(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】バニラ香が内添された喫煙物質ラッパーおよびこれを含む喫煙物品
(51)【国際特許分類】
A24D 1/02 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
A24D1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562341
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 KR2021008431
(87)【国際公開番号】W WO2022010190
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0084915
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ナエ オ
(72)【発明者】
【氏名】アン、キ ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チュル ヒー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、クワン ホ
(72)【発明者】
【氏名】カン、クワン ウォン
【テーマコード(参考)】
4B045
【Fターム(参考)】
4B045AA06
4B045AA41
4B045AB14
(57)【要約】
本発明の一実施例によれば、バニリン、エチルバニリンおよびエチルバニリングルコシドのうち少なくとも一つのバニラ物質およびシガー種葉の繊維が内添された喫煙物質ラッパーおよびこれを含む喫煙物品が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物品の喫煙物質部を包む喫煙物質ラッパーであり、
前記喫煙物質ラッパーには、バニリン(vanillin)、エチルバニリン(ethyl vanillin)およびエチルバニリングルコシド(ethyl vanillin glucoside)のうち少なくとも一つのバニラ物質およびシガー種葉の繊維が内添されている、喫煙物質ラッパー。
【請求項2】
前記喫煙物質ラッパーに内添された前記バニラ物質の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して0.5%~10%である、請求項1に記載の喫煙物質ラッパー。
【請求項3】
前記喫煙物質ラッパーに内添された前記バニラ物質の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して1%~5%である、請求項2に記載の喫煙物質ラッパー。
【請求項4】
前記喫煙物質ラッパーに内添された前記シガー種葉の繊維の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して20%~40%である、請求項2に記載の喫煙物質ラッパー。
【請求項5】
前記喫煙物質ラッパーに内添された前記バニラ物質の重量は、前記喫煙物質ラッパーに内添された前記シガー種葉の繊維の重量に依存する、請求項4に記載の喫煙物質ラッパー。
【請求項6】
前記喫煙物質ラッパーに内添された前記バニラ物質の重量は、前記シガー種葉の繊維の重量から基準定数(constant)を減算した値に基準係数(coefficient)を乗算して算出される、請求項5に記載の喫煙物質ラッパー。
【請求項7】
前記基準定数は、23から25の間の実数であり、前記基準係数は、1から5の間の実数である、請求項6に記載の喫煙物質ラッパー。
【請求項8】
前記喫煙物質ラッパーは、CIELAB色空間で50~80のL*値、1~15のa*値、20~30のb*値を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の喫煙物質ラッパー。
【請求項9】
前記L*値は、50~60、前記a*値は、10~20、前記b*値は、20~30である、請求項8に記載の喫煙物質ラッパー。
【請求項10】
前記L*値は、65~80、前記a*値は、1~5、前記b*値は、20~30である、請求項8に記載の喫煙物質ラッパー。
【請求項11】
喫煙物質ラッパーで包んだ喫煙物質部と、
上流末端が前記喫煙物質部に結合され、フィルターラッパーで包んだフィルター部と、
前記喫煙物質部と前記フィルター部が結合されるように、前記喫煙物質部の少なくとも一部の領域と前記フィルター部を包むティッピングラッパーと、を含み、
前記喫煙物質ラッパーには、バニリン、エチルバニリンおよびエチルバニリングルコシドのうち少なくとも一つのバニラ物質およびシガー種葉の繊維が内添されている、喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バニラ香が内添された喫煙物質ラッパーおよびこれを含む喫煙物品に関し、より詳細には、副流煙の臭いを低減し、かつ低刺激性のやわらかい喫味感を付与できるバニラ香が内添されたシガーラッパーおよびこれを含む喫煙物品に関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙によって発生するタバコの煙は、タバコフィルターを通過して口に伝達される主流煙(main stream smoke)と、フィルターを通過せずに、大気中で発生する副流煙(side stream smoke)とに分けられ、このような主流煙および副流煙に含まれた好ましくない臭いを誘発する成分は、環境タバコ煙(environmental tobacco smoke,ETS)として喫煙者および周辺の人に否定的な影響を与えることができる。
【0003】
これより、従前のシガレットとの差別化を付与すると同時に、副流煙の臭いの低減効果とともに喫煙満足度を増大させることができる喫煙物質ラッパーの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、副流煙の臭いを低減し、かつ低刺激の喫味を付与する差別化されたシガレットペーパーおよびこれを含む喫煙物品を提供することにある。
【0005】
本発明の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の技術者が明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一部の実施例によれば、バニリン(vanillin)、エチルバニリン(ethyl vanillin)およびエチルバニリングルコシド(ethyl vanillin glucoside)のうち少なくとも一つのバニラ物質およびシガー種葉の繊維が内添された喫煙物質ラッパーが提供される。
【0007】
ここで、前記喫煙物質ラッパーに内添された前記バニラ物質の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して0.5%~10%でありうる。好ましくは、前記喫煙物質ラッパーに内添された前記バニラ物質の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して1%~5%でありうる。より好ましくは、前記喫煙物質ラッパーに内添された前記バニラ物質の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して2%~4%でありうる。
【0008】
なお、前記喫煙物質ラッパーに内添された前記シガー種葉の繊維の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して5%~80%でありうる。好ましくは、前記喫煙物質ラッパーに内添された前記シガー種葉の繊維の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して10%~60%でありうる。より好ましくは、前記喫煙物質ラッパーに内添された前記シガー種葉の繊維の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して20%~40%でありうる。
【0009】
一部の実施例において、前記喫煙物質ラッパーに内添された前記バニラ物質の重量は、前記喫煙物質ラッパーに内添された前記シガー種葉の繊維の重量に依存する。
【0010】
前記喫煙物質ラッパーに内添された前記バニラ物質の重量は、前記シガー種葉の繊維の重量から基準定数(constant)を減算した値に基準係数(coefficient)を乗算して算出することができる。ここで、前記基準定数は、23から25の間の実数であり、前記基準係数は、1から5の間の実数でありうる。
【0011】
なお、前記喫煙物質ラッパーは、CIELAB色空間で50~80のL*値、1~15のa*値、20~30のb*値を有することができる。好ましくは、前記L*値は、50~60、前記a*値は、10~20、前記b*値は、20~30でありうる。または、前記L*値は、65~80、前記a*値は、1~5、前記b*値は、20~30でありうる。
【0012】
また、本発明の一部の実施例によれば、喫煙物質ラッパーで包んだ喫煙物質部と、上流末端が前記喫煙物質部に結合され、フィルターラッパーで包んだフィルター部と、前記喫煙物質部と前記フィルター部が結合されるように、前記喫煙物質部の少なくとも一部の領域と前記フィルター部を包むティッピングラッパーと、を含み、前記喫煙物質ラッパーには、バニリン、エチルバニリンおよびエチルバニリングルコシドのうち少なくとも一つのバニラ物質およびシガー種葉の繊維が内添されたことを特徴とする喫煙物品が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施例によれば、喫煙物質ラッパーにバニラ物質およびシガー種葉の繊維が内添されることによって、副流煙のタバコの臭いを低減させたり、バニラ香でマスキングして、喫煙者または周囲の人の不快感をなくしたり低減させることができる。
【0014】
また、本発明による喫煙物質ラッパーは、上記した副流煙の臭いの低減効果を確保すると同時に、喫煙者にさらに好ましい官能特性を提供することができる。
【0015】
また、本発明による喫煙物質ラッパーは、十分な香り保留性および発現量を確保できるバニラ物質が内添されていても、シガレットペーパーの変色に関するリスクを最小化ることができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一部の実施例による喫煙物品の略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述している実施例を参照すれば明確になるだろう。しかしながら、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現することができ、単に本実施例は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるのみである。明細書の全般において同一の参照符号は、同一の構成要素を指す。
【0018】
別途の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が共通して理解できる意味として使用できる。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解析されない。
【0019】
また、本明細書において、単数型は、文章において特に言及しない限り、複数型も含まれ得る。明細書において使用される「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子は、一つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0020】
本明細書において使用される「第1」または「第2」などのように序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するのに使用できるが、前記構成要素は、前記用語により限定されるべきものではない。前記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的だけで使用される。
【0021】
明細書全般において、「喫煙物品」は、タバコ(シガレット)、シガーなどのように、エアロゾルを発生させることができる物を意味する。喫煙物品は、エアロゾル発生物質またはエアロゾル形成基質を含むことができる。また、喫煙物品は、板状葉タバコ、刻み、再構成タバコなどタバコ原料を基礎とする固体物質を含むことができる。喫煙物質は、揮発性化合物を含むことができる。
【0022】
図1は、本発明の一部の実施例による喫煙物品の概略的な構成を示す図である。
【0023】
本明細書では、喫煙物品100が燃焼型シガレットである場合を例にあげて説明したが、場合によって、喫煙物品100は、電子タバコ機器などのエアロゾル生成装置(不図示)とともに使用される加熱式シガレットなどであってもよい。
【0024】
図1を参照すると、喫煙物品100は、フィルターラッパー110aで包んだフィルター部110と、喫煙物質ラッパー120aで包んだ喫煙物質部120と、前記フィルター部110と喫煙物質部120とを結合させるチップペーパー130と、を含むことができる。
【0025】
フィルター部110は、喫煙物質部120の下流に配置されて、喫煙物質部120で発生したエアロゾル物質をユーザが吸入する直前に通過する領域でありうる。
【0026】
フィルター部110は、多様な材質で形成することができるが、例えばフィルター部110は、セルロースアセテートフィルターでありうる。フィルター部110は、香料物質が加香処理されていないセルロースアセテートフィルターであってもよく、香料物質が加香処理されたTJNS(transfer jet nozzle system)フィルターであってもよい。
【0027】
一部の実施例において、フィルター部110は、内部に中空を含むチューブ形態の構造物であってもよい。また、フィルター部110は、内部(例えば、中空)に同じあるいは異なる材質のフィルム、チューブなどの構造物を挿入して製造することもできる。
【0028】
本実施例のフィルター部110は、単一フィルターからなるモノフィルターであることが図示されたが、これに限定されない。例えば、フィルター部110は、フィルター効率を上げるために、2個のアセテートフィルターを具備したデュアルフィルターまたは三重フィルターなどで設けられ得ることは当然である。
【0029】
また、図示されてはいないが、フィルター部110の内部には、香料を含む内用液を皮膜で包んだ構造の破砕可能なカプセル(不図示)が含まれてもよい。
【0030】
上述したフィルター部110は、喫煙物質部120の下流に配置されて、喫煙物質部120で発生したエアロゾル物質をユーザが吸入する直前に通過するフィルターとしての役割を行うことになる。
【0031】
前記フィルター部110は、フィルターラッパー110aにより包装することができる。フィルターラッパー110aは、耐油性を有する巻紙で製作することができ、フィルターラッパー110aの内側面にはアルミホイルがさらに含まれてもよい。
【0032】
喫煙物質部120は、原料葉タバコ、板状葉または葉タバコと板状葉が配合された混合物で充填することができる。前記混合物は、シート形態または刻み形態で喫煙物質部120に充填されることができる。喫煙物質部120は、長く延びたロッド形態を有することができ、その長さ、外周および直径は多様である。また、喫煙物質部120は、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびオレイルアルコールのうち少なくとも一つのエアロゾル発生物質を含むことができる。また、喫煙物質部120は、風味剤、湿潤剤および/またはアセテート化合物のような他の添加物質を含有することができる。
【0033】
喫煙物質部120は、喫煙物質ラッパー120aにより包装することができる。なお、喫煙者および周辺の人に否定的影響を与えることができる副流煙は、喫煙物品100の全体的構造、喫煙物質部120に含まれ得る葉タバコの配合などによって発生量が左右され、特に喫煙物質部120を包装する喫煙物質ラッパー120aの特性に相当な影響を受けることになる。このような理由から、従来、喫煙物質ラッパー120aを二重ラッパー形態で構成したり、喫煙物質ラッパー120aの繊維組成、多孔度、充填剤の種類、粒子分布、添加量など喫煙物質ラッパー120aの特性変化など多様な方式で副流煙を減少させようとする試みがあった。ただし、副流煙の低減のために、単に一般シガレットペーパーに比べて坪量のみを高める場合、使用繊維量が多くなって、喫煙時に繊維臭、異臭味が増加することができ、このような理由から、喫煙者が感じる喫煙時の喫味が減少することによって、製品への適用に限界がある。
【0034】
これより、副流煙によるタバコの臭いを低減させると同時に、低刺激性のやわらかい喫味感を付与する差別化されたシガレットペーパーを提供するために、本発明の喫煙物質ラッパー120aには、バニラ物質およびシガー種葉の繊維が内添されることができる。
【0035】
具体的に、喫煙物質ラッパー120aには、バニリン(vanillin)、エチルバニリン(ethyl vanillin)およびエチルバニリングルコシド(ethyl vanillin glucoside)のうち少なくとも一つのバニラ物質が内添されることができ、これと同時に、シガー種(葉巻種)の葉から抽出されたシガー種葉の繊維が内添されることができる。前記バニラ物質およびシガー種葉の繊維以外にも、前記喫煙物質ラッパーには、麻繊維(bast fiber)、木材パルプなどのセルロース繊維および炭酸カルシウムなどの無機物充填剤、リン酸アンモニウムなどの助燃剤を含むことができるが、これらに限定されない。
【0036】
ここで、シガレットの保存期間中のバニラ香の保留性、喫煙時におけるシガレットの燃焼性および喫味強度などを考慮して、喫煙物質ラッパー120aに内添された前記バニラ物質の重量は、前記喫煙物質ラッパーの総重量に対して略0.5%~10%、好ましくは、略1%~5%、より好ましくは、略2%~4%でありうる。
【0037】
後述する実験例などで具体的に調べることのように、バニラ物質の内添量が上記した数値範囲未満の場合、喫煙時の肯定的な香り発現機能が低下して、有意的なタバコの臭いの低減効果の確保が難しく、また、シガレットの保存時の安定した香り保留性の確保に困難性を伴う。また、バニラ物質の内添量が上記した数値範囲を超過する場合、シガレットの燃焼性の低下によってパフ数が過多に増加し、これによって、パフ当たりニコチン送達量が減少して、喫煙時における喫味強度および喫味満足度が低下し、また、バニラ物質固有の香りとタバコ固有の味が調和が取れなくなり、全体的な喫煙満足度が低下することになる。
【0038】
なお、喫煙物質ラッパーに単にバニラ物質のみを添加して製造するとき、肯定的な香り発現は論外にしても、喫味強度の低下とシガレット保存期間中の香り消失、保存期間の経過によるラッパー変色の問題が発生することできる。
【0039】
このような点を考慮して、本発明の喫煙物質ラッパー120aには、上記したバニラ物質と共に、シガー種葉の繊維が内添されることができる。
【0040】
具体的に、喫煙物質ラッパー120aに内添されたシガー種葉の繊維の重量は、喫煙物質ラッパー120aの総重量に対して略10%~50%、好ましくは、略20%~40%、より好ましくは、約25%~35%でありうる。
【0041】
上記した数値範囲のシガー種葉の繊維がバニラ物質と共に喫煙物質ラッパー120aに内添される場合、シガレットの変色イシューを解消し、タバコ固有の満足度を保存すると同時に、安定的に香り保留性および香り発現によるタバコの臭いの低減効果を確保することができることになる。上記したシガー種葉の繊維の内添による効果は、特に、喫煙物質ラッパー120aにバニラ物質が約3重量%以上内添された場合、さらに目立つことを確認した。
【0042】
一部の実施例において、喫煙物質ラッパー120aに内添されたバニラ物質の重量は、喫煙物質ラッパー120aに内添されたシガー種葉の繊維の重量に依存する。すなわち、バニラ物質の内添量は、シガー種葉の繊維の内添量が変化するにつれて変更される。言い換えれば、シガー種葉の繊維の内添量は、バニラ物質の内添量が変化するにつれて変わる。
【0043】
好ましくは、バニラ物質の含有量(またはシガー種葉の繊維の含有量)とシガー種葉の繊維の含有量(またはバニラ物質の含有量)は、比例関係にありえる。すなわち、バニラ物質の含有量(またはシガー種葉の繊維の含有量)が増加すると、シガー種葉の繊維の含有量(またはバニラ物質の含有量)も増加することができる。
【0044】
具体的な例として、シガー種葉の繊維の含有量(またはバニラ物質の含有量)は、バニラ物質の含有量(またはシガー種葉の繊維の含有量)が増加するにつれて線形的に増加することができる。より具体的に、喫煙物質ラッパー120aに内添されたバニラ物質の重量は、シガー種葉の繊維の重量から基準定数(constant)を減算した値に基準係数(coefficient)を乗算して算出することができる。すなわち、喫煙物質ラッパー120aに内添されたバニラ物質の重量Vおよびシガー種葉の繊維の重量Cは、数式1の関係を有することができる。
【0045】
【0046】
数式1で、cfは、前記基準係数を、ctは、前記基準定数を意味し、好ましくは、前記基準定数は、略23から25の間の実数であり、前記基準係数は、略1から5の間の実数でありうる。
【0047】
喫煙物質ラッパー120aに内添されたバニラ物質およびシガー種葉の繊維の含有量が上記の関係にあるとき、タバコ固有の喫味特性の劣化を最小化すると同時に、主流煙および副流煙の改質効果をさらに最大化することができる。
【0048】
また、シガレットの製造工程、保存期間、多様な温度および湿度状況での物流期間中のシガレットペーパーの変色イシューを最小化するためには、バニラ物質およびシガー種葉の繊維が内添された喫煙物質ラッパー120aが、CIELAB色空間で約50~80のL*値、約1~15のa*値、約20~30のb*値を有することが好ましい。より好ましくは、前記L*値は、約50~60、前記a*値は、約10~20、前記b*値は、約20~30でありうる。または、前記L*値は、約65~80、前記a*値は、約1~5、前記b*値は、約20~30でありうる。
【0049】
なお、本発明の喫煙物質ラッパー120aにより主流煙および副流煙を改質し、従前のシガレットとの差別化を付与すると同時に、シガレットの喫味感、燃焼性、消火性およびシガレットの製造作業性をも確保するために、本発明の喫煙物質ラッパー120aには、助燃剤が約1.0重量%~1.5重量%、充填剤が約12重量%~21重量%含有されることが好ましい。
【0050】
また、上記した喫煙物質ラッパー120aの条件で本発明の効果を確保するための、喫煙物質ラッパー120aの引張強度は、約0.08kgf/mm~0.10kgf/mmであり、伸び率は、略0.5%~1.0%でありうる。
【0051】
一部の実施例において、喫煙物質ラッパー120aは、二重巻紙構造を有することもできる。具体的に、喫煙物質ラッパー120aは、喫煙物質部120に接し、喫煙物質部120を包むインナーラッパー(inner wrapper、不図示)と、前記インナーラッパーに接し、前記インナーラッパーの外部を包むアウターラッパー(outer wrapper)と、を含むことができる。
【0052】
この場合、前記インナーラッパーおよびアウターラッパーのうちいずれか一つは、バニラ物質およびシガー種葉の繊維が含有されていないシガレットペーパーであり、残りの一つは、バニラ物質およびシガー種葉の繊維が含有されたシガレットペーパーで構成されることもできる。
【0053】
または、前記インナーラッパーおよびアウターラッパーのうちいずれか一つのラッパーには、バニラ物質およびシガー種葉の繊維のうちいずれか一つが含有され、残りの一つのラッパーには、バニラ物質およびシガー種葉の繊維のうち残りの一つが含有されることもできる。
【0054】
このようにバニラ物質およびシガー種葉の繊維が含有された二重巻紙構造の喫煙物質ラッパーは、香り保留性および副流煙の臭いの低減特性においてさらに有利な効果を有することができる。
【0055】
なお、喫煙物質ラッパー120aは、一つ以上の低延焼性(Low Ignition Propensity,LIP)バンド(不図示)が形成された低延焼性シガレットペーパーでありうるが、これに制限されない。
【0056】
フィルターラッパー110aにより包装されたフィルター部110と喫煙物質ラッパー120aにより包装された喫煙物質部120とは、チップペーパー130により結合包装することができる。すなわち、チップペーパー130は、喫煙物質ラッパー120aの少なくとも一部分(例えば、下流の一部の領域)およびフィルターラッパー110aの外郭に囲まれることができる。換言すれば、喫煙物質部120の少なくとも一部分およびフィルター部110は、チップペーパー130によりさらに包装され、物理的に結合されることができる。一部の実施例において、チップペーパー130は、耐油処理されていない非多孔性巻紙で製作することができるが、これに制限されない。
【0057】
なお、チップペーパー130は、不燃性物質を含むことによって、フィルター部110が燃焼する現象を防止することもできるが、これに制限されない。
【0058】
以下、実施例と比較例に基づいて本発明の構成およびそれによる効果をより詳細に説明することとする。しかし、本実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
実施例のために試験用に製造されたシガレットの刻み部を囲んでいるシガレットペーパーを除去し、バニラ物質約1重量%とシガー種葉の繊維約30重量%が含有されたシガレットペーパーを刻み部に巻き取って、シガレットを製造した。バニリンおよびエチルバニリンが約1:1の割合で構成されたバニラ物質を使用し、シガー種葉の繊維としては、葉巻種の中葉から抽出された繊維が使用された。
【0060】
[実施例2]
バニラ物質が約3重量%含有された点を除いて、実施例1と同じシガレットを製造した。
【0061】
[比較例1]
バニラ物質が含有されていない点を除いて、実施例1と同じシガレットを製造した。
【0062】
[実験例1:バニラシガーラッパーの物理性の評価]
本発明の実施例によるシガレットペーパーの物理的特性を確認するために、各実施例のシガレットペーパーの気孔度、坪量、引張強度、助燃剤の含有量、充填剤の含有量およびシガレットの燃焼性を分析して、表1に示し、表2は、実施例1によるシガレットの保存期間の経過による物理性の変化有無の分析結果であり、表3は、シガレットの重さ、円周、希釈率、UPD(unencapsulated pressure drop)、EPD(encapsulated pressure drop)および硬度特性を示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
表1~表3に示されたように、比較例および実施例の全部において、量産適用が不可能な物理的特性が観察されず、条件別に保存期間の経過によっても物理的特性が劣化しなかったことを確認することができる。
【0067】
[比較例2]
シガー種葉の繊維が含有されていない点を除いて、実施例1と同じシガレットを製造した。
【0068】
[実験例2:バニラシガーラッパーの保存性-変色の評価]
保存期間の経過による変色を評価するために、各実施例におけるシガレットペーパーのCIELAB色空間データを測定して、表4に示した。
【0069】
【0070】
表4を参照すると、比較例1の場合、保存期間の経過によって±16.0以内の色差値の変化が観察され、苛酷条件でのΔE値は、約17.5と算出された。実施例1の場合、±3.0以内の色差値の変化が観察され、ΔE値は、苛酷条件でも約2.3と算出され、一般的にΔE値が3以上である場合にのみ、消費者の色変化の認知が可能な点を考慮して、実施例1によるシガレットの製造時に変色イシューがないことが確認された。実施例1と バニラ物質の含有量が同一であり、かつ、ただシガー種葉の繊維が含有されていない比較例1の結果に照らして、実施例1が、比較例1に比べて小さい色差値の変化量と、低いΔE値が現れたことを確認することができる。さらに、実施例1の場合、表4に示されたCIELAB色空間データ以外の指標として白色度および不透明度の特性も、比較例1に比べて優れていることを確認した。具体的に、比較例1の場合、保存期間の経過後に白色度が約-8.9%(苛酷条件の場合、約-12.4%)、不透明度が約7.4%(苛酷条件の場合、約8.7%)変化したが、実施例1の場合、苛酷条件においても比較例1の恒温恒湿条件に比べて低い白色度の変化量(苛酷条件、約2%)および不透明度の変化量(苛酷条件、約3%)が現れて、バニラ物質とシガー種葉の繊維が上記した実施例と同様に含有されることが、変色特性において有利であることが分かった。
【0071】
実施例2の場合±6.0以内の色差値の変化が観察され、ΔE値は、恒温恒湿条件で約1.6、苛酷条件で約6.7と算出されて、実施例2によって製造されたシガレットの一般的な保存流通時に変色イシューがないことが確認された。
【0072】
[実験例3:バニラシガーラッパーの製造作業性の評価]
バニラシガーラッパーを適用したシガレットの製造時の作業性を評価するために、各実施例におけるシガレットペーパーの適用可能製造速度、接着特性、シガレットペーパーの切れ、接着剤の汚染および消火率の評価を進めて、表5に示した。
【0073】
【0074】
表5に示されたように、バニラ物質の添加の有無によってシガレットの製造速度および作業性に有意的な差異が発生しないことを確認することができる。
【0075】
[実験例4:煙成分の評価]
各実施例における主流煙および副流煙成分を分析するために、シガレットそれぞれに対する喫煙時に発生した主流煙および副流煙を捕集した。煙捕集は、試料別に3回ずつ反復実施され、1回当たり副流煙70mL、主流煙20mLを捕集した。3回ずつの捕集結果に対する平均値に基づく成分分析の結果を表6および表7に示した。シガレットは、温度が略20℃であり、湿度が略62.5%である喫煙室で自動喫煙装置を用いてHC(Health Canada)喫煙条件によってテストされた。
【0076】
【0077】
表6を参照すると、実施例の全部において、タール、ニコチン、一酸化炭素など主な煙成分の検出値は、比較例に相当するレベルで現れ、主流煙内バニリンおよびエチルバニリン量がわずかに増加したことを確認することができる。副流煙の成分分析の結果から見て、実施例の全部において、主流煙内バニラ成分の増加量より高いレベルのバニラ成分の増加量が現れ、特にバニラ成分が3%含有された実施例2では、比較例1に比べてバニリンが30%以上、エチルバニリンが80%以上増加した結果を示して、副流煙によるバニラ香り発現効果を確認することができた。
【0078】
【0079】
表7を参照すると、実施例の全部において、比較例に比べてバニラ成分の発現量が概して増加し、また、シガレットの保存期間中のバニラ成分の消失率が全般的に減少したことを確認することができる。特に、実施例2の場合、比較例1に比べて絶対的な香り発現量が増加したと共に、保存期間中の主流煙および副流煙内バニラ成分の発現量の減少率が顕著に減少したことが分かる。
【0080】
[実験例5:タバコの臭いの指標成分低減の評価]
各実施例における副流煙、指のタバコの臭いおよび口臭低減効果を検証するために、タバコの臭い関連成分であるニコチン、3-エチルピリジン、3-エテニルピリジンおよびピリジンに対する成分量を分析して表8に示した。シガレットは、温度が略20℃であり、湿度が略62.5%である喫煙室で副流煙喫煙装置を用いてHC(Health Canada)喫煙条件によってテストされ、捕集された副流煙に対するSPME-GC/MS(solid-phase microextraction followed by gas chromatography-mass spectrometry)分析を行った。
【0081】
【0082】
表8に示されたように、実施例の全部において、タバコの臭いの指標成分の量が減少したことを確認することができ、これによって、副流煙の臭いの低減効果を予想することができる。特に、バニラ成分が約3%内添された実施例2において、タバコの臭いおよび悪臭などの不快臭を誘発できる3-エチルピリジン、3-エテニルピリジンおよびピリジン成分の減少効果が目立って、副流煙の臭いの低減効果がさらに最大化されることが分かる。
【0083】
[実験例6:バニラシガーラッパーの喫煙官能の評価]
バニラシガーラッパーの官能特性の改善効果を確認するために、各実施例におけるシガレット部のsweet外香程度、喫味強度、刺激性、全体的なタバコ味、異臭味、副流煙のsweet香強度、副流煙の不快臭、副流煙の収容度の特性に対する官能評価を実施した。官能特性の評価は、実施例によって製造されたシガレットそれぞれを用いて16人の専門評価パネルを対象に実施し、合計7点満点を基準とした。表9は、主流煙の官能評価の結果を、表10は、副流煙の官能評価の結果を示す。
【0084】
【0085】
表9を参照すると、バニラ物質が約1%内添された実施例1において、保存期間別および/または保存条件別に大小の差異はあるが、全般的にsweet外香強度が増加し、刺激性および異臭味が減少した傾向が現れ、僅かであるが、喫味強度および全体的なタバコ味が有利な特性を示すことが分かる。バニラ物質が約3%内添された実施例2においては、喫味強度を除いたすべての主流煙の官能特性が、比較例1および実施例1に比べて顕著に改善されたことを確認することができて、実施例2が主流煙の改質効果が最も優れていることが分かる。
【0086】
【0087】
表10を参照すると、実施例1および2の両方において、比較例1に比べて高い副流煙のsweet強度と副流煙の収容度を有し、副流煙の不快臭が減少したことが分かる。表9~表10の結果に照らして、実施例1の場合、主流煙の改質効果もあるが、副流煙の改質効果がさらに大きいことが示され、実施例2の場合、主流煙および副流煙の両方の改質効果が顕著に現れた。なお、上記した実施例および実験例に開示されていないが、喫煙物質ラッパー内バニラ物質の内添量が5%以上増加する場合、変色イシューおよびタバコの臭いの低減以外にも、その他官能特性を付随的に考慮しなければならない。
【0088】
[実施例3]
バニラ物質が約5重量%含有された点を除いて、実施例1と同じシガレットを製造した。
【0089】
[実施例4]
シガー種葉の繊維が約27重量%含有された点を除いて、実施例3と同じシガレットを製造した。
【0090】
[実施例5]
シガー種葉の繊維が約33重量%含有された点を除いて、実施例3と同じシガレットを製造した。
【0091】
[実験例7:バニラシガーラッパーの保存性-変色の評価]
バニラ物質およびシガー種葉の繊維の内添量による変色を評価するために、実施例3~5それぞれによるシガレットペーパーのCIELAB色空間データを測定して、表11に示した。
【0092】
【0093】
表11を参照すると、シガー種葉の繊維が約30%含有された実施例3の場合、保存期間の経過によって±8.0以内の色差値の変化が観察され、苛酷条件でのΔE値は、約8.7と算出された。シガー種葉の繊維が約27%含有された実施例4の場合、±11.0以内の色差値の変化が観察され、苛酷条件でのΔE値は、約12.2と算出された。シガー種葉の繊維が約33%含有された実施例5の場合、±5.0以内の色差値の変化が観察され、苛酷条件でのΔE値は、約5.6と算出された。上記した実施例および5%超過のバニラ物質が内添されたシガレットの変色評価結果に照らして、他の条件が同一であれば、5%以上のバニラ物質が内添される場合、色差値の変化量が概して増加する傾向にあることが分かり、バニラ物質の内添量が変更されるにつれて、シガー種葉の繊維の内添量が適切に変更される場合、変色程度が減少することが分かった。より具体的に、変色イシューの解消または緩和のためには、バニラ物質の含有量が増加するにつれて、シガー種葉の繊維の含有量が増加することが好ましい。
【0094】
[実験例8:バニラシガーラッパーの喫煙官能の評価]
バニラ物質およびシガー種葉の繊維の内添量による官能特性の改善効果を確認するために、実施例に対する主流煙の官能特性および副流煙の官能特性に対する評価を実施し、その結果を表12に示した。官能特性の評価は、苛酷条件で16週間保存された各実施例におけるシガレットを使用して11人の専門評価パネルを対象に実施し、合計7点満点を基準とした。
【0095】
【0096】
表12を参照すると、シガレット部のsweet外香、刺激性、副流煙のsweet強度、副流煙の不快臭および副流煙の収容度の特性では、シガー種葉の繊維の含有量による有意的な差異が現れなかったが、喫味強度、全体的なタバコ味および異臭味の特性では、実施例別に差異が現れた。具体的に、シガー種葉の繊維が約27%内添された実施例4では、実施例3に比べて喫味強度および全体的なタバコ味が多少減少し、異臭味がわずかに増加したことが分かる。これとは異なって、シガー種葉の繊維が約33%内添された実施例5では、実施例3および4に比べて喫味強度および全体的なタバコ味が増加し、異臭味が減少したことが分かる。上記した変色評価および官能評価の結果に照らして、バニラ物質が約5%内添加時に、シガー種葉の繊維が約33%内添されることが、最も有利な効果を示すことが分かる。すなわち、バニラ物質の内添量が変更される場合、シガー種葉の繊維の内添量をも調整することが、上述した本発明の効果の最大化にさらに有利であることが分かる。
【0097】
本実施例と関連した技術分野における通常の知識を有する者は、上記した記載の本質的な特性を逸脱しない範囲で変形された形態に具現され得ることを理解することができる。したがって、開示された方法は、限定的な観点でなく、説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は、前述した説明でなく、特許請求範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差異点は、本発明に含まれたものと解すべきである。
【国際調査報告】