(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ホスホン酸塩難燃剤を含むポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221011BHJP
C08K 5/5317 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/5317
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506956
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020072665
(87)【国際公開番号】W WO2021028496
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/071616
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102020103820.8
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504098118
【氏名又は名称】ケミッシュ ファブリーク ブーデンハイム カーゲー
【氏名又は名称原語表記】CHEMISCHE FABRIK BUDENHEIM KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ファスベンダー、バージット
(72)【発明者】
【氏名】ディッペル、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リテルシェイト、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クドラ、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】モス、トバイアス
(72)【発明者】
【氏名】モスケル、セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フェイトナー、セバスティアン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BB121
4J002CK021
4J002CL011
4J002EW126
4J002FD136
4J002GH00
(57)【要約】
本発明は、ポリマー材料とアミノメチルビスホスホネートベースのリン系難燃剤を含む化合物、化合物の製造方法、難燃剤の使用、及び難燃剤の選択された構造に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料、特に熱硬化性ポリマー材料を備え、組成物全体に対して1~40重量%の量の難燃剤が含有及び/又は結合しているハロゲンフリー組成物において、前記難燃剤が、式(I)の化合物、その対応するアンモニウム塩、その対応するホスホン酸塩、又はこれらの混合物であり、
【化1】
(N-i)R
1及びR
2は、同一又は異なる置換基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を持つ単核及び多核の芳香族、4個までの核を持つ単核又は多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル、又はアリールアルコールからなる群から選択される、又は
(N-ii)R
1とR
2がともに、N原子を含めて、炭素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、及び窒素から選択される4~8個の環原子を持つ飽和又は一価不飽和又は多価不飽和の複素環を形成し、これらの窒素原子は、前記複素環上で、それが環原子として窒素原子を有する場合には、H、アルキル、アリール、又は以下の構造(II)を有するメチルビスホスホネート基で置換されていることが好ましく、
【化2】
前記複素環上で、それが環原子として炭素、リン、又はケイ素を有する場合には、これらの原子は、好ましくは、H、アルキル、アリール、-NH
2、-NHR、-NR
2、-OH、-OR、=O、-I、-Cl、-Br、F、-N
3、-SH、-SR、-OCN、エポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリン、エーテル、アルケニレン、及びアルキニレン、-SiR
xH
yからなる群から選択される置換基を有することができ、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3であり、
-X-は酸素原子-O-、又は-X-は単結合であり、
(P-i)R
3、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なる置換基であり、H、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を有する多核の芳香族、単核又は4個までの核を有する多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル又はアリールアルコール、n=0~100である以下の構造(III)及び(IV)を有するもの、及び
【化3】
カチオンからなる群から選択され、前記カチオンが、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、B
3+、Al
3+、Zn
2+、NH
4+、若しくはメラミン又はその縮合物、好ましくはメラム、メレム、メロン、尿素、グアニジン、モルホリン、及びピペラジンからなる群から選択されるアミン化合物のアンモニウムイオンであり、及び/又は
(P-ii)-X-が酸素原子の場合、-O-、-OR
3及び-OR
4がともに、及び/又は-OR
5と-OR
6がともに、及び/又は-OR
3と-OR
5がともに、及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は
(P-iii)-X-が単結合の場合、-R
3と-OR
4及び/又は-R
3と-OR
5がともに、ホスフィナート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスフィン酸エステル又は環状ホスフィン酸無水物を形成し、及び/又は、-OR
5と-OR
6及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、
A)置換基R
1~R
6の1つ、又は
B)
1)置換基R
3~R
6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸エステルを形成する際、又は
2)置換基R
3~R
6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸無水物を形成する際、又は
3)置換基R
1及びR
2が(N-ii)に従って複素環を形成する際
に形成されるサイクルの1つは、
a)P、O、N、S、I、Cl、Br、Fからなる群から選択されるヘテロ原子、及び/又は
b)アルケン又はアルキン基
を有する第1の非電荷又は負電荷の官能基を有しており、
前記官能基は-OHではなく、1)~3)に係る前記サイクルの1つが前記官能基を有する場合には、前記サイクルの前記環原子が、前記官能基で、又は前記官能基を有する置換基で置換されている
ことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記置換基R
1~R
6の少なくとも1つ、又は前記置換基R
1~R
6によって形成される前記サイクルのいずれかが、N、S、O、Si、I、Cl、Br、F及び/又はアルケン若しくはアルキン基からなる群から選択されるヘテロ原子を有する少なくとも1つの官能基を更に有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1及び/又は更なる官能基が、-NH
2、-NHR、-NR
2、-OH、-OR、=O、-SH、-SR、-COOH、-COOR、-OCN、-SiR
xH
y、-I、-Cl、-Br、-F、-N
3、エポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリン、エーテル、アルケニレン、及びアルキニレンからなる群から選択され、ここで、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記難燃剤が、好ましくは前記ポリマー材料のポリマー形成反応においてコモノマーとして前記難燃剤を使用することにより、前記ポリマー材料に対して共有結合を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
R
1及びR
2が同一の置換基であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1及び/又は更なる官能基がアルケニル又はエポキシ基であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記難燃剤が、180℃の温度で開始して、好ましくは190℃の温度で開始して、特に好ましくは200℃の温度で開始して、10重量%の質量損失に達する乾燥難燃剤であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記難燃剤のリン含有量が、少なくとも10.0重量%、好ましくは少なくとも12.5重量%、特に好ましくは少なくとも21.5重量%、最も好ましくは少なくとも15.0重量%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記基R
3、R
4、R
5及びR
6の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より一層好ましくは3つ、最も好ましくは4つが、カチオン又はH、好ましくはHであり、前記カチオンが、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、B
3+、Al
3+、Zn
2+、NH
4+、若しくはメラミン又はその縮合物、好ましくはメラム、メレム、メロン、尿素、グアニジン、モルホリン、及びピペラジンからなる群から選択されるアミン化合物のアンモニウムイオンであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマー材料が、前記組成物全体に対して、少なくとも3重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%の量で、及び/又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下の量で、前記難燃剤を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリマー材料が少なくとも1つの更なる難燃性成分を含み、前記少なくとも1つの更なる難燃性成分が、好ましくは窒素塩基、メラミン誘導体、リン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、有機及び無機ホスフィン酸塩、有機及び無機ホスホン酸塩、ならびに前述の化合物の誘導体から選択される、好ましくは、メラミン、メラム、メレム、メロン、アンメリン、アンメリド、2ウレイドメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ジアミンフェニルトリアジン、メラミンの塩及び付加物、メラミンシアヌレート、メラミンボラート、メラミンオルトホスフェート、メラミンピロホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、アルミニウムジエチルホスフィネート、メラミンポリホスフェート、オリゴマーやポリマーの1,3,5トリアジン化合物や1,3,5トリアジン化合物のポリリン酸塩、グアニン、ピペラジンホスフェート、ピペラジンポリホスフェート、エチレンジアミンホスフェート、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、リン酸ホウ素、1,3,5トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、1,3,5トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、及び前述の化合物の誘導体を含む、メラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シラン、シロキサン、ポリシロキサン、シリコーン又はポリスチロールとのポリリン酸アンモニウム、コーティングされた及び/又はコーティングされていない、架橋されたポリリン酸アンモニウム粒子、及び1,3,5トリアジン化合物から選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記難燃剤が、重縮合又は重付加により製造中の前記ポリマー材料に配合される前記ポリマー材料の共縮合成分又は共付加成分であり、前記ポリマー材料が好ましくはポリエステル又はポリウレタンであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項13】
前記置換基R
3~R
6又はこれらによって形成される前記サイクルが、第1の官能基を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項14】
以下の工程を備える難燃剤の製造方法。
a)反応容器内の式(V)及び(VI)の化合物からなる群から選択される少なくとも1つのホスホン酸又はホスフィン酸であって、
【化4】
-X-は酸素原子-O-、又は-X-は単結合であり、
(P-i)R
3、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なる置換基であり、H、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を有する多核の芳香族、単核又は4個までの核を有する多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル又はアリールアルコール、n=0~100である以下の構造(III)及び(IV)を有するもの、及び
【化5】
カチオンからなる群から選択され、前記カチオンが、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、B
3+、Al
3+、Zn
2+、NH
4+、若しくはメラミン又はその縮合物、好ましくはメラム、メレム、メロン、尿素、グアニジン、モルホリン、及びピペラジンからなる群から選択されるアミン結合のアンモニウムイオンであり、及び/又は
(P-ii)-X-が酸素原子の場合、-O-、-OR
3及び-OR
4がともに、及び/又は-OR
5と-OR
6、及び/又は-OR
3と-OR
5がともに、及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は
(P-iii)-X-が単結合の場合、-R
3と-OR
4及び/又は-R
3と-OR
5がともに、ホスフィナート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は、-OR
5と-OR
6及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成する、ホスホン酸又はホスフィン酸と、
b)R
7=アルキル、アリール又はアルケニル、好ましくはトリエトキシメタンであるHC(OR
7)
3と、
c)式(VII)のアミノ化合物と
【化6】
の混合物を提供する工程であって、
(N-i)R
1及びR
2は、同一又は異なる置換基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を持つ単核及び多核の芳香族、4個までの核を持つ単核又は多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル、又はアリールアルコールからなる群から選択される、又は
(N-ii)R
1とR
2がともに、N原子を含めて、炭素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、及び窒素から選択される4~8個の環原子を持つ飽和又は一価不飽和又は多価不飽和の複素環を形成し、これらの窒素原子は、前記複素環上で、それが環原子として窒素原子を有する場合には、H、アルキル、アリール、又は以下の構造(II)を有するメチルビスホスホネート基で置換されていることが好ましく、
【化7】
前記複素環上で、それが環原子として炭素、リン、又はケイ素を有する場合には、これらの原子は、好ましくは、H、アルキル、アリール、-NH
2、-NHR、-NR
2、-OH、-OR、=O、-I、-Cl、-Br、F、-N
3、-SH、-SR、-OCN、エポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリン、アルケニレン、及びアルキニレン、-SiR
xH
yからなる群から選択されることが好ましい置換基を有することができ、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3である工程と、
前記混合物を40~150℃の範囲の温度に加熱する工程。
【請求項15】
好ましくはコーティングの形での表面処理のための、式(I)の化合物、その対応するアンモニウム塩、その対応するホスホン酸塩、又は混合物の使用であって、
【化8】
(N-i)R
1及びR
2は、同一又は異なる置換基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を持つ単核及び多核の芳香族、4個までの核を持つ単核又は多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル、又はアリールアルコールからなる群から選択される、又は
(N-ii)R
1とR
2がともに、N原子を含めて、炭素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、及び窒素から選択される4~8個の環原子を持つ飽和又は一価不飽和又は多価不飽和の複素環を形成し、これらの窒素原子は、前記複素環上で、それが環原子として窒素原子を有する場合には、H、アルキル、アリール、又は以下の構造(II)を有するメチルビスホスホネート基で置換されていることが好ましく、
【化9】
前記複素環上で、それが環原子として炭素、リン、又はケイ素を有する場合には、これらの原子は、好ましくは、H、アルキル、アリール、-NH
2、-NHR、-NR
2、-OH、-OR、=O、-I、-Cl、-Br、F、-N
3、-SH、-SR、-OCN、エポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリン、アルケニレン、及びアルキニレン、-SiR
xH
yからなる群から選択される置換基を有することができ、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3であり、
-X-は酸素原子-O-、又は-X-は単結合であり、
(P-i)R
3、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なる置換基であり、H、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を有する多核の芳香族、単核又は4個までの核を有する多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル又はアリールアルコール、n=0~100である以下の構造(III)及び(IV)を有するもの、及び
【化10】
カチオンからなる群から選択され、前記カチオンが、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、B
3+、Al
3+、Zn
2+、NH
4+、若しくはメラミン又はその縮合物、好ましくはメラム、メレム、メロン、尿素、グアニジン、モルホリン、及びピペラジンからなる群から選択されるアミン化合物のアンモニウムイオンであり、及び/又は
(P-ii)-X-が酸素原子の場合、-O-、-OR
3及び-OR
4がともに、及び/又は-OR
5と-OR
6、及び/又は-OR
3と-OR
5がともに、及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は
(P-iii)-X-が単結合の場合、-R
3と-OR
4及び/又は-R
3と-OR
5がともに、ホスフィナート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスフィン酸エステル又は環状ホスフィン酸無水物を形成し、及び/又は、-OR
5と-OR
6及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料とアミノメチルビスホスホネートをベースのリン系難燃剤を含む化合物、化合物の製造方法、難燃剤の使用、及び難燃剤の選択された構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料に難燃性を付与する上では、複数の物質が知られており、これらの物質は単独で使用することも、同様の又は追加の難燃性を付与する他の物質と組み合わせて使用することもできる。最もよく知られている難燃剤には、ハロゲン化有機化合物、金属水酸化物、有機又は無機リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、並びに1,3,5-トリアジン化合物の誘導体及びそれらの混合物がある。難燃剤は、低分子系と高分子系に分類される。Clariantのハロゲン化ポリオールExolit OP550のような高分子系難燃剤は、有利なことに、ポリマー材料中でわずかな軟化効果と低い移行能力しか持たないが、低分子系難燃性添加剤とは対照的に、技術的処理中に頻繁に、特により低い溶融能力では、保護すべきポリマー材料と直ちには混ざりにくい。更に、高分子系難燃剤を添加すると、ポリマー材料の硬化に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
そのため、採用されている難燃剤の大半は低分子系化合物である。中でもリン系化合物は、この分野で特に優れていることが知られている。炎の中では、これらがポリマー材料の中でボリュームのある保護層を形成するが、これをイントメッセントという。この過程で、酸素の供給を阻害する絶縁層が形成され、ポリマー材料が燃え続けることを防ぐことができる。固相では、難燃効果は、ポリマー材料の炭化速度の増加又は無機ガラスの形成に基づくこともできる。難燃活性は、リン化合物の燃焼によって生成されるPOラジカルとのラジカルの組み合わせによってポリマー材料の燃焼プロセスを大幅に遅くすることを含む気相メカニズムによっても促進される。ハロゲン化リン酸塩であるトリス(2-クロロエチル)ホスフェート(TCEP)及びトリス(2-クロロイソプロピル)ホスフェート(TCPP)は、最も重要なリン系化合物である。しかし、このようなリン酸塩は生物蓄積性があり、自治体の水処理施設では排水からの除去が非常に困難であることから、その潜在的な毒性や使用に伴う生態系の問題により、使用が制限されることが多くなっている。また、それらにはハロゲンが含まれており、炎の中でHXガス等の有毒化合物が発生及び放出される。このような腐食性のある火災ガスは、特に電子機器用途ではリスクが高くなる。
【0004】
リン系難燃剤の選択肢として、ハロゲン化リン酸塩とハロゲンフリーリン酸塩がある。リン酸塩に比べて、これらは特に顕著な難燃性の気相活性を有している。ドイツ公開特許第DE2128060号には、ポリウレタンの難燃剤として、リン濃度が最大23.2重量%のアミノメタンホスホン酸エステルの使用が記載されている。アミノメタンホスホン酸エステルは、ヘキサメチレンテトラミンとジアルキル又はジアリールホスホン酸塩から製造される。これらのホスホン酸塩は、他の必要な添加剤とともにポリウレタン形成混合物のポリオール成分に溶解し、続いてポリイソシアネートを添加して使用する。NH基を持つエステルは、イソシアネート基に付加してポリマー材料に配合される。
【0005】
欧州特許出願第EP0001996号は、N,N-ビス-(2-ヒドロキシアルキル)アミノメタン-ホスホン酸ジメチルエステルの製造に関するもので、主にポリマー材料、特にポリウレタンの難燃性添加剤として使用されている。これらは、ジメチルホスファイトとオキサゾリジンの混合物に、触媒としてH酸化合物を加えることで合成される。これらの生成物は、末端第2級ヒドロキシル基を有し、ポリウレタン形成混合物のポリマー成分が添加される際に、ポリマー材料に配合することができる。しかし、添加されたH酸性物質はポリマー材料中に残り、特性を損なう可能性がある。或いは、ポリオール成分を添加する前に、対応するアルカリ塩に変化させて、ホスホン酸エステルから分離する必要がある。
【0006】
カナダ登録特許第CA2027078号は、アミノメタンホスホン酸アリールエステルに関するもので、発泡体、熱可塑性物質、及び熱硬化性物質の難燃剤として使用することができる。対応する化合物は、アミンをトリアルキル又はトリアリールホスファイト及びパラホルムアルデヒドと反応させることで生成される。この化合物は、押出工程で加工されたポリマー材料に添加されるか、又はポリマーの縮合反応において共縮合成分の添加剤として使用することができる。
【0007】
Liuら、Ind.Eng.Chem.Res.(2017),56,8789-8696では、DOPO(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド)、パラホルムアルデヒド及びピペラジンから製造される、難燃効果を有するDOPO誘導体について議論している。これらはハロゲンフリーであり、ポリカーボネートに使用することで難燃効果を発揮する。しかし、これらの化合物も、上記文献のものと同様に熱安定性が低いだけであり、その原因はP-CH2N基のP-C結合が弱いことにある。P-C結合は基本的に化学的・熱的に安定しているが、αアミノ基がホモリシスで発生する炭素ラジカルを安定化させるため、結果的にこれらの難燃剤のP-C結合は、比較的低い温度ですでに切れている。ホモリシスで形成した第3級アミンはモル質量が小さいため、揮発性成分として放散し、それに伴って質量が減少する。難燃剤がポリマー材料に組み込まれている場合、アミンが放出されると、煙ガスが上昇する。難燃剤の分解温度が低いため、難燃剤を組み込んだポリマー材料の成形工程で部分的に分解されてしまう。これらの難燃剤の更に別の欠点は、リン濃度が低いためにポリマー材料に高濃度で添加しなければならず、ポリマー材料の加工性、柔軟性、及びその他の製品特性を著しく損なうことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ公開特許第DE2128060号
【特許文献2】欧州特許出願第EP0001996号
【特許文献3】カナダ登録特許第CA2027078号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Liuら、Ind.Eng.Chem.Res.(2017),56,8789-8696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような背景から、本発明の課題は、先行技術で知られているのと同等又はそれ以上の難燃特性を持つ難燃剤を有し、良好な難燃性を提供しつつ組成物中に低濃度で使用でき、既知の難燃剤よりも高い温度、好ましくは加工温度及び/又は製造温度よりもはるかに高い温度で、かつポリマー材料の分解温度よりもわずかに低い又は同じ温度でのみ分解し、ポリマー材料で分解したときに煙ガス濃度が低くなる及び/又は煙ガスの毒性が低下するような、ポリマー材料を用いた組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこの課題を、ポリマー材料、特に熱硬化性ポリマー材料を備え、組成物全体に対して1~40重量%の量の難燃剤が含有及び/又は結合している組成物を規定することにより解決するものであり、前記難燃剤が、式(I)の化合物、その対応するアンモニウム塩、その対応するホスホン酸塩、又はこれらの混合物であり、
【化1】
(N-i)R
1及びR
2は、同一又は異なる置換基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を持つ単核及び多核の芳香族、4個までの核を持つ単核又は多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル、又はアリールアルコールからなる群から選択される、又は
(N-ii)R
1とR
2がともに、N原子を含めて、炭素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、及び窒素から選択される4~8個の環原子を持つ飽和又は一価不飽和又は多価不飽和の複素環を形成し、これらの窒素原子は、前記複素環上で、それが環原子として窒素原子を有する場合には、H、アルキル、アリール、又は以下の構造(II)を有するメチルビスホスホネート基で置換されていることが好ましく、
【化2】
前記複素環上で、それが環原子として炭素、リン、又はケイ素を有する場合には、これらの原子は、好ましくは、H、アルキル、アリール、-NH
2、-NHR、-NR
2、-OH、-OR、=O、-I、-Cl、-Br、F、-N
3、-SH、-SR、-OCN、エポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリン、エーテル、アルケニレン、及びアルキニレン、-SiR
xH
yからなる群から選択される置換基を有することができ、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3であり、
-X-は酸素原子-O-、又は-X-は単結合であり、
(P-i)R
3、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なる置換基であり、H、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を有する多核の芳香族、単核又は4個までの核を有する多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル又はアリールアルコール、n=0~100である以下の構造(III)及び(IV)を有するもの、及び
【化3】
カチオンからなる群から選択され、前記カチオンが、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、B
3+、Al
3+、Zn
2+、NH
4+、若しくはメラミン又はその縮合物、好ましくはメラム、メレム、メロン、尿素、グアニジン、モルホリン、及びピペラジンからなる群から選択されるアミン化合物のアンモニウムイオンであり、及び/又は
(P-ii)-X-が酸素原子の場合、-O-、-OR
3及び-OR
4がともに、及び/又は-OR
5と-OR
6、及び/又は-OR
3と-OR
5がともに、及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は
(P-iii)-X-が単結合の場合、-R
3と-OR
4及び/又は-R
3と-OR
5がともに、ホスフィナート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は、-OR
5と-OR
6及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、
A)置換基R
1~R
6の1つ、又は
B)
1)置換基R
3~R
6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸エステルを形成する際、又は
2)置換基R
3~R
6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸無水物を形成する際、又は
3)置換基R
1及びR
2が(N-ii)に従って複素環を形成する際
に形成されるサイクルの1つは、
a)P、O、N、S、I、Cl、Br、Fからなる群から選択されるヘテロ原子、及び/又は
b)アルケン又はアルキン基
を有する第1の非電荷又は負電荷の官能基を有しており、
前記官能基は-OHではなく、1)~3)に係る前記サイクルの1つが前記官能基を有する場合には、前記サイクルの前記環原子が、前記官能基で、又は前記官能基を有する置換基で置換されている、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、官能基を、例えば分子の極性に影響を与えるため、及び/又は他の化合物と反応することができるという理由で、化合物の物質特性及び反応挙動を物質的に決定する、結合中の原子群と定義している。ただし、本発明で規定する官能基には、a)で引用したヘテロ原子若しくはアルケン基又はアルキン基のいずれかが芳香族系の環の一部となっている原子群、例えば芳香族やヘテロ芳香族は含まれない。
【0014】
本発明の目的のために、非電荷又は負電荷の官能基が-OHではないという事実は、置換基R1~R6、若しくは置換基R3~R6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸エステルを形成する際、又は置換基R3~R6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸無水物を形成する際、又は置換基R1及びR2が(N-ii)によって複素環を形成する際に形成されるサイクルの1つが、OH基を持つことができないことを意味しない。しかし、本発明の目的のために、これらは更に、請求項1で定義された第1の非電荷又は負電荷の官能基を持たなければならない。
【0015】
置換基R1~R6、若しくは置換基R3~R6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸エステルを形成する際、又は置換基R3~R6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸無水物を形成する際、又は置換基R1及びR2が(N-ii)に従って複素環を形成する際に形成されるサイクルの1つは、好ましくはOH基を持たない。これは、例えば、OH基がポリマー材料中の他の添加剤と反応する場合に有利である。
【0016】
置換基R1~R6が1)から3)に従ってサイクルを形成する場合、官能基は環原子の置換基上にのみ配置されることが可能であり、従って環自体の一部になることはない。従って、官能基は、サイクル内ではなく、サイクルの環原子の置換基上に配置される。R1~R2は、例えば、モルホリン環を形成することができ、故に、3)に従ったサイクルを形成することができるが、環に含まれるエーテル基は、本発明で定義される官能基を表さない。しかし、モルホリンの環原子は、本発明に係る官能基又は本発明に係る官能基を有する置換基のいずれかで追加的に置換され得る。
【0017】
好ましい実施形態では、-X-が酸素原子-O-であり、-OR3と-OR4がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、-OR5と-OR6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成する。
【0018】
好ましい実施形態では、-X-が酸素原子-O-であり、-OR3と-OR5がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、-OR4と-OR6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成する。
【0019】
更に好ましい実施形態では、-X-は単結合であり、-R3と-OR4がともに、ホスフィナート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスフィン酸エステル又は環状ホスフィン酸無水物を形成し、-OR5と-OR6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成する。
【0020】
更に好ましい実施形態では、-X-は単結合であり、-R3と-OR5がともに、ホスフィナート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスフィン酸エステル又は環状ホスフィン酸無水物を形成し、-OR4と-OR6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成する。
【0021】
特に好ましくは、R1とR2がともに、N原子を含めて、モルホリン環又はピペリジン環を形成する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、置換基R3~R6又はそれによって形成されるサイクルは、第1の官能基を有する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、R1とR2がともに、N原子を含めて、(N-ii)による複素環を形成し、複素環上の原子は、それが環原子として炭素、リン、又はケイ素を有する場合には、好ましくはH、アルキル、アリール、-NH2、-NHR、-NR2、-OH、-OR、=O、-I、-Cl、-Br、F、-N3、-SH、-SR、-OCN、エポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリン、エーテル、アルケニレン、及びアルキニレン、-SiRxHyからなる群から選択される置換基を有し、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、第1及び/又は第2の更なる官能基は、P、O、N、S、Si、若しくはアルケン又はアルキン基からなる群のヘテロ原子を有する。ハロゲン系置換基は、炎の中で難燃剤が分解する際に煙が上昇するため、ハロゲン置換基を避けることで、煙ガス量を最小限に抑えることができる。
【0025】
特に好ましくは、組成物は、1000重量ppm未満、好ましくは850重量ppm未満の総ハロゲン含有量を有する。ハロゲン含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー(CIC)等、当業者に知られている従来の方法で測定することができる。既知の難燃剤は、無機及び有機的に結合したハロゲンの形で望ましくないほど多量のハロゲンを有しているため、ハロゲン含有量が特に低いことは、先行技術の難燃剤と比較して有利である。本発明が定義する「ハロゲンフリー」という用語は、前述の最大値におけるハロゲンの軽微な混入を許容するものである。しかし、ハロゲンは一般に、ハロゲンの不利な影響を避けるために量を制限しなければならない。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、置換基R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つが有機残基であり、これらの有機残基のそれぞれが2個以上、好ましくは3個以上の炭素原子を有する。
【0027】
本発明に係る難燃剤は、ドイツ公開特許第DE3133308号に記載されている方法を用いて製造することができる。これによると、アルキルアミノメタンジホスホン酸又はそのアクリル誘導体は、無水酢酸又は塩化アセチルと亜リン酸からの反応生成物を、アルキルホルムアミドを用いて化学量論的比率で変換すると、非常に良好な収率で得ることができる。可能な限り高い収率を得るには、第1変換段階の反応温度、例えば無水酢酸又は塩化アセチルと亜リン酸との変換を40~60℃に保つことである。反応物である無水酢酸又は塩化アセチルと亜リン酸の代わりに、第1の反応段階を三塩化リンと酢酸の混合物で行うこともできる。好適なアルキルホルムアミドとして、メチル及びジメチルホルムアミド、エチル及びジエチルホルムアミド等のモノ及びジアルキルホルムアミド、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、オキサゾリジン、アルカノールアミンのホルミル化合物が記載されている。
【0028】
本発明に係る難燃剤は、先行技術で知られているホスホン酸塩よりも高い熱安定性を有しており、その上で炭素がα位で窒素に置換されており、1つのホスホネート基のみを有している。これは、分解温度が同等の既知のホスホン酸塩よりも高いことを意味する。本発明の文脈では、分解温度とは、難燃剤の乾燥サンプルの質量減少が2重量%に達する温度と定義される。例えば、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP、CAS:6419-19-8)は、176.4℃ですでに2重量%の質量損失に達している(
図5参照)。本発明に係るホスホン酸塩では、対応する質量の損失は、はるかに高い温度でのみ到達する(
図2及び4を参照)。
【0029】
温度の関数としてのサンプルの質量の損失は、熱重量分析によって決定することができる。この場合の「乾燥」とは、難燃剤の水分含有量が0.5重量%未満であることを意味する。難燃剤の水分含有量は、比色カールフィッシャー滴定やNIR分光法等、当業者に知られた方法で測定することができる。本発明に係る難燃剤は、押出成形に一般的に使用される加工温度では分解されず、炎の中で発生する高温でのみ分解され、その後に難燃効果を発現するため、特に押出成形で加工されるポリマー材料に配合するのに適している。
【0030】
また、本発明に係る難燃剤は、煙ガスの発生率が低いことも特徴である。これは、分解後の残留質量が高いことでも表現される。
【0031】
本発明者らは、本発明に係る難燃剤の熱安定性の向上は、その特殊な構造に基づいていると想定している。アミノメタンホスホン酸塩の熱分解では、まずP-CH2N基の弱いP-C結合で結合が切れる。P-C結合は基本的に化学的にも熱的にも安定しているが、αアミノ基はホモリシスによって発生する炭素ラジカルを安定化させるため、結果的にこれらの難燃剤のP-C結合は比較的低い温度ですでに切断されている。先行技術で知られる化合物のαアミノ基は比較的低いモル重量であるため、対応するアミンはホモリシス後にガス状の生成物として放散する。アミンの放散は、反応の熱力学的な駆動力となり、従って優先的に発生する。本発明の難燃剤では、α位の炭素ラジカルに、更にホスホネート基がアミン基に結合している。その結果、アミンはより高いモル重量を持つことになり、主にはるかに低い割合でしか放散できなくなる。アミンを低温で放散させるためには、質量を小さくしなければならないが、これは、第2ホスホネート基のP-C結合を等方的に切断することによってのみ達成できる。しかし、これは特に不安定なカルバニオンを生成することになるため、この反応は起こらないか、本質的には全く起こらない。従って、ポリマー材料が分解されると、アミンの放出が著しく少なくなり、その結果、煙ガスの発生が減少する。更に、結合が切断されてもアミンはすぐには放散しないため、逆の反応、例えば2つのラジカルが結合して元の結合に戻ることも可能である。前述の効果の結果、P-C結合の切断は、先行技術の化合物の場合ほど有利ではなく、本発明に係るアミノメタンホスホン酸塩は、その結果、はるかに高い熱安定性を有することになる。
【0032】
また、第1の官能基と任意の更なる官能基を有する少なくとも1つのヘテロ原子及び/又は少なくとも1つのアルケン又はアルキン基は、難燃性を高める結果となる。本発明者らは、ヘテロ原子及び/又はアルケン若しくはアルキン基が、高エネルギーの自由電子対及び/又はπ結合電子対を有するラジカルを形成することができると想定している。これらのラジカルと、燃焼プロセスで発生する追加のラジカルとが組み合わさることで、分解反応が遅くなる。本発明に係る難燃剤がポリマー材料中に非常に均一に分布しているため、特に優れた難燃性の挙動が得られる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、置換基R1~R6又はこれらによって形成されるサイクルは、P、O、N、S、Si、I、Cl、Br、F及び/又はアルケン若しくはアルキン基からなる群から選択されるヘテロ原子である少なくとも1つの官能基を更に有する。これにより、上述のラジカルによる分解プロセスを遅らせる効果、ひいては難燃効果を高めることができる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、置換基R1~R6又はこれらによって形成されるサイクルは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より一層好ましくは少なくとも4つ、最も好ましくは少なくとも5つの官能基を更に有する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、置換基R1~R6又はこれによって形成されるサイクルは、それぞれ少なくとも1つの官能基を有する。本発明の特に好ましい実施形態では、置換基R3~R6又はこれによって形成されるサイクルは、それぞれ少なくとも1つの官能基を有する。特に好ましくは、すべての置換基又はこれらによって形成されるサイクルについて、官能基の数が一致する。最も好ましくは、R3~R6は同じ置換基である。このような一般式(I)の化合物は、例えば、対応するホスホン酸をエステル化することにより、特に容易に得られる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、第1及び/又は更なる官能基を使用して、難燃剤の極性をポリマー材料の極性に一致させる。難燃剤とポリマー材料の極性が同程度であれば、難燃剤はポリマー材料により容易に配合され、その結果、より良い分布が得られる。すると、難燃剤はポリマー材料からの移行がより困難になる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、難燃剤の第1及び/又は更なる官能基は、NH2、-NHR、-NR2、-OH、-OR、=O、-SH、-SR、-COOH、-COOR、-OCN、-SCN、-SiRxHy、-I、-Cl、-Br、-F、-N3及びエポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリンからなる群から選択され、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3である。
【0038】
これらの官能基の選択は、官能基のないアルキル及び/又はアリール置換基と比較して、置換基の極性が増加するという利点がある。そのため、対応する難燃剤は、極性ポリマー材料(ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリアミド等)により容易に配合することができ、ポリマー材料からの移行がより困難になる。
【0039】
本発明の更に好ましい実施形態では、難燃剤の第1及び/又は更なる官能基は、-SiRxHy、アルケニレン及びアルキニレンからなる群から選択され、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3である。
【0040】
これらの官能基を選択することで、官能基を持たないアルキル及び/又はアリール置換基と比較して、置換基の極性が低下するという利点がある。そのため、対応する難燃剤は、ポリアルカレン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等の非極性ポリマー材料に、より容易に配合することができ、ポリマー材料からの移行がより困難になる。
【0041】
更に、前述の官能基を持つ化合物を、ポリマー材料を製造する際のコモノマーとして使用することで、難燃剤をポリマー材料に共有結合させることができる。これにより、難燃剤がポリマー材料から移行できないか、或いはしても非常に困難であるという利点がある。また、ポリマー材料内での難燃剤の分布がより均一になる。その結果、難燃性が向上する。
【0042】
好ましい実施形態では、第1及び/又は更なる官能基は、NH2-基であってよい。難燃剤はその後、ポリマーの縮合反応に加えられ、モノマーの1つの求電子基との反応によってポリマー鎖に組み込まれることができる。この例として、ポリアミド6,6の形成を以下に示す。
【0043】
【0044】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に係る難燃剤は、NH2、-NHR、-NR2、-OH、-OR、=O、-SH、-SR、-COOH、-COOR、-OCN、-SiRxHy、-I、-Cl、-Br、-F、及びエポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリン、エーテル、アルケニレン、アルキニレンからなる群から選択される更なる官能基を有し、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3である。
【0045】
これにより、難燃剤がポリマー鎖に組み込まれる確率が高まり、組み込みに伴う利点が最大限に発揮される。本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に係る難燃剤は、ポリマー材料のモノマーのものと一致する少なくとも2つの官能基を有する。その結果、難燃剤は、連鎖停止反応を引き起こすことなく、ポリマー鎖に組み込まれることができる。
【0046】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に係る難燃剤は、少なくとも2つの異なる官能基を有する。その結果、難燃剤は、異なる重合反応に組み込まれることができる。例えば、1つの官能基はNH2基であり、もう1つの官能基はアルケン基であることができる。次に、難燃剤は、ラジカルによる重合を用いて、又はNH2基との重縮合反応を用いて、アルケン基とともにポリマー鎖に組み込むことができる。
【0047】
本発明に係る難燃剤は、液体である、及び/又は、極性溶媒に容易に溶解し、従って、溶媒の粘度にわずかな影響しか与えないという利点がある。従って、本発明に係る難燃剤は、容易に加工され、重合反応に組み込まれる。特に、重付加や縮合反応の際に発生する粘度の問題は、本発明に係る難燃剤を使用することで低減することができる。これにより、トロムスドルフ・ノリッシュ効果の発生が遅くなり、その結果、ポリマー材料の平均モル質量を高くすることができる。
【0048】
好ましい実施形態では、R1及びR2がサイクルを形成し、同じ又は異なる置換基であり、置換基の少なくとも1つがメラミンであり、アミノ基の窒素原子がH、アルキル、アリール、又は以下の構造(II)のメチルビスホスホネート基で置換されている。
【0049】
【0050】
特に好ましくは、アミノ基の窒素原子のそれぞれにおいて、置換基の一方がHであり、他方が構造(II)のメチルビスホスホネート基であることである。別の好ましい実施形態では、それぞれの窒素原子上の両方の置換基が、構造(II)のメチルビスホスホネート基である。
【0051】
難燃剤とポリマー材料の極性差により、本クラスのリン酸塩のような極性難燃剤は、ポリエチレンのような非極性ポリマー材料から容易に移行する。
【0052】
特に好ましくは、難燃剤の第1及び/又は更なる官能基は、アルケン又はアルキン基である。これにより、重合反応、特にラジカル又はイオンによる重合反応の際に、難燃剤をポリオレフィン等の非極性ポリマー材料に結合させることができるという利点がある。これにより、ポリマー材料からの移行を防ぐことができる。
【0053】
特に、保護されたポリマー材料が非極性ポリオレフィンではなく、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル等の極性ポリマーである場合には、本発明に係る難燃剤を酸として使用することが有利になり得る。難燃剤は、特に共縮合/付加成分として使用する場合、好ましくは酸である。本発明の好ましい実施形態では、基の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、特に好ましくは少なくとも3つ、最も好ましくは4つが、従ってR3、R4、R5及びR6Hである。本発明に係る難燃剤は、例えば好ましくは、酸の形態でポリウレタン発泡プロセスに共付加成分として添加することができる。この理論に拘束されることなく、本発明者らは、イソシアネートとホスホン酸基の反応により、特に安定なP-O-C(=O)-N基を形成することで難燃剤をポリマーに組み込み、これがポリウレタンの分解挙動に好影響を与えると想定している。このことは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、及びポリウレア等、重付加によって製造される他のポリマーにも同様に当てはまる。ここでも、ホスホン酸基は成分の1つと反応し、結果的にポリマーに組み込まれる。従って、これらのポリマーを製造する際には、共添加成分として酸の形で難燃剤を使用することが特に好ましい。
【0054】
同様に、好ましい実施形態では、本発明に係る難燃剤を、重合反応における共縮合成分としての酸の形態で使用する。本発明者らはこの場合、ホスホン酸基が縮合反応の構成要素のヒドロキシル基又はアミン基と反応して、これらをポリマーに組み込むことを想定している。従って、本発明に係る難燃剤は、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリアミドを製造するために、共縮合成分としての酸の形態で使用されることが好ましい。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、置換基R3及び/又はR4及び/又はR5及び/又はR6は、2個以上の炭素原子を有する有機残基である。短鎖の炭素残基、特にメチルを有するホスホン酸エステルは、先行技術から知られている。しかし、これらは分解条件下でアルキル化作用を持つため、毒性が強い場合がある。例えば、ヒトのDNAは永久に損傷を受ける可能性がある。しかし、アルキル化作用は、鎖長が長くなるにつれて大幅に減少する。
【0056】
ポリマーの分解温度は、ポリマーがプラスチック・マトリックスに組み込まれる熱加工法において、プラスチック・マトリックスの加工温度よりも高いことが好ましい。これにより、プラスチック・マトリックスの加工温度に達したときにポリマーの分解プロセスが起こらないようにすることができる。ポリマーの分解温度は、プラスチック・マトリックスの加工温度よりも10℃以上高いことが好ましく、特に好ましくはプラスチック・マトリックスの加工温度よりも20℃以上高いことであり、最も好ましくはプラスチック・マトリックスの加工温度よりも50℃以上高いことである。
【0057】
ポリマーの分解温度が、ポリマーが組み込まれているプラスチック・マトリックスの温度よりも著しく高い場合、炎の中でポリマーが部分的に分解して難燃効果を発揮する前にプラスチック・マトリックスが分解してしまう。逆に、ポリマーの分解温度がプラスチック・マトリックスの温度よりも著しく低い場合、分解されたポリマーはすでに後続の反応を起こしている可能性があり、その結果、難燃効果が大幅に低下する。従って、ポリマーの分解温度とプラスチック・マトリックスのそれとの差は、好ましくは100℃以下、特に好ましくは50℃以下、最も好ましくは20℃以下である。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、分解温度、例えば乾燥した難燃剤の質量損失が2重量%となるのは、200℃の温度から開始、特に好ましくは220℃、最も好ましくは245℃の温度から開始することで達する。
【0059】
ポリマーの分解温度は、「測定方法」の項で説明した熱重量分析法に依拠して決定される。分解温度とは、10K/分の加熱速度で、乾燥サンプルの質量減少が2%に達する温度のことである。
【0060】
窒素に対してα位で、炭素原子が2回ホスホネート基で置換されているため、本発明に係る難燃剤は、先行技術から知られているホスホン酸塩よりも高いリン含有量を有している。このリン系難燃剤の難燃効果は、リン含有量が増加するにつれて大きくなることが確認できた。その結果、本発明に係る難燃剤の効果、例えば、採用した難燃剤の単位質量当たりの難燃効果は、特に高い。そのため、ポリマー材料中の難燃剤の濃度が低くても、良好な難燃効果が得られる。同時に、材料の特性、特に加工性や破断伸度にはほとんど影響を与えない。好ましい実施形態では、難燃剤のリン含有量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、特に好ましくは少なくとも14重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%である。本発明に係る難燃剤のリン含有量が高いことを保証するために、置換基R1~R6は、有利には、可能な限り低い質量を有する。
【0061】
特に、好ましくは触媒を用いた重合反応の1つ又は複数の成分を添加剤として加える場合、本発明に係る難燃剤を塩又はエステルとして、特に好ましくは塩として使用することが有利である。これにより、難燃剤の遊離酸基と、反応の触媒等の成分との潜在的な相互作用を避けることができる。本発明に係る難燃剤は、塩又はエステルとして、pHに敏感なポリマー材料、例えば、酸にさらされると構造が変化したり分解したりするポリマー材料にも有利に使用される。このような用途では、塩形態は水に溶解し、何らかの方法でポリオールと均一に混合することもできる。水に溶解した塩の形態は、水性の塗料やコーティングシステムに容易にかつ均質に配合することができる。難燃剤がエステルとして使用される場合、関連する疎水化は更に、マトリックスへのより良い結合を促進することができ、その結果、機械性が改善され、ポリマーからの移行が減少する。
【0062】
従って、本発明の好ましい実施形態では、基R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、特に好ましくは少なくとも3つ、最も好ましくは少なくとも4つはカチオンであり、カチオンが、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、B3+、Al3+、Zn2+、NH4+、若しくはメラミン又はその縮合物、好ましくはメラム、メレム、メロン、尿素、グアニジン、モルホリン、及びピペラジンからなる群から選択されるアミン化合物のアンモニウムイオンである。特にNa+とCa2+が好ましい。カチオンとしては、モル質量が小さいNa+が最も好ましく、その結果、難燃剤中のリンの重量占有率をできる限り高くすることができる。
【0063】
好ましい実施形態では、ポリマー材料は、ポリマー組成物全体に対して、少なくとも1.5重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%の量で、及び/又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下の量で、難燃剤を含む。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、組成物全体が、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の量のポリマー材料を含む。
【0065】
これらの量比は、第一にポリマー組成物の良好な難燃性を保証し、第二にポリマー材料の加工及び材料特性にわずかな影響しか与えない。
【0066】
本発明に係る難燃剤は、他の難燃剤、例えば、別のメカニズムで難燃性を付与する難燃剤と組み合わせて使用すると有利である。本発明に係る難燃剤と他の難燃剤との相互作用により、相乗効果、例えば、個々の成分の難燃効果の単なる合計を超えた効果を得ることができる。
【0067】
本発明に係る組成物のポリマー材料は、エラストマー、熱硬化性、又は熱可塑性ポリマー材料であり得る。ポリマー材料は、好ましくは、熱硬化性又は熱可塑性ポリマー材料であり、特に好ましくは、熱硬化性ポリマー材料である。
【0068】
好ましい実施形態では、ポリマー材料は、好ましくは窒素塩基、メラミン誘導体、リン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、有機及び無機ホスフィン酸塩、有機及び無機ホスホン酸塩、ならびに前述の化合物の誘導体から選択される、好ましくは、メラミン、メラム、メレム、メロン、アンメリン、アンメリド、2ウレイドメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ジアミンフェニルトリアジン、メラミンの塩及び付加物、メラミンシアヌレート、メラミンボラート、メラミンオルトホスフェート、メラミンピロホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、アルミニウムジエチルホスフィネート、メラミンポリホスフェート、オリゴマーやポリマーの1,3,5トリアジン化合物や1,3,5トリアジン化合物のポリリン酸塩、グアニン、ピペラジンホスフェート、ピペラジンポリホスフェート、エチレンジアミンホスフェート、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、リン酸ホウ素、1,3,5トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、1,3,5トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、及び前述の化合物の誘導体を含む、メラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シラン、シロキサン、ポリシロキサン、シリコーン又はポリスチロールとのポリリン酸アンモニウム、コーティングされた及び/又はコーティングされていない、架橋されたポリリン酸アンモニウム粒子、及び1,3,5トリアジン化合物から選択される、少なくとも1つの更なる難燃性成分を含む。好ましい実施形態では、ポリマー材料は、更なる難燃性成分の分散を改善するために、ワックス、ケイ素、シロキサン、脂、又は鉱物油を含む。
【0069】
本発明に係る難燃剤に加えて、ポリマー材料は、好ましくは、更なる難燃性成分として、リン酸塩、特にポリリン酸アンモニウムを含む。ポリリン酸アンモニウムは、特に好ましくは、結晶形態I、II、若しくはVのポリリン酸アンモニウム、又はそれらの混合物であり、後者はコーティングされていることが特に好ましい。
【0070】
特に、他の結晶形態に比べて本質的に水に溶けない、結晶形態IIのポリリン酸アンモニウムが好ましい。これは、コーティングしなくても既に良好な難燃効果を有し、かつ水への溶解度が低い粉末状の物質である。結晶形態IIの被覆ポリリン酸アルミニウムを使用する利点は、熱安定性が高く、ポリマーとの相溶性が高いことである。その結果、ポリマー中の難燃剤の分散性が向上し、ポリマーの加工性が改善され、より効率的な防火が可能になる。
【0071】
一般的にリン酸塩の固相活性はホスホン酸塩よりも高く、ホスホン酸塩は気相活性が高いため、組み合わせることで特に顕著な難燃効果が得られる。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明に係る難燃剤と、ポリマー材料中の少なくとも1つの更なる難燃性成分との比率は、1:18~1:1、好ましくは1:9~1:4、特に好ましくは1:6~1:4である。これらの比率は、更なる難燃性成分としてポリリン酸アンモニウムを使用する場合にも適用される。
【0073】
本発明に係る難燃剤に加えて、ポリマー材料は、炭酸カルシウム、タルカム、クレイ、又はグリマー、カオリン又はウォラストナイト等のケイ酸塩、珪藻土、硫酸カルシウム及びバリウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維及びガラスボール、ならびに木粉、セルロースパウダー及びランプブラック及びグラファイトの中から選択された他の充填剤を含む。これらの充填剤は、ポリマー材料に付加的に所望の特性をもたらすことができる。特に、ポリマー材料の価格を下げたり、ポリマー材料を着色したり、或いはガラス繊維で補強する等して、その機械的特性を向上させたりすることができる。
【0074】
難燃剤が成形工程を用いて保護されたポリマー材料に配合される場合、難燃剤を配合する際に分散剤が有利に使用される。従って、本発明の更なる実施形態では、本発明に係るポリマー材料は、本発明に係る難燃剤の重量に対して、0.01~10重量%の量、好ましくは0.1~5.0重量%の量の分散剤を含み、ここで、分散剤は、脂肪酸モノアミドや、オレアミドやエルカアミド等の脂肪酸ビスアミド及び脂肪酸アルカノールアミドを含む、脂肪酸の中から、グリセロールエステルやワックスエステルを含む脂肪酸エステルの中から、C16~C18脂肪酸の中から、セチル及びステアリル脂肪酸アルコールを含む脂肪酸アルコールの中から、天然及び合成ワックス、ポリエチレンワックス及び酸化ポリエチレンワックスの中から、並びに金属ステアリン酸塩、好ましくはCa、Zn、Mg、Ba、Al、Cd及びPbステアリン酸塩の中から選択されるのが好ましい。前述の分散剤を添加することで、難燃剤の投薬能力、ポリマー材料の押出能力、ポリマー材料内での分散した難燃剤の均質性が向上する。
【0075】
本発明の更なる実施形態では、本発明に係る難燃剤は、0.6重量%未満、好ましくは0.4重量%未満の自由水の含有量(水分含量)を有する。水分含有量が低いと、同様に、難燃剤を投薬する能力、ポリマー材料の押出能力、及び組成物内の分散した難燃剤の均質性が改善され、加水分解による分解を防ぐことができる。
【0076】
難燃剤は、様々な方法でポリマー材料に配合することができる。難燃剤は、まず、成形工程でポリマー材料に組み込むことができる。ポリマー材料が例えば押出成形によって処理される場合、難燃剤は、例えばマスターバッチを使用して、押出工程中に添加することができる。本発明で定義するマスターバッチとは、最終用途よりも高い濃度の難燃剤及びその他の添加剤を含む顆粒状又は粉末状のポリマー材料のことである。本発明に係るポリマー材料を製造するためには、マスターバッチ又は様々なマスターバッチを、最終製品における難燃剤の所望の濃度に対応する量又は比率で、マスターバッチに含まれる難燃剤を含まない更なるポリマー材料と組み合わせる。マスターバッチは、ペースト状、粉末状、液体状の様々な物質を添加する場合と比較して、高いプロセス信頼性が確保され、容易に処理及び投与できるという利点がある。難燃剤は押出成形によってポリマー材料に均一に分散される。
【0077】
難燃剤を配合することができるポリマー材料は、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)等のポリエステル、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)ポリウレア、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルアセタール、ポリスチロール、アクリル-ブタジエン-スチロール(ABS)、アクリルニトリル-スチロール-アクリルエステル(ASA)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレア、ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリラクチド、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ(イミド)、ビスマレイミド-トリアジン、熱可塑性ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリラクチド(PLA)、ポリヒドロ酪酸(PHB)、共重合体及び/又は前述のポリマーの混合物からなる群から選択されるのが好ましい。本発明に係る難燃剤は、特に好ましくは、前述のポリマー材料の発泡体に、特に好ましくはポリウレタンフォームに使用される。難燃剤は、この場合、ポリオール成分の添加剤又は共縮合/付加成分として添加されることが好ましい。難燃剤が添加剤として加えられる場合、それは好ましくは塩又はエステルである。難燃剤が共縮合/付加成分として添加される場合、それは好ましくは酸である。
【0078】
これらホスホン酸塩は、難燃効果を有するだけでなく、ポリウレタンの発泡を触媒することも確認できた。
【0079】
また、本発明は、式Iの化合物、その対応するアンモニウム塩、その対応するホスホン酸塩、又はそれらの混合物である難燃剤であって、置換基R3~R6又はこれらによって形成されるサイクルは、好ましくは第1の官能基を有し、及び/又は置換基R3~R6のうち3つ以下がHであるものである。
【0080】
また、本発明は、以下の工程を備える難燃剤の製造方法も備える。
a)反応容器内の式(V)及び(VI)の化合物からなる群から選択される少なくとも1つのホスホン酸又はホスフィン酸であって、
【化6】
-X-は酸素原子-O-、又は-X-は単結合であり、
(P-i)R
3、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なる置換基であり、H、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を有する多核の芳香族、単核又は4個までの核を有する多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル又はアリールアルコール、n=0~100である以下の構造(III)及び(IV)を有するもの、及び
【0081】
【化7】
カチオンからなる群から選択され、前記カチオンが、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、B
3+、Al
3+、Zn
2+、NH
4+、若しくはメラミン又はその縮合物、好ましくはメラム、メレム、メロン、尿素、グアニジン、モルホリン、及びピペラジンからなる群から選択されるアミン結合のアンモニウムイオンであり、及び/又は
(P-ii)-X-が酸素原子の場合、-O-、-OR
3及び-OR
4がともに、及び/又は-OR
5と-OR
6、及び/又は-OR
3と-OR
5がともに、及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は
(P-iii)-X-が単結合の場合、-R
3と-OR
4及び/又は-R
3と-OR
5がともに、ホスフィナート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は、-OR
5と-OR
6及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成する、ホスホン酸又はホスフィン酸と、
b)R
7=アルキル、アリール又はアルケニル、好ましくはトリエトキシメタンであるHC(OR
7)
3と、
c)式(VII)のアミノ化合物と
【化8】
の混合物を提供する工程であって、
(N-i)R
1及びR
2は、同一又は異なる置換基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を持つ単核及び多核の芳香族、4個までの核を持つ単核又は多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル、又はアリールアルコールからなる群から選択される、又は
(N-ii)R
1とR
2がともに、N原子を含めて、炭素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、及び窒素から選択される4~8個の環原子を持つ飽和又は一価不飽和又は多価不飽和の複素環を形成し、これらの窒素原子は、前記複素環上で、それが環原子として窒素原子を有する場合には、H、アルキル、アリール、又は以下の構造(II)を有するメチルビスホスホネート基で置換されていることが好ましく、
【化9】
前記複素環上で、それが環原子として炭素、リン、又はケイ素を有する場合には、これらの原子は、好ましくは、H、アルキル、アリール、-NH
2、-NHR、-NR
2、-OH、-OR、=O、-I、-Cl、-Br、F、-N
3、-SH、-SR、-OCN、エポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリン、アルケニレン、及びアルキニレン、-SiR
xH
yからなる群から選択される置換基を有することができ、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3である工程、
好ましくは
A)置換基R
1~R
6の1つ、又は
B)
1)置換基R
3~R
6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸エステルを形成する際、又は
2)置換基R
3~R
6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸無水物を形成する際、又は
3)置換基R
1及びR
2が(N-ii)に従って複素環を形成する際
に形成されるサイクルの1つは、
a)P、O、N、S、I、Cl、Br、Fからなる群から選択されるヘテロ原子、及び/又は
b)アルケン又はアルキン基
を有する第1の非電荷又は負電荷の官能基を有しており、
前記官能基は-OHではなく、1)~3)に係る前記サイクルの1つが前記官能基を有する場合には、前記サイクルの前記環原子が、前記官能基で、又は前記官能基を有する置換基で置換されている
工程と、
前記混合物を40~150℃の範囲の温度に加熱する工程。
【0082】
混合物の加熱の後には、精製工程を行うことができる。これは、好ましくは、混合物の蒸留又はクロマトグラフィーによる精製を備える。
【0083】
変換の際、ホスホン酸やホスフィン酸、或いは式(VII)のアミノ化合物は、PH基やNH基の自由電子対を利用して、オルトエステルHC(OR7)3の中心炭素原子に求核結合を形成する。これにより、3当量のアルコールHOR7を放出しながら、式(I)の化合物が生成される。
【0084】
【0085】
より高い変換率を達成するために、本発明の好ましい実施形態では、変換中に、好ましくは蒸留により、特に好ましくは減圧下での蒸留により、HOR7を分離する。
【0086】
また、本発明は、一般式(V)及び(VI)の化合物を製造する方法も備える。
【化11】
【0087】
これらは、ホスフィン酸又はホスホン酸を、式HC(OR3/4/5/6)3の化合物でエステル化することによって得ることができる。この方法の好ましい実施形態では、HC(OR3/4/5/6)3は、トリエトキシメタンである。本発明に係る方法の目的のために、ホスフィン酸又はホスホン酸を式HC(OR3/4/5/6)3の化合物と混合し、40~140℃、好ましくは80~120℃、より好ましくは90~120℃、最も好ましくは100~120℃の範囲の温度に加熱する。特に好ましくは、混合物は沸騰するまで加熱される。これらの温度で、10分から10時間、好ましくは1時間から5時間、より好ましくは1時間から3時間、最も好ましくは1時間から2時間、反応混合物を撹拌する。この反応期間後、分留用の反応液には、主成分であるHOR3/4/5/6を含む1つの画分と、式(V)又は(VI)の化合物を含む更なる画分が含まれる。
前述の方法は、ジエチルホスファイトの製造に特に好ましく用いられる。
【0088】
本発明はまた、好ましくはコーティングの形での表面処理のための、式(I)の化合物、その対応するアンモニウム塩、その対応するホスホン酸塩、又は混合物の使用を備え、
【化12】
(N-i)R
1及びR
2は、同一又は異なる置換基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を持つ単核及び多核の芳香族、4個までの核を持つ単核又は多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル、又はアリールアルコールからなる群から選択される、又は
(N-ii)R
1とR
2がともに、N原子を含めて、炭素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、及び窒素から選択される4~8個の環原子を持つ飽和又は一価不飽和又は多価不飽和の複素環を形成し、これらの窒素原子は、前記複素環上で、それが環原子として窒素原子を有する場合には、H、アルキル、アリール、又は以下の構造(II)を有するメチルビスホスホネート基で置換されていることが好ましく、
【化13】
前記複素環上で、それが環原子として炭素、リン、又はケイ素を有する場合には、これらの原子は、好ましくは、H、アルキル、アリール、-NH
2、-NHR、-NR
2、-OH、-OR、=O、-I、-Cl、-Br、F、-N
3、-SH、-SR、-OCN、エポキシ、ラクタム、ラクトン、アジリジン、グリコリド、オキサゾリン、アルケニレン、及びアルキニレン、-SiR
xH
yからなる群から選択される置換基を有することができ、ここで、R=アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールであり、x+y=3であり、
-X-は酸素原子-O-、又は-X-は単結合であり、
(P-i)R
3、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なる置換基であり、H、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル及びアルキニル、非置換及びアルキル置換のフェニル、4個までの核を有する多核の芳香族、単核又は4個までの核を有する多核のヘテロ芳香族、シリル、アリル、アルキル又はアリールアルコール、n=0~100である以下の構造(III)及び(IV)を有するもの、及び
【化14】
カチオンからなる群から選択され、前記カチオンが、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、B
3+、Al
3+、Zn
2+、NH
4+、若しくはメラミン又はその縮合物、好ましくはメラム、メレム、メロン、尿素、グアニジン、モルホリン、及びピペラジンからなる群から選択されるアミン結合のアンモニウムイオンであり、及び/又は
(P-ii)-X-が酸素原子の場合、-O-、-OR
3及び-OR
4がともに、及び/又は-OR
5と-OR
6、及び/又は-OR
3と-OR
5がともに、及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は
(P-iii)-X-が単結合の場合、-R
3と-OR
4及び/又は-R
3と-OR
5がともに、ホスフィナート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、及び/又は、-OR
5と-OR
6及び/又は-OR
4と-OR
6がともに、ホスホネート基のP原子を含めて、環の大きさが4~10原子の環状ホスホン酸エステル又は環状ホスホン酸無水物を形成し、
ここで好ましくは、
A)置換基R
1~R
6の1つ、又は
B)
1)置換基R
3~R
6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸エステルを形成する際、又は
2)置換基R
3~R
6が(P-ii)又は(P-iii)に従って環状ホスフィン又はホスホン酸無水物を形成する際、又は
3)置換基R
1及びR
2が(N-ii)に従って複素環を形成する際
に形成されるサイクルの1つは、
a)P、O、N、S、I、Cl、Br、Fからなる群から選択されるヘテロ原子、及び/又は
b)アルケン又はアルキン基
を有する第1の非電荷又は負電荷の官能基を有しており、
前記官能基は-OHではなく、1)~3)に係る前記サイクルの1つが前記官能基を有する場合には、前記サイクルの前記環原子が、前記官能基で、又は前記官能基を有する置換基で置換されている。
【0089】
好ましい実施形態では、コーティングは対象物の難燃剤として機能し、特にポリマー材料の難燃剤として機能することが好ましい。
【0090】
本実施形態は、金属又はポリマー材料、特に熱硬化性ポリマーの表面処理として特に好ましく使用される。例えば、複合材料での使用が特に好ましい。この場合、前述のホスホン酸塩は、ポリマーマトリックス及び/又は強化材料(例えばガラス繊維)上に、例えば溶液として、又は液体純物質として、液体の形態で適用することができる。この場合の利点は、本発明に係る難燃剤が液体であるか、又は懸濁液中で粘度のわずかな変化を引き起こすだけであることである。その結果、難燃剤を複合材料中に均一に分散させることができる。一方、先行技術で知られている難燃剤は、一般的に固体であるか、低粘度の溶液を得るために大量の溶媒を必要とする。そのため、これらを複合材料に配合するのは非常に困難である。織られた複合材料は、難燃剤のろ過効果ももたらす。その結果、保護は片側でしか提供されない。前述の欠点は、本発明に係る難燃剤で克服できる。
【0091】
本発明の特に好ましい実施形態では、式(I)の化合物を用いて、コーティング、例えばゲルコートを形成する。これには、本発明に係る化合物が複数の極性溶媒に良好な溶解性を有するという利点がある。その結果、溶媒中、ひいては最終的に処理された表面上での均一な分布を達成することができる。良好な溶解性のため、溶液の粘度は影響を受けないか、又はわずかな影響しか受けない。
【0092】
式(I)の化合物は、コーティング組成物全体に対して、好ましくは1~40重量%、より好ましくは2~30重量%、より一層好ましくは3~20重量%、最も好ましくは4~10重量%でコーティングに用いられる。
【0093】
式(I)の化合物の溶液は、例えば、織物、紙、セラミック、又は複合材料やその中間相、例えばプリプレグをコーティングするために使用することができる。
【0094】
吸収率が低く、コーティングシステムの他の成分、特にバインダーとの均一な混合性があるため、式(I)の化合物は、いわゆる「クリアコーティング」或いは透明コーティングに適している。このようなクリアコーティングは、例えば木材へのクリアコーティングのように、コーティングの下にある構造を隠したくない場合に、特に有効である。
【実施例】
【0095】
以下、本発明に係る難燃剤の具体的な実施形態基づいて、本発明に係る組成物の製造例基づいて、難燃剤の例に基づいて、また、同封の図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0096】
本発明に係る難燃剤の具体的な実施形態
アミノ基に第1の官能基を持つ実施形態
【表1】
【0097】
アミノ基に第1及び第2の官能基を持つ実施形態
【表2】
【0098】
ホスホン酸基の1つに第1の官能基を持つ実施形態
【表3】
【0099】
ホスホン酸基の1つに第1の官能基を持つ実施形態
【表4】
【0100】
ホスホン酸基の1つに第1の官能基を持つ実施形態
【表5】
【0101】
ホスホン酸基の1つに第1の官能基を持つ実施形態
【表6】
【0102】
ホスホン酸基に第1及び第2の官能基を持つ実施形態
【表7】
【0103】
ホスホン酸基の1つに第1の官能基を持つ実施形態
【表8】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
本発明に係る組成物の製造例
入力物質:
【表14】
【0110】
更なる難燃剤:
Budit240:WO2014/124933の実施例1に従って製造された、リン系の部分的に架橋されたポリアクリレート
Budit315:Chemische Fabrik Budenheim KGのメラミンシアヌレート
Budit342:Chemische Fabrik Budenheim KGのメラミンポリホスフェート
Budit667:ポリリン酸アンモニウムをベースにしたChemische Fabrik Budenheim KGのイントメッセント難燃剤システム
TCPP:Sigma Aldrichのトリス(2-クロルイソプロピル)ホスフェートTCPP(CAS:13674-84-5)
OP550:Clariant AGのリンベースのポリオールExolit OP550(CAS:184538-58-7)
【0111】
測定方法:
動的示差熱量測定(DSC)の測定は、熱重量分析-動的示差熱量測定(STA/TG-DSC)を同時に行う装置Model STA409PC/3/H Luxx,Netzsch Geratebau GmbHを用いて、窒素雰囲気下で25~500℃の範囲を10K/分の加熱速度で行った。初期のサンプル重量は約15mgであった。分析には、ソフトウェアNETZSCH Proteusを使用した。
【0112】
熱重量分析(TAG)は、熱重量分析-動的示差熱量測定(STA/TG-DSC)を同時に行う装置Model STA409PC/3/H Luxx,Netzsch Geratebau GmbHを用いて、窒素雰囲気下で25~800℃の範囲を10K/分の加熱速度で行った。初期のサンプル重量は約12~15mgであった。TGAグラフの分析には、ソフトウェアNETZSCH Proteusを使用した。
【0113】
本発明に係る組成物の製造例
実施例1:モルホリン-メチルアミノジホスホン酸(MOMP-H4)の合成
0.1molの4-ホルミルモルホリンを500mlの丸型フラスコに計量し、0.2molのホスホン酸と30mlの無水酢酸を加えて混合した。反応液を65℃で90分間撹拌した。その後、生成した酢酸と余分な水を回転式エバポレーター上で約30mbarの減圧下で除去した。その後、85℃の乾燥キャビネット内で、4時間の間、残留溶媒を除去した。
【0114】
実施例2:ピペラジン-ジ(メチルアミノジホスホン酸)(PIMP-H4)の合成
250mlの丸型フラスコに0.28molのホスホン酸を31mlの完全脱イオン水に撹拌しながら溶解した。0.07molのジホルミルピペラジンの溶液を30mlの完全脱イオン水に15分かけて滴下した。添加中に数度の温度上昇が見られた。添加終了後、反応混合物を逆流させながら3時間撹拌した。溶液が冷却された後、回転式エバポレーターで余分な水を除去した。飽和ピペラジン溶液を液体蒸留残渣に滴下した。加熱すると白色のアモルファス状の沈殿が生成した。
【0115】
実施例3:ジメチル-メチルアミノジホスホン酸(DAMP-H4)の合成
0.9molのジメチルホルムアミドを500mlの丸型フラスコに計量し、1.8molのホスホン酸と225mlの無水酢酸を加えて混合した。その後、生成した酢酸と余分な水を回転式エバポレーター上で約300mbarの減圧下で除去した。その後、85℃の乾燥キャビネット内で、4時間の間、残留溶媒を除去した。
【0116】
実施例4:モルホリン-メチルアミノジホスホン酸の三ナトリウム塩(MOMP-H-Na3)の水溶液の合成
0.289mmolのモルホリン-メチルアミノジホスホン酸(MOMP-H4)を50mlの完全脱イオン水に溶解し、次いで0.867mmolのNaOHを加えた。この溶液について、約9のpH値が得られた。
【0117】
実施例5:モルホリン-メチルアミノジホスホン酸テトラエチルエステル(MOMP-H4)の合成
MOMP-Et4は、撹拌しながら0.1molのモルホリンを反応器に計量して得た。その後、0.1molのトリエトキシメタンを滴下する。その後、0.2molのジエチルホスファイトを加える。この混合物を120℃に加熱し、この温度で4時間撹拌する。反応終了後、生成物を50mbar、150℃で真空蒸留して洗浄する。
【0118】
好ましい実施形態では、対応する置換化合物はポリウレタンフォーム合成の触媒として作用することができるため、すべての置換基R3、R4、R5及びR6はカチオン又は有機残基であり、特に好ましくはエチルである。このような化合物の使用は、これらが合成を加速し、また完成したポリマーの難燃性を向上させるので、特に有利である。MOMP-H4のようなP-OH基を持つ化合物は、対応する触媒効果を示さないが、これはおそらく、これらが、4級アミノ基が触媒特性を持つ双極子イオン(PO-/NH+)の形で存在するためである。
【0119】
以下の試験に基づいて示されるように、発泡までのいわゆる開始時間は、MOMP-H4のようなP-OH基を有する化合物と比較して、対応する置換化合物を使用した場合に著しく減少する。
【0120】
一般的な方法論:ポリオール(22.5g)を、触媒(エチレングリコール、1.05g)ペンタン(4.5g)及び各難燃剤と、1000R/分で混合する。イソシアネート(MDI、60.0g)を分散器のスイッチを切った状態で添加し、混合物を1500R/分で10秒間撹拌した後、速やかに再充填する。
【0121】
【0122】
実施例6:モルホリン-メチルアミノジDOPO(MOM-DOPO
2)の合成
【化15】
【表16】
【0123】
この反応は、4-ホルミルモルホリン(4-FM)上のホルミル機能とDOPO分子のP-H基から、H2Oを分割して生成物MOM-DOPO2を生成する縮合反応である。40gのDOPOを100mlの酢酸無水物(Ac2O)に撹拌しながら溶解し、250mlのビーカーに入れた後、120℃に加熱する。その温度に達した時点で10gの4-FMを加える。5時間後に溶液を80mlの水で中和し、続いて外部のテンパリングをセットする。冷却後に白い固体が析出し、これをろ過して水で洗浄する。更に副生成物として酢酸が生成される。
【0124】
実施例7:モルホリン-メチルアミノジホスホン酸Zn塩(MOMP-H
2)の合成
Zn塩(1:1)は、50.0g(0.191mol)のMOMPを500gのH
2Oに分散させ、続いて14.6gのZnO(0.191mol)で切断することによって得た。この反応混合物を95℃に加熱し、この温度で4時間撹拌する。その後、バッチを50℃以下に冷却し、続いて母液から固形物を分離する。フィルターケーキを循環空気中120℃で乾燥させる。
【表17】
【0125】
実施例8:ピペラジン-ジ(メチルアミノジホスホン酸)(PIMP-H
4)の合成
【表18】
【0126】
0.1molの1,4-ジホルミルピペラジンと0.1molの酢酸無水物を反応器に充填し、混合する。この混合物を120℃に加熱する。0.4molのリンを0.3molの酢酸無水物に別々に溶解する。この溶液を反応器に滴下する。最後に、更に0.5molの酢酸無水物を加え、続いてバッチを135℃に加熱する。30分の反応時間の後、2.1molの水を滴下する。更に40分反応させた後、バッチを室温まで冷却する。その後、70mlの水酸化ナトリウム溶液を加える。生成物を母液から分離し、水に溶解する。この溶液を硫酸で再沈殿させ、続いて生成物をろ過し、洗浄し、乾燥させる。
【0127】
実施例9:ジエチルホスファイトの合成
ホスホン酸(29.7g,0.36mol)とトリエトキシメタン(107.3g,0.72mol)を蒸留装置付き500ml三口フラスコで混合し、続いて撹拌しながら90℃まで加熱する。45分後、温度を135℃に上げて沸騰を開始し(気相温度73℃)、エタノールとギ酸エチルの第1画分を得る。沸騰が止まった後、真空(30mbar)をかけて第2画分を得る。関連生成物はジエチルホスファイトである。35.0gの無色で低臭の液体が得られる。
【0128】
実施例10:4-ヒドロキシ-1-(メチルアミノジホスホン酸)ピペリジン(「OH-PIDMP-H
4」)の合成
【化16】
【0129】
「OH-PIDMP-Et4」は、250mlのフラスコに4-ヒドロキシピペリジン(0.1mol)を加えて撹拌することで得た。トリエトキシメタン(0.1mol)を滴下する。その後、0.2molのジエチルホスファイトを加える。この混合物を120℃に加熱し、この温度で4時間撹拌した後、50mbar、150℃で真空蒸留して生成物「OH-PIDMP-Et4」を洗浄する。
【0130】
【0131】
続いて、この生成物に5倍量の1N塩酸を加えて混合すると、僅かな加熱が観測される。生成したエタノールを蒸留して、「OH-PIDMP-H4」を89%の収率で得る。融点は250℃である。
【0132】
実施例11:4-メチレン-1(メチルアミノジホスホン酸テトラエチルエステル)-ピペリジン(「4-Methylen-PIDMP-Et
4」)の合成
【化18】
【0133】
「4-Methylen-PIDMP-Et4」は、250mlのフラスコに4-メチリデンピペリジン-塩酸塩(0.05mol)とトリエチルアミン(0.1mol)を入れて撹拌することで得た。トリエトキシメタン(0.12mol)を滴下する。続いて、ジエチルホスファイト(0.31mol)を加える。この混合物を140℃に加熱し、この温度で6時間撹拌する。室温まで冷却した後、ジエチルエーテル(125ml)を加え、混合物を水酸化ナトリウム水溶液(0.5N,50ml)で中和し、相を分離し、有機相を水(250ml)で洗浄する。有機相は蒸留によって処理され、生成物は2mmbarで180℃の沸点を持つ。収率は58%である。
【0134】
実施例12:4-ヒドロキシ-4-ビニル-1-(メチルアミノジホスホン酸テトラエチルエステル)-ピペリジン(「OH-Vinyl-PIDMP-Et
4」)の合成
【化19】
【0135】
「OH-Vinyl-PIDMP-Et
4」は、250mlのフラスコに4-ピペリドン-エチレンケタール(0.1mol)を入れて撹拌することで得た。トリエトキシメタン(0.1mol)を滴下する。その後、0.2molのジエチルホスファイトを加える。この混合物を120℃に加熱し、4時間撹拌した後、50mbar、150℃での真空蒸留による生成物「Ketal-PIDMP-Et
4」の洗浄を行った。
【化20】
【0136】
「Ketal-PIDMP-Et
4」を5倍モル過剰の80%酢酸で切断し、80℃で2時間撹拌する。生成したエチレングリコールを蒸留し、50mbar、150℃の真空蒸留で中間生成物「Keton-PIDMP-Et
4」を洗浄する。
【化21】
【0137】
「OH-Vinyl-PIDMP-Et4」は、溶媒であるTHF(アブソリュート)を無水装置に充填し、その中でグリニャール試薬を生成する(c=1.5モル)ことで得られる。その後、臭化ビニル(1.2mmol)を連続的に滴下しながら、THFにマグネシウムチップを加える。「Keton-PIDMP-Et4」(1mmol)を連続的に滴下する。反応が終了した後(沸騰が減少したことで証明される、総反応時間:約2時間)、反応混合物を、冷却した1N塩酸(aq)で加水分解する。この混合物は、水相を分離し、有機相から蒸留によって溶媒を除去することによって処理される。得られた「OH-Vinyl-PIDMP-Et4」の融点は239℃である。反応収率は85%である。
【0138】
難燃剤の例:
組成物
IEC/DIN EN60695-11-10規格に準拠した試験片を用いてUL94試験を行い、難燃性を確認するとともに、様々なポリマー中の本発明に係る難燃剤組成物を分類した。
【0139】
UL94-V試験
各測定において、それぞれ5個の試験片を垂直にクランプし、次に試験片をブンゼンバーナーの炎の開放端に保持した。試験片の下に配置した綿パッドで燃焼時間と燃焼粒子の落下を評価した。この試験と2cmの高さのブンゼンバーナーの炎への曝露は、Underwriter Laboratoriesの規格UL94に基づいて正確に行われた。
【0140】
結果として、防火等級V-0からV-2への分類が引用されている。この場合のV-0とは、試験した5つの試験片の総燃焼時間が50秒未満であり、試験片の液滴の発光や燃焼によって綿パッドが燃えなかったことを意味する。分類V-1は、試験した5つの試験片の総燃焼時間が50秒超250秒未満であり、同様に綿パッドが燃えなかったことを意味する。この場合のV-2とは、5つの試験した試験片の燃焼時間の合計が250秒未満であるが、5つの試験のうち少なくとも1つの試験において、発光や燃焼する液滴によって綿パッドが燃えたことを意味する。NCという略語は、「分類不能」を意味し、250秒超の総燃焼時間が測定されたことを示している。分類不能の多くのケースでは、試験片は完全に燃焼した。
【0141】
UL94-HB試験
各測定において、それぞれ少なくとも3つの試験片を水平にクランプし、次に試験片をブンゼンバーナーの炎の開放端に保持した。これにより、燃焼速度と総燃焼距離の評価を行った。これら試験と2cmの高さのブンゼンバーナーの炎への曝露は、Underwriter Laboratoriesの規格UL94に基づいて正確に行われた。
【0142】
その結果、防火クラスHBへの分類が引用される。HBに分類されたということは、火炎面から25mmの距離にある第1のマーカーと、火炎面から100mmの距離にある第2のマーカーの間の燃焼速度が40mm/分以下であることを意味する。また、火炎前部は100mmのマーカーを超えなかった。「NC」の分類は「分類不能」を意味し、75mmの距離での燃焼速度が40mm/分超であるか、又は総燃焼距離が100mm超であることを示している。
【0143】
L
*
a
*
b
*
値
L*a*b*値は、HunterLabのUltraScanVISセンサーを搭載したUltraScanVIS-2分光光度計を用いて測定した。この目的のために、サンプルはガラスキュベットに充填され、続いてキュベットに衝撃を与えたり、サンプルを高密度化したりして、測定口に向かってキュベット側に均質な表面を形成した。関連するEasyMatchQC4.64bソフトウェアは、「USVIS1145」センサーと「RSIN Mode」設定を使用して、L*a*b*値を計算する。
この方法は、現在有効なバージョンのEN ISO11664-4に準拠している。
【0144】
実施例13:ポリプロピレンにおけるMOMP-H4の難燃性
ポリマー
以下の実施例では、以下のポリマー材料を使用して難燃性組成物を製造した。
Borealis AGのポリプロピレン(PP)HD120MO
【0145】
二軸押出機のモデルProcess11、Thermo Fisher Scientific Inc.を用いて、ポリプロピレンに典型的な押出条件で、おおよその粒径3x1x1mmの造粒物を製造した。押出工程は、およそ5~7kg/hのスループットで、スクリュー速度450~500rpm、押出ゾーンの温度190~220℃で運転した。その後、ホットプレスにより高品質のUL94準拠の試験片を得た。試験片の厚さはそれぞれ1.6mmと3.2mmであった。次に、実施例1に従って製造されたホスホン酸塩を、押出工程中にポリマー材料に配合した。
【0146】
【0147】
実施例14:ポリウレタン(PU)におけるMOMP-H4の難燃性
難燃性組成物は、発泡反応において以下の成分を一緒に変換することによって製造した。
ポリオール:22.5g
触媒(エチレングリコール):1.05g
ペンタン:4.5g
イソシアネート(MDI):60g
【0148】
本発明に係る難燃剤は、反応の前にポリオール成分に添加された。以下の表で引用した難燃剤の質量比は、ポリオール、触媒、難燃剤、及びイソシアネートの質量の合計を意味する。
【表20】
【0149】
実施例15:熱可塑性ポリウレタン(PU)におけるMOMP-H4の難燃性
以下の実施例では、以下のポリマー材料を使用して難燃性組成物を製造した。
BASF SEの熱可塑性ポリウレタン(TPU)Elastollan1185A
【0150】
二軸押出機のモデルProcess11、Thermo Fisher Scientific Inc.を用いて、TPUに典型的な押出条件で、おおよその粒径3x1x1mmの造粒物を製造した。押出工程は、およそ5kg/hのスループットで、スクリュー速度300rpm、押出ゾーンの温度205℃で運転した。その後、ホットプレスにより高品質のUL94準拠の試験片を得た。試験片の厚さは0.8mmであった。次に、実施例1に従って製造されたホスホン酸塩を、押出工程中にポリマー材料に配合した。
【表21】
【0151】
実施例16:熱可塑性ポリアミド(PA)におけるMOMP-H2Znの難燃性
以下の材料を以下の実施例で使用して、難燃性組成物を製造した。
ポリアミド6:Ultramid B3S(BASF)
PA用グラスファイバー(GF):CS7928(Lanxess)
【0152】
二軸押出機のモデルProcess11、Thermo Fisher Scientific Inc.を用いて、PA6に典型的な押出条件で、おおよその粒径3x1x1mmの造粒物を製造した。押出工程は、およそ5kg/hのスループットで、スクリュー速度300rpm、押出ゾーンの温度280℃で運転した。その後、ホットプレスにより高品質のUL94準拠の試験片を得た。試験片の厚さは0.8mmであった。次に、実施例7(MOMP-H
2Zn)に従って製造されたホスホン酸塩を、押出工程中にポリマー材料に配合した。
【表22】
【0153】
実施例17:熱可塑性ポリウレタンコーティングにおけるMOMP-Et4の難燃性と透明性の向上
Irurena Groupのポリウレタン樹脂トップコートGoylake A-1219-9をMOMP-Et4でカットし、激しく撹拌しながら混合した。MOMP-Et4の質量とポリウレタン樹脂の質量からなる全質量(250g)に対するMOMP-Et4の割合は、5重量%(レシピA)又は10重量%(レシピB)であった。この総質量に対して、それぞれ10重量%のIrurena Groupの硬化触媒C-212を加えた後、激しく撹拌しながら混合した。
【0154】
次に、この透明な混合物を500μmのスクレーパーを使って市販のチップボードに塗布し、続いてパネルを80℃で乾燥させた。
NF P 92-501に準拠したその後のEpiradiator火災試験において、レシピAとレシピBの両方でM3分類を行った。
【0155】
透明性の測定
レシピAとBの透明性を確認するために、500μmのスクレーパーを用いて、白色及び黒色の基板上にそれぞれコーティングした。そして、それぞれの基板について、コーティングを施した2つのサンプル(試験No.1及び2)と、コーティングを施さない2つの対照サンプル(試験No.3及び4)について、L*a*b*値を測定した。
【0156】
以下の表に示すように、レシピA及びBのコーティングは、L*a*b*色空間の値に無視できる程度の変化しかもたらさず、例えば、コーティングは高い透明性を持ち、基板の外観に影響を与えないか、又は軽微な影響しか与えない。従って、本発明に係る難燃剤は、透明なコーティングへの使用に特に適している。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
図表の説明
図1~
図14は熱重量測定を表しており、これらの結果は以下の表に示される。
【表27】
【国際調査報告】