(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】中枢神経系への治療用化合物の嗅覚送達
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20221007BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221007BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221007BHJP
A61K 36/61 20060101ALI20221007BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/02
A61P25/00
A61K36/61
A61K9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508483
(86)(22)【出願日】2020-08-08
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020045545
(87)【国際公開番号】W WO2021030232
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519080908
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】アリベック ケン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA25
4C076AA30
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC01
4C076DD23F
4C076DD38C
4C076DD51S
4C084AA17
4C084MA13
4C084MA17
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4C084MA55
4C084MA59
4C084NA14
4C084ZA01
4C088AB57
4C088BA18
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4C088MA04
4C088MA13
4C088MA17
4C088MA43
4C088MA55
4C088MA59
4C088NA14
4C088ZA01
(57)【要約】
本発明は、神経学的状態の症状を処置するための材料および方法を提供する。より具体的には、本発明は、感染症、神経発達疾患、および/または神経変性疾患などの、神経学的状態の1つまたは複数の症状および/または併存疾患を処置するための組成物およびその使用方法を提供する。好ましい態様において、組成物は、経鼻投与を介して対象に投与される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、神経学的状態またはその原因もしくは症状を処置するための組成物:
1種または複数種の生体両親媒性分子、
抗ウイルス特性、抗菌特性、および/または抗真菌特性を有する、1種または複数種の植物抽出物および/または精油、ならびに
1種または複数種の抗酸化剤。
【請求項2】
1種または複数種の生体両親媒性分子が、ソホロ脂質バイオサーファクタントを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1種または複数種の植物抽出物および/または精油が、ユーカリ油、クローブ油、およびティーツリー油である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1種または複数種の抗酸化剤が、N-アセチル-L-システインを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
平滑剤としてグリセロールおよび/またはグリセリンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
乳化剤として塩をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
液剤または散剤として製剤化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
神経学的状態ならびに/または神経学的状態の症状および/もしくは併存疾患を処置するための方法であって、1種または複数種の生体両親媒性分子、1種または複数種の植物抽出物および/または精油、ならびに1種または複数種の抗酸化剤を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項9】
投与が鼻腔を介して行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
投与が、シリンジ、スポイト、ポンプ式経鼻スプレー、ネブライザー、アトマイザー、pMDI、および/または呼気動力式経鼻装置を用いて行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
対象が、神経発達疾患、神経変性疾患、および/または神経系感染症より選択される神経学的状態と診断される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
処置される症状が、神経学的炎症である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
組成物が、1日に約4回~約5回対象に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
1種または複数種の生体両親媒性分子が、ソホロ脂質バイオサーファクタントを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
1種または複数種の植物抽出物および/または精油が、ユーカリ油、クローブ油、およびティーツリー油を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
1種または複数種の抗酸化剤が、N-アセチル-L-システインを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、平滑剤としてグリセロールおよび/またはグリセリンをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、乳化剤として塩をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
組成物が、液剤または散剤として製剤化される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月10日に出願された米国仮特許出願第62/885,231号に対する優先権を主張し、これは全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの神経疾患の原因については依然として議論がなされている;しかしながら、現在では、脳の免疫防御は絶対的ではないこと、ならびに中枢神経系の細胞が、血液脳関門を通過できる感染、末梢で起こる炎症事象、および末梢免疫細胞の浸潤に対して感受性があることが認められている。
【0003】
異なる神経変性障害の間には、非定型的なタンパク質集合体、細胞死の誘導、免疫機能の損傷、炎症性反応、および酸化ストレスを含む多くの類似点がある。また、いくつかの急性および慢性の感染症および炎症過程が、神経変性疾患および神経発達疾患に共通する特徴であるという証拠も増えてきている。例えば、気道のウイルス性疾患および細菌性疾患などの感染症、ならびに多くの他のウイルス、細菌、および真菌病原性感染症が、これらの病態の発生において役割を果たしている可能性がある。
【0004】
神経疾患の進行において感染症がどのように役割を果たすのかに関してはまだ議論があるにもかかわらず、それらがどのように感染細胞および隣接細胞の両方に損傷を引き起こし得るかの証拠は存在する。感染は炎症過程および宿主免疫応答の活性化を引き起こし、これは防御機構として働き、次に宿主のニューロンの機能および生存能に損傷をもたらす。細菌およびウイルス病原体による神経変性損傷は、例えば、誤って折り畳まれたタンパク質凝集体の生成および沈着、酸化ストレス、オートファジー過程の欠損、ならびにニューロン死を理由として報告されている。これらの影響は、加齢、代謝性疾患、および宿主の遺伝子構造などの他の要因と複合的に作用して、不適切な神経発達および/または神経変性を引き起こし得る。
【0005】
神経学的状態の理想的な処置計画は、個体の特定の要求を満たす治療と介入を連携させる;しかしながら、血液脳関門 (BBB) を迂回して、治療用分子が中枢神経系 (CNS) に接近することを可能にする課題は、神経障害の新たな処置の開発に対する長く認識されている課題である。
【0006】
一般に、生物学的利用能とは、物質が生体の所望の体組織に到達して進入し、そこで有効となり得る速度および程度を指し得る。具体的には、薬理学に関する生物学的利用能は、治療用化合物が作用部位に到達する速度および程度の尺度である。
【0007】
物質の生物学的利用能は、生体へのその有用性において重要な役割を果たし得、種々の要因に基づいて変化し得る。例えば、多くの物質は、異物を細胞外に排出する細胞膜のタンパク質であるP-糖タンパク質1によって拒絶され得る。より正式には、それは、広い基質特異性を有するATP依存性排出ポンプである。このポンプは有害物質に対する防御機構として進化してきたと考えられているが、異物であるが望ましい物質を体内に導入しようとする場合、多くの場合に障害になり得る。それは、例えば生体異物を腸管腔に送り返す腸上皮を含む種々の器官の細胞において;物質を胆管に送り込む肝細胞において;物質を尿導管に送り込む腎臓の近位尿細管の細胞において;ならびに物質を毛細管に送り返す血液脳関門および血液精巣関門を構成する脳毛細血管内皮細胞において、広く分布し発現している。
【0008】
脳毛細血管内皮細胞は互いに強固に結合してBBBを形成し、これは脳と血液を隔て、循環する毒素および化学物質に対するCNSの曝露を防ぐ。通常の状況では、BBBは、脳の繊細な環境を保護する上で重要な役割を果たしている;しかしながら、CNSへの外因的処置の導入が所望される場合、BBBは、低分子の98%および高分子のさらにそれを上回る割合が、意図される標的に到達するのを妨げる。このような脳への接近の欠如は、CNS薬物開発の主要な障害である。有望な考えをもつ研究者たちは、治療可能性の高い無数の薬物を、BBBを介して治療濃度の薬剤を送達することができず、したがって標的部位に到達させることができないために、廃棄せざるを得なかった。
【0009】
神経障害を処置するための最近考え出された1つのアプローチは、嗅覚送達 (olfactory delivery) によるものである。成人の鼻腔は呼吸上皮で覆われており、これを介して全身的な薬物吸収を達成することができる。嗅上皮は、鼻腔の上部後方に位置している。嗅上皮の神経細胞は脳の嗅球に投射しており、これは脳と外部環境との間の直接的連絡を提供する。嗅神経細胞および/または嗅神経細胞を取り囲む神経周囲空間に沿って治療用化合物をCSF中に移行させることができれば、それらはBBBを迂回して、脳およびCNSの他の部分に直接進入することができる。
【0010】
進化による障害により、ある特定の化合物および栄養素の生物学的利用能が、神経学的状態の処置のためにCNSに到達することが妨げられている。したがって、広範な神経症状を処置し、神経学的状態と診断された患者の全体的な生活の質および能力を改善するための新たな統合された組成物および方法の継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
発明の簡単な概要
本発明は、神経学的状態、その症状、および/またはその原因を処置するための材料および方法を提供する。より具体的には、本発明は、例えば、神経学的状態、感染症、神経発達疾患、および/または神経変性疾患を処置するための組成物およびその使用方法を提供する。有利には、本発明の組成物および方法は、非毒性でありかつ費用対効果が高い。
【0012】
ある特定の具体的な態様において、本発明は、例えば、P-糖タンパク質を抑制し、ならびに/またはある特定の物質の、例えば対象の上皮細胞へのおよび/もしくは血液脳関門 (BBB) を介した透過を別の方法で減少させる他の障壁機構を調節することにより、微生物増殖副産物を用いて健康増進物質の生物学的利用能を増強するためのアプローチを提供する。
【0013】
好ましい態様において、組成物は、神経学的状態の1つまたは複数の症状を処置するために提供される。有利には、本組成物は、例えば、鼻上皮細胞を透過することにより、およびBBBを通過することにより、中枢神経系 (CNS) に対する組成物の生物学的利用能を改善する構成成分を含む。
【0014】
好ましい態様において、組成物は1種または複数種の生体両親媒性分子 (BAM) を含み、BAMは好ましくは、例えば、低分子量糖脂質(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質、セロビオース脂質、およびトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチン、およびリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、脂肪酸エステル化合物、脂肪酸エーテル化合物、ならびにリポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、および多糖-タンパク質-脂肪酸複合体などの高分子量ポリマーより選択されるバイオサーファクタントである。
【0015】
バイオサーファクタントは、微生物によって産生される界面活性物質であり、2つの液体間または液体と固体の間の表面張力(または界面張力)を低下させる。すべてのバイオサーファクタントは両親媒性である。それは、2つの部分:極性(親水性)部分および非極性(疎水性)基からなる。その両親媒性構造により、バイオサーファクタントは、疎水性の水不溶性物質の表面積を増加させ、そのような物質の水中での生物学的利用能を増加させ、かつ細菌細胞表面の特性を変化させる。さらに、バイオサーファクタントは界面に蓄積し、液体、固体、および気体の分子間の表面張力および界面張力を低下させ、結果として溶液中で凝集ミセル構造の形成をもたらす。
【0016】
バイオサーファクタントは、本組成物中で担体、アジュバント、および/または活性成分として機能するのに役立つ。それは、例えば、血漿タンパク質、P-糖タンパク質、ならびにある特定の化合物が脳および神経系の他の部分に透過するのを防ぐ他の障壁(例えば、BBB)および細胞間結合の活性を抑制するおよび/または調節するのに役立ち得る。加えて、いくつかの態様において、バイオサーファクタントは、抗ウイルス特性、抗菌特性、抗バイオフィルム特性、抗炎症特性、および免疫調節特性を有し得る。
【0017】
ある特定の態様において、バイオサーファクタントは、ソホロ脂質などの糖脂質である。1種または複数種のバイオサーファクタントは、生物学的または合成的に修飾された形態を含む、バイオサーファクタントの修飾型、誘導体、画分、アイソフォーム、異性体、またはサブタイプのいずれか1つまたは組み合わせをさらに含み得る。ある特定の態様において、1種または複数種のバイオサーファクタントは、単離および/または精製される。
【0018】
1つの態様において、1種または複数種のバイオサーファクタントは、臨界ミセル濃度 (CMC) で、または細菌感染症の処置が所望される場合には、少なくとも最小阻害濃度 (MIC) で組成物中に存在する。ある特定の態様において、組成物中のバイオサーファクタントの量は、約250μg/ml~約800μg/mlまたは約500μg/ml~約700μg/mlである。
【0019】
組成物は、1種または複数種の精油および/または植物抽出物をさらに含み得る。好ましくは、精油および/または植物抽出物は、例えばテルペンおよび/またはフェノールなどの、抗ウイルス特性、抗菌特性、抗バイオフィルム特性、抗炎症特性、および/または免疫調節特性を有する化合物を含む。具体的な態様において、組成物は、それぞれ約0.1~約5 ml/Lのユーカリ油、クローブ油、および/またはティーツリー油を含む。
【0020】
いくつかの態様において、組成物は、抗酸化剤などの1種または複数種の付加的な神経保護剤をさらに含み得る。抗酸化剤には、例えば、N-アセチル-L-システイン、フラボノイド(例えば、アントシアニン、コーヒー酸、カテキン、およびケルセチン)、ビタミンE、トコトリエノール、グルコシノレート、イソチオシアネート、ならびに/またはポリフェノールが含まれる。ある特定の態様において、組成物は、約0.05~約1グラム/LのN-アセチル-L-システインを含む。
【0021】
組成物は、例えば、担体、pH調整剤、緩衝剤、局所麻酔剤、創傷治癒を促進する作用物質、バイオフィルムの分解を助ける作用物質、出血を止めるおよび/または血塊形成を促進する作用物質、平滑剤、乳化剤、担体、ならびに他の治療的および非治療的構成成分を含む他の構成成分を有してもよい。
【0022】
1つの態様において、本発明は、組成物のBAMが、経鼻投与組成物の他の構成成分がその中に封入されたリポソームまたはナノカプセルを形成する送達系を提供する。1つの態様では、ナノカプセルにさらなる構造を提供するために、付加的な生物学的ポリマーを含めることができる。
【0023】
この送達系は、さもなければ化合物に結合し、および/または化合物を分解し、それが標的部位、例えば脳に到達するのを妨げ得る、タンパク質および他の分子などの血液中の構成成分から化合物を保護することによって、治療用化合物の生物学的利用能を増強することができる。加えて、ナノカプセル送達系は、治療用化合物の持続放出を可能にし、それによって対象における化合物の潜在的な毒性または潜在的な負の副作用を減少させながら、より長く持続する治療効果を提供する。
【0024】
本発明はさらに、神経学的状態を処置する方法であって、本発明による組成物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む方法を提供する。好ましい態様において、組成物は対象に経鼻的に投与される。嗅球は、脳脊髄液 (CSF) に密接に接続されており、したがって経鼻投与された治療用化合物の脳および神経系の他の部分への経路を提供する。
【0025】
好ましい態様において、組成物は、症状が改善するまで、対象の鼻腔に1日当たり約4~5回投与される。
【0026】
いくつかの態様において、本方法は、本発明に従って対象を処置する前に、対象を神経学的状態および/またはその症状と診断する段階を含む。神経学的状態には、例えば、脳および/または神経系を冒す感染症、神経発達疾患、ならびに神経変性疾患が含まれる。
【0027】
有利には、本発明の材料および方法は、神経学的状態に罹患しているか、または現在は症状に冒されていないが、その発生および/もしくは発症を予防することを望む個体の生活の質を改善するのに役立ち得る。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、神経学的状態を処置するための材料および方法を提供する。より具体的には、本発明は、神経学的状態、感染症、神経変性疾患、および/または神経発達疾患を処置するための組成物およびその使用方法を提供する。有利には、本発明の組成物および方法は、非毒性でありかつ費用対効果が高い。
【0029】
好ましい態様において、組成物は、神経学的状態の1つまたは複数の症状を処置するために提供される。有利には、本組成物は、例えば、鼻上皮細胞を透過することにより、および血液脳関門 (BBB) を通過することにより、中枢神経系 (CNS) に対する組成物の生物学的利用能を改善する構成成分を含む。神経学的状態の症状を処置する方法もまた提供され、この場合、組成物の治療有効量がそれを必要とする対象に鼻腔を介して投与される。
【0030】
抜粋された定義
本明細書で用いられる「対象」という用語は、1つもしくは複数の症状または1つもしくは複数の神経学的状態(例えば、神経発達疾患、神経変性疾患、および/もしくは神経系感染症)を示す、ヒトを含む哺乳動物を表す。開示された処置方法から利益を受け得る哺乳動物種には、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル、ならびにその他の動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット、モルモット、およびハムスターなどが含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、対象は、任意の年齢および/または任意の性別のヒトである。
【0031】
1つの態様において、対象は、神経発達性疾患、例えば、自閉症スペクトラム障害 (ASD)、知的発達障害 (IDD)、発達性協調運動障害、常同性運動障害、トゥレット症候群、脳性麻痺 (CP)、脆弱X症候群、ダウン症候群、ADHD、統合失調症、統合失調型障害、および/もしくは胎児アルコールスペクトラム障害など;
神経変性疾患、例えば、認知症、アルツハイマー病 (AD)、パーキンソン病 (PD)、レビー小体病、大脳皮質基底核変性症、大脳皮質基底核神経節変性症、多系統萎縮症 (MSA)、進行性核上性麻痺 (PSP)、脳炎後パーキンソニズム、ハレルフォルデン・スパッツ症候群、グアム島パーキンソン認知症複合 (PDC)、ハンチントン病 (HD)、筋萎縮性側索硬化症 (ALS)、多発性硬化症 (MS)、プリオン病、プリオンタンパク質アミロイドアンギオパチー (antipathy)、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、前頭側頭型認知症、ピック病、原発性進行性失語症、および意味性認知症、ニーマン・ピック病C型、ボクサー認知症(もしくは慢性外傷性脳症 (CTE))、バッテン病(もしくは神経セロイドリポフスチン症 (NCL))、フリードライヒ運動失調症、脊髄小脳失調症 (SCA)、脊髄性筋萎縮症 (SMA)、嗜銀顆粒病、NFTを伴う非グアム型運動ニューロン疾患、亜急性硬化性全脳炎 (SSPE)、および/もしくは筋緊張性ジストロフィーなど;ならびに/または
神経系を冒す感染症、例えば、結核、ハンセン病、神経梅毒、細菌性髄膜炎、ライム病、脳膿瘍、神経ボレリア症、ウイルス性髄膜炎、脳炎、狂犬病、水痘帯状疱疹ウイルス、麻疹、灰白髄炎 (poliomuelitis)、ポリオウイルス、後天性免疫不全症候群 (AIDS)、クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー、ヘルペスウイルス科ウイルス、およびA型インフルエンザなどの症状を示すヒトである。
【0032】
神経学的状態の処置または予防を必要とする対象の同定は、十分に当業者の知識および能力の範囲内である。一例として、当技術分野に精通した臨床医は、臨床検査、遺伝子検査、神経学的および身体的検査、ならびに/または病歴/家族歴を使用することにより、神経学的状態に罹患している患者、および神経学的状態を発症しやすい患者を容易に同定し、したがって個体が処置および/または予防を必要としているかどうかを容易に判断することができる。例えば、ニューロン細胞および/または細胞過程に存在する神経原線維変化または老人斑は、電子顕微鏡法 (EM) または当技術分野で公知の他の臨床的技法を用いて判断することができる。加えて、髄液もしくは脳液試料、または海馬組織からの組織試料、または前頭皮質組織試料を対象から採取することができ、試料中に存在するタンパク質タウのレベルを、酵素結合免疫吸着測定法 (ELISA)、ウェスタンブロット、および免疫学的アッセイなどの日常的技法を用いて判断することができる。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「感染」は、疾患を引き起こすまたは病原性のある生物の、別の生物、組織、もしくは細胞内への導入、および/またはその中での存在を指す。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「バイオフィルム」は、細菌または真菌などの微生物の複雑な凝集体であり、ここで細胞は互いにおよび/または表面に接着している。バイオフィルム中の細胞は、液体培地中で浮遊または移動することができる単一細胞である、同じ生物の浮遊細胞とは生理学的に異なる。
【0035】
本明細書で用いられる場合、状況または発生の「予防すること」または「予防」は、その開始または進行を遅らせる、阻害する、抑制する、未然に防ぐ、および/または最小限にすることを意味する。予防には、無期限の、絶対的な、または完全な予防が含まれ得るが、それを必要とせず、状況または発生が後の時点でなお生じる可能性があることを意味する。予防には、そのような状況もしくは発生の開始の重症度もしくは強度を低下させること、および/またはより重篤なもしくは強い状況もしくは発生へのその進行を阻害することが含まれ得る。
【0036】
本明細書で用いられる場合、疾患、状態、または障害の症状の「処置すること」または「処置」は、症状を根絶する、改善する、軽減する、回復させる、または逆転させることを意味する。処置には症状の完全な治癒が含まれ得るが、それを必要とせず、処置には部分的な根絶、改善、軽減、回復、または逆転が含まれ得ることを意味する。
【0037】
本明細書で用いられる場合、微生物との関連における「制御」は、微生物を死滅させるおよび/または根絶すること、あるいは別の方法で、特定の部位における微生物の集団数を減少させる、および/またはその病原性もしくはさらなる増殖を阻害することを指す。1つの態様において、微生物および/またはバイオフィルムが感染症を引き起こした場合、微生物および/またはバイオフィルムを制御することは、処置の一形態となり得る。
【0038】
「有効量」および「有効用量」という用語は、本開示において、ある部位に投与された場合に、その部位において所望の効果をもたらし得る化合物または組成物の量を指すために用いられる。化合物または組成物の実際の量は、症状の重症度、対象のサイズおよび健康状態、ならびに化合物または組成物の投与経路を含むがこれらに限定されない多くの要因によって異なる。
【0039】
本明細書で用いられる植物の「抽出物」は、植物部分を溶媒に曝露し、溶媒を除去することにより、または沈殿、水蒸気蒸留、遠心分離、ろ過、カラムクロマトグラフィー、界面活性剤溶解、および低温圧縮(もしくは圧搾)を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の様々な化学的、免疫学的、生化学的、もしくは物理学的手順を用いることにより生じる材料を指す。植物抽出物には、例えば精油が含まれ得る。植物材料には、根、茎、葉、花、またはそれらの一部が含まれ得る。
【0040】
核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、低分子などの有機化合物、微生物細胞/株、または宿主細胞などの生物学的材料または天然材料に関連して用いられる場合の「単離された」または「精製された」という用語は、材料が、それが天然で会合している、細胞材料などの他の化合物を実質的に含まないことを意味する。すなわち、材料は、これらの他の化合物を伴わずに天然に存在せず、および/または天然の材料において見出されるものと比較して異なるもしくは特有の特徴を有する。
【0041】
ある特定の態様において、精製された化合物は、少なくとも60重量%の関心対象の化合物である。好ましくは、調製物は、重量で少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも99%または100% (w/w) の所望の化合物である。純度は、任意の適切な標準的方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 分析によって測定される。
【0042】
「含むこと (comprising)」という移行語は、「含むこと (including)」または「含有すること」と同義であって、包括的または非限定的であり、付加的な列挙されていない要素または方法段階を排除しない。対照的に、「~からなる」という移行句は、特許請求の範囲において指定されていないいかなる要素、段階、または成分も排除する。「~から本質的になる」という移行句は、特許請求の範囲の範囲を、指定された材料または段階、「および特許請求される発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しないもの」に限定する。「含むこと」という用語の使用は、列挙された構成成分から「なる」または「本質的になる」他の態様を企図する。
【0043】
具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられる場合、「または」という用語は包括的であると理解される。具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられる場合、「1つの」、「および」、および「その」という用語は、単数または複数であると理解される。
【0044】
具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容値の範囲内、例えば平均の2標準偏差内にあると理解される。約は、記載値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内にあると理解され得る。
【0045】
本明細書における変数の任意の定義における化学基の一覧の列挙は、任意の単一基または列挙された基の組み合わせとしての、その変数の定義を含む。本明細書における変数または局面についての態様の列挙は、任意の単一の態様としての、または任意の他の態様もしくはその一部と組み合わせた、その態様を含む。本明細書において引用される参考文献はすべて、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0046】
経鼻投与組成物
好ましい態様において、組成物は、1つまたは複数の神経学的状態、および/またはその原因もしくは症状を処置するために提供される。有利には、本組成物は、例えば、鼻上皮細胞を透過することにより、および血液脳関門 (BBB) を通過することにより、中枢神経系 (CNS) に対する組成物の生物学的利用能を改善する構成成分を含む。
【0047】
好ましい態様において、組成物は1種または複数種の生体両親媒性分子 (BAM) を含み、BAMは、例えば、低分子量糖脂質(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質、セロビオース脂質、およびトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチン、およびリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、脂肪酸エステル化合物、脂肪酸エーテル化合物、ならびにリポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、および多糖-タンパク質-脂肪酸複合体などの高分子量ポリマーより選択されるバイオサーファクタントである。
【0048】
1種または複数種のバイオサーファクタントは、生物学的または合成的に修飾された形態を含む、バイオサーファクタントの修飾型、誘導体、画分、アイソフォーム、異性体、またはサブタイプのいずれか1つまたは組み合わせをさらに含み得る。
【0049】
バイオサーファクタントは、それぞれの表面および界面において個々の分子間の表面張力および界面張力を低下させる界面活性化合物である。いくつかある能力の中でも特に、バイオサーファクタントは、ウイルス感染に対する付加的な免疫補助を提供し、かつ他の活性構成成分の生物学的利用能を増加させる。
【0050】
バイオサーファクタントは生分解性であり、再生可能な基質上で選択された生物を用いて生産することができる。微生物バイオサーファクタントは、例えば、シュードモナス属菌種(緑膿菌 (P. aeruginosa)、P. プチダ (P. putida)、P. フルオレッセンス (P. florescens)、P. フラギ (P. fragi)、P. シリンゲ (P. syringae));フラボバクテリウム属菌種;バチルス属菌種(枯草菌 (B. subtilis)、B. プミルス (B. pumillus)、B. リケニフォルミス (B. licheniformis)、B. アミロリケファシエンス (B. amyloliquefaciens)、B. セレウス (B. cereus));ウィッカーハモマイセス属菌種(例えば、W. アノマルス (W. anomalus))、カンジダ属菌種(例えば、C. アルビカンス (C. albican)、C. ルゴサ (C. rugose)、C. トロピカリス (C. tropicalis)、C. リポリティカ (C. lipolytica)、C. トルロプシス (C. torulopsis));ロドコッカス属菌種;アルスロバクター属菌種;カンピロバクター属菌種;コルニバクテリウム属菌種;ピキア属菌種(例えば、P. アノマラ (P. anomala)、P. ギリエルモンジイ (P. guilliermondii)、P. オクシデンタリス (P. occidentalis));スターメレラ属菌種(例えば、S. ボンビコラ (S. bombicola));などの種々の微生物によって産生される。
【0051】
すべてのバイオサーファクタントは両親媒性である。それは、2つの部分:極性(親水性)部分および非極性(疎水性)基からなる。脂肪酸の炭化水素鎖はバイオサーファクタント分子の共通の親油性部分として働き、親水性部分は、中性脂質のエステルまたはアルコール基によって、脂肪酸またはアミノ酸(もしくはペプチド)、フラボ脂質の場合には有機酸のカルボン酸基によって、あるいは糖脂質の場合には炭水化物によって形成される。
【0052】
その両親媒性構造により、バイオサーファクタントは、疎水性の水不溶性物質の表面積を増加させ、そのような物質の水中での生物学的利用能を増加させ、かつ細菌細胞表面の特性を変化させる。バイオサーファクタントは界面に蓄積し、結果として界面張力を低下させ、溶液中で凝集ミセル構造の形成をもたらす。バイオサーファクタントの両親媒性構造により、自己会合および生体膜との相互作用が可能になる。バイオサーファクタントが細孔を形成し、生体膜を不安定化する能力によって、抗菌剤、抗真菌剤、および溶血剤としてのその使用が可能になる。低毒性および生分解性の特徴と組み合わせて、バイオサーファクタントは、ヒトの健康を含む種々の適用において使用するのに有利である。
【0053】
1つの態様において、本発明によるバイオサーファクタントは、糖脂質、例えば、ラムノ脂質、ラムノース-d-リン脂質、トレハロース脂質、トレハロースジミコール酸、トレハロースモノミコール酸、マンノシルエリスリトール脂質、セロビオース脂質、ウスチラジン酸、ならびに/またソホロ脂質(ラクトン型および/もしくは酸性型を含む)などである。
【0054】
1つの態様において、バイオサーファクタントは、1種または複数のリポペプチド、例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチン、ビスコシン、アンフィシン、シリンゴマイシン、および/またはリケニシンなどを含み得る。
【0055】
1つの態様において、バイオサーファクタントは、1種または複数種の他の種類のバイオサーファクタント、例えば、カルジオリピン、エムルサン、リポマンナン (lipomanan)、アラサン、および/またはリポサンなどを含み得る。
【0056】
好ましい態様において、組成物は、糖脂質バイオサーファクタントを含む。特定の態様において、糖脂質は精製SLPである。SLPは、例えば、大腸菌 (Escherichia coli)、モラクセラ属種、ラルストニア・ユートロファ (Ralstonia eutropha)、ロドコッカス・エリスロポリス (Rhodococcus erythropolis)、およびサルモネラ・コレラスイス (Salmonella choleraesuis) に対して抗菌活性を有する。加えて、SLPは、微生物のクオラムセンシングを阻害し、バイオフィルムを破壊し、および/またはその形成を阻害し得る。これは、ウイルスおよび細菌によるバイオフィルム形成によって、それらが薬物に対する耐性を生じ、その病原性を増強することが可能になるため、感染症の処置に特に有用である。
【0057】
いくつかの態様において、組成物はリポペプチドバイオサーファクタントを含む。特定の態様において、リポペプチドバイオサーファクタントはサーファクチンである。リポペプチドは、種々のプロバイオティクス細菌および非病原性細菌、例えば、納豆菌 (bacillus natto)、バチルス・コアグランス (Bacillus coagulans)、枯草菌、バチルス・アミロリケファシエンス (Bacillus amyloliquefaciens)、乳酸菌などによって産生される。
【0058】
特にサーファクチンは、最も強力なリポペプチドバイオサーファクタントの1つである。サーファクチンは、抗菌特性、抗腫瘍特性、抗ウイルス特性、および抗接着特性を有することが示されている。それは、フィブリン血栓形成を阻害し、脂質二重層膜におけるイオンチャネルの形成を誘導し、かつ環状アデノシン一リン酸 (cAMP) を阻害し得る。
【0059】
1つの態様において、BAMは、バイオサーファクタントのものに類似した物理的特性および/または挙動を有するが、バイオサーファクタントとして一般に知られていない、1種または複数種の微生物産生脂肪酸エステル化合物および/または脂肪酸エーテル化合物を含み得る。
【0060】
ある特定の態様において、脂肪酸エステル化合物は、例えば、オレイン酸脂肪酸エチルエステルおよび/またはオレイン酸脂肪酸メチルエステル (FAME) などの高エステル化オレイン酸脂肪酸を含み得る。
【0061】
1つの態様において、BAMはサポニンである。サポニンは、多くの植物中に見出され、微生物のバイオサーファクタントと同様の特徴、例えば自己組織化および生体膜との相互作用を示す界面活性剤である。サポニンには、トリテルペノイドサポニン、ステロイドサポニン、およびステロイドグリコアルカロイドを含む3つの基本カテゴリーが存在する。
【0062】
トリテルペノイドサポニンを蓄積するいくつかの周知の植物科には、数ある中でも、マメ科、ヒユ科、セリ科、ナデシコ科、モチノキ科、ウコギ科、ウリ科、メギ科、アカザ科、ヤブコウジ科、およびハマビシ科が含まれる。ダイズ、マメ、およびエンドウマメなどのマメ科植物は、トリテルペノイドサポニンの豊富な供給源である。ステロイドサポニンは、典型的には、リュウゼツラン科、ネギ科、キジカクシ科、ヤマノイモ科、ユリ科、ヒガンバナ科、パイナップル科、ヤシ科、およびゴマノハグサ科のメンバーにおいて見出され、ヤムイモ、ネギ類、アスパラガス、コロハ、ユッカ、およびチョウセンニンジンなどの作物に大量に蓄積する。ステロイドグリコアルカロイドは、一般に、トマト、ジャガイモ、ナス、およびトウガラシを含むナス科のメンバーにおいて見出される。
【0063】
多くのサポニンおよびその他のバイオサーファクタントは、P-糖タンパク質(P-gp)を阻害し得る。P-gpはATP依存性膜輸送タンパク質のメンバーであり、ATP依存的な機構で基質を細胞外に排出することが公知である。P-gpが腫瘍細胞において過剰発現されると、細胞内の薬物濃度が低下し、幅広い抗腫瘍薬の有効性が減少する。したがって、P-gpを阻害することにより、これらの化合物のいくつかの細胞生物学的利用能が増強される可能性がある。
【0064】
したがって、いくつかの態様において、サポニンなどのバイオサーファクタントは、例えば組成物中に存在する他の化合物の生物学的利用能を増強することによって、組成物の有効性に寄与する。
【0065】
バイオサーファクタントは、本組成物中で担体、アジュバント、および/または活性成分として機能するのに役立つ。それは、例えば、血漿タンパク質、P-糖タンパク質、ならびにある特定の化合物が脳およびCNSの他の部分に透過するのを防ぐ他の障壁(例えば、BBB)および細胞間結合の活性を抑制するおよび/または調節するのに役立ち得る。加えて、いくつかの態様において、バイオサーファクタントは、抗ウイルス特性、抗菌特性、抗バイオフィルム特性、抗炎症特性、および免疫調節特性を有し得る。
【0066】
1つの態様において、1種または複数種のバイオサーファクタントは、臨界ミセル濃度 (CMC) で、または細菌感染症の処置が所望される場合には、少なくとも最小阻害濃度 (MIC) で組成物中に存在する。ある特定の態様において、組成物中のバイオサーファクタントの量は、約250μg/ml~約800μg/mlまたは約500μg/ml~約700μg/mlである。
【0067】
1つの態様において、本組成物のバイオサーファクタントは、IFN-γ、IL-6、iNOS、一酸化窒素の発現増加の抑制、およびマクロファージのLPS誘導性TLR4タンパク質発現の下方制御により抗炎症性である。
【0068】
1つの態様において、本組成物のバイオサーファクタントは、サイトカインおよび他のメディエーターの産生を増加させて、より抗炎症性の高い状態を確立し;活性化CD8(+) T細胞(TNF-αおよびIFN-γを産生する)の量を下方制御してT細胞増殖を抑制し;CD4(+) CD25(+) 制御性T細胞 (Treg) を増加させ;ならびに免疫応答をTh1型からTh2型に切り替えるIL-10を増加させることによって、免疫系の機能および応答を調節し得る。
【0069】
1つの態様において、本組成物のバイオサーファクタントは、膜に細孔を形成して、細胞、組織、および器官への透過を改善し得る。例えば、1つの態様において、バイオサーファクタントは、脳毛細血管上皮細胞の密着結合を剥離するのを助け、結果として嗅球および血液脳関門を通る薬物吸収の増強を可能にし得る。
【0070】
1つの態様において、本組成物のバイオサーファクタントは、ROSを抑制して、その過剰産生によって引き起こされる損傷を減少させ得る。
【0071】
1つの態様において、本組成物のバイオサーファクタントは、外来物質を細胞外に押し出すことによって生理的障壁として機能する細胞輸送体であるP-糖タンパク質を阻害し得る。この効果は、バイオサーファクタントが血液脳関門に透過するのを助け、P-糖タンパク質媒介性薬物排出を防ぎ、ならびに任意の基質分子(例えば、治療剤)が中枢神経系に到達しおよび/またはそこで所望の効果を有することを支援し得る。
【0072】
1つの態様において、本組成物のバイオサーファクタントは、抗生物質または抗ウイルス剤として分類されることなく、顕著な抗菌特性、抗ウイルス特性、および抗真菌特性を有する。
【0073】
組成物は、例えばテルペンおよび/またはフェノールなどの、治療的な抗ウイルス特性、抗菌特性、抗バイオフィルム特性、抗炎症特性、および/または免疫調節特性を有する化合物を含む、1種または複数種の精油、植物成分、または他の植物抽出物をさらに含み得る。これらには、ホースヒール(オオグルマ (Inula helenium), L. キク科、エレキャンペーン)、バラ(ロサ・ダマスケナ (Rosa damascene) L.、バラ科)、ラベンダー(ラバンデュラ・アングスティフォリア (Lavandula angustifolia) L.、シソ科)、カモミール(マトリカリア・レクティカ (Matricaria recutica) L.、キク科)、オレンジ(ミカン科)、グレープフルーツ(グレープフルーツ (Citrus paradisi))、ユーカリ(ユーカリプタス・グロブルス (Eucalyptus globulus) L.、フトモモ科)、ゼラニウム(ヒメフウロ (Geranium robertianum) L.、フウロソウ科)、ジュニパー(セイヨウネズ (Juniperus communis) L.、ヒノキ科)、柑橘類(スイートオレンジ (Citrus sinensis) L.、ミカン科)、ティーツリー(ティーツリー (Melaceuca alternifolia))、マヌカ低木(ギョリュウバイ (Leptospermum scoparium))、ニームツリー(インドセンダン (Azadirachta indica), A. Juss)、チャノキ(チャノキ (Camellia sinensis))、ローズマリー(ローズマリー (Rosmarinus officinalis) L.、シソ科)、ユーカリ(例えば、ユーカリプタス・グロブルス)、クローブ(クローブ (Syzygium aromaticum))、レモン、オレガノ、シナモン、シトロネラ、およびタイムの油が含まれ得る。
【0074】
特定の態様において、組成物は、それぞれ約0.1~約5 ml/L、約0.2~約2 ml/L、または約0.5 ml/L~約1 ml/Lのユーカリ油、クローブ油、および/またはティーツリー油を含む。
【0075】
いくつかの態様において、経鼻投与組成物は、抗酸化剤などの1種または複数種の付加的な神経保護剤をさらに含み得る。抗酸化剤には、例えば、N-アセチル-L-システイン、フラボノイド(例えば、アントシアニン、コーヒー酸、カテキン、およびケルセチン)、ビタミンE、トコトリエノール、グルコシノレート、イソチオシアネート、ならびに/またはポリフェノールが含まれる。ある特定の態様において、組成物は、約0.05~約1グラム/Lまたは約0.1~約0.5 g/LのN-アセチル-L-システインを含む。
【0076】
組成物は、例えば、担体、pH調整剤、緩衝剤、キレート剤、局所麻酔剤、創傷治癒を促進する作用物質、バイオフィルムの分解を助ける作用物質、出血を止めるおよび/または血塊形成を促進する作用物質、担体、ならびに他の治療的および非治療的構成成分、例えば、抗ウイルス剤、殺真菌剤、化学療法剤、外用消毒薬、麻酔剤、含酸素液および/または剤、診断剤、ホメオパシー剤、ならびに市販の薬物/薬剤などを含む、0.1%~約99%(重量または容積による)の1種または複数種の付加的な構成成分を有してもよい。
【0077】
ある特定の態様において、組成物は、グリセロールまたはグリセリンなどの平滑剤を含む。ある特定の態様において、組成物は、例えば、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、二リン酸塩、三リン酸塩、ポリリン酸塩、および酒石酸塩より選択される塩などの乳化剤を含む。
【0078】
1つの態様において、組成物の構成成分は、例えば1種または複数種の担体(例えば、薬学的に許容される担体)および/または賦形剤などの任意の付加的成分を含む混合物として製剤化される。
【0079】
本明細書で用いられる「薬学的に許容される」という用語は、薬学的組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントに対して有害ではないことを意味する。
【0080】
担体および/または賦形剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、液剤、坐剤、ドロップ剤、パッチ剤、注射剤、吸入剤、およびエアロゾル剤などの、固体、半固体、液体、または気体形態の調製物中に製剤化され得る。
【0081】
本発明による担体および/または賦形剤には、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、緩衝剤(例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、または任意にTris-HCl、酢酸、もしくはリン酸緩衝液)、水中油型または油中水型乳濁液、例えばIV使用に適した有機共溶媒を含むかまたは含まない水性組成物、可溶化剤(例えば、Tween 80、Polysorbate 80)、コロイド、分散媒、媒体、充填剤、キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、アミノ酸(例えば、グリシン)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味剤、芳香剤、増粘剤、コーティング剤、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、浸透圧調節剤、吸収遅延剤、アジュバント、増量剤(例えば、ラクトース、マンニトール)などが含まれ得る。
【0082】
場合によっては、担体は、例えば、滅菌または非滅菌の水性または非水性溶液、懸濁液、および乳濁液であってよい。非水性溶媒の例には、非限定的に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および有機エステルが含まれる。水性担体には、非限定的に、水、アルコール、生理食塩水、および緩衝溶液が含まれる。許容される担体にはまた、生理学的に許容される水性媒体(例えば、生理食塩水)または特定の投与経路に適した他の公知の担体が含まれ得る。薬物およびサプリメントの分野における担体および/または賦形剤の使用は、周知である。サプリメント組成物と不適合である任意の従来の媒体または作用物質を除いて、本組成物におけるその使用が企図され得る。
【0083】
例えば、粘度調整剤、保存剤、香味剤、色素、および意図される使用に特有の他の成分などのさらなる構成成分が、当業者によって決定されるように組成物に添加され得る。当業者は、上記の説明は網羅的ではなく例示的であることを認識するであろう。実際に、特定の投与様式に適した多くの付加的な製剤化技法ならびに薬学的に許容される賦形剤および担体溶液は、当業者に周知である。
【0084】
1つの態様において、製剤のpHは、約5.0と9.0の間、約5.5と8.5の間、約6.0と8.0の間、または約6.5と7.5の間である。
【0085】
1つの態様において、本発明は、組成物のBAMが、経鼻投与組成物の他の構成成分がその中に封入されたリポソームまたはナノカプセルを形成する送達系を提供する。1つの態様では、ナノカプセルにさらなる構造を提供するために、付加的な生物学的ポリマーを含めることができる。
【0086】
この送達系は、さもなければ化合物に結合し、および/または化合物を分解し、それが標的部位、例えば脳に到達するのを妨げ得る、タンパク質および他の分子などの血液中の構成成分から化合物を保護することによって、治療用化合物の生物学的利用能を増強することができる。加えて、ナノカプセル送達系は、治療用化合物の持続放出を可能にし、それによって対象における化合物の潜在的な毒性または潜在的な負の副作用を減少させながら、より長く持続する治療効果を提供する。
【0087】
いくつかの態様において、組成物は、付加的な活性成分、化学的化合物、および/または薬学的化合物の治療有効用量をさらに含む。
【0088】
ある特定の態様において、薬学的化合物には、神経学的状態の症状および/または併存疾患を処置するために典型的に使用されるもの、例えば、レボドパ、タクリン、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチン、リルゾール、エダラボン、テトラベナジン、ハロペリドール、シメチジン、リスペリドン、クエチアピン、アマンタジン、レベチラセタム、クロナゼパム、βインターフェロン、オクレリズマブ、酢酸グラチラマー、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド、テリフルノミド、ナタリズマブ、アレムツズマブ、ならびにその他、例えば、ドーパミン作動薬、MAO阻害剤、抗コリン剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗精神病薬、ステロイド、副腎皮質ステロイド、筋弛緩剤、抗うつ剤、化学療法剤、SSRI、および抗炎症化合物などが含まれ得る。
【0089】
例えば、レスベラトロール、ショウガ、クルクミン、ターメリック、カンゾウ、チョウセンニンジン、セージ、ローズマリー、イチョウ、カモミール、ヤナギの樹皮、イラクサ (stinging nettle)、マカ、レモン、サフラン、およびカバなどの、認知的健康を促進するために使用されてきた天然由来物質もまた、含めることができる。
【0090】
1つの態様において、組成物は、例えばネブライザーまたはスプレーで噴霧できるように、エアロゾル製剤にすることができる。エアロゾルまたはスプレーの形態で投与するのに適した薬学的製剤は、例えば、液剤、懸濁剤、または乳剤である。経鼻エアロゾル投与のための製剤はまた、例えば、生理食塩水、ポリエチレングリコールもしくグリコール、DPPC、メチルセルロースを含む例示的な担体を用いて、または粉末分散剤もしくはフルオロカーボンと混合して製剤化することができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素、フルオロカーボン、および/または当技術分野で公知の他の可溶化剤もしくは分散剤などの加圧噴霧剤中に配置することができる。
【0091】
方法
本発明は、神経学的状態、および/またはその原因もしくは症状を予防および/または処置する方法であって、本発明による組成物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0092】
本明細書で用いられる場合、組成物または生成物を「投与すること」は、組成物または生成物がその標的または部位に効果をもたらし得るように、それが標的または部位に接触するように、それを対象に送達することを指す。投与は、緊急的もしくは頻発的(例えば、毎日、毎週、毎月等)であってよく、または他の作用物質と併用することができる。本組成物は、そのような経路のために製剤化されるのであれば、任意の投与経路によって投与することができる。このようにして、本発明の方法および組成物により達成可能な治療効果は、本発明の所与の適用の特定の必要性に応じて、例えば、全身的、局所的、組織特異的等であってよい。
【0093】
好ましい態様において、本組成物の組成物は、嗅覚ニューロンが位置する鼻腔の上部を介してCNSに送達される。嗅球は、脳脊髄液 (CSF) に密接に接続されており、したがって経鼻投与された治療用化合物の脳およびCNSの他の部分への経路を提供する。
【0094】
好ましい態様において、組成物は液剤または散剤として製剤化される。組成物は、例えば、針に延長チューブが接続されたシリンジを使用して、嗅覚領域に直接適用することができる。いくつかの態様において、組成物は、ネブライザー、アトマイザー、粒子定量吸入器 (pMDI)、またはスポイトを使用して適用される。いくつかの態様において、組成物は、呼気動力式経鼻装置を使用して適用される。
【0095】
好ましい態様において、組成物の1回用量は、対象の鼻孔の一方および/または対象の鼻孔の両方を通して、1日当たり約1~6回、1日当たり約2~5回、または1日当たり約4~5回投与される。
【0096】
ある特定の態様において、1回用量は、約0.01 ml~5 ml、0.05 ml~2 ml、0.07 ml~1 ml、または約0.1 ml~0.5 mlの組成物を含む。
【0097】
いくつかの態様において、組成物の投与は、数日間またはそれ以上にわたって毎日行われる。投与すべき用量の回数を決定する際に考慮すべき要因には、処置を受ける個体の年齢および対象の症状の重症度が含まれる。
【0098】
ある特定の態様において、組成物は、部位への投与後に該部位に残される。さらなる態様において、鼻腔は、例えば、活性剤を含まない無菌溶液ですすがれる。活性剤を含まない溶液の例には、活性剤を含まない普通の水、生理食塩水、および等張溶液が含まれるが、これらに限定されない。すすぎは、活性剤を含まない溶液を部位に投与し、結果として生じた溶液を、例えば吸引または洗浄によって該部位または組織から除去することによって行うことができる。ある特定の態様において、すすぎは、対象において組成物を部位に投与した時点から約1分~約10分、約2分~約5分、または約3分以内に行われる。他の態様においては、吸引が、すすぎと共にまたはすすぎなしに行われる。
【0099】
1つの態様において、本方法は、状態/症状が処置されたかどうか、および/またはどの程度処置されたかを判断するために、対象に対して追跡検査を行う段階をさらに含む。対象は、処置状況、および組成物が有効であるかどうかを判断するために、例えば毎日または1日おきに、処置の過程を通じてモニターすることができる。これには、例えば、根底にある神経学的状態の診断に使用される検査などの検査を実施すること、および健康改善の徴候について対象を観察することが含まれ得る。追跡検査により、健康の改善率が所望されるものよりも低いことが示された場合、組成物の投与量は、当業者により決定されるように調整することができる。
【0100】
本発明による方法において使用するための用量は、処置が治療的であるかまたは予防的であるか、発症、進行、重症度、頻度、持続期間、処置の対象となる病変形成の種類、所望の臨床的エンドポイント、以前の、同時の、またはその後の処置、対象の全般的健康、年齢、性別、または人種、生物学的利用能、潜在的な全身、局部、または局所の有害な副作用、対象における他の障害または疾患の存在、および当業者によって認識されるであろう他の要因(例えば、病歴または家族歴)によって異なり得る。
【0101】
対象の状態の改善が起こったならば、必要に応じて維持用量を投与することができる。その後、投与量もしくは投与頻度またはその両方を、改善された状態が保持されるレベルまで減少させることができる。症状が所望のレベルまで緩和された場合は、処置を中止すべきである。しかしながら、対象は、症状の任意の再発時に、長期的に断続的な処置を必要とする場合がある。
【0102】
いくつかの態様において、本方法は、本発明に従って対象を処置する前に、対象を神経学的状態および/またはその症状と診断する段階を含む。神経学的状態には、例えば、脳および/または神経系を冒す感染症、神経発達疾患、ならびに神経変性疾患が含まれる。
【0103】
本明細書で用いられる「症状」という用語は、疾患または状態の存在を示す、対象における異常な発生を意味する。神経学的状態の一般的な症状には、脳の炎症;発作および/またはてんかん;認知症;記憶喪失;言語障害;失見当識;気分変動;意欲喪失;反社会的行動;行動問題;不眠症;脳質 (brain matter) の減少;身体の機能および/または制御の低下;などが含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
いくつかの態様において、「症状」は、不安;注意欠陥障害;臨床的うつ病;トゥレット症候群;脆弱X症候群;強迫性障害;双極性障害;学習障害;感覚障害;発達性協調運動障害;カンジダ症を含む免疫系および/もしくは胃腸系の障害;ならびに/または嗜癖などの、神経学的状態と同時に存在する疾患または状態である「併存疾患」という句を含む。
【0105】
いくつかの態様において、対象は、例えば、頭部外傷、神経損傷、がん(例えば、脳腫瘍)、アレルギー反応、食物過敏症、神経発達疾患、神経変性疾患による、および/または神経系もしくは身体の他の部分の感染による神経学的炎症と診断される。いくつかの態様において、神経炎症は、対象における神経学的状態の原因および/または影響であり得る。
【0106】
有利には、本発明の材料および方法は、神経学的状態の症状に罹患しているか、または現在は症状に冒されていないが、その発生および/もしくは発症を予防することを望む個体の生活の質を改善するのに役立ち得る。
【実施例】
【0107】
本発明およびその多くの利点のより深い理解は、例証として提供される以下の実施例から得ることができる。以下の実施例は、本発明の方法、適用、態様、および変化形のいくつかの例証である。それらは、本発明を限定すると見なされるべきではない。本発明に関して、多数の変更および修正を行うことができる。
【0108】
実施例1‐神経学的状態の症状を処置するための経鼻投与組成物
本発明の1つの態様による経鼻スプレー組成物の製剤は、以下の構成成分を含む:
4滴/Lのユーカリ油
4滴/Lのクローブ精油
4滴/Lのティーツリー油
0.1 g/LのN-アセチル-L-システイン
700μg/mlのソホロ脂質
20 ml/Lのグリセロール(平滑化用)。
5 g/Lの塩(乳化用)
【0109】
本組成物は、症状が改善するまで、嗅覚系を介して1日に4~5回対象に投与される。
【0110】
参考文献
Djupesland, P.G., et al. (2013). 「Accessing the brain: the nose may know the way」. J. Cereb. Blood Flow Metab. 33(5): 793-94.
Djupesland, P.G., et al. (2014). 「The nasal approach to delivering treatment for brain diseases: an anatomic, physiologic, and delivery technology overview」. Therapeutic Delivery. 5(6), 709-33.
【国際調査報告】