(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ、及びそれを製造するためのモールド
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20221007BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20221007BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C7/04
G02C7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504289
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 KR2020009084
(87)【国際公開番号】W WO2021015465
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0089831
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509148935
【氏名又は名称】テウォン ファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】チョン, オク チャン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ドゥ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ア-ラム
(72)【発明者】
【氏名】パク, サン-ウク
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BA00
2H006BA01
2H006BC00
2H006DA00
2H006DA09
(57)【要約】
【課題】コンタクトレンズ、及びそれを製造するためのモールドの提供。
【解決手段】コンタクトレンズは、該コンタクトレンズの中心部に位置し、光を屈折させる視力矯正レンズ部と、コンタクトレンズの中心から複数個が放射状に位置し、涙を保存する涙保存構造と、を含み、該涙保存構造は、コンタクトレンズに第1深さに形成され、流入された涙が保存される凹状構造を含む。またコンタクトレンズは、コンタクトレンズの中心部に位置し、光を屈折させる視力矯正レンズ部と、中心部から離隔されて位置し、薬物を保存する薬物保存構造と、を含み、該コンタクトレンズユーザの眼球に薬物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであり、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの中心部に位置し、光を屈折させる視力矯正レンズ部と、
前記コンタクトレンズの中心から複数個が放射状に位置し、涙を保存する涙保存構造と、を含み、
前記涙保存構造は、
前記コンタクトレンズに第1深さに形成され、流入された涙が保存される凹状構造を含む、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記コンタクトレンズは、
微細多孔を有する微細多孔性高分子材質である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記涙保存構造は、
前記凹状構造に残存する空気を、前記コンタクトレンズ外部に排出するように、前記第1深さよりさらに深い第2深さに形成された気体排出構造をさらに含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記涙保存構造は、
前記コンタクトレンズの中心から8個が放射状に配されている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記涙保存構造は、
合計1.5mm
3以下の涙を保存する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
コンタクトレンズであり、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの中心部に位置し、光を屈折させる視力矯正レンズ部と、
前記中心部から離隔されて位置し、薬物を保存する薬物保存構造と、を含み、
前記コンタクトレンズユーザの眼球に前記薬物を提供する、コンタクトレンズ。
【請求項7】
前記コンタクトレンズは、
微細多孔を有する微細多孔性高分子材質である、請求項6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記薬物保存構造は、
前記コンタクトレンズに凹状構造に形成され、前記凹状構造に薬物を保存する薬物チャンバと、
少なくとも前記薬物チャンバを覆うカバー部材と、を含み、
前記カバー部材は、微細多孔が形成された微細多孔性高分子材質であり、
前記薬物は、前記微細多孔を介し、前記眼球に提供される、請求項6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記薬物保存構造は、
前記コンタクトレンズに凹状構造に形成され、前記凹状構造に薬物を保存する薬物チャンバと、
少なくとも前記薬物チャンバを覆うカバー部材と、
前記カバー部材に形成され、前記薬物を前記眼球に提供する排出構造と、を含む、請求項6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記排出構造は、
1または1以上のホールを含み、
前記1以上のホールの面積は、互いに同じであるか、あるいは互いに異なる、請求項9に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記薬物保存構造は、
前記コンタクトレンズに凹状構造に形成され、前記凹状構造に薬物を保存する薬物チャンバと、
前記コンタクトレンズに凹状構造に形成され、前記薬物を放出するように前記薬物チャンバと連結された薬物排出路と、
前記薬物排出路と前記薬物チャンバとを覆うカバー部材と、を含み、
前記カバー部材は、前記薬物排出路端部を開放して薬物排出口を形成する、請求項6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記薬物保存構造は、
互いに離隔されて連結されていない複数の薬物チャンバと、
前記複数の薬物チャンバとそれぞれ連結された複数の薬物排出路と、を含み、
前記複数の薬物チャンバには、同一であるか、あるいは互いに異なる薬物が保存されている、請求項11に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記薬物保存構造は、
前記コンタクトレンズに形成された円形の単一薬物チャンバと、
前記単一チャンバと連結された複数の薬物排出路と、を含み、
前記複数の薬物排出路は、前記コンタクトレンズの端部に前記薬物を排出する、請求項11に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記薬物は、
眼球乾燥症治療剤、緑内障治療剤、眼圧降下剤、視力損傷治療剤、抗菌剤、アレルギー性結膜炎治療剤、眼瞼結膜炎治療剤、夜盲症治療剤、視力減退治療剤、眼炎症治療剤、白内障治療剤、抗ウイルス剤、散瞳薬、炭酸脱水酵素阻害剤及び黄斑変性治療剤のうちいずれか1以上を含む、請求項6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記微細多孔性高分子は、
水溶性高分子及び非水溶性高分子のうちいずれか一つである、請求項8に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記水溶性高分子は、
アカシア、寒天、アルギン酸、カルボマー、カラギーナン、酢酸セルロース、イナゴマメ、キトサン、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸、デキストラン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロプロピルベタデックス、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ヒプロメロースフタレート、カラヤガム、ローカストビーンガム、メチルセルロース、糖蜜、ペクチン、ポリアクリルアミド、ポリカプロラクトン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリオルトエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガカント、クエン酸トリエチル及びキサンタンガムのうちいずれか1以上を含む、請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記非水溶性高分子は、
アセチルアルコール、アセチルエステルワックス、アセチルクエン酸トリブチル、モノステアリン酸アルミニウム、カルナウバロウ、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、セバシン酸ジブチル、エチルセルロース、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水添ひまし油、水添植物性油脂タイプ1、パルミチン酸イソプロピル、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、ポリ乳酸、ポリラクタイド、ポリメタクリレート、ポリオキシグリセリド、シェラック、ステアリン酸、ステアリルアルコール、クエン酸トリブチル、白蝋、黄蝋及びゼインのうちいずれか1以上を含む、請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
コンタクトレンズを形成するためのモールドであり、前記モールドは、
第1型枠と、
前記第1型枠に対し、前記コンタクトレンズが凹状構造を有するように、液体多孔性高分子を硬化させる第2型枠と、を含み、
前記第1型枠と前記第2型枠とにおいて、前記液体多孔性高分子と接触する面は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でコーティングされている、モールド。
【請求項19】
前記モールドは、ステンレススチールによってなる、請求項18に記載のモールド。
【請求項20】
前記モールドは、C
4F
8プラズマ重合処理を介して疎水性表面処理されている、請求項18に記載のモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ、及びそれを製造するためのモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズ(contact lens)は、視力を矯正するために、目に入射する光を屈折させるレンズであり、めがねと異なり、目の前面、主に角膜に装着するものを意味する。コンタクトレンズのほとんどは、近視、乱視、遠視などの屈折異常を矯正することができ、視力を矯正するのに使用され、美容的に、めがね着用を所望しない場合、一般的に使用されるが、めがねでは十分な視力矯正効果を得ることができない場合(高度近眼、甚だしい乱視、両眼不同視(俗に、「ガチャ目」と呼ばれ、左右の屈折力差が大きい場合)、甚だしい遠眼(特に、手術や外傷などで、水晶体が除去された場合)、不正乱視(角膜表面が不規則である場合)、円錐角膜(角膜表面が突出した場合))などにおいて、めがねに比べ、すぐれた視力改善をもたらすことができる。
【0003】
コンタクトレンズは、角膜に分泌された涙を介在させて装着される。正常に涙が分泌する場合には、問題にならないが、眼球乾燥症(乾き目)を有する人は、甚だしい異物感でもって、コンタクトレンズ装着が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼球乾燥症は、涙自体、または涙の1種成分が不足するか、あるいは涙膜が過度に蒸発してしまう現象により、涙膜が眼球表面に十分な潤滑作用を示すことができず、眼球表面が乾燥してしまう。従って、目に甚だしい刺激を与え、コンタクトレンズ着用を困難にする。
【0005】
さらには、眼疾患などを含むさまざまな疾病を有する患者は、一般的に、目薬を介して眼球に薬物を提供する。しかし、周期的に目薬を投入しなければならず、目薬を投入したとしても、投入後、涙でもって排出され、薬物効果が低下する。
【0006】
本実施例は、そのような問題を解消するためのものであり、本実施例で解決するための課題のうち一つは、眼球と当接するコンタクトレンズ表面に、涙保存構造を位置させることにより、眼球乾燥症を改善させるためのコンタクトレンズを提供することであり、本実施例によって解決するための課題のうち他の一つは、コンタクトレンズを介し、ユーザに持続して薬物を提供することができるコンタクトレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施例によるコンタクトレンズは、コンタクトレンズの中心部に位置し、光を屈折させる視力矯正レンズ部と、コンタクトレンズの中心から複数個が放射状に位置し、涙を保存する涙保存構造と、を含み、該涙保存構造は、コンタクトレンズに第1深さに形成され、流入された涙が保存される凹状構造を含む。
【0008】
本実施例によるコンタクトレンズは、コンタクトレンズの中心部に位置し、光を屈折させる視力矯正レンズ部と、中心部から離隔されて位置し、薬物を保存する薬物保存構造と、を含み、コンタクトレンズユーザの眼球に薬物を提供する。
【0009】
本実施例によるコンタクトレンズを形成するためのモールドは、第1型枠と、第1型枠に対し、コンタクトレンズが凹状構造を有するように、液体多孔性高分子を硬化させる(cure)する第2型枠と、を含み、該第1型枠と該第2型枠とにおいて、液体多孔性高分子と接触する面は、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))によってコーティングされている。
【発明の効果】
【0010】
本実施例によるコンタクトレンズによれば、眼球乾燥症患者も、異物感なしに着用することができるコンタクトレンズが提供される。さらには、本実施例によるコンタクトレンズによれば、ユーザの眼球を介して薬物を提供することができるコンタクトレンズが提供される。本実施例によるコンタクトレンズモールドによれば、さらに経済的にコンタクトレンズを製造することができるモールドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施例によるコンタクトレンズの平面図である。
【
図2】
図1において、A-A’線に沿って切断された断面図であり、涙保存構造の概要を図示した図である。
【
図3】第1実施例によるコンタクトレンズの一具現例を概要的に図示した平面図である。
【
図4】
図3のA-A’線に沿って切断された断面図である。
【
図5】第2実施例によるコンタクトレンズの他の具現例を概要的に図示した断面図である。
【
図6】第2実施例によるコンタクトレンズの他の具現例を概要的に図示した平面図である。
【
図7】
図6のA-A’線に沿って切断された断面図を概要的に図示した断面図である。
【
図8】(a)は、コンタクトレンズの断面を、
図6において、B方向から見た薬物排出口148の例を図示した図であり、(b)は、薬物排出口148の他の例を図示した図である。
【
図9】第2実施例によるコンタクトレンズの他の具現例を概要的に図示した平面図である。
【
図10】(a)及び(b)は、本実施例によるコンタクトレンズを製造するためのモールドを例示した図である。
【
図11】本具現例によるコンタクトレンズ構造を三次元デジタル顕微鏡鏡(HI-ROX、KH-7700)を介して拡大させ、各構造の大きさを測定した写真である。
【
図12】作製されたレンズの涙保存効果を試験するために、人工眼球の瞳孔に、作製されたレンズを装着させた写真である。
【
図13】人工眼球を活用して涙保存試験を行った結果であり、涙保存構造内部に流体が保存された写真である。
【
図14】キトサン含量による薬物放出様相を図示した図である。
【
図15】本実験におけるHPMC 100000 1%+キトサン0.2%の比率による薬物放出様相を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1実施例
以下においては、添付された図面を参照し、第1実施例によるコンタクトレンズについて説明する。
図1は、本実施例によるコンタクトレンズの平面図である。
図1を参照すれば、本実施例によるコンタクトレンズは、コンタクトレンズの中心部に位置し、視力を矯正するように光を屈折させる視力矯正レンズ部、及びコンタクトレンズの中心から複数個が放射状に位置し、涙を保存する涙保存構造を含み、該涙保存構造は、コンタクトレンズに第1深さに形成され、流入された涙が保存される凹状構造(concave structure)を含む。
【0013】
涙保存構造110は、
図1に例示されているように、複数個の涙保存構造110が、コンタクトレンズ10の中心から放射状に配されてもよい。コンタクトレンズ10は、図示されているように、8個の涙保存構造110を含んでもよいが、それよりさらに少ない個数、またはそれよりさらに多くの個数の涙保存構造を含んでもよい。
【0014】
コンタクトレンズ10は、微細多孔性(microporous)高分子物質によって形成されてもよい。従って、多孔を介し、涙保存構造110に保存された涙は、ユーザの眼球に提供されたり、コンタクトレンズ10の内部に拡散されたりしてもよい。それにより、ユーザの眼球に提供された涙と、コンタクトレンズ10に拡散された涙とにより、ユーザのコンタクトレンズ異物感を低減させることができる。一実施例として、該微細多孔性高分子は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)、グリセロールメタクリレート、シリコンハイドロゲル、ホスホリルコリンなどであってもよい。それらに限定されるものではないが、具体的には、該微細多孔性高分子は、98%以上の2-ヒドロキシエチルメタクリレートに、2%未満の架橋剤(エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA))、開始剤(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN))、有機化合物(メタクリル酸(MAA))を適切に混合して使用されてもよい。
【0015】
コンタクトレンズの中心部には、角膜上に位置し、瞳孔に入射する光を屈折させる視力矯正レンズ部200を含む。視力矯正レンズ部200は、後述するように、第1型枠及び/または第2型枠により、ディオプトリ(diopter)が調節され、事前に定められたディオプトリに製造されてもよく、近眼、遠眼、乱視などを矯正することができる。一実施例において、涙保存構造110は、視力矯正レンズ部200から放射状に、外郭に配されてもよい。
【0016】
図2は、
図1において、A-A’線に沿って切断された断面図であり、涙保存構造110の概要を図示した図面である。
図2を参照すれば、涙保存構造110は、コンタクトレンズに、第1深さd1に形成され、流入された涙が保存される凹状構造112を含む。涙保存構造110は、凹状構造112に残存する空気を、コンタクトレンズ10外部に排出するように、第2深さd2に形成された気体排出構造114をさらに含んでもよい。
【0017】
図2で、破線は、コンタクトレンズ10と、ユーザの眼球とが接触する面を図示したものである。一般的に、眼球には、毎日平均0.6mlの涙が分泌され、眼球の乾燥を防止する。分泌された涙は、ユーザの眼球と接触する面を介し、コンタクトレンズ10の凹状構造112に保存される。凹状構造112により、眼球とコンタクトレンズ10との接触面積を減らすことができ、凹状構造112に保存された涙は、ユーザの眼球に排出されるか、あるいはコンタクトレンズ10内部に拡散される。それにより、ユーザのコンタクトレンズ異物感を減少させることができる。
【0018】
一実施例において、涙保存構造110は、気体排出構造114をさらに含んでもよい。凹状構造112には、涙と共に、空気のような気体が捕集されうる。気体排出構造114は、凹状構造112が形成された深さd1よりさらに大きい値を有する第2深さd2に形成され、気体を外部に放出する。前述のように、コンタクトレンズ10は、多孔性高分子によって形成され、凹状構造112に捕集された気体は、第2深さを有し、多孔性高分子によって形成された微細な孔を介して外部に排出される。
【0019】
一実施例において、涙を保存する涙保存構造110は、一つ当たり0.1875mm
3の涙を保存することができ、
図1に例示された実施例のように、8個の涙保存構造110を含むコンタクトレンズ10は、およそ1.5mm
3以下の涙を保存することができる。そのような構成から、凹状構造112内に保存された涙が角膜に排出されるので、眼球乾燥症患者が、コンタクトレンズ着用時、涙保存と接触面積低減とにより、涙が蒸発する現象の最小化、及び涙膜の潤滑作用改善により、ユーザの着用感改善と異物感最小化とを果たすことができるという長所が提供される。
【0020】
第2実施例
以下においては、
図3ないし
図9を参照し、第2実施例によるコンタクトレンズについて説明する。ただし、前述の要素と同一であるか、あるいは類似した要素については、説明を省略しうる。本実施例によるコンタクトレンズは、コンタクトレンズの中心部に位置し、光を屈折させる視力矯正レンズ部、及び該中心部から離隔されて位置し、薬物を保存する薬物保存構造を含み、コンタクトレンズユーザの眼球に薬物を提供する。
【0021】
図3は、第2実施例によるコンタクトレンズ11の一具現例を概略的に図示した平面図であり、
図4は、
図3のA-A’線に沿って切断された断面図である。
図3及び
図4を参照すれば、コンタクトレンズ11は、薬物保存構造120を含む。薬物保存構造120は、コンタクトレンズ11に凹状構造に形成され、該凹状構造に、薬物Dを保存する薬物チャンバ122と、少なくとも薬物チャンバ122を覆うカバー部材124と、を含み、カバー部材124は、微細多孔が形成された微細多孔性高分子材質であり、薬物Dは、微細多孔を介して眼球に提供される。
【0022】
薬物チャンバ122は、コンタクトレンズ11の内部に、凹状構造に形成されてもよい。一実施例として、薬物チャンバ122は、単一コンタクトレンズ11に複数個が形成され、複数個の薬物チャンバ122は、複数の他の薬物を保存することができる。他の実施例において、複数個の薬物チャンバ122は、同一薬物を保存することができる。
【0023】
薬物チャンバ122は、事前に定められた体積を有するように形成されてもよい。一例として、薬物チャンバ122は、1μlないし2μlの体積の薬物を保存するように形成されてもよい。他の例として、薬物チャンバ122は、保存された薬物の1回投与量に相応する体積に形成されてもよい。薬物チャンバ122の一実施例において、薬物と涙とを保存することができる。一例として、薬物チャンバ122に、事前に定められた比率(一例として、50%)で薬物を充填し、残り空間に涙を流入させて保存することができる。従って、流入された涙の量により、薬物放出も、円滑になされる。
【0024】
カバー部材124は、薬物チャンバ122を覆う。一具現例として、カバー部材124は、
図3に例示されているように、コンタクトレンズ11の背面を覆うことができる。図示されていない具現例として、カバー部材124は、保存された薬物Dが漏れないように、薬物チャンバ122のみを覆うことができる。
【0025】
カバー部材124は、微細多孔が形成された微細多孔性高分子材質によって形成されてもよく、薬物チャンバ122に保存された薬物は、カバー部材124の微細孔を介し、ユーザの眼球に提供される。カバー部材124を形成する高分子の組み合わせ、種類及び含量により、薬物が放出される速度及びパターンを調節することができる。
【0026】
カバー部材124は、一例として、水溶性高分子または非水溶性(透過性)高分子であってもよい。特に、該非水溶性高分子は、涙に溶けないために、目に異物感が生じないという長所がある。
【0027】
一実施例で、カバー部材124を形成することができる水溶性高分子は、アカシア、寒天、アルギン酸、カルボマー、カラギーナン、酢酸セルロース、イナゴマメ、キトサン、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸、デキストラン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロプロピルベタデックス、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ヒプロメロースフタレート、カラヤガム、ローカストビーンガム、メチルセルロース、糖蜜、ペクチン、ポリアクリルアミド、ポリカプロラクトン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリオルトエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガカント、クエン酸トリエチル及びキサンタンガムのうちいずれか1以上を含む材質であってもよいが、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0028】
一実施例として、カバー部材124を形成することができる非水溶性高分子としては、アセチルアルコール、アセチルエステルワックス、アセチルクエン酸トリブチル、モノステアリン酸アルミニウム、カルナウバロウ、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、セバシン酸ジブチル、エチルセルロース、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水添ひまし油、水添植物性油脂タイプ1、パルミチン酸イソプロピル、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、ポリ乳酸、ポリラクタイド、ポリメタクリレート、ポリオキシグリセリド、シェラック、ステアリン酸、ステアリルアルコール、クエン酸トリブチル、白蝋、黄蝋及びゼインのうちいずれか1以上を含む材質であってもよいが、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0029】
本実施例によるコンタクトレンズ11の薬物チャンバ122に保存されうる薬物Dは、一例として、眼球乾燥症治療剤、緑内障治療剤、眼圧降下剤、視力損傷治療剤、抗菌剤、アレルギー性結膜炎治療剤、眼瞼結膜炎治療剤、夜盲症治療剤、視力減退治療剤、眼炎症治療剤、白内障治療剤、抗ウイルス剤、散瞳薬、炭酸脱水酵素阻害剤及び黄斑変性治療剤のうちいずれか1以上であってもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0030】
一実施例として、該眼球乾燥症治療剤は、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、塩化カリウム、塩化ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コンドロイチン、ブドウ糖、ポリビニルピロリドン、カルボマー、ラノリン、デキストラン、トレハロース、ソルビン酸、ヒドロキシエチルセルロース、タウリン、ポリソルベート80、ポリビニルアルコール、塩化ベンザルコニウム、プロピレングリコール、マクロゴール、グアーガム、グリセロール、セトリミド、グリシン、アスパラギン、パルミチン酸レチノール、ビタミンE、エデト酸、ヒドロキシメチルセルロース、リン酸、シクロスポリン、ジクアホソル、ポビドン、リフィテグラストのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0031】
一実施例として、該緑内障治療剤及び該眼圧降下剤のうちいずれか1以上は、チモロール、ドルゾラミド、ラタノプロスト、ブリモニジン、タフルプロスト、ブリンゾラミド、トラボプロスト、ビマトプロスト、ベタキソロール、カルテオロール、カルバコール、ニプラジロール、アプラクロニジン、ピロカルピン、レボブノロール、イソプロピルウノプロストン、アセチルコリン、塩化ベンザルコニウム、ベプノロール、アセタゾラミド、メタゾラミド、ジクロフェナミド及びウノプロストンのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0032】
一実施例として、該視力損傷治療剤は、ラニビズマブ、エフリベルセブト及びベルテポルフィンのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0033】
一実施例として、該抗菌剤は、レボプロキサシン、オフロキサシン、トブラマイシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、オキシテトラサイクリン、ポリミキシンB、スルファメトキサゾール、タウリン、グリシリジン酸、トスフロキサシン、アミノカプロン酸、ロメフロキサシン、クロラムフェニコール、デキサメタゾン、テトラヒドロゾリン、クロルフェニラミン、ナタマイシン、シプロフロキサシン、エノキソロン、フシジン酸、グアイアズレン、アズレン、エリスロマイシン、コリスチン、ゲンタマイシン、塩化ベンザルコニウム、スルファメチゾール、セフメノキシム、ノルフロキサシン、ミクロノマイシン及びテトラサイクリンのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0034】
一実施例として、該アレルギー性結膜炎治療剤及び該眼瞼結膜炎治療剤のうちいずれか1以上は、オロパタジン、ケトチフェン、アルカフタジン、ベポタスチン、アゼラスチン、クロルフェニラミン、ネオスチグミン、ピリドキシン、テトラヒドロゾリン、エピナスチン、ナファゾリン、コントロイチン、パンテノール、グリシリジン酸、アミノカプロン酸、レチノール、ビタミンE、フェニラミン、アラントイン、クロロブタノール、タウリン、アスパラギン酸、シアノコバラミン、エノキソロン、塩化ベンザルコニウム、アズレン、アシタザノラスト、クロモリン、トラニラスト、ペミロラスト、N-アセチルアスパチル、ロドキサミド及びN-アセチルアスパチルグルタミン酸のうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0035】
一実施例として、該夜盲症治療剤及び該視力減退治療剤のうちいずれか1以上は、ビルベリー乾燥エキス、ビタミンE、レチノール、ベータカロチン、アスコルビン酸、ピリドキシン、シトルリン、トコフェロール、リボフラビン、フルスルチアミン、マンガン、セレニウム、エルゴカルシフェロール及びセファクロルのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0036】
一実施例として、該眼炎症治療剤は、フルオロメトロン、デキサメタゾン、テトリゾリン、プレドニゾロン、ロテプレドノール、リメキソロン、トリアムシノロン、ヒプロメロース、ナファゾリン、クロルフェニラミン、ブロムフェナク、ケトロラク、ベンダザック、ジクロフェナク、プラノプロフェン、フルルビプロフェン、トブラマイシン、ネオマイシン、ポリミキシンB、ゲンタマイシン、プルオロメトロン、クロラムフェニコール及びスルファメトキサゾールのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0037】
一実施例として、該白内障治療剤は、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ピレノキシン、チアミン、アザペンタセン、ベンダザックリシン、プレドニゾロン、ネパフェナク及びジクロフェナクのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0038】
一実施例として、該抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシクロビル、トリフルリジンのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0039】
一実施例として、該散瞳薬は、トロピカミド、フェニルエフリン、アミノカプロン酸、アトロピン、シクロペントラート及びホマトロピンのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0040】
一実施例として、該炭酸脱水酵素阻害剤は、アセタゾラミド、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミドのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0041】
一実施例として、該黄斑変性治療剤は、ラニビズマブ、ベバシズマブ及びベルテポルフィンのうちいずれか1以上を含んでもよい。しかし、本発明の範囲は、それらに制限されるものではない。
【0042】
前述のように、本実施例によるコンタクトレンズ11は、複数の薬物チャンバ122を含んでもよく、各薬物チャンバ122には、前述の複数の互いに異なる薬物Dを含んでもよい。他の実施例として、複数の薬物チャンバ122には、同一薬物Dを含んでもよい。
【0043】
従来技術では、投与する薬物と、薬物放出制御のための高分子とを混合した組成物をレンズ表面に塗布するか、あるいは薬物保存構造に充填した。しかし、従来技術によれば、高分子が、薬物と共にユーザの目に提供され、目に異物感が発生した。それに対し、本実施例によれば、カバー部材を介し、薬物がユーザの眼球に提供されるので、従来技術がユーザに与える異物感を除去することができるという長所が提供される。
【0044】
以下においては、第2実施例によるコンタクトレンズの他の具現例について、
図5を参照して説明する。ただし、前述の要素と同一であるか、あるいは類似した要素の説明は、省略しうる。
図5は、第2実施例によるコンタクトレンズの他の具現例を概略的に図示した断面図である。
図5を参照すれば、本実施例によるコンタクトレンズは、薬物保存構造130を含む。薬物保存構造130は、コンタクトレンズに凹状構造に形成され、凹状構造に薬物を保存する薬物チャンバ132と、少なくとも薬物チャンバ132を覆うカバー部材134と、カバー部材134に形成され、薬物を眼球に提供する排出構造と、を含む。
【0045】
図示された具現例において、該排出構造は、1以上のホールH1,H2を含む。1以上のホールH1,H2の断面積は、互いに異なっていてもよく、互いに同一であってもよい。図示されていない具現例において、排出構造は1つのホールを含む。
図5に例示された具現例において、ホールH1及びホールH2の薬物保存チャンバ132側の断面積と、ユーザの眼球と近い側のホールの断面積は、同一である。しかし、図示されていない具現例によれば、ある1ホールの薬物保存チャンバ132側の断面積と、ユーザの眼球と近い側のホールの断面積は、互いに異なってもよい。
【0046】
また、単一ホールまたはホールH1,H2の断面積は、薬物チャンバ132に保存された薬物が、毛細管現象によって排出されうる断面積を有することができ、それを介し、容易に薬物チャンバ132に保存された薬物を、ユーザの眼球に提供することができる。さらには、ホールの断面積を調節することにより、薬物チャンバ132に保存された薬物の時間当たり投与量を調節することができる。
【0047】
前述の具現例の一例として、カバー部材134は、シリコン材質であってもよい。他の例として、カバー部材134は、微細多孔性高分子材質によって形成され、排出構造に含まれたホールだけではなく、カバー部材134を介し、ユーザに薬物を提供することができる。カバー部材134は、レンズと同一の高分子材質、前述の水溶性高分子材質及び非水溶性高分子材質のうちいずれか一つによって形成されてもよい。
【0048】
以下においては、第2実施例によるコンタクトレンズのさらに他の具現例について、
図6及び
図7を参照して説明する。ただし、前述の要素と同一であるか、あるいは類似した要素の説明は、省略しうる。
図6は、第2実施例によるコンタクトレンズの他の具現例を概略的に図示した平面図である。
図7は、
図6のA-A’線に沿って切断された断面図を概略的に図示した断面図である。
図6及び
図7を参照すれば、コンタクトレンズ13は、薬物保存構造140を含む。薬物保存構造140は、凹状構造に形成され、凹状構造に薬物を保存する薬物チャンバ142と、コンタクトレンズに凹状構造に形成され、薬物を放出するように、薬物チャンバ142と連結された薬物排出路146と、薬物排出路146と薬物チャンバ142とを覆うカバー部材144と、を含み、カバー部材144は、薬物排出路端部を開放し、薬物排出口148を形成する。
【0049】
薬物排出路146は、薬物チャンバ142と連結され、薬物チャンバ142に含まれた薬物Dを、薬物排出口148に誘導する。
図7は、薬物排出路146と薬物チャンバ142は、同一高に形成された例を図示するが、図示されていない例として、薬物排出路146は、薬物チャンバ142の高さよりさらに低い高さに形成されてもよい。
【0050】
カバー部材144は、
図6に例示されているように、コンタクトレンズ13の背面を覆うように形成されてもよく、薬物排出路146の下端部を開放し、薬物排出口148を形成することができる。
【0051】
図8(a)は、コンタクトレンズの断面を、
図6において、B方向から見た薬物排出口148の例を図示した図面であり、
図8(b)は、薬物排出口148の他の例を図示した図面である。
図6ないし
図8(a)を参照すれば、カバー部材144は、薬物排出路146の下端部を露出させ、薬物排出口148を形成する。従って、
図8(a)に例示された例によれば、薬物排出口148は、コンタクトレンズ13の下面に薬物Dを排出する。
【0052】
しかし、
図8(b)に例示された薬物排出口の例によれば、カバー部材144は、薬物排出路146の下面をいずれも覆うように形成されてもよいが、薬物排出路146の側端部を開放するので、
図8(b)に例示されているように、薬物排出路146の端部に、薬物排出口148が形成されうる。
【0053】
瞼は、無意識的に瞬かれる。例示されたコンタクトレンズ13のユーザは、瞼を無意識的に瞬かせ、瞼がコンタクトレンズ13の上部を動きながら提供する圧力により、薬物チャンバ142に保存された薬物Dは、薬物排出口148を介して吐出され、ユーザの眼球に提供されうる。
【0054】
以下においては、第2実施例によるコンタクトレンズのさらに他の具現例について、
図9を参照して説明する。ただし、前述の要素と同一であるか、あるいは類似した要素の説明は、省略しうる。
図9は、第2実施例によるコンタクトレンズのさらに他の具現例を概略的に図示した平面図である。
図9を参照すれば、コンタクトレンズ14は、薬物保存構造150を含む。薬物保存構造150は、凹状構造に形成され、凹状構造に薬物を保存する薬物チャンバ152と、コンタクトレンズに凹状構造に形成され、薬物を放出するように薬物チャンバ152と連結された薬物排出路156と、薬物排出路156と薬物チャンバ152とを覆うカバー部材154と、を含み、カバー部材154は、薬物排出路端部を開放し、薬物排出口158を形成する。
【0055】
図示された例によれば、薬物チャンバ152は、コンタクトレンズ14の中心に沿って円形に形成されてもよい。従って、単一薬物を大容量に保存することができる。
【0056】
図示されたコンタクトレンズ14において、薬物排出口158は、前述の例のように、コンタクトレンズ14の下面に形成され、薬物Dを排出することができる。薬物排出口158は、薬物排出路156の側面部に形成され、コンタクトレンズ14の端部に薬物を排出することができる。
【0057】
以下においては、
図10(a)及び
図10(b)を参照し、本実施例によるコンタクトレンズを製造する方法について説明する。
図10(a)及び
図10(b)は、本実施例によるコンタクトレンズを製造するためのモールドを例示した図面である。
図10(a)は、第1型枠10aを概略的に図示した断面図であり、
図10(b)は、第2型枠10bを概略的に図示した図面である。
図10(a)及び
図10(b)を参照すれば、本実施例によるモールドは、第1型枠10aと第2型枠10bとを含む。
【0058】
コンタクトレンズの製造時、第1型枠10a上に高分子を配し、第2型枠10bを位置させ、高分子を硬化させ(cure)、目的とする形態のコンタクトレンズを形成する。一例として、高分子を硬化させる過程は、熱を提供して行われてもよい。
【0059】
図10(a)及び
図10(b)に例示された実施例において、第2型枠10bには、コンタクトレンズに、凹状構造を形成する構造物100’と、気体排出構造を形成する構造物114’と、コンタクトレンズが目的とするディオプトリを有するように、視力矯正レンズ部を形成する構造物200’と、を含む。ただし、図示されていない実施例において、構造物100’及び構造物200’は、第1型枠に形成されてもよい。
【0060】
また、図示されていない実施例において、第2型枠10には、凹状構造を形成するための構造物が形成され、気体排出構造を形成する構造物が形成されないものであってもよい。
【0061】
コンタクトレンズを製造するための従来の型枠は、コンタクトレンズ形成過程において、コンタクトレンズ材料が接着される問題があった。それを解消するために、従来技術においては、1回用型枠でコンタクトレンズを製造した。
【0062】
しかし、本実施例によるコンタクトレンズを製造するための型枠10a,10bには、
図10(a)及び
図10(b)に図示されているように、コンタクトレンズを形成する高分子と接触する面に、PTFE(polytetrafluoroethylene)ガスを利用したプラズマ処理を行う。該プラズマ処理を介し、型枠表面が疎水性に表面改質され、C
4F
8のプラズマ重合による数千Å厚のPTFEがコーティングされ、高分子が硬化されて形成されたコンタクトレンズが容易に分離される。従って、従来技術による1回用モールドを代替し、半永久的に使用可能であるために、レンズ量産コスト節減の効果を期待することができる。
【0063】
具現例及び実験例
以下においては、
図11ないし
図13を参照し、本実施例によるコンタクトレンズを具現した例、及び実験例について説明する。モールド金型は、304グレードステンレス鋼材質であり、ミーリングマシン(CNC machine 850)を活用し、三次元形状を加工し、光透過率を高めるために、加工後に表面研磨されて形成された。眼球と接触する涙あるいは薬物保存のためのモールド10bと外部モールド10aとの曲率半径は、それぞれ8.8mm、8.6mmである。
【0064】
具現されたコンタクトレンズは、98%の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)に2%の安定性を上昇させるための架橋剤(エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA))と、開始剤(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN))と、レンズの関数率上昇のための有機化合物(メタクリル酸(MAA))と、を混合して作製した。
【0065】
図11は、本具現例によるコンタクトレンズ構造を、三次元デジタル顕微鏡鏡(HI-ROX、KH-7700)を介して拡大させ、各構造の大きさを測定した写真である。涙保存構造110は、気体排出構造114が首尾よく形成されることを確認することができ、全体体積は、1.4mm
3である。
【0066】
図12は、作製されたレンズの涙保存効果を試験するために、人工眼球の瞳孔に、作製されたレンズを装着させた写真である。
図13は、人工眼球を活用し、涙保存試験を行った結果であり、涙保存構造内部に流体が保存された写真である。外部シリンジポンプ(KD scientific、KDS-100)を活用し、人工眼球に、涙管を介して流体を分泌させた。試験結果を可視的に把握するために、水と青色インクとを混合した流体を、仮想涙に選定した。混合された流体を、1分当たり0.6mlの流量で20秒間注入した後、さらに涙保存構造内の涙保存有無を確認するために、さらに水を注入させ、涙保存構造外部のインクを除去した。全ての過程は、三次元デジタル顕微鏡鏡(HIROX、KH-7700)で観察した。試験結果として、提案するレンズ構造内部に流体が保存されることを確認した。
【0067】
以下においては、
図14及び
図15を参照し、本実施例による
図3及び
図4に例示されたコンタクトレンズの薬物放出実験結果について説明する。薬物としては、シクロスポリン(Sigma-Aldrich、ミュンヘン、ドイツ)を使用した。該薬物は、80%(v/v)エタノール6mlに、シクロスポリンを160mgを秤量して製造した。微細多孔性高分子でカバー部材を形成した。該多孔性高分子は、精製水10mLに、HPMC 100000(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、90SH-105、信越化学工業(株)、東京)及びキトサンの含量を調節して製造し、可塑剤として、PEG 300(BASF、ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)を2%(w/v)になるように添加した。
【0068】
製造された薬物を、コンタクトレンズの薬物保存構造に、シリンジを利用し、合計25μl注入し、45℃で1時間乾燥させ、その上に、微細多孔性高分子を35μl塗布し、45℃で1時間乾燥させた。
【0069】
薬物放出試験は、下記のように行われた。コンタクトレンズは、ガラス板と経皮吸収セル(フランツ型拡散セル(Franz diffusion cell))との間に固定された。経皮吸収システム(Franz Diffusion Cell System、VTC 300、Logan Instruments Corp、ニュージャージー、米国)でもって、35℃でストローを利用して撹拌した。
【0070】
検体採取時間は、0.05M pH7.4リン酸塩緩衝液をバッファとして使用するときには、0.5時間、1.5時間、2.5時間、3.5時間、4.5時間、5.5時間、6.5時間、7.5時間、8.5時間及び9.5時間に設定した。採取した検液は、0.45μmメンブレンフィルタを使用して濾過し、それを検体にし、定量分析した。
【0071】
表1は、薬物Dとカバー部材Pとの材質含量を図示した表である。
【0072】
【0073】
図14は、キトサン含量による薬物放出様相を図示した図面である。
D=薬物層(シクロスポリン16mg/ml)25μl分注
P=高分子層(キトサン+PEG 2%(w/v))30μl分注
【0074】
図14において、赤色円で例示された線図は、上方向三角形で例示されたD+P(キトサン0.5%(w/v)線図、及び下方向三角形で例示されたD+P(キトサン1.0%(w/v)と重畳されて表示された。
【0075】
カバー部材がない場合の累積薬物放出は、一次指数関数であり、非線形曲線フィット(nonlinear curve-fitting)となり、放出速度を、時定数τで分析した。最大薬物累積値の63%に達する時間(時定数)は、2.54時間と測定された。カバー部材の材質として、キトサンを使用する場合の累積薬物放出は、一次関数であり、線形曲線フィット(linear curve-fitting)となり、勾配αで放出特性を評価した。
【0076】
実験結果、カバー部材がない場合の薬物放出は、経時的に指数関数的に増大したが、カバー部材としてキトサンを使用する場合の薬物放出は、キトサンの含有量とは相関関係がなさそうであり、時間については、線形的に増大することが分かる。
【0077】
表2は、薬物Dとカバー部材Pとの材質含量を図示した表である。
【0078】
【0079】
図15は、本実験における、HPMC 100000 1%+キトサン0.2%の比率による薬物放出様相を図示した図面である。
D=薬物層(シクロスポリン16mg/ml)25μl分注
P=高分子層(HPMC 100000 1%(w/v))
C(キトサン0.2%(w/v))+PEG 2%(w/v))30μl分注
(H:C)=H(HPMC 100000 1%(w/v)):C(キトサン0.2%(w/v))の比率
【0080】
実験結果、カバー部材がない場合の累積薬物放出は、経時的に指数関数的に増大した。HPMC 100000とキトサンとを9:1で配合し、カバー部材として使用する場合の薬物放出も、指数関数的に増大したが、キトサンの比率が上昇するにつれ、薬物放出量は、線形的に増大する様相に変化し、累積薬物放出量は、だんだんと少なくなることが分かる。
【0081】
従って、前述の実験を介し、コンタクトレンズに薬物を充填し、微細多孔性高分子材質のカバー部材を利用し、薬物放出調節が可能であることが分かる。また、カバー部材を構成する多様な高分子種類及び濃度調節を介し、薬物の薬効を最大に維持するための薬物放出時間調節が可能である。
【0082】
以上において説明したように、前述の開示された技術について、多様な実施例を挙げて詳細に記述したが、本開示された技術が属する技術分野において当業者であるならば、特許請求の範囲に定義された本開示された技術の精神及び範囲を外れずに、本開示された技術をさまざまに変形して実施することができるであろう。従って、前述の開示された技術の今後の実施例の変更は、本開示された技術の記述を外れることがないであろう。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであり、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの中心部に位置し、光を屈折させる視力矯正レンズ部と、
前記中心部から離隔されて位置し、薬物を保存する薬物保存構造と、を含み、
前記コンタクトレンズユーザの眼球に前記薬物を提供する、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記コンタクトレンズは、
微細多孔を有する微細多孔性高分子材質である、請求項
1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記薬物保存構造は、
前記コンタクトレンズに凹状構造に形成され、前記凹状構造に薬物を保存する薬物チャンバと、
少なくとも前記薬物チャンバを覆うカバー部材と、を含み、
前記カバー部材は、微細多孔が形成された微細多孔性高分子材質であり、
前記薬物は、前記微細多孔を介し、前記眼球に提供される、請求項
1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記薬物保存構造は、
前記コンタクトレンズに凹状構造に形成され、前記凹状構造に薬物を保存する薬物チャンバと、
少なくとも前記薬物チャンバを覆うカバー部材と、
前記カバー部材に形成され、前記薬物を前記眼球に提供する排出構造と、を含む、請求項
1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記排出構造は、
1または1以上のホールを含み、
前記1以上のホールの面積は、互いに同じであるか、あるいは互いに異なる、請求項
4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記薬物保存構造は、
前記コンタクトレンズに凹状構造に形成され、前記凹状構造に薬物を保存する薬物チャンバと、
前記コンタクトレンズに凹状構造に形成され、前記薬物を放出するように前記薬物チャンバと連結された薬物排出路と、
前記薬物排出路と前記薬物チャンバとを覆うカバー部材と、を含み、
前記カバー部材は、前記薬物排出路端部を開放して薬物排出口を形成する、請求項
1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記薬物保存構造は、
互いに離隔されて連結されていない複数の薬物チャンバと、
前記複数の薬物チャンバとそれぞれ連結された複数の薬物排出路と、を含み、
前記複数の薬物チャンバには、同一であるか、あるいは互いに異なる薬物が保存される、請求項
6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記薬物保存構造は、
前記コンタクトレンズに形成された円形の単一薬物チャンバと、
前記単一チャンバと連結された複数の薬物排出路と、を含み、
前記複数の薬物排出路は、前記コンタクトレンズの端部に前記薬物を排出する、請求項
6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記薬物は、
眼球乾燥症治療剤、緑内障治療剤、眼圧降下剤、視力損傷治療剤、抗菌剤、アレルギー性結膜炎治療剤、眼瞼結膜炎治療剤、夜盲症治療剤、視力減退治療剤、眼炎症治療剤、白内障治療剤、抗ウイルス剤、散瞳薬、炭酸脱水酵素阻害剤及び黄斑変性治療剤のうちいずれか1以上を含む、請求項
1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記微細多孔性高分子は、
水溶性高分子及び非水溶性高分子のうちいずれか一つである、請求項
3に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記水溶性高分子は、
アカシア、寒天、アルギン酸、カルボマー、カラギーナン、酢酸セルロース、イナゴマメ、キトサン、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸、デキストラン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロプロピルベタデックス、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ヒプロメロースフタレート、カラヤガム、ローカストビーンガム、メチルセルロース、糖蜜、ペクチン、ポリアクリルアミド、ポリカプロラクトン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリオルトエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガカント、クエン酸トリエチル及びキサンタンガムのうちいずれか1以上を含む、請求項
10に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記非水溶性高分子は、
アセチルアルコール、アセチルエステルワックス、アセチルクエン酸トリブチル、モノステアリン酸アルミニウム、カルナウバロウ、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、セバシン酸ジブチル、エチルセルロース、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水添ひまし油、水添植物性油脂タイプ1、パルミチン酸イソプロピル、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、ポリ乳酸、ポリラクタイド、ポリメタクリレート、ポリオキシグリセリド、シェラック、ステアリン酸、ステアリルアルコール、クエン酸トリブチル、白蝋、黄蝋及びゼインのうちいずれか1以上を含む、請求項
10に記載のコンタクトレンズ。
【国際調査報告】