(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】発光窓部材および発光窓部材を備えた自動車
(51)【国際特許分類】
F21S 43/14 20180101AFI20221007BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20221007BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20221007BHJP
F21S 43/15 20180101ALI20221007BHJP
F21S 43/20 20180101ALI20221007BHJP
B60Q 1/26 20060101ALI20221007BHJP
B60Q 3/208 20170101ALI20221007BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20221007BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221007BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20221007BHJP
【FI】
F21S43/14
G02F1/13 505
G02F1/15 502
F21S43/15
F21S43/20
B60Q1/26 Z
B60Q3/208
B60J1/00 H
F21Y115:10 300
F21Y115:10 500
F21W103:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507494
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020071534
(87)【国際公開番号】W WO2021023620
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】102019121358.4
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ドープナー
(72)【発明者】
【氏名】フーベアト ハルプリッター
【テーマコード(参考)】
2H088
2K101
3K040
3K339
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088HA28
2H088MA20
2K101AA22
2K101DA01
2K101EA56
2K101EK05
3K040AA02
3K040BA01
3K040BA02
3K040CA05
3K040GC11
3K339AA31
3K339BA18
3K339BA21
3K339BA23
3K339CA30
3K339DA01
3K339FA05
3K339FA08
3K339GB08
3K339GB12
3K339GB23
3K339HA04
(57)【要約】
発光窓部材(100)が呈示され、これは透明な第1の支持体層(1)および透明な第2の支持体層(2)と、複数の発光半導体チップ(4)が載置された基板(3)と、透明度を調整可能な光学層(5)とを有し、複数の発光半導体チップを備えた基板および光学層は、第1の支持体層と第2の支持体層との間に配置されており、第1および第2の支持体層、複数の発光半導体チップを備えた基板ならびに光学層は、1つのラミネート複合体(10)を成している。さらに、少なくとも1つの発光窓部材(100)を備えた自動車(1000)が呈示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光窓部材(100)であって、
透明な第1の支持体層(1)および透明な第2の支持体層(2)と、
複数の発光半導体チップ(4)が載置された基板(3)と、
透明度を調整可能な光学層(5)と、
を有し、
前記複数の発光半導体チップを備えた前記基板および前記光学層は、前記第1の支持体層と前記第2の支持体層との間に配置されており、
前記第1の支持体層および前記第2の支持体層、前記複数の発光半導体チップを備えた前記基板ならびに前記光学層は、1つのラミネート複合体(10)を成している、
発光窓部材(100)。
【請求項2】
前記第1の支持体層と前記基板との間に、前記第1の支持体層と前記基板とに直に隣接して、第1の接合層(11)が配置されている、
請求項1記載の発光窓部材。
【請求項3】
前記第2の支持体層と前記光学層との間に、前記第2の支持体層と前記光学層とに直に隣接して、第2の接合層(12)が配置されている、
請求項1または2記載の発光窓部材。
【請求項4】
前記光学層とは向き合っていない前記基板の側に、前記発光半導体チップの電気的接触接続のための導体路(31)が取り付けられている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項5】
前記発光半導体チップ各々は1mm
2以下の面積を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項6】
直に隣り合う発光半導体チップ同士は、0.5mm以上でありかつ5mm以下の間隔を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項7】
前記発光半導体チップはマトリックスディスプレイの一部分である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項8】
前記光学層は、透明度を互いに別個に調整可能な複数のセグメントを有する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項9】
前記セグメント各々に前記発光半導体チップの少なくとも1つが配置されている、
請求項8記載の発光窓部材。
【請求項10】
前記光学層は、エレクトロクロミック素子、サーモクロミック素子または液晶素子を有する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項11】
前記光学層は前記基板上に取り付けられている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項12】
前記光学層と前記基板との間に第3の接合層(13)が配置されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項13】
前記光学層は前記基板の少なくとも一部分を成している、
請求項1から10までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の発光窓部材(100)を備えた自動車(1000)であって、
前記発光窓部材は、サイドウィンドウガラス(1001)またはリアウィンドウガラス(1002)として形成されており、当該自動車の内部空間と向き合った発光半導体チップ(4)の側に光学層(5)が配置されている、
自動車(1000)。
【請求項15】
請求項1から13までのいずれか1項記載の発光窓部材(100)を備えた自動車(1000)であって、
前記発光窓部材は、ルーフウィンドウガラス(1003)として形成されており、当該自動車の内部空間とは向き合っていない発光半導体チップ(4)の側に光学層(5)が配置されている、
自動車(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発光窓部材および発光窓部材を備えた自動車が呈示される。
【0002】
自動車において特定の用途のために、1つまたは複数の窓を介して、たとえば少なくとも1つのサイドウィンドウガラスおよび/またはリアウィンドウガラスを介して、一時的に光をたとえば情報表示のために自動車周囲に放射することが望ましいとされ得る一方、自動車内部空間に同時に放射されるのを回避したい。スイッチオフ状態では、かかる窓を再びできるかぎり透明であるようにしたい。
【0003】
特定の実施形態の少なくとも1つの課題は、発光窓部材を呈示することである。特定の実施形態の少なくとも1つの別の課題は、発光窓部材を備えた自動車を呈示することである。
【0004】
この課題は、独立請求項に記載の保護対象によって解決される。従属請求項には、保護対象および方法の有利な実施形態および発展形態の特徴が記載されており、それらについては以下の説明および図面からさらに明らかになる。
【0005】
少なくとも1つの実施形態によれば、発光窓部材は少なくとも1つの発光半導体チップを有する。少なくとも1つのさらに別の実施形態によれば、自動車は発光窓部材を有する。以下の説明は、発光窓部材およびこの発光窓部材を備えた自動車に等しく関係するものである。ここでは、および以下では、「光」、「透過率」および「透明度」といった表現は、特段の記載がないかぎり可視光に関係するものである。発光窓部材を1つのウィンドウの一部分とすることができ、または発光窓部材は好ましくはそのウィンドウを成すことができる。換言すれば、1つのウィンドウは発光窓部材を有することができ、または1つのウィンドウを発光窓部材とすることができる。用語「窓」および「窓部材」は広義で理解されたい。特にこれらの用語には、固定窓または可動窓あるいはそれらの少なくとも一部分を含めることができ、つまり好ましくは、少なくとも部分領域において少なくとも1つの動作状態では透き通って光を通す平面的な物体を含めることができ、したがってこの動作状態では観察者は、第1の側から発光窓部材を通して第2の側を、およびその逆を、眺めることができる。さらにこの用語には、たとえば壁などの構成部材も含めることができ、たとえば間仕切り、ドアおよび天井またはそれらの少なくとも一部分などを含めることができる。
【0006】
さらに別の実施形態によれば、発光窓部材は、第1の動作状態では少なくとも1つの放出領域において、第1の強度を有する光を第1の側に放射し、第1の強度よりも小さい第2の強度を有する光を第2の側に放射するために、設けられ構成されている。これに加え、第2の側に放射される光をたとえば拡散性とすることができる。さらに第2の強度をゼロまたは実質的にゼロとすることもでき、これによって第2の側には第1の動作状態では、まったくまたは実質的にまったく光が放射されない。第1の動作状態では、放出領域が非透光性に見えるようにすることができ、または少なくとも拡散透光性にしか見えないようにすることができる。発光窓部材が光を放出しない第2の動作状態では、放出領域を第1の動作状態よりも透明であるようにすることができる。特に第2の動作状態では放出領域を、少なくとも部分的に透き通って光を通すように、つまりは透明であるようにすることができる。
【0007】
さらに別の実施形態によれば、発光窓部材は複数の発光半導体チップを有する。発光半導体チップが配置されている領域は、放出領域を成すことができる。発光半導体チップ各々は、個々の半導体チップの動作中に光を放射可能なアクティブ領域を有する。発光半導体チップ各々を、照射すべき所望の波長次第で、種々の半導体材料系ベースの半導体層列として製造することができる。長い波長の赤外線から赤色の放射のためにはたとえば、InxGayAl1-x-yAsベースの半導体層列が適しており、赤色から黄色の放射のためにはたとえば、InxGayAl1-x-yPベースの半導体層列が適しており、短い波長の可視光放射のためには、つまりは特に緑色から青色の光の領域では、かつ/または紫外線放射のためにはたとえば、InxGayAl1-x-yNベースの半導体層列が適しており、ここでそれぞれ0≦x≦1、0≦y≦1かつx+y≦1が適用される。
【0008】
特に発光半導体チップは、つまりここでは、および以下では、複数の発光半導体チップのうち厳密に1つの発光半導体チップは、またはいくつかの発光半導体チップは、または好ましくはすべての発光半導体チップは、半導体層列、特に好ましくはエピタキシャル成長させられた半導体層列、を有することができ、またはそれから成るものとすることができる。この目的で半導体層列を、エピタキシャル法を用いて、たとえば有機金属気相エピタキシー(MOVPE)または分子線エピタキシー(MBE)を用いて、成長基板上で成長させることができ、さらにこの半導体層列に電気接点を設けることができる。成長させられた半導体層列を含む成長基板を個別化することによって、複数の発光半導体チップを用意することができる。さらに半導体層列を、個別化前に支持体基板に移して、成長基板を薄くすることができ、または完全に除去することができる。基板として成長基板の代わりに支持体基板を有するこの種の発光半導体チップは、いわゆる薄膜半導体チップと呼ばれる場合もある。
【0009】
薄膜半導体チップは、特に以下の独特な特徴の点で優れている。すなわち、
・支持体基板と向き合った、放射を生成するエピタキシャル層列の第1の主表面に、反射層が取り付けられており、または形成されており、この反射層は、エピタキシャル層列において生成された電磁放射の少なくとも一部分を、エピタキシャル層列内に反射して戻し、
・エピタキシャル層列は、20μmまたはそれよりも僅かな範囲、特に4μm~10μmの範囲の厚さを有し、さらに
・エピタキシャル層列は、混合構造を有する少なくとも1つの面を備えた少なくとも1つの半導体層を含み、この混合構造によって理想的には、エピタキシャル成長によるエピタキシャル層列においてほぼエルゴード的な光分布がもたらされ、つまりエピタキシャル層列はできるかぎりエルゴード的に確率的な散乱特性を有する。
【0010】
薄膜半導体チップは、良好な近似においてランベルト表面放射器である。薄膜発光ダイオードチップの基本原理はたとえば、刊行物I.Schnitzer等著、Appl.Phys.Lett.63(16),1993年10月18日、2174~2176頁に記載されている。
【0011】
発光半導体チップの電気コンタクトを、半導体層列のそれぞれ異なる側に、または同じ側に、配置することができる。たとえば発光半導体チップは、半田付け可能または接着可能なコンタクト面の形態で、基板において半導体層列に対向して位置する側に、電気コンタクトを有することができる。半導体層列において基板に対向して位置する側にさらに別のコンタクト面を、たとえばボンディングワイヤを用いて接触接続するためのいわゆるボンディングパッドの形態で、形成することができる。さらに発光半導体チップは、たとえば半田付け可能または接着可能なコンタクト面として、同じ側に電気コンタクト面を有することができ、この発光半導体チップを、コンタクト面で導電性支持体上に取り付け可能ないわゆるフリップチップとして形成することができる。これに加え発光半導体チップは、半導体層列の同じ側にボンディングパッドとして形成された2つのコンタクト面を有することもできる。
【0012】
さらに別の実施形態によれば、発光窓部材は、少なくとも1つの発光半導体チップ、好ましくは複数の発光半導体チップ、が載置された基板を有する。特に好ましくは、発光半導体チップは基板上に取り付けられており、電気的に接続されている。基板は好ましくは、たとえばガラスおよび/またはプラスチックを含む、あるいはガラスおよび/またはプラスチックから成るプレートまたはフィルムの形態で、透明材料を有する。
【0013】
発光半導体チップの電気的接触接続のために、基板は好ましくは導体路を有する。導体路は、透明導電性酸化物および/またはたとえば銅のような金属を有することができる。透明導電性酸化物(TCO:“transparent conductive oxide”)は透明な導電性の材料であり、一般に金属酸化物、たとえば酸化亜鉛、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化インジウム、または酸化インジウムスズ(ITO)などである。TCOのグループには、たとえばZnO、SnO2またはIn2O3のような二元金属酸素化合物のほか、三元金属酸素化合物、たとえばZn2SnO4、CdSnO3、ZnSnO3、MgIn2O4、GaInO3、Zn2In2O5またはIn4Sn3O12など、または種々の透明導電性酸化物の混合物なども属する。さらにここで考えられるのは、TCOが必ずしも化学量論的組成に一致していないかもしれず、p型ドーピングまたはn型ドーピングされている場合もある、ということである。金属を含むまたは金属から成る導体路のケースでは、基板の透明度にできるかぎり僅かにしか影響を及ぼさないようにする目的で、導体路は好ましくは僅かな幅を有する。たとえば導体路は、数μm~数10μmの幅を有する。たとえば導体路は、5μm以上または10μm以上でありかつ50μm以下または20μm以下の幅を有する。1つの好ましい実施形態によれば、導体路は約15μmの幅を有する。
【0014】
特に好ましくは、発光窓部材はいわゆるマイクロ発光ダイオードを有し、つまりは1mm2以下の面積、好ましくは0.5mm2以下、特に好ましくは0.1mm2以下の面積を有する発光半導体チップを有する。特に好ましくは発光半導体チップは、500μm以下、または200μm以下、または100μm以下、または60μm以下でありかつ10μm以上の寸法を有する。直に隣り合う発光半導体チップ同士は好ましくは、0.5mm以上でありかつ5mm以下の間隔を有する。
【0015】
発光半導体チップを、マトリックスディスプレイの一部分とすることができる。換言すれば、発光半導体チップは、たとえば矩形または正方形または六角形のマトリックスといったマトリックス形態で、基板上に配置されており、たとえばパッシブマトリックスまたはアクティブマトリックスとして互いに結線されている。特にアクティブマトリックスのケースであれば、発光半導体チップ各々に1つまたは複数のトランジスタを割り当てることができ、それらをたとえば付加的に基板上に配置することができる。さらに発光半導体チップ各々を固有のマイクロ支持体によって基板上に配置することができ、この場合、マイクロ支持体はたとえば、1つまたは複数のトランジスタを含む電子シリコンデバイスとして形成されており、その際にマイクロ支持体は、発光半導体チップの寸法に少なくとも実質的に一致する寸法を有する。
【0016】
さらに別の実施形態によれば、発光窓部材は、透明度を調整可能な光学層を有する。特に好ましくは、発光半導体チップは、上述の第1の側であり光学層とは向き合っていない基板の側に取り付けられている。したがって発光半導体チップの電気的接触接続のための導体路も、光学層とは向き合っていない基板の側に取り付けられている。
【0017】
光学層は好ましくは、エレクトロクロミック素子、サーモクロミック素子、または液晶素子を有し、またはかかる素子として形成されている。エレクトロクロミック素子または液晶素子のケースでは、光学層は、エレクトロクロミック材料または液晶材料の形態の電気光学材料を、2つの電極層の間に有することができる。電圧および/または電流を印加することによって、電気光学材料の透過率特性を変化させることができ、このようにすることで光学層の透明度を調整可能とすることができる。サーモクロミック素子のケースでは、光学層はサーモクロミック材料を有することができ、この材料をたとえば、発光半導体チップの動作熱によって、または少なくとも1つの加熱電極層によって、その透過率特性に関して変化させることができる。たとえば、透過率特性を変化させるための光学層の材料次第で、散乱挙動および/または吸収および/または反射に関する特性を可変とすることができる。光学層の構成次第で、それぞれ異なる透過率を有する少なくとも2つの状態間において、透明度を離散的または連続的に調整可能とすることができ、これら2つの状態を上述の第1および第2の動作状態に割り当て可能とすることができる。
【0018】
光学層を、発光窓部材の面全体にわたり延在させることができ、または択一的に部分面にわたって延在させることができる。特に光学層は、放出領域の上方に配置されており、つまり発光半導体チップが載置されている基板の一部分の上方に配置されている。発光半導体チップから見て上述の第2の側に配置されている光学層によって、上述の第1の動作状態では第2の側には、発光半導体チップから生成される光がほとんど放射されず、またはそれどころか第1の側に比べるとまったく光が放射されない、というようにすることができる。光学層を、1つのつながった機能素子として形成することができ、したがってその全体でその透明度に関して調整可能とすることができる。これに対し択一的に、光学層は、透明度を互いに別個に調整可能な複数のセグメントを有することもできる。これによって発光窓部材の種々の領域について、それぞれ異なる透明領域を調整することができる。特に好ましくは、セグメントの少なくともいくつかに、好ましくは各々に、発光半導体チップの少なくとも1つが配置されている。
【0019】
さらに別の実施形態によれば、発光窓部材は、透明な第1の支持体層と透明な第2の支持体層とを有する。第1の支持体層は上述の第1の側に配置されているのに対し、第2の支持体層は上述の第2の側に配置されている。これらの支持体層は好ましくはガラスを含み、またはガラスから成る。択一的にまたは付加的に、プラスチックも考えられる。1つまたは複数の発光半導体チップを備えた基板および光学層は、第1の支持体層と第2の支持体層との間に配置されている。特に好ましくは支持体層を、ガラス層またはプラスチック層の形態の自立型単層とすることができ、あるいは発光窓部材の外層を成すガラス-プラスチック接合層とすることができる。支持体層は好ましくは1mm以上の厚さを有することができ、たとえば3mmの厚さを有することができる。特に単層のケースでは、支持体層は好ましくは5mm以下の厚さを有することができる。
【0020】
特に好ましくは、第1および第2の支持体層、発光半導体チップを備えた基板ならびに光学層は、1つのラミネート複合体を成している。第1の支持体層と基板との間に、好ましくは第1の支持体層に直に隣接して、または基板に直に隣接して、または第1の支持体層と基板とに直に隣接して、第1の接合層を配置することができる。第2の支持体層と光学層との間に、好ましくは第2の支持体層に直に隣接して、または光学層に直に隣接して、または第2の支持体層と光学層とに直に隣接して、第2の接合層を配置することができる。接合層は好ましくは、それぞれ隣接する要素を互いに接着するそれぞれ1つの接合材料を有する。たとえば適切な接合材料は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリアクリレート(PA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、および/またはポリウレタン(PUR)を有することができ、あるいはこれらから成るものとすることができる。第1および第2の接合層を、第1の支持体層と第2の支持体層との間の領域を満たし、かつ複数の発光半導体チップを備えた基板と光学層とが内部に配置された、1つにつながった単一の接合層の一部分としてもよい。支持体層同士は好ましくは、800μm以上の間隔を有することができ、この場合、複数の発光半導体チップを備えた基板および光学層は、これらを合わせても支持体層間の間隔より小さい厚さを有する。第1および第2の支持体層により形成され、発光半導体チップを備えた基板と光学層とが内部に配置されている中間空間から、好ましくは電気導線が引き出され、それらの導線を用いることによって、発光半導体チップおよび場合によっては光学層を電気的に制御することができる。特に好ましくは、必要とされるすべての電気導線をフラットリボンケーブルの形態で引き出すことができる。択一的にたとえば、誘導素子を介したコネクション、つまりは非接触コネクションも考えられる。
【0021】
光学層と基板との間に第3の接合層を配置することができる。第3の接合層は、第1および第2の接合層について述べたような特性および特徴を有することができる。さらに光学層を好ましくは直に、基板上に取り付けることができる。しかも光学層は、基板の少なくとも一部分を成すことができる。換言すれば、光学層を基板と一体化することができ、または光学層は発光半導体チップのための基板を成すことができる。
【0022】
さらに別の実施形態によれば、自動車は少なくとも1つの窓部材を有し、この窓部材は、1つの自動車ウィンドウガラスの少なくとも一部分として、または自動車ウィンドウガラス全体として、形成されている。自動車ウィンドウガラスをたとえば、サイドウィンドウガラス、リアウィンドウガラス、ルーフウィンドウガラス、および前照灯ガラスから選択することができる。自動車は複数の窓部材を有することもでき、それらのいずれも1つの自動車ウィンドウガラスの少なくとも一部分であり、またはかかる自動車ウィンドウガラスを成している。自動車は好ましくは自家用車、トラック、バス、または他の商用車両である。
【0023】
たとえば発光窓部材は、1つのサイドウィンドウガラスまたは1つのリアウィンドウガラスの少なくとも一部分であり、あるいは1つのサイドウィンドウガラスまたはリアウィンドウガラスを成している。しかも自動車は複数の窓部材を有することもでき、それらの窓部材は1つの自動車ウィンドウガラスのそれぞれ一部分であり、またはそれぞれ1つの自動車ウィンドウガラスを成している。サイドウィンドウガラスまたはリアウィンドウガラスのケースでは、発光窓部材を特に、自動車内部空間と向き合った発光半導体チップの側に光学層が配置されているように、形成することができる。これによって外部空間に、つまり自動車周囲に、発光半導体チップを用いて光を放出することができ、これと同時に内部空間を発光半導体チップの光から少なくとも部分的に遮蔽することができる。一例として発光窓部材を、たとえば自律走行または宣伝に関連する情報の表示のために用いることができる。発光半導体チップが光を放射しないときには、発光窓部材が好ましくは透明であるようにすることができる。さらに発光窓部材を前照灯ガラスの少なくとも一部分とすることができ、この場合、発光窓部材の配置および構成を、サイドウィンドウガラスまたはリアウィンドウガラスのケースのようにすることができる。
【0024】
さらに、発光窓部材を1つのルーフウィンドウガラスの一部分とすることもでき、または発光窓部材は1つのルーフウィンドウガラスを成すこともできる。ルーフウィンドウガラスを、たとえば自動車のサンルーフとすることができる。ルーフウィンドウガラスのケースでは、発光窓部材を好ましくは、自動車内部空間とは向き合っていない発光半導体チップの側に光学層が配置されているように、形成することができる。このようにすることによって、発光半導体チップを用いて自動車内部空間に光を放射することができる一方、外部空間の方向で光学層を通過する発光半導体チップの光を少なくとも弱めることができ、または完全に阻止することができる。たとえばこのことにより自動車の走行動作中、たとえば運転者の注意および警戒に役立つ青みがかった照明の形態で、自動車の適切な内部空間照明を実現することができる。これと同時に、自動車周囲へのこの光の不所望な放射を阻止することができる。これに対し、発光半導体チップが光を放射しないときには、発光窓部材が透明であるようにすることができる。さらに、「ヒューマンセントリックライティング」の分野に属する他の用途も考えられる。これに加え、自動車および多数市場に関係する分野に属する他の用途も考えられる。
【0025】
本明細書で説明する発光窓部材において達成可能であるのは、光放出時に光が少なくとも主として1つの側のみに向けて放射され、光放出遮断時には発光窓部材が少なくとも部分的に透明である、ということである。光学層によって、光放出動作中に特に、第2の側に向かって反射させられる散乱光が少なくとも減衰させられる、または反射して戻される、ということを回避することもできる。かかる散乱光をたとえば、表面の粗さ、種々の材料および/または種々の屈折率によって発生させることができる。光学層の制御を、第1の動作状態において段階的にまたは連続的に行うことができ、これによって拡散散乱の度合いまたは反射率を適宜に調整することができる。
【0026】
さらに別の利点、有利な実施形態および発展形態は、以下で図面を参照しながら説明する実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】1つの実施例による発光窓部材を概略的に示す図である。
【
図1B】1つの実施例による発光窓部材を概略的に示す図である。
【
図1C】1つの実施例による発光窓部材を概略的に示す図である。
【
図1D】1つの実施例による発光窓部材を概略的に示す図である。
【
図2】さらに別の実施例による発光窓部材を概略的に示す図である。
【
図3】さらに別の実施例による発光窓部材を概略的に示す図である。
【
図4】さらに別の実施例による発光窓部材を備えた自動車を概略的に示す図である。
【0028】
実施例および図面において、同じ要素、同種の要素、または同じように作用する要素には、それぞれ同じ参照符号が付されている場合がある。描かれている要素およびそれら相互間のサイズ比を、縮尺どおりであると見なしてはならず、たとえば層、部品、構成要素および領域といった個々の要素は、見やすくするために、かつ/または理解しやすくするために、むしろ誇張されたサイズで描かれている場合がある。
【0029】
図1A~
図1Dには、発光窓部材100に関する実施例が示されている。
図1Aには、発光窓部材が第1の動作状態で示されているのに対し、
図1Bには、発光窓部材100が第2の動作状態で示されている。
図1Cおよび
図1Dには、発光窓部材100の抜粋図が示されている。以下の説明は、
図1A~
図1Dに等しく関係する。
【0030】
発光窓部材100は、
図1Aに示されている第1の動作状態では少なくとも1つの放出領域において、第1の強度を有する光を第1の側に放射し、第1の強度よりも小さい第2の強度を有する光を第2の側に放射するために、設けられ構成されている。図示の実施例の場合、放出領域は特に好ましくは、発光窓部材100の面全体と一致している。図示の実施例の場合、第1の側は、
図1Aおよび
図1Bにおいて発光窓部材100の上方に垂直方向に位置する領域であるのに対し、第2の側は、発光窓部材100の下方に垂直方向に位置する領域である。
図4を参照しながらもっとあとで述べるように、発光窓部材100が自動車に組み込まれている場合には、第1の側をたとえば自動車周囲とすることができる一方、第2の側は自動車内部空間である。これに対し択一的に、第1の側を内部空間とすることもできる一方、第2の側は外部空間であり、つまりは自動車周囲である。
【0031】
図1Bに示されている第2の動作状態では、発光窓部材100は光を放出しない一方、放出領域は第1の動作状態よりも透明である。
図1Bに示唆されているように、この動作状態ではたとえば周囲からの光99が、発光窓部材100を少なくとも部分的に貫通している。特に第2の動作状態では放出領域を、つまりは図示の実施例の場合には発光窓部材100全体を、少なくとも部分的に透き通って光を通すように、つまりは透明であるようにすることができる。
【0032】
発光窓部材100は、透明な第1の支持体層1と透明な第2の支持体層2とを有する。第1の支持体層1は上述の第1の側に配置されているのに対し、第2の支持体層2は上述の第2の側に配置されている。支持体層1、2は、ガラスおよび/またはプラスチックを有し、あるいはガラスおよび/またはプラスチックから成る。特に好ましくは支持体層1、2は、ガラス層またはプラスチック層の形態の自立型単層であり、あるいは発光窓部材100の外層を成すガラス-プラスチック接合層である。換言すれば、支持体層1、2は、第1および第2の側で発光窓部材100の境界を成している。支持体層1、2は好ましくは1mm以上の厚さを有し、たとえば3mmの厚さを有する。特に単層のケースでは、支持体層1、2は好ましくは5mm以下の厚さを有する。
【0033】
第1の支持体層1と第2の支持体層2との間に、複数の発光半導体チップ4を備えた基板3と光学層5とが配置されている。図示されているように、第1および第2の支持体層1、2、発光半導体チップ4を備えた基板3ならびに光学層5は、1つのラミネート複合体10を成している。第1の支持体層1と基板3との間にはこれに加えて、少なくとも第1の支持体層1または基板3にまたはこれら双方に、図示されているように好ましくは直に隣接して、第1の接合層11が配置されている。第2の支持体層2と光学層5との間には、第2の支持体層2または光学層5にまたはこれら双方に、図示されているように好ましくは直に隣接して、第2の接合層12が配置されている。これらに加え図示の実施例によれば、光学層5と基板3との間には、図示されているように特に好ましくはこれらに直に隣接して、第3の接合層13が配置されている。接合層11、12、13は好ましくは、それぞれ隣接する要素を互いに接着するそれぞれ1つの接合材料を有する。たとえば適切な接合材料は、ポリビニルブチラール(PVB)またはエチレン酢酸ビニル(EVA)を有することができ、あるいはこれらから成るものとすることができる。さらに接合層11、12、13について、概要説明セクションで先に挙げた他の材料も考えられる。接合層11、12、13を、第1の支持体層1と第2の支持体層2との間の領域を満たし、かつ複数の発光半導体チップ4を備えた基板3と光学層5とが内部に配置された、1つにつながった単一の接合層の一部分としてもよい。支持体層1、2同士は、好ましくは800μm以上の間隔を有する。したがって発光半導体チップ4を備えた基板3および光学層5は、これらを合わせても支持体層1、2間の間隔より小さい厚さを有する。
【0034】
発光半導体チップ4は、第1の動作状態では、かなり前に述べたように少なくとも第1の側に放射される光49を放出するために、設けられ構成されている。発光半導体チップ4は、概要説明セクションにおいて述べたように、放射すべき所望の波長に応じて選択され、たとえばヒ化物、リン化物または窒化物である半導体材料を含む、またはかかる半導体材料から成る半導体層列41を有する。所望の放射特性次第で、発光半導体チップ4は同色の光またはそれぞれ異なる色の光を放射することができる。図示の実施例によれば、発光半導体チップ4は、例示にすぎないがフリップチップとして形成されており、電極42の形態の電気接点を有し、これらの電極42は半導体層列41の同じ側に配置されており、これらの電極42によって発光半導体チップ4が、基板3上にたとえば半田付けまたは導電性接着剤を用いて取り付けられている。択一的に考えられるのは、フリップチップとして形成された発光半導体チップ4をコンタクトパッドの側で、つまり電気接点を有する側で、上に向けて透明接着剤を用いて接着し、後ろ側からあとで導体路と接続することもできる、ということである。このケースでは、発光半導体チップ4は動作中、基板3を通して放射する。この場合に考えられるのはたとえば、発光半導体チップ4を備えた基板3を、この基板3が第1の支持体層1と発光半導体チップ4との間に配置されているように、
図1Aおよび
図1Bに示されている配置からすればそれらとは逆に配置することができる、ということである。択一的に、たとえば概要説明セクションで述べたように、他のチップ構造形態も考えられる。
【0035】
基板3は、たとえばガラスおよび/またはプラスチックを含む、あるいはガラスおよび/またはプラスチックから成るプレートまたはフィルムの形態で、透明材料を有する。発光半導体チップ4の電気的接触接続のために、基板3はさらにたとえば導体路31を有する。導体路31は、たとえば酸化インジウムスズ(ITO)のような透明導電性酸化物、および/またはたとえば銅のような金属を有することができ、あるいはこれらから成るものとすることができる。さらに、概要説明セクションで先に挙げた他の材料も考えられる。導体路31が不透明材料から成る場合には、発光窓部材100の透光性にさほど影響を及ぼさないようにする目的で、導体路31ができるかぎり狭いと有利である。たとえば導体路31は、数μm~数10μmの幅を有し、特に5μm以上または10μm以上でありかつ50μm以下または20μm以下の幅を有する。好ましくは、導体路31は約15μmの幅を有する。
【0036】
発光半導体チップ4を特に好ましくは、いわゆるマイクロ発光ダイオードとして形成することができ、つまりは1mm2以下の面積、好ましくは0.5mm2以下、特に好ましくは0.1mm2以下の面積を有する発光半導体チップとして、形成することができる。特に好ましくは発光半導体チップは、500μm以下、または200μm以下、または100μm以下、または60μm以下でありかつ10μm以上の寸法を有する。直に隣り合う発光半導体チップ同士は好ましくは、0.5mm以上でありかつ5mm以下の間隔を有する。発光半導体チップを特に、マトリックスディスプレイの一部分とすることができ、基板3上に矩形または正方形または六角形のマトリックスで配置することができ、たとえばパッシブマトリックスまたはアクティブマトリックスとして互いに結線することができる。特にアクティブマトリックスのケースであれば、発光半導体チップ各々に1つまたは複数のトランジスタ(図示せず)を割り当てることができ、それらをたとえば付加的に基板上に配置することができる。さらに発光半導体チップ各々を固有のマイクロ支持体(図示せず)によって基板上に配置することができ、この場合、マイクロ支持体はたとえば、1つまたは複数のトランジスタを含む電子シリコンデバイスとして形成されており、その際にマイクロ支持体は、発光半導体チップの寸法に少なくとも実質的に一致する寸法を有する。
【0037】
光学層5は、エレクトロクロミック素子、サーモクロミック素子、または液晶素子を有し、またはかかる素子として形成されている。
図1Dに抜粋図として示唆されているエレクトロクロミック素子または液晶素子のケースでは、光学層5はたとえば、ガラスおよび/またはプラスチックを含む、またはガラスおよび/またはプラスチックから成る2つの透明なカバー層、ならびにたとえばTCOを含む、またはTCOから成る2つの透明電極層51の間に、エレクトロクロミック材料または液晶材料の形態で電気光学材料52を有することができる。電圧および/または電流を印加することによって、電気光学材料52の透過率特性を変化させることができ、このようにすることで
図1Aおよび
図1Bに示唆されているように、光学層5の透明度を調整可能である。かかる素子の構造は当業者に知られており、したがってここではこれ以上詳しくは説明しない。サーモクロミック素子のケースでは、光学層5はサーモクロミック材料を有し、この材料をたとえば、発光半導体チップ4の動作熱によって、または少なくとも1つの加熱電極層によって、その透過率特性に関して変化させることができる。光学層5を大面積で制御できるよう、電気光学材料またはサーモクロミック材料および場合によっては電極層を、大面積として構造を与えずに配置することができる。かくして光学層5を、1つのつながった機能素子として形成することができ、したがってその全体でその透明度に関して調整可能とすることができる。これに対し択一的に、光学層5つまりはこの光学層5の上述の素子に対し、
図1Dに破線で示唆されているように、透明度を互いに別個に調整可能な複数のセグメントとなるように、構造を与えることもできる。これによって発光窓部材100の種々の領域について、それぞれ異なる透明度を調整することができる。特に好ましくは、セグメントの少なくともいくつかに、好ましくは各々に、発光半導体チップ4の少なくとも1つが配置されている。
【0038】
発光半導体チップ4により定められる放出面ならびに光学層5を、それぞれ発光窓部材100の面全体にわたり延在させることができ、または択一的に部分面にわたってのみ延在させることができる。透過率特性を変化させるための光学層5の材料次第で、散乱挙動および/または吸収および/または反射に関する特性を可変とすることができる。光学層5の構成次第で、それぞれ異なる透過率を有する少なくとも2つの状態間において、透明度を離散的または連続的に調整可能とすることができ、これら2つの状態を上述の第1および第2の動作状態に対応させることができる。たとえば、発光半導体チップ4から放射されて第2の側の方向にたとえば散乱させられた光49’が反射させられるように、または図示されているように吸収されるように、光学層5を形成することができ、このようにすることによって上述の第1の動作状態では、第1の側に比べると第2の側へは、発光半導体チップ4から生成された光49がほとんど放射されず、またはそれどころか光がまったく放射されない、というようにすることができる。たとえば第2の側に放射される光を拡散性とすることもできる。かくして発光窓部材100が放出領域において第1の動作状態では、非透光性に見えるようにすることができ、または少なくとも拡散透光性にしか見えないようにすることができる。
【0039】
第1の支持体層1と第2の支持体層2との間に形成されていて、発光半導体チップ4を備えた基板3と光学層5とが内部に配置されている中間空間から、電気導線(図示せず)が引き出され、それらの導線を用いることによって、発光半導体チップ4および場合によっては光学層5を電気的に制御することができる。特に好ましくは、必要とされるすべての電気導線をフラットリボンケーブルの形態で引き出すことができる。択一的にたとえば、誘導素子を介したコネクション、つまりは非接触コネクションも可能である。
【0040】
図2および
図3には、さらに別の実施例による発光窓部材100の変形が示されている。
図2に示唆されているように、光学層5を基板3上に直に取り付けることができる。このケースではたとえば、光学層5の電極層のうちの1つを基板3上に直に取り付けることができる。したがって基板3はこのケースでは、発光半導体チップ4のためと、光学層5の機能層のための支持体として同時に用いられる。さらにここで考えられるのは、
図3に示唆されているように、光学層5が基板3の少なくとも一部分を成すようにし、つまりは基板3と一体化されているようにすることも可能である、ということである。換言すれば、光学層5はこのケースでは、発光半導体チップ4のための基板3を成すことができ、したがってたとえば、
図1A~
図1Dを参照しながら説明したカバー層のうちの1つに、発光半導体チップ4のための導体路を設けることができる。
【0041】
図4には、自動車1000に関する実施例が上面図として示されており、この自動車1000は、これまで述べてきた実施例による少なくとも1つまたは複数の発光窓部材100を有する。例示にすぎないが3つの発光窓部材100が示されており、ただし自動車1000は、これよりも僅かなまたはこれよりも多い発光窓部材100を有することができる。
【0042】
発光窓部材100を特に、1つの自動車ウィンドウガラスの少なくとも一部分として、または自動車ウィンドウガラス全体として、形成することができる。たとえば発光窓部材100は、サイドウィンドウガラス1001として、または少なくともその一部分として形成されている。択一的にまたは付加的に、発光窓部材100を、破線で示唆されているように、1つのリアウィンドウガラス1002の一部分として形成することができ、またはこれに対し択一的に発光窓部材100は、リアウィンドウガラス1002を成すこともできる。サイドウィンドウガラスまたはリアウィンドウガラスのケースでは、発光窓部材100は好ましくは、自動車1000の内部空間と向き合った発光半導体チップの側に光学層が配置されているように、形成されている。これによって、先に述べた第1の動作状態では、発光半導体チップの光から内部空間を少なくとも部分的に遮蔽し、外部空間には、つまり自動車1000の周囲には、発光半導体チップによって光を放出させるようにすることができる。たとえば発光窓部材100をこのケースでは、たとえば自律走行または宣伝に関連する情報の表示のために用いることができる。第2の動作状態では、対応する自動車ウィンドウガラスを透明とすることができる。よって、たとえば非自律動作時には第2の動作状態の形態で透明モードをアクティブにすることができ、この状態では発光半導体チップは、車両と周囲とのコミュニケーション用のインジケータとしては必要とされず、したがって非アクティブである。これと同時に、運転者のための視界が損なわれない。発光半導体チップがアクティブである自動車の自律動作中であるならば、発光窓部材を減光するまたは不透明にすることができ、そのようにすることで光は主として外側に向かって放射され、車両乗員は妨害されない。さらに第1の動作状態を、内部空間への反射が十分に減衰されて運転者が妨害されることがないという理由で、非自律動作中でも選択することができる。その際に光学層を付加的にまたは択一的に、鏡または反射器として用いることもできる。さらに発光窓部材100を前照灯ガラスの少なくとも一部分とすることができ、この場合、発光窓部材100の配置および構成を、サイドウィンドウガラスまたはリアウィンドウガラスのケースのようにすることができる。
【0043】
択一的にまたは付加的に、発光窓部材100を1つのルーフウィンドウガラス1003の一部分とすることもでき、または図示されているように発光窓部材100がルーフウィンドウガラス1003を成すこともでき、これはたとえば自動車1000のサンルーフである。ルーフウィンドウガラスのケースでは、発光窓部材100は好ましくは、自動車1000の内部空間とは向き合っていない発光半導体チップの側に光学層が配置されているように、形成されている。このようにすることによって、発光半導体チップを用いて自動車1000の内部空間に光を放射することができる一方、外部空間の方向で光学層を通過する発光半導体チップの光が少なくとも弱められる。たとえばこのことにより自動車1000の走行動作中、第1の動作状態において、たとえば運転者の注意および警戒を促進可能な青みがかった照明の形態で、自動車の適切な内部空間照明を実現することができる。第2の動作状態では、ルーフウィンドウガラス1003が透明であるようにすることができ、既述のサンルーフとして機能させることができる。
【0044】
図面を参照しながら説明した特徴および実施例を、さらに別の実施例に従い互いに組み合わせることができ、このことは、たとえすべての組み合わせが明示的には述べられていないにせよ可能である。さらに、図面を参照しながら説明した実施例は、択一的または付加的に概要説明セクションに記載されたさらに別の特徴を有することができる。
【0045】
実施例に基づく説明によって、本発明がそれらの実施例に限定されてしまうものではない。むしろ本発明は、あらゆる新たな特徴ならびに特徴のあらゆる組み合わせを含むものであり、このことは特に、特許請求の範囲における特徴のあらゆる組み合わせを、たとえそれらの特徴またはそれらの組み合わせ自体が明示的に特許請求の範囲または実施例に記載されないにしても、包含するものである。
【0046】
本出願は、独国特許出願第102019121358.4号の優先権を主張するものであり、ここで参照したことによりその開示内容が取り込まれるものとする。
【符号の説明】
【0047】
1 第1の支持体層
2 第2の支持体層
3 基板
4 発光半導体チップ
5 光学層
10 ラミネート複合体
11 第1の接合層
12 第2の接合層
13 第3の接合層
31 導体路
41 半導体層列
42 電極
49、49’ 光
50 カバー層
51 電極層
52 電気光学材料
99 周囲光
100 発光窓部材
1000 自動車
1001 サイドウィンドウガラス
1002 リアウィンドウガラス
1003 ルーフウィンドウガラス
【手続補正書】
【提出日】2022-02-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光窓部材(100)であって、
透明な第1の支持体層(1)および透明な第2の支持体層(2)と、
複数の発光半導体チップ(4)が載置された基板(3)と、
透明度を調整可能な光学層(5)と、
を有し、
前記複数の発光半導体チップを備えた前記基板および前記光学層は、前記第1の支持体層と前記第2の支持体層との間に配置されており、
前記第1の支持体層および前記第2の支持体層、前記複数の発光半導体チップを備えた前記基板ならびに前記光学層は、1つのラミネート複合体(10)を成して
おり、
前記発光半導体チップ各々は1mm
2
以下の面積を有し、
直に隣り合う発光半導体チップ同士は、0.5mm以上でありかつ5mm以下の間隔を有する、
発光窓部材(100)。
【請求項2】
前記第1の支持体層と前記基板との間に、前記第1の支持体層と前記基板とに直に隣接して、第1の接合層(11)が配置されている、
請求項1記載の発光窓部材。
【請求項3】
前記第2の支持体層と前記光学層との間に、前記第2の支持体層と前記光学層とに直に隣接して、第2の接合層(12)が配置されている、
請求項1または2記載の発光窓部材。
【請求項4】
前記光学層とは向き合っていない前記基板の側に、前記発光半導体チップの電気的接触接続のための導体路(31)が取り付けられている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項5】
前記発光半導体チップはマトリックスディスプレイの一部分である、
請求項1から
4までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項6】
前記光学層は、透明度を互いに別個に調整可能な複数のセグメントを有する、
請求項1から
5までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項7】
前記セグメント各々に前記発光半導体チップの少なくとも1つが配置されている、
請求項
6記載の発光窓部材。
【請求項8】
前記光学層は、エレクトロクロミック素子、サーモクロミック素子または液晶素子を有する、
請求項1から
7までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項9】
前記光学層は前記基板上に取り付けられている、
請求項1から
8までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項10】
前記光学層と前記基板との間に第3の接合層(13)が配置されている、
請求項1から
9までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項11】
前記光学層は前記基板の少なくとも一部分を成している、
請求項1から
8までのいずれか1項記載の発光窓部材。
【請求項12】
請求項1から
11までのいずれか1項記載の発光窓部材(100)を備えた自動車(1000)であって、
前記発光窓部材は、サイドウィンドウガラス(1001)またはリアウィンドウガラス(1002)として形成されており、当該自動車の内部空間と向き合った発光半導体チップ(4)の側に光学層(5)が配置されている、
自動車(1000)。
【請求項13】
請求項1から
11までのいずれか1項記載の発光窓部材(100)を備えた自動車(1000)であって、
前記発光窓部材は、ルーフウィンドウガラス(1003)として形成されており、当該自動車の内部空間とは向き合っていない発光半導体チップ(4)の側に光学層(5)が配置されている、
自動車(1000)。
【請求項14】
発光窓部材(100)であって、
透明な第1の支持体層(1)および透明な第2の支持体層(2)と、
エピタキシャル成長させられた半導体層列を有する複数の発光半導体チップ(4)が載置された基板(3)と、
透明度を調整可能な光学層(5)と、
を有し、
前記複数の発光半導体チップを備えた前記基板および前記光学層は、前記第1の支持体層と前記第2の支持体層との間に配置されており、
前記第1の支持体層および前記第2の支持体層、前記複数の発光半導体チップを備えた前記基板ならびに前記光学層は、1つのラミネート複合体(10)を成しており、
前記光学層は、透明度を互いに別個に調整可能な複数のセグメントを有する、
発光窓部材(100)。
【請求項15】
発光窓部材(100)であって、
透明な第1の支持体層(1)および透明な第2の支持体層(2)と、
複数の発光半導体チップ(4)が載置された基板(3)と、
透明度を調整可能な光学層(5)と、
を有し、
前記複数の発光半導体チップを備えた前記基板および前記光学層は、前記第1の支持体層と前記第2の支持体層との間に配置されており、
前記第1の支持体層および前記第2の支持体層、前記複数の発光半導体チップを備えた前記基板ならびに前記光学層は、1つのラミネート複合体(10)を成しており、
前記第1の支持体層と前記基板との間に、前記第1の支持体層と前記基板とに直に隣接して、第1の接合層(11)が配置されており、
前記第2の支持体層と前記光学層との間に、前記第2の支持体層と前記光学層とに直に隣接して、第2の接合層(12)が配置されており、
前記第1の接合層および前記第2の接合層は、1つにつながった単一の接合層の一部分である、
発光窓部材(100)。
【国際調査報告】