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特表2022-544485ATP競合性AKT阻害剤、CDK4/6阻害剤、およびフルベストラントを含む併用療法を使用した乳がんの処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ATP競合性AKT阻害剤、CDK4/6阻害剤、およびフルベストラントを含む併用療法を使用した乳がんの処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/565 20060101AFI20221012BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61K31/565
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/496
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508487
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 US2020045584
(87)【国際公開番号】W WO2021030248
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/885,732
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/935,526
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リン, クイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA22
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA10
4C084ZB261
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086DA09
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんの処置に使用するための、ATP競合性AKT阻害剤、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤を含む併用療法が本明細書で提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法であって、前記方法が、
(i)イパタセルチブ;
(ii)フルベストラント;および
(iii)CDK4/6阻害剤
を含む併用療法を前記患者に投与すること含み、前記併用療法が28日サイクルにわたって投与される、方法。
【請求項2】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法であって、前記方法が、
(i)イパタセルチブ;
(ii)フルベストラント;および
(iii)パルボシクリブ
を含む併用療法を前記患者に投与すること含み、前記併用療法が28日サイクルにわたって投与される、方法。
【請求項3】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法であって、
a.最初の28日サイクルの1~21日目に、イパタセルチブをQDで投与すること;
b.最初の28日サイクルの1~21日目に、パルボシクリブをQDで投与すること;および
c.最初の28日サイクルの1日目および15日目に、フルベストラントを投与すること
を含む投与レジメンを含む併用療法を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項4】
前記最初の28日サイクルの1日目より前の少なくとも5~7日間の導入期間にイパタセルチブを単独で投与することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも7日間を含む休止期間をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
a.各追加の28日サイクルの1~21日目に、イパタセルチブを投与すること;
b.各追加の28日サイクルの1~21日目に、パルボシクリブを投与すること;および
c.各追加の28日サイクルの1日目に、フルベストラントを投与すること
を含む、1回以上の追加の28日サイクルをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
イパタセルチブが300mgの量で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
フルベストラントが静脈内(IV)注入によって500mgの量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において腫瘍成長を阻害するかまたは腫瘍退縮を生じ/増大させる方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法による併用療法を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項10】
前記患者が、ホスファターゼおよびテンシンホモログ(PTEN)変異、PTEN喪失、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ触媒サブユニットα(PIK3CA)変異、プロテインキナーゼBα(AKT1)変異、またはそれらの組合せを有すると判定された、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記PTEN喪失がヘミ接合性またはホモ接合性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有し、アジュバント内分泌療法中に再発したか、または1L内分泌療法の最初の12ヶ月間に疾患の増悪を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
本明細書に記載の前記患者が、前記併用療法の投与前にアロマターゼ阻害剤またはタモキシフェンで事前処置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、レトロゾール、タモキシフェン、アナストロゾール、またはエキセメスタンのうちの1種以上で事前処置されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が閉経後である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、PI3K阻害剤、mTOR阻害剤、AKT阻害剤、またはSERD(選択的エストロゲン受容体分解薬)で事前処置されていない、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、インスリンを必要とするI型またはII型糖尿病の病歴を有しない、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が、炎症性腸疾患または活動性腸炎の病歴を有しない、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法であって、前記方法が、
(i)イパタセルチブ;および
(ii)CDK4/6阻害剤
を含む併用療法を患者に投与すること含み、前記併用療法が28日サイクルにわたって投与される、方法。
【請求項20】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法であって、前記方法が、
(iii)イパタセルチブ;および
(iv)フルベストラント
を含む併用療法を患者に投与すること含み、前記併用療法が28日サイクルにわたって投与される、方法。
【請求項21】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法の使用。
【請求項22】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法の使用。
【請求項23】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)、ならびに本明細書に記載の投与レジメンを含む併用療法の使用。
【請求項24】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、
a.最初の28日サイクルの1~21日目に、イパタセルチブをQDで投与すること;
b.最初の28日サイクルの1~21日目に、パルボシクリブをQDで投与すること;および
c.最初の28日サイクルの1日目および15日目に、フルベストラントを投与すること
を含む投与レジメンを含む併用療法の使用。
【請求項25】
前記医薬が、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんを処置するためのものである、請求項21~24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記医薬が、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の転移性乳がんを処置するためのものである、請求項21~24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法。
【請求項28】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法。
【請求項29】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)、ならびに本明細書に記載の投与レジメンを含む併用療法。
【請求項30】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、
a.最初の28日サイクルの1~21日目に、イパタセルチブをQDで投与すること;
b.最初の28日サイクルの1~21日目に、パルボシクリブをQDで投与すること;および
c.最初の28日サイクルの1日目および15日目に、フルベストラントを投与すること
を含む投与レジメンを含む併用療法。
【請求項31】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんの処置に使用するための、請求項27~30のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項32】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の転移性乳がんの処置に使用するための、請求項27~30のいずれか一項に記載の併用療法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月12日に出願された米国仮特許出願第62/885732号および2019年11月14日に出願された米国仮特許出願第62/935526号の利益を主張し、これらの各々は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
乳がんの処置のための、ATP競合性AKT阻害剤(例えば、イパタセルチブまたはカピバセルチブ)、CDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)、およびフルベストラントを含む併用療法が本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
背景
世界的には、乳がんは2番目に一般的な浸潤性悪性腫瘍であり、女性におけるがん関連死亡率の最も一般的な原因であり、転移の診断後の5年生存率はおよそ15%である(Jemalら、2011;Ferlayら、2015)。
【0004】
したがって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性(HR+/HER2-)の切除不能な局所進行性または転移性乳がんの処置のための臨床的に活性な薬剤が差し迫って必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
概要
上記問題および当技術分野における他の問題に対する解決策が、本明細書で提供される。
【0006】
第1の態様では、イパタセルチブまたはカピバセルチブなどのATP競合性AKT阻害剤、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブなどのCDK4/6阻害剤、およびフルベストラントを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0007】
一態様では、イパタセルチブ、パルボシクリブ、およびフルベストラントを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0008】
別の態様では、イパタセルチブまたはカピバセルチブなどのATP競合性AKT阻害剤、およびパルボシクリブ、リボシクリブまたはアベマシクリブなどのCDK4/6阻害剤を含む併用療法が本明細書で提供される。
【0009】
別の態様では、イパタセルチブまたはカピバセルチブなどのATP競合性AKT阻害剤、およびフルベストラントを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0010】
第3の態様では、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法を投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんを処置する方法が本明細書で提供される。
【0011】
別の態様では、イパタセルチブおよびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法を投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんを処置する方法が本明細書で提供される。
【0012】
さらに別の態様では、イパタセルチブおよびフルベストラントを含む併用療法を投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんを処置する方法が本明細書で提供される。
【0013】
別の態様では、イパタセルチブ、パルボシクリブ、およびフルベストラントを含む併用療法を投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置する方法が本明細書で提供される。
【0014】
さらに別の態様では、イパタセルチブ、CDK4/6阻害剤(例えばパルボシクリブ)、およびフルベストラントを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載の投与レジメンを含む併用療法を投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんを処置する方法が本明細書で提供される。
【0015】
さらに別の態様では、本明細書に記載の投与レジメンを含む併用療法を投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の転移性乳がん(MBC)を処置する方法が本明細書で提供される。
【0016】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法の使用が本明細書で提供される。
【0017】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法が本明細書で提供される。
【0018】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法の使用が本明細書で提供される。
【0019】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0020】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)、ならびに本明細書に記載の投与レジメンを含む併用療法の使用が本明細書で提供される。
【0021】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)、ならびに本明細書に記載の投与レジメンを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0022】
別の態様では、本明細書に記載の方法に従って本明細書に記載の併用療法を患者に投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性BCまたはMBCを有する患者において腫瘍成長を阻害するかまたは腫瘍退縮を生じ/増大させる方法が本明細書で提供される。
【0023】
いくつかの実施形態では、患者のがん細胞は、ホスファターゼおよびテンシンホモログ(PTEN)変異、PTEN喪失(または機能の喪失)、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼの触媒サブユニットα(PIK3CA)変異、プロテインキナーゼBα(AKT1)変異、またはそれらの組合せを有し、そのような変異はNGSを使用して決定することができる。
【0024】
本実施形態は、非限定的な実施形態を例示することが意図されている詳細な説明および実施例を参照することによって、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】イパタセルチブおよびパルボシクリブに対して異なる単剤感受性を有する乳がん細胞株を示す。
図1B】イパタセルチブおよびパルボシクリブに対して異なる単剤感受性を有する乳がん細胞株を示す。
【0026】
図2A】イパタセルチブとパルボシクリブとの間の組合せ効果を示す。
図2B】イパタセルチブとパルボシクリブとの間の組合せ効果を示す。
図2C】イパタセルチブとパルボシクリブとの間の組合せ効果を示す。
図2D】イパタセルチブとパルボシクリブとの間の組合せ効果を示す。
【0027】
図3A】MCF-7(CRL)乳がんモデルにおけるパルボシクリブおよびフルベストラントを伴うイパタセルチブの有効性を示す。
図3B】MCF-7(CRL)乳がんモデルにおけるパルボシクリブおよびフルベストラントを伴うイパタセルチブの有効性を示す。
【0028】
図4A】25mg/kgのイパタセルチブ、イパタセルチブおよびパルボシクリブ、イパタセルチブおよびフルベストラント、ならびにイパタセルチブ/パルボシクリブ/フルベストラントの三重組合せの有効性を示す。
図4B】25mg/kgのイパタセルチブ、イパタセルチブおよびパルボシクリブ、イパタセルチブおよびフルベストラント、ならびにイパタセルチブ/パルボシクリブ/フルベストラントの三重組合せの有効性を示す。
【0029】
図5A】MCF-7(CRL)乳がんモデルにおけるパルボシクリブおよびフルベストラントを伴う50mg/kgのイパタセルチブの有効性を示す。
図5B】MCF-7(CRL)乳がんモデルにおけるパルボシクリブおよびフルベストラントを伴う50mg/kgのイパタセルチブの有効性を示す。
【0030】
図6A】25および50mg/kgのイパタセルチブおよびフルベストラントの組合せの有効性を示す。
図6B】25および50mg/kgのイパタセルチブおよびフルベストラントの組合せの有効性を示す。
図6C】25および50mg/kgのイパタセルチブおよびパルボシクリブの組合せの有効性を示す。
図6D】25および50mg/kgのイパタセルチブおよびパルボシクリブの組合せの有効性を示す。
図6E】パルボシクリブおよびフルベストラント単剤療法および組合せの有効性を示す。
図6F】パルボシクリブおよびフルベストラント単剤療法および組合せの有効性を示す。
【0031】
図7A】MCF-7(CRL)乳がんモデルにおけるパルボシクリブおよびフルベストラントを伴うイパタセルチブの再増加としてのイパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを伴う処置による持続的応答を示す。
図7B】MCF-7(CRL)乳がんモデルにおけるパルボシクリブおよびフルベストラントを伴うイパタセルチブの再増加としてのイパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを伴う処置による持続的応答を示す。
【0032】
図8A】MCF-7(CRL)乳がんモデルにおけるパルボシクリブおよびフルベストラントを伴うイパタセルチブのBW減少%を示す。
図8B】MCF-7(CRL)乳がんモデルにおけるパルボシクリブおよびフルベストラントを伴うイパタセルチブのBW減少%を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、第2版、J.Wiley&Sons(New York、NY 1994);Sambrookら、MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL、Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor、NY 1989)を参照のこと。本発明の実施においては、本明細書に記載されるものと類似したまたは同等の任意の方法、デバイス、および材料を使用することができる。
【0034】
以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を促進するために提供されており、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書で参照されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、組成物または剤形の成分の用量、量、または重量パーセントに言及する場合の「約」および「およそ」という用語は、指定された用量、量、または重量パーセントから得られるものと同等の薬理学的効果をもたらすために当業者によって認識される用量、量、または重量パーセントを意味する。同等の用量、量、または重量パーセントは、指定された用量、量、または重量パーセントの30%、20%、15%、10%、5%、1%、またはそれ未満の範囲内であり得る。
【0036】
「イパタセルチブ」は、以下:
の構造を有し、化学名(S)-2-(4-クロロフェニル)-1-(4-((5R,7R)-7-ヒドロキシ-5-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-3-(イソプロピルアミノ)プロパン-1-オンを有する化合物を指す。一実施形態では、イパタセルチブは一塩酸塩である。一実施形態では、イパタセルチブは非晶質一塩酸塩である。
【0037】
「パルボシクリブ」は、以下:
の構造を有し、化学名6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-{[5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル]アミノ}ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オンを有する化合物を指す。パルボシクリブは、IBRANCE(登録商標)の商品名の下で市販されている。パルボシクリブは、例示的な「CDK4/6阻害剤」-サイクリン依存性キナーゼ4および6(それぞれ、CDK4およびCDK6)を標的とする薬剤のクラスである。
【0038】
他の例示的なCDK4/6阻害剤には、リボシクリブ(ブタン二酸-7-シクロペンチル-N,N-ジメチル-2-{[5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル]アミノ}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミド(1/1)、KISQALI(登録商標)として市販されている);アベマシクリブ、(2-ピリミジンアミン、N-[5-[(4-エチル-1-ピペラジニル)メチル]-2-ピリジニル]-5-フルオロ-4-[4-フルオロ-2-メチル-1-(1-メチルエチル)-1H-ベンゾイミダゾール-6-イル]、VERZENIO(登録商標)として市販されている);およびトリラシクリブ(2’-((5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-7’,8’-ジヒドロ-6’H-スピロ(シクロヘキサン-1,9’-ピラジノ(1’,2’:1,5)ピロロ(2,3-d)ピリミジン)-6’-オン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
「フルベストラント」は、以下:
の構造を有し、化学名7-α-[9-(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル]エストラ-1,3,5-(10)-トリエン-3,17-β-ジオールを有する化合物を指す。フルベストラントは、FASLODEX(登録商標)の商品名の下で市販されている。
【0040】
「全生存期間」または「OS」とは、登録から何らかの原因で死亡するまでの時間を指す。
【0041】
「客観的奏効率」または「ORR」とは、RECIST v1.1に従って治験責任医師が決定した、4週間以下の離れた2回の連続した機会における完全奏効または部分奏効が確認された患者の割合を指す。
【0042】
「無増悪時間」または「TTP」とは、ランダム化から客観的な腫瘍の増悪までの時間を指す。
【0043】
「奏効期間」または「DOR」とは、RECIST v1.1に従って治験責任医師が決定した、記録された客観的奏効の最初の発生から、疾患の増悪、または何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方までの時間を指す。
【0044】
「無増悪生存」または「PFS」とは、登録から、RECIST v1.1を使用して治験責任医師が決定した最初の記録された疾患の増悪の発生、または何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方までの時間を指す。
【0045】
「臨床的有用率」または「CBR」とは、RECIST v1.1に従って治験責任医師が決定した、少なくとも24週間疾患が安定した疾患、または完全奏効もしくは部分奏効が確認された患者の割合を指す。
【0046】
「完全奏効」または「CR」とは、すべての標的病変および非標的病変の消失、ならびに(該当する場合には)腫瘍マーカーレベルの正常化を指す。
【0047】
「部分奏効」または「非CR/非PD」とは、1つ以上の非標的病変の持続および/または(該当する場合には)正常限界を上回る腫瘍マーカーレベルの維持を指す。PRはまた、CR、新しい病変、および非標的病変における明白な増悪の非存在下での標的病変の直径の合計30%以下の減少も指し得る。
【0048】
「進行性疾患」または「PD」とは、標的病変の直径の合計20%以下の増加、非標的病変における明白な増悪、および/または新しい病変の出現を指す。
【0049】
「安定した疾患」または「SD」とは、CRまたはPRと認定されるのに十分な収縮も、PDと認定されるのに十分な腫瘍成長の増加もないことを指す。
【0050】
「処置」という用語は、臨床病理の過程で処置されている患者または細胞の自然な経過を変えるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果には、疾患の増悪速度の低減、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善が含まれる。例えば、患者は、がん性細胞の増殖の低減(または破壊)、疾患に起因する症候の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の医薬品の用量の低減、および/または患者の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載の乳がんに関連する1つ以上の症候が軽減または排除された場合、「処置」に成功する。
【0051】
疾患の「増悪の遅延」という用語は、本明細書に記載の乳がんの発症を先延ばしにする、妨げる、減速させる、遅らせる、安定化する、および/または延期させることを指す。この遅延は、処置されているがんおよび/または患者の病歴に応じて、様々な時間の長さであり得る。当業者には明らかであるように、十分または有意な遅延は、患者ががんを発症しないという点で予防を事実上包含し得る。
【0052】
「有効量」とは、本明細書に記載の乳がんの測定可能な改善または阻止の達成に必要とされる少なくとも最小の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに患者における所望の応答を誘発する薬剤の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量はまた、治療上有益な効果が処置の任意の毒性作用または有害作用を上回るものでもある。有益なまたは所望の結果には、リスクを排除または軽減すること、重症度を軽減すること、疾患(疾患の生化学的、組織学的、および/または行動的症候、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中程度の病理学的表現型を含む)の発症を遅延させること、疾患に起因する1つ以上の症候を軽減すること、疾患に罹患している者の生活の質を高めること、疾患を処置するために必要とされる他の医薬品の用量を低減すること、標的化することなどによって別の医薬品の効果を強化すること、疾患の増悪を遅延させること、および/または生存を延長することなどの結果が含まれる。いくつかの実施形態では、有効量の薬物は、がん細胞の数を減少させ、腫瘍サイズを低減させ、がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、遅らせるか、または停止し)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、遅らせるか、または停止し)、腫瘍成長を阻害し(すなわち、遅らせるか、または停止し)、および/または障害に関連する症候のうちの1つ以上を軽減する効果を有し得る。有効量を1回以上の投与で投与することができる。本明細書に記載の薬物、化合物、医薬組成物、または併用療法の有効量は、直接的または間接的のいずれかで治療的処置を達成するのに十分な量であり得る。臨床の文脈で理解されるように、有効量の薬物、化合物、または医薬組成物とは、別の薬物、化合物、もしくは医薬組成物と組み合わせて、または併用療法で達成されてもよいし、達成されなくてもよい。したがって、「有効量」とは、1種以上の治療剤の投与という文脈において考慮され得、単剤は、1種以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられると考慮され得る。
【0053】
「投与期間」または「サイクル」とは、本明細書に記載の1種以上の薬剤(すなわち、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブ)の投与を含む期間および本明細書に記載の1種以上の薬剤の投与を含まない任意の期間を指す。例えば、サイクルは、全長28日とすることができ、21日間の1種以上の薬剤の投与、および7日の休止期間を含む。「休止期間」とは、本明細書に記載の薬剤(例えば、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブ)の少なくとも1種が投与されない期間を指す。一実施形態では、休止期間は、本明細書に記載の薬剤(例えば、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブ)のいずれも投与されない期間を指す。本明細書で提供される休止期間は、場合によっては、イパタセルチブ、CDK4/6阻害剤(例えばパルボシクリブ)、およびフルベストラントではない別の薬剤の投与を含むことができる。このような場合、休止期間中の別の薬剤の投与は、本明細書に記載の薬剤の投与を妨害したり、または不利益を与えたりすべきではない。
【0054】
「投与レジメン」とは、1回以上のサイクルを含む、本明細書に記載の薬剤の投与期間を指し、各サイクルは、本明細書に記載の薬剤の投与を異なる時間または異なる量で含むことができる。
【0055】
「QD」とは、1日1回の化合物の投与を指す。
【0056】
グレード分類された有害事象とは、NCI CTCAEによって確立された重症度のグレード分類尺度を指す。一実施形態では、有害事象は、以下の表に従ってグレード分類される。
【0057】
ATP競合性AKT阻害剤、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤を含む併用療法が本明細書で提供される。一実施形態では、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤を含む併用療法である。別の実施形態では、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法である。
【0058】
ATP競合性AKT阻害剤と、フルベストラントまたはCDK4/6阻害剤のうちの1種とを含む併用療法が、本明細書でさらに提供される。一実施形態では、そのような併用療法は、イパタセルチブおよびフルベストラントを含む。別の実施形態では、そのような併用療法は、イパタセルチブおよびCDK4/6阻害剤(例えばパルボシクリブ)を含む。
【0059】
本明細書に記載の併用療法は、投与のための1種以上の薬剤を含むキットとして提供することができる。一実施形態では、キットは、イパタセルチブおよびフルベストラントを含む。一実施形態では、キットは、イパタセルチブおよびパルボシクリブを含む。別の実施形態では、キットは、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む。一実施形態では、本明細書に記載の併用療法の薬剤は、投与、または例えば再構成(例えば、本明細書に記載のIV投与のため)の準備ができた形態においてキットで供給される。本明細書に記載のキットは、添付文書などの説明書を含むことができる。一実施形態では、説明書は添付文書であり、キット内の各薬剤に対して1つである。
【0060】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法が、本明細書で提供される。一実施形態では、方法は、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性(HR+HER2-)の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤、例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブを含む併用療法を患者に投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置することを含む。別の実施形態では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法を患者に投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法である。一実施形態では、患者は、切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有し、アジュバント内分泌療法中に再発したか、または1L(「第一選択」)内分泌療法の最初の12ヶ月間に疾患の増悪を有する。
【0061】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、イパタセルチブと、フルベストラントまたはCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)のうちの1種とを含む併用療法を患者に投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法が、本明細書でさらに提供される。そのような一実施形態では、方法は、本明細書に記載のとおりに、イパタセルチブおよびフルベストラントを投与することを含む。別のそのような実施形態では、方法は、本明細書に記載のとおりに、イパタセルチブおよびパルボシクリブを投与することを含む。
【0062】
本明細書で提供される方法の一実施形態では、患者は、切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有し、アジュバント内分泌療法中に再発したか、または1L(「第一選択」)内分泌療法の最初の12ヶ月間に疾患の増悪を有する。
【0063】
乳がんでは、Aktはアポトーシスおよび細胞増殖を制御するPI3K/Akt経路に沿った1つの節であるようであり(Yap TAら、Curr Opin Pharmacol 2008;8:393-412)、この経路は乳がんで活性化されることが公知である。Aktシグナル伝達の上方制御(内因性であろうと化学療法後に誘導されるものであろうと)は、遺伝毒性または有糸分裂ストレスに応答した1つの潜在的な生存経路を表す。(Xu Nら、J Oncol 2012;2012:951724.doi:10.1155/2012/951724.)
【0064】
一態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、(i)ATP競合性AKT阻害剤(例えば、イパタセルチブまたはカピバセルチブ);(ii)フルベストラント;および(iii)CDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法を患者に投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法が本明細書で提供され、併用療法は28日サイクルにわたって投与される。
【0065】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ATP競合性AKT阻害剤(例えば、イパタセルチブまたはカピバセルチブ)と、(x)フルベストラントまたは(y)CDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)のいずれか一方とを含む併用療法を患者に投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法が本明細書で提供され、このような併用療法は28日サイクルにわたって投与される。
【0066】
一態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、(i)イパタセルチブ;(ii)フルベストラント;および(iii)CDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法を患者に投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法が本明細書で提供され、併用療法は28日サイクルにわたって投与される。
【0067】
一実施形態では、方法は、(i)イパタセルチブ;(ii)フルベストラント;および(iii)パルボシクリブを含む併用療法を含む。一実施形態では、方法は、本明細書に記載の投与レジメンに従って投与される、(i)イパタセルチブ;(ii)フルベストラント;および(iii)パルボシクリブを含む併用療法を含む。
【0068】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、イパタセルチブと、(x)フルベストラントまたは(y)CDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブまたはアベマシクリブ)のいずれか一方とを含む併用療法を患者に投与することによって、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法が本明細書で提供され、併用療法は28日サイクルにわたって投与される。
【0069】
そのような一実施形態では、方法は、イパタセルチブと、(x)フルベストラントまたは(y)パルボシクリブのいずれか一方とを含む併用療法を含む。一実施形態では、方法は、本明細書に記載の投与レジメンに従って投与される、イパタセルチブと、(x)フルベストラントまたは(y)パルボシクリブのいずれか一方とを含む併用療法を含む。
【0070】
本明細書に記載の薬剤は、添付文書に従って投与され得る。本明細書に記載の方法の一実施形態では、薬剤は、本明細書に記載のとおりの有効量で投与され得る。本明細書に記載の方法の一実施形態では、イパタセルチブは300mgの量で経口的に投与される。そのような投与は、単回投与(すなわち、単一または複数の丸剤)であり得る。一実施形態では、イパタセルチブの用量は、400mgまたは200mgまたは100mgである。イパタセルチブを、本明細書に記載のとおり、QDで経口的に投与することができる。別の実施形態では、イパタセルチブは、本明細書に記載のとおりの投与レジメンで投与される。
【0071】
別の実施形態では、イパタセルチブは、本明細書に記載の併用療法における任意の他の薬剤(例えばフルベストラントまたはパルボシクリブ)を投与する少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日前に単剤として投与される。そのような一実施形態では、イパタセルチブは、本明細書に記載の併用療法における別の薬剤を投与する前に、最初の5~7日間(「導入期間」)QDで投与される。導入期間の後、イパタセルチブは本明細書に記載の投与レジメンに従って投与される。そのような一実施形態では、導入期間後、イパタセルチブは、本明細書で提供される各28日サイクルの1~21日目に投与される。
【0072】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、イパタセルチブの投与は、別の薬剤(例えばフルベストラント)のIV注入の前に行われる。本明細書に記載の方法の一実施形態では、イパタセルチブの投与はフルベストラントの投与前に行われ、フルベストラントの投与はCDK4/6阻害剤(例えばパルボシクリブ)の投与前に行われる。別の実施形態では、イパタセルチブはパルボシクリブの前またはパルボシクリブと同時に投与され、フルベストラントはその後に投与される。
【0073】
一実施形態では、患者は、以下:
の構造を有し、イパタセルチブの代謝産物である化学名(S)-3-アミノ-2-(4-クロロフェニル)-1-(4-((5R,7R)-7-ヒドロキシ-5-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)プロパン-1-オンを有する化合物の存在、レベルまたは量を試験される。
【0074】
本明細書に記載の方法の別の実施形態では、フルベストラントは約500mgの用量で投与される。本明細書に記載の方法の一実施形態では、フルベストラントは添付文書に従って投与される。一実施形態では、フルベストラントは、二つの別々の250mgの筋肉内注射として投与される。別の実施形態では、フルベストラントは、本明細書に記載のとおりの投与レジメンで投与される。そのような一実施形態では、フルベストラントは、最初の28日サイクルの1および15日目、ならびにその後の各28日サイクルの1日目に投与される。
【0075】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、パルボシクリブは、本明細書に記載の三重併用療法の薬剤として投与される。一実施形態では、パルボシクリブは、125mg、100mg、または75mgの量で経口的に投与される。別の実施形態では、パルボシクリブは、125mgの量で経口的に投与される。別の実施形態では、パルボシクリブは、100mgの量で経口的に投与される。さらに別の実施形態では、パルボシクリブは、75mgの量で経口的に投与される。そのような実施形態では、パルボシクリブは、各28日サイクルの1~21日目にQDで投与される。本明細書に記載の方法の別の実施形態では、パルボシクリブは添付文書に従って投与される。一実施形態では、パルボシクリブは、本明細書に記載の量で、各28日サイクルの1~21日目にQDで経口的に投与される。さらに別の実施形態では、パルボシクリブの量は、初期投与量から変更(例えば、低減)される。そのような一実施形態では、投与されるパルボシクリブの量は、125mgから100mgに減少され、一実施形態では、さらに75mgに減少され得る。別の実施形態では、パルボシクリブは、本明細書に記載のとおりの投与レジメンで投与される。
【0076】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、1回の28日サイクルを含む投与レジメンに従って投与される本明細書に記載の併用療法を含む。一実施形態では、最初の28日サイクルの前に、本明細書で提供されるイパタセルチブを用いる投与量での5~7日間の導入が行われる。別の実施形態では、本明細書に記載の方法は、最初の28日サイクルとそれに続く2~10回の28日サイクルとを含む投与レジメンに従って投与される本明細書に記載の併用療法を含む。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の方法は、最初の28日サイクルとそれに続く2~8回の28日サイクルとを含む投与レジメンに従って投与される本明細書に記載の併用療法を含む。本明細書に記載の方法の一実施形態では、投与レジメンは、最初の28日サイクルと、それに続く2~24、2~18、2~12、2~10、2~8、2~6、または2~4回の28日サイクルとを含む。
【0077】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法のさらなる実施形態が、本明細書で提供される。
【0078】
一実施形態では、組合せの有効性はPFSの関数として測定される。そのような一実施形態では、患者のPFSは、非処置またはSOC処置と比較して3、4、5、6、7、8、9、10、15、20ヶ月、またはそれ以上で増加する。一実施形態では、PFSは、本明細書に記載の併用療法の最初の投与量後、少なくとも64ヶ月間測定される。別の実施形態では、有効性は、バイオマーカー陰性患者セットに匹敵するバイオマーカー陽性患者セット(例えば、PIK3CA/AKT1/PTENを含む本明細書に記載のバイオマーカーパネル)のPFSの関数として測定される。
【0079】
一実施形態では、本明細書で提供される方法による併用療法での処置は、非処置またはSOC処置に匹敵する3、4、5、6、7、8、9、10、15、20ヶ月、またはそれ以上で患者のOSを増加させる。一実施形態では、本明細書で提供される方法による併用療法での処置は、患者のORR量を増加させる。別の実施形態では、応答の有効性は、非処置またはSOC処置に匹敵するDORの関数として測定される。さらに別の実施形態では、応答の有効性は、非処置またはSOC処置に匹敵するCBRの関数として測定される。
【0080】
別の実施形態では、TTPは、本明細書で提供される方法による併用療法での処置後の患者において増加する。別の実施形態では、PFSは、本明細書で提供される方法による併用療法での処置後の患者において増加する。本明細書で提供される一実施形態では、患者は、本明細書で提供される方法による併用療法での処置後にCRを有すると診断される。本明細書で提供される一実施形態では、患者は、本明細書で提供される方法による併用療法での処置後にPRを有すると診断される。本明細書で提供される一実施形態では、患者は、本明細書で提供される方法による併用療法での処置後にSDを有すると診断される。
【0081】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、患者は、本明細書に記載の併用療法の投与前に1つ以上のがん療法で処置されている。本明細書に記載の方法の一実施形態では、事前の療法はフルベストラントおよび/またはCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、フルベストラント、AKT阻害剤、および/またはCDK4/6阻害剤で事前に処置されていない。
【0082】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、患者は、1つ以上のがん療法に対して抵抗性である本明細書に記載の乳がんを有する。本明細書に記載の方法の一実施形態では、がん療法に対する抵抗性は、がんの再発または不応性がんを含む。再発とは、処置後、元々の部位または新たな部位におけるがんの再出現を指し得る。本明細書に記載の方法の一実施形態では、がん療法に対する抵抗性は、抗がん療法での処置中のがんの増悪を含む。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、がん療法に対する抵抗性には、処置に応答しないがんが含まれる。がんは、処置開始時に抵抗性であり得るか、または処置中に抵抗性になり得る。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、がんは初期段階または後期段階にある。
【0083】
一実施形態では、本明細書に記載の患者は、本明細書に記載の併用療法の投与前にアロマターゼ阻害剤またはタモキシフェンで事前処置されている。そのような一実施形態では、患者は、アロマターゼ阻害剤またはタモキシフェンでの事前の処置中に再発したか、またはそのような投与後に疾患の増悪を示した。そのような一実施形態では、1L内分泌療法の最初の12ヶ月の間に再発または疾患の増悪が観察された。一実施形態では、事前の処置は、本明細書に記載のとおりの1種以上のアロマターゼ阻害剤によるものであった。別の実施形態では、事前の処置はタモキシフェンによるものであった。さらに別のそのような実施形態では、事前の処置は、切除不能な局所進行性または転移性乳がんに対するものであった。そのような一実施形態では、本明細書に記載の患者は、レトロゾール、タモキシフェン、アナストロゾール、またはエキセメスタンで事前処置されている。別のそのような実施形態では、本明細書に記載の患者は、本明細書に記載の併用療法の投与前にアロマターゼ阻害剤またはタモキシフェンで3~6年間処置されている。別のそのような実施形態では、本明細書に記載の患者は、本明細書に記載の併用療法の投与前にアロマターゼ阻害剤またはタモキシフェンで6年間超処置されている。さらに別の実施形態では、本明細書の患者は閉経後である。別の実施形態では、本明細書の患者は、例えばRECISTによって測定される少なくとも1つの測定可能な病変を有する。
【0084】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、本明細書に記載のとおりのホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者は、本明細書に記載の併用療法の投与前に、例えば、乳房温存術(すなわち、辺縁部を伴う原発腫瘍の除去に焦点を合わせた腫瘍摘出術)、またはより広範な手術(すなわち、乳房組織のすべてを完全に除去することを目的とする乳房切除術)などの外科的処置を受けていてもよい。別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、本明細書に記載の併用療法での処置後に外科的処置を受けてもよい。
【0085】
放射線治療は、術後に残存している顕微鏡レベルのがん細胞を死滅させる目的で、典型的には、乳房/胸壁および/または局所的なリンパ節に術後投与される。乳房温存手術の場合、放射線は、残存している乳房組織に、および時には局所的なリンパ節(腋窩リンパ節を含む)に投与される。乳房切除術の場合では、局所再発のリスクがより高いと予測する因子が存在する場合、放射線をなおも投与することができる。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のとおりのホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者は、本明細書に記載の併用療法の投与前に放射線治療を受けていてもよい。本明細書で提供される方法の他の実施形態では、本明細書に記載のとおりのホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者は、本明細書に記載の併用療法の投与後に放射線治療を受けていてもよい。
【0086】
別の実施形態では、患者はPI3K阻害剤で事前処置されていない。さらに別の実施形態では、患者はmTOR阻害剤で事前処置されていない。さらに別の実施形態では、患者はAKT阻害剤で事前処置されていない。さらに別の実施形態では、患者は、転移性乳がんのための細胞傷害性化学療法レジメンで以前に処置されていない。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、例えばフルベストラントを含むSERD(選択的エストロゲン受容体分解薬)で以前に処置されていない。
【0087】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法の使用が本明細書で提供される。そのような併用療法は、本明細書に記載の投与およびレジメンをさらに含むことができる。
【0088】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法が本明細書で提供される。そのような併用療法は、本明細書に記載の投与およびレジメンをさらに含むことができる。
【0089】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法の使用も本明細書で提供される。別の実施形態では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法の使用である。そのような一実施形態では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法の使用である。別のそのような実施形態では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法の使用である。そのような併用療法は、本明細書に記載の投与およびレジメンをさらに含むことができる。
【0090】
ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブまたはアベマシクリブ)を含む併用療法も本明細書で提供される。別の実施形態では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法である。そのような一実施形態では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法である。別のそのような実施形態では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法である。そのような併用療法は、本明細書に記載の投与およびレジメンをさらに含むことができる。
【0091】
本明細書に記載の併用療法を投与することによって、本明細書に記載の患者において腫瘍成長を阻害する方法または腫瘍退縮を生じる方法もまた、本明細書で提供される。
【0092】
一実施形態では、本明細書に記載の併用療法を投与することによって、本明細書に記載の患者において腫瘍退縮を生じまたは改善する方法が本明細書で提供される。
【0093】
組合せ処置の開発は、例えば、許容可能な毒性を維持しつつ有効性の改善につながり得る併用療法のための薬剤の選択を含めて、課題を有している。1つの注目すべき課題は、組合せの漸進的な毒性を区別する必要性である。本明細書に記載の方法の一実施形態では、本明細書に記載の併用療法(例えば、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブ)は、ジグザグの投与スケジュールを含む投与レジメンで投与される。一実施形態では、本明細書に記載の併用療法(例えば、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブ)は、28日サイクルで同時に投与される。
【0094】
本明細書で提供される方法の一実施形態では、イパタセルチブおよびパルボシクリブはそれぞれ、各28日サイクルの1~21日目にQDで個別に投与される。そのような実施形態では、フルベストラントは、本明細書に記載のとおりに、例えば最初の28日サイクルの1日目および15日目ならびにその後の各28日サイクルの1日目に投与される。
【0095】
本明細書に記載の併用療法を投与する1つの方法では、方法は、切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者に、以下を含む投与レジメンで投与することを含む:
(a)最初の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でイパタセルチブQD;
(b)最初の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でパルボシクリブQD;および
(c)最初の28日サイクルの1日目および15日目に、本明細書に記載の用量のフルベストラント。
【0096】
そのような方法の一実施形態では、最初の28日サイクルの前に、最初の28日サイクルの1日目の前にイパタセルチブをQDで投与することを含む、本明細書で提供される5~7日の導入期間が行われる。そのような方法の別の実施形態では、最初の28日サイクルは、少なくとも7日を含む休止期間によって進められる。
【0097】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置のためを含む投与レジメンを含む医薬の製造における、以下を含む併用療法の使用が本明細書で提供される:
(a)最初の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でイパタセルチブQD;
(b)最初の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でパルボシクリブQD;および
(c)最初の28日サイクルの1日目および15日目に、本明細書に記載の用量のフルベストラント。
【0098】
別の態様では、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、以下を含む併用療法が本明細書で提供される:
(a)最初の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でイパタセルチブQD;
(b)最初の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でパルボシクリブQD;および
(c)最初の28日サイクルの1日目および15日目に、本明細書に記載の用量でフルベストラント。
【0099】
そのような方法の別の実施形態では、投与レジメンは、以下の投与を含む、1回以上の追加の28日サイクルの投与をさらに含む:
(a)各追加の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でイパタセルチブ;
(b)各追加の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でパルボシクリブ;および
(c)各追加の28日サイクルの1日目に、本明細書に記載の用量でフルベストラント。
【0100】
一実施形態では、各追加の28日サイクルは、次のサイクルを開始する少なくとも7日前を含む休止期間を含む。別のそのような実施形態では、イパタセルチブは300mgの量で投与される。
【0101】
本明細書に記載の併用療法を投与する別の方法では、方法は、切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者に、以下を含む投与レジメンで投与することを含む:
(a)最初の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でイパタセルチブQD;および
(b)最初の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でパルボシクリブQD。
【0102】
本明細書に記載の併用療法を投与する別の方法では、方法は、切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者に、以下を含む投与レジメンで投与することを含む:
(a)最初の28日サイクルの1~21日目に、本明細書に記載の用量でイパタセルチブQD;および
(b)最初の28日サイクルの1日目および15日目に、本明細書に記載の用量のフルベストラント。
【0103】
本明細書に記載の方法の別の実施形態では、投薬は、いずれかの薬剤単独の投与に匹敵するグレード2またはグレード3またはそれ以上のグレードの有害事象の数または頻度を減少させる。
【0104】
一実施形態では、患者は少なくとも18歳である。一実施形態では、患者は、インスリンを必要とするI型またはII型糖尿病の病歴を有しない。別の実施形態では、患者は、炎症性腸疾患または活動性腸炎の病歴を有しない。さらに別の実施形態では、患者は、例えば、肺炎、間質性肺疾患、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、アスペルギルス症、または活動性結核を含む肺疾患を有しない。さらに別の実施形態では、患者は日和見感染症(日和見肺感染症を含む)の病歴を有しない。
【0105】
乳がんは、分子シグネチャーと多種多様な突然変異プロファイルとによって定義される多くの異なるサブタイプを有する異質性疾患である。一実施形態では、患者はPIK3CA/AKT1/PTEN状態の変化について試験され得る。一実施形態では、本明細書に記載の患者は、ホスファターゼおよびテンシンホモログ(PTEN)変異、PTEN喪失(またはPTEN機能の喪失)、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ触媒サブユニットα(PIK3CA)変異、プロテインキナーゼBα(AKT1)変異、またはそれらの組合せのうちの1つ以上について試験され得る。一実施形態では、PTEN喪失は、ヘミ接合性またはホモ接合性である。別の実施形態では、治験処置の安全性および有効性と相関し得る因子を同定するために、本明細書に記載の患者の試料を追加のバイオマーカーについて評価することができる。
【0106】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、NGS、全ゲノム配列決定(WGS)、他の方法、またはそれらの組合せを、本明細書に記載の患者由来の血液試料および腫瘍組織から得られたDNAに対して使用することができる。このような試料を分析して、治験薬剤への応答を予測する、より重篤な疾患状態への増悪に関連する、治験薬剤に対する獲得抵抗性に関連する、または疾患生物学の知識および理解を高めることができる、生殖細胞系列(例えば、BRCA1/2)および体細胞の変化を同定することができる。本明細書に記載の方法の別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、PI3K/Aktシグナル伝達の活性化(例えば、PIK3CAまたはAKT1における活性化変異)、同様にまた、PTEN(例えば、本明細書に提供されるものなど)における変化によって特徴づけられるがんを有し得る。別の実施形態では、PIK3CA/AKT1/PTENの変化した腫瘍状態を、NGSアッセイ(例えば、Foundation Medicine,Inc.[FMI])を使用して決定する。アーカイブ組織におけるPIK3CA/AKT1/PTENの変化した状態の検査および応答測定は、継続的に実施することができる。本明細書で提供されるバイオマーカー(例えばPTEN)の発現は、例えば免疫組織化学(IHC)などの当技術分野で公知の技術を使用して測定することができる。
【0107】
循環腫瘍DNA(ctDNA)は、上皮がんを有するがん患者の血液中で検出することができ、診断的および治療的意義を有し得る(Schwarzenbachら、2011)。例えば、腫瘍細胞の変異状態は、ctDNAの単離を通じて得ることができ(Maheswaran Sら、N Engl J Med2008;359:366-77)、ctDNAは、黒色腫における処置の有効性をモニターするために使用されている(Shinozaki Mら、Clin Cancer Res2007;13:2068-74)。本明細書に記載の患者由来の血液試料は、スクリーニング時、最初の腫瘍評価時、および/または研究終了/早期中止の訪問時に収集することができる。一実施形態では、試料を使用して、ベースラインでの発がん性の遺伝的変化を評価し、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)での処置後に起こり得る新しい変化の出現について評価する。
【0108】
以下に、本発明の例示的な実施形態が本明細書で提供される。
【0109】
実施形態1.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法であって、前記方法が、
(i)イパタセルチブ;
(ii)フルベストラント;および
(iii)CDK4/6阻害剤
を含む併用療法を患者に投与すること含み、前記併用療法が28日サイクルにわたって投与される、方法。
【0110】
実施形態2.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法であって、前記方法が、
(i)イパタセルチブ;
(ii)フルベストラント;および
(iii)パルボシクリブ
を含む併用療法を患者に投与すること含み、前記併用療法が28日サイクルにわたって投与される、方法。
【0111】
実施形態3.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法であって、
a.最初の28日サイクルの1~21日目に、イパタセルチブをQDで投与すること;
b.最初の28日サイクルの1~21日目に、パルボシクリブをQDで投与すること;および
c.最初の28日サイクルの1日目および15日目に、フルベストラントを投与すること
を含む投与レジメンを含む併用療法を患者に投与することを含む、方法。
【0112】
実施形態4.最初の28日サイクルの1日目より前の少なくとも5~7日間の導入期間にイパタセルチブを単独で投与することをさらに含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態5.少なくとも7日間を含む休止期間をさらに含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
実施形態6.
a.各追加の28日サイクルの1~21日目に、イパタセルチブを投与すること;
b.各追加の28日サイクルの1~21日目に、パルボシクリブを投与すること;および
c.各追加の28日サイクルの1日目に、フルベストラントを投与すること
を含む1回以上の追加の28日サイクルをさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
実施形態7.イパタセルチブが300mgの量で投与される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
実施形態8.フルベストラントが静脈内(IV)注入によって500mgの量で投与される、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態9.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者における腫瘍成長を阻害するかまたは腫瘍退縮を生じ/増大させる方法であって、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法による併用療法を患者に投与することを含む、方法。
【0118】
実施形態10.前記患者が、ホスファターゼおよびテンシンホモログ(PTEN)変異、PTEN喪失、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ触媒サブユニットα(PIK3CA)変異、プロテインキナーゼBα(AKT1)変異、またはそれらの組合せを有すると判定された、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
実施形態11.PTEN喪失発現が、ヘミ接合性またはホモ接合性である、実施形態10に記載の方法。
【0120】
実施形態12.患者が、切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有し、アジュバント内分泌療法中に再発したか、または1L内分泌療法の最初の12ヶ月間に疾患の増悪を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
実施形態13.本明細書に記載の患者が、併用療法の投与前にアロマターゼ阻害剤またはタモキシフェンで事前処置されている、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
実施形態14.患者が、レトロゾール、タモキシフェン、アナストロゾール、またはエキセメスタンのうちの1種以上で事前処置されている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
実施形態15.患者が閉経後である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
実施形態16.患者が、PI3K阻害剤、mTOR阻害剤、AKT阻害剤、またはSERD(選択的エストロゲン受容体分解薬)で事前処置されていない、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
実施形態17.患者が、インスリンを必要とするI型またはII型糖尿病の病歴を有しない、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
実施形態18.患者が、炎症性腸疾患または活動性腸炎の病歴を有しない、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態19.患者が、肺炎、間質性肺疾患、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、アスペルギルス症、および活動性結核からなる群から選択される肺疾患を有しない、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態20.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを有する患者において、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性乳がんを処置する方法であって、前記方法が、
(i)イパタセルチブ;および
(ii)フルベストラント;
を含む併用療法を患者に投与すること含み、前記併用療法が28日サイクルにわたって投与される、方法。
【0129】
実施形態21.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法の使用。
【0130】
実施形態22.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法の使用。
【0131】
実施形態23.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)、ならびに本明細書に記載の投与レジメンを含む併用療法の使用。
【0132】
実施形態24.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための医薬の製造における、
a.最初の28日サイクルの1~21日目に、イパタセルチブをQDで投与すること;
b.最初の28日サイクルの1~21日目に、パルボシクリブをQDで投与すること;および
c.最初の28日サイクルの1日目および15日目に、フルベストラントを投与すること
を含む投与レジメンを含む併用療法の使用。
【0133】
実施形態25.医薬が、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんを処置するためのものである、実施形態21~24のいずれか1つに記載の使用。
【0134】
実施形態26.医薬が、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の転移性乳がんを処置するためのものである、実施形態21~24のいずれか1つに記載の使用。
【0135】
実施形態27.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)を含む併用療法。
【0136】
実施形態28.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびパルボシクリブを含む併用療法。
【0137】
実施形態29.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、イパタセルチブ、フルベストラント、およびCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、またはアベマシクリブ)、ならびに本明細書に記載の投与レジメンを含む併用療法。
【0138】
実施形態30.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの処置に使用するための、
a.最初の28日サイクルの1~21日目に、イパタセルチブをQDで投与すること;
b.最初の28日サイクルの1~21日目に、パルボシクリブをQDで投与すること;および
c.最初の28日サイクルの1日目および15日目に、フルベストラントを投与すること
を含む投与レジメンを含む併用療法。
【0139】
実施形態31.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の切除不能な局所進行性乳がんの処置に使用するための、実施形態27~30のいずれか1つに記載の組合せ。
【0140】
実施形態32.ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の転移性乳がんの処置に使用するための、実施形態27~30のいずれか1つに記載の組合せ。
【実施例
【0141】
細胞株を本明細書に記載の薬剤(例えば、イパタセルチブ、パルボシクリブ、およびフルベストラント)で処理した。乳がん細胞株は、イパタセルチブおよびパルボシクリブに対して異なる単剤感受性を示すようであった。(図1Aおよび図1Bを参照されたい)図2A、2B、2C、および2DのBLISSスコアによって示されるように、イパタセルチブとパルボシクリブとの間に相乗効果があった。図3A、3B、4A、4B、5A、および5Bによって示されるように、本明細書に記載のトリプレットの組合せ間には、相乗効果が見られた。ダブレットでの処理の同等な効果を、図6A、6B、6C、6D、6E、および6Fに示す。図7Aおよび7Bによって示されるように、持続的応答が、21日間の投薬後に本明細書に記載のトリプレットの組合せにおいて見られた。処置に起因する重量減少パーセントを、図8Aおよび8Bに示す。
【0142】
本明細書に記載の多くの変更、および本発明の他の実施形態は、これらの発明が前述の説明および添付図面に提示される教示の利益を有するものに属する分野の当業者に想到されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、変更および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が用いられているが、これらは、一般的で説明的な意味でのみ使用されており、限定の目的のためではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図8A
図8B
【国際調査報告】