(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】操作された核酸調節エレメントならびにその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20221007BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221007BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221007BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221007BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221007BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221007BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221007BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221007BHJP
C12N 15/35 20060101ALN20221007BHJP
【FI】
C12N15/85 Z ZNA
C12N7/01
C12N5/10
A61K48/00
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61K35/76
C12N15/13
C12N15/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503959
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020043578
(87)【国際公開番号】W WO2021021661
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520135611
【氏名又は名称】リジェネックスバイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,チュンピン
(72)【発明者】
【氏名】マクドゥーガルド,デヴィン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
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4C084AA13
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4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZC02
4C087ZC19
(57)【要約】
本発明は、遺伝子発現を増強するように操作された核酸発現カセットに関する。新規なキメラ調節エレメントを含む発現カセットを使用したベクター及び方法を提供する。本発明は、特に、標的細胞への導入遺伝子の送達に有用であり、肝臓指向性及び筋指向性または肝臓指向性及び骨指向性の遺伝子治療に望ましい特性を付与する。さらに、本発明は、直列型エンハンサー/プロモーターエレメントを操作し、例えば、肝臓及び/または筋細胞内で導入遺伝子を発現し、様々な障害を治療するための治療薬を送達する新規な方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Mic/BiKEの1つもしくは2つの直列に配置されたコピー、ApoEエンハンサーの1つもしくは2つの直列に配置されたコピー、またはMckEの1つもしくは2つの直列に配置されたコピー、及びb)少なくとも1つのプロモーターがhAATであり、前記hAATが、開始コドンが修飾されており(ΔATG)、導入遺伝子に作動可能に連結された、少なくとも2つの直列に配置されたプロモーターを含む、複合核酸調節エレメントを含む組み換え発現カセット。
【請求項2】
TBGプロモーター、CK8プロモーター、Spc5.12プロモーター、Sp7/OsxプロモーターまたはminSp7/Osxプロモーターを含む、請求項1に記載の組み換え発現カセット。
【請求項3】
前記核酸調節エレメントが、表1のLTP1、LTP2、LTP3、LMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、LMTP20、LBTP1、またはLBTP2である、請求項1または2に記載の組み換え発現カセット。
【請求項4】
導入遺伝子に作動可能に連結されたLSPX1またはLSPX2を含む複合調節エレメントを含む、組み換え発現カセット。
【請求項5】
前記導入遺伝子が、表4A~4Dに記載の治療薬のいずれかをコードする遺伝子または核酸である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項6】
前記導入遺伝子が、治療用抗体、またはその抗原結合断片をコードする、請求項1~5のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項7】
前記複合核酸調節エレメントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号30、または配列番号31の核酸配列のセットを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の発現カセット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項9】
さらに、前記発現カセットの両側にAAVのITRを含む、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
前記カセットが、AAVカプシドにパッケージングするのに適する、請求項8または9に記載のベクター。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載のベクターであって、(1)前記発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)(a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号30、または配列番号31の核酸配列を含む複合核酸調節制御エレメント、b)ポリAシグナル、c)任意にイントロン、及びd)前記複合核酸調節エレメントが作動可能に連結される、1つ以上のRNAまたはタンパク質産物をコードする導入遺伝子を含む発現カセットを含む人工ゲノムを含む、前記ベクター。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか1項に記載のベクター、ならびにAAV1、AAV1、AAV2、rAAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、もしくはAAV.HSC16またはその派生物、修飾、もしくはシュードタイプから選択されるAAVカプシド血清型に由来するカプシドタンパク質を含むrAAV粒子。
【請求項13】
ウイルスベクターの送達を含む、導入遺伝子の発現を増強する方法であって、前記ウイルスベクターが、5’から3’の配置で、a)複数のMic/BiKエンハンサー配列、ApoEエンハンサー配列、またはMckエンハンサー配列、b)少なくとも1つの肝臓特異的プロモーター及び少なくとも1つの筋特異的プロモーターまたは少なくとも1つの骨特異的プロモーター、ただし、前記3’のプロモーターが、開始コドン修飾を含むもの、ならびにc)導入遺伝子を有する核酸発現カセットを含む、前記方法。
【請求項14】
前記核酸発現カセットが、LTP1、LTP2、LTP3、LMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、LMTP20、LBTP1、またはLBTP2の核酸調節エレメントを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルスベクターが、静脈内または筋内に投与される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
導入遺伝子の発現が、血液循環中でまたは全身的に増強される、請求項13~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記導入遺伝子の発現が、肝臓、骨格筋、心筋または骨において増強される、請求項13~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
請求項1~7のいずれか1項に記載の発現カセット、請求項8~11に記載のベクターまたは請求項12に記載のrAAVを含む、rAAVの送達による治療方法。
【請求項19】
疾患または障害の治療を必要とする対象におけるその治療方法であって、複数のMic/BiKエンハンサー配列、またはApoEエンハンサー配列、またはMckエンハンサー配列を、1つ以上の肝臓特異的プロモーターの上流に有する発現カセットを含む組み換えAAV粒子の投与を含む前記方法であり、少なくとも1つの肝臓特異的プロモーターが開始コドン修飾(ΔATG)を含み、導入遺伝子に作動可能に連結される、前記方法。
【請求項20】
前記発現カセットが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号30、または配列番号31に記載の核酸配列を含む、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記導入遺伝子が、表4A~4Dから選択される、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記導入遺伝子が、治療用抗体、またはその抗原結合断片をコードする、請求項13~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記rAAVが、静脈内または筋内に投与される、請求項13~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
以下を含む、組み換えAAVを生成する方法:
(a)以下を含む宿主細胞を培養すること:
(i)両側にAAVのITRが配置されたシス発現カセットを含む人工ゲノムであって、前記シス発現カセットが、a)Mic/BiKEの1つもしくは2つの直列に配置されたコピー、ApoEエンハンサーの1つもしくは2つの直列に配置されたコピー、またはMckEの1つもしくは2つの直列に配置されたコピー、及びb)少なくとも1つのプロモーターがhAATであり、前記hAATが、開始コドンが修飾されており(ΔATG)、1つ以上のRNAまたはタンパク質産物をコードする導入遺伝子に作動可能に連結された、少なくとも2つの直列に配置されたプロモーターを含む、複合核酸調節エレメントを含む、前記人工ゲノム、
(ii)AAVのITRを欠くトランス発現カセットであって、培養中の前記宿主細胞で、AAV rep及びAAVカプシドタンパク質の発現を駆動し、前記AAV rep及び前記AAVカプシドタンパク質をトランスに提供する発現制御エレメントに作動可能に連結された前記AAV rep及び前記AAVカプシドタンパク質をコードする、前記トランス発現カセット
(iii)前記人工ゲノムの複製及びパッケージングを前記AAVカプシドタンパク質により可能にする十分なアデノウイルスヘルパー機能、ならびに
(b)前記細胞培養から、前記人工ゲノムをカプシドで包んだ組み換えAAVを回収すること。
【請求項25】
前記複合核酸調節エレメントが、表1のLTP1、LTP2、LTP3、LMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、LMTP20、LBTP1、またはLBTP2である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
宿主細胞であって、(i)両側にAAVのITRが配置されたシス発現カセットを含む人工ゲノムであって、前記シス発現カセットが、a)Mic/BiKEの1つもしくは2つの直列に配置されたコピー、ApoEエンハンサーの1つもしくは2つの直列に配置されたコピー、またはMckEの1つもしくは2つの直列に配置されたコピー、及びb)少なくとも1つのプロモーターがhAATであり、前記hAATが、開始コドンが修飾されており(ΔATG)、1つ以上のRNAまたはタンパク質産物をコードする導入遺伝子に作動可能に連結された、少なくとも2つの直列に配置されたプロモーターを含む、複合核酸調節エレメントを含む、前記人工ゲノム、ならびに(ii)AAVのITRを欠くトランス発現カセットであって、培養中の前記宿主細胞で、AAV rep及びAAVカプシドタンパク質の発現を駆動し、前記AAV rep及び前記AAVカプシドタンパク質をトランスに提供する発現制御エレメントに作動可能に連結された前記AAV rep及び前記AAVカプシドタンパク質をコードする、前記トランス発現カセットを含む、前記宿主細胞。
【請求項27】
前記複合核酸調節エレメントが、表1のLTP1、LTP2、LTP3、LMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、LMTP20、LBTP1、またはLBTP2である、請求項26に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、遺伝子発現を増強するように操作された核酸調節エレメント、該調節エレメントの使用方法、及びそれらの使用に関する。標的細胞に送達される導入遺伝子の上流で操作された調節エレメントを使用することにより、所望の特性が付与され、場合によっては、遺伝子治療に望ましい特性が付与される。特に、本発明は、調節エレメントが特定の細胞において導入遺伝子の発現を駆動するように、発現カセットに挿入された異種遺伝子(導入遺伝子)に作動可能に連結された核酸調節エレメントを提供する。従って、本発明はまた、組織を標的とする方法を提供し、特に、該操作された調節エレメントを含む発現カセットは、肝臓及び/または心臓組織を含めた筋肉、または肝臓及び/または骨の組織において、導入遺伝子の発現を改善するとともに、様々な障害の治療のための治療薬を全身的に送達する。さらに、本発明は、直列型エンハンサー/プロモーターエレメントを操作する、ならびに特に肝臓細胞及び/または筋細胞内で導入遺伝子を発現する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景
遺伝子発現を駆動するための調節エレメントの使用は、非常に複雑である。天然に存在する及び合成の両調節エレメント、例えば、エンハンサー及びプロモーターが、当技術分野で報告されている。異種遺伝子の発現用に操作された複数のエレメントが、個々の異常な、不安定な及び/または競合する転写物を所与の組織環境で産生するかどうかは分かっていない。
【0003】
生産性が高くかつ安定な遺伝子発現ベクターは、遺伝子治療に適し得る。AAVまたは他のウイルスベクターによって送達される導入遺伝子は、長期の遺伝子発現を提供することを目的とし、ひいては、バイオ医薬的導入遺伝子の全身発現レベルまたは血清半減期を増加させ得る。従って、遺伝子治療のための改善された遺伝子発現系は、バイオ医薬品の、例えば、酵素補充療法での直接注入と比較して、患者にとって大いに有益であろう。ゲノムDNAを運ぶAAVカプシドタンパク質は、標的細胞にDNAを送達するための特定の組織指向性を付与することができるが、その低い免疫原性のため、肝臓の目的の遺伝子をより大量に発現させることが望ましい(Pastore,et al.Human Gene Therapy Vol.10,No.11,July 1999、印刷前のオンライン版)。
【0004】
従って、バイオ医薬品の肝臓及び心筋を含めた筋肉、または肝臓及び骨での発現が、該タンパク質の血清濃度及び全身送達を高めるために望ましいであろう。肝臓、骨、心筋及び/または骨格筋で生産性の高い組織標的化遺伝子発現及びベクターが依然として必要である。
【発明の概要】
【0005】
3.発明の概要
提供するのは、肝臓において、及び、ある特定の実施形態では、骨格筋を含み、実施形態では、心(heart)もしくは心(cardiac)筋も含み得る筋肉においても、または骨組織において、遺伝子発現を増強または指示するための複合核酸調節エレメントを含む組み換え発現カセットであり、これは、導入遺伝子に作動可能に連結された少なくとも2つのエンハンサー及び少なくとも2つのプロモーター、特に、表1に記載のものを含む。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、直列に配置された2つのプロモーターを含み、その下流または3’のプロモーターは、開始コドンが修飾される(例えば、開始コドンが削除される(ΔATG))。
【0006】
提供するのは、直列に配置された2つのプロモーターを含む複合核酸調節エレメントを含む組み換え発現カセットであり、該プロモーターの一方は、hAATプロモーターであり、ある特定の実施形態では、該hAATプロモーターは、該配置内では下流プロモーターであり、開始コドンが修飾され(開始コドンが削除される、すなわち、ΔATG)、該複合核酸調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、直列に配置された2つのプロモーターを含み、該プロモーターの一方は、TBGであり、実施形態では、該TBGプロモーターは、下流プロモーターであり、開始コドンが修飾され(ΔATG)、該核酸調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結される。ある特定の実施形態では、第二のプロモーターは、hAATプロモーター、TBGプロモーター、CK8プロモーター、Spc5.12プロモーター、minSpc5.12プロモーター、Sp7/OsxプロモーターまたはminSp7/Osxである。該複合核酸調節エレメントは、さらに、1つ以上のエンハンサーエレメントを含み、これらとしては、ApoEエンハンサーの1つまたは2つのコピー(直列に配置された2つのコピーを含む)、Mic/Bikeの1つまたは2つのコピー(直列に配置された2つのコピーを含む)、MckEの1つまたは2つのコピー(直列に配置された2つのコピーを含む)、または直列に配置されたMhcE及びMckEのコピーが挙げられる。
【0007】
いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、a)2つの直列型のMic/BiKEのコピー、2つの直列型のApoEエンハンサーのコピー、2つもしくは3つの直列型のMckEのコピー、または直列型の1つのMhcEのコピーと1つのMckEのコピー、b)1つのプロモーターまたは、一実施形態では、直列に配置され、少なくとも1つのプロモーターがhAATプロモーターであり(実施形態では、3’プロモーター)、これが、任意に、開始コドンが修飾または削除されている(ΔATG)、2つのプロモーターを含み、該複合核酸調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、表1のLSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、またはLTP3を含み、該複合核酸調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、表1のLMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、またはLMTP20を含み、該複合核酸調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、表1のLBTP1またはLBTP2を含み、該複合核酸調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結される。該導入遺伝子は、表4A~4Dに記載されるがこれらに限定されない治療用タンパク質をコードする遺伝子または核酸のいずれか1つであり得る。ある特定の実施形態では、該導入遺伝子は、完全長重鎖及び軽鎖を有するか、または抗原結合断片、例えば、Fab断片を有する治療用抗体をコードする。
【0008】
提供するのは、肝臓における遺伝子発現を増強及び/または指示するための複合核酸調節エレメントであり、これは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号30、または配列番号31の核酸配列を含む。
【0009】
同様に提供するのは、複数の(例えば、2、3、または4つの)Mic/BiKエンハンサー配列、Mckエンハンサー配列、もしくはMhcE配列または1つ以上のApoE(1、2または3つのApoE配列)を、複数の組織特異的プロモーターの上流(すなわち、5’)に含み、任意に、その下流の組織特異的プロモーター(すなわち、導入遺伝子に最も近い組織特異的プロモーター)を含むが、第一の組織特異的プロモーター(すなわち、最も5’側の組織特異的プロモーター)は、開始コドンが修飾(ΔATG)されていない発現カセットを含むベクターである。いくつかの実施形態では、該発現カセットは、標的組織において、導入遺伝子、例えば、治療用抗体、例えば、完全長抗体または抗原結合断片、例えば、Fab断片を含めた表4A~4Dに記載されるがこれらに限定されない導入遺伝子の発現を指示する。いくつかの実施形態では、該ベクターは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号30、または配列番号31の核酸配列を含むまたはそれからなる複合核酸調節エレメントに作動可能に連結された導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、該ベクターは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号30、または配列番号31の核酸配列を含むまたはそれからなる複合核酸調節エレメントに作動可能に連結された導入遺伝子を含み、該導入遺伝子は、対象に投与された後、肝臓で発現される。いくつかの実施形態では、該ベクターは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号5の核酸配列を含むまたはそれからなる複合核酸調節エレメントに作動可能に連結された導入遺伝子を含み、該導入遺伝子は、対象に投与された後、肝臓で、筋肉におけるよりも多量に発現される(例えば、ウイルスゲノムあたりの検出タンパク質が多い)。いくつかの実施形態では、該ベクターは、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、または配列番号26の核酸配列を含むまたはそれからなる複合核酸調節エレメントに作動可能に連結された導入遺伝子を含み、該導入遺伝子は、対象に投与された後、肝臓ならびに、骨格筋及び、実施形態では、心筋も含む筋肉の両方で発現される。いくつかの実施形態では、該ベクターは、配列番号30または配列番号31の核酸配列を含むまたはそれからなる複合核酸調節エレメントに作動可能に連結された導入遺伝子を含み、該導入遺伝子は、対象に投与された後、肝臓及び骨の両方で発現される。
【0010】
同様に提供するのは、導入遺伝子の発現を増強する方法であり、ウイルスベクターの送達を含み、該ウイルスベクターは、5’から3’の配置で、a)Mic/BiKエンハンサー配列、ApoEエンハンサー配列、Mckエンハンサー配列、またはMhcエンハンサー配列から選択される、複数の、例えば、2つまたは3つの配列、b)1つ以上の、例えば、2つの肝臓特異的プロモーター、ただし、少なくとも1つの肝臓特異的プロモーター、例えば、1つの肝臓特異的プロモーターが、開始コドン修飾を含むもの、及びc)導入遺伝子を含む核酸発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、提供するのは、rAAV配列を含む本明細書に記載の操作された発現カセットを組み込んだウイルスベクターである。
【0011】
同様に提供するのは、導入遺伝子の発現を増強する方法であり、ウイルスベクターの送達を含み、該ウイルスベクターは、5’から3’の配置で、a)1つ以上の、例えば、2つまたは3つのApoEエンハンサー、b)1つ以上の、例えば、2つの骨特異的プロモーター、例えば、Sp7またはSp7/Osxプロモーター、c)1つ以上の、例えば、2つの肝臓特異的プロモーター、任意に、少なくとも1つの肝臓特異的プロモーター、例えば、1つの肝臓特異的プロモーターが、開始コドン修飾を含むもの、及びd)導入遺伝子を含む核酸発現カセットを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、提供するのは、rAAVを含む本明細書に記載の操作された発現カセットを組み込んだウイルスベクターである。
【0013】
別の態様では、本明細書に記載の核酸発現カセットを含むrAAVの送達による治療方法も提供する。少なくとも1つの肝臓特異的プロモーターが開始コドン修飾を含む、1つ以上の、例えば、2つの肝臓特異的プロモーターの上流に、複数の、例えば、2つもしくは3つのMic/BiKエンハンサー配列、またはApoEエンハンサー配列、またはMckエンハンサー配列を有し、かつ導入遺伝子を有する発現カセットを含む組み換えAAV粒子を投与することを含む、疾患または障害の治療を必要とする対象におけるその治療方法を提供する。同様に提供するのは、1つ以上のApoEエンハンサー配列、1つ以上の骨特異的プロモーター、例えば、Sp7またはSp7/Osxプロモーター、少なくとも1つの肝臓特異的プロモーターが開始コドン修飾を含む、1つ以上の肝臓特異的プロモーター、及び導入遺伝子を有する発現カセットを含む組み換えAAV粒子を投与することを含む、疾患または障害の治療を必要とする対象におけるその治療方法である。
【0014】
同様に提供するのは、導入遺伝子に作動可能に連結された本明細書に記載の複合核酸調節エレメントを含む、AAVによる発現カセットを含む組み換えAAVベクターを生成する方法である。該方法は、両側にAAVのITRが配置された人工ゲノムを含み、かつ該導入遺伝子に作動可能に連結された核酸調節エレメント、ならびに培養中の宿主細胞で、AAV rep及びAAVカプシドタンパク質の発現を駆動し、AAV rep及びAAVカプシドタンパク質をトランスに提供する発現制御エレメントに作動可能に連結されたAAV rep及びAAVカプシドタンパク質をコードする、AAVのITRを欠くトランス発現カセット、ならびに該人工ゲノムの複製及びパッケージングを該AAVカプシドタンパク質により可能にする十分なアデノウイルスヘルパー機能を含む該宿主細胞を培養すること、ならびに、該細胞培養から、該人工ゲノムをカプシドで包んだ組み換えAAVを回収することによる。本明細書に記載の組み換えAAVを生成するための宿主細胞もまた提供する。
【0015】
本発明を、以下に、筋(骨格筋及び/または心筋)特異的または骨特異的エンハンサー及びプロモーターを含むまたは含まず、下流のエレメントがそれらの翻訳開始部位で修飾されている、直列型のいくつかの肝臓特異的エンハンサー及びプロモーターに基づいて設計された複合調節エレメントで操作された遺伝子カセットの構造及び機能を記載する例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
4.図面の簡単な説明
【
図1】組み換え核酸調節エレメント、特に、発現カセットで用いるためのプロモーター及びエンハンサー配列の構造を示す。
【
図2】肝臓細胞におけるGFP発現の指標としての相対蛍光を示す。LSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、及びLTP3プロモーターを有する構築物のすべてが肝臓特異性を維持している。
【
図3】筋細胞におけるGFP発現の指標としての相対蛍光を示す。二重特異性構築物LMTP6は、筋特異性を維持しているが、LSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、及びLTP3プロモーターは、筋細胞での発現を促進するとは思われない。
【
図4】
図1のプロモーターによって肝臓細胞で駆動されるGFP発現を示す。
【
図5】組み換え核酸調節エレメント、特に、二重特異性プロモーターLMTP6の構造を示す。
【
図6】肝臓細胞におけるGFP発現の指標としての相対蛍光を示す。二重特異性構築物LMTP6は、肝臓特異性を維持しているが、CK8対照プロモーターはサイレントである。
【
図7】LMTP6プロモーターによって肝臓細胞で駆動されるGFP発現の様々な指標を示す。
【
図8】A及びBは、組み換え核酸調節エレメント、特に、発現カセットで用いるためのプロモーター及びエンハンサー配列、特に、肝臓/筋肉(A)及び肝臓/骨(B)の二重特異性調節エレメントの構造を示す。
【
図9】A及びBは、筋細胞由来の細胞株であるC2C12において、異なる調節エレメントによって駆動されるGFP発現を示す。(A)3種の肝臓/筋二重特異性調節エレメント(LMTP13、LMTP14、及びLMPT15)のeGFP強度としての活性を、筋特異的プロモーターSpc5.12及びminSpc5.12と比較して示す。肝臓特異的プロモーターhAAT及び陰性対照も示されている。(B)4種の肝臓/筋二重特異性調節エレメント(LMTP6、LMTP18、LMTP19、及びLMPT20)の活性(GFPの発現レベル)を、筋特異的プロモーターCK8及び肝臓特異的プロモーターhAATと比較して示す。
【
図10】抗血漿カリクレイン抗体(pKal、本明細書では「Mab1」と呼ばれる)のC2C12筋細胞における発現を、異なる調節エレメント、すなわち、CAG、LMTP6、及びhAATの制御下、該モノクローナル抗体を発現する異なるシスプラスミドで該細胞を形質導入した後に示す。抗体タンパク質を検出するために、形質導入後、これらの細胞をFITCコンジュゲート抗Fc(IgG)抗体で処理した。調べたすべての条件下での細胞のコンフルエンシー及び生存率を確認するためにDAPI染色が示されている。
【
図11A】C/57BL6マウスに、異なる肝臓特異的、肝臓直列及び肝臓・筋調節エレメント(表1参照)によって調節されるpKal抗体(Mab1)をコードするAAV8ベクターを2.5x10
12vg/kg静脈内注射した際のMab1の血清発現レベル(μg/ml)。CAG(配列番号17)及びTBG(配列番号10)プロモーターを対照として使用した。注射の1、3、5及び7週後の採血からのデータを示す。LSPX1、肝臓特異的プロモーター1(配列番号1)、LSXP2、肝臓特異的プロモーター2(配列番号2)、LTP1、肝臓特異的直列型プロモーター1(配列番号3)、LMTP6、肝臓と筋肉の二重特異性直列型プロモーター6(配列番号6)。タンパク質発現レベルは、2週間に一度の血清採取からELISAによって定量化した。ベクターあたりのマウスN=5。x軸の数字は、ベクター投与後の週数を表す。データは平均+SEMを表す。
【
図11B】肝臓におけるウイルスゲノムの定量化。C57Bl/6マウスに、異なる肝臓特異的、肝臓直列及び肝臓・筋調節エレメント(表1参照、CAG(配列番号17)及びTBG(配列番号10)プロモーターを対照として使用した)によって駆動されるAAV8ベクターを等用量(2.5x10
12vg/kg)静脈内投与した。1群あたりのマウスN=5。ベクターDNAを、ベクター投与の49日後に採取されたマウス肝臓サンプルにて、ddPCRで分析した。データは平均+SEMを表す。
【
図12】Aは、C/57BL6マウスの抗血漿カリクレイン(pKal)抗体(Mab1)の血清発現レベル(μg/ml)を、異なる調節エレメント、すなわち、CAG、LMTP6、及びhAATの制御下、Mab1をコードするAAV8ベクター2.5E12gc/kgを静脈内注射した後に示す。CAGプロモーターを対照として使用した。注射の7、21、及び35日後の採血からのデータを示す。Bは、異なる調節エレメント、すなわち、CAG、LMTP6、及びhAATの制御下、Mab1をコードするAAV8ベクター2.5E12gc/kgをC/57BL6マウスに静脈内注射した後の肝臓及び心臓の導入遺伝子の発現を示す。定量化は、抗pKal mRNAコピーのddPCR分析で行い、全組織でGAPDHに正規化した。
【
図13A】マウスへのAAV8送達後の血清抗カリクレイン(pKal)抗体(Mab1)濃度。該pKal抗体発現は、CAG、hAATまたはLMTP6プロモーターに制御されている。動物は、5x10
10vg/kgの両側注射をGA筋に受けた。血清を2週間に一度採取し、pKal抗体濃度をELISAで定量化した。
【
図13B】デジタル液滴PCR(ddPCR)によるGA筋、肝臓及び心臓組織からのベクターゲノムの定量化。
【
図13C】肝臓からのpKal抗体発現のmRNAとしての比較。データは、ΔΔCT法によって定量化した相対的な遺伝子発現倍数(mRNAレベル)を表す。
【
図13D】デジタル液滴PCR(ddPCR)を使用したGA筋、肝臓及び心臓組織からのAAV導入遺伝子発現の比較。抗pKal抗体のmRNAコピーを、全組織でGAPDHのmRNAコピーに正規化した。データは、平均±SEMとして表す。統計的有意性は、一元配置分散分析とそれに続くTukeyHSD事後検定を使用して決定した。*P<0.05、**P<0.01。
【
図14】表示されているプロモーターを含む異なる構築物でHuh-7細胞(肝細胞)を形質導入した後に分泌されたリソソーム酵素のタンパク質前駆体の発現レベルを示す。V1、導入遺伝子配列をコドン最適化した。V2、導入遺伝子配列をコドン最適化し、CpGを枯渇させた。
【
図15】usegalaxy.orgによるオープンソースのデータ分析ツールを介した配列データの処理及び分析ならびに標準的な計算及びデータ分類ツールを使用したそれらの開始位置によるリードの最終的な集計のフローチャートを示す。
【
図16A】プロモーター構築物ならびにRACE及びNGSによって特定される肝臓細胞での翻訳開始部位を示す。
【
図16B】プロモーター構築物ならびにRACE及びNGSによって特定される筋細胞での翻訳開始部位を示す。
【
図16C】プロモーター構築物ならびにRACE及びNGSによって特定される筋細胞での翻訳開始部位を示す。
【
図16D】プロモーター構築物ならびにRACE及びNGSによって特定される肝臓細胞での翻訳開始部位を示す。
【
図16E】プロモーター構築物ならびにRACE及びNGSによって特定される筋細胞での翻訳開始部位を示す。
【
図16F】プロモーター構築物ならびにRACE及びNGSによって特定される肝臓細胞での翻訳開始部位を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
5.詳細な説明
本発明者らは、一つには、組織特異性を維持または付与しながら、導入遺伝子発現を改善するのに適した発現カセットにおけるプロモーター配列とエンハンサー配列の独自の組み合わせを提供している。提供するのは、治療で用いるためのrAAVを含む本明細書に記載の操作された発現カセットを組み込んだベクター、例えば、ウイルスベクター、ならびにそれを生成するための方法及び宿主細胞である。新規な調節エレメント核酸を、潜在的な「ATG」開始部位の3’プロモーター配列を枯渇させることにより、直列型プロモーター(すなわち、同じ導入遺伝子の発現を駆動する2つのプロモーター配列)からの導入遺伝子発現を改善する新たな方法によって生成した。このアプローチを、直列型組織特異的プロモーターカセット(例えば、肝臓を標的とするもの)ならびに少なくとも2つの別々の組織集団(例えば、肝臓ならびに骨格筋及び/または心筋、または肝臓及び骨)で二重発現を達成するためのプロモーターカセットからの導入遺伝子発現を改善するために採用した。最終的に、これらの設計は、より堅牢なレベルの導入遺伝子発現、安定性/持続性の改善、及び導入遺伝子産物に対する免疫寛容の誘導を提供することによって、遺伝子導入の治療効果を改善する可能性がある。
【0018】
5.1.定義
「調節エレメント」または「核酸調節エレメント」という用語は、隣接する遺伝子の転写を制御する非コード核酸配列である。シス調節エレメントは、通常、転写因子に結合することによって、遺伝子転写を調節する。これには、本明細書に記載の複数のエンハンサーまたはプロモーターエレメントを含む「複合核酸調節エレメント」が含まれる。
【0019】
「発現カセット」または「核酸発現カセット」という用語は、プロモーター、エンハンサー及び/または調節エレメント、イントロン及びポリアデニル化配列が挙げられるがこれらに限定されない、1つ以上の転写制御エレメントを含む核酸分子を指す。該エンハンサー及びプロモーターは、通常、1つ以上の所望の細胞型、組織または器官において(導入)遺伝子発現を指示するように機能する。
【0020】
「作動可能に連結された」及び「~に作動可能に連結された」という用語は、連結されている、通常は隣接しているか、または実質的に隣接している核酸配列であり、必要に応じて、隣接した、リーディングフレーム内にある2つのタンパク質コード領域をつなぐ該核酸配列を指す。しかしながら、エンハンサーは一般に、プロモーターから数キロベース隔てられた場合に機能し、イントロン配列は可変長のものであり得るため、いくつかのポリヌクレオチドエレメントは、作動可能に連結され、下流のプロモーター及び導入遺伝子と直接隣接していなくてもなお機能し得る。
【0021】
「AAV」または「アデノ随伴ウイルス」という用語は、Parvoviridae属ウイルス内のDependoparvovirusを指す。AAVは、天然に存在する「野生型」ウイルスに由来するAAVであっても、天然に存在するcap遺伝子によってコードされるカプシドタンパク質を含むカプシドにパッケージングされたrAAVゲノムに由来する及び/または天然に存在しないカプシドcap遺伝子によってコードされるカプシドタンパク質を含むカプシドにパッケージングされたrAAVゲノムに由来するAAVであってもよい。後者の例としては、天然に存在するカプシドのアミノ酸配列内にペプチド挿入物または該アミノ酸配列の修飾を含むカプシドタンパク質を有するrAAVが挙げられる。
【0022】
「rAAV」という用語は、「組み換えAAV」を指す。いくつかの実施形態では、組み換えAAVは、rep及びcap遺伝子の一部またはすべてが異種配列で置き換えられたAAVゲノムを有する。
【0023】
「rep-capヘルパープラスミド」という用語は、ウイルスのrep遺伝子及びcap遺伝子機能を提供し、機能的rep遺伝子及び/またはcap遺伝子配列を欠くrAAVゲノムからのAAVの生成を補助するプラスミドを指す。
【0024】
「cap遺伝子」という用語は、ウイルスのカプシド被覆を形成するまたは形成するのを補助するカプシドタンパク質をコードする核酸配列を指す。AAVの場合、カプシドタンパク質は、VP1、VP2、またはVP3であり得る。
【0025】
「rep遺伝子」という用語は、ウイルスの複製及び生成に必要な非構造タンパク質をコードする核酸配列を指す。
【0026】
「核酸」及び「ヌクレオチド配列」という用語には、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、DNA分子とRNA分子の組み合わせまたはハイブリッドDNA/RNA分子、及びDNA分子またはRNA分子のアナログが含まれる。かかるアナログは、例えば、イノシンまたはトリチル化塩基が挙げられるがこれらに限定されないヌクレオチドアナログを使用して生成され得る。かかるアナログはまた、例えば、ヌクレアーゼ耐性または細胞膜を通過する能力の向上等の分子に有益な属性を与える修飾骨格を含むDNA分子またはRNA分子を含み得る。該核酸またはヌクレオチド配列は、一本鎖の場合も二本鎖の場合もあり、一本鎖部分及び二本鎖部分の両方を含んでもよく、三本鎖部分を含んでもよいが、好ましくは、二本鎖DNAである。
【0027】
「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、同義で使用される。本明細書で使用される、対象は、好ましくは、哺乳類、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット等)または霊長類(例えば、サル及びヒト)、最も好ましくは、ヒトである。
【0028】
「治療薬」または「バイオ医薬品」という用語は、疾患または障害に関連する症状を治療、管理、または改善する際に使用され得る任意の薬剤を指し、該疾患または障害は、導入遺伝子によって提供される機能に関連する。本明細書で使用される、「治療有効量」とは、標的疾患または障害の治療または管理において、それに罹患している対象に投与された場合に少なくとも1つの治療効果を提供する薬剤の量(例えば、導入遺伝子によって発現される生成物の量)を指す。さらに、本発明の薬剤に関する治療有効量は、単独での、または他の治療と組み合わせた場合の薬剤の量が、疾患または障害の治療または管理において少なくとも1つの治療効果を提供することを意味する。
【0029】
「肝臓特異的」または「肝臓指向性」という表現は、核酸エレメントと肝細胞の細胞内環境との相互作用に起因する肝臓(肝)細胞または組織でのそれらの活性を適応させたかかる核酸エレメントを指す。肝臓は、肝臓組織に送達される遺伝子治療及び肝臓での発現が増強した遺伝子カセットがバイオ医薬品(翻訳されたタンパク質)を産生し、これが血液循環に分泌されるという観点から、体内の生物反応器または「貯蔵所」として機能する。従って、バイオ医薬品は、肝臓発現によって、全身的に対象に送達される。いかなる理論にも拘束されるものではないが、バイオ医薬品の肝臓産生(例えば、送達された導入遺伝子によって産生される)は、当該薬剤に免疫寛容を与えることができ、該タンパク質を産生する当該対象の内因性T細胞は、該タンパク質を自己タンパク質として認識し、自然免疫応答を誘発しない。
【0030】
「骨特異的」または「骨指向性」という表現は、核酸エレメントと骨細胞の細胞内環境との相互作用に起因する様々な細胞型及びコラーゲン性細胞外有機マトリックスを含めた骨細胞(例えば、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞及び骨ライニング細胞)または組織でのそれらの活性を適応させたかかる核酸エレメントを指す。導入遺伝子産物の骨、筋肉及び/または血流への分泌は、様々な経路のrAAV投与、例えば、静脈内または筋内投与後に、骨特異的プロモーターが存在する骨での発現に起因して増強され得る。様々な治療薬が、導入遺伝子の骨特異的発現、または導入遺伝子の骨特異的及び肝臓特異的の両発現から恩恵を受ける。バイオ医薬品の骨産生(例えば、送達された導入遺伝子によって産生される)は、等量のタンパク質薬剤を当該宿主に直接注射した場合と比較して、該宿主に当該薬剤に対する免疫寛容の増加もまたもたらし得る。
【0031】
「筋特異的」または「筋指向性」という表現は、核酸エレメントと筋細胞の細胞内環境との相互作用に起因する筋細胞または組織でのそれらの活性を適応させたかかる核酸エレメントを指す。筋細胞は、骨格筋及び心筋を含む。導入遺伝子産物の筋肉、及び/または血流への分泌はまた、様々な経路の投与、例えば、静脈内または筋内投与後に、筋特異的プロモーターが存在する筋内発現に起因して増強され得る。様々な治療薬が、導入遺伝子の筋特異的発現、または導入遺伝子の筋特異的及び肝臓特異的の両発現から恩恵を受ける。バイオ医薬品の筋産生(例えば、送達された導入遺伝子によって産生される)は、等量のタンパク質薬剤を当該宿主に直接注射した場合と比較して、該宿主に当該薬剤に対する免疫寛容の増加もまたもたらし得る。
【0032】
5.2.調節エレメント
1つの態様は、発現カセットにおいて直列型のエレメントの配置に関してキメラである核酸調節エレメントに関する。調節エレメントは、一般に、転写の開始または調節、シグナル伝達時に発現を駆動するための細胞特異的機構との連携、及び下流の遺伝子の発現を増強するための認識部位として、複数の機能を有する。
【0033】
提供するのは、肝臓及び筋(骨格筋及び/または心筋)組織または肝臓及び骨組織で導入遺伝子の発現を促進する核酸調節エレメントの組み合わせの配置である。特に、ある特定のエレメントは、直列に配置された個々のエンハンサー及びプロモーターエレメントの2つ以上のコピーで配置され、導入遺伝子に作動可能に連結され、発現、特に組織特異的発現を促進する。個々のプロモーター及びエンハンサーエレメントの例示的な核酸配列を表1に提供する。表1に同様に提供するのは、該個々の直列型プロモーター及びエンハンサーエレメントを含む例示的な複合核酸調節エレメントである。ある特定の実施形態では、下流のプロモーターは、hAATプロモーターであり(ある特定の実施形態では、該hAATプロモーターは、hAAT(ΔATG)プロモーターである)、他のプロモーターは、別のhAATプロモーターであるか、またはTBGプロモーターである)。
【0034】
従って、肝臓及び筋特異的発現に関して、提供するのは、プロモーター及び/または他の核酸エレメント、例えば、肝臓発現を促進するエンハンサー、例えば、ApoEエンハンサー、Mic/BiKEエレメントまたはhAATプロモーターを含むまたはそれらからなる核酸調節エレメントである。これらは、単一のコピーとして、または2つ以上のコピーとして直列に含まれ得る。核酸調節エレメントはまた、該肝臓特異的発現を促進する1つ以上のエレメントに加えて、筋特異的発現(骨格筋及び/または心筋を含む)を促進する1つ以上のエレメント、例えば、MckEエレメントの1つ以上のコピー、例えば、2つのコピーを含んでもよく、これは、直列型の2つ以上のコピーとして配置してもよく、MckEエレメントとMhcEエレメントを直列に配置してもよい。ある特定の実施形態では、あるプロモーターエレメントは、その開始部位を削除され、その部位での翻訳開始が阻止される。好ましくは、該開始コドン修飾を有するエレメントが、該核酸調節エレメントの3’末端または下流末端の、例えば、発現カセットの核酸配列内で導入遺伝子に最も近いエレメントであるプロモーターである。ある特定の実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、hAATプロモーター、実施形態では、下流プロモーターとして開始コドンが修飾された(ΔATG)hAAT、及びhAATプロモーター、CK8プロモーター、Spc5.12プロモーターまたはminSpc5.12プロモーターである第二のプロモーターを該hAATプロモーターと直列に含む。
【0035】
本明細書に提供する組み換え発現カセットは、i)a)直列に配置されたMic/BiKEの2つのコピーまたは直列に配置されたApoEの2つのコピーまたはApoEの1つのコピーと直列に配置されたMic/BiKEの2つのコピー、b)1つのプロモーターまたは、直列型プロモーターの実施形態では、直列に配置され、開始コドンが修飾された(ΔATG)hAATの少なくとも1つのコピーを含む2つのプロモーター(ある特定の実施形態では、該hAATプロモーターが下流または3’プロモーターである)を含む複合核酸調節エレメント、及びii)該複合核酸調節エレメントが作動可能に連結される導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、表1のLSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、またはLTP3を含む。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結される。該導入遺伝子は、表4A~4Dに記載されるがこれらに限定されない治療用タンパク質をコードする遺伝子または核酸のいずれか1つであり得る。該導入遺伝子はまた、完全長抗体または抗原結合断片、例えば、Fab断片を含めた治療用抗体もコードし得る。
【0036】
本明細書に提供する組み換え発現カセットは、i)a)ApoEの1つのコピー、直列に配置されたMckEの2つもしくは3つのコピー、直列に配置されたMckE、MhcE、及びApoEの各々1つのコピー、または直列に配置されたMckEの2つもしくは3つのコピーとApoEの1つのコピー、b)開始コドンが修飾された(ΔATG)hAATの少なくとも1つのコピーを含む直列に配置されたプロモーターの2つのコピーを含む核酸調節エレメント、及びii)導入遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、第二のかつ上流のプロモーターは、CK8プロモーター、Spc5.12プロモーターまたはminSpc5.12プロモーターである。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、表1のLMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、またはLMTP20を含む。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結される。該導入遺伝子は、表4A~4Dに記載されるがこれらに限定されない治療用タンパク質をコードする遺伝子または核酸のいずれか1つであり得る。ある特定の実施形態では、該導入遺伝子は、完全長抗体またはその抗原結合断片、例えば、Fab断片を含めた治療用抗体である。
【0037】
提供するのは、肝臓における遺伝子発現を増強するための複合核酸調節エレメントであり、これは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号30、または配列番号31の核酸配列を含む。同様に含まれるのは、肝臓、及びある特定の実施形態では、同様に筋肉または骨における遺伝子発現を増強する複合調節エレメントであり、これは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号30、または配列番号31の核酸配列のうちの1つと、99%、95%、90%、85%または80%の配列同一性を有する。
【0038】
従って、肝臓及び骨特異的発現に関して、提供するのは、プロモーター及び/または他の核酸エレメント、例えば、肝臓発現を促進するエンハンサー、例えば、ApoEエンハンサー、Mic/BiKEエレメントまたはhAATプロモーターを含むまたはそれらからなる複合核酸調節エレメントである。これらは、単一のコピーとして、または2つ以上のコピーとして直列に含まれ得る。該核酸調節エレメントはまた、該肝臓特異的発現を促進する1つ以上のエレメントに加えて、骨特異的発現を促進する1つ以上のエレメント、例えば、Sp7/OsxまたはminSp7/Osxエレメントの1つ以上のコピーを含んでもよく、これは、直列型の2つ以上のコピーとして配置されてもよい。ある特定の実施形態では、あるプロモーターエレメントは、その開始コドンを削除され、好ましくは、該開始コドン修飾を有するエレメントが、該核酸調節エレメントの3’の、例えば、導入遺伝子に最も近いエレメントであるプロモーターである。
【0039】
本明細書に提供する組み換え発現カセットは、i)a)ApoEの1つのコピーまたは直列に配置されたApoEの2つのコピー、b)Sp/OsxまたはminSp7/Osxの1つのまたは直列に配置された2つのコピー、c)開始コドンが修飾された(ΔATG)hAATの少なくとも1つのコピーを含む、hAATプロモーターの1つのまたは直列に配置された2つのコピーを含む複合核酸調節エレメント、ii)該複合調節エレメントが作動可能に連結される導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、該核酸調節エレメントは、表1のLBTP1またはLBTP2(配列番号30または31)を含む。いくつかの実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結される。該導入遺伝子は、表4A~4Dに記載されるがこれらに限定されない治療用タンパク質をコードする遺伝子または核酸のいずれか1つであり得る。ある特定の実施形態では、該導入遺伝子は、完全長抗体またはその抗原結合断片、例えば、Fab断片を含めた治療用抗体である。
【0040】
本明細書に記載の直列型の複合プロモーターは、該プロモーター領域内に好ましい転写開始部位をもたらす。例えば、実施例10の結果及び表14を参照されたい。従って、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、直列型または複合核酸調節配列を有し、これは、hAATプロモーター(特に、開始コドン修飾hAATプロモーター)を含み、hAATに見られる活性TTS(配列番号11または配列番号12のnt355~359)と重複する転写開始部位TCTCC(配列番号43)(LMTP6配列番号6のnt1541~1545に相当)、または配列番号11のヌクレオチド139~157に相当するGGTACAATGACTCCTTTCG(配列番号41)、または配列番号12のヌクレオチド139~157に相当するGGTACAGTGACTCCTTTCG(配列番号42)を有する。他の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、直列型または複合調節配列を有し、これは、CK8プロモーターを含み、配列番号16のヌクレオチド377~386に相当するTCATTCTACC(配列番号46)に転写開始部位を有し、特に、配列番号16のヌクレオチド377に相当するヌクレオチドまたは配列番号6のヌクレオチド1133に相当するヌクレオチドから開始する。
【0041】
本発明の態様では、様々な調節エレメント及びエレメントの組み合わせを使用して、核酸発現カセットを設計及び生成した。これらを表1に記載する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【0042】
5.2.1.エンハンサー
本発明者らは、驚くべきことに、複数のエンハンサーが、直列配置に適していると同時に、1つ以上のプロモーターに作動可能に連結されることを発見した。これらのエンハンサーは、直列に配置され、プロモーター及び導入遺伝子に作動可能に連結された場合に、該導入遺伝子の組織特異的発現を促進する。
【0043】
従って、提供するのは、ApoEエンハンサー、特に、配列番号9のApoEエンハンサーを含むApoEの肝制御領域である。
【0044】
従って、提供するのは、単一のコピーまたは直列に配置された2つのコピーのいずれかとしてのアルファ-1ミクログロブリン/ビクニン(アルファ-Mic/Bik)エンハンサー(それぞれ、表1の配列番号7及び8)である。アルファ-Mic/Bikのエンハンサー活性は、肝臓細胞に限定されることが分かった(Rouet,P.et al.1992 J Biol Chem.Oct 15;267(29):20765-73)。
【0045】
従って、提供するのは、マウスの筋クレアチンキナーゼ遺伝子に由来する単一のコピー、または直列に配置された2つもしくは3つのコピーとしての筋特異的エンハンサー(MckE)核酸エレメント(それぞれ、表1の配列番号13、14及び15)である(Jaynes,J.B.,Johnson,J.E.,Buskin,J.N.,Gartside,C.L.,and Hauschka,S.D.The muscle creatine kinase gene is regulated by multiple upstream elements,including the muscle-specific enhancer.Mol.Cell.Biol.,8:62-70,1988、及びGenBank Accn.番号AF188002.1)。この領域からの206bpの断片は、骨格筋エンハンサーとして機能し、心筋細胞に方向依存性の活動を与える。この配列の110bpのエンハンサーサブ断片は、骨格筋細胞では高レベルの発現をもたらすが、心筋細胞では不活性である(Amacher,et al.1993 Molecular and Cellular Biology 13(5):2753-64)。
【0046】
同様に提供するのは、さらなる調節エレメントとともに直列に配置されるミオシン重鎖エンハンサー(MhcE)核酸(表1の配列番号27)である。ミオシンは、体内で最も豊富な組織である筋肉で最も豊富なタンパク質である。骨格筋及び心筋の発現を含めた導入遺伝子の筋産生の増強は、多くの導入遺伝子のバイオ医薬効果に大いに役立つであろう。
【0047】
他のエンハンサーは、当業者に周知である。
【0048】
5.2.2. プロモーター
本発明の別の態様は、肝臓特異的発現、筋特異的発現(骨格筋または心筋特異的発現を含む)または骨特異的発現を付与または増強するように設計されたキメラ調節エレメントを含む核酸発現カセットに関する。本発明は、プロモーターエレメント、エンハンサーエレメント、及び任意にイントロンを含めた直列の調節エレメントを操作することを含む。例としては、TBGプロモーター、hAATプロモーター、CK8プロモーター、及びSpc5-12プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書に提供するプロモーター配列とエンハンサー配列の独自の組み合わせは、組織特異性を維持しながら、導入遺伝子の発現を改善する。新規な調節エレメント核酸を、潜在的な「ATG」開始部位の3’プロモーター配列を枯渇させることにより、直列型プロモーター(すなわち、同じ導入遺伝子の発現を駆動する2つのプロモーター配列)からの導入遺伝子発現を改善する方法を使用して生成した。このアプローチを、直列型組織特異的プロモーターカセット(例えば、肝臓を標的とするもの)ならびに2つの別々の組織集団(例えば、肝臓ならびに骨格筋、及びある特定の実施形態では、心筋、ならびに肝臓及び骨)で二重発現を達成するためのプロモーターカセットからの導入遺伝子発現を改善するために採用した。最終的に、これらの設計は、より堅牢なレベルの導入遺伝子発現、安定性/持続性の改善、及び導入遺伝子産物に対する免疫寛容の誘導を提供することによって、遺伝子導入の治療効果を改善することを目的とする。ある特定の態様では、開始コドンが削除されたhAATプロモーター(ΔATG)が、本明細書に提供する発現カセットで使用される。
【0050】
CAGプロモーター(配列番号17)とは、以下の配列から構築されるキメラプロモーターを指す:サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサーエレメント(C)、ニワトリベータ-アクチンプロモーター(ニワトリベータ-アクチン遺伝子の最初のエキソン及び最初のイントロン)(A)、ならびにウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプター(G)。該CAGプロモーターは、当技術分野では、哺乳類細胞において高レベルの発現を駆動するために頻繁に使用されており、組織特異性に関して非選択的であり、それ故、通常は、汎用プロモーターとして使用される。
【0051】
同様に提供するのは、肝臓特異的発現エレメントと組み合わせて配置され得る骨特異的プロモーターである。例えば、Sp7/Osxプロモーター(配列番号32)または最小Sp7/Osxプロモーター(配列番号33)断片(Lu,X.,et al.JBC 281,6297-6306,January 12,2006、参照により全体として本明細書に組み込まれる)は、骨特異的発現を促進し、単一のコピーまたは直列に配置された2つ以上のコピーのいずれかとして、本明細書に提供する遺伝子カセットに含まれ得る。
【0052】
同様に提供するのは、SPc5-12プロモーターとして知られる筋特異的合成プロモーターc5-12(Li,X.et al.Nature Biotechnology Vol.17,pp.241-245,MARCH 1999)である。エンハンサーまたは他のプロモーターと直列に配置され、導入遺伝子に作動可能に連結された場合に、該Spc5-12プロモーターは、該導入遺伝子の筋特異的発現を駆動する。いくつかの実施形態では、該筋特異的プロモーターは、SPc5-12プロモーター(配列番号28)である。
【0053】
ベクターの長さをさらに縮小するために、調節エレメントは、本明細書に記載のプロモーターのいずれか1つの縮小または短縮型(本明細書では「最小プロモーター」と呼ばれる)であることができる。最小プロモーターは、完全長型の転写活性ドメインを少なくとも含むため、なお発現を駆動することができる。例えば、いくつかの実施形態では、筋特異的プロモーターの転写活性ドメイン、例えば、最小Spc5-12プロモーター(例えば、配列番号29)は、さらなる調節エレメントと直列に配置され、治療用タンパク質導入遺伝子に作動可能に連結され得る。
【0054】
5.2.3.イントロン
本発明の別の態様は、調節カセット内にイントロンを含む核酸発現カセットに関する。いくつかの実施形態では、該イントロン核酸は、ヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロンである(β-グロビンスプライスドナー/免疫グロブリン重鎖スプライスアクセプターイントロン、またはβ-グロビン/IgGキメライントロンとしても知られる。Reed,R.,et al.Genes and Development,1989)。イントロンを使用すると、真核細胞で効率的なスプライシングがさらに誘導され得る。イントロンの使用は、既に強力なプロモーターに対して発現の増加を示さない可能性もあるが、イントロンの存在は、導入遺伝子の発現レベルを増加させ得、インビボでの発現の持続時間を延長させることもできる。
【0055】
いくつかの実施形態では、該イントロンは、VH4イントロンである。VH4イントロン核酸は、以下の表2に示す配列番号19を含み得る。該コード配列のVH4イントロン5’は、適切なスプライシング、ひいては導入遺伝子の発現を増強し得る。従って、いくつかの実施形態では、イントロンは、導入遺伝子配列の5’末端に結合される。他の実施形態では、該イントロンは、100ヌクレオチド未満の長さである。
【表2】
【0056】
他の実施形態では、該イントロンは、ヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロンである(β-グロビンスプライスドナー/免疫グロブリン重鎖スプライスアクセプターイントロン、またはβ-グロビン/IgGキメライントロンとしても知られる)(表3、配列番号18)。当業者に周知の他のイントロン、例えば、ニワトリβ-アクチンイントロン、マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、ヒト第IX因子イントロン(例えば、FIX分断イントロン1)β-グロビンスプライスドナー/免疫グロブリン重鎖スプライスアクセプターイントロン、アデノウイルススプライスドナー/免疫グロブリンスプライスアクセプターイントロン、SV40後期スプライスドナー/スプライスアクセプター(19S/16S)イントロン(表3、配列番号34)を使用してもよい。
【0057】
当業者に周知の他のイントロンを使用してもよい。
【0058】
5.2.4.他の調節エレメント
5.2.4.1.ポリA
本開示の別の態様は、導入遺伝子のコード領域の下流にポリアデニル化(ポリA)部位を含む発現カセットに関する。転写の終了をシグナル伝達し、ポリAテールの合成を指示する任意のポリA部位が、本開示のAAVベクターでの使用に適している。例示的なポリAシグナルは、以下に由来するが、これらに限定されない:SV40後期遺伝子、ウサギβ-グロビン遺伝子(配列番号36)、ウシ成長ホルモン(BPH)遺伝子、ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子、合成ポリA(SPA)部位、及びウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子。例えば、Powell and Rivera-Soto,2015,Discov.Med.,19(102):49-57を参照されたい。1つの実施形態では、該ポリAシグナルは、表3に示す配列番号36を含む。
【表3】
【0059】
5.3.遺伝子送達用ベクター
本発明の別の態様は、直列型核酸調節エレメントの遺伝子操作、及びこれらの核酸配列をベクター発現系に組み込むことに関する。1つの実施形態では、該ベクターは、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター(例えば、Gao G.,et al 2003 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(10):6081-6086)、レンチウイルスベクター(例えば、Matrai,J,et al.2011,Hepatology 53,1696-707)、レトロウイルスベクター(例えば、Axelrod,JH,et al.1990.Proc Natl Acad Sci USA;87,5173-7)、アデノウイルスベクター(例えば、Brown et al.,2004 Blood 103,804-10)、単純ヘルペスウイルスベクター(Marconi,P.et al.Proc Natl Acad Sci USA.1996 93(21):11319-11320、Baez,MV,et al.Chapter 19-Using Herpes Simplex Virus Type 1-Based Amplicon Vectors for Neuroscience Research and Gene Therapy of Neurologic Diseases,Ed.:Robert T.Gerlai,Molecular-Genetic and Statistical Techniques for Behavioral and Neural Research,Academic Press,2018:Pages 445-477)、及びレトロトランスポゾンベースのベクター系(例えば、Soifer,2004,Current Gene Therapy 4(4):373-384)が挙げられるがこれらに限定されないウイルスベクターである。別の実施形態では、該ベクターは、非ウイルスベクターである。rAAVベクターは、ベクター粒子のパッケージング能力が限られており(すなわち、約4.7kb)、機能的ベクターを得るための該導入遺伝子の発現カセットのサイズを抑制している(Jiang et al.,2006 Blood.108:107-15)。導入遺伝子の長さ、及び直列型エンハンサー(複数可)及びプロモーター(複数可)を含む調節核酸配列の長さが、特定の導入遺伝子及び標的組織に適した調節領域を選択する際に考慮される。
【0060】
本発明の別の態様は、導入遺伝子に作動可能に連結された表1の核酸調節エレメントLSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、またはLTP3を含む発現カセットを含むウイルスベクターに関する。いくつかの実施形態では、該発現カセットは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5の核酸配列を含む核酸調節エレメントを含むか、または配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5に対して99%、95%、90%、85%、もしくは80%同一であり、肝臓において該導入遺伝子の発現を増強する配列を含む核酸調節エレメントを含む。
【0061】
本発明の別の態様は、導入遺伝子に作動可能に連結された表1の核酸調節エレメントLMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、またはLMTP20を含む発現カセットを含む組み換えベクターに関する。いくつかの実施形態では、該発現カセットは、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、もしくは配列番号25もしくは配列番号26の核酸配列を含む核酸調節エレメントを含むか、または配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、もしくは配列番号25もしくは配列番号26に対して99%、95%、90%、85%、もしくは80%同一であり、肝臓及び筋肉(骨格筋及び/または心筋)において該導入遺伝子の発現を増強する配列を含む核酸調節エレメントを含む。
【0062】
本発明の別の態様は、導入遺伝子に作動可能に連結された表1の核酸調節エレメントLBTP1(配列番号30)またはLBTP2(配列番号31)を含む発現カセットを含む組み換えベクターに関する。いくつかの実施形態では、該発現カセットは、配列番号30もしくは配列番号31の核酸配列を含む核酸調節エレメントを含むか、または配列番号30もしくは配列番号31に対して99%、95%、90%、85%、もしくは80%同一であり、肝臓及び骨において該導入遺伝子の発現を増強する配列を含む核酸調節エレメントを含む。
【0063】
別の態様では、該発現カセットは、AAVカプシドにパッケージングするのに適しており、従って、該カセットは、(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)調節制御エレメント、a)プロモーター/エンハンサー、例えば、表1のLSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、LTP3、LMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、LMTP20、LBTP1、またはLBTP2のいずれか1つ、b)ポリAシグナル、及びc)任意にイントロン、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子を含む。
【0064】
ある特定の実施形態では、該導入遺伝子は、表4A~4Dのものである。無傷または実質的に無傷のmAbを発現するための実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)調節制御エレメント、a)プロモーター/エンハンサー、例えば、表1のLSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、LTP3、LMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、LMTP20、LBTP1、またはLBTP2のいずれか1つ、b)ポリAシグナル、及びc)任意にイントロン、ならびに(3)抗Aβ(例えば、ソラネズマブ、GSK933776、及びレカネマブ)、抗ソルチリン(例えば、AL-001)、抗タウ(例えば、ABBV-8E12、UCB-0107、及びNI-105)、抗SEMA4D(例えば、VX15/2503)、抗アルファシヌクレイン(例えば、プラシネズマブ、NI-202、及びMED-1341)、抗SOD1(例えば、NI-204)、抗CGRP受容体(例えば、エプチネズマブ、フレマネズマブ、またはガルカネズマブ)、抗VEGF(例えば、セバシズマブ、ラニビズマブ、ベバシズマブ、及びブロルシズマブ)、抗EpoR(例えば、LKA-651)、抗ALK1(例えば、アスクリンバクマブ)、抗C5(例えば、テシドルマブ、ラブリズマブ、及びエクリズマブ)、抗CD105(例えば、カロツキシマブ)、抗CC1Q(例えば、ANX-007)、抗TNFα(例えば、アダリムマブ、インフリキシマブ、及びゴリムマブ)、抗RGMa(例えば、エレザヌマブ)、抗TTR(例えば、NI-301及びPRX-004)、抗CTGF(例えば、パムレブルマブ)、抗IL6R(例えば、サトラリズマブ、トシリズマブ、及びサリルマブ)、抗IL6(例えば、シルツキシマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、オロキズマブ、及びゲリリムズマブ)、抗IL4R(例えば、デュピルマブ)、抗IL17A(例えば、イキセキズマブ及びセクキヌマブ)、抗IL5R(例えば、レスリズマブ)、抗IL-5(例えば、ベンラリズマブ及びメポリズマブ)、抗IL13(例えば、トラロキヌマブ)、抗IL12/IL23(例えば、ウステキヌマブ)、抗CD19(例えば、イネビリズマブ)、抗IL31RA(例えば、ネモリズマブ)、抗ITGF7 mAb(例えば、エトロリズマブ)、抗SOST mAb(例えば、ロモソズマブ)、抗IgE(例えば、オマリズマブ)、抗TSLP(例えば、ネモリズマブ)、抗pKal mAb(例えば、ラナデルマブ)、抗ITGA4(例えば、ナタリズマブ)、抗ITGA4B7(例えば、ベドリズマブ)、抗BLyS(例えば、ベリムマブ)、抗PD-1(例えば、ニボルマブ及びペンブロリズマブ)、抗RANKL(例えば、デノスマブ)、抗PCSK9(例えば、アリロクマブ及びエボロクマブ)、抗ANGPTL3(例えば、エビナクマブ*)、抗OxPL(例えば、E06)、抗fD(例えば、ランパリズマブ)、または抗MMP9(例えば、アンデカリキシマブ)の重鎖Fab、任意に、治療用抗体の天然型と同じアイソタイプのFcポリペプチド、例えば、IgGアイソタイプのアミノ酸配列IgG1、IgG2もしくはIgG4またはそれらの修飾Fc、ならびに抗Aβ(例えば、ソラネズマブ、GSK933776、及びレカネマブ)、抗ソルチリン(例えば、AL-001)、抗タウ(例えば、ABBV-8E12、UCB-0107、及びNI-105)、抗SEMA4D(例えば、VX15/2503)、抗アルファシヌクレイン(例えば、プラシネズマブ、NI-202、及びMED-1341)、抗SOD1(例えば、NI-204)、抗CGRP受容体(例えば、エプチネズマブ、フレマネズマブ、またはガルカネズマブ)、抗VEGF(例えば、セバシズマブ、ラニビズマブ、ベバシズマブ、及びブロルシズマブ)、抗EpoR(例えば、LKA-651)、抗ALK1(例えば、アスクリンバクマブ)、抗C5(例えば、テシドルマブ、ラブリズマブ、及びエクリズマブ)、抗CD105(例えば、カロツキシマブ)、抗CC1Q(例えば、ANX-007)、抗TNFα(例えば、アダリムマブ、インフリキシマブ、及びゴリムマブ)、抗RGMa(例えば、エレザヌマブ)、抗TTR(例えば、NI-301及びPRX-004)、抗CTGF(例えば、パムレブルマブ)、抗IL6R(例えば、サトラリズマブ、トシリズマブ、及びサリルマブ)、抗IL6(例えば、シルツキシマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、オロキズマブ、及びゲリリムズマブ)、抗IL4R(例えば、デュピルマブ)、抗IL17A(例えば、イキセキズマブ及びセクキヌマブ)、抗IL5R(例えば、レスリズマブ)、抗IL-5(例えば、ベンラリズマブ及びメポリズマブ)、抗IL13(例えば、トラロキヌマブ)、抗IL12/IL23(例えば、ウステキヌマブ)、抗CD19(例えば、イネビリズマブ)、抗IL31RA(例えば、ネモリズマブ)、抗ITGF7 mAb(例えば、エトロリズマブ)、抗SOST mAb(例えば、ロモソズマブ)、抗IgE(例えば、オマリズマブ)、抗TSLP(例えば、ネモリズマブ)、抗pKal mAb(例えば、ラナデルマブ)、抗ITGA4(例えば、ナタリズマブ)、抗ITGA4B7(例えば、ベドリズマブ)、抗BLyS(例えば、ベリムマブ)、抗PD-1(例えば、ニボルマブ及びペンブロリズマブ)、抗RANKL(例えば、デノスマブ)、抗PCSK9(例えば、アリロクマブ及びエボロクマブ)、抗ANGPTL3(例えば、エビナクマブ*)、抗OxPL(例えば、E06)、抗fD(例えば、ランパリズマブ)、または抗MMP9(例えば、アンデカリキシマブ)の軽鎖をコードする核酸配列、ここで、該重鎖(Fab及びFc領域)ならびに該軽鎖は、自己切断型フューリン(F)/F2Aもしくはフューリン(F)/T2Aまたは可動性リンカーによって分離され、等量の重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの発現を確保する。
【0065】
様々な実施形態では、該標的組織は、神経組織、骨、腎臓、肝臓、筋肉、心臓、脾臓、肺もしくは内皮組織、または特定の受容体もしくは腫瘍であり得、該調節剤は、特異的にその組織、特に、肝臓及び筋肉または肝臓及び骨を認識し、及び/またはその組織に結合する異種タンパク質またはドメインに由来する。肝臓及び筋肉または肝臓及び骨で発現する導入遺伝子は、全身性の発現と見なされる。これは、肝臓で発現したタンパク質の送達の増強が、血液脳関門を越えてCNSに入ること、及び全身性疾患の神経障害または神経症状を治療するための治療薬の送達を含めた、他の組織への侵入に十分であるためである。
【0066】
いくつかの実施形態では、LBTP1及びLBTP2プロモーターは、特に骨細胞(例えば、骨芽細胞)及び肝臓細胞(肝細胞)において遺伝子治療ベクターの発現を付与することが望まれる遺伝子治療ベクター中の任意の導入遺伝子で特に有用である。その遺伝子治療は、骨の疾患及び障害及び/または骨に影響を与える任意の全身性疾患の症状の治療に使用され得る。例えば、LBTP1またはLBTP2プロモーターを含む遺伝子治療ベクターは、全身性疾患の骨変形症状、例えば、骨格病変を伴うリソソーム蓄積症の改善に有効であり得る。
【0067】
5.3.1.AAV
本発明の別の態様は、AAVカプシドにパッケージングするのに適した発現カセットに関し、従って、該カセットは、(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)1つ以上のエンハンサー及び1つ以上のプロモーターから本質的になる調節制御エレメント、特に、本明細書に提供する筋・肝特異的または筋・骨特異的核酸調節エレメント、d)ポリAシグナル、及びe)任意にイントロン、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子を含む。
【0068】
該提供する核酸及び方法は、任意の単離された組み換えAAV粒子の生成での使用、任意の単離された組み換えAAV粒子を含む組成物の生成での使用、または任意の単離された組み換えAAV粒子の投与を含む、疾患もしくは障害の治療を必要とする対象におけるその治療方法での使用に適している。従って、該rAAVは、当技術分野で既知の任意の血清型、修飾もしくは派生物のもの、または当技術分野で既知のそれらの任意の組み合わせ(例えば、2つ以上の血清型を含むrAAV粒子の集団、例えば、2つ以上のrAAV2、rAAV8、及びrAAV9粒子を含む)でよい。いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV1、AAV2、rAAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、もしくはAAV.HSC16もしくは他のrAAV粒子、またはそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0069】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV1、AAV1、AAV2、rAAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、もしくはAAV.HSC16またはその派生物、修飾、もしくはシュードタイプから選択されるAAV血清型に由来するカプシドタンパク質を有する。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV1、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、rAAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、またはAAV.HSC16から選択されるAAVカプシド血清型の例えば、VP1、VP2及び/またはVP3配列に対して、少なくとも80%またはそれを超えて同一、例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%等、すなわち、最大100%同一のカプシドタンパク質を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV1、AAV1、AAV2、rAAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、もしくはAAV.HSC16またはその派生物、修飾、もしくはシュードタイプから選択されるAAVカプシド血清型に由来するカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV1、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、またはAAV.HSC16から選択されるAAVカプシド血清型の例えば、VP1、VP2及び/またはVP3配列に対して、少なくとも80%またはそれを超えて同一、例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%等、すなわち、最大100%同一のカプシドタンパク質を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、参照により全体として組み込まれるZinn et al.,2015,Cell Rep.12(6):1056-1068に記載のAnc80またはAnc80L65のカプシドを含む。ある特定の実施形態では、該rAAV粒子は、以下のアミノ酸挿入物のうちの1つを有するカプシドを含む:各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第9,193,956号、第9458517号、及び第9,587,282号ならびに米国特許出願公開第2016/0376323号に記載のLGETTRPまたはLALGETTRP。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第9,193,956号、第9,458,517号、及び第9,587,282号ならびに米国特許出願公開第2016/0376323号に記載のAAV.7m8のカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、米国特許第9,585,971号に開示される任意のAAVカプシド、例えば、AAV-PHP.Bを含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第9,840,719号及びWO2015/013313に開示される任意のAAVカプシド、例えば、AAV.Rh74及びRHM4-1を含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2014/172669に開示される任意のAAVカプシド、例えば、AAVrh.74を含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、各々が参照により全体として組み込まれるGeorgiadis et al.,2016,Gene Therapy 23:857-862及びGeorgiadis et al.,2018,Gene Therapy 25:450に記載のAAV2/5のカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2017/070491に開示される任意のAAVカプシド、例えば、AAV2tYFを含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、参照により全体として組み込まれるPuzzo et al.,2017,Sci.Transl.Med.29(9):418に記載のAAVLK03またはAAV3Bのカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、各々が参照により全体として組み込まれる米国特許第8,628,966号、US8,927,514、US9,923,120及びWO2016/049230に開示される任意のAAVカプシド、例えば、HSC1、HSC2、HSC3、HSC4、HSC5、HSC6、HSC7、HSC8、HSC9、HSC10、HSC11、HSC12、HSC13、HSC14、HSC15、またはHSC16を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる以下の特許及び特許出願のいずれかに開示されるAAVカプシドを含む:米国特許第7,282,199号、第7,906,111号、第8,524,446号、第8,999,678号、第8,628,966号、第8,927,514号、第8,734,809号、第US9,284,357号、第9,409,953号、第9,169,299号、第9,193,956号、第9458517号、及び第9,587,282号、米国特許出願公開第2015/0374803号、第2015/0126588号、第2017/0067908号、第2013/0224836号、第2016/0215024号、第2017/0051257号、及び国際特許出願第PCT/US2015/034799号、第PCT/EP2015/053335号。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる以下の特許及び特許出願のいずれかに開示されるAAVカプシドのVP1、VP2及び/またはVP3配列に対して、少なくとも80%またはそれを超えて同一、例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%等、すなわち、最大100%同一のカプシドタンパク質を有する:米国特許第7,282,199号、第7,906,111号、第8,524,446号、第8,999,678号、第8,628,966号、第8,927,514号、第8,734,809号、第US9,284,357号、第9,409,953号、第9,169,299号、第9,193,956号、第9458517号、及び第9,587,282号、米国特許出願公開第2015/0374803号、第2015/0126588号、第2017/0067908号、第2013/0224836号、第2016/0215024号、第2017/0051257号、及び国際特許出願第PCT/US2015/034799号、第PCT/EP2015/053335号。
【0073】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、各々の内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる国際出願公開第WO2003/052051号(例えば、’051公開の配列番号2参照)、第WO2005/033321号(例えば、’321公開の配列番号123及び88参照)、第WO03/042397号(例えば、’397公開の配列番号2、81、85、及び97参照)、第WO2006/068888号(例えば、’888公開の配列番号1及び3~6参照)、第WO2006/110689号(例えば、’689公開の配列番号5~38参照)、第WO2009/104964号(例えば、’964公開の配列番号1~5、7、9、20、22、24及び31参照)、第WO2010/127097号(例えば、’097公開の配列番号5~38参照)、及び第WO2015/191508号(例えば、’508公開の配列番号80~294参照)、ならびに米国出願公開第20150023924号(例えば、’924公開の配列番号1、5~10参照)に開示されるカプシドタンパク質を有する。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、国際出願公開第WO2003/052051号(例えば、’051公開の配列番号2参照)、第WO2005/033321号(例えば、’321公開の配列番号123及び88参照)、第WO03/042397号(例えば、’397公開の配列番号2、81、85、及び97参照)、第WO2006/068888号(例えば、’888公開の配列番号1及び3~6参照)、第WO2006/110689号(例えば、’689公開の配列番号5~38参照)、第WO2009/104964号(例えば、’964公開の配列番号1~5、7、9、20、22、24及び31参照)、第WO2010/127097号(例えば、’097公開の配列番号5~38参照)、及び第WO2015/191508号(例えば、’508公開の配列番号80~294参照)、ならびに米国出願公開第20150023924号(例えば、’924公開の配列番号1、5~10参照)に開示されるAAVカプシドのVP1、VP2及び/またはVP3配列に対して、少なくとも80%またはそれを超えて同一、例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%等、すなわち、最大100%同一のカプシドタンパク質を有する。
【0074】
AAVベースのウイルスベクターの核酸配列ならびに組み換えAAV及びAAVカプシドの作製方法は、例えば、米国特許第7,282,199号、第7,906,111号、第8,524,446号、第8,999,678号、第8,628,966号、第8,927,514号、第8,734,809号、第US9,284,357号、第9,409,953号、第9,169,299号、第9,193,956号、第9458517号、及び第9,587,282号、米国特許出願公開第2015/0374803号、第2015/0126588号、第2017/0067908号、第2013/0224836号、第2016/0215024号、第2017/0051257号、国際特許出願第PCT/US2015/034799号、第PCT/EP2015/053335号、第WO2003/052051号、第WO2005/033321号、第WO03/042397号、第WO2006/068888号、第WO2006/110689号、第WO2009/104964号、第WO2010/127097号、及び第WO2015/191508号、ならびに米国出願公開第20150023924号に教示されている。
【0075】
該提供する方法は、導入遺伝子をコードする組み換えAAVの生成に使用するのに適している。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、抗VEGF FabをコードするrAAVウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、抗VEGF FabをコードするrAAV8ベースのウイルスベクターである。さらなる実施形態では、本明細書に提供するのは、ラニビズマブをコードするrAAV8ベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、イズロニダーゼ(IDUA)をコードするrAAVウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、IDUAをコードするrAAV9ベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)をコードするrAAVウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、IDSをコードするrAAV9ベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、低比重リポタンパク質受容体(LDLR)をコードするrAAVウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、LDLRをコードするrAAV8ベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)タンパク質をコードするrAAVウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、TPPをコードするrAAV9ベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、抗カリクレイン(抗pKal)抗体をコードするrAAVウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、pKal抗体のFabまたは完全長抗体をコードするrAAV8ベースまたはrAAV9ベースのウイルスベクターである。
【0076】
さらなる実施形態では、rAAV粒子は、シュードタイプAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、該シュードタイプAAVカプシドは、rAAV2/8またはrAAV2/9シュードタイプAAVカプシドである。シュードタイプrAAV粒子を生成及び使用するための方法は、当技術分野で既知である(例えば、Duan et al.,J.Virol.,75:7662-7671(2001)、Halbert et al.,J.Virol.,74:1524-1532(2000)、Zolotukhin et al.,Methods 28:158-167(2002)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081,(2001)参照)。
【0077】
さらなる実施形態では、rAAV粒子は、2つ以上のAAVカプシド血清型のキメラであるカプシドタンパク質を含むカプシドを含む。いくつかの実施形態では、該カプシドタンパク質は、AAV1、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、またはAAV.HSC16から選択されるAAV血清型に由来する2つ以上のAAVカプシドタンパク質のキメラである。
【0078】
ある特定の実施形態では、一本鎖AAV(ssAAV)が使用され得る。ある特定の実施形態では、自己相補的ベクター、例えば、scAAVが使用され得る(例えば、各々が参照により全体として本明細書に組み込まれるWu,2007,Human Gene Therapy,18(2):171-82、McCarty et al,2001,Gene Therapy,Vol.8,Number 16,Pages 1248-1254、ならびに米国特許第6,596,535号、第7,125,717号、及び第7,456,683号参照)。
【0079】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV-8またはAAV-9から選択されるAAVカプシド血清型に由来するカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV-1またはその派生物、修飾、もしくはシュードタイプのAAVカプシド血清型を有する。いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV-4またはその派生物、修飾、もしくはシュードタイプのAAVカプシド血清型を有する。いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV-5またはその派生物、修飾、もしくはシュードタイプのAAVカプシド血清型を有する。いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV-8またはその派生物、修飾、もしくはシュードタイプのAAVカプシド血清型を有する。いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV-9またはその派生物、修飾、もしくはシュードタイプのAAVカプシド血清型を有する。
【0080】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV-8またはAAV-9カプシドタンパク質の派生物、修飾、もしくはシュードタイプであるカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV-8カプシドタンパク質のVP1、VP2及び/またはVP3配列に対して、少なくとも80%またはそれを超えて同一、例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%等、すなわち、最大100%同一のAAV-8カプシドタンパク質を有するカプシドタンパク質を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV-9カプシドタンパク質の派生物、修飾、またはシュードタイプであるカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、精製供給におけるrAAV粒子は、AAV-9カプシドタンパク質のVP1、VP2及び/またはVP3配列に対して、少なくとも80%またはそれを超えて同一、例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%等、すなわち、最大100%同一のAAV-8カプシドタンパク質を有するカプシドタンパク質を含む。
【0082】
さらなる実施形態では、rAAV粒子は、モザイクカプシドを含む。モザイクAAV粒子は、異なるAAV血清型に由来するウイルスカプシドタンパク質の混合物で構成される。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、及びAAV.HSC16から選択される血清型のカプシドタンパク質を含むモザイクカプシドを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV-1、AAV-2、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAVrh.8、及びAAVrh.10から選択される血清型のカプシドタンパク質を含むモザイクカプシドを含む。さらなる実施形態では、rAAV粒子は、シュードタイプrAAV粒子を含む。いくつかの実施形態では、該シュードタイプrAAV粒子は、(a)AAVのITRを含む核酸ベクター、ならびに(b)AAVx(例えば、AAV-1、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16)に由来するカプシドタンパク質で構成されるカプシドを含む。さらなる実施形態では、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV-14、AAV-15及びAAV-16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、及びAAV.HSC16から選択されるAAV血清型のカプシドタンパク質で構成されるシュードタイプrAAV粒子を含む。さらなる実施形態では、rAAV粒子は、AAV-8カプシドタンパク質を含むシュードタイプrAAV粒子を含む。さらなる実施形態では、rAAV粒子は、AAV-9カプシドタンパク質で構成されるシュードタイプrAAV粒子を含む。いくつかの実施形態では、該シュードタイプAAV8またはAAV9粒子は、rAAV2/8またはrAAV2/9シュードタイプ粒子である。シュードタイプrAAV粒子を生成及び使用するための方法は、当技術分野で既知である(例えば、Duan et al.,J.Virol.,75:7662-7671(2001)、Halbert et al.,J.Virol.,74:1524-1532(2000)、Zolotukhin et al.,Methods 28:158-167(2002)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081,(2001)参照)。
【0084】
さらなる実施形態では、rAAV粒子は、2つ以上のAAVカプシド血清型のキメラであるカプシドタンパク質を含むカプシドを含む。さらなる実施形態では、該カプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、rAAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15及びAAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、rAAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、及びAAV.HSC16から選択されるAAV血清型に由来する2つ以上のAAVカプシドタンパク質のキメラである。さらなる実施形態では、該カプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh.8、及びAAVrh.10から選択されるAAV血清型に由来する2つ以上のAAVカプシドタンパク質のキメラである。
【0085】
いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV-8カプシドタンパク質、ならびに、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15及びAAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、及びAAV.HSC16から選択されるAAV血清型に由来する1つ以上のAAVカプシドタンパク質のキメラであるAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV-8カプシドタンパク質、ならびに、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAVrh.8、及びAAVrh.10から選択されるAAV血清型に由来する1つ以上のAAVカプシドタンパク質のキメラであるAAVカプシドタンパク質を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV-9カプシドタンパク質、ならびに、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15及びAAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、及びAAV.HSC16から選択される1つ以上のAAVカプシド血清型のカプシドタンパク質のキメラであるAAVカプシドタンパク質を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、該rAAV粒子は、AAV-9カプシドタンパク質、ならびに、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、及びAAVrh.10から選択される1つ以上のAAVカプシド血清型のカプシドタンパク質のキメラであるAAVカプシドタンパク質を含む。
【0088】
rAAVベクターの作製方法
本発明の別の態様は、本明細書に開示する分子を作製することを含む。いくつかの実施形態では、本発明の分子は、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列を含むヌクレオチドを提供すること、及び対応する該カプシドタンパク質で構成されるカプシド被覆を有するrAAV粒子を調製するためにパッケージング細胞系を使用することによって作製される。いくつかの実施形態では、該核酸配列は、本明細書に記載のカプシドタンパク質分子の配列に対して、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、または95%、好ましくは、96%、97%、98%、99%または99.9%の同一性を有する配列をコードし、該カプシドタンパク質及び異種タンパク質またはそのドメインに由来する挿入ペプチドの生物学的機能を保持する(または実質的に保持する)。いくつかの実施形態では、該核酸は、該AAVカプシドタンパク質の特定の配列に対して、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、または95%、好ましくは、96%、97%、98%、99%または99.9%の同一性を有する配列をコードすると同時に、該AAVカプシドタンパク質の生物学的機能を保持する(または実質的に保持する)。
【0089】
該カプシドタンパク質、被覆、及びrAAV粒子は、当技術分野で既知の技術によって生成され得る。いくつかの実施形態では、該ウイルスゲノムは、ベクターへのパッケージングを可能にするための少なくとも1つの逆位末端配列を含む。いくつかの実施形態では、該ウイルスゲノムは、さらに、cap遺伝子及び/またはcap遺伝子の発現及びスプライシングのためのrep遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、該cap及びrep遺伝子は、パッケージング細胞によって提供され、該ウイルスゲノムには存在しない。
【0090】
いくつかの実施形態では、該カプシドタンパク質をコードする核酸は、既存のカプシド遺伝子の代わりにAAVのRep-Capヘルパープラスミドにクローニングされる。一緒に宿主細胞に導入される場合、このプラスミドは、rAAVゲノムを、カプシド被覆としてのカプシドタンパク質にパッケージングすることを補助する。パッケージング細胞は、AAVゲノム複製、カプシド組み立て、及びパッケージングを促進するのに必要な遺伝子を有する任意の細胞型であり得る。非限定的な例としては、293細胞もしくはその派生物、HELA細胞、または昆虫細胞が挙げられる。
【0091】
組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換のための標準的な技術(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)が使用され得る。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様に従って行われる場合もあれば、当技術分野で一般に施行されているように行われる場合も、本明細書に記載の通りに行われる場合もある。前述の技術及び手順は、通常、当技術分野で周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書を通して引用及び論じられる様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載の通りに行われ得る。例えば、あらゆる目的のため、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたい。詳しい定義が提供されない限り、本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品及び薬化学に関連して使用される命名法、ならびにそれらの実験法及び実験技術は、当技術分野で周知の及び一般に使用されるものである。標準的な技術を、化学合成、化学分析、薬剤の調製、処方、及び送達、ならびに患者の治療に使用することができる。AAVベースのウイルスベクターの核酸配列、及び組み換えAAV及びAAVカプシドの作製方法は、例えば、各々が参照により全体として本明細書に組み込まれるUS7,282,199、US7,790,449、US8,318,480、US8,962,332、及びPCT/EP2014/076466に教示されている。
【0092】
好ましい実施形態では、該rAAVは、以下により詳細に論じる通り、治療的及び予防的用途において使用され得る導入遺伝子送達ベクターを提供する。該rAAVベクターはまた、対象の標的細胞内で核酸(導入遺伝子)によってコードされるRNA及び/またはタンパク質産物の発現に影響を及ぼす上記の調節制御エレメントを含む。
【0093】
特定の実施形態において提供するのは、該調節エレメントの制御下、該導入遺伝子の発現のための、両側にITRが配置された発現カセットを含むウイルスゲノム、ならびに本明細書に記載の操作されたウイルスカプシドまたは該AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%同一である操作されたウイルスカプシドを含むAAVベクターである。
【0094】
該組み換えアデノウイルスは、E1を欠失し、E3を欠失したまたは欠失せず、いずれかの欠失領域に該発現カセットが挿入された第一世代のベクターであり得る。該組み換えアデノウイルスは、E2及びE4領域の完全または部分的な欠失を含む第二世代のベクターであり得る。ヘルパー依存性アデノウイルスは、アデノウイルス逆位末端配列及びパッケージングシグナル(ファイ)のみを保持する。該導入遺伝子は、通常、該パッケージングシグナルと3’ITRとの間に挿入され、スタッファー配列を含み、または含まず、およそ36kbの野生型サイズに近いゲノムを維持する。アデノウイルスベクターの生成のための例示的なプロトコルは、参照により全体として本明細書に組み込まれるAlba et al.,2005,“Gutless adenovirus:last generation adenovirus for gene therapy,”Gene Therapy 12:S18-S27に見出され得る。
【0095】
該導入遺伝子を標的組織、細胞、または器官に送達するためのrAAVベクターはまた、本明細書に記載の組織特異的プロモーターの使用と併せて、その特定の標的組織、細胞、または器官、例えば、肝臓及び/または筋肉指向性も有し得る。該構築物は、さらに、該導入遺伝子の発現を増強するイントロン等のさらなる発現制御エレメント(例えば、ニワトリβ-アクチンイントロン、マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、ヒト第IX因子イントロン(例えば、FIX分断イントロン1)、β-グロビンスプライスドナー/免疫グロブリン重鎖スプライスアクセプターイントロン、アデノウイルススプライスドナー/免疫グロブリンスプライスアクセプターイントロン、SV40後期スプライスドナー/スプライスアクセプター(19S/16S)イントロン、及びハイブリッドアデノウイルススプライスドナー/IgGスプライスアクセプターイントロン等のイントロンならびにポリAシグナル、例えば、ウサギβ-グロビンポリAシグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリAシグナル、SV40後期ポリAシグナル、合成ポリA(SPA)シグナル、及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリAシグナルを含むことができる。例えば、Powell and Rivera-Soto,2015,Discov.Med.,19(102):49-57を参照されたい。
【0096】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示する核酸配列は、例えば、当業者に既知の任意のコドン最適化技術でコドン最適化され得る(例えば、Quax et al.,2015,Mol Cell 59:149-161による総説参照)。
【0097】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LSPX1):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)2つの直列型Mic/Bikエンハンサー、b)ApoEエンハンサー、c)ヒトAATプロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にイントロンを含む制御エレメント、(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)2つの直列型Mic/Bikエンハンサー、b)ApoEエンハンサー、c)ヒトAATプロモーター、d)ウサギβ-グロビンポリAシグナル及びe)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0098】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LSPX2):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)2つの直列型ApoEエンハンサー、b)ヒトAATプロモーター、c)ポリAシグナル、及びd)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)2つの直列型ApoEエンハンサー、b)ヒトAATプロモーター、c)ポリAシグナル、及びd)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0099】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LTP1):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)2つの直列型Mic/Bikエンハンサー、b)TBGプロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)2つの直列型Mic/Bikエンハンサー、b)TBGプロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0100】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LTP2):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)ApoEエンハンサー、b)2つの直列型Mic/Bikエンハンサー、c)TBGプロモーター、d)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、e)ポリAシグナル、及びf)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)ApoEエンハンサー、b)2つの直列型MckEエンハンサー、c)TBGプロモーター、d)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、e)ポリAシグナル、及びf)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0101】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LTP3):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)2つの直列型Mic/Bikエンハンサー、b)TBGプロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ApoEエンハンサー、e)ポリAシグナル、及びf)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)2つの直列型MckEエンハンサー、b)TBGプロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ApoEエンハンサー、e)ポリAシグナル、及びf)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0102】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LMTP6):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)ApoEエンハンサー、b)3つの直列型MckEエンハンサー、c)CK8プロモーター、d)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、e)ポリAシグナル、及びf)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)ApoEエンハンサー、b)3つの直列型MckEエンハンサー、c)CK8プロモーター、d)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、e)ポリAシグナル、及びf)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0103】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LMTP13):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)ApoEエンハンサー、b)Spc5.12プロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)ApoEエンハンサー、b)Spc5.12プロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0104】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LMTP14):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)最小Spc5.12プロモーター、b)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、c)ポリAシグナル、及びd)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)最小Spc5.12プロモーター、b)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、c)ポリAシグナル、及びd)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0105】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LMTP15):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)ApoEエンハンサー、b)最小Spc5.12プロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)ApoEエンハンサー、b)最小Spc5.12プロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0106】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LMTP18):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)ApoEエンハンサー、b)MckEエンハンサー、c)CK8プロモーター、d)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、e)ポリAシグナル、及びf)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)ApoEエンハンサー、b)MckEエンハンサー、c)CK8プロモーター、d)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、e)ポリAシグナル、及びf)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0107】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LMTP19):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)ApoEエンハンサー、b)CK8プロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)ApoEエンハンサー、b)CK8プロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0108】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LMTP20):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)ApoEエンハンサー、b)MhcEエンハンサー、c)MckEエンハンサー、d)CK8プロモーター、e)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、f)ポリAシグナル、及びg)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)ApoEエンハンサー、b)MhcEエンハンサー、c)MckEエンハンサー、d)CK8プロモーター、e)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、f)ポリAシグナル、及びg)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0109】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LBTP1):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)ApoEエンハンサー、b)最小SP7/Osxプロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)ApoEエンハンサー、b)最小SP7/Osxプロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0110】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む(LBTP2):(1)該発現カセットの両側にAAV逆位末端配列(ITR)、(2)a)ApoEエンハンサー、b)SP7/Osxプロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、以下の成分を含む:(1)該発現カセットの両側にAAV2逆位末端配列、(2)a)ApoEエンハンサー、b)SP7/Osxプロモーター、c)ヒトAAT(ΔATG)プロモーター、d)ポリAシグナル、及びe)任意にヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロン、または他のイントロンを含む制御エレメント、ならびに(3)1つ以上の目的のRNAまたはタンパク質産物を提供する(例えば、コードする)導入遺伝子、例えば、表4A~4Dのもの。
【0111】
本明細書に記載の直列型の複合プロモーターは、該プロモーター領域内に好ましい転写開始部位をもたらす。例えば、実施例10の結果及び表14を参照されたい。従って、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、直列型または複合核酸調節配列を有し、これは、hAATプロモーター(特に、開始コドン修飾hAATプロモーター)を含み、転写開始部位TCTCC(配列番号43)(LMTP6配列番号6のヌクレオチド1541~1545に相当)、またはhAATに見られる活性転写部位(配列番号11または配列番号12の355~359に相当)または配列番号11のヌクレオチド139~157に相当するGGTACAATGACTCCTTTCG(配列番号41)、または配列番号12のヌクレオチド139~157に相当するGGTACAGTGACTCCTTTCG(配列番号42)を有する。他の実施形態では、本明細書に記載の構築物は、直列型または複合調節配列を有し、これは、CK8プロモーターを含み、配列番号16のヌクレオチド377~386に相当するTCATTCTACC(配列番号46)に転写開始部位を有し、特に、配列番号16のヌクレオチド377に相当するヌクレオチドまたは配列番号6のヌクレオチド1133に相当するヌクレオチドから開始する。
【0112】
本明細書に提供するウイルスベクターは、宿主細胞、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、またはハムスターに由来する宿主細胞を含めた哺乳類宿主細胞を使用して製造され得る。非限定的な例としては、A549、WEHI、10T1/2、BHK、MDCK、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10、VERO、W138、HeLa、293、Saos、C2C12、L、HT1080、HepG2、初代線維芽細胞、肝細胞、及び筋芽細胞が挙げられる。典型的には、該宿主細胞は、該導入遺伝子及び関連するエレメント(すなわち、該ベクターゲノム)、ならびに該宿主細胞でウイルスを生成するための遺伝子成分、例えば、複製及びカプシド遺伝子(例えば、AAVのrep及びcap遺伝子)をコードする配列で安定的に形質転換される。AAV8カプシドを有する組み換えAAVベクターを生成する方法については、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,282,199B2号の詳細説明のセクションIVを参照されたい。該ベクターのゲノムコピーの力価は、例えば、TAQMAN(登録商標)分析によって決定され得る。ビリオンは、例えば、CsCl2沈降によって回収され得る。別の方法として、昆虫細胞におけるバキュロウイルス発現系が、AAVベクターを生成するために使用され得る。総説に関しては、参照により製造技術に関して全体として本明細書に組み込まれるAponte-Ubillus et al.,2018,Appl.Microbiol.Biotechnol.102:1045-1054を参照されたい。
【0113】
インビトロアッセイ、例えば、細胞培養アッセイを使用して、本明細書に記載のベクターからの導入遺伝子発現を測定し、ひいては、例えば、ベクターの効力を示すことができる。例えば、PER.C6(登録商標)細胞株(Lonza)、ヒト胚網膜細胞に由来する細胞株、または網膜色素上皮細胞、例えば、網膜色素上皮細胞株hTERT RPE-1(ATCC(登録商標)から入手可能)が、導入遺伝子発現を評価するために使用され得る。別の方法として、肝臓または筋肉もしくは他の細胞型に由来する細胞株、例えば、限定されないが、HuH-7、HEK293、線維肉腫HT-1080、HKB-11、C2C12筋芽細胞、及びCAP細胞が使用され得る。発現後、血清半減期、タンパク質の機能活性(例えば、酵素活性または標的への結合)、グリコシル化及びチロシン硫酸化パターンの特定、ならびにタンパク質の特徴を特定するための当技術分野で既知の他のアッセイを含めた該発現産物(遺伝子導入産物)の特徴が特定され得る。
提供するのは、組み換えAAVの製造方法であり、これは、本明細書に記載の組み換えAAVを生成することができる宿主細胞を、導入遺伝子に作動可能に連結された合成プロモーターを含む発現カセットを備えた人工ゲノムを含む該組み換えAAVを生成するのに適した条件下で培養することを含む。特に、該方法は、(1)(i)導入遺伝子に作動可能に連結された本明細書に開示する複合核酸調節エレメントを含む核酸調節エレメントを含む組み換えシス発現カセットの両側に配置されたAAVのITRを含む人工ゲノム、(ii)培養中の宿主細胞で、AAV rep及びAAVカプシドタンパク質の発現を駆動し、AAV rep及びAAVカプシドタンパク質をトランスに提供する発現制御エレメントに作動可能に連結されたAAV rep及びAAVカプシドタンパク質をコードする、AAVのITRを欠くトランス発現カセット、ならびに(iii)該人工ゲノムの複製及びパッケージングを該AAVカプシドタンパク質により可能にする十分なアデノウイルスヘルパー機能を含む該宿主細胞を培養すること、ならびに(2)該細胞培養から、該人工ゲノムをカプシドで包んだ組み換えAAVを回収することを提供する。同様に提供するのは、(i)導入遺伝子に作動可能に連結された本明細書に開示する複合核酸調節エレメントを含む組み換えシス発現カセットの両側に配置されたAAVのITRを含む人工ゲノム、(ii)培養中の宿主細胞で、AAV rep及びAAVカプシドタンパク質の発現を駆動し、AAV rep及びAAVカプシドタンパク質をトランスに提供する発現制御エレメントに作動可能に連結されたAAV rep及びAAVカプシドタンパク質をコードする、AAVのITRを欠くトランス発現カセット、ならびに任意に、(iii)該人工ゲノムの複製及びパッケージングを該AAVカプシドタンパク質により可能にする十分なアデノウイルスヘルパー機能を含む宿主細胞である。特定の実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、表1のLSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、LTP3、LMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、LMTP20、LBTP1、またはLBTP2である。特定の実施形態では、該複合核酸調節エレメントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号30、または配列番号31を含むまたはそれからなる。ある特定の実施形態では、該人工ゲノムは、表4A~4Dに記載の治療薬の1つをコードする導入遺伝子を含む。
【0114】
5.4.治療的及び予防的使用
別の態様は、疾患または障害を遅延、予防、治療、及び/または管理するための、及び/またはそれに関連する1つ以上の症状を改善するための、導入遺伝子を本発明のrAAVベクターを介してそれを必要とする対象に投与することを含む治療に関する。それを必要とする対象としては、該疾患または障害に罹患している対象、またはその素因を有する対象、例えば、該疾患または障害を発症するまたはその再発を有するリスクがある対象が挙げられる。通常、特定の導入遺伝子を運ぶrAAVは、該導入遺伝子に対応する該対象の天然の遺伝子が、正確な遺伝子産物、または正確な量の遺伝子産物を提供する上で欠陥がある対象における所与の疾患または障害に関して利用される。次いで、該導入遺伝子は、該対象における欠陥のある遺伝子のコピーを提供することができる。
【0115】
通常、該導入遺伝子は、対応する天然の遺伝子に遺伝子変異(複数可)を有する対象に対して、タンパク質機能を戻すcDNAを含む。いくつかの実施形態では、該cDNAは、ゲノム工学、例えば、相同組み換えを介したゲノム編集を行うための関連するRNAを含む。いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、治療用RNA、例えば、shRNA、人工miRNA、またはスプライシングに影響を及ぼすエレメントをコードする。
【0116】
以下の表4A~4Dは、導入遺伝子のリストを提供し、これらは、本明細書に記載のrAAVベクターのいずれかにおいて、特に、本明細書に記載の新規な挿入部位において使用され、好ましくは、該導入遺伝子が関連する、表4A~4Dにも記載される疾患を治療または予防し得る。本明細書に記載の通り、該AAVベクターは、該導入遺伝子の送達のために適切な組織を標的として治療的または予防的使用をもたらすために本明細書に記載の通りに操作され得る。適切なAAV血清型は、ベクターの組織指向性及び形質導入を最適化するために操作するように選択され得る。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表7-1】
【表7-2】
【0117】
1つの例では、グリア由来神経栄養因子(GDNF)をコードする導入遺伝子を含むrAAVベクターは、パーキンソン病を治療/予防/管理するのに利用される。別の例では、抗カリクレイン抗体、例えば、ラナデルマブをコードする導入遺伝子を含むrAAVは、遺伝性血管性浮腫(HAE)を治療/予防/管理するのに利用される。さらに別の例では、リソソーム酵素をコードする導入遺伝子を含むrAAVは、ムコ多糖症を治療/予防/管理するのに利用される。一般に、該rAAVベクターは、全身投与され、形質導入後、該ベクターによるタンパク質産物の生成は、操作された肝臓特異的及び任意に筋特異的または骨特異的核酸調節エレメントを使用する発現カセットによって増強される。例えば、該rAAVベクターは、静脈内、筋内、及び/または腹腔内投与によって提供され得る。
【0118】
表4C及び4Dの治療用抗体に関して、該治療用抗体をコードする導入遺伝子に作動可能に連結された調節配列を含む発現カセットは、好ましくは、肝臓及び/または筋細胞を標的とするためまたはそこでの発現のため、AAV8カプシド、AAV9カプシドまたはAAVrh10カプシドを有する送達用rAAVにパッケージングされ得る。
【0119】
いくつかの態様では、本発明のrAAVは、治療/予防される障害または疾患と関連する標的組織への送達に利用される。特定の組織または細胞型に関連する疾患または障害は、体内の他の組織または細胞型と比較して、該特定の組織もしくは細胞型に大きな影響を及ぼすものであるか、または該障害の作用もしくは症状が該特定の組織もしくは細胞型で現れるものである。導入遺伝子を、それを必要とする対象の標的組織に送達する方法は、該対象に対して、該発現カセットが、導入遺伝子に作動可能に連結された、例えば、表1における核酸調節エレメントLSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、LTP3、LMTP6、LMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、LMTP20、LBTP1、またはLBTP2を含むrAAVを投与することを含む。
【0120】
標的細胞の形質導入に続いて、該タンパク質産物の発現は、かかる肝臓特異的発現カセットを使用することによって増強される。かかる増強は、以下の非限定的な測定のリストによって測定され得る。例えば、1)サンドイッチELISA、ウエスタンブロット、組織学的染色、及び液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)に限定されない、当業者に既知のアッセイによるタンパク質力価、2)結合アッセイ、機能アッセイ、酵素アッセイ及び/または基質検出アッセイ等のアッセイによるタンパク質活性、及び/または3)血清半減期または長期発現。導入遺伝子発現の増強は、ヒトの治療に有効でありかつ適すると特定され得る(Hintze,J.P.et al,Biomarker Insights 2011:6 69-78)。かかるインビトロ及びインビボでの細胞、血液及び組織の試験を使用した導入遺伝子の定量的及び機能的特性の評価は、ある特定の治療の有効性と相関することが分かっており(Hintze,J.P.et al,2011、上記)、本明細書に記載のベクターを用いた導入遺伝子の遺伝子治療に対する応答を評価するために使用される。
【0121】
本発明のrAAVベクターはまた、オリゴヌクレオチド、薬物、造影剤、無機ナノ粒子、リポソーム、抗体が挙げられるがこれらに限定されない本明細書に記載のキメラ調節配列に作動可能に連結された導入遺伝子の標的細胞または組織への送達、特に標的送達を促進し得る。該rAAVベクターはまた、特に、非コードDNA、RNA、またはオリゴヌクレオチドの標的組織への送達、特に標的送達を促進し得る。
【0122】
該薬剤は、当技術分野で既知の及び/または本明細書に記載の医薬的に許容される組成物として提供され得る。いくつかの実施形態では、該rAAV分子は、単独でまたは他の予防薬及び/または治療薬と組み合わせて投与され得る。
【0123】
本明細書に提供する投薬量及び投与頻度は、治療的に有効及び予防的に有効という用語に包含される。該投薬量及び頻度は、通常は、投与される特定の治療薬または予防薬、疾患の重症度及びタイプ、投与経路、ならびに当該患者の年齢、体重、反応、及び既往歴に応じて患者ごとに特定の要因に応じて変わり、医師の判断及び各患者の状況に応じて決定されるべきである。適切なレジメンは、かかる要因を考慮することによって及び例えば、文献で報告され、Physician’s Desk Reference(56th ed.,2002)で推奨されている投薬量に従って当業者によって選択され得る。予防薬及び/または治療薬は、繰り返し投与することができる。予防薬または治療薬を投与する時間的レジメン、及びかかる薬剤が別々にまたは混合物として投与されるかどうか等の手順のいくつかの側面が変わることがある。
【0124】
有効となる本発明の薬剤の量は、標準的な臨床技術によって決定され得る。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系に由来する用量反応曲線から外挿され得る。本発明の方法で使用される任意の薬剤の場合、該治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定され得る。用量は、細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の半数阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を得るために動物モデルにおいて策定され得る。かかる情報は、ヒトで有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0125】
予防薬及び/または治療薬、ならびにそれらの組み合わせは、ヒトでの使用の前に適切な動物モデル系で試験され得る。かかる動物モデル系としては、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギ等が挙げられるが、これらに限定されない。当技術分野で周知の任意の動物系が使用され得る。かかるモデル系は、広く使用されており、当業者に周知である。いくつかの好ましい実施形態では、ラット、マウス、または霊長類以外の他の小哺乳類に基づくCNS条件に関する動物モデル系が使用される。
【0126】
本発明の予防薬及び/または治療薬を動物モデルで試験した後、それらを臨床試験で試験し、それらの有効性を確立することができる。臨床試験の確立は、当業者に既知の一般的な方法に従って行われ、本発明の薬剤の最適な投薬量及び投与経路ならびに毒性プロファイルが確立され得る。例えば、臨床試験は、ヒト患者における有効性及び毒性について本発明のrAAV分子を試験するように設計され得る。
【0127】
本発明の予防薬及び/または治療薬の毒性及び有効性は、例えば、LD50(集団の50%致死用量)及びED50(集団の50%で治療有効用量)を決定するための細胞培養または実験動物における標準的な製薬手順によって決定され得る。毒性と治療効果の間の用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す予防薬及び/または治療薬が好ましい。毒性副作用を示す予防薬及び/または治療薬が使用される場合もあるが、非感染細胞への潜在的な損傷を最小化し、それにより、副作用を減少させるために、かかる薬剤を罹患組織の部位に標的化する送達システムを設計するように注意が払われるべきである。
【0128】
本発明のrAAV分子は、通常、所望の治療効果及び/または予防効果を得るために有効な時間及び量で投与される。該細胞培養アッセイ及び動物試験から得られるデータを、ヒトにおいて使用するための予防薬及び/または治療薬の投薬量の範囲及び/またはスケジュールを策定する際に使用することができる。かかる薬剤の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内に入る。該投薬量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変わり得る。
【0129】
患者のためのrAAVベクターの治療有効投薬量は、通常、濃度約1×109~約1×1016ゲノムrAAVベクター、または約1×1010~約1×1015、約1×1012~約1×1016、または約1×1014~約1×1016AAVゲノムを含む約0.1ml~約100mlの溶液である。該導入遺伝子の発現のレベルは、投薬量、頻度、スケジューリング等を決定/調整するために観察され得る。
【0130】
本発明の薬剤の治療有効量または予防有効量での対象の治療は、単回の治療を含むこともできれば、一連の治療を含むこともできる。例えば、本発明の薬剤を含む医薬組成物は、1日1回、1日2回、または1日3回投与され得る。いくつかの実施形態では、該薬剤は、1日1回、1日おき、週1回、週2回、2週間に1回、月1回、6週間に1回、2ヶ月に1回、年2回、または年1回投与され得る。ある特定の薬剤の有効投薬量、例えば、本発明の二重抗原結合分子を含む薬剤の有効投薬量は、治療の過程で増加または減少し得ることも理解される。
【0131】
本発明の薬剤を投与する方法としては、非経口投与(例えば、注入またはボーラス注射を含めた皮内、筋内、腹腔内、静脈内、及び皮下)、硬膜外、及び上皮または皮膚粘膜または粘膜内層(例えば、鼻腔内、経口粘膜、直腸、及び腸粘膜等)を介した吸収によるものが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、該導入遺伝子は、例えば、該導入遺伝子が発現され、血流に分泌される肝臓に貯蔵所を形成することによって、CNSで発現されることを意図している場合でも、静脈内に投与される。
【0132】
ある特定の実施形態では、本発明の薬剤は、静脈内または筋内に投与され、他の生物学的活性剤と一緒に投与され得る。
【0133】
別の特定の実施形態では、本発明の薬剤は、例えば、該製剤が持続放出をもたらす、ひいては投与された薬剤の半減期を延長する、持続放出製剤で送達され得る。使用に適した制御放出システムとしては、限定されないが、拡散制御、溶媒制御、及び化学的制御システムが挙げられる。拡散制御システムとしては、例えば、分子の放出が拡散障壁を通る透過によって制御されるように、本発明の分子が装置内に封入されたリザーバ装置が挙げられる。一般的なリザーバ装置としては、例えば、膜、カプセル、マイクロカプセル、リポソーム、及び中空糸が挙げられる。モノリシック(マトリックス)装置は、拡散制御システムのもう一つのタイプであり、二重抗原結合分子は、速度制御マトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)に分散または溶解される。本発明の薬剤は、速度制御マトリックス全体を通して均質的に分散され得、放出の速度は、マトリックスを通して拡散によって制御される。モノリシックマトリックス装置で使用するのに適したポリマーとしては、天然に存在するポリマー、合成ポリマー及び合成的に修飾された天然ポリマー、ならびにポリマー誘導体が挙げられる。
【0134】
当業者に既知の任意の技術を使用して、1つ以上の本明細書に記載の薬剤を含む持続放出製剤を生成することができる。例えば、米国特許第4,526,938号、PCT公開第WO91/05548号、PCT公開第WO96/20698号、Ning et al.,“Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel,”Radiotherapy & Oncology,39:179 189,1996、Song et al.,“Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions,”PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology,50:372 397,1995、Cleek et al.,“Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application,”Pro.Intl.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.,24:853 854,1997、及びLam et al.,“Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery,”Proc.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.,24:759 760,1997を参照されたい。これらの各々は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。1つの実施形態では、ポンプが、制御放出システムで使用され得る(Langer、上記、Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.,14:20,1987、Buchwald et al.,Surgery,88:507,1980、及びSaudek et al.,N.Engl.J.Med.,321:574,1989参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用して、二重抗原結合分子、またはその抗原結合断片を含む薬剤の制御放出を達成することができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974)、Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,N.Y.(1984)、Ranger and Peppas,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.,23:61,1983参照、同様に、Levy et al.,Science,228:190,1985、During et al.,Ann.Neurol.,25:351,1989、Howard et al.,J.Neurosurg.,7 1:105,1989)、米国特許第5,679,377号、米国特許第5,916,597号、米国特許第5,912,015号、米国特許第5,989,463号、米国特許第5,128,326号、PCT公開第WO99/15154号、及びPCT公開第WO99/20253号も参照のこと)。さらに別の実施形態では、制御放出システムを治療標的の近傍(例えば、罹患関節)に配置することができ、この結果として、全身用量の一部を必要とするのみである(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,上記,vol.2,pp.115 138(1984)参照)。他の制御放出システムは、Langer,Science,249:1527 1533,1990による総説に論じられている。
【0135】
さらに、該rAAVは、科学的研究のための導入遺伝子のインビボ送達、例えば、miRNAでの遺伝子ノックダウン、条件遺伝子欠失用のリコンビナーゼ送達、CRISPRでの遺伝子編集等に使用することができる。
【0136】
5.5.医薬組成物及びキット
本発明は、さらに、医薬的に許容される担体及び本発明の薬剤を含む医薬組成物を提供し、該薬剤は、導入遺伝子カセットを含む本発明のrAAV分子を含み、該導入遺伝子の発現は、本明細書に記載のキメラ調節エレメントによって駆動される。好ましい実施形態では、該医薬組成物は、rAAVを、対象への投与のための医薬的に許容される担体と組み合わせて含む。特定の実施形態では、「医薬的に許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されていること、または米国薬局方もしくは動物、より具体的にはヒトにおいて使用するための他の一般的に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、薬剤とともに投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイント完全及び不完全アジュバント)、賦形剤、または媒体を指す。かかる医薬担体は、滅菌液体、例えば、水及び、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等を含めた、石油、動物、植物、または合成起源のものを含めた油であり得る。水は、該医薬組成物が静脈内または筋内に投与される場合に一般的な担体である。生理食塩水ならびに水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、特に注射剤用の液体担体として使用され得る。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。医薬的に許容される担体、賦形剤、及び安定剤のさらなる例としては、緩衝剤、例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸、アスコルビン酸を含めた抗酸化剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン及びゼラチン、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含めた単糖、二糖、及び他の炭水化物、キレート剤、例えば、EDTA、糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトール、塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、及び/または非イオン性界面活性剤、例えば、当技術分野で既知のTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONIC(商標)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物はまた、上記の成分に加えて、滑沢剤、湿潤剤、甘味料、香味剤、乳化剤、懸濁剤、及び防腐剤を含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続放出製剤等の形態をとり得る。
【0137】
本発明のある特定の実施形態では、医薬組成物は、本発明の方法に従って使用するために提供され、該医薬組成物は、治療有効量及び/または予防有効量の本発明の薬剤を医薬的に許容される担体とともに含む。
【0138】
好ましい実施形態では、本発明の薬剤は、実質的に純粋である(すなわち、その効果を制限するまたは望ましくない副作用をもたらす物質を実質的に含まない)。特定の実施形態では、宿主または対象は、動物、好ましくは、哺乳類、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット等)及び霊長類(例えば、サル、例えば、カニクイザル及びヒト)である。好ましい実施形態では、該宿主は、ヒトである。
【0139】
本発明は、上記の方法において使用され得るキットをさらに提供する。1つの実施形態では、キットは、例えば、1つ以上の容器内に、1つ以上の本発明の薬剤を含む。別の実施形態では、キットは、さらに、1つ以上の容器内に、状態の治療に有用な1つ以上の他の予防薬または治療薬を含む。
【0140】
本発明はまた、薬剤または活性剤の量を示す密封容器、例えば、アンプルまたはサシェに包装された本発明の薬剤を提供する。1つの実施形態では、該薬剤は、密封容器において乾燥した滅菌凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として供給され、例えば、水または生理食塩水で、対象への投与に適した濃度に再構成され得る。通常、該薬剤は、少なくとも5mg、より多くの場合、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、または少なくとも75mgの単位投薬量で密封容器において乾燥した滅菌凍結乾燥粉末として供給される。凍結乾燥した薬剤は、その元の容器において2~8℃の間で保存されるべきであり、該薬剤は、再構成された後12時間以内、通常は6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与されるべきである。代替的な実施形態では、本発明の薬剤は、薬剤または活性剤の量及び濃度を示す密封容器において液体形態で供給される。通常、該薬剤の液体形態は、密封容器において少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/kg、または少なくとも25mg/mlで供給される。
【0141】
本発明の組成物には、医薬組成物の製造において有用なバルク薬物組成物(例えば、不純または非滅菌組成物)及び医薬組成物(すなわち、対象または患者への投与に適した組成物)が含まれる。バルク薬物組成物は、例えば、予防有効量または治療有効量の本明細書に開示する薬剤またはそれら薬剤と医薬的に許容される担体の組み合わせを含む単位剤形の調製に使用され得る。
【0142】
本発明は、さらに、本発明の薬剤のうちの1つ以上で満たされた1つ以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。また、標的疾患または障害の治療に有用な1つ以上の他の予防薬または治療薬もまた、該医薬パックまたはキットに含まれ得る。本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分のうちの1つ以上で満たされた1つ以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。かかる容器(複数可)に任意に伴うものは、薬剤またはバイオ医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって規定された形式の掲示である可能性もあり、この掲示は、ヒトへの投与についての製造、使用または販売の当局による承認を反映する。
【0143】
通常、本発明の組成物の成分は、例えば、薬剤または活性剤の量を示す密封容器、例えば、アンプルまたはサシェにおいて、乾燥した凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、別々にまたは単位剤形で一緒に混合して供給される。該組成物が注入によって投与される場合、それは、滅菌した医薬グレードの水または生理食塩水を含む注入ボトルを用いて投薬され得る。該組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分が混合され得るように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【実施例】
【0144】
6.実施例 6.1.実施例1-直列型プロモーターの構築
6.1.1.肝臓特異的プロモーター(LSPX)
図1は、任意の導入遺伝子とともに使用するための直列型プロモーターの様々な配置を示す。これらのプロモーター配列は、特に肝細胞内で遺伝子治療ベクターの発現を与えるように合理的に設計されたプロモーターであった。これらエレメントの配列は、一部は、標準的なプロモーター、例えば、TBG及びhAATプロモーターに由来し、カセットは、標準的な分子生物学の技術を使用してAAV(シス)プラスミドにクローニングした。例えば、本明細書の実施例で使用したApoE.hAATプロモーターを、
図1の通りに構築した。ここでは、1つの肝臓制御領域は、hAATプロモーター配列(配列番号11)の上流にApoEエンハンサー(配列番号9)を含む。以下は、各肝臓特異的プロモーターの説明である。
【0145】
LSPX1:この配列は、アルファ-Mic/Bikエンハンサー(TBGプロモーター由来)の2つのコピー、ApoEエンハンサー、及びhAATプロモーターを含む。キメラβ-グロビン/Igイントロンを、プロモーター配列の下流(3’)に配置した。
【0146】
LSPX2:このプロモーターには、ApoEエンハンサーの2つのコピー及びhAATプロモーターを含む。標準的なhAATプロモーターカセットは、ApoEエンハンサーのコピーを1つ含むのみである。キメラβ-グロビン/Igイントロンを、プロモーター配列の下流(3’)に配置した。
【0147】
6.1.2.肝臓特異的直列型プロモーター(LTP)
2つのプロモーター(直列方式)から単一の導入遺伝子を発現させるための新規なアプローチを、3’プロモーターの「ATG」配列を枯渇させることによって使用した(
図1)。以下のプロモーターカセットは、この戦略を利用して、肝臓から特異的に導入遺伝子を発現させる。
【0148】
LTP1:この配列は、アルファ-Mic/Bikエンハンサーの2つのコピーとそれに続くTBGプロモーターを含む。TBGプロモーターの下流は、「ATG」配列が枯渇したhAATプロモーター配列(すなわち、hAAT-ΔATG)である。理論に拘束されることを望むものではないが、下流のプロモーターからATG部位が削除された直接型プロモーターは、2つのmRNA転写物の発現、すなわち、宿主細胞の転写機構に応じた各プロモーターによる駆動を可能にするが、タンパク質の翻訳開始は、カセット内のタンパク質コード配列の単一の意図された開始コドンで生じる。この戦略は、タンパク質開始コドンの上流に余分なATG部位を含む直列型プロモーターと比較して、より効率的及び堅牢な発現をもたらすはずである。キメラβ-グロビン/Igイントロンを、プロモーター配列の下流(3’)に配置した。
【0149】
LTP2:この配列は、アルファ-Mic/Bikエンハンサーのさらに上流にApoEエンハンサーを含むこと以外はLTP1(TBGプロモーターの下流にhAAT-ΔATGを含む)と同様である。キメラβ-グロビン/Igイントロンを、プロモーター配列の下流(3’)に配置した。
【0150】
LTP3:この設計は、LTP1と同様である(TBGプロモーターの下流にhAAT-ΔATGを含む)。しかしながら、これは、他のプロモーターエレメントの下流に、キメラβ-グロビン/Igイントロンの代わりにApoEエンハンサーを有する合成イントロンを含む。
【0151】
6.1.3.肝臓/筋二重特異性直列型プロモーター(LMTP)
2つのプロモーター(直列方式)から単一の導入遺伝子を発現させるためのアプローチを、3’プロモーターの「ATG」配列を枯渇させることによって使用した(
図5及び8A)。以下のプロモーターカセットは、この戦略を利用して、肝臓及び筋肉での二重の導入遺伝子発現を達成する。
【0152】
LMTP6:これは、肝臓細胞及び筋細胞の両方で発現を示す直列型プロモーターカセットである。これは、ApoEエンハンサーに続いて完全なCK8プロモーターカセット(CK8プロモーター配列の上流にMckエンハンサー(MckE)の3つのコピーを含む)を含む。CK8プロモーターの下流は、ATG部位が枯渇したhAATプロモーターである。このカセットは、理論的には2つの転写物の発現を可能にする。このCK8プロモーターは、筋細胞型内で転写物を発現するが、hAAT-ΔATGは、肝細胞内で転写物を産生する。この場合も、両方の転写物に見られる最初の「ATG」開始コドンは、意図された翻訳部位に生じる。
【0153】
LMTP13:この直列型プロモーターカセットは、肝臓細胞と筋細胞の両方で導入遺伝子を発現するように操作した。これは、ApoEエンハンサーに続いて、完全なSpc5.12プロモーターカセットを含む。Spc5.12プロモーターの下流は、ATG部位が枯渇したhAATプロモーターである。上記の実施例と同様に、カセットLMTP13、LMTP14、LMTP15、LMTP18、LMTP19、及びLMTP20はすべて、理論的には2つの転写物の発現を可能にする。1つは筋細胞発現に特異的であり、1つは肝臓細胞発現に特異的である。キメラβ-グロビン/Igイントロンを、プロモーター配列の下流(3’)に配置した。
【0154】
LMTP14:この配列は、ATG部位が枯渇したhAATプロモーターの上流に、最小Spc5.12プロモーターを含む。VH4イントロンは、プロモーター配列の下流(3’)に配置した。
【0155】
LMTP15:この配列は、ApoEエンハンサーに続いて、最小Spc5.12プロモーターを含む。hAAT-ΔATGは、最小Spc5.12プロモーターの下流に配置される。VH4イントロンは、プロモーター配列の下流(3’)に配置した。
【0156】
LMTP18:この直列型プロモーター配列は、5’から3’に、Mckエンハンサー(MckE)の1つのコピーの上流にApoEエンハンサー、CK8プロモーター、及び最後にhAAT-ΔATGプロモーターを含むように構築した。キメラβ-グロビン/Igイントロンを、プロモーター配列の下流(3’)に配置した。
【0157】
LMTP19:この直列型プロモーター配列は、5’から3’に、CK8プロモーターの上流にApoEエンハンサー(Mckエンハンサーエレメントを欠く)、続いてhAAT-ΔATGプロモーターを含むように構築した。
【0158】
LMTP20:この直列型プロモーター配列は、5’から3’に、Mckエンハンサー(MckE)の2つのコピーの上流にApoEエンハンサー、CK8プロモーター、その後続いてhAAT-ΔATGプロモーターを含むように構築した。
【0159】
これらの配列エレメントを含むAAVプロウイルス(シス)プラスミドもまた感染性ベクター粒子にパッケージングし、遺伝子治療用の製剤として精製した。
【0160】
6.1.4.肝臓/骨二重特異性直列型プロモーター(LBTP)
骨/肝臓二重特異性直列型プロモーターを設計し、組み換え技術によってシスプラスミドに組み込んだ。
図8Bを参照されたい。
【0161】
LBTP1:骨芽細胞特異的発現を駆動する最小Sp7/Osxプロモーター断片は、Sp7/Osxプロモーターの転写活性のある断片であると特定された(Lu,X.,et al.JBC 281,6297-6306,January 12,2006、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。LBTP1配列は、5’に肝臓特異的ApoEエンハンサー/肝臓制御領域、及び3’にATGトリヌクレオチドが枯渇したhAATプロモーター(hAAT-ΔATG)が配置された最小Sp7プロモーター断片(配列番号30)の1つのコピーを含み、
図1に示す通り、肝細胞特異的発現を駆動する。キメラβ-グロビン/Igイントロンを、プロモーター配列の下流(3’)、すなわち、hAATΔATGの下流に配置した。
【0162】
LBTP2:完全長Sp7/Osxプロモーター(Lu,X.,et al.JBC 281,6297-6306,January 12,2006、参照により全体として本明細書に組み込まれる)(配列番号31)は、5’に肝臓特異的ApoEエンハンサー/肝臓制御領域、及び3’にATG部位が枯渇したhAATプロモーター(hAAT-ΔATG)が配置され、
図2に示す通り、肝細胞特異的発現を駆動する。理論に拘束されることを望むものではないが、この設計は、2つのmRNA転写物の発現を可能にし得る(骨プロモーター及び肝臓プロモーターの各々によって駆動される)。しかしながら、タンパク質の翻訳開始は、タンパク質コード配列の単一の意図された開始コドンでのみ生じる。キメラβ-グロビン/Igイントロンを、プロモーター配列の下流(3’)、すなわち、hAAT-ΔATGの下流に配置した。
【0163】
LBTP1及びLBTP2プロモーターを含むシスプラスミドを、リソソーム酵素(導入遺伝子)を発現するように構築し、カセット全体の両側にAAVのITRを配置した。LBTP1またはLBTP2プロモーターは、特に骨芽細胞及び肝細胞において遺伝子治療ベクターの発現をもたらすと期待されている。これらの配列エレメントを含むAAVプロウイルス(シス)プラスミドを、感染性ベクター粒子にパッケージングし、遺伝子治療用の製剤として精製することができる。
【0164】
6.2.実施例2-肝臓特異的プロモーターによって駆動されるGFP発現
GFPに作動可能に連結された汎用CAGプロモーター(配列番号17)を使用した構築物を含めた
図1に示す8種のGFP発現構築物(AAVシスプラスミド)を、HuH7及びC2C12細胞にトランスフェクトした。簡潔には、Huh-7細胞及びC2C12細胞を、37℃の5%CO
2インキュベータにて、10%ウシ胎児血清及びペニシリン-ストレプトマイシン(100U/ml)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(Corning,Corning,NY,USA)に維持した。一過性トランスフェクションを、それぞれ、6ウェルプレートにて、Lipofectamine 3000(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を使用して、GFPを発現する各ベクタープラスミド1μgを用いて行った。48時間のトランスフェクション後、細胞ペレット及び培地を回収し、さらに処理するまで-20℃で保存した。LTP3を除く各構築物は、さらに、ヒトβ-グロビン及びIg重鎖に由来するキメライントロンをプロモーター配列の下流(3’)に含む。様々なベクターの遺伝子発現の結果を表5、
図2、
図3、及び
図4に示す。LSPX1(配列番号1)、LSPX2(配列番号2)、LTP1(配列番号3)、LTP2(配列番号4)、及びLTP3(配列番号5)は肝臓特異性を維持している。
【表8】
【0165】
6.3.実施例3-直列型肝臓及び筋特異的プロモーターの遺伝子発現の分析
実施例2と同様の実験において、
図5に示す発現カセット、
図1に示すhAATプロモーターカセット、ならびに図には示さず、ITRが両側に配置されたさらなる対照CAGプロモーター(配列番号17)構築物を有する5種のGFP発現構築物(AAVシスプラスミド)を、HuH7及びC2C12細胞にトランスフェクトし、遺伝子発現を評価した。
【0166】
図6は、構築物CAG(汎用、配列番号17)、hAAT(肝臓特異的、配列番号11)、CK8(筋特異的、配列番号16)、及びLMTP6(二重特異性、配列番号6)のGFP遺伝子発現の相対強度を示す。キメライントロンを含むLMTP6構築物(LMTP6プラスイントロン)は、イントロンを含まないLMTP6と比較して、GFP遺伝子発現の増加を示す。
図7のGFP発現の定量的尺度も参照されたい。
【0167】
図3に示す通り、すべての肝臓特異的プロモーターは、筋細胞でのGFP発現についてはサイレントであるが、対照筋プロモーター(Spc512、CK8)及びLMTP6、すなわち、筋肉及び肝臓の両方に対して二重特異性であるプロモーターは、アクティブである。
【0168】
実施例2と同様の他の実験を、LMTP13(配列番号21)、LMTP14(配列番号22)、LMTP15(配列番号23)、LMTP18(配列番号24)、LMTP19(配列番号25)、LMTP20(配列番号26)(
図8A)及びそれらが筋細胞由来細胞株であるC2C12でGFP発現を駆動する能力(
図9A及び9B)を調べるために行った。肝臓/筋二重特異性プロモーターLMTP13は、筋特異的Spc5.12及び最小Spc5.12の両プロモーターと比較して、GFP発現を駆動する能力の向上を示す。LMTP14、LMTP15、及び最小Spc5.12プロモーターは、同等のGFP発現レベルを達成し、陰性対照及び肝臓特異的hAATプロモーターよりも優れている。LMTP6及びLMTP20は、筋特異的CK8プロモーターよりも優れている。調べたすべてのLMTP構築物は、陰性対照及び肝臓特異的hAATプロモーターの両方と比較して、GFP発現の増加を示す。
【0169】
6.4.実施例4-抗血漿カリクレイン抗体の発現を駆動する直列型肝臓特異的及び直列型肝臓/筋特異的プロモーターの遺伝子発現の分析
pKal抗体(Mab1)の重鎖及び軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む導入遺伝子を含むcDNAベースのベクターを構築した。この軽鎖及び重鎖をコードするヌクレオチド配列を、Furin-F2Aリンカー(RKRR(GSG)APVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP)またはFurin-T2AリンカーRKRR(GSG)EGRGSLLTCGDVEENPGP)により分離して、バイシストロン性ベクターを創出した。このベクターにはさらに、ある特定の実施形態では、構成的CAGプロモーターを含めた。
【0170】
上記表1は、肝臓特異的発現(LSPX1、LSPX2、LTP1、LTP2、またはLTP3、それぞれ、配列番号1~5)、肝臓及び筋肉の発現(LMTP6、LMTP13、LMTP15、LMTP18、LMTP19またはLMTP20、それぞれ、配列番号6、21~26)、肝臓及び骨の発現(LBTP1またはLBTP2、それぞれ、配列番号30~31)を促進するように発現カセットに組み込まれ、導入遺伝子に作動可能に連結され得る複合核酸調節配列の配列を提供している。提供する他のプロモーター配列は、ApoE.hAAT(配列番号37、上記表1)プロモーターを含み、ここでは、肝臓特異的アポリポタンパク質E(ApoE)エンハンサーの4つのコピーを、ヒトアルファ1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターの上流に配置した。
【0171】
pKal Mab1を発現するシスプラスミドをAAVにパッケージングし、その後、rAAV粒子をAAVによる形質導入の効力について評価した。各シスプラスミドは、CAG(配列番号17)、ApoE.hAAT(配列番号37)またはLMTP6(配列番号6)プロモーターによって駆動されるマルチシストロンであるMab1抗体の軽鎖及び重鎖を含んでいた。完全長Mab1抗体の軽鎖及び抗体の重鎖の遺伝子は、各抗体鎖の別々の発現を確実にするためにフューリン2Aリンカーによって分離した。カセット全体の両側にAAV2のITRを配置し、そのゲノムをC2C12細胞への送達のためにAAV8カプシドに包む(ウェルあたり1E
10vg)。抗体タンパク質を検出するために、形質導入後、これらの細胞をFITCコンジュゲート抗Fc(IgG)抗体で処理する。AAV8.CAG.Mab1及びAAV8.LMTP6.Mab1感染細胞は、筋細胞で高発現を示すが、AAV8.hAAT.Mab1感染は、筋細胞での抗体の発現を引き起こさない(
図10)。DAPI(DNA)染色で見られるように、細胞はすべての試験ウェルで等しくコンフルエントで生存しているように見えた(
図10)。
【0172】
6.5.実施例5-様々なプロモーターによって駆動されるAAV8.Mab1ベクターで処理したマウスにおける抗体発現及びベクターの生体内分布
チロキシン結合グロブリン(TBG、配列番号10)及びアルファ-1アンチトリプシン(hAAT、配列番号11)プロモーターは、過去の前臨床及び臨床遺伝子治療試験で、肝臓特異的プロモーターとして広く使用されている。複数のプロモーター及びエンハンサーに由来する設計されたプロモーターカセットのパネルを生成し、ヒト肝臓細胞株であるHuh7細胞をトランスフェクトすることによってインビトロで調べた。ApoE.hAAT(配列番号37)、LSPX1(配列番号1)、LSPX2(配列番号2)、LTP1(配列番号3)及びLMTP6(配列番号6)を含めたプロモーター候補を選択した。次に、これらのプロモーター候補によって調節されるMab1をコードするAAV8ベクターを生成した。CAG及びTBGプロモーターによって調節されるMab1をコードするAAV8ベクターは、それぞれ、ユビキタス及び肝臓特異的プロモーターの対照として機能した。これらのプロモーターの強度及びベクターの生体内分布を、各野生型マウスのベクターゲノムコピーと比較したMab1タンパク質の発現を測定することによりインビボで調べた。
【0173】
ベクターを、C57Bl/6マウスに対して、等用量(2.5×1012vg/kg)にて静脈内に投与した。マウスの血清を2週間に一度採取し、Mab1タンパク質発現レベルをELISAによって測定した。ベクター投与の49日後に肝臓サンプルを採取した。各サンプル中のウイルスゲノムの存在は、Mab1プローブ及びプライマーを使用してDroplet Digital PCR(ddPCR)(Stilla製NAICA(商標)システム)により定量化した。グルカゴンのゲノムコピー数もまた各サンプルで同時に測定し、ウイルスゲノムを次に正規化し、細胞あたりのベクターゲノムコピー数として示した(2グルカゴン/細胞と仮定)。統計分析は、GraphPad Prism8にて一元配置分散分析を使用して行った。
【0174】
肝臓特異的プロモーターを有するAAV8ベクターの中で、ApoE.hAAT(配列番号37)及びLMTP6(配列番号6)プロモーターによって駆動されるベクターが、すべての時点で最高量のタンパク質発現をもたらした(
図11A)。それに対して、生体内分布データについては、異なるプロモーターによって駆動されるベクターで処理した動物の肝臓サンプルの細胞あたりのベクターゲノムコピー数に有意差はなかった(
図11B)。
【0175】
すべての肝臓特異的プロモーターは、TBGプロモーター(配列番号10)よりも優れており、二重特異性LMTP6プロモーター(配列番号6)は、一貫して血清中で最も高い発現を示す(μg/ml)(
図11A)。
【0176】
6.6.実施例6:静脈内投与後に組織特異的プロモーターによって調節されるMab1発現の特性評価
ApoE.hAAT(配列番号37)またはLMTP6(配列番号6)プロモーターによって調節されるMab1(抗pKal抗体)発現の試験に焦点を合わせ、(実施例5に)類似のインビボ実験を行った。AAV8ベクター(2.5×10
12vg/kg)を、成体C57BL/6マウス(N=5/群)に対して静脈内投与した。Mab1レベルを、マウス血清から様々な時点でELISAにより定量化した。LMTP6プロモーターによって駆動されるベクターは、抗体濃度の有意な増加を7日目に示した(
図12A)。
【0177】
さらに、肝臓及び心臓での導入遺伝子の発現を、全組織でGAPDHに正規化したMab1 mRNAコピーのddPCR分析で定量化した。ApoE.hAAT及びLMTP6駆動ベクターは、肝臓において、CAGと比較して導入遺伝子発現の増加を示した。LMTP6は、心筋において、CAGプロモーターと同等の発現を示したが、hAAT活性ははるかに低下した(
図12B)。
【0178】
6.7.実施例7:筋内投与後に組織特異的プロモーターによって調節されるMab1発現の特性評価
過去の試験では、ApoE.hAAT(配列番号37)またはLMTP6(配列番号6)プロモーターによって調節されるAAV8によるMab1の高肝臓駆動発現が特定された。本試験の目的は、腓腹筋(GA)筋にMab1ベクターを直接注入した後のLMTP6プロモーターの筋駆動発現を特徴づけることであった。動物は、5×10
10vgの両側注射をGA筋に受けた。血清を2週間に一度採取し、全身Mab1濃度を測定した(
図13A)。注射の49日後に動物を捕獲し、関連組織(肝臓、GA筋、心臓)を、ベクターの生体内分布及び導入遺伝子発現に関して分析した。
【0179】
遺伝子発現がApoE.hAAT及びLMTP6プロモーターによって調節されるベクターは、すべての時点で、CAGプロモーター駆動発現と比較して、血清中の抗体濃度の有意な増加を示した(
図13A)。本実験では、ApoE.hAATとLMTP6に有意差はなかった。ベクター化Mab1の細胞あたりのベクターゲノムコピーを、GA、肝臓及び心臓で検出及び定量化し(
図13B)、二重筋/肝臓プロモーターであるLMTP6ベクターでは、心臓において、顕著に異なる高ゲノム量が検出された。肝臓のRNA発現の増加はまた、GA筋に直接注入されたすべての試験ベクターでも49日目に検出された(参照遺伝子と比較した相対的な遺伝子発現比)(
図13C)。肝臓、GA筋、及び心臓の各々からの遺伝子発現(mRNAμg/mL)データ(
図13D)は、筋内投与後の肝臓及び筋組織におけるLMPT6の二重特異性を示すが、ApoE.hAAT駆動サンプルは、筋肉においてLMTP6及びCAGと比較して減少した。ApoE.hAAT群とLMTP6群の間にも有意差が見られた。
【0180】
6.8.実施例8-酵素の発現を駆動する直列型肝臓特異的及び直列型肝臓/筋特異的プロモーターの遺伝子発現の分析
6.8.1.リソソーム酵素のインビトロ発現
Huh7細胞(肝細胞)を異なるプロモーターによって駆動されるリソソーム酵素で形質導入し、タンパク質前駆体の分泌について調べたこと以外は(実施例4と)同様のインビトロ実験を行った(
図14)。
【0181】
6.8.2.リソソーム酵素のインビボ発現
インビボ試験をC57BL/6マウスで行い、これら野生型マウスへのAAV送達で発現されたリソソーム酵素の血清発現及び活性を評価した。0日目に、各動物に、5e12GC/kg体重(最終用量1e11GC/動物)のシスプラスミドをIVにより投与した。12週間、すべての動物から血清/血漿を2週間に一度、従って、0、2、4、6、8、10、12週で採取(剖検時)。動物は、剖検時にPBSで灌流し、器官から血液を除去した後、サンプルを採取した。各血液サンプルから血清を採取し、リソソーム酵素活性を分析した。インビボで導入遺伝子の発現を駆動する異なるプロモーターを含む各サンプルの生体内分布の分析のため、剖検時に組織も採取した。
【表9】
【0182】
採取した血清中の酵素活性を調べたところ、LSPX1、LTP1、及びLMTP6は、84日目まで、未処置(内因性の血清酵素レベル)またはTBG1駆動構築物よりも高い活性を有する適切な酵素を発現すると思われる。
【0183】
6.9.実施例9-直列型肝臓及び骨特異的プロモーターの遺伝子発現の分析
6.9.1.GFPのインビトロトランスフェクション及び発現
実施例2と同様の実験で、GFPに作動可能に連結された汎用CAGプロモーターを使用した構築物を含めた
図8Bに示すGFP発現構築物(AAVシスプラスミド)を、HuH7及びhFOB1.19細胞にトランスフェクトする。簡潔には、Huh-7細胞及びhFOB1.19細胞を、37℃の5%CO
2インキュベータにて、10%ウシ胎児血清及びペニシリン-ストレプトマイシン(100U/ml)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(Corning,Corning,NY,USA)に維持する。一過性トランスフェクションを、6ウェルプレートにて、Lipofectamine 3000(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を使用して、GFPを発現する各ベクタープラスミド1μgを用いて行う。48時間後、トランスフェクションを蛍光顕微鏡検査法で評価し、細胞ペレット及び培地を回収し、さらに処理するまで-20℃で保存する。
【0184】
6.9.2.目的の遺伝子のインビトロ形質導入及び発現
抗体、リソソーム酵素または目的の他の遺伝子を発現するシスプラスミドをAAVにパッケージングし、rAAV粒子を、AAVによる形質導入の効力について評価する。各シスプラスミドは、リソソーム酵素または目的の他の遺伝子、例えば、同じプロモーターによって駆動されるマルチシストロンである抗体の軽鎖及び重鎖を含む。抗体導入遺伝子の例では、完全長抗体の軽鎖及び抗体の重鎖の遺伝子は、各抗体鎖の別々の発現を確実にするためにフューリン2Aリンカーによって分離する。カセット全体の両側にAAV2のITRを配置し、そのゲノムをhFOB1.19細胞への送達のためにAAV8カプシドに包む。タンパク質を検出するために、形質導入後、これらの細胞をFITCコンジュゲート抗導入遺伝子抗体または他の検出方法で処理する。AAV8.CAG.導入遺伝子、AAV8.TBG.導入遺伝子、及び/またはAAV8.hAAT.導入遺伝子を対照として使用する。細胞のコンフルエンシーと生存率は、DAPI染色を使用して確認する。
【0185】
6.9.3.ベクター化抗体のインビボ発現
マウスに、異なる肝臓特異的、肝臓直列及び肝臓・骨プロモーター(LBTP1及びLBTP2)によって調節される治療用抗体(例えば、表4Cまたは4Dに含まれるもの)をコードする導入遺伝子をコードするrAAV8ベクター2.5E12gc/kgまたは1E13gc/kgをIV注射し、この導入遺伝子の血清発現を評価する。CAG及びTBGプロモーターを対照として使用する。血清を1週間間隔でマウスから採取する。
【0186】
6.10.実施例10-直列型プロモーターによって駆動される遺伝子からのRACE反応生成物からの翻訳開始部位の分析
6.10.1.cDNA末端の迅速増幅(RACE)産物の生成
異なるプロモーターによって駆動されるDNA導入遺伝子(高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP))を含むプラスミドを、筋芽細胞株(C2C12細胞)または肝臓細胞株(Huh7細胞)にトランスフェクトした。全RNAを、トランスフェクトされた細胞から、トランスフェクションの2~5日後にNucleoSpin RNAキット(アイテム番号REF 740955、Macherey-Nagel,Germany)を使用して抽出した。cDNAを、遺伝子特異的プライマー(SP1、表7、配列番号38)及び第2世代RACEキット(カタログ番号03353621001、Roche)を使用し、標準的な指導法により合成した。cDNAの合成後、ホモポリマーAテールを、組み換えターミナルトランスフェラーゼ及びdATPを用いてファーストストランドcDNAの3’末端に付加した。dAテールcDNAは、Expand High Fidelity PCR System(Millipore Sigma、カタログ番号11732641001)を使用し、SP2及びオリゴdTアンカープライマー(表7、それぞれ、配列番号39及び配列番号40)で増幅した。複数の可変長生成物が予想されたため、個々のバンドをゲル抽出で単離せず、その代わりに生成物全体を一緒に精製し、その後配列決定及び分析した。
【表10】
【0187】
6.10.2.RACE生成物の分析:配列決定及びデータ処理
cDNA末端の迅速増幅(RACE)反応生成物を、GENEWIZ(登録商標)Amplicon-EZシステム(South Plainfield,NJ,USA)によるILLUMINA(登録商標)(San Diego,CA,USA)プラットフォームでの増幅産物ベースの配列決定に供した。
【0188】
得られたファイルタイプfastq.gzの配列データを、usegalaxy.orgによるオープンソースのデータ分析ツールを介して処理した(Afgan,et al.“The Galaxy platform for accessible,reproducible and collaborative biomedical analyses:2018 update”,Nucleic Acids Research,Volume 46,Issue W1,2 July 2018,Pages W537-W544,doi:10.1093/nar/gky379)。
図15を参照されたい。「リード」とは、鋳型の配列を表す途切れのない一連のヌクレオチドを指す。この場合、各リードは、試験サンプルからのRNA転写物のcDNAコピーを表す。同じ開始部位を有するRNA転写物の数の測定値は、最も転写的に活性な部位を示す。
【0189】
簡潔には、順方向及び逆方向のリードの終わりにある低クオリティのベースコールを、Trimmomaticを使用して削除した(または「トリミングした」)(Bolger,AM,et al.,“Trimmomatic:a flexible trimmer for Illumina sequence data”,Bioinformatics,Volume 30,Issue 15,1 August 2014,Pages 2114-2120,doi.org/10.1093/bioinformatics/btu170)。RNAアライメントツールを使用して、参照プラスミド配列に対してペアードドエンドリードをアライメントしてBAMファイルを得、別のツール、Samtools viewを次いで実行し、BAMファイルからのアライメントされていないリードを削除した(Li,H.et al.,2009,“The Sequence Alignment/Map format and SAMtools.”Bioinformatics,25(16),pp.2078-2079.doi:10.1093/bioinformatics/btp352)。データの処理を続行するために、BAMからSAMへのツールを使用してバイナリBAMファイルを表形式のSAMファイルに変換した。その後のデータ操作ステップは、Microsoft(登録商標)Excelで行った(Li,H.et al.,2009,Bioinformatics,上記、Li,H.,2011,“Improving SNP discovery by base alignment quality.”Bioinformatics,27(8),pp.1157-1158,doi:10.1093/bioinformatics/btr076、Li,H.,2011,“A statistical framework for SNP calling,mutation discovery,association mapping and population genetical parameter estimation from sequencing data.”Bioinformatics,27(21),pp.2987-2993,doi:10.1093/bioinformatics/btr509)。MAPQ値が60未満かつ長さが20未満のリードを削除した。リードペアの最初の塩基が参照配列の各遺伝子座とアライメントされた場合の数を表にした。転写開始部位の計算に使用した目的の領域は、5’ITRの5’末端から開始し、遺伝子特異的プライマー(GSP)の300bp5’で終わるものとして定義した。目的の領域内のアライメント開始部位でのリードの総数を集計し、その領域内での各遺伝子座で開始するリードの数を、その総数で除し、表にした。その領域内で、全リード開始数の1%以上を表す遺伝子座を潜在的な転写開始部位として強調表示した。表8~14及び
図16A~16Fを参照されたい。
【0190】
6.10.3.RACEによって決定される転写開始部位(TSS)
表8~11に示す通り、これらのデータは、肝臓及び筋細胞で調べた各プロモーター駆動導入遺伝子(eGFP)の主要及び副次の両転写開始部位(TSS)を明らかにした。ヌクレオチド(nt)の開始番号は、参照プラスミド配列に基づいて(表に)示した。配列を同定した後、その配列を本明細書に記載の個々のプロモーターの配列番号に相関させた。
【0191】
C2C12細胞におけるhAATプロモーターの場合、活性の低いTSSであるにもかかわらず、合計でフィルタリングされたリード全体の34%を占める主要な転写開始部位がヌクレオチド(nt)660~678(表8、灰色で強調表示された行)で特定された。ヌクレオチド660~678、GGTACAATGACTCCTTTCG(配列番号41)は、hAATのプロモーター配列である配列番号11のヌクレオチド139~157、または配列番号12のnt139~157にあるGGTACAGTGACTCCTTTCG(配列番号42)、修飾ΔATG hAAT配列に相当する。選択的スプライシング部位も観察された。例えば、選択的スプライシング部位は、C2C12のNGSによって、hAATプロモーターによって駆動される遺伝子についても特定された一方で、塩基のスキッピングが生じた(参照プラスミド配列のナンバリングに基づいて、nt919~1052、約678~815、及び680~1052、データは示さず)。
【表11】
【0192】
Huh7細胞におけるhAATプロモーターの主要な転写開始部位は、876~880、TCTCC(配列番号43)で同定され、フィルタリングされたリード全体の52%を占めた。配列TCTCC(配列番号43)は、配列番号11または配列番号12のnt355~359に相当する。表9。
【表12】
【0193】
CK8プロモーターのTSSは、nt1024~1031(TCATTCTA、配列番号44)で検出された。これは、C2C12細胞で活性が高く、筋細胞において(合計で)81%のリードを生じた。ヌクレオチド1024~1031(TCATTCTA、配列番号44)は、配列番号16のnt377~384に相当する。表10。
【表13】
【0194】
C2C12細胞でTSSとして同定されたものと同じ部位は、Huh7における1025~1033(CATTCTACC、配列番号45)の部位と相関するが、この部位は、C2C12細胞におけるプロモーターの転写活性(表10)と比較した場合、活性が低い(62%リード、表11)。ヌクレオチド1025~1033(CATTCTACC、配列番号45)は、配列番号16のnt378~386に相当する。
【表14】
【0195】
C2C12細胞でLMTP6プロモーターを調べたところ、3つのTSSが同定された:1321~1324部位は、CK8の開始部位(全リードの33%を占める)と相関し、1505は、C2C12細胞におけるhAATプロモーターと相関し、1702~1737は、Huh7細胞におけるhAATの開始部位と相関する。表12を参照されたい。
【0196】
1321~1324の活性筋特異的TSSは、直列型プロモーター配列のCK8プロモーター部分に見られ、配列番号6のヌクレオチド1131~1133(CAT)に相当する。ヌクレオチド1505は、LMTP6直列型プロモーターのhAAT部分に位置するが、C2C12細胞ではわずかに活性であり、配列番号6のnt1314に相当する。また、1702~1737で同定される別のわずかに活性なTSSは、配列番号6のnt1512~1547に相当する。
【表15】
【0197】
Huh7細胞のLMTP6プロモーターの場合、主要な開始部位は肝臓特異的hAATプロモーター(1732~1736)に位置し、これは、活性が高く、フィルタリングされたリード全体の少なくとも72%に相当する。2つの副次TTSは、i)hAATプロモーター上のTSS(1514~1516)として、及びii)CK8プロモーター上の別のTSS(1324)として同定された。表13を参照されたい。
【表16】
【0198】
1732~1736で同定され、Huh7細胞で活性なLMTP6プロモーター部位は、TCTCC(配列番号43)であり、配列番号6のnt1541~1545に相当する。1514~1516で同定され、同様にHuh7細胞でわずかに活性なLMTP6プロモーター部位は、CAGであり、配列番号6のnt1323~1325に相当し、1324で同定されたTSSは、直列型プロモーター配列のCK8プロモーター上にあり、配列番号6のヌクレオチド1133に相当する。
【表17】
【0199】
遺伝子が発現された細胞型に応じて、プロモーターごとに主要及び副次TSSを同定した。例えば、C2C12(筋)細胞でのApoE-hAATプロモーター駆動遺伝子は、活性が非常に低いいくつかの開始部位を含んでいたが、Huh7(肝臓)細胞で発現した同じプラスミドは、異なるTSSで高活性を示す。表10及び表11。CK8プロモーターは、TSSに関してはC2C12細胞及びHuh7で同様に働いたが、このプロモーターは、予想通り、筋細胞株であるC2C12でより活性が高かった。
【0200】
興味深いことに、直列型プロモーターであるLMTP6は、肝臓細胞においてLMTP6配列番号6のnt1541~1545に主要なTSSを生じ、これは、単一プロモーターのhAATの場合の同じTSSと相関する。副次TSSは、直列型LMTP6及びhAAT単独の両方の間で相関するが、相関関係にあるCK8のTSSは副次と見なされた(nt1324、リードの1%のみ)。LMTP6駆動導入遺伝子は、CK8の単一プロモーターと比較して、C2C12細胞の転写部位とも相関した。C2C12細胞においてLMTP6で活性が認められた筋特異的TSSは、これらの細胞でCK8において同定された主要なTSSと重複する。本明細書に示す転写開始部位の完全性を考慮し、かつ直列型プロモーターにおける余分なATG翻訳開始部位を排除して最終タンパク質の異常種の翻訳全体をさらに減少させることにより、本開示の直列型プロモーターは、導入遺伝子の効率的かつ堅牢な発現を提供する。
【0201】
均等物
本発明は、その具体的な実施形態を参照して詳細に説明されているが、機能的に均等である類型が本発明の範囲内であることが理解される。実際、本明細書に示され、記載されているものに加えて本発明の様々な改変が、前述の記載及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。かかる改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。当業者は、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または慣用的な実験を超えるものを使用せずに確認することができる。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0202】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により全体として本明細書に組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、同じ程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0203】
本明細書の論述は、当技術分野が直面している問題の本質のより良好な理解を提供し、どのようにも先行技術として認めるものとして解釈されるべきではなく、また、本明細書におけるいかなる参考文献の引用も、かかる参考文献が本出願に対する「先行技術」を構成することを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0204】
本明細書で引用される特許出願及び刊行物を含むすべての参考文献は、個々の刊行物または特許もしくは特許出願が、すべての目的のために参照により全体として組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度まで、すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる。本発明の多くの改変及び類型が、当業者に明らかになるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書に記載の特定の実施形態は、例として提供されているにすぎず、本発明は、かかる特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】