(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】バイオ燃料を生産するための高温及び高圧での脂肪の加水分解による供給材料の前処理プロセス
(51)【国際特許分類】
C10L 1/02 20060101AFI20221012BHJP
C11B 1/02 20060101ALI20221012BHJP
C11C 3/10 20060101ALI20221012BHJP
C10G 3/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C10L1/02
C11B1/02
C11C3/10
C10G3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509075
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(85)【翻訳文提出日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 IB2020057549
(87)【国際公開番号】W WO2021028833
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】102019000014778
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522055555
【氏名又は名称】ネクストケム エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザルリ,アントニオ
【テーマコード(参考)】
4H013
4H059
4H129
【Fターム(参考)】
4H013BA02
4H059AA04
4H059BA26
4H059BA30
4H059BB02
4H059BB03
4H059CA02
4H059CA38
4H059CA64
4H059CA72
4H059CA73
4H059CA92
4H059CA93
4H059EA21
4H129AA01
4H129BA09
4H129BA11
4H129BB03
4H129BB05
4H129BC02
4H129BC06
4H129BC15
4H129KA11
4H129KB03
4H129NA01
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
バイオ燃料生産プラントにおける水素化及び異性化の前処理プロセスであって、フライ油、カテゴリー1の動物性脂肪、残油、又はモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及び遊離脂肪酸からなる副生成物などの二次原料を含む有機供給材料からなる未処理の供給であって、不純物を含まないモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物からなり、エステル化ユニットから出るリサイクルストリームに加えられる、未処理の供給から生じ、上記プロセスは、制御された圧力及び温度条件下で、過剰の水による加水分解によって生じ、その結果、グリセロール及び脂肪酸への供給の部分的又は完全な変換が得られ、加水分解プロセスに導入された過剰の水は、イオン形態で存在する様々な性質の不純物の溶媒として作用し、その結果、上記供給の中に存在する重金属及び塩化物の大部分が除去されることを特徴とする、前処理プロセス。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ燃料生産プラントにおける水素化及び異性化の前処理プロセスにおいて、フライ油、カテゴリー1の動物性脂肪、残油、又はモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及び遊離脂肪酸からなる副生成物などの二次原料を含む有機供給材料からなる未処理のストリームであって、不純物を含まないモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物からなり、エステル化ユニットから出るリサイクルストリームに加えられる、未処理のストリームから実行され、前記プロセスは、制御された圧力及び温度条件下で、過剰の水による加水分解によって行われ、その結果、流入する供給材料のグリセロール及び脂肪酸への部分的又は完全な変換が得られ、加水分解プロセスに導入された前記過剰の水は、イオン形態で存在する様々な性質の不純物の溶媒として作用し、その結果、前記流入する供給材料に含まれる重金属及び塩化物の大部分が除去されることを特徴とする、前処理プロセス。
【請求項2】
前記前処理に送られる水が、10bar~60barの圧力範囲にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記前処理に送られる水が、150℃~260℃の温度範囲にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
水が、0.1~1の範囲の水/トリグリセリド比で過剰に前記前処理に送られる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記流入する供給材料が、以下の反応に従って前記加水分解プロセスにおいて水と反応する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
グリセロール、水、及び不純物からなるストリームをバイオ燃料生産ラインから除去しながら、後続のプロセスに有害な成分を含まない脂肪酸のストリームが前記加水分解前処理から出力されることを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記前処理から出る生成物に含有され、蒸発によって濃縮され、蒸留によって精製された前記グリセロールは、ある量の前記グリセロールと前記前処理から出た脂肪酸からなる生成物の一部とをエステル化ユニットに導くことによって分けられ、グリセロールの残りの部分はそのまま市場に出される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
脂肪酸からなり前記前処理から出る生成物が、バイオ燃料を生成するための後続の水素化及び異性化工程に完全に又は部分的に送られることを特徴とする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
グリセロールの濃縮から生じ、ひいては不純物を含まない蒸気ストリームが、凝縮されて前記加水分解プロセスに送られ、ユーティリティの消費量の低減と濃縮プラントからの水の完全な回収とを可能にする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
フライ油、カテゴリー1の動物性脂肪、残油、又はモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及び遊離脂肪酸からなる副生成物などの二次原料を含む有機供給材料からなる未処理のストリームであって、不純物を含まないモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物からなり、エステル化ユニットから出るリサイクルストリームに加えられる、未処理のストリームからバイオ燃料を生産するための装置であって、
流入する供給材料の加水分解反応が制御された圧力及び温度条件下の水によって行われる少なくとも1つの前処理反応器と、
得られた脂肪酸を含む、前記前処理から出るストリームを処理するための少なくとも1つの水素化反応器と、
バイオ燃料を生産するための少なくとも1つの異性化反応器と、
水とグリセロールとからなり、加水分解から出るストリームの洗浄器であって、塩酸(HCl)による少なくとも1つの処理と、(NaOH又はCaOによる)少なくとも1つの中和と、少なくとも1つの濾過とを含む洗浄器と、
前記洗浄器から出るグリセロールを含有するストリームを濃縮するための少なくとも1つの蒸発器と、
前記蒸発器から出るグリセロールを精製するための少なくとも1つの蒸留塔と、
前記蒸留塔からの、市場に出されない精製された過剰のグリセロールと、脂肪酸からなり、前記前処理反応器から出たある量の生成物と、を受け取るのに適した、グリセロールと脂肪酸とを反応させるための少なくとも1つのエステル化反応器と、
を含む装置。
【請求項11】
請求項5に記載のプロセスに従って得られる生成物であって、脂肪酸からなり、前記前処理から出る、リンの濃度が5ppm未満であり、カルシウム及びマグネシウムの濃度が5ppm未満である、生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸エステルを含有する生物由来の二次原料を水素化及び異性化するプロセスを用いる、グリーンディーゼル燃料及びグリーンジェット燃料などのバイオ燃料の生産の分野に属する。
【0002】
より詳細には、本発明は、かかる二次原料、例えば、フライ油(揚げ油)、カテゴリー1の動物性脂肪、残油、又はモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及び遊離脂肪酸からなる副生成物を前処理するプロセスであって、リンとして検出可能なリン酸塩含有化合物、塩化物、カルシウムイオン及びマグネシウムイオン並びに重金属からなる望ましくない不純物が除去されたストリームを後続の水素化工程に送ることを可能にするプロセスに関する。
【0003】
有利には、本発明は、水素化工程中の望ましくない不純物の除去に加えて、水素化反応が進む間に、例えばプロパンなどの副生成物の生成を低減することも可能にするプロセスストリームを送ることを可能にする。
【背景技術】
【0004】
バイオ燃料を生産するための水素化及び異性化プロセスは、過去5年間、産業界でますます多くの用途が見られるようになり、市場のニーズ及びその生産に対する欧州の支援によって、工業用の「原油精製」複合施設をバイオリファイナリーに転換し、トリグリセリドを、主原料としておよび原油から得られる従来の供給物に加えて使用するようになった。
【0005】
これまで、水素化及び異性化プロセスは、多くの場合、食品として分類される植物油(ひいては、第1世代バイオ燃料用の供給物)の使用及び第2世代バイオ燃料の生産に適していると現在考えられているすべての二次原料のいずれに対しても、前処理プロセスを必要としている。
【0006】
例えば、特許文献1には、脂肪酸エステル(場合によってある量の遊離脂肪酸を含む)を含有する生物由来の混合物から、ディーゼル燃料として、又はディーゼル燃料の成分として使用することができる炭化水素画分を生産するプロセスが記載されている。
【0007】
このプロセスは、生物源の混合物を脱酸素する工程であって、場合によって前処理が先行する工程と、脱酸素工程から得られるストリームを水素異性化する工程であって、場合によってストリームを分離する工程及びストリームを洗浄する工程を含む精製処理が先行する工程と、を含む。
【0008】
脱酸素工程の前に、かかるプロセスは、任意選択で、特定の材料への吸収によって行われる供給材料の前処理(例えば、この場合、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイト、酸性セピオライトなどの酸性土又は粘土で満たされたカラムによる既知のパーコレーション技術を使用することができる)、又はイオン交換樹脂による処理を含み、さらにはまた、好ましくは周囲温度及び大気圧で硫酸若しくは硝酸又はさらには塩酸を使用することによって得られる弱酸性の洗浄を含む。
【0009】
実質的に、前処理プロセスは、供給材料からアルカリ金属及びアルカリ土類金属を除去することを目的としている。
【0010】
一般に、前処理工程に現在使用されているプロセスは、食品産業用の植物油又は動物性脂肪の精製に使用されるプロセスと本質的に同じである。
【0011】
しかしながら、それを二次原料に適用することは、供給材料に含まれる不純物を後続の水素化に要求される最適レベルまで低減するのに適していない。
【0012】
これらの供給源に存在する、水素化反応器で使用される触媒に耐性が低い主な不純物は、すべてのリン酸塩含有化合物(したがって、リンとして検出可能)、塩化物、カルシウムイオン及びマグネシウムイオン、並びに重金属である。
【0013】
表1は、水素化植物油(HVO)プロセスに要求される典型的な限界値を示す。見て取れるように、これらの値は、すでに世界中に広く存在する脂肪酸メチルエステル(FAME)の生産のためのエステル交換プロセスに基づく技術に要求される値よりもシビアである。
【0014】
【0015】
従来の技術では、望ましくない成分を上記の表1に示す値まで減少させるために、底生粘土を使用する乾式脱ガム及び漂白の工業的プロセスを使用することを見込んでいる。
【0016】
しかしながら、このような技術は、前処理中に特に困難を示すパーム油、ナタネ油、ダイズ油、及び他の油などの植物油が原料として使用される場合には効果的ではない。したがって、そのような供給材料を使用するためには、特定の、機能的で効率的な前処理プロセスが必要とされることになる。
【0017】
さらに、既知のプロセスでは、一般に従来の前処理に続く水素化工程中に、例えば脱酸素反応の副生成物であるプロパンなどの軽質炭化水素の割合が増加する。
【0018】
軽質生成物の量は、以下に説明する反応に従って、水素化反応器への供給材料中に存在するトリグリセリドのパーセンテージに比例し、ここでは、説明として、C16及びC18鎖の脂肪酸からなるトリグリセリドについて述べている。
【0019】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0300970号明細書
【発明の概要】
【0021】
軽質副生成物のこの副次的な収率は、所望の主生成物の量を制限し、且つまた、通常、水素化プラントが、他のプラントユニットから一貫した量のそのような軽質副生成物を提供する「原油」精製所に配置されるために不利であり、それゆえ、プロパンが副次的に生成されることは経済的に不利であり、商業的利益がほとんどない副生成物を生成することになり得る。
【0022】
本発明は、フライ油、カテゴリー1の動物性脂肪、残油、又はモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及び遊離脂肪酸からなる副生成物などの二次原料の前処理プロセスについて説明する。
【0023】
有利には、そのような前処理は、リン酸塩含有化合物(したがって、リンとして検出可能)、塩化物、カルシウムイオン及びマグネシウムイオン並びに重金属などの望ましくない不純物が後続の水素化プロセスの前に除去されるストリーム(流れ)を得ることを可能にする。
【0024】
さらに、望ましくない不純物の除去に加えて、本発明は、水素化プロセスにおいて生じる反応中に、例えばプロパンなどの副生成物の生成を、存在しないとは言わないまでも、減少させることを可能にするストリームをこの水素化プロセスに送ることを可能にする。
【0025】
本発明によれば、説明される解決策は、高温及び高圧での水による供給材料の前処理からなる。
【0026】
有利には、この処理に送られる供給材料は、エステル化ユニットから出る、不純物を含まない脂肪酸のリサイクルストリームを、未処理の供給材料に加えることから生じるものである。
【0027】
この発想は、このようにして得られたこのストリームの連続加水分解反応を過剰の水で行い、動物及び植物由来のタンパク質中に存在するリン脂質の完全な加水分解と、またトリグリセリドを部分的又は完全に脂肪酸へ変換することとの両方を可能にする。
【0028】
本発明のさらなる利点及び特徴は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】前処理が中和、乾式脱ガム及び漂白又は脱酸に基づく現在の植物油精製プロセスのブロック図を示す。
【0030】
【
図2】本発明による前処理プロセス及び生成物の循環の一般的なブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、第2世代燃料の生産に適した原料の処理が可能なプロセスに関する。
【0032】
本発明によれば、加水分解プロセスは、エステル化セクションから出るときに不純物を含まないモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物からなるリサイクルストリームに加えられる原料からなる、流入する供給材料に対して実行され、水素化植物油(HVO)プラントに送られる脂肪酸を部分的又は完全に生成する。
【0033】
上述のように、プラントに入る原料は、フライ油、カテゴリー1の動物性脂肪、残油、若しくはモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及び遊離脂肪酸を含む副生成物、POME(パームオイル廃液)、又はそれらの混合物からなる。
【0034】
この供給材料に、汚染物質を含まず、したがって清浄な、酸エステル化ユニットから流入する、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物からなるリサイクルストリームを加える。
【0035】
過剰水中でのトリグリセリド加水分解プロセスは、以下に示す反応に従って、反応生成物としてグリセロール及び脂肪酸を生成する。
【0036】
【0037】
トリグリセリド加水分解反応の間、反応自体の発生に関係なく、ひいては供給材料の転化率に関係なく、過剰な水を使用して、流入する供給材料を高温加圧洗浄する。
【0038】
これにより、高温及び高圧条件下では、水は、イオン形態で存在する様々な性質の不純物の溶媒として作用し、その結果、供給材料中に存在する重金属及び塩化物の大部分を効果的に除去することが可能になる。
【0039】
エステル化から流入するモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物からなるリサイクルストリームを原料ストリームに加えることの効果は、プラントに入る未処理の供給材料の中に元々存在する汚染物質を希釈することに見出すことができ、これは、処理に送られた供給材料の均質化及び洗浄によるその後の不純物の除去の両方を促進するように協働する。
【0040】
有利には、10~60bargの圧力、150~260℃の温度、及び0.1~1の水/トリグリセリド重量比に相当する操作条件の範囲内で、過剰の水で連続加水分解反応を行うことによって、動物及び植物由来の両方のタンパク質中に存在するリン脂質の完全な加水分解、並びにトリグリセリドを部分的又は完全に脂肪酸に変換することが達成される。
【0041】
さらに、上記の条件で作業することにより、リン酸塩(主にタンパク質)の形態で存在する全ての化合物を加水分解することが可能であり、それらは、水相によって除去され、ひいては流入する供給材料から除去される。
【0042】
したがって、その結果、リン含有量がHVOプロセスで許容される限界未満に効果的に減少する。
【0043】
有利には、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物からなるリサイクルストリームに加えられた原料からなる供給材料で実施することにより、ユニット全体の設計の最適化が得られ、処理に入るストリームの流量及び組成に関する均等化も可能になる。
【0044】
組成に関するこの均等化は、加水分解工程における不純物及び一般に望ましくない化合物のより効果的な除去を伴う。
【0045】
以下の表2に、フライ油からなる供給材料を供給する際に一般的に観察されるものをまとめている。
【0046】
表2に見られるように、リンは、表1で先に説明したものに従い、水素化植物油(HVO)プロセスで要求されるように、2mg/kg未満の量に低減される。
【0047】
【0048】
気付くことができるように、カルシウム及びマグネシウムの含有量もまた、水素化植物油(HVO)プロセスについて表1に先に示した範囲内にある。
【0049】
したがって、加水分解プロセスから出るストリームはそれぞれ、グリセロール(及び水)リッチなストリーム及び脂肪酸リッチなストリームである。
【0050】
脂肪酸リッチなストリームは、水素化プロセス、及びバイオ燃料の生産を目的とした後続の異性化及びクラッキングプロセスに送られる。
【0051】
本発明の特有の特徴によれば、加水分解中に生成される、有利な商業的用途が見出されない、グリセロールは、加水分解プロセスを出る脂肪酸リッチなストリームと共にエステル化ユニットに送られる。このエステル化ユニットから出るストリームは、プロセス全体に入る原料のストリームに加えられる、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物からなるリサイクルストリームである。
【0052】
加水分解中に生成されるグリセロールの量は、供給するトリグリセリドの質量を考慮すると、0.5から15重量%、より具体的には10から15重量%の範囲で変化し得、グリセロールは、多くの工業分野において中間体として、又は賦形剤として使用され得、さらに、この生成物は、第2世代バイオ燃料の生産のための原材料としての要件を満たしている。
【0053】
加水分解プロセスから出たグリセロールのストリームは、HClによる化学処理、その後の(NaOH又はCaOによる)中和及び濾過を含む洗浄ユニットに送られる。
【0054】
この工程の後、かかるストリームは様々な用途を見出すことができ、すなわち、
・一部は、バイオエタノールの生産を目的とした発酵プロセスにそのまま使用することができ、
・残りの部分は、最初に多重効用蒸発器によって濃縮され、次いで蒸留され、それにより、主にMatter Organic Non Glycerol(MONG)、塩(主にNaCl)及びアッシュ(灰)からなる、加水分解プロセス中に水によって除去される不純物を含有する残渣から、精製された(純粋な)グリセロールを分離することが可能になり得る。
【0055】
グリセロールの濃縮に由来する利点は、ユーティリティの消費量(特に水の消費量に関して)を最適化することができる点に認めることができ、実際、グリセロールの濃縮から生じ、ひいては不純物を含まない蒸気ストリームは、有利なことに凝縮されて加水分解プロセスに送られ、装置全体の設計の最適化、ユーティリティの消費量の低減、及び濃縮プラントから水を完全に回収することにも寄与することができる。
【0056】
既に述べたように、濃縮され蒸留されたある量のグリセロールは、加水分解プロセスに再循環されるモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物を生成する目的で、加水分解から出る脂肪酸のストリームと共に酸エステル化ユニット中で使用され、残りの部分は、有利には、マーケティングを通じて生産計画に入れることができる。
【0057】
バイオエタノールの生産を考慮して、0.5~15重量%、より具体的には10%から15%の量のグリセロールを含有する、塩酸による処理とその後の中和及び濾過から出るある量のストリームは、微生物学的プロセスにおける酵素発酵によってバイオエタノールを生産するためのユニットに送られ得る。
【0058】
有利には、本発明に従って生産されたグリセロールの一部を使用するこの可能性は、従来のグリセロールの精製と比較して、コストの観点から、より安価な方法でより高い付加価値を有する生成物(バイオエタノール)を得ることを可能にする。
【0059】
加水分解反応に基づく前処理ユニットは、供給材料を精製するための効果的な解決策を提供し、水素化プロセスにとって有害な存在する不純物を効果的に除去することができ、そして、有利には、異性化、ひいてはバイオディーゼルの生産に関する生成物の収率を最大化し、ひいては、プロパンなどの軽質成分の生成を最小限に抑えるストリームを水素化プロセス自体に送ることを可能にする。
【0060】
実際、トリグリセリドのすべての変換が水素処理によって達成され、その水素処理により、例えばプロパンなどの軽質生成物が不可避的に生成され、異性化および次いで分離される供給材料にプロパンが含まれることを引き起こす従来のプラントとは異なり、本発明では、水を用いてトリグリセリドを変換することにより、まず、トリグリセリドを脂肪酸及びグリセロールへ分離することが可能になり、この分離は、脂肪酸とグリセロールとの間のさらなる分離をもたらすことを可能にし、その結果、後続の水素化工程において、プロパンの含有量が、存在しないとは言わないまでも、最小限であることを確実にし、その結果、後続の処理工程にとってより大きな付加価値を有する生成物を最大化する。
【0061】
この特許が説明するところのプロセス図が
図2に簡単に示されており、以下を見て取ることができる。
【0062】
・ブロックA、本発明で使用することができ、ストリーム1を形成する、原料又はその混合物を示す。
【0063】
・ブロックB、本発明による前処理プロセスを示し、ストリーム1と10~60bargの圧力及び150~260℃の温度の過剰水のストリーム19とがここに流入し、部分的又は完全に変換された脂肪酸からなるストリーム3と、水及びグリセロールからなるストリーム9とがここから流出する。
【0064】
・ブロックC、水素化工程に関係し、部分的又は完全に変換された脂肪酸からなるストリーム3と、反応を進行させるための水素のストリーム23とがここに流入する。
【0065】
・ブロックD、水素化プロセスから出る生成物の異性化工程に関係し、ストリーム5が、反応を実施するための水素のストリーム23と共に当該ブロックに入る。
【0066】
・ブロックE、異性化から出た、ストリーム7によって示される生成物を分画する工程に関係し、このストリームがエコ燃料を生成するためにここに向けられる。
【0067】
・ブロックF、ブロックBから出た水とグリセロールとからなるストリーム9を洗浄する工程に関係し、塩酸(HCl)を用いた化学処理と、これに続くNaOH又はCaOを用いた中和及び濾過を含み、後続の処理に適した精製されたストリーム11を生成する。
【0068】
・ブロックJ、ブロックFの洗浄工程から出るストリーム11を濃縮する工程に関係し、当該工程は、少なくとも一つの多重効用蒸発器によって実現され、より高いグリセロール含有量を有するストリーム13から水21を分離することを可能にする。
【0069】
・ブロックL、ストリーム13の蒸留によってグリセロールを精製する工程に関係し、この工程から濃縮され精製されたグリセロール15のストリームが得られ、そのストリームはブロックHに示される後続の使用に送られ、また、主に、Matter Organic Non Glycerol(MONG)、塩(主にNaCl)及びアッシュからなり、ストリーム17によって示される排出物のストリームが排出物Mに送られる。
【0070】
・ブロックG、ストリーム15によって示される濃縮され精製されたグリセロールを、ブロックBから出る脂肪酸のストリーム3の一部と反応させることによって達成される酸エステル化工程に関係し、このプロセスは、ストリーム25によって表される脂肪酸エステルを生成することを目的としており、ストリーム25はストリーム1と共に前処理ブロックBに送り返されるリサイクルストリームである。
【0071】
・ブロックI、酵素発酵による可能なバイオエタノール生産工程に関係し、グリセロールに他の用途を見つけられない場合に、水とグリセロールからなるストリーム11がここに向けられ得る。
【国際調査報告】