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特表2022-543987あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット
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  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図1
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図2
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図3
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図4a
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図4b
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図5a
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図5b
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図6a
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図6b
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図7
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図8
  • 特表-あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】あらゆるタイプの地盤面の踏破に適した変形可能な車輪およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボット
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
B60B33/00 X
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500514
(86)(22)【出願日】2020-07-04
(85)【翻訳文提出日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2020068916
(87)【国際公開番号】W WO2021001571
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】1907477
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1912639
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522004151
【氏名又は名称】ボロボ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シャヌデ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】デニソフ, エフゲン
(57)【要約】
回転中心軸(150)の周りを回転駆動される第1の部分(100)であって、車輪の直径と同じ直径の円に内接する複数の分枝(110)を具備し、分枝の集合体の円形外側面が車輪のトレッド面の第1の部分を形成する、第1の部分(100)と、第1の部分に対して第1の位置と第2の位置との間で可動な第2の部分(200)であって、回転軸(150)を通る中心をもつ円に内接する複数の分枝(210)を具備する第2の部分(200)と、一方の位置から他方の位置へ、またその逆に移行するための手段であって、第1の位置は、車輪が完全な円周をもち、それによって連続するトレッド面を形成する車輪の閉位置に相当し、第2の位置は、車輪が完全な円周をもたず、不連続なトレッド面を形成する車輪の開位置に相当する、手段とを備える車輪(10)。本発明の主な特徴によれば、車輪は、車輪のトレッド面の第2の部分を形成する円形外側面(312)を有する複数の歯(310)からなる第3の部分(300)であって、第1の部分の枢動軸(120)に枢動可能に取り付けられたその歯が第2の部分の運動によって駆動され、2つの位置の間で可動である第3の部分(300)を備える。
【選択図】図4aおよび4b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 回転中心の回転軸(150)の周りを回転駆動される第1の部分(100)であって、車輪の直径と同じ直径の円に内接する複数の分枝(110)を具備し、前記分枝の集合体の円形外側面が車輪のトレッド面の第1の部分を形成する、第1の部分(100)と、
- 前記第1の部分に対して第1の位置と第2の位置との間で可動な第2の部分(200)であって、前記回転軸(150)を通る中心をもつ円に内接する複数の分枝(210)を具備する第2の部分(200)と、
- 一方の位置から他方の位置へ、またその逆に移行するための手段であって、前記第1の位置は、車輪が完全な円周をもつことによって連続するトレッド面を形成する、車輪の閉位置に相当し、第2の位置は、車輪が完全な円周をもたず不連続なトレッド面を形成する、車輪の開位置に相当する、手段と
を備える車輪(10)において、
車輪の前記トレッド面の第2の部分を形成する円形外側面(312)を有する複数の歯(310)からなる第3の部分(300)であって、前記第1の部分の枢動軸(120)に枢動可能に取り付けられた前記歯が前記第2の部分の運動によって駆動され、2つの位置の間で可動である第3の部分(300)を備えることを特徴とする車輪(10)。
【請求項2】
前記第1の位置から前記第2の位置に移行するための前記手段が、前記第1の部分(100)に固定された機械部品(500)と、前記車輪の前記回転軸(150)の方向に前記部分(500)内を並進可動な摺動機械部品(400)とを主に備え、前記摺動機械部品(400)の移動が前記部品(500)の回転を駆動し、その回転がひいては前記第2の部分(200)を駆動する、請求項1に記載の車輪。
【請求項3】
前記機械部品(500)が中空の円柱形であり、その内壁に少なくとも1つのらせん形の溝(531、532、533)を備え、前記摺動機械部品(400)が前記溝(531、532、533)内を一端から他端まで摺動することができる少なくとも1つの軸受(431、432、433)を備える、請求項2に記載の車輪。
【請求項4】
前記第1の部分(100)が、その中心部に、それぞれが互いに等距離であるとともに前記回転軸(150)からの距離が同じである3つの軸受(131、132、133)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項5】
前記第2の部分(200)が、その中心部に、それぞれが互いに等距離であるとともに前記回転軸(150)からの距離が同じである3つの円弧形の溝(231、232、233)であって、いずれも同一形状である溝(231、232、233)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項6】
前記第2の部分(200)が、その分枝(210)の各々に、細長い形状で幅が一定の湾曲した溝(240)を備え、各々の溝(240)が、前記回転軸(150)の側にある第1の近位端(241)と、前記分枝(210)の先端の側にある第2の遠位端(242)とを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項7】
前記歯(310)の各々が、前記第2の部分(200)の前記溝(240)の内部に位置する軸受(340)を備え、前記軸受(340)は、前記歯が前記枢動軸(120)の周りを枢動するとき、前記溝の前記近位端(341)から前記遠位端(342)へと摺動する、請求項6に記載の車輪。
【請求項8】
車輪の開位置または閉位置にそれぞれ対応する両端位置の間を摺動する摺動リング(15)であって、その運動が前記摺動機械部品(400)の運動を駆動するように前記摺動機械部品(400)に連結されたリング(15)を備える軸(12)に取り付けられた、請求項2から7のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項9】
前記閉位置と前記開位置との間の少なくとも1つの中間位置に車輪を保持するための手段を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の車輪を少なくとも2つ装備し、前記車輪は2つずつが、それぞれの中心を通る唯一の回転軸に沿って、単一の車軸に、または各々の車輪固有の車軸に取り付けられることを特徴とする自律移動ロボット。
【請求項11】
階段のステップまたは障害物の検出手段を備える、請求項10に記載の移動ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律ロボットの技術分野、および、階段など、あらゆるタイプの地盤面での移動を容易にするためにそのロボットに装備される手段の技術分野に関し、詳細には、あらゆるタイプの地盤面を踏破するのに適した変形可能な車輪、およびその車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
平坦な地盤面を移動すると同時に階段のような障害物を踏破するための変形可能な車輪、とりわけ車椅子のための車輪が知られている。
【0003】
たとえば、展開することによって階段のステップに車輪が引っかかるようにすることができる突起を形成する機械式装置を備える車輪が存在する。車輪の外径がそのため大きくなるが、それは車輪の軸と支点との距離についても同様であることから、それによってより大きな駆動トルクの力が必要となるという欠点を抱える。こうした車輪は、たとえば米国特許出願公開第2011/0127732号に記載されている。
【0004】
また、車輪の構成にかかわらず、外径が一定のままという変形可能な車輪も存在する。たとえば、国際公開第2018/050370号に記載されている車輪の場合がそれに当たる。この文献では、複数の分枝を有する同じ十字形の形状の2つの別個の部分を備える車輪システムであって、2つの部分が車輪の軸の周りを2つの位置の間で枢動するように互いが枢動連結によって接続されたシステムが記載されている。
【0005】
平坦な地盤面を移動するように適合された第1の位置であり、その位置では、2つの部分が中心軸の周りに互いに角度的にずれており、車輪の軸と垂直な平面内に中実円板を形成する。
【0006】
階段を移動するように適合された第2の位置であり、その位置では、別個の2つの部分が車輪の軸の周りに互いに角度的にずれており、一方が他方を全面的に覆う。
【0007】
2つの別個の部分は同一であり、両者は、それぞれの周囲が地面と常時接する同一径の円板であって、両者がそれぞれの第1の位置にあるときには、ほぼ連続したトレッド面を形成する円板を形成する。
【0008】
この車輪システムの欠点は、一方の位置から他方の位置への移行にある。実際、その別個の部分の一方が他方との間でずれる際、トレッド面を形成するそれぞれの外周は地面と常に接したままであり、それによって摩擦が生じる。その摩擦は、輸送荷重が大きければ、より大きくなって、より不快なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0127732号
【特許文献2】国際公開第2018/050370号
【発明の概要】
【0010】
そこで、本発明の目的は、あらゆるタイプの地盤の上を走行することができ、階段のステップのような障害物を通過することを容易にする車輪であって、前述のような欠点を補う車輪を提案することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、その車輪を少なくとも1つ装備した自律ロボットを提案することにある。
【0012】
したがって、本発明の対象は、
- 回転中心軸の周りを回転駆動される第1の部分であって、車輪の直径と同じ直径の円に内接する複数の分枝を具備し、その分枝の集合体の円形外側面が車輪のトレッド面の第1の部分を形成する、第1の部分と、
- 第1の部分に対して第1の位置と第2の位置との間で可動な第2の部分であって、回転軸を通る中心をもつ円に内接する複数の分枝を具備する第2の部分と、
- 一方の位置から他方の位置へ、またその逆に移行するための手段であって、第1の位置は、車輪が完全な円周をもつことによって連続する円形トレッド面を形成する、車輪の閉位置に相当し、第2の位置は、車輪が完全な円周をもたず不連続な円形トレッド面を形成する、車輪の開位置に相当する、手段と
を備える車輪である。本発明の主な特徴によれば、車輪は、車輪のトレッド面の第2の部分を形成する円形外側面を有する複数の歯からなる第3の部分であって、第1の部分の枢動軸に枢動可能に取り付けられたその歯が第2の部分の運動によって駆動され、2つの位置の間で可動である第3の部分を備える。
【0013】
本発明の目的、対象および特徴は、添付の図面を参照して以下に行う説明を読むことによってより明確となろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による車輪の第1の部分の正面図である。
図2】本発明による車輪の第2の部分の正面図である。
図3】本発明による車輪の歯の斜視図である。
図4a】本発明による車輪の内部の、閉位置における第1の上面図である。
図4b】本発明による車輪の内部の、開位置における上面図である。
図5a】本発明による車輪の第4の部分の斜視図である。
図5b】本発明による第4の部分の上面図である。
図6a】本発明による車輪の第5の部分の、閉位置における斜視図である。
図6b】本発明による車輪の第5の部分の、開位置における斜視図である。
図7】本発明による車輪の内部の、開位置における第2の上面図である。
図8】閉位置における車輪全体の斜視図である。
図9】開位置における車輪全体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による車輪は、図1で図中に表示した座標系でXY平面沿いの正面図で示された少なくとも1つのハーフシェル101によって構成される外側部分100を有する。ハーフシェル101によって形成される部分100は、車輪の回転軸150が通るその中心によって規定される円に内接し、車輪の直径に相当する直径を有する。ハーフシェル101によって形成される部分100の対称中心軸は、車輪の回転軸150を通り、各図面のZ軸と平行をなす。ハーフシェル101は、互いに均等に角度がずらされた同一の複数の分枝110を備える。分枝の数は、3ないし10であり、好ましくは6である。各々の分枝110は、回転中心軸150に関して前縁111、後縁113および遠位縁112を有する。遠位縁112によって形成される各々の分枝の外側面は、車輪の曲率半径に相当する曲率半径による曲線を描く。各々の分枝110は、遠位縁112に近接する位置に枢動軸120を備える。
【0016】
ハーフシェル101によって形成される第1の部分100は、その中心部に、それぞれが互いに等距離であるとともに回転軸150からの距離が同じである3つの軸受131、132および133を備える。ハーフシェル101は、軸150を囲む円の形に配置された玉軸受160を、円形の凹所162内にさらに備える。
【0017】
車輪は、図2に上面図で示された第2の部分200を備える。第2の部分は平坦で、車輪の回転軸150を通る回転中心軸と、複数の分枝210とを備えており、分枝210の数はハーフシェル101の分枝110の数に相当する。部分200は、ハーフシェル101の凹所160の直径に相当するものであることが好ましい直径を有する円形の中央の貫通空所201を備える。
【0018】
部分200は、その中心部および中央の空所201の周りに、それぞれが互いに等距離であるとともに回転軸150からの距離が同じである3つの円弧形の溝231、232および233を備える。3つの溝231、232および233は同一の形状を有する。3つの溝231、232および233の各々は、上部縁と、その上部縁と平行な下部縁であって、上部縁よりも回転軸150に近い下部縁と、半円形の2つの端部縁とを有する。溝231、232および233は、軸受131、132および133がその中を自由に摺動できるように設計される。
【0019】
部分200は、その分枝210の各々に、細長い形状で幅が一定の湾曲した溝240をさらに備える。各々の溝240は、2つの端部、すなわち、回転軸150の側にある第1の端部と、分枝210の先端の側の第2の端部とを有する。溝240の第1の端部は、部分200の対称軸と一致する中心をもつ第1の円の円周と位置合せされる。溝240の第2の端部は、部分200の対称軸と一致する中心をもつ第2の円であって、第1の円の直径よりも大きな直径をもつ第2の円の円周と位置合せされる。回転軸150に近い方の溝の端部は、近位端と呼ばれて241の符号を与えられており、対称軸から遠い方の端部は、遠位端と呼ばれて242の符号を与えられている。
【0020】
本発明による車輪は、分枝110および210の数に相当する数の複数の歯310からなる第3の部分300をさらに備え、したがって、本発明の好ましい実施形態では、車輪は、同一の6つの歯310であって、図3にそのうちの1つを斜視図で示した歯を具備する。各々の歯310は、車輪の曲率半径に相当する曲率半径で湾曲した外側面312を有する。歯310は、貫通空所320と、各図に示した座標系のZ軸と平行な軸の周りを自由に回転することができる軸受340とをさらに有する。
【0021】
図4aおよび4bを見るとわかるように、車輪の部分200は、ハーフシェル101によって形成される第1の部分に、軸受131、132および133がそれぞれ3つの溝231、232および233の中に来るように配置される。この位置では、ハーフシェル101および部分200それぞれの対称軸は、車輪の回転軸150と一直線をなす。部分200は、部分100に対して可動である。部分200は、その回転軸の周りを2つの位置の間で回転することができる。ハーフシェル101の軸受131、132および133がそれぞれ円弧形の溝231、232および233の各々の第1の端部によって阻止される第1の位置と、ハーフシェル101の軸受131、132および133がそれぞれ円弧形の溝231、232および233の各々の第2の端部に当接する位置に来る第2の位置。溝231、232および233は、軸受131、132および133がそれぞれの上縁に隙なく押し付けられるように設計される。これは力をよく分散させることが目的である。
【0022】
歯310は、ハーフシェル101によって形成される第1の部分100に枢動可能に取り付けられ、第2の部分200の運動によって駆動される。各々の歯310は、その貫通空所をハーフシェル101の枢動軸120が通り抜けるように配置され、それによって各々の歯が連結された軸120の周りを回転できるようにされる。また、各々の歯の軸受340は、第2の部分200の溝240の中に位置し、溝240の幅は、部分200が一方の位置から他方の位置に移るときに軸受340が溝の近位端341から遠位端342へ、またその逆に摺動できるように設計される。図4aおよび図4bで歯310の軸受340が破線で示されているのは、それらがここでは、歯310で隠れる面にあるためである。歯310は、2つの位置の間で可動である。
【0023】
図4aに示した部分200の第1の位置では、歯310の軸受340は、第2の部分200の溝240の遠位端にある。この位置は車輪の閉位置に相当する。この位置では、歯310は、その外側面312が車輪の直径の円の外周上に来るように配置される。この位置では、ハーフシェル101の分枝110の前縁は表に出ない。
【0024】
図4bに示した部分200の第2の位置では、歯310の軸受340は、第2の部分200の溝240の近位端にある。この位置は車輪の開位置に相当する。この位置では、歯310は星形に配置され、その外側面312はハーフシェル101の分枝110の後縁113に沿う形となって、ハーフシェル101の分枝110の前縁111が表に出る。
【0025】
本発明による車輪は、機械部品400および500によって規定される機械的手段であって、図5a、5b、6a、6bに詳細図を示すようなカムとローラの機械的手段によって、さらに車輪外部の駆動手段によって、一方の位置から他方の位置へと移行する。
【0026】
摺動部品400は、図5aに斜視図で、図5bに上面図でそれぞれ示してある。摺動部品は主に円柱401を備えるほか、少なくとも1つ、好ましくは3つの軸受431、432および433、さらに円柱401の対称軸を通る摺動軸450を備える。3つの軸受は、互いに等間隔で円柱401の側面に固定され、それぞれの回転軸の周りを自由に回転することができる。3つの軸受の回転軸は、円柱の対称軸で交わる。
【0027】
摺動部品400は部品500と協働するものであり、図6aおよび6bではこの2つの部品は一緒に示されている。中空の円柱の形の部品500は、部品500の対称軸を通る対称軸を有する円柱形の貫通空所501をその中心に備える。部品500は、その内壁に少なくとも1つの溝、好ましくは同一の3つのらせん形の溝を、部品500の円柱の同じ高さに有する。そして、各々の溝の第1の端部は、図6aおよび6bで溝531、532および533それぞれの端部541、542および543について見ることができるように、互いに等距離で、互いに60度の角度で角度的にずらされる。各々の溝の第1の端部は、第2の端部に対して40度から60度の角度距離に位置する。
【0028】
貫通空所の直径は、円柱401が壁に邪魔されることなく、その内部を自由に摺動できるように設計される。軸受431、432および433は、溝531、532および533内をその一端から他端へ、またその逆に摺動できるように設計される。
【0029】
摺動部品400が矢印403に沿ってその摺動軸450の方向に、したがって車輪の軸150に沿って、並進移動すると、部品500が矢印503に沿って回転駆動される。部品400が移動し、それによって軸受が溝の一方の端部から他方の端部に移ると、部品500は、溝の第1の端部と溝の第2の端部の間の角度距離と同じ角度だけ部品500の対称軸の周りを回転する。それにより、部品500は、図6aに示された第1の位置から図6bに示された第2の位置に回転する。部品500は、3つのらせん形の溝をもつ回転円柱カムの役割を果たし、軸受は、摺動軸450が並進移動するときに溝の中を移動するローラとなる。
【0030】
図7に見ることができるように、部品500は、部分200に対してその中心部で、それぞれの対称軸が一致して互いに一直線となるように、図示していない固定手段によって固定される。したがって、部品500の対称軸は、車輪の回転軸150と一直線をなす。円柱401は、第2の部分200の貫通空所501に収まる。摺動部品400が摺動軸450方向に並進すると、部品500は、溝531、532および533内を摺動する軸受431、432および433によって摺動軸450の周りに回転駆動される。部品500は部分200と一体であることから、ひいては部品500が部分200を摺動軸450の周りに、したがって車輪の回転軸150の周りに回転駆動する。
【0031】
ある位置から別の位置への移行のための機械式システムは、車輪に電気エネルギーを加える必要がないという利点を有する。
【0032】
図8および図9を参照すると、車輪10はその全体像が斜視図で示されている。車輪は、外側部分100、可動部分200、歯310、そして図では見えない部品400および500の組立体によって構成されている。本発明の好ましい実施形態によれば、車輪の外側部分100は、第1のハーフシェル101とほぼ同じ形状の第2のハーフシェル102であって、ハーフシェル101の遠位縁に取り付けられて車輪構成各部を包み込む第2のハーフシェル102をさらに備える。第1の部分100の分枝の円形外側面は、車輪のトレッド面の第1の部分を形成する。2つのハーフシェル101および102からなる外側部分100は、車輪を補強し、埃から車輪を保護するとともに、車輪の見栄えをよくする。車輪10は、両端位置の間を摺動する摺動リング15を具備する軸12に取り付けられる。リング15は、摺動部品400にその摺動軸450によって連結され、その摺動部品と一体化することで、リング15の運動が摺動軸450および摺動部品400の運動を駆動する。リング15の両端位置は、その各々が車輪の開位置または閉位置に相当する。それぞれ図8および図9を見るとわかるように、リングが軸12上の車輪に最も近い位置にあるときは、車輪が閉位置にある状態に相当し、リングが軸12上で車輪から最も遠い位置にあるときは、車輪が開位置にある状態に相当する。
【0033】
閉位置にある車輪全体の斜視図である図8を見ると、部分200はその第1の位置にある。車輪は、連続する歯310の外側面312が、部分100の遠位縁112沿いに形成される円形外側面によって区切られた形のもので構成される連続的なトレッド面を備える。第1の部分100の分枝110の集合体の円形外側面は、車輪のトレッド面の第1の部分を形成し、歯310の外側面312の集合体の外側面は、車輪のトレッド面の第2の部分を形成する。これら2つの外側面は全体として、閉位置における車輪の完全かつ円形のトレッド面を形成する。この位置では、車輪は平坦な地盤面に完璧に適合する。
開位置にある車輪全体の斜視図である図9を参照すると、部分200はその第2の位置にあり、車輪は、トレッド面の外周部分に対してほぼ垂直な前縁を備える。この開位置では、車輪は、円形かつ連続的な外周をもたず、階段を踏破するのに適した不連続なトレッド面を有する。
【0034】
車輪は、車輪の開または閉位置を阻止状態で保持するための手段を備える。本発明に従って規定された少なくとも1つの車輪は、自律ロボットに装備することができる。ロボットは、踏破すべき階段または障害物の存在を検出するための手段、および踏破すべき階段の存在を検出するための手段から信号を受け取って処理することができる制御装置を備える。これらの手段は、近接センサ、カメラなどであることができる。制御装置は、車輪の開位置から閉位置へ、またその逆の切換えを制御する。そのため、制御装置は、ロボットが平坦な地盤面の踏破から階段のような段差のある地盤面へ、またその逆に移行する場合に摺動リングの移動を制御する。
【0035】
ロボットは、リングの位置をその両端位置の間にある1つまたは複数の中間位置に保持する手段を備える。それらの手段は、車輪の軸12に含まれていてもよい。そのため、代替形態によれば、車輪は、閉位置と開位置との間に、異なる地面での利用に相当する中間位置をもつことができる。たとえば、歯310の50%の開放に相当する第1の中間位置は、ロボットを柔らかい地盤面を移動するのに適合させ、歯310の20%の開放に相当する第2の中間位置は、ロボットが雪上を移動する場合に適合させる。中間位置が保持されると、第1の部分100の軸受131、132および133は、溝231、232および233の両端の間の中間位置に来る。
【0036】
さらに別の代替形態によれば、ロボットは、地面の質に応じて、また移動速度に応じて、歯の開き方を制御するための手段を備える。
【0037】
ロボットは、本発明で規定される2つの車輪または4つの車輪を装備することが好ましい。車輪は2つずつが、それぞれの中心を通る唯一の回転軸に沿って、単一の車軸に、または各々の車輪固有の車軸に取り付けられる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8
図9
【国際調査報告】