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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】水上乗物を移動させる装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 1/37 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B63H1/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508458
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 FR2020051438
(87)【国際公開番号】W WO2021028635
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】1909105
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522052130
【氏名又は名称】フィンクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ギユマン,ハロルド,アンリ,ジャン-エティエンヌ
(57)【要約】
本明細書は、海事分野に関する。特に、本発明は、水上乗物を移動させるための装置(100)であって、上流端(50a)と呼ばれる、液体のための第1入口部分と、下流端(50b)と呼ばれる、液体のための第2出口部分とを含む少なくとも1つの推進チャンバ(50)と、チャンバ内に収容された少なくとも1つの可撓性膜(M1)と、上流端と下流端との間の膜のうねりによって車両から推力を生み出すように構成された少なくとも1つのアクチュエータ(Al)とを備えている装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上乗物を移動させるための装置(100;110;120;125;130;135;140;150;160;170;180;190;195;196;197;200;300)であって、
上流端(50a;51a;52a;56a;57a)と呼ばれる、液体のための第1入口部分と、下流端(50b;51b;52b;56b;57b)と呼ばれる、前記液体のための第2出口部分とを含む少なくとも1つの推進チャンバ(50;51;52;58;59;595)と、
前記チャンバに収容された少なくとも1つの可撓性膜(M1;M2;M3)と、
前記上流端と前記下流端との間の前記膜のうねりによって前記車両の推力を生成するように構成された少なくとも1つのアクチュエータ(A1;A2;A11,A12,A13,A21,A22,A23)とを備えている、装置。
【請求項2】
前記推力は、所定の周波数および振幅を有する前記膜のうねりによって生み出される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記うねりは、前記少なくとも1つのアクチュエータによる前記膜の少なくとも1つの端部の移動を含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記推進チャンバは、少なくとも1つの容積を有し、前記容積は、前記上流端と前記下流端とを結ぶ少なくとも1つの壁(301,302;310,320)によって形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
直列または並列に配置された少なくとも2つの推進チャンバを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
複数の可撓性膜が同一の前記チャンバに収容されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
同一の前記チャンバに収容された少なくとも2つの膜は、前記チャンバの膜の数で割った、実質的に0°に等しい角度、実質的に90°に等しい角度、実質的に180°に等しい角度、実質的に270°に等しい角度、および実質的に360°に等しい角度を含むグループから選ばれた角度だけ位相シフトしてうねる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの可撓性膜および前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記可撓性膜による前記アクチュエータの動きからエネルギーを生成するように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記上流端および/または前記下流端は、少なくとも1つの液体偏向器(D11;D12;D21)を備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
船体と、請求項1~9のいずれか1項に記載の移動装置とを備える、水上乗物(1000;2000)。
【請求項11】
少なくとも第1船体要素が、前記装置の少なくとも1つの推進チャンバの前記上流端からなり、少なくとも第2船体要素が、前記装置の少なくとも1つの前記チャンバの前記下流端からなる、請求項10に記載の車両。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の背景〕
本明細書は、海上輸送分野に関する。より具体的には、本明細書の態様は、水上乗物を移動させるための装置に関する。
【0002】
何十年もの間、推進力の原理に基づいて船舶を移動させる手段が知られている。特に、1つ以上のプロペラによるボートの推進は、1830年代から知られている。
【0003】
一般論として、水上乗物の推進(または牽引)プロペラは、作用・反作用現象を利用することによってプロペラに推力を与える。したがって船舶の推進は、水中に浸漬されかつ船舶の内部または外部に配置されるプロペラの中心軸の周りに配置された、ブレードと呼ばれる複数のスラットの回転運動に基づく。
【0004】
運転中、羽根の回転は、船を浮かせる液体への力の適用をもたらし、この力は、液体によってプロペラの軸に、したがって船に、加えられる力と等しくかつ反対であり、加速された液体の質量に比例する強度を有する力である。
【0005】
プロペラ翼の回転運動の影響下において、プロペラの前部と後部との間に圧力差が発生し、この圧力差は、同じ方向への液体の移動を引き起こし、したがって、反作用によって他の方向への船の移動を引き起こす。
【0006】
しかし、また広く使用されているにもかかわらず、プロペラによる水上船舶の推進には様々な欠点がある。
【0007】
まず、輸送分野において使用されるプロペラモータは、非常に低い効率を有する。これらのモータは、水を所定の方向に直接推進させるのではなく、あらゆる方向に水を混合させる傾向がある。
【0008】
さらに、このようなモータは、高い燃料消費、特にガソリンまたはディーゼルの消費を有する。この消費量は、移動させる水上乗物の大きさおよび質量が大きくなればなるほどより大きくなり、かなりの環境汚染を引き起こす。この汚染は、例えば、質の悪い燃料、油の流出、またはガス抜きに起因する。
【0009】
公知のプロペラモータの環境上の影響はまた、それらが通常騒々しいために著しい騒音公害を伴い、それらが近くで引き起こす液体の著しい多方向の混合によって、水中の動物相および植物相を乱す。
【0010】
さらに、公知のプロペラモータは、ブレードの回転運動によって、事故時に重大な損傷または負傷を引き起こす可能性があるため、安全性に重大な問題がある。
【0011】
さらに、プロペラモータの取り扱いは、プロペラモータの機械部品、例えばプロペラモータが備えるブレード、クランクシャフト、減速機、あるいはスパークプラグ、の数および複雑さのために、しばしばコストがかかる。
【0012】
〔発明の主題および概要〕
この状況を改善し、上述した欠点に対処するために、本発明の一般的な目的は、水上乗物のための、環境を尊重する推進装置を提供することである。
【0013】
また、本発明によって提供される推進装置は、傷害のリスクを顕著に低減させる。
【0014】
さらに、本発明によって提供される推進装置は、コンパクトでありかつ効率的である。
【0015】
特に、本発明の第1の目的は、一般に、水上乗物を移動させるための装置に関するものであり、当該装置は、
-上流端と呼ばれる、液体のための第1入口部分と、下流端と呼ばれる、前記液体のための第2出口部分とを含む少なくとも1つの推進チャンバと、
-前記チャンバに収容された少なくとも1つの可撓性膜と、
-前記上流端と前記下流端との間の前記膜のうねりを通じて前記装置の推力を生成するように構成された少なくとも1つのアクチュエータとを備えている。
【0016】
ここで、考慮される液体は、典型的には水であり、したがって、記載された移動装置は、水上乗物に直接適用される。しかしながら、本書は、例えば石油およびガソリンなどの任意のタイプの液体中での車両の推進運動を可能にする装置にも適用されることが理解されよう。
【0017】
ここで、水上乗物は、液体上および/またはこの液体中で、特に水中で移動するように適合された任意のタイプの浮遊または潜水可能な車両を指定する。このような車両は、部分的にまたは完全に液体中に浸漬させることができる。この車両は、船上で、遠隔で、または独立して、任意の手段で駆動することができる。
【0018】
浮遊水上機の例としては、セールボート、ヨット、プレジャーボート、手漕ぎボート、海洋ドローン、模型船、ブイ、電動水上機、パーソナルウォータークラフト、剛体ボート、半剛体ボート(またはゾディアック)、インフレータブルカヌーなどの、電動であるか否かに関わらないボート、パドルボードなどの水遊び器材、電動プラットフォーム、水上乗物、ペダルボート、水力推進リフト車、フォイルの有無に関わらない電動サーフボード、フェリー、タンカー、トロール船、貨物船、バージまたはホバークラフトなどの水中水陸両用車または輸送船を含む。
【0019】
水中車両の例は、長期間水中で動作するように構成されたあらゆるタイプの車両を含む。例えば、水中車両は、潜水艦、魚雷、水中水陸両用車、水中ドローン、遠隔操縦水中車両、潜水スラスタなどの水上玩具、モデル水中クラフト、またはバシスキャプであってもよい。
【0020】
移動装置は、所定の液体についての流量と圧力の積に対応する機械的動力を、油圧力に変換することができる。
【0021】
特に、水上乗物を移動させるための前記装置は、膜のうねりの間に発生する推力によって、後者を液体に対して、前記推進チャンバにおける液体の変位と反対の方向に推進させることができる。
【0022】
例えば、水上乗物は、前進ギアまたは後進ギアで運動させることができる。
【0023】
ここで、説明した実施形態のいずれか1つによる運動装置の推進チャンバの上流端と下流端との間に生じる圧力差は、典型的には100分の1バールまたは10分の1バールのオーダーであるが、1バールまたは数バールのオーダーであってもよい。
【0024】
好ましくは、使用される膜が可撓性エラストマー膜である場合、圧力差は16バール未満である。
【0025】
さらに、生み出される流量は、使用される運動装置、推進チャンバ、可撓性膜、およびアクチュエータの特性および寸法によって変化し得る。
【0026】
具体例によれば、装置は、少なくとも2つの推進チャンバ、例えば2つ、3つまたは4つの推進チャンバからなり、推進チャンバの各々は、上流端と呼ばれる第1液体入口部分と、下流端と呼ばれる前記液体の第2出口部分とを含む。
【0027】
別の具体例によれば、装置は、少なくとも2つの可撓性膜が収容された少なくとも1つの推進チャンバ、例えば2つ、3つ、または4つの可撓性膜を含む。
【0028】
さらに別の具体例によれば、装置は、装置を備える少なくとも1つの推進チャンバの上流端と下流端との間の少なくとも1つの膜のうねりによって装置の推力を生成するように構成された少なくとも2つのアクチュエータ、例えば2つ、3つ、または4つのアクチュエータによって構成される。
【0029】
可能な変形例によれば、上に引用した具体例は、単独でまたは組み合わせて考慮することができる。
【0030】
特定の実施形態によれば、前記推力は、所定の周波数および振幅を有する膜のうねりによって生み出される。
【0031】
ここで、膜のうねりは、前記膜の移動方向の交代として理解することができる。
【0032】
有利には、所与の膜のための周波数およびうねり振幅の特定の選択は、生成された推力、したがって移動装置の推進力を調整することを可能にし、これは、所望の速度、装置の負荷、または装置が動作する環境条件、例えば温度、うねりまたは天候にさえ依存して有用であり得る。
【0033】
ここで、膜のうねり周波数は、典型的には0ヘルツよりも大きく1,000ヘルツ未満であり、好ましくは0ヘルツよりも大きく200ヘルツ未満である。
【0034】
ここで、膜のピークツーピークうねり振幅は、典型的には、上流端と下流端との間の膜の長さの半分以下であり、好ましくは膜の長さの5分の1以下である。
【0035】
例えば、装置が変位するときに液体に最適な力を伝達するため、または後者が動作しているときに生じる振動を低減するために、数ヘルツ以内に、膜またはアクチュエータの固有周波数またはビート周波数に実質的に等しいうねり周波数を選択することが有利である。
【0036】
有利には、上流端と下流端との間の波長数は、5つのうねりよりも小さい。例えば、波長の数は、可撓性膜の場合よりも高い水力出力を可能にする硬い膜の場合、1つのうねりよりも小さい。
【0037】
特定の例によれば、前記のうねりは、少なくとも1つのアクチュエータによる膜の少なくとも一端の移動からなる。
【0038】
推進チャンバ内に収容された少なくとも1つの膜が、少なくとも1つのアクチュエータによって振動させられると、進行波が生じ、前記膜に沿って伝搬する。そして、進行波によって、推進チャンバ内に位置する液体の体積が、膜を伝搬する波の速度と方向とが実質的に同一である状態で、変位させられる。
【0039】
特定の例によれば、推進チャンバは、上流端と下流端とを結ぶ少なくとも1つの壁によって形成される、少なくとも1つの容積を有する。
【0040】
ここでは、推進チャンバの上流端と下流端とを接続する壁は、フランジと呼ばれる。フランジは、推進チャンバ内において変位している液体を、装置の他の部分から隔離する機能を有しており、これによって、推進力を生成するために、膜のうねりによって生じる圧力差を増大させることができる。
【0041】
好ましくは、入口部分および出口部分は、最適な推力および速度を、装置を構成する車両に与えるように、動作時または非動作時に配置され、かつ任意に調整可能であってよい。
【0042】
例えば、入口部分および出口部分は、推進チャンバまたは車両の姿勢を調整することができるように配置される。
【0043】
特定の例によれば、装置は、直列または並列に配置された少なくとも2つの推進チャンバを備える。
【0044】
ここで、2つの推進チャンバは、前記チャンバの1つの下流端が前記チャンバの他の1つの上流端と実質的に整列して位置するとき、直列に配置されていると言われる。特に、1つのチャンバの下流端は、他のチャンバの上流端として機能することができる。
【0045】
2つの推進チャンバは、流体が第1チャンバの下流端から第2チャンバの上流端に向かって導かれるように、それらが回路、特に油圧回路によって接続される場合にも、直列に配置されていると言われる。したがって、直列に配置された2つのチャンバは、必ずしも幾何学的に整列している必要はない。
【0046】
ここで、2つの推進チャンバは、前記チャンバの一方の下流端および上流端が前記チャンバの他方の下流端と実質的に平行であり、かつ前記チャンバの一方の上流端が前記チャンバの他方の上流端と実質的に平行である場合、並行に配置されていると言われる。
【0047】
2つの推進チャンバは、流体が第1および第2チャンバの上流端から第1および第2チャンバの下流端に向かって導かれるように、それらが回路、特に油圧回路によって接続される場合も、並列に配置されていると言われる。
【0048】
特定の場合、並列に配置された2つの推進チャンバは、共通の上流端および/または下流端を有してもよい。
【0049】
運動装置において、複数の推進チャンバを直列に、並列に、または他の構成にしたがって配置することによって、装置によって発生される推力または速度、したがってそのような装置を備える水上乗物に供給される推力または速度を、推進チャンバのみを備える装置に比べて比例的に増加させることができる。
【0050】
単一の推進チャンバを備える装置に比べて、複数の推進チャンバを並列に配置した例では、変化の少ない流量に対して圧力を高めることができ、それゆえ速度を犠牲にして推力を高めることができる。
【0051】
変形例として、1つの推進チャンバで構成された装置について、複数の推進チャンバを直列に配置して構成した例では、変化の少ない流量に対して圧力を高めることができ、それゆえ推力を低下させても速度を高めることができる。
【0052】
複数の可撓性膜を同じチャンバに収容する場合、装置の寸法をかなり増大させることなく、移動装置によって発生する推力または速度を増大させることができる。
【0053】
特定の実施形態によれば、同じチャンバに収容された少なくとも2つの膜は、前記チャンバの膜の数で割った、少なくとも1つのアクチュエータによって、実質的に0°に等しい角度、実質的に90°に等しい角度、実質的に180°に等しい角度、実質的に270°に等しい角度、および実質的に360°に等しい角度を含むグループから選択された角度による位相シフトでうねる。
【0054】
ここで、他の位相シフト角と実質的に等しい位相シフト角は、その値が他の角の値とプラスマイナス10°の精度で、好ましくはプラスマイナス5°の精度で等しい角のことである。
【0055】
ここで、実質的に0°に等しい角度と同等な、実質的に360°に等しい角度の位相シフトでうねる2つの膜は、同位相でうねると言われる。180°に実質的に等しい角度の位相シフトでうねる2つの膜は、反対位相でうねると言われる。
【0056】
有利には、例えば、2つの推進チャンバ、例えば直列の2つのチャンバに収容された2つの膜が同位相でうねるとき、このような構成は、2つのチャンバを流れる液体がより大きな層状性を呈し、移動装置による乱れを、したがって圧力損失を低減することができる。
【0057】
有利には、例えば、直列の2つのチャンバに配置された2つの膜が反対位相でうねる場合、これによって、より大きな推力を得ることができる。
【0058】
さらに、反対位相での2つの膜のうねりは、第1膜が第1方向にうねり、第2膜が第1方向と反対の第2方向にうねるので、これらの膜による液体の質量の変位、およびアクチュエータの可動部分の質量によるアンバランスさを、補償することができる。
【0059】
さらに、反対位相での動作は、膜の間に閉塞を生じさせることができ、これによって装置の性能を高めることができる。
【0060】
同じチャンバに収容された少なくとも2つの膜が、前記チャンバ内の膜の数で割った360°に実質的に等しい角度の位相シフトでうねるとき、これらの膜は多相モードでうねる、すなわち、前記装置は、相の数だけ推進チャンバを備えると言われる。
【0061】
2つまたはそれ以上の膜は、例えば、特定の運動モードを促進するために、または運動装置の動作によって生じる騒音または振動を低減するために、他の位相シフト値でうねることができる。
【0062】
例えば、同じチャンバに収容され、360°を3で割った、すなわち120°の位相シフトで互いに相対的にうねる3つの膜を有することができ、したがって3相モードが提供される。
【0063】
3つの推進チャンバからなり、3相モードで動作する移動装置の場合、この装置の各推進チャンバは、位相の数、すなわちここでは3相、で割った360°の位相シフトで120°の位相シフトを有するようにうねる膜を備える。
【0064】
これによって、このような装置を、多相電子機器、例えば3相電子機器で制御することができ、また、運動装置、したがってこのような装置を備える水上乗物において伝播される振動を低減させることができる。
【0065】
特定の実施形態によれば、前記少なくとも1つの可撓性膜および前記少なくとも1つのアクチュエータは、可撓性膜によるアクチュエータの移動からエネルギーを生成するように構成される。
【0066】
推進手段として機能する可能性とは別に、これによって、装置はエネルギー発生器として機能することができる。
【0067】
したがって、例えば、装置が、したがって水上乗物が、液体に対して速度差を有する場合、1つ以上の電池、または別のエネルギー保持手段を再充電するために、エネルギーを回収することができる。
【0068】
この特定の実施形態では、少なくとも1つのアクチュエータは、膜に接続することができる。
【0069】
装置、したがって膜が収容されている推進チャンバが、前記推進チャンバを通って変位される液体に対して静止しているとき、この液体は、チャンバと液体との間の速度差によって、チャンバ内に収容されている膜のうねりを生じさせる。この膜のうねりは、少なくとも1つのアクチュエータを駆動し、このアクチュエータが膜に接続されている場合はエネルギーを生成することができる。このエネルギーは電気に変換され、例えば、バッテリーの充電や再充電を可能にすることができる。
【0070】
あるいは、膜は、その上流端と下流端との間で拘束され、その間にうねりを生じさせることができ、このうねりは、流体の動きに対する膜の抵抗を増大させ、したがって発生する力を増大させる。
【0071】
特定の実施形態によれば、上流端または下流端は、少なくとも1つの液体偏向器を備える。
【0072】
これによって、推進チャンバに対する各偏向器の配向方向を選択することによって、装置の移動方向または発生する推力の方向を変更することができる。
【0073】
これはまた、移動装置の近く、特に、前記少なくとも1つの推進チャンバの上流端または下流端の近くにおいて、乱流を制限することができる。
【0074】
少なくとも1つの偏向器は、膜の少なくとも1つの端部の近くに位置し、液体を後者の近くに向けることができ、推進チャンバ内において乱流を制限することができる。
【0075】
本発明の第2目的は、先行する目的および実施形態のいずれか1つによる船体および運動装置を含む水上乗物を提供することである。
【0076】
有利には、液体の吸入および排出は、移動装置が配置される領域の前部において、特に前記移動装置によって構成される少なくとも1つの推進チャンバの前部において、それぞれ行われる。
【0077】
この吸入および吐出は、水上乗物の推進を可能にし、水上乗物の向きに対する移動装置の推進チャンバの上流端および下流端の配置に基づいて、特定の移動方向を促進させる。
【0078】
本発明が対象とするこの第2対象の特定の実施形態によれば、船体の第1要素は、少なくとも1つの推進チャンバの上流端からなり、船体の第2要素は、前記デバイスの推進チャンバの下流端からなる。
【0079】
有利には、水上乗物を推進するために使用される液体の吸入と排出は、移動装置が配置されたゾーンの前部とこのゾーンの後部でそれぞれ行われ、この水上乗物の方向性を促進し、優先的な操舵(前進ギアでの通常の運転)を必要とする場合に、この水上乗物の方向性を促進することができる。
【0080】
有利には、このような移動装置によって、模型製作のための10,000ワット未満、水上玩具のための40,000ワット未満、プレジャークラフトのための200ワット以上、物品または人の輸送のための水上船舶のための100,000ワット以上のモータ出力を、水上船舶に供給することができる。
【0081】
〔図面の簡単な説明〕
他の特徴、詳細、および利点は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析することによって現れるであろう。
【0082】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0083】
図2図2は、本発明の第2実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0084】
図3図3は、本発明の第3の実施形態に係る移動装置を示す概略図を示す。
【0085】
図4図4は、本発明の第4の実施形態に係る移動装置の透視図および縦断図をそれぞれ示す図4Aおよび図4Bに対応する。
【0086】
図5図5は、本発明の第5の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0087】
図6図6は、本発明の第6の実施形態に係る移動装置の透視図および縦断図をそれぞれ示す図6Aおよび図6Bに対応する。
【0088】
図7図7は、本発明の第7の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0089】
図8図8は、本発明の第8の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0090】
図9図9は、本発明の第9の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0091】
図10図10は、本発明の第10の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0092】
図11図11は、本発明の第11の実施形態に係る移動装置の異なる動作モードをそれぞれ示す図11A図11B、および図11Cに対応する。
【0093】
図12図12は、本発明の第12の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0094】
図13図13は、本発明の第13の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0095】
図14図14は、本発明の第14実施形態に係る移動装置を構成する水上乗物の透視図を示す。
【0096】
図15図15は、本発明の第15実施形態に係る移動装置を構成する水上乗物の透視図、および水上乗物によって構成される移動装置の透視図をそれぞれ示す図15A、15Bに対応する。
【0097】
図16図16は、第16実施形態に係る移動装置の透視図、透視断面図、および模式断面図をそれぞれ示す図16A図16B、および図16Cに対応する。
【0098】
図17図17は、第17の実施形態に係る移動装置の透視図、透視断面図、および概略断面図をそれぞれ示す図17A、17Bおよび17Cに対応する。
【0099】
特に指示しない限り、いくつかの図に共通または類似する要素は、同じ参照符号を付し、同一または類似の特徴を有するので、これらの共通要素は、簡略化のために、一般に再び説明されない。
【0100】
〔実施形態の説明〕
大部分の場合、図面および以下の説明には、特定の要素が含まれている。したがって、それらは、本開示をよりよく理解するために使用されるだけでなく、適用可能な場合はその定義に寄与することもできる。
【0101】
次に、本発明の第1実施形態に係る水上乗物100のための移動装置の概略図を示す図1を参照する。
【0102】
図示されているように、装置100は、上流端50aと呼ばれる第1縁と、下流端50bと呼ばれる第2縁との間に位置するキャビティを規定する推進チャンバ50を備える。
【0103】
動作中、装置100は、液体、特に水中に部分的にまたは完全に浸漬され、この液体に対して所定の相対速度で相対的に移動している。
【0104】
動作の変形例によれば、装置100は浸漬されていないが、当該装置を備える水上乗物の少なくとも一部は浸漬され、水を吸い上げるように配置されている。
【0105】
例えば、装置100は、別の第2速度で移動する水量に対して、第1速度で移動することができる。したがって、装置100は、動かない、または任意の速度および任意の方向で移動する水の体積と相対的に移動してもよい。
【0106】
ここで、上流端50aは、水が流れF1で推進チャンバに入る入口部分に対応し、一般に移動装置に対応するように、定義される。
【0107】
ここでは、「流れ」および「流量」という用語は等価に使用される。
【0108】
ここで、下流端50bは、水が流れF2で推進チャンバから排出される出口部分に対応し、一般に移動装置に対応するように、定義される。
【0109】
ここでは、非限定的に、上流端部50aが次に出口セクションに対応するように、かつ下流端部50bが入口セクションに対応するように、装置の、したがって推進チャンバの移動が動作中に逆転できることが理解されるであろう。
【0110】
一般に、推進チャンバ50は、フランジ10および20と呼ばれる2つの壁によって囲まれ、これらは、様々に変化した特性を規定することができる。また、推進チャンバ50は、少なくとも1つのアスペリティを備えても良い。
【0111】
ここで、フランジは、一般に剛性のある壁であるが、非限定的に、一定の弾性を有する柔軟な壁であってもよい。例えば、推進チャンバの壁を規定するフランジは、例えばボートの船体要素のような水上船舶の船体要素であってもよい。
【0112】
例えば、そしてここに示すように、フランジ10および20は、推進チャンバ50に収束特性を与えるように、すなわち下流端50bに対応するセクションが上流端50aに対応するセクションよりも小さい表面を有するように、配置される。
【0113】
非限定的に、フランジ10および20はまた、推進チャンバ50に発散特性を与えるように、すなわち、下流端部50bに対応するセクションが上流端部50aに対応するセクションよりも大きい表面を有するように配置されてもよい。
【0114】
フランジ10および20はまた、推進チャンバ50に一定の特性を与えるように配置されてもよく、すなわち、下流端50bに対応するセクションは、上流端50aに対応するセクションと実質的に同じ表面を有している。
【0115】
有利には、フランジ10および20のためにチャンバに与えられる収束特性は、この圧力差を強化し、したがって、上流端50aから下流端50bに向かって液体が変位することによって、推進チャンバ内の膜M1のうねりによって発生する推力を増加させる。
【0116】
図示しない例によれば、運動装置は、推進チャンバの下流端の近くに、その外側で整合して配置されている追加の部品をさらに含む。この部品は、推進チャンバの出口部分と実質的に等しい入口部分を有する。この場合、前記部品は、操舵に有用なノズルとして機能し、出る液体の速度、したがって、そのような追加部品を含む移動装置を備える水上乗物の速度、を増加させることができることができる。
【0117】
装置100は、装置100の推進チャンバ50に収容される可撓性膜M1をさらに備える。
【0118】
ここで、非限定的に、可撓性膜は、所定の振幅および周波数で振動するように配置された任意のタイプの膜である。このような可撓性膜は、例えば矩形、円盤状、または管状のような特定の幾何学的形状を有していてもよい。
【0119】
可撓性膜は、好ましくは、弾性または非弾性の変形可能な材料のシートからなり、この膜の変形は、例えば、少なくとも膜の軸を中心に曲げて行うことができる。
【0120】
アクチュエータは、特に膜の作動端のオフセットを可能にすることによって、膜に柔軟性を付与するように設計されている。
【0121】

異なる実施形態によれば、可撓性膜は、プロファイルされているか否かであり、かつ、上流端から下流端まで可変の異なる形状、厚さ、および寸法を場合によっては有し、かつ異なる値の抵抗、弾性限界、ヤング率、せん断弾性率、ポワソン比等によって特徴付けられている1つまたは複数の材料を備える。
【0122】
例えば、可撓性膜は、変形可能な構造体に直接または間接的に取り付けられてもよい複数の部品によって構成されるか、または同時にラメラがヒンジ結合されてもよい。
【0123】
好ましくは、可撓性膜M1の取付は、少なくとも1つの取付点P1で行われ、この取付点P1は、可撓性膜M1を、例えばピストン、連結棒、または磁気若しくは非磁性の可動部などの機械運動機器である少なくとも1つのアクチュエータA1に接続する。
【0124】
好ましくは、チャンバ内の可撓性膜の収容は、膜の第1端部がチャンバの上流端の近くに位置し、膜の第2端部が下流端の近くに位置するように、行われる。
【0125】
一般に、可撓性膜M1は、上流端50aの近くに位置する前端と、下流端50bの近くに位置する後端とを有する。
【0126】
アクチュエータA1によって、例えば前端の近くに位置する取付点P1から膜M1を振動状態にすると、可撓性膜M1は、前端と後端との間で膜に沿って伝搬する進行波の座となる。
【0127】
一例によれば、可撓性膜の特性、例えばその弾性、その張力、あるいはその寸法は、これらが膜の体積における進行性波の伝搬速度を最適化することを保証するように選択される。
【0128】
このうねりは、膜の第1縁、ここでは取付点P1の近くに位置する膜の縁から第2縁に移動する進行波にしたがって可撓性膜M1の変形を引き起こすので、これらの2つの縁の間に位置する膜の少なくとも1点は、横振動運動によって駆動される。
【0129】
うねりのある膜とチャンバ50内の液体との結合は、進行波とともに進行する圧力場を作り出し、したがって上流端50aと下流端50bとの間に圧力差を発生させる。この結果、液体の圧力が変動し、ここでは流入流の速度F1が変動し、より高い値の流出流の速度F2を与えることによって表現される。
【0130】
ここで、膜は、例えば、その前端および/または後端が締結手段またはアクチュエータによって取り付けられている場合、所定の張力によって定義されてもよい。この場合、膜の張力は、その静止状態または機械的応力の影響下に存在することができる。
【0131】
特に、膜の前端および後端に加えられた反対方向の2つの力の適用から生じる張力の影響下で、アクチュエータは、膜をうねらせ、それによって、膜内において前記張力の方向に波を伝播させることができる。
【0132】
ここで、アクチュエータは、いかなるタイプの作動手段でもよい。
【0133】
異なる実施形態によれば、アクチュエータは、電気モータ、熱エンジン、原子力エンジン、水素エンジン、ハイブリッドエンジン、圧電モータ、または機械モータから選択されてもよい。モータは、回転運動、線形運動、または半径運動に類似する運動を提供してもよく、ある運動を別の運動に変換するための運動変換部品を含んでもよい。
【0134】
異なる実施形態によれば、アクチュエータは、電気電池、電気セル、原子力電池またはセル、燃料電池またはセル、水素電池またはセル、光起電パネル、ガソリン、ディーゼルまたはバイオ燃料などの燃料、あるいはアルコール、エーテル、または炭化水素などの液体燃料から選ばれるエネルギー源によって駆動されてもよい。
【0135】
様々な実施形態によれば、アクチュエータは、機械的または電子的に駆動される。この駆動は、少なくとも1つの膜の動きを制御することができるパワーエレクトロニクスによって行われてもよく、例えば、所望の航行のタイプに応じて、例えば、より多くのまたはより少ない推力および速度が移動に必要であるかどうかに応じて、最適な推進のための周波数における、力におけるおよび/または位置における適切な信号が生み出されることによって、制御されることができる。
【0136】
様々な実施形態によれば、アクチュエータは、例えば高いサンプリング周波数からなる信号によって「瞬時に」、または「平均」的に、即ち、いくつかの振動周期の平均を用いることによって制御される。
【0137】
有利には、これによって、例えば気泡の存在または弱い負荷による波上の車両のジャンプに起因する空気吸入の場合に、膜とフランジの間で衝撃を回避することができる。この動きは、閉ループで電子的に調節することができる。
【0138】
電気的作動手段の場合、その端子における電流もまた、閉ループ制御を実施するために使用され得る。
【0139】
有利には、少なくとも1つの膜の位置は、例えば装置または推進チャンバによって構成されるセンサによって決定され、装置の制御を助けることができる。
【0140】
有利には、電子的に制御されるアクチュエータは、膜が正弦的に振動することができるために、少なくとも1つのアクチュエータを正弦的な動きで駆動させることができる。また、制御のために使用される電子的手段は、装置を備える水上乗物に搭載された他の機器、または遠隔に配置された機器と通信することができる。
【0141】
操作において、アクチュエータA1は、2つの反対方向への取付点P1の交互の動きを実施する。そして、膜M1の一端、ここでは推進チャンバ50の上流端50aの近くに位置する端は、推進チャンバ50内の水の変位に対して実質的に直角方向に交互に移動される。
【0142】
好ましくは、取付点P1は、膜M1の一端またはその近傍に位置する。
【0143】
好ましくは、可撓性膜M1は、チャンバ50内に収容され、上流端50aの近くまたは下流端50bの近くに位置する少なくとも1つの取付点によってアクチュエータA1に接続される。
【0144】
図示のように、アクチュエータA1は、推進チャンバ50の外側に、密閉された形で、あるいはそうでない形で配置されている。しかしながら、一般に、チャンバ内に収容された少なくとも1つの可撓性膜に接続されたアクチュエータは、推進チャンバ50の内部、例えばフランジ10および20の間、またはこれらのフランジの1つの内部にさえ配置されてもよい。
【0145】
非限定的に、少なくとも1つの膜、少なくとも1つの推進チャンバ、および少なくとも1つのフランジ、または前記少なくとも1つの推進チャンバの壁は、様々に変化する幾何学形状を有する。
【0146】
幾何学形状の3つの例を以下に説明する。
【0147】
幾何学形状の第1の例によれば、うねり膜および/または少なくとも1つの関連するフランジは、台形のような矩形または類似の幾何学形状によって定義される。この場合、推進チャンバの壁は、平坦な平行六面体または管状の空間を定義し、その中で矩形の膜が振動するように配置されることができる。
【0148】
有利には、そのような矩形膜は、推進チャンバ内において変位する液体の移動方向と平行な平面内に配置される。
【0149】
これによって、推進力が速度よりも推力を必要とする水上船舶、例えばヨットまたはモーターボートタイプのプレジャーまたは商業船舶に適した特性を有する移動装置を提供することができる。
【0150】
幾何学形状の第2の例によれば、うねりのある膜および/または少なくとも1つの関連フランジは、円盤状の形状によって定義される。この場合、2つの同軸の壁が推進チャンバを定義することができ、この推進チャンバは、平らにされた円筒の形状または層の積み重ねの形状を有している。うねりのある円盤状の膜は、これらの壁の間で振動するように配置される。
【0151】
有利には、このような円板状膜は、推進チャンバ内に推進される液体の変位方向に対して垂直な平面内に配置される。
【0152】
これによって、推進力が推力よりも速度を必要とする水上乗物、例えばパーソナルウォータークラフトまたはジェットスキーに適した特性を有する移動装置を提供することができる。
【0153】
形状の第3の例によれば、うねりのある膜および/または少なくとも1つの関連するフランジは、管状形状によって定義される。この場合、推進チャンバは、2つの同軸の回転壁によって区切られることができ、その間に管状のうねり膜が配置される。
【0154】
形状のタイプに応じて、膜のうねりは、推進チャンバおよび/または移動装置自体の主軸に対して平行または横断平面で行われることができる。しかしながら、前述の幾何学的形状にかかわらず、うねりが起こる平面の向きは、液体の流れに関して直接的な影響を及ぼさない。
【0155】
膜が液体の流れに対して横方向の平面でうねる場合、結果として生じる水中の抗力はより大きくなる。
【0156】
次に、本発明の第2実施形態に係る水上機110のための移動装置の概略図を示す図2を参照する。
【0157】
図示されているように、装置110は、2つの可撓性膜M1およびM2が収容された推進チャンバ51を備える。
【0158】
本例では、推進チャンバ51は、一定の特性を規定する2つの実質的に平行なフランジ11および21によって形成されている。単一のアクチュエータA1は、推進チャンバ51内において実質的に平行に整列された2つの膜に接続されている。推進チャンバ51は、任意の上流端および任意の下流端を有し、これらは必ずしもフランジ11および21と整列している必要はない。
【0159】
図示されていない例によれば、少なくとも1つのフランジは密閉壁であってもよい。このような密閉壁は、膜のいずれかの側で分割されてもよく、これによって、上側および下側の2つのフランジを提供することができる。
【0160】
上流端は、液体が流れF1でチャンバに入る任意の入口部分を規定し、下流端は、水が流れF2でチャンバから、通常は移動装置から、排出される任意の出口部分を規定する。
【0161】
2つの膜M1およびM2の間には、推進チャンバ51を流れる水の偏向手段として機能する、セパレータ31と呼ばれる中間フランジが配置されている。本例では、セパレータ31は、膜M1およびM2がそれぞれ個別のそれぞれの「サブキャビティ」内においてうねると考えられるような特性を有し、その特性は、セパレータ31の形状によって収束される。
【0162】
有利には、セパレータ31は、膜M1と膜M2との間に位置する液体の変位に起因する乱れおよび乱流圧力損失を低減することができる。
【0163】
本例では、セパレータ31は、流入する水流F1が2つの成分F11およびF12に分離し、これらの成分の第1成分F11が、第1膜M1に向かって偏向された流れの部分に対応し、これらの成分の第2成分F12が、流れの第2部分に向かって偏向された流れの部分に対応するように、配置される。
【0164】
出口では、2つの膜M1およびM2のうねりによって、場合によっては同期した形で推力が発生する。
【0165】
非圧縮性の流体を仮定すると、入口部分および出口部分のサイズが同じであれば、流量は実質的に同じである。逆に、圧力はスラスタ出口で高くなる。したがって、出口部分のサイズが小さいと、流量は同じまま、圧力は流体速度と同様にすべて増加する。
【0166】
これによって、複数の膜で構成され、流出流F2が流入流F1とは異なる方向を有する簡素な移動装置を提供することができる。
【0167】
次に、本発明の第3の実施形態に係る水車用移動装置120の概略図を示す図3を参照する。
【0168】
図示のように、移動装置120は、ここでは直列に配置された2つの可撓性膜M1およびM2が収容される推進チャンバ52を備える。
【0169】
本例では、2つの膜M1およびM2は、推進チャンバ52内において、例えば後述のフランジ22の向きと整列される同じ全体軸に沿って実質的に整列される。
【0170】
2つの膜M1およびM2の各々は、2つのアクチュエータA1およびA2のうちの1つに接続されている。取付点P11において膜M1に接続されるアクチュエータA1は、別の取付点P12において膜M2に接続されるアクチュエータA2から分離されている。
【0171】
したがって、移動装置120は、単一の推進チャンバ52と、このチャンバに収容された2つの膜M1およびM2と、別々の膜M1およびM2をうねるように配置された2つのアクチュエータA1およびA2とを備え、このうねりは場合によっては同期されるか否かである。アクチュエータは、同位相でも別位相でもよい。
【0172】
本例では、推進チャンバ52は、2つのフランジ12および22によって形成され、フランジ12は、推進チャンバ52の軸に沿った鋸歯形状を有し、フランジ22は、実質的に直線形状を有している。
【0173】
フランジ12および22のそれぞれの形状は、膜M1およびM2がそれぞれ実質的に収束した特性のそれぞれのサブキャビティ内においてうねる形状である。特に、チャンバ52の上流端および下流端は、フランジ22と実質的に整列しているが、フランジ12とは必ずしも整列しておらず、これによって、推進チャンバ52の上流端と下流端との間のこれら2つのサブキャビティの各々の断面が漸次線形減少する。
【0174】
動作時、第1アクチュエータA1による第1膜M1のうねりは、流入流F1で上流端部を介して浸透する液体の中間推力を発生させることができる。この中間推力は、中間流F3に対応し、こうして第1膜M1によって変位した液体は次に第2膜M2に達し、第2アクチュエータA2によるそのうねりは、流出流F2を得ることができる。
【0175】
これによって、膜間の位相がずれた場合のアンバランスの出現を抑えることができる。これはまた、装置における振動を制限し、したがって、この装置を構成する水上乗物における振動を制限する。
【0176】
本例では、このような運動装置によって、先の図に記載したような他の装置と比較して、圧力または流量の利得を提供することができる。特に、いくつかの膜が直列に配置される場合、圧力利得が得られる。いくつかの膜が並列に配置される場合、流量利得が得られる。
【0177】
有利には、このような運動装置は、直列におよび/または異なる構成にしたがって収容された少なくとも2つの膜が、接触しながらまたは接触せずにうねることも可能にする。また、少なくとも2つの膜は、同位相で、または所定の位相シフトでうねることができる。
【0178】
次に、本発明の第4の実施形態に係る水上乗物のための移動装置の透視図および垂直図をそれぞれ示す図4図4Aおよび図4Bを参照する。
【0179】
図示されているように、移動装置125は、移動装置120のものと実質的に同一の動作モードを有し、後者は、2つの可撓性膜M1およびM2が直列に収容された単一の推進チャンバを備える。
【0180】
特に、移動装置125によって構成される推進チャンバは、第1膜M1の前端の近くに位置する上流端と、第2膜M2の後端の近くに位置する下流端を有する。第1膜M1の後端は、第2膜M2の前端の近傍に位置する。
【0181】
本例では、3つのアクチュエータが構成されており、各膜をうねらせることによって移動装置125から推力を発生させる。
【0182】
特に、第1膜M1の前端に、2つのアクチュエータA11およびA12が接続され、M1の後端に、1つのアクチュエータA13が接続されている。同様に、2つのアクチュエータA21およびA22は、第2膜M2の前端に接続され、単一のアクチュエータA23は、M2の後端に接続されている。
【0183】
好ましくは、アクチュエータA11およびA12は、互いに同期しており、アクチュエータA21およびA22もまた、互いに同期している。
【0184】
有利には、アクチュエータ間の同期は、第2膜M2が第1膜M1の進行波を拡張するようになっていてもよい。
【0185】
膜M1およびM2が同一である場合、例えばアクチュエータA11およびA12をアクチュエータA21およびA22と同期させることによって位相が合ってうねり出すことがある。他の動作モードのうち、2つの膜のうちの1つだけをうねらせてもよいし、両方の膜を位相が反対になるようにうねらせてもよい。
【0186】
他の可能な動作モードの中で、例えば液体中で装置を制動するために、推力反転が移動装置125によって生成されてもよい。そのような制動は、例えば、膜M1およびM2をうねらせるためにアクチュエータA13およびA23のみを使用することによって得られてもよい。
【0187】
図5は、本発明の第5の実施形態に係る水上乗物のための移動装置の概略図を示す。
【0188】
本例では、移動装置130は、2つのフランジ13、23によって形成され、2つの膜M1およびM2が並列に収容される単一の推進チャンバを備える。
【0189】
図示のように、アクチュエータA1は、2つの膜M1およびM2を同時に、同期的にまたは非同期的にうねらせるために用いられ、前記2つの膜は、必ずしも整列しているかまたは同じ寸法である必要はない。
【0190】
先に説明した本発明の第2実施形態とは異なり、推進チャンバにはセパレータが存在しない。これによって、2つの膜M1およびM2は、それぞれのうねりの間に互いに接触またはブラシをかけることができ、したがって、それらの間に相対的なシールを形成し、例えば大きな物体の通過を可能にするためにセパレータに関する省スペースを可能にする。
【0191】
対応する図6図6Aおよび図6Bは、それぞれ、本発明の第6の実施形態に係る水上乗物のための移動装置の透視図および垂直図を示している。
【0192】
本例では、上述の第5実施形態と同様に、移動装置135は、2つの膜M1およびM2が並列に収容された単一の推進チャンバを備える。
【0193】
なお、本例では、2つの膜M1およびM2は、矩形状であり、他の1つの上に収容され、各膜は、少なくとも1つのアクチュエータによってうねらせることができる。
【0194】
したがって、可撓性膜M1のうねりは、アクチュエータA11および/またはA12によってその前端から、またはアクチュエータA13によってその後端で得ることができる。
【0195】
ここで、上流端の作動および下流端の作動は、必ずしも同時に行われる必要はない。
【0196】
同様に、可撓性膜M2のうねりは、アクチュエータA21および/またはA22によってその前端から、またはアクチュエータA23によってその後端において得ることができる。
【0197】
図7は、本発明の第7の実施形態に係る水上乗物のための移動装置の概略図を示す。
【0198】
本例では、上述の第5実施形態と同様に、移動装置140は、2つの膜M1およびM2が並列に収容されている、セパレータのない単一の推進チャンバ54を備える。
【0199】
推進チャンバ54の壁は、2つのフランジ14および24を備える。
【0200】
可撓性膜M1およびM2をうねらせるために、ここでは2つの別々のアクチュエータA1およびA2が存在し、アクチュエータA1は取付点P1によって第1膜M1に接続され、アクチュエータA2は取付点P2によって第2膜M2に接続されている。
【0201】
変形例として、アクチュエータA1およびA2は、1つの同じアクチュエータであるが、独立して振動する、同期して振動する、位相がずれる、またはずれない2つの可動部分から構成されていてもよい。
【0202】
特に、アクチュエータA1はフランジ14の側に、アクチュエータA2はフランジ24の側に配置され、これによって、2つのアクチュエータを分離することができる。
【0203】
有利には、アクチュエータの一方または他方は、密閉されたチャンバ内に配置されてもよく、例えば、ウォールシールを介して接続されている膜をうねらせることができる。
【0204】
ここで、密閉されたチャンバとは、移動装置によって推進される液体と接触していないチャンバのことである。しかしながら、移動装置が水車内に配置される場合、アクチュエータは必ずしも密閉されたチャンバ内にある必要はなく、しかしながら、外部の環境条件、例えば悪天候から保護されることがある。
【0205】
次に、本発明の第8の実施形態に係る水上乗物のための移動装置の概略図を示す図8を参照する。
【0206】
本例では、移動装置150は、3つの膜M1およびM2、M3が並列に収容されている、セパレータのない単一の推進チャンバ55を備える。推進チャンバ55の壁は、2つのフランジ15、25を備える。図示しない実施例では、4つの膜、5つの膜、または5つ以上の膜を並列に設けることもできる。
【0207】
図示するように、1つの同じアクチュエータA1が、3つの膜M1およびM2、M3を同時に、同期的に、または非同期にうねらせるために用いられ、前記3つの膜は、必ずしも整合されておらずかつ同じ寸法でなくてもよい。
【0208】
次に、本発明の第9の実施形態に係る水上乗物のための移動装置の概略図を示す図9を参照する。
【0209】
図示のように、装置160は、可撓性膜M1またはM2が収容される2つの推進チャンバ56Aおよび56Bを備える。
【0210】
好ましくは、2つの膜は、平行な平面上に配置される。
【0211】
2つのチャンバ56Aおよび56Bは、分離されている。例えば、これらは共通のフランジから構成されてもよく、またはセパレータによって互いに分離されてもよく、その幾何学的形状は、例えば2つのチャンバに好ましくは収束した特性を与えることができる。
【0212】
第1チャンバ56Aの上流端は、第1流入流F1のための入口部分として作用し、第2チャンバ56Bの上流端は、第2流入流F3のための入口部分として作用する。また、第1チャンバ56Aの下流端は、膜M1によってF1から推進される液体の第1流出流F2に対する流出部として作用し、第2チャンバ56Bの下流端は、膜M2によってF3から推進される液体の第2流出流F4に対する流出部として作用している。
【0213】
出口では、2つの膜M1およびM2のうねりによって、場合によっては同期した方法によって、流入水の流入流F1およびF3の合計よりも大きい流出流F2およびF4の合計を提供するように、推力が生み出される。
【0214】
有利には、単一のアクチュエータA1は、推進チャンバ56Aおよび56Bの各々において実質的に平行にかつ同じ軸に沿って整列された2つの膜M1およびM2を、接続する。
【0215】
説明したように、水上乗物を移動させる装置160は、出口部分と、増加する発生推力、この場合は存在する推進チャンバの数に比例して増加する発生推力とを有し、推力を発生させるには単一のアクチュエータで十分である。
【0216】
図10は、本発明の第10実施形態に係る水上乗物の移動装置の概略図を示す。
【0217】
移動装置170は、平行に整列され、2つのアクチュエータA1およびA2が配置されたセパレータ32によって分離されている、実質的に一定の特性の2つの推進チャンバ57Aおよび57Bを備えている。
【0218】
チャンバ57Aは、第1アクチュエータA1に接続される可撓性膜M1を備えており、チャンバ57Bは、第2アクチュエータA2に接続される可撓性膜M2を備えている。
【0219】
出口では、流入流F11とF12の合計よりも大きい総出流F2を提供するように、2つの膜M1およびM2のうねりによって、場合によっては同期した方法で、推力が発生する。
【0220】
次に、本発明の第11の実施形態に係る水上乗物180を移動させるための装置を示す、対応する図11図11A、11Bおよび11Cを参照する。
【0221】
特に、図11A、11Bおよび11Cの各々は、単一の推進チャンバと、そこに収容される単一の可撓性膜M1と、同じ膜に接続される2つのアクチュエータA1およびA2とを備えている装置180の可能な動作モードを示す。
【0222】
ここでの推進チャンバ58のフランジは、収束した特性を与えるように配置されている。非限定的に、この特性は、他の可能な変形例にしたがって、発散型であっても、一定であってもよい。
【0223】
一例によれば、第1アクチュエータA1は、その前端の近くに位置する第1取付点P11において可撓性膜M1に接続され、第2アクチュエータA2は、その後端の近くに位置する第2取付点P21においてM1に接続される。
【0224】
図示しない場合、アクチュエータA1およびA2は、膜M1への異なる可能な取付点を有する1つの同じアクチュエータであってもよい。
【0225】
また、他の場合、アクチュエータA1の一部がアクチュエータA2を構成したり、その逆に構成したりしてもよい。一般に、膜の後端よりも前端をうねらせるために供給される電力が多いほど、前進運動を促進し、膜の前端よりも後端をうねらせるために供給される電力が多いほど、後進ギアを好む。
【0226】
さらに他の場合によれば、上流端のアクチュエータは下流端のそれと同じであり、一度に1つの縁のみを作動させることができる。
【0227】
これによって、チャンバ58から推進される液体の送出流F2を、後者において上流端部から下流端部に向かって変位した後に制御するための手段を提供することができる。
【0228】
例えば、図11Aは、「通常」の動作モードを示し、この場合、膜M1は、先に説明したように、アクチュエータA1の交互の動きによってうねる。アクチュエータA1のみがM1をうねらせる場合、流入流F1よりも大きい流出流F2を提供するために、上流端から下流端まで推力が生み出される。
【0229】
さらに、この図は、アクチュエータA2のみの交互の動きによって膜M1をうねらせる「逆推力」動作モードも説明できる。
【0230】
アクチュエータA1が停止しておりかつアクチュエータA2が動作中であれば、膜M1内を伝播する波は、伝播方向が反転しており、下流端から上流端への液体の変位が可能である。実際、アクチュエータA2のみがM1をうねらせる場合、流入流よりも大きい流出流をF1およびF2で示す方向とは反対の方向に提供するために、下流端から上流端に推力が生み出される。
【0231】
アクチュエータA2のみが膜M1をうねらせる場合、これによって、チャンバ58内の液体の変位方向を逆転させることができ、したがって、装置180を含む水上乗物が、装置の向きまたはチャンバ58の上流端を変えることなく、後進ギアを実施することができる。
【0232】
したがってこれは、特に、移動装置が巨大でありかつ回転がすべて困難な可能性がある幅広の水上乗物にとって、推力逆転の有利な手段を提供する。
【0233】
さらにこれは、2つのアクチュエータA1およびA2が膜M1のうねりに共に寄与する「同期」動作モードを例示することも可能にする。
【0234】
これはまた、可撓性膜M1の後端の電動化、したがって、そのうねりが特定の運動モードに資するように、例えば、そのうねりの間にフランジに接触し得る推進チャンバ、または膜の騒音および振動を制限するために、うねりの膜の縁のうちの2つを作動させることを提供することを可能にしている。
【0235】
有利には、この作動手段は、例えば、装置180を備えた水上乗物が前進するとき、すなわちアクチュエータA1が作動しているとき、または、推進チャンバ内の液体の流入流F1が大きすぎて、膜M1がその特性によって高い流出流F2を提供しないときにも、完全に液体へ伝達しなかった膜M1の下流端からのエネルギーの回収を可能にする。これは、例えば、この運動装置を備えた水上乗物が、同じ方向の高い流量を有する水路上を航行する場合であり、または帆の下にありかつ本装置を有するヨットの場合である。
【0236】
図11Bは、「ゼロ推進」タイプの動作モードを示し、この動作モードでは、アクチュエータA1およびA2は、例えばM1の前端および後端を同じフランジに近づけることによって、装置180の推進チャンバのフランジに沿って膜M1を位置づけるために使用されている。
【0237】
本例では、また、図示しないが、M1を位置決めするために単一のアクチュエータを設けてもよい。実際、第2アクチュエータが存在せずに上流のアクチュエータがフランジの近くに配置される場合、膜の他方の端は、アクチュエータが配置するフランジの側に配置される傾向が自然に生じる。したがって、第2アクチュエータは本例では必須ではない。
【0238】
この場合、膜M1はうねさせられず、チャンバ内の液体の流れから離れて配置されるので、推力は発生しない。
【0239】
有利には、この離れた配置によって、膜がうねるとき、膜を操作中のフランジの方にずらすことができ、したがって、膜をより適した操作に調整することができる。
【0240】
さらに、これによって、例えば、液体中に存在する固体物体、例えば小石、プラスチック片または材料片を通過できるように、膜を損傷しないように、膜を上げることができるようにすることができる。さらに、水上船が本移動装置以外の移動手段、例えば帆または熱機関を有する場合、この動作モードによって、液体中の膜による抗力を低減し、制限することができる。
【0241】
したがって、膜の耐久性、一般的には移動装置の耐久性を向上させることができる。
【0242】
これによって、膜M1を、取付部等の張力手段を用いることなく、伸張させることができる。電圧は、例えば、膜に対してアクチュエータを移動させることによって調整することができる。これはまた、膜M1のうねり振幅を制限すること、および/または後者が推進チャンバ58の壁のフランジに突き当たることを防止することができる。
【0243】
図11Cは、「制動」タイプの動作モードを示し、アクチュエータA1およびA2は、M1の前端を第1フランジの近くに、M1の後端を装置180の推進チャンバの別のフランジ、例えばそれに対向するフランジに沿って配置するために使用されている。
【0244】
これによって、車両と液体との間の摩擦を利用して速度を低下させるのではなく、移動装置を構成する水上乗物の能動的な制動を提供することができ、水上乗物を停止させるために多くの時間を必要とすることができる。また、この制動は、単に抗力を増加させるだけであるため、より優しい。
【0245】
特に、この位置決めは、M1によって、チャンバ内の液体の流れを遮断し、これによって、バルブなどの対応する油圧回路を閉鎖するように実施することができる。
【0246】
図12は、本発明の第12の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0247】
本例では、移動装置190は、収束特性の推進チャンバ59、可撓性膜M1、およびそれに接続されたアクチュエータA1を備えている。
【0248】
さらに、移動装置190は、3つの偏向器D11、D12、およびD21を備えている。特に、これらの偏向器D11およびD12のうちの2つは、チャンバ59の上流端の近くに配置され、これらの偏向器のうちの3つ目は、チャンバ59の下流端の近くに配置されている。偏向器D11およびD12は、流入流F1の方向を変更する一方、偏向器D21は、流出する流れF2の方向を変更する。
【0249】
少なくとも1つの偏向器が上流端の近くに配置される場合、推進チャンバの主軸に実質的に平行な方向における偏向器の向きは、液体を前記チャンバの第1入口セクションの方に向けることができ、これによって流入流量を増加させることができる。
【0250】
変形例として、上流端の近くに配置され、推進チャンバの主軸とは実質的に異なる方向に配向された偏向器は、液体をチャンバの第1入口セクションに向かわせないことを可能にし、これは流入流量を減少させる。
【0251】
少なくとも1つの偏向器が下流端の近くに配置される場合、これによって、液体を推進チャンバの出口に向けることが可能になり、これによって、発生する推力の方向が変更される。
【0252】
偏向器は、例えば舵であり、推進される液体の方向を調整するために、あらゆる方向、好ましくは膜に対して横方向である軸に関して、または傾斜および/またはトリムを調整するために平行軸に沿って配向されることができる。
【0253】
流体の流れを妨げないために、舵は、その流れに位置することなく、スラスタの隣にあることができる。また、偏向器は、水上機の抗力を低減または増大させるために、翼として、またはフラップ(または「フォイル」)のような制動手段として作用してもよい。
【0254】
図示されていない様々な例によれば、移動装置は、いくつかの水平および/または垂直偏向器を備えてもよい。特に、移動装置は、少なくとも1つを備えてもよい。
【0255】
他の例によれば、偏向器は、入口部分または出口部分の中央付近に配置されてもよいし、入口部分または出口部分のいずれかの側に配置されてもよい。
【0256】
さらに他の例によれば、推進チャンバの壁は、液体中の移動装置を方向付けるように方向付けられてもよく、その壁は、その後、偏向壁として機能する。
【0257】
図13は、本発明の第13の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
【0258】
本例では、移動装置195は、2つのフランジ19および29によって規定される、可変特性の推進チャンバ595を備えている。推進チャンバ595の特性の可変性は、少なくとも1つのフランジ、ここではフランジ29の可能な可動性のおかげで可能とされる。
【0259】
可撓性膜M1は、推進チャンバ595内に収容され、取付点P1によってアクチュエータA1に接続されている。
【0260】
移動装置195は、取付点P20によってフランジ29に接続された第2アクチュエータA2をさらに含み、一方、アクチュエータA1は、取付点P10によってこの同じフランジ29にさらに接続されている。このように、アクチュエータA1は、可撓性膜M1とフランジ29の両方に接続されている。
【0261】
これによって、推進チャンバの容積を変更するためにフランジの間隔を調整し、水上機の推力、速度、方向または姿勢を調整することができる。このような調整はまた、アクチュエータを用いずに、および/または停止しているときに、手動で行うこともできる。
【0262】
有利には、推進チャンバの容積の修正は、可撓性膜M1のうねりと同期した方法で実施され得る。例えば、アクチュエータA1は、可撓性膜M1の前端または後端を、それがまた接続されているフランジの動きと同時に動かすことができる。
【0263】
様々な例によれば、いくつかのアクチュエータも、推進チャンバのフランジを、この推進チャンバに収容された1つまたは複数の膜のうねりと同時にまたはそうでなく動かすように同期させることができる。
【0264】
図示しない例によれば、少なくとも1つの可撓性膜と少なくとも1つのアクチュエータは、可撓性膜によるアクチュエータの動きからエネルギーを生成するように構成される。
【0265】
このような場合、移動装置は、エネルギー生成装置として機能し、それにもかかわらず、その特徴は、上述の実施形態に類似したままである。しかし、アクチュエータは、ここでは、電気発生装置として機能する。可撓性膜は、エネルギー発生装置の推進チャンバ内に配置され、したがって、エネルギー発生キャビティとして機能し、そのフランジは、チャンバの上流端と下流端の間を移動する液体の流れのためのダクトを定義する。
【0266】
また、そのような場合、電気生成装置としての動作は、ある流体流速から、または水車から、例えば5ノットを超える速度に対して自動的に実施することができる。
【0267】
有利には、このエネルギー生成段階の間、システムは、可能な最大発電量を得るようにそれ自体を自動的に方向付けることができる。
【0268】
作動中、膜M1の前端は第1電圧に、膜M1の後端は異なる値の第2電圧にかけられる。電圧差の影響下で、チャンバ内を循環する水の流れが膜M1をうねらせ、膜M1の液体の流れに対する抵抗、したがって電圧値の差に依存する値の速度を有する波動伝播を発生させる。
【0269】
好ましくは、膜M1は、装置のチャンバの発散部分に配置される。この部分は、膜M1での進行中の波の振幅の包絡線に一致するように形成されている。膜の機械的特性は、好ましくは、波の伝播速度がチャンバを通過する液体の速度より常に低くなるように選択される。
【0270】
図14は、本発明の別の実施形態に係る水上乗物の透視図を示す。
【0271】
本例では、水上乗物1000は、半剛性の船体1100と、船外機1200、すなわち船体1100の外側に配置されたモータとを備えているボートである。
【0272】
特に、装置200は、水上乗物1000の後部に、好ましくはトランサムに取り付けられる。
【0273】
有利には、装置が備える推進チャンバは、異なる位置に、水上乗物の主軸、例えばロール軸に沿って配置され、すべての推進チャンバによって発生する推力がこの軸に沿って水上乗物を直線的に移動させるようにしてもよい。
【0274】
ここでのモータ1200は、先に説明したいずれかの実施形態に対応する移動装置200を構成する。
【0275】
特に、そして車両1000が水上にあるとき、アクチュエータとは異なり、装置200の推進チャンバとそれらが構成する膜だけが水中に浸されるように、モータ1200を配置できる。
【0276】
このモータは、移動装置200に接続された舵1050によって操縦され、手動または電気的に使用することができる。これによって、例えば、モータの完全な回転を通じて逆ギアを実施することによって、下流端の作動手段を節約するために、水上機に対するチャンバの相対的な回転を可能にする。
【0277】
さらに、水に対するモータ1200の相対的な高さを調整することができる。これによって、水深が浅い場合、または車両1000が浜辺などの固い地面に到着した場合に、装置200の推進チャンバの損傷を回避することができる。
【0278】
図示しない例によれば、装置200を構成するモータは、可撓性シール、例えばカラータイプのシールによって車両1000に取り付けられてもよい。
【0279】
これによって、水上乗物への振動の伝達を回避すること、または少なくともエンジンによって生じる振動を減衰させることができる。
【0280】
このような構成によって、簡単で安全であり、移動装置を収容するために船体を大きく変形させる必要のない水上乗物が提供される。
【0281】
図15Aおよび15Bは、それぞれ、本発明のさらに別の実施形態に係る、移動装置を含む水上乗物の透視図およびそのような移動装置の透視図を示す。
【0282】
図15Aにおいて、水上乗物2000は、剛性の船体2100と、船体2100の内部に配置された船内モータ2200、すなわち、エンジンとを備えるボートである。
【0283】
モータ2200は、先に説明したいずれかの実施形態に対応する移動装置300を構成している。
【0284】
船体の第1要素310は、装置300の推進チャンバの上流端を構成し、船体の第2要素320は、前記推進チャンバの下流端を構成している。
【0285】
一例によれば、装置300の推進チャンバの上流端または下流端の少なくとも一方は、推進に用いられる液体に直接浸漬される。有利には、これは、プライミングの問題を回避するために、上流端である。さらに、推進チャンバの入口および出口が船体内に位置するように、上流端および下流端の両方が車両2000の船体2100に形成されてもよい。
【0286】
図示しない例によれば、水上乗物の船体は、推進チャンバの膜および/またはフランジが部分的または全体的に船体内に位置するように配置されたカントから構成されてもよい。
【0287】
例えば、装置300の推進チャンバの上流端は、液体に直接浸漬されないように配置されてもよい。しかしながら、装置300は、推進に使用される液体に浸された空洞を備えてもよく、後者は、推進チャンバを液体に接続する。
【0288】
有利には、この空洞は、水上乗物が発進するときに液体で満たされ、移動装置の始動性を向上させることができる。
【0289】
有利には、装置の少なくとも1つの推進チャンバの下流端は浸漬され、好ましくは、水上乗物が優先的な移動方向を有するときにその後部に位置し、その最適な推進に有利である。
【0290】
一例によれば、装置300の推進チャンバの上流端および下流端のうちの少なくとも1つは、油圧回路による推進に使用される液体に繋がっている。
【0291】
一例によれば、船体2100は、油圧回路を収容するために配置された少なくとも1つの開口部を有する。好ましくは、この開口部は、液体に浸された車両2000の喫水線よりも下に位置する。さらに、この開口部は、装置300のプライミングに関する問題を回避するように、車両2000の水中船体、下、側面、例えばバウスラスターのためのように前部、後部、その船体の2つの部分の間、またはその船体に対して斜めに配置されてもよい。
【0292】
有利には、開口部は、装置300の推進チャンバの入口部分または出口部分に位置してもよく、膜M1が収容される推進チャンバは、その間に位置し、装置300の少なくとも1つのアクチュエータは、密閉接続によってこの膜に接続される。
【0293】
一例によれば、前述した液圧回路は、移動装置内の液体の層流を促進するように配置されてもよい。
【0294】
変形例として、油圧回路を湾曲したりまたは曲げたりしてもよく、これによって、スペースを節約し、かつ水上乗物への移動装置の設置を簡略化できる。
【0295】
図15Bは、移動装置300の透視図を示す。
【0296】
移動装置300は、2つのアクチュエータA1およびA2に接続されている少なくとも1つの膜M1が収容される推進チャンバ350を備えている。
【0297】
前記の推進チャンバ350は、平行六面体形状であり、2つの垂直剛性壁301および302、並びに2つの水平剛性壁310および320によって形成されている。
【0298】
本例では、推進チャンバ350は、水上乗物2000における密閉筐体を形成する。特に、この密閉筐体の少なくとも1つの剛性壁は、推進チャンバ350のためのフランジとして機能する。
【0299】
一例によれば、少なくとも水平壁310は、推進チャンバ350の上部フランジとして機能し、一方で水平壁320は、車体に取り付けられた部品によって形成された下部フランジである。理想的には、この部品は、アセンブリの気密性を変化させないように選択され、かつ配置される。
【0300】
別の例によれば、他の剛性壁を、推進チャンバ350の上部、下部、または横方向のフランジとして使用できる。
【0301】
さらに別の例によれば、推進チャンバ350は、推進チャンバ350に収容された膜M1が、船体自体であってもよい側面の1つに面する1つのフランジのみを有するように、配置される。
【0302】
非限定的に、膜M1および/または推進チャンバ350は、矩形(または平行六面体)形状でなくてもよく、船体の形状に一致してもよく、これによって、移動装置300の設置中に水上乗物に行われる変更を制限できる。
【0303】
アクチュエータA1またはA2は、連結ピンA10またはA20を通じて膜M1を動かすように配置されてもよく、後者は、少なくとも1つの壁、例えば壁310を通過している。
【0304】
さらに、少なくとも1つの連結ピンは、シールを備えてもよく、このシールは、例えばおそらくOリングまたはベローズである。
【0305】
推進チャンバ350は密閉チャンバでもよいが、後者は、膜M1を含む油圧回路の少なくとも一部によって交差されてもよい。この構成は、例えば、チャンバ内に存在する液体によって、電気モータの場合はそのパワーエレクトロニクスなどの、アクチュエータまたはその要素のいくつかを冷却できる。
【0306】
図示されない例によれば、移動装置300は、少なくとも1つの推進チャンバの外側においてその下流端の近くに位置し、好ましくは車両2000の船体2100の外側、または車両1000の船体1100の外側に位置する少なくとも1つのバケットをさらに備える。
【0307】
このバケットは、好ましくは、下流端から出た液体を、推進チャンバの外側を通じて、推進チャンバの上流端に向けて押し戻すように配置された部分である。
【0308】
液体の流出を下流側から上流側に向かわせることによって、発生する推力の方向を逆転させることができ、それゆえ車両2000を逆走させることができる。
【0309】
反転する場合、例えば、発生した推力によって流体が車両前方に変位し、前記車両は、推進チャンバ内における流体の変位と同じ方向に推進される。これは、推進チャンバの下流端の近くに位置する少なくとも1つの膜を作動させることによって実施することができる。
【0310】
移動装置によって発生する推力の方向を変更するために、推進チャンバおよび/または上述のバケットを枢動または回転させることができる変形例を提供することもできる。
【0311】
図示されない別の例によれば、移動装置の推進チャンバまたは膜は、チャンバ内の液体の流れまたは推進方向と直交する軸に対して回転できるように、配置される。この回転は、船体内において行われてもよい。
【0312】
有利には、これによって、移動装置によって生み出される推力の方向を変更することができる。
【0313】
図示されない例によれば、移動装置は、少なくとも1つの騒音低減手段または1つの機械的減衰手段をさらに備える。
【0314】
例えば、移動装置を備える推進チャンバは、防振脚によって水上乗物に直接取り付けてもよい。
【0315】
防振脚は、例えばカラーシールの形態を有する場合、モータの密閉性を向上させることができるだけではない。
【0316】
図16図16A、16B、16Cは、別の実施形態に係る移動装置196を示す。
【0317】
図示のように、図16A、16B、16Cは、それぞれ、装置196の透視図、透視断面図、および概略断面図を示す。
【0318】
好ましくは、装置は、例えば非対称のNACA特性を有するカウリング内に備えられる。液体の流入流F1は、上流端51aを通じて装置196に入り、流出流F2は、下流端51bを通じてそこから取り出される。
【0319】
装置196は、推進室と、この室に収容された、アクチュエータA1によってうねる膜M1とを備える。
【0320】
アクチュエータは、有利には、膜の真横、または水中、後者の上流または下流に配置される。
【0321】
本例では、前記推進室は、管状の形状を有し、膜M1は、円盤状の形状である。
【0322】
この構成によって、圧力を、水上機の上流端51a付近において低下させ、下流端51b付近において増加させることができる。
【0323】
また、圧力は、膜の外周部においてより最適に分散される。
【0324】
図16図17A図17B、および図17Cは、さらに別の実施形態に係る移動装置197を図示する。
【0325】
図示のように、図17A図17B、および図17Cは、それぞれ、装置197の透視図、透視断面図、および概略断面図を表す。
【0326】
装置197は、推進室と、この推進室に収容された、アクチュエータA1によってうねる膜M1とを備える。
【0327】
本例では、膜M1は、円筒形である。膜M1は、卵形のセパレータを取り囲む。好ましくは、推進室は円筒形である。
【図面の簡単な説明】
【0328】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
図2図2は、本発明の第2実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
図3図3は、本発明の第3の実施形態に係る移動装置を示す概略図を示す。
図4図4は、本発明の第4の実施形態に係る移動装置の透視図および縦断図をそれぞれ示す図4Aおよび図4Bに対応する。
図5図5は、本発明の第5の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
図6図6は、本発明の第6の実施形態に係る移動装置の透視図および縦断図をそれぞれ示す図6Aおよび図6Bに対応する。
図7図7は、本発明の第7の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
図8図8は、本発明の第8の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
図9図9は、本発明の第9の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
図10図10は、本発明の第10の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
図11図11は、本発明の第11の実施形態に係る移動装置の異なる動作モードをそれぞれ示す図11A図11B、および図11Cに対応する。
図12図12は、本発明の第12の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
図13図13は、本発明の第13の実施形態に係る移動装置の概略図を示す。
図14図14は、本発明の第14実施形態に係る移動装置を構成する水上乗物の透視図を示す。
図15図15は、本発明の第15実施形態に係る移動装置を構成する水上乗物の透視図、および水上乗物によって構成される移動装置の透視図をそれぞれ示す図15A、15Bに対応する。
図16図16は、第16実施形態に係る移動装置の透視図、透視断面図、および模式断面図をそれぞれ示す図16A図16B、および図16Cに対応する。
図17図17は、第17の実施形態に係る移動装置の透視図、透視断面図、および概略断面図をそれぞれ示す図17A、17Bおよび17Cに対応する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
【国際調査報告】