(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】LRP6タンパク質に結合する抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221007BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20221007BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221007BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221007BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221007BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221007BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221007BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221007BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221007BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221007BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221007BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221007BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221007BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221007BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221007BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221007BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221007BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221007BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20221007BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/46
C07K16/28
C12P21/08
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K47/68
A61K45/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/76
A61K35/12
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509039
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 CA2020051120
(87)【国際公開番号】W WO2021026666
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522055290
【氏名又は名称】モッドマブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シドゥ サチデフ エス.
(72)【発明者】
【氏名】パン グオファ
(72)【発明者】
【氏名】パテル ニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】モファット ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】アンジェ ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アダムス ジャレット
(72)【発明者】
【氏名】ジュヌトゥラ ジャガス アール.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B064DA14
4B065AA01X
4B065AA57X
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4B065AB01
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4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
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4C076FF68
4C084AA13
4C084AA17
4C084NA13
4C085AA13
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4C085AA16
4C085AA26
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4C085BB41
4C085BB43
4C085CC05
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4C085DD23
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
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4C086ZB26
4C086ZB27
4C087AA01
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4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
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4C087NA13
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
LRP6に特異的に結合する抗体、およびその使用方法が、本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む、LRP6に特異的に結合する抗体であって、
重鎖可変領域が、相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含み、軽鎖可変領域が、相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含み、前記CDRのアミノ酸配列が、抗LRP6抗体:LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9のCDR配列セットから選択される配列を含むか、またはそれらからなる、
抗体。
【請求項2】
前記CDRのアミノ酸配列が、以下に記載の配列から選択される配列を含むか、またはそれらからなり、
CDR-H1が、
からなる群より選択され、
CDR-H2が、
からなる群より選択され、
CDR-H3が、
からなる群より選択され、
CDR-L1がSVSSA(SEQ ID NO:14)であり、
CDR-L2がSASSLYS(SEQ ID NO:15)であり、および/または
CDR-L3が、
からなる群より選択される、
請求項1記載の抗体。
【請求項3】
(i)表2に記載の重鎖アミノ酸配列、
(ii)表2に記載の重鎖アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、アミノ酸配列、または
(iii)(i)の保存的に置換されたアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、保存的に置換されたアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項4】
(i)表2に記載の軽鎖アミノ酸配列、
(ii)表2に記載の軽鎖アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、アミノ酸配列、または
(iii)(i)の保存的に置換されたアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、保存的に置換されたアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、請求項2~3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
CDR配列が、表1において同定された抗体から選択される完全なCDR配列セットである、請求項1~4のいずれか一項記載の抗体。
【請求項6】
LRP5と交差反応する、請求項1~5のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
CDR配列が、表1において同定された抗体から選択される軽鎖CDR配列セットまたは重鎖CDR配列セットを含む、請求項1記載の抗体。
【請求項8】
LRP6に特異的に結合する、請求項1~7のいずれか一項記載の抗体。
【請求項9】
CDR配列が、抗体LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9から選択される抗体のCDR配列セットである、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体。
【請求項11】
LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体。
【請求項12】
モノクローナル抗体である、請求項1~11のいずれか一項記載の抗体。
【請求項13】
ヒト化抗体である、請求項1~12のいずれか一項記載の抗体。
【請求項14】
一本鎖抗体である、請求項1~13のいずれか一項記載の抗体。
【請求項15】
Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディ、およびそれらの多量体から選択される抗体結合断片である、請求項1~14のいずれか一項記載の抗体。
【請求項16】
二重特異性抗体である、請求項1~14のいずれか一項記載の抗体。
【請求項17】
FZD受容体にさらに結合する二重特異性抗体である、請求項1~14のいずれか一項記載の抗体。
【請求項18】
非天然グリコシル化パターンを含む、請求項1~17のいずれか一項記載の抗体。
【請求項19】
例えば定常領域またはフレームワーク領域に、システインの置換または付加を含む、請求項1~17のいずれか一項記載の抗体。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項記載の抗体と、検出可能な標識または細胞傷害剤とを含む、イムノコンジュゲート。
【請求項21】
メイタンシノイド、アウリスタチン、ドラスタチン、チューブリシン、クリプトフィシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体、インドリノベンゾジアゼピン二量体、α-アマニチン、トリコテン、SN-38、デュオカルマイシン、CC1065、カリケアマイシン、エンジイン抗生物質、タキサン、ドキソルビシン誘導体、アントラサイクリン、およびそれらの立体異性体、アザノフィド、アイソスター、類似体、または誘導体から選択される細胞傷害剤を含む、請求項20記載のイムノコンジュゲート。
【請求項22】
請求項1~17のいずれか一項記載の抗体をコードする、核酸分子。
【請求項23】
CDR配列のうちの1つまたは複数が、表2の核酸によってコードされる、請求項22記載の核酸分子。
【請求項24】
前記抗体が、
(i)表2に記載の重鎖核酸配列、
(ii)表2に記載の重鎖核酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、ヌクレオチド配列、または
(iii)(i)のコドン縮退核酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、コドン縮退核酸配列
を含む核酸によってコードされる重鎖可変領域を含む、請求項22記載の核酸分子。
【請求項25】
前記抗体が、
(i)表2に記載の軽鎖核酸配列、
(ii)表2に記載の軽鎖核酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、核酸配列、または
(iii)(i)のコドン縮退核酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、コドン縮退核酸配列
を含む核酸によってコードされる軽鎖可変領域を含む、請求項22記載の核酸分子。
【請求項26】
請求項22~25のいずれか一項記載の核酸に機能的に連結された発現制御配列を含む、ベクター。
【請求項27】
請求項22~26のいずれか一項記載の核酸に機能的に連結された発現制御配列を含む組換え核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項28】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項27記載の宿主細胞。
【請求項29】
請求項26記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項30】
請求項27~29のいずれか一項記載の宿主細胞を培養する工程を含む、抗LRP6抗体を作製するための方法。
【請求項31】
任意で好適な希釈剤とともに、請求項1~17のいずれか一項記載の抗体、請求項20~21のいずれか一項記載のイムノコンジュゲート、請求項22~25のいずれか一項記載の核酸分子、請求項26記載のベクター、または請求項29記載の宿主細胞を含む、組成物。
【請求項32】
1つまたは複数の抗体またはイムノコンジュゲートを含み、任意で、薬学的組成物である、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
請求項1~17のいずれか一項記載の抗体、請求項20~21のいずれか一項記載のイムノコンジュゲート、請求項22~25のいずれか一項記載の核酸分子、請求項26記載のベクター、または請求項27~29のいずれか一項記載の宿主細胞を含む、キット。
【請求項34】
抗体:細胞複合体の形成を許容する条件下で、1つまたは複数の細胞を含む試料と、請求項1~21のいずれか一項記載の1つまたは複数の抗体またはイムノコンジュゲートとを接触させる工程、および任意の抗体複合体の存在を検出する工程
を含む、LRP6発現を検出する方法。
【請求項35】
検出が、免疫蛍光によるものである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
検出が、フローサイトメトリーによるものである、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、LRP4発現を検出するためのものであり、抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9から選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む、請求項34~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
LRP6受容体へのWntリガンド結合を阻害するか、Wntシグナル伝達経路を妨害するか、Wnt誘導性転写活性を阻害するか、disheveledの活性化を阻害するか、β-カテニン分解複合体の保存を促進するか、β-カテニンの蓄積を促進するか、または細胞の増殖を阻害する方法であって、LRP6受容体を発現する細胞と、請求項1~21のいずれか一項記載の抗体またはイムノコンジュゲートとを接触させる工程を含む、方法。
【請求項39】
抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、請求項38記載の方法。
【請求項40】
抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、請求項38記載の方法。
【請求項41】
抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9からなる群より選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む、請求項38記載の方法。
【請求項42】
その必要がある対象の癌を治療する方法であって、請求項1~21のいずれか一項記載の抗体またはイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物の有効量を、該対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項43】
癌が、結腸、肺、乳房、卵巣、子宮内膜、膵臓、胃、肝臓、副腎皮質癌、および骨芽細胞腫の癌細胞から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
癌が、急性骨髄性白血病、前立腺癌、神経膠芽腫、膀胱癌、および子宮頸癌から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項45】
請求項1~21のいずれか一項記載の第1および第2の抗体または抗体コンジュゲートを対象に投与する工程を含み、
第1が、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断し、第2が、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、
請求項42記載の方法。
【請求項46】
第1の抗体またはイムノコンジュゲートが、抗体LRP6-A10またはLRP6-B6から選択されるCDR配列セットを含み、第2の抗体またはイムノコンジュゲートが、抗体LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、またはLRP6-G9から選択されるCDR配列セットを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
抗体またはイムノコンジュゲートが、少なくとも1つのアッセイにおいてLRP6に特異的に結合し、かつ少なくとも1つのアッセイにおいてWnt3a誘導性シグナル伝達を阻害し、任意で、抗体またはイムノコンジュゲートが、請求項1~21のいずれか一項記載の抗体またはイムノコンジュゲートである、請求項42記載の方法。
【請求項48】
抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9からなる群より選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む、請求項42記載の方法。
【請求項49】
LRP6を発現する細胞と、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体とを接触させる工程を含む、LRP6のWnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する方法。
【請求項50】
LRP6を発現する細胞と、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体とを接触させることによって、LRP6の非Wnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する方法。
【請求項51】
インビトロで行われる、請求項49または50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
インビボで行われる、請求項49または50のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
なし。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、2019年8月14日に出願された米国仮出願第62/886,918号の優先日の恩典を主張する。
【0003】
共同研究契約のある当事者
なし。
【0004】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されており、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる配列表を含む。2020年8月13日に作成された該ASCIIコピーは、27690-P62374PC00_MODM-006-PCT_SL.txtという名称であり、サイズは24,580バイトである。
【背景技術】
【0005】
背景
Wntシグナル伝達は、細胞運命決定、増殖、生存、極性、および遊走などの様々な細胞プロセスの調節に重要な役割を有する1。Wntシグナル伝達経路における変化した発現、または変異の結果としての撹乱は、胚発生における欠陥、ならびに癌および骨粗鬆症などの様々な病状に関与している2~4。Wntシグナル伝達は、古典的シグナル伝達経路および非古典的シグナル伝達経路の活性化をもたらす1、5。非古典的経路は、核または転写を伴わず、むしろ細胞骨格およびカルシウム貯蔵を調節する細胞質シグナルを活性化するシグナル伝達分子を活性化する。この経路は、主に、細胞極性または遊走を調節する役割を果たす。古典的経路は、β-カテニンの細胞質レベルを調節することによって、転写活性を主に制御する。β-カテニンは、非刺激状態では、Axin、APC、CK1、およびGSK3bから構成される分解複合体と会合し、これにより、β-カテニンのリン酸化、ユビキチン化、およびプロテアソーム分解がもたらされる。Wntシグナル伝達はこの複合体を不安定化し、その結果、核に移行し、TCF/LEF媒介性転写のための共活性化因子として作用する、サイトゾル内の「遊離」β-カテニンの蓄積をもたらす。Wntは、7回膜貫通ドメイン受容体のfrizzledファミリー、およびLRP5またはLRP6のいずれかに結合し、古典的シグナル伝達経路を開始する6、7。
【0006】
LRP5およびLRP6は、約70%の相同性を共有する機能的に重複した1回膜貫通受容体である。FzdおよびLRP5/6へのWntリガンドの結合は、分解複合体およびDishevelled(Dsh/Dvl)の動員、ならびに細胞内ドメインに位置するPPPSPxSモチーフ(SEQ ID NO:1)上のLRP5/6のリン酸化をもたらす8。このリン酸化は、GSK3bおよびCK1によって媒介され、これにより、GSK3b活性が低下され、β-カテニンリン酸化およびその後のプロテオソーム分解が阻害され、TCF/LEF媒介性転写活性が増強される。LRP6は、胚発生中および成体組織内に広く発現される。LRP6の変異は骨量疾患に関連しており、LRP6のノックアウトまたは変異を有するいくつかのマウスモデルは、骨発達の変化を示す9。LRP6発現はまた、ヒト悪性組織およびヒト癌細胞株では上昇していることが示されており、そのような細胞株におけるWntシグナル伝達はLRP6の発現に依存している10~12。これは、LRP6がWntシグナル伝達ではLRP5よりも効果的であるように思われるという観察によってさらに裏付けられる13、14。Wntシグナル伝達の調節におけるLRP6の重要性、およびいくつかのヒト疾患に果たすその確立された役割のために、LRP6は、治療薬開発のためのますます重要な標的になりつつある。近年、LRP6を標的とするヒト合成抗体により、WntリガンドがLRP6の細胞外ドメインの様々な領域にどのように結合するかに関して重要な洞察が明らかにされた。さらに、試験ではまた、LRP6に対する抗体に拮抗することが、Wntによって促進される異種移植片腫瘍のインビボ成長を阻害し得ることが示された15、16。ただし、これらの抗体は依然として発見段階にあり、臨床における治療剤としてのそれらの可能性は依然として解明されていない。LRP6、ならびにWntシグナル伝達および依然として発見されていない、様々な疾患の病因に果たすその役割を取り巻く重要な生物学が存在し、合成抗体という深遠なツールボックスは、これらの役割を体系的に明らかにし、追加の標的治療薬を提供するのに役立つ。
【0007】
Wntシグナル伝達は、古典的シグナル伝達経路および非古典的シグナル伝達経路の活性化をもたらす。非古典的経路は、核または転写を伴わず、むしろ細胞骨格およびカルシウムレベルを調節する細胞質シグナルを活性化するシグナル伝達分子を活性化する。この経路は、主に、細胞極性または遊走を調節する役割を果たす。
【0008】
古典的経路は、β-カテニンの細胞質レベルを調節することによって、転写活性を主に制御する。β-カテニンは、非刺激状態では、Axin、APC、CD1およびGSK βから構成される分解複合体と会合し、これにより、β-カテニンのリン酸化、ユビキチン化、およびプロテアソーム分解がもたらされる。Wntが、frizzled(FDZ)、7回膜貫通受容体、および共受容体低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(co-receptor low density lipoprotein receptor-related protein)(LRP5またはLRP6のいずれか)に結合している場合、Wntシグナル伝達は活性である。このシグナル伝達は、一つには、disheveled(Dsh/Dvl)を原形質膜に引き付けることによって複合体を不安定化し、β-カテニンの蓄積をもたらし、これにより、β-カテニンが核に移動し、TCF/LEF媒介性転写を活性化する。
【0009】
以下に記載される本発明は、先行技術の抗体ファージディスプレイライブラリーおよび技術を利用することによって、LRP6の細胞外エピトープを標的とする一連の新規合成抗体を同定する。
【発明の概要】
【0010】
概要
一局面では、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む、LRP6に特異的に結合する抗体が本明細書において提供され、重鎖可変領域は、相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含み、軽鎖可変領域は、相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含み、上記CDRのアミノ酸配列は、抗LRP6抗体:LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9のCDR配列セットから選択される配列を含むか、またはそれらからなる。一態様では、上記CDRのアミノ酸配列は、以下に記載の配列から選択される配列を含むか、またはそれらからなり、CDR-H1は、
からなる群より選択され、CDR-H2は、
からなる群より選択され、CDR-H3は、
からなる群より選択され、CDR-L1はSVSSA(SEQ ID NO:14)であり、CDR-L2はSASSLYS(SEQ ID NO:15)であり、および/またはCDR-L3は、
からなる群より選択される。別の態様では、抗体は、以下を含む重鎖可変領域を含む:(i)表2に記載の重鎖アミノ酸配列、(ii)表2に記載の重鎖アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、アミノ酸配列、または(iii)保存的に置換されたアミノ酸。別の態様では、抗体は、以下を含む軽鎖可変領域を含む:(i)表2に記載の軽鎖アミノ酸配列、(ii)表2に記載の軽鎖アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、アミノ酸配列、または(iii)保存的に置換されたアミノ。別の態様では、CDR配列は、表1において同定された抗体から選択される完全なCDR配列セットである。別の態様では、抗体は、LRP5と交差反応する。別の態様では、CDR配列は、表1において同定された抗体から選択される軽鎖CDR配列セットまたは重鎖CDR配列セットを含む。別の態様では、抗体は、LRP6に特異的に結合する。別の態様では、CDR配列は、抗体LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9から選択される抗体のCDR配列セットである。別の態様では、抗体は、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する。別の態様では、抗体は、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する。別の態様では、抗体はモノクローナル抗体である。別の態様では、抗体はヒト化抗体である。別の態様では、抗体は一本鎖抗体である。別の態様では、抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディ、およびそれらの多量体から選択される抗体結合断片である。別の態様では、抗体は二重特異性抗体である。別の態様では、抗体は、FZD受容体にさらに結合する二重特異性抗体である。別の態様では、抗体は、非天然グリコシル化パターンを含む。別の態様では、抗体は、例えば、定常領域またはフレームワーク領域にシステインの置換または付加を含む。
【0011】
別の局面では、本明細書において提供される抗体と、検出可能な標識または細胞傷害剤とを含むイムノコンジュゲートが、本明細書において提供される。一態様では、イムノコンジュゲートは、メイタンシノイド、アウリスタチン、ドラスタチン、チューブリシン(tubulysin)、クリプトフィシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体、インドリノベンゾジアゼピン二量体、α-アマニチン、トリコテン(trichothene)、SN-38、デュオカルマイシン、CC1065、カリケアマイシン(calicheamincin)、エンジイン抗生物質、タキサン、ドキソルビシン誘導体、アントラサイクリンおよびそれらの立体異性体、アザノフィド(azanofide)、アイソスター、類似体または誘導体から選択される細胞傷害剤を含む。
【0012】
別の局面では、本明細書において提供される抗体をコードする核酸分子が、本明細書において提供される。一態様では、CDR配列のうちの1つまたは複数は、表2の核酸によってコードされる。別の態様では、抗体は、以下を含む、核酸によってコードされる重鎖可変領域を含む:(i)表2に記載の重鎖核酸配列、(ii)表2に記載の重鎖核酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、ヌクレオチド配列、または(iii)(i)のコドン縮退核酸配列(codon degenerate nucleic acid sequence)であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、コドン縮退核酸配列。別の態様では、抗体は、以下を含む核酸によってコードされる軽鎖可変領域を含む:(i)表2に記載の軽鎖核酸配列、(ii)表2に記載の軽鎖核酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、核酸配列、または(iii)(i)のコドン縮退核酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、コドン縮退核酸配列。
【0013】
別の局面では、本明細書において提供される核酸に機能的に連結された発現制御配列を含むベクターが、本明細書において提供される。
【0014】
別の局面では、本明細書において提供される核酸に機能的に連結された発現制御配列を含む組換え核酸分子を含む宿主細胞が、本明細書において提供される。一態様では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0015】
別の局面では、本明細書において提供されるベクターを含む宿主細胞が、本明細書において提供される。
【0016】
別の局面では、本明細書において提供される宿主細胞を培養する工程を含む、抗LRP6抗体を作製するための方法が、本明細書において提供される。
【0017】
別の局面では、任意で好適な希釈剤とともに、本明細書において提供される抗体、イムノコンジュゲート、核酸分子、ベクター、または宿主細胞を含む組成物が、本明細書において提供される。一態様では、組成物は、1つまたは複数の抗体またはイムノコンジュゲートを含み、任意で、組成物は薬学的組成物である。
【0018】
別の局面では、本明細書において提供される抗体、イムノコンジュゲート、核酸分子、ベクター、または宿主細胞を含むキットが、本明細書において提供される。
【0019】
別の局面では、抗体:細胞複合体の形成を許容する条件下で、1つまたは複数の細胞を含む試料と、本明細書において提供される1つまたは複数の抗体またはイムノコンジュゲートとを接触させる工程、および任意の抗体複合体の存在を検出する工程を含む、LRP6発現を検出する方法が、本明細書において提供される。一態様では、検出は、免疫蛍光によるものである。別の態様では、検出は、フローサイトメトリーによるものである。別の態様では、本方法は、LRP4発現を検出するためものであり、抗体またはイムノコンジュゲートは、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9から選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む。
【0020】
別の局面では、LRP6受容体へのWntリガンド結合を阻害するか、Wntシグナル伝達経路を妨害するか、Wnt誘導性転写活性を阻害するか、disheveledの活性化を阻害するか、β-カテニン分解複合体の保存を促進するか、β-カテニンの蓄積を促進するか、または細胞の増殖を阻害する方法が、本明細書において提供され、本方法は、LRP6受容体を発現する細胞と、本明細書において提供される抗体またはイムノコンジュゲートとを接触させる工程を含む。さらに別の局面では、LRP6受容体へのWntリガンド結合を阻害するか、Wntシグナル伝達経路を妨害するか、Wnt誘導性転写活性を阻害するか、disheveledの活性化を阻害するか、β-カテニン分解複合体の保存を促進するか、β-カテニンの蓄積を促進するか、または細胞の増殖を阻害するのに使用するための、本明細書において提供される抗体またはイムノコンジュゲートが提供される。さらなる局面では、LRP6受容体へのWntリガンド結合を阻害するか、Wntシグナル伝達経路を妨害するか、Wnt誘導性転写活性を阻害するか、disheveledの活性化を阻害するか、β-カテニン分解複合体の保存を促進するか、β-カテニンの蓄積を促進するか、または細胞の増殖を阻害するための、本明細書において提供される抗体またはイムノコンジュゲートの使用が提供される。さらに別の局面では、LRP6受容体へのWntリガンド結合を阻害するか、Wntシグナル伝達経路を妨害するか、Wnt誘導性転写活性を阻害するか、disheveledの活性化を阻害するか、β-カテニン分解複合体の保存を促進するか、β-カテニンの蓄積を促進するか、または細胞の増殖を阻害するための医薬品の製造における、本明細書において提供される抗体またはイムノコンジュゲートの使用が提供される。一態様では、抗体またはイムノコンジュゲートは、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する。別の態様では、抗体またはイムノコンジュゲートは、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する。別の態様では、抗体またはイムノコンジュゲートは、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9から選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む。
【0021】
別の局面では、本明細書において提供される抗体またはイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物の有効量を対象に投与する工程を含む、その必要がある対象の癌を治療する方法が、本明細書において提供される。別の態様では、その必要がある対象の癌を治療するのに使用するための、本明細書において提供される抗体またはイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物である。さらなる態様では、その必要がある対象の癌を治療するための、本明細書において提供される抗体またはイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物の使用である。さらに別の態様では、その必要がある対象の癌を治療するための医薬品の製造における、本明細書において提供される抗体またはイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物の使用である。一態様では、癌は、結腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵癌、胃癌、肝癌、副腎皮質癌、および骨芽細胞腫の癌細胞から選択される。別の態様では、癌は、急性骨髄性白血病、前立腺癌、神経膠芽腫、膀胱癌、および子宮頸癌から選択される。別の態様では、本方法は、本明細書において提供される第1および第2の抗体または抗体コンジュゲートを対象に投与する工程を含み、第1は、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断し、第2は、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する。別の態様では、第1の抗体またはイムノコンジュゲートは、抗体LRP6-A10およびLRP6-B6から選択されるCDR配列セットを含み、かつ第2の抗体またはイムノコンジュゲートは、抗体LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、またはLRP6-G9から選択されるCDR配列セットを含む。別の態様では、抗体またはイムノコンジュゲートは、少なくとも1つのアッセイにおいてLRP6に特異的に結合し、少なくとも1つのアッセイにおいてWnt3a誘導性シグナル伝達を阻害し、任意で、抗体またはイムノコンジュゲートは、本明細書において提供される抗体またはイムノコンジュゲートである。別の態様では、抗体またはイムノコンジュゲートは、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9から選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む。
【0022】
別の局面では、LRP6を発現する細胞と、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体とを接触させる工程を含む、LRP6のWnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する方法が、本明細書において提供される。一態様では、本方法は、インビトロで行われる。別の態様では、本方法は、インビボで行われる。
【0023】
別の局面では、LRP6を発現する細胞と、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体とを接触させることによって、LRP6の非Wnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する方法が、本明細書において提供される。一態様では、本方法は、インビトロで行われる。別の態様では、本方法は、インビボで行われる。
【0024】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を形成する添付の図面は、例示的な態様を示し、説明とともに、当業者がこれらの態様および当業者には明らかであろう他のものを作製および使用することを可能にするのにさらに役立つ。本発明は、以下の図面と併せてさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1aおよび
図1bは、6個のLRP抗体を示す。(A)重鎖(H)および軽鎖(L)の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を示す。競合ELISAによって決定されるように、抗体を固有のエピトープに群分けした。(B)マウスLRP5、マウスLRP6およびヒトLRP6キメラのECDによってコーティングした96ウェルMaxisorb免疫プレートを用いて、単一点ELISAを行った。プレートを、示された濃度の精製されたFabまたはIgG1とインキュベートし、続いて、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化抗κ抗体とインキュベートした。ウェルを8回洗浄した後、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン/H
2O
2ペルオキシダーゼ(TMB)基質と、5~10分間インキュベートした。1M H
3PO
4を加えることによって反応を停止させ、吸光度をマイクロタイタープレートリーダーで450nmで分光測定した。
【
図2】
図2は、フローサイトメトリーによる、細胞表面LRP6へのIgG1結合の分析を示す。NSCLS細胞株H23への結合について、LRP6 IgGを試験した。F(ab’)
2に対するAlexa488コンジュゲート二次抗体を使用して、抗LRP6 IgG1タンパク質の結合を検出した。染色された抗LRP6集団は緑色で示され、二次のみの状態の集団は青色で塗りつぶされて示されている。
【
図3】
図3A~
図3Cは、癌細胞内の転写活性に対するLRP6 IgGの効果を示す。(A)MDAMB231細胞、(B)T407D細胞、および(C)U2OS細胞に対して、TOPflash(ホタルルシフェラーゼ遺伝子)を使用して、TCF/LEFレポーターアッセイを行った。馴化培地による刺激の前に、示された濃度のIgGを用いて1時間処理した白壁白色底96ウェルプレートに、細胞を播種した。馴化培地による刺激の16~20時間後に細胞を溶解し、ホタル発光試薬を加えることによって生成された発光シグナルを測定することによってレポーター活性を評価した。陰性対照抗体、抗MBPを用いて処理し、ConCMによって刺激した細胞内で観察されたシグナルに対して値を正規化する。提示されたデータは、各条件が3回の反復の平均である3回の独立した実験を表す。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、癌細胞内の転写活性に対するLRP6 IgGの効果を示す。(A)馴化培地を用いて処理したH23細胞に対するTOPflash(ホタルルシフェラーゼ遺伝子)を使用してTCF/LEFレポーターアッセイを行ったか、または(B)組換えWnt3a(500ng/ml)もしくはテトラサイクリン(2ng/ml)を用いてHEK293_Wnt1細胞を刺激する。
図3の説明に記載されるように、レポーター活性を評価した。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、癌細胞内の転写活性に対するLRP6 IgGの効果を示す。組換えWnt3a(500ng/ml)によって刺激する前に、LRP 6-A10およびLRP 6-G3 IgG1を用いて処理した(A)MDAMB231乳癌細胞および(B)T407D乳癌細胞に対してTOPflash(ホタルルシフェラーゼ遺伝子)を使用して、TCF/LEFレポーターアッセイを行った。
図3の説明に記載されるように、レポーター活性を評価した。
【
図6】
図6A~
図6Cは、癌細胞内の転写活性に対するLRP6-A10 IgG1およびFabの効果を示す。漸増濃度のLRP6-A10(A)IgG1または(B)Fabタンパク質を用いて前処理したMDAMB231、U2OS、およびH23癌細胞に対してTOPflash(ホタルルシフェラーゼ遺伝子)を使用して、Wnt3aCM誘導性TCF/LEFレポーターアッセイを行った。
図3の説明に記載されるように、レポーター活性を評価した。(C)非線形回帰分析によってIC50を決定した。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、β-カテニンシグナル伝達に対するLRP6 IgG1の効果を示す。馴化培地による刺激の前に、示された時点についてLRP6 IgG(100 nM)を用いてH23細胞株を前処理した。(A)全細胞溶解物または(B)膜画分およびサイトゾル画分を生成し、SDS/PAGEによって分離した。PVDF膜を切断し、リン酸化されたLRP6、LRP5、LRP6、Axin1、Dvl3、およびβ-カテニンについて免疫ブロットした。アクチンを全細胞溶解物のローディングコントロールとして使用し、Na/K ATPaseおよびGAPDHをそれぞれ膜画分およびサイトゾル画分のローディングコントロールとして使用した。
【
図8】
図8は、多点競合ELISA(multi-point competitive ELISA)を示す。用量応答曲線および非線形回帰プロットは、LRP6抗体に関するものである。
【
図9】
図9は、フローサイトメトリーによる、細胞表面LRP6へのIgG1結合の分析を示す。乳癌細胞株MDAMB231への結合について、LRP6 IgGを試験した。F(ab’)
2に対するAlexa488コンジュゲート二次抗体を使用して、抗LRP6 IgG1タンパク質の結合を検出した。染色された抗LRP6集団は緑色で示され、二次のみの状態の集団は塗りつぶされて示されている。
【
図10】
図10は、フローサイトメトリーによる、細胞表面LRP6へのIgG1結合の分析を示す。乳癌細胞株T47Dへの結合について、LRP6 IgGを試験した。F(ab’)
2に対するAlexa488コンジュゲート二次抗体を使用して、抗LRP6 IgG1タンパク質の結合を検出した。染色された抗LRP6集団は緑色で示され、二次のみの状態の集団は青色で塗りつぶされて示されている。
【
図11】
図11は、Wnt古典的シグナル伝達経路の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
I. 定義
別途定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。例えば、用語「細胞」は、単一の細胞、および複数の細胞、または細胞の集団を含む。一般に、本明細書において記載される細胞および組織の培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの化学およびハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法、ならびにそれらの技術は、当技術分野において周知であり、一般的に使用されるものである(例えば、Green and Sambrook, 2012を参照)。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して連結された天然および/または非天然アミノ酸の配列を有する分子を指す。用語「ペプチド」は、典型的には30アミノ酸長以下の短いポリペプチドを指す。ポリペプチドのアミノ酸配列は、その「一次構造」と呼ばれる。用語「タンパク質」は、二次、三次、および/または四次構造、例えば、水素結合によって安定化された構造、二次構造と複数のタンパク質から形成された構造との間の関係を有するポリペプチドを指す。タンパク質は、例えば、炭水化物(糖タンパク質)、脂質(リポタンパク質)リン酸基(リンタンパク質)などの他の結合部分によってさらに修飾され得る。
【0028】
本明細書において使用される場合、アミノ酸配列は、その配列内のアミノ酸のみ「からなる」。
【0029】
本明細書において使用される場合、第1のアミノ酸配列が、(1)第2のアミノ配列を含み、かつ(2)第2のアミノ酸配列よりも1以下、2以下、または3以下長いアミノ酸である場合、第1のアミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0030】
本明細書において使用される場合、第2のアミノ酸配列が第1のアミノ酸配列を含む場合、第1のアミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列の「断片」である。特定の態様では、第2のアミノ酸配列の断片である第1のアミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列よりも1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、または10個以下少ないアミノ酸を有し得る。
【0031】
本明細書において使用される場合、参照アミノ酸配列の「機能的等価物」は、参照配列と同一ではないが、例えば、1個または数個のアミノ酸の挿入、欠失、または置換などのわずかな変化を含む配列である。機能的に等価な配列は、それが等価である参照配列の機能(例えば免疫原性)を保持する。機能的に等価なアミノ酸配列が参照配列に対する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む場合、これらは一般に保存的アミノ酸置換である。
【0032】
本明細書において使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、タンパク質の所望の特性を失わずに1つのアミノ酸残基が別のアミノ酸残基によって置換されているものである。好適な保存的アミノ酸置換は、類似の疎水性、極性、およびR鎖長を有するアミノ酸を互いに置換することによって行うことができる。例えば、Watson, et al., “Molecular Biology of the Gene, ”4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. Co., Menlo Park, CA, p. 224を参照されたい。保存的アミノ酸置換の例には、以下が挙げられる(一部のカテゴリーは相互に排他的でないことに留意されたい)。
【0033】
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「実質的に同一」は、第1および第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメインおよび/または共通の機能的活性および/または共通の免疫原性を有するように、(i)第2のアミノ酸配列内のアライメントされたアミノ酸残基と同一であるか、または(ii)第2のアミノ酸配列内のアライメントされたアミノ酸残基の保存的置換である、十分な数または最小数のアミノ酸残基を含む、第1のアミノ酸配列間の同一性を指す。例えば、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有する共通の構造ドメインまたは抗原性ドメインを含むアミノ酸配列は、十分にまたは実質的に同一であると称される。ヌクレオチド配列の文脈では、第1および第2のヌクレオチド配列が共通の機能的活性を有するポリペプチドをコードするか、または共通の構造ポリペプチドドメインまたは共通の機能的ポリペプチド活性をコードするか、または同じ免疫原性特性を有するポリペプチドをコードするように、第2の核酸配列内のアライメントされたヌクレオチドと同一である十分な数または最小数のヌクレオチドを含む第1の核酸配列を指すために、用語「実質的に同一」が本明細書において使用される。
【0035】
本明細書において使用される場合、用語「抗原」、「免疫原」、および「抗体標的」は、抗体によって認識される、すなわち、抗体によって結合され得る分子、化合物、または複合体を指す。該用語は、抗体によって認識され得る任意の分子、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、化学的部分、またはそれらの組合せ(例えば、リン酸化ポリペプチドまたはグリコシル化ポリペプチドなど)を指すことができる。当業者であれば、該用語が、分子があらゆる状況において免疫原性であることを示すのではなく、抗体によって標的とされ得ることを単に示すことを理解するであろう。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「エピトープ」は、抗体によって認識および結合される、抗原上の局在部位を指す。エピトープは、数個のアミノ酸、または数個のアミノ酸の一部、例えば、5もしくは6個、またはそれ以上、例えば、20個以上のアミノ酸、またはそれらのアミノ酸の一部を含み得る。場合によっては、エピトープは、例えば、炭水化物、核酸、または脂質由来の非タンパク質成分を含む。場合によっては、エピトープは三次元部分である。したがって、例えば、標的がタンパク質である場合、エピトープは、連続したアミノ酸、またはタンパク質のフォールディングによって近接される、タンパク質の異なる部分からのアミノ酸から構成され得る(例えば、不連続エピトープ)。
【0037】
本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、またはそれらの組合せなどの1つまたは複数の標的抗原を認識し、それに特異的に結合する免疫グロブリンを指す。この結合は、抗原上の1つまたは複数のエピトープでは、免疫グロブリンの可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して起こる。可変領域は、結合特異性および親和性に最も重要である。本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、抗体が所望の生物学的活性を示す限り、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、抗体断片、一本鎖Fv(scFv)変異体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ハイブリッド抗体、融合タンパク質、および抗原認識部位を含む任意の他の免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、(i)それらの重鎖定常ドメイン-α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、およびμ(IgM)の同一性に基づく免疫グロブリンの5つの主要なクラスのいずれか、または(ii)そのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のものであり得る。軽鎖は、λまたはκのいずれかであり得る。抗体は、裸であってもよく、または他の分子、例えば、毒素、薬物、放射性同位体、化学療法剤などにコンジュゲートされていてもよい。
【0038】
一態様では、「インタクトな抗体」は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成される四量体を含み、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する。重鎖および軽鎖は、様々な免疫グロブリンクラス間で数および量が異なる共有結合および非共有結合(例えば、ジスルフィド結合)を介して連結される。一局面では、各鎖は、可変領域および定常領域を含む。可変領域の抗原認識部位は、超可変領域または相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域から構成される。フレームワーク領域は、典型的には抗原と接触しないが、CDRの構造的支持を提供する。定常領域は、身体の他の免疫細胞と相互作用する。定常領域と可変領域(IgMまたはIgEではなく、IgG、IgD、IgAのみ)との間には、2つの重鎖の間の中央に、抗原結合を連結するための柔軟性を提供するヒンジ領域がある。
【0039】
以下は、いずれも抗原結合活性を保持する異なる抗体形態の非網羅的な一覧である:
(1)全免疫グロブリン(「インタクトな」抗体とも呼ばれる)(2つの軽鎖および2つの重鎖、例えば四量体)。
(2)免疫グロブリンポリペプチド(軽鎖または重鎖)。
(3)抗体断片、例えば、Fv(一価または二価の可変領域断片)は、可変領域(例えば、VLおよび/またはVH)、Fab(VLCL VHCH)、F(ab’)2、Fv(VLVH)、scFv(一本鎖Fv)(リンカー、例えばペプチドリンカーによって連結されたVLおよびVHを含むポリペプチド)、(scFv)2、sc(Fv)2、二重特異性sc(Fv)2、二重特異性(scFv)2、ミニボディ(CH3ドメインに融合したsc(Fv)2)のみを包含することができ、トリアボディは、三価sc(Fv)3または三重特異性sc(Fv)3である。
(4)多価抗体(2つの異なるエピトープまたはタンパク質に結合する結合領域を含む抗体、例えば「スコーピオン」抗体。
(5)別のアミノ酸配列(蛍光タンパク質など)に融合した免疫グロブリンの結合部分を含む、融合タンパク質。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「抗体断片」は、インタクトまたは完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含み、抗原に結合するか、インタクトな抗体と競合する、抗体または抗体鎖の一部または部分を指す。断片は、インタクトまたは完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的な処理によって得ることができる。断片は、組換え手段によって得ることもできる。例えば、F(ab’)2断片は、ペプシンを用いて抗体を処理することによって生成することができる。得られたF(ab’)2断片を処理してジスルフィド架橋を還元して、Fab’断片を生成することができる。パパイン消化は、Fab断片の形成をもたらすことができる。Fab、Fab’およびF(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体断片、ならびに他の断片も、組換え発現技術によって構築することができる。
【0041】
様々な抗体断片が、インタクトな抗体の消化の産物に関して定義されているが、当業者であれば、同様にそのような断片を、デノボ化学的に合成してもよく、または組換えDNA方法を使用して構築し発現させてもよいことを理解するであろう。
【0042】
一本鎖Fv(scFv)とは、リンカー、例えばペプチドリンカーによって連結されたVLおよびVHを含むポリペプチドを指す。scFvはまた、タンデム(または二価)scFvまたはダイアボディを形成するために使用され得る。タンデムscFvおよびダイアボディの生成および特性は、例えば、Asano et al.(2011) J Biol. Chem. 286: 1812; Kenanova et al. (2010) Prot Eng Design Sel 23: 789; Asano et al. (2008) Prot Eng Design Sel 21: 597に記載されている。
【0043】
抗体断片は、Fd抗体(Fab断片に含まれる重鎖の部分)および単一ドメイン抗体をさらに含む。単一ドメイン抗体(sdAb)は、組換え法によって生成される重鎖または軽鎖のいずれかの可変ドメインである。
【0044】
本明細書において使用される語句「CDR配列セット」は、本明細書において記載される特定の抗体の3つの重鎖CDRおよび/または3つの軽鎖CDRを指す。「軽鎖」CDR配列セットとは、軽鎖CDR配列を指す。「重鎖」CDR配列セットとは、重鎖CDR配列を指す。「完全な」CDR配列セットとは、重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列の両方を指す。例えば、抗体LRP6-A1の場合、表1に示すように、完全なCDR配列セットは、
を含むか、またはそれらからなる。各CDRのCDR配列は、例えば、表1のCDRを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなることができる。CDRは、IMGT配列アライメントに基づいて予測される。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、抗原上の所与のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を有する抗体のクローン調製物または組成物(「モノクローナル抗体組成物」)を指す。「ポリクローナル抗体」は、単一の抗原に対して生じるが、結合特異性および親和性が異なる抗体の調製物または組成物(「ポリクローナル抗体組成物」)を指す。
【0046】
本明細書において使用される場合、用語「キメラ抗体」は、2つ以上の種に由来するアミノ酸配列を有する抗体を指す。一態様では、軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、所望の特異性、親和性、および能力を有する、哺乳動物の1つの種(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)に由来する抗体の可変領域に対応するが、定常領域は、免疫応答の誘発を回避するために別の種(典型的には、治療を受けている対象、例えばヒトにおいて)に由来する配列と相同である。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「ヒト化抗体」は、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト抗体のVH領域およびVL領域から得られたCDRがヒトフレームワーク配列にグラフトされているキメラ抗体を指す。一態様では、ヒト化抗体のフレームワーク残基を修飾して、抗体の特異性、親和性、および能力を、改良および最適化する。ヒト化、すなわち、ヒト抗体の対応する配列に対する非ヒトCDR配列の置換は、例えば、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,661,016号、Riechmann et al., Nature 332: 323-327(1988); Marks et al., Bio/Technology 10: 779-783(1992); Morrison, Nature 368: 812-13(1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14: 845-51(1996)に記載されている方法に従って行うことができる。
【0048】
本明細書において使用される場合、用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体、または当技術分野において公知の任意の技術によって作製された、それに対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。
【0049】
本明細書において使用される場合、用語「ハイブリッド抗体」は、異なる抗原決定基領域を有する抗体由来の重鎖と軽鎖との対が、得られる四量体によって2つの異なるエピトープまたは2つの異なる抗原が認識および結合され得るように、一緒に組み立てられている抗体を指す。ハイブリッド抗体は、二重特異性(2つの異なる抗原またはエピトープに結合する)または多重特異性(1つを超える異なる抗原またはエピトープ)であり得る。
【0050】
本明細書において使用される場合、抗体は、その抗原結合部位の全部が同じエピトープに結合する場合、「単一特異性」である。
【0051】
本明細書において使用される場合、抗体は、異なるエピトープまたは抗原にそれぞれ結合する少なくとも2つの異なる抗原結合部位を有する場合、「二重特異性」である。
【0052】
本明細書において使用される場合、抗体は、複数の抗原結合部位を有する場合、「多価」である。例えば、四価の抗体は、4つの抗原結合部位を有する。
【0053】
結合の特異性は、抗体、および環境内の他の材料、または一般に無関係な分子に関する解離定数と比較して、標的に対する抗体(または他のターゲティング部分)の比較解離定数(Kd)に関して定義され得る。比較的大きい(比較的高い)Kdは、比較的低い親和性相互作用を表すKdである。逆に、比較的小さい(比較的低い)Kdは、比較的高い親和性相互作用または比較的緊密な結合を表すKdである。ほんの一例として、標的に特異的に結合する抗体のKdは、フェムトモル、ピコモル、ナノモルまたはマイクロモルであり得、無関係な材料に結合する抗体のKdは、ミリモル以上であり得る。結合親和性は、マイクロモル範囲(kD=10-4~10-6)、ナノモル範囲(kD=10-7M~10-9M)、ピコモル範囲(kD=10-10M~10-12M)、またはフェムトモル範囲(kD=10-13M~10-15M)であり得る。
【0054】
本明細書において使用される場合、抗体は、10-4M未満(すなわち、マイクロモル範囲)のKdで抗原またはエピトープに結合する場合、抗原またはエピトープに「結合する」か、それを「認識する」。細胞型に関して「結合する」という用語(例えば、癌細胞に結合する抗体)は、典型的には、作用物質が、それらの細胞の純粋な集団内の細胞の大部分に結合することを示す。例えば、所与の細胞型に結合する抗体は、典型的には、示された細胞の集団内の細胞の少なくとも2/3(例えば、67、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%)に結合する。場合によっては、ポリペプチドへの結合は、ポリペプチドを提示する細胞への抗体の結合と、ポリペプチドを発現しない細胞への抗体の結合(またはその欠如)とを比較することによって、アッセイすることができる。当業者であれば、結合を決定する方法および/または閾値に応じて、いくらかの変動が生じることを認識するであろう。標的に対する抗体の親和性は、例えば、Ernst et al. Determination of Equilibrium Dissociation Constants, Therapeutic Monoclonal Antibodies(Wiley&Sons ed. 2009)に概説されているように、当技術分野において公知の方法に従って決定することができる。
【0055】
本明細書において使用される場合、本明細書において使用される用語「比較的大きい親和性」は、抗体Xが標的Zよりも強く標的Yに結合し(Kon)および/または解離定数(Koff)が小さい場合の抗体結合の相対的な程度を指し、この文脈では、抗体Xは、標的Yに対してZよりも大きい親和性を有する。同様に、本明細書における用語「比較的小さい親和性」は、抗体Xが標的Zよりも弱くおよび/または大きい解離定数で標的Yに結合する場合の抗体結合の程度を指し、この文脈では、抗体Xは、標的Yに対してZよりも小さい親和性を有する。抗体とその標的抗原との間の結合の親和性は、1/KDに等しいKAとして表すことができ、ここで、KDはkon/koffに等しい。konおよびkoffの値は、表面プラズモン共鳴技術を使用して、例えば、Molecular Affinity Screening System(MASS-1)(Sierra Sensors GmbH、Hamburg, Germany)を使用して、測定することができる。アンタゴニストまたは遮断抗体とは、抗体が存在しない場合の類似の生理学的条件下での活性と比較して、標的抗原に関連する生物学的活性を、部分的または完全に、遮断阻害または中和する抗体である。アンタゴニストは、競合的、非競合的、または不可逆的であり得る。競合的アンタゴニストとは、天然のリガンド-受容体相互作用と同じ部位で天然のリガンドまたは受容体に結合するか、正常な結合を妨げる変化を誘導する様式でアロステリックに結合する物質である。非競合的アンタゴニストは、天然のリガンド-受容体相互作用とは異なる部位で結合するが、相互作用に起因するKDまたはシグナルを低下させる。不可逆的阻害剤は、受容体に共有結合修飾を引き起こし、その後のいかなる結合も妨げる。
【0056】
本明細書において使用される場合、用語「アビディティー」は、抗体と標的抗原との間の結合複合体の全体的な安定性を指す。それは、3つの因子、すなわち、(i)抗原に対する抗体の固有の親和性、(2)抗体の結合価、および(3)相互作用する成分の幾何学的配置によって規定される。親和性は、抗体と単一の標的との間の相互作用の強度であるのに対して、アビディティーは、複数の親和性の累積強度である。一態様では、本明細書において提供される抗体は二価である。
【0057】
本明細書において使用される場合、抗体は、第2の抗原よりも大きい親和性で第1の抗原に結合する場合、第2の抗原と比較して第1の抗原に「優先的に結合する」。優先的結合は、2倍、5倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍大きい親和性の少なくともいずれかであり得る。したがって、例えば、抗体は、LRP5に結合するよりも大きい親和性でLRP6に結合する場合、LRP5と比較してLRP6に優先的に結合する。
【0058】
本明細書において使用される場合、抗体は、1×10-6M、1×10-7M、1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、1×10-12Mの少なくともいずれかの親和性で標的抗原、または抗原の標的群の各メンバーに結合し、例えば、比較されている非標的抗原に対するその親和性の少なくとも2倍の親和性で、標的抗原、または抗原の標的群の各メンバーに結合する場合、標的抗原、または抗原の標的群に「特異的に結合する」か、または「特異的である」。典型的には、特異的結合は、抗体が抗原またはエピトープを検出するための診断薬として、および/または抗原またはエピトープを標的とする際の治療剤として有用であるのに十分な親和性で抗原に結合することを特徴とする。
【0059】
本明細書において使用される場合、および抗体は、リガンドと受容体とのあらゆる相互作用を競合的に低減または防止する場合、リガンドと受容体との結合を「遮断」するか、またはそれに「拮抗」する。一態様では、測定される低減レベルは、対照(例えば、未処理)細胞の5%、10%、25%、50%、80%、90%、95%、97.5%、99%、99.5%、99.9%の少なくともいずれかであり得る。例えば、LRP6受容体へのWntリガンドの結合に拮抗するか、またはそれを遮断する抗体は、LRP6受容体とのWntタンパク質の相互作用を、競合的に低減または防止する。これにより、Wntシグナル伝達に関連する下流シグナル伝達事象が減衰または遮断される。これには、例えば、disheveledの活性化、β-カテニン分解複合体の溶解、β-カテニンのサイトゾルレベルの低下、および/またはTCF/LEF媒介性転写の活性の低下が含まれる。
【0060】
抗体標的(例えば、抗原、分析物、免疫複合体)に関して「捕捉する」という用語は、典型的には、抗体が、純粋な集団内の抗体標的の大部分に結合することを示す(適切なモル比を仮定する)。例えば、所与の抗体標的に結合する抗体は、典型的には、溶液中の抗体標的の少なくとも2/3に結合する(例えば、67、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の少なくともいずれか)。当業者であれば、結合を決定する方法および/または閾値に応じていくらかの変動が生じることを認識するであろう。
【0061】
用語「コンジュゲート」は、検出可能な標識などの部分、または薬物、毒素、もしくは化学療法剤もしくは細胞傷害剤などの生物学的に活性な部分と化学的に結合した第1の分子、例えば抗体(「イムノコンジュゲート」)を指す。したがって、本開示は、1つまたは複数の部分とコンジュゲートされた抗体を企図する。さらに、抗体は、「コンジュゲート抗体」または「非コンジュゲート抗体」(すなわち、部分とはコンジュゲートしていない)であり得る。
【0062】
本明細書において使用される場合、用語「抗体-薬物コンジュゲート」、すなわち(「ADC」)は、薬物とコンジュゲートされた抗体を指す。典型的には、コンジュゲーションは、リンカーを介した共有結合を含む。
【0063】
本明細書において使用される場合、用語「標識された」分子(例えば、核酸、タンパク質、または抗体)は、分子に結合した検出可能な標識の存在を検出することによって分子の存在が検出され得るように、リンカーもしくは化学結合を介して共有結合的に、またはイオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合、もしくは水素結合を介して非共有結合的に、検出可能な標識に結合している分子を指す。
【0064】
本明細書において使用される場合、用語「検出可能な標識」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的な手段によって検出可能な組成物を指す。検出可能な標識の例は本明細書において記載されており、検出可能な標識の例には、限定されることなく、比色標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、および放射性標識が挙げられる。本開示の目的のために、検出可能な標識はまた、それ自体はシグナルを生成しないが(例えば、ビオチン)、シグナルを生成することができる第2の部分に結合する(例えば、標識アビジン)部分であり得る。
【0065】
抗体に関する用語「架橋された」は、固体マトリックスもしくは半固体マトリックス(例えば、セファロース、ビーズ、マイクロタイタープレート)、または別のタンパク質もしくは抗体への抗体の付着を指す。例えば、抗体を多量体化して、複数の(2つを超える)抗原結合部位を有する抗体複合体を作製することができる。高結合価アイソタイプ(例えば、典型的にはそれぞれ2つまたは5つの抗体の複合体を形成するIgAまたはIgM)として抗体を発現させることによって、抗体を多量体化することができる。抗体の多量体化はまた、タンパク質を連結することができる反応性基(例えば、カルボジイミド、NHSエステルなど)を含む架橋剤を使用することによって行うことができる。抗体をマトリックスに架橋するための方法および組成物は、例えば、AbcamおよびNew England Biolabのカタログおよびウェブサイト(abcam.comおよびneb.comで入手可能)に記載されている。様々な反応性基を有する架橋剤化合物は、例えば、Thermo Fisher Scientificのカタログおよびウェブサイト(piercenet.comで入手可能)に記載されている。
【0066】
本明細書において使用される場合、用語「イムノアッセイ」は、分析物を認識する抗体と分析物との間の結合を検出することによって分析物を検出する方法を指す。
【0067】
本明細書において使用される場合、用語「発現構築物」は、発現の対象となる異種ヌクレオチド配列(すなわち、発現制御配列が本来通常連結されていない配列)と機能的に連結された発現制御配列を含むポリヌクレオチドを指す。本明細書において使用される場合、用語「発現ベクター」は、発現構築物と、宿主細胞内での複製または宿主染色体への挿入に十分な配列とを含むポリヌクレオチドを指す。プラスミドおよびウイルスは、発現ベクターの例である。本明細書において使用される場合、用語「発現制御配列」は、それに機能的に連結されたヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を調節するヌクレオチド配列を指す。発現制御配列には、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー(転写調節配列)、およびリボソーム結合部位(翻訳調節配列)が含まれる。
【0068】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、核酸分子が、例えば、原核細胞および/または真核細胞に導入され、および/またはゲノムに組み込まれることを可能にする、核酸分子のための任意の中間ビヒクルを含み、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージ、またはウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベースのベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどを含む。本明細書において使用される用語「プラスミド」は、一般に、染色体DNAとは独立して複製することができる染色体外遺伝物質、通常は環状DNA二本鎖の構築物を指す。
【0069】
本明細書において使用される場合、発現制御配列が細胞内で機能してヌクレオチド配列の転写を制御する場合、ヌクレオチド配列は発現制御配列と「機能的に連結されている」。これは、ポリメラーゼとプロモーターとの間の相互作用を介してヌクレオチド配列の転写を促進することを含む。
【0070】
本明細書において使用される場合、「宿主細胞」は、発現構築物を含む組換え細胞を指す。
【0071】
本明細書において使用される場合、用語「生物学的試料」は、細胞(例えば、腫瘍細胞)、または細胞に由来する生物学的分子を含有する試料を指す。生物学的試料は、対象、例えば患者から、動物モデルなどの動物から、または培養細胞、例えば、患者から取り出され、観察のために培養で増殖させた細胞株もしくは細胞から、得ることができる。生物学的試料は、組織および/または液体を含むことができる。生物学的試料は、限定されることなく、血液、血液画分(例えば、血清または血漿)、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、涙液、唾液、痰、頬側スワブ、母乳、尿、または糞便を含む任意の生物学的供給源から得ることができる。生物学的試料は、生検材料、例えば、組織生検材料、例えば、針生検材料、細針生検材料、外科生検材料などであり得る。試料は、病変または疑わしい病変を有する組織試料を含むことができるが、生物学的試料はまた、別の部位、例えば、転移が疑われる部位、リンパ節、または血液に由来してもよい。生物学的試料は、対象から採取された試料の一部であり得る。組織試料の例には、脳組織試料または神経組織試料が含まれる。限定されることなく、標準的な血液回収手順を含む、そのような生物学的試料を得る方法は、当技術分野において公知である。
【0072】
本明細書において使用される場合、用語「診断」は、対象が癌などの障害を有する相対的確率を指す。同様に、用語「予後」は、特定の将来の転帰が対象に起こり得る相対的確率を指す。例えば、本開示の文脈では、予後は、個体が癌を発症する可能性、個体が再発を有する可能性、癌が転移する可能性、癌が治癒する可能性、または疾患の起こり得る重症度(例えば、症状の重症度、機能低下の速度、生存率など)を指すことができる。該用語は、医療診断の分野の当業者によって理解されるように、絶対的であることを意図するものではない。
【0073】
本明細書において使用される場合、用語「療法」、「治療」、「治療的介入」、および「改善」は、症状の重症度の低下をもたらす任意の活動を指す。癌の場合、治療とは、例えば、腫瘍サイズ、癌細胞の数、増殖速度、転移活性の低減、非癌細胞の細胞死の低減、悪心および他の化学療法または放射線療法の副作用の低減などを指すことができる。用語「治療する」および「予防する」は、絶対的な用語であることを意図するものではない。治療および予防とは、発症のいずれかの遅延、症状の改善、患者の生存率の改善、生存期間または生存率の増加などを指すことができる。治療および予防は、本介入を用いず生じたであろうよりも少ない新生物細胞が患者に見出されるように、完全(検出不能なレベルの新生物細胞)または部分的であり得る。治療の効果は、治療を受けていない個体、もしくは個体のプール、または治療前、もしくは治療中の異なる時点の同じ患者と比較することができる。いくつかの局面では、疾患の重症度は、例えば、投与前の個体または治療を受けていない対照個体と比較して、少なくとも10%低下する。いくつかの局面では、疾患の重症度は、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%低下するか、または場合によっては、標準的な診断技術を使用してもはや検出できない。
【0074】
本明細書において使用される場合、用語「有効量」、「有効用量」、および「治療有効量」は、病状の徴候もしくは症状を低減もしくは排除する、または障害を改善するなどの所望の応答を生じさせるのに十分な、抗体またはイムノコンジュゲートなどの作用物質の量を指す。いくつかの例では、「有効量」は、障害または疾患のいずれかの1つまたは複数の症状および/または根本原因を治療する(予防を含む)および/または疾患の進行を予防する有効量である。例えば、所与のパラメータについて、治療有効量は、5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、または少なくとも100%の少なくともいずれかだけ治療効果の増加または減少を示す。治療有効性は、「~倍」の増加または減少として表すこともできる。例えば、治療有効量は、対照に対して1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、またはそれ以上の効果の少なくともいずれかを有することができる。
【0075】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的組成物」は、薬学的化合物(例えば、薬物)と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を指す。
【0076】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、薬学的組成物の他の成分と適合性であり、対象に安全に投与することができる担体を指す。該用語は、「生理学的に許容される」および「薬理学的に許容される」と同義に使用される。薬学的組成物ならびにそれらの調製および使用のための技術は、本開示に照らして当業者に公知である。好適な薬理学的組成物およびそれらの投与のための技術の詳細な一覧については、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed. 1985; Brunton et al., “Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,” McGraw-Hill, 2005; University of the Sciences in Philadelphia(eds.), “Remington: The Science and Practice of Pharmacy,” Lippincott Williams&Wilkins, 2005; およびUniversity of the Sciences in Philadelphia(eds.), “Remington: The Principles of Pharmacy Practice,” Lippincott Williams&Wilkins, 2008などの文書を参照することができる。
【0077】
薬学的に許容される担体は、一般に、少なくともヒトに使用するために滅菌される。薬学的組成物は、一般に、貯蔵時の緩衝および保存のための作用物質を含み、投与経路に応じて、適切な送達のための緩衝液および担体を含み得る。薬学的に許容される担体の例には、限定されることなく、通常の(0.9%)生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、および複数の電解質溶液、例えばPlasmaLyte ATM(Baxter)が挙げられる。
【0078】
許容される担体、賦形剤、および/または安定化剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、緩衝液、例えば、ホスフェート、シトレート、および他の有機酸;アスコルビン酸、グルタチオン、システイン、メチオニン、およびクエン酸を含む酸化防止剤;防腐剤(エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロロ-m-クレゾール、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、またはそれらの組合せなど);アミノ酸、例えば、アルギニン、グリシン、オルニチン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、プロリン、およびそれらの組合せ;単糖、二糖、および他の炭水化物;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、ゼラチンまたは血清アルブミン;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、トレハロース、スクロース、ラクトース、グルコース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラフィノース、グルコサミン、N-メチルグルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸;および/または非イオン性界面活性剤、例えば、Tween、Pluronics、Triton-X、またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0079】
用語「用量」および「投与量」は、本明細書において区別なく使用される。用量とは、各投与時に個体に与えられる活性成分の量を指す。本発明では、用量とは、抗体または関連成分の濃度、例えば、治療剤の量、または放射性標識の投与量を指すことができる。用量は、投与頻度、個体の大きさおよび許容範囲、病状の重症度、副作用のリスク、投与経路、ならびに検出可能な標識(存在する場合)のイメージングモダリティを含む、いくつかの要因に応じて変化する。当業者であれば、上記の要因に応じて、または治療の進行に基づいて、用量が変更され得ることを認識するであろう。用語「剤形」は、医薬品の特定の形式を指し、投与経路に依存する。例えば、剤形は、液体、例えば、注射用の生理食塩水であり得る。
【0080】
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、個々の動物を指す。本明細書において使用される用語「患者」は、医師または看護師などの医療提供者のケアまたは管理下にある対象を指す。対象には、哺乳動物、例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル、ならびにイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ブタ、および他の哺乳動物種が含まれる。対象には、鳥類も含まれ得る。患者は、治療、モニタリング、既存の治療レジメンの調整または修正などを求めている個体であり得る。用語「癌対象」は、癌と診断された個体を指す。癌患者には、治療を受けていない個体、現在治療を受けている個体、手術を受けた個体、および治療を中止した個体が含まれ得る。
【0081】
癌の治療の文脈では、治療を必要とする対象とは、癌または前癌状態を有する個体、以前に癌を有しかつ再発のリスクがある個体、癌を有すると疑われる個体、放射線療法または化学療法などの癌の標準治療を受けている個体を指すことができる。
【0082】
「癌」、「腫瘍」、「形質転換された」などの用語は、前癌性細胞、新生物細胞、形質転換細胞、および癌性細胞を含み、固形腫瘍または非固形癌を指すことができる(例えば、Edge et al. AJCC Cancer Staging Manual(7th ed. 2009); Cibas and Ducatman Cytology: Diagnostic principles and clinical correlates(3rd ed. 2009)を参照)。癌には、良性新生物および悪性新生物(異常な増殖)の両方が含まれる。「形質転換」は、自発的または誘導された表現型変化、例えば、細胞の不死化、形態学的変化、異常な細胞増殖、接触阻害、および固定の減少、および/または悪性腫瘍を指す(Freshney, Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique(3rd ed. 1994)を参照)。形質転換は、形質転換ウイルスによる感染、および新しいゲノムDNAの組込み、または外因性DNAの取込みから生じ得るが、自発的に、または発癌物質への曝露後にも生じ得る。
【0083】
用語「癌」は、限定されることなく、白血病、癌腫、肉腫、腺癌、リンパ腫、固形癌、およびリンパ癌などを含む任意の癌を指すことができる。様々なタイプの癌の例には、限定されることなく、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、すなわちNSCLC)、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、白血病、肝癌(すなわち、肝細胞癌)、腎癌(renal cancer)(すなわち、腎細胞癌)、甲状腺癌、膵癌、子宮癌、子宮頸癌、精巣癌、食道癌、胃(stomach)(胃(gastric))癌、腎癌(kidney cancer)、中枢神経系の癌、皮膚癌、神経膠芽腫、および黒色腫が挙げられる。
【0084】
本明細書において使用される場合、ポリペプチドなどの化学的実体は、組成物中のその種類(例えば、ポリペプチド)の主要な化学的実体である場合、「実質的に純粋」である。これには、組成物中のその種類の化学的実体の50%超、80%超、90%超、95%超、98%超、99%超、99.5%超、99.9%超、または99.99%超を占める化学的実体が含まれる。
【0085】
語句「単離された抗体」は、抗体を産生した供給源、例えば、動物、ハイブリドーマまたは他の細胞株(抗体を産生する組換え昆虫細胞、酵母細胞、または細菌細胞)から取り出された、インビボまたはインビトロで生成される抗体を指す。
【0086】
「実質的に純粋」または「単離された」は、対象種が、存在する優勢な種であり(すなわち、モル基準で、組成物中の任意の他の個々の高分子種よりも豊富である)、実質的に精製された画分が、対象種が、存在する全高分子種の少なくとも約50%(モル基準)を構成する組成物であることを意味する。一般に、実質的に純粋な組成物とは、組成物中に存在する高分子種の約80%~90%またはそれ以上が、関心対象の精製種であることを意味する。組成物が単一の高分子種から本質的になる場合、対象種は、本質的な均一性まで精製される(従来の検出方法によって、組成物中に汚染種を検出することができない)。溶媒種、小分子(<500ダルトン)、安定化剤(例えばBSA)、および元素イオン種は、この定義の目的では高分子種とは考えられない。
【0087】
本明細書において使用される用語「配列同一性」は、2つのポリペプチド配列または2つの核酸配列間の配列同一性の割合を指す。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するためには、最適な比較目的のために配列をアライメントする(例えば、第2のアミノ酸配列または核酸配列との最適なアライメントのために、第1のアミノ酸配列または核酸配列の配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の重複位置の数/位置の総数×100%)。一態様では、2つの配列は同じ長さである。2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することもできる。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例には、Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87: 2264-2268, modified as in Karlin and Altschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 5873-5877のアルゴリズムがある。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215: 403のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。例えば、スコア=100、ワード長=12に設定したNBLASTヌクレオチドプログラムパラメータを用いてBLASTヌクレオチド検索を行って、本出願の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。例えば、スコア-50、ワード長=3に設定したXBLASTプログラムパラメータを用いてBLASTタンパク質検索を行って、本明細書において記載されるタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためにギャップ付きアライメントを得るために、Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されているGapped BLASTを利用することができる。あるいは、PSI-BLASTを使用して、分子間の距離関係を検出する反復検索を行うことができる(同文献)。BLASTプログラム、Gapped BLASTプログラムおよびPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる(例えば、NCBIのウェブサイトを参照)。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例には、Myers and Miller, 1988, CABIOS 4: 11-17のアルゴリズムがある。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用することができる。2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップを許容するかしないかにかかわらず、上記と同様の技術を使用して決定することができる。パーセント同一性の計算では、典型的には、正確な一致のみをカウントする。
【0088】
抗体では、IMGTによって抗体配列が最大にアライメントされた場合に、パーセンテージ配列同一性を決定することができる。アライメント後に、対象抗体領域(例えば、重鎖または軽鎖の成熟可変領域全体)が参照抗体の同じ領域と比較されている場合、対象抗体領域と参照抗体領域との間のパーセンテージ配列同一性は、対象抗体領域および参照抗体領域の両方で同じアミノ酸が占める位置の数を、この2つの領域のアライメントされた位置の総数で割ったものに100を乗じて、パーセンテージに変換したものである。
【0089】
パーセントアミノ酸配列同一性はまた、配列比較プログラムNCBI-BLAST2(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402(1997))を使用して決定され得る。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、National Institute of Health, Bethesda, Mdから入手することができる。NCBI-BLAST2は、いくつかの検索パラメータを使用し、これらの検索パラメータはいずれも、例えば、unmask=yes、strand=all、期待出現数=10、最小低複雑度長=15/5、マルチパスe値=0.01、マルチパスの定数=25、最終的なギャップ付きアライメントのドロップオフ=25、およびスコアリング行列=BLOSUM62を含むデフォルト値に設定される。
【0090】
アミノ酸配列比較のためにNCBI-BLAST2が使用される状況では、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対する所与のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対する特定の%アミノ酸配列同一性を有するかまたはそれを含む所与のアミノ酸配列Aと言い表すことができる)は、以下のように計算される:
100×分率X/Y
式中、Xは、配列アライメントプログラムNCBI-BLAST2によって、そのプログラムのAとBとのアライメントにおいて同一の一致としてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性に等しくないことが理解される。本明細書において使用される用語「核酸配列」は、天然に存在する塩基、糖および糖間(骨格)結合からなるヌクレオシドモノマーまたはヌクレオチドモノマーの配列を指し、cDNAを含む。該用語はまた、天然に存在しないモノマーまたはその一部を含む修飾または置換された配列を含む。本出願の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)であり得、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む天然に存在する塩基を含み得る。配列はまた、修飾された塩基を含み得る。そのような修飾された塩基の例には、アザおよびデアザのアデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシル、ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンが挙げられる。転写不可能なヌクレオチド塩基を含むポリヌクレオチドは、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイではプローブとして有用であり得ることが理解される。核酸は、二本鎖または一本鎖のいずれかであり得、センス鎖またはアンチセンス鎖を表す。さらに、用語「核酸」は、相補的核酸配列、およびコドン最適化されたコドン等価物または同義のコドン等価物を含む。
【0091】
本明細書において使用される用語「単離された核酸」は、組換えDNA技術によって生成された場合、細胞材料もしくは培養培地を実質的に含まない核酸、または化学合成された場合、化学前駆体もしくは他の化学物質を指す。単離された核酸はまた、その核酸が由来する核酸に天然に隣接する配列(すなわち、核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)を実質的に含まない。
【0092】
「少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、溶液中の2つの相補的核酸分子間の選択的ハイブリダイゼーションを促進する条件が選択されることを意味する。ハイブリダイゼーションは、核酸配列分子の全部または一部に対して起こり得る。ハイブリダイズ部分は、典型的には少なくとも15(例えば、20、25、30、40、または50)ヌクレオチド長である。当業者であれば、核酸二本鎖またはハイブリッドの安定性が、ナトリウム含有緩衝液中でナトリウムイオン濃度および温度の関数であるTm(Tm=81.5℃-16.6(Log10[Na+])+0.41(%(G+C)-600/l)、または同様の式)によって決定されることを認識するであろう。したがって、ハイブリッド安定性を決定する洗浄条件のパラメータは、ナトリウムイオン濃度および温度である。公知の核酸分子と類似しているが同一ではない分子を同定するために、1%のミスマッチが、Tmの約1℃の低下をもたらすと仮定することができ、例えば、>95%の同一性を有する核酸分子が求められる場合、最終洗浄温度は約5℃低下する。これらの考察に基づいて、当業者であれば、適切なハイブリダイゼーション条件を容易に選択することができるであろう。好ましい態様では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が選択される。例として、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成するために、以下の条件を使用してもよい:上記の式に基づいて、Tm-5℃で5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハルト液/1.0%SDSでのハイブリダイゼーション、続いて60℃で0.2×SSC/0.1%SDSの洗浄。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、42℃の3×SSCでの洗浄工程が含まれる。ただし、同等のストリンジェンシーが、代替の緩衝液、塩、および温度を使用して達成され得ることが理解される。ハイブリダイゼーション条件に関する追加の指針は、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley&Sons, N.Y., 2002、およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に見出され得る。
【0093】
本明細書において使用され、当技術分野においてよく理解されている用語「治療する」または「治療」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るための手法を意味する。有益なまたは所望の臨床結果には、限定されることなく、検出可能であろうと検出不能であろうと、1つまたは複数の症状または病状の軽減または改善、疾患の程度の減弱、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患の拡大の防止、疾患進行の延長または遅延、疾患状態の改善または緩和、疾患の再発の縮小、および寛解(部分的であろうと全体的であろうと)が含まれ得る。「治療する」または「治療」はまた、治療を受けない場合の予測される生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味し得る。本明細書において使用される「治療する」または「治療」は、予防的治療も含む。例えば、癌を有する対象は、進行を予防するために治療され得、進行を予防するために、本明細書において記載される抗体、イムノコンジュゲート、核酸、または組成物を用いて治療され得る。
【0094】
本明細書において使用される場合、用語「投与」は、腫瘍内投与経路または静脈内投与経路などの効果的な経路によって、有効量の抗体を含む組成物などの作用物質を対象に提供または与えることを意味する。
【0095】
本明細書において使用される場合、用語「希釈剤」は、投与される抗体またはイムノコンジュゲートなどの活性化合物の生理学的活性または特性を阻害せず、対象を刺激せず、投与された化合物の生物学的活性および特性を無効にしない薬学的に許容される担体を指す。希釈剤には、当業者に公知なように、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存塩、防腐剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、そのような同様の材料、およびそれらの組合せが含まれる(例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照)。任意の従来の担体が活性成分と適合しない場合を除いて、薬学的組成物中のその使用が企図される。
【0096】
1つまたは複数の列挙された要素を「含む(comprising)」または「含む(including)」組成物または方法は、具体的に列挙されていない他の要素を含んでもよい。例えば、抗体を「含む(comprises)」または「含む(includes)」組成物は、抗体を単独でまたは他の成分と組み合わせて含有し得る。
【0097】
本開示の範囲を理解する上で、本明細書において使用される用語「からなる(consisting)」およびその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、および/または工程の存在を指定し、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数、および/または工程の存在を除外する閉じた用語であることを意図している。
【0098】
本明細書における端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数および分数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を含む)。また、そのすべての数および分数は、用語「約」によって修飾されると推定されることも理解されたい。さらに、冠詞「a」、「an」、および「the」の単数形は、文脈上別途明確に指示されない限り、複数の言及を含むことを理解されたい。例えば、用語「抗体」または「少なくとも1つの抗体」は、それらの混合物を含む複数の抗体を含むことができる。
【0099】
用語「Frizzled」および「FZD」は、文脈に応じて、Frizzledファミリーの任意の遺伝子またはタンパク質メンバーを指す。Frizzledタンパク質は、サイトゾル内のDisheveledタンパク質の活性化に関与する。Frizzledは、Frizzled-1、Frizzled-2、Frizzled-3、Frizzled-4、Frizzled-5、Frizzled-6、Frizzled-7、Frizzled-8、Frizzled-9、およびFrizzled-10のいずれかを指す。
【0100】
「リポタンパク質受容体関連タンパク質」、「低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質」(HGNC)、または「プロ低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質」(UniProt)、略して「LRP」は、遺伝子およびタンパク質の群である。それらには、LRP1、LRP1B、LRP2(メガリン)、LRP3、LRP4、LRP5、LRP6、LRP8(アポリポタンパク質e受容体)、LRP10、LRP11、およびLRP12が含まれる。LRP5およびLRP6は、古典的Wnt経路に関与するLRP5/LRP6/Frizzled共受容体群の一部である。LRP5は、LRP5、BMND1、EVR1、EVR4、HBM、LR3、LRP-5、LRP7、OPPG、OPS、OPTA1、VBCH2、およびLDL受容体関連タンパク質5としても知られている。LRP5遺伝子は、ENTREZ遺伝子ID:4041を有し、該タンパク質は、NCBI参照配列:NP_002326を有する。LRP6遺伝子は、ENTREZ遺伝子ID:4040を有し、該タンパク質は、NCBI参照配列:NP_002327を有する。LRP6は、ADCAD2、STHAG7としても知られている。
【0101】
II. LRPシグナル伝達調節不全に関連する障害
LRP5またはLRP6へのWnt結合は、β-カテニン結合複合体を不安定化し、β-カテニン分解を引き起こす。その結果、細胞内β-カテニンのレベルが増加する。したがって、LRP5またはLRP6などのLRPファミリータンパク質へのWnt結合を遮断する方法が、本明細書において提供される。
【0102】
「LRP関連障害」(例えば、「LRP5関連障害」または「LRP6関連障害」)は、言及される特定のLRP受容体の調節不全と相関する病状または疾患を指す。調節不全とは、正常なβ-カテニン媒介性の転写変化、またはこれらの受容体によって規定される任意の他の細胞内シグナル伝達経路に影響を及ぼすシグナル伝達の異常な減少または増加を指す。したがって、例えば、古典的Wntシグナル伝達経路(Wnt3/Wnt3A)などを介した、シグナル伝達の異常なLRP関連増加は、特定の癌、および骨密度の増加に関連するのに対して、シグナル伝達の異常なLRP関連減少は、骨密度の減少に関連する。
【0103】
LRP5またはLRP6へのWntの結合を遮断する抗体は、癌の治療に有用である。特に、LRP6へのWnt結合を遮断する方法は、脳癌、乳癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、腎癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、および精巣癌の治療に有用である。
【0104】
III. 抗LRP抗体
A. 抗体
LRP5およびLRP6は、それぞれ2つのWnt結合部位を有する。Wnt1、2、2b、6、8a、9a、9b、10bなどを含むβ-カテニンシグナル伝達のWnt活性化因子の大部分は、LRP5およびLRP6のβプロペラ1領域およびβプロペラ2領域と会合する。この部位は、本明細書において「非Wnt3a結合部位」と呼ばれる。Wntタンパク質Wnt3およびWnt3aは、LRP5およびLRP6のβプロペラ領域3および4上の別個の部位と会合することが知られている。この部位は、本明細書において「Wnt3a結合部位」と呼ばれる。特定の結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、LRP5またはLRP6への抗体結合は、その部位へのWntリガンド結合に関連するシグナル伝達経路の活性を低下させる。そのような遮断活性はまた、特定の状況では、他の結合部位へのWntリガンド結合に関連するシグナル伝達経路の活性を増強し得る。したがって、例えば、Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体は、Wnt3aシグナル伝達経路の活性を阻害し、非Wnt3aシグナル伝達経路の活性を増強し得る。同様に、非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体は、非Wnt3aシグナル伝達経路の活性を阻害し、Wnt3aシグナル伝達経路の活性を増強し得る。
【0105】
LRP6受容体に対する抗体が、本明細書において記載される。これらの抗体のいくつかは、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する。これらの抗体の他のものは、非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する。これらの抗体は、リガンドWnt結合を遮断し、Wntシグナル伝達経路の活性を調節する。これらの抗体はまた、抗増殖効果を有し、癌、およびLRP受容体が調節不全である他の疾患を治療するための治療的可能性を有する。
【0106】
したがって、本開示の一局面は、LRP6受容体に特異的に結合する単離された抗体を含む。抗体は、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含み、軽鎖可変領域は、相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含み、上記CDRのアミノ酸配列は、表1または表2の配列から選択される配列を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。
【0107】
一態様では、抗体は、すなわち、クローンLRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、LRP6-G9について、表1のCDR配列セットから選択されるCDR配列セットを含む。
【0108】
重鎖可変領域および軽鎖可変領域も本明細書において記載される。表2は、クローンLRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、LRP6-G9由来のFab重鎖およびFab軽鎖の例示的な可変ドメイン配列を提供する。表2の配列またはそれと実質的に同一の配列を含む抗体であって、CDRが表1において同定されたCDR配列セットである抗体も企図される。別の態様では、抗体は、以下を含む重鎖可変領域を含む:(i)表2に記載の重鎖アミノ酸配列、(ii)表2に記載の重鎖アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、アミノ酸配列、または(iii)(i)の保存的に置換されたアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、保存的に置換されたアミノ酸配列。
【0109】
別の態様では、抗体は、以下を含む軽鎖可変領域を含む:(i)表2に記載の軽鎖アミノ酸配列、(ii)表2に記載の軽鎖アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、アミノ酸配列、または(iii)(i)の保存的に置換されたアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、保存的に置換されたアミノ酸配列。
【0110】
抗体LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、LRP6-G9は、LRP6に特異的に結合し、Wntリガンド誘導性シグナル伝達を阻害する。抗体LRP6-A10およびLRP6-B6は、おそらくWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断し、ひいてはWnt3a馴化培地(CM)に応答したTCF/LEF媒介性転写を遮断することによって、Wnt3a誘導性活性を顕著に阻害する。抗体LRP6-A1、LRP6-G3、およびLRP6-G9は、おそらく非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断することによって、非Wnt3a誘導性活性を阻害する。さらに、抗体LRP6-G3およびLRP6-G9は、Wnt3a誘導性活性を顕著に増強する。
【0111】
これらの抗体のCDRのアミノ酸配列を表1に示す。
【0112】
【0113】
可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を表2に示す。
【0114】
(表2)LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、LRP6-G9の重鎖DNA配列および軽鎖DNA配列ならびにアミノ酸配列。
LRP6-A1:
VH-DNA:
【0115】
いくつかの態様では、可変ドメイン配列は、CDR領域の外側で少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%類似しており、CDR配列セットは、表1に示されるアミノ酸配列に対して100%同一である。
【0116】
別の態様では、本明細書において記載されるCDR配列セットを含む抗体と結合について競合する競合抗体も提供される。例えば、競合抗体は、一態様では、LRP6 CDRへの、CDR配列セットを含む抗体の結合を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%減少させる。
【0117】
別の態様では、LRP6、例えば、LRP6-A10およびLRP6-B6との結合についてWnt3aリガンドと競合する抗体も提供される。
【0118】
別の態様では、LRP6、例えば、LRP6-A1、LRP6-E3、LRP6-G3、LRP6-G9との結合について非Wnt3a Wntリガンドと競合する抗体も提供される。
【0119】
本明細書において示すように、本明細書において記載される抗体は、LRP6に対して高い親和性を有する。例えば、抗体は、一態様では、約1nM~約50nMの、表面プラズモン共鳴によって測定される結合親和性を有する。
【0120】
抗体は、本明細書において記載されるヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0121】
いくつかの態様では、抗体は、例えば、重鎖および軽鎖またはその一部を一緒に融合することによって得ることができる一本鎖抗体である。
【0122】
いくつかの態様では、抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディ、およびそれらの多量体から選択される抗体結合断片である。
【0123】
いくつかの他の態様では、抗体は結合断片Fabである。いくつかの態様では、結合断片が好ましく、例えば、インビトロでの使用が好ましい。
【0124】
他の態様では、多価抗体、またはIg部分を含む抗体を有することが好ましい場合がある。
【0125】
実施例で示されるように、Fab断片は、IgGなどのIgと組み合わせることができる。一態様では、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。
【0126】
B. 検出可能に標識された抗体
検出可能な標識には、本明細書において記載される抗体に付加または導入され得、直接的または間接的に検出可能なシグナルを生成することができるペプチド配列(mycタグ、HAタグ、V5タグ、またはNEタグなど)、蛍光タンパク質または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼ)が含まれ得る。例えば、標識は、放射線不透過性の陽電子放出放射性核種(例えば、PETイメージングに使用するために)、もしくは放射性同位体、例えば、3H、13N、14C、18F、32P、35S、123I、125I、131I;蛍光(フルオロフォア)化合物もしくは化学発光(発色団)化合物、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリン;酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、もしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ;イメージング剤;または金属イオンであってよい。
【0127】
C. 抗体-薬物コンジュゲート
さらなる局面は、本明細書において記載される抗体と、検出可能な標識または細胞傷害剤とを含むイムノコンジュゲートを含む。
【0128】
化学療法(抗癌)剤は、癌増殖を減少させ、癌細胞複製を妨害し、癌細胞を直接または間接的に死滅させ、転移を減少させ、腫瘍血液供給を減少させることなどができる任意の作用物質であり得る。したがって、化学療法剤には、細胞傷害剤が含まれる。細胞傷害剤には、限定されることなく、サポリン、タキサン、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、および白金系薬剤が含まれる。化学療法剤のクラスには、限定されることなく、アルキル化剤、代謝拮抗剤、例えば、メトトレキセート、植物アルカロイド、例えば、ビンクリスチン、および抗腫瘍抗生物質、例えば、アントラサイクリン、例えば、ドキソルビシン、ならびに特定のクラスに分類されない種々雑多な薬物、例えば、ヒドロキシ尿素が含まれる。シスプラチンおよびオキサリプラチンによって例示される白金系薬物は、化学療法薬の主要なクラスである。これらの薬物は、DNAに結合し、複製を妨害する。タキソールによって例示されるタキサンは、化学療法薬の別の主要なクラスである。これらの化合物は、細胞骨格および紡錘体の形成を妨害して細胞分裂を阻害し、それによって、急速に分裂する癌細胞の増殖を防止することによって作用する。他の化学療法薬には、ホルモン療法が含まれる。化学療法薬には、チューブリンの集合または重合を阻害する薬剤、例えば、メイタンシン、メルタンシン、およびアウリスタチンも含まれる。化学療法剤には、カリケアマイシンなどのDNA損傷剤も含まれる。
【0129】
化学療法剤には、メイタンシノイド、アウリスタチン、ドラスタチン、チューブリシン、クリプトフィシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体、インドリノベンゾジアゼピン二量体、α-アマニチン、トリコテン、SN-38、デュオカルマイシン、CC1065、カリケアマイシン、エンジイン抗生物質、タキサン、ドキソルビシン誘導体、アントラサイクリンおよびそれらの立体異性体、アザノフィド、アイソスター、類似体または誘導体が含まれ得る。
【0130】
IV. 核酸
さらなる局面は、本明細書において記載される核酸分子またはポリヌクレオチド、組換え核酸分子、発現構築物およびベクターを含む。
【0131】
A. 核酸分子
さらなる局面は、表2に記載の核酸分子、および例えばストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で上記配列のうちの1つにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。CDRおよび可変ドメイン核酸配列は、例えば、発現構築物を調製するために使用することができる。
【0132】
B. 発現構築物およびベクター
核酸分子は、タンパク質の発現を確実にする適切な発現構築物または発現ベクターに公知の方法で組み込まれ得る。発現構築物は、本開示の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと機能的に連結された発現制御配列、例えばプロモーターを含むことができる。可能な発現ベクターには、限定されることなく、コスミド、プラスミド、または改変ウイルス(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)が含まれる。ベクターは、使用される宿主細胞と適合性であるべきである。発現ベクターは「宿主細胞の形質転換に適しており」、これは、発現ベクターが本明細書において記載されるエピトープまたは抗体に対応するペプチドをコードする核酸分子を含むことを意味する。
【0133】
一態様では、ベクターは、例えば、遺伝子療法によって一本鎖抗体を発現させるのに適している。一態様では、ベクターは、IRESを含み、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の発現を可能にする。そのようなベクターは、インビボで抗体を送達するために使用することができる。
【0134】
好適な調節配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳動物、または昆虫の遺伝子を含む様々な供給源に由来し得る。
【0135】
そのような調節配列の例には、転写プロモーターおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、翻訳開始シグナルを含むリボソーム結合配列が挙げられる。さらに、選択される宿主細胞および使用されるベクターに応じて、複製起点、追加のDNA制限部位、エンハンサー、および転写の誘導能を付与する配列などの他の配列を、発現ベクターに組み込んでもよい。
【0136】
一態様では、調節配列は、神経組織および/または神経細胞内の発現を導くかまたは増加させる。
【0137】
ベクターは、本明細書において記載される抗体を産生するのに適したベクターを含む任意のベクターであり得る。
【0138】
一態様では、ベクターはウイルスベクターである。
【0139】
組換え発現ベクターはまた、本明細書において記載される抗体またはエピトープペプチドを発現するためのベクターによって形質転換、感染、またはトランスフェクトされた宿主細胞の選択を容易にするマーカー遺伝子を含み得る。
【0140】
組換え発現ベクターはまた、組換えペプチドの発現または安定性の増加、組換えペプチドの溶解度の増加をもたらす融合部分(すなわち、「融合タンパク質」)をコードする発現カセットを含み、例えば、本明細書において記載されるタグおよび標識を含めて、親和性精製でリガンドとして作用することによって標的組換えペプチドの精製を補助してもよい。さらに、タンパク質分解切断部位を標的組換えタンパク質に付加して、融合タンパク質の精製後に融合部分から組換えタンパク質を分離することができる。典型的な融合発現ベクターには、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAをそれぞれ組換えタンパク質に融合するpGEX(Amrad Corp.、Melbourne, Australia)、pMAL(New England Biolabs、Beverly, MA)およびpRIT5(Pharmacia、Piscataway, NJ)が含まれる。
【0141】
インビトロおよびインビボの両方で遺伝子を移入するための系には、ウイルス、最も顕著には単純ヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、およびレンチウイルスを含むレトロウイルスに基づくベクターが含まれる。遺伝子送達のための代替的な手法には、裸のプラスミドDNA、およびリポソーム-DNA複合体の使用が含まれる。
【0142】
一局面では、本開示は、抗体フレームワークと、本明細書において記載されるCDR配列セットとを含む核酸分子を合成する工程を含む、本明細書において記載される抗体を作製するための方法を含む。
【0143】
V. 組換え細胞
さらなる局面は、本明細書において記載される抗体を発現する組換え宿主細胞である。
【0144】
本明細書において記載される抗体は、抗体配列をコードする核酸の組換え発現によって作製することができる。
【0145】
本明細書において開示される抗体は、免疫グロブリンポリペプチドをコードする核酸構築物を発現するように操作された細胞を培養することによって作製することができる。
【0146】
組換え宿主細胞は、ポリペプチドの産生に適した、例えば、抗体の産生に適した任意の細胞を使用して生成することができる。例えば、核酸(例えばベクター)を細胞に導入するために、使用されるベクターに応じて、細胞をトランスフェクトするか、形質転換するか、または感染させてもよい。
【0147】
好適な宿主細胞には、多種多様な原核宿主細胞および真核宿主細胞が含まれる。例えば、本明細書において記載されるタンパク質は、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、昆虫細胞(バキュロウイルスを使用)、酵母細胞、または哺乳動物細胞内で発現され得る。
【0148】
一態様では、細胞は、酵母、植物、虫、昆虫、鳥類、魚類、爬虫類、および哺乳動物細胞から選択される真核細胞である。
【0149】
別の態様では、哺乳動物細胞は、CHO細胞、骨髄腫細胞、脾臓細胞、またはハイブリドーマ細胞である。
【0150】
抗体を発現させるのに適した酵母宿主細胞および真菌宿主細胞には、限定されることなく、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア(Pichia)属、またはクルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、およびアスペルギルス(Aspergillus)属の様々な種が含まれる。酵母S.セレビシエにおける発現のためのベクターの例には、pYepSec1、pMFa、pJRY88、およびpYES2(Invitrogen Corporation、San Diego, CA)が挙げられる。酵母および真菌の形質転換のためのプロトコルは、当業者に周知である。
【0151】
好適であり得る哺乳動物細胞には、とりわけ、COS細胞(例えば、ATCC番号CRL 1650または1651)、BHK細胞(例えば、ATCC番号CRL 6281)、CHO細胞(ATCC番号CCL 61)、HeLa細胞(例えば、ATCC番号CCL 2)、293細胞(ATCC番号1573)、およびNS-1細胞が含まれる。哺乳動物細胞内の発現を導くための好適な発現ベクターには、一般に、プロモーター(例えば、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40などのウイルス材料に由来する)、ならびに他の転写制御配列および翻訳制御配列が含まれる。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8およびpMT2PCが挙げられる。
【0152】
VI. 薬学的組成物
さらなる局面は、任意で好適な希釈剤、例えば薬学的に許容される担体とともに、本明細書において記載される抗体、イムノコンジュゲート、核酸分子、ベクター、または組換え細胞を含む、組成物である。
【0153】
組成物は、例えば、1つまたは複数の抗体またはイムノコンジュゲートを含むことができる。
【0154】
抗体および/または細胞を含むポリペプチドに適した希釈剤には、限定されることなく、生理食塩水、pH緩衝液、およびグリセロール溶液、またはポリペプチドおよび/または細胞を凍結するのに適した他の溶液が含まれる。
【0155】
核酸に適した希釈剤には、限定されることなく、水、生理食塩水、およびエタノールが含まれる。
【0156】
一態様では、組成物は、本明細書において開示される抗体、核酸またはベクターのいずれかを含み、任意で希釈剤または担体などの薬学的に許容されるビヒクルを含む薬学的組成物である。
【0157】
本明細書において記載される組成物は、有効量の活性物質を薬学的に許容されるビヒクルと混合して組み合わせるように、対象に投与することができる薬学的に許容される組成物を調製するためのそれ自体公知の方法によって調製することができる。
【0158】
薬学的組成物には、限定されることなく、組成物を意図されるレシピエントの組織または血液と実質的に適合性にする酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、および溶質をさらに含有し得る凍結乾燥粉末、または水性もしくは非水性の滅菌注射用溶液もしくは懸濁液が含まれる。そのような組成物中に存在し得る他の成分には、例えば、水、界面活性剤(Tweenなど)、アルコール、ポリオール、グリセリン、および植物油が含まれる。即時注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、錠剤、または濃縮された溶液もしくは懸濁液から調製され得る。組成物は、例えば、限定されることなく、患者への投与前に滅菌水または生理食塩水を用いて再構成される凍結乾燥粉末として供給され得る。
【0159】
薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。好適な薬学的に許容される担体には、薬学的組成物の生物学的活性の効果を妨げない、本質的に化学的に不活性で非毒性の組成物が含まれる。好適な薬学的担体の例には、限定されることなく、水、生理食塩水、グリセロール溶液、エタノール、N-(1(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレシルホスホチジル-エタノールアミン(DOPE)、およびリポソームが挙げられる。そのような組成物は、患者への直接投与のための形態を提供するように、好適な量の担体とともに治療有効量の化合物を含有すべきである。
【0160】
組成物は、限定されることなく、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの遊離アミノ基によって形成されたもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノールに由来するものなどの遊離カルボキシル基によって形成されたものを含む薬学的に許容される塩の形態であり得る。
【0161】
一態様では、組成物は、本明細書において記載される抗体を含む。別の態様では、組成物は、本明細書において記載される抗体と、希釈剤とを含む。一態様では、組成物は滅菌組成物である。
【0162】
さらなる局面は、LRPタンパク質、例えば、LRP5またはLRP6に結合した、本明細書において記載される抗体を含む抗体複合体を含む。複合体は、溶液中にあってよく、または任意でインビトロで組織内に含まれていてもよい。
【0163】
本明細書において記載される試薬を作製および使用する方法も提供される。
【0164】
VII. キット
別の局面は、本明細書において含まれる抗体、イムノコンジュゲート、核酸分子、ベクター、組換え細胞、および/または組成物のいずれかを含む、キットまたはパッケージである。抗体、イムノコンジュゲート、核酸分子、ベクター、組換え細胞、および/または組成物は、滅菌バイアルまたは他のハウジングなどのバイアルに含めることができる。本明細書において使用される場合、用語「キット」は、一緒に使用することを意図した物品の集合を指す。キットは、任意で、参照剤および/またはその使用説明書を含むことができる。キットは、本明細書において開示される組成物を含むバイアルなどの容器を保持するように適合された輸送容器をさらに含むことができる。
【0165】
VIII. 抗体を使用する方法
本明細書において記載される抗体は、いくつかのインビトロ法およびインビボ法で使用することができる。
【0166】
A. LRP6の発現を検出する方法
本明細書において示されるように、抗体は、LRP6発現を検出するために使用することができる。
【0167】
したがって、本開示は、一局面では、抗体:LRP6複合体の形成を許容する条件下で、1つまたは複数の細胞を含む試料と、本明細書において記載される1つまたは複数の抗体またはイムノコンジュゲートとを接触させる工程、および任意の抗体複合体の存在を検出する工程を含む、LRP6発現を検出する方法を提供する。典型的には、抗体は、検出可能な標識に結合した抗体を含むイムノコンジュゲートの一部である。
【0168】
試料は、生細胞または細胞抽出物を含むことができる。抗体:LRP6複合体は、イムノアッセイ、例えば、免疫蛍光、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、ELISA、SPR、および免疫沈降、続いてSDS-PAGE免疫細胞化学によって検出することができる。いくつかの態様では、検出は免疫蛍光によるものである。いくつかの態様では、検出はフローサイトメトリーによるものである。
【0169】
本明細書において示されるように、同定されたいくつかの抗体は、LRP6を優先的に認識する。したがって、本方法がLRP6発現を検出するためのものである態様では、抗体またはイムノコンジュゲートは、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、LRP6-G9から選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む。
【0170】
B. LRP6へのWNT結合を阻害する方法
本明細書において開示される抗体は、LRPタンパク質、特にLRP6へのWntの結合を阻害する。理論によって制限されることを望むものではないが、LRP6へのWnt結合の阻害は、特定のWntリガンドの結合によって誘導されるシグナル伝達に影響を与える。例えば、LRP6受容体に結合する抗体は、β-カテニンリン酸化のLRP6促進を阻害する。リン酸化β-カテニンは細胞内での分解のためにマークされているため、非リン酸化形態が蓄積する。β-カテニンの蓄積は悪性腫瘍に関連する。
【0171】
LRP6を介したWntリガンドシグナル伝達を低減または阻害することが望ましい場合がある。したがって、別の局面は、1つまたは複数のLRP6ポリペプチドを発現する1つまたは複数の細胞と、本明細書において記載される抗体またはイムノコンジュゲートの有効量とを接触させる工程を含む、LRP6へのWntリガンド結合またはWnt誘導性転写活性を阻害する方法である。
【0172】
一態様では、抗体またはイムノコンジュゲートは、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、LRP6-G9から選択される抗体に対応するCDR配列セット(完全な軽鎖または重鎖)を含む。
【0173】
接触は、例えば、抗体またはイムノコンジュゲートを対象に投与することによって、インビボで行うことができる。そのような阻害は、特にWntシグナル伝達が癌細胞内のように調節不全である場合に望ましい場合がある。
【0174】
C. WNTシグナル伝達経路を増強する方法
LRP5またはLRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する特定の抗体は、非Wnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する。同様に、LRP5またはLRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する特定の抗体は、Wnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する。遮断活性は、競合的またはアロステリックであり得る。したがって、LRP5またはLRP6と、LRP5またはLRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体とを接触させることによって、LRP5またはLRP6のWnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する方法が、本明細書において提供される。LRP5またはLRP6と、LRP5またはLRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体とを接触させることによって、LRP5またはLRP6の非Wnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する方法も、本明細書において提供される。接触は、インビトロまたはインビボで行うことができる。インビボ接触は、適切な抗LRP5抗体または抗LRP6抗体を対象に投与することを含み得る。
【0175】
例えば、抗体LRP6-A10またはLRP6-B6由来のCDR配列セットを含む抗体は、LRP5またはLRP6の非Wnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強するのに有用である。抗体LRP6-G3およびLRP6-G9、ならびに場合によりLRP6-A1およびLRP6-E3由来のCDR配列セットを含む抗体は、LRP5またはLRP6のWnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強するのに有用である。
【0176】
D. 癌を治療するための方法および使用
癌を治療する方法は、LRP6に結合する本開示の抗体を含む薬学的組成物の使用、またはその必要がある対象への投与を含む。その必要がある対象は、癌に罹患しているか、または癌の再発などの癌のリスクがある対象、例えば人であり得る。
【0177】
一態様では、癌は、急性骨髄性白血病、前立腺癌、神経膠芽腫、膀胱癌、および子宮頸癌から選択される。
【0178】
別の態様では、癌細胞は、脳癌、乳癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、腎癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、および精巣癌から選択される。
【0179】
理論によって制限されることを望むものではないが、そのような療法は、古典的Wnt経路の活性化を阻害することによって、例えば、LRP6へのWnt結合を阻害することによって、Wnt誘導性転写活性を阻害することによって、disheveledの活性化を阻害することによって、β-カテニン分解複合体の阻害を阻害することによって、およびβ-カテニンの蓄積を促進することによって、機能し得る。
【0180】
LRP5および/またはLRP6は、癌ではアップレギュレートされていることが多いため、本開示は、別の局面では、少なくとも1つのアッセイにおいてLRP5またはLRP6に特異的に結合しかつ少なくとも1つのアッセイにおいてWnt3a誘導性シグナル伝達を阻害する抗体またはイムノコンジュゲートの有効量を、その必要がある対象に投与する工程を含む、癌を治療するための方法を含む。本開示はまた、少なくとも1つのアッセイにおいてLRP5またはLRP6に特異的に結合し、癌を治療するための少なくとも1つのアッセイにおいてまたは癌を治療するための医薬品の製造において、Wnt3a誘導性シグナル伝達を阻害する、抗体またはイムノコンジュゲートの有効量の使用を含む。本開示は、少なくとも1つのアッセイにおいてLRP5またはLRP6に特異的に結合しかつ癌の治療に使用するための少なくとも1つのアッセイにおいてWnt3a誘導性シグナル伝達を阻害する、抗体またはイムノコンジュゲートの有効量をさらに含む。
【0181】
一態様では、抗体またはイムノコンジュゲート、例えば抗体-薬物コンジュゲートは、薬学的組成物に含まれる。
【0182】
一態様では、癌は、脳癌、乳癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、腎癌、肝癌、肺癌、卵巣癌、皮膚癌、胃癌、および精巣癌から選択される。一態様では、抗体またはイムノコンジュゲートは、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、LRP6-G9から選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む。
【0183】
本明細書において示されるように、抗体はまた、癌細胞増殖を阻害することができる。したがって、LRP6を発現する1つまたは複数の癌細胞と、少なくとも1つのアッセイにおいてLRP6に特異的に結合しかつ少なくとも1つのアッセイにおいてWnt3a誘導性シグナル伝達を阻害する抗体またはイムノコンジュゲートの有効量とを接触させる工程を含む、癌細胞増殖を阻害するための方法も提供される。
【0184】
一態様では、癌を治療する方法は、その必要がある対象に、抗体、または抗体を含むイムノコンジュゲートを投与する工程を含み、第1の抗体は、LRP5またはLRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断し、第2の抗体は、LRP5またはLRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する。本開示はまた、癌の治療に使用するための、第1の抗体が、LRP5またはLRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断し、第2の抗体が、LRP5またはLRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、抗体、または抗体を含むイムノコンジュゲートを提供した。本開示はさらに、第1の抗体が、LRP5またはLRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断し、第2の抗体が、LRP5またはLRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、抗体、または抗体を含むイムノコンジュゲートの、癌を治療するための使用を提供する。本開示はまた、第1の抗体が、LRP5またはLRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断し、第2の抗体が、LRP5またはLRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、抗体、または抗体を含むイムノコンジュゲートの、癌を治療するための医薬品の製造における使用も提供する。
【0185】
一態様では、抗体またはイムノコンジュゲートは、本明細書において記載される抗体またはイムノコンジュゲート、例えば、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、LRP6-G9から選択される抗体に対応するCDR配列セット(完全な軽鎖または重鎖)を含む抗体またはイムノコンジュゲートである。
【0186】
IX. 投与方法
本発明の抗LRP抗体は、Wntシグナル伝達を受ける細胞に治療用組成物をインビボで効率的に送達することができる。いくつかの態様では、治療方法は、有効量の治療用抗LRPコンジュゲート、例えば、治療剤に付着した抗LRP抗体を、個体に投与する工程を含む。いくつかの態様では、個体は、癌と診断されている。いくつかの態様では、個体は、癌療法、例えば、手術、放射線療法、または化学療法を受けているか、または受けたことがある。いくつかの態様では、個体は診断されているが、癌は寛解状態にある。
【0187】
いくつかの態様では、抗LRPコンジュゲートはリポソームを含む。いくつかの態様では、本方法は、癌の進行について個体をモニタリングする工程をさらに含む。いくつかの態様では、各投与のための抗LRPコンジュゲートの用量は、例えば、個体が治療に十分に応答しておらず、さらに高用量の化学療法薬が投与される場合、個体の治療の進行に基づいて決定される。
【0188】
いくつかの態様では、本発明は、抗体または抗体標的指向性組成物と、生理学的に(すなわち、薬学的に)許容される担体とを含むことができる。用語「担体」は、診断剤または治療剤のための希釈剤またはビヒクルとして使用される典型的には不活性な物質を指す。該用語はまた、組成物に凝集性を付与する典型的には不活性な物質を包含する。生理学的に許容される担体は、液体、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液、通常の緩衝食塩水(135~150mM NaCl)、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、安定性を高めるための糖タンパク質(例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど)などであり得る。生理学的に許容される担体は、投与される特定の組成物によって、および組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的に決定されるため、本発明の薬学的組成物の多種多様な好適な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989を参照)。
【0189】
本発明の組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌されてもよく、または滅菌条件下で生成されてもよい。水溶液は、使用のために包装され得るか、または無菌条件下で濾過され、凍結乾燥され得、凍結乾燥された調製物は、投与前に滅菌水溶液と組み合わされる。組成物は、生理学的条件に近似するために必要な薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、等張性調整剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、およびトリエタノールアミンオレエートを含有することができる。組成物を安定化するための糖、例えば、凍結乾燥抗体組成物用の安定化剤も含めることができる。
【0190】
剤形は、患者への粘膜投与(例えば、鼻、舌下、膣、頬または直腸)、非経口投与(例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、または動脈内注射、ボーラスまたは注入のいずれか)、経口投与、または経皮投与のために調製することができる。剤形の例には、限定されることなく、分散液;坐剤;軟膏;パップ剤(湿布);ペースト;粉末;包帯剤;クリーム;絆創膏;溶液;パッチ;エアロゾル(例えば、鼻スプレーまたは吸入器);ゲル;懸濁液(例えば、水性液体懸濁液または非水性液体懸濁液、水中油型エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョン)、溶液、およびエリキシル剤を含む、患者への経口投与または粘膜投与に適した液体剤形;患者への非経口投与に適した液体剤形;ならびに患者への非経口投与に適した液体剤形を提供するために再構成され得る滅菌固体(例えば、結晶性固体または非晶質固体)が挙げられる。
【0191】
注射可能な(例えば、静脈内)組成物は、水性担体などの許容される担体に懸濁された抗体または抗体標的指向性組成物の溶液を含むことができる。例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.9%等張生理食塩水、0.3%グリシン、5%デキストロースなどの様々な水性担体のいずれかが使用され得、安定性を高めるための糖タンパク質、例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどを含み得る。多くの場合、通常の緩衝食塩水(135~150mM NaCl)が使用される。組成物は、生理学的条件に近似するための薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、等張性調整剤、湿潤剤、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなどを含有することができる。いくつかの態様では、抗体標的指向性組成物は、静脈内投与用のキットに製剤化することができる。
【0192】
例えば、関節腔内(関節内)経路、静脈内経路、筋肉内経路、腫瘍内経路、皮内経路、腹腔内経路、および皮下経路等による非経口投与に適した製剤には、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性および非水性の等張性滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および防腐剤を含むことができる水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することもできる。本発明の実施では、組成物は、例えば、静脈内注入によって、局所的に、腹腔内に、膀胱内に、または髄腔内に投与することができる。非経口投与および静脈内投与が好ましい投与方法である。標的指向性組成物の製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数用量の密封容器で提供することができる。
【0193】
選択される標的指向性送達組成物は、単独で、または他の好適な成分と組み合わせて、吸入によって投与されるエアロゾル製剤(「噴霧」)にすることができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、および窒素などの加圧された許容可能な噴射剤に入れることができる。
【0194】
薬学的調製物は、単位剤形で包装または調製することができる。そのような形態では、調製物は、例えば、治療剤の用量または抗体の濃度に従って、適切な量の活性成分を含有する単位用量に細分される。単位剤形は包装された調製物であってもよく、包装物は個別の量の調製物を含む。組成物は、所望であれば、他の適合性治療剤も含有することができる。
【0195】
抗体(または抗体標的指向性組成物)は、限定されることなく、静脈内経路、皮下経路、筋肉内経路、または腹腔内経路を含む任意の好適な経路を介した注射または注入によって投与することができる。薬学的組成物の投与の例には、4℃で注射用の滅菌等張水性生理食塩水に10mg/mlで抗体を保存すること、および患者に投与する前に注射用の100mlまたは200mlの0.9%塩化ナトリウムのいずれかにそれを希釈することが挙げられる。抗体は、0.2~10mg/kgの用量で1時間にわたって静脈内注入によって投与される。他の態様では、抗体は、15分~2時間の期間にわたる静脈内注入によって投与される。さらに他の態様では、投与手順は皮下ボーラス注射によるものである。
【0196】
抗体の用量は、患者に有効な治療を提供するために選択され、患者1例当たり0.1mg/kg体重未満~約25mg/kg体重の範囲または1mg~2gの範囲である。場合によっては、用量は、患者1例当たり1~100mg/kgまたは約50mg~8000mgの範囲である。抗体の薬物動態(例えば、循環中の抗体の半減期)、および薬力学的応答(例えば、抗体の治療効果の持続時間)に応じて、1日1回~3ヶ月に1回の範囲内であり得る適切な頻度で、用量を反復してもよい。いくつかの態様では、約7日間~約25日間のインビボ半減期と抗体投与とが、週1回~3ヶ月に1回繰り返される。
【0197】
投与は周期的であり得る。用量は、投与経路に応じて、例えば、1、3、5、7、10、14、21、もしくは28日ごと、またはそれより長い期間ごとに1回(例えば、2、3、4、または6ヶ月ごとに1回)投与することができる。場合によっては、投与は、1日2回または3回など、さらに頻繁である。当業者によって認識されるように、患者をモニタリングして、治療の進行およびいずれかの有害な副作用に応じて、投与量および投与頻度を調整することができる。
【0198】
したがって、いくつかの態様では、追加の投与は患者の進行に依存し、例えば、患者は投与と投与の間にモニタリングされる。例えば、最初の投与または一連の投与後、患者は、腫瘍増殖速度、再発(例えば、術後患者の場合)、または脱力感、疼痛、悪心などの一般的な疾患関連症状についてモニタリングされ得る。
【0199】
癌を治療するための治療的使用では、抗体標的指向性組成物(例えば、治療剤および/または診断剤を含む)は、1日約0.001mg/kg~約1000mg/kgの初期投与量で投与され、経時的に調整され得る。約0.01mg/kg~約500mg/kg、または約0.1mg/kg~約200mg/kg、または約1mg/kg~約100mg/kg、または約10mg/kg~約50mg/kgの1日用量範囲を使用することができる。投与量は、患者の要件、治療される病状の重症度、および使用される標的指向性組成物に応じて変化する。例えば、投与量は、特定の患者では、診断された癌の種類および病期を考慮して経験的に決定され得る。本発明の文脈では、患者に投与される用量は、患者に対する有益な治療応答に経時的に影響を及ぼすのに十分であるべきである。用量のサイズはまた、当業者によって認識されるように、特定の患者に対する特定の標的指向性組成物の投与に伴ういずれかの有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定される。
【0200】
上記の開示は、本開示を一般的に説明している。以下の具体例を参照することによって、さらに完全な理解を得ることができる。これらの例は、例示のみを目的として記載されており、本出願の範囲を限定することを意図するものではない。状況から示唆されるか、都合のよいものとなるように、形態の変更および同等物の代替が考慮される。特定の用語が本明細書において使用されているが、そのような用語は説明的な意味で意図されており、限定を目的とするものではない。
【0201】
例示的態様
1.
軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む、LRP6に特異的に結合する抗体であって、
重鎖可変領域が、相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含み、軽鎖可変領域が、相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含み、前記CDRのアミノ酸配列が、抗LRP6抗体:LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9のCDR配列セットから選択される配列を含むか、またはそれらからなる、
抗体。
2.
前記CDRのアミノ酸配列が、以下に記載の配列から選択される配列を含むか、またはそれらからなり、
CDR-H1が、
からなる群より選択され、
CDR-H2が、
からなる群より選択され、
CDR-H3が、
からなる群より選択され、
CDR-L1がSVSSA(SEQ ID NO:14)であり、
CDR-L2がSASSLYS(SEQ ID NO:15)であり、および/または
CDR-L3が、
からなる群より選択される、
態様1の抗体。
3.
(i)表2に記載の重鎖アミノ酸配列、
(ii)表2に記載の重鎖アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、アミノ酸配列、または
(iii)(i)の保存的に置換されたアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、保存的に置換されたアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、態様2の抗体。
4.
(i)表2に記載の軽鎖アミノ酸配列、
(ii)表2に記載の軽鎖アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、アミノ酸配列、または
(iii)(i)の保存的に置換されたアミノ酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、保存的に置換されたアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、態様2~4のいずれか一つの抗体。
5.
CDR配列が、表1において同定された抗体から選択される完全なCDR配列セットである、態様1~4のいずれか一つの抗体。
6.
LRP5と交差反応する、態様1~5のいずれか一つの抗体。
7.
CDR配列が、表1において同定された抗体から選択される軽鎖CDR配列セットまたは重鎖CDR配列セットを含む、態様1の抗体。
8.
LRP6に特異的に結合する、態様1~7のいずれかの抗体。
9.
CDR配列が、抗体LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9から選択される抗体のCDR配列セットである、態様8の抗体。
10.
LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、態様1~9の抗体。
11.
LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、態様1~9の抗体。
12.
モノクローナル抗体である、態様1~11のいずれか一つの抗体。
13.
ヒト化抗体である、態様1~12のいずれか一つの抗体。
14.
一本鎖抗体である、態様1~13のいずれか一つの抗体。
15.
Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディ、およびそれらの多量体から選択される抗体結合断片である、態様1~14のいずれか一つの抗体。
16.
二重特異性抗体である、態様1~14のいずれか一つの抗体。
17.
FZD受容体にさらに結合する二重特異性抗体である、態様1~14のいずれか一つの抗体。
18.
非天然グリコシル化パターンを含む、態様1~17のいずれか一つの抗体。
19.
例えば定常領域またはフレームワーク領域に、システインの置換または付加を含む、態様1~17のいずれか一つの抗体。
20.
態様1~17のいずれか一つの抗体と、検出可能な標識または細胞傷害剤とを含む、イムノコンジュゲート。
21.
メイタンシノイド、アウリスタチン、ドラスタチン、チューブリシン、クリプトフィシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体、インドリノベンゾジアゼピン二量体、α-アマニチン、トリコテン、SN-38、デュオカルマイシン、CC1065、カリケアマイシン、エンジイン抗生物質、タキサン、ドキソルビシン誘導体、アントラサイクリン、およびそれらの立体異性体、アザノフィド、アイソスター、類似体、または誘導体から選択される細胞傷害剤を含む、態様20のイムノコンジュゲート。
22.
態様1~17のいずれか一つの抗体をコードする、核酸分子。
23.
CDR配列のうちの1つまたは複数が、表2の核酸によってコードされる、態様22の核酸分子。
24.
前記抗体が、
(i)表2に記載の重鎖核酸配列、
(ii)表2に記載の重鎖核酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、ヌクレオチド配列、または
(iii)(i)のコドン縮退核酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、コドン縮退核酸配列
を含む核酸によってコードされる重鎖可変領域を含む、態様22の核酸分子。
25.
前記抗体が、
(i)表2に記載の軽鎖核酸配列、
(ii)表2に記載の軽鎖核酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、核酸配列、または
(iii)(i)のコドン縮退核酸配列であって、CDR配列が、表1に記載のCDR配列セットである、コドン縮退核酸配列
を含む核酸によってコードされる軽鎖可変領域を含む、態様22の核酸分子。
26.
態様22~25のいずれか一つの核酸に機能的に連結された発現制御配列を含む、ベクター。
27.
態様22~26のいずれかの核酸に機能的に連結された発現制御配列を含む組換え核酸分子を含む、宿主細胞。
28.
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、態様27の宿主細胞。
29.
態様26のベクターを含む、宿主細胞。
30.
態様27~29のいずれか一つの宿主細胞を培養する工程を含む、抗LRP6抗体を作製するための方法。
31.
任意で好適な希釈剤とともに、態様1~17のいずれか一つもしくは複数の抗体、態様20~21のイムノコンジュゲート、態様22~25の核酸分子、態様26のベクター、または態様29の宿主細胞を含む、組成物。
32.
1つまたは複数の抗体またはイムノコンジュゲートを含み、任意で、薬学的組成物である、態様31の組成物。
33.
態様1~17のいずれか一つもしくは複数の抗体、態様20~21のイムノコンジュゲート、態様22~25の核酸分子、態様26のベクター、または態様29~29のいずれか一つの宿主細胞を含む、キット。
34.
抗体:細胞複合体の形成を許容する条件下で、1つまたは複数の細胞を含む試料と、態様1~21のいずれか一つの1つまたは複数の抗体またはイムノコンジュゲートとを接触させる工程、および任意の抗体複合体の存在を検出する工程
を含む、LRP6発現を検出する方法。
35.
検出が、免疫蛍光によるものである、態様34の方法。
36.
検出が、フローサイトメトリーによるものである、態様34の方法。
37.
前記方法が、LRP4発現を検出するためのものであり、抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9から選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む、態様34~36のいずれか一つの方法。
38.
LRP6受容体へのWntリガンド結合を阻害するか、Wntシグナル伝達経路を妨害するか、Wnt誘導性転写活性を阻害するか、disheveledの活性化を阻害するか、β-カテニン分解複合体の保存を促進するか、β-カテニンの蓄積を促進するか、または細胞の増殖を阻害する方法であって、LRP6受容体を発現する細胞と、態様1~21のいずれか一つの抗体またはイムノコンジュゲートとを接触させる工程を含む、方法。
39.
抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、態様38の方法。
40.
抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、態様38の方法。
41.
抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9からなる群より選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む、態様38の方法。
42.
その必要がある対象の癌を治療する方法であって、態様1~21のいずれか一つの抗体またはイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物の有効量を、該対象に投与する工程を含む、方法。
43.
癌が、結腸、肺、乳房、卵巣、子宮内膜、膵臓、胃、肝臓、副腎皮質癌、および骨芽細胞腫の癌細胞から選択される、態様42の方法。
44.
癌が、急性骨髄性白血病、前立腺癌、神経膠芽腫、膀胱癌、および子宮頸癌から選択される、態様42の方法。
45.
態様1~21のいずれか一つの第1および第2の抗体または抗体コンジュゲートを対象に投与する工程を含み、
第1が、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断し、第2が、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する、
態様42の方法。
46.
第1の抗体またはイムノコンジュゲートが、抗体LRP6-A10またはLRP6-B6から選択されるCDR配列セットを含み、第2の抗体またはイムノコンジュゲートが、抗体LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、またはLRP6-G9から選択されるCDR配列セットを含む、態様45の方法。
47.
抗体またはイムノコンジュゲートが、少なくとも1つのアッセイにおいてLRP6に特異的に結合し、かつ少なくとも1つのアッセイにおいてWnt3a誘導性シグナル伝達を阻害し、任意で、抗体またはイムノコンジュゲートが、態様1~21のいずれか一つの抗体またはイムノコンジュゲートである、態様42の方法。
48.
抗体またはイムノコンジュゲートが、LRP6-A1、LRP6-A10、LRP6-B6、LRP6-E3、LRP6-G3、およびLRP6-G9からなる群より選択される抗体に対応するCDR配列セットを含む、態様42の方法。
49.
LRP6を発現する細胞と、LRP6の非Wnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体とを接触させる工程を含む、LRP6のWnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する方法。
50.
LRP6を発現する細胞と、LRP6のWnt3a結合部位へのWntリガンドの結合を遮断する抗体とを接触させることによって、LRP6の非Wnt3a結合部位に結合するWntリガンドのシグナル伝達活性を増強する方法。
51.
インビトロで行われる、態様49または50のいずれかの方法。
52.
インビボで行われる、態様49または50のいずれかの方法。
【0202】
以下の非限定的な例は、本開示を例示するものである。
【実施例】
【0203】
実施例1
ファージディスプレイ抗体ライブラリー
ファージディスプレイ抗体ライブラリーは、治療用抗体の生成のための強力な技術である17、18。1010を超える独立した抗体断片の非常に複雑なライブラリーが、コートタンパク質融合分子としてファージ粒子上に提示され、関心対象の抗原を認識する抗体を単離するためにスクリーニングされる。本発明者らは、操作された配列から完全に構築された抗原結合部位を有する合成抗体ライブラリーを確立した。得られた抗体は、最適化されたヒトフレームワークを使用するため、潜在的な治療薬として使用される場合、免疫原性が最小限である。合成抗体は非常に安定であり、それらのヒトフレームワークおよび抗原結合部位は、親和性、特異性、および効果を最適化するように調整され得る。
【0204】
抗LRP6抗体の特性評価および最適化
実施例2
固定された組換えLRP6-ECD(細胞外ドメイン)を使用して、実施例1に記載のFabファージライブラリーから、新規合成抗LRP6抗体を同定した。ELISAによって、結合について、第4ラウンドから得られたFabファージクローンをスクリーニングした。陽性バインダーのCDRのアミノ酸配列を
図1Aに示す。バインダーの可変領域(重鎖および軽鎖)の完全なDNA配列およびアミノ酸配列は、上記の明細書に提示されている。競合ELISAによるエピトープマッピングは、抗体が、LRP6のECD上の2つの固有のエピトープに結合することを明らかにしている。LRP6-A1、LRP6-G3、およびLRP6-G9が類似のエピトープに結合し、LRP6-A10およびLRP6-B6が類似のエピトープを共有する。
【0205】
完全長IgG1を精製し、単一点ELISAを行って抗体の特異性を決定した。
図1Bに示すように、6つのLRP6抗体のうち5つが、組換えヒトLRP6-Fcキメラに結合する。興味深いことに、LRP6-A10抗体およびLRP6-B6抗体は、組換えマウスLRP6Hisキメラに等しく良好に結合するが、LRP6-A1、LRP6-G3、およびLRP6-G9は部分的な結合を示す。さらに、いずれのLRP6抗体も組換えマウスLRP5-Hisキメラに結合せず、LRP6に対する特異性が実証された。LRP6-E3抗体は、組換えタンパク質のいずれにも結合することができず、陰性対照としてのみ使用した。多点競合ELISAを使用して、組換え抗原に対する抗体の相対親和性を決定した。IC50を非線形回帰分析によって決定した。これを以下の表3に要約する。完全用量応答曲線および非線形回帰プロットを
図8に示す。
【0206】
表3では、競合ELISAによって決定される、LRP6抗体のIC50が報告される。組換えヒトLRP6-Fcキメラ濃度のlog(x軸)を、抗体のOD450読取り値(y軸)に対してプロットした。IC50を非線形回帰分析によって決定した。
【0207】
【0208】
全細胞溶解物のウエスタンブロット分析から、LRP6が、NSCLC細胞株H23およびトリプルネガティブ乳癌細胞株MDAMB231では高度に発現されることが示された。(トリプルネガティブ乳癌細胞は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、および過剰なHer2タンパク質について検査陰性である。)LRP6はまた、乳癌細胞株T47Dでは低レベルで発現されることが示されている(データは示さず)。LRP6 IgG1抗体は、FACS分析によって評価されるように、H23細胞(
図2)、MDAMB231細胞(
図9)、およびT47D細胞(
図9)の表面を標識し、LRP6抗体が、これらの細胞株の表面に発現される完全長受容体に結合することができることを実証している。上記のように、Wntシグナル伝達は、β-カテニンの安定性および機能を主に調節する古典的経路を開始する。
【0209】
Wnt刺激により、サイトゾルおよび核内のβ-カテニンレベルが上昇し、TCF/LEF(転写因子)媒介性転写の増加がもたらされる。TOPflashレポーターアッセイは、インビトロでβ-カテニン活性を評価するために広く使用されている手段である。ベクターは、ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を促進するいくつかのTCF/LEF結合部位からなる。Wnt古典的経路の調節におけるLRP6抗体の機能的活性を評価するために、このレポーターを発現するいくつかの癌細胞株を作製した。
【0210】
図3Aに示すように、Wnt3aを発現する馴化培地(Wnt3aCM)は、陰性対照IgG1、抗MBPを用いて前処理したMDAMB231細胞の対照馴化培地(ConCM)による処理と比較して、ルシフェラーゼレポーター活性の120倍の増加を誘導する。LRP6-A10抗体およびLRP6-B6抗体は、Wnt3aCM誘導性レポーター活性を有意に阻害した。対照的に、LRP6-G3抗体およびLRP6-G9抗体は、Wnt3aCM誘導性レポーター活性を有意に増強した。同様の結果が、乳癌細胞株T47D(
図3B)および骨肉腫細胞株U20S(
図3C)に観察された。U20S細胞株では、ConCM誘導性レポーター活性およびWnt3aCM誘導性レポーター活性が、LRP6-A10抗体およびLRP6-B6抗体によって阻害されたのに対して、LRP6-G3抗体およびLRP6-G9抗体は、レポーター活性を増強した(抗MBP(マルトース結合タンパク質)と比較して)。この観察結果は、U20S細胞が内因性Wnt3aを発現し、これにより、ベースの状態でTCF/LEF媒介性転写活性が調節され得ることを示唆している。
【0211】
構造的試験および変異誘発試験により、Wnt3aが、残りのWntリガンドの結合部位由来の固有のドメインに結合することが明らかにされた。本発明者らの結果は、LRP6-A10抗体およびLRP6-B6抗体がWnt3a結合部位に結合し、ひいてはWnt3aCMに応答してTCF/LEF媒介性転写を遮断し得ることを示唆している。対照的に、LRP6-G3抗体およびLRP6-G9(およびおそらくLRP6-A1)抗体は、代替的な非Wnt3a結合部位に結合し得る。この仮説に取り組むために、本発明者らは、NSCLC細胞株H23におけるレポーター活性を評価した。以前の試験では、Wnt2がベースのTCF/LEF媒介性転写活性を主に促進し、これらの細胞はWnt3aを発現しないことが示されている
19。予測されるように、LRP6-A10抗体およびLRP6-B6抗体はWnt3aCM誘導性レポーターを阻害するのに対して、LRP6-A1抗体、LRP6-G3抗体、およびLRP6-G9抗体はWnt3aCM誘導性レポーター活性を増強する(MBPと比較して;
図4A)。興味深いことに、LRP6-A10抗体およびLRP6-B6抗体は、ベースの(ConCM誘導性)レポーター活性を増強するのに対して、LRP6-A1抗体、LRP6-G3抗体およびLRP6-G9抗体は、ベースの(ConCM誘導性)レポーター活性を阻害する(MBPと比較して)。この観察結果は、LRP6-A10抗体およびLRP6-B6抗体はWnt3a結合部位に結合し得るが、LRP6-A1抗体、LRP6-G3抗体、およびLRP6-G9抗体は代替的な非Wnt3a結合部位に結合し得るという本発明者らの以前の仮説と相関する。この観察結果をさらに裏付けるために、本発明者らは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子およびテトラサイクリン促進Wnt1遺伝子を安定に発現するHEK293細胞株を使用した。
図4Bに示すように、LRP6-A10抗体は、組換えWnt3aによる刺激時にレポーター活性を有意に阻害するが、Wnt1刺激時には影響を及ぼさない。対照的に、LRP6-G3抗体は、Wnt1による刺激時にレポーター活性を有意に阻害するが、組換えWnt3aによる刺激時には影響を及ぼさない。
【0212】
これまでの本発明者らの観察結果は、LRP6-A10抗体およびLRP6-G3抗体が、Wnt3aCM誘導性レポーター活性に対して最も強力な効果を有することを示唆している。抗体の効果がWnt3aに関連し、馴化培地中に存在する他の成分に関連しないかどうかに取り組むために、組換えWnt3a刺激に応答した乳癌細胞株におけるレポーター活性を測定した。本発明者らの以前の観察結果と一致して、LRP6-A10抗体は組換えWnt3aによる刺激時にレポーター活性を有意に阻害するのに対して、LRP6-G3は組換えWnt3a刺激レポーター活性を増強する(
図5)。競合ELISAによって決定したLRP6-A10抗体の計算されたIC
50は、6.29nMであった(表3)。そのため、本発明者らは、TOPflashレポーターアッセイを使用して、LRP6-A10抗体の機能的IC
50を計算できるかどうかを調べた。LRP6-A10抗体は、MDAM8231、U2OS、およびH23癌細胞では、Wnt3aCM刺激レポーター活性を用量依存的に阻害する(
図6A)。興味深いことに、LRP6-A10 Fabも、MDAM8231細胞では、Wnt3aCM刺激レポーター活性を用量依存的に阻害する(
図6B)。機能的IC
50を非線形回帰分析によって決定した。これを
図5Cに示す。本発明者らの結果は、LRP6-A10抗体(IgG1およびFabの両方)が、競合ELISAから決定されたIC
50(<0.3nM)よりも大きい機能的IC
50を示すことを示している。
【0213】
ウエスタンブロット分析によって、Wntシグナル伝達の近位事象に対するLRP6-A10抗体およびLRP6-G3抗体の効果を評価した(
図7A)。LRP6-A10抗体またはLRP6-G3抗体を用いて処理したH23細胞は、ConCM誘導性LRP6リン酸化を有意に阻害した。対照的に、LRP6-A10抗体のみが、Wnt3aCM誘導性LRP6リン酸化および総LRP6タンパク質を減少させた。馴化培地によって刺激する前にLRP6-A10抗体およびLRP6-G3抗体を用いて処理したH23細胞から単離した膜画分では、LRP6リン酸化に対する同様の効果が観察される(
図7B)。LRP6-G3抗体は、Wnt3aCM刺激細胞では、Axin1タンパク質レベルを有意に低下させる。Axin1は、β-カテニンレベルの「遊離」プールを調節する分解複合体の成分であるため、Wnt3aCM刺激前にLRP6-G3抗体を用いて処理した際のその発現低下は、この抗体がWnt3aCM誘導性レポーター活性を効果的に増強する理由を明らかにし得る(
図4および
図5)。
【0214】
β-カテニンレベルに対する抗体の効果をさらによく理解するために、馴化培地によって刺激する前にLRP6-A10抗体およびLRP6-G3抗体を用いて処理したH23細胞のサイトゾル画分を単離した。
図7Bに示すように、LRP6-A10抗体は、それぞれConCM処理細胞およびWnt3aCM処理細胞内のβ-カテニンレベルを有意にアップレギュレートおよびダウンレギュレートする。同様に、LRP6-G3抗体は、それぞれConCM処理細胞およびWnt3aCM処理細胞内のβ-カテニンレベルを、わずかに低下および増加させる。
【0215】
NSCLC細胞株H23は、TOPflashレポーター活性に対するLRP6抗体の同時処理の効果を調べるための優れた系として働く。本発明者らの以前の結果は、LRP6-A10抗体が、ConCM誘導性レポーター活性およびWnt3aCM誘導性レポーター活性をそれぞれ増強および阻害することを示している。対照的に、LRP6-G3抗体は、ConCM誘導性レポーター活性およびWnt3aCM誘導性レポーター活性をそれぞれ阻害および増強する。
図8に示すように、LRP6-A10抗体は、LRP6-G3抗体の存在下では、ConCM誘導性レポーター活性を増強することができない。同様に、LRP6-G3抗体は、LRP6-A10抗体の存在下では、Wnt3aCM誘導性レポーター活性を増強することができない。観察結果は、LRP6-A10抗体およびLRP6-G3抗体の同時処理が、Wnt刺激TCF/LEF媒介性転写に対して強力な阻害効果を有し得ることを示唆している。したがって、本発明者らは、ライブラリー設計戦略の進歩を利用することによって、β-カテニンシグナル伝達に関連する近位事象および遠位事象に対して拮抗活性および増強活性の両方を発揮し得る新規LRP6抗体を発見することができた。これらの活性はまた、WntリガンドとLRP6との間の様々な相互作用に依存する。本発明者らは、インビトロおよびインビボでのこれらの抗体の治療的可能性を積極的に研究している。
【0216】
【0217】
【0218】
本明細書において使用される場合、特に明記しない限り、以下の意味が適用される。単語「してもよい(may)」は、強制的な意味(すなわち、mustを意味する)ではなく、許容的な意味(すなわち、可能性を有することを意味する)で使用される。単語「含む(include)」、「含む(including)」および「含む(includes)」などは、限定されることなく、含むことを意味する。単数形「a」、「an」および「the」は、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの要素」への言及は、「1つまたは複数」などの1つまたは複数の要素に対する他の用語および語句の使用にもかかわらず、2つ以上の要素の組合せを含む。語句「少なくとも1つ」は、「1つまたは複数(one or more)」、「1つまたは複数(one or a plurality)」および「複数(a plurality)」を含む。用語「または」は、他に示されない限り、非排他的であり、すなわち、「および」および「または」の両方を包含する。修飾語と一連のものとの間の用語「のいずれか」は、修飾語が一連のものの各メンバーを修飾することを意味する。したがって、例えば、語句「1、2、または3の少なくともいずれか」は、「少なくとも1、少なくとも2、または少なくとも3」を意味する。用語「から本質的になる」は、特許請求される組合せの基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない列挙された要素および他の要素の包含を指す。
【0219】
説明および図面は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、逆に、その意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲内に入るすべての修正、均等物および代替物を網羅することであることを理解されたい。本発明の様々な局面のさらなる修正および代替の態様は、この説明を考慮すれば当業者には明らかであろう。したがって、この説明および図面は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示する目的のためのものである。本明細書において示され説明される本発明の形態は、態様の例として解釈されるべきであることを理解されたい。本発明のこの説明の恩典を得た後に当業者にいずれも明らかになるように、要素および材料は、本明細書において図示および記載された要素および材料に置き換えられてもよく、部品およびプロセスは逆にされても省略されてもよく、本発明の特定の特徴は独立して利用されてもよい。以下の特許請求の範囲に記載される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において記載される要素に変更を加えることができる。本明細書において使用される見出しは、構成上の目的のためだけのものあり、説明の範囲を限定するために使用されることを意味しない。
【0220】
本明細書において言及されたすべての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【配列表】
【国際調査報告】