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特表2022-544027レーザ重ね溶接装置及びその溶接方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】レーザ重ね溶接装置及びその溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20221007BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
B23K26/21 G
B23K26/03
B23K26/21 W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505276
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2020097922
(87)【国際公開番号】W WO2021031691
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】201910772401.1
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520112818
【氏名又は名称】シーアールアールシー チンダオ スーファン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハン シァォフゥイ
(72)【発明者】
【氏名】マー グオロン
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン ヂーイー
(72)【発明者】
【氏名】マオ ヂェンドン
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA56
4E168CA11
4E168DA37
4E168KA04
(57)【要約】
本願は、レーザ重ね溶接装置に関する。レーザ重ね溶接装置は、重なって配置された溶接すべき板(5)に正面からレーザ光を放出するレーザ溶接ユニット(3)と、重なって配置された溶接すべき板間の距離を調整する押圧部材(2)と、重なって配置された溶接すべき板の溶接パラメータを裏面から検出する検出ユニットと、検出ユニットにより検出された溶接パラメータに基づいて、押圧部材の押圧程度及び/又はレーザ溶接ユニットの動作パラメータをリアルタイムに調整するコントローラ(1)と、を備える。当該レーザ重ね溶接装置は、溶接すべき板が溶接される時の裏面温度と溶接ビード(6)の熱赤外画像をリアルタイムに検出することができ、制御システムは、溶接パラメータに基づいて押圧部材の押圧度合又はレーザ溶接ユニットの動作パラメータを制御し、溶接プロセスをタイムリーに調整し、溶接ビードの溶け込みの自己適応の安定な制御を実現する。本願は、更にレーザ重ね溶接装置の溶接方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重なって配置された溶接すべき板に対して正面からレーザ光を放出するレーザ溶接ユニットと、
重なって配置された前記溶接すべき板の間の距離を調整する押圧部材と、
重なって配置された前記溶接すべき板の溶接パラメータを裏面から検出する検出ユニットと、
前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて、前記押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータをリアルタイムで調整するコントローラと、を備えることを特徴とするレーザ重ね溶接装置。
【請求項2】
前記溶接パラメータは、温度及び/又は溶接ビードの熱画像を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザ重ね溶接装置。
【請求項3】
前記検出ユニットは、温度センサ及び/又は熱画像センサを含むことを特徴とする請求項2に記載のレーザ重ね溶接装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、押圧ローラを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ重ね溶接装置。
【請求項5】
レーザ溶接ユニットは、重なっている溶接すべき板に対して正面からレーザ溶接を行うことと、
検出ユニットは、重なっている溶接すべき板を溶接する際の溶接パラメータを裏面から検出することと、
コントローラは、前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて、押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することと、を含むことを特徴とするレーザ重ね溶接装置の溶接方法。
【請求項6】
前記溶接パラメータは、温度及び/又は溶接ビードの熱画像を含むことを特徴とする請求項5に記載のレーザ重ね溶接装置の溶接方法。
【請求項7】
前記コントローラは、前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することは、
検出された温度が温度基準値よりも低い、及び/又は、溶接ビードの熱画像が高温領域の基準値より小さいと判断した場合、前記コントローラは、前記押圧部材の押圧度合を調整することを含み、
ここで、前記コントローラは前記押圧部材の押圧度合を調整することは、隣接する2つの溶接すべき板の間の距離を減少させるように、押圧部材の押圧力を増加させることを含むことを特徴とする請求項6に記載のレーザ重ね溶接装置の溶接方法。
【請求項8】
検出された温度が温度基準値よりも低い、及び/又は、溶接ビードの熱画像が領域基準値よりも小さいと判断した場合、前記コントローラは、前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整し、
ここで、前記コントローラは前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することは、レーザ溶接ユニットのレーザエネルギーを増加させること、及び/又は、レーザスポットのデフォーカス量を減少させること、及び/又は、連続レーザ出力モードを使用することを含むことを特徴とする請求項7に記載のレーザ重ね溶接装置の溶接方法。
【請求項9】
前記コントローラは、前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することは、
検出された温度が温度基準値よりも高い、及び/又は、溶接ビードの熱画像が高温領域の基準値よりも大きいと判断した場合、前記コントローラは、前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することを含み、
ここで、前記コントローラは前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することは、レーザ溶接ユニットのレーザエネルギーを減少させること、及び/又は、レーザスポットのデフォーカス量を増加させること、及び/又は、パルスレーザ出力モードを使用することを含むことを特徴とする請求項6に記載のレーザ重ね溶接装置の溶接方法。
【請求項10】
検出された温度が温度基準値よりも高い、及び/又は、溶接ビードの熱画像が高温領域の基準値よりも大きいと判断した場合、前記コントローラは、前記押圧部材の押圧度合を調整し、
ここで、前記コントローラは前記押圧部材の押圧度合を調整することは、隣接する2つの溶接すべき板の間の距離を増加させるように、押圧部材の押圧力を減少させることを含むことを特徴とする請求項9に記載のレーザ重ね溶接装置の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2019年8月21日に提出された、出願番号が201910772401.1であり、発明の名称が「レーザ重ね溶接装置及びその溶接方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願は、溶接の技術分野に関し、特に、溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置及びその溶接方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザ溶接は、エネルギー密度が高く、溶接ビードの幅に対する深さの比率が大きく、熱影響領域が小さく、溶接の品質が高く、自動化が容易に実現できるなどの利点を有するため、工業生産の様々な分野に広く応用されている。重ね溶接は、重要な材料接合方式として、実際の生産にも広く応用されている。
【0004】
中薄板の二重板を重ねて溶接するには、一般的に、二枚の板が重なっている状態で上部板の表面から溶接する必要があり、底板には、ある程度の溶け込みがあるが、完全に溶け込んでいない。比較的に先進的な溶接方法は、一般的にレーザ溶接を採用するが、溶接中に、溶接の溶け込みを制御しにくい問題があり、底板の溶け込みが不足であるか、又は溶け込みが深過ぎてひいては溶け落ちしてしまい、且つ溶接ビードの内部の品質の検出と追跡が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、少なくとも、レーザ重ね溶接における溶接の溶け込みの制御が困難であるという課題を解決するための溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置、及び溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置の溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本願は、レーザ重ね溶接装置を提供し、当該レーザ重ね溶接装置は、重なって設置された少なくとも2つの溶接すべき板を溶接するためのレーザ重ね溶接装置であって、
重なって配置された溶接すべき板に対して正面からレーザ光を放出するレーザ溶接ユニットと、
重なって配置された前記溶接すべき板の間の距離を調整する押圧部材と、
重なって配置された前記溶接すべき板の溶接パラメータを裏面から検出する検出ユニットと、
前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて、前記押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータをリアルタイムで調整するコントローラと、を備える。
【0007】
ある実施形態において、好ましくは、前記溶接パラメータは、温度及び/又は溶接ビードの熱画像を含む。
【0008】
ある実施形態において、好ましくは、前記検出ユニットは、温度センサ及び/又は熱画像センサを含む。
【0009】
ある実施形態において、好ましくは、前記押圧部材は、押圧ローラを含む。
【0010】
本願は、レーザ重ね溶接装置の溶接方法をさらに提供し、当該方法は、
レーザ溶接ユニットは、重なっている溶接すべき板に対して正面からレーザ溶接を行うことと、
検出ユニットは、重なっている溶接すべき板を溶接する際の溶接パラメータを裏面から検出することと、
コントローラは、前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて、押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することと、を含む。
【0011】
ある実施形態において、好ましくは、前記溶接パラメータは、温度及び/又は溶接ビードの熱画像を含む。
【0012】
ある実施形態において、好ましくは、前記コントローラは、前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することは、
検出された温度が温度基準値よりも低い、及び/又は、溶接ビードの熱画像が高温領域の基準値より小さいと判断した場合、前記コントローラは、前記押圧部材の押圧度合を調整することを含み、
ここで、前記コントローラは前記押圧部材の押圧度合を調整することは、隣接する2つの溶接すべき板の間の距離を減少させるように、押圧部材の押圧力を増加させることを含む。
【0013】
ある実施形態において、好ましくは、検出された温度が温度基準値よりも低い、及び/又は、溶接ビードの熱画像が領域基準値よりも小さいと判断した場合、
前記コントローラは、前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整し、
ここで、前記コントローラは前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することは、レーザ溶接ユニットのレーザエネルギーを増加させること、及び/又は、レーザスポットのデフォーカス量を減少させること、及び/又は、連続レーザ出力モードを使用することを含む。
【0014】
ある実施形態において、好ましくは、前記コントローラは、前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することは、
検出された温度が温度基準値よりも高い、及び/又は、溶接ビードの熱画像が高温領域の基準値よりも大きいと判断した場合、前記コントローラは、前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することを含み、
ここで、前記コントローラは前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整することは、レーザ溶接ユニットのレーザエネルギーを減少させること、及び/又は、レーザスポットのデフォーカス量を増加させること、及び/又は、パルスレーザ出力モードを使用することを含む。
【0015】
ある実施形態において、好ましくは、検出された温度が温度基準値よりも高い、及び/又は、溶接ビードの熱画像が高温領域の基準値よりも大きいと判断した場合、前記コントローラは、前記押圧部材の押圧度合を調整し、
ここで、前記コントローラは前記押圧部材の押圧度合を調整することは、隣接する2つの溶接すべき板の間の距離を増加させるように、押圧部材の押圧力を減少させることを含む。
【発明の効果】
【0016】
本願が提供する溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置は、重なって配置された溶接すべき板に対して正面からレーザ光を放出するレーザ溶接ユニットと、重なって配置された前記溶接すべき板の間の距離を調整する押圧部材と、重なって配置された前記溶接すべき板の溶接パラメータを裏面から検出する検出ユニットと、前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて、前記押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータをリアルタイムで調整するコントローラと、を備える。溶接中において、レーザ溶接ユニットは、溶接すべき板載置領域に載置された重なっている溶接すべき板に対して正面からレーザ重ね溶接を行い、検出ユニットは、溶接パラメータを裏面から検出し、コントローラは、前記検出ユニットにより検出された前記溶接パラメータに基づいて、押圧部材の押圧度合及び/又は前記レーザ溶接ユニットの動作パラメータを調整する。本願は、中薄板の二重板の重ね溶接における溶け込みの監視と制御の難題に対して、検出ユニット、例えば温度感度センサや熱画像センサにより、溶接すべき板が溶接される時の溶接パラメータ、例えば、裏面温度や溶接ビードの熱赤外画像の伝送を裏面からリアルタイムに検出し、制御システムにおいて温度曲線と熱画像映像をリアルタイムに記録し、そして溶接パラメータに基づいて押圧部材の押圧度合又はレーザ溶接ユニットの動作パラメータを制御して、溶接プロセスをタイムリーに調整することにより、溶接ビードの溶け込みの自己適応の安定な制御を実現する。溶接後の溶接ビードの溶け込み状況は、制御システムにおける温度記録曲線と熱画像映像を呼び出して分析と追跡を行うことができ、溶接品質のオンライン制御と溶接後の品質の追跡可能性を実現し、中薄板の二重板の重ね溶接の品質の安定性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1は、本願の一実施形態に係る溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置の構成模式図である。
図2は、本願の一実施形態に係る溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置の溶接中における温度値に基づく溶け込み状況の判断の模式図である。
図3は、本願の一実施形態に係る溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置の溶接中における熱画像の直径に基づく溶け込み状況の判断の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面及び実施形態を参照して本願の具体的な実施の形態を更に詳細に説明する。以下の実施形態は、本願を説明するためのものであり、本願の範囲を限定するものではない。
【0019】
本願の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚み」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などの用語が示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本願を便利且つ簡単に説明するためのものに過ぎず、示された装置又は素子が必ず特定の方位にあり、特定の方位で構成されて操作されると明示又は暗示するものではないため、本願に対する限定であると理解されるべきではない。
【0020】
なお、「第1」、「第2」という用語は、単に説明のためのものであり、相対的な重要性を明示又は暗示するもの、又は指示された技術特徴の数を暗示するものとして理解されるべきではない。これにより、「第1」、「第2」が限定された特徴は、明示的又は暗示的に少なくとも1つの該特徴を含む。本願の説明において、特に明確且つ具体的な限定がない限り、「複数」の意味は、少なくとも2つ、例えば、2つ、3つなどである。
【0021】
本願の説明において、明確な規定と限定がない限り、「取り付け」、「互いに接続」、「接続」、「固定」などの用語の意味は広く理解されるべきであり、例えば、固定接続や、着脱可能な接続や、あるいは一体的な接続でも可能であり、機械的な接続や、電気的な接続、互いに通信可能であってもよく、直接互いに接続することや、中間媒体を介して互いに間接接続することや、2つの素子の内部の連通、又は2つの素子の相互作用の関係でも可能である。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本願での具体的な意味を理解することができる。
【0022】
本願は、図1に示すように、溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置を提供し、当該装置は、溶接すべき板載置領域と、レーザ溶接ユニット3と、押圧部材2と、検出ユニットと、コントローラ1とを備え、溶接すべき板載置領域は、重なっている少なくとも2つの溶接すべき板5を載置するためのものであり、レーザ溶接ユニット3は、重なって載置された溶接すべき板に対して正面からレーザ光を放出するためのものであり、押圧部材2は、溶接すべき板載置領域内にける重なっている溶接すべき板5を押圧し、重なって載置された溶接すべき板の間の距離を調整するためのものであり、検出ユニットは、重なって載置された溶接すべき板の溶接パラメータを裏面から検出するためのものであり、コントローラ1は、検出ユニットにより検出された溶接パラメータに基づいて、押圧部材2による押圧度合及び/又はレーザ溶接ユニット3の動作パラメータをリアルタイムで調整するためのものである。
【0023】
いくつかの実施形態では、溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置には、重なって載置された溶接すべき板を載置するための溶接すべき板載置領域が構築された本体構造が設けされている。説明の便宜上、重なっている溶接すべき板は一体構造とし、溶接すべき板5の溶接面を正面とし、溶接面の反対の面を溶接すべき板5の裏面とする。レーザ重ね溶接が必要な場合には、溶接すべき板5を溶接すべき板載置領域に重なって載置する。重ね溶接される溶接すべき板5が少なくとも2つの溶接すべき板5を含む。レーザ光は正方向から放出して、上層の溶接すべき板5に溶融池4を形成し、レーザ光は、最後の層の溶接すべき板の厚さの一部のみを通過する。
【0024】
なお、いくつかの実施形態では、レーザ重ね溶接装置は、独立した溶接すべき板載置領域を設ける必要がなく、既存の環境や重なっている溶接すべき板を載置する構造によって、直接、正面からレーザ光を放出し、裏面から溶接パラメータを検出し、溶接パラメータに基づいて溶け込み自己適応の調整を行うことができる。
【0025】
重なっている溶接すべき板は、上側が正面、下側が裏面となるように載置されてもよく、実際の環境に応じて縦置きで載置されてもよく、斜め置きで載置されてもよく、或いは、下側が正面、上側が裏面となるように上下に載置されてもよい。
【0026】
以下の説明において、上側が正面、下側が裏面である載置形態を例として説明する。押圧部材2は、上層の溶接すべき板に押圧力を付与し、重なっている溶接すべき板5の間の間隔を縮小させる。押圧部材2は、溶接位置に応じて移動し、その押圧力が調整可能であり、例えば、コントローラ1の制御信号に応じて押圧力を変更する。いくつかの実施形態では、押圧部材2は押圧ローラを採用し、押圧部材2に押圧ブロックが設けられ、その底部にローラが設けられ、押圧ブロックの重力がローラに伝達されて、ローラは、押圧力を溶接すべき板5に付与しながら、溶接位置の移動に伴って転動して、押圧部材2が溶接位置の前方に位置するように駆動する。他の実施形態では、転動型の押圧部材の代わりに、他の形態のスライド型の押圧構造を採用してもよい。
【0027】
検出ユニットは、溶接が要求を満たすかどうか(即ち、要求値、基準値に達するかどうか)を判定するために、溶接位置における溶接による溶接すべき板5への影響のパラメータ、即ち、溶接パラメータを検出するためのものである。コントローラ1は、要求値又は基準値に一致しないと判断した場合に、押圧部材2の押圧度合を変更し、レーザ溶接ユニット3の動作パラメータ、例えば、光パワー、デフォーカス量、出力モード等を調整して、溶接ビード6の溶け込みの自己適応の安定な制御を実現する。
【0028】
いくつかの実施形態では、溶接パラメータは、重なって配置された溶接すべき板5の裏面の溶接箇所に正対した箇所の温度及び/又は溶接ビードの熱画像であり得る。ここで、溶接箇所に正対した箇所は、好ましい位置であり、温度値と熱画像、熱量伝達の速度と伝達の大きさをより正確に取得することができる。勿論、溶接箇所に完全に正対していない形態も本願の保護範囲に含まれる。
【0029】
これらの溶接パラメータを取得するために、いくつかの実施形態では、温度センサ8を用いて温度値を取得し、熱画像センサ7により熱画像を取得する。コントローラ1は、取得した温度値に基づいて温度曲線を作成し、熱画像に基づいて高温領域直径の測定線を決定する。コントローラ1には、比較するための温度基準線と高温領域直径基準線とが記憶されている。
【0030】
コントローラ1は、検出ユニットにより検出された溶接パラメータに基づいて押圧部材2の押圧度合、レーザ溶接ユニット3の動作パラメータを調整することは、具体的に、下記のような形態を含む。
図2図3に示すように、重なっている溶接すべき板5の裏面の溶接ビード6に正対している箇所の温度が温度基準値よりも低い、及び/又は、重なっている溶接すべき板5の裏面の熱画像の高温領域が高温領域の基準値よりも小さいと判断した場合、
いくつかの実施形態において、コントローラ1は、隣接する2つの溶接すべき板の間の距離を減少させるように、押圧部材2の押圧度合を調整して押圧部材2の押圧力を増加させる方式1を採用する。
【0031】
いくつかの実施形態において、コントローラ1は、レーザ溶接ユニット3の動作パラメータを調整し、レーザ溶接ユニット3のレーザエネルギーを増加させ、及び/又は、レーザスポットのデフォーカス量を減少させ、及び/又は、連続レーザ出力モードを使用する方式2を採用する。
【0032】
他の実施形態において、方式1と方式2を組み合わせて使用する。
【0033】
図2図3に示すように、重なっている溶接すべき板5の裏面の溶接ビード6に正対している箇所の温度が温度基準値よりも高い、及び/又は、底層の溶接すべき板5の裏面の熱画像の高温領域が領域基準値よりも高いと判断した場合、
いくつかの実施形態において、コントローラ1は、レーザ溶接ユニット3の動作パラメータを調整し、レーザ溶接ユニット3のレーザエネルギーを減少させ、及び/又は、レーザスポットのデフォーカス量を増加させ、及び/又は、パルスレーザ出力モードを使用する方式3を採用する。
【0034】
いくつかの実施形態において、コントローラ1は、隣接する2つの溶接すべき板間の距離を増加するように、押圧部材2の押圧度合を調整して押圧部材2の押圧力を減少させるという方式4を採用する。
【0035】
他の実施形態では、方式3と方式4を組み合わせて使用する。
【0036】
中薄板の二重板の重ね溶接中における溶け込みの監視と制御の難題に対して、前記溶接すべき板載置領域に向いた裏面に検出ユニット、例えば、温度感度センサと熱画像センサ7を設置し、溶接すべき板5が溶接される時の溶接パラメータ、例えば、裏面温度と溶接ビード6の熱赤外画像の伝送をリアルタイムに検出する。制御システムにおいて温度曲線と熱画像映像をリアルタイムに記録し、溶接パラメータに基づいて押圧部材2の押圧度合又はレーザ溶接ユニット3の動作パラメータを制御して、溶接プロセスをタイムリーに調整することにより、溶接ビード6の溶け込みの自己適応の安定な制御を実現する。溶接後の溶接ビード6の溶け込み状況について、制御システムにおける温度記録曲線と熱画像映像を呼び出して分析と追跡を行うことができ、溶接品質のオンライン制御と溶接後の品質の追跡可能性を実現し、中薄板の二重板の重ね溶接の品質の安定性を大幅に向上させることができる。
【0037】
次に、本願は、図1に示すように、溶け込み自己適応レーザ重ね溶接装置の溶接方法をさらに提供する。該方法は、
レーザ溶接ユニット3は、重なっている溶接すべき板に対して正面からレーザ溶接を行うステップ110と、
検出ユニットは、重なっている溶接すべき板が溶接される際の溶接パラメータを裏面から検出するステップ112と、
コントローラ1は、検出ユニットにより検出された溶接パラメータに基づいて、押圧部材2の押圧度合及び/又はレーザ溶接ユニット3の動作パラメータを調整するステップ114とを含む。
【0038】
溶接すべき板5が溶接すべき板載置領域に重なって載置された後、レーザ溶接ユニット3は、正面から溶接すべき板5に対してレーザ光を設定値で放出する。これに伴って、検出ユニットは、底層の溶接すべき板の溶接パラメータ、例えば、温度値と熱画像を裏面から検出し始め、高温領域(溶接箇所に正対する領域)の温度値と熱画像を決定して、高温領域の熱画像に基づいて高温領域の熱画像の直径を決定する。コントローラ1は、高温領域の温度値、熱画像の直径を点として構築してこれらの点を線で繋げ、点の値を基準温度線、直径基準線と照合することにより、溶け込みが深すぎるか、不足であるかを判定し、判定した結果に基づいて、押圧度合、レーザ溶接ユニット3の動作パラメータを調整する。これにより、溶け込みを制御しやすくなり、リアルタイムの溶け込み状況に基づいて自己適応性の調整を行う。後の段階では、コントローラ1により作成された温度線、直径測定線に基づいて、後段階における検証、照合及び分析等を行うこともできる。
【0039】
なお、温度基準線及び熱画像直径基準線とそれぞれに照合する場合には、優先順位は自由に選択可能であり、それらのうちの一方のみを選択して比較してもよいし、判断の正確性を向上させるために、2次元でそれぞれ比較してもよい。
【0040】
以下に複数の実施例を示す。
【0041】
実施例1
図1を参照すると、中薄板(即ち、溶接すべき板5)は重なって載置され、レーザ溶接ヘッド(レーザ溶接ユニット3に備えられたもの)は中薄板の上部で溶接を行い、底層の中薄板の裏面に温度(感度)センサと熱画像センサ7が設けられ、温度(感度)センサは裏面の温度をリアルタイムに収集し、熱画像センサ7は溶接ビード6の熱赤外画像をリアルタイムに収集し、温度値と溶接ビード6の熱赤外画像をコントローラ1を含む制御システムに伝送し、制御システムにおいて温度曲線と熱画像映像をリアルタイムに記録し、温度基準線及び熱画像直径基準線と比較する。
【0042】
図2図3に示すように、溶け込みが不足している場合には、底層の溶接すべき板5の裏面における熱伝達が少なく、表面温度が基準値よりも低く、熱画像における高温領域が減少した(直径が直径基準線の直径より小さい)場合、押圧ローラの押圧力を増加させることで、上下両板の密着度を増加させて、溶接の溶け込みを増加させることができる。また、それと同時にレーザエネルギーを増加させ、レーザのスポットのデフォーカス量を減少させ、連続出力モードを使用する(三者は、同時に調整してもよく、そのうちの1つ又は2つを選択して調整してもよい)ことで、溶接の溶け込みを増加させることができる。
【0043】
溶接後の溶接ビード6の溶け込み状況は、制御システムにおける温度記録曲線と熱画像直径測定線を呼び出して分析と追跡を行うことができ、溶接品質のオンライン制御と溶接後の品質の追跡を実現する。
【0044】
なお、溶け込みが不足している場合には、まず、溶接すべき板5同士の密着度が要求を満たしているか否かを考慮し、調整を行う時にも、まず溶接すべき板5同士の密着度を調整する。
【0045】
実施例2
本実施例は、実施例1における異なる照合結果に対して異なる制御方式を示すものである。
【0046】
制御システムにおいて温度曲線と熱画像映像をリアルタイムに記録し、温度基準線及び熱画像直径基準線と比較する。
【0047】
図2図3に示すように、溶け込みが深すぎると、底層の溶接すべき板5の裏面における熱伝達が多くなり、表面温度が基準値よりも高くなり、熱画像の高温領域が増加し、直径が直径基準線における基準値よりも大きくなる場合、レーザエネルギーを減少させ、レーザスポットのデフォーカス量を増加させ、又はパルスレーザ出力モードを使用する(三者は、同時に調整してもよく、そのうちの1つ又は2つを選択して調整してもよい)ことで、溶接溶け込みを減少させる。なお、場合によっては、押圧ローラの押圧力を適度に減少させることで、上下両板の密着度を減少させて、溶接の溶け込みを制限することができる。
【0048】
本願は、中薄板の二重板(即ち、二重の溶接すべき板)の重ね溶接中における溶け込みの監視と制御の難題に対して、底層溶接すべき板の裏面に、又は裏面に近接して温度感度センサと熱画像センサを設置することにより、裏面温度と溶接ビードの熱赤外画像を制御システムにリアルタイムに伝送し、制御システムにおいて温度曲線と熱画像映像をリアルタイムに記録して、基準値と比較する。溶接中において異常が発生した場合、制御システムは、信号を溶接制御ユニットに伝送し、溶接プロセスをタイムリーに調整することにより、溶接ビードの溶け込みの自己適応の安定な制御を実現する。溶接後の溶接ビードの溶け込み状況は、制御システムにおける温度記録曲線と熱画像映像を呼び出して分析と追跡を行うことができ、溶接品質のオンライン制御と溶接後の品質の追跡可能性を実現し、レーザ重ね溶接の品質の安定性を大幅に向上させることができる。
【0049】
上記の説明は、単に本願の好ましい実施形態であり、本願を制限することを意図するものではない。本願の精神及び原則の範囲内で、いかなる変更、等価的な置換、改良なども、本願の保護の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…コントローラ、2…押圧部材、3…レーザ溶接ユニット、4…溶融池、5…溶接すべき板、6…溶接ビード、7…熱画像センサ、8…温度センサ。
図1
図2
図3
【国際調査報告】