(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ポリマーのリサイクル
(51)【国際特許分類】
C07C 67/28 20060101AFI20221007BHJP
C07C 69/82 20060101ALI20221007BHJP
C07C 67/52 20060101ALI20221007BHJP
C07C 275/00 20060101ALI20221007BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20221007BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C07C67/28
C07C69/82 B
C07C67/52
C07C275/00
C08J11/24 ZAB
C08G63/183
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508784
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 GB2020051942
(87)【国際公開番号】W WO2021028695
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522053573
【氏名又は名称】ポセイドン プラスティックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】POSEIDON PLASTICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】アトキンス マーティン
(72)【発明者】
【氏名】カリー ニコラス
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AC11
4F401BA06
4F401BB12
4F401CA14
4F401CA67
4F401EA20
4F401EA60
4H006AC91
4H006AD15
4H006BA07
4H006BA32
4H006BB14
4H006BC10
4H006BJ50
4H006BN10
4H006KA30
4H006KC30
4J029AA03
4J029AB05
4J029AC01
4J029AE02
4J029AE03
4J029BA03
4J029CB06A
4J029HA05
4J029HB07
4J029KA02
4J029KA03
4J029KG01
4J029KG02
4J029KG03
4J029LB01
(57)【要約】
ポリエチレンテレフタレート(PET)をリサイクルして、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を生成するための方法であって、(a)好ましくは2つの、直列の解重合反応器において、エチレングリコール及び触媒系の存在下でPETを解重合して、BHETを含む解重合された混合物を形成するステップ;(b)解重合された混合物から、BHETを含む沈殿物を結晶化するステップ;(c)好ましくは水であるが、メタノールでもよいプロトン性溶媒中で沈殿物を溶解して、BHETを含む溶液を形成するステップ;(d)溶液から不純物を除去して、BHETを含む精製された溶液を形成するステップ;並びに(e)精製された溶液から、BHETを含む精製された生成物を結晶化するステップを含む、方法。そのような方法のための適切な装置、及び触媒系における尿素の使用も、したがって提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)をリサイクルするための方法であって、
(a)直列の解重合反応器において、エチレングリコール及び触媒系の存在下でPETを解重合して、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む解重合された混合物を形成するステップ、
(b)解重合された混合物から、BHETを含む沈殿物を結晶化するステップ、
(c)沈殿物を、プロトン性溶媒に溶解して、BHETを含む溶液を形成するステップ、
(d)前記溶液から不純物を除去して、BHETを含む精製された溶液を形成するステップ、並びに
(e)前記精製された溶液から、BHETを含む精製された生成物を結晶化するステップを含む、前記方法。
【請求項2】
PETが、廃棄PETボトルから得てもよい廃棄PETであり、前記PETが、好ましくは粒子の形態で使用され:
前記粒子の少なくとも80重量%が、直径20mm、好ましくは15mm、より好ましくは12mmの開口を有するメッシュを通過する;
前記粒子の100重量%が、直径25mm、好ましくは20mm、より好ましくは12mmの開口を有するメッシュを通過する;及び/又は
前記粒子の最大1重量%が、直径0.1mm、好ましくは0.5mm、より好ましくは1mmの開口を有するメッシュを通過する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PETが、5超、例えば10超のb[h]値を有する、請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
PETが、直列の2つの解重合反応器において解重合される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)で使用する解重合反応器のそれぞれが、
150~230℃、好ましくは170~220℃、より好ましくは190~210℃の温度にて;
大気圧で;
20分~4時間、好ましくは1~3時間、より好ましくは1.5~2.5時間の期間;及び/又は
撹拌しながら作動する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
エチレングリコールが、重量によるPETの量の2~6倍、好ましくは3~4倍、より好ましくは3.25~3.75倍の量でステップ(a)に使用される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
触媒系が、遷移金属触媒、好ましくは亜鉛含有触媒、より好ましくは酢酸亜鉛触媒を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
触媒系が、担体、好ましくは尿素等の窒素含有担体を含み、前記触媒系が、好ましくは酢酸亜鉛及び尿素を含み、より好ましくは式[4NH
2CONH
2・ZnOAc]を有する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
触媒系が、重量でPETの量の0.001~0.5倍、好ましくは0.003~0.01倍、より好ましくは0.004~0.005倍の量でステップ(a)に使用される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)が、冷却結晶化を使用して実施する、好ましくは、
大気圧下で;
10~60分、好ましくは20~45分、より好ましくは25~35分の期間;及び/又は
撹拌下で、
解重合された混合物の温度を5~50℃、好ましくは10~40℃、より好ましくは15~35℃の温度に低下させることにより実施する、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
プロトン性溶媒が、水、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール及びn-ブタノールの1又は2以上を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
プロトン性溶媒が水である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(c)を、
40~95℃、好ましくは60~92.5℃、より好ましくは70~90℃の温度にて;
大気圧下で;
1~60分、好ましくは5~50分、より好ましくは10~40分の期間;及び/又は
撹拌下で実施する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水が、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の0.1~2.5倍、好ましくは0.15~1.25倍、より好ましくは0.2~0.5倍の量でステップ(c)に使用される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(d)が、例えば溶液を炭素(例えば活性炭)、樹脂、好ましくはイオン交換樹脂(例えばカチオン交換樹脂、例として酸性カチオン交換樹脂)、及び/又はクレイ(例えば活性白土、例としてベントナイトクレイ及びモンモリロナイトクレイ)と接触させることにより、好ましくは前記溶液を炭素及びイオン交換樹脂と接触させることにより、前記溶液を脱色するステップを含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ステップ(e)が、冷却結晶化を使用して実施する、好ましくは、
大気圧で;
10~60分、好ましくは20~45分、より好ましくは25~35分の期間;及び/又は
撹拌下で、
精製された溶液の温度を、0~55℃、好ましくは10~45℃、より好ましくは20~40℃の温度に低下させることにより実施する、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
解重合された混合物を、ステップ(a)と(b)の間で、フィルターに通して、不溶性成分を除去する、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
BHETを含む沈殿物が、ステップ(b)と(c)の間で、例えば濾過により単離され、濾液が、好ましくは、ステップ(a)における第1の解重合反応器へとリサイクルされる、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
プロトン性溶媒がメタノールであり、方法が、ステップ(e)の後で、BHETを含む精製された生成物を、例えば濾過により単離するステップを含み、好ましくは濾液を処理して、メタノール及びエチレングリコールを回収し、メタノールをステップ(c)へとリサイクルするステップ、及び/又はエチレングリコールをステップ(a)における解重合反応器へとリサイクルするステップを含む、請求項12に従属する場合を除く、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
メタノール及びエチレングリコールの回収を、単段エバポレータで実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(f)BHETを含む精製された生成物を、例えば空気で乾燥するステップ
をさらに含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
BHETを含む精製された生成物が、2までのb/[h]値を有する、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
精製された生成物が
BHETを、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%の量で含み;かつ
BHETの二量体及び三量体を、例えば少なくとも0.01重量%、好ましくは2重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、より好ましくは0.2重量%までの量で含む、
請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれかに記載の方法を使用して取得可能な、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む、精製された生成物。
【請求項25】
ポリマーを調製するための方法であって、請求項24に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む精製された生成物を使用して、重合反応を実施するステップを含み、好ましくは、請求項1~23のいずれかに記載の方法を使用して、精製された前記生成物を調製するステップを含む、前記方法。
【請求項26】
ポリエチレンテレフタレート(PET)をリサイクルするための装置であって、
(a)PETを解重合して、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む解重合された混合物を形成するのに適切な直列の解重合反応器であって、PET、エチレングリコール及び触媒系を受容するのに適合している、前記直列の解重合反応器;
(b)前記解重合された混合物から、BHETを含む沈殿物を結晶化するのに適切な、前記重合反応器の下流における結晶化ユニット;
(c)前記沈殿物を受容するためであって、前記沈殿物を、プロトン性溶媒に溶解して、BHETを含む溶液を形成するのに適切な容器;
(d)BHETを含む前記溶液を受容するためであって、かつ前記溶液から不純物を除去して、精製された溶液を形成する不純物除去ユニット;並びに
(e)前記精製された溶液から、BHETを含む精製された生成物を結晶化するのに適切な前記不純物除去ユニットの下流における、さらなる結晶化ユニットを含む、
前記装置。
【請求項27】
ポリエチレンテレフタレート(PET)リサイクルプロセスにおける触媒系での尿素の使用であって、
金属、特に、触媒系の遷移金属触媒成分を可溶化するため、及び/又は
前記触媒系の遷移金属触媒成分と共晶塩を形成するため
の前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーをリサイクルするための方法及び装置、詳細にはポリエチレンテレフタレート(PET,polyethylene terephthalate)をリサイクルして、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET,bis(2-hydroxyethyl) terephthalate)を生成するための方法に関する。本発明の方法及び装置を使用して生成されたBHETは、高品質プラスチックの調製における直接の使用に適切にする純度レベルであり得る。
【背景技術】
【0002】
PETは、その性質、とりわけ強度、成形性及び不透湿性のため、幅広い材料に使用される熱可塑性ポリマーである。通例のPETの使用は、パッケージング(例えば飲料ボトル及び食品容器)、繊維(例えば衣類及びカーペット)及び薄膜におけるものを含む。
【0003】
バージンPETは、エチレングリコール及びテレフタレート含有モノマーを使用して容易に調製され得る。それにも関わらず、その原料は、再生不可能資源、例えば原油から得られるので、PETをリサイクルする必要性の認識は高まっている。
【0004】
PET廃棄物、例えば透明プラスチック製ウォーターボトルが、単一タイプのPETのみから構成されている場合のリサイクルは、廃材フレークの溶融及び再成形と同じくらい単純であり得る。しかし、廃棄物では、多彩な異なるPET材料を含むことが通常であり、例えば、様々な異なる着色ボトルは、溶融及び再成形される場合、視覚的グレードが低い生成物を生じる。そのような材料は、カーペット繊維における使用に適切であり得るが、これらは一般的に、パッケージングにおける、例えば透明ウォーターボトルにおける使用には適切ではない。
【0005】
したがって、廃棄PETを、高い視覚的グレードを必要とする用途に使用され得る生成物にリサイクルするための方法の必要性がある。
【0006】
PETをリサイクルするためのより洗練された方法は、廃材を解重合して、通常いくつかの精製及び分離ステップ後に、ポリマーの調製における使用に関して実施可能な原料を得るステップを伴う。
【0007】
例えば、PETは、加グリコール分解剤(glycolysis agent)、例えばエチレングリコールを使用して解重合して、BHETモノマーを形成し得る。しかし、PETを解重合するための従来の方法は、80%未満の収率でBHETモノマーを生成する傾向があり、かなりの量のBHETのオリゴマー、特に二量体及び三量体がPETの残りから生成される。
【0008】
二量体及び三量体が存在すると、BHET原料から調製されたポリマーの品質が低下するので、これらの成分を除去するために解重合混合物を精製することが従来から行われている。さらなる精製は、高品質リサイクルPET、例えば、透明で無色のボトルにおける使用に適切なリサイクルPETが必要とされる場合に特に重大である。
【0009】
色空間は、ポリマーのグレードを表すために使用されることが多く、b[h]値-青(負の値)から黄色(正の値)のトーンの測定値-は、品質の重要な指標とされる。品質が優れないリサイクルPETは、典型的には望ましくない黄色色相を呈する。
【0010】
かなりの量の二量体及び三量体を含有する解重合混合物が生成されるプロセスに関連して、いくつかの難点がある。最も顕著なものの1つは、PET原料が、二量体及び三量体の形態で除去される場合、相当量がリサイクルプロセスから失われることである。さらなる解重合では、それ自体時間及びエネルギーを必要とするが、二量体及び三量体がリサイクルされない限り、典型的なPETリサイクルプロセスの効率は、したがって、非常に悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、廃棄PETを解重合リサイクルするための改善された方法の必要性がある。特に、高品質用途、例えば透明ウォーターボトルにおける使用に適切な生成物を生じる、廃棄PETを解重合リサイクルするための方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
直列の解重合反応器を使用することにより、きわめて高い比率のBHETモノマー及び相対的に少ない量の二量体及び三量体を含有する解重合された混合物が得られ、それにより、二量体及び三量体が除去される従来の精製ステップの省略が可能になることを意外にも見出した。これは、粗BHETモノマーをさらに処理するのに不適切として、以前に捨てられた溶媒が使用され得ることを意味する。
【0013】
本発明者らは、プロトン性溶媒が、粗解重合生成物を再結晶するのに高度に有効であることを見出した。特に水は、BHETの二量体及び三量体が水に不溶なので、この使用に好ましい。したがって、BHETを溶解させて、水性相を形成する一方、二量体及び三量体は、再結晶の前に、例えば濾過により水性相から分離できる固体材料として留まり、高純度モノマー生成物が生じる。
【0014】
メタノールも、生成物の損失を最小限にして、生成物を少なくとも部分的に脱色するので、好ましくは使用され得る。メタノールは、BHETを含む精製された生成物中に存在し得るように、二量体及び三量体をプロセスを通して溶解し、輸送するが、それにもかかわらず、精製された生成物が重合反応に直接使用できるほど、それらの濃度は十分に低いものとなり得る。生じたポリマーは、高品質用途に、例えば透明で無色のウォーターボトルに使用できる。
【0015】
さらに、本明細書で以下に詳述されているように、本開示に従って直列解重合反応器を使用する利点を保ちつつ、粗解重合生成物を再結晶するのに非プロトン性溶媒、また、非極性溶媒さえ使用することも可能である。
【0016】
したがって、本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)をリサイクルするための方法であって、
(a)直列の解重合反応器において、エチレングリコール及び触媒系の存在下でPETを解重合して、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む解重合された混合物を形成するステップ;
(b)解重合された混合物から、BHETを含む沈殿物を結晶化するステップ;
(c)沈殿物を、プロトン性溶媒に溶解して、BHETを含む溶液を形成するステップ;
(d)溶液から不純物を除去して、BHETを含む精製された溶液を形成するステップ;並びに
(e)精製された溶液から、BHETを含む精製された生成物を結晶化するステップを含む方法を提供する。
【0017】
本発明は、本発明の方法を使用して取得可能なBHETを含む精製された生成物をさらに提供する。
【0018】
ポリマーを調製するための方法であって、BHETを含む本発明の精製された生成物を使用して重合反応を実施するステップを含む、方法も提供される。
【0019】
PETをリサイクルするための装置であって、
(a)PETを解重合して、BHETを含む解重合された混合物を形成するのに適切な直列の解重合反応器であって、PET、エチレングリコール及び触媒系を受容するのに適合している、直列の解重合反応器;
(b)解重合された混合物から、BHETを含む沈殿物を結晶化するのに適切な、重合反応器の下流における結晶化ユニット;
(c)沈殿物を受容するための、また、沈殿物を、プロトン性溶媒に溶解して、BHETを含む溶液を形成するのに適切な容器;
(d)BHETを含む溶液を受容するための、また、溶液から不純物を除去して、精製された溶液を形成する不純物除去ユニット;並びに
(e)精製された溶液から、BHETを含む精製された生成物を結晶化するのに適切な不純物除去ユニットの下流における、さらなる結晶化ユニットを含む、装置がさらに提供される。
【0020】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)リサイクルプロセスにおける、触媒系での尿素の使用も提供するが、その目的は、金属、特に、触媒系の遷移金属触媒成分を可溶化するため、及び/又は触媒系の遷移金属触媒成分と共晶塩を形成するためである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】異なる直列の反応器を使用して実施される解重合反応の効率を示すグラフである。
【
図2】未処理の、及び様々な脱色剤で処理済みのBHET試料の写真、並びに試料を使用して調製されたPETの画像を示す図である。
【
図3】本発明の方法を実施するための装置の略図である。装置は、PETを解重合して、BHETを形成するための直列の3つの解重合ユニット(10);解重合された混合物から、BHETを含む沈殿物を結晶化するのに適切な、重合反応器の下流における結晶化ユニット(12);沈殿物を受容するための、また、沈殿物をメタノールに溶解して、BHETを含む溶液を形成するのに適切な容器(14);BHETを含む溶液を受容するための、また、溶液から不純物を除去して、精製された溶液を形成する不純物除去ユニット(16);並びに精製された溶液から、BHETを含む精製された生成物を結晶化するのに適切な、不純物除去ユニットの下流におけるさらなる結晶化ユニット(18)を含む。
【
図4】
図3で示されている装置を使用して処理し得る代表的な廃棄物の写真である。
【
図5】本発明の方法を実施するための装置の略図である。装置は、PETを解重合して、BHETを形成するための直列の2つの解重合ユニット(100);解重合された混合物から、BHETを含む沈殿物を結晶化するのに適切な重合反応器の下流における結晶化ユニット(112);沈殿物を受容するための、また、沈殿物を水に溶解して、BHETを含む溶液を形成するのに適切な容器(114);BHETを含む溶液を受容するための、また、溶液から不純物を除去して、精製された溶液を形成する不純物除去ユニット(116);並びに、精製された溶液から、BHETを含む精製された生成物を結晶化するのに適切な、不純物除去ユニットの下流におけるさらなる結晶化ユニット(118)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)をリサイクルするための方法を提供する。
【0023】
PETは、以下の構造を有する熱可塑性ポリマーである。
【0024】
【0025】
本発明の方法に使用されるPETは、典型的には廃棄PETである。廃棄PETは、パッケージング、ボトル及び繊維製品を含む幅広い供給源から得ることができる。好ましくは、PETは、廃棄ボトルから得られる。ステップ(a)に使用されるPETは、洗浄したPET、すなわち浄化プロセスを通したPETでもよい。洗浄したPETは、蒸気処理により精製した水、浄化した溶媒及び/又は浄化した洗剤で洗浄したPETであり得る。好ましくは、ステップ(a)に使用されるPETは、水で洗浄されたPETである。
【0026】
ステップ(a)に使用されるPETは、好ましくは着色PETを含有する。PETは、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも25重量%の量で着色PETを含有し得る。いくつかの実施形態では、PETは、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%の量で着色PETを含有し得る。PETは、100重量%までの量で着色PETを含有し得る。
【0027】
ステップ(a)に使用されるPETは、好ましくは5超、例えば10超のb[h]値(すなわちHunter Lab色空間でのb値)を呈するが、いくつかのPET供給物は、100又はより一層高いb[h]値を有し得る。これは、標準的技術を使用して、例えばカラーメーターで測定され得る。
【0028】
PETは、好ましくは、粒子、例えばフレークの形態でステップ(a)に使用される。好ましくは、粒子の少なくとも80重量%(すなわちd80)は、直径20mm、好ましくは15mm、より好ましくは12mmの開口を有するメッシュを通過する。より一層小さいメッシュ径も使用され得る。これらの大きさを有する粒子は、急速に解重合される。
【0029】
ある範囲の粒径は、典型的には、ステップ(a)に使用されるが、より大きい粒径は、処理に時間がかかるので、好ましくは避ける。したがって、粒子の100重量%(d100)は、好ましくは直径25mm、好ましくは20mm、より好ましくは12mmの開口を有するメッシュを通過する。より一層小さいメッシュ径も使用され得る。あまりにも小さい粒子も、PETをこの大きさに細かく砕くのに必要とされるエネルギー及びひいてはコストが不要になるので、その粉末が廃棄物採取及び分離プロセスを通じて既に利用できる場合を除き、好ましくは避ける。したがって、最大で粒子の1重量%が、直径0.1mm、好ましくは0.5mm、より好ましくは1mmの開口を有するメッシュを通過することが好ましい。
【0030】
ステップ(a)に使用されるPETは、液体、例えば残留水、又はPETを浄化するために使用された他の溶媒でコーティングされた形態で直列の反応器に移すことができると認識されよう。この液体コーティングは、本発明の目的のためにPETの一部を形成すると考えられない。
【0031】
方法のステップ(a)では、PETは、直列の解重合反応器において解重合されて、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む解重合された混合物を形成する。BHETは、以下の構造を有するモノマーである。
【0032】
【0033】
PETは、第1の解重合反応器において部分的に解重合され、さらに、直列の反応器での第1の反応器の下流において解重合される。直列の反応器を使用することにより、解重合された混合物が、高い比率のBHET、並びに低レベルの二量体及び三量体を含み得ることを見出した。二量体及び三量体は、以下の構造を有する。
【0034】
【0035】
高級オリゴマーは、一般的に、解重合された混合物に存在しない。したがって、好ましい実施形態では、解重合された混合物は、実質的に高級オリゴマーを含まない(すなわちn≧4の場合)。
【0036】
意外にも、きわめて高品質の生成物は、直列の2つの反応器のみでPETを解重合することにより生成され得る。したがって、好ましい実施形態では、PETは、直列の2つの解重合反応器で解重合される。これにより、PETの変換及びBHETに対する選択性の両方のレベルが高くなる。代替実施形態では、PETは、直列の3、あるいは4又は5以上の反応器で解重合される。
【0037】
好ましくは、解重合プロセスに使用されるエチレングリコール及び触媒系のすべては、直列の第1の反応器に添加される。しかし、いくつかの実施形態では、さらなるエチレングリコール及び/又は触媒系が、直列の解重合反応器を通過するとき、第1の反応器の下流において反応混合物に添加され得る。
【0038】
エチレングリコール及び/又は触媒系は、第1の反応器の下流において反応混合物に添加され得るが、直列の反応器を通過する場合、反応から除去される成分はないことが認識されよう。
【0039】
ステップ(a)に使用される解重合反応器のそれぞれは、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも170℃、より好ましくは少なくとも190℃の温度にて作動させることができる。ステップ(a)に使用される解重合反応器のそれぞれは、230℃まで、好ましくは220℃まで、より好ましくは210℃までの温度にて作動させることができる。したがって、ステップ(a)に使用される解重合反応器のそれぞれは、150~230℃、好ましくは170~220℃、より好ましくは190~210℃の温度にて作動させることができる。一般的に、解重合反応器は、同一の温度にて作動させるが、必ずしもそうである必要はない。
【0040】
多くの従来技術プロセスとは異なり、PETは、好ましくはステップ(a)において溶融状態で使用されず、これは、反応混合物が比較的粘性であることを意味する。この粘度により、典型的には比較的低レベルのPET変換となった。直列の解重合反応器を使用することにより、ステップ(a)を固体状態のPETで実施する場合でさえ、優れたレベルの変換が達成され得ることは意外である。
【0041】
ステップ(a)に使用される解重合反応器のそれぞれは、大気圧下で、すなわち圧力の適用又は除去なしで、作動させることができる。標準大気圧は、101,325Paと定義される。しかし、大気圧は場所によって変動するので、本明細書で使用されている大気圧は、おおよそ標準大気圧に等しい、すなわちおおよそ101,325Paと考えられる。
【0042】
ステップ(a)に使用される解重合反応器のそれぞれは、少なくとも20分、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間の期間作動させることができる。ステップ(a)に使用される解重合反応器のそれぞれは、4時間まで、好ましくは2.5時間まで、より好ましくは1.75時間までの期間作動させることができる。したがって、ステップ(a)に使用される解重合反応器のそれぞれは、20分~4時間、好ましくは1~3時間、より好ましくは1.5~2.5時間作動させることができる。解重合反応器は、すべて同一の期間作動させることができるが、必ずしもそうである必要はない。
【0043】
PETは、1時間当たり少なくとも100kg、好ましくは少なくとも500kg、より好ましくは少なくとも1,000kgの流量で直列の解重合反応器に移すことができる。PETは、1時間当たり100,000kgまで、好ましくは50,000kgまで、より好ましくは10,000kgまでの流量で直列の解重合反応器に移すことができる。したがって、PETは、1時間当たり100~100,000kg、好ましくは500~50,000kg、より好ましくは1,000~10,000kgの流量で直列の解重合反応器に移すことができる。
【0044】
ステップ(a)に使用される解重合反応器のそれぞれは、好ましくは撹拌しながら作動させる。
【0045】
直列の解重合反応器に使用される反応器の大きさは、反応器がいくつ使用されるかに応じて変動し得る。ステップ(a)に使用される反応器のそれぞれは、少なくとも5m3、好ましくは少なくとも8m3、より好ましくは少なくとも10m3の大きさを有し得る。ステップ(a)に使用される反応器のそれぞれは、50m3まで、好ましくは20m3まで、より好ましくは15m3までの大きさを有し得る。したがって、ステップ(a)に使用される反応器のそれぞれは、5~50m3、好ましくは8~20m3、より好ましくは10~15m3の大きさを有し得る。この小規模での反応器の使用は、直列の反応器を有し、PETがそれらを通して最小限の滞留時間で解重合され得ることにより可能になる。したがって、産業規模の量のPETは、比較的小さい反応器を使用して高品質生成物に解重合され得る。
【0046】
エチレングリコールは、加グリコール分解剤としてステップ(a)に使用される。エチレングリコールは、重量でPETの量の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3.25倍、より好ましくは少なくとも3.5倍の量でステップ(a)に使用され得る。エチレングリコールは、重量でPETの量の6倍まで、好ましくは5倍まで、より好ましくは4.75倍までの量でステップ(a)に使用され得る。したがって、エチレングリコールは、重量でPETの量の2~6倍、好ましくは3.25~4.75倍、より好ましくは3.5~4.75倍の量でステップ(a)に使用され得る。
【0047】
エチレングリコールの少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも95重量%は、第1の反応器に添加され得る。しかし、上述したように、エチレングリコールのすべては、最も好ましくは第1の反応器に添加される。エチレングリコールの100%未満が第1の反応器に添加される場合、残りは、第1の解重合反応器の下流における直列の解重合反応器に添加されることが認識されよう。
【0048】
触媒系は、ステップ(a)に使用されて、解重合反応を改善する。触媒系は、好ましくは、遷移金属触媒、例えば亜鉛含有触媒を含む。適切な亜鉛触媒は、酢酸亜鉛を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、触媒系は、遷移金属触媒からなる。しかし、好ましい実施形態では、触媒系は、例えば上記のように、担体中に触媒を含む。適切な担体は、窒素含有担体、例えば尿素を含む。
【0050】
尿素は、意外にも、溶液中における金属(例えば触媒系の遷移金属触媒成分;又はPETを生成するために元々使用されていた微量の金属触媒、例えばアンチモン触媒)、及び他の混入物の維持において高度に有効であり、それにより、これらの成分を、ステップ(b)においてBHETから分離することが可能になることを見出した。したがって、本発明は、PETリサイクルプロセスにおける触媒系での、金属、特に、触媒系の遷移金属触媒成分を可溶化するための尿素の使用も提供する。尿素は、PETリサイクルプロセスにおいて混入物を可溶化するためにも使用され得る。意外にも、共晶塩触媒系は、金属及び/又は混入物の可溶化において特に有効であることを見出した。
【0051】
担体は、遷移金属触媒における遷移金属カチオンのモル量の少なくとも1倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍の量で触媒系に使用され得る。担体は、遷移金属カチオンのモル量の8倍まで、好ましくは6倍まで、より好ましくは5倍までの量で使用され得る。したがって、担体は、遷移金属カチオンのモル量の1~8倍、好ましくは2~6倍、より好ましくは3~5倍の量で使用され得る。担体と遷移金属触媒のこれらの比は、溶液における金属イオンを保つ間に、反応速度を高くすると見出された。上述したように、遷移金属カチオンは、典型的には亜鉛カチオンである。
【0052】
ステップ(a)における使用に最も好ましいのは、酢酸亜鉛及び尿素、特に式[4NH2CONH2・ZnOAc]を有する触媒系を含む、好ましくはそれらからなる触媒系である。この触媒系は、有利には、共晶塩を形成する。したがって、本発明は、PETリサイクルプロセスにおける触媒系にて、共晶塩を触媒系の遷移金属触媒成分と形成するための尿素の使用も提供する。
【0053】
触媒系は、ステップ(a)において、好ましくは本発明の方法を通じて、液相中にあってもよい。
【0054】
触媒系は、重量でPETの量の少なくとも0.001倍、好ましくは少なくとも0.003倍、より好ましくは少なくとも0.004倍の量でステップ(a)に使用され得る。触媒系は、重量でPETの量の0.5倍まで、好ましくは0.01倍まで、より好ましくは0.005倍までの量でステップ(a)に使用され得る。したがって、触媒系は、重量でPETの量の0.001~0.5倍、好ましくは0.003~0.01倍、より好ましくは0.004~0.005倍の量でステップ(a)に使用され得る。
【0055】
触媒系の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも95重量%が、第1の反応器に添加され得る。しかし、上述したように、触媒系のすべては、第1の反応器に好ましくは添加される。触媒系の100%未満が第1の反応器に添加される場合、残りは、第1の解重合反応器の下流における直列の解重合反応器に添加されることが認識されよう。
【0056】
ステップ(a)は、一般的に、エチレングリコール以外の一切の溶媒の、また、触媒系に存在し得る一切の担体の非存在下で実施される。洗浄に起因するPET上のコーティングとして、特許請求の範囲のプロセスへと移行した若干の残留液体、例えば水が存在し得ることは認識されよう;しかし、これは、本発明の目的のための溶媒とは考えられない。したがって、溶媒は、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の0.1倍まで、好ましくは0.01倍まで、より好ましくは0.001倍までの量でステップ(a)に存在し得る。最も好ましくは、溶媒は、ステップ(a)に実質的に存在しない。
【0057】
好ましくは、解重合された混合物は、ステップ(a)と(b)の間における任意の不溶性成分から分離する。不溶性成分は、未反応のPET(しかし、存在するのであれば、これのレベルは、典型的にはきわめて低い)及び他の不活性固体を含む。他の固体は、非PETポリマー、例えばポリエチレン(PE,polyethylene)及びポリプロピレン(PP,polypropylene)を含み得る。好ましくは、解重合された混合物は、フィルターを通過して、不溶性成分が除去されるが、他の技術、例えば遠心分離も使用できる。Tricanterは、きわめて高いレベルの固液分離を達成するために使用できる。
【0058】
方法のステップ(b)において、BHETを含む沈殿物は、ステップ(a)で形成された、解重合された混合物から結晶化する。ステップ(b)は、好ましくは冷却結晶化を使用して実施される。適切な晶析装置は、撹拌式又は壁面掻き取り式(wall-scraped)晶析装置を含む。解重合された混合物は、放置して自然に冷却できるが、好ましくはクーラントを使用して冷却される。クーラントは、晶析装置を取り巻くジャケットに存在し得る、又は、直列の熱交換器を通過させることができ、それを通して、解重合された混合物も、例えば向流で通過させる。
【0059】
ステップ(b)は、解重合された混合物の温度を、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも15℃の温度に低下させることにより実施され得る。ステップ(b)は、解重合された混合物の温度を、50℃まで、好ましくは40℃まで、より好ましくは35℃までの温度に低下させることにより実施され得る。したがって、ステップ(b)は、解重合された混合物の温度を、5~50℃、好ましくは10~40℃、より好ましくは15~35℃の温度に低下させることにより実施され得る。
【0060】
これらの温度で、不完全な結晶化が発生すると見込まれる。しかし、それにもかかわらずこれらの温度が好ましいのは、これらの温度に達するのに必要とされる能動的冷却の量(amount of active cooling)は相対的に少ないためである。さらに、好ましい実施形態では(以下で論じられている)、ステップ(b)後の残りの液体を、ステップ(a)へとリサイクルし、これは、プロセスにおいてBHET(及びその可溶性オリゴマー)の損失がないことを意味する。同様の理由で、単一の晶析装置のみが、ステップ(b)を実施するのに使用され得る。ステップ(b)後に残りの液体がリサイクルされない場合、ステップ(b)は、いくつかの例では、解重合された混合物の温度を5~15℃の温度に低下させることにより実施され得る。
【0061】
ステップ(b)は、大気圧下で、すなわち圧力の適用又は除去なしで実施され得る。
【0062】
ステップ(b)は、少なくとも10分、好ましくは少なくとも20分、より好ましくは少なくとも25分の期間実施され得る。ステップ(b)は、60分まで、好ましくは45分まで、より好ましくは35分までの期間実施され得る。したがって、ステップ(b)は、10~60分、好ましくは20~45分、より好ましくは25~35分の期間実施され得る。
【0063】
解重合された混合物は、ステップ(b)中に撹拌され得る。
【0064】
上述したように、ステップ(b)の終わりに残った液体は、好ましくはステップ(a)における使用にリサイクルする。したがって、本発明の方法は、好ましくは、ステップ(b)と(c)の間でBHETを含む沈殿物を単離するステップを含む。沈殿物は、公知の方法を使用して、例えば濾過又は遠心分離により単離され得る。残留液体は、好ましくはステップ(a)における使用に、より好ましくは第1の解重合反応器へとリサイクルする。典型的には、残留液体は、ステップ(a)へとリサイクルされたまま、さらに処理されない、すなわち残留液体の組成は変更されないが、残留液体は、ポンプを通過し、加熱され得ることが認識されよう。触媒系が担体、例えば尿素及び遷移金属触媒を含む場合、これらも残留リカーとリサイクルされる。
【0065】
ステップ(a)に使用される条件は、高い比率のBHETを含有する沈殿物を引き起こし得る。BHETは、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%の量で沈殿物に存在し得る。
【0066】
ステップ(b)において形成された沈殿物は、BHETを含むが、典型的にはBHETの二量体及び三量体も、例えば少なくとも0.01重量%の量で含む。BHETの二量体及び三量体は、沈殿物に最大で2重量%、好ましくは0.5重量%、より好ましくは0.2重量%の量で存在し得る。ステップ(b)において形成された沈殿物における異なる成分の量は、標準的技術、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して判定され得る。HPLCは、以下の条件 - 機器:Shimazu社製LC-20A HPLC;検出器:フォトダイオードアレイ(PDA)検出器、223nmのクロマトグラム中心波長(4nm「スリット」バンド幅);カラム:C18;移動相:30%水、70%メタノール;流量:0.5ml/min;オーブンtemp:35℃;試料:メタノールに溶解した;注入体積:20μLを使用して実施され得る。試料を外部標準法により定量する。
【0067】
好ましくは、方法のステップ(c)では、ステップ(b)において形成された沈殿物を水に溶解して、BHETを含む溶液を形成する。BHETの二量体及び三量体は、水に不溶性であり、したがって、ステップ(c)において、BHETは溶解して、水性相が形成される一方、二量体及び三量体は、ステップ(c)の終わりに、例えば濾過により水性相から分離され得る固体材料として残る。水溶液は、次いでステップ(e)において再結晶させることができ、精製された生成物は、高品質モノマー原材料として使用される。
【0068】
あるいは、方法のステップ(c)では、ステップ(b)において形成された沈殿物を、メタノールに溶解して、BHETを含む溶液を形成することもできる。メタノールは、ステップ(b)において形成された沈殿物の高いレベルの脱色、並びに低いレベルの生成物の損失を示すので、ステップ(c)における使用にも優れた溶媒であることを意外にも見出した。しかし、BHETの二量体及び三量体がメタノールに部分的に可溶性であり、したがって、これらは、メタノールが方法のステップ(c)において再結晶に使用される場合、モノマー生成物中に検出可能な量で保たれるので、水の使用が好ましい。
【0069】
他のアルコール溶媒も、水又はメタノールの代わりにステップ(c)に使用され得る。例えば、ステップ(c)における溶媒は、任意のC1-C12アルコールからなり得る又はそれを含み得る。より具体的には、ステップ(c)において使用するための溶媒は、エタノール、プロパノール(とりわけイソ-プロパノール)及びブタノール(とりわけn-ブタノール、tert-ブタノール)からなる群から選択され得る。したがって、ステップ(c)において使用するための溶媒は、好ましくはプロトン性溶媒、最も好ましくは極性プロトン性溶媒であり、水、メタノール、エタノール、プロパノール(とりわけイソ-プロパノール)及びブタノール(とりわけn-ブタノール、tert-ブタノール)からなる群から選択され得る。高級アルコール溶媒も想定され得る。
【0070】
さらに、ノンアルコール溶媒も、ステップ(c)において使用するために想定され得る。プロトン性溶媒、特に極性プロトン性溶媒の使用が、ステップ(c)において特に好ましいが、本開示の実施形態では、その代わりにステップ(c)に使用される溶媒は、極性非プロトン溶媒、例えば炭酸ジメチル(DMC)、又は無極性溶媒、例えばエーテル、例としてジメトキシエタン(DME,dimethoxyethane)又はジイソプロピルエーテル(DIPE,diisopropylether)であり得る。
【0071】
最も一般的には、ステップ(c)における溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール(とりわけイソ-プロパノール)、ブタノール(とりわけn-ブタノール、tert-ブタノール)、C5-C12アルコール(とりわけヘプタノール、例えばn-ヘプタノール、オクタノール、例えばn-オクタノール、イソ-オクタノール、ノナノール、例えばn-ノナノール、デカノール、例えばn-デカノール、ドデカノール、例えばn-ドデカノール)、エステル(とりわけDMC)、又はエーテル(とりわけDME又はDIPE)を含む群から選択される溶媒のいずれかからなり得る、又はそれらを含み得る。好ましくは、ステップ(c)における溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール又はn-ブタノールである、又はそれらを含む。これらの及び/又は前述の溶媒のいずれかの混合物も、想定され得る。
【0072】
とりわけ使用される溶媒が水である、又はそれを含む場合、ステップ(c)は、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも70℃の温度にて実施され得る。ステップ(c)は、95℃まで、好ましくは92.5℃まで、より好ましくは90℃までの温度にて実施され得る。したがって、ステップ(c)は、40~95℃、好ましくは60~92.5℃、より好ましくは70~90℃の温度にて実施され得る。
【0073】
あるいは、とりわけ使用される溶媒がメタノールである、又はそれを含む場合、ステップ(c)は、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも55℃の温度にて実施され得る。ステップ(c)は、80℃まで、好ましくは70℃まで、より好ましくは65℃までの温度にて実施され得る。したがって、ステップ(c)は、40~80℃、好ましくは50~70℃、より好ましくは55~65℃の温度にて実施され得る。
【0074】
ステップ(c)は、大気圧下で、すなわち圧力の適用又は除去なしで実施され得る。
【0075】
ステップ(c)は、少なくとも1分、好ましくは少なくとも5分、より好ましくは少なくとも10分の期間実施され得る。ステップ(c)は、60分まで、好ましくは50分まで、より好ましくは40分までの期間実施され得る。したがって、ステップ(c)は、1~60分、好ましくは5~50分、より好ましくは10~40分の期間実施され得る。
【0076】
沈殿物の溶解は、撹拌しながら実施され得る。
【0077】
とりわけ水単体がステップ(c)における溶媒として使用される場合、これは、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の少なくとも0.1倍、好ましくは少なくとも0.15倍、より好ましくは少なくとも0.2倍の量で使用され得る。水は、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の2.5倍まで、より好ましくは1.25倍まで、より好ましくは0.5倍までの量でステップ(c)に使用され得る。したがって、水は、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の0.1~2.5倍、好ましくは0.15~1.25倍、最も好ましくは0.2~0.5倍の量でステップ(c)に使用され得る。
【0078】
とりわけメタノール単体がステップ(c)における溶媒として使用される場合、これは、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の少なくとも1倍、好ましくは少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍の量で使用され得る。メタノールは、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の10倍まで、好ましくは5倍まで、より好ましくは3倍までの量でステップ(c)に使用され得る。したがって、メタノールは、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の1~10倍、好ましくは1.5~5倍、より好ましくは2~3倍の量でステップ(c)に使用され得る。
【0079】
方法のステップ(d)において、不純物は、ステップ(c)において生成された溶液から除去されて、BHETを含む精製された溶液が得られる。好ましくは、ステップ(d)は、溶液を脱色するステップを含む。これは、溶液を1又は2以上の脱色剤と接触させることにより行われ得る。好ましくは、ステップ(d)は、ステップ(c)において生成された溶液にカラム、最も好ましくは、1又は2以上の脱色剤を充填し、直列した複数のカラムを通過させることにより実施する。例えば、直列した各カラムは、異なる脱色剤を充填されていることがある。ステップ(d)は、他の混入物、例えばステップ(c)において生成された溶液からの金属及び触媒残渣を除去するステップも含み得る。
【0080】
ステップ(d)に使用される1又は2以上の脱色剤は、炭素(例えば、好ましくは高い細孔体積及び表面積を有する活性炭)、樹脂、例えばイオン交換樹脂、好ましくはカチオン交換樹脂、例えば、好ましくはスルホン酸又はカルボン酸基を含み、スルホン酸基が好ましい酸性カチオン交換樹脂、あるいは又はさらに、好ましくは四級アンモニウム塩を含むアニオン交換樹脂、及び/又はクレイ(例えば活性白土、例としてベントナイト及びモンモリロナイトクレイ)を含み得る。好ましくは、ステップ(c)において生成された溶液は、炭素及び/又は樹脂、好ましくはイオン交換樹脂と接触させる。イオン交換樹脂は、脱色及び金属触媒残渣の除去に特に適切である。
【0081】
方法の詳細な好ましい実施形態では、ステップ(c)において生成された溶液は、直列して配置された複数のカラムを通す経路を経由して、複数の異なる脱色剤と接触させる。例えば、第1のカラムは、活性炭脱色剤を含み得、第2のカラムは、カチオン交換樹脂を含み得、第3のカラムは、アニオン交換樹脂を含み得、第1~第3のカラムは、ステップ(c)において生成された溶液が、各ステップ(d)において通過するように、直列して配置され得る。
【0082】
ステップ(d)は、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも55℃、より好ましくは少なくとも70℃の温度にて実施され得る。ステップ(d)は、110℃まで、好ましくは100℃まで、より好ましくは90℃までの温度にて実施され得る。したがって、ステップ(d)は、40~110℃、好ましくは55~100℃、より好ましくは70~90℃の温度にて実施され得る。
【0083】
ステップ(d)は、大気圧下で、すなわち圧力の適用又は除去なしで実施され得る。
【0084】
ステップ(d)は、少なくとも10分、好ましくは少なくとも25分、より好ましくは少なくとも40分の期間実施され得る。ステップ(d)は、120分まで、好ましくは100分まで、より好ましくは60分までの期間実施され得る。したがって、ステップ(d)は、10~120分、好ましくは25~100分、より好ましくは40~80分の期間実施され得る。
【0085】
あまり好ましくないが、いくつかの実施形態では、精製ステップ(d)を省略できる。これは、例えばメタノール単体中での再結晶の結果として生じる精製が、BHETを含む、脱色され、精製された生成物を生成するのに十分になり得るためであるが、典型的にはそのような生成物は、低グレード用途、例えばカーペットに使用される。したがって、いくつかの実施形態では、BHETを含む精製された生成物は、ステップ(c)において生成された溶液からステップ(e)で結晶化され得る。
【0086】
本発明の方法のステップ(c)においてメタノールを使用する利点の1つは、溶液が、ステップ(c)において形成され、ステップ(d)において精製され、濾過なしで結晶化のためにステップ(e)に移すことができる点である。これは、メタノールが、BHET、また水とは異なりBHETの二量体及び三量体を溶解するためである。PETリサイクルプロセスを通した二量体及び三量体の輸送は、これらを水性系外へと濾過することにより避けられるが、本発明のステップ(a)は、リサイクルプロセスを通してBHETと共に輸送してもよいような少量の二量体及び三量体を生成する。したがって、いくつかの実施形態では、固液分離ステップは、本発明のステップ(c)と(e)の間で実施されない。
【0087】
しかし、水が本発明の方法のステップ(c)に使用される場合、ステップ(c)と(d)の間でBHET溶液を濾過すること、水に不溶性のBHET二量体及び三量体を除去することが有利である。水又はメタノール以外の溶媒が使用される場合、ステップ(c)と(d)の間でBHET溶液を濾過することも好ましいことがある。
【0088】
方法のステップ(e)において、BHETを含む精製された生成物は、精製された溶液から結晶化する。
【0089】
ステップ(e)は、好ましくは冷却結晶化を使用して実施される。適切な晶析装置は、撹拌式又は壁面掻き取り式晶析装置を含む。ステップ(d)において生成される、精製された溶液は、放置して自然に冷却できるが、好ましくはクーラントを使用して冷却される。クーラントは、晶析装置を取り巻くジャケットに存在し得る、又は、直列の熱交換器を通過させることができ、それを通して、精製された溶液も、例えば向流で通過させる。
【0090】
とりわけステップ(c)に使用される溶媒が水である場合、ステップ(e)は、精製された溶液の温度を、少なくとも0℃、好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも20℃の温度に低下させることにより実施され得る。ステップ(e)は、精製された溶液の温度を、55℃まで、好ましくは45℃まで、より好ましくは40℃までの温度に低下させることにより実施され得る。したがって、ステップ(e)は、精製された溶液の温度を、0~55℃、好ましくは10~45℃、より好ましくは20~40℃の温度に低下させることにより実施され得る。
【0091】
とりわけステップ(c)に使用される溶媒がメタノールである場合、ステップ(e)は、精製された溶液の温度を、少なくとも0℃、好ましくは少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも8℃の温度に低下させることにより実施され得る。ステップ(e)は、精製された溶液の温度を、30℃まで、好ましくは15℃まで、より好ましくは10℃までの温度に低下させることにより実施され得る。したがって、ステップ(e)は、精製された溶液の温度を、0~30℃、好ましくは5~15℃、より好ましくは8~12℃の温度に低下させることにより実施され得る。
【0092】
ステップ(e)は、大気圧下で、すなわち圧力の適用又は除去なしで実施され得る。
【0093】
ステップ(e)は、少なくとも10分、好ましくは少なくとも20分、より好ましくは少なくとも25分の期間実施され得る。ステップ(e)は、60分まで、好ましくは45分まで、より好ましくは35分までの期間実施され得る。したがって、ステップ(e)は、10~60分、好ましくは20~45分、より好ましくは25~35分の期間実施され得る。
【0094】
精製された溶液は、ステップ(e)中に撹拌され得る。
【0095】
ステップ(e)において形成される、精製された生成物は、高い比率のBHETを含有し得る。BHETは、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%の量で、精製された生成物に存在し得る。
【0096】
メタノールが、ステップ(c)において溶媒として使用される場合、ステップ(e)において形成される、精製された生成物は、例えば少なくとも0.01重量%の量で、BHETの二量体及び三量体も含み得る。BHETの二量体及び三量体は、最大で2重量%、好ましくは0.5重量%、より好ましくは0.2重量%の量で精製された生成物に存在し得る。好ましくは、ステップ(e)において形成される、精製された生成物に存在する二量体及び三量体の量は、ステップ(b)において形成された沈殿物に存在する二量体及び三量体の量と実質的に同一である。ステップ(e)において形成される、精製された生成物中の異なる成分の量は、上記の方法を使用して、ステップ(b)において形成された沈殿物に関連して判定され得る。
【0097】
本発明の重要な利点は、低b[h]値、特に2以下のb[h]値を有する、精製された生成物を生成するために使用できることである。これらの色濃度を有するBHETから調製されるPETは、きわめて高いグレードであり、優れた視覚的外観を必要とする用途、例えば透明で無色のウォーターボトルに使用され得る。したがって、ステップ(e)において形成される、精製された生成物は、2まで、例えば0~2のb[h]値を呈し得る。いくつかの例では、精製された生成物は、より低いグレードの用途、例えばカーペット又はフィルムに使用され得、このケースでは、4まで、例えば3までのb[h]値を有し得る。
【0098】
本発明の方法は、ステップ(a)に使用されるPETのものの0.5倍、好ましくは0.1倍、より好ましくは0.05倍のb[h]値を有する、ステップ(e)において精製された生成物を形成するために使用され得る。本発明の好ましい実施形態を使用することにより、例えばステップ(a)に使用されるPETの供給が、高い色濃度を呈する場合、b[h]値におけるより一層強い低下が実現可能になる。
【0099】
ステップ(e)において形成される、精製された生成物の色濃度は、ステップ(a)に使用されるPETに関連して、上記のように測定され得る。
【0100】
BHETを含む精製された生成物は、好ましくはステップ(e)後に、ステップ(f)が存在する場合は、ステップ(f)の前に、単離される。沈殿物は、公知の方法を使用して、例えば濾過又は遠心分離により単離され得る。好ましくは、ステップ(c)に使用されるプロトン性溶媒、典型的にはメタノール又は水及びエチレングリコールを、例えば、低圧蒸発及び凝縮を使用して精製された生成物の単離後に残った残留液体から回収する。プロトン性溶媒は、ステップ(c)へとリサイクルされ得る。エチレングリコールは、ステップ(a)における使用に、より好ましくは第1の解重合反応器へとリサイクルされ得る。
【0101】
ステップ(c)を実施するのに、水ではなくメタノールを使用する主要な利点の1つは、メタノール及びエチレングリコールを容易に回収できることである。したがって、メタノール及びエチレングリコールの残留液体からの回収は、単段エバポレーターで実施され得る。対照的に、水が使用される場合、エチレングリコール及び水の残留液体からの回収は、水及びエチレングリコールが共沸混合物を形成するので、難易度が高くなり得る。したがって、水がステップ(c)に使用される場合、多段エバポレーターの使用が、水及びエチレングリコールの残留液体からの回収に好ましい。
【0102】
メタノールがステップ(c)に使用される場合、メタノール及びエチレングリコールの残留液体からの回収は、残留液体を、メタノール及びエチレングリコールの沸点間の温度に加熱することにより実施され得る。例えば、残留液体は、65℃超、好ましくは70℃超、より好ましくは75℃超の温度に加熱され得る。残留液体は、120℃まで、好ましくは100℃まで、より好ましくは90℃までの温度に加熱され得る。したがって、残留リカーは、65~120℃、70~100℃、より好ましくは70~90℃の温度に加熱され得る。
【0103】
メタノール及びエチレングリコールの残留液体からの回収は、周囲圧力で、すなわち圧力の適用又は除去なしで実施され得る。
【0104】
典型的には、残留液体は、メタノール及びエチレングリコールを回収するために処理される前に、さらに処理されない。好ましくは、メタノールは、リサイクルされる前に、ステップ(c)における使用のためにリサイクルされる前にさらに処理されない。
【0105】
水がステップ(c)に使用される場合、二段エバポレータープロセスは、水及びエチレングリコールを回収するのに好ましい。第1のエバポレーターでは、水は、低圧を適用し、低温での蒸発が可能となることにより残留液体から回収され得;例えば、10kPa又は約10kPaの圧力でのエバポレーターの作動が好ましく、関連するコンデンサー温度は46℃又は約46℃であり、リボイラー温度は132℃又は約132℃である。残留エチレングリコールは、次いで低圧を適用し、好ましくは0.08bar又は約0.08barの圧力で、また138℃又は約138℃の温度にて作動させることにより、第2のエバポレーターで回収され得る。当業者は、第1及び第2のエバポレーターに対して、他の作動温度及び圧力も選択され得ることを認識するであろう。向上した水の回収は、必要に応じて、低温での第1のエバポレーターの作動を通して、又は、第1のエバポレーターの下流において、分子篩を使用することにより達成され得る。
【0106】
しかしエチレングリコールは、ステップ(a)へとリサイクルされる前にさらなる精製を施され得る。例えば、エチレングリコールは、フラッシュして、その中に取り込まれているいずれかの有機廃棄物を分離できる。
【0107】
フラッシュは、少なくとも130℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも170℃の温度にて行われ得る。フラッシュは、230℃まで、好ましくは210℃まで、より好ましくは190℃までの温度にて行われ得る。したがって、フラッシュは、130~230℃、好ましくは150~210℃、より好ましくは170~190℃の温度にて行われ得る。
【0108】
フラッシュは、典型的には、減圧下で行われる。例えば、フラッシュは、80,000Paまで、好ましくは60,000Paまで、より好ましくは40,000Paまでの圧力で行われ得る。フラッシュは、少なくとも10,000Pa、好ましくは少なくとも15,000Pa、より好ましくは少なくとも20,000Paの圧力で行われ得る。したがって、フラッシュは、10,000~80,000Pa、好ましくは15,000~60,000Pa、より好ましくは20,000~40,000Paの圧力で行われ得る。
【0109】
メタノールがステップ(c)に使用される場合、メタノールの回収は、非常に有効(産業規模でさえ、例えば本明細書に記載されているもの)なので、回収されたメタノールがステップ(c)へとリサイクルされる場合、リサイクルされないメタノールは、ステップ(c)において、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の0.008倍まで、好ましくは0.006倍まで、より好ましくは0.005倍までの量で添加されることだけ必要である。リサイクルされないメタノールは、ス重量でテップ(a)に使用されるPETの量の少なくとも0.001倍、好ましくは少なくとも0.003倍、より好ましくは少なくとも0.004倍の量で、ステップ(c)に使用され得る。したがって、リサイクルされないメタノールは、重量でステップ(a)に使用されるPETの量の0.001~0.008倍、好ましくは0.003~0.006倍、より好ましくは0.004~0.005倍の量でステップ(c)に使用され得る。したがって、本発明の方法中に失うメタノールの量は、並外れて低いこと、また、ステップ(c)においてメタノールの代わりに使用される場合に失う水の量よりはるかに少ないことが認識されよう。
【0110】
しかし、水がステップ(c)における溶媒として使用される場合、好ましくは本明細書で上に記載されている二段エバポレータープロセスを使用して、ステップ(c)に使用される水の少なくとも大多数がリサイクルされるように、水は効率的に回収もされ得る。失った水は、典型的には、湿潤空気として系から除去される。メタノール含有廃棄物と比較して最小限の、系から水が失う環境影響、及び水回収に関連するエネルギーコストを考慮すると、水のリサイクルを最大化することは有益ではない可能性がある。
【0111】
本発明の方法は、BHETを含む精製された生成物を乾燥させるステップ(f)をさらに含み得る。生成物は、例えば流動床乾燥機で、精製された生成物の上を空気が通過することにより乾燥できる。
【0112】
空気は、少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも50℃の温度に加熱され得る。空気は、100℃まで、好ましくは90℃まで、より好ましくは80℃までの温度に加熱され得る。したがって、空気は、30~100℃、好ましくは40~90℃、より好ましくは50~80℃の温度に加熱され得る。
【0113】
乾燥させるステップ(f)は、周囲圧力で、すなわち圧力の適用又は除去なしで実施され得る。
【0114】
乾燥させるステップ(f)は、少なくとも10分、好ましくは少なくとも15分、より好ましくは少なくとも20分の期間実施され得る。乾燥させるステップ(f)は、60分まで、好ましくは50分まで、より好ましくは40分までの期間実施され得る。したがって、乾燥させるステップ(f)は、10~60分、好ましくは15~50分、より好ましくは20~40分の期間実施され得る。
【0115】
本発明の方法は、バッチ様式又は連続様式で作動させることができるが、好ましくは継続的に作動させる。
【0116】
本発明の方法は、好ましくは産業規模で実施される。したがって、方法は、少なくとも10トン/日、好ましくは少なくとも100トン/日、潜在的には少なくとも1,000トン/日のPETをリサイクルし得る。
【0117】
本発明は、本明細書に記載されている方法を使用して取得可能な、好ましくは得られる、BHETを含む精製された生成物をさらに提供する。
【0118】
本発明は、ポリマーを調製するための方法であって、BHETを含む本発明の精製された生成物を使用して重合反応を実施するステップを含む方法も提供する。好ましくは、方法は、本発明の方法を使用して、BHETを含む精製された生成物を調製するステップを含む。本発明の重要な利点は、BHETを含む精製された生成物が、重合に直接使用され得る、すなわち使用する前にさらなる精製を施されないことである。
【0119】
精製された生成物を使用して、PETを調製でき、又は、同生成物を使用して、エチレンテレフタレートモノマーを含むコポリマーを調製できる。
【0120】
ポリマーは、ボトル、パッケージング、繊維製品などにさらに加工し得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、透明ボトル、好ましくは無色ボトルにさらに加工し得る。
【0121】
本発明は、PETをリサイクルするための装置であって、
(a)PETを解重合して、BHETを含む解重合された混合物を形成するのに適切な直列の解重合反応器であって、PET、エチレングリコール及び触媒系を受容するのに適合している、直列の解重合反応器;
(b)解重合された混合物から、BHETを含む沈殿物を結晶化するのに適切な重合反応器の下流における結晶化ユニット;
(c)沈殿物を受容するための、また、沈殿物を、プロトン性溶媒に溶解して、BHETを含む溶液を形成するのに適切な容器;
(d)BHETを含む溶液を受容するための、また、溶液から不純物を除去して、BHETを含む精製された溶液を形成する不純物除去ユニット;並びに
(e)精製された溶液から、BHETを含む精製された生成物を結晶化するのに適切な、不純物除去ユニットの下流におけるさらなる結晶化ユニットを含む、装置をさらに提供する。
【0122】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例証する。
[実施例]
【実施例1】
【0123】
解重合ステップ(a)
異なるシリーズの反応器における解重合反応をシミュレーションした。シミュレーションに使用されるPET:エチレングリコール:触媒系の比は、質量に対して、1:4:0.005であった。各反応器を、197℃の温度及び大気圧下にて作動させるようにシミュレーションした。シミュレーションを、直列した最終反応器の流出口で99.0%の変換になるように設定した。
【0124】
シミュレーションの結果は、以下の表に示されている。
【0125】
【0126】
1年当たり10,000トン前後の生成物レベルを得るために、単一の反応器の体積は、約300m3であり得る。直列の3つの反応器が使用される場合、反応器当たりの体積は、わずか10m3超に収まる。反応器当たりの体積の同様の、おおよそ11~12m3へのきわめて大きい減少は、本発明の最も好ましい実施形態におけるように、直列の2つの反応器のみで達成され得る。
【0127】
各解重合反応の効率を示すグラフは、上のデータ、また、各配置に必要とされるエネルギー及び設備入力を考慮に入れて、
図1で示されている。
【0128】
直列の少なくとも2つの解重合反応器が使用される場合、単一の解重合反応器の使用と比較して、効率における劇的な改善が観察されることがわかる。
【実施例2】
【0129】
ステップ(c)において使用するのに好ましい溶媒
BHETの再結晶実験を、長い炭素鎖を有するメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール及びアルコールを含む多彩な溶媒中で実施した。
【0130】
具体的には、50gの粗BHETを250mlの溶媒に、80℃にて1時間溶解した。BHETは、7℃/時間の速度で、温度10℃に達するまで冷却することにより再結晶させた。再結晶させたBHETを分析して、その色濃度を判定した。再結晶プロセス中の重量減少も測定した。
【0131】
結果は、以下の表に示されている。
【0132】
【0133】
軽い溶媒のそれぞれにより脱色のレベルが良好になったことがわかる。しかし、再結晶中に失った材料の量は、任意の他の軽い溶媒の実験よりも、メタノールでより顕著に少なかった。メタノール、並びに高級アルコールは、産業規模での使用に実施可能である。
【実施例3】
【0134】
脱色ステップ(d)
いくつかの異なる技術を、BHET水溶液の脱色に使用した。
【0135】
樹脂を使用した実験により、有望な結果が得られた。
【0136】
【0137】
カチオン交換樹脂及び特に強酸性カチオン交換樹脂により、最も有望な結果が得られることがわかる。
【0138】
活性炭もBHETの脱色において高度に有効であった。
【0139】
【0140】
未処理及び処理済み試料の画像、並びに試料を使用して調製したPETの画像が、
図2で示されている。カチオン交換樹脂及び活性炭素の両方により、脱色のレベルが良好になる一方、炭素処理済みの生成物により、ポリマー生成物の品質がより良好になる。
【0141】
さらなる脱色実験を実施した。このとき、メタノール中のBHETの溶液を使用した。実験により、BHET水溶液で実施されたものと同様の結果が得られたが、カチオン交換樹脂により特に良好な結果が得られた。
【実施例4】
【0142】
ステップ(c)においてメタノールを使用するリサイクルプロセス
本発明のプロセスは、
図3で描写されている装置中で実施した。このプロセスに使用された代表的な廃棄物は、
図4で示されている。廃棄物は、青色及び緑色の使用済みPETフレークからなる。
【0143】
具体的には、PET(2)、酢酸亜鉛及び尿素触媒系(4)、並びにエチレングリコール(6)を直列の3つの解重合反応器(10)の第1の反応器へと移した。直列の3つの解重合反応器(10)の後で取り出した試料は、PET(2)の100%変換を示し、BHETに対する選択性は99.8%であった。
【0144】
解重合された混合物に、フィルター(20)を通過させて、不溶性物質(32)を除去し、次いで晶析装置(12)に移し、そこでBHETを含む沈殿物が形成された。沈殿物は、フィルター(20)を通し、2つの撹拌容器(14)の1つに移した。
【0145】
メタノール(8)を容器(14)に添加して、沈殿物を溶解し、それにより、BHETを含む溶液を形成した。
【0146】
溶液に、2つの並行するユニットとして画像で描写されている脱色段階(16)を通して、BHETを含む精製された生成物が形成される別の晶析装置(18)に移した。
【0147】
精製された生成物に別のフィルター(20)を通し、乾燥ユニット(26)に移し、残留リカーをメタノール及びエチレングリコール回収ユニット(22)に移した。メタノールを、回収ユニット(22)から撹拌容器(14)へとリサイクルする一方、エチレングリコールにフラッシュユニット(24)を通過させ、そこで有機廃棄物(34)を除去してから、直列の解重合反応器(10)へとリサイクルした。
【0148】
精製された生成物は、乾燥機(26)を通した温風(28)を通過させることにより乾燥させた。温風(28)は、一切の廃水(36)が除去されるコンデンサー、及びメタノールが回収され、撹拌容器(14)へとリサイクルされるフラッシュユニットを経由して系から除去した。乾燥させたら、精製された生成物(30)を系から除去した。
【0149】
精製された生成物(30)は、低い色濃度を有し、ウォーターボトルにおける使用のために、さらなる処理なしでリサイクルPETの調製に使用した。
【実施例5】
【0150】
ステップ(c)において水を使用するリサイクルプロセス
本発明のプロセスは、
図5で描写されている装置において実施した。
【0151】
具体的には、PET(102)、酢酸亜鉛及び尿素触媒系(104)、並びにエチレングリコール(106)を、直列の2つの解重合反応器(100)の第1の反応器に移した。直列の2つの解重合反応器(100)の後で取り出した試料は、PET(102)の100%変換を示し、選択性はBHETに対して95.0%であり;残り5.0%は、実質的にBHETオリゴマーからなる他の生成物であった。
【0152】
過剰な水(140)をエバポレーター(138)により除去し、解重合された混合物に、次いでフィルター(120a)を通過させて、不溶性物質(132)を除去し、次いで、晶析装置(112)に移し、そこでBHETを含む沈殿物が形成された。沈殿物は、フィルター(120b)を通して、撹拌容器(114)に移した。
【0153】
水(108)を容器(114)に添加して、沈殿物を溶解し、それによりBHETを含む溶液を形成した。
【0154】
溶液に脱色段階(116)を通過させた。描写されているように、脱色段階は、フィルター(120c)、続いて活性炭床を含む第1のユニット(142)、続いてカチオン交換床を含む直列した第2のユニット(144)、続いてアニオン交換床を含む第3のユニット(146)を含む。脱色段階(116)に続いて、溶液を2段階で別の晶析装置(118)に移し、そこでBHETを含む精製された生成物が形成された。
【0155】
精製された生成物に別のフィルター(120d)を通して、乾燥ユニット(126)に移し、残留リカーをエバポレーター(122)に移した。水をエバポレーター(122)から撹拌容器(114)へとリサイクルする一方で、エチレングリコールをさらにエバポレーター(124)に向かって移し、そこで有機廃棄物(134)を除去してから、直列の解重合反応器(100)へとリサイクルした。
【0156】
精製された生成物は、乾燥機(126)を通した温風(128)を通過させることにより乾燥させた。乾燥させたら、精製された生成物(130)を系から除去した。
【0157】
精製された生成物(130)は、低い色濃度を有し、ウォーターボトルにおける使用のために、さらなる処理なしでリサイクルPETの調製において使用した。
【国際調査報告】