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特表2022-543990アリピプラゾールラウロキシルの調製のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】アリピプラゾールラウロキシルの調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/20 20060101AFI20221007BHJP
   C07D 201/14 20060101ALI20221007BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20221007BHJP
   A61K 31/496 20060101ALN20221007BHJP
【FI】
C07D215/20
C07D201/14
A61P25/18
A61K31/496
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500880
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2020069680
(87)【国際公開番号】W WO2021009087
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】19382592.4
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346827
【氏名又は名称】インタークイム,エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ポマレス マルコ,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】マーキラス オロンドリズ,フランシスコ ドゥ アシス
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086NA20
4C086ZA18
(57)【要約】
1-(ヒドロキシメチル)アリピプラゾールをラウリン酸無水物と、DMAPおよび溶媒の存在下で反応させることを含む、アリピプラゾールラウロキシルの調製のためのプロセスが提供される。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリピプラゾールラウロキシルである式(I)の化合物の調製のためのプロセスであって
【化1】
下記ステップを含むプロセス:
a)式(II)の化合物
【化2】
をラウリン酸無水物と、DMAPおよび溶媒の存在下で反応させ、アリピプラゾールラウロキシルを得るステップ;および
b)任意で、前記得られた式(I)の化合物を単離するステップ。
【請求項2】
前記溶媒は、ジクロロメタン、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、アセトニトリル、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記溶媒はジクロロメタンである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応温度は室温~前記溶媒の沸点の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記反応は室温で実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
使用されるDMAPの量は式(II)の化合物に対して0.2~0.3%モルである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
式(II)の化合物対ラウリン酸無水物のモル比は1:1.3である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップb)は前記溶媒を大気圧で蒸留することにより実施される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項9】
式(II)の化合物
【化3】
を、
アリピプラゾールまたはその水和物である式(III)の化合物
【化4】
をパラホルムアルデヒドと、有機溶媒および好適な塩基の存在下で反応させることにより、調製するための前のステップi)をさらに含み、
前記プロセスは水なし、またはある量の水の存在下のいずれかで実施され、これは、無水でない有機溶媒、無水でない反応物の使用、またはアリピプラゾールの水和形態の使用によってもたらされ、さらなる水の添加はない、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記有機溶媒は、トルエン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、アセトニトリル、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記塩基は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、カリウムtert-ブトキシド、およびジイソプロピルエチルアミンからなる群より選択される、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
アリピプラゾールおよびパラホルムアルデヒドを含む前記反応混合物中の水の量は1wt%以下である、請求項9~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
アリピプラゾールまたはその水和物、およびパラホルムアルデヒドは、1:1~1:3のモル比で存在する、請求項9~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月12日に出願された欧州特許出願EP19382592.4号の恩典を主張する。
【0002】
本発明は、アリピプラゾールラウロキシルの調製のための改善されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
アリピプラゾールラウロキシルは、化合物ドデカン酸7-[4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]-ブトキシ]-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-キノリン-1イル)メチルの一般名であり、その化学構造は下記である:
【化1】
アリピプラゾールラウロキシルは、Alkermesにより、統合失調症(schizophernia)の治療のために、商標名Aristada(登録商標)で開発された非定型抗精神病薬である。
【0004】
ドデカン酸7-{4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]ブトキシ}-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-キノリン-1-イル)メチルは、US8431576号において最初に開示された。
【0005】
US8431576号は、アリピプラゾールからの2合成段階でのアリピプラゾールラウロキシルの調製のためのプロセスを開示し、これは収率が低く、純度がより低い。
【0006】
アリピプラゾールはホルムアルデヒドと、トリエチルアミンおよびジメチルホルムアミドの存在下で反応させられ、式(II)の1-ヒドロキシメチルアリピプラゾールが得られる。アリピプラゾールの1-ヒドロキシメチルアリピプラゾールへの、ホルムアルデヒドおよびトリエチルアミンの存在下での変換により、65%の1-ヒドロキシメチルアリピプラゾールおよび25%のアリピプラゾールが得られる。次いで、式(II)の1-ヒドロキシメチルアリピプラゾールはトリエチルアミンの存在下で、テトラヒドロフラン中ラウリン酸無水物と反応させられ、式(I)の粗化合物が得られ、続いてクロマトグラフィーを用いて精製され、純粋アリピプラゾールラウロキシルが得られる。所望の生成物を21%収率で結晶性固体として単離した。アリピプラゾールからアリピプラゾールラウロキシルの全収率は13.7%であった。
【0007】
【化2】
【0008】
本発明者らはWO2019020821号を出願した。これは、アリピプラゾールラウロキシルの調製の改善されたプロセスを開示する。ステップIでは、式(II)の化合物が水なしで、アリピプラゾールをパラホルムアルデヒド(ホルムアルデヒドの代わりに)と反応させることにより得られる場合、77%より高い変換が得られる。ステップIIでは、アリピプラゾールラウロキシルが、式(II)の1-ヒドロキシメチルアリピプラゾールをラウリン酸、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド、4-ジメチルアミノピリジンとジクロロメタン中で反応させることにより調製される。
【0009】
WO2018104953号およびWO2018169491号もまた、いくつかあるプロセスの中で特に、式(II)の1-ヒドロキシメチルアリピプラゾールからの、これを、ラウリン酸とN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび4-ジメチルアミノピリジンの存在下で反応させることによる、アリピプラゾールラウロキシルの調製を開示する。
【0010】
上記プロセスでは、反応における副産物であるN,N-ジシクロヘキシル尿素は、粗アリピプラゾールを単離するために反応混合物から分離される必要がある。そのため、濾過ステップが製造プロセスにおいて溶媒の除去前に必要とされる。
【0011】
溶媒が次いで減圧で蒸留され、反応生成物が単離される。本発明者らは、アリピプラゾールラウロキシルおよびN,N-ジシクロヘキシル尿素を含む混合物は30℃を超えて加熱されると安定でないことを見出した。生成物がアリピプラゾールに分解するからである。そのため、溶媒はそのような分解を回避するため、室温および減圧で蒸発される必要がある。
【0012】
プロセスが工業規模で実施され、使用される溶媒がジクロロメタンである場合、大気圧での溶媒の蒸留が、これを完全に収集し、大気への溶媒放出を回避するために常に望ましい。他方、時として、生成物を反応混合物から、最適結晶化収率を得るためのある一定の量までの溶媒の部分蒸発により結晶化することが望ましい。工業プロセスでは、蒸発した溶媒を測定することにより、反応混合物中の残りの溶媒の計算が実施される。大気圧での溶媒の蒸発は溶媒の総収集を確実にし、これにより、収集された溶媒の量、その結果として、反応混合物中の残りを正確に測定することができる。上記プロセスでは、これは可能ではない。
【0013】
以上を考慮すると、良好な収率および純度でアリピプラゾールラウロキシルの調製が可能で、スケールアップが容易で、環境に優しい新規プロセスを見出すことが依然として必要とされる。
【発明の概要】
【0014】
本開示は、アリピプラゾールラウロキシルの調製のための新規プロセスを提供し、これは、良好な収率および純度で働き、工業化が容易で、毒性溶媒の大気への放出を回避する。
【0015】
発明の第1の態様は、アリピプラゾールラウロキシルである式(I)の化合物の調製のためのプロセスを示し
【化3】
これは下記ステップを含む:
a)式(II)の化合物
【化4】
をラウリン酸無水物と、DMAPおよび溶媒の存在下で反応させ、アリピプラゾールラウロキシルを得るステップ;および
b)任意で、得られた式(I)の化合物を単離するステップ。
【0016】
発明者らは、驚いたことに、式(I)の化合物が、式(II)の化合物をラウリン酸無水物と、トリエチルアミンの代わりにDMAPの存在下で反応させることにより調製される場合、US8431576号で記載されるプロセスと比べて、より高い変換が得られることを観察した。特に、US8431576号の実施例12では、ドデカン酸(7-(4-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2-オキソ-3,4-ジヒドロキノリン-1(2H)-イル)メチルの調製が、アセテート類似体について実施例11で記載されるのと同様に実施される。所望の化合物が、無水テトラヒドロフラン中の化合物-A1をラウリン酸無水物と反応させることにより得られ、2.0時間60℃(油浴)で加熱される。次いで、トリエチルアミンが上記溶液に添加され、16時間60℃で撹拌される。生成物がワークアップおよびシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後に単離される。実施例12では、アリピプラゾールラウロキシルは結晶性固体として単離され、21%収率であった。この実施例に従うことにより、式(II)の化合物の式(I)の化合物への変換は、比較例2に示されるように、26.7%にすぎない。反対に、本発明のプロセスを用いると、本開示の実施例1~3において見てわかるように、85%より高い変換が得られる。生成物は溶媒蒸発および好適な溶媒中での結晶化後に容易に単離することができる。
【0017】
よって、驚いたことに、発明者らは、実施例および比較例から見てわかるように、発明のプロセスにより、アリピプラゾールラウロキシルが良好な収率で、同時に高純度で得られることを見出した。プロセスは工業レベルまでのスケールアップが容易であり;生成物は、反応の終わり後に、単に、溶媒を蒸発させ、それを、例えば結晶化により精製することにより得ることができる。プロセスは反応の終わり後の濾過ステップを回避する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、別記されない限り、当技術分野で知られているそれらの普通の意味で理解されるべきである。本出願において使用されるある一定の用語についての他のより特定的な定義は以下で明記される通りであり、別様に明示的に設定された定義が、より広い定義を提供しない限り、明細書および特許請求の範囲を通して均一に適用されることが意図される。
【0019】
発明の第1の態様では、アリピプラゾールラウロキシルを調製するプロセスは、式(II)の化合物をラウリン酸無水物と、DMAPおよび溶媒の存在下で反応させる第1のステップa)を含む。
【0020】
式(II)の化合物のラウリン酸との反応を実施するための溶媒の例としては、トルエン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIK)、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル(ACN)、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、溶媒は、トルエン、テトラヒドロフランおよびジクロロメタンから選択される。特に、反応はジクロロメタン中で実施される。
【0021】
特定の実施形態では、任意で、以上または以下で規定される特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、溶媒はトルエン、テトラヒドロフランおよびジクロロメタンから選択され、好ましくはジクロロメタンである。
【0022】
本発明の別の実施形態では、式(II)の化合物とラウリン酸無水物の間の反応において使用されるDMAPの量は、式(II)の化合物に対して0.1~1%モルとすることができる。より特定的に式(II)の化合物に対して0.2~0.3%モル。
【0023】
本発明の別の実施形態では、式(II)の化合物対ラウリン酸無水物のモル比は、1:1~1:3とすることができる。より特定的に、モル比は1:1.3である。
【0024】
本発明の別の実施形態では、反応温度は0℃~溶媒の沸点の温度の範囲であり、さらにより特定的には、室温である。発明の目的のために、室温は15-25℃である。
【0025】
発明の第1の態様では、アリピプラゾールラウロキシルを調製するプロセスは、任意で生成物を単離するステップb)を含む。
【0026】
ステップa)で得られる生成物は従来の方法により単離することができる。溶媒は直接除去することができ、粗アリピプラゾールラウロキシルが得られる。
【0027】
N,N-ジシクロヘキシル尿素を反応混合物から分離する濾過ステップは、反応がラウリン酸、DCCおよび4-ジメチルアミノピリジンを用いて実施される場合に先行技術で開示されるプロセスと比べて、溶媒の除去前に必要とされない。溶媒は、例えば蒸留のような、有機化学において使用される標準技術により除去することができる。溶媒は好ましくは、大気圧での蒸留により除去される。毒性溶媒、例えばジクロロメタンが大気圧で除去される場合、揮発物質の大気への放出が低減され、それらは、完全に収集、リサイクルされ得るという利点を有する。
【0028】
よって、特定の実施形態では、任意で、以上または以下で規定される特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、ステップb)が溶媒を大気圧で蒸留することにより実施される。
【0029】
別の特定の実施形態では、任意で、以上または以下で規定される特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、溶媒はジクロロメタンであり、ステップb)が溶媒を大気圧で蒸留することにより実施される。
【0030】
発明のプロセスを用いると、アリピプラゾールラウロキシルが高純度かつ非常に良好な収率で得られる。特に、少なくとも95%の純度を有するアリピプラゾールラウロキシルが得られる。
【0031】
加えて、式(II)の化合物から粗アリピプラゾールラウロキシルへの収率は80%~90%の範囲である。
【0032】
少なくとも99.8%HPLCの純度を有するアリピプラゾールラウロキシルは、粗反応物を従来の精製技術または先行技術において記載される他の技術、例えば、結晶化、クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせに供することにより得ることができる。特に、精製は、より特定的にはイソプロパノール中での、結晶化により実施される。
【0033】
以前には、式(II)の化合物は、式(III)のアリピプラゾールまたはアリピプラゾール一水和物などのその水和物をパラホルムアルデヒドと有機溶媒および好適な塩基の存在下で反応させることにより得ることができ、反応は、水なし、またはある量の水の存在下のいずれかで実施され、これは、無水でない有機溶媒、無水でない反応物の使用、またはアリピプラゾールの水和形態の使用によってもたらされ、さらなる水の添加はなく、したがって、WO2019020821号に記載される通りである。
【0034】
よって、特定の実施形態では、任意で、以上または以下で規定される特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、アリピプラゾールラウロキシルを調製するプロセスは、式(II)の化合物
【化5】
を、
アリピプラゾール、またはその水和物である式(III)の化合物
【化6】
をパラホルムアルデヒドと、有機溶媒および好適な塩基の存在下で反応させることにより、調製するための前のステップi)をさらに含み、反応は水なし、またはある量の水の存在下のいずれかで実施され、これは、無水でない有機溶媒、無水でない反応物の使用、またはアリピプラゾールの水和形態の使用によってもたらされ、さらなる水の添加はない。
【0035】
ステップi)における有機溶媒の例としては、トルエン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIK)、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル(ACN)、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。特に、有機溶媒はトルエンである。
【0036】
塩基の例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、カリウムtert-ブトキシド、およびジイソプロピルエチルアミンが挙げられるが、それらに限定されない。特に、塩基はDBUである。
【0037】
特定の実施形態では、上記のように、アリピプラゾールおよびパラホルムアルデヒドを含む反応混合物中に存在する水の量は1wt%以下である。
【0038】
反応は1:1~1:3のアリピプラゾール、または一水和物などのその水和物対パラホルムアルデヒドのモル比で実施することができる。より特定的には、モル比は1:1:1.7である。
【0039】
開始材料として、それ自体で、または一水和物の形態で使用されるアリピプラゾール、パラホルムアルデヒド、およびラウリン酸無水物は市販されている。パラホルムアルデヒド(CAS番号30525-89-4)は、ポリオキシメチレンとしても知られており、ホルムアルデヒドのポリマーであり、化学式(CHO)により表すことができ、式中、nは8~100の整数である。
【0040】
説明および特許請求の範囲を通して、「含む」という単語およびその単語の変形は、他の技術特徴、添加物、構成要素、またはステップを排除することを意図しない。さらに、単語「含む」は「から構成される」場合を包含する。
【0041】
下記実施例は例として提供され、それらは、本発明を制限することを意図しない。さらに、本発明は本明細書で記載される特定の及び好ましい実施形態の全ての可能な組み合わせを包含する。
【0042】
実施例
実施例1.ジクロロメタン中での式(I)の化合物の調製
ステップ1:トルエンおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)中での7-(4-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-1-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(式(II)の化合物)の調製
【化7】
500mLのトルエン(5V)、100.0gのアリピプラゾール(一水和物として)(214mmol)、10.6gのパラホルムアルデヒド(343mmol)および0.65gのDBU(4.29mmol)を1L反応器に入れ、30-40℃まで加熱し、撹拌しながら窒素雰囲気下で16時間の間維持した(反応混合物中のアリピプラゾールが≦16.0%HPLCとなるまで)。
【0043】
反応混合物をT≦5.0℃まで冷却させ、2時間これらの条件で維持した。固体を混合物から濾過し、1回100mLの冷トルエンで洗浄した。固体を真空オーブン内、30℃で6時間乾燥させ、96.9gの標題化合物を得た(アリピプラゾール(一水和物として)に基づき94%収率)。HPLCにより分析したその純度は87.6%であり、これは82.3%の変換を意味する。
【0044】
HPLC分析を下記カラムおよび条件で実施した:
-クロマトグラフカラム:XBridge RP Shield C18(150×3mm、3.5μm);
-カラム温度:40℃;
-移動相:A:2.3g KHPO×3HO/1L HO pH=6.6 HPO 10%、
B:アセトニトリル
-グラジエント溶離条件:
【0045】
クロマトグラフは、下記の通りプログラムした:
【表1】
主ピーク保持時間:およそ15.6分;試料体積2μL;検出波長:254nm;実行時間:22分;試液:1mg/mL、溶媒:アセトニトリル:10%AcOHでのMilli-Q水(1:2);カラム流量:0.51ml/分。
【0046】
ステップ2:式(II)の化合物の精製
896mLの脱イオン水(10V)、89.6gの粗(7-(4-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-1-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンを2L反応器に入れ、18-28℃まで加熱し、撹拌しながら窒素雰囲気下で少なくとも30分の間維持する。
【0047】
固体を反応混合物から濾過し、2回270mLの脱イオン水で、洗浄する。固体を真空オーブン内30℃で16時間乾燥させる。88.38gの純粋7-(4-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-1-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンが得られる(粗から98.6%収率)。
【0048】
ステップ3:ジクロロメタン中でのアリピプラゾールラウロキシル(式(I)の化合物)の調製
【化8】
ジクロロメタン100mL、8.8gのラウリン酸無水物(23.0mmol)、10.0gのステップ1または2で得られた式(II)の化合物(20.9mmol)および0.51gの4-ジメチルアミノピリジン(4.18mmol)を250mL反応器に入れ、撹拌しながら室温(15-25℃)で最低2時間維持した(反応混合物中の式(II)の化合物が≦0.5%HPLCとなるまで)。結果:0%の式(II)の未反応開始材料化合物、11.24%のアリピプラゾールおよび86.0%のアリピプラゾールラウロキシル。
【0049】
ジクロロメタンを大気圧で蒸留させた。10mLの溶媒が反応混合物中に残った。次いで、140mLのイソプロパノールを入れ、100mLの溶媒を減圧で蒸留させた。反応混合物を0-10℃まで冷却させた。2時間0-10℃で維持した。混合物を濾過し、固体を2回イソプロパノール(10mL)で洗浄した。固体を真空下、40℃で4時間乾燥させ、12.4gの、95.7%純度のアリピプラゾールラウロキシルを得た(HPLCにより分析)。
【0050】
3回の再結晶化を粗アリピプラゾールラウロキシル上で、イソプロパノールを溶媒(200mL)として使用して実施した。最後に、99.8%の純度(HPLCにより分析)を有する10.4gのアリピプラゾール(API品質)を得た(式(II)の化合物から75%全収率)。
【0051】
HPLC分析を下記カラムおよび条件で実施した:
-クロマトグラフカラム:Gemini C6-フェニルC18(150×4.6mm、3.0μm);
-カラム温度:40℃;
-移動相:A:アセトニトリルB:酢酸アンモニウムpH=7.5
-グラジエント溶離条件:
【0052】
クロマトグラフは、下記の通りプログラムした:
【表2】
主ピーク保持時間:およそ26.7分;試料体積5μL;検出波長:215nm;実行時間:35分;試液:1mg/mL、溶媒:アセトニトリル:メタノール(1:1);カラム流量:1.5ml/分。
【0053】
実施例2.トルエン中での式(I)の化合物の調製
トルエン50mL、5.2gのラウリン酸無水物(13.6mmol)、5.0gの、ステップ1で得られた式(II)の化合物(10.5mmol)および0.26gの4-ジメチルアミノピリジン(2.1mmol)を250mL反応器に入れ、撹拌しながら室温(15-25℃)で最低4時間維持した(反応混合物中の式(II)の化合物が≦0.5%となるまで)。結果:0%の式(II)の未反応開始材料化合物、10.0%のアリピプラゾールおよび86.0%のアリピプラゾールラウロキシル。
【0054】
45mLのトルエンを減圧下で蒸留させる(80℃、600-700mbar)。5mLの溶媒が反応物中に残った。次いで、110mLのイソプロパノールを入れ、90mLの溶媒を減圧で蒸留させた。
【0055】
反応混合物を0-10℃まで冷却させた。これを2時間0-10℃で維持した。混合物を濾過し、固体を2回イソプロパノール(5mL)で洗浄した。固体を真空下、40℃で4時間乾燥させ、5.6gの、95.3%純度のアリピプラゾールラウロキシルを得た(HPLCにより分析)(82%収率)。
【0056】
実施例3.テトラヒドロフラン中での式(I)の化合物の調製
40mLの無水THF、3.5gのラウリン酸無水物(9.2mmol)、4.0gのステップ1で得られた式(II)の化合物(8.4mmol)および0.20gの4-ジメチルアミノピリジン(1.7mmol)を250mL反応器に入れ、撹拌しながら室温(15-25℃)で最低5時間維持した(反応混合物中の式(II)の化合物が≦0.5%となるまで)。結果:0%の式(II)の未反応化合物、10.0%のアリピプラゾールおよび85.6%のアリピプラゾールラウロキシル。
【0057】
比較例2.US8431576号による、式(II)の化合物およびラウリン酸無水物からのアリピプラゾールラウロキシルの調製
30mLの無水THF、5.0gの実施例1のステップ1で得られた式(II)の化合物(10.45mmol)、6.08gのラウリン酸無水物(15.89mmol)および0.137gのトリメチルアミン(1.36mmol)を100mL反応器に入れ、撹拌しながら16時間維持した。HPLC分析を反応混合物に対して実施した。結果:32.8%の式(II)の未反応開始材料化合物、35.3%のアリピプラゾールおよび26.7%アリピプラゾールラウロキシル。
【国際調査報告】