(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ニトロキソリンを含む医薬組成物、ニトロキソリン経口固形錠剤、その調製方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/47 20060101AFI20221007BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221007BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221007BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A61K31/47
A61P35/00
A61K9/22
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/20
A61K47/12
A61K47/34
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507700
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 CN2020107167
(87)【国際公開番号】W WO2021023231
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】201910716938.6
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521129576
【氏名又は名称】江▲蘇▼▲亞▼虹医▲薬▼科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU YAHONG MEDITECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】D-1009,New Drug Innovation Base,No.1,Yaocheng Avenue,CMC,Taizhou,Jiangsu 225316,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】522049004
【氏名又は名称】上▲海▼▲亜▼虹医▲薬▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ASIERIS PHARMACEUTICALS(SHANGHAI)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】12F,Building 56,No.1000 Jinhai Road,City Of Elite,Pudong,Shanghai 201203,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 江▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 玉申
(72)【発明者】
【氏名】申 ▲帥▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲偉▼
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA38
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD41C
4C076DD55C
4C076DD66A
4C076DD67A
4C076EE06H
4C076EE16B
4C076EE31A
4C076EE32B
4C076EE38A
4C076FF31
4C076FF67
4C086AA01
4C086BC28
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA03
4C086NA06
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZB26
(57)【要約】
膀胱癌の治療用のニトロキソリンを含む医薬組成物、ニトロキソリン経口固形錠剤、その調製方法、及びその使用。医薬組成物は、ニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー、及び潤滑剤を含む。潤滑剤は、ドデシル硫酸ナトリウム及びステアリルフマル酸ナトリウムのうちの1つ又は2つから選択される。医薬組成物は、適度な溶出速度を有し、バースト放出現象を回避することができ、防湿性及び不透過性であり、良好な安定性を有し、安全で、有効であり、摂取が便利であり、強い患者の服薬遵守性を有し、経口固形錠剤であることの必要条件を満たす。調製方法は、安定した製造方法、良好な再現性、容易な大量生産、並びに良好な臨床使用価値及び社会的便益を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロキソリンを含む医薬組成物であって、前記医薬組成物がニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー及び潤滑剤を含み、前記潤滑剤がドデシル硫酸ナトリウム及びステアリルフマル酸ナトリウムのうちの1つ又は2つから選択される、医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物中の前記ニトロキソリンの質量割合が30%~65%、好ましくは40%~60%であり、
並びに/又は、前記充填剤が、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、デキストリン、マンニトール、ヒドロリン酸カルシウム、マンニトール及びソルビトールの1つ又は複数であり;好ましくは、ラクトース、デンプン及び微結晶性セルロースの1つ又は複数であり;より好ましくはラクトース及び/若しくはデンプンであり;更により好ましくはラクトース及びデンプンであり、前記医薬組成物中のラクトースの質量割合が10%~25%であり、前記医薬組成物中のデンプンの質量割合が23%~30%であり;前記ラクトースが好ましくはラクトース一水和物であり、前記デンプンが好ましくはコーンスターチであり、
及び/又は、前記医薬組成物中の前記充填剤の質量割合が25%~65%、好ましくは33%~55%であり、
並びに/又は、前記崩壊剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムの1つ又は複数であり、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、より好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであり、
並びに/又は、前記医薬組成物中の前記崩壊剤の質量割合が1%~5%、好ましくは2%~4%、より好ましくは2%~3%であり、
並びに/又は、前記バインダーが、デンプン、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの1つ又は複数であり、好ましくはデンプン及び/若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、より好ましくはデンプンであり、前記デンプンが好ましくはコーンスターチであり、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましくはE3ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、
並びに/又は、前記医薬組成物中の前記バインダーの質量割合が1%~4%、好ましくは1%~3%であり、
並びに/又は、前記潤滑剤がドデシル硫酸ナトリウムであり、
並びに/又は、前記医薬組成物中の前記潤滑剤の質量割合が0.5%~4%、好ましくは1%~2%である、請求項1に記載のニトロキソリンを含む医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が、オパドライ、ポリビニルアルコール、オイドラギット、及び胃溶解性フィルムコーティングプレミックスの1つ又は複数から選択されるコーティング剤、好ましくは胃溶解性フィルムコーティングプレミックスを含み、
前記胃溶解性フィルムコーティングプレミックスが、好ましくは、二酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びレーキを含み、より好ましくは、二酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール6000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びタルトラジンアルミニウムレーキから構成される混合物を含み、
前記コーティング剤の重量増加が、好ましくは7%~15%、より好ましくは10%~12%である、請求項1又は2に記載のニトロキソリンを含む医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、下記質量割合で、下記成分を含み:ニトロキソリン30%~65%、充填剤25%~65%、崩壊剤1%~5%、バインダー1%~4%、及び潤滑剤0.5%~4%、
好ましくは、前記医薬組成物が、下記質量割合で、下記成分を含み:ニトロキソリン40%~60%、充填剤33%~55%、崩壊剤2%~3%、好ましくは2%~2.5%、バインダー1%~3%、及び潤滑剤1%~2%、
より好ましくは、前記医薬組成物中の前記充填剤がラクトース及びデンプンであり、前記医薬組成物中のラクトースの質量割合が10%~25%であり、前記医薬組成物中のデンプンの質量割合が23%~30%であり、前記崩壊剤がヒドロキシプロピルセルロースであり、前記バインダーがデンプンであり、前記潤滑剤がドデシル硫酸ナトリウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のニトロキソリンを含む医薬組成物。
【請求項5】
ニトロキソリン経口固形錠剤であって、前記錠剤が、有効成分としてのニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー、及び潤滑剤を含み、前記潤滑剤が、ドデシル硫酸ナトリウム及びステアリルフマル酸ナトリウムのうちの1つ又は2つから選択される、ニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項6】
前記錠剤が、前記錠剤の全重量に対して質量で、ニトロキソリン30~65%、好ましくは45~55%、充填剤25~65%、好ましくは30~55%、崩壊剤1~5%、好ましくは2~4%、バインダー1~4%、好ましくは1.5~3%、及び潤滑剤0.5~4%、好ましくは1~3%を含む、請求項5に記載のニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項7】
ニトロキソリン経口固形錠剤であって、前記錠剤が、有効成分としてのニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー、及び潤滑剤を含み、前記錠剤は、コーティング剤の1つ又は複数の層で更にコーティングされ、前記潤滑剤が、ドデシル硫酸ナトリウム及びステアリルフマル酸ナトリウムのうちの1つ又は2つから選択される、ニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項8】
前記錠剤が、前記錠剤の全重量に対して質量で、ニトロキソリン30~65%、好ましくは45~55%、充填剤25~65%、好ましくは30~55%、崩壊剤1~5%、好ましくは2~4%、バインダー1~4%、好ましくは1.5~3%、及び潤滑剤0.5~4%、好ましくは1~3%を含み、コーティング剤の重量増加の割合が、7~15重量%、好ましくは9~12重量%である、請求項7に記載のニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項9】
前記充填剤が、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、デキストリン、マンニトール、ヒドロリン酸カルシウム、マンニトール及びソルビトールの1つ又は複数から選択され、好ましくはラクトース及び/又はデンプンであり、前記ラクトースが好ましくはラクトース一水和物であり、前記デンプンが好ましくはコーンスターチである、請求項5~8のいずれか一項に記載のニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項10】
前記充填剤がラクトース及びデンプンであり、前記錠剤の全重量に対して質量で、ラクトースの質量割合が10%~30%、好ましくは15~25%であり、デンプンの質量割合が15~35%、好ましくは20~30%である、請求項9に記載のニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項11】
前記崩壊剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムの1つ又は複数から選択され、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、より好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項5~10のいずれか一項に記載のニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項12】
前記バインダーが、デンプン、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの1つ又は複数から選択され、好ましくはデンプン及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、前記デンプンが好ましくはコーンスターチであり、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましくはE3ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項5~11のいずれか一項に記載のニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項13】
前記コーティング剤が、オパドライ、ポリビニルアルコール、オイドラギット、及び胃溶解性フィルムコーティングプレミックスの1つ又は複数から選択され;好ましくは、前記コーティング剤が胃溶解性フィルムコーティングプレミックスであり;より好ましくは、前記コーティング剤が胃溶解性フィルムコーティングプレミックスであり、前記コーティング剤の重量増加が7%~15%、好ましくは10%~12%である、請求項7~12のいずれか一項に記載のニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項14】
前記胃溶解性フィルムコーティングプレミックスが、二酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びレーキを含む、請求項13に記載のニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項15】
前記錠剤が、前記錠剤の全重量に対して質量で、有効成分としてのニトロキソリン30~65%、好ましくは45~55%、ラクトース10~30%、好ましくは15~25%、及び/又は充填剤としてのデンプン15~35%、好ましくは20~30%、崩壊剤としてのヒドロキシプロピルセルロース1~5%、好ましくは2~4%、バインダーとしてのデンプン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース1~4%、好ましくは1.5~3%、及び潤滑剤としてのドデシル硫酸ナトリウム又はステアリルフマル酸ナトリウム0.5~4%、好ましくは1~3%を含み、前記錠剤が、更に胃溶解性フィルムコーティングプレミックスでコーティングされ、その重量増加の割合が7~15重量%、好ましくは9~12重量%である、請求項7~14のいずれか一項に記載のニトロキソリン経口固形錠剤。
【請求項16】
請求項1~4のいずれか一項に記載のニトロキソリンを含む医薬組成物の調製方法であって、
前記調製方法が、
S1 前記ニトロキソリン、充填剤及び崩壊剤を混合し、その後、前記バインダーを含む溶液と混合し、混合物を湿式造粒、乾燥及び造粒して顆粒を得る工程;
S2 造粒された顆粒を前記潤滑剤と混合し、次いで錠剤化して錠剤を得る工程を備え、
前記医薬組成物がコーティング剤を含む場合、工程S2の錠剤化後にコーティングを行ってもよい、調製方法。
【請求項17】
膀胱癌の治療用医薬の調製における請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項5~15のいずれか一項に記載のニトロキソリン経口固形錠剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膀胱癌の治療用のニトロキソリンを含む医薬組成物、ニトロキソリン経口固形錠剤、その調製方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
膀胱癌は、人間の健康を深刻に脅かす悪性腫瘍のうちの1つであり、尿路系の最も一般的な悪性腫瘍である。
【0003】
「Chinese guidelines for diagnosis and treatment of urothelial carcinoma of bladder 2018」において公表されたデータによれば、膀胱癌の全体の発症率はすべての悪性腫瘍の中で11番目であり、発症率は男性について100,000人あたり9.0人であり、男性における悪性腫瘍の中で7番目であり、女性について100,000人あたり2.2人であり、女性における悪性腫瘍の中で10番目未満であり、死亡率は、すべての腫瘍の中で13番目であり、それぞれ、男性については100,000人あたり3.2人、女性については100,000人あたり0.9人であり、死亡率は男性における悪性腫瘍の中で9番目である。
【0004】
全国癌登録からの統計によれば、2009年の膀胱癌の発症率は100,000人あたり6.61人であり、母標準率は100,000人あたり3.03人である。男女についての発症率はそれぞれ100,000人あたり11.41人及び100,000人あたり3.51人であり、男性の発症率は、女性の発症率の3.3倍である。死亡率は、100,000人あたり2.60人、それぞれ男性について100,000人あたり3.75人、女性について100,000人あたり1.24人であり、男性対女性の割合は2.97:1である。
【0005】
2016年には、中国では、80,500人、男性について62,100人(男性における悪性腫瘍で6番目である)、女性について18,400人の膀胱癌の新規患者があると予期され、25,100人の男性(男性における悪性腫瘍で11番目である)及び7,800人の女性を含めて32,900人が死亡するであろう。現在、およそ270万人の膀胱癌患者が世界中に生存している。中国における膀胱癌の発生は悪性腫瘍中で8番目であり、男性についての発生はより高く、悪性腫瘍で6番目にランクしている。
【0006】
膀胱癌は、非心筋浸潤性膀胱癌及び心筋浸潤性膀胱癌に分類することができる。非心筋浸潤性膀胱癌(表在性膀胱癌として既に知られている)は75%~85%を占め、心筋浸潤性膀胱癌は15%~25%を占める。現在、非心筋浸潤性膀胱癌のための主要な治療は、膀胱腫瘍切除及び術後の注入化学療法である。しかし、患者の10%~67%は12か月以内に再発し、患者の24%~84%は5年以内に再発するであろう。
【0007】
膀胱癌を治療するための現在市販されている医薬品は、基本的に膀胱灌流医薬品である。治療中に、医薬品は、専門看護師の操作で尿道カニューレを介して患者の膀胱に注入されなければならない。この投与方法は、患者(又は家族)に頻繁に病院へ行くことを要求し、患者、特に男性患者に過度の痛みをもたらすことになる。したがって、現在の臨床及び市場需要によれば、患者の強い服薬遵守性を備えた薬剤送達製剤、例えば、経口固形錠剤を開発することが急務である。
【0008】
ニトロキソリン(その化学名は5-ニトロ-8-ヒドロキシキノリンである)は、1960年代に経口抗生物質として開発された。ニトロキソリンは、泌尿器系感染症に主として使用され、新しい抗生物質の発見及び使用により置き換わる前には、比較的安全な使用の歴史を有していた。近年、新しい研究は、ニトロキソリンが、血管内皮細胞中のメチオニンアミノペプチダーゼMetAP2及びサイレント情報制御因子2関連酵素SIRT1を同時に阻害することができ、腫瘍血管形成に相乗的阻害作用及び腫瘍細胞の増殖に阻害作用を及ぼすことが分かった。したがって、ニトロキソリンは、膀胱癌を含む腫瘍を治療するために新たに開発し直されている。
【0009】
しかし、経口固形錠剤については、医薬品のバースト放出は、副作用の発生を増加させ得、一方、持続放出は、不完全な吸収及び低い生物学的利用能を引き起こす可能性がある。したがって、適度な放出速度のニトロキソリン経口固形錠剤を開発することが必要である。
【0010】
更に、ニトロキソリン化合物は、比較的強い流動性及び透過性を有する。従来の方法は、錠剤コアの重量を50%~100%増加させる糖衣技術を使用して医薬品の移動及び浸透を防ぐ。しかし、糖衣方法は複雑な方法工程を備えた比較的古い調製方法であり、それは時間がかかり、労働集約型であり、多くの経験を必要とし、品質管理及び工業的大量生産が困難である。更に、糖衣が大量の粉砂糖及びタルクを含むので、糖衣は、中年、高齢、及び糖尿病患者における長期投与に適していない。したがって、大量生産に適していて、中年、高齢、及び糖尿病患者への使用に適しているニトロキソリン経口固形錠剤を開発することが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「Chinese guidelines for diagnosis and treatment of urothelial carcinoma of bladder 2018」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先行技術において適度な放出速度のニトロキソリンを含む経口固形錠剤がないという技術的問題を解決するために、本発明は、ニトロキソリンを含む医薬組成物、ニトロキソリン経口固形錠剤、その調製方法、及びその使用を提供する。本発明のニトロキソリン経口固形錠剤は、バースト放出現象を回避することができる適度な溶出速度(10分溶出率≦65%、60分溶出率≧80%)を有し、防湿性及び不透過性である。また、ニトロキソリン経口固形錠剤は、良好な安定性、安全性及び有効性、摂取の便利性、並びに患者の強い服薬遵守性という特性を有する。これらは、経口固形錠剤である必要条件を満たす。本発明の調製方法は、安定した生産方法、良好な再現性、及び容易な大量生産の特性を有し、それは良好な臨床的利用価値及び社会的便益をもたらす。更に、本発明のニトロキソリン錠剤は、経口投与(Tmax=1.5~2時間)後に素早く吸収され、高度の吸収(約90%)を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このように、本発明は、ニトロキソリンを含む医薬組成物を提供し、医薬組成物はニトロキソリン及び潤滑剤を含み、潤滑剤はドデシル硫酸ナトリウム及びステアリルフマル酸ナトリウムのうちの1つ又は2つから選択される。
【0014】
本発明は、更に、ニトロキソリンを含む医薬組成物を提供し、医薬組成物はニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー及び潤滑剤を含み、潤滑剤はドデシル硫酸ナトリウム及びステアリルフマル酸ナトリウムのうちの1つ又は2つから選択される。
【0015】
上記医薬組成物では、医薬組成物中のニトロキソリンの質量割合は、好ましくは、30%~65%、例えば35%、40%、45%、50%、55%又は60%、より好ましくは40%~60%である。
【0016】
上記医薬組成物では、充填剤は、好ましくは、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、デキストリン、マンニトール、ヒドロリン酸カルシウム、マンニトール及びソルビトールの1つ又は複数であり、より好ましくは、ラクトース、デンプン及び微結晶性セルロースの1つ又は複数であり、更に好ましくはラクトース及び/又はデンプンであり、いっそう好ましくはラクトース及びデンプンであり、医薬組成物中のラクトースの質量割合は10%~25%、例えば17.5%であり、医薬組成物中のデンプンの質量割合は23%~30%、例えば26.5%である。ラクトースは好ましくはラクトース一水和物である。デンプンは好ましくはコーンスターチである。
【0017】
上記医薬組成物では、医薬組成物中の充填剤の質量割合は、好ましくは、25%~65%、例えば30%、33%、40%、42.5%、43.5%、44%、44.5%、45%、50%、52%、55%又は60%、より好ましくは33%~55%である。
【0018】
上記医薬組成物では、ラクトースは好ましくはラクトース一水和物である。デンプンは好ましくはコーンスターチである。
【0019】
上記医薬組成物では、崩壊剤は、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムの1つ又は複数であり、より好ましくはヒドロキシプロピルセルロースであり、更に好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0020】
上記医薬組成物では、医薬組成物中の崩壊剤の質量割合は、好ましくは1%~5%、例えば2%、2.5%、3%又は4%であり、より好ましくは2%~4%であり、更に好ましくは2%~3%である。
【0021】
上記医薬組成物では、バインダーは、好ましくは、デンプン、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの1つ又は複数であり、より好ましくはデンプン及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、更に好ましくはデンプンである。デンプンは好ましくはコーンスターチである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは好ましくはE3ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0022】
上記医薬組成物では、医薬組成物中のバインダーの質量割合は、好ましくは1%~4%、例えば1.5%、2%、3%又は3.5%であり、より好ましくは1%~3%である。
【0023】
上記医薬組成物では、潤滑剤は好ましくはドデシル硫酸ナトリウムである。ドデシル硫酸ナトリウムが潤滑剤として使用される場合、それは潤滑及び可溶化の二元的役割を同時にし、結果として生じる医薬組成物が影響因子試験での高温状態下で古くなるが分解しないという技術的困難を成功裡に解決することができることが驚くべきことに分かる。得られた医薬組成物は良好な溶出及び安定性等の特性を有する。
【0024】
上記医薬組成物では、医薬組成物中の潤滑剤の質量割合は、好ましくは0.5%~4%、例えば1%、2%、3%又は4%であり、より好ましくは1%~2%である。
【0025】
上記医薬組成物では、医薬組成物は、好ましくはコーティング剤を含み、コーティング剤は、オパドライ(Opadry)、ポリビニルアルコール、オイドラギット(Eudragit)、及び胃溶解性フィルムコーティングプレミックスの1つ又は複数から選択することができ、好ましくは胃溶解性フィルムコーティングプレミックスである。
【0026】
胃溶解性フィルムコーティングプレミックスは、一般に、二酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びレーキを含む。例えば、胃溶解性フィルムコーティングプレミックスは、二酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール6000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びタルトラジンアルミニウムレーキからなる混合物である。
【0027】
コーティング剤の重量増加は、好ましくは7%~15%、より好ましくは10%~12%であり、例えば11%である。
【0028】
上記医薬組成物では、医薬組成物は、好ましくは下記質量割合で下記成分を含む:ニトロキソリン30%~65%、充填剤25%~65%、崩壊剤1%~5%、バインダー1%~4%、及び潤滑剤0.5%~4%。より好ましくは、医薬組成物は、下記質量割合で下記成分を含む:ニトロキソリン40%~60%、充填剤33%~55%、崩壊剤2%~3%、好ましくは2%~2.5%、バインダー1%~3%、及び潤滑剤1%~2%。更に好ましくは、医薬組成物では、充填剤はラクトース及びデンプンであり、医薬組成物中のラクトースの質量割合は10%~25%であり、医薬組成物中のデンプンの質量割合は23%~30%であり、崩壊剤はヒドロキシプロピルセルロースであり、バインダーはデンプンであり、潤滑剤はドデシル硫酸ナトリウムである。より好ましくは、医薬組成物は、更にコーティングとして上記するような胃溶解性フィルムコーティングプレミックスを含み、重量増加割合は10%~12%、好ましくは11%である。上記技術的解決法では、ラクトースは好ましくはラクトース一水和物である。デンプンは好ましくはコーンスターチである。ヒドロキシプロピルセルロースは好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは好ましくはE3ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。上記技術的解決法では、得られた医薬組成物は、適度な溶出速度(10分溶出率≦65%、60分溶出率≧80%)だけでなく良好な安定性も有する。
【0029】
本発明は、更にニトロキソリン経口固形錠剤を提供し、ニトロキソリン経口固形錠剤は、有効成分としてのニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー、及び潤滑剤を含み、潤滑剤は、ドデシル硫酸ナトリウム及びステアリルフマル酸ナトリウムのうちの1つ又は2つから選択される。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、錠剤は、錠剤の全重量に対して質量で、ニトロキソリン30~60%、好ましくは45~55%、充填剤25~65%、好ましくは30~55%、崩壊剤1~5%、好ましくは2~4%、バインダー1~4%、好ましくは1.5~3%、及び潤滑剤0.5~4%、好ましくは1~3%を含む。
【0031】
本発明は、またニトロキソリン経口固形錠剤を提供し、ニトロキソリン経口固形錠剤は、有効成分としてニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー、及び潤滑剤を含み、錠剤は、更にコーティング剤の1つ又は複数の層でコーティングされ、潤滑剤は、ドデシル硫酸ナトリウム及びステアリルフマル酸ナトリウムのうちの1つ又は2つから選択される。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態では、錠剤は、錠剤の全重量に対して質量で、ニトロキソリン30~65%、好ましくは45~55%、充填剤25~65%、好ましくは30~55%、崩壊剤1~5%、好ましくは2~4%、バインダー1~4%、好ましくは1.5~3%、及び潤滑剤0.5~4%、好ましくは1~3%を含み、コーティング剤の重量増加の割合は、7~15重量%、好ましくは9~12重量%である。
【0033】
本明細書の重量増加割合は、コーティング前の平均錠剤重量の割合として、コーティング前とコーティング後とでの平均錠剤重量の差を指す。算出のための式は次の通りである:重量増加割合=(コーティング後の平均錠剤重量 - コーティング前の平均錠剤重量)/コーティング前の平均錠剤重量×100%
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、充填剤は、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、デキストリン、マンニトール、ヒドロリン酸カルシウム、マンニトール、及びソルビトールの1つ又は複数から選択され、好ましくはラクトース及び/又はデンプンである。ラクトースは好ましくはラクトース一水和物である。デンプンは好ましくはコーンスターチである。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、充填剤はラクトース及びデンプンであり、ラ錠剤の全重量に対して質量で、クトースの質量割合は、10%~30%、好ましくは15-25%であり、デンプンの質量割合は、15~35%、好ましくは20~30%である。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態では、崩壊剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム及びクロスカルメロースナトリウムの1つ又は複数から選択され、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースであり、より好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態では、バインダーは、デンプン、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの1つ又は複数から選択され、好ましくはデンプン及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。デンプンは好ましくはコーンスターチである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、好ましくはE3ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0038】
上記ニトロキソリン経口固形錠剤がコーティング剤を含む場合、コーティング剤は、オパドライ(Opadry)、ポリビニルアルコール、オイドラギット(Eudragit)、及び胃溶解性フィルムコーティングプレミックスの1つ又は複数から選択することができ、好ましくは胃溶解性フィルムコーティングプレミックスである。
【0039】
「Opadry」は、Colorcon社オリジナルのカスタマイズ可能な、ワンステップ粉末混合完全配合フィルムコーティング系であり、Opadryは必要なポリマー、可塑剤及び着色剤を含む。
【0040】
「Eudragit」は、合成医薬賦形剤の商品名であり、Eudragitはメタクリル酸共重合体及びメタクリレート共重合体を含む。Eudragitは、医薬品の胃溶解性コーティングにおいて広く使用されている。
【0041】
胃溶解性フィルムコーティングプレミックスは、様々な医薬賦形剤からなる混合物を指し、それからなるコーティングフィルムは、胃液に速く溶解することができる。コーティングフィルムは、漢方医学及び西洋医学の固形製剤のコーティング材として使用することができ、味覚マスキング、防湿及びクラッキング防止の役割を果たす。胃溶解性フィルムコーティングプレミックスは、一般に、二酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びレーキを含む。例えば、胃溶解性フィルムコーティングプレミックスは、二酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール6000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びタルトラジンアルミニウムレーキからなる混合物である。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、錠剤は、錠剤の全重量に対して質量で、有効成分としてのニトロキソリン30~65%、充填剤としてのラクトース10~30%及び/又はデンプン15~35%、崩壊剤としてのヒドロキシプロピルセルロース1~5%、バインダーとしてのデンプン/又はヒドロキシプロピルメチルセルロース1~4%、潤滑剤としてのドデシル硫酸ナトリウム及び/又はステアリルフマル酸ナトリウム0.5~4%を含む。好ましくは、錠剤は、錠剤の全重量に対して質量で、有効成分としてのニトロキソリン45~55%、充填剤としてのラクトース15~25%及び/又はデンプン20~30%、崩壊剤としてのヒドロキシプロピルセルロース2~4%、バインダーとしてのデンプン及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロース1.5~3%、並びに潤滑剤としてのドデシル硫酸ナトリウム及び/又はステアリルフマル酸ナトリウム1~3%を含み、錠剤は、更に胃溶解性フィルムコーティングプレミックスでコーティングされ、重量増加の割合は7~15重量%、好ましくは9~12重量%である。
【0043】
本明細書におけるバインダーの含有量は、錠剤中の固形バインダーの含有量を指し、ニトロキソリン経口錠剤を調製する場合、バインダーは溶液の形態とすることができる。
【0044】
本発明は、更に本発明による医薬組成物の調製方法を提供し、調製方法は下記工程を備える:
S1 ニトロキソリン、充填剤及び崩壊剤を混合し、その後、バインダーを含む溶液と混合し、混合物を湿式造粒、乾燥及び造粒して顆粒を得る工程;
S2 造粒顆粒を潤滑剤と混合し、次いで錠剤化して錠剤を得る工程。
【0045】
医薬組成物がコーティング剤を含む場合、コーティングは工程S2の錠剤化後に行ってもよい。
【0046】
本発明は、更に、本発明によるニトロキソリン経口固形錠剤の調製方法を提供し、調製方法は、下記工程を含む:
工程1) ニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー及び潤滑剤を秤量する;
工程2) ニトロキソリンバルク薬剤、希釈剤、崩壊剤、バインダー及び潤滑剤をふるいにかける;
工程3) バインダーの水溶液を精製水で調製する;
工程4) ニトロキソリンを充填剤及び崩壊剤と混合し、次いで、工程3)で調製したバインダーの水溶液を添加し、混合物を湿式造粒、乾燥及び造粒して均一な顆粒を得る;
工程5) 潤滑剤を工程4)で調製した顆粒に添加し、混合し、混合物を錠剤化して、ニトロキソリン経口固形錠剤を得る。
【0047】
本発明は、更に、本発明によるニトロキソリン経口固形錠剤の調製方法を提供し、調製方法は下記工程を含む:
工程1) ニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー、潤滑性及びコーティング剤を秤量する;
工程2) ニトロキソリン、希釈剤、崩壊剤、バインダー及び潤滑剤をふるいにかける;
工程3) バインダーの水溶液を精製水で調製する;
工程4) ニトロキソリンを充填剤及び崩壊剤と混合し、次いで、工程3)で調製したバインダーの水溶液を添加し、混合物を湿式造粒、乾燥及び造粒して均一な顆粒を得る;
工程5) 潤滑剤を工程4)で調製した顆粒に添加し、混合し、混合物を錠剤化して、ニトロキソリン経口固形錠剤コアを得る;
工程6) 工程5)で調製したニトロキソリン経口固形錠剤コアをコーティング剤でコーティングして、ニトロキソリン経口固形錠剤を得る。
【0048】
上記調製方法では、工程3)で、バインダーは、好ましくは精製水で5~10%の質量濃度の水溶液に調製される。
【0049】
上記調製方法において、コーティングする場合、コーティング剤は、好ましくは精製水で12~16%の質量濃度の水溶液に調製され、1つ又は複数の層のコーティングは、3~15rpmの速度、55~75℃の空気流入口温度、30~50℃の層温度、及び0.2~0.3MPaの噴霧圧でコーティングパンにおいて実行される。
【0050】
本発明は、更に、膀胱癌の治療用医薬の調製における本発明によるニトロキソリン経口固形錠剤の使用を提供する。
【0051】
本明細書における「錠剤コア」は、コーティング工程を受けていないニトロキソリン経口固形錠剤、例えば、上記のように工程1)~工程5)で調製したコーティングしていない錠剤を指す。更に、本明細書における「錠剤コア」は、ニトロキソリン経口固形錠剤自体を指すこともできる。
【0052】
本明細書における「ニトロキソリン経口固形コーティング錠剤」、「ニトロキソリン経口錠剤」、「ニトロキソリン固形錠剤」、及び「ニトロキソリン錠剤」はすべて、「ニトロキソリン経口固形錠剤」として表すことができる。
【0053】
本発明の積極的で進歩的な効果は、本発明の医薬組成物及びニトロキソリン経口固形錠剤が、バースト放出現象を回避することができる適度な溶出速度(10分溶出率≦65%、60分溶出率≧80%)を有し、それらは防湿性及び不透過性であり、良好な安定性、安全性及び有効性、摂取の便利性、並びに患者の強い服薬遵守性という特性を有し、経口固形錠剤である必要条件を満たすということである。本発明の調製方法は、安定した生産方法、良好な再現性、及び容易な大量生産の特性を有し、良好な臨床的利用価値及び社会的便益をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】比較例1で調製したニトロキソリン経口固形錠剤コアの0.1mol/Lの塩酸中での溶出プロフィールである。
【
図2】実施例1で調製したニトロキソリン経口固形錠剤コアの0.1mol/Lの塩酸中での溶出プロフィールである。
【
図3】実施例6で調製した本発明のニトロキソリン経口固形錠剤の0.1mol/Lの塩酸中での溶出プロフィールである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の実施形態を、実施例によって以下に詳細に説明する。しかし、当業者は、以下の実施例が本発明を説明するためにだけ使用され、本発明の範囲を制限すると見なされるべきでないことを理解するべきである。特定条件が実施例において示されない場合、それは、従来の条件又はメーカーが推奨する条件に従って実行される。同じ機能を備えた同様の市販製品も、特定のメーカーによるものに加えて、原料又は器具として使用することができる。
【実施例】
【0056】
【0057】
胃溶解性フィルムコーティングプレミックスは、二酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール6000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びタルトラジンアルミニウムレーキからなる混合物である。
【0058】
【0059】
比較例1 ニトロキソリン経口固形錠剤コアの調製
適度な溶出速度を有し、バースト放出を回避する錠剤コアの処方物を得るために、賦形剤の種類及び比率を選択する。錠剤コアの全重量に対する様々な成分の重量割合を、以下の表1に示す。
【0060】
【0061】
ニトロキソリン経口固形錠剤コアの調製方法:
(1)ニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー及び潤滑剤を上記表中の量でそれぞれ秤量した;
(2)ニトロキソリンを10メッシュの篩にかけ、他の成分を60メッシュの篩にかけた;
(3)各量のバインダーを精製水で5%の質量濃度の水性溶液に調製した;
(4)各量のニトロキソリン、充填剤及び崩壊剤を湿式造粒パンに入れ、十分に混合し、次いで、工程(3)で調製したバインダーの水性溶液を添加した。混合物を高速で撹拌し排出し、次いで、20メッシュの篩を備えた振動造粒機によって湿式造粒した。顆粒を60℃の送風乾燥炉で乾燥し、次いで、20メッシュの篩を備えた振動造粒機によって乾式造粒して均一な顆粒を得た;
(5)各量の潤滑剤を工程(4)で調製した顆粒に添加し、混合した。混合物を回転錠剤プレス(6mmの円形パンチを備えた)によって錠剤化して、ニトロキソリン経口固形錠剤コアを得た。
【0062】
比較例2 比較例1で調製したニトロキソリン経口固形錠剤コアの溶出試験
中国薬局方2015年版IV巻一般要求事項0931に従い、0.1mol/LのHClの1000mLを溶出溶媒として使用し、自動溶出試験器(RC8MD型、TDTF社)の回転速度は、50回転/分であった。試料を、5、10、20、30、45及び60分でそれぞれ回収し、吸光度をUV分光光度計で369nmの波長で測定した。溶出率を外部標準法によって算出した。
【0063】
結論:比較例1での様々な処方物から調製したニトロキソリン経口固形錠剤コアの溶出プロフィールは、
図1に示す通りである。
【0064】
結果は、自然な放出条件下のバルク薬剤の溶出を調査するために第1に設計された処方物1及び処方物2が、非常に速い溶出速度をもたらすことを示す。次いで、崩壊を遅らせることにより薬剤の溶出を制御するように設計された処方物3は、60分で80%未満の非常に遅い溶出速度をもたらす。処方物4~処方物7を処方物3に基づいて設計した。結果は、処方物7で調製した錠剤コアが、比較的適度な放出速度を有していることを示す。
【0065】
実施例1 ニトロキソリン経口固形錠剤コアの調製
適度な放出速度を有する上記処方物7を試料として採用した。60℃で10日間の予備影響因子試験(錠剤コアを60℃で10日間、送風乾燥炉内に設置した)後、錠剤はほとんど崩壊しなかったことが分かった。分析及び研究により、その理由は、イオン錯化剤としてのニトロキソリンがステアリン酸マグネシウムのマグネシウムを奪い、低融点の疎水性ステアリン酸を遊離し、それは加速試験温度で溶融し、したがって錠剤中の透水性経路をブロックし、崩壊率の低下を引き起こすからであろう、ということが分かる。ステアリン酸マグネシウムを含む処方物の経年劣化の問題を解決するために、潤滑剤を、陽性対照処方物(処方物8)としてステアリン酸を使用することによってスクリーニングし検証して、処方物8~処方物10を得た。同時に、崩壊剤の量もスクリーニングして、処方物11~処方物13を得た。錠剤コアの全重量に対する様々な成分の重量割合を、下記表2に示す。
【0066】
【0067】
ニトロキソリン経口固形錠剤コアの調製方法:
(1)ニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー及び潤滑剤を上記表中の量でそれぞれ秤量した;
(2)ニトロキソリンを10メッシュの篩にかけ、他の成分を60メッシュの篩にかけた;
(3)各量のバインダーを精製水で5%の質量濃度の水性溶液に調製した;
(4)各量のニトロキソリン、充填剤及び崩壊剤を湿式造粒パンに入れ、十分に混合し、次いで、工程(3)で得たバインダーの水性溶液を添加した。混合物を高速で撹拌し排出し、次いで、20メッシュの篩を備えた振動造粒機によって湿式造粒した。顆粒を60℃の送風乾燥炉で乾燥し、次いで、20メッシュの篩を備えた振動造粒機によって乾式造粒して均一な顆粒を得た;
(5)各量の潤滑剤を工程(4)で調製した顆粒に添加し、混合した。混合物を回転錠剤プレス(6mmの円形パンチを備えた)によって錠剤化して、ニトロキソリン経口固形錠剤コアを得た。
【0068】
実施例2 実施例1で調製したニトロキソリン経口固形錠剤コアの溶出試験
中国薬局方2015年版IV巻一般要求事項0931に従い、0.1mol/LのHClの1000mLを溶出溶媒として使用し、自動溶出試験器(RC8MD型、TDTF社)の回転速度は、50回転/分であった。試料を、5、10、20、30、45及び60分でそれぞれ回収し、吸光度をUV分光光度計で369nmの波長で測定した。溶出率を外部標準法によって算出した。
【0069】
結論:実施例1での様々な処方物から調製したニトロキソリン経口固形錠剤コアの溶出プロフィールは、
図2に示す通りである。
【0070】
結果は、処方物8~処方物10の異なる潤滑剤で調製した錠剤コアの溶出速度が基本的に同じであることを示す。しかし、60℃で10日間の予備影響因子試験後、処方物8の陽性対照錠剤コアが、20分以内にほとんど崩壊せず、ニトロキソリンがステアリン酸マグネシウムを含む処方物の経年劣化を引き起こすという仮説を支持することが分かる。処方9及び処方10の放出速度はほとんど影響されない。処方物11~処方物13については、溶出速度は、崩壊剤の量と正の相関があり、処方物11が好ましい。
【0071】
実施例3 ニトロキソリン経口固形錠剤コア及びその調製
錠剤コアの全重量に対する様々な成分の重量割合を、下記表3に示す。バインダーの重量割合は、固形バインダーの重量割合であり、調製において使用するバインダーは5重量%でデンプンの水性溶液である。
【0072】
【0073】
調製方法:
(1)ニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー及び潤滑剤を上記表中の量でそれぞれ秤量した;
(2)ニトロキソリンを10メッシュの篩にかけ、他の成分を60メッシュの篩にかけた;
(3)各量のバインダーを精製水で5%の質量濃度の水性溶液に調製した;
(4)各量のニトロキソリン、充填剤及び崩壊剤を湿式造粒パンに入れ、十分に混合し、次いで、工程(3)で調製したバインダーの水性溶液を添加した。混合物を高速で撹拌し排出し、次いで、20メッシュの篩を備えた振動造粒機によって湿式造粒した。顆粒を60℃の送風乾燥炉で乾燥し、次いで、20メッシュの篩を備えた振動造粒機によって乾式造粒して均一な顆粒を得た;
(5)各量の潤滑剤を工程(4)で調製した顆粒に添加し、混合した。混合物を回転錠剤プレス(6mmの円形パンチを備えた)によって錠剤化して、ニトロキソリン経口固形錠剤コアを得た。
【0074】
実施例4 ニトロキソリン経口固形コーティング錠剤の調製
ニトロキソリンは、強い流動性及び透過性を有する。錠剤コア上のフィルムコーティング粉末の分離及びマスキング性能を調査するために、実施例3における処方物Iの錠剤コアを、コーティングのために選択して、コーティング粉末及び量をスクリーニングした。各コーティング粉末のモデル及び錠剤コアの全重量に対するその重量増加割合を、下記表4に示す。胃溶解性フィルムコーティングプレミックスは、二酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール6000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びタルトラジンアルミニウムレーキからなる。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
ニトロキソリン経口固形コーティング錠剤の調製方法:
(1)ニトロキソリン、充填剤、崩壊剤、バインダー、潤滑剤及びコーティング剤を上記表中の量でそれぞれ秤量した;
(2)ニトロキソリンを10メッシュの篩にかけ、他の成分を60メッシュの篩にかけた;
(3)各量のバインダーを精製水で5%の質量濃度の水溶液に調製した;
(4)各量のニトロキソリン、充填剤及び崩壊剤を湿式造粒パンに入れ、十分に混合し、次いで、工程(3)で調製したバインダーの水溶液を添加した。混合物を高速で撹拌し排出し、次いで、それを20メッシュの篩を備えた振動造粒機によって湿式造粒した。顆粒を60℃の送風乾燥炉で乾燥し、次いで、20メッシュの篩を備えた振動造粒機によって乾式造粒して均一な顆粒を得た;
(5)各量の潤滑剤を工程(4)で調製した顆粒に添加し、混合した。混合物を回転錠剤プレス(6mmの円形パンチを備えた)によって錠剤化して、ニトロキソリン経口固形錠剤コアを得た。
(6)コーティング剤を精製水で12~16%の固形含有量に処方する。1層のコーティングを、3~15rpmの速度、55~75℃の空気流入口温度、30~50℃の層温度、及び0.2~0.3MPaの噴霧圧でコーティングパンにおいて実行し、重量増加質量割合は、表4-1、表4-2及び表4-3に示す通りである。ニトロキソリン経口固形コーティング錠剤を得た。
【0079】
実施例5 ニトロキソリン経口固形コーティング錠剤の透過性試験
ニトロキソリンは、強い流動性及び透過性を有しており、それは黄色であるので、接触して他の材料を容易に着色する。本発明では、実施例4で調製した重量増加が異なるコーティング錠剤を、白いプラスチック瓶内にそれぞれ入れ、次いで調査のために60℃で10日間オーブンに入れた。ニトロキソリンがコーティングフィルムを透過し、白いプラスチック瓶を黄色に着色するかどうかを観察した。透過性の結果は、下記表5に示す通りである。
【0080】
【0081】
表5から、ポリビニルアルコール及びOpadryコーティング粉末の重量増加が15%であり、コーティングは、10日間60℃の高温で浸透する可能性があることが分かる。一方、胃溶解性フィルムコーティングプレミックスは、重量増加が7%より多く、コーティングは、10日間60℃の高温で浸透せず、それが強い分離及びマスキング特性を有しておりニーズを満たすことができることを示す。
【0082】
実施例6 本発明のニトロキソリン経口固形錠剤の溶出試験
錠剤を実施例3における処方物H、I及びJによって調製し、実施例4の方法によって胃溶解性フィルムコーティングプレミックスでコーティングした。コーティング重量増加は11%であり、バッチは10,000錠剤/バッチであった。
【0083】
中国薬局方2015年版IV巻一般要求事項0931に従い、0.1mol/LのHClの1000mLを溶出溶媒として使用し、自動溶出試験器(RC8MD型、TDTF社)の回転速度は、50回転/分であった。試料を、5、10、20、30、45及び60分でそれぞれ回収し、吸光度をUV分光光度計で測定した。処方物H、I及びJのコーティング錠剤の溶出率を外部標準法によって算出し、溶出プロフィールは
図3に示す通りである。結果は、3個の処方物H、I及びJのニトロキソリンコーティング錠剤が同様の溶出プロフィールを有し、溶出は60分でほぼ終わることを示す。
【0084】
実施例7 本発明のニトロキソリン経口固形コーティング錠剤の品質検査
錠剤を、実施例3における処方物H、I及びJによって調製し、実施例4の方法によって胃溶解性フィルムコーティングプレミックスでコーティングした。コーティング重量増加は11%であり、バッチは、10,000錠剤/バッチであり、実施例3の処方物Hは第1のバッチに相当し、実施例3の処方物Iは第2のバッチに相当し、実施例3の処方物Jは第3のバッチに相当していた。3バッチを品質検査のためにサンプリングした。
【0085】
重量差:20個のニトロキソリン経口固形錠剤をランダムに取り、全重量について正確に秤量し、平均錠剤重量を算出した。次いで、各錠剤を正確に秤量した。各錠剤の重量と平均錠剤重量との差は、7.5%を超えるべきでない。
【0086】
含有量の決定:10個のニトロキソリン経口固形錠剤をランダムに取り、正確に秤量し粉砕した。微細な粉末の適正量を正確に秤量し、100mLのメスフラスコ内に入れた。メタノールを添加し、粉末を溶解し、標線まで希釈した。溶液を十分振とうし、濾過して試験液として1 mL当たり0.1mgを含む溶液を調製した。適正量のニトロキソリン原料を対照として得た。メタノールを添加してニトロキソリンを溶解、希釈して1 mL当たり0.1mgを含む溶液を調製し、十分振とうし、対照溶液として使用した。試験液及び対照溶液の10μLを、それぞれ液体クロマトグラフに注入し、高性能液体クロマトグラフィーを使用することによって測定した(中国薬局方2015年版IV巻一般要求事項0512)。含有量を外部標準法によってピーク面積で算出した。ニトロキソリンの含有量は、90.0~110.0%であるべきである。結果は2つの試料の平均である。
【0087】
関連物質の決定:10個のニトロキソリン経口固形錠剤をランダムに取り、平均錠剤重量のために秤量した。錠剤を微細な粉末に粉砕した。主要薬剤(ニトロキソリン)100mgと等価な粉末を、正確に秤量し、100mLのメスフラスコに入れた。メタノールを標線に近づくように添加した。混合物を、10分間超音波抽出し、室温に冷却した。混合物をメタノールで標線まで希釈し、十分振とうし、遠心分離した(3000 r/min)。上清を試験液として得た。適正量の試験液を対照溶液としてのメタノールで100倍希釈した。対照溶液及び試験液の20μLを、それぞれ液体クロマトグラフに注入し、高性能液体クロマトグラフィーを使用することによって測定した(中国薬局方2015年版IV巻一般要求事項0512)。各不純物ピーク面積の合計は、対照溶液(1.0%)の主ピーク面積を超えるべきでない。結果は2つの試料の平均である。重量差、含有量及び関連物質の試験結果を、下記表6に示す。
【0088】
【0089】
結論:上記表6から、3バッチの試料の外観、重量差、含有量及び関連物質の品質指標は、基本的に一貫しており、すべては品質規格必要条件を満たすことが分かる。
【0090】
実施例8 本発明のニトロキソリン経口固形錠剤の加速安定性試験
錠剤を、実施例3における処方物H、I及びJによって調製し、実施例4の方法によって胃溶解性フィルムコーティングプレミックスでコーティングした。コーティング重量増加は11%であり、バッチは、10,000錠剤/バッチであり、実施例3の処方物Hは第1のバッチに相当し、実施例3の処方物Iは第2のバッチに相当し、実施例3の処方物Jは第3のバッチに相当していた。3バッチの試料を、誘導アルミニウムキャップライニングを備えた瓶キャップで密閉した経口固形高密度ポリエチレン瓶に入れ、6か月間、40℃±2℃の温度及び75%±5%の相対湿度で調査した。
【0091】
含有量の決定:方法は実施例7における決定方法と同じであった。
【0092】
関連物質の決定:方法は実施例7における決定方法と同じであった。
【0093】
溶出の決定:6個のニトロキソリン経口固形錠剤を任意に得た。溶出及び放出試験方法(中国薬局方2015年版IV巻一般要求事項0931)に従い、0.1mol/Lの塩酸1000mLを溶出溶媒として使用し、回転速度は50回転/分であり、操作は方法に従い、60分後に試料を得た。UV可視分光光度法(中国薬局方2015年版IV巻一般要求事項0401)に従い、吸光度を369nmの波長で測定し、各錠剤の溶出速度を算出し、6個の錠剤の溶出速度の平均値を結果として使用した。基準は60分で標識量の少なくとも80%である。
【0094】
含有量、関連物質及び溶出率の試験結果を、下記表7に示す。
【0095】
【0096】
結果は、6か月間の加速安定性調査後、3バッチの試料の指標が、0か月でのそれらと比較して著しく変化していないことを示す。
【0097】
実施例9 本発明のニトロキソリン経口固形錠剤の長期安定性試験
錠剤を、実施例3における処方物H、I及びJによって調製し、実施例4の方法によって胃溶解性フィルムコーティングプレミックスでコーティングした。コーティング重量増加は11%であり、バッチは、10,000錠剤/バッチであり、実施例3の処方物Hは第1のバッチに相当し、実施例3の処方物Iは第2のバッチに相当し、実施例3の処方物Jは第3のバッチに相当していた。3バッチの試料を、誘導アルミニウムキャップライニングを備えた瓶キャップで密閉した経口固形高密度ポリエチレン瓶に入れ、24か月間、25℃±2℃の温度及び60%±5%の相対湿度で調査した。
【0098】
含有量の決定:決定方法は実施例7におけるものと同じであった。
【0099】
関連物質の決定:決定方法は実施例7におけるものと同じであった。
【0100】
溶出の決定:決定方法は実施例8におけるものと同じであった。
【0101】
含有量、関連物質及び溶出率の試験結果を、下記表8に示す。
【0102】
【0103】
結果は、24か月間の長期安定性調査の後、3バッチの試料の指標が、0か月でのそれらと比較して著しく変化していないことを示す。
【国際調査報告】