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特表2022-544092一酸化窒素供与プロスタグランジン類似体の調製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】一酸化窒素供与プロスタグランジン類似体の調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 405/00 20060101AFI20221007BHJP
   C07C 203/04 20060101ALI20221007BHJP
   C07C 201/02 20060101ALI20221007BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALI20221007BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C07C405/00 503T
C07C203/04
C07C201/02
C07C405/00 503P
A61K31/5575
A61P43/00 112
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022506896
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020071766
(87)【国際公開番号】W WO2021023693
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】19189993.9
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516217239
【氏名又は名称】ニコックス エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アルミランテ,ニコレッタ
【テーマコード(参考)】
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA03
4C086DA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC12
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AB84
4H006AC48
4H006AC59
4H006BB15
4H006BB41
4H006BC10
4H006BC31
4H006BD70
(57)【要約】
本発明は、式(I)で示されるヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルを調製するための方法に関する。本発明によれば、ボロナート保護形態にあるビマトプロストを、高い化学純度を有する6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドとカップリングさせ、ボロナート保護基を除去することにより、化合物(I)を高純度で効率的に調製することができる。高い化学純度の6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドは、高い化学純度を有する6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸から調製される。本発明はまた、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸の調製及び精製のための方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

で示されるヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルの調製のための方法であって、下記工程:
1)化合物(II):
【化2】

を6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)
【化3】

と、遊離型の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で反応させて、化合物(III)
【化4】

を得る工程と、
2)化合物(III)のボロナート保護基を除去して、式(I)で示される化合物を得る工程と、
3)化合物(I)を精製する工程とを含み、
6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)は、下記工程:
4)2-カプロラクトン(V)
【化5】

をKOH、NaOHおよびLiOHから選択される無機塩基と反応させて、式(VI)
【化6】

[式中、Mは、K、Na又はLiである]
で示される6-ヒドロキシヘキサン酸塩を得る工程と、
5)式(VI)で示される化合物をHNOとHSOとの混合物でニトロ化して、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa):
【化7】

を得る工程と、
6)水中のギ酸(HO+HCOOH)及びアセトニトリルを溶出液として使用する逆相クロマトグラフィーにより、このニトロ化混合物を精製して、6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(化合物(VIIb))
【化8】

をHPLC検出限界未満(<0.05%)の含量で有する、純粋な式(VIIa)で示される6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を得る工程と、
7)純粋な6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)を塩素化剤と反応させて、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)を得る工程とを含む方法により調製されることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
工程1)を非プロトン性有機溶媒中で、0℃~室温の範囲の温度で行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
非プロトン性有機溶媒が、メチルtertブチルエーテルである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程1)において、化合物(II)と6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)とのモル比が、1:1.4~1:1.6であり、化合物(II)と4-ジメチルアミノピリジンとのモル比が、好ましくは、1:2.0~1:2.4である、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
工程4)において、無機塩基が、水酸化カリウムである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
工程4)をメタノール、エタノール又はイソプロパノールから選択される溶媒中で行う、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
溶媒が、メタノールである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程5)をジクロロメタン中で行う、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
工程6)において、水中のギ酸(HO+HCOOH)の濃度が、0.1%w/wである、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
工程6)において、化合物(VIIa)を含有するクロマトグラフィー画分をCHClで抽出し、乾燥させ、溶媒を蒸発させる、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
工程7)をジクロロメタン中で行い、塩素化剤が、塩化オキサリルである、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
工程7)で得られた6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドを更に精製することなく使用する、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
99%の純度を有し、0.05%未満の{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(化合物(VIIb))含量を有する、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(化合物(VIIa))の調製のための方法であって、下記工程:
4)2-カプロラクトン(V)
【化9】

をKOHと、メタノール中で反応させて、式(VI)
【化10】

[式中、Mは、Kである]
で示される6-ヒドロキシヘキサン酸塩を得る工程と、
5)式(VI)で示される化合物をHNOとHSOとの混合物により、ジクロロメタン中において、約5℃~10℃の温度、好ましくは、10℃でニトロ化する工程と、
6)水中の0.1% ギ酸とアセトニトリルとの溶液を溶出液として使用する逆相クロマトグラフィーにより、このニトロ化混合物を精製し、続けて、この画分をジクロロメタンで抽出して、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)
【化11】

を得る工程とを含む、
方法。
【請求項14】
98%超の化学純度を有し、
ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))を約0.12%の量で含み、
【化12】

ビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))を0.05%未満の量で含む、
【化13】

式(I)で示されるヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル。
【請求項15】
式(I)で示されるヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルと、少なくとも薬学的に許容し得る賦形剤とを含有し、
ここで、ヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルは、98%超の化学純度を有し、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))を約0.12%の量で含み、二量体不純物であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))を0.05%未満の量で含む、
医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)で示されるヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルの大規模製造に適した改善された方法に関する。この方法により、高い化学純度を有する前記生成物を得ることが可能となる。また、本発明は、合成の重要な中間体である、高純度な6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)の製造も記載する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
式(I)
【化1】

で示されるヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルは、IOP低下剤として有効であることが証明されているプロスタグランジン類似体である(Impagnatiello F, Toris CB, Batugo M, Prasanna G, Borghi V, Bastia E, Ongini E, Krauss AHP; Invest Ophthalmol Vis Sci. 2015; 56:6558-64)。
【0003】
式(I)で示される化合物を製造するための方法は、国際公開第2009/136281号に開示されている。
【0004】
国際公開第2009/136281号には、化合物(I)の合成及び一般的には、ビマトプロストの15-硝酸アルキルエステルの調製が具体的に開示されている。
【0005】
国際公開第2009/136281号には、ボロナート保護形態にあるビマトプロストを(化合物(II))を6-ブロモヘキサノイルクロリドと反応させて、ビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステルをボロナート保護形態(化合物(XI))で得、これをアセトニトリル中で硝酸銀により硝酸誘導体に変換し、逆相クロマトグラフィー下で脱保護/精製して、式(I)で示される化合物を生成することにより、式(I)で示される化合物を合成することが開示されている(実施例B-1)。
【化2】
【0006】
この方法の別の主な欠点は、不純物及び副生成物、例えば、ビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステル(化合物(IX))及びビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))が形成されることである。これらは、化合物(I)と類似するクロマトグラフィーにおける極性、類似する親油性及び/又は溶解性を有するため、複数回の精製後であっても除去するのが困難である。更に、化合物(X)は、細菌のin vitro変異原性について陽性であると予測される。これらの不純物の除去には、繰り返しの精製が必要であり、このため、収率は、更に低下し、商業的規模での製造コストが増加する。
【化3】
【0007】
国際公開第2009/136281号に開示されている手法によれば、ビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステル(化合物(IX))は、ボロナート保護の除去後の化合物(XI)と硝酸銀との未完了反応に由来する不純物である。ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))は、ボロナート保護形態にあるビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステル(化合物(XI))の臭素原子とエステル化工程中に形成される4-ジメチルアミノピリジン塩酸塩の遊離塩素アニオンとの間のハロゲン交換反応により形成される副生成物である。ボロナート保護形態にあるビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(XIa)(スキーム3)は、硝酸銀と反応せず、保護基を除去した後、化合物(X)を生成する。
【0008】
また、国際公開第2009/136281号には、15-アシルアルキルニトラートビマトプロスト誘導体(実施例N-1及びO-1)の調製のための代替的な方法も開示されている。合成は、ボロナート保護形態にあるビマトプロスト(式(II)で示される化合物)を硝酸-アルキルカルボン酸クロリドと、樹脂上に担持された4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(PS-DMAP)の存在下で反応させ、続けて、ボロナート保護基を除去し、シリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製することを含む。
【0009】
上記方法によれば、6-ブロモヘキサノイルクロリドの使用及び最終生成物からの銀塩の除去が回避される。ただし、この方法には、樹脂上に担持された4-ジメチルアミノピリジンを使用するという別の主な欠点があり、これにより、この方法は、商業的な規模拡大に適しておらず、高価である。更に、硝酸-アルキルカルボン酸クロリドが、2つの連続した工程において、式(II)で示される化合物に対して高過剰に加えられる。実際に、アルキルカルボン酸クロリドは、約2~4当量の量で加えられる。
【0010】
また、国際公開第2009/136281号には、15-アシルアルキルニトラートビマトプロスト誘導体の調製のための別の方法(実施例Q1)も開示されている。この方法において、この化合物は、ボロナート保護形態にあるビマトプロスト(II)を過剰の硝酸-アルキル-(p-ニトロフェニル)-カルボキシラートにより、4-ジメチルアミノピリジンの存在下でエステル化することにより得られた。
【0011】
クロマトグラフィー法を使用して、式(I)で示される化合物と等モル量で形成された未反応の硝酸-アルキル-(p-ニトロフェニル)-カルボキシラート及び副生成物であるp-ニトロフェノールを除去することが、この方法の主な欠点である。
【0012】
国際公開第2016/155906号には、フルプロステノールの15-ニトロオキシ誘導体が開示されており、フルプロステノールイソプロピルエステルの15-ニトロオキシ-ヘキシルエステルの合成が報告されている。この化合物は、ボロナート保護形態にあるフルプロステノールイソプロピルエステルを(4-ニトロフェニル)-6-ニトロオキシヘキサノエートと、過剰の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で反応させることにより調製された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記報告されたように、クロマトグラフィー法による未反応の硝酸-アルキル-(p-ニトロフェニル)-カルボキシラートの除去、特に、p-ニトロフェノール副生成物の除去が、この方法の主な欠点である。
【0014】
本発明の関連する日付の前に出願され、その後に公開された欧州特許出願公開第3530649号には、ヘキサン酸,6-(ニトロオキシ),(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))の調製のための方法が開示されている。化合物(I)は、ボロナート保護形態にあるビマトプロストを6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドとカップリングさせ、ボロナート保護基を除去することにより調製される。6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド中間体は、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル酸から調製される。6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル酸は、2-カプロラクトンの開環反応、続けて、ジクロロメタン中でのHNOとHSOとの混合物による6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩のニトロ化により調製される。6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸は、精製することなく対応するアシルクロリドの調製に使用される。
【0015】
過去数年間、種々の規制当局が、有効医薬成分(API)中の純度要件及び不純物の特定に重点を置いてきた。現在、原薬以外に、医薬品の有効性及び安全性に影響を及ぼす可能性のある不純物は、いずれも有機物質と考えられている。したがって、各不純物の特定及び不純物の定量、特に、突然変異原性についての構造的警戒を有する不純物の定量は、必須の規制要件となっている。加えて、この製品は、医薬用途が意図されているため、有効成分の合成に使用することができる工業的に許容し得る試薬、溶媒、触媒等の範囲は、医薬産業上許容されるものに限定される。
【0016】
式(I)で示される化合物は、油であり、その大量精製は、結晶化することができないため困難であり、したがって、不純物の存在は、大規模製造にとって重要な問題である。不純物の主な発生源は、合成の中間体及び副生成物であるため、中間体の純度及び反応条件の制御は、薬学的に許容し得る純度を有する最終生成物を得るための重要な要件である。
【0017】
まとめると、式(I)で示される化合物の調製のための先行技術の方法は、幾つかの欠点を有する。例えば、6-ブロモヘキサノイルクロリドの使用及び反応条件により、副生成物であるビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))が形成される。この副生成物は、統計に基づく方法と規制当局により要求される専門家の規則に基づく方法との両方に基づいて、細菌のin vitro変異原性について陽性であると予測される。中間体である硝酸-アルキルカルボン酸クロリドの調製又はボロナート保護形態にあるビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステル(化合物(XI))のニトロ化のための硝酸銀の使用により、大量の硝酸銀廃水の管理がもたらされ、更に、有効医薬成分中の金属含量は、特定の許容基準を満たさなければならない。
【0018】
このため、高純度のヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))を良好な収率で提供する、工業的に実行可能な方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
化合物(I)を、ボロナート保護形態にあるビマトプロスト(化合物(II))を6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドとカップリングさせることにより効率的に調製することができる。6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドは、カプロラクトンをアルカリ金属水酸化物溶液と開環反応させ、続けて、6-ヒドロキシヘキサン酸アルカリ金属塩を、HNOとHSOとの混合物を使用してニトロ化して、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸をもたらすことにより調製される。6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸は、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドに変換される。6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸及び6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドは、更に精製することなく使用される。しかしながら、本出願人により行われた実験から、この方法を使用して調製された化合物(I)は、「二量体不純物」であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))
【化4】

を含有することを示された。
【0020】
化合物(I)及び化合物(XII)は、クロマトグラフィーにおいて類似する極性を有するため、化合物(XII)を除去するには、プロセスの収率を低下させる反復精製が必要である。
【0021】
化合物(XII)は、6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサノイルクロリド(化合物(IVb))がカップリング工程中に化合物(II)と反応すると形成される。HNOとHSOとの混合物を使用して行われる6-ヒドロキシヘキサン酸アルカリ塩のニトロ化の酸性反応条件により、6-[6-ヒドロキシヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸不純物の形成がもたらされ、この不純物は、HNOの存在下で、硝酸誘導体である6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(化合物(VIIb))
【化5】

に変換されることが見出された。
【0022】
したがって、何ら精製することなくニトロ化反応の粗生成物を塩素化剤と反応させると、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)及び6-[6-ヒドロキシヘキサノイル]オキシ}ヘキサノイルクロリド(IVb):
【化6】

の形成がもたらされる。
【0023】
化合物(I)を高収率かつ高純度で得るための重要な要因は、高純度の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸中間体(VIIa)
【化7】

の使用であることが見出された。この中間体は、逆相クロマトグラフィーを使用して、ニトロ化反応の粗生成物を精製することにより得ることができる。
【0024】
本発明は、安全レベル未満の量の予測遺伝毒性不純物であるビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(X)及び0.1%w/w未満の量の「二量体不純物」であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサノイン酸エステル(化合物(XII))を含有する、ヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))を高収率で得ることを可能にする、大規模製造に適した方法を提供する。
【0025】
「安全レベル量」は、慢性処置のための1.5μg/日の毒性学的懸念の閾値(TTC)許容摂取量に従って計算される。
【0026】
更に、本発明は、高純度の式(VIIa)
【化8】

で示される6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸中間体の調製のための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の説明
本発明の目的は、式(I):
【化9】

で示されるヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルの調製のための方法であって、下記工程:
1)化合物(II):
【化10】

を6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)
【化11】

と、遊離型の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で反応させて、化合物(III)
【化12】

を得る工程と、
2)化合物(III)のボロナート保護基を除去して、式(I)で示される化合物を得る工程と、
3)化合物(I)を精製する工程とを含み、
6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)は、下記工程:
4)2-カプロラクトン(V):
【化13】

をKOH、NaOHおよびLiOHから選択される無機塩基と反応させて、式(VI):
【化14】

[式中、Mは、K、Na又はLiである]
で示される6-ヒドロキシヘキサン酸塩を得る工程と、
5)式(VI)で示される化合物をHNOとHSOとの混合物によりニトロ化して、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)
【化15】

を得る工程と、
(得られた生成物(VIIa)は、1%w/wの量の副生成物である6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(VIIb)
【化16】

を含有することができる)
6)水中のギ酸(HO+HCOOH)及びアセトニトリルを溶出液として使用する逆相クロマトグラフィーにより、このニトロ化混合物を精製して、化合物(VIIb)をHPLC検出限界未満(<0.05%)の含量で有する、純粋な式(VIIa)で示される6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を得る工程と、
7)純粋な6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)を塩素化剤と反応させて、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)を得る工程とを含む方法により調製されることを特徴とする、方法である。
【0028】
好ましくは、工程7)で得られた6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドを更に精製することなく、工程1)において、式(II)で示される化合物と直接反応させる。
【0029】
工程1)を0℃~室温の範囲の温度で行い、好ましくは、メチルtertブチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド又はジクロロメタンから選択される非プロトン性有機溶媒中で行うことが好ましい。最も好ましくは、有機溶媒は、メチルtertブチルエーテルである。遊離型の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)は、DMAPが樹脂に結合していないことを意味する。
【0030】
化合物(II)と6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)とのモル比は、好ましくは、1:1.4~1:1.6の範囲である。
【0031】
化合物(II)と4-ジメチルアミノピリジンとのモル比は、好ましくは、1:2.0~1:2.4の範囲である。
【0032】
工程2)において、ボロナート保護基の除去を好ましくは、17℃~24℃の温度でメタノールを使用して行う。
【0033】
工程4)において、使用される無機塩基は、好ましくは、水酸化カリウムである。
【0034】
工程4)を好ましくは、メタノール、エタノール又はイソプロパノール、最も好ましくは、メタノールから選択される溶媒中で行う。
【0035】
工程5)及び工程7)をジクロロメタン中で行う。
【0036】
工程6)において、水中のギ酸(HO+HCOOH)の濃度は、0.1%である。
【0037】
好ましくは、純粋な式(VIIa)で示される6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸は、化合物(VIIa)を含有する画分をCHClで抽出し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を蒸発させることにより得られる。
【0038】
工程7)で使用される好ましい塩素化剤は、塩化オキサリルである。
【0039】
化合物(II)は、ビマトプロストをブチルボロン酸と反応させることにより得られる。好ましくは、この反応を溶媒としてのメチルtertブチルエーテル中で行う。
【0040】
本発明の更なる目的は、以下に記載され、スキームI(スキームで報告される工程の参照符号は、上記報告されているものに対応する)で示される化合物(VIIa)の調製のための方法であり、
2-カプロラクトン(V)をKOHと、メタノール中で反応させて、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(式(VI)(式中、Mは、カリウムである)で示される化合物)得る工程4)と、
6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩をHNOとHSOとの混合物により、ジクロロメタン中において、好ましくは、約5℃~10℃、好ましくは、10℃の温度で反応させて、副生成物である6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(VIIb)を含有する粗製の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)を得る工程5)と、
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)と6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(VIIb)とを含有する粗混合物を、好ましくは、溶出液として90:10~75:25のHO+0.1%HCOOH/アセトニトリルを使用する逆相クロマトグラフィー、例えば、C18、25μ-標準型フラッシュカートリッジ等により精製し、化合物(VIIa)を含有する画分をCHClで抽出して、HPLC検出限界未満(<0.05%)の量の副産物である6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(VIIb)を含有する、純粋な6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)を得る工程6)とを含む、方法である。
【0041】
上記工程6)で得られた純粋な化合物(VIIa)を、工程7)において、純粋な6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を塩化オキサリルと反応させて、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)を得るのに使用することができる。6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)は、上記されたように、式(I)で示される化合物を得るための方法において、更に精製することなく使用される。
【0042】
式(I)で示される化合物を製造する好ましい方法は、スキーム2に示されており、前記好ましい方法は、下記工程:
ビマトプロストをブチルボロン酸(1.1~1.8当量)と、メチルtertブチルエーテル(MTBE)中において、約40℃の温度で反応させ、ついで、共沸蒸留により水を除去して、ビマトプロストボロナート(II)を得る工程1a)と、
ビマトプロストボロナート(II)を6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)(1.4~1.6当量)と、メチルtertブチルエーテル中において、4-ジメチルアミノピリジン(2.0~2.4当量)の存在下で、0℃~約室温の範囲の温度で反応させて、(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-(オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(III)を得る工程1)と、
(1S,2E)-3{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(III)をメタノールと室温で反応させて、保護基を除去し、粗製のヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルを得る工程2)と、
(粗製の反応混合物のHPLC定量分析から、約70%の含量の化合物(I)、約0.12%の量のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))及び0.05%のHPLC検出限界未満の量の二量体不純物であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))が検出される(表1を参照のこと)
クロマトグラフィーにより工程2の粗製の反応混合物を精製して、98%超の化学純度を有するヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)、約0.12%の量のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))及び0.05%のHPLC検出限界未満の量の二量体不純物であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))を得る工程3)とを含む。
【0043】
【化17】

【化18】
【0044】
本発明の方法の工程の実験手法を以下に詳細に記載する。
【0045】
本発明の更なる目的は、98%超の化学純度を有し、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))を約0.12%の量で含み、
【化19】

ビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))を0.05%未満の量で含む、
【化20】

式(I)で示されるヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルである。
【0046】
本発明の別の目的は、式(I)で示されるヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルと、少なくとも薬学的に許容し得る賦形剤とを含有し、
ここで、ヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルは、98%超の化学純度を有し、約0.12%の量のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))及び0.05%未満の量の二量体不純物であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))を含有する、医薬製剤である。
【0047】
一般的な合成
6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)の調製
全ての工程を窒素雰囲気下で行う。
【0048】
6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(化合物(VI))の調製
メタノール中の水酸化カリウム(1当量)の溶液をメタノール中の2-カプロラクトン溶液(1当量)に滴加し、この混合物を約5℃~20℃に冷却し、添加終了後、15℃~20℃で約5時間撹拌し、溶媒を除去し(温度は、40℃以下である)、粗生成物をメチルtertブチルエーテル中にスラリー化し、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩をろ過し、メチルtertブチルエーテルで洗浄し、乾燥させる。6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(VI)を95%の収率及び98.5%の純度(H-NMR及びHClアッセイ)で得る。
【0049】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(化合物(VIIa))の調製
6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(VI)(1当量)を0℃~5℃に冷却されたジクロロメタン中のHNO(4.6当量)とHSO(3.1当量)との混合物に、10℃未満の温度を保ちながら、窒素下で約30分間かけて少しずつ加え、得られた混合物を0℃~10℃で2~3時間撹拌し、H-NMR分析により反応の終了をモニターし、この混合物を0℃~5℃の温度に冷却し、飽和塩化ナトリウム水溶液を約20分間かけて滴加する。この反応混合物を10℃未満の温度に維持し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去して、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)を86~88%の収率及び96.2%のHPLC純度で得る。主な不純物は、二量体化合物である6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(化合物(VIIb))
【化21】

(約1%)である。
【0050】
粗製の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(化合物(VIIa))(1当量)をPurezza(登録商標)-SpheraPlus Flash Cartridges-C18、25μ-標準型フラッシュカートリッジ、48gにロードし、90:10~75:25でのHO+0.1% HCOOH/アセトニトリルで溶出する。化合物(VIIa)を含有する画分を集め、CHClで抽出し、乾燥させ、溶媒を蒸発させて、純粋な6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を80~90%の収率で得る。化合物(VIIa)のHPLC純度は、99%であり、化合物(VIIb)の含量は、0.05%未満である。
【0051】
6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(化合物(IVa))の調製
N,N-ジメチルホルムアミド及び塩化オキサリルを、溶液の温度を0℃~5℃に保ちながら、ジクロロメタン中の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸の溶液に1時間滴加し、ついで、この混合物を15℃~30℃で24時間撹拌し、溶媒を蒸発させて、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドを88~97%w/wの収率で得る。これを更に精製することなく使用する。
【0052】
ヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))の調製
全ての工程を窒素雰囲気下で行う。
【0053】
ビマトプロストをメチルtertブチルエーテルに加え、得られた溶液を約15℃~18℃に冷却し、続けて、n-ブチルボロン酸(1.11~1.18当量)を一度に加え、この混合物を40℃で約1~1.5時間撹拌する。反応の終了をHNMR分析によりモニターし、この反応混合物を約20℃~25℃に冷却し、ろ過し、形成された水を40℃以下の温度で、含水量が0.25%以下になるまで、メチルtertブチルエーテルの共沸蒸留により除去して、粗製のビマトプロストボロナート(化合物(II))を与える。これを更に精製することなく、次の工程で使用する。
【0054】
粗製のビマトプロストボロナート(化合物(II))をメチルtertブチルエーテルに加え、得られた溶液を約0℃~5℃に冷却し、4-ジメチルアミノピリジン(約2.1~2.3当量)を加え、メチルtertブチルエーテルに溶解させた6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(IVa)(1.5当量)を、混合物の温度を約0℃~5℃に保ちながら滴加する。添加後、この混合物を約0℃~5℃で最長4時間撹拌し、ついで、15℃~20℃まで一晩撹拌し、反応の終了をHPLC分析によりモニターし、(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(III))を標準的な後処理法により単離する(後処理の例を実施例1に記載する)。
【0055】
(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(III))をメタノール中に溶解させ、得られた溶液を17℃~25℃で約18時間撹拌し、化合物(III)の化合物(I)への変換をHNMRによりモニターする。反応が停止した場合、この混合物を蒸発させ、完全に変換するまで、新たなメタノールに再溶解させる。ついで、この反応混合物を真空下、40℃未満の温度で濃縮し、粗製のヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))を標準的な後処理法により単離する。
【0056】
粗反応混合物のHPLC定量分析により、約70%の含量の化合物(I)、約0.12%の量のビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))及び0.05%のHPLC検出限界未満の量の二量体不純物(化合物(XII))が検出される(表1を参照のこと)。
【0057】
粗反応混合物を、シリカゲルカラム及びジクロロメタンとメタノールとの混合溶媒を使用するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(I)をビマトプロストに対して60%w/w超の全収率で得る。
【0058】
化合物(I)のHPLC定量分析純度は、98%超であり、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))の量は、0.15%未満であり、二量体不純物(化合物(XII))の含量は、0.05%未満である。
【0059】
本発明の方法は、副生成物、特に、(S,E)-1-((1R,2R,3S,5R)-2-((Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エニル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-クロロヘキサノアート(化合物(X))及びビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステルの(化合物(XII))(この化合物は、細菌のin vitro変異原性について陽性であると予測される)を減少した量で有する、ヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)を高収率かつ高純度で提供する。
【0060】
上記利点により、本発明の方法は、工業規模に容易に移行可能な費用効果の高い方法となる。
【実施例
【0061】
実験例
以下に記載される全ての合成工程を窒素雰囲気下で行った。
【0062】
実施例1
ヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))の合成
6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(化合物(IV))の合成
工程1:6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(化合物(VI))の合成
メタノール(10ml)中の水酸化カリウム(1.98g、1当量)の溶液を15℃~20℃に冷却しながら調製し、メタノール(6ml)中の3.65g 2-カプロラクトン(1当量)の溶液に、5℃~20℃で0.5時間以内に加えた。この混合物を15℃~20℃で4.5時間撹拌した。この反応混合物を真空下(40℃以下の温度)で濃縮して、粗製の6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(6.10g)を与えた。この粗生成物をメチルtertブチルエーテル(10ml)中において、20℃~25℃で4時間再スラリー化し、ろ過し、メチルtertブチルエーテル(2×25ml)で洗浄し、真空下(40℃以下の温度)で乾燥させて、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(5.16g)を93.7%の収率で得た。融点208℃。
【0063】
工程2:6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(化合物(VIIa))の合成
発煙HNO(4.6当量)を濃HSO(3.1相当)に、0℃~5℃の温度で14分かけて加え、ついで、CHCl(20ml)を0℃~5℃の温度で12分かけて加えた。6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(10.13g、1当量)を10℃未満の温度で28分かけて少量ずつ加えた。この混合物を0℃~10℃で2.2時間撹拌し、この反応をH-NMRでモニターしたところ、99.9%の変換を示した。この混合物を0℃~5℃に冷却し、飽和塩化ナトリウム水溶液を10℃以下の温度で17分以内に注意深く添加した。ろ過後、有機層をデカントし、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下(40℃以下の温度)で濃縮して、9.15g 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(収率87.7%)を96.2%のHPLC純度及び0.75%の含量の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(化合物(VIIb))で得た。
【0064】
工程3:6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(化合物(VIIb))を含有する粗製の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(化合物(VIIa))の精製
1.5g 工程2で得られた粗製の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIa)をPurezza(登録商標)-SpheraPlus Flash Cartridges-C18、25μ-標準型フラッシュカートリッジ、48gにロードし、90:10~75:25でのHO+0.1% HCOOH/アセトニトリルで溶出した。78:22で溶出された化合物(VIIa)を含有する画分を集め、ついで、CHCl(3×150mL)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下、40℃未満の温度で濃縮して、99.5%超のHPLC純度及び0.05%未満の量の化合物(VIIb)を有する、1.04g 6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(収率69%)を与えた。
【0065】
工程4:6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(化合物(IVa))の合成
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(2.61g、1当量)をジクロロメタン(15ml)中に溶解させ、窒素下で0℃~5℃に冷却した。ついで、N,N-ジメチルホルムアミド(0.16ml)及び塩化オキサリル(1.93g)を0℃~5℃で34分以内に加えた。この反応混合物を0℃~5℃で3.5時間、ついで、15℃~20℃で14時間撹拌した。ついで、この反応混合物を真空下で濃縮し(温度は、40℃以下)、ジクロロメタンと共蒸発させて、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(化合物(IVa))(2.8g)を97%の収率で得た。
【0066】
工程5:(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1)オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))の合成
ビマトプロスト(2.3g、1当量)をメチルtertブチルエーテル(30ml)に溶解させ、ブチルボロン酸(0.62g、1.13当量)を加えた。この混合物を40℃に1時間加熱した。この反応を変換率が97%になるまで、HNMRによりモニターした。
【0067】
この反応混合物をメチルtertブチルエーテル(10ml)ですすぎ、この混合物を、共沸蒸留のために、真空下、約40℃の温度で加熱した。(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1)オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))の含水率が、0.25%以下になるまで、メチルtertブチルエーテルによるすすぎと共沸蒸留とを続けた。化合物(II)を定量収量(2.84g)で得た。
【0068】
工程6:(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル 6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(III))の合成
(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1)オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II)(3.21g、1当量)をメチルtertブチルエーテル(30ml)中に溶解させ、0℃~5℃に冷却した。4-ジメチルアミノピリジン(1.85g、2.27当量)を一度に加えた。メチルtertブチルエーテル(5ml)中の6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(化合物(IVa))(1.96、1.5当量)の溶液を0℃~5℃で1時間以内に滴加した。0℃~5℃で24分間及び15°~20℃で14.5時間攪拌後、この反応混合物を0℃~5℃で冷却し、脱イオン水を15℃の最高温度で20分以内に加えた。
【0069】
この混合物を5分間攪拌した。水層を廃棄した。有機層を1N 塩酸溶液、ついで、脱イオン水、最後に、ブラインで洗浄した。
【0070】
有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮して、(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル 6-(ニトロキシ)ヘキサノエアート(化合物(III))(4.1g,収率94%)を与えた。
【0071】
工程7:ヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)(化合物(I))の合成
(1S、2E)-3-{(6R、7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2、4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル 6-(ニトロキシ)ヘキサノアート(化合物(III))(4g 粗製物、1当量)をメタノール(30ml)中に溶解させ、得られた溶液をH-NMRにより反応をモニターしながら、室温で24時間撹拌した。ついで、メタノールを真空下、35℃~40℃で除去した。残留物をメチルtertブチルエーテルに溶解させ、脱イオン水、ついで、ブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下、40℃未満の温度で濃縮して、粗反応混合物(3.8g)を与えた。HPLC(% 面積)逆相定量分析後、この混合物は、この混合物中の化合物(I)の量が73%であり、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))の含量が0.11%であり、二量体不純物であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))の含量が0.05%未満であることを示した(表1を参照のこと)。
【0072】
残留物を、溶出液として95:5のジクロロメタン/メタノールを使用するシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけた。画分をTLCによりモニターし、純粋画分のみを混合し、真空下、40℃以下の温度で濃縮して、化合物(I)を98%超のHPLC純度で生成した。ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))の含量は、0.11%であり、二量体不純物であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))の含量は、0.05%未満であった。
【0073】
実施例2(比較例)
国際公開第2009/136281号に開示されている手法(以下のスキーム3)に従ったヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))の合成
工程A:(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1)オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))の調製
ブチルボロン酸(1.129当量)をジクロロメタン(16ml)中のビマトプロスト(1g、1当量)の溶液に加えた。この混合物を40℃に1時間加熱し、H-NMRにより反応の進行をモニターした。溶媒を減圧下で2時間除去した。ジクロロメタン(16ml)を加え、この混合物を40℃に更に1時間加熱した。溶媒を加圧下で40分間除去した。ジクロロメタン(16ml)を加え、この混合物を40℃に16時間加熱した。溶媒を蒸発させ、粗生成物を、高真空下、40℃で3時間乾燥させ、化合物(II)を定量収率で生成した。これを何ら更に精製することなく、次の工程で使用した。
MS:m/z=438[M+H]+
【0074】
工程B:(S,E)-1-((1S,5R,6R,7S)-3-ブチル-7-((Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル)-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタン-6-イル)-5-フェニルペンタ-1-エン-3-イル 6-ブロモヘキサノアート(化合物(XI))の合成
4-ジメチルアミノピリジン(1.1当量)及び6-ブロモヘキサノイルクロリド(1.15当量)を0~5℃に冷却したジクロロメタン(15.3ml)中の化合物(II)(0.8g、1当量)の溶液に加えた。この混合物を0℃~5℃で0.5時間及び20℃~25℃で16時間撹拌した。
【0075】
4-ジメチルアミノピリジン(0.25当量)及び6-ブロモヘキサノイルクロリド(0.25当量)を加え、この混合物を更に19時間撹拌した。この反応を変換が完了するまで、H-NMRによりモニターした。この混合物をジクロロメタン(15.3ml)で希釈し、有機溶液を脱イオン水(6.25ml)及びブライン(6.25ml)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、化合物(XI)を淡黄色の油状物として与えた(定量収率として計算)。これを更に精製することなく、次の工程で使用した。
【0076】
工程C:ヘキサン酸,6-(ニトロオキシ)-,(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))の合成
硝酸銀(3.72当量)をアセトニトリル(9.4ml)中の化合物(VIII)(0.8g、1当量)の溶液に加えた。この混合物を20℃~25℃で18時間撹拌した。変換をDMSO中でのH-NMRによりモニターした。
【0077】
硝酸銀(0.5当量)を加え、ついで、この混合物をHPLC分析が99.7%の変換を示すまで、更に20時間撹拌した。
【0078】
この混合物をWhatmanフィルターでろ過した。ろ液を真空下で濃縮した。残留物を酢酸エチル(30ml)に溶解させた。有機相を脱イオン水(5ml)及びブライン(5ml)で洗浄した。NaSOで乾燥させた後、層を真空下で濃縮した。残留物を、溶出液として95:5のジクロロメタン/メタノールを使用するシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけた。画分をTLCによりモニターし、純粋な画分を混合し、真空下、40℃以下の温度で濃縮して、4.27% ビマトプロストを伴う、86%の全収率で化合物(I)を生成した。
【0079】
HPLC(% 面積)逆相定量分析により、クロマトグラフィー後の化合物(I)の純度が、77%であり、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(X))の含量が、8.34%であることが示された。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に、本発明の方法(実施例1)及び国際公開第2009/136281号に開示されている方法(実施例2)による化合物(I)及び化合物(I)の調製中に形成された主な不純物のHPLC定量分析の結果を報告する。
【0082】
化合物(X)は、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステルであり、これは、細菌のin vitro変異原性について陽性であると予測される。結果から、本発明の方法は、0.11%の含量の化合物(X)及び0.05%の検出限界未満の含量の「二量体不純物」であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(化合物(XII))を伴う、化合物(I)を提供する。先行技術に開示された方法は、より低い化学純度及び8.34%の含量、すなわち、本発明の方法で形成される化合物(X)の量より30倍超多い含量の化合物(X)を有する化合物(I)をもたらす。
【0083】
結果から、本発明の方法は、先行技術に記載された方法を上回る改善を示すことが実証される。
【0084】
【化22】
【国際調査報告】