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▶ オートメーション、プレス・アンド・トゥーリング、エーピー・アンド・ティー・アーベーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-18
(54)【発明の名称】中間加熱ステーション
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/00 20060101AFI20221011BHJP
   C21D 1/34 20060101ALI20221011BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C21D1/00 B
C21D1/34 J
C21D9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507595
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020071478
(87)【国際公開番号】W WO2021028230
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】19191711.1
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519140899
【氏名又は名称】オートメーション、プレス・アンド・トゥーリング、エーピー・アンド・ティー・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェンゼル、ブジェルン
(72)【発明者】
【氏名】クリント、ドラゼン
(72)【発明者】
【氏名】リーアンダー、マルクス
【テーマコード(参考)】
4K034
4K042
【Fターム(参考)】
4K034AA01
4K034BA10
4K034DB02
4K034EA04
4K042AA25
4K042BA14
4K042DA06
4K042DB07
4K042EA01
(57)【要約】
本明細書において、金属シートブランク(50)を加熱するための加熱ステーション(1)、およびそのような加熱ステーション(1)を備えるシステムが開示される。特に、加熱ステーションは、加熱室(10)において、加熱位置にある時、金属シートブランク(50)の下に配置され、金属シートブランク(50)に向かって放射加熱を提供するように構成された下側または上側加熱要素(11)と、金属シートブランク(50)の少なくとも第1の部分に放射加熱が到達することを防ぐように配置された下側マスク(14)とを備え、下側マスク(14)は、加熱位置にある時、金属シートブランク(50)に向かって下側マスク(14)の主面(14a)から突出し、加熱中に金属シートブランク(50)を支持するように構成された複数の支持突起部(14d)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シートブランク(50)を加熱するための加熱ステーション(1)であって、
加熱室(10)と、
前記加熱室(10)において、加熱位置にある時、金属シートブランク(50)の下または上に配置され、前記金属シートブランク(50)に向けて放射加熱を提供するように構成された下側または上側加熱要素(11、12)と、
前記加熱室(10)内で前記金属シートブランク(50)の下に配置され、前記加熱位置にある時、前記金属シートブランク(50)の少なくとも第1の部分に前記放射加熱が到達することを防ぎ、前記金属シートブランク(50)の少なくとも第2の部分に放射加熱が到達して前記少なくとも第2の部分を加熱することを可能にするような形状およびサイズに適合された下側マスク(14)と
を備え、
前記下側マスク(14)は、加熱位置にある時、前記金属シートブランク(50)に向かって前記下側マスク(14)の主面(14a)から突出し、加熱中に金属シートブランク(50)を支持するように構成された複数の支持突起部(14d)を備える、加熱ステーション。
【請求項2】
前記加熱ステーションは、加熱位置にある時、金属シートブランク(50)の下に配置された下側加熱要素(11)と金属シートブランクの上に配置された上側加熱要素(12)との両方を備え、前記加熱ステーションは更に、前記加熱室(10)において前記上側加熱要素(12)と前記金属シートブランク(50)との間に配置され、前記加熱位置にある時、前記金属シートブランクの少なくとも第3の部分に放射加熱が到達することを防ぎ、前記金属シートブランクの少なくとも第4の部分に放射加熱が到達して前記少なくとも第4の部分を加熱することを可能にするような形状およびサイズに適合された上側マスクを備える、請求項1に記載の加熱ステーション。
【請求項3】
前記下側マスク(14)は、第1の位置から第2の位置に向かって作動的に移動可能であるように構成され、前記下側マスクは、前記金属シートブランクが加熱される時、この第2の位置にあるように構成される、請求項1または2に記載の加熱ステーション。
【請求項4】
前記下側マスクは、少なくとも1つの開口部または凹部(14b、14c)を備え、これを通って放射加熱が前記金属シートブランク(50)の少なくとも第2の部分に到達し、前記少なくとも第2の部分を加熱し得る、請求項1~3のいずれかに記載の加熱ステーション。
【請求項5】
前記下側マスク(14)の前記少なくとも1つの開口部または凹部(14b、14c)を通って延び、前記加熱ステーション(1)内に挿入された金属シートブランク(50)を支持するように構成された支持ピン(15x)を更に備える、請求項4に記載の加熱ステーション。
【請求項6】
前記加熱ステーションは、前記下側マスク(14)が前記第1の位置にある時に金属シートブランク(50)が前記支持ピン(15x)によって支持されるように金属シートブランク(50)を受容するように構成され、前記加熱ステーションは、前記下側マスク(14)が前記第2の位置に移動すると、前記支持突起部(14d)によって前記金属シートブランク(50)を支持するように構成される、請求項5に記載の加熱ステーション。
【請求項7】
前記上側および下側マスク(13、14)は、スチールまたはアルミニウム製である、請求項1~6のいずれかに記載の加熱ステーション。
【請求項8】
前記上側マスク(13)は、前記加熱位置にある時、前記金属シートブランクに向かって前記上側マスク(13)の主面(13a)から突出する間隔突起部(13d)を備える、請求項2に記載の加熱ステーション。
【請求項9】
前記上側および下側マスク(13、14)は、前記加熱ステーション(1)から交換可能である、請求項1~8のいずれかに記載の加熱ステーション。
【請求項10】
前記支持ピン(15x)は、支持構造(15)上に配置され、前記支持構造(15)は、前記加熱ステーション(1)から交換可能である、請求項5に記載の加熱ステーション。
【請求項11】
前記上側および下側マスク(13、14)のいずれかには冷却チャネルが設けられる、請求項1~10のいずれかに記載の加熱ステーション。
【請求項12】
加熱室(10)内に配置するためのマスク支持構成(40)であって、
前記加熱室(10)内に配置されるように構成された支持構造(15)と、
第1の位置と第2の位置との間で前記支持構造(15)に対して可動であるように配置されるように構成され、金属シートブランク(50)を受け取るように構成された下側マスク(14)であって、金属シートブランク(50)の少なくとも第1の部分に放射加熱が到達することを防ぎ、前記金属シートブランク(50)の少なくとも第2の部分に放射加熱が到達して前記少なくとも第2の部分を加熱することを可能にする形状およびサイズに適合された前記下側マスクと
を備え、
前記マスク支持構成(40)の前記下側マスク(14)は、加熱位置にある時、前記金属シートブランク(50)に向かって前記下側マスク(14)の主面(14a)から突出し、加熱中に前記金属シートブランク(50)を支持するように構成された複数の支持突起部(14d)を備える、マスク支持構成。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の加熱ステーション(1)において金属シートブランク(50)を加熱する方法(100)であって、
前記加熱ステーション(1)の加熱室(10)内に前記金属シートブランク(50)を配置するステップ(101)と、
前記加熱室(10)内に配置された下側マスク(14)の主面(14a)から突出する支持突起部(14d)上で前記金属シートブランク(50)を支持するステップ(102)と、
前記加熱室(10)内の加熱要素(11、12)からの放射加熱を用いて前記金属シートブランク(50)を加熱するステップ(104)と、
前記加熱室(10)内に配置された前記下側マスク(14)を用いて、前記放射加熱から前記金属シートブランク(50)の少なくとも一部を遮蔽するステップ(105)と
を備える方法。
【請求項14】
前記放射加熱から前記金属シートブランク(50)の少なくとも一部を遮蔽するステップ(105)は、前記加熱室(10)内に配置された上側マスク(13)を用いて前記金属シートブランクを遮蔽することを更に備え、前記下側および上側マスク(14、13)は、前記金属シートブランク(50)のそれぞれ両側に配置される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記下側マスク(14)を第1の位置から第2の位置に向かって移動するステップ(103)を更に備え、前記下側マスク(14)は、前記金属シートブランク(50)を加熱するステップ(104)の間、前記第2の位置にある、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属シートブランク(50)を前記加熱室(10)内に配置するステップ(101)は、前記加熱室(10)内に配置された支持ピン(15x)上に前記金属シートブランク(50)を配置することを備え、前記金属シートブランクは、前記下側マスク(14)が前記第1の位置にある時、前記支持ピン(15x)上で支持され、前記下側マスク(50)が前記第2の位置に移動(103)すると、前記支持突起部(14d)上で支持される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記上側または下側マスク(13、14)のいずれかを冷却するステップ(106)を更に備える、請求項13~16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部分プレス硬化部品を製造するための構成および方法、特に、金属ブランクシートの加熱を制御するための構成および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、プレス硬化部品は、均一な強度分布を示す。特に、衝突性能に関して高い要件を有する安全関連部品の場合、この均一な強度分布は問題点を招き得る。たとえば、Bピラーは、通常、乗員室内への侵入を防ぐために高張力であるように設計される中間部および上部に比べて、下部が比較的高い可撓性を有する場合、衝突時により多くのエネルギを吸収することができる。
【0003】
たとえばテーラードロールドブランク、テーラードウェルドブランク、テーラードテンパリング、テーラードヒーティングなどの技術は、プレス硬化部品内の軟質/硬質ゾーンを生成するために用いられる。しかしこれらの技術は、大きな面積でしか材料特性を適合させることができない。また、テーラードロールドブランクおよびテーラードウェルドブランクは、高価な金型(良好な接触圧が必要)、(厳格なプロセスウィンドウによる)プロセス制御といったいくつかの問題を伴う。また金型におけるテーラードテンパリングも、部品を排出した後の部分的歪み、激しい金型の摩耗、高い金型費用などのいくつかの問題を伴う。また既存の技術によるテーラードヒーティングも、大きな移行ゾーン、再現性、加工費、大きな面積の部品(たとえばBピラーの1/3)に限定される点など、いくつかの問題を伴う。
【0004】
よって、上述した問題の少なくとも一部を緩和する改善された解決策が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、現在の解決策に伴う上記欠点を緩和する改善された解決策を提供することである。さらに、制御性が高く精密なシート状金属ブランクの加熱を可能にする、シート状金属ブランクを加熱するための加熱ステーションを提供することが目的である。また、制御性が高く精密なシート状金属ブランクの加熱を可能にする、シート状金属ブランクを加熱するための方法を提供することも目的である。
【0006】
本発明は、添付の独立クレームによって定義され、その実施形態は、添付の従属クレーム、以下の説明、および図面に記載される。
【0007】
本発明の第1の態様によると、金属シートブランクを加熱するための加熱ステーションが提供される。加熱ステーションは、加熱室を備えてよい。加熱ステーションは、加熱室において、加熱位置にある時、金属シートブランクの下または上に配置された下側または上側加熱要素を備えてよい。加熱要素は、金属シートブランクに向かって放射加熱を提供するように構成され得る。加熱ステーションは、加熱室において、加熱位置にある時、金属シートブランクの下に配置された下側マスクを備えてよい。下側マスクは、金属シートブランクの少なくとも第1の部分に放射加熱が到達することを防ぐ形状およびサイズに適合され得る。下側マスクは、金属シートブランクの少なくとも第2の部分に放射加熱が到達し、それを加熱することを可能にする形状およびサイズに適合され得る。下側マスクは、加熱位置にある時、金属シートブランクに向かって下側マスクの主面から突出する複数の支持突起部を備えてよい。下側マスクの支持突起部は、加熱中に金属シートブランクを支持するように構成され得る。
【0008】
この加熱ステーションによると、製造されたプレス硬化部品において極めて局所的に、または大きな面積で軟質および硬質ゾーンが生成され得る。この加熱ステーションは、新たな衝突経路設計を有する車体構造部品の製造も可能にする。
【0009】
形状およびサイズが適合されるということは、下側マスクが、少なくとも1つの開口部または凹部を有することを意味し得る。またこれは、下側マスクが、金属シートブランクの少なくとも一部への一部の加熱放射の到達を防ぐことができない平面的広がりを有することも意味し得る。
【0010】
加熱室は、断熱要素および加熱要素を保持する枠組みであってよい。また、加熱室は、第1の開閉可能なハッチを備えてよく、これを介して、金属シートブランクが加熱室内に挿入され、加熱室から取り出され得る。また、加熱室は、第2の開閉可能なハッチを備えてよい。第1のハッチは、加熱室の正面に配置された正面ハッチであってよい。第2のハッチは、加熱室の背面に配置された背面ハッチであってよい。下側マスクは、背面ハッチを介して取出し可能または挿入可能であってよい。下側マスクは、正面ハッチを介して取出し可能または挿入可能であってよい。
【0011】
加熱ステーションの加熱要素は、電力式、またはたとえばガスや石油などの燃料着火式であってよい。加熱要素は、加熱放射を提供するように構成され得る。加熱放射は、赤外線放射であってよい。
【0012】
下側マスクは、概ね平坦な外形を有してよい。マスクは、少なくとも1つの開口部または凹部を有してよい。マスクの文脈において、開口部または凹部は、横断方向に開閉する、マスクを通って延びる開口部などを指す。たとえば開口部は、マスクの構造によって完全に境界を定められた穴であってよい。たとえば凹部は、マスクの縁部からも延びる間隙であってよい。マスクのいずれかに、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の数の開口部または凹部が設けられ得る。開口部または凹部は、加熱される金属シートブランクの所望の加熱パターンをもたらすように設計され得る。
【0013】
1つの実施形態において、支持突起部は、下側マスクの主面から0.1~50mm突出してよい。他の実施形態において、支持突起部は、下側マスクの主面から1~30mm、好適には1~20mm突出してよい。
【0014】
また、加熱ステーションにおいて、加熱要素からの放射加熱は、加熱室内の表面に反射してよく、すなわち、放射加熱は、金属シートブランクに向かって反射し得る。したがって、上側加熱要素のみを備える加熱ステーションの場合、下側マスクは、金属シートブランクに向かって反射した上側加熱要素からの放射加熱を遮断することが理解される。
【0015】
1つの実施形態によると、加熱ステーションは、金属シートブランクに向かって放射加熱を反射するように配置および/または構成された反射面を備えてよい。これにより、金属ブランクシートへの放射加熱の反射が容易にされ得る。下側マスクは、反射面に反射した放射加熱が金属シートブランクの少なくとも第1の部分に到達することを防ぐ形状およびサイズに適合され得る。反射面は、好適には、たとえば鏡面または光沢面などのように高反射率を有する。反射面は、たとえばAu、Ag、またはCu、およびその合金、すなわちAu-Ag合金、Au-Cu合金、Ag-Cu合金など、1または複数の材料で作られ得る。そのような材料は、比較的高い反射率と、概ね960~1080℃の範囲内である比較的高い融点との組み合わせにより、加熱室内の広範囲の作業温度に耐え得る保護面を可能にすることによって、本発明のいくつかの実施形態において反射面を提供するために有利に用いられ得る。反射面は、加熱室においてマスクの下に配置されるように構成された要素に設けられたコーティング、または加熱室の底面領域に堆積したコーティングであってよい。
【0016】
1つの実施形態によると、加熱ステーションは、加熱位置にある時、金属シートブランクの下に配置された下側加熱要素と、金属シートブランクの上に配置された上側加熱要素との両方を備えてよく、また加熱ステーションは、加熱室において上側加熱要素と金属シートブランクとの間に配置され、加熱位置にある時、金属シートブランクの少なくとも第3の部分に放射加熱が到達することを防ぎ、金属シートブランクの少なくとも第4の部分に放射加熱が到達してそれを加熱することを可能にする形状およびサイズに適合された上側マスクを更に備えてよい。
【0017】
上側マスクは、金属シートブランクの上側に到達する放射を制御するように配置され得る。形状およびサイズが適合されるということは、上側マスクが少なくとも1つの開口部または凹部を有することを意味し得る。またこれは、上側マスクが、金属シートブランクの少なくとも一部への一部の加熱放射の到達を防ぐことができない平面的広がりを有することも意味し得る。
【0018】
上側マスクは、概ね平坦な外形を有してよい。上側マスクは、少なくとも1つの開口部または凹部を有してよい。マスクの文脈において、開口部または凹部は、横断方向に開閉する、マスクを通って延びる開口部などを指す。たとえば開口部は、マスクの構造によって完全に境界を定められた穴であってよい。たとえば凹部は、マスクの縁部からも延びる間隙であってよい。マスクのいずれかに、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の数の開口部または凹部が設けられ得る。開口部または凹部は、加熱される金属シートブランクの所望の加熱パターンをもたらすように設計され得る。上側および下側マスクは、金属シートブランクの少なくとも1つの第1の部分および少なくとも1つの第3の部分が互いに位置を合わせられるように、開口部または凹部のレイアウトに関して同様に設計され得る。
【0019】
1つの実施形態によると、下側マスクは、第1の位置から第2の位置に向かって作動的に移動可能であるように構成され得る。第1の位置は、下側マスクが加熱室の底面に近い位置にある位置であってよい。第1の位置は、下側マスクが、金属シートブランクが加熱室内に容易に挿入され得る位置にある位置であってよい。金属シートブランクは、下側マスクによって受け取られ、支持され得る。下側マスクは、金属シートブランクを支持しながら上方に作動的に移動することが可能であってよい。第2の位置は、加熱位置、すなわち下側マスク上で支持される金属シートブランクが加熱位置にある位置に対応し得る。下側マスクを作動的に移動可能にすることで、金属シートブランクは、正確な加熱が容易になり得る加熱位置に配置され得る。また、下側マスクの移動は、手動で、または自動的に制御され得る。したがって、金属シートブランクの加熱は、更に自律的になり得る。加熱ステーションは、下側マスクを第1および第2の位置の間で移動するように構成された昇降装置を備えてよい。昇降装置は、空圧式または電動アクチュエータ、好適にはサーボモータ駆動式リニアユニットによって動かされ得る。アクチュエータ(複数も可)は、支持構造を介して下側マスクを制御するように構成され得る。支持構造には、加熱室の床部または側部を介して手が届き得る。加熱ステーションが上側マスクを備える実施形態において、下側マスクの第2の位置への移動は、上側マスクに向かう方向であってよい。
【0020】
1つの実施形態によると、下側マスクは、少なくとも1つの開口部または凹部を備えてよく、これを通って、放射加熱が金属シートブランクの上記少なくとも第2の部分に到達し、それを加熱し得る。あるいは、開口部または凹部を有さない下側マスクが提供されてもよく、下側マスクは、一部の加熱放射が金属シートブランクの少なくとも一部に到達してそれを加熱することを防ぐことができないように平面的広がりが限定される。
【0021】
追加の実施形態の1つによると、上側マスクは、少なくとも1つの開口部または凹部を備えてよく、これを通って、放射加熱が金属シートブランクの少なくとも第4の部分に到達し、それを加熱し得る。あるいは、開口部または凹部を有さない上側マスクが提供されてもよく、上側マスクは、一部の加熱放射が金属シートブランクの少なくとも一部に到達してそれを加熱することを防ぐことができないように平面的広がりが限定される。
【0022】
上側および下側マスクの一方が少なくとも1つの開口部または凹部を備えてよく、上側および下側マスクの他方は、対応する少なくとも1つの開口部または凹部を備えずに提供され得る。これにより、金属シートブランクの一部は、上方または下方からの一方向のみから放射加熱に晒され得る。
【0023】
加熱室は、加熱室における上側マスクおよび/または下側マスクの位置を、水平面に平行な方向に互いに独立して調整するための調整手段を備えてよい。これにより、上側および/または下側マスクは、上側マスクおよび下側マスクの任意の開口部または凹部の位置を合わせるために、または一方向のみからゾーンに標的を定めた放射加熱を可能にするように上側および下側マスクを位置決めするために、互いに対して位置を調整され得る。
【0024】
1つの実施形態によると、上側マスクは所定の位置で静止してよく、下側マスクは、上側マスクに向かって移動可能であり、加熱位置において金属シートブランクを担持してよい。任意選択的に、上側マスクは、加熱ステーションの加熱室に対して作動的に移動可能であるように構成され得る。その場合、上側マスクは、第1の位置と第2の位置との間で移動可能であってよい。上側マスクは、第1の位置において、係止手段によって所定の位置に係止された係止位置にあってよい。上側マスクは、第2の位置において、第1の位置に配置された下側マスクによって支持され得る。追加の典型的な実施形態において、上側マスクは、下側マスクに向かって移動可能であるように構成されてよく、下側マスクは、金属シートブランクを支持しながら上側マスクに向かって移動する。上側マスクの主面は、上側マスクの底面、すなわち金属シートブランクに面した表面であってよい。また、上側マスクの移動は、下側マスクの移動を制御するように構成されたものと同様の昇降装置によって制御され得る。上側および下側マスクの移動は、同じ昇降装置によって制御され得る。昇降装置は、空圧式または電動アクチュエータ、好適にはサーボモータ駆動式リニアユニットによって動かされ得る。
【0025】
1つの実施形態によると、加熱ステーションは、下側マスクにおける上記少なくとも1つの開口部または凹部を通って延びる支持ピンを備えてよい。支持ピンは、加熱ステーション内に挿入された金属シートブランクを支持するように構成され得る。支持ピンを設けることにより、金属シートブランクは、下側マスクが金属シートブランクを受け取り易いように支持ピンによって受け取られ得る。1つの実施形態において、下側マスクの少なくとも1つの開口部または凹部を通って延びること以外に、1または複数の支持ピンは、下側マスクにおける支持ピン開口部を通って延びるように構成され得る。よって、下側マスクにおける少なくとも1つの開口部または凹部が、加熱室内に挿入された時の金属シートブランクを支持するのに十分ではない場合、支持ピンが追加の位置にあり、下側マスクにおける専用支持ピン開口部を通って延びてよい。そのような支持ピン開口部は、支持ピンが貫通するのに十分な幅しか有さないように厳格に構成され得る。これにより、加熱室内に挿入された時の金属シートブランクの安定性が向上し得る。加熱ステーションは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の数の支持ピン(複数も可)を備えてよい。支持ピン(複数も可)は、加熱室内に挿入された時の金属シートブランクに安定性をもたらすために配置され得る。また、加熱室は、加熱室内に挿入された時の金属シートブランクに安定性をもたらすように構成された支持棚を備えてよい。支持棚は、加熱室の内側に配置され得る。支持棚は、支持ピンの先端と同じ垂直高さにある上面を有してよい。支持棚は、下側マスクによって受け取られ易いように、金属シートブランクが加熱室内に挿入された時の追加の安定性をもたらし得る。
【0026】
また別の実施形態によると、加熱ステーションは、下側マスクが第1の位置にある時に金属シートブランクが上記支持ピンによって支持されるように金属シートブランクを受け取るように構成され得る。下側マスクは、第2の位置に移動すると、下側マスクの支持突起部によって金属シートブランクを支持するように構成され得る。この実施形態によると、受け取られた金属シートブランクは、より正確に、下側マスクによって支持されるように準備され得る。
【0027】
また別の実施形態によると、上側および下側マスクは、スチールまたはアルミニウム製であってよい。上側および下側マスクは、ステンレス鋼製であってよい。この実施形態によると、マスクおよびそれに伴う加熱中の金属シートブランクの加熱制御が容易になり得る。
【0028】
また別の実施形態によると、上側マスクは、加熱位置にある時の金属シートブランクに向かって上側マスクの主面から突出する間隔突起部を備えてよい。この実施形態によると、加熱位置にある時の金属シートブランクと上側マスクとの間に空気が通り得る。上側マスクにおける間隔突起部は、加熱位置にある時の金属シートブランクと接触するように構成され得る。間隔突起部は、上側マスクの主面から、下側マスクの支持突起部と等しい範囲に突出してよい。
【0029】
また別の実施形態によると、上側および下側マスクは、加熱ステーションから交換可能であってよい。この実施形態によると、上側および下側マスクは、異なるサイズ、形状、材料、および/または各マスクの少なくとも1つの開口部または凹部のレイアウトに関するレイアウトを有する異なるセットに交換され得る。よって、同じ加熱ステーションが、異なる種類のプレス硬化部品への加工が意図された金属シートブランクを加熱するために再構成され得る。
【0030】
また別の実施形態によると、支持ピンは、支持構造上に配置され得る。この実施形態によると、支持ピンは、支持ピンの上に配置された金属シートブランクの重量を管理するためにより適合性を持ち得る。
【0031】
また別の実施形態によると、支持構造は、加熱ステーションから交換可能であってよい。この実施形態によると、支持ピンは、高い自由度で配置され、特定の下側マスクに対応するレイアウトを有し得る。また、下側マスクならびに支持構造は、同時に、または互いに連続して交換され得る。
【0032】
また別の実施形態によると、下側マスクには冷却チャネルが設けられ得る。冷却チャネルは、マスクの内部全体に延びるように配置され得る。冷却チャネルは、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼などの材料の1つの板にミリング加工されてよく、チャネルを封止するために別の板が上に載置される。また、冷却流体を供給および/または排出するホースが、冷却チャネルを設けられたマスクに流体接続され得る。この実施形態によると、マスクが能動的に冷却され得ることにより、その温度が金属シートブランクの加熱中に許容レベルまで低減および/または制御される。冷却流体は水であってよい。上側マスクを備える実施形態において、上側マスクにも冷却チャネルが設けられ得る。
【0033】
本発明の第2の態様によると、加熱室内に配置するためのマスク支持構成が提供される。マスク支持構成は、支持構造を備えてよい。支持構造は、加熱室内に配置されるように構成され得る。マスク支持構成は、下側マスクを備えてよい。下側マスクは、第1の位置と第2の位置との間で支持構造に対して移動可能であるように構成され得る。下側マスクは、金属シートブランクを受け取るように構成され得る。下側マスクは、金属シートブランクの少なくとも第1の部分に放射加熱が到達することを防ぐ形状およびサイズに適合され得る。下側マスクは、金属シートブランクの少なくとも第2の部分に放射加熱が到達してそれを加熱することを可能にする形状およびサイズに適合され得る。マスク支持構成の下側マスクは、複数の支持突起部を備えてよい。支持突起部は、加熱位置にある時、金属シートブランクに向かって下側マスクの主面から突出してよい。支持突起部は、加熱中に金属シートブランクを支持するように構成され得る。このマスク支持構成によると、既に使用中の加熱ステーションが、本発明の第1の態様の実施形態のいずれかに係る加熱ステーションに再構成され得る。
【0034】
1つの実施形態によると、マスク支持構成は、昇降装置を備えてよい。昇降装置は、第1および第2の位置の間での下側マスクの移動を制御するように構成され得る。昇降装置は、空圧式または電動アクチュエータ、好適にはサーボモータ駆動式リニアユニットによって動かされ得る。
【0035】
1つの実施形態によると、マスク支持構成は、上側マスクを備えてよい。昇降装置は、第1および第2の位置の間での上側マスクの移動を制御するように構成され得る。
【0036】
また、マスク支持構成は、上述した任意の実施形態に係る加熱ステーションと同等の構成、およびこれらの実施形態が提供し得る利点による利益に対応する材料、形状、および機能で具体化され得る。ここで、同等の構成とは、加熱室ならびに下側および/または上側加熱要素を除いた加熱ステーションの全ての構造的および機能的特徴を備える構成を意味し得る。特に、マスク支持構成が、下側マスクと、本発明の第1の態様の実施形態のいずれかに係る加熱ステーションの支持フレームとを備えることが意図され得る。
【0037】
本発明の第3の態様によると、加熱ステーションにおいて金属シートブランクを加熱する方法が提供される。この方法は、
加熱ステーションの加熱室内に金属シートブランクを配置するステップと、
加熱室内に配置された下側マスクの主面から突出する支持突起部上で金属シートブランクを支持するステップと、
加熱室内の加熱要素からの放射加熱を用いて金属シートブランクを加熱するステップと、
加熱室内に配置された下側マスクを用いて金属シートブランクの少なくとも一部を放射加熱から遮蔽するステップと
を備えてよい。また、この方法は、下側マスクを第1の位置から上側マスクに向かって第2の位置に移動するステップを備えてよい。
【0038】
1つの実施形態によると、金属シートブランクの少なくとも一部を放射加熱から遮蔽するステップは、加熱室内に配置された上側マスクを用いて金属シートブランクを遮蔽することを更に備えてよく、下側および上側マスクは、金属シートブランクのそれぞれの側に配置され得る。
【0039】
1つの実施形態によると、方法は、下側マスクを第1の位置から第2の位置に向かって移動するステップを備えてよい。冷却するステップは、加熱するステップの間中、継続的に生じ得る。下側マスクは、第1の位置において、加熱室の底面付近、好適には金属シートブランクが加熱室内に容易に挿入され得る位置に位置してよい。第2の位置において、下側マスクは、加熱室内に挿入された金属シートブランクを、加熱中に支持突起部を介して支持するように配置され得る。下側マスクを移動するステップは、金属シートブランクを挿入位置から加熱位置に移動することを含んでよい。また別の実施形態によると、下側マスクは、金属シートブランクを加熱するステップの間、第2の位置にある。この第2のステップは、加熱位置と称されてよく、金属シートブランクは、加熱位置に位置するように支持される。第2の位置に移動する時、下側マスクは、上側マスクに向かって移動し得る。
【0040】
また別の実施形態によると、加熱室内に金属シートブランクを配置するステップは、加熱室内に配置された少なくとも1つの支持ピン上に金属シートブランクを配置することを備えてよく、金属シートブランクは、下側マスクが第1の位置にある時、上記少なくとも1つの支持ピン上で支持され、下側マスクが第2の位置に移動すると、上記支持突起部上で支持される。
【0041】
また別の実施形態によると、方法は、上側または下側マスクのいずれかを冷却するステップを備えてよい。冷却するステップは、加熱するステップの間中、継続的に生じ得る。
【0042】
また別の実施形態によると、方法は、たとえば多層炉、室炉、またはローラハース炉などの何らかの種類の炉内に金属シートブランクを配置するステップを備えてよい。方法は、炉の加熱室内で金属シートブランクを加熱するステップを備えてよい。金属シートブランクは、金属シートブランクの材料がオーステナイト相に達するように加熱され得る。方法は、金属シートブランクを炉から取り出し、上記実施形態のいずれかに係る加熱ステーションに移送するステップを備えてよい。これは、たとえば、フォーク型載荷装置を用いて行われ得る。あるいは、炉は、オーステナイト化温度まで加熱されると、金属シートブランクを、たとえばフォーク型載荷装置によって容易にピックアップされ得る位置に排出する排出装置を備えてよい。また、方法は、金属シートブランクがプレス硬化される処理ステップを備えてよい。これは、たとえば、金属シートブランクに力を加える処理ユニットのツールによって行われ得る。また、方法は、金属シートブランクを冷却するステップを備えてよい。ツールが閉じ、金属シートブランクを再形成すると、金属シートブランクは、マルテンサイトレベル未満の温度まで冷却され得る。この冷却は急速に行われ得る。したがって、この方法により、金属シートブランクからプレス硬化部品が製造され得る。
【0043】
1つの実施形態によると、方法は、加熱ステーション内の上側および/または下側マスクを交換するステップを備えてよい。また、方法は、支持構造を交換するステップも備えてよい。この実施形態によると、加熱ステーションは、別の必要な加熱パターンに従って金属シートブランクを加熱するように再構成され得る。
【0044】
本発明の第4の態様によると、プレス硬化部品を製造するためのシステムが提供される。システムは、金属シートブランクの材料をオーステナイト相まで加熱するように構成された炉を備えてよい。システムは、本発明の第1の態様の任意の実施形態に係る加熱ステーションを備えてよい。システムは、金属シートブランクをプレス硬化部品にプレス硬化するための処理ユニットを備えてよい。システムは、炉、加熱ステーション、および処理ユニットの間で金属シートブランクを移送するための載荷装置を備えてよい。また、システムは、上側マスク、下側マスク、および/または支持構造を交換するためのマスク取扱い装置を備えてよい。システムは、冷却流体貯蔵器と、上側および下側マスクに冷却流体を供給するための手段とを備えてよい。
【0045】
また、第1、第2、第3、および第4の態様は、金属シートブランクの加熱に関するように概説されたが、複数の金属シートブランクが、マスク支持構成および/または加熱ステーションによって自然に受け取られ、同様に加熱ステーションによって加熱されてもよい。複数の金属シートブランクは、同時に加熱され得る。また、方法は、複数の金属シートブランクを、連続的に、または同時に加熱および/または処理することに関係してよい。また、本発明の第1の態様に係る加熱ステーションは、本発明の第2の態様に係るマスク支持構成を備えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明は、以下で添付図面を参照して詳しく説明される。
図1】本発明の実施形態に係る加熱ステーションの斜視図を示す。
図2a】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図2b】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図3a】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図3b】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図3c】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図4a】本発明の実施形態に係る構成の一部の概略ブロック図を示す。
図4b】本発明の実施形態に係る構成の一部の概略ブロック図を示す。
図5a】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図5b】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図5c】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図5d】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図5e】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図5f】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図5g】本発明の実施形態に係る構成の概略ブロック図を示す。
図6】本発明の実施形態に係る方法のフローチャートを示す。
図7】本発明の実施形態に係る方法のフローチャートを示す。
図8】本発明の実施形態に係る方法のフローチャートを示す。
図9】本発明の実施形態に係る方法プロセス中のブランクの内部構造の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明は、本発明の好適な実施形態が示される添付図面を参照して詳細に説明される。ただし、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されてはならず、むしろ、これらの実施形態は、本開示が包括的かつ完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に十分に伝達するように提供される。図面において、同様の番号は同様の要素を指す。また、図面および本明細書において、本発明の好適な実施形態および例が開示されており、特定の用語が用いられるが、これらは、限定を目的とせずに一般的かつ説明的な意味でのみ用いられており、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲において記載される。
【0048】
図1は、本発明の実施形態に係る加熱ステーション1の斜視図を示す。図2aは、本発明の実施形態に係る加熱ステーション1の概略ブロック図を示す。加熱ステーション1は、加熱室10、すなわち断熱要素および加熱要素11、12を保持する枠組みを備える。加熱ステーション1は、下側加熱要素11を備える。加熱ステーション1は、上側加熱要素2を備える。下側加熱要素11は、加熱室10の下部に配置される。上側加熱要素12は、加熱室10の上部に配置される。たとえば図2a~2bを参照すると、下側加熱要素11および上側加熱要素12は、下側加熱要素11と上側加熱要素12との間に金属シートブランク50が配置され得るように、互いに距離を置いて配置される。上側および下側加熱要素11、12は、電力式であってよく、またはたとえばガスまたは石油などの燃料で着火され得る。他の実施形態において、加熱ステーション1は、下側および上側加熱要素11、12の一方のみを備える。
【0049】
加熱ステーション1は、下側マスク14を備える。下側マスク14は、加熱室10において、金属シートブランク50が加熱室10内に挿入された時、下側加熱要素11より上かつ金属シートブランク50より下に配置される。下側マスク14は、放射加熱が金属シートブランク50の少なくとも第1の部分に到達することを防ぐように構成される。また、下側マスク14は、少なくとも1つの開口部または凹部14b、14cを備え、それを通って放射加熱が金属シートブランク50の少なくとも第2の部分に到達し得る。また、下側マスク14は、下側マスク14の主面14aから突出する複数の支持突起部14dを備える(図1には不図示)。図1に示すように、主面14aは、下側マスク14の上面であってよい。支持突起部14dは、加熱室10内に挿入された時の金属シートブランク50に向かって上向きに突出する。支持突起部14dは、加熱中に金属シートブランク50を支持するように構成される。また、加熱ステーション1は、上側マスク13を備える。1つの実施形態において、上側マスク13は、加熱室10において、金属シートブランク50が加熱室10内に挿入された時、上側加熱要素12より下かつ金属シートブランク50より上に配置される。上側マスク13は、放射加熱が金属シートブランク50の少なくとも第3の部分に到達することを防ぐように構成される。また、上側マスク13は、少なくとも1つの開口部または凹部13b、13cを備え、それを通って放射加熱が金属シートブランク50の少なくとも第4の部分に到達し得る。
【0050】
図1を参照して上述したように、構成1、すなわち加熱ステーション1は、加熱室10、下側および上側加熱要素11、12、および上側および下側マスク13、14を備える。加熱ステーション1は、金属シートブランク50を受容するように構成される。金属シートブランク50は、加熱ステーション1に受容される前に予熱されていてよい。たとえば、金属シートブランク50は、炉20の加熱室22においてブランク50の材料のオーステナイト化温度以上の温度まで加熱されることにより、ブランク50の材料をオーステナイト相にしてよい。その後、金属シートブランク50は、炉20の加熱室22から加熱ステーション1に移動され得る。
【0051】
加熱ステーション1の加熱室10において、金属シートブランク50が、上側および下側加熱要素11、12によって加熱される位置、すなわち加熱位置にある時、金属シートブランク50は、支持突起部14dによって支持される。支持突起部14dは、マスク14と金属シートブランク50との間で空気が循環することを可能にする。下側および上側加熱要素11、12は、放射加熱を提供する。一部の放射加熱は、金属シートブランク50の少なくとも1つの露出ゾーン50b、50c(図2aにおいて網掛け模様で示す領域)に到達することができるが、金属シートブランク50の少なくとも1つの非露出ゾーン50aは、上側および下側マスク13、14によって加熱放射を受けることを防がれる。
【0052】
少なくとも1つの露出ゾーン50b、50cが加熱された後、金属シートブランク50は、加熱ステーション1の加熱室10から取り出される。その後、金属シートブランク50は、加熱ステーション1の加熱室10から処理ユニット30に移動され得る。処理ユニット30において、金属シートブランク50は、処理ユニット30のツール31に配置される。押圧力Fによって処理され、場合によっては冷却されることにより、金属シートブランク50は、プレス硬化部品50’に形成される。プレス硬化部品50’には、加熱ゾーン50b、50cに対応する硬化ゾーン50b’、50c’が設けられる。
【0053】
図2bは、本発明の実施形態に係る構成1の概略ブロック図を示す。構成1、すなわち加熱ステーション1は、図1を参照して説明したように、下側および上側加熱要素11、12、上側および下側マスク13、14を備える。加熱ステーション1は、図2bにおいて破線輪郭線で示すように、下側および上側加熱要素11、12の間、特に上側および下側マスク13、14の間に金属シートブランク50を受容するように構成される。下側マスク14は、少なくとも1つの開口部または凹部14b、14cを備える。また上側マスク13も、少なくとも1つの開口部または凹部13b、13cを備える。放射加熱は、それぞれ上側および下側マスクの開口部または凹部13b、13c、14b、14cを通って、加熱室10内に挿入された金属シートブランク50に到達し得る。下側マスク14には、下側マスク14の主面14aから突出する支持突起部14dが設けられる。図2bに示すように、下側マスクの主面14aは、その上面であってよい。支持突起部14dは、加熱中に金属シートブランク50を支持するように構成される。支持突起部14dは、加熱中、下側マスク14と金属シートブランク50との間に空気が通ることを可能にする。
【0054】
また、下側マスク14は、図3a~3cに示すように、加熱ステーション1の加熱室10に対し移動可能であるように構成される。下側マスク14は、第1の位置および第2の位置から移動可能であるように構成され、第1の位置において、加熱室10の底面付近、好適には、図2bおよび図3aに示すように、金属シートブランク50が支持構成15上の加熱室10内に容易に挿入され得る挿入位置に位置する。下側マスク14は、図3bに示すように、支持突起部14dが金属シートブランク50を支持するように、上側マスク13に向かって移動するように構成される。第2の位置、すなわち加熱位置において、下側マスク14は、図3cに示すように、加熱室10内に挿入された金属シートブランク50を加熱中に支持するように構成される。
【0055】
1つの典型的な実施形態において、上側マスクは所定の位置で静止しており、下側マスク14は上側マスク13に向かって移動し、加熱位置において金属シートブランク50を担持する。任意選択的に、上側マスク13もまた、加熱ステーション1の加熱室10に対して移動可能であるように構成される。その場合、上側マスク13は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能であってよい。上側マスク13は、第1の位置において、係止手段13xによって所定の位置に係止された係止位置にあってよい。上側マスク13は、第2の位置において、第1の位置にある下側マスク14によって支持され得る。追加の典型的な実施形態において、上側マスク13は、下側マスク14に向かって移動可能であるように構成され、下側マスク14は、金属シートブランク50を支持しながら上側マスク13に向かって移動する。任意選択的に、上側マスク13は、上側マスク13の主面から突出する間隔突起部13dを備える。上側マスク13の主面は、上側マスク13の底面であってよい。間隔突起部13dおよび支持突起部14dは、加熱中に金属シートブランク50を定位置に保持してよい。上側および下側マスク13、14は、アルミニウムまたはステンレス鋼で提供され得る。また、上側および下側マスク13、14には、上側および下側マスク13、14を冷却するための冷却チャネルが設けられ得る。冷却は、上側および下側マスク13、14から熱を除去するために冷却チャネル全体に流体を流すことによって行われ得る。冷却チャネルは、上側および下側マスク13、14の内部の様々な方向に全体的に延びてよい。冷却流体は水であってよい。
【0056】
図1図2b、図3a~3c、図4a~4bに示すように、加熱ステーション1は、下側マスク14の上記少なくとも1つの開口部または凹部14b、14cを通って延びる支持ピン15xを備えてよい。下側マスク14には、支持ピン15xが貫通し得る支持ピン開口部14eが設けられ得る。また、上側マスク13にも、支持ピン15xが貫通し得る支持ピン開口部13eが設けられ得る。支持ピン開口部13e、14eは、支持ピン15xを緊密に受容し、これらが支持ピン開口部13e、14eを出入りすることを可能にするようなサイズおよび形状に形成され得る。支持ピン15xは、加熱ステーション1の加熱室10内に配置された時に金属シートブランク50を支持するように構成される。また、支持ピン15xは、下側マスク14が上側マスク13に向かって移動する際に金属シートブランク50を容易に受け取って加熱中に支持し得るように、金属シートブランク50を支持するように構成され得る。
【0057】
図4aは、本発明の実施形態に係る構成1の部品14の概略図を示す。部品14、すなわち下側マスク14は、上記から分かるような典型的な形状で示される。下側マスク14には、下側マスク14の上面である主面14aが設けられる。また、下側マスク14は、少なくとも1つの開口部または凹部14bを備えてよく、それを通って、加熱室10内に挿入された金属シートブランク50に加熱放射が到達し得る。下側マスク14には、支持ピン15xが貫通し得る支持ピン開口部14eが設けられ得る。支持ピン開口部14eは、支持ピン15xを緊密に受容し、これらが支持ピン開口部14eを出入りすることを可能にするようなサイズおよび形状に形成され得る。1つの典型的な実施形態において、支持ピン開口部14eは、円形開口部である。また、支持ピン15xは、(破線で示す)支持構造15上に提供され得る。支持構造15は、支持ピン15xを備えてよい。
【0058】
図4bは、本発明の実施形態に係る構成1の部品13を示す。部品13、すなわち上側マスク13は、下記から分かるような典型的な形状で示される。上側マスク13には、上側マスク13の底面である主面13aが設けられる。また、上側マスク13は、少なくとも1つの開口部または凹部13b、13cを備え、それを通って、加熱室10内に挿入された金属シートブランク50に加熱放射が到達し得る。また、上側マスク13は、加熱中に金属シートブランク50(不図示)に当接するように上側マスク13の主面に沿って配置された間隔突起部13dを備えてよい。同様に、上側マスク13には、支持ピン15xが貫通し得る支持ピン開口部13eも設けられ得る。
【0059】
また、上側および下側マスク13、14は、加熱ステーション1から交換可能であってよい。したがって、加熱ステーション1は、材料、サイズ、および/または形状が異なり、かつ加熱中に加熱放射が金属シートブランクに到達することを可能にする開口部または凹部13b、13c、14b、14cに関して異なる上側および下側マスク13、14のセットの集合から選択された上側および下側マスク13、14のセットで構成され得る。支持構造15も同様に交換可能であってよい。
【0060】
図5a~5gは、本発明の1つの実施形態に係る構成1のブロック図を示す。構成1、すなわち加熱ステーション1は、側面から見た状態で示される。また、図5a~5gは、上側および下側マスク13、14のセットがどのように新たなセットの上側および下側マスク13’、14’に交換されるかを示す。新たなセットの上側および下側マスク13’、14’は、通常、新たな種類のプレス硬化部品50’が製造される場合に必要となる。
【0061】
図5aは、下側マスク14が第1の位置にあり、上側マスク13が係止位置にある時の加熱ステーション1を示す。上側マスク13は、係止手段13xによって所定の位置に係止される。下側マスク14は、図5bに示すように、上側マスク13に接触するように上側マスク13に向かって上方に移動する。その後、上側マスク13は、図5cに示すように、係止手段13xから解放される。この時、上側マスク13は、下側マスク14によって支持される。図5dに示すように、下側マスク14は下方に移動し、上側マスク13を解放位置に運ぶ。支持ピン15xは、1つの実施形態において、下側マスク14および上側マスク13の両方の支持ピン開口部14e、13eを通って突出するように構成される。上側マスク13、下側マスク14、および支持構造15は全て、図5eに示すように、加熱ステーション1の加熱室10から取り出され得る。加熱室10の内部は、ハッチによってアクセスされ得る。ハッチは、上側マスク13、下側マスク14、および支持構造15が取り出され得るように開かれ得る。その後、ハッチは、加熱室10内の熱を保持するために閉じられ得る。上側マスク13、下側マスク14、および支持構造15は、マスク取扱い装置(不図示)を用いて取り出され得る。マスク取扱い装置は、上側マスク13、下側マスク14、および支持構造15を加熱室10から取り出すように構成され得る。マスク取扱い装置は、上側マスク13、下側マスク14、および支持構造15を取り出し、格納ユニット内に載置するように構成され得る。また、マスク取扱い装置は、場合によっては格納ユニットから図5fに示すような新たなセットの上側マスク13’、下側マスク14’、および支持構造15’を取り出すように構成され得る。新たなセットの上側マスク13’、下側マスク14’、および支持構造15’は、加熱ステーション1の加熱室10内に配置され、下側マスク14’は、上側マスク13’を担持して上方に移動する。上側マスク13’は、係止手段13xを用いて所定の位置に固定される。その後、下側マスク14’は、再び第1の位置に移動する。上側マスク13、13’を保持する係止手段13xは、上側マスクが下側マスクによって押し上げられると上側マスク13を自動的に解放するように構成され得る。係止手段13xは更に、上側マスク13’が係止手段13xとの接触に至ると、上側マスク13’を自動的に固定し直すように構成され得る。
【0062】
また、図5a~5gは更に、マスク支持構成40を例示する。マスク支持構成40は、支持構造15と、第1の位置と第2の位置との間で支持構造15に対して移動可能であるように配置されるように構成された下側マスク14とを備える。また、マスク支持構成40は、上側マスク13を備えてよい。マスク支持構成40は、異なるセットの上側および下側マスク13’、14’を有するマスク支持構成40’に交換可能であってよい。
【0063】
図6は、本発明の実施形態に係る方法100のフローチャートを示す。本発明の第1の態様の任意の実施形態に係る加熱ステーション1において金属シートブランク50を加熱する方法100は、加熱ステーション1の加熱室10内に金属シートブランク50を配置するステップ101を備える。方法100は、加熱室10内に配置された下側マスク14の主面14aから突出する支持突起部14d上で金属シートブランク50を支持するステップ102を備える。方法100は、加熱室10内の加熱要素11、12からの放射加熱を用いて金属シートブランク50を加熱するステップ104を備える。方法100は、加熱室10内に配置された下側マスク14および上側マスク13を用いて放射加熱から金属シートブランク50の少なくとも一部を遮蔽するステップ105を備え、下側および上側マスク14、13は、金属シートブランク50のそれぞれ両側に配置されている。また、方法100は、下側マスク14を第1の位置から上側マスク13に向かって第2の位置に移動するステップ103を備えてよい。下側マスク14は、第1の位置において、加熱室10の底面付近、好適には、金属シートブランク50が加熱室10内に容易に挿入され得る位置にあってよい。第2の位置において、下側マスク14は、加熱室内に挿入された金属シートブランク50を、加熱中、支持突起部14dを介して支持するように配置され得る。下側マスク14を移動するステップ103は、金属シートブランク50を挿入位置から加熱位置に移動することを含んでよい。また、方法100は、上側および/または下側マスク13、14を冷却するステップ106を備えてよい。上側および/または下側マスク13、14を冷却するステップ106は、ステップ101の前、ステップ105の後、またはその間のどこかで生じ得る。冷却するステップ106は、加熱するステップ104の間中、継続的に生じてよい。
【0064】
図7は、本発明の実施形態に係る方法100’のフローチャートを示す。方法100’は、たとえば多層炉、室炉、またはローラハース炉など、何らかの種類の炉20内に金属シートブランクを配置するステップ107を備えてよい。方法100’は、金属シートブランク50を炉20の加熱室22内で加熱するステップ108を備えてよい。金属シートブランク50は、金属シートブランク50の材料がオーステナイト相に達するように加熱され得る。また、金属シートブランク50がコーティング材料でコーティングされている場合、コーティングの化学的変換は、加熱するステップ108中に開始されてよく、必ずしも完了しなくてよい。方法100’は、金属シートブランク50を炉20から取り出すステップ109を備えてよい。これは、たとえば、フォーク型載荷装置を用いて行われ得る。あるいは、炉20は、オーステナイト化温度まで加熱されると、金属シートブランク50を容易にピックアップされ得る位置、たとえばフォーク型載荷装置に吐き出す排出装置を備えてよい。その後、オーステナイト化金属シートブランク50は、加熱ステーション1に移送される。方法100’は、方法100のステップ101、102、103、104、105、106を備えてよい。金属シートブランク50が加熱ステーション1内に移送される時、加熱室ドアが開き、フォーク載荷装置は、加熱ステーション1内に水平に移動し、その後、金属シートブランク50を加熱ステーション1の支持ピン15xの上に降ろす。その後、フォーク載荷装置は加熱ステーション1から引き出され、金属シートブランク50が加熱室10内に残されたままドアが閉じられる。この時、下側マスク14は、金属シートブランク50に向かって上方に移動する(103)。下側マスク14は、金属シートブランク50と相互作用し、金属シートブランク50を支持ピン15xから持ち上げる。この時、下側マスク14は、下側マスク14が所定の位置で金属シートブランク50を受け取るように構成された支持突起部14dを介して金属シートブランク50を担持している。所定の位置は、たとえば水平方向であってよい。下側マスク14および金属シートブランク50は共に、上側マスク13に向かって上昇動作を続ける。下側マスク14が、上側マスク13との間の所定の位置に金属シートブランクを維持したままで上側マスク13に隣接した位置に到達すると、加熱するステップ104が開始される。金属シートブランク50が下側加熱要素11および上側加熱要素12からの放射加熱に晒される領域(複数も可)は、その領域(複数も可)の温度(複数も可)がオーステナイトレベルに保たれるように加熱され得る。その後、マスクにカバーされた領域(複数も可)は、緩慢に冷却し始めてよい。加熱するステップ104は、カバーされた領域(複数も可)がオーステナイトレベルとマルテンサイトレベルとの間の温度まで冷却されると完了してよい。その後、下側マスク14は、第2の位置から第1の位置への移動を開始し、金属シートブランク50を下方に運んでよい。金属シートブランク50は、支持ピン15xに受け取られ、下側マスク14は、金属シートブランク50が加熱室10から容易に取出し可能である第1の位置まで完全に移動する。加熱室10のドアが開かれ、次にフォーク載荷装置が加熱ステーション1から金属シートブランク50を取り出してよい。方法100’は、金属シートブランクを処理ユニット30内に配置するステップ110を更に備えてよい。これは、たとえば、同様にフォーク載荷装置によって実行され得る。また、方法100’は、金属シートブランクがプレス硬化される処理ステップ111を備えてよい。これは、たとえば、金属シートブランクに力Fを加える処理ユニット30のツール31によって実行され得る。また、方法100’は、金属シートブランク50を冷却するステップ112を備えてよい。ツール31が閉じ、それによって金属シートブランク50を再形成する時、金属シートブランク50は、マルテンサイトレベル未満の温度まで冷却され得る。この冷却112は、急速に行われ得る。したがって、方法100’によって、金属シートブランク50からプレス硬化部品50’が製造され得る。
【0065】
図8は、本発明の1つの実施形態に係る方法のフローチャートを示す。方法100”は、マスクセットを交換する手順に関する。方法100”の任意のステップは、方法100または方法100’のいずれかに組み込まれ得る。方法100”は、加熱ステーション1の加熱力をオフにするステップを備えてよい。方法100”は、加熱ステーション1の外側でマスク取扱いユニットを準備するステップを備えてよい。方法100”は、下側マスク14を、上側マスク13に接触するように上側マスク13に向かって移動するステップ113を備えてよい。方法100”は、上側マスク13を固定点から解放するステップ114を備えてよい。方法100”は、下側マスク14を用いて上側マスク13を支持するステップ115を備えてよい。方法100”は、上側マスク13を支持する下側マスク14を解放位置に移動するステップ116を備えてよい。解放位置は、下側マスク14の第1の位置であってよい。方法100”は、上側または下側マスク13、14のいずれか、またはその両方に直接または間接的に接続された冷却水ホースを取り外すステップを備えてよい。方法100”は、加熱室10を開くステップを備えてよい。方法100”は、上側マスク13を支持する下側マスク14を加熱室10から取り出すステップ117を備えてよい。方法100”は、上側マスク13を支持する下側マスク14が加熱室10から取り出された後、加熱室10を閉じるステップを備えてよい。これにより、加熱室10内の熱の保存がもたらされ得る。方法100”は、取り出された上側および下側マスク13、14のセットを保管するステップを備えてよい。方法100”は、加熱室10を開くステップを備えてよい。方法100”は、新たなセットの上側および下側マスク13’、14’を挿入位置において加熱室10内に挿入するステップ118を備えてよい。また、上側および下側マスク13、14の古いセットと共に支持構造15も取り出され得る。新たなセットの上側および下側マスク13’、14’に適合する支持構造15’が、上側および下側マスク13’、14’と共に挿入され得る。上側および下側マスク13’、14’は、上側マスク13’が下側マスク14’によって支持されるように挿入され得る。方法100”は、新たなセットの上側および下側マスク13’、14’、および任意選択的に支持構造15が加熱室10内に挿入されると、加熱室10を閉じるステップを備えてよい。方法100”は、上側マスク13’を支持する下側マスク14’を挿入位置から上方に移動するステップ118を備えてよい。方法100”は、上側マスク13’を固定点に係止するステップ119を備えてよい。方法100”は、下側マスク13’を第1の位置、すなわち受取り位置に移動するステップ120を備えてよい。方法100”を行うことにより、加熱ステーションは、異なるプレス硬化部品50’を製造するために有利に再構成され得る。
【0066】
図9は、本発明の実施形態に係る方法プロセス中の金属シートブランクの内部構造の概略図を示す。図において、少なくとも1つの非露出ゾーン50aの外側にある、ブランク50の少なくとも1つの露出ゾーン50b、50cの温度、およびブランク50の少なくとも1つの非露出ゾーン50aの温度が示される。第1段階108において、金属シートブランク50全体が炉20内でオーステナイト相まで加熱される。これにより、金属シートブランク50は、ブランクのオーステナイト化温度以上の温度まで加熱され、場合によっては、金属シートブランク50は、一定の時間この温度で維持される。第2段階104において、金属シートブランク50は、加熱ステーション1に移動され、ここで少なくとも1つの露出ゾーン50b、50cは、オーステナイト相に保たれる温度に維持される。そのような温度は、オーステナイト化温度以下またはオーステナイト化温度以上であってよい。少なくとも1つの非露出ゾーン50aの温度が下がり、フェライト、パーライト、およびベイナイト相に達する。第3段階111において、金属シートブランク50は、処理ユニット30内で形成および冷却される。少なくとも1つの露出ゾーン50b、50cは、オーステナイト相から急速に冷却されると、マルテンサイト相に達する。少なくとも1つの非露出ゾーン50aは、冷却されると、事前に冷却された時に達したパーライト相に留まる。しかし、少なくとも1つの露出ゾーン50b、50cは、冷却される前、フェライト、パーライト、ベイナイト、および/またはオーステナイトの混合物を有してよい。冷却前の少なくとも1つの露出ゾーン50b、50cにおける相組成に依存して、内部構造および材料強度は異なるものになる。
【0067】
本明細書および図面において、本発明の好適な実施形態および例が開示され、特定の用語が使用されたが、それらは、限定を目的としたものではなく一般的かつ説明的な意味で用いられており、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載されるものとする。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】