(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】複合材料及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 29/04 20060101AFI20221007BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C08L29/04 Z
C08L29/04 B
C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507804
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 IL2020050886
(87)【国際公開番号】W WO2021028918
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522050170
【氏名又は名称】ソルタム テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Solutum Technologies LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バラク,シャロン
(72)【発明者】
【氏名】クレプカー,マックス
(72)【発明者】
【氏名】ベン-ツヴィ ベクレル,レゲフ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB013
4J002AB043
4J002BB082
4J002BB212
4J002BE021
4J002BG012
4J002CF032
4J002CF183
4J002CF193
4J002CH023
4J002DD046
4J002FD206
4J002GG00
(57)【要約】
本明細書に開示の技術は、原料の特性を調節するための方法論に関し、予め選択された独自の機械的特性をもつ最終複合材料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
A-30~99重量%の範囲の量のポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、
B-0.1~20重量%の範囲の量で存在する少なくとも1つの架橋化合物、
C-0.1~50重量%の範囲の量の少なくとも1つの追加のバイオプラスチック、及び
D-任意選択で、0.1~20重量%の範囲の量の少なくとも1つの添加剤
を含む、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの架橋化合物が、ポリマー、コポリマー及び非ポリマー材料から選択され、PVOHに結合できる官能基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの架橋化合物が、アルコール、エポキシド、無水物、カルボン酸、アミン、アミド、グリシジル官能基、アルデヒド官能基又はエステルから選択される官能基を有するポリマー又はオリゴマーである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーがアイオノマーから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーがポリ酸である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリ酸がポリ(アクリル酸)(PAA)又はポリ(メタクリル酸)(PMAA)である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの架橋化合物がPAAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの架橋化合物が、無水物でグラフト化されたポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリエチレン(PE)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)及びポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)(PBAT)から選択され、前記ポリマーが任意選択で、無水マレイン酸でグラフト化されている、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの架橋化合物がポリエチレン-グラフト-無水マレイン酸である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの架橋化合物が、カルボン酸官能基を有するポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマーが、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)(PE-co-AA)、ポリ(エチレン-co-メタクリル酸)(PE-co-MAA)、ポリ(ラクチド-ブロック-アクリル酸)(PLA-ブロック-AA)、カルボキシル基をもつPVOH及びカルボキシメチルセルロ-ス(CMC)から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリマーがポリ(エチレン-co-アクリル酸)である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックが、脂肪族又は芳香族ポリエステル、コポリエステル及びポリエステルアミドから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックが、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(乳酸)(PLA)、セルロース及びセルロース誘導体、デンプン、熱可塑性デンプン(TPS)、キトサン並びにポリヒドロキシアルカノエート(PHA)から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記PHAがポリヒドロキシ酪酸(PHB)である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記セルロース誘導体が、ナノ結晶セルロース(NCC)、ミクロフィブリルセルロース、バクテリアセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロ-ス(HEC)及びカルボキシメチルセルロ-ス(CMC)から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックがPEOである、請求項1又は15に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックがPCLである、請求項1又は15に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックがPEGである、請求項1又は15に記載の組成物。
【請求項21】
PEO及びPCLを含む、請求項1又は15に記載の組成物。
【請求項22】
PVOH、PAA、PEO及び任意選択でPCLを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1つの添加剤が、無機添加剤、フィラー、強化剤、加工助剤、スリップ剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、発泡剤、核剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤及び帯電防止剤から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1つの添加剤が吸湿剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記吸湿剤が、CaO、CaCl
2、LiCl、NaCl、CaI
2、MgCl
2、TiO
2、CaCO
3、アルミナシリケートフィラー及びSiO
2から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1つの添加剤がCaOである、請求項1又は25に記載の組成物。
【請求項27】
無機塩、セルロース由来物質及びキトサンから選択される1つ又は複数の添加剤をさらに含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記PVOH、少なくとも1つの架橋化合物及び少なくとも1つの追加のバイオプラスチックの量が、前記組成物で形成される複合材料の水劣化を調節するように選択される、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
水劣化が、前記少なくとも1つの架橋材料の量に対する前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックの量の増加に伴って増加する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
水劣化が、前記少なくとも1つの架橋材料の量に対する前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックの量の減少に伴って停止又は減速又は遅延する、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックがPEOである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記少なくとも1つの架橋材料及び前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックが、それぞれ、約1:5の比率で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
前記比率が、PAA:PEO、1:5である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記比率が2:8である、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記比率が、PAA:PEO、2:8である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
PEOとPAAを合わせた量とPVOHとの比率が、それぞれ、2:98である、請求項28に記載の組成物。
【請求項37】
PEOとPAAの合計と、PCLと、PVOHとの比率が、PEO/PAA:PCL:PVOH、2:5:93である、請求項28に記載の組成物。
【請求項38】
前記少なくとも1つの架橋材料の量が0.4~0.5重量%である、請求項28に記載の組成物。
【請求項39】
前記少なくとも1つの架橋材料の量が0.9~1.1重量%である、請求項28に記載の組成物。
【請求項40】
前記PVOHの量が、80~85重量%、80~90重量%、80~99重量%、85~99重量%、90~99重量%、78~85重量%、又は78~90重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項41】
前記少なくとも1つの架橋成分の量が、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~0.2重量%、0.1~0.3重量%、0.1~0.4重量%、0.1~0.5重量%、0.1~0.6重量%、0.1~0.7重量%、0.1~0.8重量%、0.1~0.9重量%、1~20重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、又は17~20重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項42】
前記少なくとも1つのバイオプラスチックの量が、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~19重量%、0.1~20重量%、0.1~22重量%、0.1~25重量%、0.1~27重量%、0.1~30重量%、0.1~32重量%、0.1~35重量%、0.1~37重量%、0.1~40重量%、0.1~43重量%、0.1~45重量%、0.1~47重量%、1~5重量%、1~7重量%、1~10重量%、1~12重量%、1~15重量%、1~17重量%、1~20重量%、1~22重量%、1~25重量%、1~27重量%、1~30重量%、1~32重量%、1~35重量%、1~37重量%、1~40重量%、1~42重量%、1~45重量%、1~47重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、17~20重量%、5~20重量%、5~25重量%、5~30重量%、5~35重量%、5~40重量%、5~45重量%、又は5~50重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項43】
前記少なくとも1つの添加剤の量が、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~0.2重量%、0.1~0.3重量%、0.1~0.4重量%、0.1~0.5重量%、0.1~0.6重量%、0.1~0.7重量%、0.1~0.8重量%、0.1~0.9重量%、1~20重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、又は17~20重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項44】
前記PVOHが、73~96.5、68.5~89.8、77.5~96.3、67.5~91.5、72~95、71~85、81~90、68~81、75~84、60~78、91.5~99.3、87.5~98.7、94.6~82.5、87~93.3、83~98.7、78.5~94.3、79.5~93.8、68~93.5、81.5~93.7、73.5~93.3、82~98.6若しくは77.5~98.2重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの架橋化合物が、0.1~1.5、1.5~2.5、1~2.5、1.5~4、1、1.5~2、1.5~2、5、0.1~0.5、0.5~2、0.1~0.5若しくは1~2重量%の量で存在し、且つ/又は前記少なくとも1つのバイオプラスチックが、1.5~10、5~10、1.5~5、1.5~4、5、2、10、0~1、1~5、5~10、0.1~1若しくは0.1~1重量%の量で存在し、任意選択で少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項45】
PVOH、PAA及びPEOを、それぞれ、
-73~96.5重量%、0.1~1.5重量%及び1.5~10重量%、
-68.5~89.8重量%、0.1~1.5重量%及び5~10重量%、
-77.5~96.3重量%、1.5~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-67.5~91.5重量%、1~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-72~95重量%、1.5~4重量%及び1.5~4重量%、
-71~85重量%、1重量%及び5重量%、
-81~90重量%、1.5~2重量%及び2重量%、
-68~81重量%、1.5~2重量%及び5重量%、
-75~84重量%、5重量%及び5重量%、
-60~78重量%、5重量%及び10重量%、
-91.5~99.3重量%、0.1~0.5重量%及び0~1重量%、
-87.5~98.7重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%、
-94.6~82.5重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%、
-87~93.3重量%、0.5~2重量%及び0~1重量%、
-83~98.7重量%、0.5~2重量%及び1~5重量%、
-78.5~94.3重量%、0.5~2重量%及び5~10重量%、
-79.5~93.8重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-68~93.5重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-81.5~93.7重量%、0.1~1.5重量%及び0~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-73.5~93.3重量%、0.5~1.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-82~98.6重量%、1~2重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、又は
-77.5~98.2重量%、0.5~1.5重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)
から選択される量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項46】
請求項1~45のいずれか一項に記載の組成物で形成される固体複合材料の少なくとも1つの特性を改変する方法であって、PAAの量及びPEOの量を含む組成物を、PVOHの量及び任意選択で少なくとも1つの添加剤を含む組成物とともに処理することを含み、前記PAAの量、前記PEOの量及び任意選択で前記PVOHの量が、前記少なくとも1つの特性を改変するように選択され、前記PAA、PEO及びPVOH、及び任意選択で少なくとも1つの添加剤の、前記少なくとも1つの特性を有する前記固体複合材料へのコンパウンディングを可能にする条件下で実施される、方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの特性が水劣化である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記PAAの量及び前記PEOの量が、それぞれ、約1:5である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記PAAの量及び前記PEOの量が約2:8の比率である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項50】
前記比率が、PAA:PEO、2:8である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
PEOの量とPAAの量の合計とPVOHの量との比率が、それぞれ、2:98である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項52】
PEOの量とPAAの量の合計と、PCLの量と、PVOHの量との比率が、PEO/PAA:PCL:PVOH、2:5:93である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項53】
前記PAAの量が0.4~0.5重量%である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項54】
前記PAAの量が0.9~1.1重量%である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項55】
PVOHの量が、80~85重量%、80~90重量%、80~99重量%、85~99重量%、90~99重量%、78~85重量%、又は78~90重量%である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項56】
前記PAAの量が、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~0.2重量%、0.1~0.3重量%、0.1~0.4重量%、0.1~0.5重量%、0.1~0.6重量%、0.1~0.7重量%、0.1~0.8重量%、0.1~0.9重量%、1~20重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、又は17~20重量%である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項57】
前記PEOの量が、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~19重量%、0.1~20重量%、0.1~22重量%、0.1~25重量%、0.1~27重量%、0.1~30重量%、0.1~32重量%、0.1~35重量%、0.1~37重量%、0.1~40重量%、0.1~43重量%、0.1~45重量%、0.1~47重量%、1~5重量%、1~7重量%、1~10重量%、1~12重量%、1~15重量%、1~17重量%、1~20重量%、1~22重量%、1~25重量%、1~27重量%、1~30重量%、1~32重量%、1~35重量%、1~37重量%、1~40重量%、1~42重量%、1~45重量%、1~47重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、17~20重量%、5~20重量%、5~25重量%、5~30重量%、5~35重量%、5~40重量%、5~45重量%、又は5~50重量%である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項58】
前記PVOHが、73~96.5、68.5~89.8、77.5~96.3、67.5~91.5、72~95、71~85、81~90、68~81、75~84、60~78、91.5~99.3、87.5~98.7、94.6~82.5、87~93.3、83~98.7、78.5~94.3、79.5~93.8、68~93.5、81.5~93.7、73.5~93.3、82~98.6若しくは77.5~98.2重量%の量で存在し、前記PAAが、0.1~1.5、1.5~2.5、1~2.5、1.5~4、1、1.5~2、1.5~2、5、0.1~0.5、0.5~2、0.1~0.5若しくは1~2重量%の量で存在し、且つ/又は前記PEOが、1.5~10、5~10、1.5~5、1.5~4、5、2、10、0~1、1~5、5~10、0.1~1若しくは0.1~1重量%の量で存在し、前記組成物が任意選択で、少なくとも1つの添加剤を含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項59】
PVOH、PAA及びPEOを、それぞれ、
-73~96.5重量%、0.1~1.5重量%及び1.5~10重量%、
-68.5~89.8重量%、0.1~1.5重量%及び5~10重量%、
-77.5~96.3重量%、1.5~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-67.5~91.5重量%、1~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-72~95重量%、1.5~4重量%及び1.5~4重量%、
-71~85重量%、1重量%及び5重量%、
-81~90重量%、1.5~2重量%及び2重量%、
-68~81重量%、1.5~2重量%及び5重量%、
-75~84重量%、5重量%及び5重量%、
-60~78重量%、5重量%及び10重量%、
-91.5~99.3重量%、0.1~0.5重量%及び0~1重量%、
-87.5~98.7重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%、
-94.6~82.5重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%、
-87~93.3重量%、0.5~2重量%及び0~1重量%、
-83~98.7重量%、0.5~2重量%及び1~5重量%、
-78.5~94.3重量%、0.5~2重量%及び5~10重量%、
-79.5~93.8重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-68~93.5重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-81.5~93.7重量%、0.1~1.5重量%及び0~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-73.5~93.3重量%、0.5~1.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-82~98.6重量%、1~2重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、又は
-77.5~98.2重量%、0.5~1.5重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)
から選択される量で含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの特性が水劣化であり、前記調節がPAAに対する前記PEOの量を増やして水劣化を増加させることを含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1つの特性が水劣化であり、前記調節がPEOに対する前記PAAの量を増やして水劣化を減少させることを含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項62】
前記少なくとも1つの特性が水劣化であり、前記調節がPAAに対する前記PEOの量を減らして水劣化を減少させることを含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項63】
前記少なくとも1つの特性が水劣化であり、前記調節がPEOに対する前記PAAの量を減らして水劣化を増加させることを含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項64】
PAAの量及びPVOHの量及び任意選択で少なくとも1つの添加剤を、有効量のPEOとともに含む組成物を処理すること含み、前記有効量が前記固体複合材料の水劣化を増加又は減少させるように選択され、前記PAA、PEO及びPVOH、及び任意選択で少なくとも1つの添加剤を、水劣化プロファイルを有する固体複合材料にコンパウンディングできる条件下で実施される請求項1~45のいずれか一項に記載の組成物で形成される固体複合材料の水劣化プロファイルを調節するための方法。
【請求項65】
PVOHを含む固体複合材料の水劣化の開始を設定する方法であって、
-PVOH、少なくとも1つの架橋材料及び少なくとも1つの追加のバイオプラスチックを含む組成物を調整する際に、組み合わせて前記固体複合材料の水劣化を早める、又は遅らせる前記少なくとも1つの架橋材料及び前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックの量を選択すること、並びに
-前記組成物を熱処理して前記固体複合材料を形成すること
を含む、方法。
【請求項66】
請求項1~45のいずれか一項に記載の組成物で形成される、ポリマー複合材料。
【請求項67】
水劣化の速度が~1mg/(分×cm
2)である、請求項66に記載の複合材料。
【請求項68】
水劣化の速度が~0.2mg/(分×cm
2)である、請求項66に記載の複合材料。
【請求項69】
請求項46~65のいずれか一項に記載の前記方法に従って製造された、複合材料。
【請求項70】
顆粒材料の形態である、請求項66~69のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項71】
マスターバッチの形態である、請求項66~69のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項72】
1D、2D又は3D物体の形態である、請求項66~69のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項73】
請求項66~69のいずれか一項に記載の複合材料を含む、物体。
【請求項74】
1D、2D又は3D物体である、請求項73に記載の物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体として、ポリマー複合材料を製造するための方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー及びそれから作られる製品は、地方自治体の固形廃棄物のかなりの部分を占める。それらの材料は事実上生分解性ではなく、リサイクルが困難なものも含まれる。持続可能性に貢献し、そのようなポリマーの廃棄に関連する環境への影響を軽減する生分解性の材料を製造することはメーカーが一般的に望んでいることではあるが、極めて大量の汚染ポリマーが依然として製造され、廃棄されている。
【0003】
長年にわたり、研究者たちは、機能的であるだけでなく、すなわち、ある特定の所望の特性を有するだけでなく、環境への影響が限定的である、又は軽減された安全なポリマー組成物を製造することを試みてきた。それらの試みは、例えば、以下の文献[1]~[24]のいずれかに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
[1]国際特許公開第07/010553号
[2]国際特許公開第13/029018号
[3]日本国特開2009091011号
[4]国際特許公開第17/214187号
[5]国際特許公開第13/044266号
[6]日本国特許第4265200号
[7]国際特許公開第04/037919号
[8]国際特許公開第16/083667号
[9]国際特許公開第14/003369号
[10]国際特許公開第11/098122号
[11]国際特許公開第06/117801号
[12]国際特許公開第06/082471号
[13]国際特許公開第02/053640号
[14]国際特許公開第02/053610号
[15]国際特許公開第07/049952号
[16]国際特許公開第15/142564号
[17]国際特許公開第03/082970号
[18]国際特許公開第91/02023号
[19]国際特許公開第15/145457号
[20]国際特許公開第17/112878号
[21]国際特許公開第95/20013号
[22]国際特許公開第04/074367号
[23]国際特許公開第07/015261号
[24]米国特許第7,993,738号
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示の技術の発明者は、プラスチックなどの長期劣化するポリマーを、劣化を予め調整した新しい材料に置き換えるために、原料の特性を改変する新規の方法を開発した。本発明の複合材料は、材料の選択に基づいて構成された様々な最終製品を提供し、それらの材料を、本発明に従って組み合わせたとき、予め選択された独自の機械的特性をもつ最終複合材料がもたらされる。所定の寿命をもつ複合材料又は製品を調整できること、すなわち、複合材料又は製品がどのくらいの速く劣化するかを製造時に判断できることが、本明細書に開示の技術の本質的な特徴である。材料組成、材料の量、加工条件などを含む適切な一連の製造パラメーターを選択することによって、所定の寿命を有する製品を調整することができる。そのような製品は、例えば、水と接触すると分解することになるか、又は予め設計された期間が経過した後に自然に劣化し、毒性の低い分解物を残すことになり、時には天然に存在する微生物によって容易に取り込まれうる。
【0006】
概して、本発明は、ポリマー材料及び非ポリマー材料の集合体を含む複合材料(すなわち原料又は製品)を、その複合材料に様々な特性を付与する組み合わせ又は量で提供する。PVOH、架橋部分及びバイオプラスチックのいずれかの量を調整することによって、特性をさらに目的にあうように調整することができる。そのような特性には、OTR及び/又はガス透過率、水溶性(又は水劣化)、熱安定性、ヒートシール、並びに引張強さ、ヤング率、最大伸び、柔軟性、剛性、収縮性又は伸縮性などの機械的特性が含まれる。
【0007】
本明細書に開示のように、本発明による組成物は、固体複合材料を提供するために化学的な処理を受けるのに適した形態(組成及び量)である、開示されている成分の集合体である。複合材料は、由来する組成物の成分に基づいており、それら成分を含有する一方で、複合材料中では成分の一部が反応形態又は架橋形態であってもよい。本発明の複合材料は、原料として、マスターバッチとして、部分的に加工された形態で、又は最終製品の形態で提供されうる。複合形態の非限定的な例としては、マスターバッチ、粒状原料、粉末原料、繊維、任意の厚さのシート、ポリマーブロック及び任意の最終製品形態が挙げられる。
【0008】
したがって、本発明は、その目的の第1において、組成物であって、
A-ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、
B-少なくとも1つの架橋化合物(例えば、本明細書のように、ポリマー、コポリマー及び非ポリマー材料から選択される)、
C-少なくとも1つの追加のバイオプラスチック、並びに
D-任意選択で少なくとも1つの添加剤
を含む組成物を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、
A-30~99重量%の範囲の量のポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、
B-0.1~20重量%の範囲の量で存在する少なくとも1つの架橋化合物、
C-0.1~50重量%の範囲の量の少なくとも1つの追加のバイオプラスチック、及び
D-任意選択で、0.1~20重量%の範囲の量の少なくとも1つの添加剤
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)は、親水性の高い水溶性ポリマーである。ヒドロキシル化の度合いは、その物理的、化学的及び機械的特性を決定し、残留アセテート基(acetate groups)の数が少ないほど、その水溶性が低くなり、そのガラス転移温度が高くなる。さらに、ヒドロキシル化の度合いは、可塑剤として作用する水分の最大吸湿量に影響し、したがってポリマーの機械的及び物理的特性に影響を与える。水の取り込みの増加に伴って、引張強さ、弾性率及び硬度は低下し、一方で耐衝撃性及び破断伸びは大きく増加する。PVOHのいずれの形態も本明細書に開示の発明に包含される。
【0011】
PVOHから作られたフィルムは、良好な熱シール性、酸素や二酸化炭素などのガスに対する優れたバリア性を有し、生体適合性、生分解性及び無毒性である。しかし、そのフィルムは親水性が高く、水に由来する分解を非常に受けやすく、そのため実質的に使用可能ではない。PVOHに所望の機械的特性を付与し、一方で水への曝露した際の分解の速度を制御するために、本発明の組成物は、PVOHの特性を変え、組成物又はそれから作られた複合材料に1つ又は複数の所望の特性を付与する1つ又は複数の添加剤又は材料を特定の量又は特定の材料比率でさらに含有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの架橋化合物は、PVOHに結合又は架橋できる化合物である。示されているように、架橋化合物は、ポリマー、コポリマー及び非ポリマー材料から選択され、それらの材料はそれぞれ、PVOH主鎖又はその上に存在する任意の機能性に結合できる官能基を有している。
【0013】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの架橋化合物は、PVOHに架橋又は結合できるポリマー又はオリゴマーである。典型的には、PVOHへの架橋又は結合は、本来化学的なもの、すなわち共有結合の形成を通したものである。他の例では、その結合は物理的なもの、すなわちポリマーの鎖が絡み合ったものであることもある。結合の種類にかかわらず、架橋分子は、所望の物理的機械的特性をもたらす結合を可能にするように選択される。
【0014】
架橋化合物は、PVOHと結合できる官能基を有するものである。そのような官能基は、ポリマーの元々ある官能基であってもよく、架橋能をもたせるようにポリマーとグラフト化又は結合又は付加される官能基であってもよい。いくつかの実施形態では、官能基は、アルコール、エポキシド、無水物、カルボン酸、アミン、アミド、グリシジル官能基、アルデヒド官能基、エステルなどから選択される。
【0015】
ポリマーは、アイオノマー、すなわちイオン性基を形成できる官能基を有するポリマーのなかから選択することができる。いくつかの実施形態では、アイオノマーは、任意選択でポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)などから選択されるポリ酸である。
【0016】
いくつかの実施形態では、架橋化合物は、無水マレイン酸などの無水物でグラフト化されたポリマーである。いくつかの実施形態では、無水マレイン酸がグラフト化されたポリマーは、ポリエチレン(PE)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)(PBAT)などから選択される。いくつかの実施形態では、架橋化合物はポリエチレン-グラフト-無水マレイン酸である。
【0017】
いくつかの実施形態では、架橋化合物はカルボン酸官能基を有するポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)(PE-co-AA)、ポリ(エチレン-co-メタクリル酸)(PE-co-MAA)、ポリ(ラクチド-ブロック-アクリル酸)(PLA-ブロック-AA)、カルボキシル基をもつPVOH、カルボキシメチルセルロ-ス(CMC)などから選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、ポリマーはポリ(エチレン-co-アクリル酸)である。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリマーはグリシジル官能基を有するポリマーである。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの架橋化合物はコポリマーである。
【0021】
いくつかの実施形態では、架橋化合物は、ポリマーでも、オリゴマーでも、コポリマーでもない低分子の架橋化合物である。化合物は典型的に、アルデヒド化合物、例えば1つ又は複数のアルデヒド官能基を有する化合物、カルボン酸化合物、例えば1つ又は複数のカルボン酸官能基を有する化合物などになかから選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、アルデヒド化合物は、モノアルデヒド及びジアルデヒドのなかから選択することができる。いくつかの実施形態では、アルデヒドは、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、フタルアルデヒドなどから選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、カルボン酸化合物は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び高次のホモログのなかから選択される。代替として、これらのカルボン酸は、形成可能なカルボキシレート基又は塩基性基の数に基づいて選択することができる。したがって、同等の方法で、これらの化合物は、一塩基酸、二塩基酸、三塩基酸、及びその高次のホモログのなかから選択することができる。いくつかの実施形態では、カルボン酸化合物は、クエン酸、ホウ酸、フミン酸、フタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、スルホ-コハク酸、イソフタル酸、アコニット酸などから選択される。
【0024】
本発明に従って使用される追加のバイオプラスチック(又は単に「バイオプラスチック」)は、組成物に使用される他のポリマー成分と異なるポリマーであり、それらのポリマーはすべて、実質的にバイオプラスチックである。追加のバイオプラスチックは、生体細胞や、植物、他の天然資源などの天然資源から生成又は誘導された天然ポリマーで表されうる。そのようなポリマーは、完全に天然のものでも、部分的に合成されたもの、すなわち、天然に由来し、化学的に修飾されて天然ポリマーを構造的に改変したものでもよい。また、本発明に従って使用されるバイオプラスチックは、部分的又は完全に石油化学資源に由来する生分解性又は堆肥化可能ポリマーでも表されうる。
【0025】
いくつかの実施形態では、追加のバイオプラスチックは、ポリペプチド及び多糖類から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態では、追加のバイオプラスチックは、脂肪族又は芳香族ポリエステル、コポリエステル又はポリエステルアミドから選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、追加のバイオプラスチックは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(乳酸)(PLA)、セルロース及びセルロース誘導体、デンプン、熱可塑性デンプン(TPS)、キトサン、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)などのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)から選択される。
【0028】
セルロース誘導体は、その結晶性誘導体又はそのような材料のその他の非晶質形態である。非限定的な例としては、ナノ結晶セルロース(NCC)、ミクロフィブリルセルロース、バクテリアセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロ-ス(HEC)及びカルボキシメチルセルロ-ス(CMC)が挙げられる。
【0029】
いくつかの実施形態では、追加のバイオプラスチックはPEOである。
【0030】
いくつかの実施形態では、追加のバイオプラスチックはPCLである。
【0031】
いくつかの実施形態では、追加のバイオプラスチックはPEGである。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物はPEOとPCLの両方を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、組成物は、PVOH、PAA、PEO及び任意選択でPCL含む。
【0034】
本発明の組成物に使用される少なくとも1つの添加剤は、無機添加剤、フィラー又は強化剤のなかから選択することができ、加工助剤、スリップ剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、発泡剤、核剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤などの様々な特性を向上させる低分子量添加剤(分子量が1000Da未満)から選択することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、添加剤は吸湿剤である。そのような薬剤は、CaO、CaCl2、LiCl、NaCl、CaI2、MgCl2、TiO2、CaCO3、アルミナシリケートフィラー、SiO2などから選択することができる。いくつかの実施形態では、添加剤はCaOである。
【0036】
いくつかの実施形態では、添加剤は金属元素又は非金属元素を含む無機塩である。いくつかの実施形態では、無機塩は、アルカリ金属及びアルカリ金属(alkaline metals)から選択される金属の無機塩である。いくつかの実施形態では、無機塩は遷移金属の塩である。無機塩の非限定的な例としては、Li、K、Ca、Na、Mg、Mn、Znなどから選択される金属のハロゲン化物塩が挙げられる。典型的には、無機塩はハロゲン化物塩である(ハロゲン化物原子が金属カチオンのアニオンである)。いくつかの実施形態では、無機塩は、LiCl、NaCl、CaCl2、CaI2及びMgCl2から選択される。いくつかの実施形態では、無機塩はCaCl2である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明に従って使用される組成物は、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)及びポリ(アクリル酸)(PAA)を含む。組成物は、主に無機塩、セルロース由来物質及びキトサンから選択される1つ又は複数の追加成分を含むように処理することができる。
【0038】
本発明の固体複合材料の特性を改変するのに利用される無機塩は、金属元素又は非金属元素の任意の塩形態であることができる。いくつかの実施形態では、無機塩は、アルカリ金属及びアルカリ金属(alkaline metals)から選択される金属の無機塩である。いくつかの実施形態では、無機塩は遷移金属の塩である。無機塩の非限定的な例としては、Li、K、Ca、Na、Mg、Mn、Znなどから選択される金属のハロゲン化物塩が挙げられる。典型的には、無機塩はハロゲン化物塩である(ハロゲン化物原子が金属カチオンのアニオンである)。いくつかの実施形態では、無機塩は、LiCl、NaCl、CaCl2、CaI2及びMgCl2から選択される。いくつかの実施形態では、無機塩はCaCl2である。
【0039】
セルロース由来物質は、セルロース又はセルロース誘導体を含む、又はそれらをベースとする任意のそのような材料である。いくつかの実施形態では、セルロース由来物質は、セルロース、又はナノ結晶セルロース(NCC)や、ミクロフィブリルセルロース、バクテリアセルロースなどのその結晶構造体である。いくつかの実施形態では、セルロース由来の材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロ-ス(HEC)及びカルボキシメチルセルロ-ス(CMC)から選択される。
【0040】
本明細書に開示の材料群(families)から材料組成物を選択することによって、製造過程の間に、固体ポリマー材料の少なくとも1つの特性を調節することができる。調節できる特性は、水劣化、ガス透過、剛性、柔軟性及び弾性から選択される、機械的特性、化学的特性又は物理的特性である。より具体的に、調節できる特性は、水溶解又は水劣化、酸素透過率(OTR)及び/又はガス透過率、熱安定性、ヒートシール、及び引張強さ、ヤング率、最大伸び、柔軟性、剛性、収縮又は伸縮特性などの機械的特性とすることができる。
【0041】
酸素透過率(OTR)は、本発明による固体複合材料を、測定された温度で、所与の期間にわたって通過する酸素ガスの量を測定するものである。また、PVOHの量を増やすことにより、酸素以外のガスの透過を防ぐことができる。そのような他のガスは、例えば二酸化炭素でありうる。
【0042】
いくつかの実施形態では、PVOHの量、少なくとも1つの架橋化合物の量及び少なくとも1つの追加のバイオプラスチックの量は、前記組成物で形成された複合材料の水劣化を調節するように選択される。
【0043】
上記のように、複合材料を所定の寿命に調整できること、すなわち、どれだけ速く劣化するか、別の言い方をすれば、それらが劣化する前に、どれくらい長く湿気又は水濡れとの接触を維持できるかを判断できることは、本明細書に開示の技術の本質的な特徴である。本発明の複合材料は、架橋材料及び/又は利用される追加のバイオプラスチック、例えばPAA及び/又はPEO又はセルロース由来の材料の量を制御することによってヒドロ分解に対する感受性を高く又は低くすることができる。本明細書で使用される場合、「水劣化」とは、本発明の組成物から作られた固体複合材料が水と接触したとき、その複合材料が部分的又は完全に解離することを示唆している。場合によっては、本発明の複合材料は、ある期間は水による分解に対して安定であることができるが、その期間が過ぎると劣化し始めることになる。これを本明細書では製品寿命とする。他の製品は、ある一定期間水と接触した場合にのみ、容易に水中で分解されることになる。そのような製品は、化学的な自己破壊スイッチを有するとみなすことができ、そのスイッチは複合材料を水に曝露することで作動されうる。
【0044】
水劣化は、容易に分解でき、さらに天然の微生物によって水分解又は化学的に消化されうる部分への複合材料の解離をもたらしうる。本発明において、水に対する安定性は、当技術分野において公知である任意のそのようなアッセイに基づいて試験、検証、又は決定することができる。いくつかの実施形態では、以下の1つ又は複数を使用することができる。
1-室温の水中で撹拌しながら、分解時間若しくは完全溶解までの速度を測定すること、
2-室温より高い温度の水中で撹拌しながら、分解時間若しくは完全溶解までの速度を決定すること、又は
3-生分解性試験。
【0045】
例えば、本発明の複合材料の水劣化の速度は、常時シンク条件、すなわち水に溶かした複合材料の濃度が水の量(3桁)に比べて無視できる条件下で、加速条件及び周囲温度での撹拌下で、複合材料の溶解又は分解に要する時間として決定された。0.4~0.55重量%のPAAを含む複合材料は、~1mg/(分×cm2)の分解の速度を示した。0.6~1.4重量%のPAAを含む複合材料は、~0.2mg/(分×cm2)の水分解の速度を示した。
【0046】
いくつかの実施形態では、水劣化は、前記少なくとも1つの架橋材料の量に対する少なくとも1つの追加のバイオプラスチックの量の増加に伴って増加する。
【0047】
いくつかの実施形態では、水劣化は、前記少なくとも1つの架橋材料の量に対する前記少なくとも1つの追加のバイオプラスチックの量の減少に伴って停止又は減速又は遅延される。
【0048】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの架橋材料及び少なくとも1つの追加のバイオプラスチックは、それぞれ、約1:5の比率で存在する。いくつかの実施形態では、その比率はPAA:PEO、1:5である。
【0049】
いくつかの実施形態では、その比率は2:8である。その比率はPAA:PEO、2:8である。
【0050】
いくつかの実施形態では、PEOとPAAを合わせた量とPVOHとの比率が、それぞれ、2:98である。その他の実施形態では、PEOとPAAの合計と、PCLと、PVOHとの比率が、PEO/PAA:PCL:PVOH、2:5:93である。
【0051】
代替として又は追加として、本発明の組成物において、少なくとも1つの架橋材料の量は0.4~0.5重量%、又は0.9~1.1重量%であることができる。
【0052】
柔軟性、剛性及び伸びの機械的特性は、PEO、PAA、セルロース及び/又は少なくとも1つの無機塩の適切な相対量を選択することによって同様に調整することができる。当技術分野において公知であるように、複合材料の柔軟性又はしなやかさは製品の剛性を測定するものである。製品に柔軟性があればあるほど、硬さが少なくなる。柔軟性とは、力が複合材料にかかった力に応答した変形に対する複合材料の耐性として測定される。コア製剤中でPAAの量が他の成分に相対して増加すると、製品は硬くなり、伸びにくくなる。
【0053】
表1は本発明による組成物の例示的なリストを示す。留意すべきことであるが(表2に示されるように)、各組成物は、それから作られた複合材料に所望の特性を付与する材料の予め定義された量を含むことができる。
【0054】
1%のPAA及び5%セルロース材料を含む例示的な複合材料は、1.5%のPAA及び1%のセルロース材料を含む複合材料と比較して低いシール温度を示した。同様に、1%のPAA及び5%のセルロース材料を含む複合材料は、中程度の範囲の分解時間(20~25分で分解、室温での攪拌下で測定)を示した1.5%のPAA及び1%のセルロース材料を含む複合材料と比較して、より速い水分解時間(10~15分で分解、室温での攪拌下で測定)を示した。
【0055】
0.1~2重量%の範囲のPAAの量を含む複合材料は、水分解を受けやすい、又は受けにくいように調整することができる。存在するPAAの量が多いほど(すなわち2重量%の限界に近い量)、観察される水分解は遅くなる。より少ない量のPAA(すなわち0.1重量%の限界に近い量)、より速い水分解を可能にする。
【0056】
同様に、1~10重量%の範囲のPEOの量を含む複合材料は、水分解を受けやすい、又は受けにくいように調整することができる。存在するPEOが多いほど(すなわち10重量%の限界に近い量)、観察される水分解は速くなる。
【0057】
【0058】
表1及び2が示すように、PAAの3相対量(three relative amounts)が増えると(表1参照)、シール温度(すなわち2つのポリマー材料を接着させるのに必要な温度)が上がり(表2参照)、水劣化が遅くなる。PEOの量が増えると、水劣化が促進される(室温での撹拌下で速い)。
【0059】
【0060】
組成物6及び組成物9は同量のPEOを含むが、組成物9は5倍多くのPAAを含む。表2に示すように、分解が速かった組成物6から形成された複合材料と比較して、組成物9から作られた複合材料は、水と接触した際にゆっくりと分解した。組成物6から作られた複合材料のシール温度は低く、一方で組成物9からなる複合材料の温度は、予想通りPAA量の増加に伴って高くなった。
【0061】
組成物6がPAAを増量することによって改変されて、組成物7などの組成物からなる複合材料を作製すると、水溶解速度が低下し、シール温度が上がる。これは、PEOの量が相対的に減少したことによる溶解速度の低下とも整合性がある。
【0062】
【0063】
1%のPAA及び5%のPCLを含む例示的な複合材料は、2%のPAA及び1%のPCLを含む複合材料と比較して低いシール温度を示し、1%のPAA及び5%のPEOを含む複合材料は、ゆっくりとした範囲の分解時間(40~50分で分解、室温での攪拌下で測定)を示した2%のPAA及び1%のPEOを含む複合材料と比較して、より速い水分解時間(10~15分で分解、室温での攪拌下で測定)を示した。
【0064】
表3が示すように、PCLの相対量の増加に伴って、シール温度(すなわち2つのポリマー材料を接着させるのに必要な温度)が低下した。組成物17、20及び21は、ヒートシール温度が中程度であり、組成物18、19及び22は、ヒートシール温度がはるかに低い。PAAの量を増やすと、水分解時間が短くなった(室温での撹拌下)。したがって、組成物14及び21は、水分解時間がはるかに長い。PEOの量は分解時間を微調整することができ、より多い量のPAAの量が使用されたとき、組成物13の溶解性は組成物11よりも速く、組成物16は溶解速度が組成物15のそれと比較して高い。
【0065】
したがって、本発明の組成物は、80~85重量%、80~90重量%、80~99重量%、85~99重量%、90~99重量%、78~85重量%、又は78~90重量%であるPVOHの量を含むことができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの架橋成分の量は、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~0.2重量%、0.1~0.3重量%、0.1~0.4重量%、0.1~0.5重量%、0.1~0.6重量%、0.1~0.7重量%、0.1~0.8重量%、0.1~0.9重量%、1~20重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、又は17~20重量%である。
【0067】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオプラスチックの量は、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~19重量%、0.1~20重量%、0.1~22重量%、0.1~25重量%、0.1~27重量%、0.1~30重量%、0.1~32重量%、0.1~35重量%、0.1~37重量%、0.1~40重量%、0.1~43重量%、0.1~45重量%、0.1~47重量%、1~5重量%、1~7重量%、1~10重量%、1~12重量%、1~15重量%、1~17重量%、1~20重量%、1~22重量%、1~25重量%、1~27重量%、1~30重量%、1~32重量%、1~35重量%、1~37重量%、1~40重量%、1~42重量%、1~45重量%、1~47重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、17~20重量%、5~20重量%、5~25重量%、5~30重量%、5~35重量%、5~40重量%、5~45重量%、又は5~50重量%である。
【0068】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの添加剤の量は、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~0.2重量%、0.1~0.3重量%、0.1~0.4重量%、0.1~0.5重量%、0.1~0.6重量%、0.1~0.7重量%、0.1~0.8重量%、0.1~0.9重量%、1~20重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、又は17~20重量%である。
【0069】
いくつかの実施形態では、PVOHは、73~96.5、68.5~89.8、77.5~96.3、67.5~91.5、72~95、71~85、81~90、68~81、75~84、60~78、91.5~99.3、87.5~98.7、94.6~82.5、87~93.3、83~98.7、78.5~94.3、79.5~93.8、68~93.5、81.5~93.7、73.5~93.3、82~98.6若しくは77.5~98.2重量%の量で存在し、少なくとも1つの架橋化合物は、0.1~1.5、1.5~2.5、1~2.5、1.5~4、1、1.5~2、1.5~2、5、0.1~0.5、0.5~2、0.1~0.5若しくは1~2重量%の量で存在し、且つ/又は少なくとも1つのバイオプラスチックは、1.5~10、5~10、1.5~5、1.5~4、5、2、10、0~1、1~5、5~10、0.1~1若しくは0.1~1重量%の量で存在し、組成物は任意選択で少なくとも1つの添加剤を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、PVOH、PAA及びPEOを、それぞれ、以下から選択される量で含む。
-73~96.5重量%、0.1~1.5重量%及び1.5~10重量%、
-68.5~89.8重量%、0.1~1.5重量%及び5~10重量%、
-77.5~96.3重量%、1.5~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-67.5~91.5重量%、1~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-72~95重量%、1.5~4重量%及び1.5~4重量%、
-71~85重量%、1重量%及び5重量%、
-81~90重量%、1.5~2重量%及び2重量%、
-68~81重量%、1.5~2重量%及び5重量%、
-75~84重量%、5重量%及び5重量%、
-60~78重量%、5重量%及び10重量%、
-91.5~99.3重量%、0.1~0.5重量%及び0~1重量%、
-87.5~98.7重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%、
-94.6~82.5重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%、
-87~93.3重量%、0.5~2重量%及び0~1重量%、
-83~98.7重量%、0.5~2重量%及び1~5重量%、
-78.5~94.3重量%、0.5~2重量%及び5~10重量%、
-79.5~93.8重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-68~93.5重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-81.5~93.7重量%、0.1~1.5重量%及び0~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-73.5~93.3重量%、0.5~1.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-82~98.6重量%、1~2重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、又は
-77.5~98.2重量%、0.5~1.5重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)。
【0071】
本明細書で例示される組成物は、本明細書に開示の材料組み合わせ、例えば、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)及びポリ(アクリル酸)(PAA)を含む組み合わせに由来する固体複合材料の少なくとも1つの特性を改変するための新規な方法を実証し、具体化する。
【0072】
本発明の複合材料は、固体であると考えられ、本明細書に開示のように、1つ又は複数の向上した特性を伴って製造することができる。この特性は、複合材料の意図する用途に基づいて付与することができる。本発明の複合材料は、様々な形状や大きさ、形態に製造することができ、ポリマー材料の分野で知られている様々な加工技術によって製造することができる。
【0073】
したがって、本発明はさらに、非特定の形態の複合材料を企図し、以下を含む。
-組み合わせて架橋しやすいポリマー材料のなかから選択される少なくとも1つの材料(これらのポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)及びグルタルアルデヒドから選択することができる)、
-水に不溶性であるように選択される少なくとも1つの追加のバイオプラスチック材料(材料はまた、生分解性であるように選択される。そのような材料を含むことによって、ポリ(ビニルアルコール)や、ポリ(アクリル酸)、グルタルアルデヒドなどの材料の量を減らすことができる。ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)又はグルタルアルデヒドの材料と、水不溶性材料から選択される生分解性の材料の組み合わせは、水に対する感度を微調整するように設計される。いくつかの実施形態では、水不溶性材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロ-ス(HEC)、カルボキシメチルセルロ-ス(CMC)及び/又はキトサンなどのセルロース由来材料のなかから選択される)、
-吸湿性材料のなかから選択される少なくとも1つの材料(そのような材料は、カルシウム塩、例えばCaCl2などのイオン性材料であることができる)、並びに
-バイオプラスチックのなかから選択される少なくとも1つの材料(非限定的な例としてはPEOが挙げられる。)
【0074】
さらに提供されるのは、いくつかの実施形態においてポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)及びポリ(アクリル酸)(PAA)の組み合わせ(本明細書においてコアの組み合わせ)を、任意選択で無機塩、セルロース由来物質、及びキトサンから選択される少なくとも1つの材料とともに含む固体複合材料の形態であるポリマー組成物である。
【0075】
本発明は、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)及びポリ(アクリル酸)(PAA)並びに無機塩、セルロース由来物質、キトサン及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1つの材料から構成される原料をさらに提供する。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の複合材料は、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(アクリル酸)(PAA)並びに無機塩、セルロース由来物質、キトサン及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0077】
本発明の複合材料は、実質的に一次元の物体、例えば繊維、二次元の物体、例えばシート若しくはフィルム、又は三次元の物体として、任意の形状及び形態に作ることができる。いくつかの実施形態では、複合材料は材料シート又はフィルムの形態である。その他の実施形態では、複合シート若しくはフィルムを操作する(manipulate)ことによって、又はキャスティング、吹込み、注入及び射出成形、押出などから選択される任意の1つの方法によって作ることができる複合材料は三次元の製品である。製造できる三次元の製品の非限定的な例としては、貯蔵チャンバー及び容器、ボックス、チューブ、ライナー、広告スタンド及びビルボード、展示会の設備及びパネル、自動車構成部品、バッグ、アクセサリー、衣類の部分、パイプ、ロッドなどが挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は以下を含む。
A-30~99重量%の範囲の量のポリ(ビニルアルコール)(PVOH)
いくつかの実施形態では、組成物中のPVOHの量は、30~40重量%、30~45重量%、30~50重量%、30~55重量%、30~60重量%、30~65重量%、30~70重量%、30~75重量%、30~80重量%、30~85重量%、30~90重量%、40~45重量%、40~50重量%、40~60重量%、40~70重量%、40~80重量%、40~90重量%、50~60重量%、50~70重量%、50~80重量%、50~90重量%、60~70重量%、60~80重量%、60~90重量%、70~80重量%、70~90重量%、80~85重量%、80~90重量%、80~99重量%、85~99重量%、90~99重量%、78~85重量%、又は78~90重量%である。
B-0.1~20重量%の範囲の量のポリマー、コポリマー及び非ポリマー材料から選択される少なくとも1つの架橋化合物
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中のこの成分の量は、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~0.2重量%、0.1~0.3重量%、0.1~0.4重量%、0.1~0.5重量%、0.1~0.6重量%、0.1~0.7重量%、0.1~0.8重量%、0.1~0.9重量%、1~20重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、又は17~20重量%である。
C-0.1~50重量%の範囲の量の少なくとも1つのバイオプラスチック
いくつかの実施形態では、バイオプラスチックの量は、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~19重量%、0.1~20重量%、0.1~22重量%、0.1~25重量%、0.1~27重量%、0.1~30重量%、0.1~32重量%、0.1~35重量%、0.1~37重量%、0.1~40重量%、0.1~43重量%、0.1~45重量%、0.1~47重量%、1~5重量%、1~7重量%、1~10重量%、1~12重量%、1~15重量%、1~17重量%、1~20重量%、1~22重量%、1~25重量%、1~27重量%、1~30重量%、1~32重量%、1~35重量%、1~37重量%、1~40重量%、1~42重量%、1~45重量%、1~47重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、17~20重量%、5~20重量%、5~25重量%、5~30重量%、5~35重量%、5~40重量%、5~45重量%、又は5~50重量%である。
D-0.1~20重量%の範囲の量の少なくとも1つの添加剤
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の添加剤の量は、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~0.2重量%、0.1~0.3重量%、0.1~0.4重量%、0.1~0.5重量%、0.1~0.6重量%、0.1~0.7重量%、0.1~0.8重量%、0.1~0.9重量%、1~20重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、又は17~20重量%である。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、73~96.5、68.5~89.8、77.5~96.3、67.5~91.5、72~95、71~85、81~90、68~81、75~84、60~78、91.5~99.3、87.5~98.7、94.6~82.5、87~93.3、83~98.7、78.5~94.3、79.5~93.8、68~93.5、81.5~93.7、73.5~93.3、82~98.6若しくは77.5~98.2重量%のPVOHの量、0.1~1.5、1.5~2.5、1~2.5、1.5~4、1、1.5~2、1.5~2、5、0.1~0.5、0.5~2、0.1~0.5若しくは1~2重量%の量の本明細書に開示の少なくとも1つの架橋化合物の量、及び/又は1.5~10、5~10、1.5~5、1.5~4、5、2、10、0~1、1~5、5~10、0.1~1若しくは0.1~1重量%の量の少なくとも1つのバイオプラスチックを含み、成分(存在する場合は添加剤を含む)の合計量は合わせて(又は足して)100%になる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、上記のグループ(A)、(B)及び(C)の材料、例えば、PVOH、PAA及びPEOを、それぞれ、以下のように含む。
-73~96.5重量%、0.1~1.5重量%及び1.5~10重量%、
-68.5~89.8重量%、0.1~1.5重量%及び5~10重量%、
-77.5~96.3重量%、1.5~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-67.5~91.5重量%、1~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-72~95重量%、1.5~4重量%及び1.5~4重量%、
-71~85重量%、1重量%及び5重量%、
-81~90重量%、1.5~2重量%及び2重量%、
-68~81重量%、1.5~2重量%及び5重量%、
-75~84重量%、5重量%及び5重量%、
-60~78重量%、5重量%及び10重量%、
-91.5~99.3重量%、0.1~0.5重量%及び0~1重量%、
-87.5~98.7重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%、
-94.6~82.5重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%、
-87~93.3重量%、0.5~2重量%及び0~1重量%、
-83~98.7重量%、0.5~2重量%及び1~5重量%、
-78.5~94.3重量%、0.5~2重量%及び5~10重量%、
-79.5~93.8重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-68~93.5重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-81.5~93.7重量%、0.1~1.5重量%及び0~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-73.5~93.3重量%、0.5~1.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-82~98.6重量%、1~2重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-77.5~98.2重量%、0.5~1.5重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)
【0082】
本発明はさらに、本発明による物体又は複合材料を製造するための方法を提供する。その方法は、本明細書に記載の製造ルールに従って改変され、
-PAA及びPEOを含むコア組成物を形成すること、並びに
-前記コア組成物を、PVOHを含む組成物及び本明細書に記載の追加材料のいずれかで処理することを、
すべての成分を単一の均質な組成物にコンパウンディングし、前記組成物を加工して1D、2D又は3D物体を得ることができる条件下で含む。
【0083】
本発明はさらに、
-例えば、PVOH、PEO及びPAAを含むコア組成物を形成すること、
-前記コア組成物を、上記のように例えば無機塩、セルロース由来物質、キトサン及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1つの追加材料で処理することを、
すべての成分を単一の均質な組成物にコンパウンディングし、前記組成物を加工して1D、2D又は3D物体を得ることができる条件下で
含む方法を提供する。
【0084】
本明細書で前述のように、例えば、水分解速度を調節するために、0.1~2重量%の範囲のPAAの量を含む複合材料は、水分解を受けやすい、又は受けにくいように調整することができる。存在するPAAの量が多いほど(すなわち2重量%の限界に近い量)、観察される水分解は遅くなる。より少ない量のPAA(すなわち0.1重量%の限界に近い量)、より速い水分解を可能にする。同様に、1~10重量%の範囲のPEOの量を含む複合材料は、水分解を受けやすい、又は受けにくいように調整することができる。存在するPEOが多いほど(すなわち10重量%の限界に近い量)、観察される水分解は速くなる。より少ない量のPEO(すなわち1.5重量%の限界に近い量)は、PAA濃度一定で、より遅い水分解を可能にする。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、PVOHを含む製剤を用意するステップを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、PVOHを含む製剤は、予め作られたPEOを含む製剤に加えられる、又はそれと合わせられ、いくつかの実施形態では、合わせられた製剤は混合されて均質な製剤を得ることができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、PVOH-PEO製剤は、PAAとPVOHの架橋を可能にする条件下で、予め作られたPAAからなる製剤に加えられる、又はそれと混ぜ合わせられる。いくつかの実施形態では、架橋は、室温(RT、23~30℃)~230℃の温度(又は120~150℃若しくは150~230℃の温度)で少なくとも1つの酸を加えることによって可能になる。いくつかの実施形態では、温度は50~150℃又150~230℃である。いくつかの実施形態では、酸は、鉱酸及び有機酸から選択することができる。いくつかの実施形態では、酸は、硫酸、HCl、硝酸などから選択される。いくつかの実施形態では、PVOH、PEO及びPAAの組み合わせは、さらに少なくとも1つの無機塩で処理される、又はそれと混ぜ合わせられる。いくつかの実施形態では、無機塩は本明細書において上記で定義の通りである。
【0088】
いくつかの実施形態では、PVOH、PEO及びPAAの組み合わせは、さらにPVOH及び本明細書において上記で詳述されているように選択される少なくとも1つのセルロースベースの材料で処理される、又はそれらと混ぜ合わせられる。
【0089】
成分を一緒に、単一の均質な組成物にコンパウンディングすることは、室温(23℃~30℃)と120~230℃又は150~230℃との間の温度での混合下で行うことができる。均質な組成物が形成されると、その後、工業的に許容される条件下で操作や加工を行い、最終的な複合製品を得ることができる。そのような方法には、キャスティング、吹込み、注入及び押出のうちの1つ又は複数が含まれる。
【0090】
本発明はさらに、本明細書において調製され、特徴付けられるような例示的な複合材料を提供し、それら複合材料は、表1及び3に列挙の組成物で形成される。したがって、本発明はさらに、本明細書において組成物1~22と命名した表1及び3に列挙の組成物を企図する。
【0091】
また、定義されるように、組成物1~22と命名された前述の組成物を配合した複合材料も提供される。
【0092】
本発明の方法において、PVOH、PEO、及びPAAを含む原料並びに任意選択で、例えば無機塩、セルロース由来物質、キトサン及びグリセロールから選択される1つ又は複数の追加材料から製造される最終の製品は、その製造のための方法を改変、微調整(fine tuning)又は微調整(tweaking)することによって、所望の特性又は一連の特性を付与されうる。本発明の方法は、コアの組み合わせに含まれる2つ以上の成分(すなわちPVOH、PEO及びPAA)の間若しくはコア組み合わせのいずれかの成分と、材料の組み合わせのうちの他のいずれかの成分(例えば無機塩、セルロース由来物質、キトサン及びグリセロール)との間の材料比率の量を変えることによって、コアの組み合わせに加えられる追加成分を変えることによって、固体製品を作るための方法の加工条件を変更又は改変することによって、又は特定の工程順序を選択することによって改変することができる。これらの改変が最終固体製品の特性に与える影響の例を、本明細書において以下に示す。
【0093】
本発明の方法は、(a)PVOH、PEO及びPAAから選択される2つ以上の材料の間、又は(b)PVOH、PEO及びPAAから選択される少なくとも1つの材料と、無機塩、セルロース由来物質、キトサン及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1つの他の材料との間の重量/重量比(w/w)を制御するステップを含み、PVOH、PEO及びPAAを含むコアの組み合わせのいずれか2つの材料の間の材料比率、例えば、PVOHとPEO、若しくはPVOHとPAA、若しくはPEOとPAAの間、又はPVOH、PEO及びPAAのいずれか1つと、無機塩、セルロース由来物質、キトサン及びホルムアルデヒドのいずれかとの間の比率を選択することによって固体複合材料の特性を改変する選択肢を提供する。相対重量の量(relative weight amounts)(単位グラム又は重量%)が固体最終製品の少なくとも1つの特性に影響を及ぼす材料の非限定的なペアとしては、PVOHとPEO、PVOHとPAA、PEOとPAA、PVOHと無機塩、PVOHとセルロース含有物質、PVOHとキトサン、PVOHとホルムアルデヒド、PEOと無機塩、PEOとセルロース由来物質、PEOとキトサン、PEOとホルムアルデヒド、PAAと無機塩、PAAとセルロース由来物質、PAAとキトサン及びPAAとホルムアルデヒドが挙げられる。
【0094】
本明細書に記載の例で示されるように、コアの組み合わせの少なくとも1つの成分に対する無機塩(カルシウム塩、例えば塩化カルシウムなど)の量を増やすことは、コアの組み合わせ及び少なくとも1つの無機塩を含む組成物から得られる固体製品の伸び能力の向上をもたらす。
【0095】
同様に、PAAに対してPVOHの量を増やすことはOTRを増加させる。PVOHに対してPAAの量を増やすことは剛性を増加させる。
【0096】
また、PEOの相対量を変えることは、水に対する製品の安定性に影響を与える。PAA又はPVOHのいずれかに対してPEOの量を増やすことにより、水への溶解性が増加し(又は耐水性が低下し、水分解性が増加し)、材料の柔軟性が高まる。同様に、セルロース由来物質(HPMCなど)の量をコア成分のいずれかに対して増やすことにより、固体最終製品の水溶性が低下する。
【0097】
本明細書で詳述した特性のいくつかを調節できることを示す本発明の実施形態を
図1に示す。
【0098】
本明細書で使用される場合、「比率」、「材料比」又は「重量/重量(w/w)比」という用語は、(組み合わせの合計重量のうちの)組み合わせのある成分の、(組み合わせの合計重量のうちの)組み合わせの別の成分の材料量に対する材料量を示唆する。例えば、PVOHとPEOの間の比率は、組み合わせにおけるPEOの量と比較したPVOHの相対的な量に関する。比率は絶対的な重量値で示される。例えば、PVOH:PEOが1:1の比率は、その組み合わせの各成分が同じ量であることを示す。1つの成分に関して述べられた比率の増加は、他の成分に対するその特定の成分の量の増加を意味する。例えば、PEOに対してPVOHの量が増えると、記載の比率は1:1よりも大きく、例えば2:1又はそれより高くなりうる。示された比率や量について「約」という用語が使われる場合、それは示された値の±10%の比率や量を意味するということである。例えば、約1:1の比率は、(0.9と1.1):(1.1と0.9)の間の比率である。
【0099】
したがって、本発明の別の態様では、予め定義された水分解速度を有する固体複合材料を製造するための方法が提供され、その方法は以下を含む。
-固体複合材料を製造する過程において、
-(a)ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)及びポリ(アクリル酸)(PAA)から選択される2つ以上の材料の間、又は
-(b)PVOH、PEO及びPAAから選択される少なくとも1つの材料と、無機塩、セルロース由来物質、キトサン及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1つの他の材料との間
の重量/重量比(重量/重量)を制御すること。
【0100】
いくつかの実施形態では、「予め定義された水分解速度」は、本発明の複合材料が水との接触により分解する速度である。その速度は、1分当たりのグラムという単位で測定される場合もあり、単純に物品が分解し始めるのにかかる時間によって測定される場合もある。本明細書で前述のように、0.1~2重量%の範囲のPAAの量を含む複合材料は、水分解を受けやすい、又は受けにくいように調整することができる。PAAが多く存在するほど(すなわち2重量%の限界に近い量)、観察される水分解はより遅くなる。より少ない量のPAA(すなわち0.1重量%の限界に近い量)は、より速い水分解を可能にする。同様に、1.5~10重量%の範囲のPEOの量を含む複合材料は、水分解を受けやすい、又は受けにくいように調整することができる。PEOが多く存在するほど(すなわち10重量%の限界に近い量)、観察される水分解はより速くなる。より少ない量のPEO(すなわち1.5重量%の限界に近い量)は、より遅い水分解を可能にする。
【0101】
したがって、いくつかの実施形態では、予め定義された水分解速度を有する固体複合材料を製造するための方法は、以下を含む。
(a)PAAの量を0.1~2重量%であるように変えること(複合材料中のPAAの量が多い(1~2重量%)と水分解が遅くなり、PAAの量が少ない(0.1~1重量%)と水分解が速くなる)、又は
(b)PEOの量を1.5~10重量%であるように変えること(複合材料中のPEOの量が多い(3~10重量%)と水分解が速くなり、PEOの量が少ない(1.5~3重量%)と水分解が遅くなる)。
【0102】
いくつかの実施形態では、PVOH中に0.4~0.55重量%のPAAを含む複合材料は、~1mg/(分×cm2)の分解の速度を示した。PVOH中に0.6~1.4重量%のPAAを含む複合材料は、~0.2mg/(分×cm2)の水分解の速度を示した。
【0103】
また、本発明による組成物で形成された固体複合材料の少なくとも1つの特性を改変するための方法も提供され、その方法は、PAAの量及びPEOの量を含む組成物を、PVOHの量及び任意選択で少なくとも1つの添加剤を含む組成物で処理することを含み、PAAの量、PEOの量及び任意選択でPVOHの量は、PAA、PEO及びPVOH、及び任意選択で少なくとも1つの添加剤の、少なくとも1つの特性を有する固体複合材料へのコンパウンディングを可能にする条件下で、少なくとも1つの特性を改変するように選択される。
【0104】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特性は水劣化である。
【0105】
いくつかの実施形態では、PAAの量及びPEOの量は、それぞれ、約1:5の比率である。
【0106】
いくつかの実施形態では、PAAの量及びPEOの量は約2:8の比率である。いくつかの実施形態では、その比率は、PAA:PEO、2:8である。
【0107】
いくつかの実施形態では、PEOの量とPAAの量の合計とPVOHの量との比率が、それぞれ、2:98である。
【0108】
いくつかの実施形態では、PEOの量とPAAの量の合計と、PCLの量と、PVOHの量との比率が、PEO/PAA:PCL:PVOH、2:5:93である。
【0109】
いくつかの実施形態では、PAAの量は0.4~0.5重量%である。
【0110】
いくつかの実施形態では、PAAの量は0.9~1.1重量%である。
【0111】
いくつかの実施形態では、PVOHの量は、80~85重量%、80~90重量%、80~99重量%、85~99重量%、90~99重量%、78~85重量%、又は78~90重量%である。
【0112】
いくつかの実施形態では、PAAの量は、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~0.2重量%、0.1~0.3重量%、0.1~0.4重量%、0.1~0.5重量%、0.1~0.6重量%、0.1~0.7重量%、0.1~0.8重量%、0.1~0.9重量%、1~20重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、又は17~20重量%である。
【0113】
いくつかの実施形態では、PEOの量は、0.1~1重量%、0.1~2重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、0.1~7重量%、0.1~10重量%、0.1~12重量%、0.1~15重量%、0.1~17重量%、0.1~19重量%、0.1~20重量%、0.1~22重量%、0.1~25重量%、0.1~27重量%、0.1~30重量%、0.1~32重量%、0.1~35重量%、0.1~37重量%、0.1~40重量%、0.1~43重量%、0.1~45重量%、0.1~47重量%、1~5重量%、1~7重量%、1~10重量%、1~12重量%、1~15重量%、1~17重量%、1~20重量%、1~22重量%、1~25重量%、1~27重量%、1~30重量%、1~32重量%、1~35重量%、1~37重量%、1~40重量%、1~42重量%、1~45重量%、1~47重量%、3~20重量%、5~20重量%、7~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、12~20重量%、15~20重量%、17~20重量%、5~20重量%、5~25重量%、5~30重量%、5~35重量%、5~40重量%、5~45重量%、又は5~50重量%である。
【0114】
いくつかの実施形態では、PVOHは、73~96.5、68.5~89.8、77.5~96.3、67.5~91.5、72~95、71~85、81~90、68~81、75~84、60~78、91.5~99.3、87.5~98.7、94.6~82.5、87~93.3、83~98.7、78.5~94.3、79.5~93.8、68~93.5、81.5~93.7、73.5~93.3、82~98.6若しくは77.5~98.2重量%の量で存在し、PAAは、0.1~1.5、1.5~2.5、1~2.5、1.5~4、1、1.5~2、1.5~2、5、0.1~0.5、0.5~2、0.1~0.5若しくは1~2重量%の量で存在し、且つ/又はPEOは、1.5~10、5~10、1.5~5、1.5~4、5、2、10、0~1、1~5、5~10、0.1~1若しくは0.1~1重量%の量で存在し、組成物は任意選択で少なくとも1つの添加剤を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、組成物は、PVOH、PAA及びPEOを、それぞれ、以下から選択される量で含む。
-73~96.5重量%、0.1~1.5重量%及び1.5~10重量%、
-68.5~89.8重量%、0.1~1.5重量%及び5~10重量%、
-77.5~96.3重量%、1.5~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-67.5~91.5重量%、1~2.5重量%及び1.5~5重量%、
-72~95重量%、1.5~4重量%及び1.5~4重量%、
-71~85重量%、1重量%及び5重量%、
-81~90重量%、1.5~2重量%及び2重量%、
-68~81重量%、1.5~2重量%及び5重量%、
-75~84重量%、5重量%及び5重量%、
-60~78重量%、5重量%及び10重量%、
-91.5~99.3重量%、0.1~0.5重量%及び0~1重量%、
-87.5~98.7重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%、
-94.6~82.5重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%、
-87~93.3重量%、0.5~2重量%及び0~1重量%、
-83~98.7重量%、0.5~2重量%及び1~5重量%、
-78.5~94.3重量%、0.5~2重量%及び5~10重量%、
-79.5~93.8重量%、0.1~0.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-68~93.5重量%、0.1~0.5重量%及び1~5重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-81.5~93.7重量%、0.1~1.5重量%及び0~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)、
-73.5~93.3重量%、0.5~1.5重量%及び5~10重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、
-82~98.6重量%、1~2重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを1~5重量%の範囲の量で含む)、又は
-77.5~98.2重量%、0.5~1.5重量%及び0.1~1重量%(さらに任意選択でPCLを5~10重量%の範囲の量で含む)
【0116】
したがって、劣化プロファイル、すなわち、水と接触して複合材料が分解するペースや速度、もしかするとさらに劣化がどのように進行するかは、本明細書に記載の要因のいずれかに依存するであろう。いくつかの実施形態では、水劣化は、PAAに対するPEOの量を増やすことによって調節されて、それにより水劣化を増加させる。いくつかの実施形態では、水劣化は、PEOに対するPAAの量を増やすことによって調節されて、それにより水劣化を減少させる。他の実施形態では、水劣化は、PAAに対するPEOの量を減らすことによって調節されて、それにより水劣化を減少させる。他の実施形態では、水劣化は、PEOに対するPAAの量を減らすことによって調節されて、それにより水劣化を増加させる。
【0117】
PAA又はPEOの量に対するPEO又はPAAの量の増加は、必ずしもPAA/PEOの量よりもPEO/PAAの量を増加させることを意味せず、その量の増加は、水劣化を増加/減少させるのに十分なはずである。量の増加/減少の程度は、特に、組成物中のPEO/PAAの初期量、PEO/PAAの量の増加/減少に伴うさらなる影響、望まれる分解プロファイル、及び他の要因に依存する。
【0118】
本発明はまた、本発明による組成物で形成された固体複合材料の水劣化プロファイルを調節するための方法を提供し、その方法は、PAAの量及びPVOHの量及び任意選択で少なくとも1つの添加剤を、有効量のPEOとともに含む組成物を処理することを含み、その有効量は、前記固体複合材料の水劣化を増加又は減少させるように選択され、その方法は、PAA、PEO及びPVOH、及び任意選択で少なくとも1つの添加剤の、水劣化プロファイルを有する固体複合材料へのコンパウンディングを可能にする条件下で実施される。
【0119】
また、PVOHを含む固体複合材料の水劣化の開始を設定するための方法も提供され、その方法は以下を含む。
-PVOH、少なくとも1つの架橋材料及び少なくとも1つの追加のバイオプラスチックを含む組成物の調製を調整する際に、組み合わせて固体複合材料の水劣化を早める、又は遅らせる少なくとも1つの架橋材料の量及び少なくとも1つの追加のバイオプラスチックの量を選択すること、並びに
-前記組成物を熱的に処理して、固体複合材料に形成すること。
【0120】
本明細書で使用される場合、「水劣化の開始を設定すること」という表現は、複合材料が分解することになる速度、又は言い換えれば、水中ですぐに分解するか、遅れて分解するか、又は水劣化しないかを予め決めることを意味する。複合材料が作られる組成物の成分を選択することによって、本明細書に開示のように、劣化の開始を簡単な実験プロトコールによって事前に予め決めることができる。本明細書に開示のように、分解の速度を決めることにより、複合材料が分解及び劣化することになる最も早い時点を決めることができる。理論又は分解メカニズムに拘束されるものではなく、複合材料の形態、例えばフィルム又は顆粒に応じて、分解のカスケードが完結し、分解の開始を決定することができる。例えば、フィルムの形態の複合材料の劣化では、初期変形の後、フィルムが破れ、砕けて粒子の状態になり、続いて溶解しうる。したがって、劣化の開始は初期変形の段階とみなすことができる。
【0121】
したがって、本発明の方法は、本発明によるポリマー複合材料を製造するように構成されている。複合材料は、約1mg/(分×cm2)、又は約0.2mg/(分×cm2)又は0.001mg/(分×cm2)~5mg/(分×cm2)以上である水劣化の速度を特徴とすることができる。複合材料には、すぐに劣化するように構成されているものもあれば、製造から数日後又は数週間後又は数ヶ月後に劣化するように構成されているものもあり、さらには劣化しないように作られているものもある。
【0122】
前述のように、本発明の方法は、複合材料を所望の形態、例えば、顆粒の形態、マスターバッチの形態、1D、2D又は3Dの物体の形態に形成するステップを含むことができる。
【0123】
また、本明細書に開示されているような本発明の複合材料を含む、又はそれから構成される物体及びその使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
本明細書に開示の主題をよりよく理解し、実際にどのように実施できるかを例示するために、単に非限定的な例として、添付の図面を参照しながら実施形態を説明する。それらの図は以下の通りである。
【
図1】
図1は、複合材料の特性を調節できることを示す本発明の実施形態の概略図である。
【
図2】
図2はPVOHの溶解に対するPAAの影響を示す。
【
図3】
図3はPVOHの溶解に対するPEOの影響を示す。
【実施例】
【0125】
実施例1
PAA及び粉砕した熱可塑性PVOHを1:99の比率で混ぜ、L/D40の二軸共回転押出機を使用して50rpm及び190~210℃で直径が3mmのダイスから押し出し、出てきたポリマー鎖を空冷システム及びペレタイザーに通した。
【0126】
実施例2
PAA、HPMC及び粉砕した熱可塑性PVOHを1:10:89比率の比率で混ぜ、L/D40の二軸共回転押出機を使用して50rpm及び190~210℃で、直径が3mmのダイスから押し出し、出てきたポリマー鎖を空冷システム及びペレタイザーに通した。
【0127】
実施例3
PEO及びPAAを8:2の比率で一緒に混ぜ、L/D40の二軸共回転押出機を使用して50rpm及び80℃で、直径が3mmのダイスから押し出し、出てきたポリマー鎖を空冷システム及びペレタイザーに通した。結果として得られたPEO/PAAペレットをPVOHと2:98の比率でさらに混ぜ、脱揮システムを備えたL/D40の二軸共回転押出機を使用して150rpm及び190~210℃で、直径が3mmのダイスから押し出し、出てきたポリマー鎖を空冷システム及びペレタイザーに通した。
【0128】
実施例4
PEO及びPAAを8:2の比率で一緒に混ぜ、L/D40の二軸共回転押出機を使用して50rpm及び80℃で、直径が3mmのダイスから押し出し、出てきたポリマー鎖を空冷システム及びペレタイザーに通した。結果として得られたPEO/PAAペレットをPCL及びPVOHと2:5:93の比率でさらに混ぜ、脱揮システムを備えたL/D40の二軸共回転押出機を使用して、150rpm及び190~210℃で、直径が3mmのダイスから押し出し、出てきたポリマー鎖を空冷システム及びペレタイザーに通した。
【0129】
図2は、PVOHの溶解に対するPAAの影響を示す。PVOH中に0%、0.5%、1%、1.5%及び2%のPAAを含む化合物を反応押出で製造した。次いで、試料を各化合物から200ミクロンにプレスし、室温で撹拌しながら溶解を調べた。初期変形(D)、フィルムの引き裂き(T)、水中での粒子への破砕(P)及び溶解(S)の時間を記録する。一般に、化合物中のPAA濃度が増加するにつれ、変形、引き裂き、粒子への破砕及び溶解が遅くなる。
【0130】
図3は、PVOHの溶解に対するPEOの影響を示す。濃度一定のPAA(0.5%)で、PVOH中に0%、1%、5%及び10%のPEOを含む化合物を反応押出で製造した。次いで、試料を各化合物から200ミクロンにプレスし、室温で撹拌しながら溶解を調べた。初期変形(D)、フィルムの引き裂き(T)、水中での粒子への破砕(P)及び溶解(S)の時間を記録する。一般に、化合物中のPEO濃度が増加するにつれ、変形、引き裂き、粒子への破砕及び溶解が促進された。
【0131】
溶解キネティクスにくわえて、化合物のさらにいくつかの物理機械的パラメーターを特徴付けた(データ未記載)。ポリマーペレットを、キャスト式押出機を用いて200℃で100μmのフィルムに加工した。キャストフィルムは、ASTM E171/71M-11(2015年に再確認)フレキシブルバリアパッケージのコンディショニングと試験の標準的な方法(Standard Practice for Conditioning and Testing Flexible Barrier Packaging)に準拠して、23±2℃及び50±5%RHで48時間コンディショニングした。テストは上記と同じ温度/湿度条件下で行った。フィルムの引張り特性は、ASTM D882-18 薄いプラスチックシートの引張り特性に関する標準試験方法(Standard Test Method for Tensile Properties of Thin Plastic Sheeting)に基づいて測定した。この目的のために、ASTM D6287-17 フィルムを切断し試験片をシート化するための標準的なプラクティス(Standard Practice for Cutting Film and Sheeting Tests Specimens)に明示されている手順Bに従って、デュアルブレードシェアカッターを使用して、幅25.4mm及び長さ250mmのストリップ試験片をフィルムから切り出した。各フィルムについて5つの試験片を試験した。試験には、ASTM D882に準拠した500Nのロードセルとライングリップを備えたLLOYD INSTRUMENTS(UK) LRX 5Kの引張試験機を使用した。グリップ間の初期距離は100mmであった。すべての試験片は、フィルムの縦方向(Machine Direction)(MD)に沿って、500mm/分のグリップ分離速度で試験した。これらの測定結果によれば、化合物中のPAAの含量を増やすことにより、引張強さ、破断応力及びヤング率ヤング率が増加し、一方で破断伸びは減少した。
【0132】
1%のPAAを含む例示的な複合材料は、0.5%のPAAを含む複合材料よりも大きい引張強さ、破断応力及びヤング率を示し、1%のPAAを含む複合材料の破断伸びは、0.5%のPAAを含む複合材料の破断伸びよりも小さかった。
【0133】
1%のPAAを含む別の例示的な複合材料は、1.5%のPAAを含む複合材料よりも小さい引張強さ、破断応力及びヤング率を示し、1%のPAAを含む複合材料の破断伸びは、1.5%のPAAを含む複合材料の破断伸びよりも大きかった。
【0134】
0.5%のPAAを含む別の例示的な複合材料は、PAAを含まない複合材料よりも大きい引張強さ、破断応力及びヤング率を示し、0.5%のPAAを含む複合材料の破断伸びは、PAAを含まない複合材料よりも小さかった。
【国際調査報告】