(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ポリペプチドまたはその誘導体の応用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20221012BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20221012BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221012BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20221012BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221012BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20221012BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221012BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221012BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221012BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20221012BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A61K38/10
A61P35/00
A61K38/08
A61K45/00
A61K9/127
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/14
A61K38/00
A61K39/395 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507921
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2020107686
(87)【国際公開番号】W WO2021027704
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】201910743680.9
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519314744
【氏名又は名称】チェンドゥ フイタイ バイオメディスン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU HUITAI BIOMEDICINE CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ダ
(72)【発明者】
【氏名】リ,シャオメイ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,イ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,リン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA29
4C076CC27
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA03
4C084BA18
4C084BA23
4C084CA59
4C084DA27
4C084MA02
4C084MA22
4C084MA24
4C084MA27
4C084MA43
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA13
4C085BB50
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA34
4H045FA58
4H045FA61
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、ポリペプチドまたはその誘導体の応用、特に、抗腫瘍ポリペプチド系医薬品(配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または修飾されて得られたアミノ酸配列)を提供する。該ポリペプチド系医薬品は、薬物標的の特異性、薬物の生物的活性、薬物の毒副反応、治療コストなどにおいて著しい優勢を有する。本発明では、腫瘍微小環境の形成及び安定状態の維持に関与するサイトカインに基づいて、腫瘍細胞の活性および腫瘍の転移を抑制できるポリペプチドまたはその誘導体を設計し、さらにこのポリペプチドまたはその誘導体を抗腫瘍薬の製造に適用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を予防および/または治療するための医薬品の製造におけるポリペプチドまたはその誘導体の使用であって、前記ポリペプチドが
配列番号1に示されるアミノ酸配列(I)、または
(I)に記載のアミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または修飾されて得られたアミノ酸配列であって、(I)に記載のアミノ酸配列と同一機能を有するアミノ酸配列(II)、または
(I)または(II)に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列(III)、
を有することを特徴とする使用。
【請求項2】
前記欠失が、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を欠失すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を欠失すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を欠失することのうちの1つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号12、または配列番号13に示される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記付加が、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を付加すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を付加すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を付加することのうちの1つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号17または配列番号18に示される、ことを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記置換が、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を置換すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を置換すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を置換することのうちの1つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記修飾が、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を修飾すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を修飾すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を修飾することのうちの1つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、
配列番号1に示されるアミノ酸配列のポリペプチドに対して、アミノ酸の欠失と付加を同時に行うこと、アミノ酸の置換と付加を同時に行うこと、アミノ酸の欠失と置換を同時に行うこと、アミノ酸の欠失と修飾を同時に行うこと、アミノ酸の付加と修飾を同時に行うこと、アミノ酸の置換と修飾を同時に行うこと、アミノ酸の欠失、付加、および修飾を同時に行うこと、アミノ酸の置換、付加、および修飾を同時に行うこと、アミノ酸の欠失、置換、および修飾を同時に行うこと、またはアミノ酸の欠失、置換、付加、および修飾を同時に行うことのうちの1つまたは複数のことにより得られたものである、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号5、配列番号14、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号7、配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号27、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号32、配列番号33、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号45、配列番号46、配列番号48、配列番号49、または配列番号47に示される、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記腫瘍には、頭頚癌、呼吸系腫瘍、消化器腫瘍、泌尿器系腫瘍、男性生殖器腫瘍、婦人科腫瘍、皮膚癌、内皮細胞腫瘍、脳腫瘍、神経系腫瘍、内分泌器官腫瘍のうちの1種または複数が含まれる、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記頭頚癌には、口唇癌、口腔癌、唾液腺がん、中咽頭がん、上咽頭がん、または下咽頭がんのうちの1種または複数が含まれ、
前記呼吸系腫瘍には、喉頭癌、肺癌または中皮腫のうちの1種または複数が含まれ、
前記消化器腫瘍には、結腸・直腸癌、肛門癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆嚢癌または膵臓がんのうちの1種または複数が含まれ、
前記泌尿器系腫瘍には、腎がんまたは膀胱癌のうちの1種または2種が含まれ、
前記男性生殖器腫瘍には、陰茎癌、前立腺がんまたは精巣がんのうちの1種または複数が含まれ、
前記婦人科腫瘍には、乳がん、外陰癌、膣癌、子宮頸癌、子宮体癌または卵巣癌のうちの1種または複数が含まれ、
前記皮膚癌には、皮膚黒色腫または非黒色腫皮膚癌のうちの1種または2種が含まれ、
前記内皮細胞腫瘍にはカポジ肉腫が含まれ、
前記脳腫瘍には脳癌が含まれ、
前記神経系腫瘍には中枢神経系腫瘍が含まれ、
前記内分泌器官腫瘍には甲状腺がんが含まれる、ことを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬品が、
単一の有効成分としての前記ポリペプチドまたはその誘導体、有効成分としての前記ポリペプチドとその誘導体との併用、有効成分としての前記ポリペプチドまたはその誘導体と他の医薬品との併用、有効成分としての化学標識または生物標識された前記ポリペプチドまたはその誘導体から形成した結合物、有効成分としての前記ポリペプチドまたはその誘導体または前記結合物が固形媒質または半固形媒質とカップリングしてなる複合体のうちの1種または複数と、
薬学的に許容されるキャリアと、
を含むことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記薬学的に許容されるキャリアには、希釈剤、充填剤、賦形剤、バインダー、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、界面活性剤、吸收促進剤、潤滑剤、吸着キャリア、徐放性微粒子、埋設剤、インサイチュ微粒子、リポソーム、マイクロエマルジョン、インサイチュヒドロゲル、ナノ粒子、プロテアーゼ阻害剤、生体接着剤、融合タンパク質、抗体、またはポリペプチドのうちの1つまたは2つ以上の混合物が含まれる、ことを特徴とする請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2019年08月13日に中国特許局に出願された出願番号が201910743680.9、発明名称が「ポリペプチドまたはその誘導体の応用」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容は援用により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、医薬技術分野に関し、特にポリペプチドまたはその誘導体の応用に関する。
【背景技術】
【0003】
がん(悪性腫瘍)は、発症率と死亡率が高く、人類の健康を深刻に脅かす危篤な致死性疾患である。腫瘍発生のメカニズムに対する研究認識は深まっているが、悪性腫瘍の臨床治療は、特に腫瘍の転移と再発について、依然として世界的な難題となっている。近年、悪性腫瘍の早期診断および腫瘍成長を抑制するための標的療法が臨床に応用されたため、悪性腫瘍患者の生存率はある程度まで向上した。また、新世代の抗腫瘍薬、特に各種の成長因子に対する中和抗体や小分子キナーゼ阻害剤などの標的薬物が、相次いで臨床に応用され、腫瘍の成長と転移を抑制する面で一定の効果を果たしている。しかし、現在、臨床でよく使われている抗腫瘍第一選択療法である化学治療と放射線治療は、標的指向性が悪く、副作用が大きく、治療抵抗性が発生しやすく、悪性腫瘍の臨床治療への応用が制限されている。新たな標的指向性薬物には、同様に、オフターゲット率が高く、副作用が強く、治療効果が限られているといった欠陥があり、臨床的に抗腫瘍薬の有効性と安全性に対する要求を満たすにはまだほど遠い。また、悪性腫瘍転移の臨床治療は依然として世界的な難題となっている。そのため、標的指向性が高く、特異性が強く、副作用が小さい新型抗腫瘍薬は、すでに抗腫瘍薬研究開発の中心発展方向となり、腫瘍の臨床治療効果及び治療可及性を確実に高めるものである。
【0004】
従来の腫瘍は、通常に腫瘍の病発組織または器官を基として分類され、例えば、悪性固形腫瘍は、黒色腫、神経膠腫、リンパ腫、食道癌、肺癌、肝臓癌、膵臓がん、腎がん、乳がん、胃癌、甲状腺がん、尿路上皮がん、前立腺がん、結腸がんなどに分けられた。病発組織器官が異なることにも関わらず、悪性固形腫瘍は、腫瘍病理メカニズムや特徴、即ち、腫瘍免疫抑制微小環境の形成、腫瘍関連細胞の活性化、腫瘍関連サイトカイン、および細胞外マトリックスの蓄積などを含む腫瘍微小環境の形成と維持の面で、共通点がある。なお、腫瘍微小環境の形成及び維持は、腫瘍の発生、発展および転移中に重要な役割を果たしている。
【0005】
腫瘍微小環境とは、腫瘍細胞、腫瘍間質細胞(例えば、腫瘍関連線維芽細胞)、免疫細胞(例えば、腫瘍関連マクロファージ)、細胞外マトリックス(例えば、フィブロネクチン、コラーゲン)などから構成された複雑な微小環境を指す。細胞と細胞、細胞と細胞外マトリックスの相互作用は、共に腫瘍微小環境を調節し、腫瘍の発生及び発展を促進する。腫瘍の発展初期においては、腫瘍細胞と腫瘍関連間質細胞の相互作用が腫瘍微小環境の形成を促進する。腫瘍細胞は、種々のサイトカイン(例えば、TGF-β、IL-10、LOX、ROSなど)を分泌することにより、腫瘍関連間質細胞を活性化する。そして、活性化された間質細胞は、細胞外マトリックスを多量に発現させて分泌して腫瘍微小環境における細胞外マトリックスの蓄積を引き起こし、また、活性化された間質細胞は、同様に種々のサイトカイン(例えば、TGF-β、PDGF、VEGF、FGF、CTGFなど)を分泌して腫瘍の発生及び発展を促進する。同時に、腫瘍微小環境の形成は、腫瘍細胞が免疫系から除去されないことを促進する。腫瘍微小環境には、免疫抑制因子(PD-L1、TGF-β、IL-10、CSF-1、GM-CSF)が多量に存在する。例えば、腫瘍細胞が発現分泌したプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、細胞傷害性T細胞表面のプログラム性死亡分子(PD-1)と特異的に結合して細胞傷害性T細胞による腫瘍細胞の除去作用を抑制することができる。腫瘍細胞、腫瘍間質細胞、腫瘍関連免疫細胞などの種々の細胞に由来するトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、腫瘍微小環境で細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、抗原提示細胞(APC)、マクロファージなどの種々の免疫細胞の免疫活性を効果的に抑制して、腫瘍細胞が生体免疫系から除去されないことを促進することができる。腫瘍微小環境の発展は、腫瘍の転移を促進する。研究によると、腫瘍が後期に発展すると、腫瘍細胞が腫瘍微小環境の因子(例えば、細胞外マトリックスの蓄積、サイトカインの制御)の影響を受け、腫瘍細胞が間質化し、腫瘍細胞におけるフィブロネクチン、N-カドヘリン、ビメンチンなどの細胞遊走及び侵襲に関連するタンパク質の発現量が向上することになり、このことは、腫瘍細胞の遊走及び侵襲能力が増加して、最終的に腫瘍細胞が生体の他の部位へ転移すること、即ち、腫瘍転移(例えば、肺転移)を引き起こすこととして示される。
【0006】
そこで、腫瘍微小環境における重要な因子に対して開発した標的指向性薬物では、腫瘍微小環境を直接に抑制または破壊し、腫瘍に対する生体免疫系の除去を強化し、腫瘍の浸潤及び転移を遮断し、腫瘍治療の目的を実現する。また、腫瘍微小環境の形成に重要な因子を薬物作用ターゲットとして選択すれば、種々の悪性固形腫瘍に対する広域抗がん効果が実現される。例えば、現在、発売されている薬剤Keytrudaは、抗PD-1抗体薬剤(Pembrolizumab)であり、腫瘍微小環境におけるPD-1/PD-L1の免疫逃避機能を抑制することにより、腫瘍細胞に対する生体免疫系の除去を強化して、腫瘍治療の目的を実現するものである。薬物の適応症のデータによると、現在、Keytrudaは、黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、古典的ホジキンリンパ腫、腎がん、頭頚有棘細胞癌、尿路上皮がん、結腸・直腸癌、肝細胞癌、胃癌などを含む種々の悪性固形腫瘍適応症の臨床治療に承認されている。
【0007】
近年、ポリペプチド標的指向性薬物は、抗腫瘍薬の研究開発の重点分野の一つになっている。既存の抗腫瘍薬は、主に化学小分子薬物及び抗体薬物であり、有効性、標的指向性、特異性や、副作用の面で依然として臨床抗腫瘍治療の要求を満足するにはまだほど遠い。ポリペプチドの薬剤の有効成分は、生物活性を有し、一般的に100個未満のアミノ酸が脱水して形成したアミノ酸鎖であり、該アミノ酸鎖は、動植物及び微生物の体内からの単離、タンパク質酵素分解、人工合成などの3つの仕方で得られる。現在のポリペプチドの薬剤は、内因性ペプチドまたは他の自然ペプチドに由来したかまたはシミュレーションしたものが多く、その構造が明らかで、作用メカニズムが明確で、代謝産物であるアミノ酸が生体の基本成分となっており、体内に蓄積せず、副作用が低い。近年、ポリペプチド合成および修飾技術の発展に伴い、人工合成ポリペプチドは、製造プロセス、収率、製品純度、特異性修飾などの面でポリペプチドの薬剤研究開発の要求を満たすようになってきた。ポリペプチドの薬剤は、薬物研究開発の分野で明らかな優勢を持っている。一般的な有機小分子薬物に比べて、ポリペプチドの薬剤は、活性が高く、投与量が少なく、副作用が低いなどの際立った利点を有している。また、タンパク質薬物に比べて、より小さなポリペプチドは、免疫原性が比較的小さく、化学合成することが可能で、製品純度が高く、品質が制御可能である。そのため、抗腫瘍のポリペプチド標的指向性薬物の開発は、抗腫瘍治療の面で明らかな優勢を持っており、生物医薬技術分野における重点研究開発方向であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の事情に鑑みて、本発明は、ポリペプチドまたはその誘導体の使用を提供する。本発明で提供されるポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)は、腫瘍細胞の遊走能力に対して抑制作用を有し、腫瘍細胞におけるビメンチン、フィブロネクチン、N-カドヘリンの発現を抑制することができ、腫瘍細胞の侵襲能力を抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記発明の目的を達成するために、以下の技術を提供する。
本発明は、腫瘍を予防および/または治療するための医薬品の製造におけるポリペプチドまたはその誘導体の使用であって、前記ポリペプチドが
配列番号1に示されるアミノ酸配列(I)、または
(I)に記載のアミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または修飾されて得られたアミノ酸配列であって、(I)に記載のアミノ酸配列と同一機能を有するアミノ酸配列(II)、または
(I)または(II)に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列(III)、を有する使用を提供する。
【0010】
本発明に係るポリペプチドとは、アミノ酸がペプチド結合によって連なった化合物であり、アミノ酸の数に限定されない産物である。
【0011】
本発明においては、前記の誘導体とは、ポリペプチドの変種を意味し、ポリペプチド配列に対してアミノ酸の欠失、置換または付加を行って得た産物であってもよく、ポリペプチド分子主鎖または側鎖において末端のアミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、フェノール性ヒドロキシ基、イミダゾリル基、グアニジノ基、インドリル基、メチルチオ基などを修飾部位として化学的修飾した産物であってもよい。
【0012】
本発明においては、前記の化学的修飾は、ポリペプチドレベルで、ポリペプチドレベルに対して適切な修飾手法と修飾剤で化学的修飾を行って、修飾されたポリペプチド系医薬品の溶解度を向上させ、安定性を増加させ、半減期を延長させるものであり、具体的には、当業者により常法で決定することができる。
【0013】
本発明においては、前記のポリペプチド配列番号1のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、付加、置換または修飾を行う目的は、それを、腫瘍を予防および/または治療するための医薬品の製造における本発明の使用から逸脱せずに適用させるためである。
【0014】
本発明においては、前記のアミノ酸の欠失、置換、付加および/または修飾をぞれぞれ行ってもよく、同時に行ってもよく、同一のアミノ酸位置で行ってもよく、異なるアミノ酸位置で行ってもよい。
【0015】
本発明においては、前記のアミノ酸位置とは、ポリペプチドのアミノ酸配列において、アミノ末端からカルボキシ基末端へ順次に配列されるアミノ酸の位置数であるが、アミノ酸位置は相対的なものであり、アミノ酸配列にアミノ酸の欠失または付加が行われる場合は、アミノ酸の位置が変化する可能性があり、このような変化は当業者により決定することができる。
【0016】
本発明においては、前記の置換または/および付加に用いられるアミノ酸には、自然アミノ酸と非自然アミノ酸が含まれる。ここで、自然アミノ酸は自然界に存在するアミノ酸を指し、非自然アミノ酸はD型アミノ酸と他の人工合成のアミノ酸を包含する。
【0017】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記欠失は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を欠失すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を欠失すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を欠失することのうちの1つまたは複数の組み合わせである。
【0018】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記欠失は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸をそれぞれに欠失することである。
【0019】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記欠失は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を同時に欠失することである。
【0020】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記欠失は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に欠失することである。
【0021】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記欠失は、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に欠失することである。
【0022】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記欠失は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に欠失することである。
【0023】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記欠失されるアミノ酸の数は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個である。
【0024】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号12、または配列番号13に示される。
【0025】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失して得られ、その配列は配列番号2に示される。
【0026】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、アミノ末端において3個のアミノ酸(1~3位)を欠失して得られ、その配列は配列番号4に示される。
【0027】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失して得られ、その配列は配列番号6に示される。
【0028】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、配列内部において3個のアミノ酸(3位、4位、11位)を欠失して得られ、その配列は配列番号8に示される。
【0029】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失し、かつ、アミノ末端において2個のアミノ酸(1~2位)を欠失して得られ、その配列は配列番号12に示される。
【0030】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、アミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失して得られ、その配列は配列番号13に示される。
【0031】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記付加は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を付加すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を付加すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を付加することのうちの1つまたは複数の組み合わせである。
【0032】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記付加は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸をそれぞれに付加することである。
【0033】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記付加は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を同時に付加する。
【0034】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記付加は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に付加する。
【0035】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記付加は、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に付加する。
【0036】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記付加は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に付加する。
【0037】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記付加されるアミノ酸の数は、1個、2個、3個、4個または5個である。
【0038】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、付加に用いられるアミノ酸には、自然アミノ酸および/または非自然アミノ酸が含まれる。
【0039】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号17または配列番号18に示される。
【0040】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において2個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号17に示される。
【0041】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において1個のアミノ酸を付加し、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号18に示される。
【0042】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記置換は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を置換すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を置換すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を置換することのうちの1つまたは複数の組み合わせである。
【0043】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記置換は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸をそれぞれに置換することである。
【0044】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記置換は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を同時に置換することである。
【0045】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記置換は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に置換することである。
【0046】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記置換は、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に置換することである。
【0047】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記置換は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に置換することである。
【0048】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記置換されるアミノ酸の数は、1個、2個、3個、4個、または5個である。
【0049】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、置換に用いられるアミノ酸には、自然アミノ酸および/または非自然アミノ酸が含まれる。
【0050】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記修飾は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を修飾すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を修飾すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を修飾することのうちの1つまたは複数の組み合わせである。
【0051】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記修飾は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸をそれぞれに修飾することである。
【0052】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記修飾は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を同時に修飾することである。
【0053】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記修飾は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に修飾することである。
【0054】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記修飾は、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に修飾することである。
【0055】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記修飾は、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸、および前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を同時に修飾することである。
【0056】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記修飾が化学的修飾のことである。
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記化学的修飾は、ペプチド鎖の主鎖構造または側鎖基を変化させることができ、アセチル化、アミド化、グリコシル化、ポリエチレングリコール(PEG)修飾、脂肪酸修飾、または当分野で知られている他のポリペプチド修飾技術のうちの1つまたは複数の組み合わせを包含する。
【0057】
本発明においては、前記のアセチル化およびアミド化は、ポリペプチドの主鎖末端を修飾するためによく用いられる手法であり、通常には、ポリペプチド主鎖のN末端においてアセチル化、ポリペプチド主鎖のC末端においてアミド化を行う。
【0058】
本発明においては、前記のグリコシル化修飾とは、糖構造とタンパク質ポリペプチド分子における特殊な官能基とを共有結合で連結することを意味し、N-グリコシル化、O-グリコシル化、S-グリコシル化、C-グリコシル化、およびグリコシルホスファチジルイノシトール修飾などを包含する。前記N-グリコシル化は、アスパラギンにより側鎖のアミド窒素を連結させることであり、O-グリコシル化は、セリンまたはスレオニン残基での酸素に連結することである。前記糖構造には、様々な単糖類、オリゴ糖類、および多糖類が含まれる。
【0059】
本発明においては、前記のPEG修飾とは、ポリペプチドの主鎖のアミノ基、側鎖のアミノ基、主鎖のカルボキシ基、側鎖のカルボキシ基、イミダゾリル基、メルカプト基、およびヒドロキシ基などの官能基を修飾部位として対応するタイプのPEGを選択して修飾することを意味する。前記PEGは、エチレンオキシドから重合される高分子ポリマーであり、構造が限られないし、分子量も限られない。前記PEG修飾のタイプとしては、直鎖PEG、分岐鎖PEG、ホモ官能性のPEG誘導体、ヘテロ官能性の二重置換されたPEG誘導体、および多腕官能性のPEG誘導体などが挙げられる。
【0060】
本発明においては、前記の脂肪酸修飾とは、脂肪酸構造とタンパク質ポリペプチド分子における特殊な官能基とを共有結合で連結することを意味し、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、およびヒドロキシ基などによる修飾を包含する。脂肪酸修飾は、不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸による修飾に分けられ、飽和脂肪酸修飾の場合、主にミリスチン酸、パルミチン酸を使用して修飾する。不飽和脂肪酸修飾の場合、主にオレイン酸、リノール酸などを使用して修飾する。
【0061】
本発明に係るポリペプチド修飾は、当業者に公知の方法を用いることができる。本発明においては、前記の修飾は、ポリペプチド配列の理化学的性質を変化させ、ポリペプチドの製薬性を向上させることを目的とする。
【0062】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記修飾されるアミノ酸の数は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個である。
【0063】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、修飾に用いられるアミノ酸には、自然アミノ酸および/または非自然アミノ酸が含まれる。
【0064】
本発明により提供されるポリペプチドまたはその誘導体は、配列番号1に示されるポリペプチドにおいてアミノ酸の欠失、置換、付加および/または修飾を行ったポリペプチドである。配列番号1に示されるポリペプチドにおいて欠失、置換、付加、または修飾をそれぞれに行ってもよいし、配列番号1に示されるポリペプチドに欠失、置換、付加、または修飾の少なくとも2つの処理を同時に行ってもよい。欠失、置換、付加、または修飾の位置は、ポリペプチド(配列番号1)のアミノ酸配列のアミノ末端、カルボキシ基末端、またはアミノ酸配列内部であり、アミノ酸の欠失、置換、付加、及び修飾はそれぞれに行われてもよい。ポリペプチド(配列番号1)のアミノ酸配列のアミノ末端及びカルボキシ基末端で、同時にアミノ酸欠失、置換、付加、または修飾を行ってもよい。ポリペプチド(配列番号1)のアミノ酸配列のアミノ末端及び配列内部で、同時にアミノ酸欠失、置換、付加、または修飾を行ってもよい。ポリペプチド(配列番号1)のアミノ酸配列のカルボキシ基末端及び配列内部で、同時にアミノ酸欠失、置換、付加、または修飾を行ってもよい。ポリペプチド(配列番号1)のアミノ酸配列のアミノ末端、カルボキシ基末端、および配列内部で、同時にアミノ酸欠失、置換、付加、または修飾を行ってもよい。前記のアミノ酸の欠失、置換、付加、または修飾としては、前記ポリペプチドのアミノ酸配列におけるアミノ末端、カルボキシ基末端、および配列内部を含む任意のアミノ酸位置でアミノ酸欠失、置換、付加、または修飾を行うことができる。
【0065】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列のポリペプチドに対して、アミノ酸の欠失と付加を同時に行うこと、アミノ酸の置換と付加を同時に行うこと、アミノ酸の欠失と置換を同時に行うこと、アミノ酸の欠失と修飾を同時に行うこと、アミノ酸の付加と修飾を同時に行うこと、アミノ酸の置換と修飾を同時に行うこと、アミノ酸の欠失、付加、および修飾を同時に行うこと、アミノ酸の置換、付加、および修飾を同時に行うこと、アミノ酸の欠失、置換、および修飾を同時に行うこと、またはアミノ酸の欠失、置換、付加、および修飾を同時に行うことのうちの1種または複数である。
【0066】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号5、配列番号14、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号7、配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号27、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号32、配列番号33、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号45、配列番号46、配列番号48、配列番号49、または配列番号47に示される。
【0067】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して、アミノ酸の欠失と付加を同時に行いて得られたポリペプチドは、配列番号5、配列番号14、配列番号19、配列番号20、または配列番号21に示されるアミノ酸配列を有する。
【0068】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、アミノ末端において3個のアミノ酸(1~3位)を欠失して得られ、その配列は配列番号5に示される。
【0069】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号14に示される。
【0070】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において2個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号19に示される。
【0071】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失して得られ、その配列は配列番号20に示される。
【0072】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、アミノ末端において1個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号21に示される。
【0073】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して、アミノ酸の置換と付加を同時に行って得られたポリペプチドは、配列番号7、配列番号15、配列番号16、配列番号25、または配列番号26に示される配列を有する。
【0074】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、配列内部の15位で1個のアミノ酸(A15R)を置換して得られ、その配列は配列番号7に示される。
【0075】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端の18位で1個のアミノ酸(N18R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号15に示される。
【0076】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の7位で1個のアミノ酸(A7R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号16に示される。
【0077】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸(N18R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において2個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号25に示される。
【0078】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の15位で1個のアミノ酸(A15R)を置換し、かつ、アミノ末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号26に示される。
【0079】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失と置換を同時に行って得られたポリペプチドは、配列番号22、配列番号23、または配列番号24に示される配列を有する。
【0080】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の7位で1個のアミノ酸(A7R)を置換し、かつ、アミノ末端において3個のアミノ酸(1~3位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失して得られ、その配列は配列番号22に示される。
【0081】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の7位で1個のアミノ酸(A7R)を置換し、かつ、配列内部11位で1個のアミノ酸を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失して得られ、その配列は配列番号23に示される。
【0082】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の7位で1個のアミノ酸(A7R)を置換し、かつ、アミノ末端において2個のアミノ酸(1~2位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失して得られ、その配列は配列番号24に示される。
【0083】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失と修飾を同時に行って得られたポリペプチドは、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号28、配列番号29、配列番号30、または配列番号31に示される配列を有する。
【0084】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失し、かつ、アミノ末端(1位)にポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号3に示される。
【0085】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、アミノ末端(1位)にポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号9に示される。
【0086】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、アミノ末端において3個のアミノ酸(1~3位)を欠失した後に、配列のカルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号10に示される。
【0087】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、アミノ末端において3個のアミノ酸(1~3位)を欠失した後に、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号11に示される。
【0088】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において2個のアミノ酸(1~2位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失した後に、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号28に示される。
【0089】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号29に示される。
【0090】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号30に示される。
【0091】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部において3個のアミノ酸(3位、4位、11位)を欠失する同時に、カルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号31に示される。
【0092】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対してアミノ酸の付加と修飾を同時に行って得られたポリペプチドは、配列番号27、配列番号37、配列番号38、または配列番号39に示される配列を有する。
【0093】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加した後に、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号27に示される。
【0094】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において2個のアミノ酸を付加し、かつ、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号37に示される。
【0095】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号38に示される。
【0096】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において2個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号39に示される。
【0097】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、付加、および修飾を同時に行って得られたポリペプチドは、配列番号32、配列番号33、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に示される配列を有する。
【0098】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において3個のアミノ酸(1~3位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号32に示される。
【0099】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号33に示される。
【0100】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行い、かつ、カルボキシ基末端において2個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号40に示される。
【0101】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において2個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号41に示される。
【0102】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行い、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加して得られ、その配列は配列番号42に示される。
【0103】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のアミノ末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号43に示される。
【0104】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部(2位と3位との間)において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号44に示される。
【0105】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対してアミノ酸の置換、付加、および修飾を同時に行って得られたポリペプチドは、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、または配列番号54に示される配列を有する。
【0106】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の15位で1個のアミノ酸(A15R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号34に示される。
【0107】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の15位で1個のアミノ酸(A15R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号35に示される。
【0108】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の7位で1個のアミノ酸(A7R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号36に示される。
【0109】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸(N18R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において2個のアミノ酸を付加し、かつ、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号50に示される。
【0110】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の15位で1個のアミノ酸(A15R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、アミノ末端において1個のアミノ酸を付加し、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号51に示される。
【0111】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸(N18R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において2個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号52に示される。
【0112】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の15位で1個のアミノ酸(A15R)を置換し、かつ、アミノ末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号53に示される。
【0113】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の7位で1個のアミノ酸(A7R)を置換し、かつ、カルボキシ基末端において2個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号54に示される。
【0114】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換、および修飾を同時に行って得られたポリペプチドは、配列番号45、配列番号46、配列番号48、または配列番号49に示される配列を有する。
【0115】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部11位で1個のアミノ酸(V11R)を置換し、かつ、アミノ末端において5個のアミノ酸(1~5位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において4個のアミノ酸(15~18位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号45に示される。
【0116】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の7位で1個のアミノ酸(A7R)を置換し、かつ、配列内部に1個のアミノ酸(11位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失し、かつ、アミノ末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号46に示される。
【0117】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の7位で1個のアミノ酸(A7R)を置換し、かつ、配列内部に1個のアミノ酸(11位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号48に示される。
【0118】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列内部の7位で1個のアミノ酸(A7R)を置換し、かつ、アミノ末端において2個のアミノ酸(1~2位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸(18位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号49に示される。
【0119】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換、付加、および修飾を同時に行って得られたポリペプチドは、配列番号47に示される配列を有する。
【0120】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ基末端において1個のアミノ酸(N18R)を置換し、かつ、アミノ末端において2個のアミノ酸(1~2位)を欠失し、かつ、カルボキシ基末端において1個のアミノ酸を付加し、かつ、カルボキシ基末端に対してポリエチレングリコール(PEG)修飾を行って得られ、その配列は配列番号47に示される。
【0121】
本発明において、前記ポリペプチドは、(I)または(II)に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する。好ましくは、前記ポリペプチドは、(I)または(II)に記載のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、前記ポリペプチドは、(I)または(II)に記載のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、前記ポリペプチドは、(I)または(II)に記載のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する。最も好ましくは、前記ポリペプチドは、(I)または(II)に記載のアミノ酸配列と97%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する。
【0122】
本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体の製造方法には、自然抽出、酵素加水分解法、発酵法、遺伝子組換え発現、化学合成が含まれる。
【0123】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記腫瘍には、頭頚癌、呼吸系腫瘍、消化器腫瘍、泌尿器系腫瘍、男性生殖器腫瘍、婦人科腫瘍、皮膚癌、内皮細胞腫瘍、脳腫瘍、神経系腫瘍、内分泌器官腫瘍のうちの1種または複数が含まれる。
【0124】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記頭頚癌には、口唇癌、口腔癌、唾液腺がん、中咽頭がん、上咽頭がん、または下咽頭がんのうちの1種または複数が含まれる。
【0125】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記呼吸系腫瘍には、喉頭癌、肺癌または中皮腫のうちの1種または複数が含まれる。
【0126】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記消化器腫瘍には、結腸・直腸癌、肛門癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆嚢癌または膵臓がんのうちの1種または複数が含まれる。
【0127】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記泌尿器系腫瘍には、腎がんまたは膀胱癌のうちの1種または2種が含まれる。
【0128】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記男性生殖器腫瘍には、陰茎癌、前立腺がん、または精巣がんのうちの1種または複数が含まれる。
【0129】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記婦人科腫瘍には、乳がん、外陰癌、膣癌、子宮頸癌、子宮体癌または卵巣癌のうちの1種または複数が含まれる。
【0130】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記皮膚癌には、皮膚黒色腫または非黒色腫皮膚癌のうちの1種または2種が含まれる。
【0131】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記内皮細胞腫瘍にはカポジ肉腫が含まれ、前記脳腫瘍は脳癌が含まれ、前記神経系腫瘍には中枢神経系腫瘍が含まれ、前記内分泌器官腫瘍には甲状腺がんが含まれる。
【0132】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記医薬品は、単一の有効成分としての前記ポリペプチドまたはその誘導体、有効成分としての前記ポリペプチドとその誘導体との併用、有効成分としての前記ポリペプチドまたはその誘導体と他の医薬品との併用、有効成分としての化学標識または生物標識された前記ポリペプチドまたはその誘導体から形成した結合物、有効成分としての前記ポリペプチドまたはその誘導体または前記結合物が固形媒質または半固形媒質とカップリングしてなる複合体のうちの1種または複数と、薬学的に許容されるキャリアと、を含む。
【0133】
本発明により提供される腫瘍を予防および/または治療するための医薬品には、安全かつ有効量の本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体を含む。安全かつ有効量とは、適切な医学的判断の範囲内で、必要となる対象に十分に有効かつ重篤な副作用を回避できる有効成分の含有量を投与することを意味する。その安全かつ有効量は、選択されるポリペプチド(例えば、ポリペプチドの構造、安定性および半減期を考慮する。)、選択される投与経路、治療される病症、およびひどさ;治療される対象の年齢、体型、体重、および体の状况;治療される対象の病歴;治療持続時間;所望の治療効果および同様な因子によって変化するが、当業者が常法で決まることが可能である。
【0134】
本発明により提供されるポリペプチドまたはその誘導体は、直接に原料薬として使用してもよく、薬学的に許容されるキャリアにより腫瘍を予防および/または治療するための医薬品の製造に使用してもよい。
【0135】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記薬学的に許容されるキャリアには、希釈剤、充填剤、賦形剤、バインダー、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、界面活性剤、吸收促進剤、潤滑剤、吸着キャリア、徐放性微粒子、埋設剤、インサイチュ微粒子、リポソーム、マイクロエマルジョン、インサイチュヒドロゲル、ナノ粒子、プロテアーゼ阻害剤、生体接着剤、融合タンパク質、抗体、またはポリペプチドのうちの1つまたは2つ以上の混合物が含まれる。
【0136】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記薬物の剤型には、錠剤、注射剤、カプセル剤、粒剤、眼科用製剤、吸入製剤、軟膏剤、クリーム剤、スプレー剤、エアゾール剤、ゲル剤、散剤、塗り剤、植込剤、ローション剤のうちの1種または複数が含まれる。
【0137】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記薬物の投与経路には、経口投与、肺部投与、鼻腔投与、経皮投与、眼部投与、静脈滴下、腹腔注射、皮下注射、または筋肉注射のうちの1種または複数が含まれる。
【0138】
本発明の幾つかの具体的な実施形態において、前記腫瘍の細胞には、ヒト肺癌細胞(95D)、ヒト肺有棘癌細胞(NCI-H226)、ヒト肺癌細胞(A549)、蛍光素酵素標識ヒト肺癌細胞A549-luc細胞、ヒト膵臓がん細胞(PANC-1)、ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)、ヒト肝臓癌細胞(HepG2)、ヒト乳がん細胞(MDA-MB-453)、ヒト乳がん細胞(MDA-MB-231)、ヒト乳がん細胞(MCF-7)、ヒト黒色腫細胞(A375)、ヒト口腔類表皮癌細胞(KB)、ヒト咽頭有棘癌細胞(Fadu)、ヒト結腸がん細胞(HCT-116)、ヒト甲状腺がん細胞(FRO)、ヒト前立腺がん細胞(22RV1)が含まれるが、それらに限定されない。
【0139】
本発明において、使用される腫瘍細胞:A549-luc細胞は、上海美軒生物科技有限公司から入手され、他の腫瘍細胞は中国科学院細胞庫、American Type Culture Collection(ATCC)から入手される。実験動物:4~6週齢の雌性免疫不全マウス(BALB/c-nu/nu、北京維通利華実験動物技術有限公司)を使用する。腫瘍動物モデル:皮下異種移植腫瘍動物モデルを使用し、マウスに皮下接種される細胞数を約2×106/200μLとし、皮下腫瘍塊の体積が100mm3を超えたときに、ランダムにグループに分けて投与実験を開始する。腫瘍モデルの対照群では、腫瘍塊の体積が2000mm3に達したか、又は動物が死亡したときに、治療を終了し、動物を解剖して腫瘍塊を取り除き、腫瘍塊の重量及び体積を測定する。実験期間にわたって、1日おきにケージのそばでマウスを観察し、体重を測定する。転移腫瘍動物モデルでは、尾静脈で接種される腫瘍細胞数を約2×106/100μLとし、接種1時間後にグループに分けて、投与実験を行う。実験を28日間続き、治療終了後に、マウスの生体肺蛍光イメージングを取る。実験期間中、1週間おきにケージのそばでマウスを観察し、マウスの肺部蛍光強度を検出した。投与方式:腫瘍内注射投与または静脈注射投与とし、投与量及び頻度を具体的な実験設計に基づいて決定する。実験の群分け:モデル対照群、ポリペプチドまたはその誘導体の治療実験群(N1~N54)とする。実験動物の数:実験動物を治療群あたりに5匹とする。
【0140】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイにより、ヒト非小細胞肺癌(A549)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図1は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表1は、遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)で48時間処理した後に、A549の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はA549細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0141】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト肺癌細胞(95D)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は、実施例2に記載の通りである。
図2は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表2は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、95Dの遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)は95D細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0142】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト肺有棘癌細胞(NCI-H226)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は、実施例2に記載の通りである。
図3は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表3は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、NCI-H226の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はNCI-H226細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0143】
本発明の一実施例では、肺癌皮下異種移植腫瘍動物モデルにて薬効の試験を行い、ここで、腫瘍細胞をヒト肺癌細胞A549細胞系とし、投与方式を腫瘍内注射投与とした。実験の群分け:腫瘍モデルの対照群及びポリペプチドまたはその誘導体の治療実験群(ポリペプチド配列:N1~N12)とした。実験群の投与量:N1~N12の治療群に、5mg/kgで1日おきに一回投与し、治療持続時間を10日間とした。表4は、腫瘍塊重量及び体積測定値の統計結果(mean±SD、P)を示す図である。その結果は、N1~N12の治療群は、モデル対照群と比べて、腫瘍塊の重量及び体積が様々な程度で有意に減少したことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト肺癌細胞関連腫瘍の発展を効果的に抑制する、ことが示された。
【0144】
本発明の一実施例では、肺癌皮下異種移植腫瘍動物モデルにて薬効の試験を行い、腫瘍細胞をヒト肺癌細胞A549細胞系とし、投与方式を腫瘍内注射投与とした。実験の群分け:腫瘍モデルの対照群及びポリペプチドまたはその誘導体の治療実験群(ポリペプチド配列:N13~N32)とした。実験群の投与量:N13~N32の治療群に、5mg/kgで1日おきに一回投与し、治療持続時間を20日間とした。表5は腫瘍塊重量及び体積測定値の統計結果(mean±SD、P)を示す図である。その結果は、N13~N32治療群は、モデル対照群と比べて、腫瘍塊の重量及び体積が様々な程度で有意に減少したことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N13~N32)はヒト肺癌細胞関連腫瘍の発展を効果的に抑制する、ことが示された。
【0145】
本発明の一実施例では、肺癌皮下異種移植腫瘍動物モデルにて薬効の試験を行い、肺癌細胞をヒト肺癌細胞A549細胞系とし、投与方式を静脈注射投与とした。本実施例では、N1~N15、N16~N30、およびN31~N54をそれぞれ評価する3回の実験を行い、3回の実験において実験の流れ、投与方式、投与量及び頻度、並びに指標検出方法などが同様であった。実験の群分け:モデル対照群及びポリペプチドまたはその誘導体の治療群(N1~N15、N16~N30、またはN31~N54)とした。実験群の投与量:N1~N54治療群で、60mg/kgで1日おきに一回投与し、治療持続時間を20日間とした。実験結果は
図4、表6に示す。
図4は治療終了後の各群の腫瘍塊の代表的な画像を示したものである。表6は腫瘍塊重量及び体積測定値の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54治療群は、モデル対照群と比べて、腫瘍塊の重量及び体積が様々な程度で有意に減少したことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肺癌細胞関連腫瘍の発展を効果的に抑制する、ことが示された。
【0146】
本発明の一実施例では、肺癌転移腫瘍動物モデルにて薬効の試験を行い、肺癌細胞をヒト肺癌細胞A549-luc細胞系とし、投与方式を静脈注射投与とした。実験の群分け:モデル対照群及びポリペプチドまたはその誘導体の治療実験群(N1~N12)とした。投与量:N1~N12の治療群に、30mg/kgで1日おきに1回投与した。
図5には治療前後の各群の実験動物の生体肺蛍光イメージング画像が示される。モデル対照群と比べて、N1~N12の治療群は、実験動物の肺部蛍光強度が様々な程度で減少し、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)は肺部転移腫瘍の発展を効果的に抑制する、ことが示された。
【0147】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図6は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表7は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、PANC-1の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はPANC-1細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0148】
本発明の一実施例では、トランスウエル細胞遊走の実験によりヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図7は半透膜の下面に遊走した細胞の顕微鏡における画像である。表8は半透膜の下面に遊走した細胞数の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54処理群は、半透膜の下面に遊走した細胞の数が対照群より有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト膵臓がん細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0149】
本発明の一実施例では、トランスウエル細胞侵襲の実験によりヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の侵襲能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図8は半透膜の下面に遊走した細胞の顕微鏡における画像である。表9は半透膜の下面に遊走した細胞数の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54処理群は、半透膜の下面に遊走した細胞の数が対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト膵臓がん細胞の侵襲能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0150】
本発明の一実施例では、膵臓がん皮下異種移植腫瘍動物モデルにて薬効の試験を行い、膵臓がん細胞をヒト膵臓がん細胞PANC-1細胞系とし、投与方式を腫瘍内注射投与とした。実験の群分けとしては、モデル対照群及びポリペプチドまたはその誘導体の治療群(N1~N12)に分けられた。N1~N12の治療群で、投与量を5mg/kgとし、腫瘍内注射投与で1日おきに一回投与し、治療持続時間を24日間とした。実験結果は
図9、表10に示す。
図9は治療終了後の各群の腫瘍塊の画像を示したものである。表10は腫瘍塊重量及び体積測定値の統計結果を示したものである。その結果は、N1~N12の治療群は、腫瘍塊の重量及び体積がモデル対照群より小さかったことを示し、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト膵臓がん細胞関連腫瘍の発展を効果的に抑制する、ことが示された。
【0151】
本発明の一実施例では、トランスウエル細胞遊走の実験によりヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図10は半透膜の下面に遊走した細胞の顕微鏡における画像である。表11は半透膜の下面に遊走した細胞数の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54処理群は、半透膜の下面に遊走した細胞の数が対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肝臓癌細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0152】
本発明の一実施例では、トランスウエル細胞侵襲の実験によりヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の侵襲能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図11は半透膜の下面に遊走した細胞の顕微鏡における画像である。表12は半透膜の下面に遊走した細胞数の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54処理群は、半透膜の下面に遊走した細胞の数が対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肝臓癌細胞の侵襲能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0153】
本発明の一実施例では、ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるフィブロネクチンの発現に対する抑制の試験を行った。SK-HEP-1細胞を体外培養し、対数増殖期の細胞を収集し、1ウェル当たりの細胞数が1~3×10
5となるように細胞を24ウェルプレートに均一に敷き、細胞培養箱で4~5時間培養すし、対照群に対照としてPBSを加え、実験群にポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)含有PBS溶液を上室に加え、小室でポリペプチドまたはその誘導体の最終濃度が10μMであり、続いて24時間インキュベートした後、細胞を収集して総蛋白質を抽出し、ELISA法で総蛋白質におけるフィブロネクチンの含有量を検出した。その結果は、
図12、表13に示されるように、N1~N12の処理群は、フィブロネクチンが対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト肝臓癌細胞におけるフィブロネクチンの発現を抑制することが示された。
【0154】
本発明の一実施例では、ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるN-カドヘリン発現に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)の抑制実験を行った。その結果は、
図13、表14に示されるように、N1~N12処理群は、対照群と比べてN-カドヘリンが有意に少なかったことを示し、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト肝臓癌細胞におけるN-カドヘリンの発現を抑制する、ことが示された。
【0155】
本発明の一実施例では、ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるビメンチンの発現に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)の抑制実験を行った。その結果は、
図14、表15に示されるように、N1~N12処理群は、対照群と比べてビメンチンが有意に少なかったことを示し、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト肝臓癌細胞におけるビメンチンの発現を抑制する、ことが示された。
【0156】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト肝臓癌細胞(HepG2)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図15は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表16は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、HepG2の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はHepG2細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0157】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト乳がん細胞(MDA-MB-453)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図16は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表17は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、MDA-MB-453の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はMDA-MB-453細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0158】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト乳がん細胞(MDA-MB-231)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図17は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表18は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、MDA-MB-231の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体はMDA-MB-231細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0159】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト乳がん細胞(MCF-7)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図18は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表19は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、MCF-7の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はMCF-7細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0160】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト黒色腫細胞(A375)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図19は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表20は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、A375の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はA375細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0161】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト口腔類表皮癌細胞(KB)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図20は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表21は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、KBの遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はKB細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0162】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト咽頭有棘癌細胞(Fadu)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図21は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表22は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、Faduの遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はFadu細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0163】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト結腸がん細胞(HCT-116)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図22は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表23は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、HCT-116の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体はHCT-116細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0164】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト甲状腺がん細胞(FRO)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図23は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表24は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、FROの遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はFRO細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0165】
本発明の一実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト前立腺がん細胞(22RV1)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。
図24は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表25は遊走率の統計結果である。その結果は、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、22RV1の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)は22RV1細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0166】
本発明の一実施例では、高用量の急性毒性試験を行った。その結果は、いずれかのN1~N54の静脈注射はマウスに関連の器官毒性を生じない、ことが示された。
【0167】
本発明の一実施例では、マウスの血液凝固機能への影響の実験を行った。その結果は、表26に示されるように、N1~N12の各投与群及び対照群では、活性化凝固時間(Activated Coagulation Time (ACT))に有意な変化が見られず、ポリペプチドの薬剤はマウスの血液凝固機能に影響を及ぼさない、ことが示された。
【0168】
本発明の一実施例では、薬物の免疫原性を検査する。その結果は、表27に示されるように、N1~N12の各投与群は、それぞれに投与後の14日目及び25日目に、対照群と比べて、IgGの含有量に有意な変化が見られず、ポリペプチドの薬剤は体内で免疫原性をほとんど生じない、ことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0169】
本発明の実施例または先行技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例または先行技術の説明に必要とされる図面について簡単に説明する。
【0170】
【
図1】
図1は、実施例6におけるヒト肺癌細胞(A549)の細胞遊走の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト肺癌細胞(A549)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肺癌細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図2】
図2は、実施例7におけるヒト肺癌細胞(95D)の細胞遊走の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト肺癌細胞(95D)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト非小細胞肺癌細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図3】
図3は、実施例8におけるヒト肺有棘癌細胞(NCI-H226)の細胞遊走の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト肺有棘癌細胞(NCI-H226)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肺有棘癌細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図4】
図4は、実施例11における実験動物の皮下腫瘍を取り除いた後の腫瘍塊の画像である。該図は、投与方式が静脈注射投与である場合の肺癌細胞の皮下腫瘍成長に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)は肺癌細胞関連腫瘍の成長を有意に抑制できることが示された。図には、モデル対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が60mg/kgであり、投与回数が1日おきに1回である。
【
図5】
図5は、実施例12における実験動物の生体蛍光検出結果図である。該図は、投与方式が静脈注射投与である場合の肺癌転移腫瘍の成長に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)は肺部腫瘍の形成を有意に抑制できることが示された。図には、モデル対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N12)という2つの群がある。実験群(N1~N12)では、薬物使用量が60mg/kgであり、投与回数が1日おきに1回である。
【
図6】
図6は、実施例13におけるヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト膵臓がん細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図7】
図7は、実施例14におけるヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走発生細胞の顕微鏡における画像(トランスウエル細胞遊走の実験)である。該図は、ヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト膵臓がん細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が24時間である。
【
図8】
図8は、実施例15におけるヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の侵襲発生細胞の顕微鏡における画像(トランスウエル細胞侵襲の実験)である。該図は、ヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の侵襲能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト膵臓がん細胞の侵襲挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が24時間である。
【
図9】
図9は、実施例16における実験動物の皮下腫瘍を取り除いた後の腫瘍塊の画像である。該図は、投与方式が腫瘍内注射投与である場合の膵臓がん細胞の皮下腫瘍成長に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)は膵臓腫瘍の成長を有意に抑制できることが示された。図には、モデル対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N12)という2つの群がある。実験群(N1~N12)では、薬物使用量が60mg/kgであり、投与回数が1日おきに1回である。
【
図10】
図10は、実施例17におけるヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の遊走発生細胞の顕微鏡における画像(トランスウエル細胞遊走の実験)である。該図は、ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肝臓腹水腺癌細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が24時間である。
【
図11】
図11は、実施例18におけるヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の侵襲発生の細胞顕微鏡における画像(トランスウエル細胞侵襲の実験)である。該図は、ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の侵襲能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肝臓腹水腺癌細胞の侵襲挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が24時間である。
【
図12】
図12は、実施例19におけるヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるフィブロネクチン(Fibronectin)発現量の測定結果を示したものである。該図は、ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)フィブロネクチンの発現に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)は肝臓癌細胞フィブロネクチンの発現を効果的に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N12)という2つの群がある。実験群(N1~N12)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が24時間である。
【
図13】
図13は、実施例20におけるヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるN-カドヘリン(N-Cadherin)発現量の測定結果を示したものである。該図は、ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)N-カドヘリン発現に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)は肝臓癌細胞N-カドヘリン発現を効果的に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N12)という2つの群がある。実験群(N1~N12)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が24時間である。
【
図14】
図14は、実施例21におけるヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるビメンチン(Vimentin)発現量の測定結果を示したものである。該図は、ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)ビメンチンの発現に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)は肝臓癌細胞ビメンチンの発現を効果的に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N12)という2つの群がある。実験群(N1~N12)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が24時間である。
【
図15】
図15は、実施例22におけるヒト肝臓癌細胞(HepG2)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト肝臓癌細胞(HepG2)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肝臓癌細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図16】
図16は、実施例23におけるヒト乳がん細胞(MDA-MB-453)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト乳がん細胞(MDA-MB-453)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト乳がん細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図17】
図17は、実施例24におけるヒト乳がん細胞(MDA-MB-231)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト乳がん細胞(MDA-MB-231)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト乳がん細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図18】
図18は、実施例25におけるヒト乳がん細胞(MCF-7)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト乳がん細胞(MCF-7)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト乳がん細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図19】
図19は、実施例26におけるヒト黒色腫細胞(A375)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト黒色腫細胞(A375)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト黒色腫細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図20】
図20は、実施例27におけるヒト口腔類表皮癌細胞(KB)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト口腔類表皮癌細胞(KB)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト口腔類表皮癌細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図21】
図21は、実施例28におけるヒト咽頭有棘癌細胞(Fadu)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト咽頭有棘癌細胞(Fadu)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト咽頭有棘癌細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図22】
図22は、実施例29におけるヒト結腸がん細胞(HCT116)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト結腸がん細胞(HCT116)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト結腸がん細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図23】
図23は、実施例30におけるヒト甲状腺がん細胞(FRO)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト甲状腺がん細胞(FRO)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト甲状腺がん細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図24】
図24は、実施例31におけるヒト前立腺がん細胞(22RV1)の遊走発生の画像(創傷治癒アッセイ)である。該図は、ヒト前立腺がん細胞(22RV1)の遊走能力に対する本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制の試験結果を示している。この結果から、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト前立腺がん細胞の遊走挙動を有意に抑制できることが示された。図には、対照群、及びポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)という2つの群がある。実験群(N1~N54)では、薬物使用量が10μMであり、処理時間が48時間である。
【
図25】
図25は、実施例32における実験動物の脳組織病理の画像である。該図は、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はマウスの脳組織に薬物毒性作用がない、ことを示している。
【
図26】
図26は、実施例32における実験動物の心臓組織病理の画像である。該図は、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はマウスの心臓組織に薬物毒性作用がない、ことを示している。
【
図27】
図27は、実施例32における実験動物の肝組織病理の画像である。該図は、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はマウスの肝組織に薬物毒性作用がない、ことを示している。
【
図28】
図28は、実施例32における実験動物の肺組織病理の画像である。該図は、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はマウスの肺組織に薬物毒性作用がない、ことを示している。
【
図29】
図29は、実施例32における実験動物の腎組織病理の画像である。該図は、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はマウスの腎組織に薬物毒性作用がない、ことを示している。
【
図30】
図30は、実施例32における実験動物の脾臓組織病理の画像である。該図は、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はマウスの脾臓組織に薬物毒性作用がない、ことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0171】
本発明は、ポリペプチドまたはその誘導体の使用を開示する。本発明は、当業者であれば本明細書の内容を鑑みてプロセスパラメーターを適切に改善することで実現することができる。なお、すべての類似の置換および変更は、当業者にとって明らかなものであり、本発明に含まれるものとみなされることに留意する必要がある。本発明の方法および使用は、好適な実施例により説明したが、当業者であれば、本発明の内容、精神を逸脱しない範囲で本明細書に記載されている方法および応用を改善、適宜な変更、および組み合わせを行って、本発明の技術を実現および使用することができることは明らかである。
【0172】
特に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての科学技術用語は、当業者に理解される意味と同じ意味を有する。当分野の定義および用語については、当業者は具体的にCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel)を参照することができる。アミノ酸残基の略語としては、20個の常用のL-アミノ酸のいずれの1個を標準的な3文字および/または1文字コードで表すという当分野に用いられる表示方法が使用されている。
本発明により提供されるポリペプチドまたはその誘導体の応用に用いられる試薬は、いずれも市販されている。
【実施例】
【0173】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。
【0174】
実施例1 ポリペプチド成分の調製
ポリペプチド固相合成器を用い、Fmocで保護される樹脂を出発原料とし、Fmoc固相合成法により配列の順に従ってアミノ酸をカップリングし、全保護のペプチド樹脂を合成し、アミノ酸としてL-アミノ酸を使用した。よく使われる切断試薬を用いてペプチド樹脂を切断し、ポリペプチドを樹脂から分解して側鎖保護基を除去し、遠心分離し、乾燥させ、ポリペプチド粗品が得られた。次いで、分取HPLCを用いて粗品ペプチドを精製し、特定の成分を収集し、冷凍乾燥させてポリペプチド製品が得られた。
【0175】
PEG修飾手法:mPEG-SCとポリペプチド(モル比:1.5~2.0:1)をそれぞれ計量して40mL~100mL PBS緩衝溶液(pH5~8.5)に入れ、4℃条件下で1晩反応させ、半分取高速液体クロマトグラフィーを用いて反応産物を精製し、目的産物を収集し、-70℃の低温冷蔵庫で一晩予備乾燥させた後、冷凍乾燥机で30時間程度凍結乾燥させ、PEG修飾されたポリペプチドの産物が得られた。
【0176】
実施例2 腫瘍細胞の遊走に対する抑制の薬効の実験-創傷治癒アッセイ
創傷治癒アッセイにおいて、細胞遊走率が腫瘍細胞の遊走能力に対する薬物成分の抑制効果と負の相関関係を示した。細胞遊走への抑制の実験方法は、以下の通りである。
腫瘍細胞を体外培養し、対数増殖期の細胞を収集し、1ウェル当たりの細胞数を1~2×105となるように細胞を24ウェルプレートに均一に敷き、細胞培養箱で単層細胞が形成するまで培養した。スクラッチ用器具で単層細胞に漢字「一」のようなスクラッチを形成し、PBSで1~3回洗浄した後、特定の試験成分を含む培地(2%のウシ胎児血清を含む)を加えた。実験では、PBS対照群と10μMのポリペプチドまたはその誘導体の処理実験群(N1~N54)に分けられた。各実験群に独立かつ平行な3個のウェルを設け、細胞培養箱で48時間培養を続けた。それぞれの0時点、48時間点で倒立顕微鏡で観察して撮影し、少なくともウェルごとに3枚の代表的な画像を撮影した。細胞の遊走距離をImageJソフトウェアで統計し、以下の式に従って細胞遊走率を算出した。
細胞遊走率(%)=(元のスクラッチ幅-現在のスクラッチ幅)/元のスクラッチ幅×100
【0177】
実施例3 腫瘍細胞の遊走に対する抑制の薬効の試験-トランスウエル細胞遊走の実験
トランスウエル細胞遊走の実験では、トランスウエル小室の実験系を採用した。小室は上下2層に分けられ、中間を人工半透膜で区画された。細胞は、細胞遊走により半透膜を通過し、半透膜下面に付着できるので、半透膜の下面の細胞数を統計することにより細胞遊走能力の強さを評価した。その結果、遊走が発生した細胞の数が腫瘍細胞の遊走能力に対する薬物成分の抑制効果と負の相関関係を示した。トランスウエル細胞遊走への抑制の実験方法は、以下の通りである。
腫瘍細胞を体外培養し、対数増殖期の細胞を収集し、新鮮な無血清培地で細胞懸濁液を調製し、1ミリリットル当たりの細胞懸濁液で細胞数が2~3×105となった。上室に100μL/ウェルの細胞懸濁液(無血清培地)、下室に600μL/ウェルの完全培養液で、細胞を接種した。37℃、5%CO2の培養箱で4~5時間インキュベートした後、対照群に無血清培地(100μL/ウェル)を加え、実験群の上室にポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)含有無血清培地溶液(100μL/ウェル)を加えた。上室内のポリペプチドまたはその誘導体の最終濃度が10μMになった。続いて、24時間インキュベートした後、メタノールで固定し、クリスタルバイオレットで染色し、顕微鏡下で撮影してImageJで遊走が発生した細胞の数を統計した。
【0178】
実施例4 腫瘍細胞侵襲に対する抑制の薬効の試験-トランスウエル細胞侵襲の実験
トランスウエル細胞侵襲の実験では、トランスウエル小室の実験系を採用した。小室は上下2層に分けられ、中間を人工半透膜で区画され、半透膜の上面を人工のマトリゲルで被覆して細胞外マトリックスをシミュレーションした。細胞は、細胞の侵襲挙動によりマトリゲルと半透膜を通過し、半透膜の下面に付着できるので、半透膜の下面の細胞数を統計することにより細胞侵襲能力の強さを評価した。その結果、侵襲が発生した細胞の数が腫瘍細胞の遊走能力に対する薬物成分の抑制効果と負の相関関係を示した。トランスウエル細胞侵襲の実験方法は、以下の通りである。
腫瘍細胞を体外培養し、対数増殖期の細胞を収集し、新鮮な無血清培地で細胞懸濁液を調製し、1ミリリットル当たりの細胞懸濁液で細胞数が2~3×105になった。上室に100μL/ウェルの細胞懸濁液(無血清培地)で、下室に600μL/ウェル完全培養液で、細胞を接種した。37℃、5%CO2の培養箱で4~5時間インキュベートした後、対照群に無血清培地(100μL/ウェル)を加え、実験群の上室にポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)含有無血清培地溶液(100μL/ウェル)を加え、上室でポリペプチドまたはその誘導体の最終濃度が10μMになった。続いて、24時間インキュベートした後、メタノールで固定し、クリスタルバイオレットで染色し、顕微鏡下で撮影してImageJで遊走が発生した細胞の数を統計した。
【0179】
実施例5 腫瘍動物モデルによる薬効の評価
腫瘍細胞:A549-luc細胞は、上海美軒生物科技有限公司から購入され、他の腫瘍細胞は、中国科学院細胞庫、American Type Culture Collection(ATCC)から購入された。
実験動物:4~6週齢の雌性免疫不全マウス(BALB/c-nu/nu、北京維通利華実験動物技術有限公司)を使用した。
腫瘍動物モデル:皮下異種移植腫瘍動物モデルにおいて、マウスに、約2×106/200μLの細胞数で皮下接種し、皮下腫瘍塊の体積が100mm3を超えたときに、ランダムに群に分けて投薬実験を行った。腫瘍モデルの対照群においては、腫瘍塊の体積が2000mm3に達したか、又は動物が死亡したときに、治療を終了させ、動物を解剖して腫瘍塊を取り除き、腫瘍塊の重量及び体積を測定した。実験期間中、1日おきにケージのそばでマウスを観察し、体重を測定した。
転移腫瘍動物モデル:マウスに、約2×106/100μLの腫瘍細胞数で尾静脈接種し、接種1時間後に群に分けて投薬実験を行った。実験は28日間続いた。治療終了後にマウスの生体肺蛍光イメージングを行った。実験期間中、1週間おきにケージのそばでマウスを観察し、マウスの肺部蛍光強度を検出した。
投与方式:腫瘍内注射投与または静脈注射投与とした。投与量及び頻度は具体的な実験設計に基づいて決まる。
実験の群分け:モデル対照群、ポリペプチドまたはその誘導体の治療実験群(N1~N54)とした。
実験動物数:各治療群に5匹の実験動物。
【0180】
実施例6 ヒト非小細胞肺癌細胞(A549)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト非小細胞肺癌(A549)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図1は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表1は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)で48時間処理した後、A549の遊走率は対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、これにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はA549細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0181】
【0182】
実施例7 ヒト肺癌細胞(95D)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト肺癌細胞(95D)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図2は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表2は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、95Dの遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)は95D細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0183】
【0184】
実施例8 ヒト肺有棘癌細胞(NCI-H226)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト肺有棘癌細胞(NCI-H226)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図3は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表3は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、NCI-H226の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はNCI-H226細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0185】
【0186】
実施例9 肺癌皮下異種移植腫瘍動物モデルによる薬効の試験(腫瘍内注射投与)
肺癌皮下異種移植腫瘍動物モデルによる薬効の試験に用いた方法は、実施例5に記載されるように、腫瘍細胞をヒト肺癌細胞A549細胞系とし、投与方式を腫瘍内注射投与とした。
実験の群分け:腫瘍モデルの対照群及びポリペプチドまたはその誘導体の治療実験群(ポリペプチド配列:N1~N12)とした。実験群の投与量:N1~N12の治療群に、5mg/kgで1日おきに一回投与し、治療持続時間を10日間とした。
表4は腫瘍塊重量及び体積測定値の統計結果(mean±SD、P)を示す図である。その結果は、N1~N12の治療群は、モデル対照群と比べて、腫瘍塊の重量及び体積が様々な程度で有意に減少したことを示し、それにより本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト肺癌細胞関連腫瘍の発展を効果的に抑制した、ことが示された。
【0187】
【0188】
実施例10 肺癌皮下異種移植腫瘍動物モデルによる薬効の試験(腫瘍内注射投与)
本実施例では、肺癌皮下異種移植腫瘍動物モデルによる薬効の試験の流れ、投与経路および用量が、実施例9と同様であった。実験群では、ポリペプチド配列としてN13~N32を使用し、治療持続時間を20日間とした。
表5は腫瘍塊重量及び体積測定値の統計結果(mean±SD、P)を示す図である。その結果は、N13~N32の治療群は、モデル対照群と比べて、腫瘍塊の重量及び体積が様々な程度で有意に減少したことを示し、それにより本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N13~N32)はヒト肺癌細胞関連腫瘍の発展を効果的に抑制した、ことが示された。
【0189】
【0190】
実施例11 肺癌皮下異種移植腫瘍動物モデルによる薬効実験(静脈注射投与)
肺癌皮下異種移植腫瘍動物モデルによる薬効の試験に用いた方法は、実施例5に記載されるように、肺癌細胞をヒト肺癌細胞A549細胞系とし、投与方式を静脈注射投与とした。本実施例では、N1~N15、N16~N30およびN31~N54をそれぞれ評価する3回の実験を行い、3回の実験において実験の流れ、投与方式、投与量及び頻度、並びに指標検出方法などが同様であった。実験の群分け:モデル対照群及びポリペプチドまたはその誘導体の治療群(N1~N15、N16~N30、またはN31~N54)とした。実験群の投与量:N1~N54治療群に60mg/kgで1日おきに一回投与し、治療持続時間を20日間とした。
実験結果を
図4、表6に示す。
図4は治療終了後の各群の腫瘍塊の代表的な画像を示したものである。表6は腫瘍塊重量及び体積測定値の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54治療群は、モデル対照群と比べて、腫瘍塊の重量及び体積が様々な程度で有意に減少したことを示し、それにより本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肺癌細胞関連腫瘍の発展を効果的に抑制する、ことが示された。
【0191】
【0192】
実施例12 肺癌転移腫瘍動物モデルによる薬効の試験(静脈注射投与)
肺癌転移腫瘍動物モデルによる薬効の試験に用いた方法は、実施例5に記載されるように、肺癌細胞をヒト肺癌細胞A549-luc細胞系とし、投与方式を静脈注射投与とした。実験の群分け:モデル対照群及びポリペプチドまたはその誘導体の治療実験群(N1~N12)とした。投与量:N1~N12の治療群に、30mg/kgで1日おきに一回投与した。
図5は治療前後の各群の実験動物の生体肺蛍光イメージング画像を示した。N1~N12の治療群は、モデル対照群と比べて、実験動物肺部蛍光強度が様々な程度で減少した。これにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)は肺部転移腫瘍の発展を効果的に抑制できる、ことが示された。
【0193】
実施例13 ヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図6は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表7は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、PANC-1の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はPANC-1細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0194】
【0195】
実施例14 ヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走能力に対する抑制の試験(トランスウエル細胞遊走の実験)
本実施例では、トランスウエル細胞遊走の実験によりヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例3に記載の通りである。
図7は半透膜の下面に遊走した細胞の顕微鏡における画像である。表8は半透膜の下面に遊走した細胞数の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54処理群は、半透膜の下面に遊走した細胞の数が対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト膵臓がん細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0196】
【0197】
実施例15 ヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の侵襲能力に対する抑制の試験(トランスウエル細胞侵襲の実験)
本実施例では、トランスウエル細胞侵襲の実験によりヒト膵臓がん細胞(PANC-1)の侵襲能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例4に記載の通りである。
図8は半透膜の下面に遊走した細胞の顕微鏡における画像である。表9は半透膜の下面に遊走した細胞数の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54処理群は、半透膜の下面に遊走した細胞の数が対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト膵臓がん細胞の侵襲能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0198】
【0199】
実施例16 膵臓がん皮下異種移植腫瘍動物モデルによる薬効の試験(腫瘍内注射投与)
膵臓がん皮下異種移植腫瘍動物モデルによる薬効の試験に用いた方法は、実施例5に記載されるように、膵臓がん細胞をヒト膵臓がん細胞PANC-1細胞系とし、投与方式を腫瘍内注射投与とした。実験の群分け:モデル対照群及びポリペプチドまたはその誘導体の治療群(N1~N12)に分けられた。N1~N12の治療群で、投与量を5mg/kgとし、腫瘍内注射投与で1日おきに一回投与し、治療持続時間を25日間とした。
実験結果を
図9、表10に示す。
図9は治療終了後の各群の腫瘍塊の画像を示したものである。表10は腫瘍塊重量及び体積測定値の統計結果を示したものである。その結果は、N1~N12の治療群は、腫瘍塊の重量及び体積がモデル対照群より小さかったことを示し、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト膵臓がん細胞関連腫瘍の発展を効果的に抑制した、ことが示された。
【0200】
【0201】
実施例17 ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の遊走能力に対する抑制の試験(トランスウエル細胞遊走の実験)
本実施例では、トランスウエル細胞遊走の実験によりヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例3に記載の通りである。
図10は半透膜の下面に遊走した細胞の顕微鏡における画像である。表11は半透膜の下面に遊走した細胞数の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54処理群は、半透膜の下面に遊走した細胞の数が対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肝臓癌細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0202】
【0203】
実施例18 ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の侵襲能力に対する抑制の試験(トランスウエル細胞侵襲の実験)
本実施例では、トランスウエル細胞侵襲の実験によりヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)の侵襲能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例4に記載の通りである。
図11は半透膜の下面に遊走した細胞の顕微鏡における画像である。表12は半透膜の下面に遊走した細胞数の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、N1~N54処理群は、半透膜の下面に遊走した細胞の数が対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はヒト肝臓癌細胞の侵襲能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0204】
【0205】
実施例19 ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるフィブロネクチンの発現に対する抑制の試験
SK-HEP-1細胞を体外培養し、対数増殖期の細胞を収集し、細胞を24ウェルプレートに均一に敷き、1ウェル当たりの細胞数が1~3×10
5となるように保証し、細胞培養箱で4~5時間培養し、対照群では対照としてPBSを加え、実験群ではポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)含有PBS溶液を上室に加え、小室でポリペプチドまたはその誘導体の最終濃度が10μMであり、続いて、24時間インキュベートした後、細胞を収集して総蛋白質を抽出し、ELISA法で総蛋白質におけるフィブロネクチンの含有量を検出した。
その結果は、
図12、表13に示されるように、N1~N12の処理群は、フィブロネクチンが対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト肝臓癌細胞におけるフィブロネクチンの発現を抑制する、ことが示された。
【0206】
【0207】
実施例20 ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるN-カドヘリン発現に対する抑制の試験
ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるN-カドヘリン発現に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)の抑制実験の方法は、実施例19に記載の通りである。
その結果は、
図13、表14に示されるように、N1~N12処理群のN-カドヘリンは対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト肝臓癌細胞におけるN-カドヘリンの発現を抑制する、ことが示された。
【0208】
【0209】
実施例21 ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるビメンチンの発現に対する抑制の試験
ヒト肝臓腹水腺癌細胞(SK-HEP-1)におけるビメンチンの発現に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)の抑制実験の方法は、実施例19に記載の通りである。
その結果は、
図14、表15に示されるように、N1~N12処理群のビメンチンは対照群により有意に少なかったことを示し、それにより、本発明に係るポリペプチドまたはその誘導体(N1~N12)はヒト肝臓癌細胞におけるビメンチンの発現を抑制する、ことが示された。
【0210】
【0211】
実施例22 ヒト肝臓癌細胞(HepG2)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト肝臓癌細胞(HepG2)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図15は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表16は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、HepG2の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はHepG2細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0212】
【0213】
実施例23 ヒト乳がん細胞(MDA-MB-453)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト乳がん細胞(MDA-MB-453)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図16は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表17は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、MDA-MB-453の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はMDA-MB-453細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0214】
【0215】
実施例24 ヒト乳がん細胞(MDA-MB-231)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト乳がん細胞(MDA-MB-231)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図17は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表18は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、MDA-MB-231の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体はMDA-MB-231細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0216】
【0217】
実施例25 ヒト乳がん細胞(MCF-7)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト乳がん細胞(MCF-7)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図18は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表19は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、MCF-7の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はMCF-7細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0218】
【0219】
実施例26 ヒト黒色腫細胞(A375)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト黒色腫細胞(A375)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図19は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表20は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、A375の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はA375細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0220】
【0221】
実施例27 ヒト口腔類表皮癌細胞(KB)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト口腔類表皮癌細胞(KB)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図20は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表21は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、ポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、KBの遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はKB細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0222】
【0223】
実施例28 ヒト咽頭有棘癌細胞(Fadu)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト咽頭有棘癌細胞(Fadu)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図21は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表22は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、Faduの遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はFadu細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0224】
【0225】
実施例29 ヒト結腸がん細胞(HCT-116)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト結腸がん細胞(HCT-116)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図22は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表23は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、HCT-116の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体はHCT-116細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0226】
【0227】
実施例30 ヒト甲状腺がん細胞(FRO)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト甲状腺がん細胞(FRO)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図23は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表24は遊走率の統計結果(mean±SD、P)を示したものである。その結果は、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、FROの遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)はFRO細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0228】
【0229】
実施例31 ヒト前立腺がん細胞(22RV1)の遊走能力に対する抑制の試験(創傷治癒アッセイ)
本実施例では、創傷治癒アッセイによりヒト前立腺がん細胞(22RV1)の遊走能力に対するポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の抑制効果を評価した。実験方法は実施例2に記載の通りである。
図24は、細胞遊走の顕微鏡における画像である。表25は遊走率の統計結果を示すものである。その結果により、10μMのポリペプチドまたはその誘導体で48時間処理した後、22RV1の遊走率が対照群に比べて様々な程度で有意に低下したことを示し、それにより、ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)は22RV1細胞の遊走能力を抑制する作用を持っている、ことが示された。
【0230】
【0231】
実施例32 マウスに14日間連続投与した場合の急性毒性実験
実験動物としては、C57BL/6Jマウス(CHENGDU DOSSY EXPERIMENTAL ANIMALS CO.,LTD.雄性、4~5週齢)を使用した。実験の群分け:対照群(生理食塩水)、及び実験群(ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)の投与群)に分けられ、各群に3匹の実験動物がある。対照群には、生理食塩水を100μL/回/日で尾静脈注射した。ポリペプチドまたはその誘導体(N1~N54)は、尾静脈投与で、投与量を200mg/kg/dayとし、体積を100μLとし、13日間連続投与した。14日目に実験動物を致死させ、大脳、心臓、肝、肺、腎、脾などの器官組織を取り除いて病理解明(HE染色)を行った。
実験結果を
図25~30に示す。
図25は脳組織病理の画像である。N1~N54の各投与群と対照群との染色結果に有意差がなかった。マウスには、脳組織における海馬区ニューロンが規則正しく配列され、脳内における出血点、炎症性細胞の浸潤および疎松水腫などの病理学的現象がなかった。
図26は心臓組織病理の画像である。N1~N54の各投与群と対照群との染色結果に有意差がなかった。心筋細胞に水腫、肥大現象はなく、炎症細胞浸潤、毛細血管および繊維細胞増殖などの病理学的現象もなかった。
図27は肝組織病理の画像である。N1~N54の各投与群と対照群との染色結果に有意差がなかった。肝細胞は中心静脈を中心に単列放射状に並んでいた。肝細胞の空胞変性及び壊死、炎症性細胞の浸潤およびエッジの線維化などの病理学的現象も見られなかった。
図28は肺組織病理の画像である。各投与群と対照群との染色結果に有意差がなかった。即ち、肺胞腔は空胞状の薄肉構造を示し、肺胞壁の増厚、炎症性細胞の浸潤などの病理学的現象は見られなかった。
図29は腎組織病理の画像である。各投与群と対照群との染色結果に有意差がなかった。腎小球構造が明瞭で、顆粒様変性、炎症性細胞の浸潤、毛細血管充血などの病理学的現象は見られなかった。
図30は脾臓組織病理の画像であり、各投与群と対照群との染色結果に有意差がなかった。即ち、脾臓構造が完全であり、脾血洞が脾索に囲まれ、互いに網に接続され、无動脈周囲リンパ鞘の増厚、脾小体数の増加などの病理学的現象は見られなかった。以上より、高用量急性毒性結果は、N1~N54のいずれの成分を静脈注射してもマウスに関連の器官毒性は生じない、ことが示された。
【0232】
実施例33 マウスの血液凝固機能への影響の実験
C57BL/6Jマウスを実験対象として(CHENGDU DOSSY EXPERIMENTAL ANIMALS CO.,LTD.から購入、雄性、体重16~17g)、尾静脈により滅菌生理食塩水またはポリペプチドの薬剤を注射し、24日目まで1日1回注射した。対照群のマウスに滅菌生理食塩水を注射し、投与群(N1~N12)のマウスにポリペプチドの薬剤(200mg/kg)を注射した。各群に3匹の実験動物がある。25日目に眼球を摘出して採血し(50μL)、ACT検出カードでAbbott i-STAT血液ガスアナライザによりマウスの血液凝固機能を検出した。
その結果は、表26に示されるように、N1~N12の各投与群と対照群は活性化凝固時間(ACT)には明らかな変化がなかったことを示し、それにより、ポリペプチドの薬剤はマウスの血液凝固機能に影響を及ぼさないことが示された。
【0233】
【0234】
実施例34 薬物免疫原性の検査
C57BL/6Jマウスを実験対象として(CHENGDU DOSSY EXPERIMENTAL ANIMALS CO., LTD.より購入、雄性、体重16~17g)、尾静脈により滅菌生理食塩水またはポリペプチドの薬剤を注射し、13日目または24日目まで1日1回注射した。対照群のマウスに滅菌生理食塩水を注射し、投与群(N1~N12)マウスにポリペプチドの薬剤(200mg/kg)を注射した。14日目と25日目に眼球を摘出して採血し(各800μL)、遠心分離機で血清を分離し、ELISA法により免疫グロブリンG(IgG)の変化を検出した。
その結果は、表27に示されるように、投与後の14日目と25日目に、N1~N12の各投与群は対照群と比べて、IgGの含有量には明らかな変化がなかったことを示し、これにより、ポリペプチドの薬剤は体内で免疫原性をほとんど生じないことが示された。
【0235】
【0236】
上術したのは、本発明の好適な実施形態にすぎず、当業者にとって、本発明の原理を逸脱することなく、幾つかの改良や修飾を実施する可能性もあり、これらの改良および修飾も本発明の保護範囲内のものと見なされるべきであることに留意する必要がある。
【0237】
以上、本発明により提供されるポリペプチドまたはその誘導体の応用について詳細に説明した。本明細書では、本発明の原理および実施形態について具体例を用いて説明したが、上記の実施例の説明は、本発明の方法およびその要旨を理解するために用いられるものですぎない。当業者によって、本発明の原理を逸脱することなく、本発明に対して幾つかの改良や修飾を行う可能性もあり、これらの改良および修飾も本発明の特許請求の範囲内に含まれることに留意する必要がある。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドまたはその誘導体を含有する腫瘍を予防および/または治療するための組成物であって、前記ポリペプチドが
配列番号1に示されるアミノ酸配列(I)、または
(I)に記載のアミノ酸配列において1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または修飾されて得られたアミノ酸配列であって、(I)に記載のアミノ酸配列と同一機能を有するアミノ酸配列(II)、または
(I)または(II)に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列(III)、
を有することを特徴とする
組成物。
【請求項2】
前記欠失が、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を欠失すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を欠失すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を欠失することのうちの1つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号12、または配列番号13に示される、ことを特徴とする請求項
1に記載の
組成物。
【請求項4】
前記付加が、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を付加すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を付加すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を付加することのうちの1つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項
1に記載の
組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号17または配列番号18に示される、ことを特徴とする請求項4に記載の
組成物。
【請求項6】
前記置換が、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を置換すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を置換すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を置換することのうちの1つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項
1に記載の
組成物。
【請求項7】
前記修飾が、前記ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸を修飾すること、前記ポリペプチドのカルボキシ基末端のアミノ酸を修飾すること、または前記ポリペプチドの配列内部のアミノ酸を修飾することのうちの1つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項
1に記載の
組成物。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、
配列番号1に示されるアミノ酸配列のポリペプチドに対して、アミノ酸の欠失と付加を同時に行うこと、アミノ酸の置換と付加を同時に行うこと、アミノ酸の欠失と置換を同時に行うこと、アミノ酸の欠失と修飾を同時に行うこと、アミノ酸の付加と修飾を同時に行うこと、アミノ酸の置換と修飾を同時に行うこと、アミノ酸の欠失、付加、および修飾を同時に行うこと、アミノ酸の置換、付加、および修飾を同時に行うこと、アミノ酸の欠失、置換、および修飾を同時に行うこと、またはアミノ酸の欠失、置換、付加、および修飾を同時に行うことのうちの1つまたは複数のことにより得られたものである、ことを特徴とする請求項
1に記載の
組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号5、配列番号14、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号7、配列番号15、配列番号16、配列番号25、配列番号26、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号27、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号32、配列番号33、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号45、配列番号46、配列番号48、配列番号49、または配列番号47に示される、ことを特徴とする請求項
1に記載の
組成物。
【請求項10】
前記腫瘍には、頭頚癌、呼吸系腫瘍、消化器腫瘍、泌尿器系腫瘍、男性生殖器腫瘍、婦人科腫瘍、皮膚癌、内皮細胞腫瘍、脳腫瘍、神経系腫瘍、内分泌器官腫瘍のうちの1種または複数が含まれる、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項11】
前記頭頚癌には、口唇癌、口腔癌、唾液腺がん、中咽頭がん、上咽頭がん、または下咽頭がんのうちの1種または複数が含まれ、
前記呼吸系腫瘍には、喉頭癌、肺癌または中皮腫のうちの1種または複数が含まれ、
前記消化器腫瘍には、結腸・直腸癌、肛門癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆■癌または膵臓がんのうちの1種または複数が含まれ、
前記泌尿器系腫瘍には、腎がんまたは膀胱癌のうちの1種または2種が含まれ、
前記男性生殖器腫瘍には、陰茎癌、前立腺がんまたは精巣がんのうちの1種または複数が含まれ、
前記婦人科腫瘍には、乳がん、外陰癌、膣癌、子宮頸癌、子宮体癌または卵巣癌のうちの1種または複数が含まれ、
前記皮膚癌には、皮膚黒色腫または非黒色腫皮膚癌のうちの1種または2種が含まれ、
前記内皮細胞腫瘍にはカポジ肉腫が含まれ、
前記脳腫瘍には脳癌が含まれ、
前記神経系腫瘍には中枢神経系腫瘍が含まれ、
前記内分泌器官腫瘍には甲状腺がんが含まれる、ことを特徴とする請求項10に記載の
組成物。
【請求項12】
前記医薬品が、
単一の有効成分としての前記ポリペプチドまたはその誘導体、有効成分としての前記ポリペプチドとその誘導体との併用、有効成分としての前記ポリペプチドまたはその誘導体と他の医薬品との併用、有効成分としての化学標識または生物標識された前記ポリペプチドまたはその誘導体から形成した結合物、有効成分としての前記ポリペプチドまたはその誘導体または前記結合物が固形媒質または半固形媒質とカップリングしてなる複合体のうちの1種または複数と、
薬学的に許容されるキャリアと、
を含むことを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項13】
前記薬学的に許容されるキャリアには、希釈剤、充填剤、賦形剤、バインダー、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、界面活性剤、吸收促進剤、潤滑剤、吸着キャリア、徐放性微粒子、埋設剤、インサイチュ微粒子、リポソーム、マイクロエマルジョン、インサイチュヒドロゲル、ナノ粒子、プロテアーゼ阻害剤、生体接着剤、融合タンパク質、抗体、またはポリペプチドのうちの1つまたは2つ以上の混合物が含まれる、ことを特徴とする請求項12に記載の
組成物。
【国際調査報告】