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特表2022-544136繊維を案内するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】繊維を案内するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 57/12 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
B65H57/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507521
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 US2020045189
(87)【国際公開番号】W WO2021026344
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/883,832
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520047510
【氏名又は名称】ゾルテック コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】モーリス ゲリ
(72)【発明者】
【氏名】アーパッド ルミー
【テーマコード(参考)】
3F110
【Fターム(参考)】
3F110BA04
3F110BA05
3F110DA07
3F110DB01
3F110DB12
3F110DB15
(57)【要約】
繊維処理システムにおいて繊維を案内する繊維ガイド。繊維ガイドは、繊維が表面の上流側から表面の下流側へ向かう方向に通過することができる複数の開口を含む表面を有する。複数の開口は、互いに隣接し、互いに間隔を置いて配置された少なくとも一対の開口を含む。第1の開口の入口は、第2の開口の入口からオフセットされている。このオフセットは、繊維が表面の上流側から表面の下流側へ通過する方向である。第1の開口の入口と第2の開口の入口との間の距離d1は、繊維が通過できる方向に対して横方向に測定された第1の開口と第2の開口との間の距離d2よりも大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維処理システムにおいて繊維を案内するように構成された繊維ガイドであって、
前記繊維ガイドは、
前記繊維が表面の上流側から表面の下流側への方向に通過することができる複数の開口を画定する表面であって、各開口は、前記表面の前記上流側から前記繊維を受け取るように配置された入口を含む、表面を有し、
前記複数の開口は、互いに隣接し、互いに間隔を置いて配置された少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口を有し、
前記少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口のうちの前記第1の開口の前記入口は、前記少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口のうちの前記第2の開口の前記入口からオフセットされ、該オフセットは前記繊維が前記表面の前記上流側から前記表面の前記下流側へ通過できる方向にあり、前記第1の開口の前記入口と前記第2の開口の前記入口との間の距離d1は、前記繊維が通過できる方向に対して横方向に測定された前記第1の開口と前記第2の開口との間の距離d2よりも大きい、繊維ガイド。
【請求項2】
前記表面を画定するボードと、選択された複数の開口に対応する位置で前記ボードに結合された複数のアイレットと、をさらに備え、該複数のアイレットは前記選択された複数の開口の前記入口を画定する、請求項1に記載の繊維ガイド。
【請求項3】
前記第1の開口の前記入口は前記ボードの前記表面からオフセットされている、請求項2に記載の繊維ガイド。
【請求項4】
前記第1の開口の前記入口と前記第2の開口の前記入口との間の距離d1は25.4mm以上であり、前記繊維が通過できる方向に対して横方向に測定された前記第1の開口と前記第2の開口との間の距離d2は25.4mm未満である、請求項1に記載の繊維ガイド。
【請求項5】
繊維処理システムであって、
繊維の供給源と、
前記繊維の供給源から下流側に配置された繊維ガイドであって、該繊維ガイドは前記繊維が前記繊維の供給源から受け取られるときに前記繊維を案内するように構成された、繊維ガイドと、を有し、
前記繊維ガイドは、
前記繊維が表面の上流側から表面の下流側への方向に通過することができる複数の開口を画定する表面であって、各開口は、前記表面の前記上流側から前記繊維の一部を受容するように配置された入口を含む、表面を有し、
前記複数の開口は、互いに隣接し、互いに間隔を置いて配置された少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口を有し、
前記少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口のうちの前記第1の開口の前記入口は、前記少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口のうちの前記第2の開口の前記入口からオフセットされ、該オフセットは前記表面の前記上流側から前記表面の前記下流側へ前記繊維が通過できる方向にあり、それによって、前記繊維が通過できる方向に対して横方向に測定された前記第1の開口と前記第2の開口との間の距離d2と比較して、前記第1の開口の前記入口と前記第2の開口の前記入口との間の距離d1を増加させる、繊維処理システム。
【請求項6】
前記繊維ガイドは前記表面を画定するボードと、選択された複数の開口に対応する位置で前記ボードに結合された複数のアイレットと、を更に含み、前記複数のアイレットは、前記選択された複数の開口の前記入口を画定する、請求項5に記載の繊維処理システム。
【請求項7】
上流位置と下流位置との間の実質的に平行な経路に沿って移動する繊維を案内するためのシステムであって、
前記システムは、
少なくとも一対の繊維案内通路を画定する繊維ガイドであって、前記上流位置と前記下流位置との間に配置される繊維ガイドを有し、
各繊維案内通路は、前記繊維が前記上流位置と前記下流位置との間を移動するときに前記繊維の一部を受け入れるように構成された案内開口を有し、各案内開口は案内面によって画定され、
前記一対の繊維案内通路は互いに間隔を置いて配置されているが、互いに近接して配置され、
前記一対の繊維案内通路のうちの該繊維案内通路の一方の前記案内開口の前記案内面は、前記一対の繊維案内通路のうちの該繊維案内通路の他方の前記案内開口の前記案内面に近接し、
前記一対の繊維案内通路のうちの該繊維案内通路の一方の前記案内開口の前記案内面の位置は、前記一対の繊維案内通路のうちの該繊維案内通路の他方の前記案内開口の前記案内面に対する前記経路に沿った方向において上流に位置している、システム。
【請求項8】
繊維処理システムにおいて繊維を案内するための方法であって、
前記方法は、
表面の上流側から表面の下流側への方向で表面に画定された複数の開口を通して繊維を通過させるステップであって、各開口は、前記表面の前記上流側から前記繊維の一部を受容するように配置された入口を有する、ステップと、
互いに隣接し、互いに離間する少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口を維持するステップであって、前記少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口のうちの前記第1の開口の前記入口が前記少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口のうちの前記第2の開口の前記入口からオフセットされるようにし、該オフセットは前記表面の前記上流側から前記表面の下流側へ前記繊維が通過する方向にあり、それによって、前記繊維が通過する方向に対して横方向に測定された前記第1の開口と前記第2の開口との間の距離d2と比較して、前記第1の開口の前記入口と前記第2の開口の前記入口との間の距離d1を増加させる、方法。
【請求項9】
前記繊維を選択された複数の開口に対応する位置でボードに画定された複数の開口と前記ボードに結合された複数のアイレットを通過させるステップをさらに含み、前記複数のアイレットは前記選択された複数の開口の前記入口を画定する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
繊維ガイドに堆積する繊維を低減する繊維ガイドを構成する方法であって、
前記繊維ガイドは、表面の上流側から表面の下流側への方向に繊維が通過することができる複数の開口を画定する表面を有し、
前記方法は、
互いに隣接し、互いに間隔を置いて配置された少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口を維持するステップと、
前記少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口のうちの前記第1の開口の入口を、前記少なくとも一対の第1の開口及び第2の開口のうちの前記第2の開口の入口からオフセットするステップであって、該オフセットは前記表面の前記上流側から前記表面の前記下流側へ前記繊維が通過する方向にあり、それによって、前記繊維が通過する方向に対して横方向に測定された前記第1の開口と前記第2の開口との間の距離d2と比較して、前記第1の開口の前記入口と前記第2の開口の前記入口との間の距離d1を増加させる、方法。
【請求項11】
複数のアイレットを選択された複数の開口に対応する位置でボードに結合するステップをさらに含み、前記複数のアイレットは前記選択された複数の開口の前記入口を画定する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維処理装置、特に繊維強化複合材料における強化材として使用されることが意図された繊維のための繊維処理装置に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は「SYSTEM AND METHOD FOR GUIDING FIBERS」と題する、令和1年8月7日に出願された米国仮特許出願第62/883,832号明細書の優先権を主張し、その内容は、全ての目的のためにその全体が基準により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
工業的環境での繊維加工は、通常は繊維の束の形態である移動する繊維を1つの場所から別の場所に案内することを必要とする。そのような移動の過程で、移動する繊維はしばしば、少なくとも1つの、通常は2つ以上の移動しないガイド、例えば、アイレット、又は他のそのような案内面と接触することによって案内されることが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、移動する繊維は、このような複数の静止点又は表面と接触する。これらの接触点では、摩擦が存在し、束の中の繊細な繊維が壊れやすく、その結果、繊維の束(トウ(tow)と呼ばれることもある)が千切れることがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、繊維処理システムにおいて繊維を案内するように構成された繊維ガイドが提供される。繊維ガイドは表面の上流側から表面の下流側への方向に繊維が通過することができる複数の開口を画定する表面を含み、各開口は、表面の上流側から繊維を受け取るように配置された入口を有する。複数の開口は互いに隣接し、間隔を置いて配置された少なくとも一対の第1及び第2の開口を含む。少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第1の開口の入口は少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第2の開口の入口からオフセットされており、このオフセットは、繊維が表面の上流側から表面の下流側に通ることができる方向にある。第1の開口の入口と第2の開口の入口との間の距離d1は、繊維が通過できる方向に対して横方向に測定された第1の開口と第2の開口との間の距離d2よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は本発明の実施形態で使用することができるアイレットの例を示す。
図2図2は破断した繊維を示す。
図3図3はアイレットを通って平行に走る糸を示す。
図4図4はアイレットを通って平行に走る糸を示す。
図5図5はアイレットを通って平行に走る糸を示す。
図6図6はアイレットボードを示す。
図7図7はアイレットを通って平行に走る糸を示す。
図8図8は本発明の態様によるアイレットボードの実施形態を示す。
図9図9は発明の態様によるアイレットボードの別の実施形態を示す。
図10図10は毛糸収集の結果を経時的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、複合材料を強化するために使用される繊維など、繊維の処理中に、毛羽又は綿毛及び単一の繊維又は糸又はトウの破損及び付随する堆積及び蓄積を減少させる繊維ガイドを提供する。繊維ガイドは一連の開口を含み、これらの開口は、アイレットで裏打ちされていてもよく、又はアイレットがその中に取り付けられていてもよい。複数の開口は、互いに特定の関係で配置される。複数のアイレットそれら自身は、幾何学的形状及び材料特性を有する。
【0007】
繊維強化複合材料の製造において、より具体的には、繊維がガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維、又は他の繊維材料であってもよい。これらの繊維は、典型的には繊維の単一の繊維から構成される単一の糸又はトウの形態である。上述のように、加工されている間に、これらの単一の繊維は破断する傾向があり、トウ又は糸の形態であるかにかかわらず、繊維の束の細断を引き起こす。
【0008】
「毛羽」又は「綿毛」の形態の細断された繊維は堆積する傾向があり、その後、時には破断する。このように、堆積物は繊維の束と共に下流に移動し、プロセス装置上に集まることがある。さらに、繊維の破断は失われた原料を表し、これは経済的な問題である。したがって、本発明は、既存の繊維プロセス装置の動作を妨害することなく、この繊維破損を最小限に抑える方法を提供する。
【0009】
複合材料は一緒に加工されるために、各々が個々の繊維の束からなる多数のトウ又は糸を必要とする。良好な性能のために、糸は個別に案内されるべきである。特定の形状の繊維を集めるための1つのよくある解決策は、多数の開口が形成されたボードのような表面を使用することである。したがって、繊維、又は糸の形態の繊維は、ボードの複数の開口を通って供給され、繊維処理作業においてそれらを案内する。したがって、これらの開口はそれぞれ、各トウ又は糸のための案内面を画定する。これらの開口は、典型的には各トウ又は糸のための個々の案内面として作用する「アイレット」によって画定されるか、又は「アイレット」で裏打ちされてもよい。以下の説明では、用語「開口」及び「アイレット」が処理中に繊維が通過するアイレットボード内の開口又は案内開口を画定する構造のタイプを指すものと理解されるべきである。
【0010】
図1は、多数の各種例示的なそのようなアイレットの写真を示す。これらの例示的なアイレットは全て、断面がほぼ円形であるが、角、長方形、半円など、他の断面形状も可能である。さらに、これらのアイレットはほぼ環状であるが、一方の側が開いていてもよく、例えば、湾曲した側又は直線の側のいずれかを有する、断面が「U」字形又は「C」字形であってもよい。
【0011】
アイレットボード上の互いに対してこれらのアイレットで裏打ちされ得る複数の開口の配置は、破壊する繊維の量において役割を果たすことが発見されている。これらの要因については、以下の説明で詳細に説明する。
【0012】
隣接する(近接する)複数のアイレットに対する複数の開口/アイレットの相対位置に関して、これらのアイレットは「上流」側、すなわち、ボード内の複数の開口の入口に取り付けられ、したがって、多数のトウ又は糸を、繊維処理中に同じ方向に案内することができる。これらのボードは、「アイレットボード」とも呼ばれる。
【0013】
簡単に上述したように、繊維のいわゆる「毛羽」又は「綿毛」の堆積物は、これらのアイレットボード上に堆積する傾向がある。この堆積は、繊維加工ラインの破壊をもたらす。繊維をスプールからつりかご(creel)に案内するアイレットボード上への繊維のこの堆積は、毛羽の堆積が実質的である場合、繊維と共に下流側に移動して複合材料製造ラインの次の工程に向かうので、繊維強化複合材料の繊維加工及び製造において課題である。毛羽堆積を有する繊維のトウ/糸が下流処理のための位置に到達すると、毛羽堆積に付着したトウ/糸束内の繊維が破断することがあり、次いで、隣接する繊維も破断することがある。
【0014】
図2は、繊維、例えばトウ又は糸の繊維の束の上のこのような毛羽又は綿毛の堆積の開始段階の写真である。写真に見られるように、毛羽は、接触点(通常はアイレット)でのトウの細断の結果として、多数の個々の破断繊維を含む。
【0015】
アイレットボード上の典型的な毛羽堆積プロセスは、以下の通りである。
ステップ1は、図3に概略的に示されている。糸又はトウとも呼ばれる2つの繊維10、12の束は矢印の方向に平行に走り、断面図で概略的に示されるアイレット14、16で裏打ちされ得る別個の開口に入る。これらのアイレットは同じ表面、この場合はアイレットボード18とも呼ばれるボード上に取り付けられる。単一の切断された繊維20が糸10から切断されている。繊維20の第1の端部22はこの時点では自由であるが、繊維20の残りの部分はトウ10内の繊維の束内に依然として同伴されていることに留意されたい。
【0016】
ステップ2は図4に概略的に示されている。図4に示すように、破断した繊維20の第1の端部22がアイレットボード18の隣接するアイレット16又は開口の上流側に近づくと、破断した繊維の端部22はアイレット16を通って移動する隣接する糸又はトウ12の間に挟まれる。図4に示すように、矢印は、トウ10及び12が移動している方向を示す。従って、自由端部22は隣接するトウ12内に巻き込まれ、トウ10内に巻き込まれている単一の繊維20の残りはトウ10の残りと共に引っ張られる。
【0017】
ステップ3は、図5に概略的に示されている。自由端部22はアイレット16とトウ12との間に挟まれているので、繊維20の他端はトウ10の残りの部分によってアイレット14を通って引っ張られる。従って、図5に示すように、繊維20は、2つのアイレット14と16との間に堆積する。これらのステップ1~3を何度も繰り返すことによって、繊維20は、2つの隣接するアイレット14及び16の間に堆積し、それによって、2つのアイレットの間、すなわち、アイレットボード表面の隣接する開口の間で、U字形又はブリッジの形をとり、大量の毛羽立ちが発生する。より多くの繊維が堆積されると、アイレット又は開口上の摩擦が増大し、それによって、アイレット又は開口内に捕捉された破断した繊維を横切って引っ張られるにつれて、より多くの繊維が破断するので、破断の周期が加速する傾向があることを理解することができる。
【0018】
図6は、アイレットボードの表面にアイレットで並べられた2つのそのような隣接する複数の開口の間に構築された、そのようなU字形毛羽堆積の一例の写真である。このような毛羽立堆積が時間の経過とともに繊維の損失を引き起こすという直接的な問題に加え、毛羽堆積が大きくなりすぎると、トウや糸と一緒に移動してしまい、繊維加工作業の次のステップに悪い影響を与えることになる。例えば、毛羽は小穴に堆積し、2つの穴の間を橋渡しする。毛羽の堆積が大きくなると、ついにトウと一緒に移動する。下流のスロットプレートに到達すると、通過することができず、繊維が千切れ、さらに隣の繊維も千切れ、その結果、トウが失われてしまうことになる。
【0019】
驚くべきことに、本発明者らは、この現象が互いに近位にある2つの開口/アイレット間の距離が破壊された単一の繊維の長さよりも長い場合に、有意に消失する傾向があることを突き止めた。典型的には、この最小距離がZoltek Corporationから入手可能なP35炭素繊維のような典型的な炭素繊維については25.4mm又は2.5cmである。しかし、ほとんどの場合、アイレットボードの目的は、糸が下流側の処理において、形状に形成されるか、又は複合体を形成するために必要とされる織物又は他の工程に形成されるので、糸をより密接に一緒に案内又は集めることである。したがって、複数の開口内の複数のアイレット内の糸/トウ間の距離は、2.5cmよりもかなり小さく、例えば20mm未満、又は19mm未満、18mm未満、又は17mm未満、又は16mm未満、又は15mm未満、又は14mm未満、又は13mm未満、又は12mm未満、又は11mm未満、又は10mm未満、又は9mm未満、又は8mm未満、又は7mm未満、又は6mm未満、又は5mm未満、又は4mm未満、又は3mm未満、又は2mm未満、又はさらに1mm未満であるべきである。
【0020】
したがって、本発明は、特定の実施形態では糸の毛羽又は綿羽、及びこれらの毛羽/綿羽の堆積及び蓄積を生じさせる糸の単一の繊維を最小限に抑える繊維ガイドを対象とする。本発明者らはアイレットボードの交互にオフセットされた入口開口が繊維のトウをより密接に集めることを可能にし、同時に、破壊された繊維による毛羽/綿毛の堆積を最小限にすることを決定した。
【0021】
関連する幾何学的ボード形状の一例が図7に概略的に示されており、アイレットボード32の複数のアイレット28/開口を通過する多数のトウ/糸26の側面断面図である。図8は、アイレットボード34内に取り付けられた、例示的なオフセット対のアイレット/開口の側面断面図を示す。本発明の一態様による実施形態である図8に見られるように、トウ/糸26は、隣接するアイレット36からオフセットされたアイレット36及びアイレット38を通って案内される。
【0022】
図8に示すように、複数のアイレット/開口36と複数のアイレット/開口38との間のオフセットは、距離d1及びd2によって規定することができる。繊維破断による毛羽/綿毛の堆積を最小限に抑えるために、複数の第1の開口36の入口と複数の第2の開口38との間の距離d1は、繊維のトウ/糸26が通過する矢印で示される方向に対して横方向に測定される距離d2よりも大きい。疑いを避けるために、これらの距離d1及びd2は、入ってくる繊維を案内する隣接する複数の開口の上流側端から測定されると考えることができる。図8に示す実施形態では、これは開口の通路開口が最小となる位置である。したがって、複数の開口の直径は、これらの距離を測定する際の要因とはならない。
【0023】
理論に束縛されるものではないが、1組のアイレットが別の隣接する組のアイレットからオフセットされている場合、U字形又はブリッジが平衡解除されているため、毛羽は堆積することができず、したがって、第1の破断繊維の先端でさえ堆積することができず、したがって、破断繊維の加速周期は決して開始されないことがあり得る。
【0024】
図9は、繊維のトウを案内するアイレットボード表面の複数の開口内の複数のオフセットアイレットを利用する、例示的なそのようなアイレットボードの写真を示す。実施例1(下記)は、図9に示すアイレットボードから収集された毛羽の量と比較して、図6に示すアイレットボードからの毛羽の堆積(グラム/時間)に関する結果を示す。
【0025】
本発明の例示的な態様は、以下の通りである。
態様1:
繊維処理システムにおいて繊維を案内するように構成された繊維ガイドであって、以下を含む、繊維ガイドは、
繊維が表面の上流側から表面の下流側への方向に通過することができる複数の開口を画定する表面であって、各開口は、表面の上流側から繊維を受け取るように配置された入口を有する、表面を有し、
複数の開口は、互いに隣接し、互いに間隔を置いて配置された少なくとも一対の第1及び第2の開口を有し、
少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第1の開口の入口は、少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第2の開口の入口からオフセットされ、このオフセットは繊維が表面の上流側から表面の下流側へ通過できる方向にあり、第1の開口の入口と第2の開口の入口との間の距離d1は、繊維が通過できる方向に対して横方向に測定された第1の開口と第2の開口との間の距離d2よりも大きい。
【0026】
態様2:
態様1に記載の繊維ガイドは、表面を画定するボードと、選択された複数の開口に対応する位置でボードに結合され、選択された複数の開口の入口を画定する複数のアイレットと、をさらに備える。
【0027】
態様3:
態様1及び2のいずれかに記載の繊維ガイドは、第1の開口の入口が、ボードの表面からオフセットされている。
【0028】
態様4:
態様1~3のいずれかに記載の繊維ガイドは、第1の開口の入口と第2の開口の入口との間の距離d1が25.4mm以上であり、繊維が通過することができる方向を横切って測定された第1の開口と第2の開口との間の距離d2が25.4mm未満である。
【0029】
態様5:
繊維処理システムは、
繊維の供給源と、
繊維の供給源から下流に配置された繊維ガイドであって、繊維ガイドは繊維が繊維の供給源から受け取られるときに繊維を案内するように構成される、繊維ガイドと、
繊維が表面の上流側から表面の下流側への方向に通過することができる複数の開口を画定する表面であって、各開口は、表面の上流側から繊維の一部を受容するように配置された入口を有する、表面と、を備え、
複数の開口は、互いに隣接し、互いに間隔を置いて配置された少なくとも一対の第1及び第2の開口を有し、
少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第1の開口の入口は、少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第2の開口の入口からオフセットされ、このオフセットは表面の上流側から表面の下流側へ繊維が通過できる方向にあり、それによって、繊維が通過できる方向に対して横方向に測定された第1の開口と第2の開口との間の距離d2と比較して、第1の開口の入口と第2の開口の入口との間の距離d1を増加させる。
【0030】
態様6:
態様5の繊維処理システムは、繊維ガイドが、表面を画定するボードと、選択された複数の開口に対応する位置でボードに結合された複数のアイレットと、を更に含み、複数のアイレットは選択された複数の開口の入口を画定する。
【0031】
態様7:
上流位置と下流位置との間の実質的に平行な経路に沿って移動する繊維を案内するためのシステムであって、
少なくとも一対の繊維案内通路を画定する繊維ガイドであって、上流位置と下流位置との間に配置される、繊維ガイドを有し、
各繊維案内通路は、繊維が上流位置と下流位置との間を移動するときに繊維の一部を受け入れるように構成された案内開口を有し、案内開口の各々は、案内面によって画定され、
一対の繊維案内通路の繊維案内通路は、互いに間隔を置いて配置され、かつ互いに近接して配置され、
一対の繊維案内通路のうちの一方の繊維案内通路の案内面は、一対の繊維案内通路のうち他方の繊維案内通路の案内開口の案内面に近接し、かつ、一対の繊維案内通路のうち一方の繊維案内通路の案内開口の案内面の位置が、一対の繊維案内通路の他方の繊維案内通路の案内開口の案内面に対する経路に沿った方向において上流に位置している。
【0032】
態様8:
繊維処理システムにおいて繊維を案内するための方法であって、この方法は、
表面の上流側から表面の下流側への方向に表面に画定された複数の開口を通して繊維を通過させるステップであって、各開口は、表面の上流側から繊維の一部を受容するように配置された入口を有する、ステップと、
互いに隣接し、互いから離間する少なくとも一対の第1及び第2の開口を維持するステップであって、少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第1の開口の入口が少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第2の開口の入口からオフセットされるようにし、そのオフセットは表面の上流側から表面の下流側へ繊維が通過する方向にあり、それによって、繊維が通過する方向に対して横方向に測定した第1の開口と第2の開口との間の距離d2と比較して、第1の開口の入口と第2の開口の入口との間の距離d1を増加させる。
【0033】
態様9:
態様8に記載の方法は、ボードに画定された複数の開口と、選択された複数の開口に対応する位置でボードに結合された複数のアイレットとを通して繊維を通過させることをさらに含み、複数のアイレットは選択された複数の開口の入口を画定する。
【0034】
態様10:
繊維ガイド内の繊維堆積物を低減するように繊維ガイドを構成する方法であって、繊維ガイドは表面の上流側から下流側に向かう方向に繊維が通過することができる複数の開口を画定する表面を有し、この方法は、
互いに隣接し、互いに間隔を置いて配置された少なくとも一対の第1及び第2の開口を維持するステップと、
少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第1の開口の入口を、少なくとも一対の第1及び第2の開口のうちの第2の開口の入口からオフセットさせるステップであって、このオフセットは繊維が表面の上流側から表面の下流側へ通過する方向にあり、それによって、繊維が通過する方向に対して横方向に測定された第1の開口と第2の開口との間の距離d2と比較して、第1の開口の入口と第2の開口の入口との間の距離d1を増加させる、ステップとを有する。
【0035】
態様11:
態様10に記載の方法は、複数のアイレットを、選択された複数の開口に対応する位置でボードに結合するステップをさらに含み、複数のアイレットは選択された複数の開口の入口を画定する。
【0036】
(例)
実施例1:図6に示すアイレットボードからの毛羽の堆積量(グラム/時間)を、図9に示すアイレットボードから収集した毛羽の堆積量と比較した。
繊維を、図6に示すアイレットボード(オフセット隣接アイレットを有さない)に1時間通した。次に、繊維を図9に示すアイレットボード(オフセットした隣接するアイレットを有する)に1時間通した。各ラインが停止したとき、各タイプのボード上に堆積した毛羽を秤量し、比較した。プロセス条件及び結果をそれぞれ表1及び表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表2から解るように、オフセットアイレットを使用すると、アイレットボード上に堆積される毛羽の堆積量が約3倍低減する。
【0040】
実施例2:オフセットアイレットの効果に対する長期実験
次に、実施例1と同様の実験を行ったが、2つのアイレットボード(隣接するアイレットの有無にかかわらず)を、2つの別々の繊維-ライン上で18日間使用した。毛羽を2時間毎に集め、各日の1時間当たりの平均グラム数を計算した。これらのデータを、各日付について図10に示す。1月5日には、アイレットボード上の毛羽堆積とは無関係な理由で、オフセットアイレットを持つアイレットボードを使用したラインがダウンしたことに注意する。しかしながら、ラインが動作していたとき、オフセットアイレットの世界的な傾向は、オフセットされていないアイレットよりも明らかにより少ない毛羽堆積量であった。実験の過程で(両方のラインが走行している日について)、オフセットアイレットを利用してライン上に堆積された毛羽は約73%少なかった。また、発生した毛羽の量はオフセットアイレットについて時間と共に減少するように見え、これは始動効果に起因し得ることにも留意されたい。
【0041】
実施例1及び2に関して、オフセットアイレットを使用することによって、アイレットボード上の毛羽の堆積量が大幅に減少する(-73%)ことが明らかである。
【0042】
本発明は特定の実施形態を参照して本明細書に例示され、説明されるが、本発明は示される詳細に限定されることを意図されない。むしろ、本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲の当量の範囲及び範囲内で、様々な改変を詳細に行うことができる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されたが、そのような実施形態は一例としてのみ提供されることが理解されるのであろう。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、多数の変形、変化、及び置換を思いつこう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神及び範囲内に入るようなすべてのそのような変形を包含することが意図される。
図1
図2
図3
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図10
【国際調査報告】