(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】熱交換液槽用の移動可能なタンクおよびそのようなタンクを備える設備
(51)【国際特許分類】
C21D 1/64 20060101AFI20221007BHJP
C21D 9/573 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C21D1/64
C21D9/573 101Z
C21D9/573 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022507703
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020071567
(87)【国際公開番号】W WO2021023628
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522049015
【氏名又は名称】エフイベー・ベルジョム
【氏名又は名称原語表記】FIB BELGIUM
【住所又は居所原語表記】Avenue Landas 4 1480 Tubize BELGIUM
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】カスティオー・サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ジロー・ポール
【テーマコード(参考)】
4K043
【Fターム(参考)】
4K043AA01
4K043AA02
4K043CB02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの細長い金属物品が浸漬状態で移動する熱交換液槽用の移動可能なタンク(1)に関する。このタンクは、移動方向(5)に平行する誘導手段(9)上で移動可能に支持され、底部(2)と、側壁(3,4)と、少なくとも1つの上流ダム(6)と、少なくとも1つの下流ダム(7)と、液の入口と、液循環システム(12)と、を備え、ここで、少なくとも1つの上流ダム(6)および少なくとも1つの下流ダム(7)の上に、熱交換液が同じ下地槽(10)に直接流入し、液循環システム(12)は、下地槽の中に移動可能なタンクと共に十分に移動可能となるように、移動可能なタンクの外側に固定的に取り付け、下地槽(10)における熱交換液を液の入口に直接供給する、もの。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換液槽用の移動可能なタンク(1,1')であって、
少なくとも1つの細長い金属物品(19,19')が浸漬状態で移動方向(5)に沿って移動し、
底部(2)と、側壁(3,4)と、上流ダム(6,6')と、下流ダム(7,7')と、熱交換液の入口(11)と、を備え、
前記側壁(3,4)は、前記移動方向(5)に平行し、
前記上流ダム(6,6')と、前記下流ダム(7,7')とは、前記側壁の間に構成され、
少なくとも1つの前記上流ダム(6,6')および少なくとも1つの前記下流ダム(7,7')の上に、熱交換液が前記移動可能なタンクの同じ下地槽(Underlying Basin)(10)に直接流入し、
少なくとも1つの前記上流ダム(6,6')および少なくとも1つの前記下流ダム(7,7')の間に、前記少なくとも1つの細長い金属物品が流れ、
前記移動可能なタンク(1,1')は、
前記移動方向に平行する誘導手段(9,9')上で移動可能に支持され、
液循環システム(12、12')をさらに備え、
前記液循環システム(12、12')は、
前記下地槽の中に、前記移動可能なタンクと共に十分に移動可能となるように、前記移動可能なタンク(1,1')の外側に固定的に取り付け、
前記下地槽(10)における熱交換液を前記熱交換液の入口(11)に直接供給するように配置される、もの。
【請求項2】
請求項1に記載の移動可能なタンクにおいて、
前記循環システム(12,12')は、
推進体(13)と、ロータリーエンジン(14)と、プロペラ(15)と、液連通部(17)と、を備え、
前記推進体(13)は、前記下地槽(10)の前記熱交換液に開口する下端と、その外側で前記移動可能なタンクに取り付ける上端と、を有し、
前記ロータリーエンジン(14)は、前記推進体(13)の前記上端に配置され、
前記プロペラ(15)は、前記熱交換液が浸漬される前記下地槽から上方に推進するように、前記推進体の前記下端の中に配置され、ロータリーエンジンによって回転され、
前記液連通部(17)は、前記推進体(13)と前記熱交換液用の前記タンクの前記入口(11)との間に構成される、もの。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動可能なタンクにおいて、
前記誘導手段(9、9')は、レールであり、
前記タンクには、巻き手段(8、8')または摺動手段が設けられ、これらのレール上で前記移動可能なタンクを移動させる、もの。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の移動可能なタンクにおいて、
少なくとも1つのハンドル(23)を備え、
前記ハンドル(23)は、前記タンクを誘導手段上で、手動で移動させる、もの。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の移動可能なタンクにおいて、
前記少なくとも1つの上流ダム(6,6')および前記少なくとも1つの下流ダム(7,7')は、前記槽の長さを変えさせるように、互いに調整可能な距離で配置される、もの。
【請求項6】
請求項5に記載の移動可能なタンクにおいて、
移動方向(5)に平行な長手方向の仕切り(24)で区切られた区画に分割され、各区画は、独立して移動可能な前記上流ダム(6、6')および/または前記下流ダム(7、7')を含む、もの。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載の移動可能なタンクにおいて、
前記少なくとも1つの細長い金属物品が、前記タンクの中で、前記少なくとも1つの上流ダムと前記少なくとも1つの下流ダムとの間に、変曲することなく移動する、もの。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1つに記載の移動可能なタンクにおいて、
前記少なくとも1つの細長い金属物品が、ワイヤ、ストリップ、チューブ、および金属のロッドからなる群から選択される、もの。
【請求項9】
移動する細長い金属物品と熱交換液との間で熱交換を行う設備であって、
請求項1~請求項8の何れか1つに記載の少なくとも1つの移動可能なタンクを備える、もの。
【請求項10】
請求項9に記載の設備において、
複数の前記移動可能なタンク(1、1')を備え、
前記複数の前記移動可能なタンク(1、1')は、同じ誘導手段上で同じ下地槽(10)の上で、独立して移動可能に支持される、もの。
【請求項11】
請求項9に記載の設備において、
複数の互いに平行する誘導手段を備え、
前記複数の互いに平行する誘導手段は、少なくとも1つの前記移動可能なタンクを同一の下地槽の上で、それぞれ独立して移動可能に支持する、もの。
【請求項12】
請求項9に記載の設備において、
複数の連続する下地槽を備え、
前記複数の連続する下地槽の上で、少なくとも1つの前記移動可能なタンクが独立して移動可能に支持される、もの。
【請求項13】
請求項9~請求項12の何れか1つに記載の設備において、
前記少なくとも1つの細長い金属物品は、前記移動方向に沿って各タンクの中および各タンクの間に、変曲することなく移動する、もの。
【請求項14】
設備の使用方法であって、
前記設備は、請求項9~請求項13の何れか1つに記載の設備で、
前記移動する細長い金属物品の、制御された冷却または制御された加熱のために、前記設備を使用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの細長い金属物品が浸漬状態で移動方向に沿って移動する熱交換液槽用の移動可能なタンクに関する。このタンクは、底部と、側壁と、上流ダムと、下流ダムと、熱交換液入口と、を備え、前記側壁は、前記移動方向に平行し、前記上流ダムと、前記下流ダムとは、前記側壁の間に構成され、少なくとも1つの前記上流ダムおよび少なくとも1つの前記下流ダムの上に、熱交換液が前記移動可能なタンクの下部の同じ槽に直接流入し、少なくとも1つの前記上流ダムおよび少なくとも1つの前記下流ダムの間に、前記少なくとも1つの細長い金属物品が流れ、前記移動可能なタンクは、前記移動方向に平行する誘導手段上で移動可能に支持される(例えば、実用新案CN201459188参照)。
【0002】
また、本発明は、少なくとも1つのこのような移動可能なタンクを備える施設およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ワイヤ、ストリップ、ロッド、チューブなどの細長い金属製品の冶金分野では、通常、これらの製品を液槽に浸して加熱または冷却して処理する必要がある。
【0004】
これは、鋼線の特許取得の場合は特に当てはまる。オーステナイト構造のワイヤは、炉から出る際に焼入れ(Quench)が行われ、パーライト構造を得ることはよく知られている。炉の出口には焼入れ装置が固定的に配置され、ワイヤは冷却槽の中で焼入れされる。
【0005】
なお、冷却剤は液でもよい。長い間に使用されてきた液鉛は、現在、水また好ましくは特定のポリマー溶液に置き換えられることが多くなっている。
【0006】
焼入れ後、発生される結晶構造の変化は発熱性であるため、適切な温度に到達して適切な微細構造を持つ製品を得るためには、冷却またはいくつか連続的な制御された冷却ステップが必要である。
【0007】
そのため、ワイヤが焼入れ槽から取り出された後、ワイヤの直径およびその所望の引張強度に応じて長さを調整できる冷却槽への浸漬がすでに提供されている(WO2018/130499参照)。これらの2つの静的で非常に概略的に開示された槽の間で、ワイヤは、望ましくない方法で繰り返し変曲されるエアスペースを通過する。
【0008】
実用新案CN204676127Uでは、車輪に取り付けられた第2の槽が焼入れ槽の後に設けられ、そのため焼入れ槽から可変距離に配置されることができる。この設備は、この技術文献に非常に簡単に開示されている。槽に冷却剤の供給やその循環は行われず、提案もされていない。
【0009】
実用新案CN201459188では、移動可能なオーバーフロータンクに、下地槽の外側に設置される複雑な固定装置を介して、下地槽から冷却剤が供給される。
【0010】
特許出願CN102864298では、下地槽を非常に簡単に提供し、その中に第1タンクが固定的に取り付けられ、下地槽に移動可能に配置された中間タンクには第2タンクが固定的に取り付けられている。第1タンク内の液は、下地槽から直接供給され、このタンクから直接流入する。第2タンク内の液は、中間タンクから直接供給され、少なくとも部分的にその中に流入する。中間タンクへの液の供給は記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、流体中を移動する細長い金属物品を、その温度を別の温度に的確に変更するために随時調整可能な位置で処理できる移動可能な熱交換液槽のオーバーフロータンクを、簡単かつ経済的な方法で提供することを目的とする。本発明の主な目的は、下地槽といつでも移動可能なタンクとの間で熱交換液を循環させるため、簡単で効果的かつ安価な解決策を提供することである。また、本発明は、熱交換を介して、並行して移動する複数の異なる細長い金属物品を、簡単に処理できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するため、本発明は、前文に記載された移動可能なタンクを提供する。この移動可能なタンクは、その外側に固定的に取り付けられる液循環システムをさらに含み、下地槽の中に全体的に移動可能であり、かつ、下地槽の中に存在する熱交換液を移動可能なタンクの熱交換液入口に直接供給するように配置される。
【0013】
本発明によれば、熱交換液とは、移動する細長い金属物品と温度交換を行う冷却剤または加熱液を意味する。
【0014】
本発明によれば、細長い金属製品とは、小さな断面があるすべての金属製品を意味し、特にワイヤ、ストリップ、ロッド、チューブなどが挙げられる。
【0015】
循環システムを移動可能なタンクの外側に固定し、その全体を槽の中に完全に移動可能に配置することで、オーバーフロータンクが自律的になり、その位置を下地槽の上で最大限の柔軟性で調整することができる。タンクの動作に必要なすべての要素は、任意の位置でタンクに付随され、下地槽とタンクの間の液関係は特に単純化されている。さらに、循環システムの位置は、処理される細長い物品の流れに必要なタンクスペースを占めることもない。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、循環システムは、推進体と、ロータリーエンジンと、プロペラと、液連通部と、を備える。推進体は、下地槽の熱交換液に開口する下端と、その外側で移動可能なタンクに取り付ける上端と、を有し、ロータリーエンジンは、推進体の上端に配置され、プロペラは、熱交換液が浸漬される下地槽から上方に推進するように、推進体の下端の中に配置され、ロータリーエンジンによって回転され、液連通部は、推進体と熱交換液用のタンクの入口との間に構成されることを特徴とする。従って、推進体は、タンクに対して横方向に固定された管の形態をとり、タンクの直下にある下地槽から熱交換液をタンク内に上方に推進することができる。
【0017】
本発明の特定の実施形態によれば、誘導手段はレールであり、タンクは、レールと協働してタンクをこれらのレールで移動させる回転手段または摺動手段を備える。これらは、下地槽の全長を横切っていてもよく、そしてタンクをその全長に沿って移動させる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、タンクは、例えば、タンク自体または循環システムの何れかにハンドルを備える。このように、移動方向におけるタンクの位置は、単に押す/引くことで容易に変更されることができる。また、この動きはエンジンによって制御されてもよい。
【0019】
上記のように、タンクは、上流ダムと下流ダムを備えるオーバーフロータンクである。本発明の特定の実施形態によれば、少なくとも1つの上流ダムと少なくとも1つの下流ダムとは、互いに調整可能な距離で配置される。これにより、タンク槽の長さを調整させる。タンクを細長い金属物品の移動経路に正確に配置できるだけでなく、タンク内の熱交換の持続時間も調整することができる。このような調整は、処理される物品、特にその断面に応じて重要である。
【0020】
本発明の有利な実施形態によれば、タンクは移動方向に平行な長手方向の仕切りによって区切られた区画に分割され、各区画は前記独立して移動可能な上流ダムおよび/または下流ダムを有する。区画の下流ダムのみ、または上流ダムのみが移動可能であること、または両方が同時に移動可能であることが考えられる。この配置により、断面の異なるワイヤが同じタンク内で同時に並んで移動するため、異なる処理が可能となる。
【0021】
また、本発明によれば、移動する細長い金属物品と熱交換液との間で熱交換を行う設備にも関し、本発明に係る少なくとも1つのタンクを備える。
【0022】
本設備は、独立して移動可能な方法で、同じ誘導手段上で同じ下地槽の上に支持される複数のこのようなタンクを備えてもよい。これらのタンクは、同じ細長い金属製品を連続的に受け取り、そして段階的な冷却または加熱が可能となる。
【0023】
本設備の有利な実施形態によれば、複数の互いに平行な誘導手段を備え、これらの誘導手段は、それぞれが同一の下地槽の上に前記タンクの少なくとも1つを独立して移動可能な方法で支持する。得る製品および同時に移動する細長い金属製品の断面に応じ、移動経路の異なる位置で、異なる持続時間で、かつ、任意に異なる速度で処理できる必要があり、これは本発明の本実施形態によれば可能である。
【0024】
また、本設備は、複数の連続する下地槽をさらに備え、特に、処理中に熱交換液が変更される必要がある場合、例えば、水槽を起こし、次にポリマー溶液の槽を起こす場合に、これらの下地槽のそれぞれの上に前記タンクの少なくとも1つが独立して移動可能に支持される。
【0025】
このように、タンクおよびその連続の配置により、細長い金属製品が熱交換全体に渡って変曲することなく移動させる。
【0026】
本発明は、移動する細長い金属物品の制御される冷却または制御される加熱のための本発明による設備の使用にも関する。特に、鋼線の特許取得の際に、その処理中に任意の正確な時間および正確な期間における段階焼入れの間、鋼線の冷却、あるいは加熱のために使用することができる。
【0027】
本発明の他の詳細および特殊性は、本発明によるタンクおよび設備の例を非限定的な方法で示す添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明に係る移動可能なタンクの透明な斜視図である。
【
図2】
図2は、下地槽に配置される同じタンクの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る移動可能なタンクの一実施形態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る設備の特定の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明では、言葉を簡単にするため、細長い金属製品は「ワイヤ」という言葉で示される。
【0030】
図1~
図3に示されるように、本発明に係る熱交換液槽用のタンク1は、底部2と、ワイヤ19の移動方向5に平行な2つの側壁3,4と、を備える。また、図示のように、壁3にはフランジ21が設けられている。
【0031】
上流ダム6は、タンク内へのワイヤの入口に設けられ、移動するワイヤまたは複数のワイヤが載る円筒の形で示される例において、下流ダム7は、上流ダム6から離れて設けられ、断面が三角形の要素の形で示される例において、その上に1本または複数の移動するワイヤが支持される。なお、熱交換液は、
図3の矢印で示されるように、ダム間のタンク1に含まれ、その上で上流ダムと下流ダムに向かって流入する。本発明に係るタンクは、オーバーフロータンクである。
【0032】
また、タンク1における熱交換液16のレベルは、
図3に象徴的に示されている。ダム6,7間を移動するワイヤ19は、浸漬状態で変曲することなくタンク1内に通過し、これにより、これらの上流ダムと下流ダムの間の距離にわたって、液とワイヤの間で加熱または冷却の熱交換が行われる。
【0033】
図示の例において、タンク1は、ワイヤの移動方向5に平行な誘導手段上で移動可能に支持させる車輪8を備える。ここで、誘導手段は、タンク1の下地槽10に配置されるレール9から形成される。
【0034】
また、上流ダム6と下流ダム7から流入された熱交換液は、下地槽10に直接集められる。これは、図示しないクリーンフロー熱交換器を備え、槽内の液を一定の所定温度で維持させる。
【0035】
また、図示の場合、熱交換液をタンクに供給する入口11は、タンクの側壁3に設けられる。
【0036】
循環システム12は、移動可能なタンク1の外側に固定的に取り付けられ、下地槽10の中に全体的に移動可能である。循環システム12のすべての要素は、誘導レール9上で移動可能なタンクの位置が変更されると、移動可能なタンクとともに移動する。したがって、タンクは完全に自律的である。
【0037】
循環システム12は、熱交換液を下地槽10から直接入口11に供給する。
【0038】
図示の例において、循環システム12は推進体13を備え、推進体13は、下地槽10の熱交換液に開口する下端を含む(熱交換液のレベル20が象徴的に示される
図3参照)。その上端部において、推進体13は、推進体13の下端の中に配置されるプロペラ15を回転するロータリーエンジン14を支持する。
図3に矢印で示すように、プロペラ15は、回転しながら、熱交換液を、それが浸漬されている下地槽から上方に推進し、推進体13とタンク1の入口11との間に液連通部17を供給する。
【0039】
また、
図4における23で示されるように、タンクは少なくとも1つのハンドルを備え、ハンドルは、タンク1を誘導レール9上で、手動で移動させる。
【0040】
図1~
図3に示される例において、下流ダム7は、上流ダム6に対して移動可能に配置される。ラック18は、タンク1の中央に延在し、下流ダム7を、例えば、
図2に示されるように上流ダム6に近接し、あるいは、
図1および
図3に示されるように上流ダム6からさらに離れた位置に、調整可能に配置させる。この配置により、処理されるワイヤや製品に得られる所望の特性に応じ、槽の長さを調整することができる。また、下流ダムではなく上流ダムが移動可能なタンク、または槽の長さを調整するために全てにダムがお互いに対して移動可能であるタンクも明らかに考えられる。
【0041】
図4に示される例において、タンク1は、ワイヤの移動方向5に平行な長手方向の仕切り24で区切られた3つの長手方向の区画に分割される。各区画には、ラック18上で調整可能な独立する下流ダム7が含まれている。このように、同じタンクの中で、複数のワイヤが異なる槽の長さにわたって熱交換液に浸漬された状態で移動することができる。示される例において、左に示される区画を通過するワイヤは、他の2つの区画を通過するワイヤよりも長い槽の長さで浸漬される。なお、各区画は独立する上流ダムを含み、随意に下流ダムに対して位置を調整することも可能である。
【0042】
図5に示される本発明に係る設備の例において、4本の平行なワイヤ19およびワイヤ19'のウェブが、下地槽10の上で移動する。1つの下地槽10の上には、本発明に係る2つのタンク1およびタンク1'が独立して移動可能に設けられる。2つのタンクは、互いに平行で移動方向5に平行な誘導手段9および誘導手段9'上で移動可能に誘導される。
【0043】
2つのタンクは、同じ要素を含む。左の方は
図1~
図4で使用される参照を含み、右の方は「プライム」の記号が付く同じ参照を含む。
【0044】
この例示的な実施形態に示されるように、ワイヤ19およびワイヤ19'が、槽10とは異なる場所に移動しながら熱交換液によって処理されるように、タンク1およびタンク1'が誘導手段上で移動される。また、タンク1におけるダム7とダム6の間の距離が、タンク1'におけるダム7'とダム6'の間の距離よりも大きくなっている。ワイヤ19とワイヤ19'が両方のタンクで同じ速度で移動する場合、ワイヤ19はワイヤ19'よりも遅く処理され、タンク1における処理時間はタンク1'における処理時間よりも長くなる。しかし、タンクの相対位置が柔軟に調整可能であることと、2つのタンクの上流ダムと下流ダムの間の距離が変更配置可能であることで、同じ速度または異なる速度で移動するワイヤに対して、同じまたは異なる時間に対して、同じまたは異なる処理を行うことが可能である。
【0045】
提供される設備は非常に柔軟性があり、移動するワイヤの処理に大きな変化を持たせることができ、また、特に自律移動可能なタンクでの操作が特に簡単です。
【0046】
なお、本発明は、決して上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することなく多くの変更を加えることができることに留意されたい。
【0047】
例えば、ワイヤ19またはワイヤ19'は、同じ下地槽10の上に複数の連続するタンクによって処理され、これらのタンクは、同じ誘導手段上で連続して配置され、独立して移動可能であると考えられ得る。
【0048】
また、複数の下地槽が連続し、これらの槽のそれぞれの上に、本発明に係る少なくとも1つのタンクが移動可能に配置されることを提供してもよい。このような設備は、ワイヤが複数の異なる熱交換液を用いて処理される場合に有利である。
【0049】
上記の説明から分かるように、処理されるワイヤは、本発明に係るタンクを通過し、その間に変曲することなく移動できることが特に好ましい。
【国際調査報告】