(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】混合無機酸溶媒に基づくグラフェンの調製法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/19 20170101AFI20221012BHJP
【FI】
C01B32/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578256
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2020102326
(87)【国際公開番号】W WO2021217898
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】202010365613.0
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522002157
【氏名又は名称】北京超思電子技術有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING CHOICE ELECTRONIC TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】2nd Floor, 3rd Floor And Room 410-412 4th Floor, No. 2 Building, No. 9 Shuangyuan Road, Shijingshan District, Beijing 100041, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】銭 暁侖
(72)【発明者】
【氏名】馬 伝竜
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146BA02
4G146BB08
4G146CA11
4G146CA15
4G146CB07
4G146CB10
4G146CB11
4G146CB34
(57)【要約】
本発明は、混合無機酸溶媒に基づくグラフェンの調製法に関するものである。高価な有機溶媒の代わりに調製が簡単で低コストの無機酸溶媒を使用して、溶媒剥離法によってグラフェン製品を調製することにより、毒性が大きく、調製条件が厳しいのという有機溶媒問題を回避することができ、溶媒剥離法によってグラフェンを調製する過程での温度に対する要求を低減させ、処理過程に必要な時間を短縮し、調製工程を簡略化し、溶媒剥離法でグラフェンを調製するための商業化と規模化の開発に有利である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料グラフェン粉末の予備処理で不純物を除去した剥離されるべきグラフェン粉末を得るステップS1と、
混合無機酸溶媒を調製するステップS2と、
剥離されるべきグラフェン粉末を混合無機酸溶剤に加えて、均一に攪拌するステップS3と、
均一に攪拌した剥離されるべきグラフェン粉末と混合無機酸溶媒混合液に対してグラフェン剥離処理を実行して、グラフェン混合液を得るステップS4と、
グラフェン混合液からグラフェン製品を抽出するステップS5と、
を含むことを特徴とする、混合無機酸溶媒に基づくグラフェンの調製法。
【請求項2】
前記混合無機酸溶媒は、少なくとも1種類の無機酸および少なくとも1種類の改質剤を含み、前記改質剤は臭素酸ナトリウムまたは臭素酸カリウムまたは両者の混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップS1は、
原料グラフェン粉末と脱イオン水および純アルコールを、1gの原料グラフェン粉末に130~150mlの脱イオン水および130~150mlの純アルコールの比率で混合し、磁力攪拌器を使って常温で24時間以上連続して攪拌し、混合グラファイト分散液を得るサブステップS11と、
フィルタ膜を使用して混合グラファイト分散液の吸引ろ過を実行し、湿ったグラファイトを得るサブステップS12と、
湿ったグラファイトを乾燥処理して、剥離されるべきグラフェン粉末を得るサブステップS13と、
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタ膜は、孔径が450μm以下の有機フィルタ膜であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥処理は、蒸発皿に置く湿ったグラフェンを75℃~85℃の恒温乾燥台に置き、8時間以上の連続乾燥処理を行うことを特徴とする、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記混合無機酸溶媒は、濃度が60%~65%の硝酸および濃度が90%~100%の硫酸を、体積比1:2~1:4の間の任意の比率で調合した混合無機酸と、モル濃度が0.0001mol/ml~0.01mol/mlの範囲の臭素酸ナトリウムまたはカリウムとを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップS3は、丸底フラスコ内で0.5gの剥離されるべきグラフェン粉末に75ml~85mlの比率で無機酸溶媒を調合して混合し、2時間以上連続して撹拌することを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップS3は、攪拌過程中に50℃以下の温度を維持することをさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項9】
ステップS4において、前記グラフェン剥離処理は温度制御超音波処理を含み、前記温度制御超音波処理は、丸底フラスコに入れた剥離されるべきグラファイト粉末と混合無機酸溶媒混合液を、温度制御装置を有する超音波洗浄器に入れて6時間以上の超音波処理を連続して行うとともに、超音波処理過程において前記温度制御装置により超音波洗浄器の使用温度を50℃以下に保つことを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記温度制御装置は、冷却水循環装置を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記超音波洗浄器の動作温度は45℃以下であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記超音波洗浄器は、2つの丸底フラスコにそれぞれ置かれる、2組の剥離されるべきグラファイト粉末と混合無機酸溶剤混合溶液に対して同時に超音波処理を行うことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップS5は、
グラフェン混合液を過剰の脱イオン水と混合して、グラフェン希釈剤を得るサブステップS51と、
気密状態でグラフェン希釈剤を均一に攪拌した後静置分層させ、上澄み液と下濁液を得るサブステップS52と、
前記上澄み液を数回脱イオン水洗浄し、脱イオン水洗浄後の残留物を乾燥させて、グラフェン粉末状のグラフェン製品を得るサブステップS53と、
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記サブステップS52は、磁力攪拌器を使用して2時間以上連続して攪拌した後、8時間以上静置分層させることにより、上澄み液と下濁液を得ることを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規材料の調製の技術分野に関するものであり、特に混合無機酸溶媒に基づくグラフェンの調製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(Graphene)は、炭素原子とsp2ハイブリッド軌道からなる六角形のハニカム格子を持つ2次元カーボンナノ材料である。この特別な構造は、グラフェン材料に独自の熱学、力学、電気学性能を与え、完璧なグラフェンは、理想的な2次元結晶構造を持ち、六角形の格子からなり、最大2.6×102m2/gの理論比表面積を持つ。グラフェンは、優れた熱伝導性能(3×103W/(m・K))と力学性能(1.06×103GPa)を有する。また、グラフェンの安定した正六角形格子構造によりグラフェン自体が優れた導電性を有し、室温での電子遷移率は1.5×104cm2/(V・s)に達する。グラフェンの特殊な構造、顕著な熱伝導性能と力学性能は科学界で大きな関心を呼んでおり、材料科学研究で注目されている。
【0003】
現在よく見られるグラフェンの調製法には、機械的剥離法、化学酸化法、結晶エピタキシャル成長、化学気相成長法、有機合成法およびカーボンナノチューブ剥離法が含まれている。そのうち、機械的剥離法と化学気相成長法では高品質のグラフェンが得られるものの、生産率が低く、コストが高いため、複合材料などの分野での応用に対応するのが困難である。還元型酸化グラフェン法は、グラフェンの低コストで大規模な調製を実現しているが、得られたグラフェンには多くの欠陥が含まれている。直接溶媒剥離法の採用は、グラフェン構造の完全性を維持するだけでなく、グラフェンの大規模な調製を可能にし、研究者から大きな注目を集めている。
【0004】
従来技術では溶媒剥離法には主に、N-メチルピロリドン(NMP)、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)などのグラファイトのハンセン溶媒定数に合致する有機溶媒を使用する。これらの溶媒は、一般に、高価で、毒性があり、高沸点であるため、高温調製条件を必要とし、調製プロセスが複雑であるなどの欠点があり、特に溶媒剥離法は多くの場合、長い処理時間が必要となり、調製効率が低く、機器の利用率が低い。
【0005】
よって、商業化、規模化に必要に応じて、上記の有機溶媒の欠点を克服して、グラフェンの効果的な剥離を実現し、かつコストをさらに削減させるための代替方法を見つけるのは、目下本分野において解決を要する課題となっている。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の欠点を解決するために、本発明は混合無機酸溶媒に基づくグラフェン調製法を提供し、混合無機酸溶媒を従来技術における有機酸溶媒に置き換えることで溶媒剥離法によってグラフェンを調製する過程での温度に対する要求を低減させ、処理過程に必要な時間を短縮し、調製過程を簡潔化し、これにより、有毒で高価な有機溶媒の使用を回避することができ、溶媒剥離法でグラフェンを調製することの商業化と規模化の発展に一層有利である。
【0007】
上記の目的を実現するために、本発明が用いる技術案は次を含む。
【0008】
原料グラフェン粉末の予備処理で不純物を除去した剥離されるべきグラフェン粉末を得るステップS1と、
混合無機酸溶媒を調製するステップS2と、
剥離されるべきグラフェン粉末を混合無機酸溶剤に加えて、均一に攪拌するステップS3と、
均一に攪拌した剥離されるべきグラフェン粉末と混合無機酸溶媒混合液に対してグラフェン剥離処理を実行して、グラフェン混合液を得るステップS4と、
グラフェン混合液からグラフェン製品を抽出するステップS5と、を含むことを特徴とする、
混合無機酸溶媒に基づくグラフェンの調製法。
【0009】
さらに、前記混合無機酸溶媒は、少なくとも1種類の無機酸および少なくとも1種類の改質剤を含み、前記改質剤は臭素酸ナトリウムまたは臭素酸カリウムまたは両者の混合物を含む。
【0010】
さらに、ステップS1は、
原料グラフェン粉末と脱イオン水および純アルコールを、1gの原料グラフェン粉末に130~150mlの脱イオン水および130~150mlの純アルコールの比率で混合し、磁力攪拌器を使って常温で24時間以上連続して攪拌し、混合グラファイト分散液を得るサブステップS11と、
フィルタ膜を使用して混合グラファイト分散液の吸引ろ過を実行し、湿ったグラファイトを得るサブステップS12と、
湿ったグラファイトを乾燥処理して、剥離されるべきグラフェン粉末を得るサブステップS13と、を含む。
【0011】
さらに、前記フィルタ膜は、孔径が450μm以下の有機フィルタ膜である。
【0012】
さらに、前記乾燥処理は、蒸発皿に置く湿ったグラフェンを75℃~85℃の恒温乾燥台に置き、8時間以上の連続乾燥処理を行う。
【0013】
さらに、前記混合無機酸溶媒は、濃度が60%~65%の硝酸および濃度が90%~100%の硫酸を、体積比1:2~1:4の間の任意の比率で調合した混合無機酸と、モル濃度が0.0001mol/ml~0.01mol/mlの範囲の臭素酸ナトリウムまたはカリウムとを含む。
【0014】
さらに、前記ステップS3は、丸底フラスコ内で0.5gの剥離されるべきグラフェン粉末に75ml~85mlの比率で混合無機酸溶媒を調合して混合し、2時間以上連続して撹拌することを含む。
【0015】
さらに、前記ステップS3は、攪拌過程中に50℃以下の温度を維持することをさらに含む。
【0016】
さらに、ステップS4において、前記グラフェン剥離処理は温度制御超音波処理を含み、前記温度制御超音波処理は、丸底フラスコに入れた剥離されるべきグラファイト粉末と混合無機酸溶媒混合液を、温度制御装置を有する超音波洗浄器に入れて6時間以上の超音波処理を連続して行うとともに、超音波処理過程において前記温度制御装置により超音波洗浄器の動作温度を50℃以下に保つことを含む。
【0017】
さらに、前記温度制御装置は、冷却水循環装置を含む。
【0018】
さらに、前記超音波洗浄器の動作温度は45℃以下である。
【0019】
さらに、前記超音波洗浄器は、2つの丸底フラスコにそれぞれ置かれる、2組の剥離されるべきグラファイト粉末と混合無機酸溶剤混合溶液に対して同時に超音波処理を行う。
【0020】
さらに、前記ステップS5は、
グラフェン混合液を過剰の脱イオン水と混合して、グラフェン希釈剤を得るサブステップS51と、
気密状態でグラフェン希釈剤を均一に攪拌した後静置分層させ、上澄み液と下濁液を得るサブステップS52と、
前記上澄み液を数回脱イオン水洗浄し、脱イオン水洗浄後の残留物を乾燥させて、グラフェン粉末状のグラフェン製品を得るサブステップS53と、を含む。
【0021】
さらに、前記サブステップS52は、磁力攪拌器を使用して2時間以上連続して攪拌した後、8時間以上静置分層させることにより、上澄み液と下濁液を得ることを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明に記載の混合無機酸溶媒に基づくグラフェンの調製法を使用して、高価な有機溶媒の代わりに調製が簡単で低コストの無機酸溶媒を使用して、溶媒剥離法によってグラフェン製品を調製することにより、毒性が大きく、調製条件が厳しいという有機溶媒の問題を回避することができると同時に、改質剤を添加することでグラフェン剥離処理に必要な時間を効果的に短縮し、グラフェンの調製効率と装置の利用効率を大幅に向上させる。温度制御可能な超音波処理によってグラフェンを得ることにより、高温でグラフェンが酸化されて酸化グラフェンに変換されるのを防ぐことができる。超音波処理後のグラフェン溶液は、さらに様々な形式なグラフェン製品に調製することができ、得られた前記グラフェン製品は、グラフェンの典型的な特性を有する。本発明に記載の方法は、単純かつ実行が容易であり、従来技術との比較において商業化、規模化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の混合無機酸溶媒に基づくグラフェンの調製法のフローチャートである。
【
図2】本発明による方法で調製されたグラフェン製品AFMのスキャン図である。
【
図3】本発明による方法で調製されたグラフェン製品AFMの断面高度グラフである。
【
図4】本発明による方法で調製されたグラフェン製品ラマンスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の内容をよりよく理解できるように、以下では図面と実施例を組み合わせて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の混合無機酸溶媒に基づくグラフェンの調製法のフローチャートであり、次のステップを含む。
【0026】
S1:原料グラフェン粉末の予備処理で不純物を除去した剥離されるべきグラフェン粉末を得る。このステップには次のサブステップが具体的に含まれている。
S11:原料グラフェン粉末と脱イオン水および純アルコールを、1gの原料グラフェン粉末に130~150mlの脱イオン水および130~150mlの純アルコールの比率で混合し、磁力攪拌器を使って常温で24時間以上を連続して攪拌し、混合グラファイト分散液を得て、特に、1gの原料グラフェン粉末に140mlの脱イオン水および140mlの純アルコールの比率で混合することができる。
S12:フィルタ膜を使用して混合グラファイト分散液の吸引ろ過を実行し、湿ったグラファイトを得て、より良いフィルタリング効果のため、前記フィルタ膜は孔径が450μm以下の有機フィルタ膜が好ましい。
S13:グラフェンを75℃~85℃の恒温乾燥台に置き、8時間以上の連続乾燥処理を行うことで隔離されるべきグラフェン粉末を得て、特に80℃の恒温乾燥処理を選択することができる。乾燥工程におけるグラフェンの汚染を回避するために、蒸発皿を穴あきラップで覆う方法を用いるのが好ましく、これは水の蒸発を保証することができ、グラフェンが汚染されるのを防ぐこともできる。
【0027】
S2:混合無機酸溶媒を調製する。具体的に、濃度が60%~65%の硝酸および濃度が90%~100%の硫酸を、体積比1:2~1:4の間の任意の調合比率で混合し、モル濃度が0.0001mol/ml~0.01mol/mlの範囲の臭素酸ナトリウムまたはカリウムを改質剤として添加し、混合無機酸溶媒を得る。特に、濃度が65%の硝酸と濃度が98%の硫酸を体積比で1:3に混合して、モル濃度範囲が0.001mol/mlの臭素酸ナトリウムまたは臭素酸カリウムを改質剤として添加し、改質剤として混合無機酸溶媒を得る。
【0028】
S3:剥離されるべきグラフェン粉末を混合無機酸溶剤に加えて、均一に攪拌する。具体的に、丸底フラスコ内で0.5gの剥離されるべきグラフェン粉末に75ml~85mlの比率で混合無機酸溶媒を混合し、恒温水浴磁力攪拌器で2時間以上連続して撹拌し、特に、0.5gの剥離されるべきグラフェン粉末に80mlの比率で無機酸溶媒を混合すると同時に、撹拌過程において恒温水浴磁力攪拌器に室温水または低温水を加えることで恒温水浴磁力攪拌器の動作温度を50℃以下に保ち、無機酸の酸化で発生する熱量を中和することを選択してもよいことを含む。
【0029】
S4:均一に攪拌した剥離されるべきグラフェン粉末と混合無機酸溶媒混合液に対してグラフェン剥離処理を実行して、グラフェン混合液を得る。特に、温度制御超音波処理を用いることができる。具体的に、丸底フラスコに入れた剥離されるべきグラファイト粉末と混合無機酸溶媒混合液温度制御装置を有する(例えば、冷却水循環装置)超音波洗浄器に入れて6時間以上の超音波処理を連続して行うとともに、超音波処理過程において前記温度制御装置により超音波洗浄器の動作温度を50℃以下に保つ。実際の操作では、超音波パワーが120W以上、超音波周波数が40kHzの超音波洗浄器を使用するのが好ましい。より理想的な超音波処理結果を得るために、処理過程では、180W超音波洗浄器により40kHzの周波数で20時間超音波処理を連続して行うとともに、冷却水循環装置により超音波処理過程において前記温度制御装置により超音波洗浄器の動作温度を45以下に保ち、超音波洗浄器の冷却水を定期的に循環させることで動作温度を確保する。さらに、超音波洗浄器の寸法および冷却水循環の温度制御レベルに応じて、超音波処理の作動効率を向上させるため、2つの丸底フラスコにそれぞれ置かれる、2組の剥離されるべきグラファイト粉末と混合無機酸溶剤混合溶液に対して同時に超音波処理を行うのが好ましい。同時に、本発明に記載の混合無機酸溶媒は、例えば、静置処理または機械的振動処理などの一般的な方法であるその他の形式のグラフェン剥離処理法にも使用でき、超音波処理方法に限定されない。
【0030】
S5:グラフェン混合液からグラフェン製品を抽出する。このステップには次のサブステップが具体的に含まれている。
S51:グラフェン混合液を過剰の脱イオン水と混合して(例えば、80~100mlのグラフェン混合液に1.8mlの脱イオン水の割合で調合する)、グラフェン希釈剤を得る。特に、無機酸溶液を脱イオン水と混合する際に大量の熱が急激に放出されることを防ぐために、グラフェン混合液を一滴ずつ磁力撹拌中の過剰の脱イオン水に滴下する方法を使用するのが好ましい。
S52:グラフェン希釈剤を均一に攪拌して静置分層させることにより、上澄み液と下濁液を得て、ラップフィルムでグラフェン希釈剤容器を包んで気密状態にし、磁力攪拌器を使用して2時間以上連続して攪拌した後、8時間以上静置させて分層させることにより、上澄み液と下濁液を得るのが好ましい。
S53:遠心分離機を使用して前記上澄み液を脱イオン水で数回洗浄し、蒸発皿で、脱イオン水で洗浄した後の残留物を広げ、55℃~65℃(好ましくは60℃)の恒温乾燥テーブルに置き、8時間以上連続して処理し、グラフェン粉末状のグラフェン製品を得て、そのうち、前記脱イオン水洗浄は、遠心分離機を使用して遠心試験管に入れた上澄みを、遠心分離処理し、処理後の上層の上3分の1を抽出して同量の脱イオン水を加え、必要な希釈効果(酸性溶液の含有量を0.13%以下に減らす)を達成して、好ましくは、5回以上脱イオン水を使用して洗浄し、同時に、同量の脱イオン水を加えた後、先に混合溶液を超音波で振動させて混合を促進することができる。
サブステップS52で生成された下濁液については、水性フィルタ膜を使用して前記下濁液を吸引濾過することができ、吸引濾過後に水性フィルタ膜に残っているグラフェンを55℃~65℃の恒温乾燥台に置いて1時間以上乾燥処理を続けることでグラフェンナノシート状のグラフェン製品を得る。特に、60℃の恒温乾燥台を使用して乾燥処理を行うのが好ましい。しかし、下濁液から得られたグラフェン製品の品質は、上澄み液から得られるものより品質が劣り、主に、得られたグラフェンの層数が多すぎて性能が悪いという事実によって表される。同時に、グラフェン希釈剤の使用は、上記の方法によるグラフェン製品の抽出に限らず、スピンコーティングまたは自己組立法によるグラフェン希釈剤を直接使用してグラフェン薄膜を調製することもでき、調製されたグラフェン薄膜は彫刻機で彫刻と成形を実行し、さらにグラフェンタトゥー電極シートまたはグラフェンタトゥー圧力センサー、パルスセンサーなどに加工できる。
【0031】
図2は、本発明による方法で調製されたグラフェン製品AFMのスキャン図を示す。
図3は
図2のグラフェン製品AFMのスキャン図の位置に対応する断面高度グラフである。AFM特性評価によって調製されたグラフェン製品の厚さは、ほとんどが10層以下であり、上記方法で得られたものはグラフェンであることを証明している。
【0032】
図4は上記方法で調製されたグラフェン製品ラマンスペクトル図である。
図3からはっきり見えるように、グラフェン製品はそれぞれ1350cm
-1、1582cm
-1および2700cm
-1付近に3つの典型的なグラフェン特性ピークを示し、1582cm
-1のピークよりも1350cm
-1のピークの方がはるかに低く、これはグラフェン製品の欠陥密度が比較的小さいことを示す。
【0033】
上記の方法で作製したグラフェン製品の4プローブ導電率試験を実施する。吸引ろ過で得られた厚さ0.3mmのフィルムのシート抵抗は380mΩ/sq~440mΩ/sqで、抵抗率は1.14mΩ・cm~1.32mΩ・cmであり、導電率が優れる。
【0034】
改質剤を含む混合無機酸溶媒の使用は、グラフェン剥離処理法によって使用される時間を効果的に短縮することができる。以下では、比較例を挙げて説明する。
全く同じ予備処理工程で得られた剥離されるべきグラフェン粉末をそれぞれ2等分し、同一体積の、改質剤を含む混合無機酸溶媒Aと改質剤を含まない混合無機酸溶媒Bを使用し、使用する2つの混合無機酸溶媒AとBは両方とも65%の硝酸と98%の硫酸を体積比1:3で混合し、混合無機酸溶媒Aにモル濃度範囲が0.001mol/mlの臭化ナトリウムを添加して改質剤とする。2つの混合物を均一に攪拌し、同じ超音波洗浄器に入れ、180Wの超音波パワーを使用して周波数40kHzの超音波処理を連続して実行し、混合物AとBを定期的にサンプリングして、得られたグラフェン製品の厚さをテストする。超音波処理が6時間続くと、混合物Aで得られたグラフェンをサンプルリングして観察できるように、80%以上が10層以下の厚さの合格品のグラフェンであり、同時に混合物Bで得られたサンプルリングの12%前後が10層以下であり、残りは効果的に分離していない。超音波処理が20時間まで続く場合、混合物Aで得られたグラフェンサンプリングをサンプルリングして観察できるように、99%以上が10層以下の厚さの合格品のグラフェンであり、混合物Bは超音波処理が48時間まで続いて初めて99%以上が10層以下の厚さの合格品のグラフェンを観察できる。同じ調製条件の下、改質剤を含まない混合無機酸溶媒よりも改質剤を含む混合無機酸溶媒を使用する場合、グラフェン剥離処理法に使用される時間を少なくとも10時間短縮でき、特に、十分なパワー(120W以上)を使用する超音波処理法により、グラフェン剥離処理法にかかる時間を20時間以上短縮できる。
【0035】
以上は本発明の好ましい具体的な実施の形態に過ぎず、本発明の請求範囲はこれに限らない。本分野に通じた当業者が本発明の開示する技術範囲内において容易に想到できる変化または置換は、何れも本発明の請求範囲に含まれるものとする。よって、本発明の請求範囲は特許請求の範囲に記述された請求範囲を基準とする。
【国際調査報告】