(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ベネトクラクスの多形及び多形を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20221007BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20221007BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221007BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
A61K31/496
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505506
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 GB2020051913
(87)【国際公開番号】W WO2021028678
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ブイスト、アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】エバーリン、アレックス
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065BB04
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ03
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP07
4C065PP15
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、ベネトクラクスの多形、その調製のためのプロセス、及び多形を含有する医薬組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ベネトクラクス無水物である、ベネトクラクスの結晶性形態。
【請求項2】
約5.1、8.1、8.9、9.4、10.7、11.0、11.3、13.3、13.6、14.0、14.6、15.2、15.5、15.8、16.1、16.4、16.7、17.1、17.4、17.8、18.7、19.2、19.6、20.0、20.3、20.8、21.1、21.8、22.1、22.5、22.9、23.4、23.9、24.3、24.5、25.4、25.9、26.7、27.2、27.7、28.2、29.1、30.0、30.4、及び30.6度2シータ±0.2度2シータからなる群から選択される1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載のベネトクラクスの結晶性形態。
【請求項3】
約5.1、8.9、9.4、14.6、及び17.8度2シータ±0.2度2シータにピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項2に記載のベネトクラクスの結晶性形態。
【請求項4】
実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンを有する、請求項3に記載のベネトクラクスの結晶性形態。
【請求項5】
約219.2℃で発生する吸熱事象を含むDSCサーモグラムを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のベネトクラクスの結晶性形態。
【請求項6】
実質的に
図2に示すようなDSCサーモグラムを有する、請求項5に記載のベネトクラクスの結晶性形態。
【請求項7】
約周囲温度~約175℃まで加熱されたときに約0.5%の質量損失を含むTGAサーモグラムを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のベネトクラクスの結晶性形態。
【請求項8】
実質的に
図2に示すようなTGAサーモグラムを有する、請求項7に記載のベネトクラクスの結晶性形態。
【請求項9】
≧98%の化学純度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のベネトクラクスの結晶性形態。
【請求項10】
結晶性ベネトクラクス無水物を調製するためのプロセスであって、
(a)ベネトクラクスを、ヘプタンである溶媒と、任意選択的に酢酸イソプロピルと組み合わせて接触させる工程と、
(b)前記溶媒中のベネトクラクスの溶液又は懸濁液を形成する工程と、
(c)ベネトクラクス無水物を結晶性固体として回収する工程と、を含む、プロセス。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性ベネトクラクス無水物と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項12】
患者におけるがんを治療するための方法であって、治療有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性ベネトクラクス無水物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記治療方法が、慢性リンパ性白血病の治療である、請求項12に記載の治療のための方法。
【請求項14】
がんの治療において使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性ベネトクラクス無水物。
【請求項15】
慢性リンパ性白血病の治療において使用するための、請求項14に記載の結晶性ベネトクラクス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベネトクラクスの多形、その調製のためのプロセス、及び多形を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ベネトクラクスは、4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル]メチル}ピペラジン-1-イル)-N-({3-ニトロ-4-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミドの化学名、及び以下に示される化学構造を有する:
【0003】
【0004】
ベネトクラクスは、米国において商標名Venclexta及びVenclyxtoとして欧州連合において販売されている。ベネトクラクスは抗腫瘍剤であり、ベネトクラクス単剤療法は、他の治療法が失敗したか、又は不適切な場合に慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukaemia、CLL)を治療するために必要を示す。CLLを有する患者の数が少ないため、疾患は、欧州連合において、希少であるとみなされ、Venclyxtoは、希少医薬品に指定されている。
【0005】
米国特許第8722657号(Abbvie Inc.に対して)は、4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル]メチル}ピペラジン-1-イル)-N-({3-ニトロ-4-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミドの塩及び結晶性形態が記載されている。米国特許第8722657号は、本明細書に開示されるベネトクラクス無水物又はそれを調製するためのプロセスが記載されていない。
【0006】
原体の固体特性に関する情報が重要である。例えば、異なる形態は、異なる溶解度を有し得る。また、原体の取り扱い及び安定性は、固体形態に依存し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多形性は、化合物が1つを超える異なる結晶種で結晶化する能力として定義することができ、同じ化学組成の異なる結晶配列は多形と称される。同じ化合物の多形は、原子の内部配置の差異によって生じ、異なる自由エネルギーを有し、したがって、溶解性、化学的安定性、融点、密度、流動特性、吸湿性、生物学的利用能などの物理的特性が異なる。化合物ベネトクラクスは多くの多形形態で存在する場合があり、これらの形態の多くは、医薬的に許容される組成物を製造するのに望ましくない場合がある。これは、低安定性、高吸湿性、低水溶性、及び取り扱いの困難さを含む様々な理由のためであり得る。
【0008】
定義
用語「約(about)」又は「およそ(approximately)」は、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。ある特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、1、2、3、又は4標準偏差の範囲内を意味する。ある特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、所与の値又は範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0.5%以内を意味する。ある特定の実施形態では、X線粉末回折2シータピークを参照すると、用語「約」又は「およそ」は、±0.2°2θ以内を意味する。
【0009】
用語「周囲温度」は、約15℃~約30℃、例えば約15℃~約25℃の1つ以上の室温を意味する。
【0010】
用語「貧溶媒」は、第2の溶媒に添加されて、第2の溶媒中の化合物の溶解度を低下させる第1の溶媒を指す。第1及び第2の溶媒の組み合わせからの化合物の沈殿が生じるように、溶解度を十分に低減することができる。
【0011】
本明細書で使用される用語「結晶性」及び関連する用語は、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物を記載するために使用される場合、特に指定がない限り、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物がX線回折によって決定されるように実質的に結晶性であることを意味する。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st edition,Lippincott,Williams and Wilkins,Baltimore,Md.(2005);The United States Pharmacopeia,23rd ed.,1843-1844(1995)を参照されたい。
【0012】
本明細書における用語「多形(polymorph)」、「多形形態(polymorphic form)」又は関連する用語は、ベネトクラクスの1つ以上の分子の結晶形を指すか、又は多形の結晶格子内の分子の異なる配置若しくは配座の結果として、2つ以上の形態で存在し得るベネトクラクス分子複合体の結晶形を指す。
【0013】
用語「医薬組成物」は、本発明の医薬的に有効な量のベネトクラクスと、医薬的に許容される賦形剤とを包含することを意図する。本明細書で使用するとき、用語「医薬組成物」は、錠剤、丸剤、粉剤、液剤、懸濁液、エマルション、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、又は注射製剤などの医薬組成物を含む。
【0014】
用語「賦形剤」は、医薬的に許容される有機又は無機担体物質を指す。賦形剤は、有効な活性成分を含有する製剤を増量する目的で含まれる(したがって、しばしば「増量剤」、「充填剤」又は「希釈剤」と呼ばれる)、又は薬物吸収若しくは溶解性を促進するなど、最終剤形中の活性成分に対して治療的強化を付与するために含まれる、薬剤の活性成分と共に配合された天然又は合成物質であり得る。賦形剤はまた、予想される貯蔵寿命にわたる変性の防止などのインビトロ安定性の補助に加えて、粉末流動性又は非付着特性を促進することによってなど、活性物質の取り扱いを補助するために、製造プロセスにおいて有用であり得る。
【0015】
用語「患者」は、治療、観察、又は実験の対象である動物、好ましくは患者、最も好ましくはヒトを指す。好ましくは、患者は、治療及び/又は予防される疾患又は障害の少なくとも1つの症状を経験及び/又は呈している。更に、患者は、治療及び/予防される障害、疾患又は病状のいずれの症状も呈していない場合があるが、医師、臨床医、又は他の医療専門家により、当該障害、疾患、又は病状を発症するリスクがあるとみなされている。
【0016】
用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」は、疾患若しくは障害の根絶若しくは寛解、又は疾患若しくは障害と関連する1つ以上の症状の根絶又は寛解を指す。ある特定の実施形態では、これらの用語は、このような疾患若しくは障害を有する患者に1つ以上の治療剤を投与することに起因する疾患若しくは障害の蔓延又は悪化を最小限に抑えることを指す。いくつかの実施形態では、これらの用語は、疾患の症状の発症後に、他の追加の活性剤の有無にかかわらず、本明細書で提供される分子複合体を投与することを指す。
【0017】
用語「一晩」とは、1つの手順工程の終了と手順における次の工程の開始との間で約12~約18時間の時間枠が経過した、1就業日の終了から次の就業日までの期間を指す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書に記載される実施形態のある特定の態様は、図面を参照することによってより明確に理解することができ、図面は、本発明を例示することを意図するが、限定することを意図するものではない。
【
図1】
図1は、ベネトクラクス無水物の代表的なXRPDパターンである。
【
図2】
図2は、ベネトクラクス無水物の代表的なTGAサーモグラム及びDSCサーモグラムである。
【
図3】
図3は、ベネトクラクス無水物の代表的な
1H-NMRスペクトル。
【
図4】
図4は、ベネトクラクス無水物の代表的なGVS等温線プロットである。黒一色の三角形記号
【0019】
【数1】
は、サイクル1の収着等温線プロットを表す。黒色の十字記号
【0020】
【数2】
は、サイクル1の脱離等温線プロットを表す。黒色の正方形内の灰色の十字記号
【0021】
【数3】
は、サイクル2の収着等温線プロットを表す。黒一色のひし形記号
【0022】
【数4】
は、サイクル2の脱離等温線プロットを表す。黒一色の正方形記号
【0023】
【数5】
は、サイクル3の収着等温線プロットを表す。
【
図5】
図5は、GVS実験前後のベネトクラクス無水物の代表的なXRPDパターンオーバーレイである。
【
図6】
図6は、保管前のベネトクラクス無水物の代表的なXRPDオーバーレイ(下)、25℃/97%RH(相対湿度)で7日間保管した後のベネトクラクス無水物(中央)、40℃/75%RHで7日間保管した後のベネトクラクス無水物(上)である。
【
図7】
図7は、ベネトクラクス無水物の代表的な偏光顕微鏡(polarized light microscopy、PLM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、先行技術と関連する欠点を克服することを目的とする。ベネトクラクスは、明確で一貫して再現可能な無水結晶性形態で調製することができることが発見されている。更に、この無水結晶性形態を生成するための信頼性が高い拡張可能な方法が開発されている。本発明によって提供されるベネトクラクス多形は、医薬製剤における活性成分として有用である。ある特定の実施形態では、無水結晶性形態は、精製可能である。ある特定の実施形態では、時間、温度、及び湿度に応じて、無水結晶性形態は、安定である。ある特定の実施形態では、無水結晶性形態は、単離及び取り扱いが容易である。ある特定の実施形態では、無水結晶性形態を調製するためのプロセスは、拡張可能である。
【0025】
本明細書に記載の結晶性形態は、単結晶X線回折、X線粉末回折(X-ray powder diffraction、XRPD)、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry、DSC)、熱重量分析(thermal gravimetric analysis、TGA)、赤外分光法、ラマン分光法、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分光法(溶液及び固体NMRを含む)が含まれる当業者に既知の多数の方法を使用して特性評価され得る。化学純度は、薄層クロマトグラフィ(thin layer chromatography、TLC)、ガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(high performance liquid chromatography、HPLC)、及び質量分析(mass spectrometry、MS)などの標準的な分析方法によって決定することができる。
【0026】
一態様では、本発明は、結晶性ベネトクラクス無水物である、ベネトクラクスの結晶性形態を提供する。
【0027】
ベネトクラクスは遊離塩基であり、本発明の形態は結晶性無水物であるため、塩、水和物、又は溶媒和物ではない。
【0028】
無水物は、約5.1、8.1、8.9、9.4、10.7、11.0、11.3、13.3、13.6、14.0、14.6、15.2、15.5、15.8、16.1、16.4、16.7、17.1、17.4、17.8、18.7、19.2、19.6、20.0、20.3、20.8、21.1、21.8、22.1、22.5、22.9、23.4、23.9、24.3、24.5、25.4、25.9、26.7、27.2、27.7、28.2、29.1、30.0、30.4、及び30.6度2シータ±0.2度2シータからなる群から選択される1つ以上のピーク(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8個のピーク)を含むX線粉末回折パターンを有し得る。一実施形態では、無水物は、約5.1、8.9、9.4、14.6、及び17.8度2シータ±0.2度2シータにピークを含むX線粉末回折パターンを有し得る。一実施形態では、無水物は、実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンを有し得る。
【0029】
無水物は、約219.2℃で発生する吸熱事象を含むDSCサーモグラムを有し得る。一実施形態では、無水物は、実質的に
図2に示すようなDSCサーモグラムを有し得る。
【0030】
無水物は、約周囲温度~約175℃まで加熱されたときに約0.5%の質量損失を含むTGAサーモグラムを有し得る。一実施形態では、無水物は、実質的に
図2に示すようなTGAサーモグラムを有し得る。
【0031】
結晶性ベネトクラクス無水物は、
(a)ベネトクラクスを、ヘプタンである溶媒と、任意選択的に酢酸イソプロピルと組み合わせて接触させる工程と、
(b)溶媒中のベネトクラクスの溶液又は懸濁液を形成する工程と、
(c)ベネトクラクス無水物を結晶性固体として回収する工程と、を含む、プロセスによって調製され得る。
【0032】
一実施形態では、溶媒と接触するベネトクラクスは、ベネトクラクス水和物である。
【0033】
一実施形態では、溶媒はヘプタンである。別の実施形態では、溶媒は、ヘプタンと酢酸イソプロピルとの組み合わせである。一実施形態では、ヘプタン:酢酸イソプロピルのv/v比は、約1ml:約1mlである。
【0034】
ある特定の実施形態では、本発明のベネトクラクス無水物は、純粋である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧90%、≧91%、≧92%、≧93%、≧94%、≧95%、又はそれ超である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧95%である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧96%である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧97%である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧98%である。
【0035】
溶媒の量は、ベネトクラクスを溶解し、溶液を形成するか、又はベネトクラクスを懸濁するのに十分な溶媒があることを条件として、特に限定されない。ベネトクラクス対溶媒のw/v比は、約1gのベネトクラクス:約30~約150ml溶媒、例えば、約1gのベネトクラクス:約40~約145ml溶媒、例えば、約1gのベネトクラクス:約45~約140ml溶媒の範囲であり得る。
【0036】
ベネトクラクスは、周囲温度以下で溶媒と接触させることができる。あるいは、ベネトクラクスは、周囲温度よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い温度で溶媒と接触させることができる。反応混合物の沸点は、接触工程が行われる圧力に応じて変化し得る。一実施形態では、接触工程は、気圧(すなわち、1.0135×105Pa)で行われる。一実施形態では、接触工程は、≧約60℃~約<85℃の範囲の1つ以上の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約60℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約61℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約62℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約63℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約64℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約65℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約66℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約67℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約68℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約85℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約84℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約83℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約82℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約81℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約80℃の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、≧約68℃~≦約80℃の範囲の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、約75℃の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、約80℃の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、≧約75℃~≦約80℃の範囲の1つ以上の温度で一定期間(例えば、約3日間)、次いで周囲温度(例えば、室温)で一定期間(例えば、一晩)実施される。
【0037】
ベネトクラクスの溶解又は懸濁は、撹拌、振盪、及び/又は超音波処理などの補助の使用を通して促進され得る。ベネトクラクスの溶解又は懸濁を援助するために、追加の溶媒が追加され得る。
【0038】
次いで、溶液又は懸濁液は、得られた溶液又は懸濁液が溶液又は懸濁液の工程(b)の温度よりも低い温度を有するように冷却され得る。冷却速度は、約0.05℃/分~約2℃/分、例えば、約0.5℃/分~約1.5℃/分、例えば、約1℃/分であり得る。ベネトクラクスの溶液が冷却されると、懸濁液が最終的に観察され得る。ベネトクラクスの懸濁液が冷却されると、懸濁液の外観に知覚可能な変化が生じない場合がある。
【0039】
溶液又は懸濁液は、周囲温度又は周囲温度未満の温度まで冷却され得る。一実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約0℃~≦約20℃の範囲の1つ以上の温度まで冷却され得る。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約1℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約2℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約3℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約4℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約5℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約15℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約14℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約13℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約12℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約11℃の1つ以上の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約10℃の1つ以上の温度まで冷却される。一実施形態では、溶液又は懸濁液は、約5℃~約10℃の範囲の1つ以上の温度まで冷却される。
【0040】
工程(c)において、ベネトクラクス無水物は、結晶性固体として回収される。結晶性無水物は、濾過、デカント、又は遠心分離によって直接回収され得る。必要に応じて、懸濁液は、結晶性固体の回収前に溶媒の追加部分で回収され得る。あるいは、結晶性固体を回収する前に、ある割合の溶媒を蒸発させることができる。
【0041】
結晶性無水物を回収したら、分離された無水物は、溶媒(例えば、ヘプタン、酢酸イソプロピル、又はそれらの混合物)で洗浄され、乾燥され得る。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行することができる。乾燥条件は、無水物が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって無水物が上記の温度又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0042】
工程(a)~(c)は、1回以上(例えば、1、2、3、4、又は5回)実施され得る。工程(a)~(c)が1回を超えて(例えば、2、3、4又は5回)実施される場合、工程(a)は、任意選択的に、工程(a)~(c)の第1の反復によって以前に調製及び単離された結晶性ベネトクラクス無水物を播種することができる。
【0043】
あるいは、又は加えて、工程(a)~(c)が1回を超えて(例えば、2、3、4又は5回)実施される場合、工程(b)で形成された溶液又は懸濁液は、任意選択的に、結晶性ベネトクラクス無水物(本明細書に記載の方法によって以前に調製及び単離された)を播種することができる。
【0044】
ある特定の実施形態では、本発明のプロセスによって調製されたベネトクラクス無水物は、純粋である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧90%、≧91%、≧92%、≧93%、≧94%、≧95%、又はそれ超である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧95%である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧96%である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧97%である。ある特定の実施形態では、無水物の化学純度は、≧98%である。
【0045】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の結晶性ベネトクラクス無水物と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物に関する。
【0046】
別の態様では、本発明は、治療有効量の本明細書に記載の結晶性ベネトクラクス無水物を患者に投与することを含む、患者におけるがんを治療するための方法に関する。治療方法には、慢性リンパ性白血病の治療が含まれる。
【0047】
別の態様では、本発明は、がんの治療、例えば、慢性リンパ性白血病の治療に使用するための、本明細書に記載の結晶性ベネトクラクス無水物に関する。
【0048】
本発明の実施形態及び/又は任意選択的特徴は、上記で説明されている。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の実施形態又は任意選択的特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせで、組み合わせることができる。
【0049】
以下の実施例を参照して、本発明を更に説明し、実施例は例示することを意図するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0050】
全般事項
X線粉末回折(XRPD)
X線粉末回折パターを、CuKα放射線(40kV、40mA)、自動XYZステージ、自動試料位置決めのためのレーザビデオ顕微鏡、及びHiStar2次元領域検出器を使用して、Bruker AXS C2 GADDS回折計で収集した。X線光学系は、0.3mmのピンホールコリメータと連結された単一のGobel多層ミラーからなる。
【0051】
ビーム発散、すなわち、試料上のX線ビームの有効サイズは、約4mmであった。θ-θ連続走査モードを、20cmの試料検出器距離で利用し、3.2°~29.7°の有効2θ範囲を与えた。典型的には、試料を、120秒間X線ビームに曝露した。データ収集に使用したソフトウェアは、XP/2000 4.1.43のGADDSであり、データは、Diffrac Plus EVA v15.0.0.0を使用して分析及び提示した。
【0052】
プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)
オートサンプラを装備し、DRX400コンソールによって制御されたBruker 400MHz機器上でNMRスペクトルを収集した。自動実験は、標準的なBrukerロード実験を使用して、Topspin v1.3で実行されるICON-NMR v4.0.7を使用して取得した。非定型分光法の場合、データは、トップスピン単独の使用を通じて取得した。
【0053】
特に明記しない限り、試料をDMSO-d6中で調製した。オフライン分析を、ACD Spectrus Processor 2014を使用して実施した。
【0054】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータを、50位置オートサンプラを装備したTA Instruments Q2000上で収集した。サファイアを使用して熱容量の較正を行い、エネルギー及び温度の較正を、認証されたインジウムを使用して実施した。典型的には、ピンホールアルミニウムパン中で0.5~3mgの各試料を、25℃~300℃で10℃/分で加熱した。50ml/分で乾燥窒素のパージを、試料上に維持した。
【0055】
測定器制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series v2.8.0.394及びThermal Advantage v5.5.3であり、データは、Universal Analysis v4.5Aを使用して分析された。
【0056】
熱重量分析(TGA)
16位置オートサンプラを装備したTA Instruments Q500 TGAでTGAデータを収集した。機器は、認証されたアルメル及びニッケルを使用して温度較正された。典型的には、各試料5~10mgを予め秤量したアルミニウムDSCパンに載せ、周囲温度から350℃まで10℃/分で加熱した。60ml/分で窒素のパージを、試料上に維持した。
【0057】
測定器制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series v2.5.0.256及びThermal Advantage v5.5.3であり、データは、Universal Analysis v4.5Aを使用して分析された。
【0058】
偏光顕微鏡法(PLM)
Leica LM/DM偏光顕微鏡
試料を、画像捕捉用のデジタルビデオカメラを備えるLeica LM/DM偏光顕微鏡で研究した。少量の各試料をスライドガラス上に置き、液浸油を乗せ、スライドガラスで覆い、個々の粒子を可能な限り分離した。試料を適切な倍率及び部分的に偏光した光で、λ偽色フィルタと連結させて観察した。
【0059】
重量分析蒸気収着(Gravimetric Vapour Sorption、GVS)
固体材料の吸湿性は、動的蒸気収着(dynamic vapour sorption、DVS)分析によって時折知られている重量分析蒸気収着(GVS)分析によって決定され得る。実験は、温度及び湿度制御された環境(チャンバ)内の微量天秤上の細線バスケットに保持される試料材料を対象とした。次いで、ソフトウェアを使用して、収集したデータを処理し、実験中に指定した増分範囲の等温点を決定し、材料の全体的な水取り込みを示すことができる。
【0060】
吸着等温線は、DVS Intrinsic Controlソフトウェアv1.0.1.2(又はv 1.0.1.3)によって制御されるSMS DVS内因性湿気吸着分析器を使用して取得された。試料温度は、計器制御によって25℃に維持された。湿度は、乾燥窒素及び湿式窒素の流れを混合して、200ml/分の総流量で制御され、試料の近くに位置する較正されたRotronicプローブ(1.0~100%RHのダイナミックレンジ)によって相対湿度を測定した。%RHの関数としての試料の重量変化(質量緩和)は、微量天秤(精度±0.005mg)によって絶えず監視された。
【0061】
典型的には、5~20mgの試料を、周囲条件下で、風袋引きしたメッシュステンレス鋼バスケット中に入れた。試料を、40%RH及び25℃(典型的な室内条件)でロード及びアンロードした。水分収着等温線は、以下に概説するように実施された(2回のスキャンは1回の完全なサイクルを与える)。標準的な等温線は、0~90%RHの範囲にわたって、10%RHの間隔において25℃で実施された。データ分析は、DVS Analysis Suite v6.2(又は6.1又は6.0)を使用して、Microsoft Excelを使用して実施された。
【0062】
【0063】
試料を等温線の完了後に回収し、XRPDによって再分析した。
【0064】
HPLCによる化学的純度の測定
純度分析は、ダイオードアレイ検出器を備えるAgilent HP1100シリーズシステムで、ChemStationソフトウェアvB.04.03を使用して、以下に詳述する方法を使用して実施された:
【0065】
【0066】
実施例1
ベネトクラクス(96.6%純度)を、出発材料として使用した。それを米国特許第8722657号に記載されるように、水和物Cとして特徴付けた。
【0067】
ベネトクラクス(96.6%純度、約520mg)を、25ml(50体積)のヘプタン中に懸濁し、75℃で撹拌した。75℃で9日間撹拌した後、撹拌を援助するために20mlのヘプタンを追加した。バルク試料を75℃で合計14日間撹拌した。固体を濾過し、真空下で乾燥させた。
【0068】
実施例2
ベネトクラクス(96.6%純度、約514mg)及び実施例1として得た材料の種を、35ml(70体積)のヘプタン中に懸濁し、75℃で撹拌した。約30分後、追加の種を追加した。試料を75℃で約1時間撹拌し、次いで温度を80℃まで上昇させた。試料を80℃で3日間、次いで室温で一晩撹拌した。バルク試料を濾過し、吸引下で約15時間乾燥させた。
【0069】
実施例3
実施例2で調製した材料(約25mg)を、1.75ml(70体積)のヘプタン:酢酸イソプロピル(1:1)に懸濁し、75℃で2日間撹拌した。XRPD分析の前に、固体を濾過し、吸引下で約15分間乾燥させた。
【0070】
実施例4
ベネトクラクス(96.6%純度、約510mg)を、70ml(70体積)のヘプタン:酢酸イソプロピル(1:1)中に周囲条件で懸濁した。次いで、懸濁液を80℃まで加熱した。実施例3で調製した無水ベネトクラクスの種を68℃で追加した。次いで、試料を1℃/分で25℃まで冷却した。試料を25℃で約75分間保持し、次いで1.5時間吸引濾過して、無水ベネトクラクスを得た。無水ベネトクラクスの化学純度は、HPLCによって決定した際に98.4%であった。
【0071】
ベネトクラクス無水物の特徴評価:
図1は、結晶性ベネトクラクス無水物の代表的なXRPDパターンである。以下の表は、本発明の結晶性ベネトクラクス無水物のXRPDピークリストを提供する:
【0072】
【0073】
結晶性ベネトクラクス無水物を更に以下のように特徴付けした:
・TGA及びDSC分析(
図2を参照)、
・
1H-NMR分析(
図3を参照)、
・GVS等温線分析(
図4を参照)、
・GVS実験前及び後のXRPD分析(
図5を参照)、及び
・偏光顕微鏡法(
図7を参照)。
【0074】
2つの保管条件下でのベネトクラクス無水和物の安定性試験も実施された。
図6は、保管前のベネトクラクス無水物の代表的なXRPDオーバーレイ(下)、25℃/97% RH(相対湿度)で7日間保管した後のベネトクラクス無水物(中央)、40℃/75% RHで7日間保管した後のベネトクラクス無水物(上)である。無水物は、2つの異なる温度及び湿度条件下で少なくとも7日間安定したままである。
【国際調査報告】