(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】全身性エリテマトーデスを有する対象における血栓症を診断、予測し、治療をモニタリングするための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20221012BHJP
A61K 31/4706 20060101ALI20221012BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/726 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G01N33/53 R
G01N33/53 N
A61K31/4706
A61P7/04
A61K31/727
A61K31/726
A61K31/37
A61K31/4439
A61K31/5377
A61K31/4545
A61K31/44
A61K31/444
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509062
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 US2020045982
(87)【国際公開番号】W WO2021030471
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522055533
【氏名又は名称】エクセジェン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルビュー,ティエリー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA19
4C086BC17
4C086BC28
4C086BC73
4C086CB05
4C086CB27
4C086EA26
4C086EA27
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA54
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、血小板結合補体C4dのレベルと、C3レベルと、抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン複合体および/またはループス抗凝固因子のレベルのうちの一方または両方と、の決定を含む、全身性エリテマトーデスを有するか、または有すると疑われる対象における血栓症の診断、予測、および治療のための方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症のリスクを診断するための方法であって、前記方法が、
(a)前記対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)前記対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)前記対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および
(ii)前記対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含み、
(i)閾値PC4dタンパク質レベルを超える前記生体試料中の前記PC4dタンパク質のレベルと、(ii)閾値C3タンパク質レベルを下回る前記生体試料中の前記補体C3タンパク質のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える前記生体試料中の前記抗PS/PT IgG抗体のレベルおよび閾値LACレベルを超える前記生体試料中の前記LACのレベルのうちの一方または両方と、の組み合わせが、前記対象が血栓症のリスクを有することを示す、方法。
【請求項2】
(c)が、前記対象からの前記生体試料中の前記抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症の発症を予測するための方法であって、前記方法が、
(a)前記対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)前記対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)前記対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および
(ii)前記対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含み、
(i)閾値PC4dタンパク質レベルを超える前記生体試料中の前記PC4dタンパク質のレベルと、(ii)閾値C3タンパク質レベルを下回る前記生体試料中の前記補体C3タンパク質のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える前記生体試料中の前記抗PS/PT IgG抗体のレベルおよび閾値LACレベルを超える前記生体試料中の前記LACのレベルのうちの一方または両方と、の組み合わせが、前記対象が血栓症を発症するリスクがあることを示す、方法。
【請求項4】
(c)が、前記対象からの前記生体試料中の前記抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
全身性エリテマトーデス(SLE)を有し、血栓症の治療を受けている対象における血栓症の治療をモニタリングするための方法であって、
(a)前記対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)前記対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)前記対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および
(ii)前記対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含み、
(i)閾値PC4dタンパク質レベルを超える前記生体試料中の前記PC4dタンパク質のレベルと、(ii)閾値C3タンパク質レベルを下回る前記生体試料中の前記補体C3タンパク質のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える前記生体試料中の前記抗PS/PT IgG抗体のレベルおよび閾値LACレベルを超える前記生体試料中の前記LACのレベルのうちの一方または両方と、の組み合わせが、前記血栓症の治療が効果的でなかったことを示し、かつ/または
(i)閾値PC4dタンパク質レベル以下の前記生体試料中の前記PC4dタンパク質のレベルと、(ii)閾値C3タンパク質レベル以上の前記生体試料中の前記補体C3タンパク質のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベル以下の前記生体試料中の前記抗PS/PT IgG抗体のレベルおよび閾値LACレベルを超える前記生体試料中の前記LACのレベルのうちの一方または両方と、の組み合わせが、前記血栓症の治療が効果的であったことを示す、方法。
【請求項6】
(a)前記対象からの前記生体試料中の前記血小板C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)前記対象からの前記生体試料中の前記補体C3タンパク質のレベルと、
(c)前記対象からの前記生体試料中の前記抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルと、を決定することを含み、
(i)前記閾値PC4dタンパク質レベルを超える前記生体試料中の前記PC4dタンパク質のレベルと、(ii)前記閾値C3タンパク質レベルを下回る前記生体試料中の補体C3マーカーのレベルと、(iii)前記閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える前記生体試料中の前記抗PS/PT IgG抗体のレベルと、の組み合わせが、前記血栓症の治療が効果的でなかったことを示しており、かつ/または
(i)前記閾値PC4dタンパク質レベル以下の前記生体試料中の前記PC4dタンパク質のレベルと、(ii)前記閾値C3タンパク質レベル以上の前記生体試料中の前記補体C3タンパク質のレベルと、(iii)前記閾値抗PS/PT IgG抗体レベル以下の前記生体試料中の前記抗PS/PT IgG抗体のレベルと、の組み合わせが、前記血栓症の治療が効果的であったことを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PC4dタンパク質のレベルが、全血生体試料中のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記補体C3タンパク質のレベルが、血清試料中のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗PS/PT抗体のレベルが、血清、血漿、または全血試料中のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記PC4dタンパク質のレベルが、C4dに特異的な抗体を使用して決定され、前記補体C3タンパク質のレベルが、C3に特異的な抗体を使用して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記抗PS/PT IgG抗体のレベルが、ELISAプレートを含む酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定され、前記ELISAプレートが、PS/PTでコーティングされている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記LACのレベルが、正であると決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記閾値PC4dタンパク質レベルが、フローサイトメトリーを使用して測定して、20以上の平均蛍光強度(MFI)単位である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記閾値補体C3タンパク質レベルが、補体C3特異的抗体を使用して測定して、血清1デシリットル当たり81mg(mg/dl)未満のタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記閾値抗PS/PT IgG抗体レベルが、ELISAを使用して測定して、30単位超である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、ヒト対象である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記PC4dタンパク質レベルと、補体C3タンパク質レベルと、前記抗PS/PT IgG抗体およびLACレベルのうちの一方または両方とが、2、3、4回、またはそれ以上決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記抗PS/PT IgG抗体レベルが、2、3、4回、またはそれ以上決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、ヒドロキシクロロキン(HCQ)で治療されており、前記方法が、前記対象からの全血試料中のHCQのレベルを決定することをさらに含み、閾値HCQ全血レベルを下回るHCQレベルが、前記対象が静脈血栓症のリスクがあることを示し、かつ/またはHCQの有効性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記閾値HCQ全血レベルが、500ng/mlである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、診断、予測、または治療効果の表示を、遠隔患者モニタリングインターネットベースのデバイスを介して、医療専門家および/または抗血栓治療薬の自動注文のための薬局に通信することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、血栓症を有する、血栓症のリスクがある、または血栓症の修飾療法を必要としていると特定され、前記方法が、前記対象を抗血栓治療薬で治療すること、またはヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバンおよびエドキサバンから選択される抗血栓治療薬の投薬量を増加させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
血栓症を有するか、または有する疑いのある全身性エリテマトーデス(SLE)対象においてマーカーを検出する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象からの生体試料中の血小板C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)前記対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)前記対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および/または
(ii)前記対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む、方法。
【請求項24】
前記対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記PC4dタンパク質のレベルが、全血生体試料中のものである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記補体C3タンパク質のレベルが、血清試料または血漿試料中のものである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記抗PS/PT抗体のレベルが、血清、血漿、または全血試料中のものである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記PC4dのレベルが、C4dに特異的な抗体を使用して決定され、前記補体C3タンパク質のレベルが、C3に特異的な抗体を使用して決定される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記抗PS/PT IgG抗体のレベルが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定され、ELISAプレートが、PS/PTでコーティングされている、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記LAC抗体のレベルが、正であると決定される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記閾値PC4dタンパク質レベルが、フローサイトメトリーを使用して測定して、20以上の平均蛍光強度(MFI)単位である、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記閾値補体C3タンパク質レベルが、C3特異的抗体を使用して測定して、血清または血漿1デシリットル当たり81mg(mg/dl)未満のタンパク質である、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記閾値抗PS/PT IgG抗体レベルが、ELISAを使用して測定して、30単位超である、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、ヒト対象である、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記PC4dタンパク質レベルと、補体C3タンパク質レベルと、前記抗PS/PT IgG抗体およびLACレベルのうちの一方または両方とが、2、3、4回、またはそれ以上決定される、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記抗PS/PT IgG抗体レベルが、2、3、4回、またはそれ以上決定される、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、ヒドロキシクロロキン(HCQ)で治療されており、前記方法が、前記対象からの全血試料中のHCQのレベルを決定することをさらに含み、閾値HCQ全血レベルを下回るHCQレベルが、前記対象が静脈血栓症のリスクがあることを示し、かつ/またはHCQおよび任意の他の抗血栓療法の有効性を示す、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記閾値HCQ全血レベルが、500ng/mlである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、血栓症を有する、血栓症のリスクがある、または血栓症の修飾療法を必要としていると特定される方法であって、前記方法が、前記対象を抗血栓治療薬で治療すること、またはヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバンおよびエドキサバンから選択される抗血栓治療薬の投薬量を増加させることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項40】
全身性エリテマトーデス(SLE)対象における血栓症を治療する方法であって、
(a)前記対象からの第1の血液試料中の血小板C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)前記対象からの第2の血液試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)前記対象からの第3の血液試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および/または
(ii)前記対象からの第4の血液試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することであって、前記第1、第2、第3および第4の血液試料が、同じであり得るかまたは異なり得る、決定することと、
(d)ヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバン、およびエドキサバンからなる群から選択される有効量の1つ以上の抗血栓治療薬で血栓症を有する可能性のある前記対象を治療することと、を含む、方法。
【請求項41】
ステップ(c)が、
(iii)1つ以上の形質転換分析によって前記抗PS/PT IgG抗体およびループス抗凝固因子のレベルを調整することによって血栓症リスクスコアを計算することであって、前記1つ以上の形質転換分析が、ロジスティック回帰分析を含む、計算することと、
(iv)前記血栓症リスクスコアを1つ以上の標準的な血栓症リスクスコアと比較することと、をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
血栓症に関与する複数のタンパク質を分析するのに有用な全身性エリテマトーデス(SLE)対象から試料を調製するための方法であって、
(a)前記対象から全血を収集することと、
(b)赤血球を溶解することを含むことによって、前記対象からの全血に由来する血小板画分を産生し、前記血小板画分中の血小板C4d(PC4d)タンパク質のレベルを測定することと、
(c)前記対象からの前記全血から血清または血漿画分を産生し、前記画分中の補体C3タンパク質のレベルを測定することと、
(d)前記対象からの前記全血から血清または血漿画分を産生し、前記画分中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG複合体抗体のレベルを測定することと、を含む、方法。
【請求項43】
前記PC4dのレベルを前記測定することが、血小板特異的抗体を使用して血小板を結合することをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記PC4dのレベルを前記測定することが、蛍光活性化セルソーティングをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記補体C3タンパク質のレベルを前記測定することが、免疫濁度アッセイを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記PS/PT IgG複合体抗体のレベルを前記測定することが、イムノアッセイを含む、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年8月12日に出願された米国仮出願第62/885,612号および2020年3月30日に出願された米国仮出願第63/002,055号の優先権の利益を主張し、それらの全体が参照により本明細書に組込まれる。
【0002】
SLEにおける血栓症の過度のリスクは、低C3、抗リン脂質(aPL)抗体(特にループス抗凝固因子[LAC])、およびネフローゼ症候群を含む、疾患に特異的な異常の存在に依存している。プレドニゾンなどのSLE治療に関連する他の要因は、血栓症のリスクをさらに高める可能性がある。
【0003】
細胞結合補体活性化産生物(CB-CAP)、ならびにBリンパ球(BC4d)および赤血球(EC4d)などの造血細胞へのC4d分裂断片の沈着は、一般的にSLEに存在する。対照的に、血小板(PC4d)へのC4dの沈着は、一般に稀であるが(20% SLE)、非常に特異的である。(例えば、参考文献1~2を参照されたい)。
【0004】
SLE患者の血栓症リスクを特定する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
態様では、本明細書で提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症を診断するための方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルおよび/または(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む。(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3タンパク質レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/または閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせは、対象が血栓症のリスクを有することを示す。
【0006】
態様では、本明細書で提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症の発症を予測するための方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルおよび/または(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む。(i)閾値PC4d質レベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせは、対象が血栓症を発症するリスクがあることを示す。
【0007】
態様では、本明細書で提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症の治療をモニタリングするための方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルおよび/または(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む。(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/または閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせは、血栓症の治療が効果的でないことを示す。(i)閾値PC4dレベル以下の生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベル以上の補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベル以下の抗PS/PT IgG抗体のレベルおよび/または閾値LAC抗体レベルを超える生体試料中のLAC抗体のレベルと、の組み合わせは、血栓症の治療が効果的であることを示す。
【0008】
態様では、本明細書で提供されるのは、血栓症を有するか、または有することが疑われる全身性エリテマトーデス(SLE)対象におけるマーカーを検出する方法であり、この方法は、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルおよび/または(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む。
【0009】
態様では、本明細書で提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)対象における血栓症を治療する方法であり、(a)対象からの第1の血液試料中のPC4dのレベルと、(b)対象からの第2の血液試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの第3の血液試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および/または(ii)対象からの第4の血液試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することとであって、第1、第2、第3および第4の血液試料が、同じであり得るかまたは異なり得る、決定することと、(d)ヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバンおよびエドキサバンから選択される有効量の1つ以上の抗血栓治療薬で対象を治療することと、を含む。
【0010】
態様では、本明細書で提供されるのは、血栓症に関与する複数のマーカーを分析するのに有用な全身性エリテマトーデス(SLE)対象から試料を調製するための方法であり、(a)対象から全血を収集することと、(b)赤血球を溶解することを含む全血に由来する血小板画分を産生し、血小板画分中のPC4dのレベルを測定することと、(c)全血から第1の血清または血漿画分を産生し、該血清または血漿画分中のC3のレベルを測定することと、(d)全血から第2の血清または血漿画分を産生し、該第2の血清または血漿画分中のPS/PT複合体抗体のレベルを測定することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】任意の血栓症、静脈血栓症および動脈血栓症を有する患者のパーセントを示す。複合スコア(範囲0~3)は、標本収集の時点で存在する異常の数に対応する。
図1Aは、異常なPC4d(>20正味MFI)、低C3(<81mg/dl)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示す。
図1Bは、異常なPC4d(>20正味MFI)、低C3(<81mg/dl)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=148)を示す。
【
図1B】任意の血栓症、静脈血栓症および動脈血栓症を有する患者のパーセントを示す。複合スコア(範囲0~3)は、標本収集の時点で存在する異常の数に対応する。
図1Aは、異常なPC4d(>20正味MFI)、低C3(<81mg/dl)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示す。
図1Bは、異常なPC4d(>20正味MFI)、低C3(<81mg/dl)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=148)を示す。
【
図2A】危険因子および血栓症の複合スコアを提示する。任意の血栓症、静脈血栓症および動脈血栓症を有する患者のパーセントが与えられる。パネルAは、異常なPC4d(>20正味MFI)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルBは、異常なPC4d(>20正味MFI)および低C3(<81mg/dl)(n=148)を示し、パネルCは、異常なPC4d(>20正味MFI)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=149)を示し、パネルDは、低C3(<81mg/dl)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルEは、低C3(<81mg/dl)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=148)を示す。
【
図2B】危険因子および血栓症の複合スコアを提示する。任意の血栓症、静脈血栓症および動脈血栓症を有する患者のパーセントが与えられる。パネルAは、異常なPC4d(>20正味MFI)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルBは、異常なPC4d(>20正味MFI)および低C3(<81mg/dl)(n=148)を示し、パネルCは、異常なPC4d(>20正味MFI)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=149)を示し、パネルDは、低C3(<81mg/dl)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルEは、低C3(<81mg/dl)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=148)を示す。
【
図2C】危険因子および血栓症の複合スコアを提示する。任意の血栓症、静脈血栓症および動脈血栓症を有する患者のパーセントが与えられる。パネルAは、異常なPC4d(>20正味MFI)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルBは、異常なPC4d(>20正味MFI)および低C3(<81mg/dl)(n=148)を示し、パネルCは、異常なPC4d(>20正味MFI)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=149)を示し、パネルDは、低C3(<81mg/dl)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルEは、低C3(<81mg/dl)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=148)を示す。
【
図2D】危険因子および血栓症の複合スコアを提示する。任意の血栓症、静脈血栓症および動脈血栓症を有する患者のパーセントが与えられる。パネルAは、異常なPC4d(>20正味MFI)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルBは、異常なPC4d(>20正味MFI)および低C3(<81mg/dl)(n=148)を示し、パネルCは、異常なPC4d(>20正味MFI)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=149)を示し、パネルDは、低C3(<81mg/dl)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルEは、低C3(<81mg/dl)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=148)を示す。
【
図2E】危険因子および血栓症の複合スコアを提示する。任意の血栓症、静脈血栓症および動脈血栓症を有する患者のパーセントが与えられる。パネルAは、異常なPC4d(>20正味MFI)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルBは、異常なPC4d(>20正味MFI)および低C3(<81mg/dl)(n=148)を示し、パネルCは、異常なPC4d(>20正味MFI)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=149)を示し、パネルDは、低C3(<81mg/dl)およびLAC(dRVVT>37秒)(n=143)を示し、パネルEは、低C3(<81mg/dl)および抗PS/PT IgG(>30単位)(n=148)を示す。
【
図3A】フォローアップ(FU)中のPC4dの持続性、リスクスコアと血栓症との間の関係を示すデータを提示する。パネルAは、ロジスティック回帰分析の結果を示し、これにより、異常なPC4d状態でのFU訪問のパーセンテージが、任意の血栓症(OR範囲11.7 CI95%:3.23~42.44)(p<0.001)、静脈血栓症(OR範囲=33.4 CI95:5.8~193.5)(p<0.001)と著しく関連し、動脈血栓症(OR=4.7 CI95%:0.9~25.4)(p=0.08)では有意に近づいたことが明らかになった。パネルBは、FU中の結果を示しており、患者当たりの平均リスクスコアは、0.57±0.76(n=149)であった。FUでのリスクスコアは、任意の血栓症(OR=3.8 CI95%:単位変化当たり2.0~7.2、OR範囲=53.9 CI95%:7.8~372.4)(p<0.001)、静脈血栓症(OR=3.9 CI95%:単位変化当たり1.9~8.2、OR範囲=60.3 CI95%:6.5~560.8)および動脈血栓症(OR=3.0 CI95%:単位変化当たり1.4~6.4、OR範囲=26.5 CI95%:2.7~259.4)と関連していた。
【
図3B】フォローアップ(FU)中のPC4dの持続性、リスクスコアと血栓症との間の関係を示すデータを提示する。パネルAは、ロジスティック回帰分析の結果を示し、これにより、異常なPC4d状態でのFU訪問のパーセンテージが、任意の血栓症(OR範囲11.7 CI95%:3.23~42.44)(p<0.001)、静脈血栓症(OR範囲=33.4 CI95:5.8~193.5)(p<0.001)と著しく関連し、動脈血栓症(OR=4.7 CI95%:0.9~25.4)(p=0.08)では有意に近づいたことが明らかになった。パネルBは、FU中の結果を示しており、患者当たりの平均リスクスコアは、0.57±0.76(n=149)であった。FUでのリスクスコアは、任意の血栓症(OR=3.8 CI95%:単位変化当たり2.0~7.2、OR範囲=53.9 CI95%:7.8~372.4)(p<0.001)、静脈血栓症(OR=3.9 CI95%:単位変化当たり1.9~8.2、OR範囲=60.3 CI95%:6.5~560.8)および動脈血栓症(OR=3.0 CI95%:単位変化当たり1.4~6.4、OR範囲=26.5 CI95%:2.7~259.4)と関連していた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本開示の様々な実施形態および態様が本明細書に示され説明されているが、そのような実施形態および態様が例としてのみ提供されていることは当業者には明らかであろう。当業者は、本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、および置換に想到するであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替案を、本発明の実施において用いることができることが理解されるべきである。
【0013】
本書で使用されている項目の見出しは、組織化の目的のためであり、記載されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。本出願で引用されたすべての文書または文書の一部(特許、特許出願、論説、書籍、マニュアル、論文を含むがこれらに限定されない)は、その全体が任意の目的のために参照によって明示的に組み込まれる。本明細書で使用される略語は、化学的および生物学的分野内のそれらの従来の意味を有する。本明細書に記載の化学構造および式は、化学分野で公知の化学原子価の標準規則に従って構成されている。
【0014】
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法、デバイス、および材料を、本発明の実施において使用することができる。以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供されており、本開示の範囲を限定するものではない。
【0015】
本明細書で使用される場合、単数形の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形の指示対象を含む。
【0016】
本明細書全体を通して、例えば、「一実施形態」、「実施形態」、「別の実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある特定の実施形態」、「追加の実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、またはそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が、本明細書に記載される少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所での前述の語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態で任意の適切な様式で組み合わせることができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、濃度、測定値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%も変化する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。特定の実施形態では、数値の前にある場合の「約」または「およそ」という用語は、値プラスまたはマイナス15%、10%、5%、または1%の範囲を示す。
【0018】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」という言葉は、述べられたステップもしくは要素またはステップもしくは要素のグループの包含を意味するが、任意の他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素のグループの除外ではないことが理解される。「からなる」とは、「からなる」という語句に続くものを含むこと、およびそれに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が所要または必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素の開示で指示された活動または作用を妨害または貢献しない他の要素に限定される。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が所要または必須であることを示すが、他の要素は任意ではなく、列挙された要素の活動または作用に影響するかどうかに応じて存在する場合と存在しない場合がある。
【0019】
本明細書で使用される場合、「疾患」または「状態」という用語は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、本明細書で提供される化合物または方法で治療することができる患者または対象の存在状態または健康状態を指す。疾患は、自己免疫性疾患であり得る。場合によっては、疾患は、全身性エリテマトーデスである。疾患は、炎症性疾患であり得る。疾患は、心血管性疾患であり得る。場合によっては、状態は、血栓症である。
【0020】
本明細書で使用される場合、「全身性エリテマトーデス」または「SLE」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、血液中の異常な自己抗体の産生を特徴とする自己免疫疾患を指す。これらの自己抗体は、それぞれの抗原に結合し、免疫複合体を形成して循環し、最終的に組織中に沈着する。この免疫複合体の沈着は、慢性的な炎症および組織の損傷を引き起こす。
【0021】
本明細書で使用される場合、「血栓症」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、循環系を通る血液の流れを妨げる、血管内の血栓の形成を指す。血管(静脈または動脈)が損傷すると、身体は、血小板(栓球)およびフィブリンを使用して血栓を形成し、失血を防ぐ。血管が損傷していない場合でも、ある特定の条件下では血栓が体内に形成されることがある。血栓、または血栓の一部が自由に壊れて体内を移動し始めるのは、塞栓として知られている。血栓症は、静脈(静脈血栓症)または動脈(動脈血栓症)で発生する可能性がある。静脈血栓症は、身体の患部の鬱血につながり、一方で動脈血栓症(および稀に重度の静脈血栓症)は、血液供給に影響を及ぼし、その動脈によって供給される組織の損傷(虚血および壊死)につながる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「診断」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、対象における血栓症または転帰の存在の特定または可能性を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「予測」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、血栓症などの特定の転帰または特定の事象を発症する対象の可能性またはリスクを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「生体試料」は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、本明細書に記載される診断または予測の方法で使用できる本質的に任意の試料タイプを包含する。生体試料は、臨床的に関連するタンパク質マーカーレベルまたは抗体レベルを決定することができる、対象または対象の身体から得られる任意の体液、組織または任意の他の試料であり得る。定義には、血液および生物学的起源の他の液体試料、生検標本もしくは組織培養物などの固形組織試料、またはそれらに由来する細胞、ならびにそれらの子孫が含まれる。この定義には、試薬による処理、可溶化、またはポリペプチドもしくはタンパク質などのある特定の成分の濃縮など、調達後に何らかの方法で操作された試料も含まれる。「生体試料」という用語は、臨床試料を含むが、場合によっては、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、生体液、および組織試料も含む。試料は、必要に応じて適切な緩衝液中で希釈によって前処理するか、必要に応じて濃縮することができる。実施形態では、生体試料は、血液試料である。実施形態では、生体試料は、全血、血漿、または血清である。実施形態では、生体試料は、全血である。実施形態では、生体試料は、血漿である。実施形態では、生体試料は、血清である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「全血」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、血漿または血小板などの成分がいずれも除去されていない身体から直接採取された血液を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「血漿(plasma)」および「血漿(blood plasma)」という用語は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、全血中の血球を懸濁状態に保持する血液の黄色がかった液体成分を指す。細胞およびタンパク質を身体全体に運ぶのは、血液の液体部分である。それは身体の総血液量の約55%を占める。血漿は、血球がチューブの底に落ちるまで、遠心分離機で抗凝固因子を含む新鮮な血液のチューブを回転させることによって血液から分離される。次いで、血漿が注がれるか、または引き抜かれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「血清」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、凝固において役割を果たさない血液の液体および溶質成分を指す。それはフィブリノーゲンを含まない血漿として定義される場合がある。血清には、血液凝固に使用されていないすべてのタンパク質;すべての電解質、抗体、抗原、ホルモン;および任意の外因性物質(例えば、薬物または微生物)が含まれる。血清には、白血球(白血球(leukocytes))、赤血球(赤血球(erythrocytes))、血小板、または凝固因子は含まれていない。
【0028】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」(および当技術分野でよく理解される)という用語は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、臨床結果を含む対象の状態において有益または所望の結果を得るための任意のアプローチを広く含む。有益なまたは所望の臨床結果としては、部分的であるか全体であるかを問わず、かつ検出可能であるか検出不可能であるかを問わず、1つ以上の症状または状態の緩和または改善、疾患の程度の低減、病状の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患の感染または拡散の予防、疾患増悪の遅延または減速、病状の改善または軽減、疾患再発の減少、および寛解が挙げられ得るが、これらに限定されない。言い換えれば、本明細書で使用される「治療」とは、疾患の任意の治癒、改善、または予防を含む。治療は、疾患の発症を予防するか、疾患拡大を阻害するか、疾患の症状を軽減するか、疾患の根底にある原因を完全にもしくは部分的に取り除くか、疾患持続期間を短縮するか、またはこれらの組み合わせを行うことができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「治療すること」および「治療」という用語は、予防的治療を含み得る。治療方法は、治療有効量の活性剤を対象に投与することを含む。投与段階は、単回投与からなり得るか、または一連の投与を含み得る。治療期間の長さは、リスクもしくは状態の重症度、患者の年齢、活性剤の濃度、治療に使用される組成物の活性、またはそれらの組み合わせなどの様々な要因に依存する。治療または予防のために使用される薬剤の有効投薬量が特定の治療計画または予防計画の間に増減し得ることも理解されよう。投薬量の変更がなされ、これは、当技術分野で既知の標準的な診断アッセイによって明白になり得る。場合によっては、慢性投与が必要とされ得る。例えば、組成物は、患者を治療するのに十分な量でおよび持続時間、対象に投与される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、患者における疾患症状の発生の減少を指す。予防は、治療なしで発症する可能性が高いであろう症状よりも少ない症状が観察されるように、完全(検出可能な症状なし)または部分的であり得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「患者」または「治療を必要とする対象」または「対象」という用語は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、薬学的組成物の投与によって治療することができる疾患または状態に罹患しているか、または罹患しやすい生物を指す。非限定的な例には、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、および他の非哺乳動物が含まれる。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0032】
「対照」または「対照実験」は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、実験の手順、試薬、または変数を省略する以外は、並行実験などの場合、実験の対象または試薬が処理される実験を指す。いくつかの場合、対照は、実験効果を評価する際の比較の基準として使用される。いくつかの実施形態では、対照は、本明細書(実施形態および例を含む)に記載の化合物の不存在下でのタンパク質の活性の測定である。場合によっては、対照は、アッセイ測定の基準として使用される定量化標準である。定量化標準は、合成タンパク質、組換え発現された精製タンパク質、その自然環境から単離された精製タンパク質、タンパク質断片、合成ポリペプチドなどであり得る。
【0033】
本明細書に記載されるように、「マーカー」、「タンパク質マーカー」、「ポリペプチドマーカー」、および「バイオマーカー」という用語は、本開示全体を通して交換可能に使用され、それらの平易かつ通常の意味に従って使用される。本明細書で使用される場合、タンパク質マーカーは、一般にタンパク質またはポリペプチドを指し、そのレベルまたは濃度は、特定の生物学的状態、特に心血管疾患、事象または転帰に関連する状態に関連する。本明細書に記載されるパネル、アッセイ、キットおよび方法は、抗体、その結合断片、または本明細書に記載されるタンパク質マーカーに特異的な他のタイプの標的結合剤を含み得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、交換可能に使用され得、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、コード化および非コード化アミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、ならびに修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る。様々な実施形態では、生体試料中の天然に存在するタンパク質マーカータンパク質のレベルを検出することは、本明細書に開示される診断、予測、またはモニタリング方法内での使用が企図される。この用語はまた、異種アミノ酸配列を有する天然に存在する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有するか、または有しない異種および相同リーダー配列との融合、免疫学的にタグ付けされたタンパク質などを含むが、これらに限定されない融合タンパク質も含む。「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用され、ポリマーは、アミノ酸から構成されない部分に結合され得る。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに対して適用される。「融合タンパク質」は、単一の部分として組換えにより発現される2つ以上の別々のタンパク質配列をコードするキメラタンパク質を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、その平易かつ通常の意味に従い、最も広い意味で使用される。この用語は、所望の生物学的特異性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、単鎖抗体(例えば、scFv)、および抗体断片または他の誘導体を具体的に網羅するが、これらに限定されない。「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合し、認識する、免疫グロブリン遺伝子またはその機能的断片によってコードされるポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、これらは、同様に、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEをそれぞれ定義する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る天然に存在する変異の可能性を除いて、同一である。ある特定の実施形態では、モノクローナル抗体は、本明細書に記載されるタンパク質マーカーに特異的な抗体である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「検出可能な標識抗体」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、本明細書に記載されるタンパク質マーカーに対する結合特異性を保持し、検出可能な標識が付着している抗体(または抗体断片)を指す。検出可能な標識は、任意の好適な手段、例えば、化学的コンジュゲーションまたは遺伝子操作技法によって付着させることができる。検出可能に標識されたタンパク質を産生するための方法は、当技術分野において周知である。検出可能な標識は、ハプテン、放射性同位元素、フルオロフォア、常磁性標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、あるいは検出可能なシグナル(例えば、放射性、蛍光、色)を放出するか、またはその基板への標識の露出後に検出可能なシグナルを放出する他の部分または化合物を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている様々なそのような標識から選択することができる。様々な検出可能な標識/基質対(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ/ジアミノベンジジン、アビジン/ストレプトアビジン、およびルシフェラーゼ/ルシフェリン))、抗体を標識するための方法、および標識された抗体を使用するための方法が、当技術分野で知られている。
【0038】
本明細書で使用される場合、抗体に「特異的に(もしくは選択的に)結合する」または「特異的に(もしくは選択的に)免疫反応する」という用語は、タンパク質またはペプチドを指す場合、その平易かつ通常の意味に従って使用され、多くの場合、タンパク質および他の生物製剤の不均一な集団において、タンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定されたイムノアッセイ条件下で、特定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10~100倍超で特定のタンパク質に結合する。このような条件下での抗体への特異的結合には、特定のタンパク質に対する特異性のために選択された抗体が必要である。例えば、ポリクローナル抗体は、選択された抗原と特異的に免疫反応性があり、他のタンパク質とは免疫反応性がない抗体サブセットのみを得るように選択され得る。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を差し引くことによって達成することができる。特定のタンパク質と特異的に免疫反応性のある抗体を選択するために、様々なイムノアッセイフォーマットを使用することができる。例えば、イムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために日常的に使用されている。
【0039】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、テトラマーを含む。各テトラマーは、2つの同一の対のポリペプチド鎖からなり、各対は、1本の「軽」鎖(約25kDa)および1本の「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100~110以上のアミノ酸の可変領域を規定している。「可変重鎖」、「VH」、または「VH」という用語は、Fv、scFv、dsFv、またはFabを含む免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す一方、「可変軽鎖」、「VL」、または「VL」という用語は、Fv、scFv、dsFv、またはFabを含む免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「機能的断片」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、抗体の文脈において、生体試料中のタンパク質マーカーのレベルの決定を可能にするタンパク質マーカーに対する十分な結合親和性および特異性を保持する断片を指す。場合によっては、機能的断片は、それが由来している可能性のある無傷の全鎖分子と実質的に同じ親和性および/または特異性でタンパク質マーカーに結合するであろう。抗体機能性断片の例としては、完全抗体分子、Fvなどの抗体断片、一本鎖Fv(scFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、Fab、F(ab)2’、および標的抗原に結合することができる免疫グロブリンペプチドのそれらのまたは任意の他の機能的部分の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。当業者には理解されるように、様々な抗体断片は、様々な方法、例えば、ペプシンなどの酵素による無傷抗体の消化、またはデノボ合成によって得ることができる。抗体断片は、しばしば、化学的にまたは組換えDNA方法論を使用することによってデノボ合成される。したがって、抗体という用語は、本明細書で使用される場合、全抗体の修飾によって産生される抗体断片、または組換えDNA方法論を使用してデノボ合成されたもの(例えば一本鎖Fv)またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定されたものを含む。
【0041】
本明細書に記載される特定のタンパク質の場合、指定タンパク質には、タンパク質の天然に存在する形態、タンパク質転写因子の活性を(例えば、未変性タンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の活性内で)維持する変異型または相同体のうちのいずれかが含まれる。いくつかの実施形態では、変異型または相同体は、天然に存在する形態と比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150もしくは200個の連続したアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「補体カスケード」としても知られる「補体系」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、抗体および食細胞が微生物および損傷した細胞を生物から除去する能力を増強(補完)し、炎症を促進し、病原体の細胞膜を攻撃する免疫系の一部を指す。補体系は、肝臓によって合成され、不活性な前駆体として血液中を循環する多数の小タンパク質からなる。いくつかのトリガーのうちの1つによって刺激されると、系内のプロテアーゼは、特定のタンパク質を切断してサイトカインを放出し、さらなる切断の増幅カスケードを開始する。この補体活性化または補体結合カスケードの最終結果は、異物および損傷した物質を除去するための食細胞の刺激、追加の食細胞を引き付けるための炎症、および細胞殺傷膜侵襲複合体の活性化である。30を超えるタンパク質およびタンパク質断片が、血清タンパク質および細胞膜受容体を含む補体系を構成している。
【0043】
本明細書で使用される場合、「古典的経路」または「古典的補体経路」という用語は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、補体系を活性化する3つの生化学的経路のうちの1つを指す。古典的経路は、C1複合体の活性化によって引き起こされる。C1複合体は、1分子のC1q、2分子のC1rおよび2分子のC1s、またはC1qr2s2で構成されている。これは、C1qが抗原と複合体化したIgMまたはIgGに結合するときに発生する。単一の五量体IgMが経路を開始できるが、いくつかの、理想的には6つのIgGが必要である。これは、C1qが病原体の表面に直接結合する場合にも発生する。そのような結合は、C1q分子のコンフォメーション変化につながり、2つのC1r分子の活性化につながる。C1rは、セリンプロテアーゼである。次いで、それらはC1s(別のセリンプロテアーゼ)を切断する。C1r2s2成分は、現在C4、次いでC2を分裂させて、C4a、C4b、C2a、およびC2bを産生する(歴史的に、C2のより大きな断片はC2aと呼ばれたが、現在はC2bと称される)。C4bおよびC2aは結合して、C3のC3aおよびC3bへの切断を促進する古典的経路C3転換酵素(C4b2a複合体)を形成する。C3bは、後にC4b2aと接合して、C5転換酵素(C4b2a3b複合体)を作製する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「細胞結合補体活性化産生物」または「CB-CAPS」という用語は、赤血球、血小板、BおよびTリンパ球などの循環細胞に結合した加水分解補体活性化産生物を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「血小板結合C4d」または「PC4d」という用語は、血小板上に沈着した補体活性化のC4d産生物を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「補体成分3」および「C3」という用語は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、同じ名前の免疫系のタンパク質を指す。C3は、補体系の活性化において中心的な役割を果たし、自然免疫に寄与し、その活性化は、古典的および代替補体活性化経路の両方に必要である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ループス抗凝固因子」および「LAC」という用語は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、細胞膜に関連するリン脂質およびタンパク質に結合する免疫グロブリンを指す。生体系のループス抗凝固因子は、不適切な血液凝固の増加を引き起こす可能性がある。
【0048】
本明細書で使用される場合、「抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン複合体」および「抗PS/PT」という用語は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、抗リン脂質抗体を指す。実施形態では、ホスファチジルセリン/プロトロンビン複合体に対する抗体は、IgGおよびIgMを含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「酵素結合免疫吸着アッセイ」および「ELISA」という用語は、それらの平易かつ通常の意味に従って使用され、一般的に使用される分析的生化学アッセイを指す。このアッセイは、固相酵素イムノアッセイ(EIA)を使用して、測定されるタンパク質に対して向けられた抗体を使用して、液体試料中のリガンド(一般的にタンパク質)の存在を検出する。ELISAは、医学、植物病理学、およびバイオテクノロジーの診断ツールとして、ならびに様々な業界で品質管理チェックとして使用されてきた。ELISAの最も単純な形式では、試料からの抗原が表面に付着する。次いで、一致する抗体を表面に適用して、抗原に結合できるようにする。この抗体は酵素に結合しており、最終段階で酵素の基質を含む物質が添加される。その後の反応により、検出可能な信号、最も一般的には色の変化がもたらされる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「免疫比濁法」という用語は、その平易かつ通常の意味に従って使用され、抗原/抗体複合体の光散乱特性に依存する技法を指す。例えば、抗原(C3cまたはC4など)を含む患者標本を抗血清と組み合わせると、抗原と抗血清との間の複合体が形成される。光がこの懸濁液を通って向けられると、光の一部が透過され、光学デバイス(光学レンズシステムを介したフォトダイオード)の上に集束される。光学デバイスによって観察される透過光の量は、患者標本中のタンパク質濃度(C3cまたはC4)に間接的に比例する。したがって、高濃度のC3cまたはC4を含む標本は、低濃度のC3cまたはC4を含む標本よりも少ない光が透過する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「スコア」という用語は、診断または予測の決定に関するため、結果に割り当てられる数値を指す。スコアは、正、中間、または負の診断スコアであり得る。スコアは、正、中間、または負の予測スコアであり得る。1つまたは複数のカットオフをスコアとともに使用して、特定のリスクレベルを決定することができる。実施形態では、スコアは、タンパク質濃度、臨床的要因の有無、人口動態統計、または異なる要因の比率などの正規化された値および/または数学的に変換された値に基づいてアルゴリズム的に導出される。スコアを生成するアルゴリズムは、比率ベース、カットオフベース、線状または非線状であり、決定木またはルールベースのモデルを含む。実施形態では、血栓症リスクスコアは、すべての異常に対して1点を割り当てるため、それは、0、1、2、または3であり得る。0以上であり得る。累積的に、複合リスクスコアとしてのPC4d、低C3およびLAC異常の存在は、血栓症の非存在下(0.81±0.06)よりも血栓症の存在下(1.93±0.25)の方が高かった(p<0.01)。スコア0は、血栓症のリスクの観点からは負とみなすことができる。
【0052】
本明細書でさらに記載されるように、「トレーニングセット」は、最終的な診断または予測モデルをトレーニングするプロセス(すなわち、開発、評価および構築)で使用される患者または患者試料のセットである。「検証セット」は、トレーニングプロセスから差し控えられた患者または患者試料のセットであり、最終的な診断または予測モデルの性能を検証するためにのみ使用される。患者または患者試料のセットの数が限られている場合、入手可能なすべてのデータをトレーニングセットとして、または「試料内」の検証セットとして使用することができる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「正規化された」という用語は、値が特定の分布に適合するように設計され、通常は他の変数の分布と同様になるように設計された変換のタイプを指す。例えば、仮想タンパク質AおよびBの場合、タンパク質Aの生の濃度は0~500の範囲であり、タンパク質Bの生の濃度は0~20,000の範囲である。3つの生の値を見て、どちらが「より高い」かを判断するのは簡単ではない。例えば、400のタンパク質Aは、15,000のタンパク質Bよりも高い。正規化プロセスを実行することにより、濃度が同じスケールになるように再スケーリングされ、ゼロを中心として分散は1である。したがって、正規化された濃度は同等であるため、どちらが高いかを判断するのは日常的な作業になる。多くの学習アルゴリズムは、正規化されたデータでより適切に機能し、そうでなければ、例えばこの例では、タンパク質Bは、経験的に「高く」なかったとしても値が高くなるため、アルゴリズムでより多くの重みを得る可能性がある。
【0054】
本明細書で使用される場合、「変換された」という用語は、入力値または出力値に関係なく、数値に適用される数学的プロセスを指す。それは、タンパク質濃度をとること、および「対数変換」を反映した元の値から10を底とする対数を計算することが含まれる場合がある。
【0055】
「(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルおよび(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方」という語句は、(1)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、(2)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベル、または(3)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちのいずれか1つを意味する。
【0056】
「および/または」という句は、いずれかまたは両方を意味する。例えば、Xおよび/またはYは、(1)X、または(2)Y、または(3)XおよびYのいずれかを意味する。
【0057】
I.方法
態様では、本明細書で提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症を診断するための方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルおよび/または(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む。(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3タンパク質レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/または閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせは、対象が血栓症のリスクを有することを示す。
【0058】
態様では、本明細書で提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症の発症を予測するための方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルおよび/または(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む。(i)閾値PC4d質レベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせは、対象が血栓症を発症するリスクがあることを示す。
【0059】
態様では、本明細書で提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症の治療をモニタリングするための方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルおよび/または(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む。(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/または閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせは、血栓症の治療が効果的でないことを示す。(i)閾値PC4dレベル以下の生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベル以上の補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベル以下の抗PS/PT IgG抗体のレベルおよび/または閾値LAC抗体レベルを超える生体試料中のLAC抗体のレベルと、の組み合わせは、血栓症の治療が効果的であることを示す。
【0060】
態様では、本明細書で提供されるのは、血栓症を有するか、または有することが疑われる全身性エリテマトーデス(SLE)対象におけるマーカーを検出する方法であり、この方法は、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルおよび/または(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む。
【0061】
実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象を含む。実施形態では、対象は、ヒトである。実施形態では、対象は、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する。実施形態では、対象は、全身性エリテマトーデス(SLE)を有することが疑われる。実施形態では、対象は、全身性エリテマトーデス(SLE)を有し、血栓症を有している。実施形態では、対象は、全身性エリテマトーデス(SLE)を有し、血栓症を有するか、または発症するリスクがある。
【0062】
対象からの任意の好適な生体試料を使用することができる。実施形態では、生体試料は、対象からの血液、全血、血清、または血漿試料である。実施形態では、生体試料は、対象からの血液試料である。実施形態では、生体試料は、対象からの全血試料である。実施形態では、生体試料は、対象からの血清試料である。実施形態では、生体試料は、対象からの血漿試料である。
【0063】
いくつかの実施形態では、血液試料は、補体活性化を阻害するために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸塩)で処理される。実施形態では、試料は、室温で維持される。実施形態では、試料は、4℃で保存される。収集された血液は、当技術分野で知られている構成要素の方法に分離することができる。例えば、遠心分離は、全血を血漿および赤血球に分離するために、またはより低い遠心力の下で、血漿、バフィーコート(血小板を作製するために使用される)、および赤血球に分離するために使用され得る。
【0064】
実施形態では、全血試料は、異なる成分に分画され得る。実施形態では、全血試料を遠心分離して、血漿を単離する。実施形態では、全血を凝固因子で処理し、遠心分離して血栓および血球を除去し、得られた液体上清は血清である。
【0065】
実施形態では、赤血球は、分画遠心分離によって試料中の他の細胞型から分離される。実施形態では、全血を溶解剤で処理して赤血球を溶解し、血小板画分を得る。血小板の単離は、血小板に特異的な抗体(例えば、CD42b)を使用する分画遠心分離または免疫沈降を含む、当技術分野で知られている方法で実施することができる。
【0066】
特定のバイオマーカーまたはタンパク質マーカーまたは成分のレベル(例えば、数量もしくは量)は、当業者に知られている様々な方法を使用して試料中で測定することができる。そのような方法には、フローサイトメトリー、ELISAなどが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、PC4dおよびC3のレベルの決定は、フローサイトメトリー法を使用して行われ、測定は、分子のそれぞれに特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体を使用する直接または間接免疫蛍光によって行われる。これらの分子のそれぞれは、別個の試料(例えば、血小板特異的画分)または単一の試料(例えば、全血)を使用して測定することができる。
【0067】
実施形態では、レベルを決定することは、対象からの生体試料を処理すること、および試料の特定の成分のレベルまたは量を検出することを含む。実施形態では、レベルを決定することは、生体試料を処理すること、および試料中のPC4dのレベルを検出することを含む。
【0068】
実施形態では、生体試料は、全血の血小板画分である。実施形態では、血小板画分は、PC4dなどの血小板結合補体活性化産生物の分析のために処理することができる。実施形態では、血小板結合補体活性化産生物は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって測定される。実施形態では、血小板結合補体活性化産生物は、PC4dである。
【0069】
実施形態では、PC4dレベルは、以下のようにFACSによって測定される:EDTAで処理された全血試料からの赤血球を溶解し、血小板を、ヒトC4dに対するマウスモノクローナル抗体を使用して、あるいはアイソタイプ対照であるマウスIgG1カッパモノクローナル(MOPC-21)を使用して染色する。2℃~8℃で30分間インキュベートした後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)にコンジュゲートしたヤギ抗マウスを使用して、試料を染色する(暗所において2℃~8℃で30分間)。フィコエリトリン(PE)(血小板特異的マーカー)にコンジュゲートしたヒトCD42bに対するモノクローナル抗体を使用して、血小板に共有結合したC4d補体活性化断片を同定することができる。FACS分析は、蛍光染色強度を測定するためのCXPソフトウェアを備えたGallios(10色)フローサイトメーター(Beckman Coulter,Brea,California)を使用して実施することができる。光散乱(前方および側方)ゲーティングパラメーターを取得中に使用して血小板集団を単離し、続いて陽性CD42b PE染色に基づく二次ゲーティングを行った。FL1(フルオレセインイソチオシアネート)チャネルにおける非特異的(アイソタイプ対照)および特異的(C4d)蛍光の定量化を使用して、CD42b PEゲーティングされた血小板細胞(5000事象)を決定することができる。正味平均蛍光強度(MFI)は、ゲーティングされた血小板細胞での特定のC4d MFI結果からアイソタイプ対照バックグラウンドMFI結果を差し引くことによって決定することができる。
【0070】
実施形態では、レベルを決定することは、対象からの生体試料を処理すること、および試料中の補体C3のレベルを検出することを含む。低補体C3状態は、免疫濁度、化学発光などを含むがこれらに限定されない任意の好適な方法を使用して確立することができる。実施形態では、生体試料は血清であり、C3レベルは、免疫比濁法を使用して測定される。
【0071】
実施形態では、免疫比濁法は、血清C3cおよびC4のインビトロ測定を含む。実施形態では、免疫比濁法は、血清C3のインビトロ測定を含む。実施形態では、免疫濁度アッセイは、デバイスまたは機器、例えば、Optilite臨床化学分析器で実施される。実施形態では、C3濃度の測定値は、1デシリットル当たりのミリグラム(mg/dL)で報告され、機器のオペレーティングソフトウェア内で維持される検量線を参照することによって計算される。
【0072】
実施形態では、レベルを決定することは、対象からの生体試料を処理すること、および抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体および/またはIgM抗体のレベルを決定することを含む。実施形態では、生体試料は、全血である。実施形態では、生体試料は、血清である。実施形態では、生体試料は、血漿である。抗PS/PT複合体抗体は、イムノアッセイを含むがこれに限定されない任意の好適な手段を使用して測定することができる。実施形態では、抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgGおよび/またはIgM抗体のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイによって測定される。実施形態では、血清または血漿中のホスファチジルセリン/プロトロンビン複合体(PS/PT)に対するIgGおよびIgMクラス抗体を検出するための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、半定量的および定性的であり得る。
【0073】
実施形態では、マイクロウェルプレートウェルは、精製されたPS/PT複合体でコーティングされ、次いで安定化される。インキュベーションすると、PS/PT IgGまたはPS/PT IgM抗体を含む血清がPS/PTと結合する。未結合のタンパク質を洗浄によって除去し、抗ヒトIgGまたはIgM西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識コンジュゲートをウェルに添加する。インキュベーション後、未結合のコンジュゲートを洗浄によって除去する。次いでペルオキシダーゼ基質を添加し、これはコンジュゲートされた酵素の存在下で色が変化する。着色産生物の酵素的産生を停止した後、プロトロンビン抗体の有無は、患者のウェルで発生する色の強度を測定し、5点の検量線の色の強度と比較することによって分光光度的に決定される。デバイスまたは機器によって定義された単位(例えば、Inova ELISA:QUANTA Lite(商標)aPS/PT IgGおよび/またはQUANTA Lite(商標)aPS/PT IgMキット)。
【0074】
実施形態では、レベルを決定することは、対象からの生体試料を処理すること、およびループス抗凝固因子(LAC)のレベルを決定することを含む。実施形態では、LACのレベルを決定することは、凝固ベースのアッセイを実施することを含む。実施形態では、凝固ベースのアッセイは、希釈ラッセル毒ヘビ毒試験(dRVVT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を含む。
【0075】
実施形態では、本明細書に提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症を診断する方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベル、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベル、および(c)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することを含む。実施形態では、(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベル、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベル、および(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体のレベルの組み合わせは、対象が血栓症のリスクを有することを示す。
【0076】
実施形態では、本明細書に提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症を診断する方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベル、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベル、および(c)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルを決定することを含む。(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベル、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベル、および(iii)閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルの組み合わせは、対象が血栓症のリスクを有することを示す。
【0077】
実施形態では、本明細書に提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症の発症を予測するための方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベル、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベル、および(c)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することを含む。(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベル、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベル、および(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体のレベルの組み合わせは、対象が血栓症を発症するリスクがあることを示す。
【0078】
実施形態では、本明細書に提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症の発症を予測する方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベル、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベル、および(c)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルを決定することを含む。(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベル、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベル、および(iii)閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルの組み合わせは、対象が血栓症を発症するリスクがあることを示す。
【0079】
実施形態では、本明細書に提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有し、血栓症の治療を受けている対象における血栓症の治療をモニタリングするための方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベル、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベル、および(c)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することを含む。実施形態では、(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベル、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベル、および(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体のレベルの組み合わせは、血栓症の治療が効果的でなかったことを示す。実施形態では、(i)閾値PC4dレベル以下の生体試料中のPC4dのレベル、(ii)閾値C3レベル以上の補体C3のレベル、および(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベル以下の抗PS/PT IgG抗体のレベルの組み合わせは、血栓症の治療が効果的であることを示す。
【0080】
実施形態では、本明細書に提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)を有し、血栓症の治療を受けている対象における血栓症の治療をモニタリングするための方法であり、(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベル、(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベル、および(c)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルを決定することを含む。(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベル、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベル、および(iii)閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルの組み合わせは、血栓症の治療が効果的でなかったことを示す。(i)閾値PC4dレベル以下の生体試料中のPC4dのレベル、(ii)閾値C3レベル以上の補体C3のレベル、および(iii)閾値LAC抗体レベルを超える生体試料中のLAC抗体のレベルの組み合わせは、血栓症の治療が効果的であることを示す。
【0081】
実施形態では、方法は、対象からの全血生体試料中のPC4dタンパク質のレベルを決定することを含む。実施形態では、方法は、対象からの全血生体試料に由来する血小板画分中のPC4dタンパク質のレベルを決定することを含む。実施形態では、PC4dのレベルを決定することは、フローサイトメトリーにおいてC4dに特異的な抗体を使用して決定される。本明細書に記載される様々な実施形態では、閾値PC4dレベルは、フローサイトメトリーを使用して測定して、20以上の平均蛍光強度(MFI)単位である。
【0082】
実施形態では、方法は、対象からの血清試料中の補体C3タンパク質のレベルを決定することを含む。実施形態では、C3のレベルは、免疫濁度アッセイにおいてC3に特異的な抗体を使用して決定される。本明細書に記載される様々な実施形態では、閾値C3マーカーレベルは、C3特異的抗体を使用して測定して、血清1デシリットル当たり81mg(mg/dl)未満のタンパク質である。
【0083】
実施形態では、方法は、血清、血漿、または全血試料中の抗PS/PT抗体のレベルを決定することを含む。実施形態では、抗PS/PT IgGのレベルは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して決定される。実施形態では、抗PS/PT IgMのレベルは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して決定される。本明細書に記載される様々な実施形態では、閾値抗PS/PT IgGレベルは、ELISAを使用して測定して、30単位超である。
【0084】
実施形態では、方法は、ループス抗凝固因子のレベルを決定することを含む。実施形態では、LACのレベルは、凝固アッセイを使用して決定される。本明細書に記載される様々な実施形態では、LACの閾値は、希釈ラッセルの毒ヘビ毒時間(dRVVT>37秒)を使用して決定される。本明細書に記載される様々な実施形態では、LACの閾値は、37秒のカットオフを使用して決定され、dRVVT試験の陽性を確立する。言い換えれば、試料が37秒以内に凝固しない場合、それは陽性とみなされる。いくつかの実施形態では、LACの閾値は、患者の試料が凝固するのにかかる時間を正常な試料が凝固するのにかかる時間で割った比率を使用して決定され、1.3を超える比率は、陽性であるとみなされる。
【0085】
実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベルと、C3レベルと、抗PS/PT IgG抗体およびLACレベルのうちの一方または両方とが、2、3、4回、またはそれ以上決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベルと、C3レベルと、抗PS/PT IgG抗体およびLACレベルのうちの一方または両方とが、2回決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベルと、C3レベルと、抗PS/PT IgG抗体およびLACレベルのうちの一方または両方とが、3回決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベルと、C3レベルと、抗PS/PT IgG抗体およびLACレベルのうちの一方または両方とが、4回決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベルと、C3レベルと、抗PS/PT IgG抗体およびLACレベルのうちの一方または両方とが、4回を超えて決定される場合を含む。
【0086】
実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、および抗PS/PT IgG抗体レベルが2、3、4回、またはそれ以上決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、および抗PS/PT IgG抗体レベルが2回決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、および抗PS/PT IgG抗体レベルが3回決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、および抗PS/PT IgG抗体レベルが4回決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、および抗PS/PT IgG抗体レベルが4回を超えて決定される場合を含む。
【0087】
実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、およびLACレベルが2、3、4回、またはそれ以上決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、およびLACレベルが2回決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、およびLACレベルが3回決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、およびLACレベルが4回決定される場合を含む。実施形態では、本明細書で提供される方法は、PC4dレベル、C3レベル、およびLACレベルが4回以上決定される場合を含む。
【0088】
実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象がヒドロキシクロロキン(HCQ)で治療されている場合、および方法が対象からの全血試料中のHCQのレベルを決定することをさらに含む場合を含む。実施形態では、閾値HCQ全血レベルを下回るHCQレベルは、対象が静脈血栓症のリスクがあることを示し、かつ/またはHCQおよび任意の他の抗血栓療法の有効性を示す。実施形態では、閾値HCQ全血レベルは、500ng/mlである。
【0089】
実施形態では、本明細書に記載される様々な方法は、遠隔患者モニタリング(RPM)インターネットベースのデバイスを介した診断、予測、または治療効果の表示の、対象の医師および/または経口抗凝固剤を含むがこれに限定されない、抗血栓治療薬の自動注文のための対象の薬局を含むがこれらに限定されない医療専門家への通信をさらに含む。
【0090】
実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象が血栓症を有する、血栓症のリスクがある、または血栓症の修飾療法を必要としていると特定される場合を含み、方法は、抗血栓治療薬で対象を治療すること、または抗血栓治療薬の投薬量を増加させることをさらに含む。実施形態では、抗血栓治療薬は、ヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバンおよびエドキサバンから選択される。実施形態では、抗血栓治療薬は、ヒドロキシクロロキンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ヘパリンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ダルテパリンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、フォンダパリヌクスである。実施形態では、抗血栓治療薬は、エノキサパリンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ワルファリンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ダビガトランである。実施形態では、抗血栓治療薬は、リバロキサバンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、アピキシバンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ベトリキサバンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、エドキサバンである。
【0091】
態様では、本明細書で提供されるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)対象における血栓症を治療する方法であり、(a)対象からの第1の血液試料中のPC4dのレベルと、(b)対象からの第2の血液試料中の補体C3タンパク質のレベルと、(c)(i)対象からの第3の血液試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および/または(ii)対象からの第4の血液試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することとであって、第1、第2、第3および第4の血液試料が、同じであり得るかまたは異なり得る、決定することと、(d)ヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバンおよびエドキサバンから選択される有効量の1つ以上の抗血栓治療薬で対象を治療することと、を含む。
【0092】
実施形態では、異なる決定ステップにおける生体試料は、同じ生体試料または異なる生体試料であり得る。実施形態では、生体試料は、単一の対象に由来する生体試料の異なる画分である。実施形態では、異なる決定ステップにおける生体試料は、異なる試料であり、第1の生体試料、第2の生体試料などと称される。
【0093】
実施形態では、SLE対象における血栓症を治療する方法は、(a)対象からの第1の血液試料中のPC4dのレベル、(b)対象からの第2の血液試料中の補体C3タンパク質のレベル、および(c)対象からの第3の血液試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することと(第1、第2、および第3の血液試料は、同じであっても異なっていてもよい)、(d)有効量の1つ以上の抗血栓治療薬で対象を治療することと、を含む。
【0094】
実施形態では、対象からの第1の血液試料中のPC4dのレベルを決定することは、本明細書に記載される様々な方法のうちのいずれか1つを含む。実施形態では、対象からの第2の血液試料中の補体C3タンパク質のレベルのレベルを決定することは、本明細書に記載される様々な方法のうちのいずれかを含む。実施形態では、抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することは、本明細書に記載される様々な方法のうちのいずれかを含む。実施形態では、フローサイトメトリーを使用して測定して、20以上の平均蛍光強度(MFI)単位の閾値を超えるPC4dのレベルを決定すること、C3特異的抗体を使用して測定して、血清1デシリットル当たり81mg(mg/dl)未満のタンパク質の閾値を下回るC3のレベルを決定すること、およびELISAを使用して測定して、30単位超の閾値を超える抗PS/PT IgGのレベルを決定することにより、対象における血栓症のリスクの決定を提供する。
【0095】
実施形態では、SLE対象における血栓症を治療する方法は、(a)対象からの第1の血液試料中のPC4dのレベル、(b)対象からの第2の血液試料中の補体C3タンパク質のレベル、および(c)対象からの第3の血液試料中のLACのレベルを決定することと(第1、第2、および第3の血液試料は、同じであっても異なっていてもよい)、(d)有効量の1つ以上の抗血栓治療薬で対象を治療することと、を含む。実施形態では、抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することは、本明細書に記載される様々な方法のうちのいずれかを含む。実施形態では、フローサイトメトリーを使用して測定して、20以上の平均蛍光強度(MFI)単位の閾値を超えるPC4dのレベルを決定すること、C3特異的抗体を使用して測定して、血清1デシリットル当たり81mg(mg/dl)未満のタンパク質の閾値を下回るC3のレベルを決定すること、および凝固アッセイを使用してLACのレベルを決定することにより、対象における血栓症のリスクの決定を提供する。
【0096】
実施形態では、血栓症のリスクを有すると決定されたSLE対象における血栓症を治療するための方法は、ヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバンおよびエドキサバンから選択される抗血栓治療薬を投与することを含む。実施形態では、抗血栓治療薬は、ヒドロキシクロロキンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ヘパリンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ダルテパリンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、フォンダパリヌクスである。実施形態では、抗血栓治療薬は、エノキサパリンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ワルファリンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ダビガトランである。実施形態では、抗血栓治療薬は、リバロキサバンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、アピキシバンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、ベトリキサバンである。実施形態では、抗血栓治療薬は、エドキサバンである。
【0097】
態様では、本明細書で提供されるのは、血栓症に関与する複数のマーカーを分析するのに有用な全身性エリテマトーデス(SLE)対象から試料を調製するための方法であり、(a)対象から全血を収集することと、(b)赤血球を溶解することを含む全血に由来する血小板画分を産生し、血小板画分中のPC4dのレベルを測定することと、(c)全血から第1の血清または血漿画分を産生し、第1の血清または血漿画分中のC3のレベルを測定することと、(d)全血から第2の血清または血漿画分を産生し、第2の血清または血漿画分中の抗PS/PT複合体抗体のレベルを測定することと、を含む。
【0098】
実施形態では、試料を調製するための方法は、対象から全血を収集し、血小板画分を産生することを含む。血小板画分を産生することは、当技術分野で知られている任意の方法によって達成することができる。実施形態では、血小板画分を産生することは、赤血球を溶解すること、および血小板特異的抗体を使用することを含む。実施形態では、PC4dのレベルを測定することは、本明細書に記載される様々な実施形態のうちのいずれかを含む。実施形態では、PC4dのレベルを測定することは、血小板特異的抗体を使用することを含み、C4d抗体は、蛍光活性化セルソーティングを含む。
【0099】
実施形態では、試料を調製するための方法は、対象の全血から第1の血清または血漿画分を産生すること、および第1の血清または血漿画分中のC3のレベルを測定することを含む。実施形態では、C3のレベルを測定することは、本明細書に記載される様々な実施形態のうちのいずれかを含む。実施形態では、C3のレベルを測定することは、免疫濁度アッセイを含む。
【0100】
実施形態では、試料を調製するための方法は、対象の全血から第1の血清または血漿画分を産生すること、および抗PS/PT複合体抗体のレベルを測定することを含む。実施形態では、抗PS/PT複合体抗体のレベルを測定することは、本明細書に記載される様々な実施形態のうちのいずれかを含む。実施形態では、抗PS/PT複合体抗体のレベルを測定することは、イムノアッセイ。
【0101】
P-1実施形態
実施形態P-1.全身性エリテマトーデス(SLE)を有するか、またはそのリスクがある対象における血栓症を診断するための方法であって、
(a)対象からの生体試料中の血小板C4d(PC4d)と、
(b)対象からの生体試料中の補体C3と、
(c)
(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体、および/または
(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のうちの一方または両方との、マーカーレベルの組み合わせを決定することを含み、
(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3タンパク質レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/または閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルとの、マーカーレベルの組み合わせが、対象が血栓症のリスクを有することを示す、方法。
【0102】
実施形態P-2.全身性エリテマトーデス(SLE)を有するか、またはそのリスクがある対象における血栓症の発症を予測するための方法であって、
(a)対象からの生体試料中の血小板C4d(PC4d)と、
(b)対象からの生体試料中の補体C3と、
(c)
(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体、および/または
(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のうちの一方または両方との、マーカーレベルの組み合わせを決定することを含み、
(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3タンパク質レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/または閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせが、対象が血栓症のリスクがあることを示す、方法。
【0103】
実施形態P-3.全身性エリテマトーデス(SLE)を有し、血栓症の治療を受けている対象における血栓症の治療をモニタリングするための方法であって、
(a)対象からの生体試料中の血小板C4d(PC4d)と、
(b)対象からの生体試料中の補体C3と、
(c)
(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体、および/または
(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のうちの一方または両方との、マーカーレベルの組み合わせを決定することを含み、
(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/もしくは閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルとの、マーカーレベルの組み合わせが、血栓症の治療が効果的でないことを示し、かつ/または
(i)閾値PC4dレベル以下の生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベル以上の補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベル以下の抗PS/PT IgG抗体のレベルおよび/または閾値LAC抗体レベルを超える生体試料中のLAC抗体のレベルとの、マーカーレベルの組み合わせが、血栓症の治療が効果的であることを示す、方法。
【0104】
実施形態P-4.マーカーレベルの組み合わせが、生体試料からの抗PS/PT IgG抗体のレベルを含む、実施形態P-1~P-3のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
実施形態P-5.PC4dのレベルが、血清または全血生体試料中で測定される、実施形態P-1~P-4のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態P-6.補体C3のレベルが、血清試料中で測定される、実施形態P-1~P-5のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態P-7.抗PS/PT抗体のレベルが、血清、血漿、または全血試料中で測定される、実施形態P-1~P-6のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態P-8.PC4dのレベルが、C4dに特異的な抗体を使用して決定され、C3のレベルが、C3に特異的な抗体を使用して決定される、実施形態P-1~P-7のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態P-9.抗PS/PT IgG抗体のレベルが、ELISAプレートがPS/PTでコーティングされている酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定される、実施形態P-1~P-8のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態P-10.LACのレベルが希釈ラッセルの毒ヘビ毒時間(dRVVT>37秒)を使用して決定される、実施形態P-1~P-9のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態P-11.PC4d閾値レベルが、本明細書に記載されるフローサイトメトリーを使用して測定して、20単位以上である、実施形態P-1~P-10のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態P-12.C3閾値レベルが、本明細書に記載されるC3に特異的な抗体を使用して測定して、81mg/dl未満である、実施形態P-1~P-11のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態P-13.抗PS/PT IgG閾値レベルが、実施形態P-9に記載されるELISAを使用して測定して、30単位超である、実施形態P-1~P-12のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
実施形態P-14.対象が、ヒト対象である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
実施形態P-15.ヒト対象が、女性である、実施形態P-14に記載の方法。
【0116】
実施形態P-16.PC4dと、C3と、抗PS/PT IgG抗体レベルおよびLCAレベルのうちの一方または両方とが、2、3、4回、またはそれ以上の機会に決定される、実施形態P-1~P-15のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態P-17.PC4d、C3、および抗PS/PT IgG抗体レベルが、2、3、4回、またはそれ以上の機会に決定される、実施形態P-1~P-15のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
実施形態P-18.(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/または2、3、4回、もしくはそれ以上の機会に閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせが、対象が血栓症のリスクを有する、血栓症のリスクがあることを示すか、または抗血栓療法の有効性を示す、実施形態P-16~P-17のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
実施形態P-19.対象が、ヒドロキシクロロキン(HCQ)で治療されており、方法が、対象からの全血試料中のHCQのレベルを決定することをさらに含み、閾値HCQ全血レベルを下回るHCQレベルが、対象が静脈血栓症を有する、静脈血栓症のリスクがあることを示し、かつ/またはHCQおよび任意の他の抗血栓療法の有効性を示す、実施形態P-1~P-18のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
実施形態P-20.HCQ閾値が、500ng/mlである、実施形態P-19に記載の方法。
【0121】
実施形態P-21.方法が、診断、予測、または治療効果の表示を、遠隔患者モニタリング(RPM)インターネットベースのデバイスおよび/またはアプリケーション(スマートフォン、スマートウォッチ、もしくは他のデバイスアプリケーションを含むがこれらに限定されない)を介して、対象の医師および/または経口抗凝固剤を含むがこれらに限定されない、抗血栓治療薬の自動注文のための対象の薬局が含まれるがこれらに限定されない医療専門家に通信することをさらに含む、実施形態P-1~P-20のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
実施形態P-22.対象が、血栓症を有する、血栓症のリスクがある、または血栓症の修飾療法を必要としていると特定され、方法が、対象を抗血栓治療薬で治療すること、またはヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、もしくはエドキサバンを含むがこれらに限定されない抗血栓治療薬の投薬量を増加させることをさらに含む、実施形態P-1~P-21のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
P-2実施形態
実施形態P2-1.全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症のリスクを診断するための方法であって、
(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および/または
(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含み、
(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/または閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせが、対象が血栓症のリスクを有することを示す、方法。
【0124】
実施形態P2-2.対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することを含む、実施形態P2-1に記載の方法。
【0125】
実施形態P2-3.全身性エリテマトーデス(SLE)を有する対象における血栓症の発症を予測するための方法であって、
(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および/または
(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含み、
(i)閾値PC4d質レベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせが、対象が血栓症を発症するリスクがあることを示す、方法。
【0126】
実施形態P2-4.対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することを含む、実施形態P2-3に記載の方法。
【0127】
実施形態P2-5.全身性エリテマトーデス(SLE)を有し、血栓症の治療を受けている対象における血栓症の治療をモニタリングするための方法であって、
(a)対象からの生体試料中の血小板結合C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および/または
(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含み、
(i)閾値PC4dレベルを超える生体試料中のPC4dのレベルと、(ii)閾値C3レベルを下回る補体C3のレベルと、(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体および/または閾値LACレベルを超える生体試料中のLACのレベルのうちの一方または両方のレベルと、の組み合わせが、血栓症の治療が効果的でないことを示し、かつ/あるいは
(i)閾値PC4dレベル以下の生体試料中のPC4dのレベル、(ii)閾値C3レベル以上の補体C3のレベル、ならびに(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベル以下の抗PS/PT IgG抗体のレベルおよび/または閾値LAC抗体レベルを超える生体試料中のLACのレベルの組み合わせが、血栓症の治療が効果的であることを示す、方法。
【0128】
実施形態P2-6.
(a)対象からの生体試料中の血小板C4d(PC4d)マーカーのレベルと、
(b)対象からの生体試料中の補体C3マーカーのレベルと、
(c)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルと、を決定することを含み、
(i)閾値PC4dマーカーレベルを超える生体試料中のPC4dマーカーのレベル、(ii)閾値C3マーカーレベルを下回る補体C3マーカーのレベル、および(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベルを超える抗PS/PT IgG抗体のレベルの組み合わせは、血栓症の治療が効果的でなかったことを示し、かつ/または
(i)閾値PC4dマーカーレベル以下の生体試料中のPC4dマーカーのレベル、(ii)閾値C3マーカーレベル以上の補体C3マーカーのレベル、および(iii)閾値抗PS/PT IgG抗体レベル以下の抗PS/PT IgG抗体のレベルの組み合わせは、血栓症の治療が効果的であることを示す、実施形態P2-5に記載の方法。
【0129】
実施形態P2-7.PC4dタンパク質のレベルが、全血生体試料中のものである、実施形態P2-1~P2-6のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態P2-8.補体C3タンパク質のレベルが、血清試料中のものである、実施形態P2-1~P2-7のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
実施形態P2-9.抗PS/PT抗体のレベルが、血清、血漿、または全血試料中のものである、実施形態P2-1~P2-8のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
実施形態P2-10.PC4dのレベルが、C4dに特異的な抗体を使用して決定され、C3のレベルが、C3に特異的な抗体を使用して決定される、実施形態P2-1~P2-9のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
実施形態P2-11.抗PS/PT IgG抗体のレベルが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)プレートを含むELISAを使用して決定され、ELISAプレートが、PS/PTでコーティングされている、実施形態P2-1~P2-10のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
実施形態P2-12.LACのレベルが、正であると決定される、実施形態P2-1~P2-11のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
実施形態P2-13.閾値PC4dレベルが、フローサイトメトリーを使用して測定して、20以上の平均蛍光強度(MFI)単位である、実施形態P2-1~P2-12のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
実施形態P2-14.閾値C3マーカーレベルが、C3特異的抗体を使用して測定して、血清1デシリットル当たり81mg(mg/dl)未満のタンパク質である、実施形態P2-1~P2-13のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
実施形態P2-15.閾値抗PS/PT IgGレベルが、ELISAを使用して測定して、30単位超である、実施形態P2-1~P2-14のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
実施形態P2-16.対象が、ヒト対象である、実施形態P2-1~P2-15のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
実施形態P2-17.PC4dレベルと、C3レベルと、抗PS/PT IgG抗体およびLACレベルのうちの一方または両方とが、2、3、4回、またはそれ以上決定される、実施形態P2-1~P2-16のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
実施形態P2-18.抗PS/PT IgG抗体レベルが2、3、4回、またはそれ以上決定される、実施形態P2-1~P2-17のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
実施形態P2-19.対象が、ヒドロキシクロロキン(HCQ)で治療されており、方法が、対象からの全血試料中のHCQのレベルを決定することをさらに含み、閾値HCQ全血レベルを下回るHCQレベルが、対象が静脈血栓症のリスクがあることを示し、かつ/またはHCQおよび任意の他の抗血栓療法の有効性を示す、実施形態P2-1~P2-18のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
実施形態P2-20.閾値HCQ全血レベルが、500ng/mlである、実施形態P2-19に記載の方法。
【0143】
実施形態P2-21.方法が、診断、予測、または治療効果の表示を、遠隔患者モニタリング(RPM)インターネットベースのデバイスを介して、対象の医師および/または経口抗凝固剤を含むがこれらに限定されない、抗血栓治療薬の自動注文のための対象の薬局が含まれるがこれらに限定されない医療専門家に通信することをさらに含む、実施形態P2-1~P2-20のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
実施形態P2-22.対象が、血栓症を有する、血栓症のリスクがある、または血栓症の修飾療法を必要としていると特定され、方法が、対象を抗血栓治療薬で治療すること、またはヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバンおよびエドキサバンから選択される抗血栓治療薬の投薬量を増加させることをさらに含む、実施形態P2-1~P2-21のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態P2-23.血栓症を有するか、または有する疑いのある全身性エリテマトーデス(SLE)対象においてマーカーを検出する方法であって、方法が、
(a)対象からの生体試料中の血小板C4d(PC4d)タンパク質のレベルと、
(b)対象からの生体試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および/または
(ii)対象からの生体試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することを含む、方法。
【0146】
実施形態P2-24.対象からの生体試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベルを決定することを含む、実施形態P2-23に記載の方法。
【0147】
実施形態P2-25.PC4dタンパク質のレベルが、全血生体試料中のものである、実施形態P2-23~P2-24のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
実施形態P2-26.補体C3タンパク質のレベルが、血清試料または血漿試料中のものである、実施形態P2-23~P2-25のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態P2-27.抗PS/PT抗体のレベルが、血清、血漿、または全血試料中のものである、実施形態P2-23~P2-26のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態P2-28.PC4dのレベルが、C4dに特異的な抗体を使用して決定され、C3のレベルが、C3に特異的な抗体を使用して決定される、実施形態P2-23~P2-27のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態P2-29.抗PS/PT IgG抗体のレベルが、ELISAプレートがPS/PTでコーティングされている酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定される、実施形態P2-23~P2-28のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
実施形態P2-30.LAC抗体のレベルが、正であると決定される、実施形態P2-23~P2-29のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
実施形態P2-31.閾値PC4dレベルが、フローサイトメトリーを使用して測定して、20以上の平均蛍光強度(MFI)単位である、実施形態P2-23~P2-30のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
実施形態P2-32.閾値C3マーカーレベルが、C3特異的抗体を使用して測定して、血清または血漿1デシリットル当たり81mg(mg/dl)未満のタンパク質である、実施形態P2-23~P2-31のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
実施形態P2-33.閾値抗PS/PT IgGレベルが、ELISAを使用して測定して、30単位超である、実施形態P2-23~P2-32のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
実施形態P2-34.対象が、ヒト対象である、実施形態P2-23~P2-33のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
実施形態P2-35.PC4dレベルと、C3レベルと、抗PS/PT IgG抗体およびLACレベルのうちの一方または両方とが、2、3、4回、またはそれ以上決定される、実施形態P2-23~P2-34のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
実施形態P2-36.抗PS/PT IgG抗体レベルが、2、3、4回、またはそれ以上決定される、実施形態P2-23~P2-35のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
実施形態P2-37.対象が、ヒドロキシクロロキン(HCQ)で治療されており、方法が、対象からの全血試料中のHCQのレベルを決定することをさらに含み、閾値HCQ全血レベルを下回るHCQレベルが、対象が静脈血栓症のリスクがあることを示し、かつ/またはHCQおよび任意の他の抗血栓療法の有効性を示す、実施形態P2-23~P2-36のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
実施形態P2-38.閾値HCQ全血レベルが、500ng/mlである、実施形態P2-37に記載の方法。
【0161】
実施形態P2-39.対象が、血栓症を有する、血栓症のリスクがある、または血栓症の修飾療法を必要としていると特定され、方法が、対象を抗血栓治療薬で治療すること、またはヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバンおよびエドキサバンから選択される抗血栓治療薬の投薬量を増加させることをさらに含む、実施形態P2-23~P2-38のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
実施形態P2-40.全身性エリテマトーデス(SLE)対象における血栓症を治療する方法であって、
(a)対象からの第1の血液試料中のPC4dのレベルと、
(b)対象からの第2の血液試料中の補体C3タンパク質のレベルと、
(c)
(i)対象からの第3の血液試料中の抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン(PS/PT)IgG抗体のレベル、および/または
(ii)対象からの第4の血液試料中のループス抗凝固因子(LAC)のレベルのうちの一方または両方と、を決定することであって、第1、第2、第3および第4の血液試料が、同じであり得るかまたは異なり得る、決定することと、
(d)ヒドロキシクロロキン、ヘパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキシバン、ベトリキサバン、およびエドキサバンからなる群から選択される有効量の1つ以上の抗血栓治療薬で血栓症を有する可能性のある対象を治療することと、を含む、方法。
【0163】
実施形態P2-41.ステップ(c)が、
(iii)1つ以上の変換分析によってマーカーのレベルを調整することによって血栓症リスクスコアを計算することとであって、1つ以上の変換分析が、ロジスティック回帰分析を含む、計算することと、
(iv)血栓症リスクスコアを1つ以上の標準的な血栓症リスクスコアと比較することと、をさらに含む、実施形態P2-40に記載の方法。
【0164】
実施形態P2-42.血栓症に関与する複数のタンパク質を分析するのに有用な全身性エリテマトーデス(SLE)対象から試料を調製するための方法であって、
(a)該対象から全血を収集することと、
(b)赤血球を溶解することを含むことによって、該対象からの全血に由来する血小板画分を産生し、該血小板画分中のPC4dのレベルを測定することと、
(c)該対象からの全血から血清または血漿画分を産生し、該画分中のC3のレベルを測定することと、
(d)該対象からの全血から血清または血漿画分を産生し、該画分中のPS/PT複合体抗体のレベルを測定することと、を含む、方法。
【0165】
実施形態P2-43.該PC4dのレベルを測定することが、血小板特異的抗体を使用して血小板を結合することをさらに含む、実施形態P2-42に記載の方法。
【0166】
実施形態P2-44.該PC4dのレベルを測定することが、蛍光活性化セルソーティングをさらに含む、実施形態P2-42または実施形態P2-43に記載の方法。
【0167】
実施形態P2-45.該C3のレベルを測定することが、免疫濁度アッセイを含む、実施形態P2-42~P2-44のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
実施形態P2-46.該PS/PT複合体抗体のレベルを測定することが、イムノアッセイを含む、実施形態P2-42~P2-45のいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0169】
実施例1
ここで行われた実験では、SLEにおけるPC4dと血栓症との間の関係を評価し、PC4d、低補体C3、およびループス抗凝固因子の血栓症リスクの複合スコアを作成した。抗凝固療法を受けた患者ではループス抗凝固因子アッセイの実施および解釈が難しいため、LACの代替として抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン[PS/PT]複合抗体を調査した。
【0170】
患者
横断研究は、SLEにおける補体異常と血栓症の病歴との間の関連を評価するために設計され、すべてボルチモア地域の単一のループスセンター(Hopkins Lupus Center)に登録されている。すべてのSLEは、SLEの2012全身性ループス国際協力クリニック(SLICC)分類基準(例えば、参考文献10を参照)を満たし、ジョンズホプキンス大学医学部IRB承認プロトコルに参加するための書面によるインフォームドコンセントを提供し、それらの試料および臨床データの使用を可能にした。過去5年間に発生した血栓症は、記載されているように、任意の血栓症、静脈血栓症または動脈血栓症に分類された(例えば、参考文献11を参照)。疾患活動性は、0~3ポイントの視覚的アナログスケールでの医師のグローバル評価(PGA)、ならびに記載される抗dsDNAおよび補体成分を含まないエリテマトーデスにおけるエストロゲンの安全性国際評価(SELENA)全身性エリテマトーデス疾患活動性指数(SLEDAI)(臨床SELENA-SLEDAI)を使用して評価した(例えば、参考文献4を参照)。活動性の疾患状態は、4ポイント以上の臨床SELENA-SLEDAIとして定義された。
【0171】
方法
これは、過去5年間に血栓性事象を伴う(n=16)または伴わない(n=133)分類された149人の同意したSLE患者(平均年齢:47±1歳、86%女性)の横断的分析であった。異常なPC4d(≧20単位)は、フローサイトメトリーを使用して測定した。LACおよびC3は、それぞれ希釈ラッセルの毒ヘビ毒時間(dRVVT>37秒)および免疫比濁法を使用して測定した。抗PS/PT抗体の状態(IgG)は、イムノアッセイによって測定した。統計分析は、ロジスティック回帰、および95%信頼区間(CI 95%)でのオッズ比(OR)推定値の計算からなっていた。
【0172】
実験室マーカー
全血および血清を、それぞれEDTA含有チューブおよび血清セパレーターチューブに収集し、(冷却剤カートリッジを備えた輸送キットを使用して)Exagenの参照臨床検査室に一晩ルーティングした。EC4dおよびBC4dレベルは、記載されるような蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用して測定され(例えば、参考文献12を参照)、正味平均蛍光強度(MFI)として表された。PC4dレベルもFACSによって次のように測定した。EDTA全血からの赤血球を溶解し、血小板をヒトC4dに対するマウスモノクローナル抗体(Quidel,San Diego,CA)を使用して、または代替としてアイソタイプ対照であるマウスIgG1カッパモノクローナル([MOPC-21])を使用して染色した。2~8℃で30分間インキュベートした後、FITCにコンジュゲートしたヤギ抗マウスを使用して試料を染色した(暗所で2~8℃で30分間)。フィコエリトリン(PE)(血小板特異的マーカー)にコンジュゲートしたヒトCD42bに対するモノクローナル抗体を使用して、血小板に共有結合したC4d補体活性化断片を同定した。FACS分析を、CXPソフトウェアを備えたGallios(10色)フローサイトメーター(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用して実施して、蛍光染色強度を測定した。光散乱(前方および側方)ゲーティングパラメーターを取得中に使用して血小板集団を単離し、続いて陽性CD42b PE染色に基づく二次ゲーティングを行った。FL1(フルオレセインイソチオシアネート)チャネルの非特異的(アイソタイプ対照)および特異的(C4d)蛍光の定量化を、CD42b PEゲーティングされた血小板細胞(5000事象)について決定した。正味平均蛍光強度(正味MFI)は、ゲーティングされた血小板細胞での特定のC4d MFI結果からアイソタイプ対照バックグラウンドMFI結果を差し引くことによって決定した。異常なEC4d、BC4dおよびPC4d状態は、正常な健康群の99パーセンタイルを超えるレベルに対応した(それぞれ、>14および>60および>20正味MFI)(例えば、参考文献3を参照)。
【0173】
抗核抗体(ANA)状態は、NOVA VIEWのデジタルイメージング(陽性として≧1:80)(INOVA Diagnostics,San Diego,CA)を使用して決定した。dsDNAに対する抗体価は、化学発光イムノアッセイ(QUANTA Flash,INOVA Diagnostics)を使用して測定した。低補体C3またはC4状態は、血清C3(<81.1mg/dl)およびC4レベル(<12.9mg/dl)を使用して確立され、すべて免疫比濁法(Optilite,The Binding Site,San Diego,CA)を使用して測定した。LACは、希薄ラッセルの毒ヘビ毒時間(dRVVT>37秒)を使用して、ホプキンスループスセンターで測定した。抗カルジオリピン、抗β2糖タンパク質I抗体(IgM、IgGおよびIgAアイソタイプ)ならびに抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン複合体抗体(IgMおよびIgG)を、イムノアッセイ(INOVA Diagnostics)を使用して測定した。すべてのアッセイにメーカーのカットオフを使用した。現場調査員(MP)は、研究全体を通してすべてのCB-CAPを知らされておらず、試験担当者は臨床状態を知らされていなかった。
【0174】
統計解析
過去5年間の血栓症(静脈、動脈、または任意の血栓症)の病歴と実験室測定値との関連を、正および負の尤度比(LR)およびオッズ比(OR)を使用して評価し、すべて95%信頼区間(CI 95%)で報告した。従属変数として血栓症を、独立予測因子としてバイオマーカーを用いた単変量および多変量ロジスティック回帰試験を使用した。複合スコアにおける異常の累積的存在を計算し、血栓症のオッズ比(OR)(単位変化当たり)を計算した。モデル間の差は、最小赤池情報量基準(AIC)を使用して推定した。マン・ホイットニー検定およびカイ二乗検定を適切に用いた。
【0175】
結果
この研究では、149人の連続したSLEを登録した(平均48.3歳、83%ANA陽性[>1:80])。それらのうち16人(10.7%)は、過去5年間に血栓症(静脈または動脈)の病歴を有していた。静脈血栓症は、10人の患者で発生し(8人の深部静脈血栓症/肺塞栓症および2人の表在静脈血栓症を含む)、動脈血栓症は、8人の患者で発生した(3人の心筋梗塞、2人の脳血管事故、1つの指趾壊疽および2つの他の動脈事象を含む)。2人の患者は、静脈事象および動脈事象の両方を経験した。患者特性を表1に提示する。この149人の患者のコホートでは、フローサイトメーターで収集された低B細胞事象(<200)に起因して、9人の患者でBC4d状態を利用できなかった。補体C3/C4は、1人の患者で利用できなかった。入手可能なC3、C4、EC4dおよびBC4d状態を有する140人の患者のうち、21.4%のより高い割合のSLEは、低い補体C3またはC4(21.4%、n=30/140)に対するよりも異常なEC4dまたはBC4d(42.9%、n=60/140)に対して陽性であった(p<0.01)。
【0176】
表1:任意の血栓症(静脈または動脈)の存在下または非存在下での患者特性
結果は、必要に応じてパーセントおよび平均(SEM)として表される。
【表1】
【0177】
他の民族群と比較して、白人では血栓症の有意に低い頻度が観察された(25%対59%、p=0.009)。アフリカ系アメリカ人(32%、対50%、p=0.19)は、血栓症のより高い頻度を有する傾向があった。現在のプレドニゾン治療はまた、血栓症のより高い頻度と関連していた(56%対32%)。プレドニゾンを服用している患者は、プレドニゾンを服用していない患者よりも血栓症を有する可能性が3.1倍高かった(OR=3.0[CI95%:1.1~9.0])(p=0.029)。活動性疾患状態(OR=2.2[CI95% 0.7~7.3])(p=0.18)を含む他の人口統計学的変数は、血栓症とは関連していなかった。
【0178】
全体として、および血栓症(任意の血栓症、静脈血栓症または動脈血栓症)の存在による実験室異常の頻度を表2に示す。低C3、低C4、異常なEC4d、PC4d、抗PS/PT IgGおよびLAC状態はすべて、任意の血栓症と有意に関連している(p<0.05)。
【0179】
表2:任意の血栓症(静脈または動脈)の存在下または非存在下での実験室測定値。
尤度比(LR)およびオッズ比(OR)は、95%信頼区間(CI)で与えられる。
【表2】
【0180】
中央値(四分位間範囲[IQR])EC4dおよびPC4dレベルは、血栓症の非存在時(それぞれ9正味MFI[IQR:6~19]および5正味MFI[IQR:2~14])よりもその存在下で、それぞれ2.2倍および5.5倍高かった(それぞれ20正味MFI[IQR:9~59]および27正味MFI[IQR:9~79)])(p<0.01)。BC4dレベルは、29正味MFI[IQR:17~62])と比較して、血栓症の存在下でわずかに上昇したが(中央値46正味MFI[IQR:26~74])、差は有意ではなかった(p=0.27)。
【0181】
表3および4は、実験室測定値と静脈または動脈血栓症との間の関連を示す。低C3および異常なPC4d状態は、静脈血栓症(それぞれOR=10.5[CI95%:2.8~39.5]および19.2[CI95%:4.2~84.7])(p<0.05)ならびに動脈血栓症(それぞれOR=5.4[CI95%:1.28~23.17]およびOR=4.0[CI95%:1.0~15.8]に関連していた(p<0.05)。静脈血栓症を有するすべての患者を試験したところ、LACについて陽性であったが(OR=+∞[CI95%:1.3-++∞]、100%感度)、LACは、動脈血栓症と特異的に関連していなかった(OR=2.10[CI95%:0.5~9.4]、p=0.37)。これは、抗PS/PT IgG状態とは対照的であり、動脈血栓症(OR=5.4[CI95%:1.3~21.9]、p=0.02)と関連していたが、静脈血栓症(OR=2.10[CI95%:0.6~7.3]、p=0.30)とは関連していなかった。
【0182】
表3:実験室測定値および静脈血栓症の病歴。
【表3】
【0183】
表4:実験室測定値および動脈血栓症の病歴。
【表4】
【0184】
PC4d、低C3およびLAC状態が入手可能な143人の患者において、多変量ロジスティック回帰分析により、異常なPC4d(調整済みOR=4.2[CI95%:1.1~16.0]、p=0.04)、低C3(調整済みOR=6.20[CI95%:1.3~29.6]、p=0.02)およびLAC(調整済みOR=7.0[CI95%:1.3~38.5]、p=0.02)はすべて、任意の血栓症と有意かつ独立して関連していたことが明らかになり、3つのマーカーの組み合わせでの相加的有用性を示す。累積的に、複合リスクスコアとしてのPC4d、低C3およびLAC異常の存在は、血栓症の非存在下(0.81±0.06)よりもその存在下(1.93±0.25)において高かった(p<0.01)。この複合リスクスコアの各単位は、血栓症を有するように5.2(CI95%:2.5~10.7)のORをもたらした(p<0.01、AIC=78.94)。(
図1A)。平均複合リスクスコアはまた、静脈血栓症の非存在下(0.83±0.06[n=133])よりもその存在下(2.30±0.26[n=10])において高く(p<0.001)、スコアの各単位は、静脈血栓症の場合、8.30(CI95%:3.16~21.83)のORをもたらした(p<0.01、AIC=49.48)。複合リスクスコアは、動脈血栓症の非存在下(0.90±0.07[n=135])よりもその存在下(1.62±0.37[n=8])において高く(p=0.05)、スコアの各単位は、動脈血栓症の場合、2.57(CI95%:1.17~5.64)のORをもたらした(AIC=60.27、p=0.02)。表5および
図2A~Eは、他のリスクスコアの組み合わせの性能を示す。PC4d、低C3およびLACの組み合わせは、他のモデルと比較して、任意の血栓症(78.94)および静脈血栓症(49.48)の場合、より低い赤池情報量基準(AIC)をもたらした。
【0185】
表5:血栓症に関連するマーカーおよび複合スコア。
【表5】
【0186】
複合リスクスコアにおけるLACの代替としての抗PS/PT IgG(n=148患者)もまた、任意の血栓症(1.56±0.29[n=16]対0.47±0.06[n=132](p<0.001)、静脈血栓症(1.70±0.25[n=10]対0.51±0.06[n=138)](p<0.001)および動脈血栓症(1.50±0.25[n=8]対0.53±0.06[n=140](p=0.02)の存在下において非存在下よりも高いスコアをもたらした。任意の血栓症のオッズ比は、3.60(CI95:1.98~6.53)(p<0.01、AIC=84.95)であり、静脈血栓症のオッズ比は、3.65(1.83、7.27)(AIC=62.15)であり、動脈血栓症のオッズ比は、2.79(CI95%:1.38、5.65)(AIC=58.18)であった(
図1B)。複合リスクスコアとしてのPC4d、低C3および抗PS/PTの組み合わせは、他のどのマーカーの組み合わせよりも動脈血栓症のAIC(58.18)を低くした(表5)。
【0187】
また、非活動性疾患状態と比較して、活動性疾患状態を提示するSLEの中で、低C3(26%対8%、p=0.001)、低C4(37%対12%、p=0.001)、異常なEC4d(59%対27%、p=0.001)、PC4d(37%対18%)、BC4d(59%対27%、p=0.08)および抗dsDNA(48%対25%、p=0.01)の発生率が高かった。しかしながら、3つのCB-CAP異常を伴う多変量解析では、EC4d状態(OR=3.5[CI95%:1.2~10.2])(p=0.023)のみが活動性疾患(BC4d:OR=1.2[CI95%:0.4~3.3]およびPC4d:OR=1.3[CI95%:0.4~4.0])に関連していることが明らかになった(p>0.66)。抗リン脂質抗体は、一般に活動性疾患状態とは関連していなかった(p≧0.05、データは示さず)。
【0188】
要約すると、結果は、異常なPC4d(OR=8.4 CI95%:2.8~24.8)、低C3(OR=9.5 CI95%:3.0~30.3)、LAC(OR=5.4 CI95%:1.3~22.3)および抗PS/PT IgG(OR=3.4 CI95%:1.2~9.7)状態が、血栓症に関連することを実証した(p<0.05)。累積的に、複合リスクスコアとしてのPC4d、低C3およびLAC異常の存在は、血栓症の非存在下(0.81±0.06)よりもその存在下(1.93±0.25)において高かった(p<0.01)。この複合リスクスコアの各単位は、血栓症を有するように5.2(CI95%:2.5~10.7)のORをもたらした。(p<0.01)。LACの代わりに抗PS/PT抗体状態の複合リスクスコアもまた、血栓症に関連していた(p<0.01)。
【0189】
考察
SLEは、古典的補体経路の活性化、C3およびC4タンパク質の過剰消費、ならびに赤血球、Bリンパ球および血小板を含む様々な造血細胞に共有結合したC4d分裂断片の産生に関連する免疫複合体疾患である。補体系、血小板、および凝固経路は相互作用する。これは、これらの経路の測定値を含み、SLEにおける血栓症との相加的関連を強調する複合リスク指標の最初の報告である。
【0190】
PC4dは、任意の血栓症に対して8.4のORをもたらし、静脈血栓症のマーカーの関連は、動脈事象(OR=4.0)よりも強かった(OR=19.2)。この研究では、SLE患者の20%が、血小板(PC4d)への異常なC4d沈着を提示した。細胞結合補体活性化産生物の中で、PC4dは、SLEに対して最高レベルの特異性を有することが知られている。ここに提示されたデータは、1)血栓症に関連する予測マーカーとしてのその価値を確認し、2)補体系および血小板が密接に関連しており、静脈および動脈血栓症の発症に協力しているという理解に追加された。対照的に、異常なBC4d状態は血管事象とは関連がなく、PC4dの存在を調整した後、血栓症に対するEC4d状態の弱い寄与は軽微であった。
【0191】
LACは、血栓症の高感度マーカーであり(静脈の場合は75%、動脈の場合は100%)、任意の血栓症のオッズ比は5.4であった。しかしながら、血栓症に対するLACの統計的に有意な影響は、静脈事象に限定されていた。これは、静脈血栓症ではなく動脈血栓症に関連する抗PS/PT抗体状態(IgGアイソタイプ)とは対照的であった。
【0192】
このコホートでは、低補体C3が任意の血栓症(OR=9.5)の最も強い危険因子であり、静脈(OR=10.5)および動脈血栓症(OR=5.4)の両方に関連していた。対照的に、臨床活動(医師による全体評価またはSLEDAI)は、血栓症と関連していなかった。
【0193】
多変量解析を実施し、低C3、PC4dおよびLACの存在を組み合わせて、血栓症の危険因子の複合スコアを作成した。独立して、3つのマーカーのそれぞれが血栓症と有意に関連しており(調整済みORは4.2~7.0の範囲)、したがって付加価値を示す。また、LACの代替として抗PS/PTの価値を推定した。抗PS/PTでは低いオッズ比(単位変化当たり3.6対5.2)が観察されたが、LACまたは抗PS/PT(aPL代替として)の両方の複合スコアは、静脈および動脈血栓症に関連した。
【0194】
プレドニゾンもまた、血栓症と関連しており、これらのデータは、血栓症のリスクの上昇およびSLEにおける損傷の増加と一致している。我々は、プレドニゾンとSLEにおける心血管事象との用量依存的な関連を以前に報告した(例えば、参考文献1を参照)。これは完全には理解されていないが、プレドニゾンは、第VIII因子レベルを増加させ、線維素溶解を減少させ、異常なフォン・ウィルブランド因子多量体組成を産生する(例えば、参考文献2を参照)。
【0195】
まとめると、これらのデータならびに他のデータは、血栓症に関連するPC4dの価値を強く支持している。複合リスクスコアおよび個々のマーカーの両方は、SLEにおける血栓症のリスクを大幅に低減することができるヒドロキシクロロキン療法を含む介入から利益を得る可能性が高い患者を特定するための臨床診療において価値がある場合がある(例えば、参考文献13~14を参照)。
【0196】
結論として、PC4d、低C3およびループス抗凝固因子を含む複合血栓症リスク方程式は、SLEにおける血栓症と強く関連していた。リスク因子のこの複合スコアは、単一のリスク因子のみよりも優れた性能を示した。
【0197】
実施例2:血小板C4dの持続性および血栓症リスクスコアは、全身性エリテマトーデスにおける血栓症と関連している。
異常な血小板結合C4d(PC4d)、低補体C3および異常な抗ホスファチジルセリンプロトロンビン(PS/PT)IgG抗体を含む血栓症リスクスコアは、全身性エリテマトーデス(SLE)における血栓症と関連することが実施例1に示された。実施例2の目的は、フォローアップ(FU)中のPC4dにおける持続性、リスクスコアと血栓症との間の関係を評価することであった。二次目的は、血栓症に関連する全血ヒドロキシクロロキン(HCQ)レベルの影響を評価した。
【0198】
方法
これは、過去5年間に血栓症(静脈または動脈)の病歴のある(n=16、11%)またはない(n=132、89%)149人のSLE患者(平均年齢:47±1歳、86%女性)の縦断研究であった。PC4dは、フローサイトメトリーを使用して測定された。異常なPC4d状態(>20平均蛍光強度[MFI])のFU訪問率を計算した。PC4dにおける持続性は、ベースラインおよびすべてのFU訪問時に異常なPC4d(>20正味MFI)状態として定義され、断続的なPC4dは、少なくとも1回の訪問中の異常なPC4d状態として定義された。補体C3(<81mg/dl)および抗PS/PT IgG(>30単位)は、イムノアッセイを使用して測定された。それぞれの患者の平均血栓症リスクスコアを計算した。全血HCQレベルは、液体クロマトグラフィーを使用して測定し、患者当たりの平均HCQを計算した。統計分析は、ウィルコクソン、フィッシャーの直接確率検定およびロジスティック回帰からなっていた。信頼区間(CI)のオッズ比(OR)を計算した。
【0199】
結果
424回のフォローアップ(FU)訪問を収集した(患者当たり平均3回の訪問)。持続的かつ断続的なPC4d状態は、それぞれ16人(11%)および24人の患者(16%)で観察された。ロジスティック回帰分析により、異常なPC4d状態を伴うFU訪問のパーセンテージが、任意の血栓症(OR範囲11.7 CI95%:3.23~42.44)(p<0.001)、静脈血栓症(OR範囲=33.4 CI95:5.8~193.5)(p<0.001)と有意に関連し、動脈血栓症では有意に近づいた(OR=4.7 CI95%:0.9~25.4)(p=0.08)(
図1、パネルA)。FU中、患者1人当たりの平均リスクスコアは、0.57±0.76(n=149)であった。FUでのリスクスコアは、任意の血栓症(OR=3.8 CI95%:単位変化当たり2.0~7.2、OR範囲=53.9 CI95%:7.8~372.4)(p<0.001)、静脈血栓症(OR=3.9 CI95%:単位変化当たり1.9~8.2、OR範囲=60.3 CI95%:6.5~560.8)および動脈血栓症(OR=3.0 CI95%:単位変化当たり1.4~6.4、OR範囲=26.5 CI95%:2.7~259.4)と関連していた(
図1、パネルB)。HCQで治療された133人の患者のうち、HCQレベルの中央値は、それぞれ持続性、断続的および正常なPC4d状態を提示する患者の群において、696ng/ml(四分位間範囲[IQR]:537~989ng/ml、n=15)、794ng/ml(IQR:628~1121ng/ml、n=22)、および976ng/ml(IQR:675~1300ng/ml、n=96)であった。レベルは、正常なPC4dと比較した場合、持続的または断続的なPC4d状態の患者の群において有意に低かった(p=0.028)。リスクスコアは、HCQレベルと関連していなかった。より低いHCQレベルは、静脈血栓症と関連する傾向があったが(中央値=916ng/ml[IQR:675~1300]、n=10対648ng/ml[IQR:382~929]、n=123)(p=0.061)、動脈血栓症とはなかった(p>0.20)。
【0200】
データは、PC4dの持続性および血栓症リスクスコアの両方が血栓症と関連していることを示唆する。より低いHCQレベルは、静脈血栓症と関連している可能性がある。
【0201】
実施例3:要約および抗血栓治療薬。
本明細書に示されるように、複合リスクスコアとしてのPC4dと、低C3と、抗PS/PTおよび/LAC抗体状態異常のうちの一方または両方との存在は、血栓症の非存在下よりもその存在下(1.93±0.25)において有意に高く、したがって、この方法は、SLEを有するかまたはそのリスクがある対象における血栓症の診断、予測、および/または治療のモニタリングにおいて有意な改善を提供する。マーカーレベルの組み合わせを決定し、使用して(または別個の実体に提供して)、対象を血栓症であると診断し、対象を血栓症のリスクがあると予測するか、または抗血栓療法の有効性を示す。
【0202】
実施形態では、本明細書で使用される場合、「生体試料」は、対象の身体から得られる。対象からの任意の好適な生体試料を使用することができ、列挙されたレベルのそれぞれが決定される生体試料は、同じであっても異なっていてもよい。本発明の方法での使用に特に好適な試料は、血液試料または血清試料である。血液試料は、補体活性化を阻害するために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸塩)で処理することが好ましい。試料は、室温で維持するか、または4℃で保存することができる。いくつかの実施形態では、全血試料は、異なる成分に分画され得る。例えば、一実施形態では、赤血球は、分画遠心分離によって試料中の他の細胞型から分離される。血小板画分は、PC4dなどの血小板結合補体活性化産生物の分析を可能にするために、他の血液成分に由来し得る。血小板の単離は、血小板に特異的な抗体(例えば、CD42b)を使用する分画遠心分離または免疫沈降を含む、当技術分野で知られている方法で実施することができる。
【0203】
実施形態では、特定のバイオマーカーのレベル(例えば、数量または量)は、当業者に知られている様々な方法を使用して試料中で測定することができる。そのような方法には、本明細書に記載されるフローサイトメトリーが含まれるが、これに限定されない。一実施形態では、PC4dおよびC3のレベルの決定は、フローサイトメトリー法を使用して行われ、測定は、分子のそれぞれに特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体を使用する直接または間接免疫蛍光によって行われる。これらの分子のそれぞれは、別個の試料(例えば、血小板特異的画分)または単一の試料(例えば、全血)を使用して測定することができる。
【0204】
実施形態では、低補体C3状態は、本明細書に開示されるものを含むがこれらに限定されない任意の好適な方法を使用して確立され得る。一実施形態では、生体試料は血清を含み、C3レベルは免疫比濁法を使用して測定される。抗PS/PT複合体抗体は、イムノアッセイを含むがこれに限定されない任意の好適な手段を使用して測定することができる。
【0205】
実施形態では、本明細書に記載される方法は、測定されたレベルのPC4d、C3、ならびにLACおよび抗PS/PT IgG抗体レベルのうちの一方または両方と、同じマーカーの閾値レベルとの間の比較を用いる。血栓症を有しないことが知られている正常またはSLE対象の個人または集団からの事前に決定された閾値を含むがこれらに限定されない、比較のための任意の好適な閾値を使用することができる。本明細書で使用される場合、「事前に決定された閾値」は、対照対象の集団で測定された特定のバイオマーカーの数量または量(例えば、絶対値または濃度または平均蛍光強度)から決定することができる閾値を指す。特定のバイオマーカーの所与の量または数量のセットに対して最大の統計的有意性を達成する値または値の範囲を計算することによって、事前に決定された閾値を選択することができる。
【0206】
実施形態では、本明細書で使用される「診断すること/診断」は、血栓症の存在または性質を特定することを意味し、「予測すること」は、血栓症の発症を予測することを意味し、「モニタリングすること」は、治療に応答して血栓症の経過を追跡することを意味する。診断方法は、感度および特異性が異なる。診断アッセイの「感度」は、検査で陽性となる罹患者のパーセンテージ(「真の陽性」のパーセント)である。アッセイで検出されなかった罹患者は、「偽陰性」である。罹患しておらず、アッセイにおいて検査で陰性となる対象は、「真の陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、1から偽陽性率を引いたものであり、ここで、「偽陽性」率は、検査で陽性となる疾患のないヒトの割合として定義される。特定の診断方法では状態の確定診断が得られない場合があるが、その方法が診断に役立つ肯定的な兆候を提供する場合はそれで十分である。
【0207】
実施形態では、血栓症のリスクがある対象は、血栓症に特徴的な1つ以上の症状を有するか、または対象が血栓症を発症する可能性をより高くする他の特徴を有する任意の対象である。血栓症は、動脈または静脈の場合がある。静脈血栓症は、身体の患部の鬱血につながり、一方で動脈血栓症は、血液供給に影響を及ぼし、その動脈によって供給される組織の損傷(虚血および壊死)につながる。
【0208】
【0209】
参考文献
1.Magder LS,Petri M.Incidence of and risk factors for adverse cardiovascular events among patients with systemic lupus erythematosus.Am.J.Epidemiol.2012;176:708-719。
2.Girolami A,de Marinis GB,Bonamigo E,Treleani M,Vettore S.Arterial and venous thromboses in patients with idiopathic(immunological)thrombocytopenia:a possible contributing role of cortisone-induced hypercoagulable state.Clin.Appl.Thromb.Hemost.2013;19:613-618。
3.Kalunian KC,Chatham WW,Massarotti EM et al.Measurements of cell bound complement activation products enhance diagnostic performance in systemic lupus erythematosus.Arthritis Rheum.2012
4.Merrill JT,Petri MA,Buyon J et al.Erythrocyte-bound C4d in combination with complement and autoantibody status for the monitoring of SLE.Lupus Sci.Med.2018;5:e000263。
5.Navratil JS,Manzi S,Kao AH et al.Platelet C4d is highly specific for systemic lupus erythematosus.Arthritis Rheum 2006;54:670-674。
6.Lood C,Tyden H,Gullstrand B et al.Platelet activation and anti-phospholipid antibodies collaborate in the activation of the complement system on platelets in systemic lupus erythematosus.PLoS.One.2014;9:e99386。
7.Peerschke EI,Yin W,Alpert DR et al.Serum complement activation on heterologous platelets is associated with arterial thrombosis in patients with systemic lupus erythematosus and antiphospholipid antibodies.Lupus 2009;18:530-538。
8.Kao AH,McBurney CA,Sattar A et al.Relation of platelet C4d with all-cause mortality and ischemic stroke in patients with systemic lupus erythematosus.Transl.Stroke Res.2014;5:510-518。
9.Akhter E,Shums Z,Norman GL et al.Utility of antiphosphatidylserine/prothrombin and IgA antiphospholipid assays in systemic lupus erythematosus.J.Rheumatol 2013;40:282-286。
10.Petri M,Orbai AM,Alarcon GS et al.Derivation and validation of the Systemic Lupus International Collaborating Clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus.Arthritis Rheum 2012;64:2677-2686。
11.Danowski A,de Azevedo MN,de Souza Papi JA,Petri M.Determinants of risk for venous and arterial thrombosis in primary antiphospholipid syndrome and in antiphospholipid syndrome with systemic lupus erythematosus.J.Rheumatol 2009;36:1195-1199。
12.Dervieux T,Conklin J,Ligayon JA et al.Validation of a multi-analyte panel with cell-bound complement activation products for systemic lupus erythematosus.J.Immunol.Methods 2017;446:54-59。
13.Fasano S,Margiotta DP,Navarini L et al.Primary prevention of cardiovascular disease in patients with systemic lupus erythematosus: case series and literature review.Lupus 2017;26:1463-1472。
14.Jung H,Bobba R,Su J et al.The protective effect of antimalarial drugs on thrombovascular events in systemic lupus erythematosus.Arthritis Rheum.2010;62:863-868。
【国際調査報告】