽出収率は10倍~100倍低いことが示されており、これは血漿からDNAを抽出するには明らかに不十分である。
【0018】
本明細書においては、小さな第四級有機化合物カチオンと、カオトロピック性が非常に弱く溶解性の高いアニオンとからなる塩をうまく使用することにより、強力なカオトロピック薬剤不含の核酸抽出法の不利点に対処した。第四級化合物は、4個の非荷電置換基、大抵はアルキル基及びアリール基を有する中央の正に荷電した原子からなるカチオンである。これらのカチオンは、それらの溶液のpHとは無関係に永久荷電されている。これらのカチオンは、しばしば不活性カチオンとして記載される。特に、例えば、テトラメチルアンモニウム(TMA+)カチオンと弱カオトロピック性の塩化物(Cl-)アニオン又は臭化物(Br-)アニオンとの組合せからなる塩が、酸性pHで、Boomのプロトコル等のカオトロピック薬剤ベースのプロトコルに匹敵する効率にて、シリカ固体担体上でdsDNAを単離する特有の条件を生ずることを観察し、実証した。
【0019】
本発明者らの知る限り、小さな第四級有機化合物カチオンと弱カオトロピック性のアニオンとからなる塩は、生体試料からの固体担体ベースの核酸抽出には使用されていない。1977年にJ.M. Orosz及びJ.G.Wetmur(非特許文献2)によって、同様の塩を使用してDNA及びdsRNAの融解及び再生の特性が研究されたが、彼らの研究は、固相核酸抽出においてこれらの塩を使用するという選択肢を考慮していない。さらに、特許文献5は、一本鎖ポリ(A)ストレッチを含む核酸(すなわち、主にメッセンジャーRNA)を濃縮する一方で、固定化されたオリゴdT捕捉プローブで被覆された固体担体上の、例えばrRNA等の不所望な核酸を除去する方法において、第四級アンモニウム塩と組み合わせてナトリウム塩を使用することを記載している。特許文献5の教示は、ポリ(A)核酸に対する厳密かつ選択的な特異性を暗示しており、液体生検等の試料からの何らかの他の種類の核酸を単離するには適していないように見える。次に、特許文献6は、テトラメチルアンモニウムクロリド((CH34NCl)と、ポリスチレンのような固体表面に合成オリゴヌクレオチドを固定化するカチオン性デタージェントとを含むハイブリダイゼーション溶液を開示している。しかしながら、重要なことには、特許文献6は、複雑な生体試料の文脈からの、特に血漿等の液体生検試料からの天然の核酸の固体担体上での精製を教示していない。結論として、上記の開示のいずれも、Boomのプロトコルの一般的な代替としての核酸単離用の小さな第四級有機化合物塩の利用を教示も示唆もしていない。
【0020】
本明細書に提示されたアプローチのBoomのプロトコルと比較した利点は幾つかある。最初に、Boomのプロトコルは、当初、長いゲノム及びプラスミドDNA/RNAを単離するように設計された。血漿及びFFPE試料中に典型的に存在するゲノム材料の高度に断片化された性質によって、分子診断におけるその利用は課題を抱えている。核酸の短い断片は、当然、疎水性の結合部位がはるかに少ないため、Boomのプロトコルにおいて使用される高濃度のカオトロピック薬剤下でのシリカへのそれらの結合効率は制限される。この制限に反して、第四級カチオンと穏やかなカオトロピック薬剤とから構成される塩に基づく本明細書に提示されたアプローチを使用して、短いdsDNA断片及びより長いdsDNA断片の両方を単離することができた。さらに、短いDNA(すなわち、10 bp~300bpの範囲の長さを有する)の抽出効率はpHの増加とともに低下し得るが、高分子量DNAの抽出効率はpHの増加とともに高まり得ることが観察されたので、pH値を変動させることにより、本明細書に開示されるアプローチは更に、所望のDNA標的長さに応じて抽出効率を微調整することへの突破口を切り開く。
【0021】
本明細書に開示される方法の次の利点は、結合バッファーの化学組成によりタンパク質凝集が引き起こされないことであり、これにより原則として、タンパク質消化工程なしで血漿試料の処理が可能となる。血漿と結合バッファーとの混合物は、スムーズな流速を可能にし、マイクロ流体デバイスでのその使用を容易にする。したがって、少ない容量の又は希薄な試料の場合に、本明細書に開示される方法を使用すると、タンパク質消化工程を省くことができるものの、容量が400 μLを超える一部のより古い血漿試料の場合には、最終的な抽出収率を高めるのに、任意の工程としてタンパク質消化工程を含めることは、依然として有用であり得る。
【0022】
次に、上記のように、LOCデバイス又は使い捨てカートリッジにはしばしば、Boomのプロトコルで使用される比較的多量の結合バッファーに十分となる保管場所がない。さらに、カオトロピック塩は高価であり、強力なPCR阻害特質を有し、製造ラインにおいて、例えば結晶化によって引き起こされる多くの問題をもたらす可能性がある。これとは対照的に、本明細書に提示される方法及び結合バッファーは、強力なカオトロピック薬剤を含まず、安価であり、試料当たりに必要とされる結合バッファーの容量を大幅に削減するため、完全集積型の分子診断デバイスにおける試料投入量を増やすことが可能となる。後者は、例えば、血漿1ミリリットル当たりの腫瘍由来の突然変異DNAコピーの量が非常に僅かであり、検出が困難である癌患者から取得された液体生検を処理する場合の大きな利点である。最後に、本明細書で提示される方法は包括的なものであり、つまり、これらの方法は、様々な生体試料からの短いdsDNA及び長いdsDNAの両方だけでなく、ssDNA及び場合によっては更にRNAの効率的な精製も可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】欧州特許第389063号
【特許文献2】米国特許第7,923,551号
【特許文献3】国際公開第2016/073824号
【特許文献4】国際公開第2018/156906号
【特許文献5】国際公開第2015/165859号
【特許文献6】国際公開第1995/015970号
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Melzak etal. (1996)
【非特許文献2】Biopolymers,vol. 16, 1183-1977
【発明の概要】
【0025】
核酸のシリカベースの精製の化学は、1990年にBoomらが当初の方法を発表して以来、あまり変わっていない。多くの場合、これは、生体試料から50%を超える核酸抽出収率をもたらすBoomの抽出技術の適切な性能によるものである。Boomのプロトコルは、かなりの量のカオトロピック塩及びアルコールを使用することによって核酸のシリカへの結合を媒介している。しかしながら、小型化された集積型ラボオンチップ(LOC)デバイスの最近の台頭に鑑みて、そこに収容されるバッファー容量を最少化して、それらが受容し得る試料容量の投入を最大化することが必要であるように思われた。したがって、強力なカオトロピック薬剤を含まず、経済的であり、そして集積型システムにおける試料投入量の増加を可能にする、新規の核酸精製の化学が明らかに必要とされている。
【0026】
本明細書には、酸性条件及び第四級アンモニウム化合物から構成される比較的少量の塩のみを使用することによって、核酸のシリカへの結合を媒介する新規の精製の化学が提示されている。開示された方法は、結合バッファーの容量を試料容量に対してかなり減らすため、試料投入量を増やすことが可能となり、これは完全集積型の分子診断デバイスにおいて非常に有益である。さらに、開示された単離方法は、Boomのプロトコル等の強力なカオトロピック薬剤ベースのプロトコルの性能に匹敵する適切な核酸収率をもたらす。
【0027】
本明細書に提示された概念をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】中性pHでの様々なカオトロピック塩及びコスモトロピック塩の結合バッファーにおけるdsDNAの抽出効率を示す図である。
図2】酸性pHでの様々なカオトロピック塩及びコスモトロピック塩の結合バッファーにおけるdsDNAの抽出効率を示す図である。
図3】Boomの抽出の結合バッファーと、第四級アンモニウム化合物を含む又は含まない塩化物ベースのバッファーとの間の比較を示す図である。
図4】様々なpH範囲での様々なDNA抽出の化学の比較を示す図である。
図5】TMASとTMACとの間の比較を示す図である。
図6】様々なTMA含有塩の性能を示す図である。
図7】様々な結合濃度でのTMACの性能を示す図である。
図8】様々なpH値でのTMACの性能を示す図である。
図9】様々な濃度でのCTABを含む又は含まない様々な血漿バッチにおけるTMACの性能を示す図である。
図10】様々なTMACバッファーの性能を示す図である。
図11】様々な溶出条件の調査を示す図である。
図12】プロテイナーゼ予備消化を含むことの潜在的な利点を示す図である。
図13】密閉された集積型カートリッジにおける方法の性能を示す図である。
図14】密閉された集積型カートリッジにおける様々な血漿バッチにおけるBoomの抽出と、TMAC+CTAB抽出の化学との間の比較を示す図である。
図15】密閉された集積型カートリッジにおける様々な血漿バッチにおけるBoomの抽出と、TMAC+CTAB抽出の化学との間の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は概して、場合によっては液体生検試料である生体試料とシリカ固体担体とを、3から6の間のpH値で、かつ、
4個の有機置換基R1~R4(それぞれの有機置換基R1~R4における炭素原子の数は2を超えない)を有する中央の正に荷電した原子からなる第四級化合物として定義される小さな第四級有機化合物と、
臭化物アニオン又は塩化物アニオンと、
からなる塩の存在下で接触させることを含む、核酸抽出方法に関する。
【0030】
言い換えれば、RNAだけでなくDNAの効率的な単離も可能にする包括的なカオトロピック薬剤不含の核酸精製プロトコルを提供する、酸性条件及び小さな第四級有機化合物を含む最少量の塩の使用に基づく新規の結合バッファーの化学が本明細書に開示される。本明細書で使用される場合に、「第四級化合物」という用語は、「第四級有機化合物」という用語と区別なく使用されるべきであり、これは、更に有機置換基R1~R4と呼称される4個の有機置換基(すなわち、アルキル基及び/又はアリール基及び差し引き分の水素原子)を有する中央の正に荷電した原子からなるカチオンであると又は該カチオンであるイオンを有すると定義される化学的化合物として理解されるべきである。本明細書で使用される場合に、「小さな第四級有機化合物」という用語は、4個の有機置換基R1~R4のそれぞれ1つにおける炭素原子の数が2個の炭素原子を超えない第四級有機化合物として理解されるべきである。溶解性を考慮して、好ましい有機置換基は、単一炭素基、すなわちメチル基である。4個の有機置換基R1~R4がメチル基からなることが多いほど、溶解性が高くなると見なされるため、小さな第四級有機化合物での作業はより簡単でより好ましい。上記にもかかわらず、4個の有機置換基R1~R4の1個以上に2個の炭素原子を含む有機置換基でも十分に溶解性であり、本明細書に開示される方法を実施するのにかなり適しているとも考えられる。
【0031】
最もよく知られている第四級化合物は、中央に窒素原子を有する第四級アンモニウムカチオン(R4N+)を含む塩である第四級アンモニウム塩である。したがって、一実施形態においては、小さな第四級有機化合物の正に荷電した原子が窒素である方法が提供される。他の可能な例及び妥当に機能し得る実施形態としては、第四級ホスホニウム塩(R4P+)、アルセノベタインのような第四級アルソニウム塩(R4As+)だけでなく、幾つかのヒ素含有超伝導体が挙げられ得る。置換されたスチボニウム(R4Sb+)及びビスマソニウム塩(R4Bi+)が存在することも記載されており、本明細書に提示される方法の或る特定の実施形態において恐らく機能し得る。
【0032】
後の実施例に示されるように、本発明の方法において使用される塩のアニオンもまた、最終的な核酸抽出の収率に影響を与える。上記の既知のRNAに特化した方法とは異なり、コスモトロピック性が強いアニオンはDNAの抽出には適していないように思われる。それよりも、臭化物イオンのようなカオトロピック性が非常に弱いイオン、又は更にカオトロピック性が弱い/ぎりぎりコスモトロピック性の塩化物イオンが一般に最良の結果をもたらし、殆どの実験構成において後者が僅かに好ましいことが分かった。こうして、次の実施形態においては、アニオンが塩化物イオンである方法が提供される。
【0033】
RNAのシリカへの結合とDNAのシリカへの結合との間の上記の強調された違いは、恐らくRNAの少なくとも部分的な一本鎖の性質によるものであり得ると仮定される。つまり、RNAのシリカへの結合はdsDNAの結合よりも容易であると考えられ、これは恐らく、一本鎖核酸では塩基の回転移動度が増加するため、それらの利用可能な疎水性結合部位の量が増えることに起因し得る。反対に、二本鎖DNAでは、塩基とシリカメンブレンのシロキサン(Si-O-Si)ブリッジとの間の疎水性相互作用を促進するには、恐らく、そのらせん構造に大きな変化が必要とされ得る。
【0034】
DNA二重らせんは主に、
塩基と水性環境との間の水素結合、
負に荷電したリン酸骨格の静電的遮蔽、
隣接する塩基間の塩基スタッキング相互作用、
によって安定化されると考えられている。
【0035】
後者は、二重らせんの安定性に対する最も優勢な誘因として説明されている。シリカメンブレンへの効率的な結合を可能にするには二重らせんの不安定化が必要とされ、存在するイオンの種類及び量が二本鎖DNAのらせん配座を定義する上で主要な役割を果たすと仮定されている。
【0036】
本発明者らの経験から、酸性条件及びコスモトロピック塩は、dsDNAのシリカへの結合を促進するとは思えない。限られた量のコスモトロピック塩を使用すると、二重らせんの配座が変化し、シリカメンブレンに対するdsDNAの親和性が恐らく更に低下する可能性がある。この理由から、本アプローチの前に知られていたコスモトロピック薬剤ベースの方法はRNA選択的であると仮定される。高い電荷密度を有する小さなカチオンは、理論的にはらせん構造の副溝と主溝との間に嵌まることができるのに対して、コスモトロピック性が強いアニオンは、二重らせんを強く脱水して、恐らく二重らせんを硬直性のA-DNAへと配座変化させ得るため、シリカ固体担体の結合への塩基の利用可能性を低下させると仮定される。この推論に従って、この親和性低下効果を打ち消し、dsDNAのシリカメンブレンへの結合を促進するには、カチオンの安定化効果を排除すべきであり、かつコスモトロピックアニオンの脱水効果を低下させるべきであると仮定した。この効果は、第四級アンモニウム化合物と、カオトロピック挙動とコスモトロピック挙動との境界にあると説明されている塩化物イオン等のカオトロピック性が弱い/コスモトロピック性が弱いアニオンとから構成される塩を使用することによって達成され得ることが判明した。第四級アンモニウム化合物は、4個の非荷電置換基、大抵はアルキル基及びアリール基を有する中央の正に荷電した窒素原子からなるカチオンである。これらのカチオンは、その溶液のpHとは無関係に永久荷電されている。これらのカチオンは、しばしば不活性カチオンとして記載される。
【0037】
本発明者らの理論モデルに基づいて、TMACのような小さな第四級有機化合物を使用した本アプローチの成功は、第四級アンモニウムカチオンの不活性及び全体の大きさによる、負に荷電したdsDNAのリン酸骨格の静電的遮蔽の妨害に少なくとも部分的に起因し得ると仮定した。TMA+のメチル基が立体障害を起こすことで、らせん構造の副溝又は主溝へのその結合を妨害する可能性もある。このような不活性カチオンから構成される塩を使用することにより、シリカに対するdsDNAの親和性に悪影響を及ぼす配座変化が妨げられる一方で、カオトロピック性が弱いアニオンが、観察されるdsDNA二重らせんの効率的な結合に十分なシリカ担体の脱水を依然としてもたらし得ると考えられる。
【0038】
上記に即して、次の実施形態においては、小さな第四級有機化合物が、更にTMACと呼称されるテトラメチルアンモニウムクロリドである方法が提供される。更なる実施形態においては、以下の実施例で裏付けられるように、シリカ結合条件下でのTMAC濃度として例示される小さな第四級有機化合物の濃度は、0.1 Mから2 Mの間、恐らく0.5 Mから1.8Mの間、若しくは恐らく0.8 Mから1.6 Mの間、若しくは恐らく1 Mから1.4 Mの間に含まれ、又は約1.2Mであり得る。
【0039】
開示された方法の利点の1つは、所望の用途に応じて、結合バッファーの必要量に対する試料の投入容量のそれらの潜在的な最大化である。この特徴は、規定の及び限られた内容量を有する密閉された流体カートリッジ等の集積型デバイスに特に有利である。この特徴は、結合バッファーの成分の溶解性に直接的に依存する。好ましい小さな第四級有機化合物のTMACは、室温で安定した9 MのTMACの溶液を得ることに対応する1000 g/L超の優れた溶解性を有する。酸性pH条件を確実にする例示的な緩衝化合物である酢酸ナトリウムもまた、5.6 Mに等しい水中での高い溶解性を有する。したがって、例えば、開示された方法の一実施形態において、1.2 MのTMAC及び0.2 Mの酢酸塩が、核酸のシリカへの結合の条件(すなわち、試料及び結合バッファーをシリカ固体担体と接触させる条件)で使用される場合に、6/1の試料対バッファーの比率を結合条件で達成することが可能である。そのような例示的な結合バッファーは、8.4 MのTMAC及び1.4 Mの酢酸塩を含み、これらの濃度はどちらも室温で可溶である。こうして、可能な実施形態において、試料/バッファーの比率は、用途への適性に応じて、6/1から1/6までの全体の範囲であり得る。
【0040】
開示されたアプローチの独自性は、酸性条件におけるシリカメンブレンへの核酸(RNAだけでなく、とりわけDNA、特にdsDNAも)の結合を媒介する小さな第四級有機化合物と、カオトロピック性が弱いアニオン(すなわち、塩化物イオン、又は或る程度は臭化物イオンも)とから構成される塩の使用の範囲内にある。本明細書で使用される場合に、「酸性条件」という用語は、当該技術分野で広く受け入れられ、水素イオンのモル濃度(1リットル当たりのモル数の単位で測定される)の標準的なpHの基数10の対数スケールで推定されるpH値が、少なくとも7の値を下回る水溶液中の条件を指すと理解されるべきである。したがって、更なる実施形態においては、pH値が4から5.8の間、4.2から5.6の間、4.4から5.4の間、4.6から5.2の間に含まれ、恐らく約5である方法が提供される。これらのpH範囲で、かつシリカ固体結合担体の存在下において上記の特定の塩組成物を与えると、RNAだけでなく、重要なことにはDNAとも適合性のある包括的な核酸精製技術が提供されると考えられる。
【0041】
シリカへの結合に続いて、次に、当該技術分野で知られる標準的なシリカ洗浄及び溶出方法によって、核酸を洗浄及び溶出させることができる。
【0042】
例えば、結合した核酸の洗浄は、当初のBoomのプロトコルで使用された方法論と同様の方式で実施され得る。すなわち、濃いアルコール、しばしば90%のエタノールが使用され得る。上記で論じられたように、以前に知られている方法の一部には、コスモトロピック塩を有しない酸性溶液又は最少量のコスモトロピック塩を含む酸性溶液に基づく洗浄措置が記載された。本発明者らの観察に基づき、そのようなアプローチはRNA用途とのみ適合可能であると考えられる。洗浄中のdsDNAの再水和は、塩基間の水素結合形成により二重らせんの安定化を引き起こすため、シリカ固体担体からのその早期放出がもたらされると考えられる。
【0043】
その際、溶出メカニズムは、以前に知られている方法から既知のメカニズムとほぼ同様であることとなる。例えば、中性又は弱塩基性のpHの低イオン強度の溶液が使用される。これは、水又は通常のPCRバッファーのいずれかであり得る。また、溶出バッファーにおけるpH及び二価カチオンの量が溶出効率に大きく影響し得ることも観察された。これは恐らく、負に荷電したシラノール基と負に荷電したリン酸骨格との間の電荷反発が溶出中に重要な役割を果たす可能性が高いためである。したがって、溶出バッファーのpHを高めることによるシラノール基の脱プロトン化(負電荷の強化)により、溶出効率の向上がもたらされることとなる。小さなカチオン及び/又は二価カチオンが全く存在しないことも、恐らく静電的遮蔽の欠如のため溶出効率を促進する。これらのメカニズムはこの分野において一般に知られており、したがって、プロトコルに適した洗浄及び溶出の戦略の選択は、当業者にとって大きな問題とはならないため、本明細書ではこれ以上論じない。
【0044】
代替的な更なる実施形態においては、少なくとも幾つかの種類の生体試料に関して、Boomのプロトコルの強力なカオトロピック性の化学を断念すると、幾つかの課題がもたらされ得るため、本明細書に開示される方法への幾つかの追加が採用され得る。
【0045】
特に、Boomの抽出ベースのプロトコルに焦点を当てると、カオトロピック塩は、
(i)他の生体分子(例えば、タンパク質、リポタンパク質)がシリカ固体担体上に沈着するのを防ぐこと、
(ii)ヌクレアーゼの活性を阻害すること、
(iii)DNAをヒストンタンパク質から放出して、シリカとの相互作用を強化すること、
を可能にする。
【0046】
当業者によって知られるように、プロテアーゼを導入してタンパク質消化工程を実施することによって、同じ効果を達成することができ、これは、特に困難な(例えば、古い)試料において有利であり得る。したがって、別の実施形態においては、この方法に先行して、例えばプロテイナーゼKを用いたプロテアーゼ処置が行われる。
【0047】
別の実施形態においては、生体試料が液体生検試料である方法が提供される。本明細書で使用される場合に、「液体生検」又は「液体生検試料」という用語は、被験体から取得された任意の非組織標本、特に体液試料を指すと理解されるものとする。液体生検の起源としては、限定されるものではないが、血液、血漿、血清、尿、脳脊髄(CSF)液、羊水、他の体液、例えば、唾液、汗、涙、乳汁、精液、糞便、胸膜液、腹膜液、又は洗浄液等が挙げられる。液体生検試料中の核酸を分析することにより、動的な疾患又はその他の生理学的状態のモニタリングを可能にする高価で侵襲的な痛みを伴うことが多い組織生検及び/又は腫瘍生検の必要性を最小限に抑えることができる。例えば、癌患者において、液体生検から抽出された無細胞腫瘍DNA又はRNAを、突然変異、転座、又はコピー数の変化、及び特定の癌マーカーの発現の検出に使用することができる可能性がある。
【0048】
血液(血漿、血清、又は全血も同様)は、ヒトにおける液体生検試料の分析に使用される最も一般的に記載される流体である。癌患者において、血液が、循環腫瘍細胞(CTC)、並びに腫瘍組織からそれぞれ放出される循環腫瘍DNA(ctDNA)及び循環腫瘍RNA(ctRNA)を含む無細胞DNA(cfDNA)及び無細胞RNA(cfRNA)の起源であり、これらを使用して、患者の腫瘍に存在する突然変異を検出することができる。しかしながら、注目すべきことに、ctDNAは血液中に存在するcfDNAのごく一部しか含まないため、希有な突然変異を検出するために核酸分析用の試料容量を最大化することの重要性が強調される。さらに、cfDNAは常に低品質であり、ほぼヌクレオソームのサイズ(140 bp)に断片化されている。したがって、腎臓、前立腺、並びに上部尿路上皮癌及び下部尿路上皮癌を含む或る特定の癌の種類については、尿は腫瘍由来材料のより豊富な起源であり得るため、代替的な液体生検アプローチを使用する。尿はまた、取得のしやすさ(熟練の医療スタッフを必要としない)、患者の不快感がないこと(患者のコンプライアンスの向上)等の他の独自の利益も有し、血液に比べて汚染タンパク質が少ない場合がある。しかしながら、尿は依然として非常に希薄な材料であるため、診断アプローチにおける、特にPoCデバイスでのその使用はまた、試料の投入容量の最大化から恩恵を受けることとなる。特に流体カートリッジのような集積型のPoCデバイスの内部で、血液又は尿の試料容量の投入を最大化することを可能にする核酸抽出の化学についての現存する必要性を考慮して、本方法はこの目的に非常に適しているので、別の例示的な実施形態においては、液体生検試料が血漿、血清、全血、又は尿から選択される方法が提供される。
【0049】
関連する実施形態においては、核酸がDNAであり、これが、液体生検試料中に比較的希釈されているにもかかわらずRNAよりも安定であり、かつBoomの抽出ベースのプロトコルの効率と同様の効率で本明細書に開示される方法を使用して単離され得る方法が提供される。
【0050】
更なる実施形態においては、DNAは、通常、断片化された及び/又は二本鎖のDNA型である無細胞DNA(cfDNA)又は循環腫瘍DNA(ctDNA)であり得る。
【0051】
注目すべきことに、或る特定の全血又は古い血漿若しくは血清の試料の場合には、本明細書に提示された新規の結合化学(例えば、pH 5で1 MのTMAC+0.2 Mの酢酸塩を含む)は、抽出収率の低下をもたらし得る過剰なタンパク質沈殿及び/又はシリカ固体担体の遮断のため、時々問題を抱えることになる場合がある。試料の種類に応じて、適切なデタージェントの添加によりこの問題に対処することができる。したがって、別の代替的な実施形態においては、デタージェントの存在下で接触が行われる方法が提供される。本明細書で使用される場合に、「デタージェント」という用語は、広義に、界面活性特性を有する化学的化合物又は混合物に関連するものとして解釈されるべきである。本明細書で使用される場合に、「デタージェント」という用語は、両親媒特性を有し、それらを含む液体の表面張力を低下させるあらゆる化合物又は化合物の混合物に関連する「界面活性剤」という用語の同義語として理解されるべきである。また、デタージェントは、ヒストンからのDNAの除去を更に強化することで、ヌクレアーゼ活性の阻害においてプロセスの効率を更に支援し得ると考えられる。
【0052】
特定の実施形態においては、例えば、試料がアルブミンの豊富な存在に起因する問題を示し得る可能性がある血漿試料である状況において、デタージェントが第四級アンモニウム化合物デタージェントである方法が提供される。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)等の第四級アンモニウム化合物デタージェントは、アルブミンの溶解性を強力に促進し、アルブミンがシリカメンブレンを飽和することを妨げることが観察された。そのようなデタージェントの第四級の性質は、これらがDNAのらせん配座を変化させることを妨げる場合もあるため、該デタージェントは、dsDNAのシリカへの結合効率に一切影響を及ぼさないと仮定すれば有利である場合がある。困難な血漿試料を使用した本発明者らの実験の間に、特にその有効性が0.25%から1%の間の非常に低いシリカ結合濃度範囲でさえも観察されるため、CTABを用いて得られた効果を高く評価した。このような低い濃度は、バッファー容量の最小化を引き換えに試料の投入容量の最大化が行われる密閉された集積型デバイスの用途の場合に関心が持たれる。したがって、別の実施形態においては、第四級アンモニウム化合物デタージェントがセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)である方法が提供される。
【0053】
別の実施形態においては、上記方法は、自動式システムの一部を形成し得る密閉された流体カートリッジである可能性がある流体カートリッジの内部で実施される。上記の実施形態の一実施形態においては、該カートリッジは、生体試料を直接的に受容し、本明細書に提示される新規の核酸抽出の化学を使用してそこからPCRグレードの核酸を取得し、かつ少なくとも1つのPCR反応物を収容するのに適しており、それに適合された種類のものであり得る。
【0054】
本明細書で使用される場合に、「カートリッジ」という用語は、そのようなカートリッジを受容する又はそこに接続するのに適したより大きな機器の内側又は外側に1つの付属品として移送され得る又は移動し得る単一の物体として形成される、チャンバー及び/又はチャネルの自己充足型アセンブリーとして理解されるべきである。カートリッジ及びその機器が、自動式システム又は自動式プラットフォームを形成していると見なすことができる。カートリッジに収容される幾つかの部品は強固に接続されている場合があるのに対して、その他の部品はカートリッジの他の構成要素に対して柔軟に接続されて可動である場合がある。同様に、本明細書で使用される場合に、「流体カートリッジ」という用語は、流体、有力には液体を処置、処理、排出、又は分析するのに適した少なくとも1つのチャンバー又はチャネルを含むカートリッジとして理解されるものとする。このようなカートリッジの一例は、国際公開第2007/004103号に示されている。有利には、流体カートリッジは、マイクロ流体カートリッジであり得る。流体カートリッジの文脈において、「下流」及び「上流」という用語は、そのようなカートリッジ中を流体が流れる方向に関連するものとして定義され得る。すなわち、流体が同じカートリッジ中の第2のセクションに向かって流れるカートリッジ中の流体経路のセクションは、第2のセクションの上流に配置されていると解釈されるべきである。同様に、流体が後に到着するセクションは、上記流体が先に通過したセクションに対して下流に配置されている。一般に、本明細書で使用される場合に、「流体」又は時に「マイクロ流体」という用語は、少なくとも1次元又は2次元(例えば、幅及び高さ又はチャネル)で、小さな、典型的にはミリメートル未満のスケールに幾何学的に制約される流体の挙動、制御、及び操作を扱うシステム及び装置について言及している。そのような少ない容量の流体はマイクロスケールで動かされ、混合され、分離され、又はその他に処理されることから、小さなサイズ及び低いエネルギー消費しか必要とされない。マイクロ流体システムとしては、マイクロ空気圧システム(圧力源、液体ポンプ、マイクロバルブ等)、並びにマイクロリットル、ナノリットル、及びピコリットルの容量を取り扱うマイクロ流体構造物(マイクロ流体チャネル等)等の構造物が挙げられる。例示的な流体システムは、欧州特許第1896180号、欧州特許第1904234号、及び欧州特許第2419705号に記載されており、したがって、本明細書に開示される或る特定の実施形態において適用され得る。上記に即して、「チャンバー」という用語は、流体アセンブリー又はマイクロ流体アセンブリー内の任意の幾何学的形状の任意の機能的に画成された区画であって、少なくとも1つの壁によって画成され、この区画に起因する機能を発揮するのに必要な手段を含む、区画として理解されるべきである。これらの方向性に沿って、「増幅チャンバー」は、(マイクロ)流体アセンブリー内の区画であって、核酸の増幅を実施するのに適しており、それを実施することを目的として上記アセンブリー中に設けられている、区画として理解されるべきである。増幅チャンバーの例としては、PCRチャンバー及びqPCRチャンバーが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される場合に、「自動式システム」という用語は、システムが自動的に使用して或る特定のプロセスを完了する、プラスチック及び溶液等の機器及び使い捨て材料を含む集積型プラットフォームを指すべきである。このようなプロセスは利用者によって開始され得るが、システム内でのその自動化された処理全体を通じて、プロセスが完了するまで利用者の介入は必要とされない。本明細書で使用される場合に、「機器」という用語は、少なくともユーザーインターフェース(例えば、少なくともスタートボタン又は電気プラグを含む)、ソフトウェアを備えたオンボードコンピューターを装備し、例えば、混合、超音波処置、加熱、データの検出及び収集、並びに場合により分析等を含み得るアッセイの実行のような或る特定の機能を実行するようにプログラムされた機械として理解されるべきである。可能な実施形態においては、インターフェースは、試験を開始し、試験結果を表示し、外部情報システムと通信することができるユーザーインターフェースソフトウェアを実行するコンピューターシステムを備えるコンソールの形態であり得る。本方法に容易に対応することができる優れた自動式システムは、Biocartis NVによって製造された診断プラットフォームIdylla(商標)であり、これは、カートリッジ処理機器と連動可能であり、サンプル・トゥー・リザルト(sample-to-result)の分析性能を提供する使い捨ての試薬の入ったカートリッジを使用する。
【0056】
代替的な実施形態においては、直接的に関連する、及び/又は上記の方法の実施を可能にする製品が更に提供される。そのような製品の最も単純な実施形態においては、pHを3から6の間の値に保つように適合された緩衝剤(例えば酢酸塩)と、更にTMACとを、選択した試料と混合した後にシリカ固体担体の結合条件で所望の濃度が得られるように直接的に適合された濃度で両方とも含む結合バッファー溶液が提供される。そのような結合バッファー溶液の有利な例としては、例えば、2.33 MのTMAC及び0.47 Mの酢酸塩、3.6 MのTMAC及び0.6 Mの酢酸塩、4.8 MのTMAC及び0.8 Mの酢酸塩、6 MのTMAC及び1 Mの酢酸塩、7.2 MのTMAC及び1.2 Mの酢酸塩、8.4 MのTMAC及び1.4 Mの酢酸塩が挙げられる。
【0057】
上記の実施形態の代替的な実施形態においては、第四級アンモニウム化合物デタージェント及び/又はプロテイナーゼKを上記で説明される適切な濃度で更に含む結合バッファー溶液が提供される。上記で列記された溶液の例を使用すると、CTABの濃度は2.33 MのTMAC及び0.47 Mの酢酸塩及び1.17%(重量/容量)のCTAB、3.6 MのTMAC及び0.6 Mの酢酸塩及び1.5%(重量/容量)のCTABであり得る。
【0058】
本明細書に開示される製品の代替的な実施形態においては、上記の結合バッファー溶液のいずれかを含むキット及び/又は流体カートリッジが提供され得る。本明細書で使用される場合に、「キット」という用語は、分子生物学プロセス又はアッセイの実施のような特定の目的に必要とされる少なくとも1つの物品若しくはアセンブリー又は物品若しくは備品を含む物体一式として解釈されるべきである。キットは、結合バッファー、洗浄バッファー等のような試薬が入った容器、及び例えば1つ以上のシリカ固体担体スピンカラム、メンブレン、ビーズ等を含む標準的なベンチトップ核酸精製キットの形で提供され得る。代替的に、キットはカートリッジを含み得るか、又は単純にカートリッジの形で提供され得る。これらの方向性に沿って、更なる実施形態においては、緩衝剤が3から6の間の値のpHを保つように適合された結合バッファー溶液と、更にTMACとを含むカートリッジが提供される。更なる実施形態においては、そのようなカートリッジ内の結合バッファー溶液は、CTABを更に含み得る。別の実施形態においては、そのようなカートリッジは、有利には、核酸精製用のシリカ固体担体を更に収容し又は含み得る。更なる可能な実施形態においては、そのようなカートリッジは、流体カートリッジであり得て、及び/又は、例えば血漿又は尿等の液体生検試料の処理に適合され得る。
【0059】
最後に、液体生検試料から核酸を抽出するための、本明細書に記載される方法及び製品(例えば、キット、カートリッジ、自動式システム等)の使用も本明細書で提供される。更なる実施形態においては、有力には二本鎖DNA(dsDNA)、場合により無細胞DNA(cfDNA)、又は更に循環腫瘍DNA(ctDNA)であるDNAの抽出のための、開示された方法及び製品の使用が提供される。
【0060】
本明細書に記載される新規の核酸精製の化学及びそれに関連する製品は、固相抽出技術を使用して生体試料から核酸を単離する多岐にわたる市販のキット、ラボオンチップ(LOC)デバイス、又は使い捨てカートリッジに適用される可能性がある。より詳細には、完全集積型の分子診断デバイスにおけるその利用は、必要とされる結合バッファーの容量が比較的少ないことで、必要なバッファー容量に対して試料投入量を増やすことができるため、大きな価値がある可能性がある。本明細書に提示される概念の実施例を以下に示す。
【実施例
【0061】
一般的な実験構成:シリカスピンカラム(Machery-Nagel、blood column nucleospin)を、QIAvac接続システムによって真空ポンプに接続される真空マニホールドであるQIAvac24 plusシステムに取り付けた。完全な構成はフロースルーシステムとして使用され得る。血漿試料と結合バッファー溶液とを4/3の比率(例えば、1 mLの血漿及び0.75mLの結合バッファー)に従って混合し、シリカスピンカラムに流した。こうして、結合バッファーは、血漿と混合したときに一般に2.33倍に希釈された。4/3の比率は必須ではなく、Idyllaカートリッジの設計に部分的に関連する任意の選択であるにすぎないが(溶解チャンバーは7 mLの最大投入量を可能にする)、これはシリカスピンカラム実験である。結合バッファーの濃度を更に高め、こうして試料容量に対して必要なバッファー容量を減らすことが間違いなく可能である。しかしながら、この特定のスピンカラムの設定については、目詰まり及び流量の観点から血漿試料の1.75倍希釈が十分であるように見えた。引き続き、シリカメンブレンを洗浄バッファーで洗浄し、その後、スピンカラムを真空マニホールドから取り外した。次いで、スピンカラムを1 mLのLo-Bind Eppendorfチューブに入れ、1分間当たり1万回転(rpm)で1分間の遠心分離工程に供した。次いで、スピンカラムを新しい1 mLのLo-bind Eppendorfチューブに移した後に、溶出バッファーを添加した。室温で2分間インキュベートした後に、次にスピンカラムを1万rpmで1分間の追加の遠心分離工程に供した。次いで、溶出された生成物をqPCRにより分析し、精製されたDNAの相対的な定量化を行った。
【0062】
試料の種類及び結合バッファーの化学:血漿(Innovative research)に、全血から単離されたヌクレオソームDNA(nDNA)をスパイクした。スパイクすることは、より少ない血漿容量を処理する場合に頑健な下流のqPCRベースの標的検出を得るのに有用である。さらに、ヌクレオソームDNAは、無細胞DNA(cfDNA)と非常に類似した断片化パターンを特徴としている。短い断片の存在により、それらの抽出効率を評価することが可能となる。100 μLの血漿に20000コピーのnDNAをスパイクした。次いで、スパイクされた血漿を500 μLの結合バッファーと混合した。結合バッファーは、0.24 Mの酢酸ナトリウム(pH 5)バッファー中に溶解された1.2 Mのテトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)から構成されていた。これにより、血漿試料と混合したとき1 MのTMAC及び0.2 Mの酢酸ナトリウムの最終濃度となる。次いで、600 μLの総容量を有するこの酸性混合物を、上記のようにシリカスピンカラムに流した。
【0063】
洗浄バッファーの化学:1000 μLの90%のエタノールをスピンカラムに流すことによって、シリカメンブレンの洗浄を行った。引き続き、スピンカラムを1万rpmで1分間の遠心分離工程に供することにより、残留エタノール痕跡を全て除去した。
【0064】
溶出バッファーの化学:シリカメンブレンを水又はTris-HCl(pH 8.6)バッファーで再水和することによってDNAの溶出を行った。溶出バッファーが室温であり、シリカメンブレンと最低2分間接触していることが重要である。引き続き、スピンカラムを最終的な遠心分離工程(1分間、1万rpm)に供する。次いで、溶出された生成物を1 mLのLo-Bind Eppendorfチューブ中に回収する。
【0065】
qPCRの設計及び条件:短いDNA断片及び長いDNA断片の両方の抽出効率を評価するために、それぞれサイズが異なる3つのアンプリコンから構成されるトリプレックスの設計を使用した。標的アンプリコンは、62bp、98 bp、及び136 bpの長さである。最短のアンプリコンと最長のアンプリコンとの間のCt値の差により、短い標的断片の存在が示される。プライマー及びプローブの配列を要求に応じて準備することができる。20 μLの溶出された生成物を5 μLのPCRバッファーと混合した。最終的なPCR反応の成分は、50 mMのKCl、20 mMのTris-HCl(pH 8.6)、2mMのMgCl2、0.2 mMのdNTPミックス、300 nMの各プライマー及びプローブ、並びに5ユニットのGotaq DNAポリメラーゼであった。Biorad CFX96 Touch(商標)リアルタイムPCR検出システムにおいて、qPCR反応を行った。総反応容量は25 μLであった。サイクリングプロトコルは、ホットスタート(95℃で5分)に続いて50サイクルの変性(95℃で3秒)及びアニーリング(64℃で30秒)を含んでいた。各サイクルの後に蛍光シグナルを測定した。
【0066】
結果:最初に、中性pHでの様々なカオトロピック塩及びコスモトロピック塩又は穏やかなカオトロピック塩の結合バッファーにおけるdsDNAの抽出効率を調査した。様々な結合バッファーにおいて抽出された62 bp及び136 bpのアンプリコンについてのPCRのCt値が図1のY軸に示されている。X軸は中性pHでの様々な結合バッファーの組成を表している。「投入」は基準点であり、スパイクされたnDNAの総量を標的とした場合に取得されるCt値を表している。こうして、基準点とのデルタCtは、抽出効率を示している(つまり、1 Ctのデルタ=50%の抽出効率)。小さなアンプリコンと大きなアンプリコンとの間のデルタCtが基準点と同じままである場合に、これは小さな(62 bp~136 bp)断片の損失がないことを示している。これらの結果は、結合バッファー中のコスモトロピック塩(NaCl又は(NH42SO4)の量が中性pHで増加すると、dsDNAのシリカへの結合効率が低下することを示している。先の説明のように、これは小さなコスモトロピックカチオン(Na+及びNH4 +)がDNA二重らせんに対して安定化効果を起こすことが原因である可能性があると仮定した。明らかに、中性条件において、シリカメンブレンへのDNAの結合を媒介するには高濃度のカオトロピック塩が好ましい。
【0067】
次に、酸性条件(pH 5)を使用して実験を繰り返した。結果は図2に示されている。上記と同様に、Y軸は3つの全ての異なるアンプリコンサイズのCt値を表す一方で、X軸は様々な結合バッファーの組成を表している。このデータは、従来技術に記載されるように酸性条件(pH 5)及びコスモトロピック塩を使用すると、シリカメンブレンへのnDNAの結合が効率的に媒介されないことを示している。pH 5での0.1 MのNaClが、およそ6.25%(デルタCt=4)の抽出効率で最高の能力を発揮したように見えた。
【0068】
次に、カオトロピック性のBoomの結合バッファー(3.68 MのGuSCN及びブタノール)の性能を、第四級アンモニウム化合物を含む又は含まない塩化物ベースの塩を含むバッファーと比較した。結果は図3に示されている。Y軸は3つの全ての異なるアンプリコンサイズのCt値を表している。X軸は様々な結合バッファーの組成を表している。このデータは、第四級アンモニウムカチオン(TMA+)とコスモトロピックアニオン(Cl-)とから構成される塩を使用すると、シリカメンブレンへのDNAの結合が効率的に媒介されることを示している。これらの結果は、第四級カチオンの不活性がDNAのらせん構造の不安定化を可能にするため、利用可能なシリカ結合部位の量を増加させるという仮説を裏付けている。
【0069】
次に、血漿試料について最適なpH範囲を調査した。結果は図4に示されている。Y軸は3つの全ての異なるアンプリコンサイズのCt値を表している。X軸は様々な結合バッファーの組成を表している。この実験は、結合バッファーのpHを4に下げることが、自然血漿試料と不適合であることを示している。0.3 MのTMACを加えるとすぐに、タンパク質の凝集が非常に激しくなり、試料の処理を成功させるのはほぼ不可能となる。これは、血漿中に豊富に存在するアルブミンの等電点(pI)(4.7)に関連している可能性が最も高い。溶液のpHがタンパク質のpIに近づくとすぐに、個々のタンパク質分子間の電荷反発が低下し、沈殿が生ずる可能性がある。この点では、タンパク質凝集を促進するには、アニオンによる僅かな脱水効果だけで十分であるように思われる。
【0070】
次の工程として、TMA硫酸塩(TMAS)とTMACとの性能を比較し、その結果を図5に示す。Y軸は3つの全ての異なるアンプリコンサイズのCt値を表している。X軸は様々な結合バッファーの組成を表している。この実験は、TMASがシリカへのDNAの結合を効率的に媒介しないことを示している。これらの結果は、主要な関連する結合メカニズムが、
(i)十分なコスモトロピックアニオンを与え、こうして遊離水の量を減らすことによって達成されるシリカメンブレン及び核酸の脱水、
(ii)酸性条件を使用し、負に荷電したシラノール基をプロトン化することによって達成される分子間静電力の遮蔽、
であると仮定した本発明者らの最初の仮説に基づいて、最初は驚くべきことであった。
【0071】
上記に基づき、硫酸イオンはその二重電荷のため塩化物イオンよりも強いコスモトロピック性を示すことから、より強い脱水効果を示し、こうしてシリカへのDNAのより効率的な結合をもたらすと予想された。この実験及び他の多くの実験において確認されたように、上記のメカニズム以外のメカニズムが当てはまるはずであると結論付けられた。非特許文献1には、DNA-シリカ相互作用に影響を与え得る第三の効果として、(iii)核酸-シリカ接触層における分子間水素結合の形成が記載された。このデータは、これらの水素結合が当初考えられていたよりも重要である可能性があり、コスモトロピック性が強い硫酸アニオンを使用することにより、これらの結合の形成が強く乱されるどころか、妨げられることさえ示唆しているように見える。したがって、特にコスモトロピック性が弱い又はコスモトロピック性/カオトロピック性の境界として記載された塩化物アニオンの性能は、その水との相互作用が水同士の相互作用よりも強くないというその特定の特質に固有のものである可能性がある。
【0072】
この仮説を更に調査するために、PBS及び血漿試料の両方において、スパイクされたnDNAのシリカへの結合の媒介における様々なTMA含有塩の性能を比較した。結果は図6に示されている。Y軸は62 bpのアンプリコンのCt値を表している。X軸は様々な結合バッファーの組成を表している。「投入」は基準点を示し、スパイクされたnDNAの総量を標的とした場合に取得されるCt値を表している。こうして、基準点とのデルタCtは、抽出効率を示す(つまり、1 Ctのデルタ=50%の抽出効率)。このデータは、アニオンの選択の重要性を示している。塩化物イオンの電荷密度は、最低濃度で最高の抽出効率を可能にする。より高い電荷密度を有する硫酸イオンのようなコスモトロピック性がより高いアニオンは、場合によりB-DNAからA-DNAへの配座変化の媒介又は他の未知のメカニズムにより、抽出効率を急速に低下させる。一方で、より低い電荷密度を有する臭化物イオンのようなカオトロピック性がより高いアニオンは、そのような配座変化を妨げる可能性が高いが、シリカメンブレンの脱水には明らかにより効率が低いため、塩化物イオンの選択によって与えられるのと同等の性能を可能にするのに、より高いモル濃度が必要とされる。カオトロピック性がより高いアニオンの電荷密度の低下も第四級アンモニウム塩の溶解性に悪影響を与えることにも留意すべきである。この観点から、TMACが性能及び溶解性の両方において優れている。
【0073】
TMACが最も有望な第四級アンモニウム塩であることが確認されたので、次に、本発明者らの特定の実験設定におけるその最適な濃度を調査した。結果は図7に示されている。Y軸は3つの全ての異なるアンプリコンサイズのCt値を表している。X軸は様々な結合バッファーの組成を表している。これらの結果は、結合バッファー中のTMACの濃度を1 Mよりも高くすると、シリカへのDNAの結合効率に有益な効果が奏されないことを示している。TMACの濃度を高めると、それどころか結合効率は僅かに低下する。
【0074】
次に、様々なpH値でTMACを使用してdsDNA抽出性能を調査した。結果は図8に示されている。Y軸は3つの全ての異なるアンプリコンサイズのCt値を表している。X軸は様々な結合バッファーの組成を表している。これらの結果は、結合バッファーのpHの重要性を示している。先の説明のように、未消化の血漿を処理する場合に、アルブミンの等電点(4.7)の近くに結合バッファーのpHを下げると、激しいタンパク質凝集が起こることから、スピンカラム又はマイクロ流体チャネルにおいて試料を処理することが不可能となる。さらに、結合バッファーのpHを5よりも高めると、シラノール基とDNAのリン酸骨格との間の負の電荷反発が僅かに増加し、その結果、DNAのシリカへの結合効率が低下する。シリカメンブレン上の表面シラノール基は、4~8の範囲のpKa値を有すると説明されている。pHを高めると、最低のpKa値を有するシラノール基の脱プロトン化が起こる可能性が高いため、シラノール基は負に荷電する。
【0075】
次に、複数の様々な血漿のバッチについて、TMACのモル濃度及び酢酸バッファーのpHをより広範囲に研究した。さらに、結合バッファーに第四級アンモニウムデタージェントであるセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)も追加した。結果は図9に示されている。Y軸は62 bpのアンプリコンのCq値を表している。X軸は、添加されたCTABの様々な量を含む結合条件を示している。nDNAをスパイクした後に限られた量の血漿が処理される先行する実験とは異なり、この実験は、1 mLのスパイクされていない血漿からのcfDNAの抽出に焦点を当てている。更なる効果の向上のために、1 mg/mLのプロテイナーゼKを使用して、血漿試料を37℃で10分間のタンパク質消化工程にも供した。1 mLの血漿試料を、0.75 mLの結合バッファー(2.33 MのTMAC、0.47 Mの酢酸塩、1.17%のCTAB、pH 5)を添加することによって処理した。引き続き、メンブレンを1 mLの最初の洗浄バッファー(1 MのTMAC、0.2 Mの酢酸塩、pH 5)で洗浄し、最後にメンブレンを更に1 mLの90%のEtOHで洗浄した。それぞれの結合条件ごとに、10個の異なる試料を処理した。図9の箱ひげ図は、Cqの平均値及び中央値、並びに変動を示している。CTABの添加は、試料間のばらつきを減らし、DNA収率を増やすことができるため、有益な効果を有し得ることは明らかである。この効果は、CTABがアルブミンの溶解性を促進し、こうしてアルブミンがシリカメンブレンに沈着するのを妨げることによって引き起こされると考えられる。また、ヌクレアーゼ活性を阻害する可能性が高く、恐らく同様にヒストンからのcfDNAの除去にも役立つ。
【0076】
次に、様々なpH値での様々なTMACのモル濃度に注目した。複数の血漿のバッチについて様々な結合条件を評価することにより、図10に示されるように、異なる試料が異なる条件に対して非常に異なる応答を示すことが明らかになった。Y軸は62 bpのアンプリコンのCt値を示している。X軸は結合条件の様々なpH値を表している。プロットの形状は、異なるTMACのモル濃度を表している(凡例で説明されている)。
【0077】
次に、溶出条件の効率を調査した。結果は図11に示されている。Y軸は3つの全ての異なるアンプリコンサイズについてのCt値を示している。X軸は、室温での様々な溶出バッファーの組成及びインキュベーション時間を示している。このデータは、僅かに塩基性のバッファーを使用した場合に溶出工程が最も効率的であることを示している。改めて、これは恐らく表面シラノール基のpKa値に関連している。シラノール基とリン酸骨格との間の負電荷反発が、再水和を伴う溶出の間の主な駆動力であると考えられる。したがって、溶出バッファーにシラノールの最高のpKa値(8)を超えるpHを与えると、全てのシラノール基が負に荷電することが保証される。図11から、50 mMのK+及び2 mMのMg++の存在が溶出効率に悪影響を与えることを認めることができる。シラノール基とリン酸骨格との間の負電荷反発を遮蔽するこれらのコスモトロピック性が強いカチオンによって、恐らくこの効果が引き起こされ得ると仮定される。シリカに結合した核酸が増幅バッファーで直接的に溶出される完全集積型の分子診断デバイスにこのプロトコルを適合させる場合には、この観察結果を念頭に置くべきである。
【0078】
次に、出発材料の容量に対する、特に困難な血漿試料についてのプロテイナーゼKの予備消化を含むことの潜在的な有益な効果を調査した。結果は図12に示されている。Y軸は62 bpのアンプリコンのCt値を表している。X軸は、処理された様々な血漿容量を示している。これらの結果は、プロテイナーゼK消化工程を含むと、400 μLを超える血漿試料を処理する場合にDNA収率が増加することを示している。血漿を56℃で10分間消化した。本明細書において調査されたように、シリカメンブレンへのタンパク質の結合も結合緩衝液の化学の下に或る程度は起こるのではないかと思われる。酸性条件は、pI=4.7を有するアルブミンの負電荷を低下させ、これにより、この豊富な血漿タンパク質とシリカメンブレンとの間の電荷反発が大幅に減少する。したがって、タンパク質及び核酸は結合部位をめぐって競合すると予想されるが、シリカメンブレンの表面は依然として制限されている。さらに、個々のタンパク質分子間の電荷反発が低下することにより、これらのタンパク質分子はメンブレンに結合する場合にはるかにもっと近づいて共に重なり合うことが可能となる。したがって、血漿からのアルブミンの消化又は除去は、より大きな試料を処理するときに、シリカメンブレンへの核酸の結合を改善するのに有益である可能性が高い。
【0079】
次に、Idylla(商標)集積型システムに付属するBiocartis NVが独自開発した使い捨てのカートリッジにおいて血漿試料の容量の規模拡大を評価した。結果は図13に示されている。Y軸は62 bpのアンプリコンのCt値を表している。X軸は、様々な結合バッファーの化学を使用して処理された様々な血漿容量を表している。使用した試料は、スパイクされていない血漿試料であった。これらの結果は有望なことに、本明細書に提示された新規の結合バッファーの化学が、Idyllaカートリッジにおけるかなりの試料の規模拡大を可能にし、それにより線形の収率の増加がもたらされることを示している。適用された結合条件は次の通りであった:1.2 MのTMAC、0.2 Mの酢酸塩、0.5%のCTAB、pH 5。カートリッジに基づいて使用される最終的なバッファーの構成は以下の通りであった:
結合バッファー(3 mL):2.8 MのTMAC、0.47 Mの酢酸塩、1.17%のCTAB、pH 5(試料で2.33倍に希釈される)、
血漿試料(4 mL)(1 mg/mLのプロテイナーゼKで室温にて10分間処置される)、
第1の洗浄バッファー(1.25 mL):1.2 MのTMAC、0.2 Mの酢酸塩、pH 5、
第2の洗浄バッファー(2.4 mL):90%のエタノール、
溶出バッファー:H2O(どのような要求でも対応可能な容量、Idyllaについては、最小溶出容量は160 μLであり、最大溶出容量は250μLである)。
【0080】
最後に、開示された新規の抽出の化学を使用するカートリッジの性能と、カオトロピック性の参照化学とを比較することにした。そのために、7つの異なる血漿バッチを使用し、それぞれの抽出の化学ごとに1バッチ当たり5個のカートリッジの反復を実行した。70個のカートリッジの全ての実行は目詰まりエラーなしで正常に完了した。結果は図14及び図15に示されている。図14において、Y軸は62 bpの標的アンプリコンのCt値を示している。X軸は、抽出の化学(各パネルにつき、左側にカオトロピック性の参照、そして右側に新規のTMAC+CTABの化学)及び試料容量(それぞれ1 ml及び4 ml)を指定している。各パネルは、様々な血漿バッチを表している。図15においては、Y軸は同じアンプリコンについてのCt値を示す一方で、X軸は様々な血漿のバッチを列記している。各パネルは、様々な抽出の化学(左側にカオトロピック性の参照、そして右側に新規のTMAC+CTABの化学)を表している。白抜きのドットは黒塗りのドットの10倍の希釈であるため、PCR阻害の指標である。図14及び図15のデータは、新規の抽出の化学の使用によって可能になった試料の投入量の増加(4 ml)が、相当の収率の増加をもたらすことを示している。実際の測定された収率の増加を以下の表1に列記する。図15は更に、試料抽出物のいずれにもPCR阻害成分が含まれていないことを示している。これらの結果は頑健であり、新規の結合化学がカオトロピック性の参照化学の標準偏差に匹敵する標準偏差を有することを示している。さらに、表1に示されるように、研究された全ての血漿バッチについて、1カートリッジ当たりの試料の投入容量を増やすことができるおかげで、少なくとも2倍の収率の増加が得られた。このアッセイ感度の増加の他に、新規のバッファーの化学は完全にカオトロピック薬剤不含であり、かつ低コストであることに留意すべきである。
【0081】
表1:図14におけるそれぞれの血漿のバッチについて得られた平均Ct値。両方の抽出の化学間のデルタCtは、cfDNA収率の増加を反映している。
【表1】
【0082】
図面訳
図1
100μLsample + 500μL buffer 100 μLの試料+500 μLのバッファー
200 cps/μLnDNA 200 cps/μLのnDNA
Plasma 血漿
input 投入
water 水
図2
100μLsample + 500μL buffer 100 μLの試料+500 μLのバッファー
200 cps/μLnDNA 200 cps/μLのnDNA
Plasma 血漿
input 投入
図3
200 cps/μLnDNA 200 cps/μLのnDNA
100μLsample + 500μL buffer 100 μLの試料+500 μLのバッファー
Plasma 血漿
input 投入
図4
Plasma 血漿
100μLsample + 500μL buffer 100 μLの試料+500 μLのバッファー
200 cps/μLnDNA 200 cps/μLのnDNA
input 投入
図5
undiluted 非希釈
100μLsample + 500μL buffer 100 μLの試料+500 μLのバッファー
200 cps/μLnDNA 200 cps/μLのnDNA
Plasma 血漿
input 投入
図6
100μLsample + 600μL buffer 100 μLの試料+600 μLのバッファー
plasma 血漿
input 投入
water 水
nDNA input nDNAの投入
図7
100μLsample + 500μL buffer 100 μLの試料+500 μLのバッファー
200 cps/μLnDNA 200 cps/μLのnDNA
Plasma 血漿
input 投入
図8
200 cps/μLnDNA 200 cps/μLのnDNA
100μLsample + 500μL buffer 100 μLの試料+500 μLのバッファー
Plasma 血漿
input 投入
図9
1mL plasma 1mLの血漿
1 mg/mL Qiagen protK 10' 37℃ 1 mg/mLのQiagenのプロテイナーゼK 37℃で10分間
undiluted 非希釈
10-fold dilution 10倍希釈
Average 平均
Median 中央値
図10
1,0 mg protK/Qiagen 10' 37℃ 1.0 mgのプロテイナーゼK(Qiagen) 37℃で10分間
1mL plasma 1mLの血漿
3.7M GuSCN &43% ButOH 3.7 MのGuSCN及び43%のButOH
図11
100μLsample + 500μL buffer 100 μLの試料+500 μLのバッファー
200 cps/μLnDNA 200 cps/μLのnDNA
Plasma 血漿
Water 水
0' 0分間
2' 2分間
5' 5分間
図12
200 cps/μLnDNA 200 cps/μLのnDNA
Plasma 血漿
Native plasma 自然血漿
Proteinase Kdigested plasma プロテイナーゼKで消化された血漿
図13
10-fold diluted 10倍希釈
undiluted 非希釈
1mL plasma 1mLの血漿
2mL plasma 2mLの血漿
4mL plasma 4mLの血漿
3.7M GuSCN &43% ButOH 3.7 MのGuSCN及び43%のButOH
1.2M TMAC 0.2MAcetate 0.5% CTAB pH5 1.2 MのTMAC、0.2 Mの酢酸塩、0.5%のCTAB、pH5
図14
Chaotropicchemistry カオトロピック性の化学
CTAB chemistry CTABの化学
Count 個数
Avg 平均
StdDev 標準偏差
図15
Chaotropicchemistry カオトロピック性の化学
CTAB chemistry CTABの化学
10-fold diluted 10倍希釈
undiluted 非希釈
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】