(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】心臓弁の周りにガイドワイヤを配置する装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20221007BHJP
A61F 2/966 20130101ALI20221007BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/966
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022504217
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 IB2020056962
(87)【国際公開番号】W WO2021014401
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】102019000015494
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516058377
【氏名又は名称】インノブハート エッセ.エッレ.エッレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リギーニ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】チン,シンディ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ドン イク
(72)【発明者】
【氏名】デニソン,アンディ
(72)【発明者】
【氏名】マグリーニ,ケビン
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD10
4C097SB09
4C097SB10
4C267AA05
4C267AA09
4C267AA28
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB10
4C267BB26
4C267BB52
4C267CC19
4C267EE01
4C267GG24
4C267GG32
(57)【要約】
少なくとも1つのガイドワイヤを心弁の周りに位置決めするためのガイドワイヤ挿入装置であって、・少なくとも1つの先端湾曲システムが設けられた第1カテーテル(40)と、・前記第1カテーテル(40)の内側を摺動可能な第2カテーテル(44,144,244,344)であって、ガイドワイヤを内部に摺動させることのできる少なくとも1つのルーメン(46,146,346,48,148,348)を備え、90°を超える角度で端部を撓ませる先端湾曲システム(52,152,352)が設けられている、第2カテーテル(44,144,244,344)と、・前記第1カテーテル(40)の内側を摺動可能で、内部にガイドワイヤ捕捉装置(47)を有する第3カテーテル(42,245,345)と、を備えることを特徴とするガイドワイヤ挿入装置。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのガイドワイヤを心臓弁の周りに位置決めするためのガイドワイヤ挿入装置であって、
・先端湾曲システムが設けられた第1カテーテル(40)と、
・前記第1カテーテル(40)の内側を摺動可能な第2カテーテル(44,144,244,344)であって、ガイドワイヤを内部で摺動させることのできる少なくとも1つのルーメン(46,146,346,48,148,348)を備え、90°を超える角度で端部を撓ませるための先端湾曲システム(52,152,352)が設けられている、第2カテーテル(44,144,244,344)と、
・前記第1カテーテル(40)の内側を摺動可能で、内部にガイドワイヤ捕捉装置(47)を有する第3カテーテル(42,245,345)と、
を備えることを特徴とするガイドワイヤ挿入装置。
【請求項2】
少なくとも2つのガイドワイヤを心臓弁の周りに位置決めするためのガイドワイヤ挿入装置であって、前記第2カテーテル(44,144,244,344)にガイドワイヤを内部で摺動させることのできる2つのルーメン(46,146,346,48,148,348)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項3】
前記第2カテーテルの前記2つのルーメンは、実質的に互いに対抗する方向を向くようにして終端していることを特徴とする請求項2に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項4】
前記第2カテーテル(44,144,244,344)の先端に放射線不透過性の部品が設けられることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項5】
前記第2カテーテル(44,144,244,344)の前記先端湾曲システムにワイヤ(52,152,352)が備えられることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項6】
前記第1カテーテル(40)がシングルルーメンのカテーテルであることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項7】
前記第3カテーテル(45,245,345)に先端湾曲システムが設けられていることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項8】
少なくとも1つのガイドワイヤを心臓弁の周りに位置決めするための方法であって、
・静脈から第1カテーテル(40)のアクセスを提供するステップと、
・下大静脈(IVC)から右心房の中に前記第1カテーテル(40)を挿入させて、両心房の間にある中隔の穴から左心房にアクセスするステップと、
・左心室にガイドワイヤ挿入装置(36)を挿入し、僧帽弁を通って、一以上のガイドワイヤを自然弁の周りに配置させるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心臓弁の周りにガイドワイヤを配置する装置に関する。
【0002】
本発明は特に、機能不全を起こしている心弁の生理的機能を置換する心臓補綴具を移植する処置、特に房室弁用の心臓補綴具を移植する処置で使用する装置に関して、限定されない方法で、開発されてきたものである。
【背景技術】
【0003】
心弁は人間の心臓の正常な機能を担っている複雑で繊細な器官である。その主な目的は心腔内の血流を一方向性にすることであって、これは拡張期として知られる心腔の充満期と、収縮期として知られている血液の拍出期との、両方において欠くことができないものである。
【0004】
血液の拍出効率を最適化するために、心臓の構造は2つの異なる区域、つまり左右の区域から構成され、これらの区域はさらに2つの小区域、つまり心房と心室に細分化されている。右心房および右心室からなる心臓の右側の区域は末梢循環路から血液を受け取り、これを肺循環路に送って酸素化させる。同様に左心房および左心室に細分化されている左側の区域は末梢循環系へと供給し、肺循環路から酸素化された血液を受け取り、これを体循環路へと拍出させる。
【0005】
心臓の内部の血流を一方向性にするために、心腔の出口にそれぞれ弁膜が位置している。心房の出口に位置する弁膜は房室弁とよばれるが、これは心臓各側の心房腔を心室腔に接続しているからである。心臓の右側において、この心弁は三尖弁ともよばれ、左側では通常、僧帽弁と記載される。最後に、右心室からの出口に位置する心弁は肺動脈弁とよばれ、左心室からの出口に位置する心弁は大動脈弁とよばれる。
【0006】
心弁の機能に悪影響を与える疾患は、数ある心疾患のうちで最も深刻な部類に入る。このうち僧帽弁の不全、つまり弁の完全閉鎖が不能となることは、重大な弁機能疾患であるが、これは全身に血液を供給する役割を果たす心臓の左側の拍出能率を下げてしまうことに由来する。
【0007】
最新技術において、深刻な心弁機能障害を治療する標準的な治療法は心弁を移植可能な人工器官で置き換えることである。そうでない場合、主に僧帽弁の機能障害の場合には、修復の手立てが存在する。何れにせよ、これは機能不全を起こしている心弁に直接アクセスする開胸手術によって達成される。このような処置には心臓を一時的に停止させ、適当なポンプと酸素交換機器を用いて人工の体外血液循環回路を作成することが必要である。心停止に対処するために用いられる技術の洗練と体外循環システムの改善にもかかわらず、開胸手術は、その侵襲性と手術に要する時間により、リスクが伴う。実際に、従来の手術で通常用いられる移植可能な人工器官は、修復と置換いずれの場合においても、特殊な縫合技術を用いて移植部位に留置するのに、通常は長時間の手術を要する。また場合によっては、患者が高齢であることや合併症の存在など、患者の全身病状によっては外科的介入すら不可能である。
【0008】
これらの限界を克服するため、経カテーテル処置と呼ばれる侵襲性が低い介入を伴う処置が開発されてきた。この目的のため、放射状に折り畳み可能で移植部位に自己留置することのできる人工器官が使用される。この人工器官は、血管系内部を案内し、大腿動脈や動脈などの末梢血管などに創出された遠隔アクセスから移植部位に達して心臓補綴具を解放できるカテーテルを用いて移植することが可能である。心弁の機能障害は、このようにして、心臓が鼓動している状態で最低限の外科処置を用いて正常化することができる。今のところ、経カテーテル術は現在大動脈弁の治療にのみ臨床で標準的に使用されている。
【0009】
この状況は房室弁の機能障害治療、特に僧帽弁の機能不全の治療に関しては異なっている。心弁とその周辺構造の複雑な生体構造、疾患の多様性は、互いに大きく異なっており、これらは心弁に直接的あるいは間接的に影響を及ぼし、経カテーテルのルートから僧帽弁へと確実に且つ効果的に移植するために必要な条件に合致することを著しく困難にしている。
【0010】
個々の開発された設計における多様性において、房室弁の経カテーテル人工器官のために開発された主な技術は、心臓への心尖アプローチを提供する。この処置は左心室の心尖部を露出させるために胸部切開が必要となる。その後、心尖ポートが挿入可能となるように心尖部が穿刺される。この心尖ポートから、処置を完成させるために必要なカテーテルが次々に挿入される。
【0011】
このアプローチの問題は、心尖など心臓のかなりデリケートな部分に損傷を与え、出血や動脈瘤など、患者に悪影響を与える可能性のある結果を生じる点にある。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は従来技術の問題点を解決し、特に経カテーテルで心尖を損傷しない心臓補綴具を移植する処置を提供することにある。別の目的は患者に対してより安全な処置を提供する点にある。特に、このような処置を実行するために、使用する際に信頼できて安全なガイドワイヤ挿入装置および心臓補綴具移植装置を提供することを目的とする。また別の目的は、このような移植装置を用いて心臓補綴具を組み立てる手順を提供する点にある。
【0013】
本発明はガイドワイヤ挿入装置および心臓補綴具移植装置に関し、何れも本出願人により開発されたところによる経中隔アクセスで経カテーテル移植術を可能にするために特に開発された。経中隔アクセスは僧帽弁へのアクセスとして理解されることを意図しており、末梢側大腿静脈から始まって、下大静脈の中を右心房まで進み、両心房の中隔にインターベンション法を用いて創出された開口部から最終的に左心房に到達する。左心房は治療される僧帽弁への順行性アクセスを可能にする。このようにして、心室側から僧帽弁へのアクセス、つまり逆行性のアクセスを提供する経心尖術に伴う左心室の損傷、つまり穿孔が防止される。
【0014】
第1の態様に基づいて、少なくとも1つのガイドワイヤを心弁の周りに位置決めするためのガイドワイヤ挿入装置を説明する。この装置は経中隔アクセスからガイドワイヤを配置することができる。この装置は少なくとも1つの先端湾曲システムを設けることのできる第1カテーテルを備えることができる。この装置は、第1カテーテルの内側に挿入することのできる第2カテーテルを備えることができる。第2カテーテルはガイドワイヤを内部に摺動させるのに適したルーメンを備えることができる。第2カテーテルに、好ましくは90°を超える角度で端部を撓ませる先端湾曲システムを設けることで、自然弁の弁尖直下の領域に最もよく到達することができる。この装置は第3カテーテルを備えることができる。第3カテーテルは第1カテーテルの内側に挿入することができる。第3カテーテルはガイドワイヤを捕捉する装置を内部に有することができる。第3カテーテルに先端湾曲システムを設けることができる。第2カテーテルの湾曲システムはワイヤを備えることができる。
【0015】
別の態様に基づいて、少なくとも2つのガイドワイヤを心臓弁の周りに配置するガイドワイヤ挿入装置を説明する。第2カテーテルは、ガイドワイヤを内部に摺動させるのに適する2つのルーメンを備えることができる。2つのルーメンは実質的に互いに対抗する方向を向くように終端させることができる。
【0016】
有利な態様によれば、ガイドワイヤ挿入装置は第2カテーテルを備える。ガイドワイヤ挿入装置には放射線不透過性および/またはエコー不透過性の部品が設けられる。この放射線不透過性および/またはエコー不透過性の部品は、第2カテーテルの先端に、好ましくは中に埋め込まれて位置することができる。
【0017】
別の態様によれば、ガイドワイヤ挿入装置はシングルルーメンの第1カテーテルを備えることができる。
【0018】
また別の態様に基づいて、少なくとも1つのガイドワイヤを心臓弁の周りに配置させる手順を説明する。本手順は静脈から、好ましくは大腿静脈からの第1カテーテルのアクセスを提供するステップを含むことができる。第1カテーテルは下大静脈IVCから右心房の内に導入することができる。両心房の間の中隔に、左心房にアクセスするための穴を空けることができる。本手順は、左心室の内にガイドワイヤ挿入装置を挿入し、僧帽弁を通過して、自然弁の周りに一以上のガイドワイヤを配置させる、ステップを含むことができる。
【0019】
好ましい実施態様に基づいて、心臓弁の周りに少なくとも1つのガイドワイヤを位置決めする手順を説明するが、本手順には、
・静脈から第1カテーテルのアクセスを提供するステップと、
・下大静脈から右心房の中に前記第1カテーテルを挿入させて、両心房の間にある中隔の穴から左心房に入れるステップと、
・左心室にガイドワイヤ挿入装置を挿入し、僧帽弁を通って、一以上のガイドワイヤを自然弁の周りに位置決めするステップと、
が含まれる。
【0020】
また別の実施態様に基づいて、心臓補綴具移植装置を説明する。心臓補綴具は中央本体と束縛部を備えることができる。束縛部は一以上の分割要素に細分割することができる。心臓補綴具移植装置は中央本体のための解放装置を備えることができる。解放装置はカテーテルの内部に挿入させることができる。心臓補綴具移植装置は、中央本体と束縛部の分割要素との間の接続操作を補助する装置を有することができる。中央本体と束縛部の分割要素との間の接続操作を補助する装置は、カテーテル組立体を備えることができる。束縛部の各分割要素に少なくとも2つのカテーテルが存在する場合がある。これらのカテーテルはその一部を互いに連結することができ、何れも少なくとも1つの自由端を有することができる。これらカテーテルは同じシースの中でまとめることができる。シースはこれらカテーテルを自身の一部に沿ってまとめることができる。シースは、各カテーテルに対して少なくとも1つの端部を自由にさせておくことができる。シースはさらにガイドワイヤ、好ましくは中心カテーテルのための追加ルーメンをさらに備えることができる。
【0021】
有利には、カテーテル組立体を構成するカテーテルを互いに確実に連結させることができる。
【0022】
別の態様によれば、中央本体と束縛部の分割要素との間の接続操作を補助する装置は、長手方向に非圧縮性のカテーテル組立体を備えることができる。このようにして、使用の際、ガイドワイヤのための非圧縮性の隣接通路が形成される。好ましくは、カテーテル組立体を構成するカテーテルは可撓性を有することができる。
【0023】
別の態様に基づいて、心臓補綴具を組み立てる手順を説明する。心臓補綴具は中央本体と束縛部を有することができる。束縛部は、一以上の分割要素に細分割することができる。上記の手順はガイドワイヤを束縛部の各分割要素に挿入するステップを含むことができる。これはガイドワイヤの両端部分が分割要素自体の外側にくるように各分割要素を摺動させるステップを含むことができる。本手順は、中央本体と束縛部の連結のために、束縛部の各分割要素に対して、ガイドワイヤの各端部を、対応する接続部材の中に挿入するステップを含むことができる。本手順は、ガイドワイヤの各端部をカテーテル組立体の対応するカテーテルの中に挿入するステップを含むことができる。これは中央本体と束縛部の分割要素を連結するために各ガイドワイヤの端部を引張するステップを含むことができる。
【0024】
また別の態様に基づいて、心臓補綴具を移植する手順もまた説明する。心臓補綴具は中央本体と、一以上の分割要素に細分割された束縛部とを備えることができる。本手順は静脈から第1カテーテルのためのアクセスを提供するステップを含むことができる。好ましくは、大腿静脈にアクセスを提供することができる。本手順は下大静脈IVCから第1カテーテルを挿入するステップを含むことができる。第1カテーテルは右心房の中まで挿入することができる。両心房の間の中隔に穴をあけることができる。この穴から左心房にアクセスすることができる。本手順は自然弁の周りに一以上のガイドワイヤを提供するステップを含むことができる。この操作はガイドワイヤ挿入装置を用いて実行することができる。束縛部の分割要素を挿入することが可能である。本手順は心臓補綴具移植装置を挿入するステップを備えることができる。その後、中央本体を束縛部18の分割要素22に接続することができる。中央本体の所定位置における解放は、移植のために本装置から中央本体を押し出すことによって実現することができる。
【0025】
また別の態様によれば、心臓補綴具を移植する手順は、自然弁の周りに配置された少なくとも1つのガイドワイヤを用いて各分割要素を摺動させ、好ましくは各分割要素を少なくとも1つのガイドワイヤを覆って(ワイヤを覆って)摺動させることで、各分割要素を心臓に挿入するステップを提供する。
【0026】
また別の態様によれば、心臓補綴具を移植する手順は、カテーテル組立体を有することができる補助装置であって、束縛部の分割要素と中央本体を接続する接続操作を補助する補助装置を備える心臓補綴具移植装置を使用することを提供することができる。本手順は、前記中央本体と前記束縛部の接続のためにガイドワイヤの各端部を対応する接続部材に挿入するステップと、前記ガイドワイヤの各端部を前記カテーテル組立体の対応するカテーテルの中にその自由端において挿入するステップと、を備えることができる。本手順は、前記ガイドワイヤの各端部に作用することで、前記中央本体と前記束縛部の前記分割要素の間に、接続を確立するステップをさらに含むことができる。
【0027】
また別の態様に基づいて、補綴弁尖の中央本体と一以上の分割要素に細分割された束縛部を備える心臓補綴具を移植する手順を説明するが、本手順には、
・静脈から第1カテーテルのアクセスを提供するステップと、
・下大静脈から右心房の中に前記第1カテーテルを挿入させ、中隔の穴から左心房にアクセスするステップと、
・一以上のガイドワイヤを自然弁の周りに提供するステップと、
・前記束縛部の前記分割要素を挿入するステップと、
・心臓補綴具移植装置を挿入するステップと、
・前記中央本体を前記束縛部の前記分割要素に接続するステップと、
・前記中央本体が所定位置に開放されるまで前記中央本体を押すステップと、
が含まれる。
【0028】
心臓補綴具を移植する手順をさらに説明するが、各分割要素は、自然弁の周りに配置されたガイドワイヤのうちの1つに摺動させることによって、挿入される。
【0029】
有利には、心臓補綴具を移植する手順として、上記の特徴の全てまたは一部を有する心臓補綴具移植装置が使用され、この手順によれば、各分割要素を挿入した後、束縛部の各分割要素に対して、
・前記中央本体と前記束縛部の接続のために、ガイドワイヤの各端部を対応する接続部材に挿入するステップと、
・前記ガイドワイヤの各端部を前記カテーテル組立体の対応するカテーテルの中にその自由端において挿入するステップと、
・前記ガイドワイヤの各端部を引張し、前記中央本体と前記束縛部の前記分割要素との間に接続を引き起こすステップと、
が実行される。好ましくは、大腿静脈によってアクセスがもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の一以上の実施形態に係る解決手段、ならびに追加の特徴および相対的な利点は、純粋に非限定的な実施例として与えられ且つ添付の図面と共に解釈されることを意図する以下の詳細な説明を、参照することによってより良く理解され、簡単のために対応する部材は同一または類似する符号で表され、その説明を繰り返すことはしない。これに関して、図は必ずしも縮尺どおりではなく、一部の詳細は強調および/または簡略化されている可能性があり、特に明記しない限り、説明されている構造および手順を概念的に説明するためだけに使用されていることが、明確に理解されよう。特に、
【0031】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る、心臓弁を治療する心臓補綴具の概略図である。
【
図3】
図3は心房間の中隔によってアクセスが提供される、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図4】
図4はガイドワイヤ挿入装置の第2カテーテルの詳細を表す。
【
図5a】
図5aはガイドワイヤ挿入装置の第2カテーテルの変形例を表す。
【
図6】
図6は、ガイドワイヤ挿入装置の第2カテーテルが僧帽弁の方向に進行する、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図7】
図7は、ガイドワイヤ挿入装置の第2カテーテルが僧帽弁を通って左心室の中に進行する、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図9】
図9は、ガイドワイヤの捕捉装置が位置決めされた、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図10】
図10は第1ガイドワイヤが位置決めされた、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図11】
図11は、第1ガイドワイヤの位置決めが完了した、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図12】
図12は、心臓補綴具の束縛部の分割要素が挿入された、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図13】
図13は、心臓補綴具移植装置が挿入された、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図14】
図14は、中央本体と束縛部の分割要素との間の接続操作を補助する補助装置を表す図面である。
【
図16】
図16は、中央本体が進行する、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図17】
図17は、中央本体と束縛部の分割要素が接続される、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図18】
図18は、補助装置が取り除かれる、心臓補綴具を移植する手順のステップを表す。
【
図19】
図19はin-situに開放する準備のできた形状にある心臓補綴具を表す。
【
図20】
図20は心臓内部において図示され、in-situに開放する準備ができた心臓補綴具を表す。
【
図21】
図21は正常に位置決めされた状態にある心臓補綴具を表す。
【
図22】
図22はガイドワイヤ挿入装置の第2カテーテルおよび第3カテーテルの変形例に係る断面図である。
【
図23】
図23はガイドワイヤ挿入装置の第2カテーテルおよび第3カテーテルの別の変形例を表す。
【
図24】
図24はガイドワイヤ挿入装置の第2カテーテルおよび第3カテーテルの別の変形例を表す。
【
図25】
図25はガイドワイヤ挿入装置の第2カテーテルおよび第3カテーテルの別の変形例を表す。
【
図26】
図26はガイドワイヤ挿入装置の第2カテーテルおよび第3カテーテルの別の変形例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に各図面を参照すると、
図1および
図2には房室弁の機能を置換するために使用される移植可能な心臓補綴具10が説明されている。
【0033】
心臓補綴具10には自然弁を支持してこれと接合する補綴構造体12が備えられ、内部に一群の可撓性人工弁尖14が固定されている。補綴構造体12には特に、
・中央本体16と、
・束縛部18と、
・前記中央本体16と前記束縛部18を接続するための接続部材20と、
が備えられる。
【0034】
補綴構造体12は、その部品の各々について、心臓補綴具の機能と安全性に影響を与えることなく折り畳み可能になるように構成されている。したがって補綴具の径方向の寸法を一時的に小さくすることでこれを小口径のアクセスポートから心腔の内部へと導入することができるが、これは低侵襲性の手術技術に適し、特に本発明に係る、経カテーテルで位置決めする技術および心臓補綴具の移植に適するものである。言い換えると、低侵襲性アクセスから補綴具を心腔内部、移植部位近くに運搬し、補綴具をそこに留置、移植させて、自然弁を機能的に置換することのできる心臓補綴具10を、径サイズの小さなカテーテルの内部に挿入することが可能である。
【0035】
以下に補綴構造体12が様々な部品に分解されることを詳細に説明する。
【0036】
中央本体16は、本装置を通って血液が流れる導管の境界を定める補綴構造体12の一部である。中央本体16の内部に可撓性人工弁尖14が固定されており、可撓性人工弁尖14により導管内部において血流が一方向性となり、これは例えば本出願人によるイタリア国特許第20140204号明細書から公知である。
【0037】
中央支持部16は放射状に折り畳み可能な弾性構造体であって、その弾性回復性により、接触が保たれる最大径を越える径まで、つまり閉鎖した人工弁尖14の自由縁との接合が保たれる最大径を越える径まで、拡張する性質がある。
【0038】
束縛部18は、中央支持部16の自由な拡張に対抗してこれを制限する人工器官構造体の一部であって、人工弁尖14間の接合を保つことに適合する最大の半径を越えることを防止している。束縛部18は実質的に環状の形状を有し、長手方向に非伸縮性となっており、つまり中央支持部16が内部で拡張し、外側に径方向の力が加わっても、周囲方向の長さが大きく変化しないようになっている。
【0039】
束縛部18は、実質的に弧状となって互いに分離された2つの分割要素22に好ましくは細分割されるが、簡単のためにこの2つの分割要素は以下において「弧部」と記載することとする。各弧部22は接続部材20と選択的に係合可能であって、これにより最終的な移植形状で確実に連結される。
【0040】
各分割要素22の端部24には係合部26が設けられ、係合部26は好ましくは弁輪面の外側における配向を想定することができる。図示の実施形態において、係合部26は弁輪の面に対して実質的に垂直に向く。つまり、各接続部材20にはそれぞれピン28が設けられ、これらピン28は各係合部26内に存在する軸孔27の内に受け入れられるのに適する。これら2つの接続部材20の各々には、一組のピン28が存在し、中央本体16に対して正対する角度位置に略配置される。これらピン28に加えて、束縛部18の各弧部22の端部に存在する係合部26には、これら部分同士の機械的な干渉を創出し、および/または、ピン/空洞の結合の摩擦を高めることを意図した、かえしまたはリップまたは他の面不連続部を設けることが可能で、束縛部18の各分割要素22と接続部材20との間における接続の安定性を向上させることができる。ピン28は、束縛部18の分割要素22に存在する係合部26の向きに対し整合するように配向しており、ピン-空洞の結合によって、束縛部が自然弁輪と形状的に整合性のある平面内に保たれるようになっている。さらには、ピン28が軸方向に貫通していることで、以下により詳細に説明されるように、ガイドワイヤの通路が確保される。
【0041】
ピン/空洞の結合機構は代わりに、分割要素22の端部においてピンと、接続部材20の中に円筒状の空洞を有することが可能であることは明らかである。より一般的には、このピン/空洞の結合は単に例示する目的を有しており、解決手段の概念を限定するような意図は一切ない。
【0042】
当然に、本補綴具は様々な数の分割要素22を有することもできる。例えば、分割要素を1つ有することで、開放リングのように形成することができる。2つの分割要素22で説明されるものが好ましいが、これは2つのガイドワイヤを使用することが可能となるため、以下に説明されるガイドワイヤの導入装置によって、腱索に絡む虞のある単一のガイドワイヤと比べて、正確な位置決めが容易である。しかし3つ目の分割要素が位置決め操作を容易にするわけではないので、実質的には不要であるが、これは除外されるべきではない。
【0043】
使用の際、自然弁の弁尖が中央本体16と束縛部18の間における結合部の内部に挟まれたままとなる。さらに束縛部18は自然弁輪を安定化させ、中央支持部16によって及ぼされ、また人工器官の効果的な留置を保証するために必要な径方向の力が、周辺の生体構造に伝達されないようにする機能を有するが、この周辺の生体構造は通常、房室弁を機能不全にさせる疾患に関連する変性プロセスおよび拡張プロセスにより影響を受ける。
【0044】
明瞭性の理由から、
図1および
図2において、その後の図面では、中央支持部16の外径は束縛部18の内径よりもその寸法が小さく示されている。つまりこれらの図面は、完全に拡張した形状で互いに接触しない、補綴構造体12のこれら2つの部品を図示している。実際は、中央支持部16が束縛部18の寸法に対して、より大きい寸法を有することが可能である。この場合には補綴構造体12の2つの部分の間に干渉があり、束縛部18が拡張に対して抑制作用を及ぼすと、補綴構造体12の2つの部分の間に捉えられたままとなっている組織の厚みとは無関係に、事実上、中央支持部16が束縛部18に径方向の力を及ぼす。この径方向の圧力により自然弁の弁尖への留置安定性が向上する。
【0045】
次に上記の心臓補綴具10を移植するための好ましい手順について説明する。
【0046】
最初に、大腿静脈または腸骨静脈からのアクセスが提供される。可能であれば、大腿静脈からのアクセスが好ましいが、これはこの方が著しく容易でかつより直接的であるからである。特に、侵襲的な外科処置を必要としない。小さい径を有する大腿静脈を保護する主な目的のために導入器カテーテルを使用することができる。
【0047】
導入器カテーテルは、存在する場合、大腿静脈の中に位置し、これにより大きな径を有する血管へのアクセスが形成される。その後、主カテーテル32が挿入され、主カテーテル32は導入器カテーテルの内側を摺動し、提供されると、
図3に認められるように、下大静脈IVCを通って右心房まで摺動する。
【0048】
主カテーテル32には先端湾曲システムが設けられ、その端部34が操作者によって左心房の方向に曲げられるように構成されている。その後両心房の間にある中隔Sに穿刺術が行われ、左心房へのアクセスが可能となる。主カテーテル32の内部にはガイドワイヤ挿入装置36が挿入されている。
【0049】
上記の通り、導入器カテーテルを提供することは必ずしも必要ではなく、代わりに下大静脈から右心房へのアクセスが得られるような主カテーテル32を直接使用することもできる。さらに、主カテーテルを左心房内部の位置まで挿入することができ、これによりガイドワイヤ挿入装置36を左心房の中に直接挿入することができる。
【0050】
ガイドワイヤ挿入装置36は、心臓補綴具10を後で位置決めするために必要なガイドワイヤを、生体僧帽弁Vの弁尖の周りに配置させる機能を有する装置である。
【0051】
ガイドワイヤ挿入装置36は第1カテーテル40を備えており、第1カテーテル40の内側で第2カテーテル44と第3カテーテル45が摺動する。第1カテーテル40はシングルルーメンのカテーテルである。先端湾曲システムが設けられ、その先端42を操作者により僧帽弁Vの方向に向けることが可能に構成されている。
【0052】
図4および
図5に詳細に認められる第2カテーテル44に2つのルーメン46,48が設けられ、何れもガイドワイヤを内部に摺動させるのに適している。これら2つのルーメンは、第2カテーテル44の大半の部分で互いに平行にかつ隣り合って配置されている。第2カテーテル44の端部50において、これら2つのルーメンは約90度の角度で略反対方向に湾曲している。2つのルーメン46,48はしたがって、カテーテル44の先端51ではなく、その対向する位置にある両側のそれぞれの穴41,43で終端している。言い換えると、ルーメン46、48に挿入された2つのガイドワイヤは、第2カテーテル44から互いに正反対の方向を向いて出る。
【0053】
第2カテーテル44はさらに湾曲システムを備える。図示の実施形態に係る湾曲システムはワイヤ52を備えている。カテーテルの端部50に固定されたワイヤ52は、カテーテルの外側を少しの間、延在した後に、再びカテーテルの内部に入る。操作者は第2カテーテル44に対して湾曲を形成するためにワイヤ52を引けばよく、これは
図4に明確に認められる通り強調することができる。この湾曲は90度を超えている。しかし他の湾曲システムを使用することも不可能ではない。例えば、第2カテーテルの内側に形状記憶素材からなる部分を組み込み、第1カテーテル40の内側で伸びた状態で挿入させ、これが第1カテーテル40から押し出されたときに正確な湾曲が再現されるように構成することができる。このような構成の例は
図5aに示されており、チタンニッケル合金(ニチノール)などの形状記憶材料からなるワイヤ152が第2カテーテル144の中に組み込まれている。
【0054】
先端51には放射線不透過性またはエコー不透過性の材料からなる部分53が設けられる。この部分53は、偶発的損傷を防止するために好ましくは丸まっている先端51の内側に埋め込まれている。
【0055】
第3カテーテル45は、以下により詳しく説明される通り、第1カテーテル40の内側に挿入されており、その内部に以下より詳しく説明されるガイドワイヤ捕捉装置47(スネアデバイス)を受け入れる。折り畳み可能な様々なリングまたはループが一緒に纏まって設けられている図示のガイドワイヤ捕捉装置は、使用することのできる想定される数多くの捕捉装置の1つであって、特定の用途に特に有効と認められている点に注意することができる。しかし、例えば単一のループまたは図示の装置とは異なる数のループを有する様々な捕捉装置は、除外されない。
【0056】
次に心臓補綴具を移植する手順に戻ると、主カテーテル32の内側に挿入されたガイドワイヤ挿入装置36は、中隔Sを通って左心房の内を進む(
図3)。主カテーテル32の端部34は、図示されているように右心房の中に位置するか、または左心房の中に位置することができる点に注意することができる。ガイドワイヤ挿入装置36の第1カテーテル40の端部42は、心弁Vの方を向き、つまり
図6の底部に向けられて曲げられる。
【0057】
ガイドワイヤ挿入装置36の第2カテーテル44は、ガイドワイヤ挿入装置36の第1カテーテル40の内側を摺動するように形成されている(
図6)。端部50は突出し、第1カテーテル40の端部42の湾曲に対して反対の方向に方向付けされたはっきりとした湾曲を帯びている。実際、第2カテーテル44は
図6において上向きに湾曲している。
【0058】
主カテーテル32の内側をガイドワイヤ挿入装置36はさらに進み(
図7)、弁Vを通って左心室へと第2カテーテル44が入り込む。
【0059】
ガイドワイヤ挿入装置36の第2カテーテル44が左心室の中に入ると、その先端51が自然弁の後尖の裏側に配置されるように僅かに後退する。特に、先端51は通常P2と示された中央部分(弁帆)の後ろに好ましくは配置される。このために先端51において放射線不透過物質からなる部分53の存在が特に有利である。カテーテルの端部50を正確に位置決めまたは配向させることに関して疑念がある場合には、超音波プローブまたは蛍光透視法を用いて直接これを確認することが可能である。放射線不透過物質からなる部分53は心弁の縁に対する接線方向に配向される。
【0060】
図8は、生体僧帽弁Vが2束の腱索Tに加えて大動脈弁Aと共に明確に視認される、左心室の詳細な概略図である。ガイドワイヤ挿入装置36の第2カテーテル44の端部50が、自然弁Vの後尖の後ろ側に正しく配置されて図示されている。カテーテル44が腱索の束を交差しない点に注意することができる。
【0061】
次に
図9を参照すると、中にガイドワイヤ捕捉装置47を有する第3カテーテル45は、左心室の内部に導入されるまで第1カテーテル40の内側を摺動する。第2カテーテルはまた、その端部54に湾曲システム56が設けられる。この湾曲システムは一般的に、第2カテーテル44について説明した上記のワイヤ52と同じとすることができる。しかし好ましい変形例によれば、構造的な単純さのためにカテーテルの壁の内側で摺動するワイヤを設けることができる。剛性骨格がカテーテルの幅部分に埋め込まれた可撓性のある金属構造により湾曲効果が生じる。しかし従来における他の公知の機構は除外されるべきでない。さらにカバーシース55の中にガイドワイヤ捕捉装置47が挿入されている。
【0062】
第3カテーテル45は、第2カテーテルの端部50が湾曲している方向に対して反対の方向に端部54が湾曲しているように配向されており、つまり端部54が大動脈弁の方向に湾曲している。ガイドワイヤ捕捉装置47は、LVOT(左室流出路)の中、つまり大動脈弁の手前に配置されるまで、対応する第3カテーテル45およびシース55から押し出される。
【0063】
ガイドワイヤ捕捉装置47をこの位置に保つことによって、第1ガイドワイヤ56が、ガイドワイヤ挿入装置36の第2カテーテルの第1ルーメン46の中に挿入される。ガイドワイヤ56の端部57は、操作者によって心室の内に押し入れられる(
図10)。第2カテーテル44の先端51を正確に位置決めし、ルーメン46の出口41の側面位置を正確に位置決めし、心臓の配置を正確に位置決めする効果と、また、収縮期において自然と大動脈弁Aの方を向く血流の効果によって、ガイドワイヤ56の端部57が弁の周りをLVOTの方向に動かされる。LVOTに到達すると、事前に既に配置されていたガイドワイヤ捕捉装置47によって捕捉される。続けて、第3カテーテル45を引くことによって、ガイドワイヤ56の端部57の回収が行われる。
【0064】
場合によっては、ガイドワイヤ捕捉装置47を大動脈の内側、つまり大動脈弁Aの向こう側に配置させることもできる。ガイドワイヤが血流によって大動脈の中に押し込まれ、これにより捕捉操作を行うことができる。
【0065】
ガイドワイヤ56の端部57が捕捉されると、ガイドワイヤ56は弁Vの周りで半ループを形成する(
図11)。
【0066】
一般的に対称的な方法で、第2カテーテル44の第2ルーメン48の中に挿入された第2ガイドワイヤ58を用いて、弁Vの周りで同様の半ループの形成が行われる。このようにして、何れも正しく位置決めされた2つのガイドワイヤ56,58によって弁Vが完全に周囲される。このために、第1のワイヤを捕捉するために使用されるガイドワイヤ捕捉装置47と同じものを使用するか、或いは好ましくは、第3カテーテル45の中に受け入れられた別のガイドワイヤ捕捉装置47を使用することもできる。この場合、第3カテーテル45は好ましくはダブルルーメンを備える。
【0067】
当然に、上で詳述したものと同じようなガイドワイヤ位置決め装置を使用して、自然弁の周りで完全なループを行う単一のガイドワイヤを位置決めすることも可能である。しかしながらこの場合にはガイドワイヤ位置決めの手順は、より複雑なものとなる。必要となるステップはより少なくなる(第2ワイヤのステップを繰り返す必要はない)ものの、腱索に絡むままとなるリスクがあるため、弁の全周にガイドワイヤを十分に正確な方法で配向することはそう簡単ではない。2つのガイドワイヤを使用することによって、心臓の形状と生体の血流を利用して操作を促進し、また直ちに発見および治療しなかった場合の患者への深刻な影響を及ぼす可能性のあるミスのリスクを最小化することができる。
【0068】
次に
図12を参照すると、第1カテーテル40と第2カテーテル44は好ましくはこのステップにおいて、心臓補綴具10の束縛部18を構成する2つの弧部22を心室に挿入することを促進させる位置に留置される。2つの弧部がワイヤを覆って挿入され、つまりガイドワイヤの表面を摺動して挿入されている。言い換えると、2つの弧部の一方を延びる長手通路を使用することにより、回収されたばかりのガイドワイヤ56の端部57を内部に挿入する。同様にして、他方の弧部を通って延びる長手通路の中にガイドワイヤ58の端部が挿入される。これら弧部22は何れも第1カテーテル40を出て心臓の中に入るまで押される。弧部22は第2カテーテル44の先端51に接触するまで押される。このとき第1カテーテル40と第2カテーテル44を取り除くことができる。
【0069】
主カテーテル32を適所に留置してこれをその後、中央本体16が挿入された心臓補綴具を移植する装置60を内部に導入するために使用することは好ましい。主カテーテル32の取り出しまたはこれを別のカテーテルに置き換えることは何れにせよ除外されない。
【0070】
心臓補綴具移植装置60は、その詳細が
図13、
図14および
図15に認められるが、カテーテル61を備えており、ここから他の全ての部品と心臓補綴具の中央本体16が挿入される。
【0071】
心臓補綴具移植装置はさらに、心臓補綴具の中央本体16のための解放装置62を備える。解放装置62は、心臓補綴具の中央本体16を内部で進行させるために、カテーテルの中に挿入されることに適している。心臓補綴具移植装置60はさらに、中央本体16と束縛部18の分割要素の間における接続操作を補助する補助装置64を備えている。この補助装置64はカテーテル組立体66を備え、このうち束縛部の各弧部に対して少なくとも2つが同じシース68の中でまとめられており、シース68はカテーテルを部分的に覆い、各カテーテルに対して少なくとも1つの自由端70を残す。
【0072】
心臓補綴具に2つの弧部22が備えられた図示の好ましい場合において、補助装置64に4つのカテーテル66が備えられる。当然に、心臓補綴具に束縛部18の1つの分割要素が備えられる場合には、2つのカテーテルで十分であろう。しかしながら、心臓補綴具に3以上の分割要素が備えられる場合には、6以上のカテーテルが提供されることとなる。
【0073】
各カテーテル66は長手方向に非圧縮性であり、可撓性を有する。さらに互いにスライドしないようにシース68の内部で固定されている。好ましくは、シース68は、有益な場合にガイドワイヤをスライドできる自由長手ルーメン72をさらに備える。
【0074】
次に心臓補綴具10の移植術を検討すると、束縛部18の各弧部22に対して、ガイドワイヤ56、58の2つの端部が中を通って挿入されており、2つの接続部材20の対応するピン28の中から、補助装置64のカテーテル66の中を延びている。例えばガイドワイヤ56は、
図13に認められる通り、第1カテーテル66、第1接続部材20の第1ピン28、弧部22、別の接続部材20の第1ピン28、第2カテーテル66の中をこの順に通過する。
【0075】
カテーテル61はその後、主カテーテル32の内側を進み、僧帽弁を通って、その端部63が左心室の内側に入るまで進む。より明確にするために
図16~19には装置のみが示されているが、図示の操作は患者の心臓の中で通常行われる。
【0076】
その後、中央本体16が押されて、カテーテル61の内側を、カテーテルから接続部材20が解放されるまでさらに進む。中央本体16が折り畳まれた形状にある場合、カテーテルの内側を摺動可能とするために、接続部材は変形していることに留意されたい。しかしこれらは形状記憶素材から構成されているため、一旦カテーテルの外に出ると、直ちに目的とする形状となる。
【0077】
中央本体16と束縛部18を連結し、或いは言い換えて、弧部22を接続部材20に係合させるためには、各ガイドワイヤの端部を引けばそれで十分である(
図17)。このようにして、接続部材20のピン28が、弧部22の端部に位置する係合部26の軸孔27に挿入される。引き締めるためには補助装置64、特にカテーテル66の存在が主に重要である。実際、非圧縮性のカテーテル66によって、ガイドワイヤをカテーテル61の縁に対してキンクすることなく引張することができる。言い換えると、弧部22と接続部材20を互いに接続するために十分な牽引力をカテーテルによって(これがないと与えることができない)、各弧部の内側にあるガイドワイヤの部分に伝達することができる。
【0078】
心臓補綴具の各部品が互いに固定されると、ガイドワイヤの他に補助装置64を回収することができる(
図18)。
【0079】
したがって中央本体16をカテーテル61の内部に残したまま、心臓補綴具の束縛部18が構成されるように2つの弧部22が互いに正しく配向された状態で、心臓補綴具を組み立てて、正しい配置に保つことができる。
【0080】
解放装置62とカテーテル61に働きかけることで、心臓補綴具の中央本体16がカテーテル61の内側を進めさせられ、同時にカテーテル61が引き抜かれる。中央本体は、束縛部18が自然弁の弁輪との接触が途絶えないようにカテーテルが回収されるようにして、心臓の内部の安定的な位置に実質的に保たれる。中央本体16は、カテーテル61から解放されると、束縛部18によって束縛されるまで自然弁の内側を拡張する(
図21)。自然弁の弁尖はしたがって、心臓補綴具の中央本体と束縛部18との間に捕捉されたままとなる。このような形状によって補綴具の安定的で確実な位置決めがなされる。
【0081】
上で説明されたすべては、当然に、本発明の1つの可能な実施形態であるが、唯一の実施形態ではないと理解されなければならない。例示的な方法で、ここで、上記の目的に関するいくつかの変形について説明する。しかしながら、これは考えられる変形実施例を完全に網羅したものではないことと理解されたい。
【0082】
本発明の変形実施例によれば、
図22の断面図に認められる第2カテーテル244および第3カテーテル245は、ガイドワイヤ挿入装置36の第1カテーテル40の内側を摺動する。第2カテーテル244には、ガイドワイヤを内部に摺動させるのに適した2つのルーメン46,48が設けられている。カテーテル244は、上記の第2カテーテル44とは異なり、D形状の断面を有する。好ましくは第2カテーテル244には、カテーテルの先端部分の湾曲システムのワイヤ52の通路のための追加ルーメン250が設けられている。
【0083】
第3カテーテル254はまた、2つのガイドワイヤ捕捉装置47を受け入れるのに適する2つのルーメン45a,45bを備える。第3カテーテル245はまた、第2カテーテル244の断面を補完するようなD形状断面を有する。このようにして、カテーテル244とカテーテル245の間で正常な相互的な配向が確実となり、したがってルーメン46,48とガイドワイヤ捕捉装置47の中に挿入されているガイドワイヤの間で正常な相互的な配向が確実となる。したがって弁輪の周りにガイドワイヤをより簡単に配置させることができる。
【0084】
この点において、D形状は例示的なものとして理解されることを意図していることは明らかであって、2つのカテーテル244,245の断面形状が、正常な相互配置の維持を確実にするようにすれば十分である。例えば、2つのカテーテル244,245の断面積はカテーテル40の内部で相補的となっており(言い換えると、並置されたこれら2つの断面が、ガイドワイヤ挿入装置36の第1カテーテル40の断面に対応する)、この2つのカテーテル244,245は、少なくとも1つの平面接触面270,272をそれぞれ備えている。これらカテーテル244,245は、第1カテーテル40の内部を独立に摺動することができるものと理解できよう。シングルルーメン45aを設けることもさらに可能である。
【0085】
第3カテーテル245にはさらに、カテーテルの先端部分の湾曲システムのワイヤの通路のための追加ルーメン260が設けられている。
【0086】
次に
図23~26を参照すると、第2カテーテル344と第3カテーテル345に、機械的に曲げることのできる金属構造体を設けることができる。これらの金属構造体は、第2カテーテル344のルーメン346,348と、第3カテーテル345のルーメン345a,345bを備えている。各ルーメン346,348には湾曲させるためのワイヤ352が設けられる。好ましくは、ルーメン346,348は各々2つの湾曲部を備えることができる。第1の湾曲は90°を越えており、好ましくは120°~180°の間にあって、また第2の湾曲はおよそ90°である。好ましくは、2つの湾曲部は2つの互いに垂直な平面内に配置されている。これら2つの湾曲部は、ルーメンの正確でかつ確実な配向を有利に確保する異方性の部分を創出するために好適に穿孔されたそれぞれの部分354,356を用いて得られる。この変形実施例によって、第2カテーテルと第3カテーテルの除去の前に全てのルーメンを真直ぐにすることができる。このようにして、カテーテル344,345が摺動するカテーテル40に対する摩擦と、内部を摺動するガイドワイヤに対する摩擦の両方が大きく低減されることで、第2カテーテルと第3カテーテルを引き抜くことを、より簡単で且つより早くすることができる。さらに、金属ルーメンは特に小さな厚みを有する。
【0087】
カテーテル344,345は真直ぐな形状でカテーテル40の内部を摺動する(
図24)。これらがカテーテル40の外に出ると、部分354を湾曲させて第1の湾曲部が作られるようにしてたわみが起こる(
図25)。その後、部分356の先端のたわみが作動することによって、第2の湾曲部が作られる(
図26)。概して同じような方法で、第3カテーテルのルーメン345a,345bのたわみが作動する。ガイドワイヤを位置決めする操作の最後に、抜き取りのために全てのルーメンが真直ぐになる(
図24)。
【0088】
当然のことながら、本発明の原理は同じままであり、実施形態の形および構成の詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく、説明および図示されたものに関して大きく変えることができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのガイドワイヤを心臓弁の周りに位置決めするためのガイドワイヤ挿入装置であって、
・先端湾曲システムが設けられた第1カテーテル(40)と、
・前記第1カテーテル(40)の内側を摺動可能な第2カテーテル(44,144,244,344)であって、ガイドワイヤを内部で摺動させることのできる少なくとも1つのルーメン(46,146,346,48,148,348)を備え、90°を超える角度で端部を撓ませるための先端湾曲システム(52,152,352)が設けられ
、前記第1カテーテル(40)の端部の湾曲と反対の方向にその湾曲(42)が方向付けされている、第2カテーテル(44,144,244,344)と、
・前記第1カテーテル(40)の内側を摺動可能で、内部にガイドワイヤ捕捉装置(47)を有する第3カテーテル(42,245,345)と、
を備えることを特徴とするガイドワイヤ挿入装置。
【請求項2】
前記第3カテーテル(45)は、その端部(54)が前記第2カテーテルの端部(50)が湾曲している方向に対して反対の方向に湾曲して配向されるようにして、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項3】
少なくとも2つのガイドワイヤを心臓弁の周りに位置決めするためのガイドワイヤ挿入装置であって、前記第2カテーテル(44,144,244,344)にガイドワイヤを内部で摺動させることのできる2つのルーメン(46,146,346,48,148,348)が備えられていることを特徴とする、請求項1
または2に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項4】
前記第2カテーテルの前記2つのルーメンは、実質的に互いに対抗する方向を向くようにして終端していることを特徴とする請求項
3に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項5】
前記第2カテーテル(44,144,244,344)の先端に放射線不透過性の部品が設けられることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項6】
前記第2カテーテル(44,144,244,344)の前記先端湾曲システムにワイヤ(52,152,352)が備えられることを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項7】
前記第1カテーテル(40)がシングルルーメンのカテーテルであることを特徴とする請求項1~
6の何れか一項に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項8】
前記第3カテーテル(45,245,345)に先端湾曲システムが設けられていることを特徴とする請求項1~
7の何れか一項に記載のガイドワイヤ挿入装置。
【請求項9】
少なくとも1つのガイドワイヤを心臓弁の周りに位置決めするための方法であって、
・静脈から第1カテーテル(40)のアクセスを提供するステップと、
・下大静脈(IVC)から右心房の中に前記第1カテーテル(40)を挿入させて、両心房の間にある中隔の穴から左心房にアクセスするステップと、
・左心室にガイドワイヤ挿入装置(36)を挿入し、僧帽弁を通って、一以上のガイドワイヤを自然弁の周りに配置させるステップと、
を含む方法。
【国際調査報告】