(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】液体包帯剤組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61L 26/00 20060101AFI20221007BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221007BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221007BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20221007BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221007BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20221007BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20221007BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20221007BHJP
A61K 33/34 20060101ALI20221007BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20221007BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20221007BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20221007BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20221007BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A61L26/00
A61P17/02
A61P31/00
A61P31/10
A61P31/04
A61P33/00
A61P31/00 171
A61P31/12
A61K33/30
A61K33/34
A61K33/24
A61K33/26
A61K33/06
A61K33/00
A61K9/08
A61K47/46
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/38
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507584
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2020072314
(87)【国際公開番号】W WO2021023885
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508311226
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ファリア,ヌーノ
(72)【発明者】
【氏名】バストス,カルロス・パッソス
(72)【発明者】
【氏名】トム,ウィル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA13
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC31
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4C076FF17
4C076FF61
4C081AA04
4C081AA12
4C081BB06
4C081CD31
4C081CE01
4C081CE02
4C081CE11
4C081DA15
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA05
4C086HA08
4C086HA09
4C086HA10
4C086HA11
4C086HA20
4C086HA21
4C086HA24
4C086MA02
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4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA53
4C086ZA89
4C086ZA90
4C086ZB32
4C086ZB35
4C086ZB37
(57)【要約】
感染および/または創傷の処置または防止における使用のための、セラック、抗感染性金属活性物質および溶媒を含む液体包帯剤組成物の液体が記載される。組成物は、対象に局所適用されると、バリアを形成して、外来の感染性物質から病変および他の創傷を保護するための、容易に適用されるバリアを提供することが可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物であって、セラック、金属活性物質および溶媒からなり、対象に局所適用されると、バリアを形成することが可能である、上記組成物。
【請求項2】
前記対象の創傷もしくは感染の部位または創傷もしくは感染を発生させるリスクがある部位に適用される、請求項1に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項3】
前記金属活性物質が、抗感染性金属活性物質である、請求項1または2に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項4】
対象に局所適用されると、自立式疎水性バリアを形成することが可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項5】
二酸化ケイ素(シリカ)および/または柔軟剤を含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項6】
細菌、真菌、寄生虫またはウイルス感染の処置または防止における使用のためである、請求項1~5のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項7】
前記感染が、グラム陰性またはグラム陽性細菌によって引き起こされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項8】
前記細菌感染が、スピロヘータ属種、エシェリキア属種、ブドウ球菌属種、バチルス属種、シュードモナス属種、ビブリオ属種、連鎖球菌属種、クレブシエラ属種、ミクロコッカス属種、クロストリジウム属種、アシネトバクター属種、マイコバクテリウム属種、サルモネラ属種、クラミジア属種、エリジペロスリックス属種、コリネバクテリウム属種、レプトスピラ属種、キューティバクテリウム属種、ガードネレラ属種、カンピロバクター属種、クレブシエラ属種、キャプノサイトファガ属種、ビブリオ属種、パスツレラ属種、エロモナス属種、エイケネラ属種、マイコプラズマ属種、カリマトバクテリウム属種、ヘリコバクター属種、クロストリジウム属種、リステリア属種、トレポネーマ属種、バルトネラ属種、ノカルジア属種、エルシニア属種、セラチア属種、バークホルデリア属種、放線菌属種、ボレリア属種、またはエンテロコッカス属種によって引き起こされる、請求項7に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項9】
前記真菌感染が、カンジダ属種、マラセチア属種、トリコフィトン属種、ミクロスポルム属種、表皮菌属種、フザリウム属種、クモノスカビ属種、リゾムコール属種、ムコール属種、シンセファラストラム属種、カニングハメラ属種、アポフィソミセス属種、リクテイミア属種、サクセナエア属種、アスペルギルス属種、ブラストマイセス属種、コクシジオイデス属種、クリプトコックス属種、ヒストプラスマ属種、コクリオボルス属種、クラドフィアロフォラ属種、エクソフィアラ属種、マズレラ属種、ピレノケータ属種、ニューモシスチス属種、パラコクシジオイデス属種、スポロトリクス属種、またはタラロミセス属種によって引き起こされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項10】
前記寄生虫感染が、サルコプテス属種、リーシュマニア属種、鉤虫属種またはアメリカ鉤虫属種などの鉤虫科、ストロンギロイデス属種、オンコセルカ属種、双翅目幼虫、ルリキンバエ、ラセンウジバエ、ヒトクイバエ、またはニクバエ、バラムチア属種またはアカントアメーバ属種によって引き起こされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項11】
前記ウイルス感染が、パピローマウイルス、エンテロウイルス、例えばコクサッキーウイルス、モラシポックスウイルス属種、ワリセロウイルス属、またはヘルペスウイルスによって引き起こされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項12】
前記感染が、アデノウイルス科のウイルス、カリチウイルス科のウイルス、コロナウイルス科のウイルス、フラビウイルス科のウイルス、ヘルペスウイルス科のウイルス、オルソミクソウイルス科のウイルス、パピローマウイルス科のウイルス、パラミクソウイルス科のウイルス、パルボウイルス科のウイルス、ポックスウイルス科のウイルス、レオウイルス科のウイルス、マトナウイルス科のウイルス、ピコルナウイルス科のウイルス、ニューモウイルス科のウイルス、トガウイルス科のウイルスまたはフェニュイウイルス科のウイルスによって引き起こされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項13】
前記処置が、前記対象上の部位に第2の活性薬剤を適用すること、および該部位の上に前記液体包帯剤組成物を適用して、該第2の活性薬剤を封じ込めることを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項14】
前記第2の活性薬剤が、抗生物質製剤、抗微生物剤および/または止血活性物質を含む、請求項13に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項15】
前記自立式疎水性バリアが、前記自立式疎水性バリアが適用されない処置と比較して、前記第2の活性薬剤の喪失を少なくとも20%、任意選択で少なくとも30%低減する、請求項13または14に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項16】
非ヒト動物対象を処置するためである、請求項1~15のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項17】
前記局所適用が、非ヒト動物対象への適用である、請求項1~16のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項18】
前記液体包帯剤組成物が、ウシ、スイギュウ、ヤク、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、アルパカ、シカ、ロバ、コブウシ、シマウマ、ゾウ、オランウータン、チンパンジー、ゴリラ、キツネザル、テナガザル、ヒヒ、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、エミュー、ガチョウ、ダチョウ、ネコ、イヌ、フェレット、アレチネズミ、ハムスター、チンチラ、ラット、ウサギ、オウム、カナリア、キジ目、ガンカモ目、またはスズメ目の処置のためである、請求項1~17のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項19】
塗布剤組成物として適用され、該塗布剤組成物は、25℃で1000cP~5000cPの粘度を有していてもよい、請求項1~18のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項20】
スプレー組成物として適用され、該スプレー組成物は、25℃で10cP~3000cPの粘度を有していてもよい、請求項1~19のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項21】
ウシ趾皮膚炎、乳房感染、リーシュマニア症、糖尿病性潰瘍またはブルリ潰瘍、乳首のシーリング、角の除去、乳房の皮膚炎、切断後、ヒツジにおける足腐敗症またはウマにおける泥土熱の処置のためである、請求項1~20のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項22】
前記セラックが、蝋非含有のセラック、脱蝋セラック、脱蝋漂白セラック、脱蝋脱色セラック、セラックエステルまたは蝋含有セラックである、請求項1~21のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項23】
10~70%w/wのセラックを含み、任意に40%w/w~60%w/wのセラックを含んでいてもよい、請求項1~22のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項24】
前記溶媒が、エタノール、アセトン-水混合物、イソプロパノール、プロパノールおよびブタノール、またはそれらの組合せである、請求項1~23のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項25】
前記金属活性物質が、Ag、Cu、Zn、Fe、Se、Al、Cr、Mo、Ga、Co、Bi、Sb、Li、Ge、Ti、および/もしくはCeの1種またはそれより多くから選択される抗感染性金属活性物質、またはAg、Cu、Zn、Fe、Se、Al、Cr、Mo、Ga、Co、Bi、Sb、Li、Ge、Ti、Ce、Na、K、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Sc、Ti、Zr、Hf、V、Nb、W、Mn、Re、Ru、Ir、Pd、Pt、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、および/もしくはErの1種またはそれより多くから選択される金属活性物質を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項26】
前記金属活性物質が、Cu、Zn、Ag、Fe、Seおよび/またはMoの1種またはそれより多くを含む、請求項25に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項27】
前記抗感染性金属活性物質が、塩化銅、酢酸銅、酸化銅、オキソ水酸化銅、水酸化銅、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ナノ酸化亜鉛、ノルマル酸化亜鉛、塩化鉄、塩化アルミニウム、酢酸モリブデンまたはカオリンである、請求項1~26のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項28】
前記抗感染性金属活性物質が、20mMolal~500mMolalの濃度で存在する、請求項1~27のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項29】
前記金属活性物質の添加が、セラック単独を含む組成物と比べて、前記組成物の粘度および/または前記バリアの厚さを増加させる、請求項1~28のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項30】
抗微生物組成物が、1種またはそれより多くの抗生物質と共投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項31】
前記抗生物質がすでに適用されている位置で対象に適用される、請求項1~30のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項32】
抗生物質、抗真菌剤、および/または消毒剤を含むかまたはそれと共投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項33】
前記組成物が対象に適用されたときに形成されたバリアが、pH9.0より高いpHを有する環境に対して耐性を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項34】
さらなる樹脂成分を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項35】
繊維を、好ましくは1~15%w/w、より好ましくは2.5~10%、最も好ましくは2.5%~7.5%で含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項36】
繊維が、セルロース繊維である、請求項35に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項37】
可塑剤として、および/または前記自立式疎水性バリアの形成を促進するために、1種またはそれより多くの親水性添加剤をさらに含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項38】
前記親水性添加剤が、TEC、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、グリセロール、ヘキシレングリコール、および/またはトリアセチンから選択される、請求項37に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項39】
耐水性を強化するための、1種またはそれより多くの疎水性バリアを強化する物質をさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項40】
抗微生物組成物の疎水性バリアを強化する物質が、デカン酸、オクタン酸、オレイン酸および/またはラウリン酸から選択される、請求項39に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項41】
バリアの分解を阻害または低減するための、1種またはそれより多くの緩衝剤をさらに含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項42】
前記緩衝剤が、ジカルボン酸であり、任意選択で該ジカルボン酸は、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ピメリン酸またはデカン酸である、請求項41に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項43】
前記抗微生物組成物が、前記金属活性物質の負荷量または溶解性を強化するための、抗炎症剤または錯化剤をさらに含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項44】
前記抗炎症剤または前記錯化剤が、サリチル酸、サリチル酸ナトリウムおよび/またはプロピオン酸から選択される、請求項43に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項45】
止血剤、例えばカオリン、硫酸アルミニウム、またはゼオライトをさらに含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項46】
前記止血剤が、急性創傷ケアにおける使用のために凝固作用を強化する、請求項1~45のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項47】
1mmまたはそれより大きい液滴サイズを有し、スプレー不可能である、請求項1~46のいずれか一項に記載の感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物。
【請求項48】
感染および/または創傷の処置における使用のための液体包帯剤組成物を適用するためのデバイスであって、
請求項1~47のいずれか一項で定義された揮発性溶媒中にセラックおよび金属活性物質を含む組成物を含有する第1のチャンバーおよび非溶媒を含有する第2のチャンバー;
該第1および第2のチャンバーと連通する混合チャンバー;
該混合チャンバーに該組成物および非溶媒を送達して、混合された組成物を提供するための作動手段;および
対象上の場所に該混合された組成物を適用するための、該混合チャンバーと連通するアプリケーター
を含み、該組成物は、対象に局所適用されると、バリアを形成することが可能である、デバイス。
【請求項49】
前記非溶媒が、グリセロールまたはポリアルキレングリコール、例えばPEGである、請求項48に記載のデバイス。
【請求項50】
デュアルカートリッジアプリケーターである、請求項48または49に記載のデバイス。
【請求項51】
請求項1~47のいずれか一項で定義された揮発性溶媒中にセラックおよび金属活性物質を含む組成物、および該組成物を送達するための噴射剤を含む、加圧スプレー送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体包帯剤組成物およびその医学的用途、特定には創傷および/または感染の防止および/または処置に関する。本発明はさらに、液体包帯剤組成物を送達または適用するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
適用が簡単であり、有効であり、滅菌状態を保ち、外来の感染性物質から病変および他の創傷を保護する液体包帯剤への未だ満たされていない必要性がある。また病変への抗生物質(または他の材料)の局所適用が必要である場合、このような液体包帯剤は、理想的には、このような材料をその環境に「封じ込め」、外部からの喪失を防止し、それゆえに処置の効能を増加させるべきである。
【0003】
趾皮膚炎(DD)は、40%もの乳牛に影響を及ぼす蹄の感染症である。これは、高効率で搾乳されるウシの上昇した食事の要件のために必要とされる乳牛の屋内飼育によって引き起こされる。これは、痛い潰瘍性または増殖性の病変を特徴とし、跛行を引き起こし、牛乳の生産量を低減させ、死亡率を増加させ、それに伴い経済的な非効率性と動物愛護の懸念が生じる。趾皮膚炎に関連する創傷は、典型的には複数種の嫌気性細菌、特にスピロヘータで慢性的に感染していることから、趾皮膚炎の処置は困難な問題である。動物の蹄はしばしば糞便のスラリーと常に接触した状態であるため、これもまた獣群中のウシ間での疾患蔓延と前に処置された動物の再感染を可能にする。
【0004】
趾皮膚炎の既存の処置は、病変への局所用抗生物質または金属ベースの抗微生物剤の適用を含む。しかしながら、これらの処置は全てそれほど効果的ではなく、これはなぜなら、蹄は糞便のスラリーと常に接触した状態にあり、そのため外部の環境に抗微生物剤または抗生物質が迅速に失われることになるためである。動物の適用された領域から外部の環境にそれが失われないようするため抗生物質または類似の処置の適用後に毎回包帯を付け直すことは実用的ではない。このような包帯は、いずれにしても数日後に取り除かねばならず、またはそれらは、感染の前触れとして負の作用をもたらす可能性がある。経済的な喪失の他にも、これらの繰り返しのサイクルの感染および抗生物質の適用は、抗生物質耐性細菌の発生を促進し、これは深刻な公衆衛生上の問題である。
【0005】
従来の抗生物質のほかにも、他の抗微生物処置としては、ホルマリンもしくはイオンの銅の足洗い場の使用、または銅および亜鉛EDTAゲルの適用が挙げられる。足洗い場での重度に感染した獣群の処置は、感染蔓延の制御を助けることができるが、感染した動物を処置しない。これはまた大量の環境面で毒性の廃棄物が生じる不利益もあり、このような廃棄物は、安全な方式で処分するには費用がかかる。またホルマリンは発癌性もある。銅および亜鉛EDTAゲルの抗微生物活性は限定的であり、抗生物質のように複数回の適用を必要とし、重度感染の場合はさらに包帯を付けることも必要とする。銅および亜鉛EDTAゲルの一部の配合物は、高粘度であり、ブラシでの適用を必要とし、処置した動物間での交差感染の付随するリスクがある。これらの製品の粘度への信頼を超えて長続きする品質はなく、したがってその創傷上での寿命は、このような問題のある環境では限定的であると予想される。これらの不利益を考慮して、有効な方法で趾皮膚炎を処置することは当業界における問題であり続けている。
【0006】
米国特許第8,648,082号(Jaleva、LLC)は、揮発性溶媒中で適用される、マスチックガム樹脂、および抗微生物剤、抗ウイルス剤または抗炎症剤を含む組成物で含浸させた、足白癬などの皮膚病変を処置するための生物学的な包帯剤を記載している。使用されるマスチックガム樹脂は、木由来の樹脂であり、例えばベンゾインである。次いでこれを従来の包帯剤で覆った。
【0007】
米国特許第5,178,870号(Explore)は、低粘度のワニス(サンダラック)および抗微生物化合物をエタノール中に溶解した抗微生物組成物を記載している。この組成物は、歯にコーティングされて、口腔の細菌増殖を抑制する。EP0900560A(Oka)は、歯周疾患防止を助けるためにほとんど粘着性がない非常に薄いコーティングで歯の表面を覆うためのアルコール中に溶解した抗微生物剤およびセラックを含む歯コーティング複合材料を記載している。US2010/0297043は、天然樹脂と、軟化剤として不乾性または半乾性油を含む、皮膚をコーティングするための化粧用組成物を記載している。WO2019/0176124は、セラックまたはロイジン、溶媒およびシリカを含む多孔質化粧用皮膚コーティング組成物を開示している。
【0008】
Alzahraniら(Journal of International Medical Research、41(3)795~803、2013、doi:10.1177/0300060513483391)は、湿性壊疽への感染および進行を防止するための、乾性壊疽を有する糖尿病患者へのセラックを含浸させたガーゼの適用の作用を記載している。WO2011/129781(BedirおよびAlhayani)は、切断による処置が不可能な状況において加圧下で処置用のチャンバーの内部に患者の足を入れることによって、糖尿病の足部潰瘍の死んだ組織をミイラ化するためにセラックを使用する類似の提案を提供する。
【0009】
Anticら(Meat Science、88:498~502、2011)は、皮をはぐ操作中のウシ生肉の微生物の交差汚染を制限するための牛皮へのセラックの適用を記載している。
【発明の概要】
【0010】
概して、本発明は、例えば、創傷および/もしくは感染した部位または趾皮膚炎に関連する病変を含む創傷および/または感染の防止および/または処置のための、対象に局所で適用される場合、自立式バリアを形成することができる液体包帯剤組成物を提供する。一部の場合において、包帯剤は、抗感染性であると予想され、したがって環境からの、または創傷それ自体からのバイオフィルム形成に耐性を有する。有利には、バリアは疎水性であってもよく、一部の状況において、包帯剤は、創傷それ自体における抗微生物活性に適合する濃度でその抗微生物性イオンを創傷に放出することができる。代替として、本発明の液体包帯剤組成物は、それ自体は実質的に微生物忌避活性を有していなくてもよいが、感染に対する物理的なバリアを提供することによって創傷の微生物定着の防止を助けることができる。一般的に、液体包帯剤組成物は、エタノールなどの揮発性溶媒中にセラックおよび金属ベースの活性物質を含み、対象に液体として局所適用した後に自立式の固体疎水性バリアを形成することが可能である。金属ベースの活性成分は、バリア機能を改善でき、さらに任意選択で、それに加えて環境の病原体に対する固有の忌避特性を提供することもできる。金属ベースの活性物質を含まないセラック組成物は、アルカリ性条件(>pH7)下で可溶性であるため、驚くべきことに、本発明の組成物は、例えば糞便のスラリーなどのアルカリ性の環境で見出されるような高いpHに耐え得るバリアを形成することが可能である。
【0011】
一部の場合において、金属ベースの活性物質は、本発明の液体包帯剤組成物に抗感染特性を付与することができる。代替として、またはそれに加えて、金属活性物質は、液体包帯剤組成物の1つまたはそれより多くの特性の改善、例えば組成物のバリア特性および/または組成物の粘度などの物理化学的な特性の改善を助けることができる。
【0012】
代替として、またはそれに加えて、本発明の方法に従って使用される液体包帯剤組成物は、例えば創傷、病変または感染の部位において対象に事前に適用された処置を封じ込めることが可能な、粘着性の迅速に硬化する化学的バリアを提供する。したがって、本発明の組成物は、抗生物質、抗感染剤もしくは病変治癒を促進する薬剤、または宿主への可能性のある利益を有する他の材料などの他の薬剤と組み合わせて使用することができる。組成物によって形成されたバリアはまた、病変、例えば趾皮膚炎、環境の結果生じるものを保護することもでき、それと同時に、アルカリ性のスラリーなどの極端な条件に耐えるが、それでもなお経時的な自己分解が可能な一時的なバリアを提供する。本発明の組成物によって形成されたバリアは、バリア機能または効能を物理的に支持するのに包帯材料または包帯剤の追加の形態を必要としないというさらなる利点を有し得る。好ましい適用において、抗微生物組成物の成分およびそれから形成されたバリアは、食物連鎖に適合性を有する。
【0013】
したがって、本発明は、動物愛護を向上させることを目的にし、最適な乳生産を確実にし、環境および食物連鎖への抗微生物剤の喪失を低減するだけでなく、以下でさらに記載されるような他の状況における創傷および/または感染の防止および処置のための適用も見出すものである。本発明の組成物はまた、生体適合性でもあり、組成物をpH3より高く、好ましくはpH4より高く、最も好ましくはpH4.5より高く維持して安全な生物学的に適合性の局所使用が可能になるように、そのpHを制御することができる。
【0014】
したがって、一形態において、本発明は、感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物であって、セラック、金属活性物質および溶媒を含み、対象に局所適用されると、バリアを形成することが可能である、上記液体包帯剤組成物を提供する。一部の形態において、液体包帯剤組成物は、セラック、金属活性物質および溶媒からなる。代替として、またはそれに加えて、組成物が対象に適用されたときに形成されたバリアは、疎水性バリアである。
【0015】
これらの組成物は特に、とりわけウシで発生する趾皮膚炎の処置を提供するために開発されたが、本明細書に記載される組成物および医学的用途は、ヒトおよび非ヒト動物対象の処置において、さらには他のタイプの創傷および/または感染の処置ならびに局所の要件のための適用を有する。
【0016】
さらなる形態において、本発明は、趾皮膚炎の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物であって、セラック、金属活性物質および溶媒を含み、対象に局所適用されると、バリアを形成することが可能である、上記組成物を提供する。
【0017】
さらなる形態において、本発明は、感染および/または創傷を処置または防止するための医薬の製造における液体包帯剤組成物の使用であって、該組成物は、セラック、金属活性物質および溶媒を含み、該組成物は、対象に局所適用されると、バリアを形成することが可能である、使用を提供する。
【0018】
さらなる形態において、本発明は、趾皮膚炎を処置または防止するための医薬の製造における液体包帯剤組成物の使用であって、該組成物は、セラック、金属活性物質および溶媒を含み、該組成物は、対象に局所適用されると、バリアを形成することが可能である、上記使用を提供する。
【0019】
さらなる形態において、本発明は、感染および/または創傷を処置または防止するための方法であって、(a)液体包帯剤組成物を、対象に局所適用するステップであって、該組成物は、セラック、抗感染性金属活性物質および溶媒を含み、該組成物は、対象に局所適用されると、バリアを形成することが可能である、ステップ、および(b)該組成物がバリアを形成するように該溶媒を蒸発させるステップを含む、上記方法を提供する。
【0020】
さらなる形態において、本発明は、趾皮膚炎を処置または防止するための方法であって、(a)液体包帯剤組成物を、対象に局所適用するステップであって、該組成物は、セラック、抗感染性金属活性物質および溶媒を含み、該組成物は、対象に局所適用されると、バリアを形成することが可能である、ステップ、および(b)該組成物がバリアを形成するように該溶媒を蒸発させるステップを含む、上記方法を提供する。
【0021】
さらなる形態において、本発明は、対象における局所的な感染を処置または防止するための方法であって、(a)液体包帯剤組成物を、対象に局所適用するステップであって、該組成物は、セラック、金属活性物質および溶媒を含み、該組成物は、対象に局所適用されると、バリアを形成することが可能である、ステップ、および(b)該組成物がバリアを形成するように該溶媒を蒸発させるステップを含む、上記方法を提供する。
【0022】
本明細書に記載される医学的用途および方法において、本発明の組成物によって生産された局所的に堆積したバリアは、例えば、抗生物質または他の抗感染薬、治癒を促進するための治療剤または他の治療剤が事前に適用されている対象上の部位または位置の上にバリア組成物を使用することによって、従来の処置と共に採用してもよい。これは、バリアが、事前に適用された治療剤を封じ込めたままにする保護層を提供することを意味する。実際には、局所で適用されたときに本発明の液体包帯剤組成物の「溶媒による刺激(solvent sting)」を防止するように作用する、皮膚または創傷に事前に適用した軟膏または他の物質を有することが有利な場合がある。
【0023】
一般的に、本発明で使用される組成物は、液体またはゲルとして容易に適用される、迅速に硬化されて不溶性の耐水性(疎水性)バリアを形成するか、および/または機械的なダメージや荒々しい環境圧力への耐性を提供する程度に十分ロバストであるという利点を有する。これらの利点は、容易に適用される場合、本発明の獣医学的な適用にとって、さらにヒトへの適用にとって特に有用であるが、例えば軍事、レジャー、もしくはスポーツでの使用の場合、または熱傷および外科手術などの外傷の他の状況の場合、堅牢なバリアが必要である。組成物の特性は、自立式バリアを形成することが可能なことであり、それゆえに、包帯材料または他の包帯剤との使用を必要としないことから、粗野な環境、例えば野外活動もしくは野外スポーツ、例えばハイキング、キャンプ、釣り、ロッククライミングもしくはカヌーにおける使用のために、または軍事活動もしくは突然の外傷に関する労働のために、特に有利である。これは、組成物によって形成されたバリアが、一般的に物理的なダメージ(例えばノック)に耐える程度の物理的な強度を有し、耐水性であり、都合のよい形態として、単純な液体様式として運搬および適用することができるためである。本発明は、少なくともさらなる介入が実施できるようになるまでの、局所的な問題のためのオールインワン溶液であってもよく、すなわち材料はまた応急手当てにも有用である。
【0024】
また本発明で使用される組成物のバリアを形成する特性によって、それらは迅速な創傷または病変または斑の被覆に好適になる。これは、時間を節約する状況、例えば外科的介入において、または対象の体の到達が困難な部位に接近しようとするために有用な場合もあり、特にそれ以外の方法で包帯を付けることが困難な解剖学的な領域における繰り返しの包帯の取り付けへの必要性を回避し、それによって患者のコンプライアンスを改善することを助けることができる。外科創傷、糖尿病の創傷および潰瘍、間擦疹もしくは皮膚のひだの皮膚炎(skin fold dermatitis)、皮膚病変、外傷性の病変、膿瘍および小さい引っ掻き傷または病変(例えば動物の争いによる)は、単純であるが有効な化学的バリアが他の処置選択肢より好ましい可能性がある例である。
【0025】
さらなる形態において、本発明は、同様に、外科創傷、皮膚病変、潰瘍、切り傷、擦過傷および他の外傷性の創傷にとって特に有用である。本発明は、例えば、医者、外科医、看護師、他の医療専門家、軍事関係者、エクストリームスポーツ愛好家、獣医または畜産農家によって、またはペットの飼い主によって、または動物園および類似の施設によって使用される可能性がある。多機能性および適用の容易さが、特に未処置のままだと感染症になる可能性がある病変、創傷またはキズにおける体の難しい領域への迅速な使用およびアクセスを可能にする。本発明に従って処置され得る局所状態の例としては、毛包炎、蜂巣炎、温浴毛包炎、膿痂疹、白癬、レインスコールド、足腐敗症、口蹄疫、ブルータング、疥癬および/またはシラミ症が挙げられる。
【0026】
さらなる形態において、動物がバリア部位で噛んだり咀嚼したりすることを阻止するために、獣医学的な使用が意図される組成物に不快な味を有する化合物が添加されてもよい。一部の場合において、このような味覚的な抑止化合物はまた、小さい子供を処置することが意図された組成物に添加されてもよい。
【0027】
好ましくは、本発明で使用される組成物はまた、既存の創傷、病変もしくは斑の部位またはこのようなリスクがある領域におけるさらなる感染の進行を阻害することが可能なバリアも提供する。一例において、本発明の組成物は、例えば座瘡箇所の細菌感染を防止することによって、座瘡を処置または防止するために使用してもよい。本発明に従って処置され得る他のタイプの創傷としては、膿疱、水疱、ただれ、裂傷および浸軟が挙げられる。
【0028】
本発明の組成物は、外科創傷の処置にも使用され得る。これらの創傷としては、切開による創傷、切除による創傷、加えて、異なる種類の外科手術、例えば虫垂切除、乳房生検、帝王切開術、胆嚢切除、冠状動脈バイパス、拡張および掻爬、皮膚移植、痔核切除、股関節置換、子宮摘出、子宮鏡検査、鼠径ヘルニア修復、膝関節置換、下背部痛の手術、乳房切除術、結腸切除、前立腺摘除術、再建術、または扁桃摘出による創傷が挙げられる。
【0029】
「創傷」の処置は、本明細書で使用される場合、慢性創傷、急性創傷、病変、キズ、ただれ、咬傷、潰瘍、発疹、熱傷、膿瘍、こぶ、疣贅、皮膚のひび割れ、水疱、鱗状の皮膚、吹出物、小胞、小結節、プラーク、瘻孔、痂皮、引掻き傷、膨疹または瘢痕を含む。
【0030】
創傷に関連する可能性があるかまたはそれにより生じる可能性があり、したがって本明細書に記載される発明によって処置または防止することができる局所的な疾患および傷害の例としては、皮膚炎、昆虫の咬傷、他の動物の咬傷、外傷性の創傷、術後創傷、自ら負った創傷、皮膚がん、熱傷、電気熱傷、化学熱傷、放射線熱傷、氷傷、痘疹、あざ、丘疹、膿疱、面皰、ただれ、くぼみ、気腫性嚢胞、鱗片、点状出血、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、酵母感染、座瘡、脂漏、疥癬、昆虫への過敏症、アレルギー性湿疹、非アレルギー性湿疹、色素沈着過度、舌炎、爪病、ウイルス性発疹、入れ墨関連の病変、ふけが挙げられる。
【0031】
本明細書で開示される組成物によって処置することができる、または後続の創傷が防止されるさらなる皮膚の疾患および傷害としては、これらに限定されないが、裂傷、剥離、穿刺創または擦過傷、1度熱傷、2度熱傷、3度熱傷、凍傷、表皮壊死性の皮膚炎、うっ血性皮膚炎、発汗障害の皮膚炎、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、皮膚リーシュマニア症、麻疹、手足口病、足白癬、爪真菌症、皮膚紅斑性狼瘡、マダニ咬傷、ノミ咬傷、ダニ咬傷、皮癬、耳のプラーク、乳頭腫症、ブルリ潰瘍、ベスノイティア症、じんましん、蝿蛆症、伝染性膿疱性皮膚炎、趾皮膚炎(dematitis)、光感作、羊痘、山羊痘、鶏痘、豚痘、蠕虫結節疾患(worm nodule disease)、イヌ膿皮症、牛痘、サルコイド、オンコセルカ症、フィラリア症、間擦疹、デルマトフィルス症、毛包炎、膿痂疹、白癬、レインスコールド、足腐敗症、口蹄疫、ブルータング、ヒツジ疥癬、皮癬および/またはシラミ症、マラセチア皮膚炎、癰、腫れ物、コラーゲン変性を伴う好酸球性肉芽腫、皮膚炎症、レッドレッグ症候群、黒色腫、非黒色腫皮膚がん、伝染性膿瘡、皮膚またはえらの吸虫類、鱗片またはえらの感染、冬季潰瘍疾患、甲殻類寄生虫、羽がむしり取られていること、鱗状の顔、足のダニ、羽のダニ、背中および羽の疾患、羽の喪失、羽の傷害、皮膚の新生物、シラミ、ハエ、吸血する羽虫、ダニ、趾瘤症、割れた竜骨(split keel)、翼端の浮腫、魚鱗癬、蝿蛆症、外被の割れ、脱皮障害、鱗片の腐敗、水疱疾患、紅斑、点状出血、斑状出血、ヒル、歯肉疾患、蜂巣炎、癜風、カンジダ症、帯状ヘルペス、温浴毛包炎、ロア糸状虫によるフィラリア症、ピーリングスキン症候群、酒さ、成人線状IgA病、デューリング病、グローバー病、落葉性天疱瘡、結節性天疱瘡(pemphigus nodularis)、増殖性天疱瘡、尋常性天疱瘡、壊疽性座瘡、フォックス-フォーダイス病、脱毛性毛包炎、穿孔性鼻孔毛包炎、扁平苔癬、赤い半月(red lunulae)、穿孔性毛包炎、粘膜扁平上皮癌、白斑症、陰嚢舌、急性壊死性潰瘍性歯肉炎、化膿性肉芽腫、眼瞼黄色腫、塹壕熱、スウェティソックス症候群(sweaty sock syndrome)、須毛部仮性毛包炎、口周囲皮膚炎、爪囲炎、孔紋表皮剥脱症、リポイド類壊死、モルジェロンズ病、腺ペスト、糖尿病性潰瘍、紅色陰癬、化膿性汗腺炎、クラゲ刺傷、陰金または慢性単純性苔癬が挙げられる。
【0032】
本発明によって処置または防止され得る病変は、様々な外観および輪郭を有していてもよく、例えば、直線状、環状、貨幣状、標的状、蛇行状、ヘルペス状および/または帯状ヘルペス状であってもよい。
【0033】
一部の場合において、表面の皮膚状態は、未処置の場合、より重度の創傷への進行を引き起こす可能性があり、例えば発疹は、対象による引掻き、噛みつき、こすること、または他の物理的な動作によって自ら負った皮膚穿孔に至る可能性がある。したがって、本発明は、このような表面の皮膚状態で使用することができる。
【0034】
一部の場合において、本発明における組成物は、健康な皮膚の維持を助けることができ、したがって対象における病変を防止することができる。したがって、本発明の組成物によるスキンケア動作の例としては、これらに限定されないが、クレンジング、水分補給、加湿、リファイニング、スムージング、角質除去(exfoliating)、ソフトニング、レストアリング、アンクロッギング、サンスクリーン、日焼け防止、熱からの保護、保湿、吸収、脱感作、リジュビネイティング、不純物の除去、皮膚への刺激の低減、無痛化、およびリフレッシュが挙げられる。
【0035】
誤解を避けるために言えば、スキンケア、感染および/または創傷の処置または防止としては、これらに限定されないが、防止的もしくは矯正的な測定、処置、または皮膚、粘膜、毛髪および/もしくは爪における処置の補助が挙げられる
獣医学的な対象において、感染および/または創傷の処置または防止としては、生きた獣医学的な対象における皮膚、粘膜、毛髪、被毛、爪、骨、かぎづめ、蹄、外被、鱗片、角、羽、牙、枝角または歯における処置が挙げられる。
【0036】
好ましくは、本発明の組成物は、安全な(例えばGRAS規格に準拠した)生体適合性成分から、例えばすでに食物連鎖に存在する成分から作製される。獣医学的な使用の場合、これは、ヒトの食物連鎖に入る家畜由来の食物(牛乳、チーズ、肉)にとって重要である。これはまた、本発明の組成物を使用して生産されたバリアは、放置されて徐々に自己分解することが可能であり、処置プロトコールの終了時に医療技術者、獣医師または酪農家がそれを除去する必要性が回避されることも意味する。また、適用の安全性において固有の性質を有することや、使用者による使用のためにより食欲をかきたてることも挙げられる。
【0037】
一部の使用において、本発明の組成物は、組成物の原料となる成分によるか、または組成物中に色素または他の顔料を含ませることのいずれかによって着色される。有利には、これを使用して、組成物を適用するときに色による追跡を可能にするため(例えば対象の体への適用の程度を決定できるように)、および/または例えばいつ組成物の再適用が必要かを決定するために、バリアの生分解がその後に起こることを可能にすることができる。本発明に従って使用することができる色素の例としては、例えばパテントブルーV、またはブリリアントブルーFCF、またはブリリアントブラックBN、またはサンセットイエローFCF、またはキノリンイエロー、またはポンソー4R、またはインジゴカルミンなどの合成色素、例えばルテイン、またはリボフラビン、またはキャラメル、またはクロロフィリン、またはカロチン、またはベタニン、またはアントシアニン、および/または鉱物色素、例えば酸化チタン、もしくは酸化鉄および水酸化鉄などの天然由来の色素が挙げられる。
【0038】
実施例で実証されるように、本発明の組成物を生産するのに使用される原材料は相対的に廉価であり、エタノールまたは類似の溶媒中で様々な成分を溶解および混合すること、それに続いてすぐ使えるようにパッケージングすることによって製造が行われるため、組成物は複雑な合成を伴わない。
【0039】
使用において、本発明の組成物を使用する処置は、典型的には、任意選択で、対象の処置部位に、事前に投与される治療剤、例えば抗生物質化合物を適用すること、およびその後、揮発性溶媒の蒸発を介して疎水性バリアが形成されるように、その同じ部位にバリア組成物を適用することを伴うと予想される。ウシ趾皮膚炎の処置の場合において、または他の状況に関しては実際に、本方法は、処置部位(すなわち趾皮膚炎を有する動物の蹄または脚)を洗浄する初期の工程を含み得る。
【0040】
本発明の実施態様はここで、添付の図面を参照しながら一例として記載されるが、限定ではない。しかしながら、本発明のさらなる様々な形態および実施態様は、本発明の開示を考慮して当業者には明らかであると予想される。
【0041】
「および/または」は、本明細書において使用される場合、2つの特定された特徴または成分のそれぞれが他方を含む場合または含まない場合の具体的な開示として解釈されるものとする。例えば「Aおよび/またはB」は、各々が本明細書において個々に述べられているような場合、(i)A、(ii)Bおよび(iii)AおよびBのそれぞれの具体的な開示として解釈されるものとする。
【0042】
文脈上別段の指示がない限り、上に記載の特徴の説明および定義は、いかなる本発明の特定の態様または実施形態にも限定されず、記載された全ての態様および実施形態に等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】エクスビボにおける保護バリアの存在または非存在下でのシミュレートされたスラリーへの抗生物質スプレーの喪失。
【
図2】バリアからの金属放出(ZnおよびCu)。LB(細菌用培地)中、穏やかにかき混ぜながら30℃で24時間後に、接触致死アッセイからサンプルを直接収集した。上のグラフは、絶対濃度(ppm)を示し、それに対して下のグラフは、相対的な放出を示す。
【
図3】接触致死の結果。LB中での大腸菌(E.coli)とのインキュベーションから24時間後のLog CFU/mlでのK12。F0は、セラックのみの組成物からなり、これは、対照実験(セラックなし)と同じ細菌増殖を有していた。注:1.7Log CFU/mlが検出限界であり、それゆえにこの結果を有していた材料(F4、F6、F8、F11、F13、F14、F26、F27およびF30、表7を参照)の場合、細菌コロニーは形成されなかった。
【
図4】インビボにおける0日目から処置から7日後の間の移動度スコア(n=7)の改善。統計的分析は片側ウィルコクソンマッチドペア検定を介してなされた。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の組成物
本発明の組成物において、セラックまたはセラック誘導体を使用してもよく、本明細書における「セラック」への言及は、セラックとセラック誘導体の両方を含む。これは、蝋非含有のセラック、脱蝋セラック、脱蝋漂白セラック、脱蝋脱色セラック、セラックエステルまたは蝋含有セラックを含み得る。加えて、使用されるセラックは、粉末、フレーク、塊であってもよいし、または特定の場合において、溶液として供給されてもよい。セラックは、木の上で雌のラック虫により分泌された樹脂であり、一般的にインドやタイで生産される。これは加工され、一般的に乾燥フレークとして販売されるか、またはアルコールなどの溶媒中に溶解させて液体セラックを作製することができる。セラックは、シグマ(Sigma)またはAF Suter&Coなどの供給元から容易に商業的に入手可能である。好ましくは、本発明のバリア組成物は、10%w/w~70%w/wのセラック、より好ましくは20%w/w~70%w/wのセラック、より好ましくは30%~70%のセラック、より好ましくは35%~70%のセラック、より好ましくは35%~60%のセラック、最も好ましくは40%~60%のセラックを含み、ここでセラックの量は、それが適用される前の組成物中の%w/wの量に対して示される。一部の実施態様において、使用されるセラックのタイプは、食品添加剤として承認されているものであることが好ましい。
【0045】
有利には、本発明の組成物のpHは、例えば緩衝化する特性を有する成分を使用することによって制御することができる。これは、一般的に、組成物が対象への局所適用に好適なpHを有するようになされる。pH3を超える、好ましくはpH4を超える、最も好ましくはpH4.5を超えるpHが、安全で生物学的に適合性の局所使用に好適である。pHの上限として、本発明に従って使用される組成物は、好ましくはpH9.0未満、より好ましくはpH8.5未満、より好ましくはpH8.0未満、より好ましくはpH7.4未満、最も好ましくはpH6.5未満のpHを有する。
【0046】
本発明者らは、セラックまたはセラック誘導体の使用は、アレルギーの懸念があるロジンなどの一部望ましくない特性を有する他の樹脂の使用よりも好ましいことを見出した。
一般的に、本発明で使用される組成物は、揮発性溶媒中で成分を混合して、均質な混合物を生産することにより得ることができる。これは通常、揮発性溶媒中に金属活性物質、続いてあらゆる添加剤を溶解させ、最後にセラックを添加するのに有利である。この順序は、添加剤(例えばPEG、TECおよびグリセロール)の添加の前に金属化合物を適切に溶解させることを可能にし、生じる混合物が例えばセラックの塊によって不均質になるのを回避することを助ける。工程の順序はまた、一部の添加剤は組成物中に分散する前のより高い濃度のときにセラックを沈殿させる可能性があるため、セラックを添加する前に添加剤がよく分散されていることも意味する。一部の場合において、金属活性物質は、抗感染性金属活性物質であると予想される。
【0047】
本明細書に記載される組成物に添加剤が添加されたほとんどの場合において、値は、質量に基づき記録された。結果的に、濃度は、mM(mmol/L)よりむしろmMolal(mmol/kg)として言及されることもある。加えて、%が使用される場合、それは、質量w/w%を指す。
【0048】
本発明において、本発明の組成物を使用して生産された疎水性バリアは、「自立式」であり、すなわちそれは、機械的にロバストであり、先行技術で使用されるような構造的なマトリックス、例えば織布または不織布マトリックス、例えば包帯またはガーゼでの安定化を必要としない。しかしながら、一部の場合において、機械的強度を増加させたバリアを提供することが望ましい場合があり、これらの状況において、バリア組成物は、繊維をさらに含んでいてもよい。繊維成分の例としては、これらに限定されないが、セルロースが挙げられ、好ましくは1.0~15wt%、より好ましくは2.5~5.0wt%のセルロースである。
【0049】
好ましくは、本発明の組成物を生産するのに使用される揮発性溶媒は、エタノール、アセトン-水混合物、イソプロパノール、プロパノールまたはブタノール、ならびにそれらの組合せである。エタノール、アセトン-水混合物、プロパノール、およびブタノール、およびイソプロパノールの使用は、生体適合性の理由で好ましい場合がある。アルコールが溶媒として使用される場合、それは、第一、第二または第三アルコールであってもよい。
【0050】
本発明で採用され得る他の揮発性溶媒(例えば沸点が100℃未満のもの)の例としては、ジエチルエーテル、またはテトラヒドロフランなどのエーテル、メチルエチルケトンなどのケトン、メチルアルコール、またはエチルアルコール、またはベンジルアルコールなどの第一アルコール、イソプロパノールなどの第二アルコール、tert-ブチルアルコールなどの第3アルコール、アセトン-水混合物、酢酸エチル-エタノール混合物、および/または上述した溶媒のいずれかとのグリコール混合物が挙げられる。他の可能性のある溶媒としては、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド、酢酸、または乳酸、またはプロピオン酸などのカルボン酸、ジエチレングリコールブチルエーテル、またはジエチレングリコールエチルエーテル、またはジエチレングリコールメチルエーテル、またはエチレングリコールブチルエーテル、またはエチレングリコールエチルエーテル、またはエチレングリコールメチルエーテル、またはジオキサンなどのエーテル、シクロヘキサノンなどのケトン、アミルアルコールなどの第一アルコール、sec-ブチルアルコール、またはイソブチルカルビノールなどの第二アルコール、ジアセトンアルコールなどの第3アルコール、シトロネロールなどのテルペノイド、および/または上記のもののいずれかとのグリコール混合物が挙げられる。
【0051】
一部の場合において、金属活性物質は、抗感染性金属活性物質であってもよく、一方で他の場合において、金属活性物質は、他の目的のために、例えば組成物の粘度をモジュレートするために、添加されてもよい。金属活性物質によって付与される抗感染特性の程度はまた、組成物中の金属活性物質の濃度にも依存する可能性がある。抗感染性の元素は、あらゆる化学種形成を有していてもよく、その例としては、それらの組合せ、例えばAg、Cu、Zn、Fe、Se、Al、Cr、Mo、Ga、Co、Bi、Sb、Li、Ge、Ti、および/またはCe、より好ましくはCu、Zn、Ag、Feおよび/またはMo、最も好ましくはCuまたはZnが挙げられる。金属活性物質のより一般的な列挙としては、Ag、Cu、Zn、Fe、Se、Al、Cr、Mo、Ga、Co、Bi、Sb、Li、Ge、Ti、Ce、Na、K、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Sc、Ti、Zr、Hf、V、Nb、W、Mn、Re、Ru、Ir、Pd、Pt、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、および/またはEr、より好ましくは、Cu、Zn、Fe、Mg、Ca、Sr、Ti、Mn、Ce、Mo、Ga、Zr、Gd、La、Sm、Gd、Er、Wおよび/またはAl、より好ましくは、Cu、Zn、Fe、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、および/またはMn、最も好ましくは、Cu、Zn、Mg、Ca、および/またはFeが挙げられる。
【0052】
本発明の抗感染性組成物を生産するのに使用される抗感染性金属活性物質の例は、銅、亜鉛、銀、ビスマスおよび/またはコバルト化合物を含み、セレニウムを含んでいてもよい。金属活性物質としては、銅カルボン酸塩複合体または亜鉛カルボン酸塩複合体が挙げられる。好適な抗感染性の金属活性化合物の例は、塩化銅、酢酸銅、酸化銅、オキソ水酸化銅(copper oxo-hydroxide)、水酸化銅、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ナノ酸化亜鉛、ノルマル酸化亜鉛(normal zinc oxide)、塩化鉄、塩化アルミニウム、酢酸モリブデン、またはカオリンである。一部の場合において、抗感染性金属活性物質の組合せを使用してもよく、例えば銅と亜鉛の組合せが挙げられ、任意選択でこれは、セレニウムをさらに含んでいてもよい。他の場合において、1種またはそれより多くの抗感染性ベースの金属活性物質は、1種またはそれより多くの金属ベースの賦形剤と組み合わせてもよく、およびこの場合、後者のものは、ある程度の抗感染特性を有していてもよいし、または有していなくてもよい。実施例で示されるように、これらの材料で使用される抗感染性金属は、最終的な抗感染性組成物をもたらす場合もあり、またはもたらさない場合もある。これは、これらに限定されないが、金属の濃度および選択、加えてその化学種形成などの正確な配合に依存すると予想される。抗感染特性を有することがこれらの組成物にとって望ましくない場合、他の金属を使用して最終的な組成物の物理的特性をモジュレートしてもよい。
【0053】
好ましくは、金属活性物質または賦形剤は、5mMolal~3.5Molal、より好ましくは25mMolal~3.5Molal、より好ましくは50mMolal~3.5Molal、より好ましくは75mMolal~3.5Molal、より好ましくは100mMolal~3.5Molal、より好ましくは100mMolal~2Molal、より好ましくは100mMolal~1.5Molal、より好ましくは100mMolal~1Molal、より好ましくは100mMolal~750mMolal、より好ましくは100mMolal~500mMolal、より好ましくは150mMolal~500mMolal、最も好ましくは150~350mMolalの濃度で組成物中に存在する。一部の場合において、金属活性物質または抗感染性金属活性物質は、金属活性物質を除いた対応する組成物、すなわちセラック単独を含む組成物と比べて、組成物の粘度および/またはバリアの厚さを増加させる利点を有する。
【0054】
銅金属活性物質の具体的な例としては、銅EDTA、酒石酸銅、クエン酸銅、アジピン酸銅、安息香酸銅、マレイン酸銅、マロン酸銅、グルコン酸銅、アスピリン銅、シトラコン酸銅、フマル酸銅、グルタル酸銅、クリオキノール銅、サリチルアルデヒドベンゾイルヒドラゾン銅、ピコリン酸銅、銅アラニン、銅アルギニン、アスパラギン酸銅、グルコン酸銅、グリシン酸銅、銅ヒスチジン、銅イソロイシン、銅ロイシン、銅リシン、銅メチオニン、銅フェニルアラニン、銅プロリン、銅セリン、銅スレオニン、銅チロシン、銅バリン、ギ酸銅、プロピオン酸銅、イソ吉草酸銅、ピバル酸銅、フェニル酢酸銅、シアノ酢酸銅、クロロ酢酸銅、ヒドロキシ酢酸銅、2-ヒドロキシプロパン酸銅、2-ヒドロキシブタン酸銅、キナ酸銅、ピルビン酸銅、エトキシ酢酸銅、硫酸銅、チオシアン酸銅、硫化銅、臭化銅、フッ化銅、硝酸銅、炭酸銅、炭酸水酸化銅、亜セレン酸銅、過酸化銅、硫酸テトラアンミン銅、リン酸銅、または元素の銅が挙げられる。
【0055】
亜鉛金属活性物質の具体的な例としては、亜鉛EDTA、酒石酸亜鉛、クエン酸亜鉛、アジピン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、マレイン酸亜鉛、マロン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アスピリン亜鉛、シトラコン酸亜鉛、フマル酸亜鉛、グルタル酸亜鉛、クリオキノール亜鉛、サリチルアルデヒドベンゾイルヒドラゾン亜鉛、ピコリン酸亜鉛、アラニン亜鉛、アルギニン亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、亜鉛ヒスチジン、亜鉛イソロイシン、亜鉛ロイシン、亜鉛リシン、亜鉛メチオニン、亜鉛フェニルアラニン、亜鉛プロリン、亜鉛セリン、亜鉛スレオニン、亜鉛チロシン、亜鉛バリン、ギ酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、イソ吉草酸亜鉛、ピバル酸亜鉛、ヒドロキシ酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛、または元素の亜鉛が挙げられる。
【0056】
一般的に、そうでなければ不溶性の金属活性物質を磨砕することは、均質な材料の配合を助けることができることは当業者公知であると予想される。
本発明に従って使用される組成物は、対象への局所適用に好適な粘度を有し、それを保ちながら保護的疎水性バリアを形成することが見出された。好適な粘度の例としては、50cPより大きい、より好ましくは75cPより大きい、より好ましくは100cPより大きい、より好ましくは200より大きい、より好ましくは500より大きい、より好ましくは750より大きい、より好ましくは1000cPより大きい、より好ましくは2500cPより大きい、より好ましくは5000cPより大きい、最も好ましくは10000cPより大きい粘度が挙げられる。一般的に、スプレーとして適用される組成物の場合、粘度は、10cP~3000cPであってもよい。組成物が塗布剤として適用される場合、より粘性の組成物を使用してもよく、例えば、1000cPより大きい粘度、より好ましくは2000cPより大きい粘度を有する組成物を使用してもよい。粘度測定は、室温で、すなわち25℃でなされてもよい。一部の実施態様において、金属活性物質の添加は、組成物の粘度を、25℃で測定した場合、金属活性物質を含まない対応する組成物と比較して、例えば少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、より一層好ましくは少なくとも200%、最も好ましくは少なくとも500%増加させるのに役立つ。
【0057】
使用において、本発明の組成物は、他の治療剤または非治療剤、例えば1種またはそれより多くの抗生物質および/または治療剤と組み合わせて使用してもよいし、またはそれらと共投与してもよい。一部の例において、さらなる活性薬剤は、抗生物質製剤、抗微生物剤(例えばオキシテトラサイクリンまたはクロルヘキシジン)および/または止血活性物質であってもよい。一部の実施態様において、組成物は、1種またはそれより多くの抗生物質または他の抗感染剤または治療剤、消毒剤または他の薬剤がすでに適用されている部位の上に適用することができ、それによって治療剤と共に処置の部位上に保護バリアを提供して、例えば環境との接触で洗い流されることによる治療剤の喪失を防止することを助ける。代替として、またはそれに加えて、本発明の組成物は、それが1種またはそれより多くの抗生物質を含むように製剤化されてもよい。動物での使用に関して承認された抗生物質化合物の例としては、様々な天然化合物、例えば、ペニシリン(ペニシリウム属の真菌によって生産される)、セファロスポリン、およびカルバペネムなどのラクタム系抗生物質の半合成の改変物が挙げられる。今でも生物から単離される抗生物質としては、アミノグルコシドが挙げられ、それに対して他の抗生物質、例えばスルホンアミド、キノロン、およびオキサゾリジノンは、化学合成によってのみ生産される。多くの抗菌性化合物は、天然、半合成、および合成物への化学合成/生合成の起源に基づき分類される。アンサマイシンは、細菌RNAポリメラーゼを阻害し、グラム陽性および選択的グラム陰性細菌に対して優秀な効力を有する抗生物質のクラスであり、その例としては、以下が挙げられる。リファマイシン、リファンピン、リファンピシン、リファブチン、リファネチン、リファラジル、ABI-1657、およびそのアナログ。ベータラクタム、例えばペニシリン(例えばベンジルペニシリン(penzylpenicillin)、アモキシリン)、カルバペネム(例えばメロペネム、イミペネム)、セファロスポリン(例えばセファレキシン、セフロキシム)。天然に存在するアミノグルコシド、例えばストレプトマイシン、ネオマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、または半合成誘導体、例えばアミカシン、ネチルマイシン。フルオロキノロン(例えばシプロフロキサシン、ノルフロキサシン)、マクロライド(例えばエリスロマイシン、クラリスロマイシン)、ケトライド(例えばテリスロマイシン)。テトラサイクリン、例えばテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、またはドキシサイクリン。糖ペプチド(例えばバンコマイシン、テイコプラニン)、リンコマイシン(例えばリンコマイシン、ピルリマイシン)、アンフェニコール(例えばチアンフェニコール、クロラムフェニコール)、ストレプトグラミン(例えばプリスチナマイシン)、オキサゾリジノン(例えばリネゾリド、シクロセリン)、プロイロムチリン(例えばチアムリン、レタパムリン)。ムピロシン、フシジン酸、ポリミキシンBまたはバシトラシンは、局所的に使用されることが多く、本明細書に記載される発明と組み合わせても使用できる。好ましい抗生物質、例えば蹄および表面の創傷感染(例えば趾皮膚炎)に局所的に採用されるものとしては、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンおよびチアンフェニコールが挙げられる。
【0058】
一部の場合において、本明細書に記載される組成物は、金属ベースの治療剤、例えば硫酸銅(II)、銅EDTA、亜鉛EDTA、ピリチオン亜鉛、銀、硝酸銀、スルファジアジン銀およびこれらの金属ベースの治療剤の混合物と組み合わせて使用することができる。この状況において、本発明で使用するための組成物は、金属ベースの治療剤の適用の後に適用することができる。
【0059】
一部の場合において、局所抗菌剤(非抗生物質)を使用してもよい。例えば、パラベン、ビグアニド、例えばクロルヘキシジン、ジアミン、過酸化水素、フェノール、例えばトリクロサン、ハロフェノール、例えばクロロキシレノール、ヨウ素、またはベンゾエート、例えば安息香酸である。
【0060】
一部の場合において、抗真菌剤を使用してもよい。抗真菌剤の例としては、ポリエン(例えばアンホテリシンB、ナイスタチン)、アゾール、例えばフルコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、テルコナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、またはスルコナゾール、アリルアミンおよび関連化合物、例えばテルビナフィン、トルナフテート、ブテナフィン、またはナフチフィン、モルホリン関連化合物、例えばアモロルフィン、さらにはシクロピロクス、ゲンチアナバイオレット、硫化セレン、ピリチオン亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛およびピロクトンオラミンが挙げられる。
【0061】
一部の場合において、抗原虫薬を使用してもよい。例えば、メトロニダゾール(抗生物質でもある)またはニタゾキサニド(抗ウイルス剤としての活性物質でもある)である。
一部の場合において、例えばネオマイシン、ポリミキシンおよびバシトラシンなどの上記の抗生物質または他の治療剤の組合せも、効能を増加させるのに使用することができる。
【0062】
一部の場合において、好ましくは、抗微生物組成物は、対象または個体上の処置部位に組成物を適用した後、可塑剤として使用されるか、もしくはバリア形成を促進するための、またはそれらの両方のための1種またはそれより多くの親水性添加剤をさらに含む。親水性添加剤の例としては、TEC(この場合、組成物は、好ましくは2~30%、より好ましくは3~20%、最も好ましくは5~15%で含む)、ポリアルキレングリコール、例えばPEG-400などのPEG(この場合、組成物は、好ましくは、2~30%、より好ましくは3~20%、最も好ましくは5~15%で含む)、グリセロール(この場合、組成物は、好ましくは、1~20%、より好ましくは2~15%、最も好ましくは3~10%で含む)、ヘキシレングリコール(この場合、組成物は、好ましくは、1~20%、より好ましくは2~15%、最も好ましくは3~10%で含む)およびトリアセチン(この場合、組成物は、好ましくは、1~20%、より好ましくは2~15%、最も好ましくは3~10%で含む)が挙げられる。
【0063】
本発明者らは、一部の場合において、固形バリアの即時形成を誘発するために、適用の時点で、セラックのための非溶媒(すなわちセラックが溶解しない溶液)を、セラックを含有する溶液と混合してもよいことを観察した。例えば、セラックのエタノール溶液が十分な量のグリセロールと接触したときに、バリアは直ちに形成される。またその場での混合は、二成分カートリッジを使用しても達成することができ、この場合、1つのチャンバーは、セラック溶液および他の非溶媒(実施例2.1を参照)、例えばPEGまたはグリセロールを有する。発明者らはまた、このプロセスが、上述される親水性添加剤としてのその使用と比較して、より多くの量の非溶媒を必要とすることも観察した。例えば、2つの成分を混合すると、得られたPEGの濃度は、30~75%、最も好ましくは33~66%であると予想される。追加の例として、グリセロールの得られた濃度は、20~75%、最も好ましくは25~50%であると予想される。
【0064】
一部の場合において、好ましくは、抗感染性組成物は、例えば、抗感染性組成物が対象または個体に適用されて、少なくともある程度の揮発性溶媒が蒸発したときに形成されたバリア層の耐水性を強化するための、1種またはそれより多くの疎水性バリアを強化する物質をさらに含む。疎水性バリアを強化する物質の例としては、デカン酸(この場合、組成物は、好ましくは、2~30%、より好ましくは3~20%、最も好ましくは4~10%で含む)、オクタン酸(この場合、組成物は、好ましくは、2~20%、より好ましくは3~15%、最も好ましくは5~12%で含む)、オレイン酸(この場合、組成物は、好ましくは、2~20%、より好ましくは3~15%、最も好ましくは5~12%で含む)、またはラウリン酸(この場合、組成物は、好ましくは、2~20%、より好ましくは3~15%、最も好ましくは5~12%を含む)が挙げられる。
【0065】
一部の場合において、好ましくは、組成物は、さもなくばあまりにも迅速に分解される可能性があるバリアの分解を阻害するための1種またはそれより多くの緩衝剤をさらに含む。これは、アルカリ性の糞便のスラリーと接触した状態のバリアは比較的速く分解し、さらに、追加の緩衝剤を含むことによってバリアの分解を減速できることから、趾皮膚炎において特に有利である。これはなぜなら、セラックはアルカリ性条件下で水溶性になる可能性があり、糞便のスラリーは約pH8のpHを有し、セラックの可溶化に起因する経時的なバリアの分解に寄与すると予想される約100mMの緩衝能力を有するためである。この理由のために、本発明に従って使用される組成物は、局所的に好適になるように4.0より高いpHを有することが望ましいが、このような喪失の回避が可能である限り、使用時はpH6.0未満または6.5未満に維持してもよい。この問題に対する1つの洗練された解決法は、組成物中に、緩衝液、好ましくは4.0~6.5のpKaを有する緩衝液を含ませることである。好適な緩衝成分の例としては、モノカルボン酸を含むカルボン酸、例えば安息香酸、ラウリン酸、グリコール酸、レブリン酸(levinulic acid)、乳酸、ピルビン酸、もしくはグリセリン酸、アジピン酸(好ましくは0.5%~5%)、アゼライン酸(好ましくは0.5%~5%)、コハク酸、ピメリン酸もしくはデカン酸などのジカルボン酸、またはクエン酸などのトリカルボン酸が挙げられる。これらに限定されないが、アミノ酸、脂肪酸、およびアルファヒドロキシ酸などの多様なカテゴリーの分子が、カルボン酸ペンダント基を含有していてもよいことは当業者公知であると予想される。このような分子もまた、本発明において緩衝剤として好適であり得る。
【0066】
一部の場合において、好ましくは、組成物は、抗炎症剤、または金属活性物質の負荷量または溶解性を強化するための錯化剤をさらに含む。好適な抗炎症剤または錯化剤の例は、サリチル酸、サリチル酸ナトリウムおよびプロピオン酸、またはそれらの化学的誘導体である。
【0067】
一部の場合において、好ましくは、組成物は、止血剤をさらに含む。創傷処置が血液凝固を含む適用では、例えば急性創傷の処置、例えば軍事、スポーツまたは急性期の獣医学的な使用では、例えばカオリン、硫酸アルミニウム、またはゼオライトが含まれていてもよい。カオリンなどの止血剤の好適な濃度の例としては、1%~40%、より好ましくは2%~35%、より好ましくは3~30%、最も好ましくは5~30%が挙げられる。
【0068】
一部の場合において、組成物は、鎮痛剤、例えばアセチルサリチル酸、サリチル酸、サリチル酸トロラミン、サリチル酸マグネシウムおよび/またはニコチン酸メチルをさらに含む。また天然の鎮痛剤、例えばカプサイシンが添加されてもよい。
【0069】
一部の場合において、組成物は、抗炎症剤、例えばイブプロフェン、ジクロフェナク、フェルビナク、ケトプロフェンおよび/またはピロキシカムをさらに含む。
一部の場合において、組成物は、無痛化剤、例えばメントール、ユーカリ油、桂皮油および/またはカンファーをさらに含む。
【0070】
一部の場合において、組成物は、抗掻痒剤、例えばヒドロコルチゾンをさらに含む。
好ましくは、組成物の全ての成分は、承認された食品または飼料添加剤であるか、および/またはGRAS試薬(「一般的に安全とみなされる(Generally Recognised As Safe)」)としての資格を有する。
【0071】
配合物および使用
本発明に従って使用するための組成物は、感染および/または創傷の防止または処置のために採用することができる。組成物が感染を処置または防止するために使用される場合、感染は、細菌感染、真菌感染、寄生虫感染またはウイルス感染であり得る。一般的に、組成物は、細菌感染を処置または防止するのに特に好適であり、すなわち組成物は、抗微生物組成物である。一般的に、揮発性溶媒中にセラックおよび金属活性物質または抗感染性金属活性物質を含む本発明に従って使用される組成物は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば哺乳類)対象に局所適用されると、疎水性バリアを形成することが可能である。対象に局所適用されると、本発明の組成物は、一般的に、固体界面を形成する。しかしながら、環境の水分との接触、またはウシなどの家畜の処置の場合は糞便のスラリーとの接触は、疎水性バリアの即時の形成をもたらすことになり、それにより本発明を、問題のある環境、例えば趾皮膚炎(例えばウシ趾皮膚炎)および乳房の感染、例えば乳房の潰瘍形成、乳房の皮膚炎または乳房の病変における使用に十分適合したものにするため、これは必須ではない。さらなる獣医学的な使用としては、乳首のシーリングまたは角の除去のための液体包帯剤組成物の使用が挙げられる。
【0072】
本発明による医療および獣医学的な使用において使用される抗感染性組成物は、特に感染が潜在的な負担である場合、全般的な創傷管理において使用することができる。この例としては、外傷性の創傷または術後創傷を含む慢性潰瘍および急性創傷が挙げられる。本発明の組成物が有用な創傷の例としては、開放創(裂傷、剥離、穿刺創または擦過傷)、または糖尿病性潰瘍、ブルリ潰瘍などの慢性潰瘍、または熱傷、外科創傷、もしくは足腐敗症の処置における補助の場合、外傷性の病変、膿瘍および小さい引っ掻き傷も病変などの他のタイプの創傷が挙げられる。本発明に従って使用される組成物はまた、保護的な環境を提供することによってすでに治癒を受けている閉じた創傷の処置の補助において、さらに、再感染を防止することにおいて有利でもある。それゆえに組成物は、創傷の防止でも使用することができる。一部の実施態様において、液体包帯剤組成物は、市販(OTC)の組成物の形態で供給されると予想される。本発明に従って処置可能な他の獣医学的な状態としては、毛包炎、膿痂疹、白癬、レインスコールド、足腐敗症、口蹄疫、ブルータング、皮癬および/またはシラミ症が挙げられる。
【0073】
本発明による抗感染性組成物は、動物の創傷管理が特に問題である可能性がある獣医学的な適用によく適している。これらの問題としては、周囲の環境における高い微生物負荷(病原性および非病原性)、および頻繁な創傷クリーニングと抗微生物剤の再適用が一般的に実現不可能であるかまたは賦形剤であるという事実が挙げられる。一般的に、標準的な包帯剤の使用は、これらの蓄積する糞便の問題または他の退廃物のためにためらわれる。包帯剤の適用および除去のために動物の隔離を必要とする包帯剤の使用とは対照的に、本発明で使用される組成物を使用して、創傷を保護する、任意選択で事前に適用された抗生物質または抗微生物剤にも封じ込めるほど十分にロバストな、ただし経時的に分解するロバストな自立式疎水性バリアを形成することができる。これは、抗生物質または抗微生物剤の頻繁な再適用への必要性を低減し、後続のバリアの除去を不要にする。本発明はまた、低減した用量の抗生物質の採用も可能にする。一般的に、本発明の組成物から形成された疎水性バリアは、分解するのに、1~20日、より好ましくは2~10日、最も好ましくは3~7日を必要とする。分解速度は、通常、バリアが糞便のスラリーと接触している場合、より高い。
【0074】
一部の場合において、本発明で使用される組成物は、二酸化ケイ素(シリカ)を実質的に含まない。
代替として、またはそれに加えて、本発明で使用される組成物は、例えば油、例えば不乾性または半乾性油などの柔軟剤を実質的に含まない。柔軟剤の例は、トリグリセリド油、例えば動物性、植物性、鉱物性または合成起源のトリグリセリド油である。好適な不乾性または半乾性油の例としては、マツ油、ユーカリ油、ティーツリー油、ローズヒップ油、ダイズ油、ヤシ油、ヒマシ油、オリーブ油、ベニバナ油およびヒマワリが挙げられる。
【0075】
本出願において、「実質的に含まない」は、本発明の組成物が述べられた成分を含まないか、または含んでいたとしても最小または微量の問題の成分を含み、例えば1.0%w/w未満、より好ましくは0.5%w/w未満、さらにより好ましくは0.1%w/w未満で含むことを意味する。
【0076】
一部の場合において、本発明の組成物は、述べられている成分からなるか、またはそれから本質的になる。
本発明の組成物の1つの利点は、バリアが水に対して非多孔性であることである。組成物が細孔を有するバリアを形成する場合、それらは、一般的に小さいサイズの細孔、例えば直径が1μmまたはそれ未満の平均直径を有する細孔である。
【0077】
本発明で使用される組成物は、粘性液体を送達することが可能なあらゆるデバイスを使用して適用することができる。一般的に、組成物が粘性であることは、それがスプレー不可能であることを意味する。先行技術における包帯剤上のスプレーは、相対的に薄い膜形成する可能性があるため、フィルムを堆積させるのに使用されるエアロゾルは高いパーセンテージの固体を保持できず、高い比率の乾燥時間:堆積した固体の質量を有し、一般的に非生分解性であることから不利益を被る。したがって、本発明の組成物は、絞り出し可能なボトル、絞り出し可能な、または折り畳み式のチューブ、接着式のディスペンサー、マニュアル、空気圧または電気カートリッジガンを使用するカートリッジおよびプランジャーキット、または液体ディスペンサーによって投与されることが好ましい。一部の場合において、使い捨てのへらもしくはブラシまたはそれに類似するものの使用を介して組成物が投与されることが好ましい場合がある。一部の場合において、適用は、例えばブラシまたは他のアプリケーターを使用することによって処置しようとする場所の上に組成物を分配することと組み合わせてもよい。
【0078】
他の場合において、本発明の組成物は、スプレー送達のために製剤化してもよい。これは、創傷の処置の補助または感染の管理を助けるためにより薄い包帯剤が適切な環境において有用な場合もある。
【0079】
したがって、さらなる形態において、本発明は、感染および/または創傷の処置における使用のための液体包帯剤組成物を適用するためのデバイスであって、
本明細書において定義される揮発性溶媒中にセラックおよび金属活性物質(例えば抗感染性金属活性物質)を含む組成物を含有する第1のチャンバーおよび非溶媒を含有する第2のチャンバー;
第1および第2のチャンバーと連通する混合チャンバー;
混合チャンバーに組成物および非溶媒を送達して、混合された組成物を提供するための作動手段;
および
対象上の場所に該混合された組成物を適用するための、該混合チャンバーと連通するアプリケーター
を含み、該組成物は、対象に局所適用されると疎水性バリアを形成することが可能である、デバイスを提供する。
【0080】
これらのデバイスにおいて、非溶媒の例としては、グリセロールまたはポリアルキレングリコール、例えばPEGが挙げられる。これらのデバイスは、二重または二成分カートリッジアプリケーターデバイスの形態をとっていてもよい。他の実施態様において、本発明は、スプレーの形態での組成物を送達するためのデバイス、例えば、加圧されたガスまたは空気送達を使用したデバイスを提供する。
【0081】
本発明の液体包帯剤組成物は、抗微生物剤または抗微生物剤としての使用のために、例えば細菌または微生物感染を処置または防止するために、および/または創傷の処置のために製剤化されてもよい。したがって、本発明の組成物は、上述した材料に加えて、医薬的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤または当業者周知の他の材料を含んでいてもよい。このような材料は、非毒性であると予想され、問題の適用のための固相材料の効能に著しく干渉しないものと予想される。
【0082】
例えば、包帯剤内の抗微生物剤の取り込みおよびその後続の放出は、創傷部位における微生物の進入および増殖の防止にとって有利であることは当業界において公知である。有効には/驚くべきことには、本発明の組成物は、抗微生物性金属の放出を最小にすることで滅菌包帯剤(接触致死を介して)を維持することができ、それによって副作用および/またはオフターゲット作用が回避される。これが、抗微生物剤のための送達マトリックスとして樹脂を採用した当業界における以前の組成物とは異なっている。別の実施態様において、本発明の組成物は、その抗微生物性金属イオンを創傷環境で活性な濃度で創傷に放出するように製剤化されてもよい。
【0083】
用語「抗感染の」は、本明細書で使用される場合、細菌、真菌、寄生虫またはウイルスによって引き起こされる感染の処置または防止を含む。
用語「抗微生物性」は、本明細書で使用される場合、グラム陰性およびグラム陽性微生物によって引き起こされる感染の処置または防止を含み、特に、環境から創傷への微生物の進入または微生物の包帯剤への定着を防止することを指し、このような微生物としては、以下が挙げられる:スピロヘータ属(Spirochaete)種、エシェリキア属(Escherichia)種、例えば大腸菌(E.coli)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)種、例えば皮膚常在菌(S.epidermis)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(「MRSA」)、バチルス属(Bacillus)種、例えば枯草菌(B.subtilis)または炭疽菌(B.anthracis)、シュードモナス属(Pseudomonas)種、例えば緑膿菌(P.aeruginosa)、ビブリオ属(Vibrio)種、例えばV.フィシェリ(V.fisheri)、連鎖球菌属(Streptococcus)種、例えばS.ズーエピデミカス(S.zooepidemicus)、S.エクイ(S.equi)、S.スイス(S.suis)、S.ウベリス(S.uberis)、S.ピオゲネス(S.pyogenes)および肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)、クレブシエラ属(Klebsiella)種、例えばK.ニューモニエ(K pneumoniae)、ミクロコッカス属(Micrococcus)種、例えばM.ルテウス(M.luteus)、クロストリジウム属(Clostridium)種、例えばC.ディフィシレ(C.difficile)またはC.パーフリンジェンス(C.perfringens)、アシネトバクター属(Acinetobacter)種、例えばA.バウマンニ(A.baumannii)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)種、例えば結核菌(M.tuberculosis)およびM.ボビス(M.bovis)、サルモネラ属(Salmonella)種、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)種、例えばブタ丹毒菌(E.rhusiopathiae)または潜在性エリジペロトリックス(E.insidiosa)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)種、例えばC.ミヌチシマム(C minutissimum)、レプトスピラ属(Leptospira)種、例えばL.インタロガンス(L.interrogans)、キューティバクテリウム属(Cutibacterium)種、例えばC.アクネス(C.acnes)、ガードネレラ属(Gardnerella)種、例えばG.バジナリス(G.vaginalis)、カンピロバクター属(Campylobacter)種、例えばC.フィタス(C.fetus)、クレブシエラ属(Klebsiella)種、例えばK.ニューモニエ(K.pneumoniae)、鼻硬腫菌(K.rhinoscleromatis)、キャプノサイトファガ属(Capnocytophaga)種、例えばC.カニモルサス(C.canimorsus)、ビブリオ属(Vibrio)種、例えばV.バルニフィカス(V.vulnificus)、パスツレラ属(Pasteurella)種、例えばP.ムルトシダ(P.multocida)、エロモナス属(Aeromonas)種、例えばA.ハイドロフィラ(A.hydrophila)、エイケネラ属(Eikenella)種、例えばE.コローデンス(E.corrodens)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)種、例えばM.ニューモニエ(M.pneumoniae)、カリマトバクテリウム属(Calymmatobacterium)種、例えばC.ダラヌロマティス(C granulomatis)、ヘリコバクター属(Helicobacter)種、例えばH.ピロリ(H.pylori)、クロストリジウム属(Clostridium)種、例えばウェルシュ菌(C.perfringens)、リステリア属(Listeria)種、例えばL.モノサイトゲネス(L.monocytogenes)、トレポネーマ属(Treponema)、例えばT.カラテウム(T.carateum)またはT.ビンセンティ(T.vincentii)またはT.マルトフィラム(T.maltophilum)またはT.レシチノリティカム(T.lecithinolyticum)、バルトネラ属(Bartonella)種、例えばB.ヘンセラ(B.henselae)、ノカルジア属(Nocardia)種、例えばN.ブラジリエンシス(N.brasiliensis)、エルシニア属(Yersinia)種、例えばペスト菌(Y.pestis)、セラチア属(Serratia)種、例えばS.マルセセンス(S.marcescens)、バークホルデリア属(Burkholderia)種、例えばB.シュードマレイ(B.pseudomallei)、放線菌属(Actinomyces)種、例えばA.イスラエリー(A.israelii)、ボレリア属(Borrelia)種、例えばライム病ボレリア(B.burgdorferi)、エンテロコッカス属(Enterococcus)種、例えばE.フェカーリス(E.faecalis)、または以下のような真菌、例えば、カンジダ属(Candida)種、例えばC.アルビカンス(C.albicans)、マラセチア属(Malassezia)種、例えば癜風菌(M.furfur)およびM.パチデルマティス(M.pachydermatis)、トリコフィトン属(Trycophyton)種、例えばT.ルブルム(T.rubrum)またはT.インテルディジタレ(T.interdigitale)、ミクロスポルム属(Microsporum)種、例えばM.カニス(M.canis)、M.エクイヌム(M.equinum)、M.オーズアニー(M.audouinii)、M.ジプセウム(M.gypseum)、またはM.ナヌム(M.nanum)、表皮菌属(Epidermophyton)種、例えば有毛表皮糸状菌(E.floccosum)、フザリウム属(Fusarium)種、例えばF.ソラニ(F.solani)、クモノスカビ(Rhizopus microspores)、リゾムコール属(Rhizomucor)種、例えばR.プシリス(R.pusillis)、ムコール属(Mucor)種、例えばM.インディカス(M.indicus)、シンセファラストラム属(Syncephalastrum)種、例えばS.ラセモスム(S.racemosumm)、カニングハメラ属(Cunninghamella)種、例えばC.ベルトレチアエ(C.bertholletiae)、アポフィソミセス属(Apophysomyces)種、例えばA.エレガンス(A.elegans)、リクテイミア属(Lichtheimia)、例えばL.コリムビフェラ(L.corymbifera)、サクセナエア属(Saksenaea)種、例えばS.エリスロスポラ(S.erythrospora)、アスペルギルス属(Aspergillus )種、例えばA.グラウクス(A.glaucus)、ブラストマイセス属(Blastomyces)種、例えばB.デルマチチジス(B.dermatitidis)、コクシジオイデス属(Coccidioides)種、例えばC.イミチス(C.immitis)、クリプトコックス属(Cryptococcus)種、例えばC.ネオフォルマンス(C.neoformans)、ヒストプラスマ属(Histoplasma)種、例えばH.カプスラーツム(H.capsulatum)、コクリオボルス属(Cochliobolus)種、例えばC.ルナタス(C.lunatus)、クラドフィアロフォラ属(Cladophialophora)種、例えばC.バンティアナ(C.bantiana)、エクソフィアラ属(Exophiala)種、例えばE.ジェンセルメイ(E.jeanselmei)、ピレノケータ属(Pyrenochaeta)種、例えばP.ロメロイ(P.romeroi)、ニューモシスチス属(Pneumocystis)種、例えばP.ジロベシ(P.jirovecii)、パラコクシジオイデス属(Paracoccidioides)種、例えばP.ブラジリエンシス(P.brasiliensis)、スポロトリクス属(Sporothrix)種、例えばS.シェンキィ(S.schenckii)、タラロミセス属(Talaromyces)種、例えばT.マルネフェイ(T.marneffei)など、または以下のような寄生虫、例えば、サルコプテス属(Sarcoptes)種、例えばヒゼンダニ(S.scabiei)、リーシュマニア属(Leishmania)種、例えばドノバンリーシュマニア(L.donovani)、ブラジルリーシュマニア(L.braziliensis)、L.パナメンシス(L.panamensis)、鉤虫科(Ancylostomatidae)、例えば鉤虫属(Ancylostoma)種またはアメリカ鉤虫属(Necator)種、ストロンギロイデス属(Strongyloides)種、例えば糞線虫(S.stercoralis)、オンコセルカ属(Onchocerca)種、例えば回旋糸状虫(O.volvulus)、双翅目幼虫、例えばヒロズキンバエ(Lucilia sericata)、ルリキンバエ(Protophormia terraenovae)、ラセンウジバエ(Cochliomyia hominivorax)、ヒトクイバエ(Cordylobia anthropophaga)、またはニクバエ(Sarcophaga bercaea)、バラムチア属(Balamuthia)種、例えばB.マンドリルリス(B.mandrillaris)、またはアカントアメーバ属(Acanthamoeba)種など、または以下のようなウイルス、例えばパピローマウイルス、エンテロウイルス、例えばコクサッキーウイルス、モラシポックスウイルス属種、例えば伝染性軟属腫、ワリセロウイルス属、またはヘルペスウイルス属など。用語「抗微生物性」は、本明細書で使用される場合、表面への微生物の付着を阻害する、微生物を致死させる、および/または微生物の繁殖を阻害する、特に環境から宿主への微生物の進入、もしくは微生物による定着もしくは包帯剤のバイオフィルム形成を防止する物質などの物質に適用するものとして理解される。用語「微生物」は、上記で詳述したような細菌、加えて酵母などの真菌、古細菌および原生生物およびウイルスを含む全ての微生物を含むものとして理解される。用語「微生物の」および「抗微生物性」は、そのように解釈されるものとする。
【0084】
一部の実施態様において、本発明の液体包帯剤組成物は、感染がウイルスによって引き起こされる感染および/または創傷を処置または防止するために使用できる。
対象に感染する可能性があり、本発明の組成物を使用して処置または防止することができるウイルスの例としては、呼吸器ウイルス、胃腸ウイルスおよび皮膚ウイルスが挙げられる。
【0085】
呼吸器ウイルス:ライノウイルス、イヌアデノウイルス(CAV1およびCAV2)、アデノウイルス(HAdV BおよびC)、イヌパラインフルエンザウイルス(5型)、ウシパラインフルエンザウイルス3型、インフルエンザウイルス(例えばA型インフルエンザウイルスH3N2、H1N1、H2N2、H5N1、H1N2、H9N2、H7N9およびB型インフルエンザウイルス)、呼吸器系合胞体ウイルス(ヒトRSV A、ヒトRSV B、ウシRSV、マウスの肺炎ウイルス)、天然に循環するアルファおよびベータコロナウイルス(例えば229E、OC43、SARS-CoV-2(COVID-19)、SARS-CoV-1、MERS-CoVおよびHCoV HKU1、イヌCoV、ネコCoV、ウシCoV)、エプスタイン-バーウイルス、コクサッキーAウイルス(例えばA21、A24)、サイトメガロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、単純疱疹ウイルス、1型ウシヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エンテロウイルスD68。
【0086】
胃腸ウイルス:ロタウイルス(例えばヒトグループA、BおよびC、トリおよびウシ)、ウシアデノウイルス、ヒトアデノウイルス(HAdV-F40、41型およびHAdV-G52型)、ウシウイルス性下痢ウイルス、カリシウイルスおよびアストロウイルス。
【0087】
皮膚ウイルス:麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルスB19、イヌパルボウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、エコーウイルス(9および16)、コクサッキーウイルス(A9、A16、B5など)、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス(cytomegolavirus)、デング熱ウイルス、ジカウイルス、チクングンヤウイルス、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、ウシおよびヒトパピローマウイルス、口蹄疫ウイルス、手足口病ウイルス。
【0088】
ウイルスのグループとしては、呼吸器ウイルス、胃腸ウイルスおよび皮膚ウイルスが挙げられる。したがって、感染および/または創傷の処置または防止の補助における使用のための液体包帯剤組成物であって、感染は、アデノウイルス科のウイルス、例えばヒトマストアデノウイルスA、もしくはHAdV-F40型、もしくはHAdV-F41型、もしくはHAdV-G52型、もしくはAdV-B、もしくはHAdV-C、もしくはイヌアデノウイルス1によって、またはカリチウイルス科のウイルス、例えばノロウイルス、もしくはネコカリチウイルス、もしくはサポウイルスによって、またはコロナウイルス科のウイルス、例えばイヌCoV、もしくはネコCoV、もしくはウシCoV、もしくはブタ流行性下痢ウイルス、もしくはHCoV229E、もしくはHCoVOC43、もしくはSARS CoV-1、もしくはSARS CoV-2もしくはMERS-CoV、もしくはHCoV HKU1によって、またはフラビウイルス科ファミリーのウイルス、例えばデング熱ウイルス、もしくは日本脳炎、もしくは黄熱病ウイルス、もしくはC型肝炎ウイルス、もしくはジカウイルス、もしくは西ナイルウイルス、もしくはペスチウイルスCによって、またはヘルペスウイルス科ファミリーウイルス、例えばマレック病ウイルス、イノシシヘルペスウイルス-1、ウマヘルペスウイルス-1、もしくは単純疱疹ウイルス2、もしくは水痘帯状疱疹ウイルス、もしくはエプスタイン-バーウイルス、もしくはサイトメガロウイルスによって、またはマトナウイルス科のウイルス、例えば風疹ウイルスによって、またはオルソミクソウイルス科のウイルス、例えばA型インフルエンザウイルスH3N2、もしくはA型インフルエンザウイルスH1N1、もしくはA型インフルエンザウイルスH2N2、もしくはB型インフルエンザウイルスによって、またはパピローマウイルス科のウイルス、例えばヒトもしくはウシパピローマウイルス1型、もしくは2型、もしくは6型、もしくは11型、もしくは18型、もしくは31型、もしくは33型、もしくは45型、もしくは52型、もしくは58型によって、またはパラミクソウイルス科のウイルス、例えばウシパラインフルエンザウイルス3型、もしくは麻疹、もしくは流行性耳下腺炎、もしくはトリオルソブラウイルス(orthovulavirus)1、もしくは小反芻動物モルビリウイルスによって、またはパルボウイルス科のウイルス、例えばHBoV1、もしくはパルボウイルスB19、もしくはイヌパルボウイルス、もしくはブタパルボウイルスによって、またはピコルナウイルス科のウイルス、例えばポリオウイルス、もしくはエンテロウイルスD68、もしくはライノウイルスA、もしくはライノウイルスB、もしくはライノウイルスC、もしくはヒトコクサッキーウイルスA9、もしくはヒトコクサッキーウイルスB5によって、またはニューモウイルス科のウイルス、例えばヒトメタニューモウイルスもしくはヒトオルソニューモウイルスによって、またはポックスウイルス科のウイルス、例えばランピースキン病ウイルス、ヒツジ痘ウイルス、ヤギ痘ウイルス、サル痘ウイルス、もしくは牛痘ウイルスによって、またはレオウイルス科ウイルス、例えばブルータングウイルス、アフリカ馬疫ウイルス、ロタウイルスAもしくはロタウイルスB、もしくはロタウイルスCによって、またはフェニュイウイルス科(Phenuiviridae)のウイルス、例えばリフトバレー熱ウイルスによって、またはトガウイルス科ウイルス、例えばチクングンヤウイルスによって引き起こされる。
【0089】
感染および/または創傷の処置または防止における使用のための液体包帯剤組成物であって、感染因子は、ウイルス性出血熱、例えばマールブルグウイルス、もしくはエボラウイルス、またはアレナウイルス属、例えばラッサウイルスを誘導することができる。
【0090】
本発明の液体包帯剤組成物の使用は、組成物が、ヒトまたは動物対象における感染を処置または防止することを意図されているのかどうかに応じて様々であると予想される。
しかしながら、ヒト対象における状態の処置または防止に関して適用されることに加えて、本発明は、獣医学的な分野における適用、例えば非ヒト動物、より特定には非ヒト哺乳動物、例えばイヌ、ネコおよびウマなどのコンパニオンアニマル、加えてウシ、ヤギおよびヒツジなどの家畜種の処置における使用に関する適用を有する。農業で使用されるもの、例えばアルパカまたはラマ、外国産のペット、動物園の動物およびサファリパークの動物などを含むめったにない/希少な属種(例えばM.U.M.S.、希少使用及び希少動物種(minor use minor species))もこれらの新しい材料の利益を受ける可能性がある。1つの特定の適用において、本発明の抗微生物組成物は、ウシ趾皮膚炎の処置のために、より特定には乳牛の処置のために使用される。さらなる適用において、本発明の抗微生物組成物は、ウシにおける乳房の皮膚炎および切断後、かぎづめの切断;ヒツジにおける足腐敗症;ウマにおける泥土熱のために使用される。本発明の組成物はまた、イヌ、ネコおよびウマ、加えてヒツジ、ブタおよびウシにおける去勢手術などの手術後の創傷および縫い目の保護でも使用することができる。本発明を使用して処置可能な種の例としては、ヒト、ウシ、スイギュウ、ヤク、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、アルパカ、シカ、ロバ、コブウシ、シマウマ、ゾウ、オランウータン、チンパンジー、ゴリラ、キツネザル、テナガザル、ヒヒ、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、エミュー、ガチョウ、ダチョウ、ネコ、イヌ、フェレット、アレチネズミ、ハムスター、チンチラ、ラット、ウサギ、爬虫類、両生類、オウム、カナリア、キジ目、ガンカモ目およびスズメ目が挙げられる。
【0091】
動物が本発明の組成物によって形成されたバリアを噛む、噛みつく、またはつつく可能性がある一部の獣医学的な適用の場合、組成物に嫌な味の物質(taste deterrent)、例えば苦い成分を含ませることによって、このような行動を思いとどまらせ、バリアの寿命を延長したり、または再適用の必要性をなくしたりすることが望ましい場合がある。
【0092】
組成物が、例えば創傷または皮膚感染の処置での対象への投与を意図される実施態様において、担体または他の成分の正確な性質は、組成物の投与の方式または経路、典型的には局所経路を介した投与の方式または経路に関連していてもよい。
【0093】
一実施態様において、本発明の組成物は、創傷、潰瘍の処置、または細菌感染の処置もしくは防止において有用な局所投与のために製剤化してもよい。局所製品を用いた本発明の適用は、創傷治癒のための治療的使用を助ける。
【0094】
一部の場合において、本明細書における有効量の抗微生物組成物は、ヒトまたは動物への、皮膚、毛髪、爪、皮、被毛、羽または肉垂への局所適用のために製剤化してもよい。一般的に、「局所投与」は、本発明によれば、対象の歯への適用を含まない。
【0095】
例えば組成物が呼吸器ウイルス感染を処置または防止するために使用される一部の場合において、組成物は、例えば鼻道の内側を覆うかまたは鼻の外側に続く装填済みスワブを使用して、経鼻的に投与されてもよい。
【0096】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい形態を例示するために提供され、本発明の範囲を限定することは意図しない。
【実施例1】
【0097】
実施例1:一次配合物
実施例1.1.S1B1
エタノール中の30%の脱蝋したセラック、100mMolalの酢酸銅、100mMolalの塩化亜鉛。酢酸銅、および塩化亜鉛を50mLファルコンチューブに量り入れ、次いでエタノールを添加した。混合物を手動でホモジナイズし、そのまま約1時間混合した。次にセラックをプラスチックボトルに添加し、混合物を再び均質になるまでそのまま混合した。
【0098】
実施例1.2.S1B2
エタノール中の40%の脱蝋したセラック、100mMolalの酢酸銅、100mMolalの塩化亜鉛。セラック濃度が30%の代わりに40%であったことを除いて実施例1.1.に従った。
【0099】
実施例1.3.S1B3
エタノール中の50%の脱蝋したセラック、80mMolalの酢酸銅、20mMolalの塩化銅、100mMolalの塩化亜鉛。酢酸銅、塩化銅および塩化亜鉛を500mlプラスチックボトルに量り入れ、次いでエタノールを添加した。混合物を手動でホモジナイズし、そのまま約1時間混合した。次にセラックをプラスチックボトルに添加し、混合物を再び完全に均質になるまでそのまま混合した。
【0100】
実施例1.4.S1B4
エタノール中の60%の脱蝋したセラック、50mMolalの酢酸銅、50mMolalの塩化銅、100mMolalの塩化亜鉛。酢酸銅、塩化銅および塩化亜鉛を500mlプラスチックボトルに量り入れ、次いでエタノールを添加した。混合物を手動でホモジナイズし、そのまま約1時間混合した。次にセラックをプラスチックボトルに添加し、混合物を再び完全に均質になるまでそのまま混合した。
【0101】
実施例1.5.S1B5
エタノール中の40%の脱蝋したセラック(ブレンド済み)、12%PEG-400、5%グリセロール、100mMolalの酢酸銅、100mMolalの塩化亜鉛。PEG-400およびグリセロールを金属のエタノール溶液に添加し、セラック添加の前によく混合したことを除いて、実施例1.2.に従った。
【0102】
実施例1.6.S1B6
エタノール中の40%の脱蝋したセラック(ブレンド済み)、8%クエン酸トリエチル(TEC)、1%ZnO、100mMolalの酢酸銅、100mMolalの塩化亜鉛。TECおよびZnOを金属のエタノール溶液に添加し、セラック添加の前によく混合したことを除いて、実施例1.2に従った。
【0103】
実施例1.7.S1B7
エタノール中の50%の脱蝋したセラック(ブレンド済み)、10%クエン酸トリエチル(TEC)、5%デカン酸、100mMolalの酢酸銅、100mMolalの塩化亜鉛。セラックの濃度を60%の代わりに50%とし、セラック添加の前にTECおよびデカン酸も混合したことを除いて、配合は、実施例1.2に従った。
【0104】
実施例1.8.S1B8
配合は、より高い金属濃度(190mMolalの塩化亜鉛、126mMolalの酢酸銅)および109mMolalのサリチル酸を用いたことを除いて、実施例1.5に従った。1.204gの酢酸銅、1.236gの塩化亜鉛および0.7147gのサリチル酸を、17.38gのエタノールに添加し、よく混合した。その後、グリセロール(2.1236g)、PEG-400(5.1359g)およびセラック(19.75g)を添加し、スラリーを均質になるまで混合した。
【0105】
実施例1.9.S1B9
43%のセラック、174mMolalの酢酸銅、174mMolalの塩化亜鉛、101mMolalのサリチル酸、8%グリセロール,10.5%PEG400、4.3%アゼライン酸、2.2%デカン酸、1.8%アジピン酸。1.2093gの酢酸銅、0.8273gの塩化亜鉛および0.4843gのサリチル酸を、7.82gのエタノールに添加し、よく混合した。その後、アゼライン酸(1.5053g)、デカン酸(0.756g)、アジピン酸(0.642g)、グリセロール(2.802g)、PEG-400(3.6421g)およびセラック(15.1195g)を添加し、スラリーを均質になるまで混合した。
【0106】
実施例1.10:多量の金属塩
500mMolalの塩化銅、450mMolalの塩化亜鉛、50mMolalの酸化亜鉛、セラック40%。
【0107】
実施例1.11:セラックに加えて金属水酸化物
500mMolalの塩化銅および500mMolalの塩化亜鉛(最終濃度に従って)をKOHでpH4に中和し、次いで40%w/wまでセラックを添加した。
【0108】
実施例1.12:カオリン-セラック配合物
3.92gのカオリンを、15.65gのエタノール中の50%(w/w)のエステル化したセラックに添加し、よく混合した。カオリンは、抗微生物性アルミニウムの供給源として、さらに止血剤として使用されてきた。
【0109】
実施例1.13:カオリンを含むS1B5
エタノール中の40%の脱蝋したセラック(ブレンド済み)、12%PEG-400、5%グリセロール、100mMolalの酢酸銅、100mMolalの塩化亜鉛。酢酸銅、および塩化亜鉛を50mLファルコンチューブに量り入れ、次いでエタノールを添加した。混合物を手動でホモジナイズし、そのまま約1時間混合した。PEG-400およびグリセロールを金属のエタノール溶液に添加し、セラック添加の前によく混合した。セラックを完全に分散させた後、カオリンを11%(w/w)で添加した。
【実施例2】
【0110】
実施例2.二成分配合物
実施例2.1
実施例1.4で生産された材料を二成分カートリッジの一方のチャンバーにローディングし、他方のチャンバーはグリセロールを含有し、手動のアプリケーターガンで活動性の趾皮膚炎病変に適用した。2つの成分を混合すると、ゴム様のバリアが即座に形成された。これは、アプリケーターガンデバイスを使用して本発明の組成物を送達することの実行可能性を実証する。
【0111】
組成の編集表
供給源およびセラックのタイプの略語:
S-シグマからの蝋非含有のセラック
AFD-AF Suter&Coからの脱蝋(<0.5%)セラック
AFW-AF Suter&Coからの蝋含有セラック
AFE-AF Suter&Coからの事前にエステル化したセラック(セラックエステル)
F-供給元から得られた状態のまま使用されるセラック、すなわちフレーク(供給元から得られた状態のまま)
B-フレークを粉末にブレンドした後に使用されるセラック。
【0112】
金属の供給源の略語:
CuAc-酢酸第二銅水和物(Cu(CH3COO)2.xH2O)
FeCl-塩化第二鉄六水和物(FeCl3.6H2O)
CuCl-塩化銅(II)(CuCl2.2H2O)
ZnCl-塩化亜鉛(ZnCl2)
ZnAc-酢酸亜鉛二水和物(Zn(CH3COO)2.2H2O)
AlCl-塩化アルミニウム(AlCl3.6H2O)
MoAc-酢酸モリブデン(Mo2(CH3COO)4)。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【実施例3】
【0118】
実施例3.適合性に対する濃度の影響
実施例3.1
エタノール中の70%のセラックの溶液を調製したところ、これは透明なコハク色の粘性の溶液になった。エタノールで5倍希釈すると、流動しやすい透明な黄色の溶液が得られ、目に見える沈殿はなかった。
【0119】
実施例3.2
200mMolalの酢酸銅をエタノール中に溶解させたところ、紺青色/緑色の溶液が生じた。これをエタノールで1:10に希釈したところ、透明な薄青色の溶液が生じた。しかしながら、それが17%のセラック溶液で1:10に希釈される場合、大量の沈殿を有する濁った緑色を帯びた溶液が生じる。
【0120】
実施例3.3
固体セラックを酢酸銅のエタノール溶液(100mMolal)に添加して、目に見える沈殿がない40%のセラックを含む均質な溶液を得ることができる。
【0121】
濃縮したセラックのエタノール溶液は、エタノールで容易に希釈することができる。しかしながら、セラックに加えて酢酸銅のエタノール溶液は、希釈するとセラックの沈殿を形成する。高濃度材料は安定であるが、それに対して低濃度は安定ではないため、これは驚くべきことである。加えて、これは、以下の理由:(1)これらの溶液は、厚いバリアが形成できるように高濃度で生産できるため、および(2)希釈のときに(これは適用時に起こると予想される)、材料はその場で沈殿する可能性があることから、バリアがより速く形成されるために有利である。
【実施例4】
【0122】
実施例4.金属有りおよび無しでのロジン対セラックの保持の試験
材料
酢酸銅および塩化亜鉛をファルコンチューブに量り入れ、エタノール中に溶解させた。次にセラックまたはロジンも添加し、そのまま一晩ローラーミキサーで溶解させた。一晩ローラーミキサーを使用してエタノール中にセラック(40および60%)またはロジン(40%)を単に溶解させることによって、酢酸銅および亜鉛を含まない等価な材料を調製した。表2に、調製された材料およびその組成を列挙した。
【0123】
【0124】
保持の試験
構成
湿ったウシの蹄が遭遇する環境に近い環境として、ビチューメンの副次的な裏張り(すなわち裏面;詳細は以下の表の通り)を有する加湿した四角のカーペット(5.5cm×5.5cm)を使用した。簡単に言えば、四角形を水道水が入ったビーカー中に5~10秒浸漬し、次いでクランプを使用して裏面(すなわちビチューメン裏張り)と上向きに27°の垂直角度でスタンド上に固定した。
【0125】
【0126】
適用
試験ごとに新しいカーペット表面を使用した。プラスチックシリンジ(5mL)を用いて組成物を常に同じ領域に適用した。適用した量とその後失われた割合(すなわちカーペットに接着しなかった割合)を重量測定により決定した(表4)。
【0127】
【0128】
観察
CuAcおよびZnClを含む40%のセラックを含む組成物は最良のバリアを形成した。第2番目に良好であったのは60%のセラックであった。他の材料はそれほど粘性ではなく、薄くもろいバリア形成した。
【0129】
結論
驚くべきことに、抗微生物性金属の添加は、より少ない量のセラックを使用ながらも粘度増加および保持の改善の達成を可能にした。これらの実験の結果は、金属活性物質およびセラックを含む組成物のみが、粘着特性を有する自立式疎水性バリアを形成するための必要な粘度および粘着特性を有していたことを示した。対照的に、ロジンへの金属活性物質の添加は実用的なバリアを提供できなかった。
【実施例5】
【0130】
実施例5.粘度強化
本発明者らは、セラック組成物において粘度増加を引き起こすのに金属も使用することができることを見出した。以下の表(主要な編集表から抽出)は、金属の添加を介して粘度が強化された組成物のいくつか例を提供する。誤解を避けるために言えば、この表は、様々な金属の組合せおよび/または濃度で粘度の強を達成できることを単に例示する目的である。
【0131】
【実施例6】
【0132】
実施例6.アルカリ分解に対する耐性
セラック組成物は、可溶性アルカリ性条件下で(pH>7)である。一般的に生理学的な流体はpH7.0を超えるため、これは局所バリアに関するその有用性を限定する。加えて、外部の環境は、特定には獣医学的な適用において、アルカリ性であることが多い。趾皮膚炎の場合、バリアは、通常アルカリ性の堆肥スラリー(pH9.0まで)との接触に耐えなければならない(Salazarら、Characterization of dairy slurry in southern Chile farms. Agricultura Tecnica、67(2)、155、2007; FordhamおよびSchwertmann、Composition and Reactions of Liquid Manure (Gulle), with Particular Reference to Phosphate: III. pH-Buffering Capacity and Organic Components 1. Journal of Environmental Quality、6(2)、140~144、1977;およびUC Manure Technical Guide Series; Dairy Manure Nutrient Content and Formsを参照)。このような溶液との接触により、セラックバリアの完全性が迅速に失われると予想される。
【0133】
本発明者らは、金属の添加が模擬スラリー(SS)へのバリアの耐性を劇的に増加させることを発見した。驚くべきことに、本明細書に記載される組成物は、より多くの含量のセラックを含有する金属非含有のバリアより優れた性能を示した(表6)。本発明におけるこの特徴は、より一層少ない含量のセラックを使用でき、したがって製造コストがより低くなる点で経済的に有利である。
【0134】
さらに、本発明者らは、本発明の組成物からの湿潤バリア(すなわち溶剤蒸発の前)は、SSに対する非常に高い耐性を有していたことを見出した。対照的に、24時間乾燥させていないセラックのみのバリアの性能は極めて不十分であった。蹄は、バリアの適用後すぐに湿潤したスラリーと接触することになるため、湿潤バリアによるアルカリに対する耐性は飼育場の環境において特に有利である。
【0135】
【0136】
手法
75mmolalの炭酸アンモニウム(pH8.9)は、ウシ飼育場における糞便のスラリーの化学的範囲であることがこれまでに示されているため、SSは75mmolalの炭酸アンモニウム(pH8.9)からなっていた(FordhamおよびSchwertmannら、および上記のUC manure Technical Guideシリーズを参照)。
【0137】
1.0gのセラック組成物を22mLの総容量を有するチューブの底に添加した。20gの新たに調製されたSSを、直後(「湿潤」)または24時間の乾燥期間後(室温でチューブをあけて;「乾燥」)のいずれかに添加した。SSへのバリアの曝露を、ローラーミキサーで、室温で24時間行いその後、SS画分を捨て、残存したバリアの質量を決定した。SSに曝露されていない対照に対する回収率を計算した。
【実施例7】
【0138】
実施例7.抗生物質の封じ込め
本発明の組成物は、抗生物質の周囲の環境への喪失を防止することにおいて効果的である。これは、オキシテトラサイクリン(0.5%)の溶液を模擬病変表面に適用した実施例7.1で例示される。バリア非存在下では、さらに、わずか1mlの流体に曝露されただけにもかかわらず、90分以内に模擬病変表面から抗生物質の42%が失われた。対照的に、保護バリアを抗生物質の上に適用した場合、周囲の流体へのオキシテトラサイクリンの喪失は0.2%未満であった。実施例7.2において、クロルテトラサイクリンスプレー(趾皮膚炎を処置するのに一般的に使用される)をウシ死体の肢(指間の溝と上指との間)に適用し、模擬スラリーに1時間曝露した。バリアの非存在下で(n=4)、実質的な喪失が観察された(93%±3.6%)。バリアを適用すると(n=4)、喪失が18%±3.5%に低減された(5分の1)。
【0139】
実施例7.1
抗生物質喪失実験を24ウェルプレートで行った。1mlの10%ウシゼラチン溶液(50℃で調製された)を各ウェルの底に添加し、そのまま7±2℃で90分静置した。次に20μLの0.5%オキシテトラサイクリンのエタノール溶液を各ウェルの底に添加し、そのまま5~10分乾燥させた。次いで実験ウェルの半分(各群につきN=6)に0.50±0.05gのS1B2(実施例1.2に従って調製した)を添加することにより、抗生物質の上に保護バリアを形成し、そのまま5~10分乾燥させた(バックグラウンド補正のための適切なOTCフリーのウェルも調製した)。次に1mLのUHP水を全てのウェルに添加した。これらを暗所で90分維持し、その後、オキシテトラサイクリン標準(グラフパッド(Graphpad)によるカーブフィッティング)に対するプレートリーダー(355/590)での蛍光測定のために水性画分のサンプルを収集した。水性相への抗生物質喪失は、抗生物質のみの場合は42%、抗生物質に加えてバリアの場合は0.1%であると決定された。
【0140】
実施例7.2
ウシ死体の肢を用いてエクスビボでの抗生物質喪失実験を行った。趾皮膚炎を処置するために使用された抗生物質スプレー懸濁液(アニメダゾン(Animedazon)スプレー、活性物質としてクロルテトラサイクリンおよび色素としてパテントブルーVを含有する)を、一般的に病変に罹患した領域(指間の溝と上指との間の領域)に2秒スプレーすることによって各肢に適用した。適用されたスプレーの量を制御するために各適用の前および後にスプレー缶の質量を記録した。適用された抗生物質スプレーをそのまま60秒乾燥させ、次いで肢を、(a)対照グループ(n=4):1リットルの模擬スラリー(SS;75mM炭酸アンモニウム)中に直接浸すか、または(b)バリアグループ(n=4):抗生物質スプレー部位を覆うように適用されたバリア配合物(15±5gの実施例1.2からのS1B2)で処置し、さらに120秒そのまま乾燥させ、次いで1リットルのSS中に浸すかのいずれかとした。1時間の浸漬後、各肢につきSSの10mLサンプルを取り、アッセイを終結させた。サンプルを吸光度に関して分析して、模擬スラリー流体に失われた抗生物質配合物の比率を決定した;パテントブルーVの強く特徴的な分光化学的なプロファイル(λmaxH2O=639nm[J. Chem. Sci. (2018) 130:12])のために、吸光度測定が抗生物質喪失の便利な代用となった。量った質量の抗生物質スプレーの模擬スラリー溶液での連続希釈によって吸光度標準を調製した。その後、各標準およびアッセイサンプルからの6連のアリコート(各200μL)をプレーティングし(コーニング(Corning)のCo-star96ウェル)、吸光度350~850nmで測定した。測定したままのスペクトルはいくらかノイズが入った変動的なベースラインを有し(肢上の有機汚染物質による)、信頼できる吸光度最大値を得るためにMATLAB(登録商標)(サビツキー・ゴーレイ(Savitsky Golay)フィルタリング、それに続く二次多項式でのベースラインサブトラクション)での処理を必要とした。最後に、直線状の標準曲線(濃度対639nmでの吸光度)を使用して、アッセイサンプルごとの喪失データを作成した。バリア保護の非存在下で、適用されたパテントブルーの93%がアッセイ流体に失われた;バリア配合物を使用した場合、喪失が5分の1より少ない18%に低減された。
【実施例8】
【0141】
実施例8.バリアによる接触致死および金属放出
本明細書で開示される組成物の多くが、流体と接触したとき、極めて低いレベルの金属を放出する。それにもかかわらず、これらの組成物は、接触のときに殺菌活性を有する。対照的に、セラックのみのバリアは、測定可能な接触致死活性を有さないことが見出された。
【0142】
接触致死/金属放出の手法
1mLの各材料を12ウェルプレート上のウェルに移し、そのまま一晩静置した。翌日、LB中の1mlの大腸菌培養物(約106~107CFU/ml)を各材料の上に添加し、穏やかにかき混ぜながら(100rpm)30℃で24時間インキュベートした。24時間後、細菌用培地からのサンプルを収集して、細菌濃度(寒天プレート上の数)および金属放出(ICP-OES)を定量した。
【0143】
接触致死および金属放出で試験された材料
【0144】
【0145】
金属放出の結果
LB(細菌用培地)中、穏やかにかき混ぜながら30℃で24時間後に、接触致死アッセイからサンプルを直接収集した。
図2は、バリアからのZnおよびCuの放出を示す。上のグラフは、絶対濃度(ppm)を指し、それに対して下のグラフは、相対的な放出を指す。
【0146】
接触致死の結果
図3は、接触致死の結果であるLB中での大腸菌とのインキュベーションから24時間後のLog CFU/mlでのK12を示す。F0は、セラックのみの組成物からなり、これは、対照実験(セラックなし)と同じ細菌増殖を有していた。1.7Log CFU/mlが検出限界であり、それゆえにこの結果を有していた材料(F4、F6、F8、F11、F13、F14、F26、F27およびF30)の場合、細菌コロニーは形成されなかった。
【実施例9】
【0147】
実施例9.趾皮膚炎を有するウシにおける適用
S1B2を、趾皮膚炎に罹った乳牛の8つの蹄に適用した。簡単に言えば、蹄を固定し、ホースで水を流し、スラリーと他の退廃物を除去した。クロルテトラサイクリンを適用し(スプレー可能な配合物)、そのまま数秒乾燥させた。その後、趾皮膚炎病変が完全に覆われるように5~10gのS1B2を適用した。1分後、ウシを解放して囲いに戻し、そこで蹄をスラリーと接触させ、ホルムアルデヒド槽中に1日数回(ウシをロボットで搾乳した後)浸した。適用後2日に、6つの蹄についてバリアの完全性を評価したところ、これらのうち4つはほぼ完全に創傷を被覆しており、1つは多少のバリア残留物を有しており、1つは、目に見えるバリアを有していなかった。対照的に、7日目に、評価された7つの蹄のうち1つのみが何らかの残留物を有し、他の6つは目に見えるバリアを全く有していなかった。
【実施例10】
【0148】
実施例10.適用戦略
数種の配合物(表8)を、趾皮膚炎に罹った乳牛の蹄上に適用した。実施例9に従って、様々な適用戦略を使用して製品を適用した。
【0149】
【実施例11】
【0150】
実施例11.白癬病変への適用
乳牛の2つの白癬病変上にS1B2を適用した。5~10gのS1B2を各創傷上に直接適用した(すなわち抗生物質は適用しなかった)。7日後、バリアは、1つの病変(大腿部領域における)からは完全になくなっていたが、他の病変(ウシの背中のセクションにおける)では部分的な被覆(病変部位の約50%)が観察された。
【実施例12】
【0151】
実施例12.乳房感染における使用
大規模な潰瘍形成をその乳房に呈するウシを、S1B2で処置した。病変をまず洗浄し、0.5%クロルヘキシジンで消毒した。クロルテトラサイクリンスプレーを適用し、次いでブラシを使用して病変をS1B2で覆った。適用中に製品の明らかな喪失は観察されなかった。
【実施例13】
【0152】
実施例13.乳房感染における使用
S1B2の代わりにS1B1組成物を使用して実施例12で計画された実験を繰り返した。
【実施例14】
【0153】
実施例14.乳房感染における使用
実施例12で計画された実験を繰り返したが、病変をペーパータオルで拭くだけとし、次いでクロルテトラサイクリンスプレーを適用した(すなわちクロルヘキシジンは使用されなかった)。3日後、病変部位のおよそ75%がそれでもなおバリアでカバーされ、病変は目に見える改善を示した。
【実施例15】
【0154】
実施例15.処置したウシの可動性における臨床的改善
趾皮膚炎に罹患したウシをクロルテトラサイクリンスプレーで処置し、次いで実施例9に従ってS1B2バリアを添加した。処置の日(0日目)および7日後に、その可動性(跛行)を、獣医によって、表9に記載される標準的な可動性スコアリングシステム(Griffithsら、2018)を使用して評価した。
図4に結果を示す。このシステムにおいて、より低いスコアは、より優れた可動性を意味する;0日目、可動性スコアは1(不完全)からの3(著しく機能が損なわれた)まで様々であった。7日目に、可動性スコアにおいて統計学的に有意な改善が見られ、これを0(優れた可動性)または1に対して正規化した。
【0155】
【0156】
可動性研究のための方法の記述
動物可動性を、獣医によって、表9に記載される標準的なスコアリングシステムを使用して評価した。片側ウィルコクソンマッチドペア符号順位検定を採用して、統計的有意性を試験した。P値<0.05を統計学的に有意とみなした。可動性スコア付けは、Griffiths, B. E.、Grove White, D.およびOikonomou, G. A Cross-Sectional Study Into the Prevalence of Dairy Cattle Lameness and Associated Herd-Level Risk Factors in England and Wales. Front. Vet. Sci.5、65 (2018)に記載されている。
【0157】
本明細書において引用された全ての文書は、あらゆる目的のために明示的に参照によりそれら全体が本明細書に組み入れられる。
【国際調査報告】