(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】集積光学デバイスにおける放射収集効率の向上
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20221012BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20221012BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20221012BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/03 Z
G02F1/01 F
G02B6/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507738
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 US2020045101
(87)【国際公開番号】W WO2021026291
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】カビリ、アリ
(72)【発明者】
【氏名】シェン、ビン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】プレストン、カイル
(72)【発明者】
【氏名】ホサリ、シャラト
【テーマコード(参考)】
2G043
2G057
2H137
2K102
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA06
2G043HA05
2G043HA15
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA02
2G043KA05
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2G043MA01
2G043MA04
2G057AA04
2G057AB01
2G057AC01
2G057BA03
2G057BD01
2G057BD04
2G057DB02
2G057DB10
2H137BA34
2H137BA41
2H137BA53
2H137BB03
2H137BB12
2H137BB17
2H137BC06
2H137BC16
2H137BC23
2H137BC31
2H137BC51
2H137BC64
2H137DB08
2H137EA02
2H137EA04
2H137EA05
2H137EA11
2K102BA21
2K102BB01
2K102BC01
2K102BD09
2K102DA16
2K102DB01
2K102DD10
2K102EA22
2K102EB04
2K102EB06
2K102EB22
(57)【要約】
集積デバイスにおいて光シグナル収集を改善するための装置および方法が記載される。マイクロディスク(1-605)は、集積デバイス内で形成され得、マイクロディスク(1-605)に入射し、マイクロディスク(1-605)によって再放射される放射線の収集および/または集中を増加させ得る。マイクロディスク(1-605)を含むことができる一例示的な集積デバイスは、分析物の検出および/または分析に使用され得る。そのような集積デバイスは、複数のピクセルを含み得、各々は、分析されるサンプルを受け取るための反応チャンバ(1-130)と、光学マイクロディスク(1-605)と、反応チャンバ(1-130)からの光放射を検出するように構成された光学センサ(1-122)とを有する。マイクロディスク(1-605)は、1つ以上の異なる屈折率値を有する1つ以上の周囲材料(1-610)に埋め込まれた第1の屈折率を有する誘電材料を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピクセルを有する基板であって、前記複数のピクセルのうちの2つ以上の各々が、
分析用の試料を保持するように構成される反応チャンバと、
前記反応チャンバに励起放射線を送達するように構成される導波路と、
前記反応チャンバから放射される放出放射線を検出するように構成される光学センサと、
前記導波路と前記光学センサとの間に配置されるマイクロディスクであって、前記光学センサによって受け取られる前記放出放射線の量が前記マイクロディスクなしで前記光学センサによって受け取られるであろう前記放出放射線の量と比較して増加するように構成される前記マイクロディスクと、
を含む、前記基板
を含む、微細加工光学構造。
【請求項2】
前記マイクロディスクは、前記放出放射線を収集および再放射するための共振空洞を形成する請求項1に記載の微細加工光学構造。
【請求項3】
前記マイクロディスクは、前記光学センサによって受け取られる前記放出放射線の量を増加させるように構成された少なくとも1つの同心リングによって取り囲まれている請求項1に記載の微細加工光学構造。
【請求項4】
前記少なくとも1つの同心リングは、前記マイクロディスクと同じ材料を含む請求項3に記載の微細加工光学構造。
【請求項5】
前記マイクロディスクは、前記マイクロディスクを取り囲む材料の第2の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する誘電材料を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項6】
前記マイクロディスクは、酸化物材料または窒化物材料を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項7】
前記マイクロディスクは、窒化ケイ素から形成される請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項8】
前記マイクロディスクは、前記導波路の下500nm~1500nmに配置される請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項9】
前記マイクロディスクは、100nm~800nmの厚さを有する請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項10】
前記マイクロディスクは、前記基板の表面に平行な平面で切り取ったとき楕円形の断面を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項11】
前記マイクロディスクは、前記基板の表面に平行な平面で切り取ったとき円形の断面を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項12】
前記マイクロディスクは、0.5μm~2μmの直径を有する請求項11に記載の微細加工光学構造。
【請求項13】
前記光学センサに入射する励起放射線を低減するように構成された前記マイクロディスクの下に配置された光学フィルタをさらに含む請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項14】
前記光学フィルタは、2次元または3次元の屈折率値の周期的変調を有する微細加工構造を含む請求項13に記載の微細加工光学構造。
【請求項15】
前記マイクロディスクの下に配置され、かつ、前記反応チャンバからの前記放出放射線が前記光学センサに到達させるとともに少なくともいくらかの散乱励起放射線が前記光学センサに到達することを遮断するように構成された少なくとも1つの絞り層をさらに含む請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項16】
前記基板上に集積され、かつ、前記光学センサに接続された相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路をさらに含む請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項17】
前記導波路は、複数の前記ピクセルに励起放射線を送達するように配置される請求項1~4のいずれか1項に記載の微細加工光学構造。
【請求項18】
集積デバイスを操作する方法であって、
光導波路から反応チャンバに励起放射線を送達することであって、前記光導波路および前記反応チャンバは前記集積デバイスの基板上に集積される、前記送達することと
前記反応チャンバからマイクロディスクを通って、前記基板上に集積されたセンサへ放出放射線を通過させることと、
前記マイクロディスクなしで受け取られるであろう前記放出放射線の量と比較して、前記センサによって受け取られる前記放出放射線の量を前記マイクロディスクを用いて増加させることと
を含む前記方法。
【請求項19】
前記反応チャンバから絞りを通って前記放出放射線を通過させることをさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記絞りで前記励起放射線を少なくとも部分的に遮断することをさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記反応チャンバから弁別光学構造を通って前記放出放射線を通過させることをさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記マイクロディスクは、前記マイクロディスクを取り囲む材料の第2の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する誘電材料を含む請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記マイクロディスクは、酸化物材料または窒化物材料を含む請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記マイクロディスクは、窒化ケイ素から形成される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
集積デバイスを加工する方法であって、
基板上の複数のピクセルのそれぞれに、反応チャンバと、励起放射線を前記反応チャンバに送達するように配置された光導波路と、前記反応チャンバからの放出放射線を受け取るように配置された光学センサとを形成することと、
前記光導波路と前記光学センサとの間の各ピクセルにおいてマイクロディスクを形成することであって、前記マイクロディスクは、前記光学センサによって受け取られる前記放出放射線の量が前記マイクロディスクなしで受け取られるであろう前記放出放射線の量と比較して、増加するように構成される、前記マイクロディスクを形成することと
を含む前記方法。
【請求項26】
前記マイクロディスクを形成することは、第1の誘電材料を前記基板上に堆積させ、前記第1の誘電材料をエッチングして、前記第1の誘電材料内に空隙を形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロディスクを形成することは、前記第1の誘電材料内の前記空隙を、前記第1の誘電材料とは異なる第2の材料で満たすことをさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の誘電材料は、第1の屈折率を有し、前記第2の材料は、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の誘電材料は、窒化ケイ素である請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
各ピクセルにおいて前記マイクロディスクを形成する前に、少なくとも1つの絞り層を形成することをさらに含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
各ピクセルにおいて前記マイクロディスクを形成する前に光学フィルタを形成することをさらに含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
各ピクセルにおいて前記光導波路を形成する前に平坦化プロセスを実行することをさらに含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、集積デバイス内における放射線の収集効率および/または集中を高めることができる光学マイクロディスクに関連する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの微細加工チップは、多数の分析物または試料を並列分析するために使用され得る。場合によっては、光励起放射線がチップ上の複数の個別の部位に送達され、そこで別々の分析が実行される。励起放射線は、各部位における試料、その試料に付着されたフルオロフォア、またはその試料との相互作用に関与するフルオロフォアを励起し得る。励起に応答して、放射線が或る部位から放射され得、放射線はセンサによって検出することができる。或る部位の放射された放射線、または放射された放射線の欠如から得られた情報を使用して、その部位の試料の特徴を決定できる。
【発明の概要】
【0003】
光学マイクロディスクに関連する装置および方法が記載される。そのような光学マイクロディスクは、マイクロディスクに入射し、マイクロディスクを通過して検出器に到達する放射線の収集および/または集中を改善し得る。光学マイクロディスクは、フォトダイオード、CCDフォトダイオードアレイ、CMOSフォトダイオードアレイ、イメージセンサアレイ、蛍光センサアレイ、バイオセンサチップなどの光学センサを含む集積デバイス内に形成され得、集積デバイス(またはラボオンチップ(lab on chips))は、例えば遺伝子配列決定および/またはタンパク質配列決定に適合する。そのような用途において、検出される放射線の強度が非常に低く、シグナル対ノイズ比(SNR)が小さくなり、検出精度が低下する場合がある。そのようなデバイス内に光学マイクロディスクを含めることは、放射線をセンサ上に集束または集中させるのに役立ち、それによってSNRを増加させ、その結果、検知精度の向上および/またはより速い検知につながり得る。
【0004】
一例示的な実施形態において、光学マイクロディスクは、試料を分析するための機器に関連して使用することができ、光学検出は、試料に送達される光励起に応答して、試料、または、試料に付着されるかまたは試料に結合されるフルオロフォアによって放射される放射線を分析するために使用される。試料には、機器によって分析される遺伝物質またはタンパク質などの生物学的物質が含まれ得る。より一般的には、本明細書に記載される光学マイクロディスクの実施形態は、放出放射線または他の放射線の収集および/または集中を増加させることによってSNRを増加させることが所望される用途(画像化、表示、または光通信の目的など)で使用し得る。本明細書に記載される光学マイクロディスクは、他の可能なコンテキストのうちとりわけ、光通信システム内の集積検出器、LEDエミッタアレイ、および/またはイメージングアレイなどと組み合わせて使用され得る。
【0005】
いくつかの実施形態は、1つ以上のピクセルを有する基板上の微細加工構造に関する。各ピクセルは、反応チャンバと、反応チャンバに励起放射線を送達するように構成された導波路と、反応チャンバから放射された放出放射線を検出するように構成された光学センサと、導波路と光学センサとの間に配置されたマイクロディスクとを含み得、マイクロディスクは、光学センサによって受け取られる放出放射線の量が、マイクロディスクなしで光学センサによって受け取られるであろう放出放射線の量と比較して、増加するように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態において、集積デバイスを操作する方法に関連する。本方法は、光導波路から反応チャンバに励起エネルギを送達する動作と、光導波路および反応チャンバは、集積デバイスの基板上に集積されていることと、反応チャンバからマイクロディスクを通って基板上に集積されたセンサに放出放射線を通過させる動作と、マイクロディスクなしで受け取られるであろう放出放射線の量と比較して、センサによって受け取られる放出放射線の量をマイクロディスクを用いて増加させる動作とを含む。
【0007】
いくつかの実施は、集積デバイスを加工する方法に関連する。本方法は、基板上の複数のピクセルのそれぞれに、反応チャンバと、励起放射線を反応チャンバに送達するように配置された光導波路と、反応チャンバからの放出放射線を受け取るように配置された光学センサとを形成する動作と、導波路と光学センサとの間の各ピクセルにおいてマイクロディスクを形成する動作とを含み、マイクロディスクは、マイクロディスクなしで受け取られるであろう放出放射線の量と比較して、光学センサによって受け取られる放出放射線の量を増加させるように構成される。
【0008】
前述の装置および方法の実施形態は、上記または以下でさらに詳細に説明される態様、特徴、および動作の任意の適切な組み合わせで実施し得る。本教示のこれらおよび他の態様、実施形態、および特徴は、添付の図面と併せて以下の説明からより完全に理解することができる。
【0009】
以下の図を参照して、様々な態様および実施形態を説明する。図は必ずしも縮尺どおりで描かれているわけではないことを理解されたい。図面において、様々な図に示される同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表される。明確性のために、すべての図面においてすべての構成要素にラベル付けされるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1-1】いくつかの実施形態による、1つ以上の導波路および各反応チャンバに対応する検出器を介して光パルスを励起することができる反応チャンバアレイを有する集積デバイスの一部の例を示す図。
【
図1-2】いくつかの実施形態による反応チャンバと、光導波路と、センサとを含むピクセルのさらなる詳細を示す図。
【
図1-3】いくつかの実施形態による、反応チャンバ内で発生し得る生物学的反応の一例を示す図。
【
図1-4】いくつかの実施形態による、反応チャンバ内で発生し得るポリペプチド配列決定の一例を示す図。
【
図1-5】いくつかの実施形態による、反応チャンバ内で発生し得るポリペプチド配列決定の一例を示す図。
【
図1-6】いくつかの実施形態による、集積デバイスのピクセルにおいてマイクロディスクを含む、一例示的な微細加工構造を概略的に示す図。
【
図1-7】いくつかの実施形態による、集積デバイスのピクセルにおいてリングによって取り囲まれたマイクロディスクを含む、一例示的な微細加工構造を概略的に示す図。
【
図2-1】いくつかの実施形態による、集積デバイスのピクセルにおける、一例示的な微細加工構造を概略的に示す図。
【
図2-2】いくつかの実施形態による、集積デバイスのピクセルにおける反応チャンバからのコンピューターシミュレーションされた光放射パターンを示す図。
【
図2-3】いくつかの実施形態による、集積デバイスのピクセルにおける反応チャンバからのコンピューターシミュレーションされた光放射パターンを示す図。
【
図3-1】いくつかの実施形態による、集積デバイス内のマイクロディスクの位置に応じた正規化された放射収集効率を示すプロットの図。
【
図3-2】いくつかの実施形態による、絞り(iris)直径に応じた、マイクロディスク有りおよび無しの放射収集効率を示すプロットの図。
【
図3-3】いくつかの実施形態による、マイクロディスクの直径および絞りの直径に応じた正規化された収集効率を示す等高線プロットの図。
【
図3-4】いくつかの実施形態による、上部絞り直径および下部絞り直径に応じたマイクロディスクのためにセンサによって受け取られる放出放射線の量の増加を示す等高線プロットの図。
【
図4-1】いくつかの実施形態による、集積デバイスのピクセルにおける一例示的な微細加工構造の走査型電子顕微鏡画像の図。
【
図4-2】いくつかの実施形態による、集積デバイスのピクセルにおける一例示的な微細加工構造の走査型電子顕微鏡画像の図。
【
図5-1A】いくつかの実施形態による、マイクロディスクを加工するための一例示的な方法に関連する構造を示す図。
【
図5-1B】いくつかの実施形態による、マイクロディスクを加工するための一例示的な方法に関連する構造を示す図。
【
図5-1C】いくつかの実施形態による、マイクロディスクを加工するための一例示的な方法に関連する構造を示す図。
【
図5-1D】いくつかの実施形態による、マイクロディスクを加工するための一例示的な方法に関連する構造を示す図。
【
図5-1E】いくつかの実施形態による、マイクロディスクを加工するための一例示的な方法に関連する構造を示す図。
【
図5-1F】いくつかの実施形態による、マイクロディスクを加工するための一例示的な方法に関連する構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴および利点は、図面と併せて解釈される場合、以下に記載される詳細な説明からより明らかになるであろう。図面を参照して実施形態を説明する場合、方向の参照(「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」など)を使用し得る。このような参照は、読者が通常の方向で図面を見るための補助としてのみ意図される。これらの方向の参照は、具体化されたデバイスの特徴の好ましいまたは唯一の方向を説明することを意図するものではない。デバイスは、他の方向を使用して具体化し得る。
【0012】
I.光学マイクロディスクを有する集積デバイス
発明者らは、単一の分子、タンパク質、または粒子の検出を実行するためのコンパクトで高速な装置が、生物学的および/または化学的サンプルの複雑な定量的測定を実行するコストを削減し、かつ、生化学的技術の発見の速度を急速に向上させることができることを認識し、理解している。また、容易に輸送可能な費用効果の高いデバイスは、開発途上地域の人々に、彼らの健康および福祉を劇的に改善する可能性のある必須な診断試験へのアクセスを提供する可能性がある。例えば、本明細書に記載の実施形態は、発展途上国の自宅にいる個人によって、または移動式診療所または遠隔診療所の医師によって使用され得る血液、尿および/または唾液の診断試験に使用され得る。場合によっては、サンプルを分析するためのポータブル携帯型機器を有することが望ましく、その結果、技術者または医療関係者は、サービスが必要なフィールドに機器を簡単に持ち運び、サンプルを迅速かつ正確に分析できる。いくつかの実施形態によれば、携帯型機器は、遺伝子配列決定、タンパク配列決定、または全血球計算分析などの従来のサンプル分析を実行するために使用され得る。より高度な臨床設定では、より複雑なサンプル分析のためにデスクトップサイズの機器が望ましい場合がある。
【0013】
そのようなサンプルを分析するための機器は、1つ以上のチップ上に形成される微細加工された構造およびデバイス(例えば、電子増幅器、論理デバイス、光電子デバイス、および/またはマイクロ流体デバイスなど)を利用し得る。そのようなチップは、機器の全体的なサイズを減少させることに役立つ。そのようなチップ用のダイは、1つまたは複数(例えば、数百、数千、数百万、またはそれ以上)のピクセルを有し得、各々が、分析物検出および/またはシグナル分析に関与するように構成された1つ以上の微細加工デバイスを含む。いくつかの実施において、パッケージ化されたダイ(本明細書において「集積デバイス」または「チップ」とも呼ばれる)は、ユーザが測定のために機器に挿入し、測定の完了後に廃棄する、単回使用の使い捨て可能な要素であり得る。場合によっては、機器および集積デバイスは、生体分子の検出および/または分析のために構成され得る。分子は、限定ではなく例として、タンパク質および/またはDNAであり得る。そのような集積デバイスは、試料の超並列分析を実行するために使用され得(例えば、「生物学的アッセイ」または「バイオアッセイ」を実行し)、それにより、そのような生物学的分析が完了され得る速度を増加させる。いくつかの実施形態において、使い捨て可能な集積デバイスは、ユーザによって高度な分析機器の入れ物に据え付けられ、機器内の光学部品および電子部品と相互に作用することができる。使い捨て可能な集積デバイスは、新しいサンプル分析ごとにユーザが容易に交換できる。
【0014】
いくつかの実施形態において、集積デバイスは、バイオ光電子チップを含むことができ、バイオ光電子チップ上には、分析物の並列光学分析のための反応チャンバを有する多数のピクセルが形成および配置される。バイオ光電子チップの一例示的な部分が
図1-1に示され、複数のピクセル(この例では8つ)の各々に対する、反応チャンバ1-130および対応するセンサ1-122を示す。分析物が反応チャンバ1-130に存在し、1つまたは複数のルミネッセンス発光マーカー(本明細書では「フルオロフォア」とも呼ばれる)でタグ付けされている場合、マーカーは、光導波路1-112から反応チャンバ1-130に送達される励起放射線1-121によって励起され得る。マーカーからの放出放射線は、対応するセンサ1-122によって検出でき、ピクセル内に存在するマーカーのタイプを識別するために使用でき、ひいては、ピクセル内の分析物に関する情報を提供できる。発明者らは、ピクセル内の1つ以上のマーカーからの放出放射線(シグナル)の量が非常に低くなる可能性があるので、マーカーからの放出放射線の検出に基づく分析が、シグナル対ノイズ比(SNR)によって著しく影響を受け得ることを認識および理解している。光学ノイズの源は、対応するセンサ1-122の反応チャンバ1-130内のルミネッセンス発光マーカーの光放射からではない任意の光放射線源を含むことができる(例えば、隣接する反応チャンバからの迷放出放射線、導波路1-112、1-115の領域からの散乱励起放射線、チップの外側からの散乱光など)。ピクセル内のそれぞれの光学センサ1-122に到達する反応チャンバ1-130からの放出放射線の量を増加させることにより、SNRが増加され得、より速くおよび/またはより正確な測定をもたらし得る。
【0015】
一例示的な実施形態において、
図1-4に示されるように、対応する光学センサ1-122によって受け取られる反応チャンバ1-130からの放出放射線の量を増加させる1つの方法は、反応チャンバ1-130とセンサ1-122との間に光学マイクロディスク1-605を配置することである。誘電材料から形成された光学マイクロディスクは、そうでなければ失われる可能性がある反応チャンバ1-130からの放出放射線を収集し、光学センサ1-122に放出放射線を向け直すことができる。集積光学センシングアプリケーションにおいてSNRを増加させるための光学マイクロディスクコレクタ(以下、「光学マイクロディスク」または「マイクロディスク」)の実施形態を以下に説明する。本明細書で説明される光学マイクロディスクに関連する様々な態様は、多くの方法のいずれかで実装され得ることが理解されるべきである。特定の実装の例は、説明のみを目的として本明細書に提供されている。加えて、以下の実施形態に記載される様々な態様は、単独でまたは任意の組み合わせで使用され得、本明細書に明示的に記載される組み合わせに限定されない。
【0016】
図1-1に戻ると、いくつかの実施形態において、励起放射線1-121は、格子結合器1-110を介して1つ以上の導波路1-112に結合し得るが、場合によっては、光導波路の端部への結合が使用され得る。励起放射線121は、参照によってその全体が本明細書に援用される、2014年11月17日に出願された「Integrated Device with External Light Source for Probing Detecting and Analyzing Molecules」と題された米国特許出願公開第2015/0141267号明細書に記載されているような放射線源によって生成することができる。いくつかの実施形態によれば、象限検出器(quad detector)1-120は、励起放射1-121のビームの格子結合器1-110への位置合わせを補助するために、格子結合器1-110の近くの半導体基板1-105(例えば、シリコン基板、しかし、他の半導体材料が使用され得る)上に配置され得る。いくつかの実施において、1つ以上のセンサ1-122を使用して、励起放射線を検知し、励起放射線1-121を格子結合器1-110に位置合わせすることを補助し得る。センサ1-122は、光検出器(例えば、時間ビニング光検出器(time-binning photodetectors)または単一光子アバランシェフォトダイオード)を含み得る。1つ以上の導波路1-112および反応チャンバ1-130は、基板、導波路、反応チャンバ、およびセンサ1-122の間に誘電体層(例えば、二酸化ケイ素層、図示せず)を介在させて、同じ半導体基板1-105上に集積され得る。センサ1-122は、相互接続(図示せず)を介して、基板上の他の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路に接続し得る。光導波路1-115の底部からセンサ1-122までの距離は、500nm~10μmであり得る。
【0017】
各導波路1-112は、導波路に沿って反応チャンバに結合された光学パワーを均等化するために、反応チャンバ1-130の下にテーパ部分1-115を含み得る。テーパを小さくすると、導波路のコアの外側により多くの励起放射線エネルギが強制され得、反応チャンバへの結合が増加し、反応チャンバへの励起放射線結合の損失を含む、導波路に沿った光損失が補償される。第2格子結合器1-117を各導波路の端部に配置して、光学エネルギを集積フォトダイオード1-124に向け得る。集積フォトダイオードは、導波路に結合された電力量を検出し得、例えば、格子結合器1-110に入射する励起放射線1-121の位置および角度を制御する、例えばビームステアリングモジュールを制御する、フィードバック回路に電気シグナルを提供し得る。
【0018】
反応チャンバ1-130は、導波管のテーパ部分1-115と位置合わせされ得、タブ1-140にはめ込まれ得る。金属コーティングおよび/または多層コーティング1-150を、反応チャンバの周囲および導波路の上に形成して、反応チャンバ1-130内にない(例えば、反応チャンバ上の溶液に分散された)フルオロフォアの励起を防止し得る。金属コーティングおよび/または多層コーティング1-150は、各導波路の入力端および出力端における導波路1-112内の励起エネルギの吸収損失を低減するために、タブ1-140の縁を越えて隆起され得る。いくつかの実施において、多層の弁別光学構造が、各センサ1-122の上に形成され得、フルオロフォアからの放射よりも励起放射線を優先的に減衰するように構成され得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、反応チャンバ1-130は、酸化物または窒化物などの透明または半透明の材料で形成し得、その結果、光導波路1-115からの励起放射線および反応チャンバ1-130からの放出放射線は、例えば、10%より多く減衰することなく透明または半透明の材料を通過し得る。いくつかの実施形態によれば、反応チャンバ1-130は、50nm~1μmの深さを有し得る。いくつかの実施形態において、反応チャンバ1-130の最小直径は、50nm~300nmであり得る。反応チャンバ1-130がゼロモード導波路として形成される場合、いくつかの実施において、最小直径は50nmよりさらに小さい場合がある。大きな分析物を分析する場合、最小直径は300nmより大きい場合がある。反応チャンバは、反応チャンバの底部が導波路1-115の上部から最大500nm上であり得るように、光導波路1-115の頂部の上に配置し得る。
【0020】
図1-1に示される単一の列に加えて、複数の列の導波路1-112、反応チャンバ1-130、および光検出器1-122が、集積デバイス上にあり得る。例えば、いくつかの実施において、64列があり、各々が512個の反応チャンバを有し、合計32,768個の反応チャンバがある場合がある。他の実施は、より少ないか、またはより多い反応チャンバを含み得、そして他のレイアウト構成を含み得る。場合によっては、64列を超えて512を超える反応チャンバが一列に存在する可能性があり、その結果、チップ上のピクセルおよび反応チャンバの総数は64,000~10,000,000になる可能性がある。励起放射電力は、1つ以上のスター結合器またはマルチモード干渉結合器(図示せず)を介して、または光結合器1-110と複数の導波路1-112との間に配置された他の任意の手段によって、複数の導波路1-112に分配され得る。場合によっては、参照によってその全体が援用される2019年6月14日に出願された「Sliced Grating Coupler with Increased Beam Alignment Sensitivity」と題される米国仮特許出願62/861,832号明細書に記載されているように、光結合器1-110は、入力ビームが複数のシングルモード導波路1-112に同時に結合されるように、複数のシングルモード導波路1-112にまたがり得る。参照によりその全体が本明細書に援用される2015年8月7日に出願された「Integrated Device for Probing,Detecting and Analyzing Molecules」と題された米国特許出願第14/821,688号明細書に記載されている微細加工プロセスによって、導波管1-112および反応チャンバ1-130は、形成することができる。
【0021】
反応チャンバ1-130内で起こる生物学的反応の非限定的な例が
図1-2に示されるが、他の反応または分析物が他の用途において使用される場合がある。この例において、標的核酸1-210に相補的な成長鎖1-212へのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の連続的な取り込みが、反応チャンバ1-130内で行われている。DNAを配列決定するために、連続的な取り込みを検出することができる。反応チャンバは、約150nm~約250nmの深さ、および約80nm~約160nmの直径を有し得る。金属化層1-240(任意選択的に電気基準電位のための金属化を含むことができる)は、光検出器の上にパターン化され得、隣接する反応チャンバおよび他の不要な軸外光源からの迷光を遮断するアパーチャを提供し得る。いくつかの実施形態によれば、ポリメラーゼ1-220は、反応チャンバ1-130内に配置することができる(例えば、チャンバのベースに付着される)。ポリメラーゼは、標的核酸1-210(例えば、DNAに由来する核酸の一部)を取り込み、相補的核酸の成長鎖を配列決定して、DNA1-212の成長鎖を生成し得る。異なるフルオロフォアで標識されたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体1-310(
図1-3に示されている)は、反応チャンバ1-130の上の溶液に分散され、反応チャンバに入ることができる。
【0022】
標識されたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体1-310が、
図1-3に示されるように、相補的核酸の成長鎖に組み込まれる場合、1つ以上の付着されたフルオロフォア1-330は、導波路1-115から反応チャンバ1-130に結合された光エネルギ(励起放射線)のパルスによって繰り返し励起され得る。いくつかの実施形態において、一または複数のフルオロフォア1-330は、任意の適切なリンカー1-320を用いて1つ以上のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体1-310に付着させてよい。組み込み事象は、最大約100msの期間続き得る。この間、フルオロフォアの励起に起因する蛍光放出放射線のパルスは、センサ1-122で検出され得る。異なる発光特性(例えば、蛍光減衰率、強度、蛍光波長)を有するフルオロフォアを異なるヌクレオチド(A、C、G、T)に付着させることにより、各核酸がDNA1-212の鎖に組み込まれている間に異なる発光特性を検出および区別することは、DNAの成長鎖の配列の決定を可能にする。複数の反応チャンバからの結果を比較することにより、ポリメラーゼによるヌクレオチド取り込みの任意のエラーを検出でき、標的DNAの遺伝子配列を決定することができる。
【0023】
いくつかの態様において複数の実施形態は、末端アミノ酸と標識されたアミノ酸認識分子および標識された切断試薬(例えば、標識されたエキソペプチダーゼ)との結合相互作用を評価することにより、ポリペプチドおよびタンパク質の配列決定をリアルタイムで行う方法が含まれる。
図1-4は、個別の結合事象がシグナル出力1-400のシグナルパルスを生じさせる配列決定の方法の一例を示す。
図1-4の挿入パネルは、このアプローチによるリアルタイム配列決定の一般的なスキームを示す。示されるように、標識されたアミノ酸認識分子1-410は、末端アミノ酸(ここではリジンとして示されている)に選択的に結合し、そこから解離することができる。この結合および解離により、シグナル出力1-400に一連のパルスが生じ、これは、末端アミノ酸を特定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、この一連のパルスは、対応する末端アミノ酸の同一性を診断し得るパルスパターンを提供する。
【0024】
理論に束縛されることを望まないが、標識されたアミノ酸認識分子1-410は、結合の会合速度(kon)および結合の解離速度(koff)によって定義される結合親和性(KD)にしたがって選択的に結合および解離する。速度定数koffおよびkonは、それぞれパルス持続時間(例えば、検出可能な結合事象に対応する時間)およびパルス間持続時間(例えば、検出可能な結合事象間の時間)の決定要因である。いくつかの実施形態において、これらの速度は、最良の配列決定精度を与えるパルス持続時間およびパルス速度を達成するように設計できる。
【0025】
挿入パネルに示されるように、配列決定反応混合物は、標識されたアミノ酸認識分子1-410の標識とは異なる検出可能な標識を含む標識された切断試薬1-420をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、標識された切断試薬1-420は、標識されたアミノ酸認識分子1-410の濃度よりも低い濃度で混合物中に存在し得る。いくつかの実施形態において、標識された切断試薬1-420は、ほとんどまたはすべてのタイプの末端アミノ酸を切断するような幅広い特異性を示す。
【0026】
シグナル出力1-400の推移によって示されるように、いくつかの実施形態において、標識された切断試薬1-420による末端アミノ酸切断は、一意に同定可能なシグナルパルス(
図1-4では「切断」事象として示される)を生じさせる可能性があり、これらの事象は、標識アミノ酸認識分子1-410の結合パルスおよび解離パルスより、低い頻度で発生し得る。このようにして、ポリペプチドまたはタンパク質のアミノ酸を、リアルタイム配列決定プロセスでカウントおよび/または同定することができる。シグナル出力1-400によってさらに示されるように、いくつかの実施形態において、標識されたアミノ酸認識分子1-410は、各タイプのアミノ酸に対応する異なる結合特性および解離特性を有する1より多いタイプのアミノ酸を結合するように設計でき、これにより、一意に同定可能なパルスパターンが生成される(例えば、「K」、「F」および「Q」セットのパルスで示される)。いくつかの実施形態において、複数の標識されたアミノ酸認識分子を使用し得、各々、対応する末端アミノ酸を同定するために使用し得る診断パルスパターンを有する。
【0027】
いくつかの態様において、実施形態は、末端アミノ酸修飾および切断の反復サイクルを受ける標識ペプチド、標識ポリペプチド、または標識タンパク質のルミネッセンス発光を検出することにより、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を配列決定する方法を含む。例えば、
図1-5は、エドマン分解による標識ポリペプチド配列決定の方法を示す。いくつかの実施形態において、本方法は、一般に、エドマン分解による他の配列決定方法に関して説明したように進行する。例えば、いくつかの実施形態において、
図1-5に示されるステップ(1)および(2)は、それぞれ、エドマン分解反応における末端アミノ酸修飾および末端アミノ酸切断に実行され得る。
【0028】
図1-5に示される例に示されるように、本方法は、標識ポリペプチドの末端アミノ酸を修飾するステップ(1)を含み得る。いくつかの実施形態において、修飾は、末端アミノ酸をイソチオシアネート(例えば、PITC)と接触させて、イソチオシアネート修飾末端アミノ酸1-510を形成することを含む。いくつかの実施形態において、イソチオシアネート修飾1-510は、末端アミノ酸を、切断試薬(例えば、化学的または酵素的切断試薬)による除去に対してより感受性のある形態に変換する。したがって、いくつかの実施形態において、本方法は、エドマン分解のための化学的または酵素的手段を使用して、修飾末端アミノ酸を除去するステップ(2)を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、本方法は、ステップ(1)から(2)を複数のサイクル繰り返すことを含み、その間に、標識ポリペプチドのルミネッセンス発光が検出される。末端からの標識アミノ酸の除去に対応する切断事象は、例えば
図1-4に関連して記載されるように、検出されたシグナルの減少として検出され得る。いくつかの実施形態において、
図1-5に示されるように、ステップ(2)に続く信号の変化がないことは、未知のタイプのアミノ酸を同定する。したがって、いくつかの実施形態において、部分配列情報は、検出されたシグナルの変化に基づいて決定された同一性によってアミノ酸タイプを割り当てることによって、または、検出されたシグナルに変化がないことに基づいて、未知のアミノ酸タイプであると同定することによって、各連続ラウンド中にステップ(2)に続いて検出されたシグナルを評価することによって決定され得る。
【0030】
いくつかの実施形態は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質からアミノ酸配列情報を決定するために(例えば、1つ以上のポリペプチドを配列決定するために)有用である。いくつかの実施形態において、単一のポリペプチド分子について、アミノ酸配列情報を決定することができる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸が標識され(例えば、直接的または間接的に)、ポリペプチド中の標識アミノ酸の相対位置が決定される。いくつかの実施形態において、タンパク質中のアミノ酸の相対位置は、一連のアミノ酸標識ステップおよび切断ステップを使用して決定され、それらの例は、
図1-4および
図1-5に関連して上記で説明される。
【0031】
いくつかの実施形態において、末端アミノ酸(例えば、N末端またはC末端アミノ酸)の同一性が評価され、その後、末端アミノ酸が除去され、末端の次のアミノ酸の同一性が評価され、このプロセスは、ペプチド中、ポリペプチド中、またはタンパク質中の複数の連続するアミノ酸が評価されるまで繰り返される。いくつかの実施形態において、アミノ酸の同一性を評価することは、存在するアミノ酸のタイプを決定することを含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸のタイプを決定することは、例えば、天然に存在する20個のアミノ酸のどれが末端アミノ酸であるかを決定することによって(例えば、個々の末端アミノ酸について特異的な認識分子を使用して)、実際のアミノ酸同一性を決定することを含む。しかしながら、いくつかの実施形態において、末端アミノ酸タイプの同一性を評価することは、ポリペプチドの末端に存在し得る潜在的なアミノ酸のサブセットを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、これは、アミノ酸が1つ以上の特定のアミノ酸ではない(したがって、他のアミノ酸のいずれかである可能性がある)と決定することによって達成できる。いくつかの実施形態において、これは、(例えば、2つ以上の末端アミノ酸の特定のサブセットに結合する認識分子を使用して)特定のアミノ酸のサブセットのどれがポリペプチドの末端にあり得るかを決定することによって(例えば、サイズ、電荷、疎水性、結合特性に基づいて)達成することができる。
【0032】
ポリペプチドのアミノ酸は、例えば、ポリペプチド上の1つ以上のタイプのアミノ酸に選択的に結合するアミノ酸認識分子を使用して、間接的に標識することができる。ポリペプチドのアミノ酸は、例えば、ポリペプチド上の1つ以上のタイプのアミノ酸側鎖を一意に同定可能な標識で選択的に修飾することによって直接標識することができる。アミノ酸側鎖の選択的標識の例示的な方法、および標識ポリペプチドの調製および分析に関連する詳細は、(例えばSwaminathanら、PLoS Comput Biol.2015,11(2):e1004080参照)に記載されている。したがって、いくつかの実施形態において、1つ以上のタイプのアミノ酸は、1つ以上のタイプのアミノ酸に選択的に結合する1つ以上のアミノ酸認識分子の結合を検出することによって同定される。いくつかの実施形態において、1つ以上のタイプのアミノ酸は、標識ポリペプチドを検出することによって同定される。
【0033】
いくつかの実施形態において、タンパク質中の標識アミノ酸の相対位置は、タンパク質からアミノ酸を除去することなく、細孔(例えば、タンパク質チャネル)を通して標識タンパク質を移動させ、タンパク質分子中の標識アミノ酸の相対位置を決定するために、細孔を通って移動する間の標識アミノ酸からのシグナル(例えば、Foerster共鳴エネルギ移動(FRET)シグナル)を検出することによって決定することができる。
【0034】
本明細書で使用されるとき、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列決定は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列情報を決定することを指す。いくつかの実施形態において、これは、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の一部(またはすべて)の各連続アミノ酸の同一性を決定することを含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、これは、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質内のアミノ酸のサブセットの同一性を評価すること(例えば、ペプチド内、ポリペプチド内、またはタンパク質内の各アミノ酸の同一性を決定することなく、1つ以上のアミノ酸タイプの相対位置を決定すること)を含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、ペプチド中、ポリペプチド中、またはタンパク質中の異なるタイプのアミノ酸の相対位置を直接決定することなく、アミノ酸含有量情報をペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質から得ることができる。アミノ酸含有量のみを使用して、存在するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の同一性を推測し得る(例えば、アミノ酸含有量をペプチド情報、ポリペプチド情報、またはタンパク質情報のデータベースと比較し、どのペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が同じアミノ酸含有量を有するかを決定することによって)。
【0035】
いくつかの実施形態において、より長いポリペプチドまたはタンパク質から(例えば、酵素的および/または化学的切断を介して)得られた複数のポリペプチド産物の配列情報を分析して、より長いポリペプチドまたはタンパク質の配列を再構築または推測することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本出願は、ポリペプチドまたはタンパク質の複数のフラグメントを配列決定することによって、ポリペプチドまたはタンパク質を配列決定するための組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドまたはタンパク質の配列決定は、複数のポリペプチドまたはタンパク質フラグメントの配列情報を組み合わせて、そのポリペプチドまたはタンパク質の配列を同定および/または決定することを含む。いくつかの実施形態において、配列情報を組み合わせることは、コンピュータのハードウェアおよびソフトウェアによって実行され得る。本明細書に記載の方法は、生物のプロテオーム全体などの関連するポリペプチドのセットを配列決定することを可能にし得る。いくつかの実施形態において、本出願の態様にしたがって、複数の単一分子配列決定反応が(例えば、単一のバイオ光電子チップ上で)並列して実行される。例えば、いくつかの実施形態において、複数の単一分子配列決定反応は、各々単一チップ上の別々のサンプルウェルで実行される。
【0036】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法は、タンパク質の複雑な混合物を含むサンプル中の個々のタンパク質の配列決定および同定に使用し得る。いくつかの実施形態において、本出願は、タンパク質の複雑な混合物中の個々のタンパク質を一意に同定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、個々のタンパク質は、タンパク質の少なくとも部分的なアミノ酸配列を決定することにより、混合サンプル内で検出される。いくつかの実施形態において、タンパク質の部分的なアミノ酸配列は、おおよそ5~50個のアミノ酸の連続した範囲内にある。
【0037】
特定の理論に拘束されることを望まないが、ほとんどのヒトタンパク質は、プロテオミクスデータベースを参照して、不完全な配列情報を使用して同定できると考えられている。例えば、ヒトのプロテオームの単純なモデリングでは、6~40個のアミノ酸の範囲内で4種類のアミノ酸を検出するだけで、タンパク質のおおよそ98%を一意に同定できることが示されている(例えばSwaminathanら、PLoS Comput Biol.2015,11(2):e1004080、および、Yaoら、Phys.Biol.2015,12(5):055003参照)。したがって、タンパク質の複雑な混合物は、おおよそ6~40個のアミノ酸の短いポリペプチドフラグメントに分解され得(たとえば、化学的に分解され得る、酵素的に分解され得る)、このポリペプチドライブラリの配列決定により、元の複雑な混合物内に存在する各タンパク質の同一性および存在量を明らかにするであろう。部分的な配列情報を決定することによって選択的にアミノ酸を標識し、かつ、ポリペプチドを同定するための組成物および方法は、2015年9月15日に出願された「SINGLE MOLECULE PEPTIDE SEQUENCING」と題される米国特許出願第15/510,962号明細書に詳細に記載され、その全体が参照によって援用される。
【0038】
本出願による配列決定は、いくつかの態様において、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を、チップまたは集積デバイスなどの基板または固体支持体の表面に固定化することを含むことができる。いくつかの実施形態において、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、基板上のサンプルウェルの表面上(例えば、サンプルウェルの底面上)に固定化することができる。いくつかの実施形態において、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の第1の末端が表面に固定化され、他方の末端が配列決定反応を受ける。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドはC末端を介して表面に固定化され、末端アミノ酸の認識および分解は、ポリペプチドのN末端からC末端に向かって進行する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのN末端アミノ酸が固定化される(例えば、表面に付着されている)。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのC末端アミノ酸が固定化されている(例えば、表面に付着されている)。いくつかの実施形態において、1つ以上の非末端アミノ酸が固定化されている(例えば、表面に付着されている)。固定化されたアミノ酸は、任意の適切な共有結合または非共有結合を使用して付着させることができる。いくつかの実施形態において複数のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、
図1-1および
図1-2に関連して記載されたバイオ光電子チップまたは集積デバイスの複数のサンプルウェルまたは複数の反応チャンバに付着され得る(例えば、各サンプルウェルの表面、たとえば底面に付着された1つのペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質と)。
【0039】
放出放射線の収集を改善できる本明細書に記載される光学マイクロディスクは、遺伝的配列決定またはポリペプチド配列決定のために構成された機器での用途のみ、または
図1-1および
図1-2に記載の構造を有する集積デバイスに関連してのみの使用に限定されない。より一般的には、本明細書に記載される光学マイクロディスクの実施形態は、マイクロスケールデバイス用の放出放射線または他の放射線の収集を増加させることによってSNRを増加させるか、または所望の光強度を増加させることが望ましい用途で使用し得る。本明細書に記載の光学マイクロディスクは、他の可能なコンテキストのうちとりわけ、光通信システム(改善されたシグナル収集)、イメージングアレイ(改善されたシグナル収集)、および/またはLEDエミッタまたは発光アレイ(改善された放射の集中)における集積検出器などと組み合わせて使用され得る。
【0040】
図1-6を参照して、いくつかの実施において、マイクロディスク1-605は、導波路1-112とセンサ1-122との間の少なくとも1つの周囲媒体1-610内に配置され得る。いくつかの実施形態によれば、マイクロディスク1-605は、放出放射線の波長において透明であり、周囲の媒体1-610の屈折率とは異なる(例えば、より大きい)屈折率を有する1つ以上の材料で作られ得る。非限定的な例として、マイクロディスクは窒化ケイ素で形成され得、周囲媒体1-610は二酸化ケイ素で形成され得る。マイクロディスク1-605を形成するために使用され得る誘電材料は、非晶質、単結晶、または多結晶、ドープされたもの、またはドープされていないもの、および/または2つ以上の材料の合金であり得る。他の例示的な材料には、限定するものではないが、酸化アルミニウム、窒化チタン、酸化チタン、窒化タンタル、および酸化タンタルが含まれる。いくつかの実施形態において、マイクロディスクを作る材料は、放出放射線の特徴的な波長に対して透明であり得る(例えば、特徴的な波長において強度の少なくとも80%を透過する)。場合によっては、マイクロディスクを作る材料は、放出放射線の特徴的な波長に対して半透明であり得る(例えば、特徴的な波長において強度の50%~80%を透過する)。周囲媒体よりも高い屈折率を有することにより、マイクロディスク1-415は、マイクロディスクを有さない同じ構造に比べて、反応チャンバ1-130からの放出放射線を効果的に収集および集中させることができ、対応するセンサ1-122に集中して放射を再放射することができる。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、マイクロディスクは、共振空洞を含む。場合によっては、共振空洞は弱い共振空洞(例えば、10~100、または10~1000の品質(Q)係数を有する光学空洞)であり得る。共振空洞は、反応チャンバ1-130から放射された放射を収集し、センサ1-122に向かって改善された方向性で放射を再放射することができる。この文脈における「改善された方向性」は、マイクロディスク1-605が存在しない場合と比較して、再放射された放射が凝縮され、センサ1-122に向けられることを意味する。例えば、マイクロディスク1-605からセンサ1-122に伝わる再放射された放射のビームの横方向強度(transverse intensity)ビームプロファイル(FWHM値)は、マイクロディスクが存在しない場合に反応チャンバからセンサ1-122に伝わる放射された放射のビームの横方向強度ビームプロファイル(FWHM値)より小さく、ここでは、両方のビームプロファイルが同じ場所(例えば、センサ1-122への入口表面)で測定される。横方向強度ビームプロファイルを減少させることにより、より多くの放射線をセンサ1-122に凝縮することができる。場合によっては、横方向強度ビームプロファイル(FWHM)の減少は10%~50%である。
【0042】
いくつかの実施形態において、マイクロディスク1-605は、厚さtおよび直径Dを有する円形ディスクとして成形され得、それにより回転対称性を提供する。いくつかの実施形態において、マイクロディスク1-605は、楕円、六角形、八角形、正方形、三角形、または他の任意の適切な形状として成形され得る。場合によっては、マイクロディスク1-605は、ディスクの中心が、反応チャンバ1-130の中心を通るz軸に沿って本質的に位置合わせされるように配置され得る。いくつかの実施形態において、反応チャンバ1-130、マイクロディスク1-605、およびセンサ1-122は、z軸に沿って互いに位置合わせされ得る。
【0043】
「特徴的な波長」または「波長」という句は、限られた放射線帯域幅内の中心波長または主波長(例えば、励起放射の場合は励起帯域幅内、または放出放射線の場合は放射帯域幅内の中心波長またはピーク波長)を指すために使用される。場合によっては、「特徴的な波長」または「波長」を使用して、線源によって出力される放射線の全帯域幅内のピーク波長を指す場合がある。
【0044】
いくつかの実施において、マイクロディスク1-605は、導波路1-115または光源の下500nm~1500nmに配置され得る。場合によっては、マイクロディスク1-605は、導波路1-115または光源の下の800nm~1300nmに配置され得る。いくつかの実施において、マイクロディスク1-605は、導波路1-115または光源の下の900~1250nmに配置され得る。マイクロディスク1-605が導波路1-115または光源の下の1000~1500nmの間に配置されるとき、改善された性能が得られ得る。さらに、いくつかの実施形態において、マイクロディスク1-605は、100nm~800nmのz軸に沿った厚さt、および、0.5ミクロン(μm)~2μmの直径Dを有し得る。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、マイクロディスク1-605は、
図1-7に示されるように、1つ以上の放射状に対称なリング1-705によって囲まれ得る。リング1-705は、マイクロディスク1-605と同じ材料または異なる材料、例えば、窒化ケイ素またはマイクロディスクを形成するために使用される上記の他の任意の材料で形成され得る。いくつかの実施において、1つ以上のリング1-705は、マイクロディスク1-605を形成するために使用されるのと同じプロセス中に形成され得、マイクロディスク1-605の中心垂直軸と同心であり得る。いくつかの実施形態によれば、マイクロディスク1-605を取り囲むリングは1つだけであり得る。1つ以上のリング1-705は、マイクロディスクと同じレベルで形成され得るか、またはz方向にオフセットされ得る。1つ以上のリング1-705は、マイクロディスク1-605のみと比較して、センサ1-122で受け取られる放出放射線の量をさらに増加させ得る。例えば、1つ以上のリング1-705およびマイクロディスク1-605は、560nm~700nmの値を有する特徴的な放射波長のために、フレネルゾーンプレート(またはその近似)としてパターン化および配置され得る。存在する場合、1つ以上のリングは、マイクロディスクのみと比較して、センサ1-122に再放射される放射のさらなる集中、集束、および/または改善された方向性を提供し得る。場合によっては、1つ以上のリング1-705を使用するとき、横方向強度ビームプロファイル(FWHM)の減少が20%~70%であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、リング1-705および介在媒体1-610は、交互の光学材料の領域を提供する。例えば、リング1-705および介在媒体1-610は、放出放射線について、第1の屈折率の領域と第2の屈折率の領域との間でおよび/または第1の光透過能の領域と第2の光透過能の領域との間で交互であり得る。交互の領域は、より透明な領域を透過した放射線が、特徴的な放射波長について、所望の焦点、例えば、センサ1-122の中心で強め合うように干渉するように回折を引き起こし得る。場合によっては、リング1-705がフレネルゾーンプレートとして構成されていない場合でさえ、または1つのリング1-705のみが集積デバイス内に存在する場合でさえ、センサ1-122において受け取られる放出放射線の増強が発生し得る。
【0047】
1つ以上のリング1-705の厚さは、マイクロディスクの厚さと本質的に同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施において、z軸に沿った1つ以上のリング1-705の厚さは、100nm~800nmの任意の値であり得る。リングの直径は、0.6μm~4μmの任意の値であり得る。x軸に沿った複数のリング1-705間のギャップのサイズは、デバイス内で変化し得、100nm~500nmの任意の値であり得る。
【0048】
集積デバイスのピクセルに含まれ得る光学構造の別の例が
図2-1に示される。いくつかの実施によれば、1つ以上の絞り層2-125が、センサ1-122の上に形成され得る。絞り層2-125は、減光材料を通る開口部または穴2-112を含み得る。減光材料は、金属、ポリマー、半導体、または絞り層2-125に入射する励起放射線の大部分を拒絶する(例えば、吸収および/または反射する)任意の材料を含み得る。減光材料はまた、場合によっては放出放射線を拒絶し得る。穴2-112は、反応チャンバ1-130からの放射が絞り層2-125を通過してセンサ1-122に到達することを可能にすることができるが、減光材料は、他の方向からの放射線(例えば、隣接するピクセルまたは散乱励起放射線からの)を遮断または減衰させることができる。例えば、絞り層2-125は、広い入射角で散乱された励起放射線がセンサ1-122に衝突してバックグラウンドノイズに寄与することを遮断または減衰させることができる。いくつかの実施形態において、絞り層2-125は、導電性材料から形成され得、基板1-105上または上方に形成された回路のための電位基準面または接地面を提供し得る。いくつかの実施形態において、誘電材料から絞り層2-125を形成し得る。絞り層の穴2-112は、正方形、長方形、円盤、楕円、多角形など、任意の適切な方法で成形され得る。
【0049】
図2-1の例において、2つの絞り層2-125が含まれる。1つの絞り層は、マイクロディスク1-605と、センサ1-122に入射する放出放射線を通過させ、励起放射線を減衰させるように構成され得る弁別光学構造2-120との間に配置される。1つの絞り層は、弁別光学構造2-120と相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路2-110および/または相互接続との間に配置される。弁別光学構造2-120の例には、限定するものではないが、回折格子フィルタ、多層誘電体光学フィルタ、バンドエッジを示す単層または多層半導体吸収体(参照によりその全体が本明細書に援用される2019年4月9日に出願された「Semiconductor Optical Absorption Filter for an Integrated Device」と題された米国仮出願第62/831,237号に記載されるように)、およびフォトニックバンドギャップ構造などの2次元または3次元の屈折率に周期的または準周期的変調を有する微細加工構造(参照によりその全体が本明細書に援用される2019年6月19日に提出された「Optical Nanostructure Rejecter for an Integrated Device and Related Methods」と題された米国仮出願第62/863,635号に記載されるように)が含まれる。2つの絞り層2-125が
図2-1に示されるが、集積デバイスのピクセルにおいて、より少ないか、または、より多い絞り層があり得る。場合によっては、単一の絞り層が使用され得、反応チャンバ1-130とマイクロディスク1-605との間、または、マイクロディスク1-605とセンサ1-122との間に配置され得る。いくつかの実施形態において、導波管1-115とセンサ1-122の間に3つ以上の絞り層が配置され得る。複数の絞りを使用する場合、絞りの開口部の直径は同じか、または異なっていてよい。いくつかの実施形態において、CMOS回路2-110を有する1つ以上の相互接続層をパターン化して、センサ1-122の絞りを形成し得る。
【0050】
いくつかの実施において、基板1-105上に形成され、基板と光導波路1-115との間に配置された1つ以上の追加の透明なまたは半透明な層2-130があり得る。これらの追加の層は、酸化物または窒化物から形成され得、いくつかの実施形態にしたがって、反応チャンバ1-130が中で形成される透明なまたは半透明な材料と同じタイプの材料、またはマイクロディスク1-605がその中で形成される周囲の媒体1-610と同じタイプの材料であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、マイクロディスク1-605は、反応チャンバ1-130からの放出放射線を結合し、センサ1-122に向かって放射線を再放射することができるマイクロ共振器を含む。いくつかの実施において、マイクロディスク1-605は、垂直z軸に対して或る角度で伝わる放出放射線をマイクロディスクの共振光学モードに効率的に結合し得、結合された放射をセンサ1-122に向けて再放射し、それによって反応チャンバ1-130からのこれらの軸外放射の収集を改善し得る。共振器の特徴を向上させるために、マイクロディスク1-605の厚さtをマイクロディスクの屈折率で割った値を半波長の整数倍にし得る。いくつかの例示的な実施形態によれば、窒化ケイ素マイクロディスクの厚さtは、約570nmの特徴的な波長を有する放出放射線について、おおよそ200nm、おおよそ350nm、またはおおよそ480nmであり得る。発明者らは、400nm以上の厚さを有するマイクロディスクが、300nm未満の厚さを有するマイクロディスクよりも良好な放出放射線の収集を提供することを見出した。
【0052】
図2-2および2-3は、
図2-1に示されているものと同様の構造を有する集積デバイスのピクセルについて計算された例示的な光強度を示す。このシミュレーションでは、導波路1-115およびマイクロディスク1-605は、酸化ケイ素に囲まれた窒化ケイ素を含む。2つの絞り2-125は、マイクロディスク1-605とCMOS層(1つは図に示される)2-110との間に配置される。マイクロディスク1-605は円形ディスクとして形成される。このシミュレーションでは、マイクロディスク1-605は450nmの厚さ、および1.2μmの半径を有し、マイクロディスクの頂部は導波路1-115のおおよそ1.4μm下に配置される。2つの絞りは各々1.6μmの直径を有し、垂直方向におおよそ1μm離れる。場合によっては、絞りは0.5μm~3μmの距離で垂直方向に離れ得る。プロットには示されないが、センサはCMOS回路2-110のすぐ下に配置され得る。この例示的なシミュレーションでは、励起放射線は、532nmの特徴的な波長(λ=λ
励起)を有し、放出放射線は、572nmの特徴的な波長(λ=λ
放射)を有する。
図2-2および
図2-3の光強度パターンを、シミュレーションドメイン内でマクスウェルの方程式を解くソフトウェア(例えば、有限差分時間領域解析を使用)を用いて計算した。この例において、以下の初期条件が励起および放出放射線に使用された。1)λ=λ
励起での放射線は、外部線源からシングルモード導波路1-115に結合され、導波路の長さに沿って導波路1-115を均一に照射し、および、2)λ=λ
放射での放射線は、励起放射線に応答して反応チャンバ1-130で生成される。
図2-2および
図2-3に関連して上で与えられたパラメータは説明のみを目的とし、他の波長および他の光学ナノ構造パラメータ(周期性、幅、厚さなど)を使用し得ることが理解されよう。
【0053】
図2-2に示されるように、λ=λ
放射の場合、放出放射線のかなりの部分がマイクロディスク1-605によって収集され、絞り2-125を介してセンサ1-122に向けてガイドされる。放射線収集におけるそのような増加は、SNRを増加させ得、より速くおよび/またはより正確な測定をもたらし得る。
図2-2において、反応チャンバ1-130および導波路1-115は、それらの中心がマイクロディスク1-605およびアパーチャ2-125の中心の真上にあるように位置合わせされる。したがって、マイクロディスク1-605から伝わる放出放射線は、絞り2-125の下に配置されるセンサ1-122上に中心的に当たり得る。
【0054】
発明者らはまた、半導体加工は、加工プロセス中に複数の層を整列させる必要があり、層の不整列が発生し得ることを認識し、理解している。
図2-3において、反応チャンバ1-130および導波路1-115は、それらの中心がマイクロディスク1-605および絞り2-125の中心から約250nm横方向にシフトするように位置合わせされる。そのような不整列の場合でさえ、マイクロディスク1-605はなお、放出放射線のかなりの部分を収集してセンサ1-122に向けてガイドすることができる。センサ1-122は、下部絞り2-125より大きい検出領域を有し得、放出放射線は、センサ1-122の中心から外れ得る。したがって、マイクロディスク1-605による放出放射線の収集は、そのような集積デバイスの加工における構成要素の不整列(例えば、最大250nm以上)を許容し得る。
【0055】
図1-4、
図1-5、または
図2-1に示す例のような集積デバイスの或るピクセルの場合、センサによって収集される放出放射線の量は、通常、その構造の1つ以上の物理的パラメータ(例えば、マイクロディスクの厚さ、マイクロディスクの直径、マイクロディスクの材料、周囲媒体の材料、絞りの配置、絞りの直径、反応チャンバからのマイクロディスクの距離)に依存し得る。これらのパラメータの1つ以上を選択および/または微細加工用に調整して、ピクセル内の光学的検出の性能を改善し、センサ1-122が受け取る放出放射線の量を増やすことができる。例えば、マイクロディスク1-605の厚さを増加させること、および/または反応チャンバ1-130からのその間隔を変更することは、ピクセル内のセンサ1-122によって受け取られる放出放射線の量を増加させ得る。追加して、またはあるいは、絞りの直径および/または絞りの配置を変更することは、ピクセル内のセンサ1-122によって受け取られる放出放射線の量を増加させ得る。
【0056】
図3-1は、マイクロディスク1-605と反応チャンバ1-130を取り囲む金属層コーティング1-150との間の垂直距離(横軸)に応じてプロットされた正規化された収集効率(縦軸)を示すシミュレーション結果のプロットである。シミュレーション結果は、
図2-1のようなピクセル構造に対するものである(弁別光学構造2-120はないが)。収集効率は、シミュレーションで使用された距離の範囲にわたってセンサ1-122によって受け取られた強度の最大量に正規化されたセンサ1-122で受け取られた強度の量である。この例において、放出放射線は572nmの特徴的な波長を有する。
【0057】
図3-1において、正規化された収集効率は、1200nm~1775nmの間で変化するマイクロディスク1-605とコーティング1-150との間の距離に対してプロットされる。距離は、金属コーティング1-150の頂部からマイクロディスク1-605の頂部まで測定される。正規化された収集効率は、おおよそ200nmの周期で周期的な挙動を示す。正規化された収集効率は、マイクロディスク1-605と金属コーティング1-150との間の距離が増加するにつれて減少する平均勾配をさらに示す。周期的な挙動は、上記のように、マイクロディスク1-605の共振特性に関連する。周期的な挙動は、マイクロディスク1-605の屈折率、およびマイクロディスクおよび/または導波路を取り囲む材料の屈折率にさらに依存する可能性がある。周囲材料(この例において酸化物)は、クラッド材料と呼ばれ得る。周期的な挙動は、集積デバイスのピクセル内のマイクロディスク1-605が改善された収集効率を提供し得る好ましい場所(例えば、曲線の最大値またはその近く)があることを示す。いくつかの実施形態において、好ましい場所は、マイクロディスク1-605の頂部と金属コーティング1-150との間の距離に対応し得、これは、クラッド材料内の放出放射線の整数個の半波長におおよそ等しい。
【0058】
収集効率の改善およびセンサによって受け取られるシグナル量の増加を例えばシミュレーションとして、
図3-2、
図3-3、および
図3-4のプロットに示す。
図3-2にプロットされた結果は、2つの異なる場合を除いて、
図2-1に示されるもの(弁別光学構造2-120なし)と同じ全体構造である。下の曲線3-220は、マイクロディスクを含まないピクセル構造の場合である。上の曲線3-210は、マイクロディスク1-605を含むピクセル構造の場合である。
図3-2は、各場合の絞りの直径(横軸)に応じた、シミュレートされた収集効率(縦軸)をプロットしたものである。上の曲線3-210(マイクロディスクを有する構造)は、すべての絞りの直径について、下の曲線3-220(マイクロディスクのない構造)より、高い収集効率を示す。これらのシミュレーションでは、プロットされた収集効率は、センサ1-122の前に最後の絞りを通過した強度の、反応チャンバ1-130からの放出放射線の総強度に対する比率である。例示的なシミュレーションのピクセル構造では、2つの絞りが導波路1-115とセンサ1-122の間に配置された。上部絞りは、導波路から2ミクロン、反応チャンバ1-130から1.7ミクロンに配置された。絞り間は、2.5ミクロン離れていた。導波路および絞りの周りの周囲媒体1-610は酸化ケイ素であった。マイクロディスクを有する場合、マイクロディスクは、1400nmの直径、および480nmの厚さを有した。マイクロディスクの頂部は、反応チャンバ1-130の底部から1ミクロン離れて配置された。
【0059】
収集効率は絞りの直径とともに増加するが、絞りの直径が大きいほど、より多くの不要な放射線(たとえば、散乱励起放射線)がセンサ1-122に通過し得る。したがって、より小さな絞りの直径(例えば、2.5ミクロン未満の直径)を使用することが有益である可能性がある。いくつかの絞りの直径では、マイクロディスクを有する場合の収集効率は、マイクロディスクを有さない場合の収集効率の2~5倍であり得る(例えば、絞りの直径が1ミクロン~3ミクロンの範囲の場合)。
【0060】
図3-3に示される結果は、マイクロディスクの直径および絞りの直径の好ましい組み合わせが存在する可能性があることを示す。
図3-3のデータを生成するために使用される条件は、
図3-2のデータを生成するために使用されたものと同じであったが、マイクロディスクの直径および絞りの直径を変化させた。プロットは、プロットの生成に使用された値の範囲で得られた収集効率の最高値に正規化された収集効率の等高線を示す。絞りの直径が決定されているか、または制約されている場合、マイクロディスク1-605の直径を選択するためにプロットを使用し得る。例えば、所望の量の励起放射線を遮断する目的のために絞りの直径がおおよそ1.2ミクロンであるように選択される場合、おおよそ1ミクロンの直径を有するマイクロディスクは、おおよそ1.2ミクロンの直径を有するマイクロディスクよりも高い収集効率を提供するであろう。
【0061】
図3-4にプロットされた結果は、上の絞りの直径および下の絞りの直径の変化が、センサ1-122によって受け取られる放出放射線の量の増加にどのように影響し得るかを示す。
図3-4のデータを生成するために使用される条件は、
図3-2のデータを生成するために使用されたものと同じであったが、絞りの直径は独立して変化させた。プロットは、増強係数の等高線を示す(マイクロディスクを有するセンサが受け取った放出放射線の量の、マイクロディスクを有さないセンサが受け取った放出放射線の量に対する比率)。
【0062】
マイクロディスクを含み、集積デバイスにおいて使用され得る2つの例示的な微細加工構造が、
図4-1および
図4-2の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)画像に示される。2つの例示的な構造において、いくつかの物理パラメータが異なる。微細加工中に制御可能に調整できるパラメータには、導波路4-115および4-215(または反応チャンバ4-130、4-230)の底面とそれぞれマイクロディスク4-105および4-205の上面との間の距離d1が含まれる。示されるように、マイクロディスク4-105および4-205の直径および厚さはまた、制御可能に調整することができる。加えて、絞り4-125および4-225の開口部の直径およびそれらの位置は、示されるように制御可能に調整できる。
図4-1において、マイクロディスク4-105は、絞り4-125の開口部より大きな直径を有するが、
図4-2において、マイクロディスク4-205は、絞り4-225の開口部より小さな直径を有する。これらの例において、多層光学フィルタ4-120,4-220は、絞り4-125,4-225の下に配置される。収集効率に影響を与え得る他のパラメータには、微細加工中に制御可能に調整できる、マイクロディスク4-105,4-205と絞り層4-125,4-225との間の垂直距離が含まれる。
【0063】
II.光学マイクロディスクを加工する方法
図5-1Aから5-1Fは、集積デバイスのピクセルにおける光学マイクロディスクを形成するために使用され得る微細加工ステップに関連する例示的な構造を示す。1つのピクセルのみの構造が示されるが、例示的な実施形態に関連する平面微細加工プロセスを使用して複数のピクセルを同時に加工できることが理解されるであろう。
図5-1Aにおいて、基板5-105が提供または得られ得、その上でリソグラフィステップが実行され得る。基板5-105は、基板5-105上にすでに形成されたいくつかの構造を含み得る。例えば、基板5-105は、
図1-1または
図2-1に示される、絞り5-125および/またはCMOS回路など、マイクロディスク5-405の下の構造の一部を含み得る。いくつかの実施形態において、基板5-105は、バルク半導体基板を含み得るが、他のタイプのバルク基板が、いくつかの実施において使用され得る。
図1の5-1Aの例において、基板5-105は、絞り層5-125と、絞り層5-125の上に二酸化ケイ素の平坦化された層5-130とを含む。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、
図5-1Bに示されるように、第1金属層5-110は基板5-105上に堆積または成長させ得る。第1の材料層5-110は、窒化ケイ素などの高屈折率誘電材料を含み得、結果として生じるマイクロディスク5-405の所望の厚さに等しい厚さまで堆積され得る。第1の材料層5-110は、例えば、スパッタリングなどの物理蒸着(PVD)技術、またはプラズマエンハンスト化学蒸着(PE CVD)または高密度プラズマ(HDP)PECVDなどの化学蒸着(CVD)技術によって堆積され得る。
【0065】
続いて、フォトレジスト層を第1の材料層5-110上に堆積させ、次にパターン化させ得る(図示せず)。パターン化されたフォトレジスト層は、第1の材料層5-110を
図5-1Cに示される所望のパターンにエッチングするためのエッチングマスクとして使用され得る。エッチングは、例えば、湿式エッチングプロセス、または反応性イオンエッチング(reactive ion etch、RIE)または深掘り反応性イオンエッチング(deep reactive ion etch、DRIE)などのプラズマエッチングプロセスによって行い得る。残りのフォトレジストは、洗浄ステップで除去され得、
図5-1Cに示される構造のようなパターン化された構造を残す。エッチングされた第1の材料層5-110の結果として生じる構造は、マイクロディスク5-405と、マイクロディスクから分離され、かつ、マイクロディスク5-405と同じ材料から形成される複数の残留構造5-112とを含み得る。場合によっては、残留構造5-112は、マイクロディスク5-405をマスキングし、残留構造をエッチング除去することによって除去し得る。いくつかの実施形態において、残留構造を保持し得、例えば、続く平坦化ステップのためのエッチング停止材料を提供することによって、マイクロディスクの正確性を改善し得る。
【0066】
いくつかの実施によれば、オーバーコート層5-120を次に堆積させて、空隙5-115を満たし、マイクロディスク構造5-405および残留構造5-112を覆うことができる。オーバーコート層5-120は、PVD、PECVD、HDP PECVD、またはスパッタリングなどの任意の適切な方法によって堆積させ得る。オーバーコート層5-120は、非限定的な例として、二酸化ケイ素などの任意の適切な材料で形成し得る。場合によっては、空隙5-115の構造により、オーバーコート層5-120が滑らかな上面を形成できない場合がある。その後、オーバーコート層5-120は、例えば、化学機械研磨(chemical-mechanical polishing、CMP)によって平坦化され得、
図5-1Eに示されるように、後続の処理のために平面5-122を形成し得る。
【0067】
任意選択的に、1つ以上の追加の材料層5-130を
図5-1Eの構造上に堆積させて
図5-1Fの構造を形成し得る。追加の層5-130は、PVD、PECVD、HDP PECVD、またはスパッタリングなどの任意の適切な方法によって堆積させ得る。追加の層5-130は、非限定的な例として、二酸化ケイ素などの任意の適切な材料で形成し得る。追加の層5-130は、オーバーコート層5-120と同じ材料であるか、または、異なる材料であり得る。いくつかの実施形態において、追加の層5-130は、オーバーコート層5-120の平坦化に追加的または代替的に、CMPによって平坦化されて、不要な空隙のない滑らかな表面を提供し得る。このような表面は、本明細書に記載されるような低損失導波路にとって有益であり得る。
図5-1Fのマイクロディスク構造の加工後、導波路および反応チャンバなどの追加の構成要素は、
図1-1および
図2-1の例に示されるように、構造の頂部にさらに加工されて、集積デバイスのピクセルを形成し得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、
図5-1Dを再度参照すると、オーバーコート層5-120は平坦化されない場合がある。マイクロディスク5-405上のオーバーコート層5-120の構造は、隣接する追加層5-130がより低い屈折率を有する場合、マイクロディスク5-405の縁の近くで収斂レンズ効果を示し得る。いくつかの実施形態によれば、隣接する追加層5-130は、オーバーコート層5-120の空隙を満たし得、放出放射線の特徴的な波長においてオーバーコート層5-120より低い屈折率を有し、平坦化された上面を有する。そのような構造は、放出放射線の収集効率をさらに増加し得る。
【0069】
本発明の実施形態は、以下の構成(1)から(17)などの様々な構成において可能である。
(1)複数のピクセルを有する基板を含む微細加工された光学構造であって、複数のピクセルのうちの2つ以上の各々は、分析用の試料を保持するように構成された反応チャンバと、反応チャンバに励起放射線を送達するように構成された導波路と、反応チャンバから放射される放出放射線を検出するように構成された光学センサと、導波路と光学センサとの間に配置されるマイクロディスクであって、光学センサによって受け取られる放出放射線の量がマイクロディスクなしで光学センサによって受け取られるであろう放出放射線の量と比較して、増加するように構成されるマイクロディスクと、を含む。
【0070】
(2)構成(1)の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは、放出放射線を収集および再放射するための共振空洞を形成する。
(3)構成(1)または(2)の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは、光学センサによって受け取られる放出放射線の量を増加させるように構成された少なくとも1つの同心リングによって取り囲まれている。
【0071】
(4)構成(3)の微細加工光学構造であって、前記少なくとも1つの同心リングは、マイクロディスクと同じ材料を含む。
(5)構成(1)~(4)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは、マイクロディスクを取り囲む材料の第2の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する誘電材料を含む。
【0072】
(6)構成(1)~(5)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは酸化物材料または窒化物材料を含む。
(7)構成(1)~(6)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは窒化ケイ素から形成される。
【0073】
(8)構成(1)~(7)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは導波路の下500nm~1500nmに配置される。
(9)構成(1)~(8)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは、100nm~800nmの厚さを有する。
【0074】
(10)構成(1)~(9)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは、基板の表面に平行な平面で切り取ったとき楕円形の断面を有する。
(11)構成(1)~(10)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは、基板の表面に平行な平面で切り取ったとき円形の断面を有する。
【0075】
(12)構成(11)の微細加工光学構造であって、マイクロディスクは、0.5μm~2μmの直径を有する。
(13)構成(1)~(12)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、光学センサに入射する励起放射線を低減するように構成されたマイクロディスクの下に配置された光学フィルタをさらに含む。
【0076】
(14)構成(13)の微細加工光学構造であって、光学フィルタは、2次元または3次元の屈折率値の周期的変調を有する微細加工構造を含む。
(15)構成(1)~(14)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、マイクロディスクの下に配置され、かつ、反応チャンバからの放出放射線が光学センサに到達させるとともに、少なくともいくらかの散乱励起放射線が光学センサに到達することを遮断するように構成された少なくとも1つの絞り層をさらに含む。
【0077】
(16)構成(1)~(15)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、基板上に集積され、かつ、光学センサに接続された相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路をさらに含む。
【0078】
(17)構成(1)~(16)のいずれか1つに記載の微細加工光学構造であって、導波路は、複数のピクセルに励起放射線を送達するように配置される。
前述の構成は、以下の方法のうちの1つ以上にしたがって操作される集積デバイスにおいて実施され得る。
【0079】
(18)集積デバイスを操作する方法であって、本方法は、光導波路から反応チャンバに励起放射線を送達することであって、光導波路および反応チャンバは集積デバイスの基板上に集積される、前記送達することと、反応チャンバからマイクロディスクを通って、基板上に集積されたセンサへ放出放射線を通過させることと、マイクロディスクなしで受け取られるであろう放出放射線の量と比較して、センサによって受け取られる放出放射線の量をマイクロディスクを用いて増加させることとを含む。
【0080】
(19)(18)の方法であって、反応チャンバから絞りを通って放出放射線を通過させることをさらに含む。
(20)(19)の方法であって、絞りで励起放射線を少なくとも部分的に遮断することをさらに含む。
【0081】
(21)(18)~(19)のいずれか1つの方法であって、反応チャンバから弁別光学構造を通って放出放射線を通過させることをさらに含む。
(22)(18)~(21)のいずれか1つの方法であって、マイクロディスクは、マイクロディスクを取り囲む材料の第2の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する誘電材料を含む。
【0082】
(23)(18)~(22)のいずれか1つの方法であって、マイクロディスクは、酸化物材料または窒化物材料を含む。
(24)(23)の方法であって、マイクロディスクは、窒化ケイ素から形成される。
【0083】
上記の構成(1)~(17)に記載された光学構造の実施形態は、以下の方法のうちの1つ以上にしたがって加工され得る。
(25)集積デバイスを加工する方法であって、本方法は、基板上の複数のピクセルのそれぞれに、反応チャンバと、励起放射線を反応チャンバに送達するように配置された光導波路と、反応チャンバからの放出放射線を受け取るように配置された光学センサとを形成することと、光導波路と光学センサとの間の各ピクセルにおいてマイクロディスクを形成することとを含み、マイクロディスクは、光学センサによって受け取られる放出放射線の量がマイクロディスクなしで受け取られるであろう放出放射線の量と比較して、増加するように構成される。
【0084】
(26)(25)の方法であって、マイクロディスクを形成することは、第1の誘電材料を基板上に堆積させ、前記第1の誘電材料をエッチングして、第1の誘電材料内に空隙を形成することを含む。
【0085】
(27)(26)の方法であって、マイクロディスクを形成することは、第1の誘電材料内の空隙を、第1の誘電材料とは異なる第2の材料で満たすことをさらに含む。
(28)(27)の方法であって、第1の誘電材料は、第1の屈折率を有し、第2の材料は第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する。
【0086】
(29)(26)~(28)のいずれか1つの方法であって、第1の誘電材料は、窒化ケイ素である。
(30)(25)~(28)のいずれか1つの方法であって、各ピクセルにおいてマイクロディスクを形成する前に、少なくとも1つの絞り層を形成することをさらに含む。
【0087】
(31)(25)~(28)のいずれか1つに記載の方法であって、各ピクセルにおいてマイクロディスクを形成する前に光学フィルタを形成することをさらに含む。
(32)(25)~(28)のいずれか1つの方法であって、各ピクセルにおいて光導波路を形成する前に平坦化プロセスを実行することをさらに含む。
【0088】
III.結論
以上のように、光学マイクロディスクのいくつかの実施形態のいくつかの態様を説明したので、当業者は様々な代替、修正、および改善を容易に思いつくことが理解されるべきである。そのような代替、修正、および改善は、本開示の一部であることが意図されており、本発明の技術的思想および範囲内にあることが意図されている。本教示は、様々な実施形態および実施例と併せて説明されてきたが、本教示がそのような実施形態または実施例に限定されることを意図するものではない。それどころか、本発明は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、修正物、および均等物を包含する。
【0089】
様々な本発明の実施形態が説明および例示されてきたが、当業者は、機能を実行する、および/または記載される結果および/または1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想定するし、そのような変形および/または修正のそれぞれは、記載された本発明の実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、記載されたすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が特定の用途または本発明の教示が使用される用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、記載された特定の本発明の実施形態と多くの均等物を認識するか、またはルーチン的な実験のみを使用して確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲およびそれに相当する範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に記載および請求される以外の方法で実施され得ることを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、記載された個々の特徴、システム、システムのアップグレード、および/または方法のそれぞれに向けられ得る。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、システムのアップグレード、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0090】
さらに、本発明のいくつかの利点が示され得るが、本発明のすべての実施形態が、記載されたすべての利点を含むわけではないことを理解されたい。いくつかの実施形態は、有利であると記載されたいかなる特徴も実施しない場合がある。したがって、前述の説明および図面は、単なる例である。
【0091】
限定するものではないが、特許、特許出願、記事、書籍、論文、およびWebページを含む、本出願で引用されたすべての文献および類似の資料は、そのような文献および類似の資料の形式に関係なく、参照によりその全体が明示的に援用される。援用された文献および類似の資料のうちの1つ以上が、限定するものではないが、定義された用語、用語の使用法、説明された技術などを含む、本出願と異なるか、または矛盾する場合、本出願が優先する。
【0092】
使用されるセクション見出しは、構成的な目的のためのみであり、説明されている発明の主題を制限するものとして解釈されるべきではない。
また、記載された技術は、少なくとも1つの例が提供されている方法として具体化され得る。方法の一部として実行された動作は、任意の適切な方法で順序づけられ得る。したがって、例示的な実施形態では連続的な動作として示されている場合でさえ、動作が例示とは異なる順序で実行される実施形態を構築し得、これには、いくつかの動作を同時に実行することが含まれ得る。
【0093】
定義され、かつ、使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により援用される文書内の定義、および/または定義された用語の通常の意味に優先することを理解するべきである。
【0094】
数値および範囲は、概算または正確な値または範囲として明細書および特許請求の範囲に記載され得る。例えば、場合によっては、用語「約」、「おおよそ」、および「実質的に」は、値に関連して使用され得る。そのような参照は、参照された値、および、その値のプラスおよびマイナスの合理的な変動を包含することを意図する。例えば、「約10~約20」という句は、いくつかの実施形態において「正確に10~正確に20」を意味し、いくつかの実施形態において「10±δ1~20±δ2」を意味することを意図する。値の変動量δ1、δ2は、いくつかの実施形態においてその値の5%未満であり得、いくつかの実施形態においてその値の10%未満であり得、さらに、いくつかの実施形態においてその値の20%未満であり得る。広い範囲の値が与えられる実施形態、例えば、2桁以上を含む範囲において、値の変動量δ1、δ2は、50%にもなり得る。例えば、操作可能な範囲が2~200の場合、「おおよそ80」は40~120の値を包含し、範囲は1~300の範囲であり得る。正確な値が意図される場合、例えば、「正確に2から正確に200の間」など、「正確に」という用語が使用される。
【0095】
用語「隣接する」は、互いに近接して配置された2つの要素を指し得る(例えば、2つの要素のうちの大きい方の横方向または垂直方向の寸法の約5分の1未満の距離内)。場合によっては、隣接する要素間に介在する構造または層があり得る。場合によっては、隣接する要素は、構造や要素が介在することなく、互いに直接隣接し得る。
【0096】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、明確に反対に示されなければ、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲で使用されるとき、「および/または」という句は、そのように併記された要素の「いずれかまたは両方」を意味する、すなわち、いくつかの場合においては、連言的に存在する要素を意味し、他の場合においては選言的に存在する要素を意味することが理解されたい。「および/または」で列記された複数の要素は、同じように、すなわち、そのように等位接続された要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に識別される要素以外の他の要素が、具体的に識別されるそれらの要素に関連するか否かにかかわらず、任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの非限定の言語と組み合わせて使用される場合、一実施形態において、Aのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)に、別の実施形態において、Bのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)に、さらに別の実施形態において、AおよびBの両方(任意選択的に他の要素を含む)に、など言及することができる。
【0097】
本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区分けする場合、「または」または「および/または」は包括的であると解釈されるものとし、すなわち、要素の数またはリストの少なくとも1つを含むが、それらの2つ以上をも含むと解釈され、および、任意選択的に、追加のリストされていないアイテムを含むと解釈される。「~のうちの1つのみ」または「~のうちの正確に1つ」などの、反対に明確に示される用語のみ、または、特許請求の範囲で使用される場合、「~からなる(consisting of)」は、要素の数またはリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、用語「または」が使用されるとき、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、または「~の正確に1つ」などの排他的な用語が先行する場合、排他的な代替を示すものとしてのみ解釈されるものとする(すなわち、「一方または他方、両方ではない」)。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0098】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という句は、要素のリスト内の任意の1つ以上の要素から選択される、少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的に列挙されているありとあらゆる要素の少なくとも1つを含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外する必要はない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が言及する要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態において、少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のAを含み、Bが存在しない(および任意選択的にB以外の要素を含む)ことを言及し得、別の実施形態において、少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のBを含み、Aが存在しない(および任意選択的にA以外の要素を含む)ことを言及し得、さらに別の実施形態において、少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のAを含み、かつ、少なくとも1つの、任意選択的に2つ以上のBを含む(および任意選択的に他の要素を含む)等を言及し得る。
【0099】
特許請求の範囲および上記の明細書において、「含む(comprising、including)」、「携える(carrying)」、「有する」、「内包する(containing、involving)」、「保持する」、「~から構成される(composed of)」などは、非限定(open-ended)であること、すなわち、含むがこれに限定されないことを意味すると理解されるべきである。移行句「~からなる(consisting of)」および「本質的に~からなる(consisting essentially of)」のみが、それぞれ、排他的な(closed)または半排他的(semi closed)な移行句であるものとする。
【0100】
特許請求の範囲は、その趣旨で述べられなければ、記載された順序または要素に限定されるものとして読まれるべきではない。添付の特許請求の範囲の技術的思想および範囲から逸脱することなく、当業者によって、形態および詳細の様々な変更を行い得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲およびその均等物の技術的思想および範囲内にあるすべての実施形態が特許請求される。
【国際調査報告】