(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】無添加成分の脂肪抽出物およびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20221007BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20221007BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221007BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221007BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20221007BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221007BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C12N5/077
A61K35/35
A61P43/00 107
A61P43/00
A61P17/00
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K8/98
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509719
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 CN2020109651
(87)【国際公開番号】W WO2021027971
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】201910755679.8
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521095787
【氏名又は名称】上海薩美細胞技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】張 文杰
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 明武
(72)【発明者】
【氏名】徐 宇達
(72)【発明者】
【氏名】于 子優
(72)【発明者】
【氏名】王 祥盛
(72)【発明者】
【氏名】蔡 宜佐
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 紅▲潔▼
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC12
4B065AC14
4B065BB10
4B065BC38
4B065BD39
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA50
4C083AA071
4C083AA072
4C083CC02
4C083EE12
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB63
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB22
4C087ZC52
(57)【要約】
本発明は無添加成分の脂肪抽出物およびその製造方法と使用を提供する。具体的に、本発明は、組成物または製品の製造における無添加成分の脂肪抽出物の使用であって、前記組成物または製品は(a)線維芽細胞の増殖の促進、(b)線維芽細胞の抗老化の促進、(c)線維芽細胞におけるI型コラーゲンの生成の促進からなる群から選ばれる一つまたは複数の用途に用いられる使用を提供する。また、本発明は、前記無添加成分の脂肪抽出物の製造方法、無添加成分の脂肪抽出物を含む薬物または化粧品組成物、ならびに体外で線維芽細胞を培養する方法を提供する。本発明によって提供される無添加成分の脂肪抽出物は効率的に、協同して皮膚の老化を抑制し、線維芽細胞のアポトーシスを防止し、線維芽細胞の増殖およびコラーゲン合成を促進し、皮膚の若返りを促進することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無添加成分の脂肪抽出物の使用であって、組成物または製品の製造に使用され、前記組成物または製品は(a)線維芽細胞の増殖の促進、(b)線維芽細胞の抗老化の促進、(c)線維芽細胞におけるI型コラーゲンの生成の促進からなる群から選ばれる一つまたは複数の用途に用いられることを特徴とする使用。
【請求項2】
前記の老化は紫外線照射による細胞の老化を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記の組成物または製品は、さらに、線維芽細胞の損傷または活力の低下による皮膚の損傷の予防および/または修復に用いられることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記皮膚の損傷は光老化、多形日光疹を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記の組成物は、さらに、皮膚疾患の予防および/または治療に用いられることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記脂肪抽出物は細胞を含有せず、かつ脂肪滴を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記「無添加成分の」とは、洗浄工程以外、前記脂肪抽出物の製造過程では、何らの溶液、溶媒、小分子、化学製剤、および生物添加剤も添加されていないことであることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記の無細胞脂肪抽出物は、IGF-1、 BDNF、 GDNF、 HGF、 bFGF、VEGF、TGF-β1、HGF、PDGF、 EGF、 NT-3、 GH、 G-CSF、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つまたは複数の成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記の無添加成分の脂肪抽出物は以下の群から選ばれる一つまたは複数の特徴を含むことを特徴とする請求項8に記載の使用:
前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のIGF-1の濃度が5000-30000 pg/ml、好ましくは6000-20000 pg/ml、さらに好ましくは7000-15000 pg/ml、さらに好ましくは8000-12000 pg/ml、さらに好ましくは9000-11000 pg/ml、さらに好ましくは9500-10500 pg/mlである;
前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のBDNFの濃度が800-5000 pg/ml、好ましくは1000-4000 pg/ml、さらに好ましくは1200-2500 pg/ml、さらに好ましくは1400-2000 pg/ml、さらに好ましくは1600-2000 pg/ml、さらに好ましくは1700-1850 pg/mlである;
前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のGDNFの濃度が800-5000 pg/ml、好ましくは1000-4000 pg/ml、さらに好ましくは1200-2500 pg/ml、さらに好ましくは1400-2000 pg/ml、さらに好ましくは1600-2000 pg/ml、さらに好ましくは1700-1900 pg/mlである;
前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のbFGFの濃度が50-600 pg/ml、好ましくは100-500 pg/ml、さらに好ましくは120-400 pg/ml、さらに好ましくは150-300 pg/ml、さらに好ましくは200-280 pg/ml、さらに好ましくは220-260 pg/mlである;
前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のVEGFの濃度が50-500 pg/ml、好ましくは100-400 pg/ml、さらに好ましくは120-300 pg/ml、さらに好ましくは150-250 pg/ml、さらに好ましくは170-230 pg/ml、さらに好ましくは190-210 pg/mlである;
前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のTGF-β1の濃度が200-3000 pg/ml、好ましくは400-2000 pg/ml、さらに好ましくは600-1500 pg/ml、さらに好ましくは800-1200 pg/ml、さらに好ましくは800-1100 pg/ml、さらに好ましくは900-1000 pg/mlである;
前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のHGFの濃度が200-3000 pg/ml、好ましくは400-2000 pg/ml、さらに好ましくは600-1500 pg/ml、さらに好ましくは600-1200 pg/ml、さらに好ましくは800-1000 pg/ml、さらに好ましくは850-950 pg/mlである;ならびに/あるいは
前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のPDGFの濃度が50-600 pg/ml、好ましくは80-400 pg/ml、さらに好ましくは100-300 pg/ml、さらに好ましくは140-220 pg/ml、さらに好ましくは160-200 pg/ml、さらに好ましくは170-190 pg/mlである。
【請求項10】
前記の無添加成分の脂肪抽出物は以下の群から選ばれる一つまたは複数の特徴を含むことを特徴とする請求項8に記載の使用:
前記のIGF-1とVEGFの重量比が20-100:1、好ましくは30-70:1、さらに好ましくは40-60:1、最も好ましくは45-55:1である;
前記のBDNFとVEGFの重量比が2-20:1、好ましくは4-15:1、さらに好ましくは6-12:1、最も好ましくは8-9.5:1である;
前記のGDNFとVEGFの重量比が2-20:1、好ましくは4-15:1、さらに好ましくは6-12:1、最も好ましくは8.5-9.5:1である;
前記のbFGFとVEGFの重量比が0.2-8:1、好ましくは0.5-5:1、さらに好ましくは0.6-2:1、さらに好ましくは0.8-1.6:1、最も好ましくは1-1.5:1である;
前記のTGF-β1とVEGFの重量比が1-20:1、好ましくは1-15:1、さらに好ましくは1-10:1、さらに好ましくは2-8:1、最も好ましくは4-6:1である;
前記のHGFとVEGFの重量比が1-20:1、好ましくは1-15:1、さらに好ましくは1-10:1、さらに好ましくは2-8:1、最も好ましくは4-5.5:1である;ならびに/あるいは
前記のPDGFとVEGFの重量比が0.1-3:1、好ましくは0.2-2:1、さらに好ましくは0.4-1.5:1、最も好ましくは0.7-1.2:1である。
【請求項11】
前記の無添加成分の脂肪抽出物は以下の方法によって製造され、前記の方法は以下の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用:
(1)脂肪組織の原料を提供し、前記脂肪組織の原料を細かく切り、そして洗浄することにより、洗浄された脂肪組織を得る;
(2)前記洗浄された脂肪組織を遠心することにより、分層した混合物を得る;
(3)前記分層した混合物に対し、底部の余分な液体および最上層の油脂を排出し、中間層を収集する;
(4)前記中間層に対して機械的乳化を行い、そして機械的乳化された脂肪混合物を得る;
(5)前記機械的乳化された脂肪混合物を、遠心処理を行うことにより、透明または基本的に透明の中間液体層、すなわち、脂肪粗抽出物を得る;ならびに
(6)前記脂肪粗抽出物をろ過および除菌を行うことにより、無添加成分の脂肪抽出物を得る。
【請求項12】
無添加成分の脂肪抽出物の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(1)脂肪組織の原料を提供し、前記脂肪組織の原料を細かく切り、そして洗浄することにより、洗浄された脂肪組織を得る;
(2)前記洗浄された脂肪組織を遠心することにより、分層した混合物を得る;
(3)前記分層した混合物に対し、底部の余分な液体および最上層の油脂を排出し、中間層を収集する;
(4)前記中間層に対して機械的乳化を行い、そして機械的乳化された脂肪混合物を得る;
(5)前記機械的乳化された脂肪混合物を、遠心処理を行うことにより、透明または基本的に透明の中間液体層、すなわち、脂肪粗抽出物を得る;ならびに
(6)前記脂肪粗抽出物をろ過および除菌を行うことにより、無添加成分の脂肪抽出物を得る。
【請求項13】
薬物または化粧品組成物であって、(a)請求項12に記載の方法によって製造された脂肪抽出物、ならびに/あるいは(b)薬学的にまたは化粧品学的に許容される担体または賦形剤を含むことを特徴とする組成物。
【請求項14】
薬物または化粧品組成物を製造する方法であって、請求項12に記載の方法によって製造された脂肪抽出物を薬学的にまたは化粧品学的に許容される担体と混合することにより、薬物または化粧品組成物とする工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
体外で線維芽細胞を培養する非治療的な方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(i)請求項12に記載の方法によって製造された無添加成分の脂肪抽出物を提供する;
(ii)前記脂肪抽出物の存在下で、線維芽細胞を培養することにより、線維芽細胞の増殖、線維芽細胞の抗老化、および/または線維芽細胞におけるI型コラーゲンの生成を促進する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術の分野に属し、具体的に、無添加成分の脂肪抽出物およびその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は生体を保護する一番目の障壁で、外からの侵害に対する防御、体内環境の安定の維持に重要な作用を果たす。皮膚の老化は内因性老化と外因性老化に分かれる。遺伝的要素によって制御されるプログラムされた老化過程は内因性老化で、自然老化とも呼ばれ、不可抗力がある。環境的要素による老化は外因性老化で、そのうち、最も重要なのは紫外線照射の繰り返しによる皮膚の老化で、すなわち、光老化である。
【0003】
紫外線による細胞の損傷の本質は、紫外線の光子エネルギーが細胞の原子または分子に吸収され、原子の電子のエネルギー準位が変わり、大量に二次電子およびラジカルが生じ、さらに細胞内における多くの損傷イベントが発生する。核酸およびタンパク質はそれぞれ波長が260 nmおよび278 nmの箇所に吸収ピークがあり、紫外線の波長領域に位置する。UVBは、光子エネルギーが直接核酸およびタンパク質に吸収され、細胞の損傷につながる。UVAは、細胞における光増感剤を介してエネルギーが伝達し、ラジカルが生じ、細胞の損傷につながる。細胞の損傷が蓄積すると、外観的に見られる皮膚の老化が生じる。
【0004】
本分野では、抗老化の技術および製品が開発されてきたが、その抗老化効果が満足できるものではない。そのため、本分野では、効率的に、安全に皮膚の抗老化を増強させる新たな製品の開発が切望されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、効率的に、安全に線維芽細胞の活力を増強させ、かつ顕著な抗老化効果を有する、無添加成分の脂肪抽出物および使用を提供することである。
【0006】
本発明の第一の側面では、無添加成分の脂肪抽出物の使用であって、組成物または製品の製造に使用され、前記組成物または製品は(a)線維芽細胞の増殖の促進、(b)線維芽細胞の抗老化の促進、(c)線維芽細胞におけるI型コラーゲンの生成の促進からなる群から選ばれる一つまたは複数の用途に用いられる使用を提供する。
【0007】
もう一つの好適な例において、前記の線維芽細胞は、皮膚の線維芽細胞を含む。
【0008】
もう一つの好適な例において、前記の老化は、紫外線照射による細胞の老化を含む。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記の紫外線は、UVB、UVA、またはこれらの組み合わせを含む。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記の組成物または製品は、さらに、線維芽細胞の損傷または活力の低下による皮膚の損傷の予防および/または修復に用いられる。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記皮膚の損傷は、皮膚障壁の損傷を含む。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記皮膚の損傷は、光老化、多形日光疹を含む。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記の組成物は、さらに、皮膚疾患の予防および/または治療にも用いられる。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記皮膚疾患は、エリテマトーデス、白斑、乾癬、褐色斑、糖尿病性皮膚潰瘍、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病からなる群から選ばれる。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記の組成物は、薬物組成物、化粧品組成物を含む。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記の製品は、薬品、化粧品、健康食品からなる群から選ばれる。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、注射剤、粉末注射剤、外用製剤である。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、外用、局所、または皮下注射の様態によって施用される。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記化粧品組成物は、外用の様態によって施用される。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記脂肪抽出物は、細胞を含有せず、かつ脂肪滴を含有しない。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記脂肪滴は、脂肪細胞の破砕後に放出される油滴である。
【0022】
もう一つの好適な例において、前記「脂肪滴を含有しない」とは、前記脂肪抽出物における全液体に占める油滴の体積の百分率が1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満である。
【0023】
もう一つの好適な例において、前記細胞は、内皮細胞、脂肪幹細胞、マクロファージ、間質細胞からなる群から選ばれる。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記「細胞を含有しない」とは、1 mlの脂肪抽出物における平均細胞数が≦1個、好ましくは≦0.5個、より好ましくは≦0.1個、または0個である。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記脂肪抽出物は、SVFではない。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記脂肪抽出物は、天然由来の無添加成分のナノ脂肪抽出物である。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記「無添加成分の」とは、洗浄工程以外、前記脂肪抽出物の製造過程では、何らの溶液、溶媒、小分子、化学製剤、および生物添加剤も添加されていないことである。
【0028】
もう一つの好適な例において、前記脂肪抽出物は、脂肪組織を乳化した後、遠心して製造されるものである。
【0029】
もう一つの好適な例において、前記の脂肪組成物は、成長因子IGF-1、 BDNF、 GDNF、 TGF-β、 HGF、 bFGF、 VEGF、 PDGF、 EGF、 NT-3、 GH、 G-CSF、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つまたは複数の成分を含有するが、これらに限定されない。
【0030】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物は、IGF-1、 BDNF、 GDNF、 TGF-β、 HGF、 bFGF、VEGF、TGF-β1、HGF、PDGF、 EGF、 NT-3、 GH、 G-CSF、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つまたは複数の成分を含有する。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物は、IGF-1、BDNF、GDNF、bFGF、VEGF、TGF-β1、HGF、PDGF、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つまたは複数の成分を含有するが、これらに限定されない。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のIGF-1の濃度が5000-30000 pg/ml、好ましくは6000-20000 pg/ml、さらに好ましくは7000-15000 pg/ml、さらに好ましくは8000-12000 pg/ml、さらに好ましくは9000-11000 pg/ml、さらに好ましくは9500-10500 pg/mlである。
【0033】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のBDNFの濃度が800-5000 pg/ml、好ましくは1000-4000 pg/ml、さらに好ましくは1200-2500 pg/ml、さらに好ましくは1400-2000 pg/ml、さらに好ましくは1600-2000 pg/ml、さらに好ましくは1700-1850 pg/mlである。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のGDNFの濃度が800-5000 pg/ml、好ましくは1000-4000 pg/ml、さらに好ましくは1200-2500 pg/ml、さらに好ましくは1400-2000 pg/ml、さらに好ましくは1600-2000 pg/ml、さらに好ましくは1700-1900 pg/mlである。
【0035】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のbFGFの濃度が50-600 pg/ml、好ましくは100-500 pg/ml、さらに好ましくは120-400 pg/ml、さらに好ましくは150-300 pg/ml、さらに好ましくは200-280 pg/ml、さらに好ましくは220-260 pg/mlである。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のVEGFの濃度が50-500 pg/ml、好ましくは100-400 pg/ml、さらに好ましくは120-300 pg/ml、さらに好ましくは150-250 pg/ml、さらに好ましくは170-230 pg/ml、さらに好ましくは190-210 pg/mlである。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のTGF-β1の濃度が200-3000 pg/ml、好ましくは400-2000 pg/ml、さらに好ましくは600-1500 pg/ml、さらに好ましくは800-1200 pg/ml、さらに好ましくは800-1100 pg/ml、さらに好ましくは900-1000 pg/mlである。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のHGFの濃度が200-3000 pg/ml、好ましくは400-2000 pg/ml、さらに好ましくは600-1500 pg/ml、さらに好ましくは600-1200 pg/ml、さらに好ましくは800-1000 pg/ml、さらに好ましくは850-950 pg/mlである。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物では、前記のPDGFの濃度が50-600 pg/ml、好ましくは80-400 pg/ml、さらに好ましくは100-300 pg/ml、さらに好ましくは140-220 pg/ml、さらに好ましくは160-200 pg/ml、さらに好ましくは170-190 pg/mlである。
【0040】
もう一つの好適な例において、前記のIGF-1とVEGFの重量比が20-100:1、好ましくは30-70:1、さらに好ましくは40-60:1、最も好ましくは45-55:1である。
【0041】
もう一つの好適な例において、前記のBDNFとVEGFの重量比が2-20:1、好ましくは4-15:1、さらに好ましくは6-12:1、最も好ましくは8-9.5:1である。
【0042】
もう一つの好適な例において、前記のGDNFとVEGFの重量比が2-20:1、好ましくは4-15:1、さらに好ましくは6-12:1、最も好ましくは8.5-9.5:1である。
【0043】
もう一つの好適な例において、前記のbFGFとVEGFの重量比が0.2-8:1、好ましくは0.5-5:1、さらに好ましくは0.6-2:1、さらに好ましくは0.8-1.6:1、最も好ましくは1-1.5:1である。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記のTGF-β1とVEGFの重量比が1-20:1、好ましくは1-15:1、さらに好ましくは1-10:1、さらに好ましくは2-8:1、より好ましくは4-6:1である。
【0045】
もう一つの好適な例において、前記のHGFとVEGFの重量比が1-20:1、好ましくは1-15:1、さらに好ましくは1-10:1、さらに好ましくは2-8:1、最も好ましくは4-5.5:1である。
【0046】
もう一つの好適な例において、前記のPDGFとVEGFの重量比が0.1-3:1、好ましくは0.2-2:1、さらに好ましくは0.4-1.5:1、最も好ましくは0.7-1.2:1である。
【0047】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物は液体である。
【0048】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物は、本発明の第二の側面に記載の方法によって製造されるものである。
【0049】
本発明の第二の側面では、無添加成分の脂肪抽出物の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法を提供する:
(1)脂肪組織の原料を提供し、前記脂肪組織の原料を細かく切り、そして(たとえば生理食塩水で)洗浄することにより、洗浄された脂肪組織を得る;
(2)前記洗浄された脂肪組織を遠心することにより、分層した混合物を得る;
(3)前記分層した混合物に対し、底部の余分な液体および最上層の油脂を排出し、中間層(すなわち、脂肪細胞を含む脂肪層)を収集する;
(4)前記中間層に対して機械的乳化を行い、そして機械的乳化された脂肪混合物(ナノ脂肪とも呼ばれる)を得る;
(5)前記機械的乳化された脂肪混合物を(合併するか、合併せず)、遠心処理を行うことにより、透明(または基本的に透明)の中間液体層、すなわち、脂肪粗抽出物を得る;ならびに
(6)前記脂肪粗抽出物をろ過および除菌を行うことにより、無添加成分の脂肪抽出物を得る。
【0050】
もう一つの好適な例において、工程(5)の遠心工程の前に、さらに、前記機械的乳化された脂肪混合物に対して凍結・解凍処理を行うことを含む。
【0051】
もう一つの好適な例において、工程(5)では、前記機械的乳化された脂肪混合物に対し、1回または複数回(たとえば1、2、3、4、5回)凍結・解凍を行い、さらに解凍された混合物を遠心し、遠心管の中部の透明液体、すなわち、脂肪粗抽出物を収集する。
【0052】
もう一つの好適な例において、工程(6)では、前記のろ過および除菌はフィルター(たとえば0.22μmのフィルター)で行われる。
【0053】
もう一つの好適な例において、工程(6)では、前記のろ過および除菌はまず細胞をろ過で除去できる第一フィルターで、さらに病原体(たとえば細菌)をろ過で除去できる第二フィルター(たとえば0.22μmのフィルター)で行われる。
【0054】
もう一つの好適な例において、工程(6)では、さらに、前記脂肪抽出物を分注し、分注された製品とする。(前記分注された抽出物は-20℃で保存して使用に備えることができる。常温で解凍した後、そのまま使用してもよく、解凍後、低温(たとえば4℃)である程度保存した後、使用してもよい。)
【0055】
もう一つの好適な例において、前記方法の工程(a)は、さらに、脂肪組織を提供し、前記脂肪組織を遠心し(好ましくは800-2500 rpm、さらに好ましくは1000-1500 rpm、最も好ましくは1200 rpmの回転数で遠心し)、中間層に位置する中間脂肪層を得ることを含む。
【0056】
もう一つの好適な例において、前記方法の工程(b)は、さらに、凍結・解凍し(好ましくは凍結・解凍を繰り返し、たとえば凍結・解凍を1-3回繰り返し)、ナノ脂肪を得ることを含む。
【0057】
もう一つの好適な例において、前記乳化は機械的乳化である。
【0058】
もう一つの好適な例において、前記乳化は、注射器で複数回(たとえば30-200回、好ましくは50-150回)かき混ぜを繰り返すことによって機械的乳化を行う。
【0059】
もう一つの好適な例において、前記乳化は、組織ホモジナイザーで破砕させる方法である。
【0060】
本発明の第三の側面では、薬物または化粧品組成物であって、(a)本発明の脂肪抽出物、ならびに/あるいは(b)薬学的にまたは化粧品学的に許容される担体または賦形剤を含むことを特徴とする組成物を提供する。
【0061】
もう一つの好適な例において、前記化粧品学的に許容される担体または賦形剤は、保湿剤、抗酸化剤、抗紫外線剤、防腐剤、造膜剤、油溶性ゲル化剤、有機改質粘土鉱物、樹脂、抗菌剤、エッセンス、塩類、pH調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、皮膚美化用成分、ビタミン、アミノ酸、核酸、ホルモン、包接化合物、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0062】
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物は、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、チンキ剤、経口投与液、錠剤またはトローチ剤を含む。
【0063】
もう一つの好適な例において、前記化粧品組成物の剤形は、固体剤形、半固体剤形、または液体剤形で、たとえば溶液、ゲル、クリーム、乳液、膏剤、クリーム剤、ペースト剤、プレストパウダー、粉末剤、貼付剤などである。
【0064】
もう一つの好適な例において、前記薬物または化粧品組成物は、抗老化、ヒト皮膚線維芽細胞の増殖の促進、皮膚線維芽細胞のコラーゲン合成の促進、日焼けの修復、皮膚障壁の修復、紫外線によって誘導されるDNA損傷の修復、シミ軽減、クマ防止、またはこれらの組み合わせに用いられる。
【0065】
もう一つの好適な例において、前記薬物または化粧品組成物は、抗皮膚光老化、皮膚の若返りの促進に使用される。
【0066】
もう一つの好適な例において、前記化粧品組成物は、スキンケア・美容に用いられる。
【0067】
もう一つの好適な例において、前記化粧品組成物では、化粧品組成物の合計重量に対し、脂肪抽出物の質量百分率が5 wt%、好ましくは1-20 wt%である。
【0068】
もう一つの好適な例において、前記薬物または化粧品組成物は、さらに、美白またはシミ取り、抗炎症成分、抗酸化成分、抗紫外線成分、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるほかの成分を含む。
【0069】
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物は、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、チンキ剤、経口投与液、錠剤またはトローチ剤を含む。
【0070】
もう一つの好適な例において、前記化粧品組成物の剤形は、固体剤形、半固体剤形、または液体剤形で、たとえば溶液、ゲル、クリーム、乳液、膏剤、クリーム剤、ペースト剤、プレストパウダー、粉末剤、貼付剤などである。
【0071】
本発明の第四の側面では、薬物または化粧品組成物を製造する方法であって、本発明に記載の脂肪抽出物を薬学的にまたは化粧品学的に許容される担体と混合することにより、薬物または化粧品組成物とする工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0072】
本発明の第五の側面では、スキンケア方法であって、必要な個体に本発明に記載の脂肪抽出物を施用する工程を含む方法を提供する。
【0073】
もう一つの好適な例において、前記方法は、保湿、抗炎症、日焼けの修復、皮膚障壁の修復、紫外線によって誘導されるDNA損傷の修復、美白、シミ軽減、抗糖化などの方法と併用することができる。
【0074】
本発明の第六の側面では、体外で線維芽細胞を培養する非治療的な方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(i)本発明の第二の側面に記載の方法によって製造された無添加成分の脂肪抽出物を提供する;
(ii)前記脂肪抽出物の存在下で、線維芽細胞を培養することにより、線維芽細胞の増殖、線維芽細胞の抗老化、および/または線維芽細胞におけるI型コラーゲンの生成を促進する。
【0075】
本発明の第七の側面では、体外で線維芽細胞を培養する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(i)本発明の第二の側面に記載の方法によって製造される無添加成分の脂肪抽出物を提供する;
(ii)工程(i)で得られた無添加成分の脂肪抽出物を線維芽細胞の培地に入れる;
(iii)活力の増強、抗老化、および/またはI型コラーゲンの生成能力の増強がされた線維芽細胞を得る。
【0076】
本発明の第八の側面では、(a)線維芽細胞の増殖、(b)線維芽細胞の抗老化、および/または(c)線維芽細胞におけるI型コラーゲンの生成を促進する方法であって、必要な対象に本発明に記載の無添加成分の脂肪抽出物を施用する工程を含む方法を提供する。
【0077】
もう一つの好適な例において、前記の無添加成分の脂肪抽出物用、本発明の第二の側面に記載の方法によって得られるものである。
【0078】
もう一つの好適な例において、前記の対象は、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物である。
【0079】
もう一つの好適な例において、前記のヒト以外の哺乳動物は、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジまたはサルである。
【0080】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【0081】
各図において、「control」は対照を、「FE」は本発明の脂肪抽出物を表す。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】
図1は、異なる濃度の脂肪抽出液の体外における皮膚線維芽細胞の増殖に対する促進を示すが、(A)は細胞形態で、(B)は細胞増殖の統計結果である。
【
図2】
図2は、異なる濃度の脂肪抽出液の体外における皮膚線維芽細胞の抗光老化能力に対する向上を示すが、(A)は細胞形態で、(B)は細胞生存の統計結果である。
【
図3】
図3は、異なる濃度の脂肪抽出液の体外における皮膚線維芽細胞の抗光老化能力に対する向上を示すが、(A)は細胞ROS染色で、(B)は細胞内ROSのフローサイトメーターによる分析結果である。
【
図4】
図4は、異なる濃度の脂肪抽出液の皮膚線維芽細胞の光老化に対する抵抗を示すが、(A)は細胞β-gal染色で、(B)は細胞β-gal染色の統計分析結果で、(C)は細胞ファロイジン染色である。
【
図5】
図5は、異なる濃度の脂肪抽出液の皮膚線維芽細胞のI型コラーゲンの発現に対する促進を示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明者は幅広く深く研究したところ、初めて、無添加成分の脂肪抽出物を開発した。本発明において、脂肪組織に対して機械的せん断、乳化、凍結・解凍の繰り返しなどの一連の処理を行った後、さらに遠心の方法により、油滴および生細胞成分を含まない脂肪抽出物を抽出し、体外細胞実験により、脂肪抽出液が皮膚線維芽細胞内における酸化ストレスを抑制し、同時に皮膚線維芽細胞の抗アポトーシス能力を向上させ、細胞増殖およびコラーゲン合成を促進することが実証され、皮膚の酸化損傷を抵抗し、皮膚の若返りを促進する作用を有することが示唆された。これに基づき、本発明を完成させた。
【0084】
用語の説明
別途に定義しない限り、本明細書で用いられるすべての技術と科学の用語はいずれも本発明が属する分野の当業者が通常理解する意味と同様である。
【0085】
本明細書で用いられるように、具体的に例示される数値で使用される場合、用語「約」とは当該値が例示される数値から1%以内で変わってもよい。たとえば、本明細書で用いられるように、「約100」という表示は99と101およびその間の全部の値(たとえば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0086】
本明細書で用いられるように、用語「含有」または「含む」は開放式、半閉鎖式および閉鎖式のものでもよい。言い換えれば、前記用語は「基本的に・・・で構成される」、または「・・・で構成される」も含む。
【0087】
本明細書で用いられるように、用語「IGF-1」とは、インスリン様成長因子1(insulin-like growth factors-1)である。
【0088】
本明細書で用いられるように、用語「BDNF」とは、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor、BDNF)。
【0089】
本明細書で用いられるように、用語「GDNF」とは、グリア細胞株由来神経栄養因子(glialcellline-derived neurotrophic factor)である。
【0090】
本明細書で用いられるように、用語「bFGF」とは、塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor)である。
【0091】
本明細書で用いられるように、用語「VEGF」とは、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor)である。
【0092】
本明細書で用いられるように、用語「TGF-β1」とは、形質転換成長因子-β1(transforming growth factor-β1)である。
【0093】
本明細書で用いられるように、用語「HGF」とは、肝細胞増殖因子である。
【0094】
本明細書で用いられるように、用語「PDGF」とは、血小板由来成長因子(Platelet derived growth factor)である。
【0095】
本明細書で用いられるように、用語「EGF」とは、上皮成長因子(Epidermal Growth Factor)である。
【0096】
本明細書で用いられるように、用語「NT-3」とは、ニューロトロフィン-3(neurotrophins-3)である。
【0097】
本明細書で用いられるように、用語「GH」とは、成長ホルモン(Growth Hormone)である。
【0098】
本明細書で用いられるように、用語「G-CSF」とは、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony stimulating factor)である。
【0099】
脂肪抽出物
本明細書で用いられるように、用語「本発明の抽出物」、「本発明の脂肪抽出物」、「本発明の無添加成分の脂肪抽出物」、「本発明の無添加剤の脂肪抽出物」などとは、脂肪抽出物の製造過程で(洗浄工程以外)何らの溶液、溶媒、小分子、化学製剤、および生物添加剤も添加せずに製造される、脂肪組織由来の抽出物(または抽出液)であるが、入れ替えて使用することができる。本発明の抽出物を製造する典型的な方法は、本発明の第二の側面に記載の通りである。なお、本発明の抽出物は製造過程で何らの添加剤(または添加成分)も添加しなくてもよいが、少しまたは少量の本発明の抽出物の活性にマイナスまたは不利な影響がない、安全な物質(たとえば少量の水)を添加してもよい。
【0100】
本発明の抽出物において、一部のサイトカインの含有量が低いが、多くの異なる天然の因子が共存するため、本発明の抽出物は協同して作用を果たすことで、安全に、効率的に効果、特に線維芽細胞に対する線維芽細胞の増殖、線維芽細胞の抗老化、線維芽細胞におけるI型コラーゲンの生成を促進する多重の顕著な効果を発揮することができる。
【0101】
酸化ストレスと皮膚損傷
酸化ストレス(oxidative stress、OS)とは、有害な刺激因子の作用下で、活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)が過剰に生成するか、代謝障害が生じ、そしてそれに対する内因性抗酸化防御系の除去能力を超えると、ROSが体内で増加して酸化生物大分子の形成に関与し、直接または間接的にDNA、タンパク質および脂質を酸化または損傷し、最終的に細胞の酸化損傷につながる。皮膚は、生体システムの構成部分として、システム環境のアンバランスによる酸化ストレスが皮膚に影響する一方、人体と外界の防御障壁として、生体のほかの器官と比べ、より多くより直接に外界から様々な刺激(特に日光における紫外線)を受けて酸化ストレスになることで、多くの皮膚問題につながる。
【0102】
ケラチノサイトおよび線維芽細胞はそれぞれ皮膚の表皮および真皮の重要な細胞成分で、そのうち、線維芽細胞は主にコラーゲンおよび弾性線維の生成に関与する。この2種類の細胞は、中波長紫外線(UVB)が作用する標的部位でもあり、皮膚の外界刺激に対する防御の過程で、細胞内炎症シグナル伝達機序が活性化され、一連の炎症サイトカインを発現または分泌して生体の免疫および炎症反応に関与する。また、UVは2種類の細胞のアポトーシスを引き起こし、可能な作用機序はDNAに対する直接損傷、ROS形成の誘導および細胞膜表面におけるデスレセプターの活性化などを含む。
【0103】
応用
本明細書で用いられるように、用語「薬物または化粧品組成物」は、(a)本発明に記載の脂肪抽出物、ならびに(b)薬学的にまたは化粧品学的に許容される担体または賦形剤工程を含む。また、前記薬物組成物は、健康食品組成物も含み、前記化粧品組成物はスキンケア製品を含む。
【0104】
本発明の脂肪抽出物は、薬物組成物、たとえばピル剤、カプセル、粉末剤、微粒剤、溶液剤、錠剤、ゲル、クリーム製剤、酒精剤、懸濁液、チンキ剤、湿布剤、擦剤、洗剤、およびエアゾール剤などの剤形にしてもよい。薬物は、通常、既知の製造技術によって製造することができ、適切な薬物添加剤を当該薬物に添加してもよい。
【0105】
薬物添加剤の例は、賦形剤、バインダー、分解剤、滑沢剤、流動化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保温(湿潤)剤、防腐剤、溶媒、相溶剤、防腐剤、矯味剤、甘味料、染料、香料、駆出剤などを含むが、これらの薬物添加剤は選択して本発明の効果に影響しない範囲内の適切な量で添加することができる。
【0106】
本発明の脂肪抽出物は、化粧品組成物、たとえば乳剤、液体、膏剤、クリーム剤、ペースト剤、プレストパウダー、粉末剤などの剤形にしてもよい。
【0107】
本発明の効果に支障のない範囲内で、本発明の化粧品に通常の化粧品で使用されるほかの成分、造膜剤、油溶性ゲル化剤、有機改質粘土鉱物、樹脂、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、エッセンス、塩類、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、皮膚美化用成分(美白剤、細胞活性剤、皮膚ザラつき改善剤、血液循環促進剤、皮膚引き締め剤、抗脂漏剤など)、ビタミン類、アミノ酸類、核酸、ホルモン、包接化合物などを添加してもよい。
【0108】
油溶性ゲル化剤は、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛などの金属石鹸、N-ラウロイル-L-グルタミン酸、α,γ-ジ-n-ブチルアミンなどのアミノ酸誘導体、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、2-エチルヘキサン酸パルミチン酸デキストリンなどの脂肪酸デキストリンエステル、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロースなどの脂肪酸スクロースエステル、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトールなどソルビトールのベンジリデン誘導体、ジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイト粘土、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリロナイト粘土などの有機改質粘土鉱物などから選ばれるゲル化剤で、必要によって1種類、または2種類以上使用することができる。
【0109】
保湿剤は、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ブドウ糖、キシリトール、マルチトール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ピロリドンカルボン酸塩、ポリオキシエチレンメチルグリコシド、ポリオキシプロピレンメチルグリコシドなどがある。
【0110】
抗菌防腐剤は、p-ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノールなどが、抗菌剤は、安息香酸、サリチル酸、フェノール、ソルビン酸、p-ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、p-クロロ-m-クレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン二塩酸塩、トリクロロカルバニリド、トリクロサン、感光素、フェノキシエタノールなどがある。
【0111】
抗酸化剤は、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、フィチン酸などが、pH調整剤は、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl-リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどが、キレート剤は、アラニン、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸などが、清涼剤は、L-メントール、カンファーなどが、抗炎症剤は、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、トラネキサム酸、アズレン(Azulene)などがある。
【0112】
皮膚美化用成分は、胎盤抽出液、アルブチン、グルタチオン、ユキノシタ抽出物などの美白剤、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体、仔牛血液抽出液などの細胞活性剤、皮膚ザラつき改善剤、ノナンアセトアミド、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、カプサイシン、バニリルアセトン、カンタリスチン、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸イノシトール、シクランデラート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノールなどの血液循環促進剤、酸化亜鉛、タンニン酸などの皮膚引き締め剤、硫黄などの抗脂漏剤などが、ビタミン類は、ビタミンA油、ロジン油、酢酸ロジン油、パルミチン酸ロジン油などのビタミンA類、リボフラビン、ブタン酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドなどのビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩、ジカプリル酸ピリドキシン、トリパルミチン酸ピリドキシンなどのビタミンB6類、ビタミンB12およびその誘導体、ビタミンB15およびその誘導体などのビタミンB類、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-硫酸ナトリウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸二カリウムなどビタミンC類、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロールなどのビタミンE類、ビタミンH、ビタミンP、ニコチン酸、ニコチン酸ベンジル、ニコチンアミドなどのニコチン酸類、パントテン酸カルシウム、D-パンテノール、パントテニルエチルエーテル、アセチルパントテニルエチルエーテルなどのパントテン酸類、ビオチンなどがある。
【0113】
アミノ酸類は、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン、システイン、メチオニン、トリプトファンなどが、核酸はデオキシリボ核酸などが、ホルモンはエストラジオール、ビニルエストラジオールなどがある。
【0114】
本発明の化粧品の好適な例は、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、紫外線防止化粧品を含む。たとえば、乳液、クリーム、ローション、日焼け止め、パック材料、洗顔ミルク、エキス液などの基礎化粧品、ファンデーション、白粉、頬紅などのメイクアップ化粧品などがある。
【0115】
製品の形態は液状、乳液状、クリーム状、固体状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、噴霧状などでもよいが、特に限定されない。
【0116】
本発明の主な利点は以下の通りである。
1.本発明の脂肪抽出物は有効に皮膚線維芽細胞内における酸化ストレスを抑制し、同時に皮膚線維芽細胞の抗アポトーシス能力を向上させ、細胞の悪環境に対する耐性を向上させ、損傷した皮膚状態を救うことができる。
2.本発明の脂肪抽出物は協同して効率的に、バランス良く細胞増殖およびコラーゲン合成を促進し、皮膚の若返りを促進することができる。
3.本発明の脂肪抽出物は脂肪滴および細胞成分が除かれ、生体における本発明の抽出物の使用の安全性を向上させる。脂肪滴、間質血管細胞群(SVF)および成長因子を含有するナノ脂肪と比べ、本発明の抽出物は細胞を含有しないため、SVFに該当せず、より高い使用安全性を有する。
4.ナノ脂肪は主に内皮細胞、脂肪幹細胞、マクロファージなどの細胞を含むSVFを介して作用する一方、本発明の抽出物はSVFにおける細胞を介して効果を果たすのではなく、天然の因子を介して直接作用を発揮する。
5.本発明の脂肪抽出物は使用者自身由来のものでもよく、将来は同種異体由来の脂肪抽出物の応用を実現させ、規模化生産および品質管理が可能になる。
6.SVFを含むナノ脂肪と比べ、本発明の脂肪抽出物は凍結保存が便利で、操作が簡単で、実用性が高い。
【0117】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に断らない限り、%と部は、重量で計算された。
【実施例1】
【0118】
脂肪抽出液の製造
脂肪は、ボランティアからインフォームドコンセントの上、得られた。脂肪抽出液の方法は以下の通りである。
(1)吸引または手術摘出で得られた脂肪を細かく切った後、生理食塩水で3回洗浄した。
(2)洗浄された脂肪組織を、50mlの遠心管(各管は約30-50ml)に置き、遠心機に入れて1200 rpmで3分間遠心した後、分層した混合物を得た。
(3)前記分層した混合物に対し、底部の余分な液体および最上層の油脂を排出し、中間層(すなわち、脂肪細胞を含む脂肪層)を収集した。
(4)前記中間層に対し、2本の10ml注射シリンダーを用いて三方管に連結して約60-120回押し合うことにより、機械的乳化を行い、そして機械的乳化された脂肪混合物(ナノ脂肪とも呼ばれる)を得た。
(5)前記機械的乳化された脂肪混合物を(合併するか、合併せず)、50mlの試験管に入れ、1500 rpmで5分間遠心した後、試験管の中部における透明液体、すなわち、脂肪粗抽出物を収集した。あるいは、前記機械的乳化された脂肪混合物を、-80℃の冷蔵庫に入れて(あるいは液体窒素で)凍結させ、さらに水浴で解凍し(たとえば20-37℃の水浴に置き)、凍結・解凍を1-2回繰り返した。解凍した混合物を1500 rpmで5分間遠心し、遠心管の中部における透明液体、すなわち、脂肪粗抽出物を収集した。
(6)前記脂肪粗抽出物に対し、0.22μmのフィルターに通させることにより、滅菌して混ざる可能性のある生細胞を除去することで、無添加成分の脂肪抽出物を得た。前記脂肪抽出物を分注した後、-20℃で保存して使用に備えた。常温で解凍した後、そのまま使用してもよく、解凍後、低温(たとえば4℃)である程度保存した後、使用してもよい。
【0119】
製造された無細胞脂肪抽出液に対し、ELISA免疫吸着測定キットによってIGF-1、BDNF、GDNF、bFGF、VEGF、TGF-β1、HGFおよびPDGFなどを含むサイトカインの含有量を検出した。6つのサンプルの検出時の平均濃度は、IGF-1 (9840.6 pg/ml)、BDNF (1764.5 pg/ml)、GDNF (1831.9 pg/ml)、bFGF (242.3 pg/ml)、VEGF (202.9 pg/ml)、TGF-β1 (954.5 pg/ml)、HGF (898.4 pg/ml)、PDGF (179.9 pg/ml)である。
【実施例2】
【0120】
脂肪抽出液のヒト皮膚線維芽細胞の増殖に対する影響
ヒト皮膚線維芽細胞は、新生児の包皮組織から分離した後、10%ウシ胎児血清を含有する高糖DMEM培地に接種し、3日おきに1回継代し、実験では第3、4代の細胞が使用された。
【0121】
ヒト皮膚線維芽細胞を取って1000個細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに接種し、それぞれ異なる濃度(1%-5%)の脂肪抽出液を入れ、各濃度に6つの重複ウェルを設け、72時間培養した後、CCK8キットによって細胞の増殖を検出し、OD値を測定し、実験を3回繰り返して平均値および標準偏差を求めた。
【0122】
結果:
ヒト皮膚線維芽細胞の培養において異なる濃度の脂肪抽出液を添加したが、72時間培養した後、CCK-8検出では、抽出液添加群の増殖が対照群の数よりも増加し、そして添加量と効果の依存関係があることが示された(
図1)。
【0123】
ヒト皮膚線維芽細胞の培養において異なる濃度の脂肪抽出液を添加し、そして紫外線照射を受けさせ、続いて72時間培養した後、CCK-8検出では、紫外線照射後、細胞数が減少し、抽出液添加群の細胞数が照射群よりも顕著に増加した(
図2)。
【実施例3】
【0124】
脂肪抽出液の皮膚組織の抗老化および酸化ストレスに対する影響
異なる濃度(1%-5%)の脂肪抽出液で皮膚線維芽細胞を24時間処理し、紫外線(100 mJ/cm2)照射後、フローサイトメーターによって細胞内における活性酸素種(ROS)の含有量を検出した。
【0125】
照射から48時間後、フローサイトメーターによって細胞周期を検出した。
【0126】
照射から72時間後、CCK8キットによって細胞増殖を検出し、そしてβ-galおよびファロイジンで老化細胞を染色し、老化程度の検出を行った。また、細胞のRNAを抽出し、RT-PCR技術によって細胞のI型コラーゲンの発現を検出した。
【0127】
結果:
3.1 ROS含有量
ヒト皮膚線維芽細胞の培養において異なる濃度の脂肪抽出液を添加し、紫外線照射後すぐ細胞内におけるROS染色を行い、紫外線照射後、細胞内のROSの蓄積が見られた。抽出液添加群では、細胞内におけるROS含有量が顕著に低下した(
図3)。
【0128】
3.2 老化程度
ヒト皮膚線維芽細胞の培養において異なる濃度の脂肪抽出液を添加し、紫外線照射後、続いて72時間培養し、β-galおよびファロイジンで染色した結果、紫外線照射群では、陽性老化細胞の数が増加し、抽出液処理群では、老化細胞の数が顕著に減少し、抽出液添加群の細胞数が照射群よりも顕著に増加したことがわかる。
【0129】
ファロイジンによる染色では、紫外線照射で、対照群では、線維芽細胞の形態が広がった状態で、老化したことが示唆された。一方、抽出液処理群では、線維芽細胞が紡錘状を維持し、紫外線照射による老化に抵抗したことが示唆された(
図4)。
【0130】
このように、本発明の無添加成分の脂肪抽出物は有効に線維芽細胞の老化の進行(環境因子、たとえば紫外線照射による老化を含む)に抵抗することができる。
【0131】
3.3 I型コラーゲンの合成
ヒト皮膚線維芽細胞の培養において異なる濃度の脂肪抽出液を添加し、紫外線照射後、続いて72時間培養し、細胞を収集してRNAおよび全タンパク質を抽出し、RT-PCRによってI型コラーゲンの発現を検出した。
【0132】
結果から、紫外線照射群(UVB群)では、細胞のI型コラーゲンの発現が低下したが、抽出液処理群では、I型コラーゲンの発現が向上し、意外なことに、未照射群(control群)よりも高かったことがわかる(
図5)。
【0133】
検討
Tonnardが最初にナノ脂肪の概念を唱え、脂肪吸引術で得られた脂肪を機械的に乳化すると、脂肪滴、間質血管細胞群(SVF)および成長因子を含有するナノ脂肪が得られ、ナノ脂肪は主にSVFを介して様々な作用を果たす。SVFには、内皮細胞、脂肪肝細胞、マクロファージなどが含まれる。細胞が直接に組織の形成に関与する一方、サイトカインを分泌することによって組織の再生を促進することができる。
【0134】
ナノ細胞は、脂肪組織を機械的に切断した後、乳化処理して得られた産物で、中には、脂肪滴、生きている間質細胞および多くの成長因子含まれ、軟組織の充填に応用されている。早期の研究では、ナノ脂肪は、光老化ヌードマウスの皮下に注射すると、真皮の再生および血管新生を促進することができることが見出された。ナノ脂肪に間質細胞および成長因子が含まれるため、従来の研究では、ナノ脂肪における生細胞成分が重要な作用を果たすとされ、抗皮膚光老化において細胞成分が必要かどうか、まだ不明瞭である。しかし、本発明では、意外に、体外細胞実験により、油滴および生細胞成分を含有しない脂肪抽出物は、皮膚線維芽細胞内における酸化ストレスを抑制し、同時に皮膚線維芽細胞の抗アポトーシス能力を向上させ、細胞増殖およびコラーゲン合成を促進することが実証され、抗皮膚酸化損傷、皮膚の若返りを促進する作用を有することが示唆された。
【0135】
従来の研究との違いは、本発明では、遠心・ろ過の方法により、ナノ脂肪における生細胞および脂肪滴の成分を除去し、成長因子の成分を残すことにあるが、体外細胞光老化モデルにおいて、脂肪抽出物は皮膚線維芽細胞の抗アポトーシス能力を向上させる能力を有し、細胞増殖およびコラーゲン合成を促進することが実証され、抗皮膚酸化損傷、皮膚の若返りを促進する使用の将来性が示唆された。
【0136】
SVFを含むナノ脂肪と比べ、本発明の脂肪抽出物はより広い使用の将来性があり、そして顕著な利点を有する。たとえば、第一に、脂肪滴成分を除去し、あり得る副作用を減少させた。第二に、細胞成分を除去し、免疫原性をなくしたため、将来同種異体由来の脂肪抽出物の応用が実現可能で、規模化生産および品質管理が可能になる。第三に、凍結保存しやすくて生物活性を維持し、凍結保存に保護剤の添加が不要で、ほかの化学成分による汚染が避けられる。
【0137】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【国際調査報告】