(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】冶金溶融物の炉外処理用のコアードワイヤ
(51)【国際特許分類】
C21C 7/04 20060101AFI20221007BHJP
C21C 7/06 20060101ALI20221007BHJP
C21C 7/064 20060101ALI20221007BHJP
C21C 5/52 20060101ALI20221007BHJP
C21C 1/02 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C21C7/04 J
C21C7/06
C21C7/064
C21C7/04 F
C21C7/04 B
C21C5/52
C21C1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507721
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 RU2020050149
(87)【国際公開番号】W WO2021025596
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522049358
【氏名又は名称】リサーチ アンド デベロップメント センター エヌピーピー,リミティッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ディニン,アントン ヤコヴレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】バキン,イゴール バレレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォクレスシェノフ,ビクター ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ウスマノフ,リナット ジレモヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】トカレフ,アルテム アンドレーエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,オレグ グリゴレヴィチ
【テーマコード(参考)】
4K013
4K014
【Fターム(参考)】
4K013CB01
4K013CB09
4K013EA01
4K013EA03
4K013EA08
4K013EA11
4K013EA12
4K013EA13
4K013EA15
4K013EA16
4K013EA18
4K013EA19
4K013EA24
4K013EA25
4K013EA28
4K013EA36
4K014AA02
4K014AA03
4K014AB01
4K014AB11
4K014AB21
4K014BD01
4K014BD02
4K014BD03
4K014BD04
4K014BD05
4K014BD08
4K014BE05
(57)【要約】
冶金溶融物の炉外処理用のコアードワイヤは、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Alの群から選択される少なくとも1つの元素を含む充填材料を包み込む金属シース(ジャケット)を有する。さらに、金属シース(ジャケット)の内側及び/または外側の表面に、複合材料の少なくとも1つコーティングが塗布されている。この複合材料は、実際には、金属炭化物及び/または金属窒化物及び/または金属炭窒化物及び/または金属ケイ化物及び/または金属ホウ化物の化合物から選択される高融点超分散粒子を含む塗装材料である。複合材料には、合金鉄及び/またはフラックスに代表される保護材料が含まれる。高融点化合物に含まれる金属は、チタン、及び/またはタングステン、及び/またはシリコン、及び/またはマグネシウム、及び/またはニオブ、及び/またはバナジウムに代表される。金属シース(ジャケット)の表面に、複合材料のコーティングが均一に塗布される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製シース(ジャケット)を有する冶金溶融物の炉外処理用のコアードワイヤであって、前記シース(ジャケット)には、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Alの群から選択させる少なくとも1種の元素を含む充填材料が包み込まれ、さらに、前記シース(ジャケット)の内側及び/または外側の表面に、複合材料の少なくとも1つのコーティングが塗布され、前記複合材料は、金属炭化物、及び/または金属窒化物、及び/または金属炭窒化物、及び/または金属ケイ化物、及び/または金属フッ化物の化合物から選択される超分散粒子を含む塗装材料である、コアードワイヤ。
【請求項2】
前記塗装材料が、ポリマー系及び/またはアルコール系である、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項3】
前記複合材料が、合金鉄及び/またはフラックスに代表される保護材料を含む、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項4】
前記化合物に含まれる前記金属が、チタン、及び/またはタングステン、及び/またはシリコン、及び/またはマグネシウム、及び/またはニオブ、及び/またはバナジウムに代表される、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項5】
前記シース(ジャケット)の前記表面に前記複合材料のコーティングが均一に塗布される、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項6】
前記充填材料が、CaC
2、Na
2CO
3、CaCO
3、SrCO
3、CaO、MgOの群の中から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼業に関するものであり、溶融鉄及び鋼の炉外処理(二次処理)(冶金)に使用され得、特に、充填材料を用いたコアードワイヤを使用して、鉄炭素合金の脱酸、脱硫、及び改質に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
先行技術では、冶金用溶融物の炉外処理(二次処理)用の超分散型改質剤の使用が開示されている。
【0003】
超分散型改質剤の効率は、その形態的パラメータ、反応性、及び溶融物が改質される条件に大きく依存する。このような改質剤の最大の利点は、溶融物中の単位体積あたりの粒子が大量であることであり、これが構造の微細化の効率を本質的に決定し、これにより、鋳造製品の機械的強度及び操作特性の実質的な改善がもたらされる。
【0004】
2018年4月19日に公開のロシア国特許出願公開第2651514号明細書、IPC C21C1/00、C21C7/00、B82Y30/0として知られている、冶金用溶融物の処理に使用される改質剤がある。これには、密閉された金属シース(ジャケット)内に包み込まれた多成分充填剤が含まれる。充填剤は、表面活性剤(界面活性剤)を均一にコーティングさせる混合物であり、鉄、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される最大10μmの粒子を有する少なくとも2つの超分散粉末金属及び/または微分散粉末金属、ならびに10~200μmの範囲の粒子を有する金属炭化物、金属ホウ化物、金属窒化物、及び金属ケイ化物の中から選択される少なくとも1つの高融点金属の化合物、ならびにCnフラーレン、炭化物クラスタ、炭化ケイ素、銅、カルシウム、バリウム、及びREMからなる群から選択される少なくとも1つの微粉末を含み、高融点金属の化合物は、粉末金属に組み込まれる。高融点金属は、モリブデン、バナジウム、タングステン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、クロム、またはハフニウムなどに代表される。
【0005】
先行技術による解決策の欠点は、充填剤が鋼製のアンプルまたはカプセルの形態で、密閉された金属シース(ジャケット)に包み込まれていることである。充填剤の溶湯への導入には、サンドイッチ法、インモールド法、プランジング法、及び他の周知の技法が用いられている。アンプルまたはカプセルに密閉された改質剤の使用、及び溶湯への導入方法では、改質剤が金属の全深まで浸透して、その内部に均一に拡散することができないため、改質剤の改質効果が低下する。
【0006】
2011年8月20日に公開されたロシア国特許出願公開第2447176号明細書、IPC C22C35/0として知られる、液体鋼の処理に使用される改質剤がある。この改質剤は、高融点材料のナノ分散粉末及び保護材料の粉末を含む。保護材料は、フェロシリコン、フェロマンガン、アルミニウムフェロシリコン、カルシウムシリコン、バリウムシリコン、カルシウムシリコンバリウムからなる群から選択される1つ以上のマスター合金の粉末に代表される。
【0007】
従来技術の解決策の欠点は、改質剤が、組成に関して均一な粉末の混合物が圧入されるブリケットに代表される。ブリケットの形態で改質剤を使用することにより、改質剤は、溶融物の必要な浸透深度に達して、その内部に均一に拡散することができないため、改質剤の改質効果が低下する。
【0008】
超分散型改質剤が鋳物工場で広範な規模で使用されない主な理由は、追加の装置部品を使用する必要があること、及び改質剤が溶湯に導入される前に予備調製が必要であること、導入された粒子の凝固、溶解、溶融物の全体積への改質剤の分布の工程によってもたらされる結果が、一貫しないことである。
【0009】
炉外処理施設で処理された溶融物に改質剤を導入する、技術的に最も簡素で効率的である方法は、コアードワイヤインジェクション法であると言われている。コアードワイヤの充填材料の一部として超分散材料(ナノ材料)を使用することにより、溶湯の所定の深度まで到達できるようになるため、早期に(上層部内で)溶湯に衝突する可能性がなくなる。
【0010】
2015年1月20日公開のロシア国特許出願公開第2539284号明細書、IPC B23K35/368、B82B3/00として公知である水中溶接に使用されるナノ構造のコアードワイヤがある。このワイヤは、ルチル濃縮物、ヘマタイト、鉄粉、フェロマンガン、二酸化ケイ素、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属錯体フッ化物を含む電荷材料を封入している金属シース(ジャケット)から構成される。シース(ジャケット)の表面は、ナノサイズの活性化フラックスの粒子が分散された銅のマトリックスの形態で、内側複合体コーティングを有する。フラックスには、アルカリ金属のフッ化物が含まれている。
【0011】
銅のマトリックスの形態の複合体コーティングを使用することにより、コアードワイヤの製造は、非常に高価になる。また、コアードワイヤのシース(ジャケット)の表面での銅の電解析出は、物質が表面を均一にコーティングしないため、効率の悪い工程である。
【0012】
この種類のコアードワイヤを使用することにより、溶接域へのナノサイズの粒子の導入が可能になるが、この種類のコアードワイヤの組成は、炉外処理施設での溶湯の処理に使用することはできない。
【0013】
また、2010年2月10日に公開されたIPC C21C7/00のロシア国特許出願公開第2381280号明細書として公知であるコアードワイヤもある。このワイヤは、粉末/顆粒状の充填材料と、充填材料を取り囲む内側の金属シースと、内側の金属シースを取り囲む少なくとも1つの熱障壁層と、を含む。熱障壁層は、溶湯浴との接触時に熱分解する材料と、熱障壁層に装填されている浸漬液と、から構成される。熱障壁層は、クラフト紙、アルミ蒸着紙である、または、少なくとも1枚のストリップ状のクラフト紙及び少なくとも1つのアルミ蒸着紙の層を含む多重層である。熱分解材料は、内部の金属ライナーとは別の薄い金属シートで覆われている。外側の金属シース(ジャケット)は、ロックシームで閉じられている。充填材料の粉末または粒子は、樹脂に圧縮されるまたは埋め込まれており、充填材料は、Ca、Bi、Nb、Mg、CaSi、C、Mn、Si、Cr、Ti、B、S、Se、Te、Pb、CaC2、Na2CO3、CaCO3、CaO、MgO、及びREMからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0014】
ロシア国特許出願公開第2381280号明細書に記載の解決法は、本発明に必須の特徴の最も近い組み合わせを有する最も近い先行技術として選択されている。
【0015】
コアードワイヤの先行配置では、熱障壁層は、コアードワイヤが所定の深度に達する前に充填材料が溶融物に入るのを防ぐ、1つの機能のみを実行する。熱障壁層は、溶融物に一定の改質効果をもたらし得る物質または材料を含まない。
【0016】
コアードワイヤは、その製造に複雑な工程を用いることが特徴的である。シースは、湿らせる(液体に浸漬させる)必要のある紙の層によって分離されている2枚の金属シートを有する。金属シートが2枚であることにより、コアードワイヤが非常に硬くなり、その巻き取りが複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ロシア国特許出願公開第2651514号明細書
【特許文献2】ロシア国特許出願公開第2447176号明細書
【特許文献3】ロシア国特許出願公開第2539284号明細書
【特許文献4】ロシア国特許出願公開第2381280号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の考案は、コアードワイヤに追加の層を導入することであり、この層は熱障壁層として機能するのみでなく、溶融物に一定の改質効果を与える超分散物質も含む。
【0019】
本発明の根底にあり、解決すべき技術的問題は、制御可能な特性の組み合わせを有する充填材料を有するコアードワイヤを製造することであり、これにより、このようなコアードワイヤを冶金溶融物の改質及びマイクロアロイ化に使用することが可能になり、確実に溶融浴に注入して所定の深度に到達できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この技術的課題を解決できるのは、炉外処理施設において溶湯を改質するためのコアードワイヤが、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Alからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む充填材料を封入している金属シース(ジャケット)を有することである。さらに、複合材料の少なくとも1つコーティングを金属シース(ジャケット)の内側及び/または外側の表面に塗布する。この複合材料は、実際には、金属炭化物及び/または金属窒化物及び/または金属炭窒化物及び/または金属ケイ化物及び/または金属ホウ化物の化合物から選択される高融点超分散粒子を含む塗装材料である。
【0021】
上記に加えて、塗装材料は、ポリマー系及び/またはアルコール系である。
【0022】
複合材料には、合金鉄及び/またはフラックスに代表される保護材料が含まれる。
【0023】
コアードワイヤコーティングの高融点化合物に含まれる金属は、チタン、及び/またはタングステン、及び/またはマグネシウム、及び/またはニオブ、及び/またはバナジウムに代表される。
【0024】
複合材料のコーティングは、金属シース(ジャケット)の表面に均一に塗布される。
【0025】
加えて、充填材料は、CaC2、Na2CO3、CaCO3、SrCO3、CaO、MgOの群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含み得る。
【発明の効果】
【0026】
金属シース(ジャケット)の内側及び/または外側の表面に複合材料を塗布することにより、超分散物質をコアードワイヤの全長に堆積させることができ、その結果、溶融物の全体積の全体わたって均一に浸透させることができる。また、これにより、注入するコアードワイヤの必要量を算出し、注入された粒子が凝固するのを防ぎ、溶融物と接触する改質剤の比表面積を増加させ、固化のための追加の核生成部位を作り出して、改質剤の同化を最大限に促進し、改質される溶融物の構造を微細化することが可能になる。
【0027】
溶融物に入ると、金属シース(ジャケット)の内側及び/または外側の表面に堆積された複合材料が熱分解を受けてそのエネルギーを吸収し、内部において注入されたコアードワイヤが溶解している溶湯の微小部分が冷却される。この工程の過程において、超分散粒子が放出される。さらに、コアードワイヤが溶湯に溶解される時間が長くなるため、充填材料及び上記超分散粒子がより深い深度まで到達することが可能になり、これにより、充填材料を最大限に同化させることができると共に、改質目的で使用されるコアードワイヤの消費量を少なくすることができる。
【0028】
改質される溶湯の温度よりも溶融温度が高い超分散粒子を、金属炭化物、及び/または金属ホウ化物、及び/または金属ケイ化物、及び/または金属窒化物、及び/または金属炭窒化物などの形態で使用することにより、改質される溶湯の全体積全体に粒子を拡散させることができる。その結果、結晶粒の微細化が促進され、異なるサイズの結晶粒の発生が防がれ、常に高等方性の物理的機械的特性を有する最終生成物が得られる。
【0029】
本発明を使用することで、コアードワイヤに内包された改質剤の効率を向上させ、改質される溶湯の品質を改善し、コアードワイヤの適用範囲を拡大させることが可能になる。
【0030】
コアードワイヤの金属シース(ジャケット)のコーティングにおける充填材料の成分と超分散粒子との比率は、改質される溶湯の組成、使用される改質方法、及び最終生成物のプリセット特性に応じて、場合によって算出される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明によれば、炉外処理施設で溶湯を処理するためのコアードワイヤは、密閉された金属シース(ジャケット)で構成されており、これは、主に鋼製シース(ジャケット)である。シース(ジャケット)は、厚さ0.2~0.6mmであり、主な実施形態では厚さ0.3~0.45mmであるものとする。シース(ジャケット)の端は、ロックシームで閉じられている。
【0032】
複合材料の少なくとも1つのコーティングが、金属シースの内側及び/または外側表面に塗布される。コーティングは、結合物質の機能を果たすベースマトリックスであり、粒子及び保護材料を含む。ベースマトリックスに導入された保護材料により、超分散粒子が凝固する可能性を排除することが可能になる。これにより、コーティング内の均一な分布が促進される。ベースマトリックスは、塗装材料である。塗装材料は、ポリマー系及び/またはアルコール系である。複合材料には、合金鉄及び/またはフラックスに代表される保護材料が含まれる。超分散粒子は、融点が1600℃を超える炭化物、及び/またはホウ化物、及び/またはケイ化物、及び/または窒化物、及び/または炭窒化物の化合物に代表される。コーティング中の超分散粒子の定量的な含有量は、処理される溶湯の重量の0.01~0.5%である。上記化合物の一部を構成する金属は、チタン及び/またはタングステン、及び/またはシリコン、及び/またはマグネシウム、及び/またはバナジウムであり得る。コーティングは、300μmを超えず、コーティングの超分散粒子のサイズは、1~200mμ(ナノメートル)の範囲であるものとする。コアードワイヤの具体的な実施形態では、コーティングは、300μmを超え得る。
【0033】
コアードワイヤの金属シース(ジャケット)の内側及び/または外側の表面に塗布される複合材料は、改質粒子を含む熱障壁層である。
【0034】
コアードワイヤの金属シース(ジャケット)の内部には、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Alからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む多成分充填材料が存在する。
【0035】
充填材料の具体的な実施形態のうちの1つは、以下の成分:バリウム(0.001~35重量%)、カルシウム(0.001~35重量%)、ストロンチウム(0.001~35重量%)、マグネシウム(0.001~50重量%)、シリコン(25~75重量%)、TRE(0.001~15重量%)、鉄(残部)を有する。
【0036】
加えて、充填材料は、CaC2、Na2CO3、CaCO3、SrCO3、CaO、MgOの群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含み得る。
【0037】
充填材料は、例えば、サイズが3mmを超えない粒子を有する粉末または粒状の形態の上記の物質に代表される。
【0038】
本発明の技術的特徴は、主張された組成を有するコアードワイヤが、液体鋼及び鉄を改質するために使用される方法の実施例によって説明される。
【実施例1】
【0039】
電気炉で鋼20GFLを溶融させた。次の基本成分を有するものとした(重量パーセント)。
Ca-0.16~0.25
Si-0.20~0.50
Mn-0.90~1.40
V-0.06~0.12
P、0.05以下
S、0.05以下
Fe、残部
【0040】
その溶融物を2つの10t取鍋に入れた。
【0041】
第1の取鍋では、溶湯の微細化及び改質を目的として、厚さ0.40mmの金属シース(ジャケット)を備えた直径14mmのコアードワイヤを使用した。コアードワイヤは、以下の成分を有するものとした(重量パーセント):Si-43~51、Ca-18~22、Ba-10~15、Sr-10~15。コア比は、0.55である。金属シース(ジャケット)の内側表面には、その上に塗装系コーティングを塗布した。粒子径が5mμ未満であり、全体の20%を占める改質超分散元素TiC0.4N0.6(炭窒化チタン)及びスラグ形成用混合物である、粒子が100μm未満であり、全体の80%を占めるCaO+CaF2(酸化カルシウム+フッ化カルシウム)を有する。塗布されたコーティングの厚さは、150~200μmである。塗布されたコーティング量は、1mのコアードワイヤに少なくとも10gの炭窒化チタンが含まれるようにする。溶湯1トンあたり、合計5kgのコアードワイヤが消費された。
【0042】
第2の取鍋では、溶湯を改質する目的で、シリコンカルシウム(SiCa40)を含むコアードワイヤを使用した。
【0043】
主張された組成を有するコアードワイヤにより改質された溶融物と、シリコンカルシウム(SiCa40)を含むコアードワイヤにより改質された溶融物の特性を比較したところ、以下の結果が得られた。
【0044】
主張された組成を有するコアードワイヤを使用することにより、結晶粒径を24%縮小し、微小硬さを7.4%向上させ、改質溶融物の-60℃におけるKCV衝撃靭性を49%改善することができた。また、非金属含有物の含有量を減少させることも可能であった。
【0045】
上記組成を有するコアードワイヤを使用することにより、改質溶融物の強度、延性、及び衝撃靭性の改善が可能になった。
【実施例2】
【0046】
電気炉において、鋼20GFLを溶融させた。次の基本成分を有するものとした(重量パーセント)。
Ca0.16~0.25
Si0.20~0.50
Mn0.90~1.40
V0.06~0.12
P、0.05以下
S、0.05以下
Fe、残部
【0047】
その溶融物を2つの10tの取鍋に入れた。
【0048】
第1の取鍋では、溶湯の微細化及び改質を目的として、厚さ0.40mmの金属シース(ジャケット)を備えた直径14mmのコアードワイヤを使用した。コアードワイヤは、以下の成分を有するものとした(重量パーセント):Si-43~51、Ca-18~22、Ba-10~15、Sr-10~15。コア比は、0.55である。金属シース(ジャケット)の内側表面には、その上に塗装系コーティングを塗布した。改質超分散元素、70%TiС+30%VС(炭化チタン70%+炭化バナジウム30%)(その粒子は5mμ未満のサイズを有し、全体の20%を占める)、粉砕されたフェロチタン(FeTi70)(その粒子は100μm未満のサイズを有し、全体の30%を占める)、及びスラグ形成混合物であるCaO+CaF2(酸化カルシウム+フッ化カルシウム)(その粒子は100μm未満のサイズを有し、全体の50%を占める)を有していた。塗布されたコーティングの厚さは150~200μmである。塗布されたコーティング量は、1mのコアードワイヤに少なくとも15gの炭化チタン及び炭化バナジウムが確実に含まれるようにした。溶湯1トンあたり、合計5kgのコアードワイヤが消費された。
【0049】
第2の取鍋では、溶湯を改質する目的で、シリコンカルシウム(SiCa40)を含むコアードワイヤを使用した。
【0050】
主張された組成を有するコアードワイヤにより改質された溶融物と、シリコンカルシウム(SiCa40)を含むコアードワイヤにより改質された溶融物の特性を比較したところ、以下の結果が得られた。
【0051】
主張された組成を有するコアードワイヤを使用することにより、結晶粒径を29%縮小し、微小硬さを8.1%向上させ、改質溶融物の-60℃におけるKCV衝撃靭性を52%改善することができた。また、非金属含有物の含有量を減少させることも可能であった。
【実施例3】
【0052】
誘導炉では、ねずみ鋳鉄(SCh25)を溶融させた。次の基本成分を有するものとした(重量パーセント)。
Ca3.20~3.40
Si1.40~2.20
Mn0.70~1.00
P、0.20以下
S、0.15以下
Fe、残部
【0053】
溶融物は、2つの5t取鍋に入れた。
【0054】
第1の取鍋では、溶湯の微細化及び改質を目的として、厚さ0.40mmの金属シース(ジャケット)を備えた直径14mmのコアードワイヤを使用した。コアードワイヤは、以下の成分を有していた(重量パーセント):Si-65~75、Ca-0.80~1.5、Ba-3.5~5.00、Al-1.00~2.00、コア比は、0.5である。金属シース(ジャケット)の内側表面には、その上にアルコール系コーティングを塗布した。以下の改質元素を有していた:サイズが5mμ未満の粒子を有するSiC+Si3N4(炭化ケイ素+窒化ケイ素)が全体の20%を占め、サイズが100μm未満の粒子を有するマグネシウム及びバリウムを含む粉砕して微分散させたフェロシリコンが全体の80%を占める。塗布されたコーティングの厚さは150~200μmである。塗布されたコーティングの量は、1メートルのコアードワイヤが確実に少なくとも15gの炭化物及び窒化物の混合物を含むようにした。溶湯1トンあたり、合計5kgのコアードワイヤが消費された。
【0055】
第2の取鍋では、溶湯を改質する目的で、フェロシリコン(FeSi75)含有コアードワイヤを使用した。
【0056】
主張された組成を有するコアードワイヤにより改質された溶融物と、フェロシリコン(FeSi75)を含むコアードワイヤにより改質された溶融物の特性を比較したところ、以下の結果が得られた。
【0057】
主張された組成を有するコアードワイヤを使用することにより、降伏強度を10.3%、引張強度を12.1%向上させることができた。得られた鋳物の耐摩耗性を改善させることも可能になった。
【0058】
主張された組成を有するコアードワイヤは、以下のように製造され得る。厚さ0.2~0.6mmの金属ストリップは、トラフ状構成を有する円筒形のシースまたはジャケットにロール成形される。事前に調製された粉末状充填材料は、ホッパービンからシース(ジャケット)内に供給され、その長さに沿って均一に分布される。シース(ジャケット)の内側及び/または外側の表面に、ロール成形工程の前または後、及びシース(ジャケット)に充填材料が充填される前に、複合コーティングが塗布される。コーティングは、シース(ジャケット)の内側及び/または外側の表面に、スプレー、散布、またはローラーにより塗布される。シース(ジャケット)に充填材料を充填後、シース(ジャケット)をさらにロール成形して充填材料の周囲を閉じて、連続ロックシームを形成する。こうして製造されたコアードワイヤは、コイル状に包装される。
【0059】
コアードワイヤは、射出成形機を使って、35~300m/分の速度で溶湯に射出される。コアードワイヤの消費量は、充填材料の消費量に基づいて算出され、溶湯1トンあたり1.5~7.0kgに相当する。
【0060】
本発明の炉外処理(二次処理)冶金溶融物用のコアードワイヤは、機能方法における優れた信頼性及び製造の容易さによって区別され、使い慣れた機器、材料、及び技術を用いて製造され得る。
【0061】
本明細書中で使用される「含む(contains)」、「含んでいる(containing)、「主な実施形態では(in the predominant embodiment)」、「主に(predominantly)」、「特に(in particular)」、「であり得る(may be)」などの用語及び単語の組み合わせは、他の材料、部分、構造要素、動作の存在を排除するものと解釈してはならない。
【手続補正書】
【提出日】2021-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製シースを有する冶金溶融物の炉外処理用のコアードワイヤであって、前記シースには、Ca、Ba、Sr、Mg、Si、Alの群から選択させる少なくとも1種の元素を含む充填材料が包み込まれ、さらに、前記シースの内側及び/または外側の表面に、複合材料の少なくとも1つのコーティングが塗布され、前記複合材料は、金属炭化物、及び/または金属窒化物、及び/または金属炭窒化物、及び/または金属ケイ化物、及び/または金属フッ化物の化合物から選択される超分散粒子を含む塗装材料である、コアードワイヤ。
【請求項2】
前記塗装材料が、ポリマー系及び/またはアルコール系である、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項3】
前記複合材料が、合金鉄及び/またはフラックスに代表される保護材料を含む、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項4】
前記化合物に含まれる前記金属が、チタン、及び/またはタングステン、及び/またはシリコン、及び/またはマグネシウム、及び/またはニオブ、及び/またはバナジウムに代表される、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項5】
前記シースの前記表面に前記複合材料のコーティングが均一に塗布される、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【請求項6】
前記充填材料が、CaC
2、Na
2CO
3、CaCO
3、SrCO
3、CaO、MgOの群の中から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1に記載のコアードワイヤ。
【国際調査報告】