IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーティー-バテル・エルエルシーの特許一覧 ▶ ユニヴァーシティ・オブ・テネシー・リサーチ・ファウンデーションの特許一覧

特表2022-543976フェノール含有ポリエステル多相ポリマーブレンド材料
<>
  • 特表-フェノール含有ポリエステル多相ポリマーブレンド材料 図1A
  • 特表-フェノール含有ポリエステル多相ポリマーブレンド材料 図1B
  • 特表-フェノール含有ポリエステル多相ポリマーブレンド材料 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】フェノール含有ポリエステル多相ポリマーブレンド材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20221007BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20221007BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20221007BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20221007BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L61/06
C08L97/00
C08L25/18
C08G81/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576304
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 US2020039556
(87)【国際公開番号】W WO2020264114
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/867,321
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521556587
【氏名又は名称】ユーティー-バテル・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】521556598
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ・オブ・テネシー・リサーチ・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・エス・ボヴァ
(72)【発明者】
【氏名】アミット・ケー・ナスカー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
【Fターム(参考)】
4J002AH00W
4J002BC12W
4J002CC03W
4J002CF03X
4J002CF06X
4J002CF07X
4J002CF18X
4J002CF19X
4J002CF21X
4J002EC076
4J002FD156
4J002GC00
4J002GH00
4J002GL00
4J002GN00
4J031AA02
4J031AA03
4J031AA49
4J031AB01
4J031AB06
4J031AC03
4J031AD01
4J031AE15
4J031AF12
4J031AF17
4J031AF19
4J031AF23
(57)【要約】
(i)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリフェノール物質、及び(ii)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリエステルを含み、ポリフェノール物質の少なくとも一部は、直接または連結部分(連結基)を介してポリエステルに共有結合している、固体多相ポリマーブレンド材料。前記のブレンド材料を製造する方法も記載されており、例えば、ポリフェノール物質の少なくとも一部が直接又は連結部分(連結基)を介してポリエステルに共有結合する条件下で、成分(i)及び(ii)を含む混合物を均一に溶融混合する。溶融押出しによって前記のブレンド材料から作られた物を製造するための方法も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリフェノール物質;及び
(ii)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリエステル
を含み、前記ポリフェノール物質の少なくとも一部が、前記ポリエステルと直接又は連結基を介して共有結合している、固体多相ポリマーブレンド材料。
【請求項2】
前記ポリフェノール物質が、リグニン、タンニン、ポリ-(4-ヒドロキシスチレン)、フェノール-ホルムアルデヒドレゾール、ノボラック、及びレゾールからなる群から選択される、請求項1に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項3】
前記ポリフェノール物質がリグニンを含む、請求項1に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項4】
前記リグニンがリグノスルホネートを含む、請求項3に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項5】
前記リグニンが、オルガノソルブリグニン、クラフトリグニン、ソーダリグニン、及び超臨界水分画リグニンからなる群から選択される、請求項3に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項6】
前記リグニンがクラフトリグニンを含む、請求項1に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項7】
前記ポリエステルが、以下の構造:
【化1】
(式中、Rは水素原子または炭化水素基から選択され、tは0~4の整数であり、nは少なくとも10の整数であり、かつ前記構造はホモポリマー又はコポリマーであることができる)
を有するポリヒドロキシアルカノエートである、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項8】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(ヒドロキシヘキサン酸)、ポリカプロラクトン、ポリマンデル酸、及びそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項7に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項9】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はそれらのコポリマーを含む、請求項7に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項10】
前記ポリエステルが、以下の構造:
【化2】
(式中、R及びRは、独立に、1~14個の炭素原子を含む炭化水素連結基から選択され、nは、少なくとも10の整数である)
を有するジオール-二酸ポリエステルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項11】
前記ジオール-二酸ポリマーが、ポリエチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンムコネート、ポリブチレンイタコネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンスクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレートから選択される、請求項10に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項12】
前記ポリエステルが炭素-炭素不飽和結合を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項13】
500g/モル未満の分子量を有するポリカルボン酸又はポリエステル分子をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の固体多相ポリマーブレンド材料。
【請求項14】
前記ポリフェノール物質が少なくとも2500g/モルの分子量を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項15】
前記ポリエステルが少なくとも2500g/モルの分子量を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の固体ポリマーブレンド材料。
【請求項16】
(iii)ポリアルキレンオキシドをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の固体多相ポリマーブレンド材料。
【請求項17】
固体多相ポリマーブレンド材料の製造方法であって、
(i)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリフェノール物質、及び
(ii)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリエステル
を含む混合物を、前記ポリエステルに対して前記ポリフェノール物質の少なくとも一部が直接又は連結基を介して共有結合することをもたらす条件下で、均一に溶融混合することを含む製造方法。
【請求項18】
共有結合をもたらす前記条件が、前記ポリフェノール物質の少なくとも一部が直接又は連結基を介してポリエステルに共有結合することを促進させる分子を前記混合物に組み込むことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
共有結合を促進させる前記分子が、500g/モル未満の分子量を有するポリカルボン酸又はポリエステル分子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
共有結合を促進させる前記分子がリグノスルホネートを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
共有結合を促進させる前記分子が金属アルコキシドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記金属アルコキシドがアルミニウムアルコキシド又はチタンアルコキシドである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリフェノール物質が、リグニン、タンニン、ポリ-(4-ヒドロキシスチレン)、フェノール-ホルムアルデヒドレゾール、ノボラック、及びレゾールからなる群から選択される、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリフェノール物質がリグニンを含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記リグニンが、オルガノソルブリグニン、クラフトリグニン、ソーダリグニン、及び超臨界水分画リグニンからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記リグニンがクラフトリグニンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリエステルが、以下の構造:
【化3】
(式中、Rは水素原子又は炭化水素基から選択され、tは0~4の整数であり、nは少なくとも10の整数であり、かつ前記構造はホモポリマー又はコポリマーであることができる)
を有するポリヒドロキシアルカノエートである、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリエステルが、以下の構造:
【化4】
(式中、R及びRは、独立に、1~14個の炭素原子を含む炭化水素連結基から選択され、nは少なくとも10の整数である)
を有するジオール-二酸ポリエステルである、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ポリエステルが炭素-炭素不飽和結合を有する、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願についての相互参照>
本出願は、2019年6月27日に出願した米国仮出願第62/867,321号の利益を主張し、その全ての内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
<連邦政府が後援する研究に関する表明>
本発明は、米国エネルギー省によって授与されたプライム契約番号DE-AC05-00OR22725の下で政府の支援を受けて行われた。 政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
<発明の分野>
本発明は、一般に、多相ポリマーブレンド組成物、より具体的には、成分としてポリフェノール物質を含むそのような組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
二元系(バイナリー)のリグニン-ポリマーアロイは、高剪断溶融加工及び極性マトリックスポリマーの適切な選択の組み合わせを使用して調製されてきた。これらの材料の多くは、70質量%にも達するリグニン組成をもち、魅力のある機械的特性を有していることが知られている。現在まで、使用されているマトリックスポリマーは主に石油に基づくものであり、しばしば、ある程度の量のポリブタジエンを含んでいる。いくつかの従来のマトリックスポリマーは、ニトリルブタジエン(NBR)の高極性類縁体含み、その高極性がリグニンとNBR相との間の高められた混和性を可能にする。これらの材料はいくつかの用途には魅力的であるが、それらの高い溶融粘度は、押出成形、射出成形、又は3D印刷にはあまり適していない。さらに、これらの材料中でのリグニンの使用は、有益には、再生可能な含有量を増加させる一方で、リグニンが組み込まれている再生不可能なマトリックス成分は、これらの材料の全体としての環境上の利点を損なう。したがって、射出成形又は積層造形における使用にもっと適した物理的特性とともに、完全に再生可能な成分を含むリグニン含有材料には特別な利点がある。上述した改善された特性を保持しながら、非常に大量のリグニン又はその他のポリフェノール物質(例えば、少なくとも50、60、70、75、又は80質量%を超える)を含むそのような材料にはさらなる利点があるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの側面において、本開示は、より大きな再生可能含有量及び石油資源への低減された依存とともに、望ましい物理的特性を有する固体ポリマーブレンド材料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載されたポリマーブレンド材料は、リグニン又は他のポリフェノール物質を非常に大量に(例えば、少なくとも50、60、70、75、又は80質量%、あるいはそれより多く)含むと同時に、押出成形、射出成形、又は3D印刷によく適した魅力ある機械的特性を示すことができる。より具体的には、そのポリマーブレンド材料は、以下の組成を有する:(i)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリフェノール物質(例えば、リグニン);及び、(ii)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリエステル(例えば、ポリヒドロキシアルカノエート、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、又はポリグリコール酸、あるいはジオール-二酸(diol-diacid)のポリエステル)。さらに、この組成物において、ポリフェノール物質の少なくとも一部は、直接又は連結部分(連結基)を介してポリエステルに共有結合されている。特に、特定の実施形態において、得られるポリマーブレンド材料は二相モルフォロジーを有し、かつ、リグニン又は他のポリフェノール物質のドメインのサイズ及び構造は、リグニン又は他のポリフェノール物質の量を操作することにより、又は添加剤の種類又は加工条件の賢明な選択により、制御することができる。
【0007】
別の側面では、本開示は、ポリマーブレンド材料を製造するための方法、及びそれから物(対象とする物)を製造するための方法に関する。ポリマーブレンド材料を製造するための方法は、(i)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリフェノール物質及び(ii)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリエステルを含む混合物を、そのポリエステルに対して、直接又は連結基(linking moiety)を介してのポリフェノール物質の少なくとも一部の共有結合による結合をもたらす条件下で均一にブレンドする工程を含む。いくつかの実施形態において、共有結合をもたらす条件は、ポリエステルに対する直接又は連結基(linking moiety)を介してポリフェノール物質の少なくとも一部の共有結合による結合を促進させる分子をその混合物中に組み込むことを含む。共有結合を促進させる分子は、例えば、(i)500g/モル未満の分子量を有するポリカルボン酸又はポリエステル分子(例えば、クエン酸)、(ii)リグノスルホネート、又は(iii)金属アルコキシド、例えば、アルミニウムアルコキシド又はチタンアルコキシドであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1A及び1Bは、本明細書に記載したいくつかの例示のポリマーブレンド材料の二相モルフォロジー構造を表しており、マトリックスポリマーの中に含まれるポリフェノール物質のドメインのサイズ及び構造は、各材料の種類及び量、添加剤、並びに加工条件によって制御することができる。図1Aは、相互貫入ネットワークを示しており、図1Bは、オクルージョン構造のネットワーク(occluded network)を示している。黒のドメインはポリフェノールポリマー(例えば、リグニン)を表し、白(透明)のドメインはマトリックスポリエステルポリマーを表している。
図2図2は、添加物なしのポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)と、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)及びエタノール-オルガノソルブ広葉樹リグニンの50:50アロイとを比較している応力-歪みグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の側面では、本開示は、(i)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリフェノール物質(例えば、リグニン)及び(ii)少なくとも500g/モルの分子量を有するポリエステルを含み、そのポリフェノール物質の少なくとも一部が直接又は連結基(linking moiety)を介してポリエステルに共有結合している、固体ポリマーブレンド材料に関する。一般に、ポリフェノール物質はポリエステル中に均一に分散している。本明細書で使用する「ポリマーブレンド」及び「均一に分散された」という用語は、成分(i)及び/又は(ii)の別個の微視的領域がその中に存在する固溶体を指す。離散領域が存在するので、そのポリマーブレンド材料は、本明細書において多相ポリマーブレンドともいう。
【0010】
ポリマーブレンドは、ミクロスケール又は分子レベルに近づいたときに、実質的な統合(すなわち、ほぼ均一)を示しうるが、各成分の独立性を失うことはない。一般に、成分(i)又は(ii)のうちの1つは、他方の成分(i)又は(ii)のドメイン(すなわち、粒子又は微視的領域)がその中に分散しているマトリックスとして機能する。ポリマーブレンド材料の特定の実施形態において、ポリエステル成分(ii)は、その中に、ポリフェノール成分(i)が以下に示す例示的なサイズのいずれかを有するドメインの形態で分散されているマトリックスとして機能する。そのドメインは一般に、100ミクロン(100μm)以下のサイズを有している。別の実施形態では、ドメインは、例えば、50μm、10μm、5μm(5000nm)、2μm(2000nm)、1μm(1000nm)、800nm、500nm、200nm、100nm、50nm、25nm、10nm、又は5nm以下またはそれ未満のサイズ、又はそれらの値のいずれかで囲まれた範囲内のサイズを有する。上記の例示によるドメインサイズのいずれも、粒子サイズ分布曲線からわかる平均又は中央値のドメインサイズを代わりに表してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ドメインの少なくとも80%、85%、90%、又は95%が、上で示したいずれかの例示した値以下又はそれ未満のサイズを有する。いくつかの実施形態では、ドメインの実質的に全て(例えば、95%より多い)又は全て(すなわち、100%)が、上に示した例示した値のいずれか以下又はそれ未満のサイズを有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、ポリマーブレンド材料は、少なくとも10MPa又はそれを超える引張降伏応力(又は「降伏応力」もしくは「引張降伏強度」)を有する。異なる実施形態では、引張降伏応力は、少なくとも10MPa、15MPa、20MPa、25MPa、30MPa、35MPa、40MPa、50MPa、60MPa、70MPa、80MPa、90MPa、100MPa、若しくは150MPa、又はそれらより上、あるいは、前述の例示した値のいずれか2つによって囲まれた範囲内の降伏応力である。当技術分野において理解されているとおり、「引張降伏強度」又は「降伏応力」という用語は、線形弾性領域の直後の引張変形中にポリマーが受けた応力-歪み曲線中の最大応力を指す。降伏応力を超えて変形したポリマーは、通常、永久変形を示す。ポリマーの応力-ひずみプロファイルの「引張降伏応力」点を超えると、引張り中にポリマーが受ける応力は、降伏応力の応力よりも小さいままになる場合がありえる。したがって、破壊点又は破断点でポリマーが受ける応力として定義される「引張強度」は、降伏強度よりも低くなる可能性がある。いくつかのポリマーでは、破壊時に受ける引張応力が降伏応力の引張応力よりも大幅に高くなる。このような場合、応力-歪み曲線は、変形方向に沿って強化された分子配向による、歪みの増加に伴う応力の上昇(時には急激な上昇)を示す。(ポリマー分子が配向するにつれて)大きな歪み値において応力が増大するこのような現象は、「歪み硬化」として知られている。上に示した例示による降伏応力値のいくつかについて、ポリマーブレンドの引張強度(すなわち、破壊時に受ける引張応力)は、降伏応力及び引張強度がどのように定義されるかについての既知の違いに従って、より大きくなる。
【0012】
ポリマーブレンド材料はまた、少なくとも1%の極限伸びを有し得る。別の実施形態では、ポリマーブレンド材料は、約又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、又は300%、あるいは前述の例示した値のいずれか2つによって囲まれた範囲内の極限伸びを示すことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーブレンド材料は、上で示した前述の降伏応力又は引張強度特性のいずれかとともに、前述の伸び特性のいずれかを有する。いくつかの実施形態では、ポリマーブレンド材料は、1%未満の極限伸びを示す。ポリマーブレンド材料は、少なくとも1、2、3、4、5、10、12、15、18、20、22、25、又は30GPaの引張弾性率、あるいは前述の値のうちの2つで囲まれた範囲内の引張弾性率を有しうる。
【0013】
ポリマーブレンド材料は、第1の成分として、ポリフェノール物質を含む。ポリフェノール物質は、少なくとも500、1000、1500、2000、2500、3000、5000、又は10,000g/モル、又はそれらより大きな分子量、あるいは前述の値のいずれか2つで囲まれた範囲内の分子量を有する。本明細書で使用される「ポリフェノール」という用語は、少なくとも3つのフェノール単位の存在を示しており、フェノール単位は、少なくとも1つのヒドロキシ(OH)基に直接結合した芳香環(典型的にはベンゼン環)である。より典型的には、ポリフェノール物質は、少なくとも3、4、5、10、12、15、20、25、50、又は100個、又はそれらより多いフェノール単位を含む。ポリフェノール物質のいくつかの例には、リグニン、タンニン(例えば、タンニン酸)、タンニン誘導体(例えば、エラギタンニン及びガロタンニン)、ポリ(4-ヒドロキシスチレン)、ポリ(スチレン-co-アリルアルコール)、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ノボラック、及びレゾールが含まれる。
【0014】
ポリフェノール物質は、典型的には、ポリマーブレンド材料中に、少なくとも1質量%(ポリマーブレンドの質量の1質量%)の量で存在する。別の実施形態において、ポリフェノール物質は、正確に、約、又は少なくとも、例えば、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は75質量%、の量で、あるいは前述の値のいずれか2つで囲まれた範囲内の量(たとえば、1~75質量%、2~75質量%、5~75質量%、1~70質量%、2~70質量%、5~70質量%、1~60質量%、2~60質量%、5~60質量%、1~50質量%、2~50質量%、又は5~50質量%)で、ポリマーブレンド中に含まれる。
【0015】
特定の実施形態では、ポリフェノール物質はリグニンであり、これは、上に示したいずれかの量でポリマーブレンド材料中に含まれることができる。リグニンは、本来リグノセルロース系バイオマス中に存在し、かつ当技術分野で知られている、多種多様なリグニン組成物のいずれかであることができる。当技術分野で知られているように、自然界に存在するリグニン組成物は一般に均一ではない。リグニンは、植物種間で顕著な組成の違いを示すランダム共重合体である。環境条件、年齢、及び加工の方法などの多くの他の条件がリグニンの組成に影響を及ぼす。リグニンは、脂肪族基及びフェノール基の両方と様々に結合した多くのヒドロキシル(カルボキシル基であることもある)官能基を含む非常に豊富な芳香族化合物である。さらに、いくつかのリグニンは、高度に分岐した構造を有している。リグニンのこれらの特性は、それらの対応する物理的特性を決める。リグニンのモル質量あるいは分子量(M)は、一般に広い分布をしており、例えば、約1000ダルトン(D)から10,000Dを超える。典型的な実施形態では、リグニンは、例えば、約300、500、1,000、3,000、5,000、8,000、10,000、50,000、100,000、500,000、又は10,000,000g/モル、これらの値以下、又はこれらの値未満の数平均分子量又は重量平均分子量(すなわちそれぞれM又はM)、あるいは前述の値のいずれか2つで囲まれた範囲内の分子量、例えば、500~10,000g/モル、あるいは500~5,000g/モルの分子量を有することができ [G. Fredheimら, J. Chromatogr. A, 2002, 942, 191;及び、A. Tolbertら, Biofuels, Bioproducts & Biorefining 8(6)836-856(2014)]、ここで、「約」という用語は、一般に、示した値から±10%、プラスマイナス5%、又は±1%を超えないことを示す。
【0016】
いくつかの実施形態において、リグニンは、その天然のバイオマス資源から単離されるときに顕著な解重合を受けて、1000D未満のモル質量を有している。それらの自然な分岐及び低いMは、一般に、非常に脆い特性をもたらす。リグニンの芳香族構造と豊富な官能基もまた、さまざまな剛性及び熱特性をもたらす。リグニンはアモルファスポリマーであり、そのことが約80℃から200℃を超える非常に広いガラス転移温度(T)をもたらす。ガラス転移温度は、リグニンの高分子セグメントが動き始める臨界温度である。いくつかのリグニンは非常に良好な流動特性(低い溶融粘度)を示すが、他のリグニンは数桁高い粘度を示す。
【0017】
リグニン類は、主に、3つのアルコール単位、すなわち、p-クマリルアルコール、グアイアシルアルコール、及びシナピルアルコールの比率が異なる。p-クマリルアルコール、コニフェリルアルコール、及びシナピルアルコールの重合は、リグニンポリマーのp-ヒドロキシフェニル(H)、グアイアシル(G)、及びシリンギル(S)成分をそれぞれ形成する。リグニンは、H、G、及びS成分のさまざまな相対質量パーセント割合(質量%)のうちのいずれかを有することができる。いくつかの種子で観察されるように、リグニンはカフェイルアルコール単位からなることもある(例えば、Chenら, PNAS, 109(5), 1772~1777(2012))。例えば、前駆体リグニンは、各成分について独立に、少なくとも1質量%、2質量%、5質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、又は90質量%、それら以下、又はそれら未満、あるいはそれらの範囲内で、カフェイルアルコール、H、G、及びS成分のうちの任意のものを含むことができる。通常、各アルコール成分の質量%の合計は100%であり、他の少量成分を考慮に入れると少なくとも98%である。さまざまな木材及び植物源(例えば、オーク、カエデ、ポプラなどの広葉樹(HW);松、トウヒなどの針葉樹(SW);又はスイッチグラス、トウモロコシ、竹、多年生草、カモガヤ、アルファルファ、小麦、ミスカンサス、竹、及びバガッセなどの草由来のリグニン)は、それらのリグニン組成が大きく異なることが多く、ここでは全てがリグニンの供給源と考えられる。いくつかの実施形態では、ポリマーブレンド材料の所望の特性に応じて、上述したような、任意の1つ又は複数のタイプのリグニンが、ポリマーブレンド材料から除外されてもよい。
【0018】
リグニンの天然の変化に加えて、原料リグニンが処理された方法に基づいて、さらなる組成の変化があり得る。例えば、原料リグニンは、クラフトリグニン、亜硫酸リグニン(すなわち、リグノスルホネート)、又は硫黄を含まないリグニンであることができる。当技術分野で知られているように、クラフトリグニンは、クラフトプロセスから生じるリグニンを指す。クラフトプロセスでは、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの組み合わせ(「白液(ホワイトリカー)」として知られている)がバイオマス中に存在するリグニンと反応して、チオール基を有する暗色のリグニンを形成する。クラフトリグニンは、一般に、高濃度のフェノール基をもつ、水及び溶媒に不溶性の物質である。それらは通常、アルカリ性水溶液に可溶にすることができる。当技術分野でも知られているように、亜硫酸リグニンは、亜硫酸プロセスから生じるリグニンを指す。亜硫酸塩プロセスでは、亜硫酸塩又は亜硫酸水素塩(pHに応じて)が対イオンとともにリグニンと反応して、スルホネート(SOH)基を有するリグニンを形成する。そのスルホネート基が、亜硫酸リグニンにかなりの程度の水溶性を与える。
【0019】
当技術分野で知られているいくつかのタイプの硫黄不含リグニンがあり、それには、バイオマス変換技術(例えば、エタノール製造において使用される技術)、溶媒パルプ化(すなわち「オルガノソルブ」プロセス)、ソーダパルプ化(すなわち「ソーダリグニン」)、及び超臨界水による分画又は酸化(すなわち、「超臨界水分画リグニン」)から得られるリグニンが含まれる。特に、オルガノソルブリグニンは、リグノセルロース源、例えば木材チップからの溶媒抽出とそれに続く沈降によって得られる。バイオマスのオルガノソルブ脱リグニン化における溶媒システムは、しばしば、有機アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、及びイソブチルアルコール;芳香族アルコール、例えば、フェノール及びベンジルアルコール;グリコール、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びその他の高級グリコール;ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン;有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸;アミン、エステル、ジエチルエーテル、ジオキサン、グリセロール、又はこれらの溶媒の混合物を含む。典型的には、バイオマスのある程度の希酸による前処理は、脱リグニンプロセスに役立つ。オルガノソルブリグニンの製造に使用される非常に穏やかな条件により(すなわち、クラフト及び亜硫酸プロセスとは対照的に)、オルガノソルブリグニンは一般的に、クラフト及び亜硫酸リグニンよりも純度が高く、分解が少なく、かつ、一般的により狭い分子量分布を有している。これらのリグニンはまた、熱的に脱揮発成分処理して、脂肪族ヒドロキシル基が少なく、かつ高くなった軟化点をもった分子的に再構築された形態を有する変異体を製造することができる。前述のタイプのリグニンのいずれか1つ又は複数を、ポリマーブレンドを製造するための本明細書に記載した方法における成分として使用(又は除外)することができる。
【0020】
リグニンはまた、H、G、及びS成分の特定の又は最適化された比率を有するリグニンの改変された形態であってもよい。リグニンは、例えば、リグニンの化学構造及びバイオマス中の全リグニン含有量に変化を引き起こす、当技術分野で知られているトランスジェニック及び組換えDNA法によって改変することができる(例えば、F. Chenら, Nature Biotechnology, 25(7), pp. 759-761 (2007)及びA. M. Anterolaら, Phytochemistry, 61, pp. 221-294(2002))。リグニンの改変(engineering)は、リグニンのG成分及びS成分の比率を変えることに特に向けられている(D. Guoら, The Plant Cell, 13, pp. 73-88 (Jan. 2001))。特に、木材パルプ化の速度論的研究は、S/G比の増加がリグニン除去の速度を大幅に高めることを示している(L. Liら, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 100(8), pp. 4939-4944(2003))。Sユニットは2つのリグノールモノマーと共有結合することになるが、その一方、Gユニットは3つの別のユニットに結合できる。したがって、増大したG含有量(S/G比を低下させる)は、一般に、より多くのC-C結合をもつ高度に分岐したリグニンを作り出す。それとは対照的に、増大したS含有量は、一般に、より多くのβ-アリールエーテル(β-O-4)結合をもたらし、これは化学的脱リグニン化時、例えば、クラフトパルプ化プロセスにおけるように、(C-C結合と比較して)容易に開裂する。リグニン含有量を減らし、かつS/G比を変えることが、生物変換性及び脱リグニン化を改善することが示されている。したがって、より過酷でなく、損傷のより少ない条件を、脱リグニンに用いることができ(すなわち、強酸又は強塩基を使用する現在のやり方と比較して)、これにより、より価値の高い用途により適したさらに改良されたリグニンがもたらされ、そのような用途には、強靭なポリマーブレンド、炭素材料の製造(例えば、炭素繊維、炭素粉末、活性炭、マイクロポーラス及びメソポーラス炭素)、及び芳香族炭化水素原料の熱分解又は触媒による生産が含まれる。
【0021】
高リグニン含有量の残留物を残す実験室規模のバイオマス発酵が調べられている(S. D. Brownら, Applied Biochemistry and Biotechnology, 137, pp. 663-674(2007))。これらの残留物は、バイオマス原料(例えば、木材種、草、及びわら)に応じてさまざまな分子構造をもつリグニンを含む。これらの高品質リグニンからの付加価値製品の生産は、バイオリファイナリーの全体的な運転コストを大幅に改善する。リグニンから付加価値製品を得るために、さまざまな化学的経路が提案されている(J. E. Holladayら, Top Value-Added Chemicals from Biomass:Volume II - Results of Screening for Potential Candidates from Biorefinery Lignin, DOE Report, PNNL-16983(2007年10月))。
【0022】
リグニンは、いくつかの実施形態において、溶融加工可能であるか、又は溶融加工に適している架橋したリグニンであることができる。「架橋した」という用語は、例えば、リグニンが、リグニン構造中のフェニル環の炭素原子のあいだにメチレン(すなわち、-CH-)及び/又はエチレン(すなわち、-CHCH-)連結基(すなわち、連結させている基)を含むことを意味することができる。「溶融加工可能」であるとは、その架橋したリグニンが、特定のガラス転移温度から始まって、溶融され、又は溶融した高粘度の又はゴム状の状態へと変換されることができることを意味する。その溶融した又は高粘度のリグニンは、次に、例えば、混合、成形、表面への塗布、又は溶媒中への溶解によって、より容易に加工することができる。いくつかの実施形態では、リグニンは架橋されていない。特定の実施形態では、リグニン成分は、使用する加工温度及び剪断速度において、それを展性のあるフィルム形成材料にするのに適切な定常剪断粘度を示す。通常、溶融加工条件において、リグニン成分の定常剪断粘度(たとえば、1~100s-1のせん断速度領域)は、少なくとも100Pa・s、500Pa・s、1000Pa・s、3000Pa・s、5000Pa・s、又はそれより上、あるいはそれらの範囲内である。いくつかの実施形態では、リグニンは、100s-1の剪断速度において、高粘度の溶融物(10,000Pa.sの複素粘度又はそれ以上のオーダー)を形成する。いくつかの実施形態では、リグニンは(例えば、化学酸化剤への曝露によって)酸化されうるが、他の実施形態では、リグニンは酸化されない。いくつかの実施形態において、リグニンは、その天然の抽出又は単離された形態と比較して、化学的に修飾されていない。いくつかの実施形態において、リグニンは、当技術分野で知られているように、アセチル化、オキシプロピル化、ヒドロキシメチル化、エポキシ化などによって化学的に修飾される。いくつかの実施形態において、リグニンは、溶融加工性を生み出すために、溶媒又は可塑剤で可塑化される。溶媒及び可塑剤には、例えば、当技術分野で知られているように、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ポリオキシアルキレン、及びグリセロールが含まれる。いくつかの実施形態では、溶媒又は可塑剤の使用は除外される。
【0023】
異なる実施形態において、リグニン(バイオマスから単離又は抽出されたリグニン、あるいはその架橋された誘導体のいずれか)は、正確に又は約、例えば、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、又は240℃のガラス転移温度、あるいは前述の値のいずれか2つで囲まれた範囲内のTを有する。いくつかの実施形態において、リグニンは、溶媒又はポリマー添加剤などの可塑化成分と混合されない限り、検出可能なTを示さない。その中にリグニンが組み込まれているポリマーブレンド材料はまた、上に示したガラス転移温度又はその範囲のうちのいずれかを有しうる。
【0024】
リグニン(バイオマスから単離された未加工の形態又は架橋された誘導体のいずれか)は、極性有機溶媒又はアルカリ性水溶液に実質的に可溶性でありうる。本明細書で使用される場合、「実質的に可溶性である」という用語は、一般に、少なくとも1、2、5、10、20、30、40、50、又は60グラムのリグニンが、1デシリットル(100mL)の極性有機溶媒又はアルカリ性水溶液物に完全に溶解することを示す。他の実施形態では、溶解度は、溶液中のリグニンの質量%として表される。いくつかの実施形態において、リグニンは、極性有機溶媒又はアルカリ性溶液中で少なくとも5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、30質量%、40質量%、又は50質量%の溶液を生成するのに十分な溶解度を有する。極性有機溶媒は、非プロトン性又はプロトン性であることができる。極性非プロトン性溶媒のいくつかの例には、有機エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド)、有機塩素化合物(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,-トリクロロエタン)、ケトン類(例えば、アセトニトリル、2-ブタノン)、及びジアルキルカーボネート類(例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート)が含まれる。極性有機プロトン性溶媒のいくつかの例には、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール類、ヘキサノール類、オクタノール類など)、ジオール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール)、及びプロトン性アミン類(例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン)が含まれる。アルカリ性水溶液は、少なくとも8、9、10、11、12、又は13(あるいはそれより上)のpHを有する任意の水含有溶液であることができる。アルカリ化する溶質は、例えば、アルカリ水酸化物(例えば、NaOH又はKOH)、アンモニア、又は水酸化アンモニウムであることができる。これらの溶媒のいずれかの組み合わせもまた使用することができる。いくつかの実施形態において、リグニンは、ポリマーブレンドを形成するために使用される場合、溶媒、例えば、上述した溶媒のいずれかの中に溶かされる。溶媒は、最終的なポリマーブレンド材料中に組み込まれても、あるいは組み込まれなくてもよい。いくつかの実施形態においては、1つ以上のクラス又は特定のタイプの溶媒(又はすべての溶媒)は、成分(i)又は(ii)のいずれかから、あるいはポリマーブレンド材料から完全に除外される。
【0025】
ポリマーブレンド材料は、第2の成分としてポリエステルを含む。本発明の目的のために、ポリエステルは、少なくともポリエステルポリマーの主鎖中にエステル(-C(O)O-)結合を含むポリマーである。ポリエステルポリマーは、ポリマーのペンダント部分(側鎖部分)又は末端位置にエステル基を有していても、あるいは有していなくてもよい。ポリエステルポリマーは、さまざまな可能な数平均分子量又は重量平均分子量(それぞれ、M又はM)のいずれかを有することができる。ポリエステルは少なくとも500g/モルの分子量を有する。様々な実施形態において、ポリエステルは、例えば、約又は少なくとも、500g/モル、800g/モル、1,000g/モル、2500g/モル、5,000g/モル、10,000g/モル、20,000g/モル、30,000g/モル、40,000g/モル、50,000g/モル、75,000g/モル、100,000g/モル、150,000g/モル、200,000g/モル、300,000g/モル、500,000g/モル、又は1,000,000g/モル、それらより大きな、それら以下の、又はそれら未満の分子量、あるいは前述の例示した値のいずれか2つで囲まれた範囲内の分子量を有する。ポリエステルは、アモルファス(非晶質)、半結晶性、又は多結晶性であってよい。一般に、ポリエステルは、それにポリエステルがブレンドされるリグニン又は他のポリフェノール物質の分解温度よりも低い融点を有する。様々な実施形態において、ポリエステルは、例えば、正確に又は約50℃、100℃、150℃、180℃、又は200℃、それら以下、又はそれら未満の融点、あるいは前述の値のいずれか2つで囲まれた範囲内の融点を有する。
【0026】
いくつかの実施形態において、ポリエステルは、以下の一般的な構造に対応するポリヒドロキシアルカノエートである。
【化1】
【0027】
式(1)において、Rは、水素原子(H)又は炭化水素基(R)から選択される。炭化水素基(R)は、任意の飽和又は不飽和炭化水素基であり、典型的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個の炭素原子、あるいは前述の値のいずれか2つで囲まれた範囲内の数の炭素原子(例えば、1~12、2~12、3~12、1~6、1~4、又は1~3の炭素原子)を含む。炭化水素基(R)は、例えば、直鎖(線状)又は分枝状のアルキル又はアルケニル基、あるいは飽和又は不飽和の環状炭化水素基であってよい。いくつかの実施形態において、炭化水素基(R)は、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、又はシクロヘキシル基である。炭化水素基は、いくつかの場合には、不飽和環、例えばフェニル基であることができる。炭化水素基はまた、炭素原子及び水素原子のみから構成されてもよく、あるいは酸素、窒素、及びハロゲン原子から選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。したがって、環状炭化水素基の場合、その環状基は、炭素環式基又は複素環式基であることができる。変数tは、通常、0~4の整数である。下付き文字tは、より一般的には0~3の整数である(すなわち、tは典型的には0、1、2、又は3である)。変数nは、通常、少なくとも10の整数である。異なる実施形態では、下付き文字nは、少なくとも10、20、50、100、200、500、1000、1500、2000、2500、又は5000、又はそれらより大きな整数、あるいはそれらで囲まれた範囲内の値であるか、又はnは上で例示した分子量のいずれかをもたらす値であることができる。いくつかの実施形態において、上記のクラス又は特定のタイプのポリエステルのいずれかは、ポリエステルシェルから除外されてもよい。
【0028】
tが0の場合、式(1)はアルファ-ヒドロキシ(α-ヒドロキシ)酸のポリマーを示す。式(1)のRがHである場合のα-ヒドロキシポリマーの例は、ポリグリコール酸(PGA)である。Rがメチルである場合のα-ヒドロキシポリマーの例は、ポリ乳酸(すなわち、PLA、2-ヒドロキシプロピオン酸のポリマーであり、これはポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、又はポリ-DL-乳酸としても知られる)である。Rがフェニルである場合のα-ヒドロキシポリマーの例は、ポリマンデル酸である。tが1の場合、式(1)はベータ-ヒドロキシ(β-ヒドロキシ)酸のポリマーを示す。RがHの場合のβ-ヒドロキシポリマーの例は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)である。Rがメチルである場合のβ-ヒドロキシポリマーの例は、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(すなわち、P3HB)である。Rがエチルである場合のβ-ヒドロキシポリマーの例は、ポリ(3-ヒドロキシ吉草酸)(すなわち、PHV)である。Rがn-プロピルである場合のβ-ヒドロキシポリマーの例は、ポリ(3-ヒドロキシヘキサン酸)(すなわち、PHH)である。tが2の場合、式(1)はガンマ-ヒドロキシ(γ-ヒドロキシ)酸のポリマーを示す。RがHである場合のγ-ヒドロキシポリマーの例は、ポリ(4-ヒドロキシ酪酸)(すなわち、P4HB)である。Rがメチルである場合のγ-ヒドロキシポリマーの例は、ポリ(4-ヒドロキシ吉草酸)である。t=3のポリヒドロキシアルカノエートのいくつかの例には、ポリ(5-ヒドロキシ吉草酸)及びポリ(5-ヒドロキシヘキサン酸)が含まれる。t=4のポリヒドロキシアルカノエートの例には、ポリカプロラクトン(PCL)としても知られるポリ(6-ヒドロキシヘキサン酸)が含まれる。いくつかの場合には、ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ(ヒドロキシプロピオン酸)類、ポリ(ヒドロキシ酪酸)類、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)類、又はポリ(ヒドロキシヘキサン酸)類から選択することができる。ヒドロキシ酸は、適切であるためには式(1)の範囲内にある必要はない。たとえば、サリチル酸のポリマーを考えに入れても、入れなくてもよい。いくつかの実施形態において、上記のクラス又は特定のタイプのポリエステルのいずれかを、ポリエステルシェルから除外してもよい。
【0029】
ヒドロキシ酸のコポリマーも本明細書において考慮される。いくつかの実施形態において、2つ以上の異なるタイプのヒドロキシアルカノエートが、コポリマー中、例えば、(ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(すなわち、PLGA)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(すなわち、PHBV)、又はポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシヘキサン酸)中に存在する。他の実施形態では、コポリマーは、ポリ(グリコリド-co-トリメチレンカーボネート)及びポリ(ラクチド-co-ポリエチレングリコール)におけるように、1つ以上の非ヒドロキシアルカノエート部分を含む。PLGAコポリマーの場合、PLGAコポリマー中の乳酸(LA)及びグリコール酸(GA)単位は、いくつかの実施形態において、独立に40~60%のモル量で存在していてよく、ここで、乳酸及びグリコール酸の単位のモル量は合計で100%になる。LA:GAのモル比は、正確に又は約、例えば5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、45:55、50:50、55:45、又は60:40、あるいは前述の比率のいずれか2つのあいだの範囲内であることができる。いくつかの実施形態において、上記のクラス又は特定のタイプのポリエステルのいずれかを、ポリエステルシェルから除外してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、ポリエステルは、ジオール-二酸(diacid)タイプのポリエステル、すなわち、ジオールと二酸(diacid)との縮合によって生じるポリエステルである。ジオール二酸タイプのポリエステルは、次の一般的な構造で定義することができる。
【化2】
【0031】
上の式(2)において、R及びRは、独立に、炭化水素連結基から選択され、炭化水素連結基は上で定義した1~12個の炭素原子を含む炭化水素基(R)から、炭化水素基のもう一つの水素原子を結合に置き換えることによって誘導することができる。例えば、R基から選択されるメチル(-CH)基は、水素原子が除去されて、R及び/又はRに対応するメチレン(-CH-)連結基をもたらすことができる。変数nは上述したとおりである。いくつかの実施形態において、連結基R及びRの一方又は両方(すなわち少なくとも1つ)は、独立に、アルキレン基、すなわち、式-(CH-(mは、典型的には1~12である)の連結基から選択される。他の実施形態では、連結基R及びRの一方又は両方(すなわち少なくとも1つ)は、独立に、飽和又は不飽和の炭素環式又は複素環式基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニレン、及びフラン基)から選択される。特定の実施形態の第1のセットでは、Rはフェニレンであり、かつRはアルキレン基であり、この場合、ポリエステルは一般にポリアルキレンテレフタレートに分類することができる。Rがフェニレンであり且つRがメチレン(-CH-)の場合、そのポリエステルはポリメチレンテレフタレート(PMT)である。Rがフェニレンであり且つRがエチレン(-CHCH-)である場合、そのポリエステルはポリエチレンテレフタレート(PET)である。Rがフェニレンであり且つRがプロピレン(-CHCHCH-)である場合、そのポリエステルはポリプロピレンテレフタレート(PPT)である。Rがフェニレンであり且つRがブチレン(-CHCHCHCH-)である場合、そのポリエステルはポリブチレンテレフタレート(PBT)である。特定の実施形態の第2のセットでは、R及びRは、独立に、アルキレン基から選択される。Rがエチレンである特定の場合において、式(2)のポリエステルはコハク酸エステル系ポリエステルといわれる。例えば、Rもまたエチレンである場合、ポリエチレンスクシネート(PES);Rがプロピレンである場合、ポリプロピレンスクシネート(PPS);あるいは、Rがブチレンである場合、ポリブチレンスクシネート(PBS)である。Rがブチレンである特定の場合、式(2)のポリエステルはアジペート系ポリエステルといわれる。例えば、Rがエチレンである場合、ポリエチレンアジペート;Rがプロピレンである場合、ポリプロピレンアジペート;Rがブチレンである場合、ポリブチレンアジペートである(あるいは、それらのコポリマー、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレートである)。いくつかの実施形態において、式(2)のRは結合であることができ、それはシュウ酸エステル系ポリエステルをもたらし、例えば、Rがエチレンである場合はポリエチレンオキサレートである。式(2)による、あまり一般的でなく又はより特殊なポリエステルをここでは考える。例えば、Rがナフチルである場合、これはナフタレート系ポリエステルに相当し、例えば、Rがエチレンである場合はポリエチレンナフタレート(PEN)であり、Rがブチレンである場合はポリブチレンナフタレート(PBN)である。いくつかの実施形態において、上記のクラス又は特定のタイプのポリエステルのいずれかを、ポリエステルシェルから除外してもよい。
【0032】
あるいは、ポリエステルは、当技術分野で周知のビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂のうちのいずれかであってよい。ビニルエステル樹脂は、例えば、S. Jaswalら, Reviews in Chemical Engineering, 30(6), 567-581(2014);H. M. Kangら, Journal of Applied Polymer Science, 79:1042-1053(2001);及び、M. A. F. Robertsonら, J. Adhesion, 71:395-416 (1999)に記載されており、それらの内容全体を参照により本明細書に援用する。不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、H. Yangら, Applied Polymer, 79(7), 1230-1242, 2001;M. Malikら, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. Phys., C40(2&3), 139-165 (2000);及び、M. Oleskyら, Ind. Eng. Chem. Res., 52(20), 6713-6721(2013)に記載されており、それらの内容全体を参照により本明細書に援用する。不飽和ポリエステルは、分子内(主鎖)又はペンダントビニル基として少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含んでいてもよく、例えば、それはある量のムコン酸又はイタコン酸モノマー含有量を含むポリエステルに見られる。そのような不飽和ポリエステルのいくつかの例には、ポリアルキレンムコネート(例えば、ポリブチレンムコネート)及びポリアルキレンイタコネート(例えば、ポリブチレンイタコネート)が含まれる。そのような不飽和ポリエステルは、酸化剤、例えば、酸素、オゾン、又は過酸化物の存在下での、高剪断混合下で、フリーラジカルの生成を有利に行うことができる。次に、そのフリーラジカルの生成はポリフェノール物質によって除去され、それによって、成分(i)と(ii)の間の結合を引き起こすことができる。ポリエステルの不飽和部分はまた、チオール含有ポリフェノール物質(例えば、クラフトリグニン)と反応して、成分(i)と(ii)の間に結合を形成することができる。いくつかの実施形態において、上記のクラス又は特定のタイプのポリエステルのいずれかを、ポリエ
ステルシェルから除外してもよい。
【0033】
特定の実施形態では、ポリエステルは、いくらかの量のムコン酸又はイタコン酸モノマー含有量を有する脂肪族ポリエステルである。ムコン酸又はイタコン酸モノマーの含有は、それぞれ分子内ビニル基又はペンダントビニル基をもたらす。これらの反応性基は、酸素又はオゾンの存在下での高剪断混合下で、フリーラジカル生成のための部位として機能することができる。高剪断混合において、酸素又はオゾンの存在は、マトリックスポリマー上にフリーラジカルを作り出すことができる。ポリフェノール物質中の立体障害のあるフェノール構造は、これらのフリーラジカルを捕捉して、2つの物質(材料)間に共有結合をもたらすことができる。ラジカルの生成は、過酸化物、例えばバイオベースの有機過酸化物を添加することでさらに誘発されうる。別のグラフト化のメカニズムは、少なくともいくらかの量のリグニンをクラフトリグニンとして含めることであろう。クラフトリグニンには、木質バイオマスのクラフトパルプ化によって生成された多くのチオール基を有する。チオール基は、ビニル基と「クリック反応(click reaction)」を起こすことが知られている。クラフトリグニン中のこれらのチオール基は、マトリックスポリマー上の分子内ビニル基又はペンダントビニル基と容易に反応することができる。
【0034】
ポリエステルは、当技術分野で知られている官能基のいずれかによって(例えば、内部又は末端で)官能化することができる。いくつかの実施形態において、ポリエステルは、酸官能化されている(すなわち、1つ又は2つのカルボン酸基で官能化されている)。他の実施形態では、ポリエステルはエステル官能化されている(すなわち、1つ又は2つのカルボン酸エステル基で官能化されている)。他の実施形態では、ポリエステルはヒドロキシ官能化されている。さらに他の実施形態では、ポリエステルはアミン又はアミドで官能化されている。ポリエステルはまた、官能基の組み合わせ、例えば、エステルとヒドロキシ、又はカルボン酸とヒドロキシを有することもできる。ポリエステル中のそのような官能基のどれも、適切な条件下で、ポリフェノール基質との結合を促進するため、例えば、成分(i)と(ii)の間のエステル及び/又はアミド結合の形成によって促進するために有用でありうる。
【0035】
いくつかの実施形態では、単一のポリエステルがポリマーブレンド材料に使用される。しかしながら、本明細書で使用される「ポリエステル」という用語は、複数のポリエステルの組み合わせる可能性を包含しており、例えば、上述したポリエステルの任意の組み合わせである。上で具体的に記載したもの以外のポリエステルを用いることもでき、例えば、セルロースエステル、デンプンエステル、及び多糖カルボキシレートエステルを、単独で、又は別のポリエステルと組み合わせて使用することもできる。いくつかの実施形態で、2つ以上の異なるポリヒドロキシアルカノエートが使用される(例えば、PLA及びPCL)。他の実施形態では、2つ以上の異なるジオール-二酸タイプのポリエステルが使用される(例えば、PET及びPBS)。他の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエート及びジオール-二酸ポリエステルの組み合わせを使用することができる(例えば、PLA及びPBS、又はPCL及びPBS)。いくつかの実施形態において、上述したポリエステルのいずれかが、ポリマーブレンド材料から除外される。
【0036】
ポリマーブレンド材料において、成分(i)(ポリフェノール物質)は、一般に、成分(i)及び(ii)の総質量の、又はポリマーブレンド材料の総質量の少なくとも1質量%かつ約70質量%以下の量で存在する。成分(i)及び(ii)の両方がポリマーブレンド中に存在するので、各成分は100質量%未満の量で存在する。特定の実施形態では、成分(i)、例えばリグニンは、ポリマーブレンド材料中に、成分(i)及び(ii)の合計質量の又はポリマーブレンド材料の質量の約あるいは少なくとも、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70質量%、あるいは前述の例示した値のいずれか2つによって囲まれた範囲内の量、例えば、少なくとも1、5、又は10質量%、かつ40、45、50、55、60、65、又は70質量%以下の量で存在する。
【0037】
上で先に述べたとおり、ポリマーブレンド材料において、成分(i)(ポリフェノール物質)の少なくとも一部は、成分(ii)(ポリエステル)に直接又は連結基を介して共有結合している。主鎖又はペンダント官能基(例えば、カルボン酸、ヒドロキシ、アミン、又はアミド)を含むポリエステルは、ポリエステルとポリフェノール物質(例えば、リグニン)のあいだの分子間グラフト化で結び付けることができ、それはペンダントカルボン酸官能基を含むポリエステルの場合は縮合によって;ペンダントエステル官能基を含むポリエステルの場合はエステル交換によって;又は、ビニル官能基を含むポリエステルの場合は、フリーラジカルの生成とそれに続くフェノール物質による捕獲によって可能である。例えば、ポリエステルは、上述したようにポリヒドロキシアルカノエート又はジオール-二酸タイプのポリマー(例えば、PBS)であり、アミン又はアミド基で官能化されていることができる。
【0038】
中間の小分子(すなわち、連結分子又は連結基)を、代わりに又は追加で使用して、ポリエステルとポリフェノール物質の間の共有結合を確立することができる。中間の小分子は、ポリエステルとポリフェノール物質の間に共有結合を確立することができる官能基(例えば、カルボン酸、エステル、ヒドロキシ、エポキシ、又はアミン基)を含む。一般に、連結分子は、1000、800、又は500g/モル以下又はそれ未満の分子量を有する。特定の実施形態では、中間の小分子は、2つ、3つ、4つ、又はそれより多いカルボン酸及び/又はエステル(カルボン酸エステル)官能基を含み、これらは、ポリエステル及び/又はポリフェノール物質とエステル交換をするときに、それぞれ水又はアルコールを遊離させる。連結分子は、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はテトラカルボン酸であることができ、これらは、それぞれ、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含まないか又は含むことによって飽和又は不飽和であることができる。ジカルボン酸のいくつかの例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、オキサロ酢酸、ムコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、スベリン酸、セバシン酸、及びテレフタル酸が含まれる。トリカルボン酸のいくつかの例には、クエン酸、イソシトリン酸、アコニット酸、トリメシン酸、及びプロパン-1,2,3-トリカルボン酸が含まれる。テトラカルボン酸のいくつかの例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ビフェニル-3,3’,5,5’-テトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、エチレンテトラカルボン酸、及びフランテトラカルボン酸が含まれる。2つ以上のカルボン酸エステル基を含む連結分子のいくつかの例には、上記のいずれかのものをエステル化したもの、例えば、クエン酸トリエチルが含まれる。2つ以上のエポキシド基を含む化合物(すなわち、ポリエポキシド化合物)もまた連結分子として、特にポリエステルがヒドロキシ基で官能化されている場合に、連結分子として使用することができる。ポリエポキシド化合物のいくつかの例には、ジエポキシブタン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテルが含まれる。成分(i)と(ii)の間がひとたび連結されると、その連結された分子は、成分(i)と(ii)のあいだに間接的な共有結合を確立する連結部分を形成する。
【0039】
本明細書に記載したポリマーブレンド材料は、1つ又は複数の追加の成分を含んでも、含まなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、物理的特性(例えば、引張強度、弾性率、及び/又は伸び)を有利に改変する薬剤を含有させることができる。これらの改質剤のいくつかには、例えば、炭素粒子、金属粒子、ケイ素含有粒子(例えば、シリカ又はケイ酸塩粒子)、エーテル含有ポリマー、ルイス酸化合物、溶媒、可塑剤、及び金属酸化物化合物が含まれる。いくつかの実施形態において、1つ以上のそのような改質剤は、それぞれ独立して、又は全体で、ポリマーブレンド材料の質量の40、30、20、15、10、5、4、3、2、又は1質量%以下又はそれ未満の量で存在し、あるいは、1つ又は複数のそのような成分は、ポリマーブレンド材料から除外される。
【0040】
炭素粒子は、それがポリマーブレンド材料中に存在する場合、少なくとも部分的に又は完全に元素状炭素から構成される当技術分野で知られている炭素粒子のいずれかであることができ、導電性、半導電性、又は非導電性であることができる。炭素粒子は、ナノ粒子(例えば、少なくとも1、2、5、又は10nm、かつ20、50、100、200、または500nm以下)、マイクロ粒子(例えば、少なくとも1、2、5、又は10μm、かつ20、50、100、200、又は500μm以下)、又はマクロ粒子(例えば、500μmより大きい、あるいは少なくとも1、2、5、10、20、50、又は100mmあるいはそれら以下)であることができる。カーボン粒子のいくつかの例には、カーボンブラック(「CB」)、カーボンオニオン(「CO」)、球状フラーレン(例えば、バックミンスターフラーレン、すなわち、C60、並びにより小さな又はより大きなバッキーボール、例えばC20又はC70のいずれか)、管状フラーレン(例えば、単壁、二重壁、又は多層カーボンナノチューブ)、カーボンナノダイヤモンド、カーボンナノホーン、及びカーボンナノバッドが含まれ、これらの全ては、当技術分野でよく知られている組成並びに物理的及び電気的特性を有する。当技術分野で知られているように、完全に黒鉛化されたカーボンナノダイヤモンドは、カーボンオニオンであると考えることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、炭素粒子は、もっぱら炭素でできているが、他の実施形態では、炭素粒子は、非炭素非水素(すなわち、ヘテロドーパント)元素、例えば、窒素、酸素、硫黄、ホウ素、ケイ素、リン、又は金属、例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム)、アルカリ土類金属、遷移金属、典型金属(例えば、Al、Ga、又はIn)、又レアアースメタルの1つ又は組み合わせをある量で含むことができる。二元炭素組成物のいくつかの例には、炭化ケイ素(SiC)及び炭化タングステン(WC)が含まれる。ヘテロ元素の量は、少量(例えば、0.1、0.5、1、2、又は5質量%又はモル%以下)あるいはより実質的な量(例えば、約又は少なくとも、10、15、20、25、30、40、又は50質量%あるいはモル%、又はそれらの量以下)であることができる。いくつかの実施形態において、具体的に列挙したクラス又は特定のタイプの炭素粒子のいずれか1つ又は複数、又は具体的に列挙したクラス又は特定のタイプのヘテロドーパント元素のいずれか1つ又は複数が、炭素粒子から除外される。
【0042】
いくつかの実施形態では、炭素粒子は、当技術分野で知られている高強度連続炭素繊維組成物のいずれかの、ナノスケール(nanoscopic)、ミクロスケール(microscopic)、又はマクロスケール(macroscopic)のセグメントであることができる。炭素繊維組成物のいくつかの例には、ポリアクリロニトリル(PAN)、ビスコース、レーヨン、ピッチ、リグニン、及びポリオレフィンの熱分解によって生成されるものが含まれ、それらはいずれもヘテロ原子、例えば、窒素、ホウ素、酸素、硫黄、又はリンでドーピングされていても、されていなくてもよい。あるいは、炭素繊維は、気相成長させたカーボンナノファイバーであってもよい。炭素粒子はまた、二次元炭素材料、例えば、グラフェン、酸化グラフェン、又はグラフェンナノリボンであってもよく、これらは、例えば、天然グラファイト、炭素繊維、炭素ナノ繊維、単層カーボンナノチューブ、及び多層カーボンナノチューブから誘導することができる。炭素繊維は、典型的には、高い引張強度、例えば、少なくとも500、1000、2000、3000、5000、7,000、又は10,000MPa、あるいはそれより高い引張強度を有し、一般にスチールのオーダーの又はそれより高い剛性(例えば、100~1000GPa)を備えている。いくつかの実施形態において、前述の炭素粒子の任意の1つ又は複数のクラス又は特定のタイプは、ポリマーブレンドから除外される。
【0043】
エーテル含有ポリマーは、それがポリマーブレンド材料中に存在する場合には、例えば、ポリアルキレンオキシド又はそのコポリマーであることができる。エーテル含有ポリマーは、成分(i)及び(ii)の相容化剤として機能することができる。ポリアルキレンオキシドのいくつかの例には、ポリエチレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオキシド(例えば、ポリプロピレングリコール)、ポリブチレンオキシド、及びそれらのコポリマー、あるいはエチレン、プロピレン、又はアリルグリシジルエーテルとのコポリマーが含まれる。エーテル含有ポリマーはまた、例えば、米国特許第2,341,553号明細書に記載されているように、ポリビニルシアノエチルエーテルであってもよく、その内容は、参照により本明細書に援用する。エーテル含有ポリマーはまた、例えば、PVAのエーテル化された形態、例えばポリ(ビニルメチルエーテル)であってもよく、これはCAS No.9003-09-2に対応しうる。エーテル含有ポリマーはまた、例えば、フェニルエーテルポリマーであることができ、これは、ポリフェニルエーテル(PPE)又はポリフェニレンオキシド(PPO)であることができる。エーテル含有ポリマーはまた、環状エーテル基、例えば、エポキシド又はグリシジル基を含んでいてもよく、あるいは、例えば、米国特許第4,260,702号明細書にさらに記載されるとおりであり、その内容を参照により本明細書に援用する。環状エーテルポリマーはまた、米国特許第6,555,617号明細書にさらに記載されているような環状無水物で修飾されたポリビニルアセタール、あるいは例えばA. G. Pembaら, Polym. Chem., 5, 3214-3221(2014)にさらに記載されている環状又はスピロ環状ポリアセタールエーテルであることができ、それらの文献の内容は参照により本明細書に援用する。さらに他の実施形態では、エーテル含有ポリマーは、環状又は非環状のチオエーテル含有ポリマー、例えば、ポリフェニルチオエーテル又はポリフェニレンスルフィドであることができる。いくつかの実施形態において、前述のエーテル含有ポリマーの任意の1つ又は複数のクラスあるいは特定のタイプは、ポリマーブレンドから除外される。
【0044】
ルイス酸化合物は、それがポリマーブレンド材料中に存在する場合、ルイス酸特性、すなわち、電子の不足による強い電子親和性を有する、当技術分野で知られている任意の化合物であることができる。ルイス酸化合物のいくつかの例には、ホウ素含有化合物(例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル、ボラン、及びハロゲン化ホウ素、例えば、BF、BCl、及びBBr)、アルミニウム含有化合物(例えば、水酸化アルミニウム、アルミン酸塩、アルミン酸エステル、及びハロゲン化アルミニウム、例えば、AlF、AlCl、AlBr)、及びスズ含有化合物、例えば、スズ酸、スズエステル(例えば、酢酸スズ(II)又はスズ(II)2-エチルヘキサノエート)、スズアルコキシド(例えば、スズ(IV)エトキシド)、及びハロゲン化スズ、例えば、SnF、SnCl、SnBr、及びSnIが含まれる。いくつかの実施形態において、前述したルイス酸化合物の任意の1つ又は複数のクラスあるいは特定のタイプは、ポリマーブレンドから除外される。
【0045】
金属酸化物化合物は、それがポリマーブレンド材料中に存在する場合、任意の金属酸化物組成を有することができ、典型的には形状は粒子状であり、かつ、ポリマーブレンド材料の物理的特性を改善するように機能することができる。金属酸化物組成物の金属は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、典型金属、遷移金属、又はランタニド金属であることができる。アルカリ金属酸化物のいくつかの例には、LiO、NaO、KO、及びRbOが含まれる。アルカリ土類金属酸化物組成物のいくつかの例には、BeO、MgO、CaO、及びSrOが含まれる。典型金属酸化物組成物のいくつかの例には、B、Ga、SnO、SnO、PbO、PbO、Sb、Sb、及びBiが含まれる。遷移金属酸化物組成のいくつかの例には、Sc、TiO、Cr、Fe、Fe、FeO、Co、Ni、CuO、CuO、ZnO、Y、ZrO、NbO、Nb、RuO、PbO、AgO、CdO、HfO、Ta、WO、及びPtOが含まれる。ランタニド金属酸化物組成物のいくつかの例には、La、Ce、及びCeOが含まれる。いくつかの実施形態において、前述の金属酸化物の任意の1つもしくは複数のクラス又は特定のタイプ(又は全ての金属酸化物)は、ポリマーブレンドから除外される。
【0046】
金属粒子は、それがポリマーブレンド材料中に存在する場合、製造された物の電気伝導率、熱伝導率、強度、又は磁気特性を調節するために含まれていてもよい。金属粒子は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、パラジウム、白金、銀、金、アルミニウム、ケイ素、又はスズ、あるいはそれらの組み合わせから構成されるか、又はそれらを含むことができる。金属粒子は、その金属の少なくとも一部をその元素(ゼロ価)の状態で含むことができる。あるいは、金属粒子は、金属炭化物、金属窒化物、又は金属ケイ化物の組成を有していてもよい。いくつかの実施形態において、前述の金属粒子の任意の1つ又は複数のクラスあるいは特定のタイプ(又は全ての金属粒子)は、ポリマーブレンドから除外される。
【0047】
改質剤としても機能し得るハロゲン含有ポリマーは、ポリマーブレンド材料中に存在しても、存在しなくてもよい。ハロゲン含有ポリマーは、それがポリマーブレンド材料中に存在する場合、ヒドロキシ含有ポリマーについて上記したように、脂肪族(すなわち、非芳香族、例えば、アルキル又はアルケニル)又は芳香族基に結合したハロゲン原子を有することができる。ハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、及び臭素原子であることができる。フッ素化ポリマーのいくつかの例には、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー、ポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、及びフルオロエラストマーが含まれる。塩素化ポリマーのいくつかの例には、ポリ(塩化ビニル)、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロプレン、ハロゲン化ブチルゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン-プロピレンコポリマー、及び塩素化ポリ塩化ビニルが含まれる。臭素化ポリマーのいくつかの例には、ポリ(臭化ビニル)、及び当技術分野で知られている臭素化難燃剤、例えば、臭素化エポキシ、ポリ(臭素化アクリレート)、臭素化ポリカーボネート、及び臭素化ポリオールが含まれる。
【0048】
別の態様では、ここでの開示は、上述したポリマーブレンド材料を製造するための方法に関する。このプロセスは、通常、成分の溶融及び混合(ブレンド)を用いる。したがって、このプロセスは「溶融混合(メルトブレンディング)」プロセスということができる。ポリマーブレンド材料を調製するためのプロセスは、ポリマーブレンド材料の上でのこれまでの記載で示した成分の任意の質量パーセント(すなわち、質量%)を用いることができる。この方法では、少なくとも成分(i)及び(ii)(又はそれらのみ)を混合し、均一にブレンドして、ポリマーブレンド材料を形成する。成分のいずれか1つは、(該当する場合は)液体の形態、溶液の形態、又は粒子の形態もしくは顆粒の形態で含ませることができる。粒子の場合、粒子は、独立に、ナノ粒子(例えば、少なくとも1、2、5、又は10nm、かつ20、50、100、200、又は500nm以下)、マイクロ粒子(例えば、少なくとも1、2、5、又は10μm、かつ20、50、100、200、又は500μm以下)、又はマクロ粒子(例えば、500μmより大きい、又は少なくとも1、2、5、25、50、100、500、又は1000mm、あるいはそれら以下)であることができる。典型的には、ポリマー成分が粒子又は顆粒の形態で準備される場合、粒子は、成分の均一な混合及び均一な分散を可能にするために、適切な加熱によって溶融又は軟化される。成分を溶融するために用いられる温度は、一般に、成分(i)及び(ii)のガラス転移温度又はそれより高い温度であるが、同時に、成分(i)及び(ii)の分解温度より下であり、一般に少なくとも80℃、90℃、又は100℃、かつ150℃、200℃、220℃、又は240℃以下またはそれ未満の温度である。成分は、固体、半固体、ゲル、ペースト、又は液体混合物の均一な混合物を達成するための、当技術分野で知られている方法のいずれかによって均一に混合(ブレンド)することができる。適用可能な混合プロセスのいくつかの例には、単純な又は高速の溶融混合、コンパウンディング、押出し、2本ロールによる粉砕、又はボールによる混合が含まれ、これらはすべて当技術分野でよく知られている。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の構成成分は、固体のかたまり(bale)の形態であり、それらは、標準的なベール切断工具を使用して、使用可能な切断塊(chunk)に切断される。成分の切断塊(チャンク)は、典型的には、内部ミキサー、例えばバンバリーミキサー中で混合、溶融、及びブレンド(溶融ブレンド)される。他の実施形態では、成分の1つ又は複数がシートの形態であり、それらの成分は2本ロールミルで混合される。ポリマーブレンドは、典型的には、240℃以下の温度に加熱した場合に、100~1000s-1の剪断速度において、500、1000、1500、又は2000Pa・s以下の溶融粘度を示す。
【0049】
溶融混合(溶融ブレンド)プロセスは、その温度がリグニン又はその他のポリフェノール物質の分解温度よりも低いという条件で、成分(i)及び(ii)が溶融する温度において実施される。例えば、溶融プロセスは、少なくとも100℃、120℃、130℃、140℃、又は150℃、あるいはそれらより高い温度、かつ、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、又は240℃以下又はそれらより低い温度、あるいは前記の温度のいずれか2つで囲まれた範囲内の温度で実施することができる。いくつかの実施形態では、対象とする物を形成するために溶融押出するための適切な粘度及び強度をもつポリマーブレンド材料の溶融物をもたらすために、ポリマーブレンド材料の溶融物に適切な剪断速度、例えば、100~1000s-1の範囲内の剪断速度を(十分な時間)受けさせて、2000、1500、1000、又は500Pa・s以下の溶融粘度を達成することができる。異なる実施形態では、正確に又は約100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、10,000、15,000、又は20,000s-1の剪断速度を用いるか、又は前述の値のいずれか2つで囲まれた範囲内のせん断速度を用いて、正確に又はおおよそ(約)2000、1500、1250、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、又は100Pa・s、あるいはそれら以下もしくはそれら未満の溶融粘度、あるいは前述の値のいずれか2つで囲まれた範囲内の溶融粘度をもたらす。
【0050】
上記のプロセスの結果は、成分が均一にブレンドされて多相ブレンドを形成している溶融形態又は固体形態のポリマーブレンド材料であり、すなわち、成分(i)は成分(ii)に対して均一に分散されており、典型的にはマトリックスとしての成分(ii)のなかに成分(i)の明りょうな微視的なドメインをもっている。「均一にブレンドされる」とは、マクロ(例えば、ミリメートル)なスケールにおいて、上記のプロセスによって製造されたポリマーブレンド材料中に少なくとも成分(i)及び(ii)の識別可能な領域が存在しないことを意味する。上で論じたように、改質剤が含まれる場合、その改質剤の全部又は一部は、固体相(非溶融相)中に、例えば、元素の状態(例えば、炭素粒子)で、もしくは結晶ラメラ相(例えば、ポリエチレンオキシド)中に、留まっていても、留まっていなくてもよい。言い換えれば、均質なブレンド物は、少なくとも成分(i)及び(ii)に対し、改質され又は相容化された相構造(これは必ずしも単一相構造である必要はないが、しばしば、個々の相に関連して保持されてはいるがシフトしたTをもつ)を有していてよい。この変化した相構造は、一般に、各成分の独自性を失うことなく、ミクロスケール又はほぼ分子レベルで、ほぼ均一に統合されていることを示す。追加の不均一成分の場合、成分(i)及び(ii)を含む直ちに説明されるポリマーブレンドは、その中に追加の不均一成分が組み込まれた「均質マトリックス」と見ることができる。好ましい実施形態では、各構成成分がその独自性を保持し、かつ構成成分がナノメートルスケールで十分に分散されている。
【0051】
いくつかの実施形態では、成分(i)のわずかな部分が成分(ii)にグラフトされて、成分間の相容性を向上させている。たとえば、2相の反応的にブレンドされたリグニン材料のドメインサイズ及び構造は、最終材料の機械的特性に影響を及ぼし、そのドメインサイズ及び構造は、その2相の相容性を制御することによって操作することができる。いくつかの場合には、マトリックスポリマーの極性特性を高めることによって、例えば、ヒドロキシ又はカルボン酸基を含ませることによってマトリックスポリマーの極性特性を高めることにより、相容性をさらに高めることができる。
【0052】
ポリマーブレンド材料を製造するための方法は、ポリフェノール物質の少なくとも一部の、ポリエステルへの直接又は連結基(連結部分)を介しての共有結合をもたらす条件を含む。成分間の共有結合をもたらす物質は上に記載している。成分(i)及び(ii)並びに任意選択により場合によって改質物質に加えて、任意のそのような物質(例えば、クエン酸又は上述したその他のタイプの連結分子)を、溶融ブレンドプロセスにおいて含めることができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、成分(i)及び(ii)のあいだの共有結合を促進させる物質又は分子が、成分(i)及び(ii)並びに任意選択により場合によっては改質物質に加えて、ブレンド混合物中の成分として含まれる。共有結合を促進させる物質又は分子は、本明細書において触媒又は促進剤ということができる。触媒は、例えば、リグノサルフェート又は金属アルコキシドであることができる。より具体的な実施形態では、成分(i)と(ii)との間のエステル交換は、固体又は液体の酸触媒、又は有機金属触媒の存在下、高剪断条件下で実施することができる。ポリマー溶融物中でエステル交換を開始させることがここにおいて見出されている簡単な固体酸触媒は、リグノスルホネートである。リグノスルホネートは、木質バイオマスの亜硫酸パルプ化プロセス中に生成される、その表面にスルホネート基を有するリグニンである。これらのスルホネート基は酸性であり、触媒的に作用して、リグニンと分子内エステル結合を有するマトリックスポリマーとのエステル交換をもたらすことができる。特に、リグノスルホネートは本質的にリグニン分子であるから、得られるポリマーの構造に与える影響は最小限に抑えられる。その他の多くのスルホン化された有機分子又はポリマー、例えば、スルホン化炭化バイオマス(例えば、スルホン化デンプン又はスルホン化セルロース)もまた、固体酸触媒として機能し得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、例えばエステル交換によって、成分(i)と(ii)との間の共有結合を促進又は触媒する物質又は分子は、金属アルコキシドである。金属アルコキシドは、一般に、式M(OR)yで表され、式中、Mはカチオン形態の金属であり、ORはアルコキシドであり、Rは炭化水素基、例えば先に上で定義したものである。下付き文字yは、Mの電荷を中和するのに十分であるべきであり、通常は2、3、4、5、又は6である。Mは典型的には遷移金属、13族元素、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属である。上記のように、炭化水素基(R)は、任意の飽和又は不飽和炭化水素基であることができ、それは典型的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個の炭素原子、あるいは前述の値のいずれか2つで囲まれた範囲内の数の炭素原子(例えば、1~12、2~12、3~12、4~12、4~10、4~8、1~6、1~4、又は1~3個の炭素原子)を含む。炭化水素基(R)は、例えば、直鎖(線状)又は分枝状のアルキル又はアルケニル基、あるいは飽和又は不飽和の環状炭化水素基であってよい。いくつかの実施形態において、炭化水素基(R)は、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、又はシクロヘキシル基である。炭化水素基は、いくつかの場合において、不飽和環、例えばフェニル基であるか、又は不飽和環を含むことができる。
【0055】
金属アルコキシドは、例えば、遷移金属アルコキシド、第13族金属アルコキシド、アルカリ金属(1族)アルコキシド、又はアルカリ土類金属(2族)アルコキシドであることができる。遷移金属は、周期表の3~12族の遷移金属元素又はそのサブグループのいずれかから選択することができ、さらに、第1列、第2列、又は第3列のいずれかの遷移金属であることができる。遷移金属は、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ハフニウム、タンタル、及びタングステンであることができる。遷移金属アルコキシドのいくつかの特定の例には、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)n-プロポキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)n-ブトキシド、チタン(IV)tert-ブトキシド、バナジウム(V)トリイソプロポキシドオキシド、クロム(III)イソプロポキシド、鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシド、コバルト(II)イソプロポキシド、銅(II)イソプロポキシド、ニッケルアルミニウムイソプロポキシド、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、ニオブ(V)エトキシド、及びハフニウム(IV)n-ブトキシドが含まれる。第13族金属アルコキシドは、例えば、アルミニウムアルコキシド、例えば、アルミニウムブトキシド、アルミニウムtert-ブトキシド、又はアルミニウムイソプロポキシド、又は前述のアルミニウムアルコキシドのいずれかのガリウム又はインジウム類似体であることができる。アルカリ金属アルコキシドは、例えば、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、又はカリウムアルコキシドであることができ、ここで、アルコキシドは、例えば、メトキシド、エトキシド、n-プロポキシド、イソプロポキシド、n-ブトキシド、イソブトキシド、又はtert-ブトキシドであることができる。アルカリ土類金属アルコキシドは、例えば、マグネシウムアルコキシド、カルシウムアルコキシド、ストロンチウムアルコキシド、又はバリウムアルコキシドであることができ、ここで、アルコキシドは、例えば、メトキシド、エトキシド、n-プロポキシド、イソプロポキシド、n-ブトキシド、イソブトキシド、又はtert-ブトキシドであることができる。金属アルコキシドはまたランタニドアルコキシド、例えば、ランタン(III)イソプロポキシド、セリウム(III)イソプロポキシド、又はネオジミウム(III)イソプロポキシドであることができる。
【0056】
別の側面では、本発明は、上述した固体ポリマーブレンド材料から作られた物(対象とする物品)を製造するための方法に関する。一組の実施形態では、溶融混合法によって製造されるポリマーブレンドは溶融物の形態であり、その溶融物は、例えば溶融物に対する押し出し又は鋳造(キャスティング)プロセスを使用することによって、物へと成形される。別の一組の実施形態では、溶融混合法によって製造されたポリマーブレンドは固体の形態(すなわち、十分な冷却及び固化の後)であり、その固体ポリマーブレンドは、形状形成又は物体構築プロセスにおいて供給材料として使用され、固体ポリマーブレンドは続く工程において溶融され、次に、例えばその溶融物に対して押出又は鋳造プロセスを用いることによって、上述したように物(対象物)へと成形される。特に、その溶融プロセスは、混合時の成分(i)及び(ii)についてであるか又はその固体ポリマーブレンドについてであるかにかかわらず、リグニン又は他のポリフェノール物質の分解温度より低くなければならない。
【0057】
いくつかの実施形態では、溶融プロセスは、ノズルを含む加熱チャンバー内で行われ、かつそのポリマーブレンド材料が加熱チャンバー内にある間、ポリマーブレンド材料の溶融物に対して圧力が加えられてノズルを通る溶融物の流速が調節され、2000、1500、1000、800、又は500Pa・s以下の溶融粘度を有する溶融物がもたらされる。1つの例示による方法によれば、加熱チャンバーはピストンに接続され(これはピストンと接触していることを含みうる)、そのピストンがノズルを通して溶融物を押すときにポリマーブレンド材料の溶融物に対して圧力を生じさせる。別の例示による方法によれば、ポリマーブレンド材料の固体フィラメントが加熱チャンバーの中へ供給されているときにその固体フィラメントに圧力を加えることによって、ポリマーブレンド材料の溶融物に対して圧力が生み出され、その圧力が所望の流速で固体フィラメントを加熱チャンバー内へ押し込む。他の実施形態では、溶融物に適切な剪断力、例えば上述した剪断力のいずれかを加えることによって、ポリマーブレンドに所望する溶融粘度をもたらす。
【0058】
実施形態の第1のセットでは、溶融したポリマーブレンドは、物(対象物)を形成するために鋳造(キャスティング)プロセスにかけられる。鋳造プロセスは、例えば、射出成形、又はより具体的には、レジントランスファー成形プロセスであることができ、これらの全ては当技術分野でよく知られている。あるいは、鋳造プロセスは圧縮成形プロセスでることができ、これも当技術分野でよく知られている。
【0059】
実施形態の第2のセットにおいて、溶融したポリマーブレンドは、溶融押出しプロセスにかけられて、所望の形状のポリマーブレンドを生じさせる。溶融押出しプロセスは、例えば、当技術分野で知られている任意の積層造形(additive manufacturing, AM)プロセスであることができる。AMプロセスでは、固体ポリマーブレンド材料又はそのブレンド材料の溶融したものを、AMデバイスにおいて供給材料として用いることができる。固体ポリマーブレンド材料を供給材料として用いる場合、AMデバイスは、通常、溶融、混合、並びに必要な圧力及び/又は剪断力をポリマーブレンド材料にかけて、必要な粘度をもつ溶融物をもたらすためのデバイス構成要素(例えば、必要な加熱及び混合要素を備えたチャンバー)を含む。AMプロセスは、当技術分野で周知の積層プロセスのいずれか、例えば、ラピッドプロトタイピング(RP)ユニット、より具体的には、溶融堆積モデリング(FDM)ユニット又は溶融フィラメント製造(FFF)デバイスであることができる。AMデバイスは、より具体的には、3Dプリンターであることができる。当技術分野でよく知られているように、積層プロセス(特にFDM又は3D印刷プロセス)は、一般に、適切な形状のダイ又はノズルを通して構築材料(この場合はポリマーブレンド材料)を熱間押し出しし、物体を構築するための設計された位置にその構築材料の一部の量(離散量)(例えば、ビーズ)を繰り返し堆積させることによって行われる。溶融したポリマーブレンド材料の温度は、ノズルを出るときに、上述したように、溶融が行われる温度、又はポリマーブレンド材料を押し出すことはできるが、完全に溶融した状態ではない温度、すなわち、そのポリマーブレンド材料の溶融温度よりもわずかに低い温度(例えば、1~10℃低い)のいずれかであることができる。いくつかの実施形態では、溶融物を形成するために、固体ポリマーブレンドは、少なくともそのガラス転移温度又はそれより高く、かつ固体ポリマーブレンド材料のガラス転移温度の上10℃を超えず、かつ240℃(リグニンの分解温度)以下の温度に供されて、固体ポリマーブレンド材料の溶融物が生成される。
【0060】
AMユニットのダイ(すなわちノズル)から出ると、ポリマーブレンド材料は冷えて固化する。FDM又は3D印刷プロセスでは、ノズルが正確な水平及び垂直位置に移動しつつ、ポリマーブレンド材料のビーズが堆積される。このように、積層プロセスは、供給材料を用いて一層ずつ物体を構築することができる。ノズルの動き及び流速は、通常、コンピューターソフトウェア、典型的にはコンピューター支援製造(computer-aided manufacturing, CAM)ソフトウェアパッケージによって制御される。FDM又は3Dプリンターは、コンピュータープログラムによって提供される命令に基づいて、物体(物品)を構築し、そのコンピュータープログラムは、構築される物体(物品)の正確な仕様を含む。その物体は、例えば、構造支持材として、例えば、自動車の内部又は外部の部品、家具、工具、又は器具、あるいは構造物(例えば、シート又はプレート)して有用であることができる。いくつかの実施形態では、ポリマーブレンドは、コーティング又はフィルム、例えば保護フィルムに相当しうる。
【0061】
さらに他の側面では、本発明は、上述したポリマーブレンド材料を含む物品に関する。その物品は、ある程度の靭性及び/又は機械的強度が存在するものであることができる。ブレンド物は、例えば、複合部品を製造するために、連続した又は粒子状の炭素粒子、セラミック(例えば、金属酸化物)粒子、又は金属粒子でさらに強化されていても強化されていなくてもよく、ここで、「粒子」という用語は、繊維を含むことができる。いくつかの実施形態では、「粒子」には、有機材料の繊維、顆粒、又はフィブリル、例えば、天然繊維、ウィスカー、セルロース、ファイバー、プラスチックファイバー、セルロースナノ結晶、又はナノファイバーが含まれうる。この物品は、任意の有用な構成要素、例えば、構造支持体、自動車の内部又は外部の部材、家具、工具、又は器具、あるいはシート又はプレートとして使用されるか、又はそれらに含まれることができる。いくつかの実施形態において、ポリマーブレンド材料は、コーティング又はフィルム、例えば保護フィルムとして製造され適用されうる。ポリマーブレンド材料は、例えば、そのブレンド材料を溶融するか又はブレンド材料の成分を適切な溶媒中に溶かし、続いてその液体を適切な基材上に塗布し、次いで溶媒を除去することによって、コーティング又はフィルムにすることができる。
【0062】
例示の目的で、かつ本発明の特定の具体的な実施形態を説明するために、例を以下に示す。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書に記載した実施例によって決して制限されるべきではない。
【実施例
【0063】
<リグニン-ポリエステルポリマーブレンド材料の合成>
【0064】
いくつかのサンプルを、(1)エタノール-オルガノソルブで抽出した広葉樹リグニンと、(2a)微生物発酵経路によって製造されたポリヒドロキシアルカノエート、又は(2b)従来の石油原料経路によって製造されたポリカプロラクトンもしくはポリブチレンスクシネートのいずれかとのブレンド物から調製した。図1A及び1Bは、本明細書に記載したいくつかの例示ポリマーブレンド材料の二相モルフォロジー構造を表現したものであり、マトリックスポリマーの中に含まれるポリフェノール物質ドメインのサイズ及び構造は、各材料のタイプ及び量、添加剤、並びに加工条件によって制御することができる。図1Aは、相互貫入ネットワークを示しており、図1Bは、オクルージョン構造のネットワーク(occuluded network)を示している。説明したさまざまなパラメータを制御することにより、両方のモルフォロジーが可能である。黒のドメインはポリフェノールポリマー(例えばリグニン)を表し、白(透明)のドメインはマトリックスポリエステルポリマーを表している。
【0065】
一般的な手順は以下の通りである。60ccの混合チャンバーとツインローラーブレードを備えたBrabender(登録商標)Intelli-Torqueレオメーターを使用し、その内部チャンバーをマトリクスポリマーのガラス転移温度(Tg)より高い温度に加熱して、10~50質量%の量のリグニンを上記のポリマーの1つと一緒にし、ブレンドした。マトリックスポリマーを50~90rpmのローター速度において添加し、溶融して一定のトルクになるようしておいた(約5分)。リグニンを添加し、その混合物を合計で10~30分間剪断にかけた。いくつかの調製物では、混合物を2~10分間剪断し、続いて少量(0.1~5%)の分子(例えば、ポリカルボン酸、例えばクエン酸、又はリグノスルホネートもしくは金属アルコキシド)を添加して、追加の共有結合をすることを促進させる。その混合物を、合計で10~30分間剪断し続けた。いくつかのサンプルでは、少量(たとえば、2~10質量%)の第3のポリマーを相溶化剤として導入したが、それは例えばポリエチレンオキシドである。剪断が完了した後、ポリマーブレンドを空気によって室温まで冷やした後、機械的試験に適した試験片にさらに加工した。いくつかの実施形態では、混合温度は、マトリックスのTより50℃高い。別の実施形態では、混合温度は、マトリックスのTより100℃高い。さらに他の実施形態では、混合温度は、マトリックスのTより20℃高い。
【0066】
<結果>
機械的試験に適した2つのサンプルを調製した。1つはリグニンとポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)の50質量%ブレンドであり、もう1つはリグニンとポリカプロラクトンの50質量%ブレンドである。各サンプルの試験片は、圧縮成形したシートからASTM D638タイプVのダイを使用して切り取り、熱可塑性プラスチックの引張試験のためのASTM D638法に準拠して空気圧グリップを備えたユニバーサル試験フレームを使用して処理をした。リグニンとポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)のブレンド物の応力-歪みプロファイルを、添加物なしのポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)樹脂の試験片と比較して図2に示してある。
【0067】
本発明の好ましい実施形態と現在考えられているもの示し、説明しているが、それと同時に、当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にとどまる様々な変更及び修正を行うことができる。
図1A
図1B
図2
【国際調査報告】