IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モデルナ セラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-544416in vitro転写の下流生成物を精製するプロセス
<>
  • 特表-in  vitro転写の下流生成物を精製するプロセス 図1
  • 特表-in  vitro転写の下流生成物を精製するプロセス 図2
  • 特表-in  vitro転写の下流生成物を精製するプロセス 図3
  • 特表-in  vitro転写の下流生成物を精製するプロセス 図4
  • 特表-in  vitro転写の下流生成物を精製するプロセス 図5
  • 特表-in  vitro転写の下流生成物を精製するプロセス 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-18
(54)【発明の名称】in vitro転写の下流生成物を精製するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20221011BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
C07H21/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509126
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 US2020046069
(87)【国際公開番号】W WO2021030533
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/886,840
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513084469
【氏名又は名称】モデルナティエックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ModernaTX,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【弁理士】
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・シャマシュキン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・スコット
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ウォジェハウスキー
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057BB01
4C057BB02
4C057DD01
4C057MM02
(57)【要約】
本明細書では、いくつかの実施形態において、変性オリゴdTクロマトグラフィーを用いて低塩分RNA組成物を精製する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下、
(a)リボ核酸(RNA)を含む混合物を脱塩して、20mM未満の塩濃度を有する低塩分RNA組成物を産生することと、
(b)前記低塩分RNA組成物を60℃より高い温度に加熱して、変性RNAを産生することと、
(c)前記変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合して、変性RNA及び少なくとも50mMの濃度の塩を含む組成物を産生することと、
(d)(c)で産生された前記組成物の前記変性RNAを40℃未満の温度でオリゴdT樹脂に結合させることと、
(e)前記オリゴdT樹脂からRNAを溶出させることと、
を含む、方法。
【請求項2】
以下、
(a)リボ核酸(RNA)を含む混合物を脱塩して、2mS/cm未満の導電率を有する低塩分RNA組成物を産生することと、
(b)前記低塩分RNA組成物を60℃より高い温度に加熱して、変性RNAを産生することと、
(c)前記変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合して、変性RNA及び少なくとも5mS/cmの導電率を含む組成物を産生することと、
(d)(c)で産生された前記組成物の前記変性RNAを40℃未満の温度でオリゴdT樹脂に結合させることと、
(e)前記オリゴdT樹脂からRNAを溶出させることと、
を含む、方法。
【請求項3】
(a)の前記混合物はin vitro転写反応物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(a)及び/または(c)の前記塩はNaClを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記高塩分緩衝液は、100mM~1000mMの塩濃度及び/または5mS/cm~85mS/cmの導電率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脱塩は、前記RNAを疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させることと、前記HIC樹脂から前記RNAを溶出させて、前記低塩分RNA組成物を産生することと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記低塩分RNA組成物は、1~20mMの塩濃度及び/または0.1~2mS/cmの導電率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記HIC樹脂は、2000オングストロームの細孔を有する(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)R150ビーズ樹脂である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
(b)の前記加熱は1分未満で行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(b)の前記加熱は少なくとも10秒間で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(b)の前記加熱は、10~60、10~30、20~40、または30~60秒間で行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(b)の前記加熱は60℃~90℃の温度で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記低塩分RNA組成物は、変性剤分子の存在下で加熱される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記変性剤分子は、ジメチルスルホキシド、グアニジン、または尿素である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記変性RNAを含む組成物を60℃未満の温度にインライン冷却することを、(b)と(c)との間にさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記変性RNAを含む組成物を40℃未満の温度にインライン冷却することを、(b)と(c)との間にさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記変性RNAを含む組成物をブレークタンクに保管することを、(b)と(c)との間にさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記変性RNAを含む組成物は、2~8℃で1~5日間、前記ブレークタンクに保管される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(c)の前記インライン混合は1分未満で行われる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(c)で産生された前記変性RNAを含む組成物は、50~500mMの塩濃度及び/または5~85mS/cmの導電率を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(c)の前記組成物における全RNAのうちの少なくとも90%が、変性RNAを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
(d)の前記結合は4℃~25℃の温度で行われる、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
(d)の前記結合は20分未満で行われる、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記オリゴdT樹脂は、ポリdTで誘導体化された、2000オングストロームの細孔を有する(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)ビーズ樹脂である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記オリゴdT樹脂から溶出された前記RNAは、ポリA鎖含有mRNAを少なくとも90%含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記オリゴdT樹脂から溶出された前記RNAは、ポリA鎖含有mRNAを少なくとも95%含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記インライン混合は、前記混合物を前記オリゴdT樹脂上に結合させることと並行して行われる、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記RNAの二次構造が、(b)の前後で、紫外線検出を用いてモニターされる、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
(b)中の前記RNAの変性が、紫外線検出を用いてモニターされる、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
以下、
高塩分緩衝液を、変性リボ核酸(RNA)を含む低塩分変性RNA組成物とインラインで混合して、変性RNAを含む高塩分組成物を産生することと、
前記変性RNAをオリゴdT樹脂に結合させることと、
を含む方法。
【請求項31】
前記インライン混合は、前記変性RNAを前記オリゴdT樹脂に結合させる前に、1分未満で行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記高塩分緩衝液は、少なくとも100mMの塩濃度及び/または少なくとも10mS/cmの導電性を有する、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記高塩分緩衝液は、100mM~1000mMの塩濃度であるNaClを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記低塩分変性RNA組成物は、20mM未満の塩濃度及び/または2mS/cm未満を有する、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記低塩分変性RNA組成物は、1~20mMの塩濃度及び/または0.1~2mS/cmの導電率を有する、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記高塩分組成物は、50~500mMの塩濃度及び/または5~85mS/cmの導電率を有する、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記高塩分組成物中の前記変性RNAは、前記高塩分組成物における全RNAのうちの少なくとも90%を占める、請求項30~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記結合は20分未満で行われる、請求項30~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記結合は40℃未満の温度で行われる、請求項30~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記結合は4℃~25℃の温度で行われる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記オリゴdT樹脂は、ポリdTで誘導体化された、2000オングストロームの細孔を有する(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)ビーズ樹脂である、請求項30~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記オリゴdT樹脂からRNAを低塩分緩衝液中で溶出させることをさらに含む、請求項30~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記オリゴdT樹脂から溶出された前記RNAは、ポリA鎖含有mRNAを少なくとも90%含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記オリゴdT樹脂から溶出された前記RNAは、ポリA鎖含有mRNAを少なくとも95%含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
高塩分緩衝液とのインライン混合の前に、RNA及び20mM未満の塩濃度を含む組成物を、60℃より高い温度に加熱して、変性RNA組成物を産生すること、をさらに含む、請求項30~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
高塩分緩衝液とのインライン混合の前に、RNAを含み、2mS/cm未満の導電率を有する組成物を、60℃より高い温度に加熱して、変性RNA組成物を産生すること、をさらに含む、請求項30~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記加熱は1分未満で行われる、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記加熱は少なくとも10秒間で行われる、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記加熱は、10~60、10~30、20~40、または30~60秒間で行われる、請求項45~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記加熱は60℃~90℃の温度で行われる、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
高塩分緩衝液とのインライン混合の前に、RNAを含む混合物を脱塩して、20mM未満の塩濃度を有するRNA組成物を産生することと、
前記20mM未満の塩濃度を有するRNA組成物を、60℃より高い温度に加熱して、前記変性RNA組成物を産生することと、
をさらに含む、請求項30~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記混合物はin vitro転写反応物である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記脱塩は、前記RNAを疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させることと、前記HIC樹脂から前記RNAを溶出させて、RNA組成物を産生することと、を含む、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記HIC樹脂は、2000オングストロームの細孔を有する(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)R150ビーズ樹脂である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記RNAの二次構造が、前記組成物の前記加熱中に、紫外線検出を用いてモニターされる、請求項30~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記RNAの変性が、前記組成物の前記加熱中に、紫外線検出を用いてモニターされる、請求項30~55のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2019年8月14日に出願された米国仮出願第62/886,840号の利益を主張するものであり、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
in vitro転写(IVT)では、バクテリオファージDNA依存性リボ核酸(RNA)ポリメラーゼ(例えば、SP6、T3及びT7)を用いて、鋳型指向性メッセンジャーRNA(mRNA)転写物を合成する。IVT反応における問題により、例えば、完全に失敗することがある(例えば、転写物が生成しない)か、または転写物のサイズが不正確(例えば、予想よりも短いもしくは長い)になることがある。IVT反応に関連する特定の問題としては、例えば、反応中に産生される、アボーティブ(切断型)転写物、ランオン転写物、ポリA鎖バリアント/3´不均質性(ポリA鎖含有mRNA(poly-A tailed mRNA)の割合の低さを含む)、変異転写物、及び/または二本鎖夾雑物が挙げられる。IVT反応に起因するこれらの問題に対応するための機序の1つは、反応完了後にmRNA生成物を精製することである。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、いくつかの実施形態において、リボ核酸(RNA)、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)等を、in vitro転写(IVT)反応物から高収率かつ高純度で単離する方法を提供する。これまでのmRNA精製は、周囲オリゴdT(ambient oligo-dT)を単独で、または逆相HPLCと組み合わせて用いることを中心としてきた。しかしながら、これらの精製方法では、鎖含有mRNA純度の割合が低くなるか(周囲オリゴdT単独)、または、大規模の場合コストが法外に高くなる(周囲オリゴdTと逆相HPLCとの併用)。そのため、新規なmRNA精製方法が必要とされている。驚くべきことに、本明細書の研究は、高塩分緩衝液と、変性RNAを含む低塩分組成物をインライン混合すると、ポリA鎖を含有するmRNAの相対的な収率が著しく向上することを示している。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法を用いて単離されたmRNAのうちの少なくとも95%がポリA鎖を有する。つまり、ポリA鎖含有RNA種のこの百分率は、逆相クロマトグラフィー等の従来のRNA精製方法を用いて精製された百分率よりも高い。理論に束縛されるものではないが、高塩分緩衝液との急速なインライン混合の前にRNAを変性させることで、RNAに付随する不純物の除去が容易になり、RNAがオリゴdT樹脂に高い選択性をもって結合しやすくなる、と考えられている。さらに、本明細書で提供される方法は、いくつかの実施形態において、容易に拡張可能であり(例えば、少なくとも1リットルのカラム体積を有するカラムを用いた精製)、かつ費用対効果が高い。
【0004】
したがって、本開示の態様は、変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合して、変性RNA及び塩(例えば、少なくとも50mMの濃度)を含む組成物を産生することと、組成物の変性RNAを(例えば、40℃未満の温度で)オリゴdT樹脂に結合させることと、オリゴdT樹脂からRNAを溶出させる(例えば、そのうちの少なくとも95%はポリA鎖を有するmRNAである)ことと、を含む方法を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、本方法は、(a)RNAを含む混合物(例えば、IVT反応混合物)を脱塩して、20mM未満の塩濃度を有する低塩分RNA組成物を産生することと、(b)低塩分RNA組成物を60℃より高い温度に加熱して、変性RNAを産生することと、(c)変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合して、変性RNA及び少なくとも50mMの濃度の塩を含む組成物を産生することと、(d)(c)で産生された組成物の変性RNAを40℃未満の温度でオリゴdT樹脂に結合させることと、(e)オリゴdT樹脂からRNAを溶出させることと、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、本方法は、(a)RNAを含む混合物(例えば、IVT反応混合物)を脱塩して、2mS/cm未満の導電率を有する低塩分RNA組成物を産生することと、(b)低塩分RNA組成物を60℃より高い温度に加熱して、変性RNAを産生することと、(c)変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合して、変性RNA及び少なくとも5mS/cmの導電率を含む組成物を産生することと、(d)(c)で産生された組成物の変性RNAを40℃未満の温度でオリゴdT樹脂に結合させることと、(e)オリゴdT樹脂からRNAを溶出させることと、を含む。いくつかの実施形態では、RNAを含む混合物は、希釈されたin vitro転写(IVT)反応物である。RNAを含む他の混合物を使用してもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液の塩は、塩化ナトリウム(NaCl)を含む。他の塩を使用してもよい。いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液は、100mM~1000mMの塩濃度を有する。例えば、高塩分緩衝液は、50mM~450mM、50mM~400mM、50mM~350mM、50mM~300mM、50mM~250mM、50mM~200mM、50mM~150mM、50mM~100mM、100mM~500mM、100mM~450mM、100mM~400mM、100mM~350mM、100mM~300mM、100mM~250mM、100mM~200mM、100mM~150mM、150mM~500mM、150mM~450mM、150mM~400mM、150mM~350mM、150mM~300mM、150mM~250mM、150mM~200mM、200mM~500mM、200mM~450mM、200mM~400mM、200mM~350mM、200mM~300mM、または200mM~250mMの塩濃度を有し得る。いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液は、5mS/cm~85mS/cmの導電率を有する。例えば、高塩分緩衝液は、5mS/cm~10mS/cm、5mS/cm~15mS/cm、5mS/cm~25mS/cm、5mS/cm~35mS/cm、5mS/cm~50mS/cm、5mS/cm~60mS/cm、5mS/cm~70mS/cm、10mS/cm~20mS/cm、15mS/cm~25mS/cm、20mS/cm~30mS/cm、25mS/cm~35mS/cm、30mS/cm~40mS/cm、35mS/cm~45mS/cm、40mS/cm~50mS/cm、45mS/cm~55mS/cm、50mS/cm~60mS/cm、55mS/cm~65mS/cm、60mS/cm~70mS/cm、65mS/cm~75mS/cm、70mS/cm~80mS/cm、または75mS/cm~85mS/cmの導電率を有し得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、脱塩は、粗混合物からのRNAを疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させることと、HIC樹脂からRNAを低塩分緩衝液で溶出させて、低塩分RNA組成物を産生することと、を含む。いくつかの実施形態では、HIC樹脂は、(例えば、2000オングストロームの細孔を有する)(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)R150ビーズ樹脂である。
【0009】
いくつかの実施形態では、加熱工程(複数可)は、1分以下、または1分未満(例えば、10~60秒、10~50秒、10~40秒、10~30秒、10~20秒、20~60秒、20~50秒、20~40秒、20~30秒、30~60秒、30~50秒、30~40秒、40~60秒、40~50秒、または50~60秒)で行われる(実装される)。いくつかの実施形態では、加熱工程(複数可)は、少なくとも10秒間行われる(実装される)。
【0010】
いくつかの実施形態では、加熱工程(複数可)は、60℃~90℃(例えば、60℃~80℃、60℃~70℃、65℃~90℃、65℃~80℃、65℃~70℃、70℃~90℃、70℃~80℃、75℃~90℃、75℃~80℃、80℃~90℃、または85℃~90℃)の温度で行われる(実装される)。
【0011】
いくつかの実施形態では、RNAの二次構造が、加熱工程(例えば、RNAを変性させるように意図された加熱工程)の間に、例えば、紫外線検出を用いてモニターされる。いくつかの実施形態では、RNAの変性が、加熱工程(例えば、RNAを変性させるように意図された加熱工程)の間に、例えば、紫外線検出を用いてモニターされる。いくつかの実施形態では、RNAの変性は、加熱工程(例えば、RNAを変性させるように意図された加熱工程)の前後に、RNAのハイパークロミティーの紫外線測定値を収集することによりモニターされる。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物中の全RNAのうちの少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)が、変性RNAを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、ジメチルスルホキシド、グアニジン、または尿素等の変性剤分子の存在下で加熱される。
【0014】
いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物と高塩分緩衝液とのインライン混合は、1分以下、または1分未満(例えば、10~60秒、10~50秒、10~40秒、10~30秒、10~20秒、20~60秒、20~50秒、20~40秒、20~30秒、30~60秒、30~50秒、30~40秒、40~60秒、40~50秒、または50~60秒)で行われる(実装される)。いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物と高塩分緩衝液とのインライン混合は、dT樹脂と接触させる前に行われる。いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物と高塩分緩衝液とのインライン混合は、組成物をdT樹脂と接触させることと並行して(例えば、同時に)行われる。理論に束縛されるものではないが、短時間でのインライン混合により、dT樹脂に接触させる前に変性RNAが折り畳まれること、及び/または不純物と結びつくことが妨げられると考えられている。
【0015】
いくつかの実施形態では、インライン混合は、変性RNAを含む組成物を、60℃未満(例えば、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃、15℃、10℃、または5℃未満)の温度にインライン冷却することを含む。いくつかの実施形態では、インライン混合は、変性RNAを含む組成物を、60℃未満かつ4℃超の温度にインライン冷却することを含む。いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物は、変性後にブレークタンクに保管される。いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物は、変性及びインライン冷却の後、ブレークタンクに保管される。いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物は、2~8℃(例えば、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、または8℃)で1~5日間(例えば、1、2、3、4または5日間)、ブレークタンクに保管される。
【0016】
いくつかの実施形態では、組成物の変性RNAのオリゴdT樹脂への結合は、4℃~25℃(例えば、4℃~20℃、4℃~15℃、または4℃~10℃)の温度で行われる(実装される)。
【0017】
いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂は、(例えば、ポリdTで誘導体化された、例えば、2000オングストロームの細孔を有する)(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)ビーズ樹脂である。
【0018】
いくつかの実施形態では、組成物の変性RNAのオリゴdT樹脂への結合は、20分以下、または20分未満(例えば、5分~20分、5分~15分、5分~10分、10分~20分、10分~15分、または15分~20分)で行われる(実装される)。
【0019】
いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂から溶出されたRNAは、少なくとも90%のポリA鎖含有mRNAを含む。例えば、オリゴdT樹脂から溶出されたRNAは、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のポリA鎖含有mRNAを含み得る。いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂から溶出されたRNAは、少なくとも95%のポリA鎖含有mRNAを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】変性オリゴdT樹脂を用いてmRNAを精製する方法の例を概略的に表している。
図2】塩濃度が異なる状況における異なる長さのRNA分子2種の融解曲線を示すグラフを表している。
図3】変性dTクロマトグラフィーを用いてRNAを精製する装置の例を概略的に表している。
図4】RNA純度に対する種々のIVT反応物精製ストラテジーの効果を、ポリA鎖含有mRNAの割合で評価して示すグラフを表している。
図5】IVT反応により産生されたRNAを精製するプロセスの例を概略的に表している。
図6】疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いて精製されたmRNAの代表的なクロマトグラムを表している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
in vitro転写(IVT)反応は、RNA(例えば、mRNA)を産生するための強力なプラットフォームである。それにもかかわらず、IVT反応では、所望のRNA生成物(複数可)が産生されるほかに、著しいレベルで不純物も生成する。それらの不純物が一因となり、所望のRNA生成物(複数可)の精製が課題となることが明らかにされている。本明細書において、いくつかの実施形態では、大規模IVT反応からRNA不純物を除去する、効率的かつ費用対効果の高い方法が提供される。これらの方法は、RNA変性を伴う、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)等の脱塩プロセスを含むものであり、高純度のmRNA個体群を高収率で単離することを可能にする。予想外にも、本方法に組み込まれたインライン(連続混和)混合プロセスにより、変性mRNAのオリゴdT樹脂への高親和性結合がさらに促進された。変性RNAと高塩分溶液の迅速な混合を可能にするインライン混合プロセスは、変性RNAが不純物と結びつく(例えば、ハイブリダイズする)のを防ぐのに不可欠である一方、変性RNA組成物が、オリゴdT樹脂への変性RNAの結合を最大化するのに最適な高塩濃度を含むことを確実にするものでもあることがわかった。
【0022】
したがって、本明細書に記載されているように、本開示は、RNA(例えば、IVT反応によって産生されたmRNA)を含む混合物を精製する方法を提供する。いくつかの態様において、本方法は、変性リボ核酸(RNA)を含む低塩分変性RNA組成物と高塩分緩衝液とをインライン混合して、変性RNAを含む高塩分組成物を産生することと、その後に(例えば、直ちに)変性RNAをオリゴdT樹脂に結合させることと、を含む。他の態様では、本方法は、(a)リボ核酸(RNA)を含む混合物を脱塩して、20mM未満の塩濃度を有する低塩分RNA組成物を産生することと、(b)低塩分RNA組成物を60℃より高い温度に加熱して、変性RNAを産生することと、(c)変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合して、変性RNA及び少なくとも50mMの濃度の塩を含む組成物を産生することと、(d)(c)で産生された組成物の変性RNAを40℃未満の温度でオリゴdT樹脂に結合させることと、(e)オリゴdT樹脂からRNAを溶出させることと、を含む。
【0023】
in vitro転写(IVT)反応混合物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて精製または単離される混合物またはRNA組成物は、in vitro転写(IVT)反応によって産生される。いくつかの実施形態では、IVT反応は、プロモーターを含有する直鎖鋳型DNA、ヌクレオシド三リン酸、ジチオスレイトール(DTT)及びマグネシウムイオンを含む緩衝系、ならびにRNAポリメラーゼを必要とする。転写反応に用いられる厳密な条件は、特定の用途に必要なRNAの量に依存する。IVT反応は、鋳型DNAを、RNAポリメラーゼならびにGTP、ATP、CTP、及びUTPを含むヌクレオシド三リン酸(またはヌクレオチドアナログ)とともに転写緩衝液中でインキュベートすることにより実施され得る。いくつかの実施形態では、IVT反応で使用するためのRNAポリメラーゼは、「RNA Polymerase Variants」と題されたWO2019/036682に記載されている通りである。いくつかの実施形態では、IVT反応は、大量流加IVT反応、連続流加IVT反応、または回分IVT反応である。いくつかの実施形態では、5′キャップ構造を有するRNA転写物が、この反応から産生される。
【0024】
鋳型DNAは、目的のポリペプチド(例えば、抗原ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、鋳型DNAは、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されるRNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーター)を含む。いくつかの実施形態では、鋳型DNAは、RNAポリメラーゼにより転写されることがある。鋳型DNAは、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3′末端に、ポリアデニル(ポリA)鎖をコードするヌクレオチド配列も含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、RNAはIVT反応の生成物である。いくつかの実施形態では、RNAは、ポリA鎖に連結された、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、メッセンジャーRNA(mRNA)である。
【0026】
「ポリA鎖」とは、目的のポリペプチドをコードする領域の下流(例えば、3′非翻訳領域の直下)にある、複数の連続したアデノシン一リン酸を含有するRNA領域である。ポリA鎖は、10~300のアデノシン一リン酸を含有し得る。例えば、ポリA鎖は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または300のアデノシン一リン酸を含有し得る。いくつかの実施形態では、ポリA鎖は、50~250のアデノシン一リン酸を含有する。いくつかの実施形態では、ポリA鎖は、10未満(例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9)のアデノシン一リン酸を含有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、鎖含有RNAの割合(ポリA鎖を含むRNA転写物の割合)は、IVT反応後に50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超である。本明細書で使用する場合、鎖含有RNAの割合とは、一般に、3′ポリA鎖を含有する転写RNA生成物の相対的な存在量を指す。いくつかの実施形態では、鎖含有RNAの割合(3′ポリA鎖を含む転写RNA生成物の割合)は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%超である。いくつかの実施形態では、鎖含有RNAの割合は、90%、95%、97%、または99%超である。いくつかの実施形態では、鎖含有RNAの割合(3′ポリA鎖を含む転写RNA生成物の割合)は、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、25~75%、30~50%、40~60%、50~70%、45~60%、55~70%、60~80%、60~100%、75~100%、50~95%、75~95%、80~100%、80~90%、90~95%、95~100%、90~99%、または95~99%である。
【0028】
いくつかの実施形態では、RNAは化学修飾されてなく、アデノシン、グアノシン、シチジン及びウリジンからなる標準的リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、標準的ヌクレオシド残基(例えば、A、G、C、またはU)を含む。いくつかの実施形態では、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、DNA中に存在するもののような標準的デオキシリボヌクレオシド(例えば、dA、dG、dC、またはdT)を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、RNAは、修飾mRNA(mmRNA)であり、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、用語「修飾」及び「修飾された」は、リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドのアデノシン(A)、グアノシン(G)、ウリジン(U)、チミジン(T)、またはシチジン(C)に関する、それらの核酸塩基の位置、パターン、割合、または個体群のうちの少なくとも1つにおける修飾を指す。RNAは自然発生、非自然発生である修飾を含み得るか、または、RNAは自然発生修飾と非自然発生修飾との組み合わせを含み得る。RNAは、例えば、糖、核酸塩基、またはヌクレオシド間結合(例えば、連結するリン酸への、リン酸ジエステル結合への、もしくはリン酸ジエステル骨格への)における任意の有用な修飾を含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、RNAは、修飾ヌクレオシド及び/またはヌクレオチドを含む。「ヌクレオシド」は、有機塩基(例えば、プリンもしくはピリミジン)もしくはその誘導体(本明細書では「核酸塩基」とも呼ばれる)と組み合わせた糖分子(例えば、ペントースもしくはリボース)またはその誘導体を含有する化合物を指す。「ヌクレオチド」は、リン酸基を含むヌクレオシドを指す。いくつかの実施形態では、RNAの修飾核酸塩基は、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、N1-エチルプソイドウリジン、2-チオウリジン、4′-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、5-メトキシウリジン及び2′-O-メチルウリジンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、RNAは、上述した修飾核酸塩基のうちの少なくとも2つ(例えば、2、3、4以上)の組み合わせを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、RNAの修飾核酸塩基は、1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-メチル-シチジン(m5C)、プソイドウリジン(ψ)、α-チオ-グアノシン及びα-チオ-アデノシンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、RNAは、上述した修飾核酸塩基のうちの少なくとも2つ(例えば、2、3、4以上)の組み合わせを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、RNAは、プソイドウリジン(ψ)及び5-メチル-シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)及び5-メチル-シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、2-チオウリジン(s2U)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、2-チオウリジン及び5-メチル-シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、メトキシ-ウリジン(mo5U)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)及び5-メチル-シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、2′-O-メチルウリジンを含む。いくつかの実施形態では、RNAは、2′-O-メチルウリジン及び5-メチル-シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、N6-メチル-アデノシン(m6A)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、N6-メチル-アデノシン(m6A)及び5-メチル-シチジン(m5C)を含む。
【0033】
RNAは、約1%~約100%(全体のヌクレオチド含有率に対してか、1つまたは複数のタイプのヌクレオチド、すなわちA、G、U、もしくはCのどれか1つまたは複数に対してのいずれか)、または任意の間の百分率(例えば、1%~20%、1%~25%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~95%、10%~20%、10%~25%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~95%、10%~100%、20%~25%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~95%、50%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~95%、70%~100%、80%~90%、80%~95%、80%~100%、90%~95%、90%~100%、及び95%~100%)における修飾ヌクレオチドを含有し得る。残りの割合は全て、非修飾A、G、U、またはCの存在で占められることが理解されるであろう。
【0034】
いくつかの実施形態では、RNAはキャップアナログを含む。RNAキャップアナログは、一般に、mRNAの安定性及び翻訳効率を高める。従来のキャップアナログとしては、GpppG、m7GpppG、及びm2,2,7GpppGが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のRNAキャップアナログは、ジヌクレオチドキャップ、トリヌクレオチドキャップ、またはテトラヌクレオチドキャップである。いくつかの実施形態では、キャップアナログは、トリヌクレオチドキャップである。いくつかの実施形態では、トリヌクレオチドキャップは、以下の配列、GAA、GAC、GAG、GAU、GCA、GCC、GCG、GCU、GGA、GGC、GGG、GGU、GUA、GUC、GUG、及びGUUから選択される配列を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、トリヌクレオチドキャップは、以下の配列、mGpppApA、mGpppApC、mGpppApG、mGpppApU、mGpppCpA、mGpppCpC、mGpppCpG、mGpppCpU、mGpppGpA、mGpppGpC、mGpppGpG、mGpppGpU、mGpppUpA、mGpppUpC、mGpppUpG、及びmGpppUpUから選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、トリヌクレオチドキャップは、以下の配列、m3′OMepppApA、m3′OMepppApC、m3′OMepppApG、m3′OMepppApU、m3′OMepppCpA、m3′OMepppCpC、m3′OMepppCpG、m3′OMepppCpU、m3′OMepppGpA、m3′OMepppGpC、m3′OMepppGpG、m3′OMepppGpU、m3′OMepppUpA、m3′OMepppUpC、m3′OMepppUpG、及びm3′OMepppUpUから選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、トリヌクレオチドキャップは、以下の配列、m3′OMepppA2′OMepA、m3′OMepppA2′OMepC、m3′OMepppA2′OMepG、m3′OMepppA2′OMepU、m3′OMepppC2′OMepA、m3′OMepppC2′OMepC、m3′OMepppC2′OMepG、m3′OMepppC2′OMepU、m3′OMepppG2′OMepA、m3′OMepppG2′OMepC、m3′OMepppG2′OMepG、m3′OMepppG2′OMepU、m3′OMepppU2′OMepA、m3′OMepppU2′OMepC、m3′OMepppU2′OMepG、及びm3′OMepppU2′OMepUから選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、トリヌクレオチドキャップは、以下の配列、mGpppA2′OMepA、mGpppA2′OMepC、mGpppA2′OMepG、mGpppA2′OMepU、mGpppC2′OMepA、mGpppC2′OMepC、mGpppC2′OMepG、mGp
ppC2′OMepU、mGpppG2′OMepA、mGpppG2′OMepC、mGpppG2′OMepG、mGpppG2′OMepU、mGpppU2′OMepA、mGpppU2′OMepC、mGpppU2′OMepG、及びmGpppU2′OMepUから選択される配列を含む。
【0036】
本明細書で使用する場合、キャップ含有RNA(capped RNA)の割合は、一般に、5′末端に組み込まれたキャップアナログを含有する転写RNA生成物の相対的な存在量を指す。いくつかの実施形態では、キャップアナログは、RNAキャップアナログである。いくつかの実施形態では、RNAキャップアナログは、ジヌクレオチド、トリヌクレオチド、またはテトラヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、キャップ含有RNAの割合(5′キャップアナログを含む転写RNA生成物の割合)は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%超である。いくつかの実施形態では、キャップ含有RNAの割合は、90%、95%、97%、または99%超である。いくつかの実施形態では、キャップ含有RNAの割合は、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、25~75%、30~50%、40~60%、50~70%、45~60%、55~70%、60~80%、60~100%、75~100%、50~95%、75~95%、80~100%、80~90%、90~95%、95~100%、90~99%、または95~99%の間である。
【0037】
RNAは任意のサイズまたは長さであり得る。いくつかの実施形態では、RNAの長さは、50~250、200~500、400~5000、400~4000、400~3000、400~2000、400~1000、500~5000、500~1500、750~2000、1000~1500、1250~2000、1500~2000、1750~2500、2000~3000、2500~3500、3000~4000、3500~4500、または4000~5000ヌクレオチドである。
【0038】
RNAを含む混合物の脱塩
いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物(例えば、20mM未満の総塩濃度を有する)を産生するために、RNAを含む混合物が脱塩される。いくつかの実施形態では、RNAを含む混合物(例えば、IVT反応により産生された混合物)は、RNA変性及び/または高塩分緩衝液とのインライン混合の前に脱塩される。
【0039】
いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、硫酸塩、リン酸塩、及び/または塩化物塩を含む。いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、塩化マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、及び/または硫酸カルシウムを含む。いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、20mM未満、15mM未満、10mM未満、5mM未満、または1mM未満の総塩濃度を含む。いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、1~20mM、1~15mM、1~10mM、1~5mM、5~20mM、5~10mM、10~20mM、10~15mM、または15~20mMの塩濃度を含む。いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、2.5mS/cm未満、2mS/cm未満、1.5mS/cm未満、1mS/cm未満、または0.5mS/cm未満の導電率になる。いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、0.1~2.5mS/cm、0.1~2mS/cm、0.5~2mS/cm、0.5~1mS/cm、1~2mS/cm、1~1.5mS/cm、または1~1.25mS/cmの導電率を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、RNAを含む混合物の脱塩は、RNAを疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させ、HIC樹脂からRNAを溶出させて、低塩分RNA組成物を産生することにより達成される。いくつかの実施形態では、HIC樹脂は、RNAが樹脂に結合する前に緩衝液で平衡化される。いくつかの実施形態では、HIC樹脂は、100mM NaCl、10mM トリス、1mM EDTAを含むpH7.4の緩衝液で平衡化される。いくつかの実施形態では、RNAは、水または緩衝液を用いてHIC樹脂から溶出される。
【0041】
本明細書で説明される方法は、任意のHIC樹脂を含み得る。いくつかの実施形態では、HIC樹脂は、ブチル、t-ブチル、メチル、及び/またはエチル官能基を含む。いくつかの実施形態では、HIC樹脂は、HiTrap Butyl HP樹脂、CaptoPhenyl樹脂、Phenyl Sepharose(商標) 6樹脂、Phenyl Sepharose(商標) High Performance樹脂、Octyl Sepharose(商標) High Performance樹脂、Fractogel(商標) EMD Propyl樹脂、Fractogel(商標) EMD Phenyl樹脂、Macro-Prep(商標) Methyl樹脂、HiScreen Butyl FF、HiScreen Octyl FF、またはTosoh Hexylである。いくつかの実施形態では、HIC樹脂は、2000オングストロームの細孔を有する(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)R150ビーズ樹脂である。
【0042】
いくつかの実施形態では、RNAを含む混合物の脱塩は、水での混合物の希釈(例えば、10倍水希釈)、水への混合物のタンジェンシャルフロー濾過(TFF)、または周囲オリゴdT(すなわち、天然、非変性RNA条件下)により達成される。
【0043】
変性RNA
いくつかの実施形態では、RNA組成物(例えば、低塩分RNA組成物)は変性される。いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、高塩分緩衝液とのインライン混合及びその後の変性RNAとオリゴdT樹脂との結合の前(例えば、直前)に変性される。
【0044】
RNAは、任意の方法を用いて変性され得る。いくつかの実施形態では、RNAは、低塩分RNA組成物を、60℃~90℃、60℃~80℃、60℃~70℃、65℃~85℃、65℃~75℃、70℃~90℃、70℃~80℃、65℃~70℃、70℃~75℃、または75℃~95℃に加熱することにより変性される。いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、2分未満、90秒未満、1分未満、50秒未満、40秒未満、30秒未満、20秒未満、または10秒未満加熱される。いくつかの実施形態では、低塩分RNA組成物は、5~90秒、5~60秒、5~30秒、5~15秒、10~60秒、10~30秒、20~60秒、20~40秒、30~90秒、30~60秒、40~90秒、40~60秒、60~120秒、60~90秒、または90~120秒間加熱される。いくつかの実施形態では、高塩分RNA組成物は、変性剤分子(例えば、RNAを不安定化または変性させる化学的小分子)の存在下で加熱される。変性剤分子としては、ジメチルスルホキシド(例えば、0.05~1% v/v、0.1~0.5% v/v、0.05~0.5% v/v、または0.25~0.75% v/vの濃度)、グアニジン(例えば、50~250mM、100~500mM、250~1000mM、1~8M、2~6M、3~5M、または5~8Mの濃度)、または尿素(例えば、50~250mM、100~500mM、250~1000mM、1~8M、2~6M、3~5M、または5~8Mの濃度)を挙げることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、変性プロセス(例えば、低塩分RNA組成物を60℃~90℃、60℃~80℃、60℃~70℃、65℃~85℃、65℃~75℃、70℃~90℃、70℃~80℃、65℃~70℃、70℃~75℃、または75℃~95℃に加熱する)における、RNA組成物中の変性RNAの相対量変化は、ハイパークロミシティー曲線(例えば、分光学的融解曲線)により測定される。いくつかの実施形態では、変性RNAの相対量変化は、組成物中の全RNAの二次構造における変化を測定することにより(例えば、紫外線吸収の変化を測定することにより)測定される。いくつかの実施形態では、変性RNAの相対量変化は、変性プロセス(例えば、低塩分RNA組成物を、60℃~90℃、60℃~80℃、60℃~70℃、65℃~85℃、65℃~75℃、70℃~90℃、70℃~80℃、65℃~70℃、70℃~75℃、または75℃~95℃に加熱すること)の前後に、組成物中の全RNAの二次構造における変化をモニターすることにより(例えば、紫外線吸収の変化を測定することにより)測定される。
【0046】
いくつかの実施形態では、変性RNA組成物中の全RNAのうちの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%が、変性RNAを含む。いくつかの実施形態では、変性RNA組成物中の全RNAのうちの少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)が、変性RNAを含む。いくつかの実施形態では、変性RNA組成物中の全RNAのうちの50~70%、45~60%、55~70%、60~80%、60~100%、75~100%、50~95%、75~95%、80~100%、80~90%、90~95%、95~100%、90~99%、または95~99%が、変性RNAを含む。いくつかの実施形態では、変性RNA組成物中の変性RNAの相対量は、ハイパークロミシティー曲線(例えば、分光学的融解曲線)により測定される。ハイパークロミシティー(加熱中に構造を失うと同時に吸光係数の増加を示す、RNA等の核酸の性質)は、分光光度計を用いて(例えば、加熱によるRNAの変性中に)測定され得る。いくつかの実施形態では、RNAの吸光係数は、205nm、220nm、260nm、または200~300nmで測定される。いくつかの実施形態では、変性RNA組成物中の変性RNAの相対量は、S.J. Schroeder and D.H. Turner, “Optical melting measurements of nucleic acid thermodynamics”, Methods Enzymol. 468 (2009) 371-387、またはGruenwedel, D.W., “Nucleic Acids: Properties and Determination”, Encyclopedia of Food Sciences and Nutrition, 2003, Pages 4147-4152に記載されているような方法を用いて測定される。
【0047】
いくつかの実施形態では、変性RNA組成物は、高塩分緩衝液との混合及び/またはオリゴdT樹脂上への負荷の前に、ブレークタンク(すなわち、変性RNA組成物を保持することができる保管容器)に保管される。いくつかの実施形態では、ブレークタンクは、RNAが最大3日間変性したままであるように、変性RNA組成物を保管することができる。いくつかの実施形態では、変性RNA組成物は、ブレークタンク内で低塩分濃度(例えば、1~20mM、1~15mM、1~10mM、1~5mM、5~20mM、5~10mM、10~20mM、10~15mMまたは15~20mM 塩)で維持される。いくつかの実施形態では、ブレークタンクは、RNAが1~6時間、2~12時間、5~15時間、12~24時間、12~36時間、1~2日間、1~3日間、または2~3日間、変性したままであるように、変性RNA組成物を保管することができる。いくつかの実施形態では、ブレークタンクは、15℃~30℃、4℃~30℃、4℃~25℃、4℃~20℃、4℃~15℃、4℃~10℃、4℃~8℃、10℃~30℃、10℃~25℃、10℃~20℃、10℃~15℃、または15℃~25℃に維持される。
【0048】
インライン混合
いくつかの実施形態では、インライン混合は、第1連続流溶液と第2連続流溶液とを混合することを指す。いくつかの実施形態では、第1及び第2連続流は、独立したポンプ(例えば、独立した蠕動運動型ポンプ)により制御される。いくつかの実施形態では、インライン混合は、流動制御条件、例えば、流動パラメータ(例えば、流量、温度)が少なくとも1つのポンプシステムを備える流動調整デバイスにより制御されるプロセス流動条件に依存する。いくつかの実施形態では、第1連続流は、高塩分緩衝液(例えば、少なくとも50mM 塩を含む)であり、第2連続流は、脱塩(例えば、低塩分)及び/または変性RNAを含む組成物である。
【0049】
インライン混合は、典型的には、変性RNAを含む組成物をオリゴdT樹脂に結合させる直前に行われる。いくつかの実施形態では、インライン混合は、2分未満、90秒未満、1分未満、50秒未満、40秒未満、30秒未満、20秒未満、または10秒未満で行われる。いくつかの実施形態では、インライン混合は、5~90秒、5~60秒、5~30秒、5~15秒、10~60秒、10~30秒、20~60秒、20~40秒、30~90秒、30~60秒、40~90秒、40~60秒、60~120秒、60~90秒、または90~120秒で行われる。いくつかの実施形態では、インライン混合は、変性RNAを含む組成物をオリゴdT樹脂に結合させる前に、5~90秒、5~60秒、5~30秒、5~15秒、10~60秒、10~30秒、20~60秒、20~40秒、30~90秒、30~60秒、40~90秒、40~60秒、60~120秒、60~90秒、または90~120秒で行われる。いくつかの実施形態では、インライン混合は、4℃~30℃、4℃~25℃、4℃~20℃、4℃~15℃、4℃~10℃、4℃~8℃、10℃~30℃、10℃~25℃、10℃~20℃、10℃~15℃、または15℃~25℃の温度で行われる。
【0050】
いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液(例えば、RNA組成物とインライン混合され得る)は、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、少なくとも90mM、少なくとも100mM、少なくとも125mM、少なくとも150mM、少なくとも200mM、少なくとも250mM、少なくとも300mM、少なくとも350mM、少なくとも400mM、少なくとも500mM、少なくとも600mM、少なくとも700mM、少なくとも800mM、少なくとも900mM、または少なくとも1000mMの塩濃度を含む。いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液は、50~500mM、50~250mM、50~100mM、50~75mM、60~150mM、75~500mM、75~200mM、100~500mM、100~250mM、150~350mM、200~400mM、250~500mM、300~400mM、350~450mM、400~500mM、400~600mM、500~700mM、500~750mM、700~1000mM、750~900mM、または850~1000mMの塩濃度を含む。いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液は、1~2M、2~3M、3~4M、または4~5Mの塩濃度を含む。いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液は、少なくとも5mS/cm、少なくとも6mS/cm、少なくとも7mS/cm、少なくとも8mS/cm、少なくとも9mS/cm、少なくとも10mS/cm、少なくとも12mS/cm、または少なくとも15mS/cmの導電率を含む。いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液は、5~10mS/cm、5~15mS/cm、5~7mS/cm、6~9mS/cm、8~10mS/cm、9~12mS/cm、または10~15mS/cmの導電率を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合すると、変性RNA及び少なくとも50mMの濃度の塩を含む組成物が産生される。いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合すると、変性RNA及び50~500mM、50~250mM、50~100mM、50~75mM、60~150mM、75~500mM、75~200mM、100~500mM、100~250mM、150~350mM、200~400mM、250~500mM、300~400mM、350~450mM、400~500mM、400~600mM、500~700mM、500~750mM、700~1000mM、750~900mM、または850~1000mMの濃度の塩を含む組成物が産生される。いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合すると、変性RNA及び2mS/cm未満の導電率を有する塩を含む組成物が産生される。いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物を高塩分緩衝液とインライン混合すると、変性RNA及び2~5mS/cm、2~7mS/cm、5~10mS/cm、5~15mS/cm、5~7mS/cm、6~9mS/cm、8~10mS/cm、9~12mS/cm、または10~15mS/cmの導電率を有する塩を含む組成物が産生される。
【0052】
いくつかの実施形態では、緩衝液(例えば、低塩分または高塩分緩衝液)は、NaCl、KCl、LiCl、NaHPO4、NaHPO、またはNaPOを含む。いくつかの実施形態では、緩衝液(例えば、低塩分または高塩分緩衝液)は、任意のナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン酸塩、塩化物の供給源、または任意の他の塩イオン供給源を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液(例えば、低塩分または高塩分緩衝液)は、pHを一貫して維持するために、緩衝剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、緩衝液(例えば、低塩分または高塩分緩衝液)は、中性pHを含む。いくつかの実施形態では、緩衝液(例えば、低塩分または高塩分緩衝液)は、約6、約6.5、約7、約7.4、約8、または約6~8のpHを含む。本明細書で使用する緩衝剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、コハク酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸、グルタミン酸、マレイン酸塩、カコジル酸塩、2-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸(MES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン-N,N′-2-エタンスルホン酸(PIPES)、2-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシ-プロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N-ビス-(ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、3-(N-モルホリノ)-プロパンスルホン酸(MOPS)、N-2-ヒドロキシエチル-ピペラジン-N-2-エタンスルホン酸(HEPES)、3-(N-トリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N′-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]グリシン(トリシン)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸(TAPS)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、及びビス[2-ヒドロキシエチル]イミノトリス-[ヒドロキシメチル]メタン(ビス-トリス)が挙げられる。本明細書で使用する溶液の他の緩衝液組成、緩衝液濃度、及び追加の構成成分は、当業者には明白であろう。
【0053】
いくつかの実施形態では、インライン混合は、変性RNAを含む組成物を、4℃~30℃、4℃~25℃、4℃~20℃、4℃~15℃、4℃~10℃、4℃~8℃、10℃~30℃、10℃~25℃、10℃~20℃、10℃~15℃、または15℃~25℃の温度にインライン冷却することを含む。いくつかの実施形態では、インライン混合は、変性RNAを含む組成物を、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃、15℃、10℃、または5℃未満の温度にインライン冷却することを含む。いくつかの実施形態では、インライン冷却は、変性RNA及び低塩分緩衝液を含む組成物と高塩分緩衝液とのインライン混合と同時に行われる。いくつかの実施形態では、インライン冷却の間、変性RNAを含む組成物は、20mM未満、15mM未満、10mM未満、5mM未満、または1mM未満の総塩濃度に維持される。いくつかの実施形態では、インライン冷却の間、変性RNAを含む組成物は、1~20mM、1~15mM、1~10mM、1~5mM、5~20mM、5~10mM、10~20mM、10~15mM、または15~20mMの総塩濃度に維持される。いくつかの実施形態では、インライン冷却は、変性RNA及び低塩分緩衝液を含む組成物と高塩分緩衝液とのインライン混合と同時に行われる。いくつかの実施形態では、インライン冷却の間、変性RNAを含む組成物は、2.5mS/cm未満、2mS/cm未満、1.5mS/cm未満、1mS/cm未満、または0.5mS/cm未満に維持される。いくつかの実施形態では、インライン冷却は、変性RNA及び低塩分緩衝液を含む組成物と高塩分緩衝液とのインライン混合と同時に行われる。いくつかの実施形態では、インライン冷却の間、変性RNAを含む組成物は、0.1~2.5mS/cm、0.1~2mS/cm、0.5~2mS/cm、0.5~1mS/cm、1~2mS/cm、1~1.5mS/cm、または1~1.25mS/cmに維持される。
【0054】
オリゴdT樹脂
本明細書の方法は、変性RNAを含む組成物をオリゴdT樹脂に結合させる(すなわち、接触させる)ことに関与する。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、低塩分変性RNA組成物を高塩分緩衝液とインライン混合した後に、変性RNAを含む組成物をオリゴdT樹脂に結合させることを含む。
【0055】
本明細書に記載の方法では、任意のオリゴdT樹脂を使用し得る。いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂は、ポリdTで誘導体化された、2000オングストロームの細孔を有する(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)ビーズ樹脂である。いくつかの実施形態では、ポリdTは、5~200、10~50、10~100、50~200、100~150、または125~200のチミジン及び/またはウラシルを含む。いくつかの実施形態では、ポリdTは、20チミジンの長さを含む。いくつかの実施形態では、ポリdTは、ビーズ樹脂に直接連結される。いくつかの実施形態では、ポリdTは、リンカーを介してビーズ樹脂に連結される。
【0056】
いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂は、RNAが樹脂に結合する前に、緩衝液で平衡化される。いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂は、100mM NaCl、10mM トリス、及び1mM EDTAを含むpH7.4の緩衝液で平衡化される。いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂は、RNAが樹脂に結合した後に緩衝液で洗浄される。いくつかの実施形態では、洗浄工程は、100mM NaCl、10mM トリス、及び1mM EDTAを含むpH7.4の緩衝液を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、RNAのオリゴdT樹脂への結合は、40℃未満の温度で行われる。いくつかの実施形態では、RNAのオリゴdT樹脂への結合は、4℃~30℃、4℃~25℃、4℃~20℃、4℃~15℃、4℃~10℃、4℃~8℃、10℃~30℃、10℃~25℃、10℃~20℃、10℃~15℃、または15℃~25℃の温度で行われる。
【0058】
いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物は、20分未満、18分未満、15分未満、12分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4分未満、3分未満、2分未満、または1分未満の総滞留時間で、オリゴdT樹脂に結合するか、または接触する。いくつかの実施形態では、変性RNAを含む組成物は、1~2、1~5、2~5、2~10、5~20、5~10、5~15、8~15、10~15、12~20、または15~20分の総滞留時間で、オリゴdT樹脂に結合するか、または接触する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本方法は、オリゴdT樹脂からRNAを溶出させることを含む。いくつかの実施形態では、RNAは、水または緩衝液(例えば、10mM トリス、1mM EDTAを含むpH8.0の緩衝液)を用いてHIC樹脂から溶出される。
【0060】
いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂から溶出されたRNAは、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%のポリA鎖含有RNAを含む。いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂から溶出されたRNAは、約20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、25~75%、30~50%、40~60%、50~70%、45~60%、55~70%、60~80%、60~100%、75~100%、50~95%、75~95%、80~100%、80~90%、90~95%、95~100%、90~99%、または95~99%のポリA鎖含有mRNAを含む。いくつかの実施形態では、オリゴdT樹脂から溶出されたRNAは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のポリA鎖含有mRNAを含む。
【0061】
装置
本開示のいくつかの態様は、変性dTクロマトグラフィーを用いてRNAを精製する装置を提供する。いくつかの実施形態では、装置は、オリゴdT樹脂が充填されたカラムを備え、該カラムは、入口及び出口を有する。いくつかの実施形態では、装置は、少なくとも1つのポンプシステムを備える流動調整デバイスであり、該ポンプシステムは、混合される2種以上の溶液の流量及び温度等の流動パラメータを制御するための流動制御条件(例えば、プロセス流動条件)下で、2種以上の溶液を連続混和させて混合することを可能にする。いくつかの実施形態では、装置は、カラム入口の上流において、脱塩RNAを送出する第1連続流であって、脱塩RNAの流動が第1ポンプにより制御され、第1流が、予熱器とその後段にある冷却器とを含む変性チャンバ内に入る第1連続流と、高塩分緩衝液を送出する第2流であって、高塩分緩衝液の流動が第2ポンプにより制御される第2流と、2種の連続流が合流して、脱塩RNAと高塩分緩衝液がインライン混合されるチャンバと、を備える。
【0062】
いくつかの実施形態では、装置は、ポリdTで誘導体化された、2000オングストロームの細孔を有する(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)ビーズ樹脂を含む、オリゴdT樹脂を備える。
【0063】
いくつかの実施形態では、カラム(例えば、オリゴdT樹脂が充填されたカラム)は、1~10mL、1~5mL、5~25mL、10~100mL、25~150mL、50~100mL、75~150mL、100~200mL、100~500mL、250~1000mL、500~1500mL、またはそれ以上のカラム体積を有する。いくつかの実施形態では、カラム(例えば、オリゴdT樹脂が充填されたカラム)は、約1mL、約5mL、約10mL、約25mL、約50mL、約100mL、約250mL、約500mL、約750mL、約1000mL、約1500mL、約2000mL、またはそれ以上のカラム体積を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、予熱器により脱塩RNAが60℃より高い温度に加熱されて、変性RNA組成物が産生される。いくつかの実施形態では、予熱器は、60℃~90℃、60℃~80℃、60℃~70℃、65℃~85℃、65℃~75℃、70℃~90℃、70℃~80℃、65℃~70℃、70℃~75℃、または75℃~95℃に維持される。
【0065】
いくつかの実施形態では、冷却器により変性RNA組成物が30℃未満の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、冷却器は、15℃~30℃、4℃~30℃、4℃~25℃、4℃~20℃、4℃~15℃、4℃~10℃、4℃~8℃、10℃~30℃、10℃~25℃、10℃~20℃、10℃~15℃、または15℃~25℃に維持される。
【0066】
いくつかの実施形態では、装置は、ブレークタンク(すなわち、変性RNA組成物を保持することができる保管容器)をさらに備える。いくつかの実施形態では、ブレークタンクは、RNAが最大3日間変性したままであるように、変性RNA組成物を保管することができる。いくつかの実施形態では、変性RNA組成物は、ブレークタンク内で低塩分濃度(例えば、1~20mM、1~15mM、1~10mM、1~5mM、5~20mM、5~10mM、10~20mM、10~15mMまたは15~20mM 塩)で維持される。いくつかの実施形態では、ブレークタンクは、RNAが1~6時間、2~12時間、5~15時間、12~24時間、12~36時間、1~2日間、1~3日間、または2~3日間、変性したままであるように、変性RNA組成物を保管することができる。いくつかの実施形態では、ブレークタンクは、15℃~30℃、4℃~30℃、4℃~25℃、4℃~20℃、4℃~15℃、4℃~10℃、4℃~8℃、10℃~30℃、10℃~25℃、10℃~20℃、10℃~15℃、または15℃~25℃に維持される。
【0067】
いくつかの実施形態では、装置は、少なくとも1つの紫外線(UV)検出モジュールをさらに備える。いくつかの実施形態では、UV検出モジュールは、変性プロセスの間(例えば、RNAを変性するように意図された加熱工程の間)に、UV光を用いてRNAを検出するように配置される。いくつかの実施形態では、UV検出モジュールは、変性プロセスの後(例えば、RNAを変性するように意図された加熱工程の後)に、UV光を用いてRNAを検出するように配置される。いくつかの実施形態では、装置は、2つのUVモジュールを備える。いくつかの実施形態では、装置は、変性プロセスの前(例えば、RNAを変性するように意図された加熱工程の前)に、UV光を用いてRNAを検出するように配置された第1UVモジュールと、変性プロセスの後(例えば、RNAを変性するように意図された加熱工程の後)に、UV光を用いてRNAを検出するように配置された第2UVモジュール、を備える。
【0068】
いくつかの実施形態では、装置は、in vitro転写反応を用いて産生された脱塩RNAを処理するために使用される。いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液は、少なくとも50mMの塩濃度を有する。いくつかの実施形態では、高塩分緩衝液は、50mM~500mMの塩濃度であるNaClを有する。
【実施例
【0069】
実施例1.変性dT(ddT)クロマトグラフィー
図1に記載されているように、変性により、ポリA鎖含有mRNA(例えば、IVT反応により産生された完全長RNA生成物(複数可))に対するオリゴdTクロマトグラフィーの選択性が改善される。RNA組成物の変性は、RNA溶液を60℃~90℃の範囲にある温度で10~60秒間加熱することにより達成することができる。この変性プロセスにより、RNAの二次及び高次構造が破壊され、その結果、mRNAと任意の非共有結合性不純物との間のあらゆる相互作用がなくなる。また、変性により、非共有結合的に結合しているIVT関連不純物も解離する。次いで変性RNAを、オリゴdT樹脂、例えば、ポリdTで誘導体化された、2000オングストロームの細孔を有する(ポリ)スチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)ビーズ樹脂、に選択的に結合させることができ、不純物を洗い流し、変性RNAから分離し得る。
【0070】
mRNAの変性は、塩濃度が融解転移温度中間点(Tm)に及ぼす影響を検討することにより調べた(図2)。UV融解曲線は、2種類の異なる長さ(850ヌクレオチド(nt)及び4000nt)のmRNAコンストラクトを用いて得た。コンストラクトは、水、100mM 酢酸トリエチルアミン pH7.0、及び100mM 酢酸ナトリウム pH7.0で0.035mg/mLに希釈した。温度は1℃/分で4℃から90℃まで昇温させた。ハイパークロミシティー(加熱中に構造を失うと同時に吸光係数の増加を示す、核酸の性質)は、Cary-300分光光度計(260nm)を用いて、加熱中に測定した。融解転移中間点は、得られたハイパークロミシティー曲線から推定し、媒質のイオン強度が高くなるにつれて上がることを認めた。したがって、塩濃度が低くなるほど変性効率が高くなる。融解転移点は、mRNAの長さに影響されなかった。
【0071】
次いで、IVT反応を用いて調製したテストmRNA(長さ2525nt)を精製する実験を行って、本明細書に記載されている通りの変性オリゴdT法が、代替的な精製手法と比較した場合、最適なRNA精製手法となることを実証した。変性オリゴdT実験に使用した装置の概略を図3に示す。
【0072】
これらの異なる手法の結果を図4に示し、以下で説明する。任意の精製手法を行う前では、IVT反応物が含む全RNAのうち69.1%が、ポリA鎖含有mRNAであった。得られたIVT溶液をHIC樹脂で脱塩した場合、鎖含有純度に変化は見られなかった。周囲オリゴdT樹脂(すなわち、mRNAを脱塩及び変性させないが、周囲温度で高塩分緩衝液中のオリゴdTカラム上へ負荷する)では、ポリA鎖含有mRNAは85.3%になり、鎖含有純度が中程度に向上した。しかしながら、HIC樹脂を用いた精製(混合物の脱塩のため)に続いて、連続的変性オリゴdT(オリゴdTカラム上に負荷しながら、変性RNAを高塩分緩衝液とインライン混合することを含む)を行うと、特に周囲オリゴdTと比較して、鎖含有純度が著しく向上し、ポリA鎖含有mRNAは94.9%に達した。驚くべきことに、HICで脱塩して熱変性させたmRNAをブレークタンクに保管すると(2℃~8℃で3日間)、その後オリゴdTへ負荷している間に塩緩衝液とインライン混合させて以来、mRNAの変性特性は保存され続けて、ポリA鎖含有mRNAは同様に95.5%となった。しかしながら、ブレークタンクにおける変性mRNAの保管中に塩分調整を行うと、インライン混合による塩分調整と比較して、鎖含有純度は91.6%に低下した。このことは、高塩分緩衝液中で保管する間に、不純物が完全長mRNAにゆっくりと結びつくことを指し示している。
【0073】
したがって、オリゴdT樹脂上に負荷する直前に、変性RNAを高塩分緩衝液とインライン混合することで、完全長生成物が不純物と再度ハイブリダイズすることを防ぎ、その結果、高純度(全RNAの約95%がポリA鎖を含む)になることが見出された。
【0074】
同様の結果が、連続的(すなわち、変性後、変性RNAを高塩分緩衝液とインライン混合し、その直後にオリゴdT樹脂に結合させる)変性オリゴdTの間、オリゴdT樹脂が過負荷または低容量であった場合に見られた(データは示していない)。
【0075】
さらに、周囲オリゴdTと変性オリゴdTとの比較を実施した。テストmRNA(長さ2369nt)は、流加IVTを用いて産生した。純度は、鎖含有mRNAの割合で測定した。IVT後、全RNAは、鎖含有mRNAを64%含んでいた。次いで、全RNAを周囲オリゴdTを用いて精製したところ、鎖含有mRNAが73%得られ、その後、2つの異なるサンプルに分けた。第1サンプルは、周囲dTを用いて2度目の精製を行ったところ、77%の鎖含有mRNAが得られ、第1周囲dT精製工程よりもわずかに改善された。第2サンプルは、2回目の周囲dTの代わりに変性オリゴdTを用いて精製し、得られた生成物の97%が鎖含有であった。この実験のさらなるデータを表1に示す。
【表1】
【0076】
実施例2.HIC及び変性オリゴdTを用いた精製
in vitro転写(IVT)後、RNA供給物は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いて脱塩してもよい。HIC樹脂により、さらに残留タンパク質及び残留未消化DNAを除去することができる。
【0077】
2525ntのmRNAを産生したIVT反応物を、HICカラム上に負荷する前に、100U/mL DNaseとインキュベートし、EDTA処理を行ってから、希釈した(4倍)。HIC樹脂は、POROS(商標)R150、2000Å細孔型(Applied Biosystems)とした。ビーズの開けた細孔構造により、例えば、2000ntを超えるような大きいmRNAコンストラクトに対する結合容量が高くなる。IVT後の水中のRNA負荷濃度は1~2mg/mLであり、RNA負荷量目標値は、樹脂mL当たり5mg mRNAとした。滞留時間/流速は、3~5分(150cm/hr)であった。HICパラメータの概要を表2に示す。
【表2】
【0078】
図6に示すように、HICでは、未反応NTP、酵素、消化されたDNA、及びIVT緩衝液塩を貫流させる一方、全mRNAを分離することができる。不可逆的に結合したRNA、タンパク質、及びDNAはカラムに保持される。次いで、分離したRNAをHIC樹脂から水を用いて溶出させ、未消化DNAは選択的にカラム上に保持させた。
【0079】
粗IVT供給物からのmRNAコンストラクト(1956nt)に対するR150樹脂の動的結合容量(DBC)は、おおよそ5mg/mLであり、HIC精製は、予想外ではあるが、中程度の純度向上をもたらした。
【0080】
HIC脱塩工程の後、溶出したRNAを1分間60℃に加熱し、15~30℃に冷却し、変性RNAを100mM NaCl、10mM トリス、1mM EDTAを含むpH7.4の緩衝液とインライン混合し、変性RNAをオリゴdTカラム上に負荷することにより、溶出したRNAをインラインで変性させた(図5を参照のこと)。滞留時間/流速は、1mg/mL負荷で2分であった。HICパラメータの概要を表3に示す。
【表3】
【0081】
実施例3.HIC及び変性オリゴdTを用いた精製
本実施例では、長さ1956ヌクレオチド(nt)のテストmRNAをIVTを用いて生成し、次いで、HICに続く変性オリゴdT(ddT)プロセスを用いて処理した。表4に示すように、HICと変性オリゴdTプロセスを組み合わせることで、周囲オリゴdTに続く逆相(RP)HPLCクロマトグラフィーと比較して同等以上の純度が得られた。両プロセスとも、dTクロマトグラフィー単独(中央列)よりも優れて機能した。
【表4】
【0082】
実験は、異なるサイズ(2992nt、2497nt、658nt、1105nt、784nt、及び913nt)のmRNAコンストラクトを用いて繰り返した。以下の表5及び表6に示すように、単一のdTクロマトグラフィー精製工程では、より長いコンストラクト(長さ>2000ntのもの)に対して望ましい純度が得られない。HICに続いて変性オリゴdTを用いると、より長いコンストラクトに関して96~97%で鎖含有mRNAが得られた。
【表5】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0083】
HICに続く変性オリゴdT(ddT)を含む精製プロセスを、異なる長さ(2872nt、2852nt、692nt、2399nt、1772nt、及び1007nt)の6つのさらなるコンストラクトを用いて繰り返した。その結果が示すところによれば、HICとddTの組み合わせにより、特により長いコンストラクトで高い純度が得られ、ddT後のポリA鎖含有mRNAは、95~99%であった(表7及び表8を参照のこと)。
【表7】
【表8-1】
【表8-2】
【0084】
さらなる追加実験により、HICと変性オリゴdTの組み合わせは、大容量(IVT反応で産生された2545ntのmRNAを用いた1リットルカラム)にスケールアップできることが実証された。表9に示すように、精製プロセスでは、ポリA鎖含有mRNAの純度が高くなった(トリス-RP及びMP法の両方で評価)。
【表9】
【0085】
本明細書に開示される全ての参照、特許及び特許出願は、各々が引用される主題に関して参照により組み込まれ、場合によっては文書全体を包含する場合がある。
【0086】
本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、そうでないと明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0087】
また、そうでないと明確に示されない限り、2つ以上の工程または行為を含む本明細書で主張される任意の方法において、方法の工程または行為の順序は、方法の工程または行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解するべきである。
【0088】
上記の本明細書においてだけでなく、特許請求の範囲において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「から構成される(composed of)」などのような全ての移行句は、非制限、すなわち、含むが限定されないことを意味するものと理解されるべきである。「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句だけは、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section 2111.03に記載されているように、それぞれ、制限または半ば制限された移行句であるものとする。
【0089】
数値に先行する「約(about)」及び「実質的に(substantially)」という用語は、列挙された数値の±10%を意味する。
【0090】
値の範囲が提供される場合は、その範囲の上限と下限との間の各々の値は、本明細書において具体的に企図及び記載される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】