(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/00 20060101AFI20221007BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221007BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221007BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20221007BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20221007BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K38/16
A61K47/54
A61K47/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506048
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 GB2020051828
(87)【国際公開番号】W WO2021019244
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ケビン マクドネル
(72)【発明者】
【氏名】プニット ウパディヤヤ
(72)【発明者】
【氏名】ジョハンナ ラーデンランタ
(72)【発明者】
【氏名】ジェマ マッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA22
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB21
4C076BB27
4C076BB31
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA41
4C084MA16
4C084MA17
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4C084MA56
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA20
4H045BA33
4H045BA41
4H045BA51
4H045BA57
4H045EA28
4H045FA20
4H045FA52
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、ネクチン-4に結合する第一のペプチドリガンドが、リンカーを介して、CD137に結合する2つの第二のペプチドリガンドにコンジュゲートしたものを含む、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体に関する。本発明はまた、癌の予防、抑制、又は治療における該ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ネクチン-4に結合し、かつ配列
【化1】
を有する第一のペプチドリガンド;がN-(酸-PEG
3)-N-ビス(PEG
3-アジド)リンカーを介して、
(b)CD137に結合し、その両方が配列
【化2】
を有する2つの第二のペプチドリガンド;
にコンジュゲートしたもの
:を含み、ここで、該ペプチドリガンドの各々が2つのループ配列によって隔てられた3つの反応性システイン基(C
i、C
ii、及びC
iii)を含むポリペプチド並びに1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)であり、かつ該ポリペプチドの反応性システイン基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成され;
ここで、Acがアセチルを表し、HArgがホモアルギニンを表し、HyPがtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリンを表し、1Nalが1-ナフチルアラニンを表し、tBuAlaがt-ブチル-アラニンを表し、PYAが4-ペンチン酸を表し、かつNleがノルロイシンを表す、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項2】
BCY11863:
【化3】
である、請求項1記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項3】
前記医薬として許容し得る塩が、遊離酸又はナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム塩から選択される、請求項1又は請求項2記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体を1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む、医薬組成物。
【請求項5】
癌の予防、抑制、又は治療において使用するための、請求項1~3のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項6】
癌を治療する方法であって、請求項1~3のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体のインビトロEC
50を上回る該複合体の血漿濃度を維持しない投薬頻度での該複合体の投与を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ネクチン-4に結合する第一のペプチドリガンドが、リンカーを介して、CD137に結合する2つの第二のペプチドリガンドにコンジュゲートしたものを含む、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体に関する。本発明はまた、癌の予防、抑制、又は治療における該ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
環状ペプチドは、高い親和性及び標的特異性でタンパク質標的に結合することができ、それゆえ、治療薬の開発のための魅力的な分子クラスである。実際、いくつかの環状ペプチドは、例えば、抗菌ペプチドのバンコマイシン、免疫抑制薬のシクロスポリン、又は抗癌薬のオクトレオチドのように、診療所で使用されるのに既に成功している(Driggersらの文献(2008), Nat Rev Drug Discov 7(7), 608-24)。優れた結合特性は、ペプチドと標的との間で形成される比較的大きな相互作用表面だけでなく、環状構造の立体構造可撓性の低下にも起因する。通常、大環状分子は、例えば環状ペプチドCXCR4アンタゴニストCVX15(400Å2; Wuらの文献(2007), Science 330, 1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフを有する環状ペプチド(355Å2)(Xiongらの文献(2002), Science 296(5565), 151-5)、又はウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子に結合する環状ペプチド阻害剤ウパイン-1(603Å2; Zhaoらの文献(2007), J Struct Biol 160(1), 1-10)のように、数百平方オングストロームの表面に結合する。
【0003】
その環状立体配置のために、ペプチド大環状分子は、直鎖状ペプチドよりも可撓性が低く、標的に結合したときのエントロピー損失がより小さくなり、結果的に、より高い結合親和性が生じる。可撓性の低下はまた、標的特異的立体構造の固定をもたらし、直鎖状ペプチドと比較して結合特異性を増加させる。この効果は、その環が開いたときに、他のMMPに対するその選択性を失うマトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP-8)の強力かつ選択的な阻害剤によって例証されている(Cherneyらの文献(1998), J Med Chem 41(11), 1749-51)。大環状化によって達成される有利な結合特性は、例えば、バンコマイシン、ナイシン、及びアクチノマイシンのような、複数のペプチド環を有する多環性ペプチドにおいてさらにより顕著である。
【0004】
様々な研究チームが、以前に、システイン残基を有するポリペプチドを合成分子構造に繋いでいる(Kemp及びMcNamaraの文献(1985), J. Org. Chem; Timmermanらの文献(2005), ChemBioChem)。Meloen及び共同研究者らは、トリス(ブロモメチル)ベンゼン及び関連分子をタンパク質表面の構造的模倣用の合成スキャフォールド上での複数のペプチドループの迅速かつ定量的な環化に使用した(Timmermanらの文献(2005)、ChemBioChem)。候補薬物化合物(ここで、該化合物は、システイン含有ポリペプチドを、例えば、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)のような分子スキャフォールドに連結させることにより作製される)の作製方法は、WO 2019/122860号及びWO 2019/122863号に開示されている。
【0005】
対象となる標的に対する二環式ペプチドの大型ライブラリーを作製及びスクリーニングするためのファージディスプレイに基づくコンビナトリアルアプローチが開発されている(Heinisらの文献(2009), Nat Chem Biol 5(7), 502-7及びWO 2009/098450号)。簡潔に述べると、3つのシステイン残基及び2つのランダムな6アミノ酸領域を含有する直鎖状ペプチド(Cys-(Xaa)6-Cys-(Xaa)6-Cys)のコンビナトリアルライブラリをファージ上に提示させ、システイン側鎖を低分子(トリス-(ブロモメチル)ベンゼン)に共有結合させることにより環化させた。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明の第一の態様によれば、
(a)ネクチン-4に結合し、かつ配列
【化1】
を有する第一のペプチドリガンド;がN-(酸-PEG
3)-N-ビス(PEG
3-アジド)リンカーを介して、
(b)CD137に結合し、その両方が配列
【化2】
を有する2つの第二のペプチドリガンド;
にコンジュゲートしたもの
:を含み、ここで、該ペプチドリガンドの各々が2つのループ配列によって隔てられた3つの反応性システイン基(C
i、C
ii、及びC
iii)を含むポリペプチド並びに1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)であり、かつ該ポリペプチドの反応性システイン基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成され;
ここで、Acがアセチルを表し、HArgがホモアルギニンを表し、HyPがtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリンを表し、1Nalが1-ナフチルアラニンを表し、tBuAlaがt-ブチル-アラニンを表し、PYAが4-ペンチン酸を表し、かつNleがノルロイシンを表す、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体を1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、癌の予防、抑制、又は治療において使用するための本明細書で定義されるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1: (A)ネクチン-4発現H292細胞の存在下でのPromega CD137ルシフェラーゼレポーターアッセイにおけるネクチン-4/CD137ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体の解析。BCY11617は、BCY11863と同じ親和性でネクチン-4に結合するが、CD137には結合しないヘテロタンデム二環式ペプチド複合体である。(B)内在性にネクチン-4を発現するか又はネクチン-4を過剰発現するように改変されている様々な細胞株との共培養下でのPromega CD137ルシフェラーゼレポーターアッセイにおけるBCY11863のEC50(nM)のまとめ。
【
図2】
図2: ネクチン-4/CD137ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、PBMC-4T1共培養アッセイにおいてIFN-γ(
図2A)及びIL-2(
図2B)サイトカイン分泌を誘導する。4T1細胞を、ネクチン-4を発現するように改変した。BCY11617は、BCY11863と同じ親和性でネクチン-4に結合するが、CD137には結合しないヘテロタンデム二環式ペプチド複合体である。
図2Cは、多数のヒトPBMCドナー及び腫瘍細胞株を用いたサイトカイン分泌アッセイにおけるBCY11863のEC50(nM)のまとめを表している。
【
図3】
図3: それぞれ、2mg/kg(n=3)及び1mg/kg(n=2)でIV投与されたSDラット及びカニクイザル(cyno)におけるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体BCY11863の薬物動態。
【
図4】
図4: 同系マウスネクチン-4過剰発現MC38腫瘍モデル(MC38#13)におけるBCY11863の抗腫瘍活性。BCY11863処置時及び処置後の腫瘍体積。D69の完全レスポンダー(CR)マウスの数が括弧内に示されている。QD: 毎日の投与; Q3D: 3日毎の投与; ip: 腹腔内投与。
【
図5】
図5: BCY11863処置は、ネクチン-4過剰発現MC38腫瘍細胞(MC38#13)に対する免疫原性記憶をもたらす。未処置C57BL/6J-hCD137マウス又はBCY11863に対する完全応答(CR)を有していたマウスへの接種後の腫瘍体積が示されている。CRマウスはいずれも観察期間の終了(22日)までに腫瘍を発生させなかったことに留意されたい。
【
図6】
図6: BCY11863は、マウス同系ネクチン-4過剰発現CT26腫瘍モデル(CT26#7)において抗腫瘍活性を示す。BCY11863処置時の腫瘍体積。Q3D: 3日毎の投与; ip: 腹腔内投与。
【
図7】
図7: BCY11863の最後(6回目)のQ3D投与から1時間後のCT26#7腫瘍組織における全T細胞及びCD8+ T細胞の増加。BCY11863の最後のQ3D投与から1時間後のCT26#7腫瘍組織における(A)全T細胞、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、Treg、及び(B)CD8+ T細胞/Treg比の解析。
【
図8】
図8: 5mg/kgのBCY11863の単一静脈内(iv)投与後のCT26#7同系腫瘍担持動物の血漿及び腫瘍組織におけるBCY11863の薬物動態プロファイル。
【
図9】
図9: CD-1マウス(n=3)における15mg/kg腹腔内用量から得られたBCY11863の血漿濃度対時間曲線、及びBCY11863の終末相血漿半減期。
【
図10】
図10: 固定された(A)ネクチン-4及び(B)CD137に対するBCY11863の表面プラズモン共鳴(SPR)結合試験。(C)CD137及び(D)ネクチン-4をSPRチップ上に固定し、その後、BCY11863を捕捉する二重結合SPRアッセイ。可溶性ヒトネクチン-4(C)又はCD137(D)に対する結合したBCY11863の親和性は、可溶性受容体を様々な濃度でチップ上に流すことにより測定される。(E)ストレプトアビジンSPRチップ上に固定されたBCY13582(ビオチン化BCY11863)の可溶性ヒトCD137への結合。
【
図11】
図11: BCY13582(ビオチン化BCY11863)の非特異的オフターゲット相互作用を検討するために使用されたRetrogenixの細胞マイクロアレイ技術。ここに示されているのは、11種の異なるタンパク質を発現するマイクロアレイスライドに添加された1μMのBCY13582のみがCD137及びネクチン-4に結合することを示すスクリーニングデータである(AlexaFluor647標識ストレプトアビジンを用いて検出した)。結合シグナルは、BCY11863とともにインキュベートされたときに変位する。
【
図12】
図12: huCD137 C57Bl/6マウスにおけるMC38#13腫瘍の腫瘍増殖曲線は、様々な用量及び投与間隔の後のBCY11863の抗腫瘍活性を示している。処置開始後15日目の完全レスポンダー動物の数(CR;触診可能な腫瘍なし)が括弧内に示されている。
【
図13】
図13: huCD137 C57Bl/6マウスにおけるMC38#13腫瘍(n=6/コホート)の腫瘍増殖曲線(平均±SEM)は、様々な用量及び投与スケジュールでのBCY11863の抗腫瘍活性を示している。処置開始後52日での完全レスポンダー動物の数(CR;触診可能な腫瘍なし)が括弧内に示されている。(A)ビヒクル又は3mg/kgの週当たり総用量のBCY11863が投与されたコホート。(B)ビヒクル又は10mg/kgの週当たり総用量のBCY11863が投与されたコホート。(C)ビヒクル又は30mg/kgの週当たり総用量のBCY11863が投与されたコホート。
【
図14】
図14: 100mg/kgでIV投与されたSDラット(n=3)におけるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体BCY11863の薬物動態並びに血漿中のBCY11863並びに潜在的代謝産物BCY15155及びBCY14602の濃度の測定。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明の第一の態様によれば、
(a)ネクチン-4に結合し、かつ配列
【化3】
を有する第一のペプチドリガンド;がN-(酸-PEG
3)-N-ビス(PEG
3-アジド)リンカーを介して、
(b)CD137に結合し、その両方が配列
【化4】
を有する2つの第二のペプチドリガンド;
にコンジュゲートしたもの
:を含み、ここで、該ペプチドリガンドの各々が2つのループ配列によって隔てられた3つの反応性システイン基(C
i、C
ii、及びC
iii)を含むポリペプチド並びに1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)であり、かつ該ポリペプチドの反応性システイン基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成され;
ここで、Acがアセチルを表し、HArgがホモアルギニンを表し、HyPがtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリンを表し、1Nalが1-ナフチルアラニンを表し、tBuAlaがt-ブチル-アラニンを表し、PYAが4-ペンチン酸を表し、かつNleがノルロイシンを表す、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が提供される。
【0011】
N-(酸-PEG
3)-N-ビス(PEG
3-アジド)リンカーへの本明細書における言及は、
【化5】
:を含む。
【0012】
一実施態様において、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、BCY11863:
【化6】
である。
【0013】
BCY11863の完全な詳細は、下の表Aに示されている:
表A: BCY11863の組成
【表1】
【0014】
BCY11863がCD137レポーターアッセイにおいて強いCD137活性化を示したことを示すデータは、本明細書中、
図1及び表1に示されている。さらに、BCY11863が多数の腫瘍細胞株及びヒトPBMCドナーを用いるPBMC共培養アッセイにおいて強いIL-2及びIFN-γサイトカイン分泌を誘導することを示すデータは、本明細書中、
図2及び表2に示されている。さらに、BCY11863がSDラットで4.1時間及びカニクイザルで5.3時間の終末相半減期を有する優れたPKプロファイルを示したことを示すデータは、本明細書中、
図3及び表3に示されている。
図10及び11に示されているデータは、第11節及び第12節の方法と合わせて、その標的であるネクチン-4及びCD137に対するBCY11863の結合及び優れた選択性を示している。
図4及び5は、MC38#13同系マウスにおけるBCY11863の強い抗腫瘍活性及びBCY11863処置後の免疫原性記憶の形成を示している。
図6及び7は、腫瘍への細胞傷害性T細胞の対応する浸潤を伴うCT26#7同系モデルにおけるBCY11863の抗腫瘍活性を示している。
図12及び13は、1.5mg/kgをBIWで、及び5mg/kgを、1週間に0、24時間で投与すると、強い抗腫瘍活性がもたらされたので、BCY11863が測定可能な血漿濃度を維持する必要はないことを明らかに示している。
【0015】
本明細書における言及は、その各々が本発明のさらなる態様を形成し、下の表Bにまとめられている、BCY11863の特定の類似体(すなわち、修飾誘導体)及び代謝産物に対して行われている:
表B: BCY11863類似体及び代謝産物の組成
【表2】
ここで、BCY14601は、分子スキャフォールドとしてのTATAとともに、
【化7】
の配列を有する二環式ペプチドリガンドを表し;
かつここで、BCY13389は、分子スキャフォールドとしてのTATAとともに、
【化8】
の配列を有する二環式ペプチドリガンドを表す。
【0016】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は全て、当該分野、例えば、ペプチド化学、細胞培養、及びファージディスプレイ、核酸化学、並びに生化学の分野の専門家によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。標準的な技法が、分子生物学、遺伝学、及び生化学の方法に使用される(引用により本明細書中に組み込まれる、Sambrookらの文献、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第3版、2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubelらの文献、分子生物学のショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)(1999) 第4版、John Wiley & Sons社を参照)。
【0017】
(命名法)
(付番)
本発明の化合物内のアミノ酸残基位置に言及する場合、システイン残基(Ci、Cii、及びCiii)は不変であるので、これらは付番から省略され、それゆえ、配列番号1内のアミノ酸残基の付番は、以下のように言及される:
Ci-P1-1Nal2-dD3-Cii-M4-HArg5-D6-W7-S8-T9-P10-HyP11-W12-Ciii (SEQ ID NO: 1)
。
【0018】
この説明のために、二環式ペプチドは、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)で環化され、三置換構造を生じる。TATAによる環化は、Ci、Cii、及びCiii上で生じる。
【0019】
(分子フォーマット)
二環コア配列へのN-又はC-末端伸長は、ハイフンによって隔てられた、配列の左側又は右側に付加される。例えば、N-末端βAla-Sar10-Alaテールは:
βAla-Sar10-A-(SEQ ID NO: X)
と表される。
【0020】
(逆向きのペプチド配列)
Nairらの文献(2003) J Immunol 170(3), 1362-1373における開示を考慮して、本明細書に開示されるペプチド配列は、そのレトロ-インベルソ(retro-inverso)形態でも有用性を見出すことが想定される。例えば、配列が逆転し(すなわち、N-末端がC-末端になり、C-末端がN-末端になる)、その立体化学も同様に逆転する(すなわち、D-アミノ酸がL-アミノ酸になり、L-アミノ酸がD-アミノ酸になる)。誤解を避けるために、その正式名としてか又はそのアミノ酸の1文字もしくは3文字表記としてかのいずれかでのアミノ酸への言及は、別途明記されない限り、本明細書において、L-アミノ酸として表されることが意図される。そのようなアミノ酸がD-アミノ酸として表されることが意図される場合、アミノ酸に、例えば、[dA]、[dD]、[dE]、[dK]、[d1Nal]、[dNle]など、角括弧内に小文字のdが前置される。
【0021】
(ペプチドリガンドの利点)
本発明の特定のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、それを注射、吸入、経鼻、眼球、経口、又は局所投与のための好適な薬物様分子とみなすことができるいくつかの有利な特性を有する。そのような有利な特性としては、以下のもの挙げられる:
-種交差反応性。これは、前臨床的な薬力学及び薬物動態評価の典型的な必要条件である;
-プロテアーゼ安定性。ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、理想的には、血漿プロテアーゼ、上皮(「膜固定型」)プロテアーゼ、胃腸プロテアーゼ、肺表面プロテアーゼ、細胞内プロテアーゼなどに対する安定性を示すべきである。プロテアーゼ安定性は、ヘテロタンデム二環式ペプチドリード候補を動物モデルで開発するだけでなく、自信を持ってヒトに投与することもできるように、異なる種の間で維持されるべきである;
-望ましい溶解度プロファイル。これは、製剤化及び吸収目的で重要である、荷電残基及び親水性残基と疎水性残基の比率並びに分子内/分子間H-結合の関数である;
-選択性。本発明の特定のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、他の標的よりも良好な選択性を示す;
-循環中での最適な血漿半減期。臨床的適応及び治療レジメンに応じて、急性疾患管理設定で短期曝露用のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体を開発するか又は循環中での保持が増強されたヘテロタンデム二環式ペプチド複合体を開発する必要があり得るため、より慢性的な疾患状態の管理に最適である。望ましい血漿半減期を推進する他の要因は、最大治療効率のための持続的曝露の要求と薬剤の持続的曝露による随伴毒性である。
【0022】
重要なことに、本発明のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が該化合物のインビトロEC50を上回る血漿濃度を維持しない頻度で投与されたときに抗腫瘍効力を示すデータが本明細書で示されている。これは、CD137アゴニズム又は二重特異性CD137アゴニズムへのより大きい組換え生物製剤による(すなわち、抗体ベースの)アプローチとは対照的である(Segalらの文献、Clin Cancer Res., 23(8):1929-1936(2017)、Clausらの文献、Sci Trans Med., 11(496): eaav5989, 1-12(2019)、Hinnerらの文献、Clin Cancer Res., 25(19):5878-5889(2019))。理論に束縛されるものではないが、この観察結果の理由は、ヘテロタンデム二環式複合体が比較的低い分子量(通常、<15kDa)を有し、これが完全合成のものであり、かつこれがCD137の腫瘍標的化アゴニストであるという事実によるものであると考えられる。したがって、これは、比較的短い血漿半減期を有するが、良好な腫瘍透過性及び保持を有する。これらの利点を完全に裏付けるデータが本明細書で示されている。例えば、ヒト化CD137を有するマウスの同系齧歯類モデルにおける抗腫瘍効力が毎日又は3日毎のいずれかで示されている。さらに、腹腔内薬物動態データは、血漿半減期が3時間未満であることを示し、これにより、該複合体の循環濃度が投与間でインビトロEC50を常に下回ることが予測される。さらに、腫瘍薬物動態データは、腫瘍組織におけるヘテロタンデム二環式複合体のレベルが、血漿レベルと比較して、より高くかつより持続的であり得ることを示している。
【0023】
この観察結果は、本発明の重要なさらなる態様を形成することが理解されるであろう。したがって、本発明のさらなる態様によれば、癌を治療する方法であって、本明細書で定義されるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体のインビトロEC50を上回る該複合体の血漿濃度を維持しない投薬頻度での該複合体の投与することを含む、方法が提供される。
【0024】
-免疫記憶。癌細胞に結合する二環式ペプチドリガンドを免疫細胞に結合する二環式ペプチドリガンドとカップリングさせると、免疫記憶の相乗的利点がもたらされる。本発明のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が腫瘍を根絶するだけでなく、腫瘍原性薬剤を再投与したときに、接種を受けた完全レスポンダーマウスがいずれも腫瘍を発生させなかったことを示すデータが本明細書で示されている(
図5を参照)。これは、本発明の選択されたヘテロタンデム二環式ペプチド複合体による処置が完全レスポンダーマウスで免疫原性記憶を誘導したことを示している。これは、一旦、最初に該腫瘍が制御され、根絶されると、その再発を予防するために重要な臨床的利点を有する。
【0025】
(ペプチドリガンド)
本明細書において言及されるペプチドリガンドは、分子スキャフォールドに共有結合したペプチドを指す。典型的には、そのようなペプチドは、スキャフォールドとの共有結合を形成することができる2以上の反応基(すなわち、システイン残基)と、ペプチドがスキャフォールドに結合するときにループを形成するのでループ配列と呼ばれる、該反応基間に内在する配列とを含む。この場合、ペプチドは、システイン、3-メルカプトプロピオン酸、及び/又はシステアミンから選択される少なくとも3つの反応基を含み、かつスキャフォールド上に少なくとも2つのループを形成する。
【0026】
(医薬として許容し得る塩)
塩形態は本発明の範囲内であり、ペプチドリガンドへの言及が該リガンドの塩形態を含むことが理解されるであろう。
【0027】
本発明の塩は、従来の化学的方法、例えば、医薬塩:特性、選択、及び使用(Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)、P. Heinrich Stahl(編者)、Camille G. Wermuth(編者)、ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388頁、August 2002に記載されている方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。通常、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、適切な塩基又は酸と、水中もしくは有機溶媒中で、又はこれら2つの混合物中で反応させることにより調製することができる。
【0028】
酸付加塩(モノ塩又はジ塩)は、無機と有機の両方の多種多様な酸で形成することができる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、粘液酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸など)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸など)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸、並びにアシル化アミノ酸及び陽イオン交換樹脂からなる群から選択される酸で形成されるモノ塩又はジ塩が挙げられる。
【0029】
塩の1つの特定の群は、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸、及びラクトビオン酸から形成される塩からなる。1つの特定の塩は、塩酸塩である。別の特定の塩は、酢酸塩である。
【0030】
化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であり得る官能基を有する(例えば、-COOHが-COO-であり得る)場合、塩を有機又は無機塩基で形成させ、好適なカチオンを生成させることができる。好適な無機カチオンの例としては、Li+、Na+、及びK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+などのアルカリ土類金属カチオン、及びAl3+又はZn+などの他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4
+)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2
+、NHR3
+、NR4
+)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニンなどのアミノ酸:に由来するものが挙げられる。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4
+である。
【0031】
本発明の化合物がアミン官能基を含有する場合、これらは、例えば、当業者に周知の方法によるアルキル化剤との反応によって、第四級アンモニウム塩を形成し得る。そのような第四級アンモニウム化合物は、本発明の範囲内である。
【0032】
(修飾誘導体)
本明細書で定義されるペプチドリガンドの修飾誘導体は、本発明の範囲内であることが理解されるであろう。そのような好適な修飾誘導体の例としては、N-末端及び/又はC-末端修飾; 1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換(例えば、1以上の極性アミノ酸残基の1以上の等配電子又は等電子アミノ酸による置換; 1以上の非極性アミノ酸残基の他の非天然等配電子又は等電子アミノ酸による置換);スペーサー基の付加; 1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換; 1以上のアミノ酸残基のアラニンによる置換、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換;二環式ペプチドリガンド内の1以上のアミド結合のN-アルキル化; 1以上のペプチド結合の代用結合による置換;ペプチド骨格長の修飾; 1以上のアミノ酸残基のα-炭素上の水素の別の化学基による置換、システイン、リジン、グルタミン酸/アスパラギン酸、及びチロシンなどのアミノ酸を官能基化するような、該アミノ酸の好適なアミン、チオール、カルボン酸、及びフェノール反応性試薬による修飾、並びに官能基化に好適である直交反応性を導入するアミノ酸、例えば、それぞれ、アルキン又はアジドを有する部分による官能基化を可能にするアジド又はアルキン基を有するアミノ酸の導入又は置換:から選択される1以上の修飾が挙げられる。
【0033】
一実施態様において、修飾誘導体は、N-末端及び/又はC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、ここで、修飾誘導体は、好適なアミノ反応化学を用いるN-末端修飾、及び/又は好適なカルボキシ反応化学を用いるC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、該N-末端又はC-末端修飾は、限定されないが、細胞毒性剤、放射性キレート剤、又は発色団を含む、エフェクター基の付加を含む。
【0034】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、N-末端修飾は、N-末端アセチル基を含む。この実施態様において、N-末端システイン基(本明細書においてCiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間に無水酢酸又は他の適切な試薬でキャッピングされ、N-末端がアセチル化された分子をもたらす。この実施態様は、アミノペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドの分解の可能性を回避する。
【0035】
代わりの実施態様において、N-末端修飾は、エフェクター基のコンジュゲーション及びその標的に対する二環式ペプチドの効力の保持を促進する分子スペーサー基の付加を含む。
【0036】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、C-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、C-末端修飾は、アミド基を含む。この実施態様において、C-末端システイン基(本明細書において、Ciiiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間にアミドとして合成され、C-末端がアミド化された分子をもたらす。この実施態様は、カルボキシペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドのタンパク質分解の可能性を低下させる。
【0037】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様においては、分解性プロテアーゼによって認識されることも、標的効力に何らかの有害作用を有することもない等配電子/等電子側鎖を有する非天然アミノ酸を選択してもよい。
【0038】
或いは、近くのペプチド結合のタンパク質分解性加水分解が立体構造的に及び立体的に妨害されるように、拘束されたアミノ酸側鎖を有する非天然アミノ酸を使用してもよい。特に、これらは、プロリン類似体、嵩高い側鎖、Cα-二置換誘導体(例えば、アミノイソ酪酸、Aib)、及びアミノ-シクロプロピルカルボン酸の単純な誘導体であるシクロアミノ酸に関する。
【0039】
一実施態様において、修飾誘導体は、スペーサー基の付加を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端システイン(Ci)及び/又はC-末端システイン(Ciii)へのスペーサー基の付加を含む。
【0040】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、トリプトファン残基のナフチルアラニン又はアラニン残基による置換を含む。この実施態様は、得られる二環式ペプチドリガンドの医薬安定性プロファイルを改善するという利点を提供する。
【0041】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の荷電アミノ酸残基の1以上の疎水性アミノ酸残基による置換を含む。代わりの実施態様において、修飾誘導体は、1以上の疎水性アミノ酸残基の1以上の荷電アミノ酸残基による置換を含む。荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しいバランスは、二環式ペプチドリガンドの重要な特徴である。例えば、疎水性アミノ酸残基は、血漿タンパク質結合の程度、したがって、血漿中の利用可能な遊離画分の濃度に影響を及ぼし、一方、荷電アミノ酸残基(特に、アルギニン)は、ペプチドと細胞表面のリン脂質膜との相互作用に影響を及ぼす可能性がある。この2つの組合せは、ペプチド薬の半減期、分布容積、及び曝露に影響を及ぼす可能性があり、臨床的なエンドポイントに応じて調整することができる。さらに、荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しい組合せ及び数は、注射部位(ペプチド薬が皮下投与された場合)での刺激を軽減することができる。
【0042】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様は、立体障害により及びβ-ターン立体構造を安定化させるD-アミノ酸の傾向により、タンパク質分解の安定性を高めると考えられる(Tugyiらの文献(2005) PNAS, 102(2), 413-418)。
【0043】
一実施態様において、修飾誘導体は、任意のアミノ酸残基の除去及びアラニンによる置換を含む。この実施態様は、潜在的なタンパク質分解攻撃部位を除去するという利点を有する。
【0044】
上述の修飾の各々は、ペプチドの効力又は安定性を意図的に向上させる役割を果たすことに留意すべきである。修飾に基づくさらなる効力向上は、以下の機序によって達成することができる:
-より高い親和性が達成されるように、疎水性効果を利用し、より低い解離速度をもたらす疎水性部位を組み込むこと;
-長距離イオン相互作用を利用し、より速い会合速度をもたらし、より高い親和性をもたらす荷電基を組み込むこと(例えば、Schreiberらの文献、タンパク質の急速静電アシスト会合(Rapid, electrostatically assisted association of proteins)(1996)、Nature Struct. Biol. 3, 427-31を参照);並びに
-例えば、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、アミノ酸の側鎖を正しく拘束すること、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、骨格のねじれ角度を拘束すること、及び同一の理由で分子内にさらなる環化を導入することにより、さらなる拘束性をペプチドに組み込むこと
(総説については、Gentilucciらの文献、Curr. Pharmaceutical Design, (2010), 16, 3185-203、及びNestorらの文献、Curr. Medicinal Chem (2009), 16, 4399-418を参照)。
【0045】
(同位体バリエーション)
本発明は、1以上の原子が、同じ原子番号を有するが、天然に通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、本発明の医薬として許容し得る全ての(放射性)同位体標識ペプチドリガンド、並びに関連する(放射性)同位体を保持することができる金属キレート基が取り付けられている本発明のペプチドリガンド(「エフェクター」と呼ばれる)、並びに特定の官能基が関連する(放射性)同位体又は同位体標識された官能基で共有結合的に置き換えられている本発明のペプチドリガンドを含む。
【0046】
本発明のペプチドリガンドに含めるために好適な同位体の例は、水素の同位体、例えば、2H(D)及び3H(T)、炭素の同位体、例えば、11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I、125I、及び131I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O、及び18O、リンの同位体、例えば、32P、硫黄の同位体、例えば、35S、銅の同位体、例えば、64Cu、ガリウムの同位体、例えば、67Ga又は68Ga、イットリウムの同位体、例えば、90Y、並びにルテチウムの同位体、例えば、177Lu、並びにビスマスの同位体、例えば、213Biを含む。
【0047】
本発明の特定の同位体標識ペプチドリガンド、例えば、放射性同位体を組み込んでいるものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究において、並びに罹患組織上のネクチン-4標的の存在及び/又は不在を臨床的に評価するために有用である。本発明のペプチドリガンドは、標識化合物と他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、又は受容体との間の複合体の形成を検出又は同定するために使用することができるという点で、価値ある診断特性をさらに有することができる。検出又は同定方法は、例えば、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、イクオリン、及びルシフェラーゼ)などの標識剤で標識されている化合物を使用することができる。放射性同位体のトリチウム、すなわち、3H(T)及び炭素-14、すなわち、14Cは、その組込みの容易さ及び検出の手段が用意されていることを考慮して、この目的のために特に有用である。
【0048】
重水素、すなわち、2H(D)などのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性、例えば、増加したインビボ半減期又は低下した必要投薬量の結果として得られる、特定の治療的利点をもたらす場合があり、それゆえ、いくつかの状況では、好ましい場合がある。
【0049】
11C、18F、15O、及び13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、標的占有率を調べるための陽電子放出トポグラフィー(PET)試験において有用であり得る。
【0050】
本発明のペプチドリガンドの同位体標識化合物は、通常、当業者に公知の従来の技法によるか、又は以前に利用されていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する添付の実施例に記載されているものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0051】
(合成)
本発明のペプチドは、標準的な技法によって合成的に製造した後、インビトロで分子スキャフォールドと反応させることができる。これを実施する場合、標準的な化学を使用することができる。これにより、さらなる下流での実験又は検証のための可溶性材料の迅速な大規模調製が可能になる。そのような方法は、Timmermanらの文献(上記)に開示されているもののような従来の化学を用いて達成され得る。
【0052】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されているように選択されるポリペプチド又はコンジュゲートの製造に関するものであり、ここで、該製造は、以下に説明されるような任意のさらなる工程を含む。一実施態様において、これらの工程は、化学合成によって作られた最終生成物のポリペプチドコンジュゲートに対して実施される。
【0053】
任意に、対象となるポリペプチド中のアミノ酸残基は、コンジュゲート又は複合体を製造するときに置換されてもよい。
【0054】
ペプチドを伸長させて、例えば、別のループを組み込み、それゆえ、複数の特異性を導入することもできる。
【0055】
ペプチドを伸長させるために、それは、単純に、標準的な固相又は液相化学を用いて、直交保護されたリジン(及び類似体)を用いて、そのN-末端もしくはC-末端で又はループ内で化学的に伸長されてもよい。標準的な(バイオ)コンジュゲーション技法を用いて、活性化された又は活性化可能なN-又はC-末端を導入してもよい。或いは、付加は、例えば、(Dawsonらの文献、1994、ネイティブケミカルライゲーションによるタンパク質の合成(Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation). Science 266:776-779)に記載されている断片縮合もしくはネイティブケミカルライゲーションによるか、又は例えば(Changらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Dec 20; 91(26):12544-8もしくはHikariらの文献、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第18巻、第22号、2008年11月15日、6000~6003頁)に記載されているサブチリガーゼを用いて、酵素により行われてもよい。
【0056】
或いは、ペプチドは、ジスルフィド結合を介するさらなるコンジュゲーションによって伸長又は修飾されてもよい。これは、第一及び第二のペプチドが細胞の還元環境内で互いに解離することを可能にするという追加の利点を有する。この場合、分子スキャフォールド(例えば、TATA)は、3つのシステイン基と反応するように第一のペプチドの化学合成の間に付加されることができ;その後、さらなるシステイン又はチオールが第一のペプチドのN又はC-末端に付加されることができ、その結果、このシステイン又はチオールが第二のペプチドの遊離のシステイン又はチオールとのみ反応して、ジスルフィド結合した二環式ペプチド-ペプチドコンジュゲートを形成した。
【0057】
同様の技法は、四重特異性分子を潜在的に生じさせる、2つの二環式二重特異性大環状分子の合成/カップリングに等しく適用される。
【0058】
さらに、他の官能基又はエフェクター基の付加は、適切な化学を用いて、N-もしくはC-末端で、又は側鎖を介してカップリングさせて、同じ方法で達成されてもよい。一実施態様において、カップリングは、いずれかの実体の活性を遮断しないような方法で実行される。
【0059】
(医薬組成物)
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンドを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0060】
通常、本ペプチドリガンドは、薬理学的に適切な賦形剤又は担体と一緒に精製された形態で利用される。典型的には、これらの賦形剤又は担体は、生理食塩水及び/又は緩衝化媒体を含む、水性もしくはアルコール/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、並びに乳酸加リンガーが挙げられる。生理的に許容し得る好適なアジュバントは、ポリペプチド複合体を懸濁状態に保つために必要な場合、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、及びアルギネートなどの増粘剤から選択されてもよい。
【0061】
静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充液及び電解質補充液、例えば、リンガーデキストロースに基づくものが挙げられる。また、防腐剤並びに他の添加物、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスが存在してもよい(Mackの文献(1982)、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版)。
【0062】
本発明のペプチドリガンドは、別々に投与される組成物として、又は他の薬剤と併せて使用されてもよい。これらとしては、抗体、抗体断片、並びに様々な免疫療法薬、例えば、シルコスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシン、又はシスプラチン、及び免疫毒素を挙げることができる。医薬組成物は、本発明のタンパク質リガンドと併せた様々な細胞毒性剤もしくは他の薬剤の「カクテル」、又は投与前にプールされているか、プールされていないかを問わず、異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなどの、異なる特異性を有する本発明による選択されたポリペプチドの組合せさえも含むことができる。
【0063】
本発明による医薬組成物の投与の経路は、当業者に一般的に公知の任意のものであってもよい。療法のために、本発明のペプチドリガンドは、標準的な技法に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、肺経路を介するもの、又は同じく適切に、カテーテルを用いる直接注入によるものを含め、任意の適切な様式によるものであることができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、吸入によって投与される。投薬量及び投与の頻度は、患者の年齢、性別、及び状態、他の薬物の同時的な投与、禁忌、並びに臨床医によって考慮される他のパラメータによって決まる。
【0064】
本発明のペプチドリガンドは、保存用に凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。この技法は、効果的であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥及び再構成技法を利用することができる。凍結乾燥及び再構成は様々な程度の活性損失をもたらし得ること、及び補償するために、レベルを上方に調整する必要があり得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0065】
本発明のペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。特定の治療用途において、選択される細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅化、又は何らかの他の測定可能なパラメータを達成するために十分な量は、「治療有効用量」として定義される。この投薬量を達成するために必要とされる量は、疾患の重症度及び患者自身の免疫系の全般的な状態によって決まるが、概ね、体重1キログラム当たり0.005~5.0mgの選択されるペプチドリガンドの範囲であり、0.05~2.0mg/kg/用量の用量がより一般的に使用される。予防用途のために、本ペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物はまた、同様の又はわずかに少ない投薬量で投与されてもよい。
【0066】
本発明によるペプチドリガンドを含有する組成物を予防的及び治療的な設定で利用して、哺乳動物における選択標的細胞集団の変化、不活性化、死滅化、又は除去を助けることができる。さらに、本明細書に記載されるペプチドリガンドを体外で又はインビトロで選択的に用いて、細胞の異成分集合体から標的細胞集団を死滅させるか、枯渇させるか、又は他の形で効果的に除去することができる。哺乳動物由来の血液を選択されたペプチドリガンドと体外で組み合わせることができ、それにより、標準的な技法に従って哺乳動物に戻すために、望ましくない細胞を死滅させるか、又は別の形で血液から除去する。
【0067】
(治療的使用)
本発明のさらなる態様によれば、癌の予防、抑制、又は治療において使用するための本明細書で定義されるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が提供される。
【0068】
治療(又は抑制)され得る癌(及びその良性対応物)の例としては、上皮起源の腫瘍(腺癌、扁平上皮癌、移行細胞癌、及び他の癌腫を含む、様々なタイプの腺腫及び癌腫)、例えば、膀胱及び尿路、乳房、消化管(食道、胃(stomach)(胃(gastric))、小腸、結腸、直腸、並びに肛門を含む)、肝臓(肝細胞癌)、胆嚢及び胆管系、外分泌膵臓、腎臓、肺(例えば、腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支肺胞上皮癌、及び中皮腫)、頭頸部(例えば、舌、口腔、喉頭、咽頭、上咽頭、扁桃、唾液腺、鼻腔、及び副鼻腔の癌)、卵巣、卵管、腹膜、膣、外陰部、陰茎、子宮頸部、子宮筋層、子宮内膜、甲状腺(例えば、甲状腺濾胞癌)、副腎、前立腺、皮膚、及び付属器の癌(黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、角化棘細胞腫、異形成母斑);血液悪性腫瘍(すなわち、白血病、リンパ腫)並びに前悪性血液障害及びリンパ系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患を含む境界領域悪性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病[ALL]、慢性リンパ性白血病[CLL]、B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫及び白血病、ナチュラルキラー[NK]細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、形質細胞腫、多発性骨髄腫、及び移植後リンパ増殖性障害)、並びに骨髄系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患(例えば、急性骨髄性白血病[AML]、慢性骨髄性白血病[CML]、慢性骨髄単球性白血病[CMML]、好酸球増多症候群、骨髄増殖性障害、例えば、真性多血症、本態性血小板血症、及び原発性骨髄線維症、骨髄増殖性症候群、骨髄異形成症候群、並びに前骨髄細胞性白血病);間葉起源の腫瘍、例えば、軟部組織、骨、もしくは軟骨の肉腫、例えば、骨肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、類上皮性肉腫、消化管間質性腫瘍、良性及び悪性の組織球腫、並びに隆起性皮膚線維肉腫;中枢もしくは末梢神経系の腫瘍(例えば、星細胞腫、神経膠腫、及び膠芽細胞腫、髄膜腫、上衣腫、松果体腫瘍、及びシュワン細胞腫);内分泌腫瘍(例えば、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、膵島細胞腫瘍、副甲状腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、及び甲状腺の髄様癌);眼球及び付属器腫瘍(例えば、網膜芽腫);生殖細胞及び栄養膜腫瘍(例えば、奇形腫、精上皮腫、未分化胚細胞腫、胞状奇胎、及び絨毛癌);並びに小児性及び胎児性腫瘍(例えば、髄芽腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、および未分化神経外胚葉性腫瘍);又は患者を悪性腫瘍に罹りやすい状態にしておく先天性もしくはその他の症候群(例えば、色素性乾皮症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
さらなる実施態様において、癌は、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、B及びT急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、並びに慢性骨髄性白血病(CML):から選択される造血器悪性腫瘍から選択される。
【0070】
「予防」という用語への本明細書における言及は、疾患の誘導前の防御的な組成物の投与を含む。「抑制」は、誘導性事象の後であるが、疾患の臨床的出現の前の組成物の投与を指す。「治療」は、疾患症状が顕在化した後の防御的な組成物の投与を含む。
【0071】
疾患からの防御又は疾患の治療におけるペプチドリガンドの有効性をスクリーニングするために使用することができる動物モデル系が利用可能である。動物モデル系の使用は、ヒト及び動物の標的と交差反応することができるポリペプチドリガンドの開発を可能にして、動物モデルの使用を可能にする本発明によって促進される。
【0072】
本発明を、以下の実施例を参照して、以下でさらに説明する。
【実施例】
【0073】
(実施例)
一般に、本発明のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、以下の一般的な方法に従って調製することができる:
【化9】
【0074】
全ての溶媒を脱気し、N2で3回パージした。BP-23825(1.0当量)、HATU(1.2当量)、及びDIEA(2.0当量)のDMF溶液を5分間混合し、その後、二環1(1.2当量)を添加する。反応混合物を40℃で16時間撹拌する。その後、反応混合物を減圧下で濃縮して、溶媒を除去し、分取HPLCにより精製すると、中間体2が得られる。
【0075】
中間体2(1.0当量)及び二環2(2.0当量)の混合物をt-BuOH/H2O(1:1)に溶解させ、その後、CuSO4(1.0当量)、VcNa(4.0当量)、及びTHPTA(2.0当量)を添加する。最後に、0.2M NH4HCO3を添加して、pHを8に調整する。反応混合物を、N2雰囲気下、40℃で16時間撹拌する。反応混合物を分取HPLCにより直接精製した。
【0076】
本発明のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体のより詳細な実験は、本明細書中、以下に提供されている:
【0077】
(実施例1: BCY11863の合成)
【化10】
(BCY12476の調製のための手順)
【化11】
N-(酸-PEG3)-N-ビス(PEG3-アジド)(70.0mg、112.2μmol、1.0当量)、HATU(51.2mg、134.7μmol、1.2当量)、及びDIEA(29.0mg、224.4μmol、40μL、2.0当量)の混合物をDMF(2mL)に溶解させ、5分間混合した。その後、BCY8116(294.0mg、135.3μmol、1.2当量)を添加した。反応混合物を40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピークが示された。反応混合物を減圧下で濃縮して、溶媒を除去すると、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLCにより精製した。BCY12476(194.5mg、66.02μmol、29%収率、94%純度)が白色の固形物として得られた。計算されたMW: 2778.17、観測されたm/z: 1389.3([M+2H]
2+)、926.7([M+3H]
3+)。
【0078】
(BCY11863の調製のための手順)
【化12】
BCY12476(100.0mg、36.0μmol、1.0当量)、BCY8928(160.0mg、72.0μmol、2.0当量)の混合物をまず2mLのt-BuOH/H
2O(1:1)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、180μL、1.0当量)及びVcNa(28.5mg、143.8μmol、4.0当量)、THPTA(31.2mg、71.8μmol、2.0当量)を添加した。最後に、0.2M NH
4HCO
3を添加して、pHを8に調整した。全ての溶媒を脱気し、N
2でパージした。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、BCY8928が残存し、所望のm/zも検出されることが示された。反応混合物を分取HPLCにより直接精製した。最初の精製により、BCY11863(117.7mg、15.22μmol、42.29%収率、93.29%純度)がTFA塩として得られ、一方、あまり純粋でない画分を分取HPLCにより再び精製すると、BCY11863(33.2mg、4.3μmol、12%収率、95%純度)がTFA塩として得られた。計算されたMW: 7213.32、観測されたm/z: 1444.0([M+5H]
5+)。
【0079】
(実施例2: BCY13390の合成)
【化13】
(BCY13689の調製のための手順)
【化14】
BCY12476(47.0mg、16.91μmol、1.0当量)、BCY8928(30.0mg、13.53μmol、0.8当量)、及びTHPTA(36.7mg、84.55μmol、5.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、8mL、予め脱気し、N
2でパージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、21.0μL、0.5当量)及びVcNa(67.0mg、338.21μmol、20.0当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、25℃で1.5時間撹拌した。LC-MSにより、一部のBCY12476が残存し、BCY8928が完全に消費され、所望のm/zを有するピークが検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLCにより精製すると、BCY13689(25.3mg、4.56μmol、27%収率、90%純度)が白色の固形物として得られた。計算されたMW: 4995.74、観測されたm/z: 1249.4([M+4H]
4+)、999.9([M+5H]
5+)。
【0080】
(BCY13390の調製のための手順)
【化15】
BCY13689(43.6mg、8.73μmol、1.0当量)、BCY13389(20.8mg、9.16μmol、1.05当量)、及びTHPTA(3.8mg、8.73μmol、1.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2でパージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、22.0μL、1.0当量)及びVcNa(3.5mg、17.45μmol、2.0当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zに対応する顕著なピークが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLCにより精製すると、BCY13390(33.8mg、4.21μmol、48%収率、90%純度)が白色の固形物として得られた。計算されたMW: 7270.41、観測されたm/z: 1454.9([M+5H]
5+)、1213.2([M+6H]
6+)。
【0081】
(実施例3: BCY13582の合成)
【化16】
(BCY13582の調製のための手順)
【化17】
BCY13390(5.0mg、0.6μmol、1.0当量)、ビオチン-PEG12-NHSエステル(CAS 365441-71-0、0.7mg、0.72μmol、1.1当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、2mL)に溶解させた。この溶液のpHを1.0M NaHCO
3の滴加により8に調整した。反応混合物を25℃で0.5時間撹拌した。LC-MSにより、BCY13390が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピークが検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLCにより精製すると、BCY13582(2.5mg、0.30μmol、43%収率、96%純度)が白色の固形物として得られた。計算されたMW: 8096.43、観測されたm/z: 1351.1([M+6H]
6+)、1158.5([M+7H]
7+)。
【0082】
(実施例4: BCY13583の合成)
【化18】
(BCY13583の調製のための手順)
【化19】
BCY13390(15.0mg、2.06μmol、1.0当量)及びAlexa fluor(登録商標) 488 NHSエステル(2.5mg、4.12μmol、2.0当量)の混合物をDMF(0.5mL)に溶解させた。その後、DIEA(2.6mg、20.63μmol、3.6μL、10当量)を滴加した。反応混合物を25℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、BCY13390が残存し、所望のm/zを有する1つの主要なピークが検出されることが示された。追加のAlexa fluor(登録商標) 488 NHSエステル(2.0mg、3.09μmol、1.5当量)を反応混合物に添加し、反応混合物を25℃でさらに1時間撹拌した。HPLCにより、BCY13390が完全に消費されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLCにより精製すると、BCY13583(5mg、0.61μmol、29%収率、95%純度)が赤色の固形物として得られた。計算されたMW: 7787.9、観測されたm/z: 1948.8([M+4H+H
2O]
4+)、1558.6([M+5H+H
2O]
5+)、1299.1([M+7H+H
2O]
7+)。
【0083】
(実施例5: BCY13628の合成)
【化20】
(BCY13628の調製のための手順)
【化21】
BCY13390(5.6mg、0.77μmol、1.0当量)及びシアニン5 NHSエステル(0.5mg、0.85μmol、1.1当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、2mL)に溶解させた。この溶液のpHを1.0M NaHCO
3の滴加により8に調整した。反応混合物を25℃で0.5時間撹拌した。LC-MSにより、BCY13390が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピークが検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLCにより精製すると、BCY13628(2.9mg、0.36μmol、46%収率、95%純度)が青色の固形物として得られた。計算されたMW: 7736.06、観測されたm/z: 1289.9([M+6H]
6+)、1105.5([M+7H]
7+)。
【0084】
(実施例6: BCY15155の合成)
【化22】
(BCY15155の調製のための手順)
【化23】
BCY13689(25.0mg、5.00μmol、1.0当量)、BCY14601(13.0mg、6.01μmol、1.2当量)、及びTHPTA(2.0mg、5.00μmol、1.0当量)の混合物をt-BuOH/0.2M NH
4HCO
3(1:1、0.5mL、予め脱気し、N
2でパージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、12.5μL、1.0当量)及びVc(3.5mg、20.02μmol、4.0当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、BCY13689が完全に消費され、一部のBCY14601が残存し、所望のm/zを有する1つの主要なピークが検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLCにより精製すると、BCY15155(19.7mg、2.41μmol、36%収率、97%純度)が白色の固形物として得られた。計算されたMW: 7171.3、観測されたm/z: 1434.7([M+5H]
5+)、1196.2([M+6H]
6+)。
【0085】
(実施例7: BCY14602の合成)
【化24】
(BCY14602の調製のための手順)
【化25】
BCY12476(100.0mg、36.00μmol、1.0当量)、BCY14601(158.0mg、72.63μmol、2.04当量)、及びTHPTA(15.6mg、36.00μmol、1.0当量)の混合物をt-BuOH/0.2M NH
4HCO
3(1:1、2mL、予め脱気し、N
2でパージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、89.0μL、1.0当量)及びVcNa(28.5mg、143.98μmol、4.0当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを8に調整すると、溶液は薄黄色になった。THPTA及びVcNaを2回補充し、全体に溶液を、N
2雰囲気下、25℃で48時間撹拌した。LC-MSにより、BCY12476が完全に消費され、BCY14601が残存し、所望のm/zを有する1つの主要なピークが検出されることが示された。わずかな副生成物も検出された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLCにより精製すると、BCY14602(45.2mg、5.51μmol、15%収率、86%純度)が白色の固形物として得られた。計算されたMW: 7129.2、観測されたm/z: 1426.6([M+5H]
5+)、1189.1([M+6H]
6+)。
【0086】
(分析データ)
本発明の以下のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体を、質量分析及びHPLCを用いて分析した。HPLC設定は、次の通りであった:
移動相: A: H2O中の0.1%TFA B: ACN中の0.1%TFA
流量: 1.0ml/分
カラム: Gemini-NX C18 5um 110A 150*4.6mm
装置: Agilent 1200 HPLC-BE(1-614)
【0087】
使用された勾配は、20分かけて30~60%Bである。データは、次のように作成した:
【表3】
【0088】
(生物学的データ)
(1.腫瘍細胞とのCD137レポーターアッセイ共培養)
1%FBSをRPMI-1640(PromegaキットCS196005の構成要素)に添加することにより、R1培地と呼ばれる培養培地を調製する。R1中の試験品の連続希釈物を滅菌96ウェルプレート中に調製する。ウェル当たり25μLの試験品又はR1(バックグラウンド対照として)を白色の細胞培養プレート中の指定のウェルに添加する。腫瘍細胞*を回収し、400,000細胞/mLの濃度でR1培地に再懸濁させる。25(25)μL/ウェルの腫瘍細胞を白色の細胞培養プレートに添加する。Jurkat細胞(PromegaキットCS196005、0.5mL)を水浴中で解凍し、その後、5mlの予め温めたR1培地に添加する。その後、25(25)μL/ウェルのJurkat細胞を白色の細胞培養プレートに添加する。細胞及び試験品を37℃、5%CO2で6時間インキュベートする。6時間の最後に、75μL/ウェルのBio-Glo(商標)試薬(Promega)を添加し、10分間インキュベートした後、プレートリーダー(Clariostar, BMG)で発光を読み取る。細胞のみ(Jurkat細胞+共培養で使用した細胞株)と比べた変化倍率を計算し、GraphPad Prismでlog(アゴニスト)対応答としてプロットして、EC50(nM)及びバックグラウンドに対する誘導倍率(Max)を決定する。
【0089】
共培養で使用される腫瘍細胞型は、ネクチン-4を発現することが示されているNCI-H292、CT26 #7、MC38 #13、HT1376、NCI-H322、及びT47Dである。
【0090】
図1Aに示されているデータは、ネクチン-4/CD137ヘテロタンデム(BCY11863)がCD137レポーターアッセイにおいて強いCD137活性化を誘導し、この活性化が該ヘテロタンデムとCD137との結合に依存していることを示している。CD137二環式ペプチドが結合を無効にする全てのD-アミノ酸から構成される分子であるBCY11617は、CD137アゴニズムを誘導しない。
【0091】
ネクチン-4発現腫瘍細胞株との共培養下でのCD137レポーターアッセイにおいてヘテロタンデム二環式ペプチド複合体BCY11863及びクローン類似体によって導かれるEC
50(nM)のまとめが下の表1で報告され、
図1Bで視覚化されている。このデータは、様々なネクチン-4発現を有する細胞株との共培養下でCD137アゴニズムを誘導するBCY11863の能力を示している。
表1: CD137レポーターアッセイにおいてネクチン-4/CD137ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体によって導かれるバックグラウンドに対する誘導倍率のEC50(nM)
【表4】
【0092】
(2.ヒトPBMC共培養(サイトカイン放出)アッセイ)
ヒト及びマウス腫瘍細胞株を供給元の推奨に従って培養した。健康なヒトドナー由来の凍結PBMCを解凍し、室温のPBS中で1回洗浄し、その後、R10培地に再懸濁させた。100μlのPBMC(1,000,000 PBMC/ml)及び100μlの腫瘍細胞(100,000腫瘍細胞/ml)(エフェクター:標的細胞比(E:T) 10:1)を共培養アッセイ用の96ウェル平底プレートの各々のウェルにプレーティングした。100ng/mlの可溶性抗CD3 mAb(クローンOKT3)を0日目に培養物に添加して、ヒトPBMCを刺激した。試験物、対照化合物、又はビヒクル対照をR10培地に希釈し、50μLをそれぞれのウェルに添加して、ウェル当たりの最終容量を250μLにした。プレートを通気性のあるフィルムで覆い、5%CO2を含む37℃の加湿チャンバー中で3日間インキュベートした。刺激から48時間後に上清を回収し、ヒトIL-2及びIFN-γをLuminexにより検出した。簡潔に述べると、標準品及び試料を黒色の96ウェルプレートに添加した。微粒子カクテル(Luminexキット、R&D Systems中に提供されている)を添加し、室温で2時間振盪させた。磁気ホルダーを用いて、プレートを3回洗浄した。その後、ビオチンカクテルをプレートに添加し、RTで1時間振盪させた。磁気ホルダーを用いて、プレートを3回洗浄した。ストレプトアビジンカクテルをプレートに添加し、RTで30分間振盪させた。磁気ホルダーを用いて、プレートを3回洗浄し、100μLの洗浄バッファーに再懸濁させ、RTで2分間振盪させ、Luminex 2000を用いて読み取った。生データを内蔵Luminexソフトウェアを用いて解析して、標準曲線を作成し、タンパク質濃度を内挿し、他の全てのデータ解析及びグラフ作成をExcel及びPrismソフトウェアを用いて行った。データは、技術的三連反復で検討した3~5つの独立したドナーPBMCを用いた試験を表している。
【0093】
図2A及び2Bに示されているデータは、ネクチン-4/CD137ヘテロタンデム(BCY11863)がPBMC-4T1共培養アッセイにおいて強いIL-2及びIFN-γサイトカイン分泌を誘導することを示している。BCY11617は、ネクチン-4に結合するが、CD137に結合しない陰性対照である。
【0094】
ヒトPBMC共培養(サイトカイン放出)アッセイにおいて選択されたネクチン-4/CD137ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体によって導かれるEC
50(nM)及び最大IFN-γサイトカイン分泌(pg/ml)のまとめが下の表2で報告され、
図2Cで視覚化されている。これは、ネクチン-4を発現するいくつかの異なる腫瘍細胞株の存在下でサイトカイン分泌を誘導するBCY11863の能力を示している。
表2:ヒトPBMC-4T1共培養(サイトカイン放出)アッセイにおいて選択されたネクチン-4/CD137ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体によって誘導されるIFN-γサイトカイン分泌のEC
50
【表5】
【0095】
(3. SDラットにおけるネクチン-4/CD137ヘテロタンデムBCY11863の薬物動態)
雄SDラットに、25mMヒスチジンHCl、10%スクロースpH 7中に製剤化されたネクチン-4/CD137ヘテロタンデムBCY11863を、IVボーラス、IV注入によって(15分間)、又は皮下に投与した。連続採血(約80μL血液/時点)を各々の時点で顎下又は伏在静脈から行った。血液試料を全て、2μL K2-EDTA(0.5M)を抗凝固薬として含有する予冷マイクロ遠心分離チューブにすぐに移し、濡れた氷の上に置いた。血液試料を、約4℃、3000gでの遠心分離によって、血漿用にすぐに処理した。内部標準を含む沈殿剤を血漿にすぐに添加し、十分に混合し、12,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清を予めラベルが貼られたポリプロピレンマイクロ遠心分離チューブに移し、その後、ドライアイス上で急速凍結させた。試料を必要に応じて分析まで70℃以下で保存した。7.5μLの上清試料を、ポジティブイオンモードでOrbitrap Q Exactiveを用いるLC-MS/MS分析用にそのまま注入して、分析物の濃度を決定した。血漿濃度対時間データを、Phoenix WinNonlin 6.3ソフトウェアプログラムを用いるノンコンパートメントアプローチによって分析した。C0、Cl、Vdss、T
1/
2、AUC(0-last)、AUC(0-inf)、MRT(0-last)、MRT(0-inf)、及び血漿濃度対時間プロファイルのグラフを報告した。実験の薬物動態パラメータは、表3に示されている通りである:
表3: SDラットにおける薬物動態パラメータ
【表6】
【0096】
上の表3及び
図5のデータは、BCY11863が血漿容積よりも大きい分布容積を有する低クリアランス分子であることを示している。さらに、BCY11863のSC投与から得られるバイオアベイラビリティは、ラットで高い。
表4: 100mg/kg用量がIV投与によって投与された後のSDラットPK試験におけるBCY11863及び潜在的代謝産物の薬物動態パラメータ
【表7】
【0097】
表4及び
図14のデータは、SDラットにBCY11863をIV投与したとき、BCY11863の1%未満がBCY15155に代謝されることを示している。BCY14602への有意な変換は、試験の最初の24時間の間に認められない。
【0098】
(4.カニクイサルにおけるネクチン-4/CD137ヘテロタンデムBCY11863の薬物動態)
処置歴のあるカニクイザルの橈側皮静脈に、静脈内注入(15又は30分間)を介して、25mMヒスチジンHCl、10%スクロースpH 7中に製剤化された1mg/kgのネクチン-4/CD137ヘテロタンデムBCY11863を投与した。連続採血(約1.2ml血液/時点)を、各々の時点で、拘束された非鎮静動物の末梢血管から行って、濡れた氷の上のカリウム(K2) EDTA
*2H
2O(0.85~1.15mg)を含有する市販のチューブに入れ、血漿用に処理した。試料を回収後すぐに遠心分離した(3,000×g、2~8℃で10分間)。0.1mLの血漿をラベルが貼られたポリプロピレンマイクロ遠心分離チューブに移した。内部標準である100ng/mLラベタロール及び100ng/mLデキサメタゾン及び100ng/mLトルブタミド及び100ng/mLベラパミル及び100ng/mLグリブリド及び100ng/mLセレコキシブをMeOH中に含む5倍の沈殿剤を血漿にすぐに添加し、十分に混合し、12,000rpmで、2~8℃で10分間遠心分離した。上清の試料を予めラベルが貼られたポリプロピレンマイクロ遠心分離チューブに移し、ドライアイス上で凍結させた。試料をLC-MS/MS分析まで-60℃以下で保存した。40μLの校正標準試料、品質管理試料、単一ブランク試料、及び二重ブランク試料のアリコートを1.5mLチューブに添加した。各々の試料(二重ブランクを除く)をそれぞれ200μL IS1でクエンチし(二重ブランク試料は0.5%tritonX-100を含む200μL MeOHでクエンチした)、その後、混合物をボルテクサーで十分に(少なくとも15秒間)ボルテックス混合し、12000g、4℃で15分間遠心分離した。10μLの上清を、ポジティブイオンモードでOrbitrap Q Exactiveを用いるLC-MS/MS分析用に注入して、分析物の濃度を決定した。血漿濃度対時間データを、Phoenix WinNonlin 6.3ソフトウェアプログラムを用いるノンコンパートメントアプローチによって分析した。C0、Cl、Vdss、T
1/
2、AUC(0-last)、AUC(0-inf)、MRT(0-last)、MRT(0-inf)、及び血漿濃度対時間プロファイルのグラフを報告した。2つの二重特異性化合物の薬物動態パラメータは、表5に示されている通りである。
表5:カニクイザルにおける薬物動態パラメータ
【表8】
【0099】
図3は、SDラット(n=3)での2mg/kg IV投与及びカニクイザル(n=2)での1mg/kg IV注入から得られたBCY11863の血漿濃度対時間曲線を示している。BCY11863は、ラットにおいて1.6L/kgの定常状態分布容積(Vdss)及び7.7mL/分/kgのクリアランスを有し、結果として、4.1時間の終末相半減期が得られる。BCY11863は、カニクイザルにおいて0.62L/kgの定常状態分布容積(Vdss)及び結果として5.3時間の終末相半減期が得られる3.3mL/分/kgのクリアランスを有する。後続の試験は、これらの結果と一致している。カニクイザルにおけるIV試験から得られたPKパラメータは、これが全体内水分と同様の分布容積を有する低血漿クリアランス分子であることを示している。
【0100】
(5. CD1マウスにおけるネクチン-4/CD137ヘテロタンデムBCY11863の薬物動態)
6匹の雄CD-1マウスに、25mMヒスチジンHCl、10%スクロースpH 7中に製剤化された15mg/kgのネクチン-4/CD137ヘテロタンデムBCY11863を腹腔内又は静脈内投与によって投与した。連続採血(約80μL血液/時点)を各々の時点で顎下又は伏在静脈から行った。血液試料を全て、2μL K2-EDTA(0.5M)を抗凝固薬として含有する予冷マイクロ遠心分離チューブにすぐに移し、濡れた氷の上に置いた。血液試料を、約4℃、3000gでの遠心分離によって、血漿用にすぐに処理した。内部標準を含む沈殿剤を血漿にすぐに添加し、十分に混合し、12,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清を予めラベルが貼られたポリプロピレンマイクロ遠心分離チューブに移し、その後、ドライアイス上で急速凍結させた。試料を必要に応じて分析まで70℃以下で保存した。7.5μLの上清試料を、ポジティブイオンモードでOrbitrap Q Exactiveを用いるLC-MS/MS分析用にそのまま注入して、分析物の濃度を決定した。血漿濃度対時間データを、Phoenix WinNonlin 6.3ソフトウェアプログラムを用いるノンコンパートメントアプローチによって分析した。C0、Cl、Vdss、T1/2、AUC(0-last)、AUC(0-inf)、MRT(0-last)、MRT(0-inf)、及び血漿濃度対時間プロファイルのグラフを報告した。
【0101】
図9は、CD1マウス(n=3)における15mg/kg IP投与から得られたBCY11863の血漿濃度対時間曲線及びBCY11863の終末相血漿半減期を示している。
表6: CD-1マウスにおける薬物動態パラメータ
【表9】
【0102】
上の
図9及び表6のデータは、BCY11863をマウスにおけるIVボーラス及びIPとして使用することができることを示している。BCY11863のIP投与から得られたバイオアベイラビリティは、マウスで高い。IV試験から得られたPKパラメータは、これが血漿容積よりも大きい分布容積を有する低クリアランス分子であることを示している。
【0103】
(6.同系ネクチン-4過剰発現MC38腫瘍モデル(MC38#13)におけるBCY11863の抗腫瘍活性)
6~8週齢のC57BL/6J-hCD137雌マウスの脇腹に、1×10
6個の同系ネクチン-4過剰発現MC38細胞(MC38#13)を接種した。腫瘍が平均72mm
3の大きさに達したとき、ビヒクル又はBCY11863(腹腔内投与)を受容するように、マウスを無作為に割り付けた。BCY11863を、毎日(QD)又は3日毎に(Q3D)、1mg/kg又は10mg/kgのいずれかで投与した(n=6マウス/処置コホート)。QD投与されたマウスは、16用量のBCY11863を受容し、Q3D投与されたマウスは、10用量のBCY11863を受容した。腫瘍増殖をキャリパー測定により処置開始後69日目までモニタリングした。この実験の結果は、
図4に見ることができる。この実験では、腫瘍増殖の有意な低下(p<0.05、ダネットの多重比較検定を伴う2元配置ANOVA)が7日目までに2つの処置コホートで観察され、14日目までに、全ての処置群がビヒクル群と有意に異なっていた。48日目までに、24匹のBCY11863処置動物のうちの22匹が処置に完全に応答し、触診可能な腫瘍は残存していなかった。
【0104】
IP注射(2.5時間)後のマウスにおけるBCY11863の循環血漿半減期に基づくと、血漿トラフレベルは、両方のBCY11863用量(1及び10mg/kg)並びに投与間隔(QD及びQ3D)の後で0に近く、したがって、間欠的投与によるBCY11863の決して連続的とは言えない血漿曝露が永続的な完全応答をもたらす顕著な抗腫瘍活性をもたらすのに十分であることを示している。
【0105】
(7.BCY11863処置はネクチン-4過剰発現MC38腫瘍モデルに対する免疫原性記憶をもたらす)
69日目に、BCY11863処置に完全に応答した5匹の動物に、1×10
6個のMC38#13細胞を再接種した。5匹の未処置C57BL/6J-hCD137雌マウスのコホートに、1×10
6個のMC38#13細胞を対照として接種した。この実験の結果は、
図5に見ることができる。この実験では、接種を受けた5匹の未処置C57BL/6J-hCD137雌マウスは全て、接種後13日目までに腫瘍を増殖させたのに対し、接種を受けた完全レスポンダーマウスはいずれも腫瘍を発生させなかった。これは、BCY11863処置の結果として完全な抗腫瘍応答を達成した動物が免疫原性記憶を発達させたことを示している。
【0106】
(8.BCY11863は同系ネクチン-4過剰発現CT26腫瘍モデル(CT26#7)において抗腫瘍活性を示す)
6~8週齢のBALB/c-hCD137雌マウスの脇腹に、3×10
5個の同系ネクチン-4過剰発現CT26細胞(CT26#7)を接種した。腫瘍が平均70mm
3の大きさに達したとき、ビヒクル又は5mg/kg BCY11863を3日毎に(合計6用量)腹腔内に受容するように、マウスを無作為に割り付けた。腫瘍増殖をキャリパー測定により処置開始後14日目までモニタリングした。この実験の結果は、
図6に見ることができる。この実験では、BCY11863処置は、7日目以降、腫瘍増殖を有意に(p<0.0001、スチューデントのt-検定)軽減した。
【0107】
IP注射(2.5時間)時のマウスにおけるBCY11863の循環血漿半減期に基づくと、血漿曝露は、投与期間の全体を通じて連続的ではなく、BCY11863の決して連続的とは言えない血漿曝露が顕著な抗腫瘍活性をもたらすのに十分であることを示している。
【0108】
(9.全T細胞及びCD8+ T細胞はBCY11863の最後の(6回目の)Q3D投与から1時間後にCT26#7腫瘍組織を増加させる)
最後のビヒクル又はBCY11863投与から1時間後、CD26#7担持マウスを屠殺し、腫瘍を摘出し、単一細胞懸濁液用に処理し、全T細胞(CD45+CD3+)、CD8+ T細胞(CD45+CD3+CD8+)、CD4+ T細胞(CD45+CD3+CD4+)、及び調節性T細胞(Treg; CD45+CD3+CD4+Foxp3+)のフローサイトメトリー解析用に染色した。この実験の結果は、
図7に見ることができる。この実験では、BCY11863処置が全T細胞の有意な増加(p<0.0001、スチューデントのt-検定)及びCD8+ T細胞の有意な増加(p<0.0001、スチューデントのt-検定)、並びにCD8+ T細胞/Treg比(p<0.05、スチューデントのt-検定)の有意な増加をもたらしたことが分かる。
【0109】
これは、BCY11863による処置が、間欠的投与後、腫瘍組織で局所的にT細胞のレベルの増加をもたらすことができることを示している。
【0110】
(10. 5mg/kgのBCY11863の単一静脈内(iv)投与後のCT26#7同系腫瘍担持動物の血漿及び腫瘍組織におけるBCY11863の薬物動態プロファイル)
6~8週齢のBALB/c雌マウスの脇腹に、3×105個の同系ネクチン-4過剰発現CT26細胞(CT26#7)を接種した。腫瘍が平均約400mm3の大きさに達したとき、ビヒクル又は5mg/kg BCY11863の単一静脈内投与を受容するように、マウスを無作為に割り付けた。マウスのコホート(n=3/時点)を、0.25、0.5、1、2、4、8、及び24時間の時点で屠殺し、血漿を採取し、腫瘍組織をBCY11863について解析した。腫瘍BCY11863含有量解析のために、腫瘍組織を10容量(w:v)の均質化溶液(MeOH/15mM PBS(1:2、v:v))で均質化することにより、腫瘍ホモジネートを調製した。40μLの試料を200μL IS1でクエンチし、混合物を800rpmで10分間ボルテックス処理することにより混合し、3220g、4℃で15分間遠心分離した。上清を別の清潔な96ウェルプレートに移し、3220g、4℃で5分間遠心分離し、その後、10.0μLの上清を、ポジティブイオンモードでOrbitrap Q Exactiveを用いるLC-MS/MS分析用に注入して、分析物の濃度を決定した。血漿BCY11863含有量解析のために、血液試料をK2-EDTAチューブに回収し、約4℃、3000gでの遠心分離によって、血漿へとすぐに処理した。40μLの血漿試料を200μL IS1でクエンチし、800rpmで10分間ボルテックス処理することにより混合物を混合し、3220g、4℃で15分間遠心分離した。上清を別の清潔な96ウェルプレートに移し、3220g、4℃で5分間遠心分離し、その後、10.0μLの上清を、ポジティブイオンモードでOrbitrap Q Exactiveを用いるLC-MS/MS分析用に注入して、分析物の濃度を決定した。
【0111】
この実験の結果は、
図8に示されている。この実験では、BCY11863の血漿T
1/2(1.65時間)と腫瘍T
1/2(13.4時間)の違いによって示されるように、血漿BCY11863が循環から排除された後、BCY11863が腫瘍組織に保持されたことが分かる。
【0112】
(11. 4つの前臨床種にわたるネクチン-4及びCD137に対するBCY11863の結合)
その一次標的であるネクチン-4及びCD137に対するBCY11863の結合を表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて特徴付けた。
【0113】
(a)ネクチン-4
BCY11863は、ビオチン化され、かつストレプトアビジンセンサーチップ表面上に捕捉されている細胞外ドメインへの直接結合によって測定したとき、5~27nMのK
Dでカニクイザル、ラット、マウス、及びヒトネクチン-4に結合する。
表7:ビオチン化ネクチン-4細胞外ドメインに対するBCY11863の結合親和性: SPRデータ
【表10】
【0114】
ネクチン-4に対するBCY11863の結合が、三成分複合体の状況において、すなわち、CD137にも結合しているときに変化したかどうかを理解するために、多成分SPR結合アッセイを開発した。まず、SPRチップ表面に固定されたヒトCD137にBCY11863を捕捉させ、その後、チップの上に異なる種由来のネクチン-4を通過させ、捕捉されたBCY11863に対するその親和性を決定した(
図10Cを参照)。ネクチン-4に対する親和性は、下に示されているように、全般的に、CD137結合の存在下で維持された:
表8:ビオチン化ヒトCD137を捕捉試薬として用いたネクチン-4細胞外ドメインに対するBCY11863の結合親和性
【表11】
【0115】
(b)CD137
表面結合CD137に対するBCY11863の直接結合は、極めて遅いk
offをもたらすBCY11863中の2つのCD137結合二環に起因する結合力のために、SPRによって正確に測定することができない(
図10Bを参照)。さらに、カニクイザルCD137のビオチン化は、おそらくは、BCY11863結合に重要であるカニクイザルタンパク質上のリジンの修飾のために、BCY11863の結合を無効にする。したがって、C-末端ビオチン化リジンを含有するBCY11863類似体(BCY13582)をSPRで試験して、BCY11863の交差種特異性を決定した。可逆的ビオチン捕捉キットを用いて、BCY13582をセンサーチップに捕捉させ、異なる種由来のネクチン-4に対する親和性を決定した。両方の戦略により、これらのBCY11863類似体が、<10nMのK
Dでヒト及びカニクイザルCD137に結合し、かつマウスCD137とラットCD137の両方には無視できる程度しか結合しないことが示された。
表9: CD137細胞外ドメインに対するビオチン化BCY11863類似体の結合親和性: SPRデータ
【表12】
【0116】
CD137に対するBCY11863の結合が、三成分複合体の状況において、すなわち、ネクチン-4にも結合しているときに変化したかどうかを理解するために、二重結合SPR結合アッセイを開発した。まず、SPRチップ表面に固定されたヒトネクチン-4にBCY11863を捕捉させ、その後、チップの上に異なる種由来の可溶性CD137を通過させ、捕捉されたBCY11863に対するその親和性を決定した(
図10Dを参照)。CD137に対する親和性は、下に示されているように、全般的に、ネクチン-4結合の存在下で維持された:
表10:ビオチン化ヒトネクチン-4を捕捉試薬として用いたCD137 ECDに対するBCY11863の結合親和性
【表13】
【0117】
図10Aは、BCY11863が4.1nMの親和性でネクチン-4(ヒト)に結合することを示すセンサーグラムの1つの例を示している。
図10Bは、BCY11863が高い親和性でCD137(ヒト)に結合するセンサーグラムを示している。BCY11863中の2つのCD137結合二環の存在のために、固定されたCD137タンパク質の解離速度は非常に遅く、報告されているK
Dは、過大評価である可能性がある(
図10B)。
図10Cは、BCY11863がネクチン-4に結合する一方、CD137アームは、チップ上に固定されたCD137タンパク質に結合して、三成分複合体を形成することを示している。
図10Dは、BCY11863がCD137に結合する一方、ネクチン-4結合アームは、チップ上に固定されたネクチン-4タンパク質に結合して、三成分複合体を形成することを示している。
図10Eは、ヒトCD137に結合するSPRチップ上に固定されたBCY13582の能力を示している。
【0118】
(12.ネクチン-4及びCD137に対するBCY11863の選択性)
ネクチン-4パラログスクリーニング:ネクチン-1(2880-N1、R&D Systems)、ネクチン-2(2229-N2、R&D Systems)、ネクチン-3(3064-N3、R&D Systems)、ネクチン様-1(3678-S4-050、R&D Systems)、ネクチン様-2(3519-S4-050、R&D Systems)、ネクチン様-3(4290-S4-050、R&D Systems)、ネクチン様-4(4164-S4、R&D Systems)、及びネクチン様-5(2530-CD-050、R&D Systems)をビオチンで標識し、これらをストレプトアビジン表面に固定することにより、これらに対するSPRを用いて、BCY11863の結合を評価した。BCY11863は、これらの標的に対する結合を最大5000nMの濃度まで示さなかった。
【0119】
CD137パラログスクリーニング:可溶性TNFファミリー受容体OX40及びCD40に対するSPRを用いて、ストレプトアビジン捕捉BCY13582(ビオチン化BCY11863)の結合を評価した。BCY13582は、これらの標的に最大100nMの濃度まで結合しなかった。
【0120】
Retrogenixマイクロアレイスクリーニング: Retrogenixの細胞マイクロアレイ技術を用いて、BCY13582として知られるビオチン化BCY11863の特異的オフターゲット結合相互作用をスクリーニングした。
【0121】
固定されたトランスフェクトされていないHEK293細胞、並びにネクチン-4及びCD137を過剰発現する細胞(TNFRSF9)に対する試験ペプチドの結合のレベルの検討により、1μMの試験ペプチドが好適なスクリーニング濃度であることが示された。これらの条件下で、試験ペプチドを、5484の全長ヒト血漿膜タンパク質及び分泌タンパク質を個々に発現するヒトHEK293細胞に対する結合についてスクリーニングした。これにより、ネクチン-4及びCD137を含む9つの一次ヒットが明らかになった。
【0122】
各々の一次ヒットを2つの対照受容体(TGFBR2及びEGFR)とともに再発現させ、1μM BCY13582試験ペプチド、100μM BCY11863の存在下の1μM BCY13582試験ペプチド、並びに他の陽性対照及び陰性対照処理を用いて、再試験した(
図4)。非特異的で、再現性がなく、かつ顕著でないヒットを除去した後、試験ペプチドについての3つの特異的な相互作用が残った。これらは、非テザー及びテザー形態のネクチン-4とCD137-一次標的であった。
【0123】
BCY13582についての特異的なオフターゲット相互作用は同定されず、その一次標的に対する高い特異性が示された。
【0124】
(13. 0、24時間で5mg/kg及び0時間で10mg/kgを週2回投与したときの同系ネクチン-4過剰発現MC38腫瘍モデル(MC38#13)におけるBCY11863の抗腫瘍活性)
6~8週齢の雌C57BL/6J-hCD137マウス[B-hTNFRSF9(CD137)マウス; Biocytogen]に、1×106個のMC38#13細胞(マウスネクチン-4を過剰発現するように改変されたMC38細胞)を皮下移植した。平均腫瘍体積が約95mm3に達したとき、マウスを処置群(n=6/コホート)に無作為に割り付け、週1回の用量のビヒクル(25mMヒスチジン、10%スクロース、pH7)又は2つの投与サイクルについて2つの異なる投与スケジュールの10mg/kgのBCY11863(D0及びD7に0時間及び24時間で5mg/kg又はD0及びD7に0時間で10mg/kgのBCY11863)で処置した。処置は全て、静脈内(IV)投与した。腫瘍増殖を処置開始から15日目までモニタリングした。
【0125】
BCY11863は、両方の投与スケジュールで顕著な抗腫瘍活性をもたらすが、完全応答を処置開始後15日目に解析したとき、0時間及び24時間での5mg/kg投与の投与スケジュールは、0時間での10mg/kg投与よりも優れていた(
図12)。D0及びD7における0時間及び24時間での5mg/kgのBCY11863投与が6つのうち4つの完全腫瘍応答をもたらしたのに対し、D0及びD7における0時間での10mg/kgのBCY11863投与は、6つのうち1つの完全腫瘍応答をもたらした。BCY11863マウス血漿PKデータと合わせたこれらのデータは、BCY11863血漿曝露を週1回のサイクルの0時間及び24時間での5mg/kgの投与によってもたらされるレベルで維持すると、MC38#13腫瘍モデルでほぼ完全な抗腫瘍応答がもたらされることを示している。
【0126】
(14.同系ネクチン-4過剰発現MC38腫瘍モデル(MC38#13)におけるBCY11863の抗腫瘍活性)
週1回、2週間に1回、及び1日1回に用量を分割した、3、10、及び30mg/kgという3つの週間用量で、6~8週齢の雌C57BL/6J-hCD137マウス[B-hTNFRSF9(CD137)マウス; Biocytogen]に、1×106個のMC38#13細胞(マウスネクチン-4を過剰発現するように改変されたMC38細胞)を皮下移植した。平均腫瘍体積が約107mm3に達したとき、マウスを処置群(n=6/コホート)に無作為に割り付け、21回の1日1回用量のビヒクル(25mMヒスチジン、10%スクロース、pH7)で処置した。3つの異なるスケジュール(QD:毎日; BIW:週2回、又はQW:週1回)で分割した3つの異なる全用量レベル(3、10、及び30mg/kgの全週用量)でBCY11863処置を行った。異なるBCY11863処置コホートは、21回の1日1回用量(0.43、1.4、もしくは4.3mg/kg)、6回の週2回用量(1.5、5、もしくは15mg/kg)、又は3回の週1回用量(3、10、もしくは30mg/kg)のいずれかを受容した。処置は全て、静脈内(IV)投与した。腫瘍が2000mm3を超える体積に達するまで又は処置開始後31日まで、腫瘍増殖をモニタリングした。完全レスポンダー(触診可能な腫瘍を有さない動物)をD52まで経過観察した。
【0127】
BCY11863は、多くの投与スケジュールで顕著な抗腫瘍活性をもたらし、BIW投与スケジュール、特に、5mg/kgのBIW投与が最も効果的なスケジュールである。これは、52日目の完全レスポンダー動物の数によって示される。処置開始後52日目に、BCY11863でBIW処置した15/18のマウスが完全レスポンダーであり、BCY11863でQD処置した12/18のマウスが完全レスポンダーであり、BCY11863でQW処置した6/18のマウスが完全レスポンダーであった。5mg/kgのBIW投与は、6/6のCRで、100%の完全応答率をもたらす(
図13)。BCY11863マウス血漿PKデータと合わせたこれらのデータは、連続的なBCY11863血漿曝露が、MC38#13腫瘍モデルにおいて、BCY11863に対する抗腫瘍応答に必要でないことを示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】