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特表2022-544077クリプトコッカス感染症を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】クリプトコッカス感染症を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7048 20060101AFI20221007BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20221007BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20221007BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20221007BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221007BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20221007BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221007BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221007BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P31/10
A61K31/505
A61K31/4196
A61K47/24
A61K47/16
A61K47/22
A61K47/04
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506608
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 US2020046114
(87)【国際公開番号】W WO2021030553
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/916,482
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/962,427
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/886,118
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/011,091
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516026321
【氏名又は名称】マティナス バイオファーマ ナノテクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルー ルーイン
(72)【発明者】
【氏名】マトコビッツ テレーザ
(72)【発明者】
【氏名】マンニーノ ラファエル ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB01
4C076CC31
4C076DD23
4C076DD26
4C076DD30
4C076DD37
4C076DD41
4C076DD49
4C076DD59
4C076DD61
4C076DD63
4C076EE32
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC60
4C086EA15
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB32
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、Cryptococcus spp.を含む、対象における真菌感染症を治療または予防する方法であって、導入治療段階と強化治療段階を含み、導入治療段階が:アンホテリシンB(cAMB)及び5-フルシトシンまたはアゾールを対象に投与することを含み、cAMB及び5-フルシトシンまたはアゾールは、粘膜的に投与される、方法を対象とする。cAMB製剤もまた開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cryptococcus spp.を含む対象における真菌感染症を治療または予防する方法であって、前記方法が導入治療段階及び強化治療段階を含み、
前記導入治療段階が:
渦巻状物化されたアンホテリシンB(cAMB)及び5-フルシトシンまたはアゾールを前記対象に投与することを含み、前記cAMB及び前記5-フルシトシンまたは前記アゾールが粘膜投与される、前記方法。
【請求項2】
前記導入治療段階が、前記5-フルシトシンを前記対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粘膜投与が経口投与である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記導入治療段階中に、前記対象へのcAMBの前記経口投与が、cAMBの分割用量を経口投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記導入治療段階中に前記対象に投与される前記cAMBの1日累積投与量が1日当たり少なくとも1グラムである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記導入治療段階中に前記対象に投与される前記cAMBの1日累積投与量が1日当たり1.5グラムである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記導入治療段階中に前記対象に投与される前記cAMBの1日累積投与量が1日当たり2グラムである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記導入治療段階が14日間であり、前記cAMBが、前記導入治療段階の1日目~5日目、5日目~14日目、または3日目~14日目に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記導入治療段階が14日間であり、前記cAMBが1日目~14日目に前記対象に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記導入治療段階が、前記対象に、渦巻状物化されていないアンホテリシンBを静脈内投与することをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記導入治療段階が14日間であり、前記静脈内投与された渦巻状物化されていないアンホテリシンBが、前記14日間の導入治療段階の1日目~2日目、1日目~5日目、または6日目~14日目に静脈内投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記5-フルシトシンが、少なくとも2週間、前記導入治療段階で前記対象に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記導入治療段階が、前記対象に100mg/kg/日の5-フルシトシンを投与することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記強化治療段階が、cAMB及びアゾールを前記対象に経口投与することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アゾールがフルコナゾールである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記強化治療段階が10週間であり、前記cAMBが前記10週間の強化治療段階のうちの4週間の前記強化治療段階中に前記対象に経口投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記強化治療段階中に、分割用量のcAMBが前記対象に経口投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
フルコナゾールが、少なくとも10週間の前記強化治療段階において前記対象に経口投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
フルコナゾールが前記強化治療段階中、前記対象に経口投与され、前記強化治療段階での前記フルコナゾールの投与量が約800ミリグラム/日である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
cAMBが前記強化治療段階中に経口投与され、前記強化治療段階での前記cAMBの投与量が1日当たり少なくとも1.5グラムである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象がクリプトコッカス髄膜炎に罹患している、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、維持段階をさらに含み、前記維持段階が、前記対象にフルコナゾールを経口投与することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記フルコナゾールが、前記維持段階中、約200mg/日の投与量で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記Cryptococcus spp.が、Cryptococcus neoformansである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記Cryptococcus spp.が、Cryptococcus gattiiである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、ヒトである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、HIV/AIDS、リンパ腫、肝硬変を有するか、または臓器移植を受けている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、HIVに感染した対象である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が感染した前記Cryptococcus spp.が、フルコナゾールに対する感受性または耐性の低下を示す、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
渦巻状物化されたアンホテリシンBを含む組成物であって、前記渦巻状物化されたアンホテリシンBが、アンホテリシンB、リン脂質、EDTA、水、ビタミンE、塩化カルシウム、メチルセルロース、メチルパラベン、プロプリパラベン、水酸化ナトリウム、脱水アルコール、一塩基性リン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、アセスルファムカリウム、及び任意選択での香料を含む、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年8月13日出願の米国仮出願番号62/886,118;2019年10月17日出願の米国仮出願番号62/916,482;2020年1月17日出願の米国仮出願番号62/962,427;2020年4月16日出願の米国仮出願番号63/011,091の出願日の権益を主張し、それに依存し、それぞれの出願の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の利害に関する声明
本発明は、国立衛生研究所により授与された助成金番号R01 NS110519の下、政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本出願は、概して、クリプトコッカス属菌感染症、特にクリプトコッカス髄膜炎を治療または予防する方法であって、とりわけ、アンホテリシンBの粘膜投与製剤を使用する方法に関する。本出願はまた、経粘膜投与のためのアンホテリシンB製剤に関する。
【背景技術】
【0004】
クリプトコッカス症は日和見真菌感染症であり、例えばクリプトコッカス中枢神経系(CNS)感染症により、年間推定100万人の症例と625,000人の死亡を引き起こしている。HIV関連のクリプトコッカス髄膜炎による早期死亡率は特に高く、主に効果的な抗真菌剤の費用と毒性が原因である。
【0005】
クリプトコッカス患者の脳脊髄液(CSF)を迅速かつ一貫して滅菌する抗真菌剤、アンホテリシンBの能力は、この抗真菌剤が任意のクリプトコッカス症治療戦略の中心であるべきであることを示唆している。しかしながら、アンホテリシンB治療に関連する課題は、クリプトコッカス髄膜炎が最も蔓延している資源が限られた地域において、アンホテリシンBの使用がしばしば制限されることである。例えば、アンホテリシンBは現在静脈内投与されており、それは、入院、静脈内輸液及び補助電解質の共投与が必要である。さらに、静脈内投与されたアンホテリシンBは有毒である可能性があり、迅速で信頼性の高い実験室モニタリングが必要である。その結果、低中所得国の多くの治療センターでは、クリプトコッカス感染症の治療にアンホテリシンBを使用することが難しいと感じることがよくある。したがって、毒性のリスクの増加に関連する、費用のかかる長期の静脈内投薬への依存を軽減する、より効果的で毒性の少ない抗真菌療法を特定することが必要である。
【発明の概要】
【0006】
クリプトコッカス感染症を治療または予防するための本発明の方法は、そのような疾患を治療するための他の方法と比較して驚くべき利点を提供する。例えば、アンホテリシンBなどの抗真菌剤の経口投与を含む本発明の方法は、静脈内投与されたアンホテリシンBなどの抗真菌剤を用いるものよりも低い毒性である。したがって、本発明の方法は、アンホテリシンBなどの抗真菌剤を静脈内投与する必要性を低減または排除することができ、したがって、場合によっては、入院や患者の綿密なモニタリングの必要性を排除する。さらに、アンホテリシンBに伝統的に関連する毒性がなければ、より長い経過が許容される可能性があり、クリプトコッカス症患者の抗レトロウイルス療法の併発症である再発性疾患及び免疫再構築炎症症候群(IRIS)の発生率を低下させる可能性がある。さらに、本発明の方法はまた、フルコナゾールの非存在下で使用され得、これは、フルコナゾールに対する感受性または耐性を獲得した対象に治療を提供する。
【0007】
より詳細には、本開示は、Cryptococcus spp.を含む、対象における真菌感染症を治療または予防する方法であって、導入治療段階と強化治療段階を含み、導入治療段階が:渦巻状物化されたアンホテリシンB(cAMB)及び5-フルシトシン、またはアゾール、典型的には5-フルシトシンを対象に投与することを含み、cAMB及び5-フルシトシンまたはアゾールは、粘膜的に、例えば、経口的または鼻腔内的に投与される、方法を対象とする。強化治療段階は、対象に、フルコナゾールなどのアゾールと組み合わせて、対象に渦巻状物化されたアンホテリシンBを経口投与することを含むことができる。
【0008】
本開示はまた、渦巻状物化されたアンホテリシンBを含む組成物を提供し、渦巻状物化されたアンホテリシンBは、アンホテリシンB、リン脂質、EDTA、水、ビタミンE、塩化カルシウム、メチルセルロース、メチルパラベン、プロプリパラベン、水酸化ナトリウム、脱水アルコール、一塩基性リン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、アセスルファムカリウム、及び任意選択での香料を含む。
【0009】
添付の図面は、この明細書の一部に組み込まれ、これを構成し、特定の実施形態を図示しており、この記載された説明と併せて、本明細書に開示される組成物及び方法の特定の原理を説明する役目を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】詳細な説明に記載されている渦巻状物の概略図である。挿入図は、リン脂質二重層(円と尾部)、多価カチオン(影のない円)、及び渦巻状物内で保護された例示的なカーゴ部分(斜線の円)を含む、渦巻状物の脂質層を示す。
図2】渦巻状物及びそのカーゴを貪食するマクロファージの概略図を示す。挿入図は、詳細な説明で説明されているように、渦巻状物の開口部とマクロファージ内のカーゴの放出を示す。
図3】詳細な説明に記載されているアンホテリシンBの構造図を示す。
図4】詳細な説明に記載されているように、アンホテリシンB-渦巻状物を作製するための例示的な戦略の概略図である。
図5】詳細な説明に記載されているようなジオード渦巻状物の例示的な調製を示す。
図6】実施例に記載されているような、経口投与されたcAMBの安全性及び耐容性を評価するための段階I設計を示す。
図7】実施例に記載されているような、経口投与されたcAMBの有効性を評価するための段階II設計を示す。
図8】実施例に記載されている様々な時点での平均cAMB血漿濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、様々な例示的な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示し、以下の詳細な説明で説明する。以下の詳細な説明は、読者に本開示の特定の実施形態、特徴、及び態様の詳細をより完全に理解させるために提供されており、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0012】
本開示は、Cryptococcus spp.を含む、対象における真菌感染症を治療または予防する方法であって、導入治療段階と強化治療段階を含み、導入治療段階が:アンホテリシンBを対象に投与することと、5-フルシトシンまたはアゾールを対象に投与することと、を含み、アンホテリシンBは、渦巻状物化されたアンホテリシンB(cAMB)を含み、cAMB及び5-フルシトシンまたはアゾールは、粘膜的に、例えば、経口的または鼻腔内に投与される、方法を対象とする。
【0013】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、または任意の他の哺乳動物を含むがこれらに限定されない任意の動物を指す。一実施形態では、対象は霊長類である。好ましくは、対象はヒトである。
【0014】
本明細書で使用される場合、「Cryptococcus spp.」という用語は、担子菌にカプセル化された酵母であるクリプトコッカス属に属する真菌の種を指す。そのような感染症は、当該技術分野で知られている任意の方法によって、例えば、対象がクリプトコッカス種抗原に対して陽性であるかどうかを決定することによって、対象において検出することができる。このような試験を実行するためのキットは、例えばIMMY Inc.(Norman,OK)から市販される。
【0015】
いくつかの実施形態では、Cryptococcus spp.は、Cryptococcus neoformansで構成される。C. neoformansは元々、莢膜凝集反応に基づいて血清型A、B、C、D、及びADに分類されていた。最近では、C. neoformansは2つの品種:C. neoformans変種grubii(以前のグループA)及びC. neoformans変種neoformans(以前のグループD)に分けられている。C. neoformansは、世界のほとんどの温帯地域で見られる遍在性の病原体であるが、腐敗している有機物及び多くの土壌タイプ、特に動物及び鳥の糞に富む土壌タイプで一般的に見られる。
【0016】
いくつかの実施形態では、Cryptococcus spp.は、Cryptococcus gattii(以前のグループB及びC)で構成されている。C. gattiiは、VGI、VGII、VGIII、及びVGIVを含む4つの分子タイプに分類できる。タイプVGIIは、VGIIa、VGIIb、及びVGIIcサブタイプにさらに分類できる。C. gattiiは、カナバニン-グリシン-ブロモチモール(CGB)寒天上に単離物を播種することにより、C. neoformansから容易に区別することができる。この生物の存在下でCGB寒天は青色に変わる。C. gattiiは、伝統的に熱帯及び亜熱帯の地理的地域で見られる。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示のCryptococcus spp.、例えばC. neoformansまたはC. gattii、またはより典型的にC. neoformansは、免疫適格性の対象に感染する。本明細書で使用される場合、免疫適格性の対象は、抗原への曝露の後に正常な免疫応答を生成する能力を有する対象、典型的には哺乳動物対象、例えば、ヒト対象である。しかしながら、より典型的には、本開示のCryptococcus spp.は、免疫無防備状態の対象に感染する。免疫無防備状態の対象としては、HIV/AIDS、リンパ腫、肝硬変を有する対象、または臓器移植レシピエント、または糖質コルチコイド、細胞毒性化学療法及び/またはTNF-α阻害剤などの免疫抑制剤を投与されている対象、典型的にはヒト対象などの哺乳動物対象が挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、真菌感染症は、対象の皮膚、肺、前立腺、骨、及び/または中枢神経系(CNS)を含む。典型的には、本発明の方法は、クリプトコッカス髄膜脳炎またはクリプトコッカス髄膜炎などのCNSの感染症を治療するために使用される。
【0019】
クリプトコッカス髄膜脳炎及びクリプトコッカス髄膜炎は、適切な治療なしでは常に致命的である。死は、症状の発症後2週間から数年、通常は18週間で発生する可能性がある。クリプトコッカス髄膜炎及び髄膜脳炎の最も一般的な症状は、頭痛及び性格の変化、錯乱、嗜眠、及び昏睡を含む精神状態の変化である。最も典型的には、本発明の方法は、クリプトコッカス髄膜炎を治療または予防するために使用される。
【0020】
導入
クリプトコッカス属菌感染症を治療または予防するために使用される本開示の方法は、典型的には、導入治療段階を含む。本明細書で使用される場合、「導入治療段階」は、対象における真菌負荷を軽減する治療の初期段階を指す。典型的には、導入治療段階は、少なくとも2週間など、または少なくとも4週間以上などの少なくとも1週間の期間である。より典型的には、導入期間は、少なくとも1~2週間など、1~4週間の期間である。最も典型的には、導入期間は2週間の期間である。
【0021】
いくつかの実施形態では、真菌負荷の減少は、脳脊髄液(CSF)からの真菌クリアランスの定量的速度を評価することによって決定される。初期殺菌活性(EFA)としても知られるこの定量的クリアランス速度は、一般に、治療の最初の数週間は対数的である。したがって、クリアランス(EFA)は、測定単位としての治療の1日当たりのCSFのミリリットル(mL)当たりのlog10コロニー形成単位(CFU)の線形回帰によって推定できる(つまり、log10CFU/mL CSF/日の変化)。EFAを評価するための方法は当該技術分野で知られており、例えば、Nussbaum et al.,Clin. Infect. Dis. 2010;50: 338-44に記載され、その全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明の導入治療段階は、少なくとも-0.10log10CFU/mL/日、例えば、少なくとも-0.20log10CFU/mL/日、例えば、少なくとも-0.40log10CFU/mL/日、または例えば、少なくとも-0.60log10CFU/mL/日、典型的には少なくとも-0.20log10CFU/mL/日のEFAをもたらす。いくつかの実施形態では、本発明の導入段階のEFAは、-0.20log10CFU/mL/日~-0.60log10CFU/mL/日、例えば、-0.20log10CFU/mL/日~-0.29log10CFU/mL/日の範囲である。
【0023】
理論に縛られることなく、導入療法中のEFAとクリプトコッカス髄膜炎感染症などのクリプトコッカス属菌感染症後の10週間の生存期間との間に相関があると考えられている。-0.20log10CFU/mL/日よりも速い速度でクリアランス値をもたらし得る本発明の方法はまた、典型的には、他の治療法と比較して、クリプトコッカス髄膜炎などのクリプトコッカス属菌感染症後の生存期間が向上する。しかしながら、EFAが約-0.30log10CFU/mL/日を超えると、生存期間の明らかな増加はあまり見られない可能性がある。例えば、-.20log10CFU/mlCSF/日よりも遅いクリアランス速度のEFAは、典型的には、10週間の高い死亡率(>50%)と相関し、一方、-0.30log10CFU/mL/日よりも速いクリアランス速度のEFAは、典型的には、同様の死亡率、すなわち、30~40%に相関する。したがって、-0.20 log10CFU/mL/日~-0.29log10CFU/mL/日のEFAをもたらし得る本発明の方法は、より速い真菌クリアランス速度をもたらす可能性のある方法に匹敵する生存期間をもたらし得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、導入治療段階は、粘膜的に、例えば、対象に渦巻状物化されたアンホテリシンB(cAMB)を経口投与することを含む。アンホテリシンBなどの抗真菌剤を含む化合物を渦巻状物化する方法は、当該技術分野で知られており、本明細書に記載されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、cAMBは、約7mg/kg/日~約29mg/kg/日、例えば約14mg/kg/日~約29mg/kg/日の範囲の量で対象に投与される。典型的には、対象は、合計で1日当たり約0.5グラム~約2グラムのcAMB、例えば1日当たり約1グラム、例えば1日当たり約1.5グラム、より典型的には1日当たり約2グラムを受け取るヒト対象である。cAMBの1日用量は、単回投与または24時間にわたって分けられた用量で投与することができる。典型的には、cAMBは分割用量で投与され、各分割用量は≦400ミリグラム(mg)、例えば≦375mg、例えば≦300mg、例えば≦333mg、例えば≦286mg、例えば<250mg、例えば≦200mg、または例えば≦167mgである。例えば、cAMBの各分割用量は、約150mg~約400mg、例えば、約167mg~約400mg、例えば、約167mg~約375mg、または例えば約200mg~約300mgの範囲であり得る。
【0026】
導入治療段階中のいくつかの特定の実施形態では、クリプトコッカス髄膜炎などのクリプトコッカス種感染症に罹患しているヒト対象などの対象は、1日当たり4回に分けられたそれぞれ約250mgのcAMBを、4時間ごとに経口投与され、約12時間にわたって1グラムの1日総累積用量を達成する。他の実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり5回に分けられたそれぞれ約200mgのcAMBを、3~4時間ごとに経口投与され、約12~16時間にわたって約1グラムの1日総累積用量を達成する。いくつかの実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり6回に分けられたそれぞれ約167mgのcAMBを、2~3時間ごとに経口投与され、約10~15時間にわたって約1グラムの1日総累積用量を達成する。
【0027】
より典型的には、導入治療段階中に、ヒト対象などの対象は、1日当たり4回に分けられたそれぞれ約375mgのcAMBを、3~4時間ごとに経口投与され、約9~12時間にわたって約1.5グラムの1日総累積用量を達成する。他の実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり5回に分けられたそれぞれ約300mgのcAMBを経口投与され、約16時間にわたって約1.5グラムの1日総累積用量を達成する。いくつかの実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり6回に分けられたそれぞれ約250mgのcAMBを、2~3時間ごとに経口投与され、約10~15時間にわたって約1.5グラムの1日総累積用量を達成する。
【0028】
なおもさらにより典型的には、導入治療段階中に、ヒト対象などの対象は、1日当たり5回に分けられたそれぞれ約400mgのcAMBを、3~4時間ごとに経口投与され、約15~16時間にわたって約2.0グラムの1日総累積用量を達成する。他の実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり6回に分けられたそれぞれ約333mgのcAMBを3.5時間ごとに経口投与され、約17.5時間にわたって約2.0グラムの1日総累積用量を達成する。いくつかの実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり7回に分けられたそれぞれ約286mgのcAMBを、3時間ごとに経口投与され、約18時間にわたって約2.0グラムの1日総累積用量を達成する。
【0029】
理論によって制限されることなく、分割されたcAMB用量は、例えば、本明細書に記載のホスファチジルセリン渦巻状物担体などの渦巻状物担体の非吸収によって、胃腸の副作用がより少ない結果となり、単一用量よりも対象によってよりよく許容されると考えられる。結果として、本明細書に記載の分割されたcAMB用量は、単一の分割されていない1日用量と比較して、胃腸の有害事象を減少させて、1日当たり最大2グラムのcAMBなどのより高い累積1日投与を可能にすると考えられる。
【0030】
導入治療段階のいくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように対象に投与される、複数の1日の分割されたcAMB用量、典型的には≦400mgの分割用量は、cAMBの単回投与、例えば、1、1.5、または2グラムのcAMB/日の単回投与の投与後に達成されるよりも高いバイオアベイラビリティをもたらす。
【0031】
本明細書で使用される場合、薬物のバイオアベイラビリティは、体内に導入されたときに循環に入り、有効な効果を発揮することができる薬物または他の物質の割合として定義される。当業者によく知られているように、バイオアベイラビリティの測定としては、血漿濃度-時間曲線下面積(AUC)、最大濃度(Cmax)、及びCmaxまでの時間(Tmax)が挙げられる。AUCは、血漿中濃度-時間曲線下の面積の測定値であり、薬物の単回投与または複数回投与後の総薬物曝露を表す(Remington: The Science and Practice of Pharmacy,(Alfonso R. Gennaro ed. 2000),page 999)。Cmaxは、薬物投与後に達成される最大血漿濃度である(Remington,page 999)。Tmaxは、薬物投与後にCmaxを達成するために必要な時間であり、薬物の吸収速度に関連している(Remington,page 999)。
【0032】
導入治療段階のいくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような、複数の1日の分割されたcAMB用量、典型的には≦400mgの複数に分割用量は、cAMBの単回1日用量のような本発明の渦巻状物組成物の単回投与、例えば、1、1.5、または2グラムのcAMB/日の単回投与の投与後に達成されるよりも、渦巻状物化されたアンホテリシンB薬物曝露などの薬物曝露のより高いAUCをもたらす。
【0033】
いくつかの実施形態では、分割されたcAMB用量、典型的には、本発明に記載されるような、≦400mgの分割用量は、cAMBの単回投与に相関する薬物関連有害事象(AE)の数または重症度よりも、少ない薬物関連有害事象(AE)または重症度の低い薬物関連AEに相関している。
【0034】
本明細書で使用される場合、有害事象またはAEは、医薬品の投与に起因する対象における任意の好ましくない医療上の出来事である。AEは、重大または非重大に分類され得る。重大な有害事象とは、致命的で生命を脅かすものであり、再入院が必要であり(例えば、クリプトコッカス髄膜炎などの最初の既存のクリプトコッカス感染症による退院後)、持続的または重大な障害または無能力をもたらし、先天性異常または先天性欠損症をもたらし、対象を危険にさらす可能性のある、または前述の結果(例えば、アナフィラキシー)を防ぐために即時の介入を必要とする可能性のある医療事象をもたらす。本明細書で使用される場合、「非重大な」有害事象は、重大な有害事象の基準を満たさない任意の有害事象である。
【0035】
典型的には、cAMBの経口投与によるAEは、胃腸関連のAEである。いくつかの実施形態では、分割されたcAMB用量、典型的には、本発明に記載されるような、≦400mgの分割用量は、1日1回のcAMB用量の投与、典型的には、1グラム、1.5グラム、または2グラムのcAMB/日の単回投与に関連する薬物関連胃腸有害事象の数または重症度よりも、少ない薬物関連胃腸AEまたは重症度の低い薬物関連胃腸AEに相関している。
【0036】
いくつかの実施形態では、軽度の胃腸障害または悪心は、軽度の胃腸障害または悪心の事象が表1に記載されているようにグレード1またはグレード2であり、分割されたcAMB用量の投与に関連する。しかしながら、典型的には、分割されたcAMB用量の投与は、薬物関連のあらゆるグレードの胃腸障害及び/または悪心の非存在をもたらす。
【表1】
【0037】
導入治療段階中のいくつかの実施形態では、対象は、導入治療段階の2日間、より典型的には導入治療段階の5日間、さらにより典型的には、導入治療段階の9日間、なおもさらにより典型的には、導入治療段階の10日間、最も典型的には、導入治療段階の14日間、毎日、cAMBの1日総累積用量を経口投与される。いくつかの実施形態では、対象は、全導入治療段階の各日に、cAMBの1日総累積用量を経口投与される。
【0038】
いくつかの実施形態では、導入治療段階は、対象に静脈内アンホテリシンB(IV AMB)を投与することをさらに含む。しかし、理論に拘束されることなく、導入治療段階の任意の部分に対するcAMBの経口投与は、クリプトコッカス髄膜炎などのクリプトコッカス感染症の治療に必要なcAMBの静脈内投与の日数を減らすために使用できると考えられている。例えば、cAMBの投与は、IV AMB投与の非存在を可能
_____________
2019年8月31日に取得したワールドワイドウェブ、eortc.be/services/doc/ctc/ctcae_4.03_2010-06-14_quickreference_5x7.pdf。これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
にするか、またはIV AMBが投与される日数の減少を可能にし得る。例えば、IV AMBは、導入治療段階のわずか5日間など、導入治療段階の10日間のみ投与され得る。
【0039】
IV AMBは、導入治療段階の全体を通して、またはその一部に対してのみ、cAMBと同時に投与することができる。しかしながら、より一般的には、IV AMBが投与される場合、それは導入治療段階の一部に対してのみ投与され、cAMBは導入治療段階の一部に対してのみ投与される。いくつかの実施形態では、IV AMBとcAMBは、導入治療段階の1日または2日の間のみ同時に投与されるか、または導入治療段階中に同時に投与されない。例えば、cAMBとIV AMBは、導入治療段階の少なくとも2日間などの導入治療段階の少なくとも1日同時に投与され得、例えば、同時投与は、導入治療段階の1日間であり得る。
【0040】
例えば、いくつかの実施形態では、導入治療段階は、持続期間が14日間であり、導入期間の1~5日目のIV AMBの投与と、それに続く5~14日目のcAMBの投与を含む。いくつかの実施形態では、導入治療段階は、持続期間が14日間であり、導入治療段階の1~2日目のIV AMBの投与と、それに続く2~14日目のcAMBの投与を含む。いくつかの実施形態では、導入治療段階は、持続期間が14日間であり、導入治療段階の1~5日目のcAMBの投与と、それに続く導入治療段階の6~14日目のIV AMBの投与を含む。いくつかの実施形態では、導入治療段階は、持続期間が14日間であり、導入治療段階の1~2日目のIV AMBの投与と、それに続く3~14日目のcAMBの投与を含む。いくつかの実施形態では、導入治療段階は、持続期間が14日であり、IV AMBの非存在下で1~14日の対象にcAMBを投与することを含む。
【0041】
典型的には、導入治療段階中に投与される場合、IV AMBは、約0.7mg/kg/日~約1.0mg/kg/日の投与量である。より典型的には、IV AMBは、導入治療段階中に1.0mg/kg/日の投与量で対象に投与される。
【0042】
いくつかの実施形態では、導入治療段階は、対象に5-フルシトシンを経口投与することをさらに含む。5-フルシトシンは、カンジダ及びクリプトコッカスのほとんどの菌株に対して有効な薬剤である。いくつかの実施形態では、5-フルシトシンは、導入治療段階の各日に、例えば、1~14日目に投与される。他の実施形態では、5-フルシトシンは、14日間の導入治療段階の7~14日目など、導入治療段階の一部にのみ投与される。しかしながら、典型的には、5-フルシトシンは導入治療段階の各日に投与される。いくつかの実施形態では、5-フルシトシンは、導入治療段階中に約50mg/kg/日~約150mg/kg/日、典型的には約100mg/kg/日の投与量で経口投与される。
【0043】
いくつかの実施形態では、5-フルシトシンは、渦巻状物化される。いくつかの実施形態では、本開示のアンホテリシンBを含む渦巻状物は、5-フルシトシンをさらに含む。しかしながら、典型的には、5-フルシトシンは渦巻状物化されていない。
【0044】
いくつかの実施形態では、導入治療段階は、それを必要とする対象にアゾールを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、アゾールは、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イザブコナゾール、及び/またはボリコナゾールから選択される。より典型的には、アゾールはフルコナゾールである。フルコナゾールは、真菌のチトクロームP450依存性酵素の高度に選択的な阻害剤である合成トリアゾール抗真菌剤である。それは、強力なCYP2C9阻害剤であり、中程度のCYP3A4阻害剤である。
【0045】
いくつかの実施形態では、フルコナゾールなどのアゾールは、5-フルシトシンの存在下での導入治療段階中に投与される。典型的には、フルコナゾールなどのアゾールは、投与される場合、5-フルシトシンの非存在下での導入治療段階中に投与される。
【0046】
実施形態では、フルコナゾールなどのアゾールが導入治療段階中に投与される場合、フルコナゾールなどのアゾールは、導入の各日に投与される。例えば、フルコナゾールなどのアゾールは、2週間の導入治療段階の1~14日目のそれぞれに投与され得る。他の実施形態では、フルコナゾールなどのアゾールは、導入治療段階の一部の間だけ、例えば、2週間の導入治療段階の7~14日目にのみ投与される。いくつかの実施形態では、アゾールはフルコナゾールであり、これは、導入治療段階中に約200mg/kg/日~約1200mg/kg/日の範囲の投与量で、典型的には800mg/kg/日の投与量で、より典型的には1200mg/kg/日の投与量で、経口投与される。
【0047】
いくつかの実施形態では、フルコナゾールなどのアゾールは、分割用量で投与される。例えば、対象は、フルコナゾール400mgを3~4時間ごとに3回に分けて投与され、1200mg/kg/日フルコナゾールの1日累積用量を達成することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、フルコナゾールなどのアゾールは、渦巻状物化される。いくつかの実施形態では、本開示のアンホテリシンBを含む渦巻状物は、フルコナゾールなどのアゾールをさらに含む。しかしながら、典型的には、フルコナゾールなどのアゾールは、渦巻状物化されていない。
【0049】
最も典型的な実施形態では、本開示の導入治療段階は、5-フルシトシン、特に渦巻状物化5-フルシトシンと組み合わせたcAMBの投与を含む。cAMBは、典型的には、導入治療段階の各日、典型的には1~14日に、1~2グラム、典型的には2グラムの1日総累積投与量で毎日経口投与される。cAMBは、典型的には、5-フルシトシンの経口投与と組み合わせて、典型的には100mg/kgの1日投与量で投与される。5-フルシトシンは、通常、導入治療段階の各日に、cAMBと組み合わせて、同時に、または任意の順序で連続して投与される。
【0050】
強化
いくつかの実施形態では、治療は、本開示の導入治療段階の後に中止される。これらの実施形態では、腰椎穿刺を繰り返した後の対象のCSF培養物は陰性であることが見出され、対象は実質的な臨床的改善を示す。しかしながら、より典型的には、本開示の導入治療段階の後に、「フォローアップ」治療段階または「根絶段階」とも呼ばれる強化治療段階が続く。強化治療段階の長さは、約2~12週間、より典型的には約10週間であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、cAMBは、強化治療段階中に経口投与される。これらの実施形態では、cAMBは、強化治療段階中に、約7mg/kg/日~約29mg/kg/日、例えば約14mg/kg/日~約29mg/kg/日の範囲の量で、ヒト対象などの対象に投与される。典型的には、強化治療段階中に、対象は、合計で1日当たり約0.5グラム~約2グラムのcAMB、例えば1日当たり約1グラム、例えば1日当たり約1.5グラム、例えば、1日当たり約2グラムを受け取るヒト対象である。
【0052】
通常、強化治療段階中のcAMBの総投与量/日は、導入治療段階中に1日当たりに投与される総投与量よりも少ない。例えば、cAMB投与量は、導入治療段階中に投与される量よりも、1日当たり少なくとも0.5グラム少ない量、例えば、1日当たり少なくとも1.0グラム少ない量で投与される。典型的には、cAMBは、強化治療段階中に、約1.5グラム/日、例えば1日当たり約1.0グラムの量で、ヒト対象などの対象に投与される。
【0053】
cAMBは、強化治療段階中に、単回投与または24時間にわたって分割用量で投与することができる。典型的には、cAMBは分割用量で投与され、各分割用量は≦400mg、例えば≦375mg、例えば≦300mg、例えば≦333mg、例えば≦286mg、例えば≦250mg、例えば≦200mg、または例えば≦167mgである。例えば、cAMBの各分割用量は、約150mg~約400mg、例えば、約167mg~約400mg、例えば、約167mg~約375mg、または例えば約200mg~約300mgの範囲であり得る。
【0054】
強化治療段階中のいくつかの特定の実施形態では、クリプトコッカス髄膜炎などのクリプトコッカス種感染症に罹患している対象は、1日当たり5回に分けられたそれぞれ約400mgのcAMBを、3~4時間ごとに経口投与され、約15~16時間にわたって約2.0グラムの1日総累積用量を達成する。他の実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり6回に分けられたそれぞれ約333mgのcAMBを3.5時間ごとに経口投与され、約17.5時間にわたって約2.0グラムの1日総累積用量を達成する。いくつかの実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり7回に分けられたそれぞれ約286mgのcAMBを、3時間ごとに経口投与され、約18時間にわたって約2.0グラムの1日総累積用量を達成する。
【0055】
いくつかの実施形態では、強化治療中に、対象は、1日当たり4回に分けられたそれぞれ約375mgのcAMBを、3~4時間ごとに経口投与され、約9~12時間にわたって約1.5グラムの1日総累積用量を達成する。他の実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり5回に分けられたそれぞれ約300mgのcAMBを経口投与され、約16時間にわたって約1.5グラムの1日総累積用量を達成する。いくつかの実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり6回に分けられたそれぞれ約250mgのcAMBを、2~3時間ごとに経口投与され、約10~15時間にわたって約1.5グラムの1日総累積用量を達成する。
【0056】
さらにより典型的には、強化治療中に、対象は、1日当たり4回に分けられたそれぞれ約250mgのcAMBを、4時間ごとに経口投与され、約12時間にわたって約1グラムの1日総累積用量を達成する。他の実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり5回に分けられたそれぞれ約200mgのcAMBを、3~4時間ごとに経口投与され、約12~16時間にわたって約1グラムの1日総累積用量を達成する。いくつかの実施形態では、ヒト対象などの対象は、1日当たり6回に分けられたそれぞれ約167mgのcAMBを、2~3時間ごとに経口投与され、約10~15時間にわたって約1グラムの1日総累積用量を達成する。
【0057】
いくつかの実施形態では、対象は、強化治療段階全体を通して、例えば、10週間の期間にわたる強化治療段階の各日、1日のcAMB用量を投与されるであろう。しかしながら、より典型的には、cAMBは、強化治療段階の一部のみ、例えば、少なくとも1週間、例えば、少なくとも2週間、例えば、少なくとも3週間、例えば、少なくとも4週間、例えば、少なくとも8週間の間、毎日投与される。典型的には、cAMBは、強化治療段階中に、1~4週間、例えば2~4週間、最も典型的には4週間投与される。
【0058】
いくつかの実施形態では、強化治療段階は、cAMBに加えてアゾールを経口投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、アゾールは、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イザブコナゾール、及び/またはボリコナゾールから選択される。いくつかの実施形態では、アゾールは、渦巻状物化される。いくつかの実施形態では、本開示のアンホテリシンBを含む渦巻状物は、アゾールをさらに含む。しかしながら、典型的には、アゾールは渦巻状物化されていない。より典型的には、アゾールは、渦巻状物化されていないフルコナゾールである。
【0059】
いくつかの実施形態では、フルコナゾールなどのアゾールは、強化治療段階のすべての日に投与される。他の実施形態では、フルコナゾールなどのアゾールは、強化治療段階の一部の間、例えば、少なくとも2週間、例えば、少なくとも4週間、例えば、少なくとも8週間、例えば、少なくとも10週間、例えば、2週間~10週間、例えば6週間~10週間などの間のみ投与される。典型的には、フルコナゾールなどのアゾールは、強化治療段階全体にわたって毎日、最も典型的には10週間投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、アゾールはフルコナゾールであり、これは、強化治療段階中に約400mg/kg/日~約800mg/kg/日の範囲の投与量で経口投与される。典型的には、フルコナゾールは、強化治療段階中に、約800mg/kg/日の投与量で投与される。いくつかの実施形態では、フルコナゾールなどのアゾールは、強化治療段階中に、分割用量で投与される。例えば、ヒト対象などの対象は、3~6時間ごとに経口投与されたフルコナゾール400mg/kg/日を2回に分けて投与され、800mg/kg/日フルコナゾールの1日累積用量にすることができる。
【0061】
維持
いくつかの実施形態では、導入治療段階及び任意選択の強化治療段階の完了後、本開示の方法は、任意選択で、維持段階をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、維持段階は、クリプトコッカス髄膜炎などのクリプトコッカス属菌感染症の再発を防ぐ。
【0062】
いくつかの実施形態では、維持段階は、6ヶ月~2年、典型的には1年の期間、対象への抗真菌薬の毎日の経口投与を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、維持段階中に投与される抗真菌薬は、経口投与されるアゾールである。特定の実施形態では、アゾールは、渦巻状物化される。しかしながら、より典型的には、アゾールは渦巻状物化されていない。
【0064】
いくつかの実施形態では、アゾールは、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イザブコナゾール、及び/またはボリコナゾールから選択される。より典型的には、アゾールはフルコナゾールである。典型的には、フルコナゾールは、維持段階中に、例えば約200mg/kg/日~約400mg/kg/日の範囲の投与量で、経口投与される。より典型的には、フルコナゾールは、維持段階中に、例えば約200mg/kg/日の投与量で経口投与される。
【0065】
いくつかの実施形態では、導入、強化、及び/または維持段階中に、追加の抗真菌化合物を投与することができる。追加の抗真菌化合物は、渦巻状物化されていても、または渦巻状物化されていなくてもよい。本発明の方法の導入、強化、及び/または維持段階中の投与が考えられる追加の抗真菌化合物としては、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型マンノプロテインなどの細胞壁成分の合成を阻害できるもの、例えば、Cryptococcus spp.に対してインビトロ活性を有する経口活性分子であるE1210が挙げられる。他の実施形態では、追加の抗真菌化合物は、経口的に利用可能であり、良好なCNS浸透を示し、クリプトコッカス属菌感染症のマウスモデルにおいて殺真菌性であるVT-1129などのエルゴステロール合成阻害剤である。導入、強化、及び/または維持段階中に投与される可能性のある他の化合物としては、セルトラリンが挙げられる。TNF-γなどの生物学的製剤も、本開示の導入、強化、及び/または維持段階中の投与が企図される。
【0066】
渦巻状物
本明細書に開示されるように、アンホテリシンB、5-フルシトシン、及び/またはフルカナゾールなどのアゾールなどの本方法の抗真菌化合物は、渦巻状物化され得る。渦巻状物は、ホスファチジルセリンなどの負に帯電した脂質とカルシウムなどの二価カチオンとの相互作用により自発的に形成される無水の安定な多層脂質結晶である(例えば、米国特許第4,078,052号;同第5,643,574号;同第5,840,707号;同第5,994,318号;同第6,153,217号;同第6,592,894号、ならびにPCT公開番号WO2004/091572;WO2004/091578;WO2005/110361、WO2012/151517、及びWO2014/022414、米国特許公開番号2014/220108、及び特許公開番号2010/0178325を参照されたい。これらのそれぞれは、この参照により本明細書に完全に組み込まれる)。典型的には、これらは結晶渦巻状物と呼ばれる。結晶渦巻状物の変形は、例えば、米国特許公開2013/0224284に記載されているように、ジオード渦巻状物、またはジオデートとして知られている。この開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
渦巻状物は、内部の水性空間を持たない、らせん状にまたは積み重ねられたシートとして巻き上げられた、大きく、連続した、固体のリン脂質二重層シートまたは層からなる独特の多層構造を有する(図1)。この独特の構造により、関連する「渦巻状物化された」分子の分解からの保護が提供される。渦巻状物構造全体が一連の固体層であるため、渦巻状物の外層が過酷な環境条件または酵素にさらされたとしても、渦巻状物構造の内部の構成要素は無傷のままである。血清及び粘膜分泌物中のインビボでの二価カチオン濃度は、渦巻状物構造が維持されるようなものである。したがって、渦巻状物関連分子の大部分は、固体で安定した不浸透性の構造の内層に存在する。しかしながら、細胞の内部に入ると、低カルシウム濃度のために、渦巻状物結晶が開き、渦巻状物中に製剤化された分子が放出される(図2)。したがって、渦巻状物製剤は、粘膜分泌物、血漿、及び胃腸液を含む生理液中で無傷のままであり、それにより、粘膜、例えば、経口または鼻腔内投与を含む多くの投与経路による生物学的に活性な化合物の送達を媒介する。
【0068】
典型的な渦巻状物構造には、交互の二価カチオンと、少なくとも1つの負に帯電したリン脂質を含むリン脂質二重層を含む脂質層が含まれる。典型的には、抗真菌剤、例えば、アンホテリシンBなどのカーゴ部分(図3)は、渦巻状物の脂質層内に隔離される。
【0069】
渦巻状物は、既知の方法を使用して作成することができる。1つの典型的な実施において、米国特許公開第2014/220108号に記載されている方法が、本開示の渦巻状物を作製するために使用され、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。このプロセスの概要を図4に示す。この方法では、アンホテリシンBなどの疎水性抗真菌化合物を、典型的には、溶媒、例えばジメチルスルホキシドに溶解し、例えば0.22μmフィルターでろ過し、例えば200ミリリットルの滅菌水中の2000ミリグラムの50%大豆ホスファチジルセリン(PS)リポソーム(PSリポソームは最初に例えば5、0.8、及び0.45μmフィルターを通して濾過される)と混合し、AmBなどの抗真菌剤を含むリポソームを形成する。得られた混合物に、多価または二価カチオンなどのカチオンを加えることができる。多価または二価カチオンなどのカチオンの添加により、リポソームの崩壊、及びカチオンキレート化リン脂質二重層のシートの形成をもたらし、これは、巻き上げまたは積み重ねられて、アンホテリシンBなどの抗真菌剤を含む渦巻状物を形成する。アンホテリシンB含有渦巻状物などの抗真菌剤含有渦巻状物は、凍結乾燥下で乾燥させることができる。滅菌水を乾燥粉末、抗真菌性渦巻状物に加えて懸濁液を調製することができる。懸濁液は、光がない状態で4℃で保存することができる。
【0070】
抗真菌剤を含む渦巻状物を製造するための他の方法としては、トラッピング高pH法、トラッピングフィルム法、及びヒドロゲル法が挙げられる。トラッピング高pH法では、脂質粉末と抗真菌化合物を、例えば、滅菌ポリプロピレンチューブで、アンホテリシンBを、例えば10:1の液体/抗真菌剤のモル比で、混合する。緩衝液、例えば、TES[N-Tris(ヒドロキシメチル)-メチル-2-アミノメタンスルホン酸](pH7.4)を加える。多層リポソームは、ボルテックス後に形成される。次いで、例えば1NのNaOHを添加して、pHを例えば11.5に上げて、抗真菌化合物、例えばアンホテリシンBを可溶化する。アンホテリシンB結晶の非存在及びリポソームの存在を、位相差及び偏光光学顕微鏡を使用することによってモニターすることができる。塩化カルシウムなどの多価または二価のカチオンは、例えば、2:1の液体/カチオンのモル比で、抗真菌性リポソーム懸濁液にゆっくりと添加され、渦巻状物を形成する。次いで、外部pHをpH7に調整することができる。
【0071】
トラッピングフィルム法では、抗真菌化合物、例えばアンホテリシンBを溶媒、例えばメタノールに短時間超音波処理して溶解し、溶液をクロロホルム中の脂質に添加する。抗真菌剤、例えば、アンホテリシンBは、クロロホルム/メタノール混合物に容易に溶解する。次いで、混合物をロータリーエバポレーターを使用してフィルムに乾燥させ、減圧(1バール)下で、例えば、35℃~40℃で穏やかに温めることができる。次いで、乾燥した脂質フィルムを脱イオン水で水和し、超音波処理することができる。抗真菌性リポソームのサイズは約50ナノメートルである必要がある。渦巻状物を形成するために、多価または二価のカチオン溶液、例えば、溶液中の塩化カルシウムを、リポソーム懸濁液にゆっくりと添加して、渦巻状物を形成する。
【0072】
ヒドロゲル法を使用して抗真菌性渦巻状物を調製するために、アンホテリシンBなどの抗真菌化合物をメタノールに溶解し、クロロホルム中の脂質に、例えば10:1のモル比で添加し、次いでロータリーエバポレーターを使用して混合物を乾燥させて薬物-脂質フィルムにする。次いで、フィルムを脱イオン水で水和し、抗真菌化合物を含む小さなリポソームが得られるまで薬物-脂質懸濁液を超音波処理することができる。次に、抗真菌性リポソーム懸濁液を、例えば、懸濁液、例えば2/1のv/vのデキストラン/リポソームの中の40%w/wのデキストラン500,000と混合することができる。次いで、この混合物は、注射器を使用して、磁気攪拌下(800~1000rpm)で、例えば、15%のPEG-8000に注入される。PEG連続相に分散した抗真菌性リポソーム/デキストラン液滴の水-水エマルションが得られる。次いで、多価または二価のカチオン溶液、例えば、溶液中の塩化カルシウムが、エマルションに添加される。デキストラン液滴に隔離される小さなサイズの抗真菌性渦巻状物のゆっくりとした形成を可能にするために、攪拌が続けられる。次いで、ポリマーは、例えば、1mMのCaCl及び150mMのNaClを含む洗浄緩衝液を添加することによって洗浄される。
【0073】
当業者が認識しているように、pH、塩濃度、攪拌方法と速度、カチオンの種類、濃度、添加速度、脂質組成、濃度、脂質と他の材料の比率など、多くのパラメーターが製剤に影響を及ぼし、特定の材料の渦巻状物化を最適化するために変更することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、5-フルシトシンなどの親水性抗真菌化合物またはフルコナゾールなどの親水性ドメインを含む抗真菌化合物もまた、渦巻状物中に製剤化され得る。そのような化合物を渦巻状物に組み込むための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許公開第2014/220108号に記載されている。特定の理論に拘束されることを望まないが、本開示の抗真菌化合物を含む目的の活性医薬成分(API)などの親水性分子または親水性ドメインを有する大きな分子は、「ラフト」のように機能し、無傷のままで渦巻状物結晶マトリックス内に埋め込まれる脂質ドメインとAPIを会合させることによって増強された渦巻状物に製剤化され得ると考えられる。そのような脂質には、当該技術分野で知られており、本明細書に記載されている「中性脂質」が含まれる。
【0075】
典型的な実施において、リポソームを渦巻状物に崩壊させるために使用され得る、本明細書に記載の多価カチオンは、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、及びバリウムなどの二価金属カチオンである。より典型的な実施では、二価の金属用カチオンはカルシウムである。
【0076】
いくつかの実施では、脂質に対する抗真菌剤の比率(wt/wt)は、1:1~1:50の範囲であり、または例えば、1:2、1:3、1:4、1:6、1:8、1:10、1:12、1:15、1:20~1:25のいずれかの範囲、典型的には、1:1~1-1:20、例えば、1:2.5~1:10、典型的には、1:10である。
【0077】
渦巻状物の形成中に使用されるリポソームは、小さな単層小胞(SUV)を含む、多層(MLV)または単層(ULV)であり得る。これらのリポソーム溶液中の脂質の濃度は、約0.1mg/ml~500mg/mlであり得る。典型的には、脂質の濃度は約0.5mg/ml~約50mg/ml、より典型的には、約1mg/ml~約25mg/mlである。
【0078】
渦巻状物を作製する方法の最中に、サイズ調節剤を導入することができる。本明細書で使用されるサイズ調節剤は、渦巻状物の粒子サイズを減少させる薬剤を指す。本明細書で使用される場合、「粒子サイズ」という用語は、粒子の直径、または粒子が球形でない場合は、粒子の一方向の最大の広がりを指す。渦巻状物の粒子サイズは、サブミクロン粒子サイズ分析器などの従来の方法を使用して測定することができる。特定の実施形態では、サイズ調節剤は、脂質アンカーポリヌクレオチド、脂質アンカー糖(糖脂質)、または脂質アンカーポリペプチドである。他の実施形態では、サイズ調節剤は、オキシコレート、コレート、ケノデオキシコレート、タウロコレート、グリココレート、タウロケノデオキシコレート、グリコケノデオキシコレート、デオキシコレート、またはリトコレートなどの胆汁酸塩である。胆汁酸塩は、カチオン、通常はナトリウムと混合された胆汁酸である。胆汁酸は、主に哺乳動物の胆汁に含まれるステロイド酸であり、市販されている。
【0079】
特定の実施形態では、サイズ調節剤は、沈殿した渦巻状物の形成前に脂質またはリポソームに添加される。例えば、一実施形態では、サイズ調節剤は、リポソーム懸濁液に導入され、そこから、その後、(例えば、カチオンの添加または透析によって)渦巻状物が形成される。代替的に、サイズ調節剤は、薬理学的に活性な薬剤の添加の前または後に、脂質溶液に導入され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示の渦巻状物は、任意選択で、1つ以上の凝集阻害剤を含むことができる。本明細書で使用される場合、「凝集阻害剤」という用語は、渦巻状物の凝集を阻害する薬剤を指す。凝集阻害剤は、典型的には、少なくとも渦巻状物の表面に存在し、渦巻状物の表面にのみ存在し得る(例えば、凝集阻害剤が渦巻状物形成後に導入される場合)。凝集阻害剤は、渦巻状物形成の前、後、または最中に加えることができる。当業者は、日常的な実験を行うだけで、所望のサイズの渦巻状物を形成するために必要な凝集阻害剤の量を容易に決定することができるであろう。
【0081】
本開示に従って使用することができる適切な凝集阻害剤としては、以下のうちの少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない:カゼイン、カッパカゼイン、乳、アルブミン、血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ウサギ血清アルブミン、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、プルラン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、キサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアガム、アラビアガム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシポリマー、アミロース、高アミロースデンプン、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、レバン、エルシナン、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、カラギーナン、カルナウバワックス、シェラック、ラテックスポリマー、乳タンパク質分離物、大豆タンパク質分離物、ホエイタンパク質分離物、及びそれらの混合物。
【0082】
渦巻状物を作製するために任意の適切な脂質を使用することができる。一実施形態では、脂質は、1つまたは複数の負に帯電した脂質を含む。本明細書で使用される場合、「負に帯電した脂質」という用語は、酸性、塩基性、または生理学的pHの水溶液中で形式的な負電荷を有する頭部基を有する脂質を含み、双性イオン性頭部基を有する脂質も含む。一実施形態では、負に帯電した脂質はリン脂質である。
【0083】
渦巻状物はまた、負に帯電していない脂質(例えば、正及び/または中性の脂質)を含むことができる。典型的には、渦巻状物にはかなりの量の負に帯電した脂質が含まれている。特定の実施形態では、脂質の大部分は負に帯電している。一実施形態では、脂質は、リン脂質などの少なくとも50%の負に帯電した脂質を含む脂質の混合物である。別の実施形態では、脂質は少なくとも75%の、リン脂質などの負に帯電した脂質を含む。他の実施形態では、脂質は、少なくとも85%、90%、95%、または98%の、リン脂質などの負に帯電した脂質を含む。さらに他の実施形態では、負に帯電した脂質(例えば、リン脂質)は、渦巻状物の総脂質の、30%~70%、35%~70%、40%~70%、45%~65%、45%~70%、40%~60%、50%~60%、45%~55%、45%~65%、または45%~50%を構成する。特定の実施形態では、負に帯電した脂質(例えば、リン脂質)は、渦巻状物の総脂質の、40%~60%、または45%~55%を構成する。いくつかの実施形態では、負に帯電した脂質(例えば、リン脂質)は、渦巻状物の非疎水性ドメイン成分の総脂質の、30%~70%、35%~70%、40%~70%、45%~65%、45%~70%、40%~60%、50%~60%、45%~55%、45%~65%、または45%~50%を構成する。特定の実施形態では、負に帯電した脂質(例えば、リン脂質)は、渦巻状物の非疎水性ドメイン成分の総脂質の、40%~60%、または45%~55%を構成する。いくつかの実施形態では、負に帯電した脂質はリン脂質であり、渦巻状物、または渦巻状物の非疎水性ドメイン成分の総リン脂質の、30%~70%、35%~70%、40%~70%、45%~65%、45%~70%、40%~60%、50%~60%、45%~55%、45%~65%、または45%~50%を構成する。いくつかの実施形態では、負に帯電した脂質はリン脂質であり、渦巻状物、または渦巻状物の非疎水性ドメイン成分の総リン脂質の、40%~60%、または45%~55%を構成する。
【0084】
負に帯電した脂質としては、卵ベースの脂質、ウシベースの脂質、ブタベースの脂質、植物ベースの脂質、または合成的に生成された脂質を含む他の供給源に由来する同様の脂質が挙げられ得る。負に帯電した脂質としては、ホスファチジルセリン(PS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及び/またはホスファチジルグリセロール(PG)及び/またはこれらの脂質の1つ以上と他の脂質との混合物が挙げられ得る。追加的または代替的に、脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ジホスホチジルグリセロール(DPG)、ジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)などが挙げられ得る。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは、卵またはウシ由来のホスファチジルセリンである。
【0085】
大豆脂質を含む渦巻状物
いくつかの典型的な実施形態では、以下に記載されるジオード渦巻状物を含む渦巻き状物は、マメ科植物ベースのリン脂質、より典型的には大豆ベースの脂質を使用して調製される。そのような大豆ベースの脂質は、天然または合成であり得る。さらに典型的には、大豆ベースの脂質は大豆リン脂質、例えば、大豆ホスファチジルセリンであり、渦巻状物の脂質成分の40質量%~74質量%の量である。あるいは、大豆ホスファチジルセリンは、渦巻状物の脂質成分の、約40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、または70質量%またはそれらの任意の増分値であり得る。これらの値及び範囲の間のすべての値及び範囲が、本発明によって包含されることを理解されたい。典型的な実施形態では、リン脂質は、45~70%の大豆ホスファチジルセリンを含む。さらに典型的な実施形態では、リン脂質は、45~55%の大豆ホスファチジルセリンを含む。
【0086】
大豆ホスファチジルセリンは、例えば、Avanti Polar Lipids,Inc. Alabaster,ALから市販されている。代替的に、大豆ホスファチジルセリンは、よく知られた標準的な精製技術に従って、いくつかの大豆リン脂質の混合物である大豆リン脂質組成物から精製することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、中性脂質は、大豆ホスファチジルセリンと組み合わせて使用されて、即時の渦巻状物を作製する。本明細書で使用される場合、「中性脂質」という用語は、生理学的pHで非荷電または中性双性イオン形態のいずれかで存在し、したがって、アニオン性機能を欠く脂質の群に含まれる、いくつかの脂質種のいずれかを含む。そのような脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが挙げられる。本明細書に記載の渦巻状物組成物で使用するための中性脂質の選択は、一般に、例えば、渦巻状物のサイズ及び安定性を考慮することによって導かれる。様々な鎖長及び飽和度の様々なアシル鎖基を有する脂質が利用可能であるか、または周知の技術によって単離もしくは合成され得る。実施形態の一つの群では、C14~C22の範囲の炭素鎖長を有する飽和脂肪酸を含む脂質を使用することができる。実施形態の別の群では、C14~C22の範囲の炭素鎖長を有するモノ-またはジ-不飽和脂肪酸を有する脂質を使用することができる。実施形態のさらに別の群では、C~C12の範囲の炭素鎖長を有するモノ-またはジ-不飽和脂肪酸を有する脂質を使用することができる。さらに、飽和脂肪酸鎖と不飽和脂肪酸鎖の混合物を有する脂質を使用することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示で使用される中性脂質は、DOPE、DSPC、DPPC、POPC、または任意の関連するホスファチジルコリンである。本開示において有用な中性脂質はまた、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、またはセリン及びイノシトールなどの他の頭部基を有するリン脂質から構成され得る。
【0089】
典型的な実施では、99.9%純粋なジオレオイルホスファチジルセリン、99.9%純粋な大豆ホスファチジルセリン、75%の大豆ホスファチジルセリン、及び50%の大豆ホスファチジルセリンが渦巻状物の製造に使用される。99.9%純粋なホスファチジルセリンの脂質組成は、典型的には、スフィンゴミエリン及び/またはホスファチジルコリンを含むがこれらに限定されない中性脂質の添加によって変更される。低純度のホスファチジルセリン(例えば、50%大豆ホスファチジルセリン)を出発物質として使用する場合、低純度のホスファチジルセリンを抽出ステップにかけて、ヌクレアーゼなどの不要な不純物を除去することができる。
【0090】
ジオード渦巻状物
いくつかの実施では、本発明の渦巻状物は、例えば、米国特許公開2013/0224284に記載されているように、ジオード渦巻状物、またはジオデートであり、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。ジオード渦巻状物は、負に帯電したリン脂質を含む脂質単層をさらに含み、脂質単層は、油などの疎水性ドメイン、及び疎水性ドメイン内に分散される本明細書に記載の抗真菌化合物などのカーゴ部分を取り囲む。脂質単層は、ジオード渦巻状物の脂質層内に隔離されている。
【0091】
本明細書で使用される場合、「疎水性ドメイン」は、その周辺の周りに脂質単層の形成を可能にするために本質的に十分に疎水性である組成物である。疎水性ドメインは、典型的には、アンホテリシンBなどの本開示の抗真菌化合物などのカーゴ部分に会合する油または脂肪などの疎水性組成物を含む。特定の実施形態では、疎水性ドメイン(HD)とジオード渦巻状物のリン脂質成分(PPLGD)間の比であるHD:PPLGD、またはヒマシ油ドメイン(COD)とジオード渦巻状物のリン脂質成分(PPLGD)の比であるCOD:PPLGDは、1:20以下、1:15以下、1:10以下、1:8以下、1:6以下、1:5以下、1:4以下、1:3.5以下、1:3以下、1:2.75以下、1:2.5以下、1:2.25以下、1:2以下、1:1.75以下、1:1.5以下、1:1.25以下、1:1以下である。
【0092】
図5は、どのようにジオード渦巻状物を作製できるかの例示的な概略図を示す。この例示的な方法において、リン脂質(開環として表される)は、油などの疎水性ドメイン(影付きの円)と組み合わされ、混合されて、疎水性ドメインを取り囲むリポソーム及び脂質単層を含む安定なエマルションを形成する。抗真菌化合物などのカーゴ部分は、疎水性ドメイン内に分散され得る。疎水性ドメインの表面にはリン脂質が埋め込まれている。いかなる理論にも拘束されることを意図することなく、リン脂質の疎水性アシル鎖は疎水性ドメイン内にあり、リン脂質頭部基のコーティングにより親水性表面を有する油滴をもたらし、安定なエマルションを形成すると考えられる。例えばホスファチジルセリンによってリン脂質が負に帯電している場合、カルシウムなどの二価カチオンの添加は、交互の二価カチオンとリン脂質二重層を含む結晶構造(または脂質層)の形成を誘導する。脂質層はハッチングで表される。ジオード渦巻状物では、疎水性ドメインを取り巻く脂質単層は、「ジオード」と同様に、結晶マトリックス内に「覆われている」または「閉じ込められている」。
【0093】
渦巻状物製剤
本発明の方法で使用するための本明細書に記載の渦巻状物は、医薬組成物を含む。本明細書に開示される医薬組成物の適切な製剤形態としては、例えば、錠剤、カプセル、ソフトカプセル、顆粒、粉末、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、ナノエマルション、単位剤形、リング、フィルム、坐剤、溶液、クリーム、シロップ、経皮パッチ、軟膏、及びゲルが挙げられる。しかしながら、典型的には、渦巻状物は、粘膜、例えば、経口または鼻腔内、典型的には経口投与のために調製される。
【0094】
医薬組成物は、様々なpH及びイオン強度の緩衝液(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩);表面への吸収を防ぐためのアルブミンまたはゼラチンなどの添加剤;プロテアーゼ阻害剤;浸透促進剤;可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール);酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール);安定剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム);甘味料(例えば、アスパルテーム、クエン酸);防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン);流動助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル);乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム);ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン、コハク酸ヒプロメロース);コーティング及びフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート、ヒプロメロースアセテートコハク酸塩);アジュバント;液剤のための薬学的に許容される担体、例えば水性(水、アルコール/水溶液、乳濁液もしくは懸濁液(生理食塩水及び緩衝培地を含む))または非水性(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル)の溶液、懸濁液、乳濁液、または油;非経口ビヒクル(皮下、静脈内、動脈内、髄腔内、または筋肉内注射用)、(これには、塩化ナトリウム溶液、リンガーのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル及び不揮発性油が含まれるが、これらに限定されない)などの他の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
【0095】
特定の実施形態では、医薬組成物は、NaClなどの塩、またはオキシコレート、コレート、ケノデオキシコレート、タウロコレート、グリココレート、タウロケノデオキシコレート、グリコケノデオキシコレート、デオキシコレート、またはリトコレートなどの胆汁酸塩を含む。胆汁酸塩は、カチオン、通常はナトリウムと混合された胆汁酸である。胆汁酸は、主に哺乳動物の胆汁に含まれるステロイド酸であり、市販されている。一実施形態では、胆汁酸塩はコレートを含む。別の実施形態では、胆汁酸塩はデオキシコレートを含む。さらに別の実施形態では、胆汁酸塩は、コレート及びデオキシコレートを含む。別の実施形態では、胆汁酸塩は、コレート及びデオキシコレートからなる。
【0096】
特定の実施形態では、NaClの濃度は、1mM~1M、1mM~0.5M、1mM~0.1M、1mM~50mM、10mM~100mM、10mM~50mM、0.1M~1M、0.1M~0.5M、または0.5M~1Mである。特定の実施形態では、胆汁酸塩の濃度は、1mM~100mM、1mM~50mM、1mM~25mM、1mM~10mM、1mM~5mM、0.1mM~5mM、0.1mM~1mM、または0.1mM~0.5mMの胆汁酸塩である。
【0097】
これらの賦形剤は例として提供されており、当業者には、本明細書に列挙されているものと同じ化学的特徴をもたらすことができる他のまたは異なる賦形剤が存在することが知られている。
【0098】
いくつかの実施形態では、本方法のcAMBは、以下の成分:アンホテリシンB、リン脂質、EDTA、水、ビタミンE、塩化カルシウム、メチルセルロース、メチルパラベン、プロプリパラベン、水酸化ナトリウム、脱水アルコール、一塩基性リン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、アセスルファムカリウム、及び任意選択での香料を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示のcAMBは、以下の表2に記載される成分及び量を使用して製剤化される。いくつかの実施形態では、本開示のcAMBは、27.5mg/mLの懸濁液として製剤化され、したがって、1000mg用量は36.4mLである。
【表2】
【0100】
組成物
本開示はまた、渦巻状物化されたアンホテリシンB(cAMB)を含む組成物を対象とする。いくつかの実施形態では、渦巻状物化されたcAMBは、アンホテリシンB、リン脂質、EDTA、水、ビタミンE、塩化カルシウム、メチルセルロース、メチルパラベン、プロプリパラベン、水酸化ナトリウム、脱水アルコール、一塩基性リン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、アセスルファムカリウム、及び任意選択での香料を含む。いくつかの実施形態では、本発明の渦巻状物化されたcAMBの前述の成分の量は、上述の表2に記載されている。
【実施例
【0101】
実施例1.安全性及び忍容性(段階I)
材料及び方法
2019年10月から2020年1月まで、ウガンダのカンパラで、HIV陽性のウガンダ人を対象にcAMBの段階1の安全性及び忍容性試験を実施した。試験は2つの連続した段階で行われるように設計されており、27人の参加者が段階1Aに登録され、9人が段階1Bに登録された。
【0102】
cAMBは、各用量群に9人の参加者で、図6に従って4~6回の分割用量で1日当たり1.0g、1.5g、及び2.0gで投与された。9人の参加者のうち少なくとも6人は、次の投与コホートに進む前に、その用量を認容しなければならなかった。用量制限不耐容性は、グレード3以上のAEを経験したり、服用後30分以内に嘔吐したり、AEまたは毒性のために薬物の服用を永久に中止したりすることと定義された。段階1Bの参加者は、段階1Aで100%認容されるcAMB用量を7日間投与し、継続投与による安全性と忍容性を検証した。段階1Aと1Bの参加者は、同じ選択基準と除外基準を持っていた。
【0103】
参加者は、以前のクリプトコッカス髄膜炎試験コホート(ASTRO-CM;ClinicalTrials.gov: NCT01802385)から募集された(Rhein et al.,2019. Lancet Infect. Dis. 19:843-851)。募集されたすべての対象は、HIV関連のクリプトコッカス髄膜炎が解消された病歴があり、以前にIV AMBを受けていた。選択要件は>18年の年齢と>70mL/分/1.73mの算出クレアチニンクリアランス(3か月以内に測定)であった。参加者は、現在の疾病を示している場合、既知の未治療の重大な健康問題を抱えている場合、または過去90日間にアンホテリシンB療法を受けていた場合は除外された。妊娠中または授乳中の女性は除外された。rahics、バイタルサイン、HIVの特徴を表3にまとめている。
【0104】
試験の評価項目は次のとおりである。1)30分以内に嘔吐せずに投与され認容された1日用量の割合;2)共通用語基準 AE(CTCAE)グレードのスコアリング基準による悪心、嘔吐、下痢の累積スコア(U.S. Department of Health and Human Services NIoH、National Cancer Institute、2017、Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)v5.0);3)米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)エイズ部門(DAIDS)による毒性尺度(バージョン2017)によるグレード1~5または重大なAE(SAE)(U.S. Department of Health and Human Services NIoH,National Institute of Allergy and Infectious Diseases,Division of AIDS,2017,Division of AIDS (DAIDS) Table for Grading the Severity of Adult and Pediatric Adverse Events,Corrected Version 2.1.)による有害事象(AE)の発生率;4)視覚的アナログ及び他の尺度によるcAMBの参加者の主観的印象(複数可)。すべての臨床及び検査室のAEは、解決するまで追跡された。
【0105】
段階1Aの0、6、12、24、及び48時間に、薬物動態分析のために血漿を収集した。全血球計算、化学的性質、腎臓及び肝機能検査を0、24、及び48時間でモニターし、その後、いずれかの異常な結果があればフォローアップした。段階1Bの場合、安全性評価及び薬物動態分析のための同じ実験室モニタリングを+1日、+3日、そして+7日で行った。すべての実験室測定は、米国病理学者大学(CAP)認定の実験室であり、すべての実験室アッセイの外部品質保証に参加しているIDIコア実験室で実施された。
【0106】
統計分析は主に記述的であった。必要に応じて、中央値と四分位範囲、または数と割合が報告された。曲線下面積(AUC)の計算は、ANOVAによる統計的比較を伴う線形台形法を使用して行われた。視覚的アナログ尺度を使用して、試験のさまざまな側面に関する参加者の主観的な経験を評価した。臨床及び検査室の有害事象(AE)の数は、エイズ部門(DAIDS)毒性表バージョン2017によって要約された。
【0107】
ムラゴ病院研究倫理委員会、ウガンダ国立科学技術評議会、ウガンダ国立医薬品局、及びミネソタ大学IRBがこの研究を承認した。すべての参加者は、希望する言語でインフォームドコンセントを提供した。忍容性を保証するために、各投与コホートの後に内部レビューが実施された。データ安全監視委員会(DSMB)は、段階1のデータ収集の完了後にすべての安全データをレビューした。
【0108】
結果
最初の単回漸増用量試験では、合計35人のHIV陽性クリプトコッカス生存者がスクリーニングされた。1日当たり1.0g、1.5g、及び2.0gの3つの連続投与コホートのそれぞれに9人の参加者を登録した。すべての参加者は、以前のクリプトコッカス髄膜炎の生存者であり(以前の診断からの期間の中央値は46か月であった)、以前に約14日間のIV AMBを受けていた。年齢の中央値は36歳(IQR、30~44歳)で、41%が(11/27)女性であった。現在、すべての参加者が抗レトロウイルス療法(ART)を受けており、そのうち15人が(42%)アタザナビルを服用しており、37%(10/27)がフルコナゾール200mgの予防を積極的に服用していた。
【0109】
忍容性基準を満たすには、参加者は、いずれかの用量の服用後30分以内に嘔吐せずに全1日用量を服用し、グレード2以下のAEを報告し、AEまたは参加者の選択によりcAMBを中止しないことが必要であった。1.0g及び1.5gのコホートでは、18人の参加者全員が完全な耐容性基準を満たしていた。2.0gコホートでは、9人の参加者全員が投薬を完了したが、1人の参加者は、病因が不明な48時間で一過性血小板減少症のグレード3の実験室AEを経験した。したがって、89%(8/9)の参加者のみが、2.0gの投与で完全な耐容性基準を満たした。
【0110】
段階1Aの27人の参加者のうち、8人(30%)が、少なくとも1つの臨床AEを経験した。合計31の固有の臨床AEが報告され、そのうち24(77%)がグレード1として、7(23%)がグレード2として報告された。AEの数の増加は、cAMB用量の増加と相関し、65%(20/31)が2.0gコホートで記録された。グレード3、グレード4、または重大なAEは発生しなかった。最も一般的な臨床AEは腹痛(n=5)、悪心(n=5)、及びめまい(n=4)であった。同じ27人の参加者のうち、15人(56%)が、少なくとも1つの実験室AEを経験した。合計24の実験室AEが報告され、14(58%)がグレード1として、9(38%)がグレード2として報告された。2.0gコホートの参加者の血小板数がベースライン時及び24時間でそれぞれ163,000及び160,000細胞/μLであり、48時間で31,000細胞/μLに低下したグレード3の有害事象が1件あった。血小板凝集は報告されなかった。AEの解決を確実にするために、血小板計数を数回繰り返した。数は2週間までに172,000細胞/μLに回復した。参加者は、記録された血小板減少症の時点で、臨床的悪化または出血の証拠がなかった。グレード4も重大な実験室AEも発生しなかった。最も一般的な実験室AEは、総ビリルビンの上昇(n=6);軽度の孤立したAST上昇(n=5)、軽度の高ナトリウム血症(n=5)であり、グレード1のAEのDAIDS基準を満たしていた(146~149mEq/L)が、集団についての地元のCAP認定研究所の正常範囲内であった(138~150mEq/L)。AST上昇のうち、慢性B型肝炎を有する対象でALT上昇を伴ったのは1例だけであった。有害事象は表4に要約されている。
【0111】
段階1Bには、「100%認容」段階1A用量として1.5gの用量が選択された。9人の段階1B参加者の人口統計は、段階1Aの人口統計と同様であった。9人の参加者のうち8人が7日間で完全な投与を完了し、1人の参加者が意図せずに1日の投与を逃した。3人の参加者が合計5つのグレード1の臨床AEを経験したが、いずれも重大ではなかった。3人の参加者も合計6つのグレード1の実験室AEを経験したが、同様に重大なAEの基準を満たすものはなかった。全体として、段階1Bの参加者は、外来患者としてcAMBを首尾よく服用し、7日間の継続治療で不耐容性または毒性の最小限の証拠を示した。有害事象は表4に要約されている。
【0112】
cAMBの血漿濃度は、cAMB開始時から0、6、12、24、及び48時間で測定され、曲線下面積(AUC)が計算された。様々な時点での平均cAMB血漿濃度を示す図8は、血漿AUC0-lastが平均2350ng*h/mLで3つの投与コホート間で有意差がなかったことを示している(P=)。図8のエラーバーは、1.5gコホートの95%信頼区間を表す。一元配置分散分析によって計算されたP値。
【0113】
cAMBの半減期は53時間で、24時間の平均ピークCmaxは63.0ng/mL(±16.2)であった(コホート全体の平均)。段階1Bコホートの薬物動態分析では、24時間での血漿レベル(74.8ng/mL)は、97.7ng/mLの7日目のレベルの77%であった。72時間で、91.1ng/mLの血漿レベルは、7日目のレベルの93%であった。
【0114】
定性的尺度を使用して、段階1Aコホートにおいて、cAMB経験対以前のIV AMB経験の参加者の印象を評価した。参加前調査では、40%(10/25)が、対代替療法と比較して、クリプトコッカス髄膜炎に対して再びIVAMBを投与する意思があることを示した。研究のフォローアップを完了した後、96%(26/27)の参加者は、クリプトコッカス髄膜炎の治療にIV AMBよりもcAMBを好むことを示した。全体で93%(25/27)が、cAMBの複数回投与は、IV AMBの場合の回答者の65%(15/23)と比較して、治療に非常に便利であると考えた。1人の参加者は、最初のIV AMB療法を思い出せなかった。悪心の重症度スコアは、1g及び1.5gコホートの参加者9人中8人、2.0gコホートの参加者9人中7人で「なし」と評価された。比較すると、25%(6/24)が、IV AMBで重度の悪心を思い出した。
【表3】
【表4】
【0115】
実施例2.有効性(段階II)
試験の有効性段階(段階II)は、導入療法のためのIVアンホテリシン(AMB)と比較した経口渦巻状物化アンホテリシン(cAMB)の安全性、忍容性、及び微生物学的有効性を評価するための前向き無作為化試験である。実験群に登録された参加者は、導入療法の期間の4ステージで、段階I試験で見出されたcAMBの最大耐用量、すなわち、全1日用量を受け取った参加者の少なくとも66%(6/9)が最大48~96時間にわたって、<2のGI毒性及び<2の実験室AEを有した用量の、経口cAMB+5-フルシトシン(5-FC)を受け取る。実験群は6週間までcAMBを受け取る。対照群に無作為化された参加者は、2018WHOが推奨する標準治療を受ける(World Health Organization. Guidelines for the diagnosis, prevention and management of cryptococcal disease in HIV-infected adults, adolescents and children. 2018;who.int/hiv/pub/guidelines/cryptococcal-disease/en/でワールドワイドウェブを通じてアクセス可能。2018年4月1日にアクセスされ、その全体がここに組み込まれる。)。各ステージの後に、スケジュールされた登録の一時停止がある。
【0116】
簡潔に述べると、2018WHOが推奨する標準治療は次のとおりである。成人、青年、及び小児のために、アンホテリシンBデオキシコレート(1.0mg/kg/日)及びフルシトシン(100mg/kg/日、1日4回に分割)、その後1週間のフルコナゾール(成人の場合1200mg/日、小児と青年の場合12mg/kg/日、1日最大800mgの用量まで)は、HIVと共に生きる人々のクリプトコッカス髄膜炎を治療するための好ましい選択肢である(強い推奨、成人の適度な確実性の証拠、小児と青年の低確実性の証拠)。薬剤の入手可能性に応じた代替の導入レジメンは、(1)2週間のフルコナゾール(成人の場合は1日1200mg、小児及び青年の場合は12mg/kg/日)+フルシトシン(100mg/kg/日、1日4回に分割)(強力な推奨、中程度の確実性の証拠);または(2)2週間のアンホテリシンBデオキシコレート(1.0mg/kg/日)+フルコナゾール(成人の場合は1日1200mg、小児及び青年の場合は12mg/kg/日、1日最大800mgまで)(強力な推奨事項、中程度の確実性の証拠)である。
【0117】
フルコナゾール(成人の場合は1日800mg、小児及び青年の場合は6~12mg/kg/日、1日最大800mgまで)は、強化段階(導入段階後から8週間)に推奨される(強力な推奨、確実性の低い証拠)。フルコナゾール(成人の場合は1日200mg、小児及び青年の場合は6mg/kg/日)は、維持段階で推奨される(強力な推奨、確実性の高い証拠)。
【0118】
参加者
研究の有効性段階の参加者は、クリプトコッカス種に陽性のCSF真菌培養から診断された、及び/またはCSFクリプトコッカス抗原(CRAG)陽性である、HIV患者を含むクリプトコッカス髄膜炎の個人を含み、プロトコールで指定された腰椎穿刺を受ける意思がある人である。以前に既知のクリプトコッカス髄膜炎の病歴のある対象が試験に含まれる。この患者集団を含める理由は、疾患の再発とフルコナゾール耐性との間に強い相関があり、従って、cAMBの追加がこの患者集団に非常に有益である可能性があると考えられるためである。
【0119】
研究のこの段階では、18歳未満で、グラスゴー昏睡尺度が<15、過去30日以内にIVアンホテリシンB療法を3回以上受け、経腸薬を服用できない、妊娠中または授乳中、定期的な診療所への来院ができない、または参加する可能性が低い、化学療法またはコルチコステロイドを投与されている、感染性免疫再構築症候群(IRIS)を有する疑いがある、または最近HIV療法または抗レトロウイルス療法(ART)クラスの切り替えを開始した(2週間以内)個人が除外された。
【0120】
治療レジメン
ステージ1
図7に示されるように、研究の有効性段階は4つのステージを含む。試験の第1ステージには、クリプトコッカス髄膜炎集団におけるcAMB治験薬の安全性と忍容性を評価するための10人の非無作為化観察段階2A試験が含まれる。ステージ1の実験群は、1a)1日目~5日目のIVアンホテリシンBデオキシコレート1mg/kg/日;5日目~14日目の経口cAMB、2a)1日目~14日目の経口5-FC、100mg/kg/日を含む導入療法を受ける。導入治療段階中に経口投与されたcAMBの投与量は、グレード2以下の有害事象を伴う9人の段階I試験参加者のうち6人が認容できることがわかった分割用量である。
【0121】
ステージ1試験の導入治療段階の後に、1b)15日目~6週目の経口cAMB;2b)15日目~10週目の経口フルコナゾール800mg/日、及び3b)その後のフルコナゾール200mg/日(維持療法)を含む強化治療段階が続く。強化治療段階中に経口投与されたcAMBの投与量は、グレード2以下の有害事象を伴う9人の段階I試験参加者のうち9人が認容できることがわかった分割用量である。ステージ1の投与計画の安全性が確認されると、研究はステージ2に進む。
【0122】
ステージ2
ステージ2では、参加者は、実験群(n=40)対対照群(n=20)に、2:1で無作為化される。このステージでは、標準治療IV AMBを受けている対照と比較して、IV AMB療法の期間を短縮した場合の有効性と安全性を試験している。
【0123】
ステージ2の実験群は、1a)1日目~2日目のIV AMB、1mg/kg/日;2日目~14日目の経口cAMB、2a)1日目~14日目の経口5-FC、100mg/kg/日を含む導入療法を受ける。導入治療中に経口投与されたcAMBの投与量は、グレード2以下の有害事象を伴う9人の段階I試験参加者のうち6人が認容できることがわかった分割用量である。
【0124】
ステージ2試験の導入療法の後に、1b)15日目~6週目の経口cAMB;2b)15日目~10週目の経口フルコナゾール800mg/日、及び3b)その後のフルコナゾール200mg/日(維持療法)を含む強化治療段階が続く。強化治療段階中に経口投与されたcAMBの投与量は、グレード2以下の有害事象を伴う9人の段階I試験参加者のうち9人が認容できることがわかった分割用量である。
【0125】
12番目の全体的な対象(ステージの20%)が>2週間のデータを収集した後、EFA CSFクリアランス速度に焦点を当てた早期の安全性レビューが行われる。この早期の安全性チェックは、CSF EFAのみに焦点を当てる。実験群のCSFクリアランス速度にいずれかの懸念がある場合は、より頻繁なEFA安全性レビューを実施することができる。60番目の対象が、≧4週間のフォローアップデータを収集した後の、CSFクリアランスEFA,安全性、生存期間、及び忍容性のデータもまた評価された。
【0126】
対照群に無作為化された参加者は、(2018 WHOガイドライン(World Health Organization. Guidelines for the diagnosis, prevention and management of cryptococcal disease in HIV-infected adults, adolescents and children. 2018;who.int/hiv/pub/guidelines/cryptococcal-disease/en/でワールドワイドウェブを通じてアクセス可能。2018年4月1日にアクセスされ、その全体がここに組み込まれる。)に従って)1a)1日目~7日目のIV AMB、1mg/kg/日;2a)1日目~7日目の経口5-FC、100mg/kg/日を含む導入療法を受ける。導入療法の後には、15日目~10週目の経口フルコナゾール、800mg/日を含む強化治療段階が続き、その後、参加者は維持療法、すなわち経口フルコナゾール、200mg/日を受ける。
【0127】
2018年のWHO推奨レジメンは、次のことを実証する段階III無作為化臨床試験に基づいている。1)1週間のIV AMBは2週間のIV AMBと同等の生存期間を示した;2)1週間のIV AMB併用療法は、2週間のIV AMBよりも毒性が低かった;3)補助的5-FCは補助的フルコナゾールよりも優れた生存期間を示した。
【0128】
ステージ3
ステージ3は、経口cAMB及び5-FCによる初期導入療法を開始することの安全性を評価するための観察的段階2A安全性コホートである。10人の参加者は、予定されたIV AMB療法に切り替える前に、5日間の経口cAMBを受け取る。このステージの主な目的は、IV AMB負荷用量がない場合の初期CSFクリアランス速度(すなわちEFA)を評価して、ステージ4に進むための安全性を判断することである。
【0129】
ステージ3の実験群は、1a)1日目~5日目の経口cAMB、2a)6日目~14日目のIV AMB、1mg/kg/日、3a)1日目~14日目の経口5-FC、100mg/kg/日を含む導入療法を受ける。導入治療中に経口投与されたcAMBの投与量は、グレード2以下の有害事象を伴う9人の段階I試験参加者のうち6人が認容できることがわかった分割用量である。
【0130】
ステージ3試験の導入療法の後に、1b)15日目~6週目の経口cAMB;2b)15日目~10週目の経口フルコナゾール800mg/日、及び3b)その後のフルコナゾール200mg/日(維持療法)を含む強化治療ステージが続く。強化治療段階中に経口投与されたcAMBの投与量は、グレード2以下の有害事象を伴う9人の段階I試験参加者のうち9人が認容できることがわかった分割用量である。ステージ1の投与計画の安全性が確認されると、研究はステージ4に進む。ステージ3には対照群がない。
【0131】
10番目の対象が、≧4週間のフォローアップデータを収集した後の、CSFクリアランスEFA,安全性、生存期間、及び忍容性のデータもまた評価された。ステージ2の対照は、期待される結果に関する非統計的比較に利用できる。
【0132】
ステージ4
ステージ4では、参加者は、実験群(n=40)対対照群(n=20)に、2:1で無作為化される。対照群の投与スケジュールは、上記のステージ2と同じである。このステージでは、IV AMBなしで経口cAMBを使用できるかどうかを試験する。
【0133】
ステージ4の実験群は、1a)1日目~14日目までの経口cAMB、及び2a)1日目~14日目の経口5-FC、100mg/kg/日を含む導入療法を受ける。導入治療中に経口投与されたcAMBの投与量は、グレード2以下の有害事象を伴う9人の段階I試験参加者のうち6人が認容できることがわかった分割用量である。
【0134】
ステージ4試験の導入療法の後に、1b)15日目~6週目の経口cAMB;2b)15日目~10週目の経口フルコナゾール800mg/日、及び3b)その後のフルコナゾール200mg/日(維持療法)を含む強化治療ステージが続く。強化治療段階中に経口投与されたcAMBの投与量は、グレード2以下の有害事象を伴う9人の段階I試験参加者のうち9人が認容できることがわかった分割用量である。
【0135】
12番目の全体的な対象(ステージの20%)が>2週間のデータを収集した後、EFA CSFクリアランスのみに焦点を当てた早期の安全性レビューが行われる。この早期の安全性チェックは、EFA CSFのみに焦点を当てる。実験群のCSFクリアランス速度にいずれかの懸念がある場合は、より頻繁なレビューを実施することができる。24番目の対象(ステージの40%)が、≧4週間のフォローアップデータを収集した後の、CSFクリアランスEFA,安全性、及び忍容性のデータもまた評価された。調査員の懸念がない限り、登録は継続される。
【0136】
4つのステージすべての参加者は、診断時、3日目、5~7日目、10~14日目、さらに頭蓋内圧の制御とCSF滅菌の記録のために必要に応じて腰椎穿刺(LP)を受ける。最初の週に実施された治療用LPには、約70%の相対的な延命効果があった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
【国際調査報告】