(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】無人航空機による圃場の噴霧の方法
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20221007BHJP
A01M 21/04 20060101ALI20221007BHJP
B64D 1/18 20060101ALI20221007BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20221007BHJP
B64C 3/56 20060101ALI20221007BHJP
B64C 39/08 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A01M7/00 H
A01M21/04 C
B64D1/18
B64C39/02
B64C3/56
B64C39/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506491
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020072340
(87)【国際公開番号】W WO2021028368
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコム・フェアーズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・チャールズ・チャップル
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121CB03
2B121CB25
2B121CB35
2B121CB37
2B121CC02
2B121CC05
2B121EA26
2B121FA20
(57)【要約】
本発明は、無人航空機(UAV)による圃場の噴霧の方法に関する。本方法は、圃場内で作物の上方においてUAVを飛行させ、液体噴霧を作物に噴霧することを含み、UAVは、UAVの前後軸に垂直な方向に延びるウイングを備え、ウイングは、前後軸の一方側から前後軸の他方側まで延びる翼長を有し、作物に噴霧することは、ウイングの翼長の長さよりも小さい作物の上方においてウイングの高さで実質的にすべての作物に噴霧することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機(UAV)による圃場の噴霧の方法であって、
圃場内で作物の上方においてUAVを飛行させ、液体噴霧を前記作物に噴霧するステップを含んでおり、前記UAVは、前記UAVの前後軸に垂直な方向に延びるウイングを備え、前記ウイングは、前記前後軸の一方側から前記前後軸の他方側まで延びる翼長を有し、前記作物に噴霧するステップは、前記ウイングの前記翼長の長さよりも小さい前記作物の上方において前記ウイングの高さで実質的にすべての前記作物に噴霧するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記液体噴霧を前記作物に噴霧するステップは、前記UAVの前記前後軸に垂直な前記方向に延びる複数の噴霧ユニットによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の噴霧ユニットは、前記ウイングの前記翼長に相当するスパンにわたって間隔を空けつつ位置している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の噴霧ユニットのうちの2つの噴霧ユニットは、前記翼長の前記長さに実質的に相当する距離だけ互いに離れている、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
実質的にすべての前記作物に噴霧する前記高さは、前記翼長の前記長さの半分未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイングは、伸張可能である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイングは、折り畳み機構によって伸張可能である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記UAVの前記前後軸の各側において、前記ウイングの第1の部分が前記ウイングの第2の部分へと折り重ねられるように構成され、前記ウイングの前記第2の部分が、前記UAVの本体に取り付けられている、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の噴霧ユニットは、前記ウイングとは別のブームに取り付けられている、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ブームは、前記ウイングの平面よりも下方に位置する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ブームは、前記UAVの前方飛行方向に対して前記ウイングの前方に位置する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記ブームは、伸張可能である、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の噴霧ユニットは、前記ウイングとは別の第2のウイング内に収容され、かつ/または前記ウイングとは別の第2のウイングに取り付けられ、前記第2のウイングは、前記ウイングからの気流を使用することによって前記複数の噴霧ユニットからの液体を霧化させるように構成されている、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のウイングは、前記ウイングの平面よりも下方に位置する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のウイングの少なくとも1つの平面は、前記ウイングの少なくとも1つの平面に実質的に平行に位置する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記UAVは、少なくとも1つの第1のアクチュエータおよび少なくとも1つの第2のアクチュエータを備え、前記少なくとも1つの第1のアクチュエータは、前記第2のウイングを前記ウイングに対して垂直方向に動かすように構成され、前記少なくとも1つの第2のアクチュエータは、前記第2のウイングを前記ウイングに対して水平方向に動かすように構成され、前記UAVの処理ユニットは、前記第1および第2のアクチュエータを制御するように構成されている、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記UAVは、前記第2のウイングを前記UAVの前記前後軸に垂直な水平軸に対して少なくとも1つの回転角度だけ回転させるように構成された少なくとも1つの回転アクチュエータを備え、前記処理ユニットは、前記少なくとも1つの回転アクチュエータを制御するように構成されている、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記UAVは、地面に対する前記UAVの速度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、前記UAVに対する空気の移動速度を測定するように構成された少なくとも1つの追加のセンサと、を備え、前記UAVの前記処理ユニットは、地面に対する空気の移動方向を割り出し、かつ地面に対する空気の移動速度を割り出すように構成され、前記割り出しは、前記UAVの速度、前記UAVに対する前記空気の移動方向、および前記UAVに対する前記空気の移動速度を利用することを含み、前記UAVの前記処理ユニットは、少なくとも1つの前記第1のアクチュエータ、少なくとも1つの前記第2のアクチュエータ、および/または少なくとも1つの前記回転アクチュエータを制御するように構成され、前記制御は、前記割り出された地面に対する空気の移動方向、および前記割り出された地面に対する空気の移動速度を利用することを含む、請求項16に従属した請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の噴霧ユニットは、前記第2のウイングの上面において前記第2のウイングの前縁に近接して位置する、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のウイングのうちの前記複数の噴霧ユニットの開口と後縁との間の表面が、前記液体に対して付着性の第1のレベルを示すように構成された第1の表面と、前記第1の表面に隣接しかつ前記液体に対して付着性の第2のレベルを示すように構成された第2の表面と、を備え、前記付着性の第1のレベルは前記付着性の第2のレベルよりも低い、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のウイングは、伸張可能である、請求項13から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記作物の上方において前記ウイングの高さで前記実質的にすべての作物に噴霧するステップは、第1の帯を噴霧すること、および反対の方向に第2の帯を噴霧することを含み、未噴霧の作物の領域が前記第1の帯を前記第2の帯から隔てる、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記作物の上方において前記ウイングの高さで前記実質的にすべての作物に噴霧するステップは、前記第1の帯と前記第2の帯との間の後続の帯を噴霧することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたUAV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機(UAV)による圃場の噴霧の方法、およびこの方法を実行することができるUAVに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の一般的な背景は、作物への除草剤および農業用殺虫剤の適用である。
【0003】
現在のシングルロータまたはマルチロータUAVは、ロータからの下降気流によって作物上層部の下部への噴霧の浸透を達成することができる。この場合、噴霧帯の幅が制限され、何故ならば、噴霧帯の幅は、シングルロータUAVのロータの幅およびマルチロータUAVの最も外側のロータ間の距離によって決定されるからである。噴霧帯の幅を最大化することが重要であり、何故ならば、噴霧帯の幅がUAVの作業速度を決定付け、作業速度が高いほど同じ時間でより広い面積を噴霧できるからである。噴霧帯の幅を大きくするために、シングルロータUAVにおいてはロータの長さを大きくする必要があり、マルチロータUAVにおいては最も外側のロータ間の距離を大きくする必要がある。これは、UAVのサイズが大きくなり、輸送がより困難になり、動作により多くの電力が必要になるという欠点を有する。マルチロータUAVの場合、噴霧帯の全体にわたる作物上層部への均一な浸透を保証するために、最も外側のロータ間に追加のロータが必要となる可能性もある。
【0004】
したがって、UAVのサイズを大きくすることなく、かつUAVの所要電力を増加させることなく、作業速度を高めるために、噴霧帯の幅を増加させる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
肥料、除草剤、ならびに殺虫剤および殺菌剤などの農業用殺虫剤を含有する液体などの液体を噴霧する無人航空機で圃場を噴霧するための改善された手段を有することが、好都合であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決され、さらなる実施形態が、従属請求項に取り入れられる。以下で説明される本発明の態様および例は、無人航空機で圃場を噴霧する方法およびこの方法を実行するように構成された無人航空機にも当てはまることに留意されたい。
【0007】
第1の態様において、無人航空機(UAV)による圃場の噴霧の方法が提供される。この方法は、圃場内で作物の上方においてUAVを飛行させ、液体噴霧を作物に噴霧することを含む。UAVは、UAVの前後軸に垂直な方向に延びるウイングを備え、ウイングは、前後軸の一方側から前後軸の他方側まで延びる翼長を有する。作物に噴霧することは、ウイングの翼長の長さよりも小さい作物の上方においてウイングの高さで実質的にすべての作物に噴霧することを含む。
【0008】
ここで、ウイングという用語は、ウイングまたは翼がUAVに必要なすべての揚力をもたらすことができ、ウイングまたは翼によってもたらされる揚力がUAVの重量と釣り合うことができるという点で、翼を意味することができる。しかしながら、ウイングまたは翼は、ウイングまたは翼によってもたらされる揚力がUAVの重量よりも小さくてもよいという点で、UAVに必要な揚力のうちの一部だけをもたらしてもよい。したがって、この第2の事例においては、1組以上のロータブレードによって追加の揚力をもたらすことができる。
【0009】
一例において、液体噴霧を作物に噴霧することは、UAVの前後軸に垂直な方向に延びる複数の噴霧ユニットによって実行される。
【0010】
一例において、複数の噴霧ユニットは、ウイングの翼長に相当するスパンにわたって間隔を空けつつ位置する。
【0011】
一例において、複数の噴霧ユニットのうちの2つの噴霧ユニットは、翼長の長さに実質的に相当する距離だけ互いに離れて位置する。
【0012】
一例において、実質的にすべての作物に噴霧する高さは、翼長の長さの半分未満である。
【0013】
一例において、ウイングは伸張可能である。
【0014】
一例において、ウイングは、折り畳み機構によって伸張可能である。
【0015】
一例においては、UAVの前後軸の各側において、ウイングの第1の部分がウイングの第2の部分へと折り重ねられるように構成され、ウイングの第2の部分が、UAVの本体に取り付けられる。
【0016】
一例において、複数の噴霧ユニットは、ウイングとは別のブームに取り付けられる。
【0017】
一例において、ブームは、ウイングの平面よりも下方に位置する。
【0018】
一例において、ブームは、UAVの前方飛行方向に対してウイングの前方に位置する。
【0019】
一例において、ブームは伸張可能である。
【0020】
一例において、ウイングは、折り畳み機構によって伸張可能である。
【0021】
一例においては、UAVの前後軸の各側において、ブームの第1の部分がブームの第2の部分へと折り重ねられるように構成され、ブームの第2の部分が、UAVの本体に取り付けられる。
【0022】
一例において、複数の噴霧ユニットは、ウイングとは別の第2のウイング内に収容され、かつ/またはウイングとは別の第2のウイングに取り付けられ、第2のウイングは、ウイングからの気流を使用することによって複数の噴霧ユニットからの液体を霧化させるように構成される。
【0023】
「第2のウイング」という用語は、飛行中にウイングからの空気流を使用することによって液体を微細な液滴に霧化させることができるウイングまたは翼を指す。
【0024】
一例において、第2のウイングは、ウイングの平面よりも下方に位置する。
【0025】
一例において、第2のウイングの少なくとも1つの平面は、ウイングの少なくとも1つの平面に実質的に平行に位置する。
【0026】
一例において、UAVは、少なくとも1つの第1のアクチュエータおよび少なくとも1つの第2のアクチュエータを備え、少なくとも1つの第1のアクチュエータは、第2のウイングをウイングに対して垂直方向に動かすように構成され、少なくとも1つの第2のアクチュエータは、第2のウイングをウイングに対して水平方向に動かすように構成され、UAVの処理ユニットは、第1および第2のアクチュエータを制御するように構成される。
【0027】
このやり方で、ウイングに対する第2ウイングの位置を変更することにより、複数の噴霧ユニットからの液体の液滴サイズを連続的に調整することができる。
【0028】
一例において、UAVは、第2のウイングをUAVの前後軸に垂直な水平軸に対して少なくとも1つの回転角度だけ回転させるように構成された少なくとも1つの回転アクチュエータを備え、処理ユニットは、少なくとも1つの回転アクチュエータを制御するように構成される。
【0029】
このようにして、液滴サイズを制御するためのさらなる調整の可能性が提供される。
【0030】
一例において、UAVは、地面に対するUAVの速度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、UAVに対する空気の移動速度を測定するように構成された少なくとも1つの追加のセンサと、を備え、UAVの処理ユニットは、地面に対する空気の移動方向を割り出し、かつ地面に対する空気の移動速度を割り出すように構成され、割り出しは、UAVの速度、UAVに対する空気の移動方向、およびUAVに対する空気の移動速度を利用することを含み、UAVの処理ユニットは、少なくとも1つの第1のアクチュエータ、少なくとも1つの第2のアクチュエータ、および/または少なくとも1つの回転アクチュエータを制御するように構成され、制御は、割り出された地面に対する空気の移動方向、および割り出された地面に対する空気の移動速度を利用することを含む。
【0031】
このようにして、例えば風の状態の変化に起因するドリフトの問題を、例えばウイングに対する第2のウイングの位置を調整することによって噴霧される液体の液滴サイズを変更することにより、考慮に入れることができる。
【0032】
一例において、複数の噴霧ユニットは、第2のウイングの上面において第2のウイングの前縁に近接して位置する。
【0033】
一例において、第2のウイングのうちの複数の噴霧ユニットの開口と後縁との間の表面が、液体に対する付着性の第1のレベルを示すように構成された第1の表面と、液体に対する付着性の第2のレベルを示すように構成された第1の表面に隣接する第2の表面と、を備え、付着性の第1のレベルは付着性の第2のレベルよりも低い。
【0034】
このようにして、液体が第2のウイングの表面を横切って移動するときに、この表面とどのように相互作用するかを変化させることによって、液滴スペクトルの制御が提供される。これは、第2のウイングの表面または後縁のいずれかにおける液体の分裂の様相をさらに制御する能力をもたらす。
【0035】
一例において、第2のウイングは伸張可能である。
【0036】
一例において、第2のウイングは、折り畳み機構によって伸張可能である。
【0037】
一例においては、UAVの前後軸の各側において、第2のウイングの第1の部分が第2のウイングの第2の部分へと折り重ねられるように構成され、第2のウイングの第2の部分が、UAVの本体に取り付けられる。
【0038】
一例において、作物の上方においてウイングの高さで実質的にすべての作物に噴霧することは、第1の帯を噴霧すること、および反対の方向に第2の帯を噴霧することを含み、未噴霧の作物の領域が第1の帯を第2の帯から隔てる。
【0039】
一例において、作物の上方においてウイングの高さで実質的にすべての作物に噴霧することは、第1の帯と第2の帯との間の後続の帯を噴霧することを含む。
【0040】
第2の態様において、第1の態様の方法を実行するように構成されたUAVが提供される。
【0041】
好都合には、上記態様のいずれかによってもたらされる利点は、他の態様のすべてに等しく当てはまり、逆もまた同様である。
【0042】
上記の態様および例は、以下に記載される実施形態から明らかになり、以下に記載される実施形態を参照して説明されるであろう。
【0043】
以下で、例示的な実施形態を、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】新規な技術を使用して圃場を噴霧する方法の概略の例を左側に示す一方で、圃場を噴霧する既存のやり方を右側に示している。
【
図2】地面効果を伴わない通常の様相での噴霧の概略の例を上側に示し、地面効果を伴う本明細書に記載の新規な様相での噴霧の概略の例を下側に示している。
【
図3】地面効果がある場合および地面効果がない場合の噴霧された化学物質の作物上層部への浸透を示している。
【
図4】ウイングおよびブームが折り畳まれた状態ならびにウイングおよびブームが伸ばされた状態の例示的なUAVの概略図を示している。
【
図5】ウイングおよび第2のウイングを有する例示的なUAVの概略図を示している。
【
図6】第2のウイングをウイングに対してどのように調整できるかについての概略の例を、側面図の視点から示している。
【
図7】第2のウイングの上部における液体の霧化プロセスへのウイングからの空気流の影響の概略の例を、側面図の視点から示している。
【
図8】複数の噴霧ユニットを有する第2のウイングの概略の例を、上面図の視点から示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1~
図8は、無人航空機(UAV)による圃場の噴霧の方法、およびこの方法を実行することができるUAVに関する。一例によれば、無人航空機(UAV)による圃場の噴霧の方法は、圃場内で作物の上方においてUAVを飛行させ、液体噴霧を作物に噴霧することを含む。UAVは、UAVの前後軸に垂直な方向に延びるウイングを備え、ウイングは、前後軸の一方側から前後軸の他方側まで延びる翼長を有する。作物に噴霧することは、ウイングの翼長の長さよりも小さい作物の上方においてウイングの高さで実質的にすべての作物に噴霧することを含む。
【0046】
一例によれば、液体噴霧を作物に噴霧することは、UAVの前後軸に垂直な方向に延びる複数の噴霧ユニットによって実行される。
【0047】
一例によれば、複数の噴霧ユニットは、ウイングの翼長に相当するスパンにわたって間隔を空けつつ位置する。
【0048】
一例によれば、複数の噴霧ユニットのうちの2つの噴霧ユニットは、翼長の長さに実質的に相当する距離だけ互いに離れて位置する。
【0049】
一例によれば、実質的にすべての作物に噴霧する高さは、翼長の長さの半分未満である。
【0050】
一例において、実質的にすべての作物に噴霧する高さは、翼長の長さの3分の1未満である。
【0051】
一例において、実質的にすべての作物に噴霧する高さは、翼長の長さの4分の1未満である。
【0052】
一例によれば、ウイングは伸張可能である。
【0053】
一例によれば、ウイングは、折り畳み機構によって伸張可能である。
【0054】
一例によれば、UAVの前後軸の各側において、ウイングの第1の部分がウイングの第2の部分へと折り重ねられるように構成される。ウイングの第2の部分が、UAVの本体に取り付けられる。
【0055】
一例において、ウイングの第1および第2の部分は、関連する中心軸を有し、非展開状態において、中心軸とUAVの前後軸との間の角度は、展開された状態における中心軸とUAVの前後軸との間の角度よりも小さい。
【0056】
一例においては、展開された状態において、展開された状態のウイングの第1および第2の部分は、UAVの前後軸の両側に延在する。
【0057】
一例によれば、複数の噴霧ユニットは、ウイングとは別のブームに取り付けられる。
【0058】
一例によれば、ブームは、ウイングの平面よりも下方に位置する。
【0059】
一例によれば、ブームは、UAVの前方飛行方向に対してウイングの前方に位置する。
【0060】
一例によれば、ブームは伸張可能である。
【0061】
一例において、ブームは、折り畳み機構によって伸張可能である。
【0062】
一例においては、UAVの前後軸の各側において、ブームの第1の部分がブームの第2の部分の下方に折り曲げられるように構成され、ブームの第2の部分が、UAVの本体に取り付けられる。
【0063】
一例において、ブームの第1および第2の部分は、関連する中心軸を有し、非展開状態において、中心軸とUAVの前後軸との間の角度は、展開された状態における中心軸とUAVの前後軸との間の角度よりも小さい。
【0064】
一例においては、展開された状態において、展開された状態のブームの第1および第2の部分は、UAVの前後軸の両側に延在する。
【0065】
一例によれば、複数の噴霧ユニットは、ウイングとは別の第2のウイング内に収容され、かつ/またはウイングとは別の第2のウイングに取り付けられ、第2のウイングは、ウイングからの気流を使用することによって複数の噴霧ユニットからの液体を霧化させるように構成される。
【0066】
一例によれば、第2のウイングは、ウイングの平面よりも下方に位置する。
【0067】
一例において、第2のウイングは、UAVの前後軸に垂直な方向に延び、第2のウイングは、前後軸の一方側から前後軸の他方側まで延びる翼長を有する。
【0068】
一例において、ウイングは第2のウイングを過ぎて延びる。このようにして、第2のウイングの先端における渦に起因する的外れの噴霧を回避することができる。
【0069】
一例において、噴霧液は、噴霧液を第2のウイングに沿った所定の点へと配送するために、チューブに接続された複数の投与ポンプによって複数の噴霧ユニットへと配送される。これらの配送チューブを、ウイングの内側に収容することができる。
【0070】
一例によれば、第2のウイングの少なくとも1つの平面は、ウイングの少なくとも1つの平面に実質的に平行に位置する。
【0071】
一例によれば、UAVは、少なくとも1つの第1のアクチュエータおよび少なくとも1つの第2のアクチュエータを備え、少なくとも1つの第1のアクチュエータは、第2のウイングをウイングに対して垂直方向に動かすように構成され、少なくとも1つの第2のアクチュエータは、第2のウイングをウイングに対して水平方向に動かすように構成され、UAVの処理ユニットは、第1および第2のアクチュエータを制御するように構成される。
【0072】
一例によれば、UAVは、第2のウイングをUAVの前後軸に垂直な水平軸に対して少なくとも1つの回転角度だけ回転させるように構成された少なくとも1つの回転アクチュエータを備え、処理ユニットは、少なくとも1つの回転アクチュエータを制御するように構成される。
【0073】
一例によれば、UAVは、地面に対するUAVの速度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、UAVに対する空気の移動速度を測定するように構成された少なくとも1つの追加のセンサと、を備え、UAVの処理ユニットは、地面に対する空気の移動方向を割り出し、かつ地面に対する空気の移動速度を割り出すように構成され、割り出しは、UAVの速度、UAVに対する空気の移動方向、およびUAVに対する空気の移動速度を利用することを含み、UAVの処理ユニットは、少なくとも1つの第1のアクチュエータ、少なくとも1つの第2のアクチュエータ、および/または少なくとも1つの回転アクチュエータを制御するように構成され、制御は、割り出された地面に対する空気の移動方向、および割り出された地面に対する空気の移動速度を利用することを含む。
【0074】
一例において、地面に対するUAVの速度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサは、GPSシステムを備える。
【0075】
一例において、地面に対するUAVの速度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサは、レーザの反射に基づくシステムを備える。
【0076】
一例において、地面に対するUAVの速度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサは、UAVの送信にリンクしたシステムを備える。
【0077】
一例において、UAVに対する空気の移動方向を測定するように構成された少なくとも1つのセンサは、風向計を備える。
【0078】
一例において、UAVに対する空気の移動速度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサは、風速計を備える。
【0079】
一例によれば、複数の噴霧ユニットは、第2のウイングの上面において第2のウイングの前縁に近接して位置する。
【0080】
一例によれば、第2のウイングのうちの複数の噴霧ユニットの開口と後縁との間の表面が、液体に対する付着性の第1のレベルを示すように構成された第1の表面と、液体に対する付着性の第2のレベルを示すように構成された第1の表面に隣接する第2の表面と、を備え、付着性の第1のレベルは付着性の第2のレベルよりも低い。
【0081】
一例においては、第2のウイングのうちの複数の噴霧ユニットの開口と後縁との間の表面が、3つ以上の表面を備え、付着性のレベルが、第2のウイングの後縁に向かって進行する隣り合う表面について、付着性の第1のレベルと第2のレベルとの間で交互になる。
【0082】
一例において、付着性の第1のレベルは、疎水性表面によってもたらされる。
【0083】
一例において、付着性の第2のレベルは、親水性表面によってもたらされる。
【0084】
一例において、付着性の第1のレベルは、意図的にテクスチャ付けられた表面によってもたらされる。
【0085】
一例において、付着性の第2のレベルは、意図的にテクスチャ付けられた表面によってもたらされる。
【0086】
一例において、第2のウイングの後縁は、歯および/またはスパイクを備える。
【0087】
一例において、第2のウイングの後縁は、疎水性の表面を備える。
【0088】
一例において、第2のウイングの後縁は、意図的にテクスチャ付けられた表面を備える。
【0089】
一例において、第2のウイングのうちの複数の噴霧ユニットの開口と後縁との間の表面(好ましくは、第1の表面のみ)は、パターン化され、かつ/または構造化された表面、好ましくは液体の霧化方向の溝を備える。これにより、液体への付着性の第2のレベルを有する表面における液体の分裂を促進することができる。
【0090】
一例によれば、第2のウイングは伸張可能である。
【0091】
一例において、第2のウイングは、折り畳み機構によって伸張可能である。
【0092】
一例においては、UAVの前後軸の各側において、第2のウイングの第1の部分が第2のウイングの第2の部分へと折り重ねられるように構成され、第2のウイングの第2の部分が、UAVの本体に取り付けられる。
【0093】
一例において、第2のウイングの第1および第2の部分は、関連する中心軸を有し、非展開状態において、中心軸とUAVの前後軸との間の角度は、展開された状態における中心軸とUAVの前後軸との間の角度よりも小さい。
【0094】
一例においては、展開された状態において、展開された状態の第2のウイングの第1および第2の部分は、UAVの前後軸の両側に延在する。
【0095】
一例によれば、作物の上方においてウイングの高さで実質的にすべての作物に噴霧することは、第1の帯を噴霧すること、および反対の方向に第2の帯を噴霧することを含み、未噴霧の作物の領域が第1の帯を第2の帯から隔てる。
【0096】
一例において、未噴霧の作物の領域は、帯の幅にほぼ等しい幅を有する。
【0097】
一例によれば、作物の上方においてウイングの高さで実質的にすべての作物に噴霧することは、第1の帯と第2の帯との間の後続の帯を噴霧することを含む。
【0098】
上記の説明から理解されるように、UAVを上記の方法を実行するように構成することができる。
【0099】
このように、特定の実施形態においては、伸長可能な翼(例えば、折り畳みウイング)と、噴霧適用装置またはユニット(例えば、ノズルまたは回転ディスク)を含む伸長可能なブームと、を備えるUAVが提供される。UAVは、ウイングの幅よりも小さい高さで作物/地面の近くを飛行するように構成され、したがってUAVは、ロシアおよび米国で開発された軍用航空機によって利用されているいわゆる「地面効果」を利用する。UAVは、作物/地面の上方の低い高さにおいて安全に飛行するために、レーザベースのセンサを利用することができる前方視高さセンサを含む高さセンサ、GPS、加速度計、などを利用する。地面に充分に近いとき、翼の直下の空気は圧縮され、したがって飛行中に、翼は、作物上層部を貫く高い圧力の領域を下方に生成し、これを利用して噴霧を上層部へと運ぶことができる。これが、地面効果によらずに動作している既存のシステムと比べて、
図2に概略的に示されており、この既存のシステムは、翼またはウイングを地面効果が生じない作物の上方の高さに位置させて動作していることが示されている。これは、第1には、
図3に示されるように作物上層部への噴霧の浸透を促進し、第2には、揚抗比を大きくする点で有利である。したがって、浸透の促進は、より効果的な噴霧をもたらし、揚抗比の増大は、UAVが飛行を続けるために必要な電力を減少させると同時に、運ぶことができる噴霧液の最大積載量を増加させる。さらに、地面までの距離が減少するにつれて、圧縮は増大し、結果として、これらの利点が増大する。利点は、地面効果高さで飛行する新規なUAVを左側に示し、地面効果高さの外側で飛行する既存のUAVを右側に示している
図1に概略的に示されるように、圧縮によってより広い噴霧帯をもたらすことができ、結果として噴霧の作業速度がより高くなることである。既存のUAVは、地面効果高さで飛行する新規なUAVと同様に、翼またはウイングを有することができるが、地面効果が当てはまらない高さで飛行し、あるいはロータブレードのセットからの垂直揚力を有するUAVであってよく、やはり地面効果ゾーンの外側の高さで動作する。
【0100】
翼および噴霧ブームをドローンの下方に取り付けて、翼の全体にわたる連続的な液滴の生成をもたらすことができることに、注意すべきである。さらに、翼は、翼の先端における渦に起因する的外れの噴霧を最小限にするために、噴霧ブームよりもさらに延びてよい。
【0101】
UAVの輸送を容易にし、オペレータによる取り扱いを容易にすべく、UAVのサイズを小さく保つために、伸長可能な翼および噴霧ブーム(または、伸長可能な第2のウイング)が設けられ、UAVの全体サイズを増加させることなく噴霧帯の幅を大幅に広げることができる。これが、
図4に概略的に示されている。利点は、高さ/翼長の比が小さくなるにつれて地面効果が大きくなることであり、したがって伸長可能な噴霧ブーム(または、伸長可能な第2のウイング)および伸長可能なウイングを有するUAVにおいては、地面効果が大きくなる。地面効果は、作物/地面の上方のUAVの高さが翼長の半分未満である場合にとくに効果的になり、これが作物の噴霧のための好ましい動作高さであるが、噴霧の浸透の改善および所要電力の低減という優れた効果は、翼長に等しい噴霧時の飛行高さまで当てはまる。
【0102】
特定の実施形態におけるUAVは、上層部への気流を制御して、噴霧の一定の取り込みを維持するとともに、地面効果から生じる低い失速速度で安全に飛行できるように、能動的な空気力学、補助翼、フラップ、前縁スラットを利用する。
【0103】
特定の実施形態におけるUAVは、空気に対する空気の速度および方向を測定し、地面に対する空気の速度および方向も測定するための2つのセンサを有する。このようにして、適用の要件がおおむね一定の移動速度を要求するとき、作物の上方の高さの適切な制御によって、風に対する飛行方向とは無関係に上層部への浸透を常におおむね一定に保つことができ、作物の上方の高さが揚力および浸透を変化させ、必要に応じて、UAVが一定の飛行速度を維持しながら地面効果ゾーン内で高さを変化させることができるように、必要とされる揚抗比を維持するために、上述の能動的空気力学を利用することができる。したがって、一例として、相対風速は大きく変化する可能性がある(例えば、5m/s[18km/h]の風速は、20km/h[5.6m/s]で風上に飛行するUAVの場合に、噴霧雲にとっての相対風速が38km/h[10.6m/s]である一方で、風下に飛行する場合には、噴霧雲にとっての相対風速が2km/h[0.6m/s]であることを意味する。上層部への浸透をおおむね一定に保つべきである場合、上述したように、揚力および作物への浸透を、地面効果からの必要なダウンフォースを与えるために翼の空気力学を調整することによって、用途の要件がおおむね一定の移動速度を要求する可能性があるため、飛行高さの変化によって制御することができる。
【0104】
特定の高さよりも下方を飛行するときに地面効果を生じさせる翼またはウイングを有する他に、UAVは、垂直離着陸(VTOL)、短距離離着陸(STOL)、およびホバリングのための上向きのいくつかのロータブレードを有することもできる。これらのロータを、水平飛行のために前方を向くように使用することもでき、あるいは別のロータを前方飛行のために使用することもできる。したがって、一例においては、ロータが回転して、VTOL、STOL、ホバリング、および水平飛行の両方を可能にすることができる。
【0105】
飛行中に、地面効果は、高さが翼長よりも小さいときに渦を圧縮する。したがって、作物上層部の上方の高さが低くなるほど効果が高まる。さらに、この効果は、翼の長さおよび幅の増加につれても高まる。利点は、高さ/翼長が小さくなるにつれて地面効果が大きくなることであり、したがって伸長可能な噴霧ブームおよび伸長可能なウイングを有するUAVにおいては、地面効果が大きくなり、作業速度が高くなる。翼長4mの翼は、翼長2mの翼の2倍の作業速度を有し、翼長8mの翼は、翼長2mの翼の4倍の作業速度を有する。
【0106】
長い翼長のさらなる利点は、隣接する噴霧帯の間の重複領域の数が減少することである。これは、噴霧帯が完全に整列していない場合に重複領域が過剰投与または投与不足のリスクを有するため、有利である。2mの翼長は、4mの翼長と比べて重複領域の数が2倍であり、8mの翼長と比べて重複領域の数が4倍である。これが、
図1に概略的に示されており、ここで説明されているドローンが左側に示されている一方で、圃場の噴霧に使用されている通常のドローンが右側に示されている。
【0107】
地面効果は、上層部への噴霧の浸透に関して2つの利点を有し、第1に、気流の乱れが作物上層部を開放する植物の移動を引き起こし、第2に、翼の下方の正圧が噴霧を上層部へと押し込む。噴霧による上層部への浸透は、作物への1個または複数の有効成分の均一な分布にとって重要である。これが
図3に示されている。
【0108】
翼のさらなる利点は、飛行速度が増すにつれて地面効果が大きくなることであり、これも作業速度の向上に等しく、したがって適用の効率が改善され、所与の時間に処理することができる面積が増す。これは、時速20kmを超え、とりわけ時速40kmを超える飛行速度においてとくに効果的である。この点に関し、時速40kmでの作業速度は時速20kmでの作業速度の2倍であり、時速80kmでの作業速度は時速20kmでの作業速度の4倍である。
【0109】
翼長および飛行速度の利点を組み合わせると、時速80kmの速度で飛行する翼長8mの翼(および、8mの噴霧帯の幅)を備えるUAVは、帯の幅が4mであり、飛行速度が時速20kmであるドローンの作業速度の8倍の作業速度を有する。
【0110】
地面効果のまたさらなる利点は、飛行高さが減少すると、地面効果が増加して飛行高さの増加が引き起こされ、飛行高さが増加すると、地面効果が減少して飛行高さの減少が引き起こされるため、飛行高さおよび飛行角度均一性(すなわち、水平度)の両方が自己補正されることである。
【0111】
翼の利点は、飛行中に揚力をもたらし、UAVがより遠くへとより長時間飛行し、より大きな最大積載量を運ぶことを可能にすることである。これは、噴霧液の再充てんおよびバッテリの交換のためのステーションへのUAVの期間の回数を減らすため、作業速度に関しても有利である。30リットルの最大積載量および60分の飛行時間を有する翼を備えるUAVは、同じ適用面積について、10リットルの最大積載量および20分のバッテリ寿命を有するドローンと比べ、充電および再充てんの停止の回数が1/3で済む。
【0112】
一例において、翼および噴霧ブームは、翼の全体にわたる連続的な液滴の生成をもたらすように、ドローンの下方に取り付けられる。翼の先端の渦に起因する的外れの噴霧を最小限に抑え、噴霧帯の縁における地上効果の連続を保証するために、翼が噴霧ブームよりも延びていることが、有益となり得る。
【0113】
広い翼は、飛行中に圃場内の障害物と衝突するリスクがより大きい。このリスクを最小限に抑えるために、一実施形態において、UAVは、障害物の位置を識別し、回避行動をとるためのステレオカメラおよび処理ユニットを有する。広い翼は、とりわけ急な突風の場合や、地面からの乱気流の場合に、UAVの飛行高さに関してより高い安定性を有する。このより高い安定性は、UAVがドリフトに起因する損失が低減される地面のより近くを飛行することを可能にし、作物上層部への噴霧の地面効果による浸透が強化されるため、有利である。これは、上層部の上部からの飛行高さが1.5m未満であるときにとくに効果的であり、飛行高さが1m未満であるときにとりわけ効果的である。
【0114】
翼が発生させる揚力を利用して、バッテリ電力および時間の両方に関して効率的な旋回をもたらすように飛行パターンを最適化することができる。これが、
図1に示されており、噴霧場の画像および適切なアルゴリズムから計算可能である。図(a)が、翼を備えるUAVの最適化された飛行パターンを示している一方で、図(b)が、翼を備えないドローンの最適化された飛行計画を示している。図は、より大きな翼長によって必要な通過の回数および重複領域の数が少なくなることも示している。このための処理ユニットは、UAV上にあっても、高速データ接続を有する基地局にあってもよい。これを、さらに、風速および風向の変化を考慮に入れるために飛行中に再計算することができる。
【0115】
対地速度および方向ならびに風速および方向を測定する2つの速度センサを連続的に監視することができ、ドリフトのリスクを伴う地面に対する高い風速および方向が検出された場合、処理ユニットは、UAVに対して飛行および噴霧パラメータを調整して的外れによる損失を低減するように指示することができる。調整可能なパラメータの例として、飛行経路、飛行高さ、飛行速度、翼の空気力学、噴霧液滴サイズ、および噴霧の停止を含む噴霧量が挙げられる。
【0116】
翼長が大きいと、作物上層部の密度がばらついている可能性が高く、ターゲット領域への噴霧の適用を最適化するために、デジタル画像化を使用して、上層部の密度、ならびに雑草、害虫または真菌疾の位置、密度、および種類などの他のパラメータに関するデータを提供することができ、各々の噴霧装置(ノズル、回転ディスク、または霧化用ウイング)からの噴霧を、必要に応じて量(増加、減少、または停止)および液滴サイズに関して調整することができる。デジタル画像化を、UAVに取り付けられた1つ以上のカメラから直接得ることができ、あるいはデジタル画像化に専用の別のUAVから得ることができる。1つ以上のカメラは、ターゲットの識別を助けるためにマルチスペクトルであってよい。
【0117】
図5は、ウイングの下方にブーム噴霧器の代わりに第2のウイングを備えたUAVの一例を、側面図の視点から示している。
図6は、第2のウイングがウイングの下方に位置しており、垂直位置(y)および水平位置(x)ならびに角度(α)を連続的に調整して、液体の霧化プロセスを最適化し、意図された液滴サイズスペクトルを有する噴霧液を生成することができることを示している。例えば、垂直方向の隔たり(y)を減少させることによって、ウイングと第2のウイングとの間の気流速度を増加させて、霧化による液滴サイズを小さくすることができる。反対に、隔たり(y)を増加させることによって液滴サイズを大きくすることができる。
図7は、第2のウイングの上部における液体の霧化プロセス、ならびにウイングおよび第2のウイングの下向きの空気流からの吹き下ろしの概略の例を、側面図の視点から示している。
図8は、複数の噴霧ユニットを有する第2のウイングの概略の例を、上面図の視点から示している。親水性表面が、噴霧液の高い付着性を有し、(
図8の右側の噴霧ユニットについて矢印で示されているように)表面上での噴霧液の広がりを促進する一方で、疎水性表面は、表面への噴霧液の付着性が低く、広がりを抑制する。結果として、噴霧された液体は、疎水性表面に衝突するときに液滴に分裂する。これが、1つの噴霧ユニットについて
図8に概略的に示されている。
【0118】
本発明の実施形態が、異なる主題に関連して説明されることに留意されたい。とくには、いくつかの実施形態は、方法タイプの請求項に関連して説明される一方で、他の実施形態は、装置タイプの請求項に関連して説明される。しかしながら、当業者であれば、以上の説明および以下の説明から、とくに通知されない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴間の任意の組み合わせも本出願によって開示されていると考えられることを、理解できるであろう。しかしながら、すべての特徴を組み合わせて、特徴の単純な合計を超える相乗効果をもたらすことができる。
【0119】
本発明を、図面および以上の説明において詳細に例示および説明したが、そのような例示および説明は、例示的または典型的であり、限定的ではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形を、当業者であれば、特許請求される発明の実施において、図面、開示、および従属請求項の研究から、理解および達成することができる。
【0120】
特許請求の範囲において、「を含む(comprising)」という語は、他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、特許請求の範囲において別々に言及されたいくつかの項目の機能を果たすことができる。単に特定の手段が互いに異なる従属請求項において別々に言及されているというだけでは、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないということにはならない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】